(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】工業用テキスタイルおよびその使用
(51)【国際特許分類】
D21F 1/10 20060101AFI20240613BHJP
D01F 6/62 20060101ALI20240613BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20240613BHJP
D03D 3/04 20060101ALI20240613BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20240613BHJP
D21F 7/08 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
D21F1/10 ZAB
D01F6/62 306
D03D1/00 D
D03D3/04
D03D15/283
D21F7/08 Z
(21)【出願番号】P 2022046453
(22)【出願日】2022-03-23
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】20 2021 101 509.8
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507085276
【氏名又は名称】ハイムバッハ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】ディルク プラスチャク
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522334(JP,A)
【文献】特開2017-053060(JP,A)
【文献】特開2005-273024(JP,A)
【文献】国際公開第02/006573(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03581688(EP,A1)
【文献】国際公開第2019/238312(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0096928(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111286012(CN,A)
【文献】畑中一宏,ポリエチレンフラノエート樹脂を中心としたバイオポリエステル樹脂の開発の現状について,成形加工,2018年,第30巻,第11号,569-572
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21F 1/10
D01F 6/62
D03D 1/00
D03D 3/04
D03D 15/283
D21F 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機用テキスタイル(1、11、17、22、33
)であって、2,5-フランジカルボン酸を使用して製造された少なくとも1つのバイオポリマーから部分的にまたは全体的になり、
抄紙機用テキスタイル(1、11、17、22、33)がモノフィラメント(6~10、19~20、24~27、29~32、36~37、40)を有し、モノフィラメント(6~10、19~20、24~27、29~32、36~37、40)の一部または全部が、2,5-フランジカルボン酸から調製されたバイオポリマー
であり、当該バイオポリマーのうち少なくとも1つのバイオポリマーが、ポリエチレンフラノエートおよび/またはそのコポリマーであることを特徴とする
抄紙機用テキスタイル。
【請求項2】
前記ポリエチレンフラノエートに加えて、2,5-フランジカルボン酸から製造されたバイオポリマーまたは少なくとも1つのバイオポリマーが、ポリアミドおよび/またはポリエステルおよび/またはポリウレタンおよび/またはポリアミドのコポリマーおよび/またはポリエステルのコポリマーおよび/またはポリウレタンのコポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の
抄紙機用テキスタイル。
【請求項3】
前記2,5-フランジカルボン酸が、植物性原料であるトウモロコシの単糖から製造されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の
抄紙機用テキスタイル。
【請求項4】
前記モノフィラメント(6~10、19~20、24~27、29~32、36~37、40)が
、糸(6~10、14a、15a、19、20、24~27、29~32、34~40
)の形態のものを含み
、当該糸(6~10、14a、15a、19~20、24~27、29~32、34~40)の一部または全部が、2,5-フランジカルボン酸を用いて調製された少なくとも1つのバイオポリマーから部分的にまたは全体的になることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の
抄紙機用テキスタイル。
【請求項5】
前記
抄紙機用テキスタイル(1、11、17、22、33)が、糸(6~10、14a、15a、19~20、24~27、29~32、34~40)を含
むヤーンシステムを含むかまたはそれからなり
、前記糸(6~10、14a、15a、19~20、24~27、29~32、34~40)の一部または全部が、2,5-フランジカルボン酸を使用して製造された少なくとも1つのバイオポリマーからなることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の
抄紙機用テキスタイル。
【請求項6】
前
記ヤーンシステムが、1つまたは複数の織布(2,3,15,18)、編布(33)、不織布層(14)、スパイラルリンクバンド(23)および/またはそれらの組合せを形成することを特徴とする、請求項5に記載の
抄紙機用テキスタイル。
【請求項7】
前記
ヤーンシステムの糸の一部または全部が、モノフィラメント(6~10、19~20、24~27、29~32、36~37、40)および/またはモノフィラメント撚糸(14~15)および/またはマルチフィラメント(39)および/またはマルチフィラメント撚糸および/または短繊維糸(38)および/または多成分糸(35)として形成さ
れ、モノフィラメント(6~10、19~20、24~27、29~32、36~37、40)および/またはモノフィラメント撚糸(14~15)および/またはマルチフィラメント(39)および/またはマルチフィラメント
撚糸および/または短繊維糸(38)および/または多成分糸(35)として形成された糸の一部または全部が、2,5-フランジカルボン酸を用いて製造された少なくとも1つのバイオポリマーから部分的にまたは全体的になることを特徴とする、請求項5または6に記載の
抄紙機用テキスタイル。
【請求項8】
前記
ヤーンシステムが複数の層(2、3、14、15)を含み、少なくとも1つの層が、2,5-フランジカルボン酸を使用して製造された少なくとも1つのバイオポリマーから部分的にまたは全体的になる糸(6~10、14a、15a、19~20、24~27、29~32、34~40)を含有するかまたはそれからなることを特徴とする、請求項5~7のいずれか一項に記載の
抄紙機用テキスタイル。
【請求項9】
前記
抄紙機用テキスタイル(1、11、17、22、33)がコーティング(21)を備え
、前記コーティング(21)が、2,5-フランジカルボン酸を使用して調製された少なくとも1つのバイオポリマーから部分的にまたは全体的になることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の
抄紙機用テキスタイル。
【請求項10】
前記
抄紙機用テキスタイル(1、11、17、22、33)が、繊維層(12、13、16)を備え
、前記繊維層が、2,5-フランジカルボン酸を使用して調製された少なくとも1つのバイオポリマーから部分的にまたは全体的になることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の
抄紙機用テキスタイル。
【請求項11】
前記
抄紙機用テキスタイル(1、11、17、22、33)が、2,5-フランジカルボン酸を使用して製造された少なくとも1つのバイオポリマーを少なくとも50重量
%含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の
抄紙機用テキスタイル。
【請求項12】
前記
抄紙機用テキスタイル(1、11、17、22、33)が、抄紙機用のフォーミングファブリック、プレスフェルト、トランスファーベルトまたはドライヤーファブリックとして形成されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の
抄紙機用テキスタイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用テキスタイル、特に、例えば食品または木材産業用の抄紙機用布またはプロセスベルトもしくはコンベヤベルトに関する。さらに、本発明は、2,5-フランジカルボン酸を用いて製造された少なくとも1つのバイオポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用テキスタイルは様々な産業部門で使用されている。
【0003】
工業用テキスタイルの一例は、コンベヤベルトなどのプロセスベルトである。このような工業用ベルトは、物品を搬送、供給、載置および/またはスタックするために様々な機械で使用される。このようなベルトは、装着されると、エンドレスの形状になり、例えば、機械のローラコンベヤを包含する。コンベヤベルトは、例えば、特許文献1および先行技術に関してそこに引用された文献から明らかになる。特許文献1から従来知られているコンベヤベルトは、担体と、例えば、少なくとも1つのポリマーを含むかまたはそれからなるコーティング材料から作製されたコーティングストリップとを有する。担体は、例えば、スパイラルリンクベルトまたは織布もしくは編布または不織布層であってもよい。
【0004】
工業用テキスタイルが使用される別の分野は、製紙である。ここでは、抄紙用具(paper machine clothing)を装着した抄紙機が使用される。抄紙機用ベルトとも呼ばれるこのベルトは、通常、長さと幅の大きなエンドレスのテキスタイル製品、あるいは縫い目によってエンドレスになったもので、その構造と素材の選択は、抄紙機の特定の要件に適応している。抄紙用具は、抄紙機内を循環し、抄紙機を通過する際に抄紙機内で形成される紙ウェブを支持し、それによって脱水プロセスを可能にし、促進する。
【0005】
抄紙用具は、使用される場所によって、フォーミングファブリック、プレスフェルト、ドライヤーファブリックの3種類に大別される。抄紙機の最初の部分であるフォーミングセクションでは、通常、単層または多層ファブリックが使用され、その上に、紙ウェブが形成されるように紙パルプが塗布される。脱水は、重力の影響下で、およびフォーミングファブリックを通して吸引ボックスによって加えられる負圧の効果によって行われる。したがって、フォーミングファブリックは、一方では非常に透過性でなければならず、他方ではその外側に良好な繊維保持性を有していなければならない。抄紙機の後続セクションであるプレスセクションでは、紙ウェブはプレスフェルトによって引き取られ、ロールプレスを通過し、そこで紙ウェブにまだ含まれている液体がプレス圧力下で押し出され、プレスフェルトを強制的に通されることになる。プレスフェルトは通常、糸システムの形態の担体を有し、そこに1つまたは複数の繊維層が、特に圧力と熱の下でニードル加工、接着、溶着、ラミネート加工されて設けられる。糸システムは、例えば、織物、編物、不織糸層またはスパイラルリンクバンドであり得る。このような糸システムの組合せも公知である。プレスセクションの後にドライヤーセクションが続き、ここで紙ウェブはドライヤーファブリックに移され、ドライヤーファブリックは紙ウェブを熱ロール上にガイドする。ここで、脱水は熱的に行われる。ドライヤーファブリックは、通常、オープンメッシュ、またはスパイラルリンクベルトやリングリンクベルトなどのリンクベルトからなる(タイプについて:特許文献2、特許文献3、および特許文献4)。さらに、抄紙用具の他の形態、例えば、いわゆるシュープレスベルトがあり、これは、例えば、織布または不織布層からなるバッキングと、それに適用された不透過性ポリマー層とから作製される。
【0006】
過去においては、そのような抄紙機用ベルトの糸システムはウールまたは綿で作られていた。しかしながら、それらの機械的特性は非常に限定されていたので、抄紙機のさらなる発展に追いつくことができなかった。したがって、数十年の間、抄紙機用テープはもっぱら化石原料をベースとするプラスチック、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン等から製造されてきた。抄紙機において極端な機械的、熱的および/または化学的な運転条件にさらされる抄紙用具は一般に数週間の耐用期間しかなく、その後新しい用具と交換しなければならないので、使用されるそのようなプラスチックの量はかなり多い。
【0007】
工業用テキスタイルの製造のためのポリマープラスチックに使用される化石原料、特に鉱油などの石油化学原料は、枯渇している。燃料の生産において鉱油はまだ代替できないため、鉱油資源を可能な限り節約し、まだ必要な用途のために確保することが一般的に求められている。
【0008】
さらに、特に植物から得られる再生可能な原料に依存することによって、特に、いわゆる「CO2排出量」を減少させることによって、エコロジカル・フットプリントを最小化することに焦点を当てることがさらにより重要となる。藻類を含む植物と一部の細菌は、光合成という生化学的プロセスを介してそれらの存在の過程で二酸化炭素(CO2)から酸素(O2)を生成し、地球大気の酸素循環の最も重要な駆動源となっている。
【0009】
したがって、化石原料を、より生態学的に適合性のある代替材料で置き換える努力がなされている。
【0010】
特許文献5より、タイヤ製造のための再生可能な原料に基づくポリエチレン2,5-フランジカルボキシレート原糸およびこの原糸を用いたタイヤが得られる。
【0011】
特許文献6は、糸の一部または全部が部分的にまたは全体的にバイオプラスチック、特に1つまたは複数の再生可能な原料、特に植物性原料を用いて製造されるバイオプラスチックからなることを特徴とする抄紙用具を示している。このようなプラスチックを用いることにより、化石資源の保全に寄与している。また、バイオプラスチックは埋め立ての問題が少なく、それらの材料は再使用のために大部分回収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】独国実用新案第202019103469(U1)号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0171891(A1)号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0472072(A1)号明細書
【文献】欧州特許第0763623(B1)号明細書
【文献】欧州特許第3348679(B1)号明細書
【文献】独国実用新案第202012103846(U1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
バイオプラスチックを含むまたはバイオプラスチックからなる従来公知の抄紙用具は、原理的に証明されている。しかしながら、代替的な省資源材料から作製された工業用テキスタイルが依然として必要とされている。
【0014】
したがって、本発明の課題は、優れた製品特性を特徴とし、同時に環境、すなわち我々の生活空間を尊重し慎重に扱うという側面から、その持続可能な生産と持続可能な使用という要件を満たす工業用テキスタイルを規定することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は、2,5-フランジカルボン酸を使用して製造された少なくとも1つのバイオポリマーから部分的にまたは全体的になる工業用テキスタイル、特に抄紙用具またはプロセスベルトもしくはコンベヤベルトによって解決される。
【0016】
本出願人は、バイオモノマー2,5-フランジカルボン酸に基づいて高品質のバイオポリマーを得ることができることを確立しており、このバイオポリマーは、工業用テキスタイル、例えば抄紙用具およびプロセスベルトまたはコンベヤベルトに特に適した材料であり、様々な利点を併せ持つ。2,5-フランジカルボン酸に基づいて得られるバイオポリマーは、熱可塑性であり、100%リサイクル可能であり、焼却に対してCO2ニュートラルである。
【0017】
2,5-フランジカルボン酸から製造される1つまたは複数のバイオポリマーは、工業用テキスタイルにおいて、特に、化石、石油化学原料から製造される従来のポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)の代替物として使用することができる。これは、例えば、コンベヤベルトまたは抄紙用具、特に織物の形成および乾燥の場合である。本発明によれば、化石原料に基づく成分を、優れた特性を有する再生可能な原料から製造されたものに置き換えることができるので、高度の持続可能性が、同時に最適な品質で達成される。
【0018】
本発明において使用される2,5-フランジカルボン酸に基づくバイオポリマーは、生分解性および非生分解性の両方であり得る。
【0019】
バイオポリマーは、特に、バイオベースもしくは生分解性、またはバイオベースおよび生分解性の両方であるポリマーを意味すると理解される。
【0020】
言い換えれば、「バイオポリマー」という総称は、2つのグループに分けることができる。第1のグループは、バイオベースのバイオポリマー、すなわち天然ポリマーまたは少なくとも部分的に生物起源の(再生可能な)原料から製造されたポリマーを含み、これは生分解性ポリマーおよび非生分解性ポリマーの両方を含み得る。第2のグループは、生分解性バイオポリマーを含み、これは、バイオベースのポリマーおよび石油化学ベースのポリマーの両方を含み得る。
【0021】
本発明に従って使用されるバイオポリマーまたはポリマーは、バイオプラスチックであり得る。これは、それらが合成的に製造された場合である。
【0022】
特に、バイオベースバイオポリマーから、好ましくは生分解性バイオベースバイオポリマーから作製されたバイオプラスチックが、本発明の文脈において使用される。
【0023】
本文脈における生分解性とは、特に好気性生分解性を意味する。
【0024】
特に、それは、規格DIN EN ISO 14851および/または規格DIN EN ISO 14852および/または、規格DIN EN ISO 14855-1および/または規格DIN EN ISO 17556の意味における生分解性として理解されるべきである。
【0025】
好気性生分解の定義は、これらの規格のセクション3.1に記載されている。これは、「酸素の存在下での微生物による有機化合物の二酸化炭素、水および存在する任意の他の元素のミネラル塩(ミネラル化)ならびに新しいバイオマスへの分解」として具体的に定義される。この場合、生分解性には、特にこの種の好気性生分解も含まれる。
【0026】
DIN EN ISO 14851(2019年7月)は、とりわけ、水性媒体におけるプラスチック材料の完全好気性生分解度の求め方-閉鎖呼吸計で酸素要求量を測定することによる方法に関する。
【0027】
DIN EN ISO 14852(2018年12月)は、とりわけ、放出された二酸化炭素の分析による、水性媒体プロセスにおけるプラスチック材料の完全好気性生分解度の求め方を扱う。
【0028】
DIN EN ISO 14855-1(2013年4月)は、とりわけ、放出された二酸化炭素の分析による、制御された堆肥化プロセスの条件下でのプラスチック材料の完全好気性生分解度の求め方に関する。
【0029】
DIN EN ISO 14855-1において、「堆肥化」および「分解」という用語は、3.2および3.3でも説明されている。したがって、堆肥化は、堆肥を製造するための好気性プロセスとして理解されるべきである。堆肥は、主に植物残渣からなり、場合によっては他の有機物と混合され、限られたミネラル含有量を有する混合物の生分解によって生成される有機土壌改良材である。さらに、パラグラフ3.3によれば、分解とは、物質を非常に小さな断片に物理的に破壊することである。
【0030】
DIN EN ISO 17556(2019年9月)は、プラスチックと、呼吸計での酸素要求量または発生する二酸化炭素の量を測定することによる土壌中のプラスチック材料の完全好気性生分解度の求め方を対象としている。
【0031】
嫌気性生分解の説明または定義は、例えば、2つの規格DIN EN ISO 14853およびDIN EN ISO 15985において、両方とも項目3.1に記載されている。そこでは、「3.1 完全嫌気性生分解」という見出しの下に、酸素排除下での微生物による有機化合物の分解であって、それによって二酸化炭素、メタン、水および他の含有元素のミネラル塩(ミネラル化)ならびに新しいバイオマスが形成されることが述べられている。
【0032】
DIN EN ISO 14853(2018年2月)は、プラスチックと、水性媒体中でのプラスチック材料の完全嫌気性生分解度の求め方-バイオガス発生の分析を使用した方法に関する。
【0033】
DIN EN ISO 14853では、3.2で一次嫌気性生分解も区別されている。これによれば、特殊な性質の喪失を引き起こすのは、微生物による化合物の構造変化(変質)である。
【0034】
DIN EN ISO 15985(2018年2月)は、プラスチックと、嫌気性高固形分消化条件下での完全嫌気性生分解度の求め方-放出されたバイオガスの分析を使用する方法に関する。
【0035】
ポリエチレンフラノエート(PEF)は、2,5-フランジカルボン酸を用いて製造される特に好適なバイオポリマーであることが証明されている。したがって、有利なさらなる展開において、2,5-フランジカルボン酸を用いて製造されるバイオポリマーまたは少なくとも1つのバイオポリマーが、ポリエチレンフラノエート(PEF)(ポリエチレン2,5-フランジカルボキシレートまたはポリエチレンフランジカルボキシレートまたはポリエチレンジカルボキシフラノエートとも称される)および/またはそのコポリマーであることを提供するものである。
【0036】
2,5-フランジカルボン酸およびそれに基づくバイオポリマー、例えばPEFを得るための様々な方法が知られている。
【0037】
例えば、糖[C6H12O6]、グリコースまたはフルクトースから、中間体5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)[C6H6O3](5-(ヒドロキシメチル)-2-フルアルデヒド、5-オキシメチルフルフロール、5-(ヒドロキシメチル)-フルフロール(hist.)を脱水素(-3H2O)により得ることができ、これから2,5-フランジカルボン酸(FDCA)[C6H4O5]を酸化(+O2)することにより得ることができる。ポリエチレンフラノエート(PEF)[[C8H6O5]n]は、2,5-フランジカルボン酸から、例えば、モノエチレングリコール(MEG)[C2H6O2]を添加した重縮合によって得ることができる。
【0038】
特に望ましくない副生成物を生じず、生成物の着色を防止する、比較的エネルギー効率の良い重合方法も知られている。これは、予備重合によってジメチルフランジカルボキシレートとエチレングリコールからオリゴマー(MW<5kg/mol)を得ることを含む。解重合により、これらのオリゴマーおよび高沸点溶媒から、2個以上の繰り返し単位を有する環状オリゴマーが得られる。開環重合により、数分以内に環を移動させることによってポリマー(MW>5kg/mol)が得られる。
【0039】
2,5-フランジカルボン酸(FDCA)とエチレングリコール(MEG)とからの芳香族ポリエステルとして、ポリエチレンフラノエート(PEF)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)と化学的に同等である。従来のポリエステルの製造におけるテレフタル酸(PTA)を2,5-フランジカルボン酸(FDCA)で置き換えて、ポリエチレンフラノエート(PEF)を合成することが可能である。
【0040】
ポリエチレンフラノエート(PEF)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)よりもいくつかの利点を有する。それは、再生可能な植物ベースの原料に由来することができ、リサイクル可能であるため、PETよりも50%~70%低いカーボンフットプリントを有する。それは、工業的堆肥化条件下でPETよりも速い速度で分解することができる。さらに、O2、CO2およびH2Oに対するPEFのバリア特性は、PETのバリア特性よりも数倍高い。機械的特性に関して、PEFは、PETと比較してより高いヤング率Eおよび引張強度を有する。それはまた、比較的低い重量および密度を有する。熱特性に関しては、PETよりも高いガラス転移温度、低い融点、および熱固定なしでのより高い熱安定性を特徴とする。さらに、添加物も少なくて済む。
【0041】
PEFの代わりにまたはそれに加えて、ポリエステルおよび/またはポリアミド(PA)および/またはポリウレタン(PU)および/またはそれらのコポリマーも可能である。したがって、さらなる実施形態は、2,5-フランジカルボン酸(FDCA)から製造されたバイオポリマーまたは少なくとも1つのバイオポリマーが、ポリエステルおよび/またはポリアミド(PA)および/またはポリウレタン(PU)および/またはポリエステルのコポリマーおよび/またはポリアミド(PA)のコポリマーおよび/またはポリウレタン(PU)のコポリマーであることを特徴とする。
【0042】
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)に類似して、フラノエート間の鎖がより長いポリエステルもまた、FDCA系バイオポリマーとみなすことができる。
【0043】
特に好ましくは、本発明に従って使用される2,5-フランジカルボン酸を使用して製造される少なくとも1つのバイオポリマーはさらに、100%バイオベースのバイオポリマー、例えば100%バイオベースのPEFである。DIN EN 17228-2019年6月(プラスチック-バイオベースのポリマー、プラスチック、およびプラスチック製品-定義、特性、およびコミュニケーション)、セクション3.2によれば、バイオベースのポリマーは、全体的または部分的にバイオマスに由来するポリマーであり、セクション3.8ではバイオマスは、化石および/または地質学的供給源からの材料を除いて、生物学的起源の材料として定義される。
【0044】
2,5-フランジカルボン酸は、好ましくは、1つまたは複数の再生可能な、特に植物性原料、好ましくはトウモロコシ、コムギ、ジャガイモまたはタピオカの単糖(単糖類)から製造されたものである。
【0045】
本発明による工業用テキスタイルは、モノフィラメントを含むことができる。そして、モノフィラメントの一部または全部が、2,5-フランジカルボン酸から製造された少なくとも1つのバイオポリマーから部分的にまたは全体的になる場合、非常に有利であることが証明されている。従来の工業用テキスタイルでは、モノフィラメントは通常、ポリマー、例えば、従来の化石石油化学原料から製造されたポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルから作製される。この実施形態によれば、2,5-フランジカルボン酸から製造された1つまたは複数のバイオポリマーは、そのような従来のポリマーの代替物として工業用テキスタイルにおいて使用することができ、非常に好ましくは、モノフィラメントの形態で、例えば、織布および/または不織布層および/または編布および/またはスパイラルリンクバンドなどのために紡糸することができる。
【0046】
本発明による工業用テキスタイルは、モノフィラメントまたはモノフィラメント撚糸および/またはマルチフィラメントまたはマルチフィラメント撚糸および/または短繊維糸および/または多成分糸の形態の繊維および/または糸を含むことも可能である。そして、繊維の一部もしくは全部および/または糸の一部もしくは全部が、2,5-フランジカルボン酸を使用して調製された少なくとも1つのバイオポリマーから部分的にまたは全体的に作製されることがさらに好ましい。
【0047】
別の実施形態は、工業用テキスタイルが、糸を有する糸システムを含むか、またはそれからなることを特徴とする。そして、糸の一部または全部が、2,5-フランジカルボン酸を使用して製造された少なくとも1つのバイオポリマーからなることが好ましい。
【0048】
糸システムが存在する場合、それは、1つまたは複数の織布、編布、不織布層、スパイラルリンクバンド、および/またはそれらの組み合わせを形成し得る。そして、糸システムの糸のいくつかまたはすべては、モノフィラメントまたはモノフィラメント撚糸および/またはマルチフィラメントまたはマルチフィラメント撚糸および/または短繊維糸および/または多成分糸であってもよい。そして、好ましくは、モノフィラメントもしくはモノフィラメント撚糸および/またはマルチフィラメントもしくはマルチフィラメント撚糸および/または短繊維糸および/または多成分糸として形成された糸の一部または全部は、2,5-フランジカルボン酸を使用して製造された少なくとも1つのバイオポリマーから部分的にまたは全体的になる。
【0049】
フィラメントシステムはまた、複数の層を有してもよく、その場合、少なくとも1つの層は、2,5-フランジカルボン酸を使用して調製された少なくとも1つのバイオポリマーから部分的にまたは全体的に作製されたフィラメントを含むか、またはそれからなってもよい。
【0050】
別の実施形態は、工業用テキスタイルにコーティングが施されていることを特徴とし、好ましくは、コーティングは、2,5-フランジカルボン酸を使用して調製された少なくとも1つのバイオポリマーから部分的にまたは全体的に構成されている。
【0051】
工業用テキスタイルはまた、繊維層を備えていてもよい。その場合、繊維層は、2,5-フランジカルボン酸を用いて製造された少なくとも1つのバイオポリマーから部分的にまたは全体的になっていてもよい。
【0052】
換言すれば、本発明により提供される少なくとも1つのバイオポリマーは、工業用テキスタイルのコーティングおよび/または不織布層に適していることも示されている。
【0053】
工業用テキスタイルは、2,5-フランジカルボン酸を使用して製造された1つまたは複数のバイオポリマーから全体的になることが可能である。あるいは、それはまた、1つまたは複数のそのようなバイオポリマーおよび追加的に他の材料を含んでもよく、それらはまた、再生可能な、特に植物ベースの原料に由来するものおよび化石ベースの原料に由来するものの両方である。例えば、少なくとも1つのバイオポリマーは、従来の鉱油ベースのプラスチックと組み合わせおよび/またはブレンドして、例えば化合物および/またはブレンドを形成することもできる。
【0054】
工業用テキスタイルの少なくとも50重量%、特に少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは100重量%が、2,5-フランジカルボン酸から製造される少なくとも1つのバイオポリマーを使用して作製される場合、特に好適であることが証明されている。
【0055】
本発明による工業用テキスタイルがFDCAベースのバイオポリマーから全体的になるわけではない場合、他の、好ましくはより小さいポリマー部分は、
- 生分解性の天然またはバイオベースのバイオポリマー[デンプンおよび/またはセルロースおよび/またはリグニンおよび/またはキチンおよび/またはキトサンおよび/またはポリ乳酸(PLA)および/またはポリヒドロキシアルカノエート(PHA)および/またはポリブチレンサクシネート(PBS)および/またはポリエチレン-コ-イソソルビド-テレフタレートポリマー(PEIT)および/またはコポリマー]、および/または
- 非生分解性のバイオベースのバイオポリマー(バイオベースのセバシン酸を使用したポリアミド6.10)、および/または
- 生分解性の石油化学ベースのバイオポリマー、および/または
- 非生分解性の石油化学ベースのポリマー[ポリアミド(PA)および/またはポリエステル、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)および/またはポリトリメチレンテレフタレート(PTT)および/またはポリエチレンテレフタレート(PET)および/またはポリエチレンナフタレート(PEN)および/またはポリエチレン(PE)および/またはポリ塩化ビニル(PVC)および/またはポリフェニレンスルフィド(PPS)および/またはポリウレタン(PU)および/またはコポリマー]
を含むことができ、またはそれによって与えられることが可能である。
【0056】
工業用テキスタイルは、抄紙機用のフォーミングまたはドライファブリックとして設計されることがさらに好ましい。フォーミングまたはドライファブリックにおけるFDCAベースのバイオポリマーの好ましい使用は、PEFバイオポリマーが、これまで従来のフォーミングおよびドライファブリックにおいて好ましい材料であった従来のポリエステルPETと化学的に類似していることに基づいている。PEFの類似の化学構造により、PETのものに匹敵するPEFの機械的特性、特に高い弾性率が得られる。その利点は、主に、再生可能な原料から、すなわち持続的に製造することができるバイオポリマーの使用にある。
【0057】
あるいは、本発明による工業用テキスタイルは、プレスフェルト、トランスファーベルトまたは抄紙用具のための担体であってもよい。また、他のプロセスベルトまたはコンベヤベルトが本発明に従って設計されることを提供することも可能である。
【0058】
また、本発明の目的は、2,5-フランジカルボン酸に基づいて製造された少なくとも1つのバイオポリマーを、工業用テキスタイル、特に抄紙用具またはプロセスベルトもしくはコンベヤベルトの製造のために使用することである。抄紙用具の場合、それはフォーミングまたはドライヤーファブリックであることが特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
本発明の実施形態に関しては、従属請求項および添付図面を参照した実施形態の以下の説明も参照されたい。
【0060】
図面は次のことを示す。
【
図1】フォーミングファブリックとして設計された本発明による工業用テキスタイルの第1の例を純粋に概略的な断面図で示したものである。
【
図2】プレスフェルトとして設計された本発明による工業用テキスタイルの第2の実施形態を純粋に概略的な分解斜視図で示したものである。
【
図3】ドライヤーファブリックまたはコンベヤベルトとして、あるいは、例えば抄紙用具またはコンベヤベルトのための担体として設計された本発明による工業用テキスタイルの第3の実施形態を純粋に概略的な断面図で示したものである。
【
図4】ドライヤーファブリックまたはコンベヤベルトとして、あるいは、例えば抄紙用具またはコンベヤベルトのための担体として設計された本発明による工業用テキスタイルの第4の実施形態を純粋に概略的な上面図で示したものである。
【
図5】例えば抄紙用具またはコンベヤベルトのための担体として設計された工業用テキスタイルの第5の実施形態を純粋に概略図で示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1~
図5は、本発明による工業用テキスタイルのいくつかの実施形態を純粋に概略的な表現で示しており、各図にはそれぞれのテキスタイルの1つのセクションのみが示されている。図中、同一または対応する構成要素には、それぞれ同一の参照符号が付されている。
【0062】
5つの実施形態はいずれも、2,5-フランジカルボン酸から製造される少なくとも1つのバイオポリマーから部分的にまたは全体的になるということを共通に有する。好ましくは、少なくとも1つのバイオポリマーは、100%バイオベースであり、生分解性である。
【0063】
図1は、第1のファブリック層2と第2のファブリック層3を備えた抄紙用具1として設計された工業用テキスタイルを示す。2つのファブリック層2、3は、一方が他方の上に置かれる。第1のファブリック層2の外側は抄紙用具1の紙側4を形成し、第2のファブリック層3の外側は抄紙用具1の機械側5を形成する。2つのファブリック層は、抄紙用具1の意図された走行方向に延在し、経糸を形成する縦糸6、7と、それに対して横方向に延在する、例えば8、9、10で示される横糸とを、既知の方法で含む。抄紙用具1は、固有の紙側単一結合糸9を介して接続された紙側および機械側ファブリック層2、3を有する多層扁平ファブリックとして形成されると言うこともできる。
【0064】
例えば、縦糸6の一部または全部および/または縦糸7の一部または全部および/または横糸8の一部または全部および/または横糸9の一部または全部および/または横糸10の一部または全部がそれぞれ、2,5-フランジカルボン酸から製造された少なくとも1つのバイオポリマーから部分的にまたは全体的になっていてもよい。モノフィラメントに紡糸されたポリエチレンフラノエート(PEF)は、特に適切なバイオポリマーであることが証明されている。
【0065】
図2は、抄紙機用のプレスフェルトとして形成された、本発明による工業用テキスタイルの第2の実施形態の断面を示す。これは、例えば、グラフィックペーパーの製造や、ティッシュ分野における紙ウェブの脱水に特に適している。プレスフェルト11は、担体不織布12と、担体不織布12の紙側に設けられ、溶融繊維接着剤層13によって接着された不織布層14と、不織布層14の紙側に設けられた担体ファブリックの形態の担体15と、担体不織布15の紙側に設けられたカードされた短繊維不織布16とを含む。このようにして積層されたプレスフェルト層はニードリングによって互いに結合される。
【0066】
この実施形態の例では、プレスフェルト11の層12~16のうちの1つまたは複数またはすべてが、それぞれ、2,5-フランジカルボン酸、特に2,5-フランジカルボン酸ベースのポリアミドを使用して調製された少なくとも1つのバイオポリマーから部分的にまたは全体的に作製され得ることは事実である。例えば、不織布層14の糸14aのすべてまたは一部、および/または担体15の糸15aのすべてまたは一部が、そのようなバイオポリマーで作製されてもよい。
【0067】
同様に、担体不織布12および/または溶融繊維接着剤層13および/または短繊維不織布16は、それぞれ部分的にまたは全体的にそのようなバイオポリマーから作製することができる。
【0068】
図3は、抄紙機用のドライヤーファブリックとして設計された、本発明による工業用テキスタイル17の第3の実施形態の断面を通る縦断面図を示す。これは、縦糸19および横糸20を有する織物として形成された糸システム18を含む。図から分かるように、それは平織りの単層平織物である。ファブリックは機械側にコーティング21を備えている。
【0069】
この実施形態の例では、縦糸19の一部または全部および/または横糸20の一部または全部はそれぞれ、2,5-フランジカルボン酸、特にPEFを使用して製造された少なくとも1つのバイオポリマーから部分的にまたは全体的に作製され得る。代替的または追加的に、コーティング21は、少なくとも1つのそのようなバイオポリマーから部分的にまたは全体的に作製され得る。
【0070】
図4は、ドライヤーファブリックとして、またはコンベヤベルトとして形成されるか、あるいはまた抄紙用具またはコンベヤベルトや他のプロセスベルトのための支持体を形成する工業用テキスタイル22の別の実施形態を示す。
【0071】
テキスタイル22は、複数の平坦なスパイラル24、25、26、27を有するスパイラルリンクバンド23を備え、これらのスパイラルは、ドライヤーファブリックまたはコンベヤベルトの意図された走行方向に対して横方向に縁部から縁部まで延在する。一例として28で示されるそれらの頭部湾曲部を用いて、それらは、連結ワイヤ29、30、31を挿入するためのチャネルがそれぞれの場合に形成されるように互いに重なり合い、それを介して個々のスパイラル24、25、26、27がヒンジ状に互いに連結される。
【0072】
平坦なフィラーワイヤ32は、スパイラル24、25、26、27の直線状の巻き脚部によって形成されたキャビティに挿入され、ここではそのうちの1つのみが示されている。これらのフィラーワイヤ32は、特定の用途に従ってスパイラルリンクバンド23の透過性を調整するために使用することができる。これらは省略することもできる。
【0073】
スパイラルリンクバンド23は、2,5-フランジカルボン酸、特にPEFから作製された少なくとも1つのバイオポリマーから部分的にまたは全体的になる。これに関して、スパイラル24、25、26、27の一部または全部、および/または連結ワイヤ29、30、31の一部または全部、および/またはフィラーワイヤ32の一部または全部は、存在する場合、2,5-フランジカルボン酸ベースのバイオポリマーを含むか、またはそれからなってもよい。
【0074】
最後に、
図5は、本発明による工業用テキスタイル33の第5の実施形態を示し、これは、特に、抄紙用具、または抄紙用具用もしくはプロセスベルトやコンベヤベルト用の支持体を形成することができる。
【0075】
テキスタイル33は、多成分糸35として形成された立糸と、多成分糸35を取り囲むステッチ糸36、特に経編ステッチ糸とを含む縦糸34を含む。縦糸34の立糸の各多成分糸35は、この場合、3つの単糸を含み、これらは、例示として、37、38、および39として概略図で示される。この場合、単糸37、38、39は、モノフィラメント37、短繊維糸38およびマルチフィラメント39であり、これは例としてのみ理解されるべきである。縦糸34のステッチ糸36は、モノフィラメントから形成されている。上記構成の縦糸34に加えて、テキスタイル33はさらに、モノフィラメントのマガジン緯糸によって提供される横糸40を含む。
【0076】
また、第5の実施形態例では、糸34、40の一部または全部は、それぞれ部分的にまたは全体的に、2,5-フランジカルボン酸を使用して作製された少なくとも1つのバイオポリマー、特にPEFで作製される。
【0077】
図5は1つの層のみを示しているが、もちろん、この層に加えて、同じまたは異なる設計の他の層が存在することも可能であり、この場合、複数の層は、機械的に、好ましくはニードリングによって、または材料的に接着、溶接もしくは融着によって互いに接合されることに留意されたい。
【0078】
さらに、工業用テキスタイル1、11、17、22、33が、2,5-フランジカルボン酸を使用して製造されたバイオベースのバイオポリマーを最大限に、特に100%含む場合、特に持続可能であることに留意すべきである。工業用テキスタイル1、11、17、22、33が、少なくとも50重量%、特に少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは100重量%の、2,5-フランジカルボン酸を使用して製造された少なくとも1つのバイオポリマーからなる場合、特に好適であることが示されている。
【0079】
工業用テキスタイルがFDCAベースのバイオポリマーから全体的になるわけではない場合、他の、好ましくはより小さいポリマー部分は、
- 生分解性の天然またはバイオベースのバイオポリマー[デンプンおよび/またはセルロースおよび/またはリグニンおよび/またはキチンおよび/またはキトサンおよび/またはポリ乳酸(PLA)および/またはポリヒドロキシアルカノエート(PHA)および/またはポリブチレンサクシネート(PBS)および/またはポリエチレン-コ-イソソルビド-テレフタレートポリマー(PEIT)および/またはコポリマー]、および/または
- 非生分解性のバイオベースのバイオポリマー(バイオベースのセバシン酸を使用したポリアミド6.10)、および/または
- 生分解性の石油化学ベースのバイオポリマー、および/または
- 非生分解性の石油化学ベースのポリマー[ポリアミド(PA)および/またはポリエステル、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)および/またはポリトリメチレンテレフタレート(PTT)および/またはポリエチレンテレフタレート(PET)および/またはポリエチレンナフタレート(PEN)および/またはポリエチレン(PE)および/またはポリ塩化ビニル(PVC)および/またはポリフェニレンスルフィド(PPS)および/またはポリウレタン(PU)および/またはコポリマー]
を含んでもよく、またはそれによって与えられることが可能である。
【0080】
2,5-フランジカルボン酸をベースに製造されたバイオポリマーを工業用テキスタイル1、11、17、22、33に用いることで、特に持続可能な製品を得ることができる。2,5-フランジカルボン酸から、優れた熱的特性ならびに機械的特性を特徴とする非常に高品質のバイオポリマーが入手可能であるので、それらから得られる製品も優れた品質を示す。
【符号の説明】
【0081】
1 抄紙用具
2、3 ファブリック層
6、7、8、9、10 糸
11 プレスフェルト
12 担体不織布
13 溶融繊維接着剤層
14 不織布層
14a 糸
15 担体
15a 糸
16 短繊維不織布
17 工業用テキスタイル
18 糸システム
19、20 糸
21 コーティング
22 工業用テキスタイル
24、25、26、27 スパイラル
29、30、31 連結ワイヤ
32 フィラーワイヤ
33 工業用テキスタイル
34 糸
35 多成分糸
36 ステッチ糸
37、38、39 単糸
40 糸