(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物の光硬化物及び感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/28 20060101AFI20240613BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240613BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
H05K3/28 D
G03F7/004 501
G03F7/031
(21)【出願番号】P 2022021545
(22)【出願日】2022-02-15
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】堀沢 和寛
(72)【発明者】
【氏名】岡本 吉生
(72)【発明者】
【氏名】藤田 夏鈴
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-043411(JP,A)
【文献】特許第6979557(JP,B1)
【文献】特開2020-034784(JP,A)
【文献】特開2019-168613(JP,A)
【文献】国際公開第2020/045024(WO,A1)
【文献】特開2023-029239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
G03F 7/004
G03F 7/031
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)感光性樹脂と、(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤と、(C)光反応安定化剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)無機イオン交換体と、(F)反応性希釈剤と、(G)着色剤と、を含み、
前記(C)光反応安定化剤が、下記一般式(1)
【化1】
(式(1)中におけるR
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ、独立して、Hまたはアルキル基を示す。)で表される化合物を含
み、
前記(C)光反応安定化剤が、前記(A)感光性樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上10質量部以下含まれる感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記一般式(1)中におけるR
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ、独立して、C
nH
2n+1であり、nは1~10の整数である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)光反応安定化剤が、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン及び4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択されたベンゾフェノン誘導体の少なくとも1種を含む請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)光反応安定化剤が、前記(A)感光性樹脂100質量部に対して、
1.0質量部以上5.0質量部以下含まれる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)光反応安定化剤が、前記(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤100質量部に対して、15質量部以上200質量部以下含まれる請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(E)無機イオン交換体が、ジルコニア化合物、アルミニウム化合物とジルコニア化合物の混合物、ビスマス化合物、及びビスマス化合物とジルコニア化合物の混合物からなる群から選択された少なくとも1種を含む請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(E)無機イオン交換体が、アルミニウム化合物とジルコニア化合物の混合物を含む請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(E)無機イオン交換体が、前記(A)感光性樹脂100質量部に対して、3.0質量部以上30質量部以下含まれる請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤が、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンを含む請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤が、前記(A)感光性樹脂100質量部に対して、0.50質量部以上10質量部以下含まれる請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
さらに、オキシムエステル系光重合開始剤を含む請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
前記オキシムエステル系光重合開始剤が、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシムを含む請求項
11に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1乃至
12のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の光硬化物。
【請求項14】
請求項1乃至
12のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆材料、例えば、プリント配線板に形成された導体回路パターンを被覆するための絶縁被覆材料に適した感光性樹脂組成物、前記感光性樹脂組成物の光硬化物、前記感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の基板上には、銅箔等の導体回路パターンが形成され、導体回路パターンのはんだ付けランドに電子部品をはんだ付けにより搭載し、はんだ付けランドを除いた導体回路の部分は、保護膜としての絶縁被膜で被覆される。これにより、プリント配線板に電子部品をはんだ付けする際に、はんだが不必要な部分に付着するのを防止すると共に、回路導体が空気に直接曝されて酸化や湿度により腐食されるのを防止する。
【0003】
従来、絶縁被膜の絶縁信頼性を向上させるために、絶縁被覆材料である感光性樹脂組成物に無機イオン交換体が使用されていた。無機イオン交換体が配合されることで絶縁信頼性を向上させた感光性樹脂組成物として、(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、(B)光重合開始剤、(C)Zr、Bi、Mg及びAlからなる群から選ばれる少なくとも1種を有する無機イオン交換体、(D)光重合性化合物を含有する感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
【0004】
一方で、近年、技術進歩に伴い、エレクトロニクス分野では、小型化、軽量化への要求が一層増し、これに伴い、より小型化された電子部品を高密度に配置するために、プリント配線板の導体回路パターンのファインピッチ化、微細化が求められている。これに応じて、絶縁被膜についても、ファインピッチ化、解像性等の特性について、より高性能のものが要求されている。さらに、近年、プリント配線板の絶縁被膜上にシールドフィルム等の導電性を有する別材料を接触させた場合でも、優れた絶縁信頼性、特に、絶縁被膜の厚さ方向における絶縁信頼性を有する絶縁被膜も要求されている。
【0005】
しかし、絶縁信頼性を向上させるために無機イオン交換体が配合されているのみの特許文献1では、ファインピッチ化された絶縁被膜では、絶縁信頼性に改善の余地があった。また、導電性を有する別材料を接触させた絶縁被膜では、やはり、絶縁信頼性、特に、絶縁被膜の厚さ方向における絶縁信頼性に改善の余地があった。
【0006】
また、プリント配線板に汎用性を付与するために、プリント配線板に形成されている絶縁被膜の表面に対して、金めっき処理等の表面処理を行うことがある。しかし、アルカリ溶液で現像した絶縁被膜の表面に対して金めっき処理を行うと、絶縁被膜の硬化性と基板に対する密着性が低下することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、感光性樹脂組成物の貯蔵安定性を損なうことなく、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を有する硬化物を得ることができる感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1](A)感光性樹脂と、(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤と、(C)光反応安定化剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)無機イオン交換体と、(F)反応性希釈剤と、(G)着色剤と、を含み、
前記(C)光反応安定化剤が、下記一般式(1)
【化1】
(式(1)中におけるR
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ、独立して、Hまたはアルキル基を示す。)で表される化合物を含む感光性樹脂組成物。
[2]前記一般式(1)中におけるR
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ、独立して、C
nH
2n+1であり、nは1~10の整数である[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]前記(C)光反応安定化剤が、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン及び4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択されたベンゾフェノン誘導体の少なくとも1種を含む[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記(C)光反応安定化剤が、前記(A)感光性樹脂100質量部に対して、0.10質量部以上10質量部以下含まれる[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[5]前記(C)光反応安定化剤が、前記(A)感光性樹脂100質量部に対して、0.50質量部以上5.0質量部以下含まれる[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[6]前記(C)光反応安定化剤が、前記(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤100質量部に対して、15質量部以上200質量部以下含まれる[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[7]前記(E)無機イオン交換体が、ジルコニア化合物、アルミニウム化合物とジルコニア化合物の混合物、ビスマス化合物、及びビスマス化合物とジルコニア化合物の混合物からなる群から選択された少なくとも1種を含む[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[8]前記(E)無機イオン交換体が、アルミニウム化合物とジルコニア化合物の混合物を含む[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[9]前記(E)無機イオン交換体が、前記(A)感光性樹脂100質量部に対して、3.0質量部以上30質量部以下含まれる[1]乃至[8]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[10]前記(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤が、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンを含む[1]乃至[9]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[11]前記(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤が、前記(A)感光性樹脂100質量部に対して、0.50質量部以上10質量部以下含まれる[1]乃至[10]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[12]さらに、オキシムエステル系光重合開始剤を含む[1]乃至[11]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[13]前記オキシムエステル系光重合開始剤が、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシムを含む[12]に記載の感光性樹脂組成物。
[14][1]乃至[13]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物の光硬化物。
[15][1]乃至[13]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤と、(C)上記一般式(1)で表される光反応安定化剤と、(E)無機イオン交換体と、を含むことにより、感光性樹脂組成物の貯蔵安定性を損なうことなく、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を有する硬化物を得ることができる。このように、本発明の感光性樹脂組成物では、優れた絶縁信頼性が得られるので、ファインピッチ化された絶縁被膜、導電性を有する別材料を接触させた絶縁被膜であっても、絶縁被膜の厚さ方向の絶縁信頼性を含めて優れた絶縁信頼性を得ることができる。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、上記一般式(1)中におけるR1、R2、R3、R4は、それぞれ、独立して、CnH2n+1であり、nは1~10の整数であることにより、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を有する硬化物をより確実に得ることができる。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(C)光反応安定化剤が、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン及び4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択されたベンゾフェノン誘導体の少なくとも1種を含むことにより、さらに確実に、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を得ることができる。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(C)光反応安定化剤が、前記(A)感光性樹脂100質量部に対して、0.10質量部以上10質量部以下含まれることにより、優れた絶縁信頼性を確実に得ることができる。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(C)光反応安定化剤が、前記(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤100質量部に対して、15質量部以上200質量部以下含まれることにより、さらに確実に、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を得ることができる。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(E)無機イオン交換体が、ジルコニア化合物、アルミニウム化合物とジルコニア化合物の混合物、ビスマス化合物、及びビスマス化合物とジルコニア化合物の混合物からなる群から選択された少なくとも1種を含むことにより、さらに確実に、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を得ることができる。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(E)無機イオン交換体が、アルミニウム化合物とジルコニア化合物の混合物を含むことにより、絶縁信頼性がさらに向上する。
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(E)無機イオン交換体が、前記(A)感光性樹脂100質量部に対して、3.0質量部以上30質量部以下含まれることにより、さらに確実に、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を得ることができる。
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、前記(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤が、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンを含むことにより、感光性樹脂組成物の貯蔵安定性がさらに向上する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の感光性樹脂組成物について、以下に説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)感光性樹脂と、(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤と、(C)光反応安定化剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)無機イオン交換体と、(F)反応性希釈剤と、(G)着色剤と、を含み、前記(C)光反応安定化剤が、下記一般式(1)
【化2】
(式(1)中におけるR
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ、独立して、Hまたはアルキル基を示す。)で表される化合物を含む。本発明の感光性樹脂組成物では、感光性樹脂組成物の貯蔵安定性を損なうことなく、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を有する硬化物を得ることができる。このように、本発明の感光性樹脂組成物では、優れた絶縁信頼性が得られるので、ファインピッチ化された絶縁被膜、導電性を有する別材料を接触させた絶縁被膜であっても、絶縁被膜の厚さ方向の絶縁信頼性を含めて優れた絶縁信頼性を得ることができる。
【0020】
<(A)感光性樹脂>
(A)成分である感光性樹脂は、感光性樹脂組成物のベース樹脂である。(A)成分である感光性樹脂の構造は、特に限定されず、例えば、カルボキシル基含有感光性樹脂を挙げることができる。カルボキシル基含有感光性樹脂としては、感光性の不飽和二重結合を1個以上と遊離のカルボキシル基とを有する樹脂が挙げられる。カルボキシル基含有感光性樹脂としては、例えば、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基に多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる構造を有する多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0021】
多官能エポキシ樹脂
多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されず、例えば、その上限値は、3000g/eqが好ましく、2000g/eqがより好ましく、1000g/eqがさらに好ましく、500g/eqが特に好ましい。一方で、多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量の下限値は、100g/eqが好ましく、200g/eqが特に好ましい。多官能エポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オルト-クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸(以下、アクリル酸及び/またはメタクリル酸を「(メタ)アクリル酸」ということがある。)、クロトン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸などを挙げることができる。これらのうち、取り扱いが容易である点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
多塩基酸及び/または多塩基酸無水物
多塩基酸及び/または多塩基酸無水物が、不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の水酸基に付加反応することで、感光性樹脂に遊離のカルボキシル基が導入される。多塩基酸及び/または多塩基酸無水物は、特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用可能である。多塩基酸には、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、3-エチルテトラヒドロフタル酸、4-エチルテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸等のテトラヒドロフタル酸類、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸等のヘキサヒドロフタル酸類、トリメリット酸、ピロメリット酸、ジグリコール酸等が挙げられる。また、多塩基酸無水物としては、上記した多塩基酸の無水物が挙げられる。これらの多塩基酸、多塩基酸無水物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂もカルボキシル基含有感光性樹脂として使用できるが、上記多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂のカルボキシル基の一部に、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物を付加反応させて得られる化学構造を有する、ラジカル重合性不飽和基をさらに導入した多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を使用してもよい。ラジカル重合性不飽和基をさらに導入した多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂は、多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の側鎖にラジカル重合性不飽和基がさらに導入されている化学構造を有しているので、多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂よりも、感光性がさらに向上した特性を有している。
【0025】
1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物としては、例えば、グリシジル化合物を挙げることができる。グリシジル化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレートモノグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリメタクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。グリシジル化合物1分子中に、グリシジル基は1つでもよく、複数有していてもよい。上記した1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
また、カルボキシル基含有感光性樹脂としては、例えば、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂とカルボキシル基1つあたりの炭素数が8以上である少なくとも1種の直鎖状または分岐状脂肪族カルボン酸とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応生成物である不飽和カルボン酸化エポキシ樹脂に、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を付加させて得られる化学構造を有する、長鎖炭化水素構造を有する多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を使用してもよい。
【0027】
長鎖炭化水素構造を有する多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の多官能エポキシ樹脂としては、上記した多官能エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0028】
カルボキシル基1つあたりの炭素数が8以上である直鎖状または分岐状脂肪族カルボン酸は、多官能エポキシ樹脂のエポキシ基に反応することで、多官能エポキシ樹脂に上記脂肪族カルボン酸由来の長鎖炭化水素構造が導入される。多官能エポキシ樹脂に上記脂肪族カルボン酸由来の長鎖炭化水素構造が導入されることで、感光性樹脂を含む感光性樹脂組成物の硬化物に、優れた折り曲げ性をさらに付与することができる。カルボキシル基1つあたりの炭素数が8以上である直鎖状または分岐状脂肪族カルボン酸は、特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用可能である。上記脂肪族カルボン酸には、例えば、炭素数が8以上の一塩基酸、炭素数16以上の二塩基酸が挙げられ、折り曲げ性と指触乾燥性を得る点から、上記一塩基酸及び二塩基酸は、直鎖状または炭素数2以下の側鎖を2本以下有する分岐状が好ましい。
【0029】
カルボキシル基1つあたりの炭素数が8以上である直鎖状または分岐状脂肪族カルボン酸は、特に限定されず、例えば、一塩基酸としては、カプリル酸(C8)、カプリン酸(デカン酸:C10)、ウンデシル酸(C11)、ラウリン酸(ドデカン酸:C12)、トリデシル酸(C13)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデシル酸(C15)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸:C16)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸:C17)、ステアリン酸(C18)、ツベルクロスステアリン酸(C19)、アラキジン酸(C20)、ベヘニン酸(C22),トリコシル酸(C23)、テトラコサン酸(C24)、ヘキサコサン酸(C26)、オクタコサン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)等が挙げられる。
【0030】
また、二塩基酸としては、例えば、ヘキサデカン二酸(C16)、エイコサン二酸(C20)、エチルオクタデカン二酸(C20)、エイコサジエン二酸(C20)、ビニルオクタデカエン二酸(C20)、ジメチルエイコサジエン二酸(C22)、ジメチルエイコサン二酸(C22)、ジフェニルヘキサデカン二酸(C28)、オレイン酸(C18)等の不飽和脂肪酸の二量体化反応によるC36ダイマー酸等を挙げることができる。上記したカルボキシル基1つあたりの炭素数が8以上である直鎖状または分岐状脂肪族カルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、必要に応じて、カルボキシル基1つあたりの炭素数が8以上である直鎖状または分岐状脂肪族カルボン酸と、カルボキシル基1つあたりの炭素数が7以下である直鎖状または分岐状脂肪族カルボン酸を併用してもよい。
【0031】
カルボキシル基含有感光性樹脂中における、カルボキシル基1つあたりの炭素数が8以上である直鎖状または分岐状脂肪族カルボン酸の割合(仕込み割合)は、特に限定されないが、その下限値は、折り曲げ性をさらに向上させつつ、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の導入量を調整して固形分酸価を調整する点から、15質量%が好ましく、18質量%が特に好ましい。一方で、カルボキシル基1つあたりの炭素数が8以上である直鎖状または分岐状脂肪族カルボン酸の割合の上限値は、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の導入量(すなわち、感光性)を維持しつつ、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の導入量を調整して固形分酸価を調整する点から、25質量%が好ましく、20質量%が特に好ましい。
【0032】
長鎖炭化水素構造を有する多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸としては、上記したラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を挙げることができる。ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の割合(仕込み割合)は、特に限定されないが、その下限値は、感度を確実に得つつ、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の導入量と固形分酸価を調整する点から、2.0質量%が好ましく、3.0質量%が特に好ましい。一方で、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の割合の上限値は、カルボキシル基1つあたりの炭素数が8以上である直鎖状または分岐状脂肪族カルボン酸の導入量を維持しつつ、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の導入量を調整して固形分酸価を調整する点から、10質量%が好ましく、5.0質量%が特に好ましい。
【0033】
長鎖炭化水素構造を有する多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の多塩基酸及び/または多塩基酸無水物としては、上記した多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を挙げることができる。カルボキシル基含有感光性樹脂中における、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の割合(仕込み割合)は、特に限定されないが、その下限値は、良好なアルカリ現像性と固形分酸価を調整する点から、7.0質量%が好ましく、9.0質量%が特に好ましい。一方で、多塩基酸及び/または多塩基酸無水物の割合の上限値は、優れた絶縁信頼性をより確実に維持し、固形分酸価を調整する点から、16質量%が好ましく、14質量%が特に好ましい。
【0034】
カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価は、特に限定されず、例えば、その下限値は、確実にアルカリ現像性を付与する点から、30mgKOH/gが好ましく、40mgKOH/gが特に好ましい。一方で、カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価の上限値は、アルカリ現像液による露光部(光硬化部)の溶解防止の点から、200mgKOH/gが好ましく、光硬化物の絶縁信頼性を確実に向上させる点から、150mgKOH/gが特に好ましい。
【0035】
感光性樹脂の質量平均分子量は、特に限定されず、使用条件等により適宜選択可能であり、例えば、その下限値は、光硬化物の強靭性及び指触乾燥性を確実に向上させる点から、6000が好ましく、7000がより好ましく、8000が特に好ましい。一方で、感光性樹脂の質量平均分子量の上限値は、200000が好ましく、100000がより好ましく、50000が特に好ましい。なお、上記「質量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、常温で測定し、ポリスチレン換算にて算出される質量平均分子量を意味する。
【0036】
感光性樹脂は、上記各成分を用いて上記反応工程にて調製してもよく、上市されている感光性樹脂を使用してもよい。上市されている感光性樹脂として、例えば、「SP-4621」(昭和電工株式会社)、「ZAR-2000」、「ZFR-1122」、「ZFR-1887」、「FLX-2089」、「ZCR-1569H」(以上、日本化薬株式会社)、「サイクロマーP(ACA)Z-250」(株式会社ダイセル)等のカルボキシル基含有感光性樹脂を挙げることができる。
【0037】
<(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤>
光重合開始剤として、(B)成分であるα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤を含むことにより、後述する(C)下記一般式(1)で表される光反応安定化剤及び(E)無機イオン交換体とあいまって、貯蔵安定性を損なうことなく、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を有する硬化物を得ることに寄与する。
【0038】
α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば、下記一般式(2)
【化3】
(式(2)中におけるRは、水素または炭素数1~5個のアルキル基を表す。)で表される化合物を挙げることができる。このうち、貯蔵安定性を損なうことなく、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を有する硬化物を得ることに確実に寄与する点から、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-ベンジル-1-ブタノン(式(2)中におけるRが水素)、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノン(式(2)中におけるRがメチル基)が好ましく、感光性樹脂組成物の貯蔵安定性がさらに向上する点から、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンが特に好ましい。
【0039】
α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、感光性樹脂100質量部(固形分。以下同じ。)に対して、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を有する硬化物を得ることに確実に寄与する点から、0.50質量部が好ましく、1.0質量部がより好ましく、1.5質量部が特に好ましい。一方で、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤の配合量の上限値は、感光性樹脂100質量部に対して、感光性樹脂組成物の硬化塗膜に優れた耐熱性を確実に付与する点から、10質量部が好ましく、7.0質量部がより好ましく、5.0質量部が特に好ましい。
【0040】
<(C)光反応安定化剤>
本発明では、(C)成分である光反応安定化剤として、下記一般式(1)
【化4】
(式(1)中におけるR
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ、独立して、Hまたはアルキル基を示す。)で表されるベンゾフェノン誘導体を含む。上記ベンゾフェノン誘導体は、(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及び(E)無機イオン交換体とあいまって、貯蔵安定性を損なうことなく、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を有する硬化物を得ることに寄与する。(C)成分である光反応安定化剤は、(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及び(E)無機イオン交換体とあいまって、優れた絶縁信頼性を有する硬化物を得ることができるので、ファインピッチ化された絶縁被膜、導電性を有する別材料を接触させた絶縁被膜であっても、絶縁被膜の厚さ方向の絶縁信頼性を含めて優れた絶縁信頼性を得ることに寄与する。
【0041】
(C)成分の光反応安定化剤としては、例えば、ジアミノベンゾフェノン及びビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択された少なくとも1種のベンゾフェノン誘導体が挙げられる。ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンのアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を有する硬化物をより確実に得ることができる点から、炭素数1~10のアルキル基(すなわち、一般式(1)中におけるR1、R2、R3、R4が、それぞれ、独立して、CnH2n+1であり、nは1~10の整数)であるベンゾフェノン誘導体が好ましく、炭素数1~5のアルキル基(一般式(1)中におけるR1、R2、R3、R4が、それぞれ、独立して、CnH2n+1であり、nは1~5の整数)であるベンゾフェノン誘導体がより好ましく、炭素数1~3のアルキル基(一般式(1)中におけるR1、R2、R3、R4が、それぞれ、独立して、CnH2n+1であり、nは1~3の整数)であるベンゾフェノン誘導体が特に好ましい。これらのベンゾフェノン誘導体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
このうち、(C)成分の光反応安定化剤としては、さらに確実に、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を得ることができる点から、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン及び4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択されたベンゾフェノン誘導体の少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0043】
(C)成分の光反応安定化剤の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、感光性樹脂100質量部に対して、優れた絶縁信頼性を確実に得ることができる点から、0.10質量部が好ましく、0.30質量部がより好ましく、0.50質量部がさらに好ましく、絶縁信頼性がさらに向上する点から、1.0質量部が特に好ましい。一方で、(C)成分の光反応安定化剤の配合量の上限値は、優れた解像性を確実に得る点から、10質量部が好ましく、5.0質量部がより好ましく、4.0質量部が特に好ましい。
【0044】
(C)成分である光反応安定化剤と(B)成分であるα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤の配合比率は、特に限定されないが、さらに確実に、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を得ることができる点から、(C)成分の光反応安定化剤が、(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤100質量部に対して、15質量部以上200質量部以下の範囲で含まれることが好ましく、20質量部以上150質量部以下の範囲で含まれることが特に好ましい。
【0045】
<(D)エポキシ化合物>
(D)成分であるエポキシ化合物は、感光性樹脂組成物の光硬化物の架橋密度を上げて十分な強度を光硬化物に付与するためのものである。エポキシ化合物としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、上記したカルボキシル基含有感光性樹脂の調製に使用する多官能エポキシ樹脂と同じエポキシ樹脂を挙げることができる。具体的には、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オルト-クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
エポキシ化合物の配合量は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物の光硬化後に十分な強度の塗膜を得る点から、感光性樹脂100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下が好ましく、20質量部以上70質量部以下が特に好ましい。
【0047】
<(E)無機イオン交換体>
(E)成分の無機イオン交換体は、イオン補足剤であり、(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及び(C)成分の光反応安定化剤とあいまって、貯蔵安定性を損なうことなく、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を有する硬化物を得ることに寄与する。(E)成分の無機イオン交換体は、(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及び(C)成分の光反応安定化剤とあいまって、優れた絶縁信頼性を有する硬化物を得ることができるので、ファインピッチ化された絶縁被膜、導電性を有する別材料を接触させた絶縁被膜であっても、絶縁被膜の厚さ方向の絶縁信頼性を含めて優れた絶縁信頼性を得ることに寄与する。
【0048】
無機イオン交換体としては、陽イオン交換体(陽イオン交換タイプ)、陰イオン交換体(陰イオン交換タイプ)、両イオン交換体(両イオン交換タイプ)からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0049】
無機イオン交換体は、反対電荷のイオンを取り込んでイオン交換を行うことで、本発明の感光性樹脂組成物中に残っているナトリウムイオンや塩素イオン等のイオン性不純物を捕捉固定するとともに、電圧を印加することでイオンとなり移動する金属イオンを捕捉固定する。無機イオン交換体が、イオン性不純物を捕捉固定するとともに、金属イオンを捕捉固定することで、絶縁信頼性の向上に寄与する。また、感光性樹脂組成物を基板上に塗工後、感光性樹脂組成物の塗膜を炭酸ナトリウム等のアルカリ溶液にて現像すると、ベース樹脂である感光性樹脂のカルボキシル基(-COOH)がナトリウム塩(-COONa)となる。一方で、現像工程において感光性樹脂組成物の塗膜に施与されるナトリウムイオンを、無機イオン交換体が捕捉することで、カルボキシル基(-COOH)がナトリウム塩(-COONa)となるのを抑制すると考えられる。カルボキシル基(-COOH)がナトリウム塩(-COONa)となるのを抑制することで、金めっき処理後において、感光性樹脂組成物の塗膜の基板に対する密着性が低下するのを防止でき、優れた耐金めっき性が得られることに寄与すると考えられる。さらに、無機イオン交換体が感光性樹脂組成物の塗膜の開口部断面に配向することにより、金めっき処理の際に上記塗膜を侵食する原因となる金めっき処理液中のナトリウムイオンやカリウムイオンを捕捉することで、耐金めっき性が向上することに寄与するとも考えられる。
【0050】
無機イオン交換体としては、例えば、Zr(ジルコニウム)系、Sb(アンチモン)系、Bi(ビスマス)系、Zr-Al(ジルコニウム-アルミニウム)系、Sb-Bi(アンチモン-ビスマス)系、Mg-Al(マグネシウム-アルミニウム)系、Zr―Bi(ジルコニウム-ビスマス)系、Zr-Mg-Al(ジルコニウム-マグネシウム-アルミニウム)系等が挙げられる。これらのうち、さらに確実に、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を得ることができる点から、ジルコニア化合物、アルミニウム化合物とジルコニア化合物の混合物、ビスマス化合物、ビスマス化合物とジルコニア化合物の混合物が好ましく、絶縁信頼性がさらに向上する点から、アルミニウム化合物とジルコニア化合物の混合物が特に好ましい。これらの無機イオン交換体は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
無機イオン交換体には、例えば、陽イオン交換体としては、東亞合成株式会社の「IXE-100」、「IXE-300」、陰イオン交換体としては、東亞合成株式会社の「IXE-550」、両イオン交換体としては、東亞合成株式会社の「IXE-600」、「IXE-633」、「IXE-6107」、「IXE-6136」、「IXEPLAS-A1」、「IXEPLAS-A2」、「IXEPLAS-B1」等を挙げることができる。これらの無機イオン交換体は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
無機イオン交換体の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、感光性樹脂100質量部に対して、さらに確実に、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を得ることができる点から、3.0質量部が好ましく、5.0質量部がより好ましく、7.0質量部が特に好ましい。一方で、無機イオン交換体の配合量の上限値は、感光性樹脂100質量部に対して、優れた塗膜硬度を確実に得て優れた耐金めっき性を得る点から、30質量部が好ましく、下地である基材との密着性を確実に向上させて優れた耐金めっき性を確実に得る点から、20質量部がより好ましく、15質量部が特に好ましい。
【0053】
<(F)反応性希釈剤>
反応性希釈剤は、例えば、光重合性モノマーであり、1分子当たり少なくとも1つ、好ましくは1分子当たり2つ以上の重合性二重結合を有する化合物である。反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の光硬化を補強して、感光性樹脂組成物の硬化塗膜に十分な耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性などを付与することに寄与する。
【0054】
反応性希釈剤としては、例えば、単官能のアクリレート及び/またはメタクリレート(アクリレート及び/またはメタクリレートを「(メタ)アクリレート」ということがある。)化合物、2官能の(メタ)アクリレート化合物、3官能の(メタ)アクリレート化合物、4官能以上の(メタ)アクリレート化合物等の(メタ)アクリレート化合物のモノマーを挙げることができる。(メタ)アクリレート化合物のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリルレート等の単官能(メタ)アクリレート化合物;1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能(メタ)アクリレート化合物;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
反応性希釈剤の配合量は、特に限定されないが、感光性樹脂100質量部に対して、5.0質量部以上80質量部以下が好ましく、10質量部以上40質量部以下が特に好ましい。
【0056】
<(G)着色剤>
着色剤は、本発明の感光性樹脂組成物の光硬化物に所望の色彩を付与するために配合する。また、着色剤は、本発明の感光性樹脂組成物の光硬化物に隠蔽力を付与することができる。着色剤としては、顔料、色素等、特に限定されず、また、白色着色剤、黒色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、橙色着色剤、赤色着色剤等、所望の色彩に応じて、いずれの着色剤も使用可能である。着色剤には、例えば、白色着色剤である二酸化チタン、黒色着色剤であるアセチレンブラック、カーボンブラック等の無機系着色剤、緑色着色剤であるフタロシアニングリーン及び青色着色剤であるフタロシアニンブルーやリオノールブルー等のフタロシアニン系、橙色着色剤であるクロモフタルオレンジ等のジケトピロロピロール系等の有機系着色剤を挙げることができる。これらの着色剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
着色剤の配合量は、特に限定されないが、感光性樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上30質量部以下が好ましく、2.0質量部以上10質量部以下が特に好ましい。
【0058】
<任意成分>
本発明の感光性樹脂組成物には、上記した(A)~(G)成分の他に、必要に応じて、任意成分として、さらに、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤以外の他の光重合開始剤を配合してもよい。他の光重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル系光重合開始剤を挙げることができる。オキシムエステル系光重合開始剤は、感光性樹脂組成物の感光性の向上に寄与する。
【0059】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、エタノン1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(0-アセチルオキシム)、2-(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン-9-オン、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-(2-エチルヘキシル)-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシム等を挙げることができる。
【0060】
また、他の光重合開始剤として、オキシムエステル系光重合開始剤以外の光重合開始剤が挙げられる。他の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系;アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン系;ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン系;2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルフォスフィンオキサイド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ‐2‐プロピル)ケトン等を挙げることができる。これらの他の光重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
他の光重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、感光性樹脂100質量部に対して、0.10質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.20質量部以上2.0質量部以下が特に好ましい。
【0062】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、さらに、他の任意成分、例えば、フィラー、硬化促進剤、添加剤、非反応性希釈剤、難燃剤等を、任意に配合することができる。
【0063】
フィラーを配合することにより、感光性樹脂組成物の光硬化物の強度を向上させることができる。フィラーとしては、例えば、タルク、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、ホスフィン酸アルミニウム、マイカ等の無機系フィラー、ウレタンビーズ等の有機系フィラーを挙げることができる。
【0064】
硬化促進剤としては、例えば、メルカプトベンゾオキサザール及びその誘導体、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、三フッ化ホウ素-アミンコンプレックス、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、アミンイミド(AI)、ポリアミン等が挙げられる。添加剤としては、例えば、シリコーン系ポリマー、炭化水素系ポリマー、アクリル系ポリマー等の消泡剤等が挙げられる。
【0065】
非反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の、粘度、塗工性及び乾燥性を調節するための成分である。非反応性希釈剤としては、例えば、感光性樹脂組成物に配合されている各成分に対して不活性である有機溶剤を挙げることができる。上記有機溶剤には、例えば、メチルエチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等の脂肪族アルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコールアセテート、エチルジグリコールアセテート等のエステル類等を挙げることができる。これらの有機溶剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
難燃剤は、感光性樹脂組成物の光硬化物に難燃性を付与するためのものである。難燃剤としては、例えば、有機リン酸塩(有機系ホスフェート)等のリン含有難燃剤を挙げることができる。
【0067】
<感光性樹脂組成物の製造方法>
本発明の感光性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されず、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、常温(例えば、25℃)にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ニーダー等の混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー、トリミックス等の攪拌、混合手段により、混練または混合して製造することができる。また、前記混練または混合処理の前に、必要に応じて、予備混練または予備混合を実施してもよい。
【0068】
<感光性樹脂組成物の使用方法>
次に、本発明の感光性樹脂組成物の使用方法例について説明する。ここでは、本発明の感光性樹脂組成物をプリント配線板に塗工して、絶縁保護膜(例えば、ソルダーレジスト膜等)を形成する方法を説明する。
【0069】
上記のようにして得られた本発明の感光性樹脂組成物を、例えば、銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するプリント配線板上に、スクリーン印刷、スプレーコータ、バーコータ、アプリケータ、ブレードコータ、ナイフコータ、ロールコータ、グラビアコータ等、公知の塗工方法を用いて所望の厚さに塗布する。塗布後、感光性樹脂組成物に非反応性希釈剤を配合した場合には、感光性樹脂組成物中の非反応性希釈剤を揮散させるために、60~100℃程度の温度で10~50分間程度加熱する予備乾燥を行ってタックフリーの塗膜を形成する。次に、感光性樹脂組成物上に、直描装置にて、直接、活性エネルギー線(例えば、レーザー光)を所望のパターンに応じて照射する露光処理を行って、該パターン状に塗膜を光硬化させる。露光量としては、例えば、50mJ/cm2~2000mJ/cm2が挙げられる。次に、希アルカリ水溶液で非露光領域を除去することにより塗膜を現像する。現像方法には、例えば、スプレー法、シャワー法等が用いられ、希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5~5質量%の炭酸ナトリウム水溶液等が挙げられる。次に、130~170℃の熱風循環式の乾燥機等で20~80分間ポストキュア(熱硬化処理)を行うことにより、現像した塗膜を熱硬化させて、目的とするパターンを有する光硬化膜(光硬化物)をプリント配線板上に形成させることができる。なお、プリント配線板の基板には、例えば、フレキシブル基板、リジット基板等が挙げられる。
【0070】
また、上記した、直描装置にて、直接、活性エネルギー線を所望のパターンに応じて照射する露光処理に代えて、予備乾燥を行ってタックフリーとした塗膜上に、回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルム(フォトマスク)を密着させ、その上から活性エネルギー線(例えば、波長300~400nmの紫外線)を照射させて塗膜を光硬化させる露光処理を行ってもよい。
【実施例】
【0071】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0072】
実施例1~8、比較例1~2
下記表1に示す各成分を下記表1に示す割合にて配合し、3本ロールを用いて室温にて混合させて、実施例1~8、比較例1~2にて使用する感光性樹脂組成物を調製した。その後、調製した感光性樹脂組成物を以下のように基板に塗工して試験体を作製した。下記表1に示す各成分の配合量は、特に断りのない限り質量部を示す。なお、下記表1中の配合量の空欄部は、配合なしを意味する。
【0073】
下記表1中の各成分についての詳細は、以下の通りである。
(A)感光性樹脂
・ZFR-1887:多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂、固形分(樹脂分)65質量%、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート35質量%、日本化薬株式会社
【0074】
(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤
・Omnirad379:IGM Resins B.V.社
・Omnirad369:IGM Resins B.V.社
【0075】
(C)光反応安定化剤
・Chivacure EMK:4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、Chitec社
【0076】
(D)エポキシ化合物
・EPICLON860:DIC社
【0077】
(E)無機イオン交換体
・IXE-100:Zr系の陽イオン交換体、東亞合成株式会社
・IXEPLAS-A1:Zr-Al系の両イオン交換体、東亞合成株式会社
・IXEPLAS-A2:Zr-Al系の両イオン交換体、東亞合成株式会社
・IXE-550:Bi系の陰イオン交換体、東亞合成株式会社
・IXEPLAS-B1:Zr-Bi系の両イオン交換体、東亞合成株式会社
【0078】
(F)反応性希釈剤
・DPCA-120:日本化薬株式会社
【0079】
(G)着色剤
・デンカブラック:電気化学工業株式会社
・LIONOL BLUE FG-7351:トーヨーカラー株式会社
【0080】
他の光重合開始剤
・(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ)-2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシム
【0081】
フィラー
・RHC-730:大日精化株式会社
・OP935:クラリアントジャパン株式会社
硬化促進剤
・DICY-7:三菱化学株式会社
・メラミン:日産化学工業株式会社
添加剤
・X-50-1095C:消泡剤、信越化学工業株式会社
非反応性希釈剤
・EDGAC:三洋化成品株式会社
【0082】
試験体作製工程
フレキシブル基板を用いたプリント配線板(ポリイミドフィルム、パナソニック株式会社、フィルム厚25μm、導体(Cu箔)厚12.5μm)を、5質量%硫酸水溶液で表面処理後、スクリーン印刷法にて、上記のように調製した実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、それぞれ塗布して基板上に塗膜を形成した。塗膜形成後、BOX炉にて80℃で20分の予備乾燥を行った。予備乾燥後、塗膜上に400mJ/cm2の露光量にて露光(露光装置:オルボテック社製の直描(DI)露光装置「Nuvogo1000R」(光源:レーザー))して、塗膜の光硬化処理を行った。露光後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて、現像温度30℃、現像圧力0.2MPaのスプレー圧にて塗膜を現像した。現像後、BOX炉にて150℃で60分のポストキュアを行うことで、基板上にDry膜厚20μmの硬化塗膜を形成した。
【0083】
(1)耐金めっき性
上記試験体作製工程で得られた試験体に対して、市販品の無電解ニッケルめっき浴及び無電解金めっき浴を用いて、ニッケル3μm~5μm、金0.05μmの条件でめっき処理を行った。硬化塗膜の剥がれの有無やめっきのしみ込みの有無を目視にて評価した後、テープピーリング試験により硬化塗膜の剥がれの有無を評価した。判定基準は以下のとおりであり、○評価を合格と判定した。
〇:テープピーリング試験後、いずれの膜厚においても全く剥がれが認められない。
△:テープピーリング試験後、硬化塗膜に若干の剥がれが認められる。
×:テープピーリング試験後、硬化塗膜に顕著な剥がれが認められる。
【0084】
(2)絶縁信頼性
上記試験体作製工程に準じ、IPC-TM-650のIPC-SM840B B-25テストクーポンのくし形電極(ライン/スペース=165μm/165μm)を用いて試験体を作製し、85℃、85%R.H.で200時間加湿した後の絶縁抵抗を、DC50Vを印加して測定した。判定基準は以下のとおりであり、△評価以上を合格と判定した。
◎◎:絶縁抵抗値が5.0×1013Ω以上である。
◎:絶縁抵抗値が1.0×1013Ω以上5.0×1013Ω未満である。
○:絶縁抵抗値が1.0×1012Ω以上1.0×1013Ω未満である。
△:絶縁抵抗値が1.0×1010Ω以上1.0×1012Ω未満である。
×:絶縁抵抗値が1.0×1010Ω未満である。
【0085】
(3)貯蔵安定性
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、5~10℃で1ヶ月間、冷蔵保管し、保管後の感光性樹脂組成物について、グラインドゲージで結晶の発生の有無を評価した。判定基準は以下のとおりであり、△評価以上を合格と判定した。
○:10μm以上の結晶なし
△:10μm~15μmの結晶あり
×:15μm超の結晶あり
【0086】
評価結果を下記表1に示す。
【0087】
【0088】
上記表1に示すように、光重合開始剤として(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤を使用し、(C)一般式(1)で表される化合物の光反応安定化剤と(E)無機イオン交換体を配合した実施例1~8の感光性樹脂組成物では、感光性樹脂組成物の貯蔵安定性を損なうことなく、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を有する硬化物を得ることができた。このように、実施例1~8の感光性樹脂組成物では、優れた絶縁信頼性が得られるので、ファインピッチ化された絶縁被膜、導電性を有する別材料を接触させた絶縁被膜であっても、絶縁被膜の厚さ方向の絶縁信頼性を含めて優れた絶縁信頼性を得ることができた。
【0089】
特に、(C)成分の光反応安定化剤が(A)感光性樹脂100質量部に対して約2.0質量部含まれる実施例2、4は、(C)成分の光反応安定化剤が(A)感光性樹脂100質量部に対して約0.5質量部含まれる実施例と比較して、絶縁信頼性がさらに向上した。また、(E)無機イオン交換体として、アルミニウム化合物とジルコニア化合物の混合物を使用した実施例3~5は、絶縁信頼性がさらに向上した。また、(B)α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤として、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノンを使用した実施例1~7は、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-ベンジル-1-ブタノンを使用した実施例8と比較して、感光性樹脂組成物の貯蔵安定性がさらに向上した。
【0090】
一方で、(C)成分の光反応安定化剤を配合しなかった比較例1、(E)無機イオン交換体を配合しなかった比較例2では、絶縁信頼性と耐金めっき性を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の感光性樹脂組成物は、優れた絶縁信頼性と耐金めっき性を有する硬化物を得ることができるので、特に、ファインピッチ化された絶縁被膜を有するプリント配線板、導電性を有する別材料を接触させた絶縁被膜を有するプリント配線板、汎用性が要求されるプリント配線板の分野で利用価値が高い。