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特許7503581工作機械上での機械加工のための超音波工具ユニットを制御するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】工作機械上での機械加工のための超音波工具ユニットを制御するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 1/00 20060101AFI20240613BHJP
   B23B 29/12 20060101ALI20240613BHJP
   B23C 3/00 20060101ALI20240613BHJP
   B23B 37/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B23B1/00 C
B23B1/00 B
B23B29/12 A
B23C3/00
B23B37/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021577368
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 EP2020067320
(87)【国際公開番号】W WO2020260189
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】102019209191.1
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521565028
【氏名又は名称】デーエムゲー モリ ウルトラソニック レーザーテック ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】DMG MORI ULTRASONIC LASERTEC GMBH
【住所又は居所原語表記】Gildemeisterstrasse 1, 55758 Stipshausen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ マルクス
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ゲーベル
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン フランツマン
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-039107(JP,A)
【文献】特表2014-523348(JP,A)
【文献】特許第5308599(JP,B1)
【文献】特開2018-075704(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0136552(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00
B23B 29/12
B23C 3/00
B23B 37/00
B24B 1/04
B23Q 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械上の加工対象物を機械加工するための超音波工具ユニットを制御するための装置であって、
前記工作機械の作業スピンドル上で受け取られる前記超音波工具ユニットの超音波振動子を制御するための制御装置を含み、
前記工作機械は、発電機によってコントローラーに入力された検出信号に基づいて、加工対象物を機械加工し、
前記発電機は、前記超音波工具ユニットに関連付けられ、前記コントローラーの操作を設定する第1パラメーターセットに基づいて、前記コントローラーによって操作され、
前記制御装置は、複数のパラメーターセットを記憶するための記憶装置を含み、
前記制御装置は、第2パラメーターセットに基づいて前記コントローラーの操作を設定する前記第1パラメーターセットを自動的に変更することによって、前記コントローラーの操作設定を切り替えるように構成され、
前記第2パラメーターセットは、現在実行されているNCデータの仕様に応じて前記記憶装置に記憶された前記複数のパラメーターセットのうちの前記超音波工具ユニットに関連付けられ
前記複数のパラメーターセットの各々は、異なる工具、異なる超音波変換器、異なる工具支持体、および異なる種類または条件の加工に関連付けられることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記加工対象物を加工する場合に、前記制御装置の操作設定を切り換えるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記加工対象物の加工の種類が変更された場合に、前記コントローラーの操作設定を切り替えるように構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記工作機械上の前記超音波工具ユニットが他の超音波工具ユニットと交換される場合に、前記制御装置は、前記記憶装置に記憶された前記複数のパラメーターセットのうちの他の超音波工具ユニットに関連付けられたパラメーターセットに基づいて前記超音波工具ユニットに関連付けられたパラメーターセットを変更することによって、前記コントローラーの操作設定を切り替えるように構成されていることを特徴とする、請求項1ないしのいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記工作機械上の前記超音波工具ユニット上の工具が他の工具と交換される場合に、前記制御装置は、前記記憶装置に記憶された前記複数のパラメーターセットのうちの他の工具に関連付けられたパラメーターセットに基づいて前記工具に関連付けられたパラメーターセットを変更することによって、前記コントローラーの操作設定を切り替えるように構成されていることを特徴とする、請求項1ないしのいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
超音波工具ユニットを受け入れるための作業スピンドルと、
請求項1ないしのいずれか1項に記載の前記工作機械上の加工対象物を機械加工するための前記超音波工具ユニットを制御するための装置と、
を含む、工作機械。
【請求項7】
工作機械上の加工対象物を機械加工するための超音波工具ユニットを制御するための方法であって、
前記工作機械の作業スピンドル上で受け取られる前記超音波工具ユニットの超音波振動子を制御することを含み、
前記工作機械は、発電機によってコントローラーに入力された検出信号に基づいて、加工対象物を機械加工し、
前記発電機は、前記超音波工具ユニットに関連付けられ、前記コントローラーの操作を設定する第1パラメーターセットに基づいて、前記コントローラーによって操作され、
前記工作機械の制御装置の記憶装置に複数のパラメーターセットを記憶することと、
現在実行されているNCデータの仕様に応じて前記記憶装置に記憶された前記複数のパラメーターセットのうちの前記超音波工具ユニットに関連付けられた第2パラメーターセットに基づいて前記コントローラーの操作を設定する前記第1パラメーターセットを自動的に変更することによって、前記コントローラーの操作設定を切り替えることと、
を含み、
前記複数のパラメーターセットの各々は、異なる工具、異なる超音波変換器、異なる工具支持体、および異なる種類または条件の加工に関連付けられることを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記コントローラーの操作設定の切り替えは、前記加工対象物が加工されているときに行われることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記コントローラーの操作設定の切り替えは、前記加工対象物の前記加工の種類が切り替えられるときに行われることを特徴とする、請求項またはに記載の方法。
【請求項10】
前記工作機械上の前記超音波工具ユニットを他の超音波工具ユニットと交換し、
前記記憶装置に記憶された前記複数のパラメーターセットのうちの他の超音波工具ユニットに関連付けられたパラメーターセットに基づいて前記超音波工具ユニットに関連付けられたパラメーターセットを変更することによって、前記コントローラーの操作設定を切り替えることを特徴とする、請求項ないしのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記工作機械上の前記超音波工具ユニット上の工具を他の工具と交換し、
前記記憶装置に記憶された前記複数のパラメーターセットのうちの他の工具に関連付け
られたパラメーターセットに基づいて前記工具に関連付けられたパラメーターセットを変更することによって、前記コントローラーの操作設定を切り替えることを特徴とする、請求項ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械上での加工対象物を機械加工するための超音波工具ユニットを制御する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術は、工具によって加工対象物が機械加工される場合、工具の回転運動は、工具の超音波振動によって重ね合わせられ得る工作機械を開示している。
【0003】
これに関連して、EP 1 763 416 B1には、第1端部が回転スピンドルノーズに適応する工具支持受け部を有し、第1端部と反対側の第2端部が工具受け部を有する工具支持体と、工具受け部に挿入可能な工具ヘッドと、を含む工具が記載され、工具支持体は、揺動モーターを含む。
【0004】
このような工作機械では、工具の超音波振動を発生する工具支持体内の超音波振動子、振動体、および工具支持体内に挿入された工具は、電気信号によって機械的に振動する振動系を構成し、振動系がその共振周波数で励振されると、可能な限り大きな機械的振動振幅が得られる。
【0005】
これに関連して、加工作業の過程で共振周波数が変化するかもしれないという問題が生じる。本質的に、これには3つの理由がある。一方では、振動系またはその一部は、加工中に加熱され、そのゆえ、材料の特性を変化させる。これは、共振周波数の温度ドリフトをもたらす。他方では、工具が機械加工される加工対象物に接触すると、加工力により振動が減衰し、振動が減衰した場合、系の共振周波数は、系の制限されていない共振周波数よりも低くなる。
【0006】
さらに、新しい結合振動系が振動系を加工対象物に結合することによって形成され、振動系の共振周波数は、通常、制限されていない共振周波数よりも高くなる。実際には、これらの3つの影響は、組み合わせて生じ、どの影響が支配的であるかは、具体的な加工状況に依存する。
【0007】
また、共振周波数のシフトに加えて、工具と加工対象物との間の相互作用によって、同じ電力を得るためには、より高い出力電圧が必要となる場合があるので、電力の変化も顕著であることに留意されたい。
【0008】
制限されていない共振周波数が励振に使用されるが、系の実際の共振周波数が加工中にそれと異なる場合、工具の振動は、より低い振幅を有することになり、それゆえ、加工の効率は、低くなる。
【0009】
このため、振動系の共振周波数の変化を検出し、それに対応して、再度できるだけ大きな振動振幅が得られるように、振動パラメーターを調整できることが重要である。
【0010】
この目的のために、発電機の初期値からの制限されていない共振周波数と系の共振周波数シフトとの両方を決定することは、超音波溶接の用途から知られており、発電機は、機械的振動のための電気信号を工具支持体内の圧電駆動部に供給する。誘導伝送経路を介して接続された振動系から、発電機は、周波数に依存する電気インピーダンスであって、機械的な共振周波数で極小値を持つ電気インピーダンスを検出する。したがって、共振周波
数が変化する場合、発電機は、再度インピーダンスが極小値に達するまでその周波数を再調整する。インピーダンスが極小の周波数に加えて、加工作業に起因して、このようなインピーダンス値も変化する。すなわち、同じ電力を駆動するためには、より高い出力電圧が必要になる。
【0011】
しかしながら、この方法は、機械加工には適していない。なぜなら、超音波溶接とは異なり、用いられるソノトロード(sonotrodes)のインピーダンス曲線は、挿入される工具によってはるかに複雑であるためである。一方、複雑な形状を有する工具の多くの異なる振動モードのために、極小インピーダンスは、著しく多く存在する。他方、共振周波数シフトを引き起こす影響を及ぼす変数は、より極端な影響を有する。すなわち、周波数シフトが非常に大きくなる可能性があるため、それ以上のインピーダンス極小値は、スキップされる。溶接加工全体を通して、ソノトロードは、加工対象物にほぼ同じ圧力をかける。この結果、1回の周波数シフトにつながり、これは、繰り返される加工において同じであり、そのため、極小インピーダンスは、常に明確に識別され得る。しかしながら、工具の素材への係合状態が変化するため、機械加工中、振動数シフトは、常に変化し、上述したように、インピーダンス測定のみでは、解読が不可能になることが多い。
【0012】
これは、異なる形状を有する多数の工具が用いられるためである。例えば、異なる寸法を有する穿孔加工およびフライス加工工具、ならびに異なる切削形状を有する切削工具があり、超音波溶接と比較して、インピーダンス曲線の形状のより大きいばらつきが生じる。さらに、機械加工作業における振動系に作用する力は、一般に著しく大きく、したがって、インピーダンス曲線の変化は、はるかに顕著である。
【0013】
さらに、溶接中に加工手段が繰り返されるため、支配的な周波数シフトの影響を適切に予測することができ、系の考えられる反応が限定される。その一方で、機械加工作業のために全ての影響を考慮しなければならず、このことは、予測の可能性および/または制御パラメーターを限定する可能性が不十分な理由である。
【0014】
また、インピーダンス測定のみでは、曲げ振動等と軸方向振動モードを区別することはできない。振動を全く発生させない純粋な電気共振もある。これらの寄生性の影響は、既知の方法では検出できない。
【0015】
発電機の電力に基づいて振動を監視する際の別の問題は、電力のどの部分が実際に振動を発生するのか、そしてどの部分が含まれる構成要素の加熱のような他の処理にかかわるのかが分からないことである。したがって、振動発生のために用いられる発電機から供給される電力の一部は、変化するが、発電機から供給される全体の電力は、変化しないため、振動の変化が検出されない可能性がある。
【0016】
このため、適切に発振パラメーターを適応させることができるようにするためには、発振可能な系の共振周波数の変化を検出することが重要であり、その結果、再び最大限の振動振幅が達成される。
【0017】
上記の考察に鑑みて、振動系を制御するための一般的な方法がDE10 2015 212 809 A1に記載されており、特に、共振周波数を決定することによる発振器の制御および決定された共振周波数に基づく制御を用いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記の従来技術に基づき、かつ上記の考察に鑑みて、本発明の目的は、様々な加工条件により良好に適応可能な振動系の改善された制御を提供するために、一般的な方法をさら
に発展させることである。
【0019】
特に、本発明の目的は、様々な変化する機械加工の条件下での加工対象物の超音波機械加工において、より高い機械加工精度を達成することを可能にする方法を提供することである。
【0020】
上記の目的を達成するために、独立請求項の主題が提案される。従属請求項は、本発明に係る方法または本発明に係る装置の有利な例示的な実施形態に関する。
【0021】
例示的な実施形態によれば、工作機械上の加工対象物を機械加工するための超音波工具ユニットを制御するための装置であって、前記工作機械の作業スピンドル上で受け取られる前記超音波工具ユニットの超音波振動子を制御するための制御装置を含み、前記工作機械は、発電機によってコントローラーに入力された検出信号に基づいて、加工対象物を機械加工し、前記発電機は、前記超音波工具ユニットに関連付けられ、前記コントローラーの操作を設定する第1パラメーターセット(first parameter set)に基づいて、前記コントローラーによって操作される。
【0022】
前記制御装置は、好ましくは、複数のパラメーターセットを記憶するための記憶装置を含む。前記制御装置は、好ましくは、第2パラメーターセットに基づいて前記コントローラーの操作を設定する前記第1パラメーターセットを変更することによって前記コントローラーの操作設定を切り替えるように構成され、前記第2パラメーターセットは、前記記憶装置に記憶された前記複数のパラメーターセットのうちの前記超音波工具ユニットに関連付けられる。
【0023】
好ましい例示的な実施形態によれば、前記制御装置は、前記加工対象物を機械加工する場合に、前記制御装置の操作設定を切り換えるように構成されている。
【0024】
好ましい例示的な実施形態によれば、前記制御装置は、前記加工対象物の加工の種類が変更された場合に、前記コントローラーの操作設定を切り替えるように構成されている。
【0025】
好ましい例示的な実施形態によれば、前記第1パラメーターセットは、複数の種類の加工うちの第1種類の加工に関連付けられ、前記第2パラメーターセットは、好ましくは、前記複数の種類の加工うちの第2種類の加工に関連付けられる。
【0026】
好ましくは、前記複数の種類の加工は、フライス加工および穿孔加工を含む。
【0027】
好ましい例示的な実施形態によれば、前記工作機械上の前記超音波工具ユニットが他の超音波工具ユニットと交換される場合に、前記制御装置は、前記記憶装置に記憶された前記複数のパラメーターセットのうちの他の超音波工具ユニットに関連付けられたパラメーターセットに基づいて前記超音波工具ユニットに関連付けられたパラメーターセットを変更することによって、前記コントローラーの操作集合を切り替えるように構成されている。
【0028】
好ましい例示的な実施形態によれば、前記工作機械上の前記超音波工具ユニット上の工具が他の工具と交換される場合に、前記制御装置は、前記記憶装置に記憶された前記複数のパラメーターセットのうちの他の工具に関連付けられたパラメーターセットに基づいて前記工具に関連付けられたパラメーターセットを変更することによって、前記コントローラーの操作設定を切り替えるように構成されている。
【0029】
さらなる例示的な実施形態によれば、超音波工具ユニットを受け入れるための作業スピ
ンドルと、上述の態様の1つに係る前記工作機構上の加工対象物を機械加工するための前記超音波工具ユニットを制御するための装置と、を有する工作機械が提案される。
【0030】
例示的な形態によれば、工作機械上で加工対象物を機械加工するための超音波工具ユニットを制御するための方法がまた提案され、前記工作機械の作業スピンドル上で受け取られる前記超音波工具ユニットの超音波振動子を制御することを含み、前記工作機械は、発電機によってコントローラーに入力された検出信号に基づいて、加工対象物を機械加工し、前記発電機は、前記超音波工具ユニットに関連付けられ、前記コントローラーの操作を設定する第1パラメーターセットに基づいて、前記コントローラーによって操作され、前記工作機械の制御装置の記憶装置に複数のパラメーターセットを記憶することと、前記記憶装置に記憶された前記複数のパラメーターセットのうちの前記超音波工具ユニットに関連付けられた第2パラメーターセットに基づいて前記コントローラーの操作を設定する前記第1パラメーターセットを変更することによって、前記コントローラーの操作設定を切り替えることと、を含む。
【0031】
前記方法は、好ましくは、前記工作機械の前記制御装置の記憶装置に複数のパラメーターセットを記憶または置くことを含む。
【0032】
前記方法は、好ましくは、前記記憶装置に記憶された前記複数のパラメーターセットのうちの前記超音波工具ユニットに関連付けられた第2パラメーターセットに基づいて前記コントローラーの操作を設定する前記第1パラメーターセットを変更することによって、前記コントローラーの操作設定を切り替えることを含む。
【0033】
好ましい例示的な実施形態によれば、前記コントローラーの操作設定の切り替えは、前記加工対象物が加工されているときに行われる。
【0034】
好ましい例示的な実施形態によれば、前記コントローラーの操作設定の切り替えは、前記加工対象物の前記加工の種類が切り替えられるときに行われる。
【0035】
好ましい例示的な実施形態によれば、前記第1パラメーターセットは、複数の種類の加工のうちの第1種類の加工に関連付けられ、前記第2パラメーターセットは、前記複数の種類の加工のうちの第2種類の加工に関連付けられる。
【0036】
好ましい例示的な実施形態によれば、前記複数の種類の加工は、フライス加工および穿孔加工を含んでもよい。
【0037】
好ましい例示的な実施形態によれば、前記方法は、前記工作機械上の前記超音波工具ユニットを他の超音波工具ユニットと交換することと、前記記憶装置に記憶された前記複数のパラメーターセットのうちの他の超音波工具ユニットに関連付けられたパラメーターセットに基づいて前記超音波工具ユニットに関連付けられたパラメーターセットを変更することによって、前記コントローラーの操作設定を切り替えることと、を含む。
【0038】
好ましい例示的な実施形態によれば、前記方法は、前記工作機械上の前記超音波工具ユニット上の工具を他の工具と交換することと、前記記憶装置に記憶された前記複数のパラメーターセットのうちの他の工具に関連付けられたパラメーターセットに基づいて前記工具に関連付けられたパラメーターセットを変更することによって、前記コントローラーの操作設定を切り替えることと、を含む。
【0039】
さらなる態様およびそれらの利点、ならびに上記の態様および特徴の利点およびより具体的な実施選択肢は、以下の記載および添付の図面で説明されるが、これらは、いかなる
限定的な意味で解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、本発明に係る方法で用いられ得る工具支持体の断面図を示す。
図2図2は、本発明に係る方法が行われ得る工作機械の一部を示す。
図3図3は、電気インピーダンス曲線を示す。
図4図4は、本発明に係る装置の例示的な実施形態を模式的に示す。
図5図5は、例示的な周波数スペクトルを示す。
図6図6は、本発明に係る装置の例示的な実施形態を示す。
図7図7は、例示的な実施形態による本発明に係る方法で用いられ得る工具支持体(工具ヘッド)を有する工作機械の模式図の一例を示す。
図8図8は、周波数の関数としての異なるインピーダンスまたは位相プロファイルの例を示す。
図9A図9Aは、周波数の関数として、異なるインピーダンスまたは位相プロファイルの例を示す。
図9B図9Bは、周波数の関数として、異なるインピーダンスまたは位相プロファイルの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例または実施形態を詳細に説明する。図中の同一または類似の要素は、同一の参照符号で示されているが、時には別参照符号でも示されている。
【0042】
本発明は、決して、以下に記載される例示的な実施形態およびそれらの実施特徴に制限または限定されるものではなく、代わりに、例示的な実施形態の変形例、特に、記載された実施例の特徴の変形によって、または記載された実施例の特徴の1つ以上の組み合わせによって、独立請求項の範囲内に含まれるものを、さらに含むことが強調されるべきである。
【0043】
図1は、本発明に係る方法で用いられ得る工具支持体10の例示的な概略図を示す。一例として、工具90(図示せず)を受け入れるための工具受け部11が、工具支持体10の一端に配置されている。
【0044】
例えば6個の複数の有孔円盤形状の第1圧電素子21は、積層された形式で、工具支持体10内に配置され、圧電素子21は、一例として、伝達部12を介して工具受け部11に接続され、電圧を機械振動に変換する超音波変換器20を構成している。
【0045】
第1圧電素子21の機械振動は、例えば、伝達部12を介して工具90に伝達される。第1圧電素子21は、例えば、間に電極が取り付けられた圧電セラミック円盤として構成されていてもよい。エネルギーは、機械側では、第1ポットコア(pot core)31と一次巻線32(図示せず)とからなり、工具側では、第2ポットコア33と二次コイル34とからなる変圧器(第1変圧器)を介して、超音波変換器20に供給され、二次コイル34は、一例として、工具支持体10の外側にリング素子として配置されている。
【0046】
一例として、工具受け部11とは反対を向く第1圧電素子21の積層体の側には、有孔円盤形状の圧電検出素子40が配置され、圧電検出素子40は、第1圧電素子21に機械的に連結され、セラミック有孔円盤で構成されてもよい絶縁素子43によって第1圧電素子21から電気的に絶縁されている。圧電検出素子40は、一例として、締結素子13、例えば締結ナットなどの締結素子13から、さらなる絶縁素子43によって電気的に絶縁されている。締結素子13は、一例として、圧電検出素子40を超音波変換器20に取り
付け、動的負荷により第1圧電素子21にバイアスをかける役割を果たす。
【0047】
第1圧電素子21と圧電検出素子40とは、同じ方向を向いており、これにより、一方では、発振の発生と検出とが同じ方向において可能となり、他方では、工具支持体10内の素子の省スペース配置が達成される。
【0048】
圧電検出素子40は、工具90、伝達部12、超音波変換器20、および圧電検出素子40を含む振動系の機械振動を検出信号S2に変換し、検出信号S2は、圧電検出素子40から、工具支持体10を通って工具支持体10の外側の送信素子60に電線接続部50を介して電圧として伝達される。
【0049】
検出信号S2は、非接触式で、送信素子60から機械側の受信素子80(図示せず)に送信される。送信素子60は、さらなる変圧器(第2変圧器)の一部であり、第1フェライトコア(ferrite core)61と一次巻線62とからなる。受信素子80は、第2変圧器の一部でもあり、第2フェライトコア81と二次巻線82とからなる。これにより、検出信号S2は、工具支持体10から機械側の検出信号評価装置110(図示せず)に誘導的に送信され得る。あるいは、光学的な送信も可能であり、ここで、送信素子60は、LEDとして構成され、受信素子80は、フォトダイオードとして構成される。送信素子60は、DIN69893規格による工具データのためのデータチップ用の穴70に適合するように寸法決めされ、配置されていてもよい。工具支持体10は、工作機械の固定部分(図示せず)に対して回転可能であってもよい。
【0050】
図2は、一例として、作動信号S1の形態で、超音波変換器20のためのエネルギーを工具支持体10内に伝達するためのエネルギー伝達装置30の配置、および検出信号S2を工具支持体10から伝達するための送信素子60および受信素子80の配置の断面図を示す。
【0051】
エネルギー伝達装置30は、第1ポットコア31と、一次巻線32と、第2ポットコア33と、二次巻線34と、を有する変圧器(第1変圧器)として構成され、一例として、ポットコア31,33の開口が対向し、ポットコア31,33の各々に巻線32,34が配置されている。ここで、第2ポットコア33は、工具支持体の外周に沿って環状に配置されている。一例として、第1ポットコア31は、第2ポットコア33から軸方向に離れるように機械側の筐体100内に配置され、工具支持体10の周囲にリングの断片または完全なリングのいずれかとして配置されている。したがって、作動信号S1は、一次巻線32から二次巻線34へ、軸方向(図2の上から下)に誘導的に伝達される。
【0052】
一例として、受信素子80も筐体100内に配置されている。送信素子60は、工具支持体10の穴70に、受信素子80とは反対側に、受信素子80と離れて配置されている。したがって、検出信号S2は、送信素子60から受信素子80へ半径方向(図2の左から右)に非接触式に送信される。また、工具支持体10の回転中に検出信号S2が送信された場合の信号損失を低減するために、複数の送信素子60を工具支持体10上に円周方向に配置することも可能である。同様に、複数の受信素子80は、送信素子60と反対側または送信素子60側に配置されてもよい。
【0053】
工具支持体10の回転中、エネルギー伝達装置30の第2ポットコア33および二次巻線34ならびに送信素子60は、エネルギー伝達装置30の第1ポットコア31および一次巻線32ならびに受信素子80を有する筐体100が例えば工具スピンドル(図示せず)上に取り付けられて回転しない間、工具支持体10と共回転する。
【0054】
以下、図3を用いて、加工作業中の振動系の挙動を説明する。本発明に係る1つの実施
形態である振動系は、圧電駆動部としての超音波変換器20、伝達部12、工具受け部11に挿入された工具90、検出信号S2を生成するための圧電検出素子40、および圧電検出素子40のための締結素子13を含み、振動系は、作動信号S1によって機械的に振動するように励起され、作動信号S1は、発電機120によって生成され、エネルギー伝達装置30を介して超音波変換器20に伝達される。ここで、作動信号S1の作動周波数f1は、機械振動の周波数を決定し、発電機120によって供給される電力P1は、振動振幅を決定する。所与の電力P1で、振動振幅は、振動系の共振周波数f2で最大となり、系の自由振動の共振周波数f21は、通常、加工中の系の共振周波数f22と異なる。
【0055】
図3は、一例として、発電機120が誘導性伝達経路として第1変圧器31~34を介して接続された振動系から検出する電気インピーダンス曲線を示す。自由振動のインピーダンス曲線は、より低い周波数でインピーダンス極大(直列共振)、より高い周波数でインピーダンス極小(並列共振)を有する。インピーダンス極小の位置は、自由振動の共振周波数f21に対応する。
【0056】
機械加工の間、発電機120は、あまり顕著でない極値を有する変化したインピーダンス曲線を検出する。さらに、極小値は、自由振動における極小値に対してシフトされる。図3では、加工中に極小値は、より高い周波数にシフトされる。すなわち、図示の例では、加工中の共振周波数f22は、自由発振の共振周波数f21よりも高い。しかしながら、加工中に共振周波数f22が自由発振の共振周波数f21よりも低くなる可能性もある。どちらの事例が発生し、共振周波数がどれだけ大きく変化するかは、加工力による減衰の影響、加工中の系の加熱、および関係する連結振動系の共振挙動に依存する。
【0057】
自由共振周波数f21は、圧電駆動のための作動信号S1を供給する発電機120の初期値に基づいて、または本発明に係る方法によって決定されることでき、本発明に係る方法は、図4を参照して以下で詳細に説明され、工具90が加工対象物内に入る前に、できるだけ高い振動振幅が達成されることによって、作動周波数f1の推定値として用いられてもよい。本発明に係る方法は、加工中に共振周波数f2の変化を検出するために適用され、その値は、次に、作動周波数f1を実際の共振周波数f2に近づけるために、または、元の振幅が再び達成されるように作動信号S1の電力を増加させるために用いられてもよい。
【0058】
図4は、本発明に係る方法が行われ得る本発明に係る装置を模式的に示す。装置は、工作機械の一部であってもよい。この図は、圧電検出素子40を有する工具支持体10を示しており、その概略図は、図1に示す工具支持体10に対応している。加工対象物の超音波機械加工のための工具90は、工具支持体10に受け入れられる。
【0059】
発電機120は、工具支持体10内の圧電駆動用の駆動信号としての作動信号S1を出力する。作動信号S1は、作動周波数f1を有し、変圧器として構成されたエネルギー伝達装置30を介して、回転する工具支持体10に非接触式で電力P1とともに伝送され、エネルギー伝達装置30は、第1ポットコア31を備えた一次巻線32と、第2ポットコア33を備えた二次巻線34と、からなる。さらに、発電機120は、電力Pt<P1の試験信号Stを出力し、試験信号Stは、作動信号S1に重畳され、試験信号Stの周波数は、f1付近の範囲で変化する。
【0060】
信号S1および信号Stを受けて、工具支持体10内の振動系は、振動するように励起され、この振動の周波数スペクトルは、実質的に2つの周波数を有する。例示的な周波数スペクトルは、図5に示される。周波数スペクトルにおけるより高いピークは、比較的高い電力P1での作動周波数f1によって励起された系の強制振動から生じる。より小さいピークは、f1の周辺で変化する周波数で励起された系の強制振動から生じる。しかしな
がら、この振動は、非常に電力Ptが小さいので、系の現在の共振周波数f2を除いた全ての周波数での減衰のために非常に急速に消えていく。
【0061】
振動系の振動により、圧電検出素子40も同様に振動し、それゆえ、振動の周波数スペクトルに関する情報を含む電気的な検出信号S2を生成する。検出信号S2は、第1フェライトコア61を備えた一次巻線62と、第2フェライトコア81を備えた二次巻線82とからなる、さらなる変圧器を介して非接触式で読み出し装置130によって回転する工具支持体10から読み出されて、分析装置140aに送信される。
【0062】
分析装置140aは、一例として、S2の周波数スペクトルに含まれる周波数を決定すし、分析装置140aの一部として実装されてもよい共振周波数140bを決定するための装置において、スペクトルにおける最高ピークの周波数(主周波数)は、作動周波数f1に関連付けられることができ、スペクトルにおけるより小さいピークの周波数(側周波数)は、共振周波数f2に関連付けられることができる。また、読み出し装置130、分析装置140a、および共振周波数140bを決定する装置は、2つの装置に組み合わされていてもよいし、単一の装置として実装されていてもよい。
【0063】
決定された共振周波数f2の値は、作動信号S1の周波数f1が共振周波数f2の値に調整されるように発電機120を制御する第1制御装置150に送信される。
【0064】
これに代えて、またはこれに加えて、決定された共振周波数f2の値は、発電機120を制御する第2制御装置160に送信されてもよく、これにより、作動信号S1が工具支持体10内に放射されることによる電力P1は、電力P1’に増加され、電力P1’によって、f1≠f2での励起の場合であっても、共振周波数f2での励起の場合に、機械振動振幅は、最大振幅として達成されるであろう。
【0065】
このようにして、工具先端の機械振動振幅は、ある値で安定されることができ、工具90による加工動作中の精度に有益な効果を与える。ある電力で可能な最大値で振動振幅が安定すると、加工対象物の加工の効率も高くなる。
【0066】
装置の使用者は、作動信号S1が使用者の指令または設定条件が発生した場合にのみ調整されるように、ユーザーインタフェース170を介して第1制御装置150および/または第2制御装置160を制御することができる。使用者は、また、最後に決定された共振周波数f2に基づいて、作動信号S1が規則的または不規則な間隔で自動的に調整されることを決定してもよい。
【0067】
発電機120、読み出し装置(または検出装置)130、分析装置140a、および第1制御装置150は、出力信号を出力し入力信号を受信する装置200に組み合わされてもよく、この装置200の第1出力信号は、作動信号S1に対応し、第2出力信号は、試験信号Stに対応し、入力信号は、検出信号S2に対応する。
【0068】
図6は、例示的な補償回路を有する上述の構成素子の回路図を示す。図6は、工具支持体10内の圧電駆動部、左側に一次巻線32および右側に二次巻線34を有する第1変圧器31~34、および超音波発電機120の等価回路図を示している。機械側では、容量180が変圧器31~34に並列に接続され、容量の値は、継電器190(図示せず)を介して変更可能である。
【0069】
電圧と電流との間の位相シフトに応じて、無効電力は、発電機120と工具支持体10との間を往復し、いかなる機械的作業も行わず、系の加熱にのみ寄与する。無効電力は、容量180によって補償され得る。しかしながら、補償された電気インピーダンスにも周
波数応答性があるので、補償は、作動周波数f1の変化が小さい場合に、容量180の一定値でのみ十分な精度で作動する。作動周波数f1からの共振周波数f2の大きな変化および/または大きなずれの場合には、容量180の値は、継電器190によって対応して切り換えられる。
【0070】
補償回路は、容量および/またはインダクタンスから、並列回路、直列回路、または組み合わせ回路として構成されてもよく、継電器190によって切り替えられてもよい。
【0071】
図7は、例示的な実施形態に係る本発明に係る方法で用いられ得る工具支持体10(工具ヘッド)を含む、本発明の例示的な実施形態に係る工作機械1000の模式図の一例を示す。
【0072】
工作機械1000は、例えば、数値制御可能なフライス盤、数値制御可能な万能フライス盤、または数値制御可能なマシニングセンターとして構成されていてもよい。工具と加工対象物との間の相対運動を制御するために、工作機械は、複数の制御可能な直線軸(通常、X軸、Y軸、および/またはZ軸と呼ばれる)および/または1つ以上の丸軸または回転軸(通常、例えば、A軸、B軸、および/またはC軸と呼ばれる)を有していてもよい。
【0073】
一例として、図7において、工作機械1000は、機械土台1010と、機械台1020と、スピンドルヘッド1030と、を含み、一例として、機械土台1010は、工作台1050を担持し、スピンドルヘッド1030は、作業スピンドル1040を担持する。
【0074】
工作台1050は、例えば、機械土台1010上に水平方向に配置された水平直線ガイド1051上に取り付けられ、水平方向に直線的に変位可能であり、かつ、工作機械1000の第1直線軸の直線駆動部1052を介して制御可能に移動可能である。加工対象物WSは、例えば、加工対象物固定装置1053において工具台上に固定される。
【0075】
スピンドルヘッド1030は、一例として、機械台1020上に垂直方向に配置された垂直直線ガイド1031上に取り付けられ、垂直方向に直線的に変位可能であり、かつ、工具90を保持する工具ヘッド10(工具支持体)を受け入れる作業スピンドル1040を垂直方向に移動させることができるように、工作機械1000の第2直線軸の直線駆動部1032を介して制御可能に移動可能である。
【0076】
さらなる例示的な実施形態では、例えば、図7の図面の平面に垂直な方向において工具に対する加工対象物の直線移動を付加的に可能にするために、1つ以上のさらなる直線軸が設けられていてもよい。
【0077】
さらに、工具台1050を回転させるための回転軸駆動部を有する回転軸(いわゆる回転台)など、1つまたは複数の丸軸または回転軸が設けられていてもよい。工具90の加工対象物WSに対する相対運動は、上述した直線軸、および場合によっては丸軸または回転軸またはそれらの駆動部によって制御されてもよい。
【0078】
この目的のために、工作機械1000の制御装置1100は、機械制御装置1110を含み、機械制御装置1110は、例えば、記憶装置1111に記憶されたNCデータに基づいて、工作機械1000の機能または機械加工処理を制御するように構成された、例えば、CNCまたはNC制御装置1112を含む。さらに、機械制御装置1110は、例えば、PLCまたはSPS装置1113(プログラム可能な論理コントローラー(programmable logic controller)のための「PLC」またはメモリープログラム可能な制御(memory programmable control)のための「SPS」)を含む。
【0079】
PLCまたはSPS装置1113は、特に好ましくは、NC制御装置1112からの、または場合によってはNC制御装置1112から独立した制御指令に基づいて、工作機械のアクチュエーターに制御信号を送信するように構成されており、工作機械のアクチュエーターとしては、例えば、直線軸の直線駆動部1052または1032、または一般的な機械軸の駆動部、または作業スピンドル1040のスピンドル駆動部1042が挙げられる。
【0080】
さらに、PLCまたはSPS装置1113は、加工中に測定された駆動部および/または機械軸の実際の位置を示す工作機械1000の位置測定検出器(図示せず)から、検出信号を受信または読み取り、必要に応じて、それらをNC制御装置1112に送るように構成されている。PLCまたはSPS装置1113は、また、他の機械内部または外部装置または器具が、PLCまたはSPS装置1113上の駆動部および/または機械軸の実際の位置を示す位置データを読み出すことを可能にするように構成されてもよい。
【0081】
上述のスピンドル駆動部1042に加えて、作業スピンドル1040は、工具ヘッド10が受け入れられ、(特に切削動作を発生させるための)スピンドル駆動部1042によって回転駆動され得る工具支持体1041(工具支持部)も含む。
【0082】
工具ヘッド10は、単に模式的に示されており、一例として、工具インターフェース本体14(例えば、工具コーン、急勾配または空洞の軸コーン、あるいはモールス(Morse)コーンまたは他の工具インターフェース)を含み、それによって、工具ヘッド10は、作業スピンドル1040の工具支持体1041上に受け入れられる。例えば、工具ヘッド10は、図1と同様に構成されていてもよい。
【0083】
工具ヘッド10は、一例として、スピンドルヘッド(またはスピンドル)に取り付けられた送信機ユニット32(一次コイルまたは巻線)からの制御信号の非接触または誘導受信のための誘導受信機ユニット32(例えば、図1の二次コイルまたは巻線34に類似する)を含む。
【0084】
一例として、図7において、工具ヘッド10は、アクチュエーター20(例えば、超音波変換器または超音波発生器、場合によっては、例えば、1つまたは複数の圧電素子を含む)と、アクチュエーター20を制御するための検出器40と、をさらに含む。アクチュエーター20は、工具ヘッド10または工具ヘッド10内に受け入れられた工具90を、制御信号に基づいて、好ましくは、例えば、特に超音波周波数、または、特に10kHzを超える、または特に15kHzを超える、例えば60kHzまでの周波数である特に超音波範囲で(特に工具軸92の方向に)振動させるように構成されている。
【0085】
工具ヘッド10は、また、工具受け部11を含み、その上にフライス加工工具90が受け入れられ、または保持されている。工具90は、工具軸92を有し、その周囲に、スピンドル駆動部1042を介して工具が回転駆動される。
【0086】
アクチュエーター20を駆動するために、または工具90の振動を制御または調整するために、工作機械1000の制御装置1100は、さらなる制御装置1120(超音波変換器制御)を含み、制御装置1120は、検出器40からの検出信号に基づいて制御信号を生成し(振動制御)、それを、アクチュエーター20のための受信装置34に送信するために、送信機ユニット32を介して工具ヘッド10に出力する。さらなる例示的な実施形態では、制御装置1120は、また、機械制御装置1110に統合されてもよく、および/またはコンピューターなどの外部データ処理装置を含んでいてもよく、またはコンピューターなどの外部接続されたデータ処理装置によって形成されていてもよい。
【0087】
制御装置1120は、一例として、アクチュエーター20に出力される高周波制御信号を生成するための発電機1124(例えば、アナログ的な上述の発電機120)を含む。制御信号の周波数は、高周波(すなわち、特に10kHzより大きい周波数、好ましくは15kHzより大きい周波数)であり、超音波範囲内にあることが好ましい。
【0088】
発電機1124は、例えば、コントローラーユニット1123に接続され、コントローラーユニット1123は、コントローラーユニットに出力される検出器40からの検出信号に基づいて、発電機1124の動作を制御するように構成されている。制御は、例えば、上述した態様と同様に行われてもよい。
【0089】
さらに、制御装置1120は、一例として、パラメーターデータを記憶するための記憶装置1121を含み、パラメーターデータは、特に、アクチュエーター20(超音波変換器)を制御するための基礎として制御装置1120によって用いられる制御パラメーターを含む。
【0090】
制御装置1120は、また、一例として、記憶装置1121からデータを読み出して処理するように構成されたデータ処理装置1122を含む。特に、データ処理装置1122は、記憶装置1121からパラメーターデータを読み出し、発電機124の動作を制御するための基礎としてコントローラー1123に入力される制御パラメーターを決定するように構成されている。
【0091】
本発明の例示的な実施形態によれば、複数のパラメーターセットをパラメーターデータとして記憶装置1121に記憶することが考えられ、パラメーターセットの各々は、異なる工具、異なる超音波変換器、異なる工具支持体、および異なる種類または条件の加工に関連付けられる。
【0092】
特に、データ処理装置1122は、現在用いられている工具、工具支持体、超音波変換器に基づいて、特に現在の加工の種類に基づいて、または現在の加工条件に基づいて、記憶装置1121から適切なパラメーターセットを読み出し、対応する制御パラメーターをコントローラー1123に出力するように構成されていることが好ましい。
【0093】
この目的のために、好ましくは、加工に応じて変更されたパラメーターセットに基づいてコントローラー1123を調整するために、加工前または加工中にパラメーターセットの変更を行うことが可能である。
【0094】
一例として、パラメーターセットの変更は、工作機械1000上で工具が交換される処理中に行われてもよく、挿入される工具、工具支持体、および/またはその超音波変換器に対応する変更されたパラメーターセットは、記憶装置1121内で読み出され、コントローラー1123で設定される。
【0095】
一例として、パラメーターセットの変更は、工作機械1000での処理中に行われてもよく、変更された処理条件または変更された処理の種類に対応する変更されたパラメーターセットは、記憶装置1121上で読み出され、コントローラー1123で設定される。
【0096】
背景情報(background information)については、図8図9A、および図9Bを参照し、各々は、周波数の関数として異なるインピーダンス曲線または位相曲線を示す。
【0097】
図8は、特に、一例として、異なる工具(A:開かれたフライス加工工具(open-milling tool)、B:閉じられたフライス加工工具(closed-milling tool)、C:ブラックフ
ライス加工工具(schw-milling tool))のための約15kHzから約60kHzまでの広い周波数範囲にわたる周波数の関数として、異なるインピーダンスプロファイルまたは関連する位相プロファイルを示す。
【0098】
ここで、工具が異なれば、時として、インピーダンスプロファイルまたは関連する位相プロファイルが非常に異なる場合があり、部分的に、それぞれの極小値または極大値におけるインピーダンスまたは位相スパイクが非常に異なる場合があり、また、シフトされた共振周波数を有する場合があることが分かる。特に、複数の極大値または極小値、すなわち複数の共振が生じることに留意されたい。
【0099】
一般に、位相プロファイルは、共振点において極小値を有し、その結果、位相は、発電機120または発電機1124を共振点に制御するための制御変数として適切である。それぞれのインピーダンス曲線は、まず極大(並列共振)となり、次に各共振点で極小(直列共振)となる。極大と極小との順序は、誘導エネルギー伝達に起因する。変圧器を用いない直接接続の場合、順序は、常に正確に逆になる(極小値-極大値)。
【0100】
例示的な実施形態によれば、発電機の制御は、コントローラー1123が周波数の設定を試みるように構成され、コントローラー1123は、超音波変換器またはアクチュエーター20が共振点のインピーダンス極大の周波数で動作するように、構成されている。
【0101】
しかしながら、異なる曲線が図8で見られ得ることに留意されたい。図8は、一例として、常に同じ送信機を備えた同じアクチュエーター20に由来している。一般に、以下の要因が曲線の精密な特質に影響を及ぼすことがある。
・送信機と受信機との間の空隙の大きさ
・アクチュエーターおよび送信機の製造における機械的公差
・アクチュエーターおよび送信機の製造における電気的公差
・機械内で起こりうる障害
【0102】
個々のインピーダンス曲線の違いが、(a)公差および老朽の影響に起因して、および(b)様々な異なる工具の使用に起因して、生じ得るという事実によって、以下の手段が例示的な実施形態によって提案される。
【0103】
共振点を決定する目的で、周波数走査は、位相曲線における極小値を探索するために、発電機120/1224によって、より広い周波数範囲にわたって行われ得る。位相曲線におけるこれらの極小値は、一般的に十分に顕著であり(図8参照)、したがって、周波数走査において決定され得る。
【0104】
一般的に、複数の極小値(図8参照)は、例えば15kHzおよび60kHzのような、より大きなプリセット周波数範囲内にあり、そのため、周波数走査においていくつかの極小値が見つかった場合、区別されて、適切な共振点が選択され得る。
【0105】
周波数走査を介した周波数決定に関して、発電機は、どの位相差が共振点として分類されるべきかについての仕様を与えられてもよい。例えば、極大深度および/または極小深度は、指定されてもよく、または予め決定されてもよい。特に、極小深度以下の極小値は、「ノイズ」として無視されてもよい。
【0106】
異なるアクチュエーター20(例えば、異なる工具90も有する)は、次に異なる深度の極小値を生成してもよい。
【0107】
作業中、コントローラー1123は、発電機1124を駆動または制御して、周波数が
共振するように作業中の周波数を設定するべきである(周波数制御)。この目的のために、検出器40の検出信号の位相は、制御変数として用いられてもよい。
【0108】
一方、コントローラー1123は、共振において、発電機が一定の電流振幅をアクチュエーターに出力するように設定されていてもよく、これは、一定の電流振幅が物理的に一定の振動振幅に関連付けられるためである(電流制御)。
【0109】
しかしながら、オームの法則により、発電機は、所与の最大出力電圧Uで、最大電流I=U/Rで駆動することしかできない。所望の出力電流(例えば、作業員によって指定される)がこの値を超える場合、コントローラーは、指定された値に到達可能な状態がないので、不安定になることがある。
【0110】
逆に、最大出力電圧は、ある限度までしか指定されることができず、さもなければ、0Vと最大電圧との間の所与の段階数に対して、分解能は、コントローラーにとって不必要に劣化する。
【0111】
純粋なインピーダンス/位相パラメーターに加えて、用いられるPIDコントローラーのパラメーター、ならびに周波数および/または電流コントローラーを設定するための潜在的なさらなるパラメーターも役割を果たす。PIDコントローラーの場合、正確な処理を可能にするために、制御される系に最適なまたは適応された制御の基礎となるパラメーターの設計が好ましい。
【0112】
用いられ得る様々なアクチュエーター、および用いられる様々な工具のために、ならびに異なる加工状況または加工条件または加工の種類のために、汎用的なパラメーターセットは、適切ではない。
【0113】
好ましくは、制御装置1120は、作業員が、特定のアクチュエーターを有する、または適切であれば、特定の工具を備えた工具支持体を、設置することを可能にする機能を有する。設置中、適切なパラメーターは、アクチュエーターの駆動を後で制御するための基礎として、場合によっては特定の工具と関連して、決定され、選択され、設定されてもよく、または記憶装置1121に記憶されてもよい。
【0114】
ここでは、例えば、周波数走査は、非常に広い周波数範囲(可能であれば広い範囲にわたって予め規定可能な周波数範囲で、可能であれば発電機の技術的帯域幅全体まで、)にわたって行われる。次に、発見された共振点の全ては、個々に検査されてもよく、これは、特に、可能であれば特定の工具と併せて、設定される工具支持体またはアクチュエーターで機械を作動させるためにどの共振点が適しているかを選択するためである。これには、様々な可能性がある。
(1)減衰の場合、例えば工具を持ち上げて、試験加工対象物に作用させ、例えば適切な共振のみが残る(他は減衰する)。可能な設定方法は、減衰を有する全ての共振を観察または走査し、曲線を比較することによって不適切な共振を選別する。
(2)実際の機械振動は、実施された振動振幅に基づいて適切な共振を選択するために、機械内の光学的(または他の)方法を用いて測定され得る。不適切な共振点は、例えば、振動形状に基づいて選別されてもよい。
(3)振動は、規定された時間にわたってそれぞれの共振点で発生されることができ、時間に依存する各共振点での振動の挙動が、観察されることができる。時間的な挙動が従来の温度ドリフトに対応する場合、対応する共振点は、適切なものとして選択され得る。
(4)追加の検出器(例えば、変圧器上の温度検出器)は、不適切な共振点を選別するために、振動がオンになっているときの偏差(例えば、変圧器上の熱発生による過剰な電力損失)を検出することができる。
【0115】
複数の共振点から適切な共振点を選択するために、上記の選択方法のうちの1つ以上を用いることも可能である。
【0116】
適切な共振点が選択された後、作動中の発電機の周波数範囲は、特に適切な範囲にさらなる共振がないように、選択された共振点の周辺の適切な範囲に制限されてもよい。
【0117】
一例として、図9Aおよび図9Bを参照する。図9Aは、例えば、約17kHzから約35kHzまでの広い周波数範囲にわたるインピーダンスプロファイルおよび関連する位相プロファイルを示し、特に、2つのより大きな位相極小値(共振点)は、周波数走査において認識可能である。ここで、図9B(約21.9kHzの小さな共振点は、設定可能な最小深度より下の最小深度を有しているため、ここではノイズとして無視され得る)に示すように、次に、一例として共振点が選択され、選択された共振点の周辺で選ばれてそれ以外の共振点を含まない周波数範囲は、下限値UGおよび上限値OGを介して設定され得る。
【0118】
その結果、発電機は、選択された周波数範囲内での共振周波数の実際の変化(例えば、減衰、加熱による)にのみ応答してもよいが、誤った共振点に誤って流入することはない。
【0119】
さらに、インピーダンス/位相測定が行われてもよい。それに基づいて、極大インピーダンスも決定され、発電機の最大出力電圧は、(開閉器によって)必要に応じて選択される。測定は、特別な測定回路によって、または、振動を活性化し、作動中に全ての関連する変数を測定することによって行われる。
【0120】
コントローラー1123は、周波数コントローラーおよび電流コントローラー(例えば、PIDコントローラーに基づく)を含んでもよい。
【0121】
入力変数(例えば、周波数制御のための位相および/または電流制御のための電流)における変化に対するコントローラー1123の応答は、複数のコントローラー定数(例えば、PIDコントローラー定数)によって設定されることができ、例えば、3つの定数(発信元(source)に応じて、例えば、Kp、Ti、またはTdとして指定される)によって決定される。
【0122】
さらに、入力変数の不感帯を定義することもでき、すなわち、変化は、不感帯幅よりも大きい場合にのみ考慮される。不感帯内にわずかな変化がある場合、コントローラー1123は、機能していない状態のままであってもよい(実質的にオフに切り替えられる)。
【0123】
このような設定状態は、好ましくは特定の工具と連結した(送信機およびアクチュエーターを備えた)工具支持体の特定の組み合わせのための適切なパラメーターセットを決定するために決定される。本発明の例示的な実施形態において、特に好ましくは、送信機およびアクチュエーターを備え、好ましくはある工具と接続している工具支持体の複数の特定の組み合わせに対して、それぞれの設定動作が行われ、それぞれのパラメーターセットは、記憶装置1121に記憶される。
【0124】
これは、また、工作機械製造業者の側で前々から行われることができ、そのようなパラメーターセットは、工作機械のパラメーターデータとして予め記憶されることができ、または後で読み込まれることができる。さらに、これは、新しいパラメーターセットを記憶装置1121に記憶するために、工作機械の作業員によって行われることもできる。用いられる系に応じて、これらのパラメーターセットは、例えば、処理中の対応する工具交換
の場合に、または作業員によって工作機械上に工具を設置する場合に、呼び出され得る。
【0125】
さらに、異なる工具、超音波変換器を備えたそれぞれの工具支持体(アクチュエーター)、または異なる加工条件、または穿孔加工、フライス加工などの加工の種類のための工具支持体と工具支持体との特定の組み合わせのために、異なるパラメーターセットが記憶されてもよい。穿孔加工は、通常、加工対象物の材料に出入りするときに急激な負荷の変化を生じ、これに対して、コントローラーは、迅速に反応する必要がある。フライス加工は、通常、より均一でより遅い荷重変化を生じさせる。コントローラーが動的すぎる場合、それは、揺れて不安定になる可能性がある。
【0126】
特に、加工の種類または条件に応じて、工作機械での加工中にそれぞれの加工に依存するパラメーターセットを変更すること、または、工作機械での加工中にそれぞれの加工に依存するパラメーターセットを切り替えることが可能である。これは、データ処理装置1122を介して自動的に行われることもでき、データ処理装置1122は、例えば現在のNCデータの仕様に応じて(例えば、現在実行されているNCプログラムに基づいて)加工の種類を変更する場合に記憶装置1121から対応するパラメーターセットを読み取り、それに応じてコントローラー1123を設定または切り替える。
【0127】
以上、添付図面を参照して、本発明の実施例および実施例ならびにそれらの利点を詳細に説明した。本発明は、決して、上記の例示的な実施形態およびそれらの実施特徴に制限または限定されず、代わりに、例示的な実施形態の変形例、特に、記載された実施例の特徴の変形によって、または記載された実施例の特徴の1つ以上の組合せによって、独立請求項の範囲内に含まれるものを、さらに含むことが再び強調されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B