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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】遺伝子構築物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20240613BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240613BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20240613BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240613BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20240613BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240613BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240613BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240613BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240613BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240613BHJP
   C07K 14/015 20060101ALN20240613BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
A61P25/02
A61P27/06
A61P27/02
A61P27/16
A61P43/00 105
A61K48/00
A61K35/76
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/12
C07K14/015
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2022078299
(22)【出願日】2022-05-11
(62)【分割の表示】P 2018540229の分割
【原出願日】2016-10-25
(65)【公開番号】P2022116040
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】1518911.1
(32)【優先日】2015-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518140302
【氏名又は名称】ケセラ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】QUETHERA LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】ウィドーソン,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,キース
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0288160(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0110711(US,A1)
【文献】J. Neurosci.,2002年,Vol. 22, No. 10,pp. 3977-3986
【文献】IOVS,2010年,Vol. 51, No. 9,pp. 4722-4731
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チロシンキナーゼ受容体B(TrkB)をコードする第一のコード配列と、前記TrkB受容体のアゴニストをコードする第二のコード配列とに動作可能に連結されたプロモーターを含む遺伝子構築物を含む組換えアデノ随伴ベクター(rAAV)であって、前記第二のコード配列が、前記TrkB受容体の前記アゴニストの分泌を増幅するシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、前記アゴニストが、成熟型BDNFであり、前記遺伝子構築物が、前記第一のコード配列と前記第二のコード配列との間に配置されたスペーサー配列を含み、前記スペーサー配列が、消化され、それにより前記TrkB受容体及び前記アゴニストを別個の分子として生成するように構成されたペプチドスペーサーをコードする、組換えアデノ随伴ベクター
【請求項2】
前記遺伝子構築物が、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WHPE)を表すヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項3】
前記WHPEが配列番号57若しくは58に表される核酸配列、又は配列番号57若しくは58と少なくとも90%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含む、請求項2に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項4】
前記遺伝子構築物が、ポリAテールをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項5】
前記ポリAテールが、配列番号59に表される核酸配列、又は配列番号59と少なくとも90%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含む、請求項4に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項6】
前記プロモーターが、ヒトシナプシンI(SYN I)プロモーターであり、前記プロモーターが配列番号1に表されるヌクレオチド配列、又は配列番号1と少なくとも90%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含む、又は前記プロモーターがCAGプロモーターであり、前記プロモーターが配列番号2、3若しくは48に表されるヌクレオチド配列、又は配列番号2、3若しくは48と少なくとも90%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項7】
前記スペーサー配列が、ウイルスペプチドスペーサー配列を含み、且つコードする、請求項1~6のいずれか1項に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項8】
前記スペーサー配列が、ウイルス2Aペプチドスペーサー配列を含み、且つコードする、請求項7に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項9】
前記ペプチドスペーサー配列が、配列番号4に表されるアミノ酸配列、又は配列番号4と少なくとも95%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含む、又は前記スペーサー配列が、配列番号5に表されるヌクレオチド配列、又は配列番号5と少なくとも90%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含む、又は前記ペプチドスペーサー配列が、配列番号6に表されるアミノ酸配列、又は配列番号6と少なくとも95%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含む、又は前記スペーサー配列が、配列番号7に表されるヌクレオチド配列、又は配列番号7と少なくとも90%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含む、又は前記ペプチドスペーサー配列が、配列番号8に表されるアミノ酸配列、又は配列番号8と少なくとも95%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項10】
前記第一のコード配列が、TrkBのヒトカノニカルアイソフォームをコードするヌクレオチド配列を含み、前記TrkBのヒトカノニカルアイソフォームが、配列番号9に表されるアミノ酸配列、又は配列番号9と少なくとも90%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含む、及び/又は前記第一のコード配列が、配列番号10に表されるヌクレオチド配列、又は配列番号10と少なくとも90%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含む、及び/又は前記第一のコード配列が、TrkBのアイソフォーム4をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項11】
前記TrkBのアイソフォーム4が、配列番号11に表されるアミノ酸配列、又は配列番号11と少なくとも90%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含む、請求項10に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項12】
前記第一のコード配列が、配列番号12に表されるヌクレオチド配列、又は配列番号12と少なくとも90%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含む、請求項10又は11に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項13】
前記第一のコード配列が、配列番号9で表されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含み、配列番号9の516位、701位、705位、706位及び/又は816位の1つ又は複数のチロシン残基が、異なるアミノ酸残基に修飾される、請求項1~12のいずれか1項に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項14】
配列番号9の516位、701位、705位、706位及び/又は816位の少なくとも2つのチロシン残基が、異なるアミノ酸残基に修飾されている、請求項13に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項15】
配列番号9の516位、701位、705位、706位及び/又は816位の5つのチロシン残基全てが、異なるアミノ酸残基に修飾されている、請求項14に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項16】
前記チロシン残基又は各チロシン残基が、グルタミン酸に修飾されている、請求項13~15のいずれか1項に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項17】
前記TrkB受容体が、配列番号13に表されるアミノ酸配列、又は配列番号13と少なくとも90%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含む、請求項13に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項18】
前記第一のコード配列が、配列番号14に表されるヌクレオチド配列、又は配列番号14と少なくとも90%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含む、請求項17に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項19】
前記第二のコード配列が、配列番号18に表されるアミノ酸配列、又は配列番号18と少なくとも90%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含む成熟型BDNFをコードする核酸配列を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項20】
前記第二のコード配列が、配列番号19に表されるヌクレオチド配列、又は配列番号19と少なくとも90%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項21】
前記ヌクレオチド配列が、BDNFのためのカノニカルなシグナルペプチドをコードし、前記第二のコード配列が、配列番号20に表されるアミノ酸配列、又は配列番号20に表されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含むシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、又は前記第二のコード配列が、配列番号21に表されるヌクレオチド配列、又は配列番号21に表されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項22】
前記第二のコード配列が、配列番号23、25、27若しくは29のいずれか1つに表されるシグナル配列ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、又は前記シグナルペプチドが、配列番号22、24、26若しくは28のいずれか1つに表されるアミノ酸配列を含む、及び/又は前記第二のコード配列が、配列番号31、33、35、37、39、41、43、45、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101若しくは103のいずれか1つに表されるシグナル配列ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、又は前記シグナルペプチドが、配列番号30、32、34、36、38、40、42、44、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100若しくは102のいずれか1つに表されるアミノ酸配列を含む、及び/又は前記遺伝子構築物が、配列番号107若しくは108に表されるヌクレオチド配列、又は配列番号107若しくは108と少なくとも90%の配列同一性を有する断片若しくは変異体を含む、請求項21に記載の組換えアデノ随伴ベクター
【請求項23】
前記rAAVベクターが、AAV-1ベクター、AAV-2ベクター、AAV-3Aベクター、AAV-3Bベクター、AAV-4ベクター、AAV-5ベクター、AAV-6ベクター、AAV-7ベクター、AAV-8ベクター、AAV-9ベクター、AAV-10ベクター又はAAV-11ベクターである、請求項1~22のいずれか1項に記載の組換えアデノ随伴ベクター。
【請求項24】
前記組換えベクターが、rAAV血清型-2ベクターである、請求項1~23のいずれか1項に記載の組換えアデノ随伴ベクター。
【請求項25】
薬剤としての使用又は治療における使用のための、請求項1~24のいずれか1項に記載の組換えアデノ随伴ベクター。
【請求項26】
視神経障害若しくは蝸牛障害を処置、予防若しくは改良することにおける使用のため、又は神経再生及び/若しくは生存を促進するための、請求項1~24のいずれか1項に記載の組換えアデノ随伴ベクター。
【請求項27】
前記視神経障害が、RGCの損失をもたらし得る病理生理学的状態であり、形質転換されていない、又は形質転換されている幹細胞を患者の目又は視力に関連する領域に導入することによりRGCの置換を支援するのに用いられる、請求項26に記載の組換えアデノ随伴ベクター。
【請求項28】
前記病理生理学的状態が、頭部若しくは顔面への外傷、血管損傷、又は視神経からの入力情報を受け取る目の構造又は脳の領域への血液供給の部分的又は完全な喪失である、請求項27に記載の組換えアデノ随伴ベクター。
【請求項29】
前記視神経障害が、緑内障である、請求項2628のいずれか1項に記載の組換えアデノ随伴ベクター。
【請求項30】
前記蝸牛障害が、難聴又は聴覚消失である、請求項26に記載の組換えアデノ随伴ベクター。
【請求項31】
請求項1~24のいずれか1項に記載の組換えアデノ随伴ベクターと、医薬的に許容し得るビヒクルとを含む医薬組成物。
【請求項32】
請求項1~24のいずれか1項に記載の組換えアデノ随伴ベクターを、医薬的に許容し得るビヒクルと接触させることを含む、請求項31に記載の医薬組成物を調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子構築物およびそのような構築物を含む組換えベクター、ならびに緑内障および聴覚消失をはじめとする一定範囲の障害を処置するための、または神経再生および/もしくは生存を促進するための遺伝子療法における該構築物およびベクターの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障は、進行性の視神経変性、網膜神経節細胞(RGC)の死滅および軸索損失を特徴とし、視神経乳頭の陥凹および視力喪失をもたらす、目の障害群を定義するために用いられる用語である。緑内障は、世界中の盲目の主因であり[1]、緑内障の発症率は、年齢と共に劇的に増加する。40歳以上の英国のおよそ50万人および北アメリカの220万人より多くが、緑内障を有する。その上、米国では、1時間に数名が、この視力を脅かす疾患によって盲目になっている[2]。高齢者人口が急速に増加し続けているため、緑内障は差し迫った社会的および医学的問題になった。眼内圧(IOP)の上昇は、年齢を除く、緑内障の最も重要な危険因子であり[3]、現在公認の処置は全て、IOP低下により作用する[4~5]。
【0003】
緑内障は、視野測定により、そして「カッピング」を検出する視神経の眼底検査により、視力喪失前に診断され得る。現行の緑内障管理は、局所適用される薬物を利用してさらなる視神経傷害を予防するために、IOPを10~21mmHgの間の正常レベルまで低下させることに基づく[6]。正常な成人の平均IOPは、15~16mmHgである。現在、IOPを低下させるのに用いられる薬剤には5つの主要な分類:β-アドレナリン作動性アンタゴニスト、アドレナリン作動性アゴニスト、副交感神経刺激薬、プロスタグランジン様類似体、および炭酸脱水酵素阻害剤、が存在する[7]。これらの薬物は、正しく用いられればIOPを低下させるのに比較的効果があるが、一部の患者では重度の副作用を引き起こし、それにより患者の生活の質に悪影響を及ぼす可能性がある。加えて、IOPを低下させる点眼薬処置へのアドヒアランスは、特に多剤の使用を必要とする高齢患者では、不十分になることが多い。IOP低下処置を処方された患者の50%未満が、実際にそれを指示通り規則的に使用しており、根底にある病気のコントロールに明確な影響を及ぼしていると推定されている。IOPのさらなる低下が必要とされる場合、または薬剤でIOPの十分な低下ができない場合、レーザー線維柱帯形成術が利用される場合があるが、この処置は、多くの患者で適切なIOP低下を実現できない。IOPが、依然として適切にコントロールされない場合、緑内障の切開術が必要となる場合がある。しかしIOP低下処置は、多くの患者で増悪を予防することができず、緑内障は、今も世界中で不可逆的失明の主因である。緑内障性RGCの神経保護および視神経を形成する該RGCの軸索投射は、それゆえ従来のIOP低下処置への補助として使用される貴重な治療パラダイムであり、従来の治療に反して増悪した患者では特に重要である[8]。
【0004】
緑内障性視神経症は、特有の病理生理学的変化と、それに続くRGCおよびその軸索の死滅から生じると考えられる。RGC死滅のプロセスは、二相性、即ち傷害開始を担う一次的損傷と、その後の、変性した細胞を取り囲む不適切な環境に起因し得るより緩やかな二次的変性であると思われる[9]。
【0005】
緑内障の実験動物モデルおよびヒトの緑内障におけるRGC死滅のメカニズムは、アポトーシスを含むことが示されている[10]。アポトーシスを惹起する分子メカニズムは、同定されていないが、神経栄養因子の欠乏、虚血、グルタミン酸塩の慢性的増加および無秩序な一酸化窒素代謝が、可能性のあるメカニズムであると疑われている[11]。
【0006】
神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、およびニューロトロフィン-4/5(NT-4/5)と共に脳由来神経栄養因子(BDNF)は、栄養因子のニューロトロフィンファミリーのメンバーである[12~13]。ニューロトロフィンは、RGCをはじめとする、末梢および中枢神経系の両方での広範囲の神経細胞の発達、生存および機能において肝要な役割を担う。ニューロトロフィンは、2つの細胞表面受容体:低親和性のp75NTR受容体および高親和性のチロシン受容体キナーゼ(Trk)ファミリーと相互作用する[12~13]。神経成長因子(NGF)は、主にTrkAに結合し、脳由来神経栄養因子(BDNF)およびニューロトロフィン4/5(NT-4/5)は、トロポミオシン(tropmyosin)受容体キナーゼ-B(TrkB)に結合し、ニューロトロフィン-3(NT-3)は、TrkCに(そしてより少ない度合いでTrkAに)結合する[12~13]。
【0007】
ニューロトロフィンのうち、BDNFは、損傷されたRGCにとって最も強力な生存因子である[14~21]。BDNFは、脳で産生されて、視神経を通した逆行性軸索輸送により網膜に輸送され、そこでRGCを支援し、それらの生存を維持するタンパク質分子である[15~21]。N-メチル-D-アスパラギン酸塩などのグルタミン酸受容体アゴニストでの興奮毒性損傷時など特定の条件では、BDNFも、比較的低レベルではあるがRGC内で産生され得る[22~23]。BDNFは通常、短いシグナルペプチド配列を含むプレプロポリペプチド(即ち、プレプロBDNF)として産生され、細胞外空間への放出のために小胞への該ポリペプチド全体の運搬を促進する。シグナルペプチドの開裂および除去は、プレプロBDNFをプロBDNFに変換する。N-末端プロBDNF配列はその後、細胞内で開裂されるか、または細胞外で成熟型BDNF(mBDNF)を生み出す[24]。プロBDNFおよびmBDNFは両者とも、生物活性を有し、プロBDNFは優先的にp75NTR受容体を活性化し、より短いmBDNFは、TrkB受容体を活性化する[25~27]。網膜におけるp75NTRおよびTrkB受容体の活性化は、RGCの生存に対して反対の影響を示し、前者は、直接的なRGC細胞体-p75NTR活性化(RGC-cell-body-p75NTR-activation)[25~28]を通して、または間接的にミュラー細胞でのp75NTR活性化を介して、アポトーシスを担い、それにより腫瘍壊死因子α(TNF-α)の放出を刺激して、RGC損失をさらに促進する[29]。
【0008】
緑内障の動物モデルで、神経挫滅またはIOP上昇の後、神経栄養性mBDNF/TrkBシグナル伝達からプロBDNF/p75NTR経路に向かうシフトが存在することが実証されている。網膜におけるmBDNFおよびTrkB受容体のレベル低下が、プロBDNF[28]およびp75NTR受容体[32]の相対レベルにおける相反する上昇と共に実証されている[27、30~31]。実験的にIOPを上昇させたラットへの組換えタンパク質の眼内注射によるmBDNFの補充は、未処置の目に比較してRGC生存を増大させ、それによりこのニューロトロフィンの重要な神経保護的役割が確認された[19~21]。
【0009】
mBDNFは、眼の中で急速に変性するため、緑内障の目においてmBDNFレベルを維持するためには、mBDNFの定期的注射が必要となろう。mBDNFの規則的な眼内注射の必要性を克服するために、網膜への、BDNFをコードするトランスジーンの組換えアデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター送達を利用して、緑内障動物モデルにおけるRGC死滅を遅延または予防するための、一定して高いBDNFを提供する試みが行われた[18、33~34]。rAAVベクターは、一本鎖DNAゲノムからなる。それらは、低い毒性を示し、複数の臨床試験で遺伝子療法でのウイルスベクターとして用いることに成功した。組換えmBDNF単独の硝子体内注射、または遺伝子療法を介した局所BDNF産生の増加は、IOP上昇または他の視神経傷害後に短期間にわたりRGC損失を予防するのに効果的であることが示されたが、BDNFの有益効果は、一過性であることが示された[18]。しかし内因性BDNF遺伝子配列を組み込んだ遺伝子療法もまた、プロBDNFと、予定されたmBDNFを産生および放出することが可能である。
【0010】
アゴニスト性を有する抗体を利用して、RGC内の受容体の発現増加により、または残留する細胞外TrkB受容体の一定した刺激により、TrkBシグナル伝達の損失を減弱または予防することを目標とした遺伝子療法でも、RGC損失予防の成功が実証された[35~36]。しかし、mBDNF/TrkB経路を通した栄養性シグナル伝達の減少は、mBDNF活性化TrkB受容体の内在化、および細胞表面にあるこれらの受容体の、細胞内シグナル伝達が不可能なTrkBアイソフォームでの置き換えによりさらに複雑になる[37~38]。その上、mBDNFの存在下でTrkB受容体二量体の自己リン酸化後のTrkB受容体の活性解除を担う生化学系は、IOP上昇を受けた網膜で上方制御される[39]。
【0011】
さらに緑内障に加えて、BDNF/TrkB軸は、損傷すると有毛細胞を損失して聴覚消失し得[40~42]、神経再生を損失し得る[43~44]内耳の、具体的には蝸牛構造の構成要素の神経保護にも関連づけられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それゆえ、緑内障および聴覚消失の処置のため、そして神経再生または生存の促進のための改善された遺伝子療法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、単一プロモーターの制御下でチロシンキナーゼ受容体B(TrkB)およびTrkB受容体アゴニストをコードする新規な遺伝子構築物を構築した。該構築物のプロモーターは、該アゴニストおよび該受容体が確実に網膜神経節細胞(RGC)、蝸牛または神経細胞のみで発現され、これらの細胞の生存を促進するように用いることができる。
【0014】
したがって本発明の第一の態様によれば、チロシンキナーゼ受容体B(TrkB)をコードする第一のコード配列と、該TrkB受容体のアゴニストをコードする第二のコード配列とに動作可能に連結されたプロモーターを含む遺伝子構築物が提供される。
【0015】
本発明者らは、1つの遺伝子構築物内でTrkB受容体およびそのアゴニストの両方をコードする遺伝子を組み合わせることが可能であることを、実施例で実証した。これは、大きなサイズであれば特に困難であり、生理学的に有用な濃度でそれらを共発現し得ると予測することはできなかった。有利には本発明の構築物は、先行技術で記載された通り、組換えタンパク質を注射する必要がない。さらに、先行技術では、タンパク質の定期的注射を実施する必要があるが、本発明の構築物は、単回の遺伝子療法用注射のみが必要となる。
【0016】
好ましくは、使用の際に、TrkB受容体は、アゴニストにより活性化され、それにより網膜神経節細胞(RGC)、神経細胞または蝸牛細胞の生存を促進する。それゆえ有利には本発明の構築物は、これらの細胞におけるTrkBシグナル伝達を維持または増進するために、RGC、神経細胞または蝸牛細胞を標的とするように用いることができる。したがって該構築物を用いて、緑内障および聴覚消失の病理生理学的ストレッサーからの防御を最大にすること、ならびに神経再生および/または生存を促進することができる。さらに該構築物を用いて、1種または複数のプロモーターの制御下でTrkB受容体および該受容体のアゴニストの発現により、緑内障または聴覚消失の長期処置を提供することができる。結論として、該構築物は、併用したとしても一過性の治療効果を提供する、複数の代替的処置を利用する必要性を克服した。さらに本発明の構築物は、TrkB受容体および該受容体のアゴニストの両方の局在的増加により、TrkB受容体アゴニストへのRGCまたは蝸牛細胞感受性を有意に増大するのに用いられ得るため、有利である。
【0017】
好ましくは本発明の遺伝子構築物は、発現カセットを含み、その一実施形態が図1に示される。図1で認められる通り、該構築物は、該プロモーターと、TrkBをコードする第一のヌクレオチド配列と、成熟型脳由来神経栄養素(mBDNF)をコードしてTrkB受容体の好ましいアゴニストとして働く第二のヌクレオチド配列と、を含む。しかし、本明細書で議論される通り、他のアゴニストが用いられ得ることは認識されよう。同じく図1に示される通り、該発現カセットはまた、2Aスペーサー配列と、肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WHPE)をコードする配列と、ポリAテールをコードする配列と、左および右側の逆位末端配列(ITRs)と、を含む。
【0018】
つまり好ましくは該遺伝子構築物は、第一のコード配列と第二のコード配列の間に配置されたスペーサー配列を含み、該スペーサー配列は、消化または切断され、それにより該TrkB受容体および該アゴニストを別個の分子として生成するように構成されたペプチドスペーサーをコードする。図1に示された実施形態において、TrkB受容体のコード配列が、受容体アゴニスト(BDNF)のコード配列の5’側に配置され、それらの間にスペーサー配列を有する。しかし別の実施形態において、該受容体アゴニストのコード配列が、該受容体のコード配列の5’側に配置され、それらの間にスペーサー配列を有し得る。
【0019】
好ましくは、該遺伝子構築物は、2つのトランスジーン、即ちTrkB受容体およびそのアゴニスト、好ましくはBDNFの発現を増大するウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WHPE)をコードするヌクレオチド配列を含む。好ましくは該WHPEコード配列は、該トランスジーンコード配列の3’側に配置される。
【0020】
ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WHPE)の一実施形態は、ガンマ-アルファ-ベータエレメントを含み592bp長であり、本明細書では以下の配列番号57として参照される:
AATCAACCTCTGGATTACAAAATTTGTGAAAGATTGACTGGTATTCTTAACTATGTTGCTCCTTTTACGCTATGTGGATACGCTGCTTTAATGCCTTTGTATCATGCTATTGCTTCCCGTATGGCTTTCATTTTCTCCTCCTTGTATAAATCCTGGTTGCTGTCTCTTTATGAGGAGTTGTGGCCCGTTGTCAGGCAACGTGGCGTGGTGTGCACTGTGTTTGCTGACGCAACCCCCACTGGTTGGGGCATTGCCACCACCTGTCAGCTCCTTTCCGGGACTTTCGCTTTCCCCCTCCCTATTGCCACGGCGGAACTCATCGCCGCCTGCCTTGCCCGCTGCTGGACAGGGGCTCGGCTGTTGGGCACTGACAATTCCGTGGTGTTGTCGGGGAAGCTGACGTCCTTTCCATGGCTGCTCGCCTGTGTTGCCACCTGGATTCTGCGCGGGACGTCCTTCTGCTACGTCCCTTCGGCCCTCAATCCAGCGGACCTTCCTTCCCGCGGCCTGCTGCCGGCTCTGCGGCCTCTTCCGCGTCTTCGCCTTCGCCCTCAGACGAGTCGGATCTCCCTTTGGGCCGCCTCCCCGCCTG
[配列番号57]
【0021】
好ましくは該WHPEは、実質的に配列番号57に表される核酸配列、またはその断片もしくは変異体を含む。
【0022】
しかし好ましい実施形態において、ベータエレメントの欠失により247bp長になった、本明細書では以下の配列番号58として参照されるトランケート型WHPEが用いられる:
AATCAACCTCTGGATTACAAAATTTGTGAAAGATTGACTGGTATTCTTAACTATGTTGCTCCTTTTACGCTATGTGGATACGCTGCTTTAATGCCTTTGTATCATGCTATTGCTTCCCGTATGGCTTTCATTTTCTCCTCCTTGTATAAATCCTGGTTAGTTCTTGCCACGGCGGAACTCATCGCCGCCTGCCTTGCCCGCTGCTGGACAGGGGCTCGGCTGTTGGGCACTGACAATTCC
GTGGTGT
[配列番号58]
【0023】
有利には、該構築物内で用いられる該トランケート型WHPE配列は、トランスジーン発現に負の影響を及ぼさずに全体として約300bpを保持した。好ましくは該WHPEは、実質的に配列番号58に表される核酸配列、またはその断片もしくは変異体を含む。
【0024】
好ましくは該遺伝子構築物は、ポリAテールをコードするヌクレオチド配列を含む。好ましくは該ポリAテールのコード配列は、該トランスジーンコード配列の3’側、好ましくは該WHPEコード配列の3’側に配置される。
【0025】
好ましくは該ポリAテールは、シミアンウイルス40ポリAの224bp配列を含む。該ポリAテールの一実施形態は、本明細書では以下の配列番号59として参照される:
AGCAGACATGATAAGATACATTGATGAGTTTGGACAAACCACAACTAGAATGCAGTGAAAAAAATGCTTTATTTGTGAAATTTGTGATGCTATTGCTTTATTTGTAACCATTATAAGCTGCAATAAACAAGTTAACAACAACAATTGCATTCATTTTATGTTTCAGGTTCAGGGGGAGGTGTGGGAGGTTTTTTAAAGCAAGTAAAACCTCTACAAATGTGGTA
[配列番号59]
【0026】
好ましくは該ポリAテールは、実質的に配列番号59に表される核酸配列、またはその断片もしくは変異体を含む。
【0027】
好ましくは該遺伝子構築物は、左および/または右の末端逆位配列(ITR)を含む。好ましくは各ITRは、該構築物の5’および/または3’末端に配置される。
【0028】
第一の態様の該遺伝子構築物内のプロモーターは、RNAポリメラーゼを誘導し、第一および第二のコード配列に結合してそれらを転写することが可能な任意のヌクレオチド配列であり得る。1つの好ましい実施形態において、該プロモーターは、ヒトシナプシンI(SYN I)プロモーターである。該ヒトシナプシンI(SYN I)プロモーターをコードする469ヌクレオチド配列の一実施形態は、本明細書では以下の配列番号1として参照される:
CTGCAGAGGGCCCTGCGTATGAGTGCAAGTGGGTTTTAGGACCAGGATGAGGCGGGGTGGGGGTGCCTACCTGACGACCGACCCCGACCCACTGGACAAGCACCCAACCCCCATTCCCCAAATTGCGCATCCCCTATCAGAGAGGGGGAGGGGAAACAGGATGCGGCGAGGCGCGTGCGCACTGCCAGCTTCAGCACCGCGGACAGTGCCTTCGCCCCCGCCTGGCGGCGCGCGCCACCGCCGCCTCAGCACTGAAGGCGCGCTGACGTCACTCGCCGGTCCCCCGCAAACTCCCCTTCCCGGCCACCTTGGTCGCGTCCGCGCCGCCGCCGGCCCAGCCGGACCGCACCACGCGAGGCGCGAGATAGGGGGGCACGGGCGCGACCATCTGCGCTGCGGCGCCGGCGACTCAGCGCTGCCTCAGTCTGCGGTGGGCAGCGGAGGAGTCGTGTCGTGCCTGAGAGCGCAG
[配列番号1]
【0029】
それゆえ、好ましくは該プロモーターは、実質的に配列番号1に表されるヌクレオチド酸(nucleotide acid)配列、またはその断片もしくは変異体を含み得る。
【0030】
別の実施形態において、該プロモーターは、CAGプロモーターである。該CAGプロモーターは、好ましくはサイトメガロウイルス初期エンハンサーエレメントと、ニワトリベータアクチン遺伝子の第一のエキソンおよび第一のイントロンと、ウサギベータグロビン遺伝子のスプライスアクセプターと、を含み、それによりRGCおよび蝸牛細胞のみでの組織特異性発現を容易にする。CAGプロモーターをコードする1733ヌクレオチド配列の一実施形態は、本明細書では以下の配列番号2として参照される:
CTCGACATTGATTATTGACTAGTTATTAATAGTAATCAATTACGGGGTCATTAGTTCATAGCCCATATATGGAGTTCCGCGTTACATAACTTACGGTAAATGGCCCGCCTGGCTGACCGCCCAACGACCCCCGCCCATTGACGTCAATAATGACGTATGTTCCCATAGTAACGCCAATAGGGACTTTCCATTGACGTCAATGGGTGGAGTATTTACGGTAAACTGCCCACTTGGCAGTAC
ATCAAGTGTATCATATGCCAAGTACGCCCCCTATTGACGTCAATGACGGTAAATGGCCCGCCTGGCATTATGCCCAGTACATGACCTTATGGGACTTTCCTACTTGGCAGTACATCTACGTATTAGTCATCGCTATTACCATGGTCGAGGTGAGCCCCACGTTCTGCTTCACTCTCCCCATCTCCCCCCCCTCCCCACCCCCAATTTTGTATTTATTTATTTTTTAATTATTTTGTGCAGCGATGGGGGCGGGGGGGGGGGGGGGGCGCGCGCCAGGCGGGGCGGGGCGGGGCGAGGGGCGGGGCGGGGCGAGGCGGAGAGGTGCGGCGGCAGCCAATCAGAGCGGCGCGCTCCGAAAGTTTCCTTTTATGGCGAGGCGGCGGCGGCGGCGGCCCTATAAAAAGCGAAGCGCGCGGCGGGCGGGAGTCGCTGCGCGCTGCCTTCGCCCCGTGCCCCGCTCCGCCGCCGCCTCGCGCCGCCCGCCCCGGCTCTGACTGACCGCGTTACTCCCACAGGTGAGCGGGCGGGACGGCCCTTCTCCTCCGGGCTGTAATTAGCGCTTGGTTTAATGACGGCTTGTTTCTTTTCTGTGGCTGCGTGAAAGCCTTGAGGGGCTCCGGGAGGGCCCTTTGTGCGGGGGGAGCGGCTCGGGGGGTGCGTGCGTGTGTGTGTGCGTGGGGAGCGCCGCGTGCGGCTCCGCGCTGCCCGGCGGCTGTGAGCGCTGCGGGCGCGGCGCGGGGCTTTGTGCGCTCCGCAGTGTGCGCGAGGGGAGCGCGGCCGGGGGCGGTGCCCCGCGGTGCGGGGGGGGCTGCGAGGGGAACAAAGGCTGCGTGCGGGGTGTGTGCGTGGGGGGGTGAGCAGGGGGTGTGGGCGCGTCGGTCGGGCTGCAACCCCCCCTGCACCCCCCTCCCCGAGTTGCTGAGCACGGCCCGGCTTCGGGTGCGGGGCTCCGTACGGGGCGTGGCGCGGGGCTCGCCGTGCCGGGCGGGGGGTGGCGGCAGGTGGGGGTGCCGGGCGGGGCGGGGCCGCCTCGGGCCGGGGAGGGCTCGGGGGAGGGGCGCGGCGGCCCCCGGAGCGCCGGCGGCTGTCGAGGCGCGGCGAGCCGCAGCCATTGCCTTTTATGGTAATCGTGCGAGAGGGCGCAGGGACTTCCTTTGTCCCAAATCTGTGCGGAGCCGAAATCTGGGAGGCGCCGCCGCACCCCCTCTAGCGGGCGCGGGGCGAAGCGGTGCGGCGCCGGCAGGAAGGAAATGGGCGGGGAGGGCCTTCGTGCGTCGCCGCGCCGCCGTCCCCTTCTCCCTCTCCAGCCTCGGGGCTGTCCGCGGGGGGACGGCTGCCTTCGGGGGGGACGGGGCAGGGCGGGGTTCGGCTTCTGGCGTGTGACCGGCGGCTCTAGAGCCTCTGCTAACCATGTTCATGCCTTCTTCTTTTTCCTACAGCTCCTGGGCAACGTGCTGGTTATTGTGCTGTCTCATCATTTTGGCAAAGAATTG
[配列番号2]
【0031】
別の好ましい実施形態において、該プロモーターは、本明細書では以下の配列番号3として参照されるプロモーターの664のヌクレオチド形態など、CAGプロモーターのトランケート型の形態である:
CTAGATCTGAATTCGGTACCCTAGTTATTAATAGTAATCAATTACGGGGTCATTAGTTCATAGCCCATATATGGAGTTCCGCGTTACATAACTTACGGTAAATGGCCCGCCTGGCTGACCGCCCAACGACCCCCGCCCATTGACGTCAATAATGACGTATGTTCCCATAGTAACGCCAATAGGGACTTTCCATTGACGTCAATGGGTGGACTATTTACGGTAAACTGCCCACTTGGCAGTACATCAAGTGTATCATATGCCAAGTACGCCCCCTATTGACGTCAATGACGGTAAATGGCCCGCCTGGCATTATGCCCAGTACATGACCTTATGGGACTTTCCTACTTGGCAGTACATCTACGTATTAGTCATCGCTATTACCATGGTCGAGGTGAGCCCCACGTTCTGCTTCACTCTCCCCATCTCCCCCCCCTCCCCACCCCCAATTTTGTATTTATTTATTTTTTAATTATTTTGTGCAGCGATGGGGGCGGGGGGGGGGGGGGGGCGCGCGCCAGGCGGGGCGGGGCGGGGCGAGGGGCGGGGCGGGGCGAGGCGGAGAGGTGCGGCGGCAGCCAATCAGAGCGGCGCGCTCCGAAAGTTTCCTTTTATGGCGAGGCGGCGGCGGCGGCGGCCCTATAAAAAGCGAAGCGCGCGGCGGGCG
[配列番号3]
【0032】
さらに別の好ましい実施形態において、該プロモーターは、本明細書では以下の配列番号48として参照されるプロモーターの584のヌクレオチド形態など、CAGプロモーターのトランケート型の形態である:
GCGTTACATAACTTACGGTAAATGGCCCGCCTGGCTGACCGCCCAACGACCCCCGCCCATTGACGTCAATAATGACGTATGTTCCCATAGTAACGCCAATAGGGACTTTCCATTGACGTCAATGGGTGGACTATTTACGGTAAACTGCCCACTTGGCAGTACATCAAGTGTATCATATGCCAAGTACGCCCCCTATTGACGTCAATGACGGTAAATGGCCCGCCTGGCATTATGCCCAGTACATGACCTTATGGGACTTTCCTACTTGGCAGTACATCTACGTATTAGTCATCGCTATTACCATGGTCGAGGTGAGCCCCACGTTCTGCTTCACTCTCCCCATCTCCCCCCCCTCCCCACCCCCAATTTTGTATTTATTTATTTTTTAATTATTTTGTGCAGCGATGGGGGCGGGGGGGGGGGGGGGGCGCGCGCCAGGCGGGGCGGGGCGGGGCGAGGGGCGGGGCGGGGCGAGGCGGAGAGGTGCGGCGGCAGCCAATCAGAGCGGCGCGCTCCGAAAGTTTCCTTTTATGGCGAGGCGGCGGCGGCGGCGGCCCTATAAAAAGCGAAGCGCGCGGCGGGCG
[配列番号48]
【0033】
それゆえ好ましくは該プロモーターは、実質的に配列番号2、3もしくは48に表されるヌクレオチド酸(nucleotide acid)配列、またはその断片もしくは変異体を含む。
【0034】
科学文献で示される多くのバイシストロン性遺伝子構築物は、(i)2つの遺伝子の発現を別個に駆動する二重プロモーターを組み込むか、または(ii)脳心筋炎ウイルス(encepahlomyocarditis virus)(EMCV)の配列内リボソーム進入部位(IRES)を使用して、組換えウイルスベクター内の単一プロモーターから転写された2つの遺伝子を連結させている[45~46]。しかし、IRES依存性翻訳の効率は、異なる細胞および組織において変動する場合があり、IRES依存性の第二の遺伝子発現は、バイシストロン性ベクター内のキャップ依存性の第一の遺伝子発現よりも有意に低くなり得る[47]。その上、rAAVベクターのサイズ制限(一般には5kb未満)により、二重プロモーターまたはIRESリンカーを用いてTrkB受容体などの大きな遺伝子構築物をBDNFと共に組み込むことが防止される。
【0035】
したがって好ましい実施形態において、該遺伝子構築物は、第一のコード配列と第二のコード配列の間に配置されたスペーサー配列を含み、該スペーサー配列は、消化され、それにより該TrkB受容体および該アゴニストを別個の分子として生成するように構成されたペプチドスペーサーをコードする。好ましくは該スペーサー配列は、ウイルスペプチドスペーサー配列、より好ましくはウイルス2Aペプチドスペーサー配列を含み、それをコードする[47]。好ましくは該2Aペプチド配列は、第一のコード配列を第二のコード配列に結合させる。これにより、該構築物が様々なベクター内での発現で生じるサイズ制限を克服することができ、単一プロモーターの制御下で単一タンパク質として存在する第一の態様の構築物によりコードされたペプチドの全ての発現を可能にする。
【0036】
したがってTrkB、該2Aペプチドおよび該アゴニスト(好ましくはBDNF)の配列を含む単一タンパク質の翻訳に続いて、開裂が、末端グリシン-プロリンリンクのウイルス2Aペプチド配列内で起こり、それにより2つのタンパク質、即ちTrkBおよび該アゴニスト(即ち、mBDNF)を遊離させる。ウイルス2Aペプチドの残りの短いN-末端アミノ酸配列がTrkB受容体の細胞内部分に付着したままで、それにより免疫原性リスクが排除されて成熟型受容体の細胞内シグナル伝達能力を妨害しないように、該遺伝子構築物が設計される。C-末端ウイルス2A配列からの残留するプロリンアミノ酸は、N-末端BDNFシグナルペプチドに付着されたままであり、成熟型タンパク質からのシグナル配列の開裂後に最終的にmBDNFタンパク質から除去される。
【0037】
本発明者らは、スペーサー配列の2つの実施形態を作製した。本明細書に記載された両方の実施形態に共通するペプチドスペーサー配列の1つの重要区分は、C-末端である。したがって好ましくは、該ペプチドスペーサー配列は、本明細書では以下の配列番号4として参照されるアミノ酸配列、またはその断片もしくは変異体を含む:
QAGDVEENPGP
[配列番号4]
【0038】
好ましくは該ペプチドスペーサー配列の消化または切断部位は、配列番号4の末端グリシンと最後のプロリンの間に配置される。
【0039】
第一の好ましい実施形態において、該スペーサー配列は、本明細書では以下の配列番号5として参照されるヌクレオチド配列、またはその断片もしくは変異体を含む:
GGAAGCGGAGCTACTAACTTCAGCCTGCTGAAGGCTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCT
[配列番号5]
【0040】
この第一の実施形態において、該ペプチドスペーサー配列は、本明細書では以下の配列番号6として参照されるアミノ酸配列、またはその断片もしくは変異体を含む:
GSGATNFSLLQAGDVEENPGP
[配列番号6]
【0041】
第二の好ましい実施形態において、該スペーサー配列は、本明細書では以下の配列番号7として参照されるヌクレオチド配列、またはその断片もしくは変異体を含む:
AGCGGAGCTACTAACTTCAGCCTGCTGAAGCAGGCTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCT
[配列番号7]
【0042】
この第二の実施形態において、該ペプチドスペーサー配列は、本明細書では以下の配列番号8として参照されるアミノ酸配列、またはその断片もしくは変異体を含む:
SGATNFSLLKQAGDVEENPGP
[配列番号8]
【0043】
本発明者らは、TrkB受容体の配列を注意深く考慮し、第一の態様の遺伝子構築物内の第一のコード配列によってコードされた受容体の複数の好ましい実施形態を作製した。
【0044】
1つの好ましい実施形態において、該第一のコード配列は、TrkBのヒトカノニカルアイソフォームをコードするヌクレオチド配列を含む。好ましくはTrkBの該カノニカルアイソフォームは、本明細書では以下に表される配列番号9として参照されるアミノ酸配列(822残基)、またはその断片もしくは変異体を含む:
MSSWIRWHGPAMARLWGFCWLVVGFWRAAFACPTSCKCSASRIWCSDPSPGIVAFPRLEPNSVDPENITEIFIANQKRLEIINEDDVEAYVGLRNLTIVDSGLKFVAHKAFLKNSNLQHINFTRNKLTSLSRKHFRHLDLSELILVGNPFTCSCDIMWIKTLQEAKSSPDTQDLYCLNESSKNIPLANLQIPNCGLPSANLAAPNLTVEEGKSITLSCSVAGDPVPNMYWDVGNLVSKHMNETSHTQGSLRITNISSDDSGKQISCVAENLVGEDQDSVNLTVHFAPTITFLESPTSDHHWCIPFTVKGNPKPALQWFYNGAILNESKYICTKIHVTNHTEYHGCLQLDNPTHMNNGDYTLIAKNEYGKDEKQISAHFMGWPGIDDGANPNYPDVIYEDYGTAANDIGDTTNRSNEIPSTDVTDKTGREHLSVYAVVVIASVVGFCLLVMLFLLKLARHSKFGMKGPASVISNDDDSASPLHHISNGSNTPSSSEGGPDAVIIGMTKIPVIENPQYFGITNSQLKPDTFVQHIKRHNIVLKRELGEGAFGKVFLAECYNLCPEQDKILVAVKTLKDASDNARKDFHREAELLTNLQHEHIVKFYGVCVEGDPLIMVFEYMKHGDLNKFLRAHGPDAVLMAEGNPPTELTQSQMLHIAQQIAAGMVYLASQHFVHRDLATRNCLVGENLLVKIGDFGMSRDVYSTDYYRVGGHTMLPIRWMPPESIMYRKFTTESDVWSLGVVLWEIFTYGKQPWYQLSNNEVIECITQGRVLQRPRTCPQEVYELMLGCWQREPHMRKNIKGIHTLLQNLAKASPVYLDILG
[配列番号9]
【0045】
好ましくはこの実施形態において、第一のコード配列は、本明細書では以下に表される配列番号10として参照されるヌクレオチド配列、またはその断片もしくは変異体を含む:
ATGTCGTCCTGGATAAGGTGGCATGGACCCGCCATGGCGCGGCTCTGGGGCTTCTGCTGGCTGGTTGTGGGCTTCTGGAGGGCCGCTTTCGCCTGTCCCACGTCCTGCAAATGCAGTGCCTCTCGGATCTGGTGCAGCGACCCTTCTCCTGGCATCGTGGCATTTCCGAGATTGGAGCCTAACAGTGTAGATCCTGAGAACATCACCGAAATTTTCATCGCAAACCAGAAAAGGTTAGAAATCATCAACGAAGATGATGTTGAAGCTTATGTGGGACTGAGAAATCTGACAATTGTGGATTCTGGATTAAAATTTGTGGCTCATAAAGCATTTCTGAAAAACAGCAACCTGCAGCACATCAATTTTACCCGAAACAAACTGACGAGTTTGTCTAGGAAACATTTCCGTCACCTTGACTTGTCTGAACTGATCCTGGTGGGCAATCCATTTACATGCTCCTGTGACATTATGTGGATCAAGACTCTCCAAGAGGCTAAATCCAGTCCAGACACTCAGGATTTGTACTGCCTGAATGAAAGCAGCAAGAATATTCCCCTGGCAAACCTGCAGATACCCAATTGTGGTTTGCCATCTGCAAATCTGGCCGCACCTAACCTCACTGTGGAGGAAGGAAAGTCTATCACATTATCCTGTAGTGTGGCAGGTGATCCGGTTCCTAATATGTATTGGGATGTTGGTAACCTGGTTTCCAAACATATGAATGAAACAAGCCACACACAGGGCTCCTTAAGGATAACTAACATTTCATCCGATGACAGTGGGAAGCAGATCTCTTGTGTGGCGGAAAATCTTGTAGGAGAAGATCAAGATTCTGTCAACCTCACTGTGCATTTTGCACCAACTATCACATTTCTCGAATCTCCAACCTCAGACCACCACTGGTGCATTCCATTCACTGTGAAAGGCAACCCCAAACCAGCGCTTCAGTGGTTCTATAACGGGGCAATATTGAATGAGTCCAAATACATCTGTACTAAAATACATGTTACCAATCACACGGAGTACCACGGCTGCCTCCAGCTGGATAATCCCACTCACATGAACAATGGGGACTACACTCTAATAGCCAAGAATGAGTATGGGAAGGATGAGAAACAGATTTCTGCTCACTTCATGGGCTGGCCTGGAATTGACGATGGTGCAAACCCAAATTATCCTGATGTAATTTATGAAGATTAT
GGAACTGCAGCGAATGACATCGGGGACACCACGAACAGAAGTAATGAAATCCCTTCCACAGACGTCACTGATAAAACCGGTCGGGAACATCTCTCGGTCTATGCTGTGGTGGTGATTGCGTCTGTGGTGGGATTTTGCCTTTTGGTAATGCTGTTTCTGCTTAAGTTGGCAAGACACTCCAAGTTTGGCATGAAAGGCCCAGCCTCCGTTATCAGCAATGATGATGACTCTGCCAGCCCACTCCATCACATCTCCAATGGGAGTAACACTCCATCTTCTTCGGAAGGTGGCCCAGATGCTGTCATTATTGGAATGACCAAGATCCCTGTCATTGAAAATCCCCAGTACTTTGGCATCACCAACAGTCAGCTCAAGCCAGACACATTTGTTCAGCACATCAAGCGACATAACATTGTTCTGAAAAGGGAGCTAGGCGAAGGAGCCTTTGGAAAAGTGTTCCTAGCTGAATGCTATAACCTCTGTCCTGAGCAGGACAAGATCTTGGTGGCAGTGAAGACCCTGAAGGATGCCAGTGACAATGCACGCAAGGACTTCCACCGTGAGGCCGAGCTCCTGACCAACCTCCAGCATGAGCACATCGTCAAGTTCTATGGCGTCTGCGTGGAGGGCGACCCCCTCATCATGGTCTTTGAGTACATGAAGCATGGGGACCTCAACAAGTTCCTCAGGGCACACGGCCCTGATGCCGTGCTGATGGCTGAGGGCAACCCGCCCACGGAACTGACGCAGTCGCAGATGCTGCATATAGCCCAGCAGATCGCCGCGGGCATGGTCTACCTGGCGTCCCAGCACTTCGTGCACCGCGATTTGGCCACCAGGAACTGCCTGGTCGGGGAGAACTTGCTGGTGAAAATCGGGGACTTTGGGATGTCCCGGGACGTGTACAGCACTGACTACTACAGGGTCGGTGGCCACACAATGCTGCCCATTCGCTGGATGCCTCCAGAGAGCATCATGTACAGGAAATTCACGACGGAAAGCGACGTCTGGAGCCTGGGGGTCGTGTTGTGGGAGATTTTCACCTATGGCAAACAGCCCTGGTACCAGCTGTCAAACAATGAGGTGATAGAGTGTATCACTCAGGGCCGAGTCCTGCAGCGACCCCGCACGTGCCCCCAGGAGGTGTATGAGCTGATGCTGGGGTGCTGGCAGCGAGAGCCCCACATGAGGAAGAACATCAAGGGCATCCATACCCTCCTTCAGAACTTGGCCAAGGCATCTCCGGTCTACCTGGACATTCTAGGC
[配列番号10]
【0046】
別の好ましい実施形態において、該第一のコード配列は、TrkBのアイソフォーム4をコードするヌクレオチド配列を含む。好ましくはTrkBのアイソフォーム4は、本明細書では以下に表される配列番号11として参照されるアミノ酸配列、またはその断片もしくは変異体を含む:
MSSWIRWHGPAMARLWGFCWLVVGFWRAAFACPTSCKCSASRIWCSDPSPGIVAFPRLEPNSVDPENITEIFIANQKRLEIINEDDVEAYVGLRNLTIVDSGLKFVAHKAFLKNSNLQHINFTRNKLTSLSRKHFRHLDLSELILVGNPFTCSCDIMWIKTLQEAKSSPDTQDLYCLNESSKNIPLANLQIPNCGLPSANLAAPNLTVEEGKSITLSCSVAGDPVPNMYWDVGNLVSKHMNETSHTQGSLRITNISSDDSGKQISCVAENLVGEDQDSVNLTVHFAPTITFLESPTSDHHWCIPFTVKGNPKPALQWFYNGAILNESKYICTKIHVTNHTEYHGCLQLDNPTHMNNGDYTLIAKNEYGKDEKQISAHFMGWPGIDDGANPNYPDVIYEDYGTAANDIGDTTNRSNEIPSTDVTDKTGREHLSVYAVVVIASVVGFCLLVMLFLLKLARHSKFGMKDFSWFGFGKVKSRQGVGPASVISNDDDSASPLHHISNGSNTPSSSEGGPDAVIIGMTKIPVIENPQYFGITNSQLKPDTFVQHIKRHNIVLKRELGEGAFGKVFLAECYNLCPEQDKILVAVKTLKDASDNARKDFHREAELLTNLQHEHIVKFYGVCVEGDPLIMVFEYMKHGDLNKFLRAHGPDAVLMAEGNPPTELTQSQMLHIAQQIAAGMVYLASQHFVHRDLATRNCLVGENLLVKIGDFGMSRDVYSTDYYRVGGHTMLPIRWMPPESIMYRKFTTESDVWSLGVVLWEIFTYGKQPWYQLSNNEVIECITQGRVLQRPRTCPQEVYELMLGCWQREPHMRKNIKGIHTLLQNLAKASPVYLDILG
[配列番号11]
【0047】
好ましくは、第一のコード配列のこの実施形態は、本明細書では以下に表される配列番号12として参照されるヌクレオチド配列、またはその断片もしくは変異体を含む:
ATGTCGTCCTGGATAAGGTGGCATGGACCCGCCATGGCGCGGCTCTGGGGCTTCTGCTGGCTGGTTGTGGGCTTCTGGAGGGCCGCTTTCGCCTGTCCCACGTCCTGCAAATGCAGTGCCTCTCGGATCTGGTGCAGCGACCCTTCTCCTGGCATCGTGGCATTTCCGAGATTGGAGCCTAACAGTGTAGATCCTGAGAACATCACCGAAATTTTCATCGCAAACCAGAAAAGGTTAGAAATCATCAACGAAGATGATGTTGAAGCTTATGTGGGACTGAGAAATCTGACAATTGTGGATTCTGGATTAAAATTTGTGGCTCATAAAGCATTTCTGAAAAACAGCAACCTGCAGCACATCAATTTTACCCGAAACAAACTGACGAGTTTGTCTAGGAAACATTTCCGTCACCTTGACTTGTCTGAACTGATCCTGGTGGGCAATCCATTTACATGCTCCTGTGACATTATGTGGATCAAGACTCTCCAAGAGGCTAAATCCAGTCCAGACACTCAGGATTTGTACTGCCTGAATGAAAGCAGCAAGAATATTCCCCTGGCAAACCTGCAGATACCCAATTGTGGTTTGCCATCTGCAAATCTGGCCGCACCTAACCTCACTGTGGAGGAAGGAAAGTCTATCACATTATCCTGTAGTGTGGCAGGTGATCCGGTTCCTAATATGTATTGGGATGTTGGTAACCTGGTTTCCAAACATATGAATGAAACAAGCCACACACAGGGCTCCTTAAGGATAACTAACATTTCATCCGATGACAGTGGGAAGCAGATCTCTTGTGTGGCGGAAAATCTTGTAGGAGAAGATCAAGATTCTGTCAACCTCACTGTGCATTTTGCACCAACTATCACATTTCTCGAATCTCCAACCTCAGACCACCACTGGTGCATTCCATTCACTGTGAAAGGCAACCCCAAACCAGCGCTTCAGTGGTTCTATAACGGGGCAATATTGAATGAGTCCAAATACATCTGTACTAAAATACATGTTACCAATCACACGGAGTACCACGGCTGCCTCCA
GCTGGATAATCCCACTCACATGAACAATGGGGACTACACTCTAATAGCCAAGAATGAGTATGGGAAGGATGAGAAACAGATTTCTGCTCACTTCATGGGCTGGCCTGGAATTGACGATGGTGCAAACCCAAATTATCCTGATGTAATTTATGAAGATTATGGAACTGCAGCGAATGACATCGGGGACACCACGAACAGAAGTAATGAAATCCCTTCCACAGACGTCACTGATAAAACCGGTCGGGAACATCTCTCGGTCTATGCTGTGGTGGTGATTGCGTCTGTGGTGGGATTTTGCCTTTTGGTAATGCTGTTTCTGCTTAAGTTGGCAAGACACTCCAAGTTTGGCATGAAAGATTTCTCATGGTTTGGATTTGGGAAAGTAAAATCAAGACAAGGTGTTGGCCCAGCCTCCGTTATCAGCAATGATGATGACTCTGCCAGCCCACTCCATCACATCTCCAATGGGAGTAACACTCCATCTTCTTCGGAAGGTGGCCCAGATGCTGTCATTATTGGAATGACCAAGATCCCTGTCATTGAAAATCCCCAGTACTTTGGCATCACCAACAGTCAGCTCAAGCCAGACACATTTGTTCAGCACATCAAGCGACATAACATTGTTCTGAAAAGGGAGCTAGGCGAAGGAGCCTTTGGAAAAGTGTTCCTAGCTGAATGCTATAACCTCTGTCCTGAGCAGGACAAGATCTTGGTGGCAGTGAAGACCCTGAAGGATGCCAGTGACAATGCACGCAAGGACTTCCACCGTGAGGCCGAGCTCCTGACCAACCTCCAGCATGAGCACATCGTCAAGTTCTATGGCGTCTGCGTGGAGGGCGACCCCCTCATCATGGTCTTTGAGTACATGAAGCATGGGGACCTCAACAAGTTCCTCAGGGCACACGGCCCTGATGCCGTGCTGATGGCTGAGGGCAACCCGCCCACGGAACTGACGCAGTCGCAGATGCTGCATATAGCCCAGCAGATCGCCGCGGGCATGGTCTACCTGGCGTCCCAGCACTTCGTGCACCGCGATTTGGCCACCAGGAACTGCCTGGTCGGGGAGAACTTGCTGGTGAAAATCGGGGACTTTGGGATGTCCCGGGACGTGTACAGCACTGACTACTACAGGGTCGGTGGCCACACAATGCTGCCCATTCGCTGGATGCCTCCAGAGAGCATCATGTACAGGAAATTCACGACGGAAAGCGACGTCTGGAGCCTGGGGGTCGTGTTGTGGGAGATTTTCACCTATGGCAAACAGCCCTGGTACCAGCTGTCAAACAATGAGGTGATAGAGTGTATCACTCAGGGCCGAGTCCTGCAGCGACCCCGCACGTGCCCCCAGGAGGTGTATGAGCTGATGCTGGGGTGCTGGCAGCGAGAGCCCCACATGAGGAAGAACATCAAGGGCATCCATACCCTCCTTCAGAACTTGGCCAAGGCATCTCCGGTCTACCTGGACATTCTAGGC
[配列番号12]
【0048】
本発明者らは、TrkB受容体の配列を研究することに相当な発明努力を注ぎ、TrkBが通常はBDNF二量体の存在下での二量体化および自己リン酸化の後にリン酸化される5つのチロシン残基(配列番号9の516位、701位、705位、706位および816位)を含むことを理解した。これらの5つのチロシン残基のリン酸化にまつわる問題は、該受容体がShp-2ホスファターゼなどのホスファターゼによって即座に活性解除され得る、ということである。したがって、インビボでの受容体のリン酸化と、結果的な活性解除を予防するために、好ましくはこれらの重要なチロシンの1つまたは複数は、生じるホスホチロシンを模倣し、BDNFの存在下で活性のままでShp-2ホスファターゼなどのホスファターゼ(phosphatise)によって活性解除され得ない受容体を生成するように、突然変異される(より好ましくはグルタミン酸に)。TrkBのそのような突然変異形態は、より長期間、または該受容体が内在化されるまで活性のままとなるTrkB受容体活性を生成することを目指している。
【0049】
以下に提供されるDNAおよびアミノ酸配列は、5つのグルタミン酸(E)残基に突然変異されているこれらの5つのチロシン(Y)残基の位置を示している。これらの残基の1、2、3、4または5個が本発明の実施形態でグルタミン酸に突然変異され得ることは、認識されよう。これらの突然変異の様々な組み合わせ、例えば516位および701位のみ、または705位、706位および816位のみなども、想定される。
【0050】
したがって別の好ましい実施形態において、第一のコード配列は、配列番号9の516位、701位、705位、706位および/または816位の1つまたは複数のチロシン残基が修飾または突然変異された、TrkB受容体の突然変異形態をコードするヌクレオチド配列を含む。好ましくは配列番号9の516位、701位、705位、706位および/または816位の少なくとも2つ、3つまたは4つのチロシン残基は、修飾されている。最も好ましくは配列番号9の516位、701位、705位、706位および/または816位の5つのチロシン残基全てが、修飾されている。
【0051】
好ましくは該チロシン残基または各チロシン残基は、異なるアミノ酸残基に、より好ましくはグルタミン酸に修飾されている。したがって好ましくはTrkB受容体の突然変異形態は、Y516E、Y701E、Y705E、Y706Eおよび/またはY816Eを含む。
【0052】
好ましくはTrkB受容体の修飾形態は、本明細書では以下に表される配列番号13として参照されるアミノ酸配列、またはその断片もしくは変異体を含む:
MSSWIRWHGPAMARLWGFCWLVVGFWRAAFACPTSCKCSASRIWCSDPSPGIVAFPRLEPNSVDPENITEIFIANQKRLEIINEDDVEAYVGLRNLTIVDSGLKFVAHKAFLKNSNLQHINFTRNKLTSLSRKHFRHLDLSELILVGNPFTCSCDIMWIKTLQEAKSSPDTQDLYCLNESSKNIPLANLQIPNCGLPSANLAAPNLTVEEGKSITLSCSVAGDPVPNMYWDVGNLVSKHMNETSHTQGSLRITNISSDDSGKQISCVAENLVGEDQDSVNLTVHFAPTITFLESPTSDHHWCIPFTVKGNPKPALQWFYNGAILNESKYICTKIHVTNHTEYHGCLQLDNPTHMNNGDYTLIAKNEYGKDEKQISAHFMGWPGIDDGANPNYPDVIYEDYGTAANDIGDTTNRSNEIPSTDVTDKTGREHLSVYAVVVIASVVGFCLLVMLFLLKLARHSKFGMKGPASVISNDDDSASPLHHISNGSNTPSSSEGGPDAVIIGMTKIPVIENPQEFGITNSQLKPDTFVQHIKRHNIVLKRELGEGAFGKVFLAECYNLCPEQDKILVAVKTLKDASDNARKDFHREAELLTNLQHEHIVKFYGVCVEGDPLIMVFEYMKHGDLNKFLRAHGPDAVLMAEGNPPTELTQSQMLHIAQQIAAGMVYLASQHFVHRDLATRNCLVGENLLVKIGDFGMSRDVESTDEERVGGHTMLPIRWMPPESIMYRKFTTESDVWSLGVVLWEIFTYGKQPWYQLSNNEVIECITQGRVLQRPRTCPQEVYELMLGCWQREPHMRKNIKGIHTLLQNLAKASPVELDILG
[配列番号13]
【0053】
好ましくはこの実施形態において、第一のコード配列は、本明細書では以下に表される配列番号14として参照されるヌクレオチド配列、またはその断片もしくは変異体を含む:
ATGTCGTCCTGGATAAGGTGGCATGGACCCGCCATGGCGCGGCTCTGGGGCTTCTGCTGGCTGGTTGTGGGCTTCTGGAGGGCCGCTTTCGCCTGTCCCACGTCCTGCAAATGCAGTGCCTCTCGGATCTGGTGCAGCGACCCTTCTCCTGGCATCGTGGCATTTCCGAGATTGGAGCCTAACAGTGTAGATCCTGAGAACATCACCGAAATTTTCATCGCAAACCAGAAAAGGTTAGAAATCATCAACGAAGATGATGTTGAAGCTTATGTGGGACTGAGAAATCTGACAATTGTGGATTCTGGATTAAAATTTGTGGCTCATAAAGCATTTCTGAAAAACAGCAACCTGCAGCACATCAATTTTACCCGAAACAAACTGACGAGTTTGTCTAGGAAACATTTCCGTCACCTTGACTTGTCTGAACTGATCCTGGTGGGCAATCCATTTACATGCTCCTGTGACATTATGTGGATCAAGACTCTCCAAGAGGCTAAATCCAGTCCAGACACTCAGGATTTGTACTGCCTGAATGAAAGCAGCAAGAATATTCCCCTGGCAAACCTGCAGATACCCAATTGTGGTTTGCCATCTGCAAATCTGGCCGCACCTAACCTCACTGTGGAGGAAGGAAAGTCTATCACATTATCCTGTAGTGTGGCAGGTGATCCGGTTCCTAATATGTATTGGGATGTTGGTAACCTGGTTTCCAAACATATGAATGAAACAAGCCACACACAGGGCTCCTTAAGGATAACTAACATTTCATCCGATGACAGTGGGAAGCAGATCTCTTGTGTGGCGGAAAATCTTGTAGGAGAAGATCAAGATTCTGTCAACCTCACTGTGCATTTTGCACCAACTATCACATTTCTCGAATCTCCAACCTCAGACCACCACTGGTGCATTCCATTCACTGTGAAAGGCAACCCCAAACCAGCGCTTCAGTGGTTCTATAACGGGGCAATATTGAATGAGTCCAAATACATCTGTACTAAAATACATGTTACCAATCACACGGAGTACCACGGCTGCCTCCAGCTGGATAATCCCACTCACATGAACAATGGGGACTACACTCTAATAGCCAAGAATGAGTATGGGAAGGATGAGAAACAGATTTCTGCTCACTTCATGGGCTGGCCTGGAATTGACGATGGTGCAAACCCAAATTATCCTGATGTAATTTATGAAGATTATGGAACTGCAGCGAATGACATCGGGGACACCACGAACAGAAGTAATGAAATCCCTTCCACAGACGTCACTGATAAAACCGGTCGGGAACATCTCTCGGTCTATGCTGTGGTGGTGATTGCGTCTGTGGTGGGATTTTGCCTTTTGGTAATGCTGTTTCTGCTTAAGTTGGCAAGACACTCCAAGTTTGGCATGAAAGGCCCAGCCTCCGTTATCAGCAATGATGATGACTCTGCCAGCCCACTCCATCACATCTCCAATGGGAGTAACACTCCATCTTCTTCGGAAGGTGGCCCAGATGCTGTCATTATTGGAATGACCAAGATCCCTGTCATTGAAAATCCCCAGGAATTTGGCATCACCAACAGTCAGCTCAAGCCAGACACATTTGTTCAGCACATCAAGCGACATAACATTGTTCTGAAAAGGGAGCTAGGCGAAGGAGCCTTTGGAAAAGTGTTCCTAGCTGAATGCTATAACCTCTGTCCTGAGCAGGACAAGATCTTGGTGGCAGTGAAGACCCTGAAGGATGCCAGTGACAATGCACGCAAGGACTTCCACCGTGAGGCCGAGCTCCTGACCAACCTCCAGCATGAGCACATCGTCAAGTTCTATGGCGTCTGCGTGGAGGGCGACCCCCTCATCATGGTCTTTGAGTACATGAAGCATGGGGACCTCAACAAGTTCCTCAGGGCACACGGCCCTGATGCCGTGCTGATGGCTGAGGGCAACCCGCCCACGGAACTGACGCAGTCGCAGATGCTGCATATAGCCCAGCAGATCGCCGCGGGCATGGTCTACCTGGCGTCCCAGCACTTCGTGCACCGCGATTTGGCCACCAGGAACTGCCTGGTCGGGGAGAACTTGCTGGTGAAAATCGGGGACTTTGGGATGTCCCGGGACGTGGAAAGCACTGACGAAGAAAGGGTCGGTGGCCACACAATGCTGCCCATTCGCTGGATGCCTCCAGAGAGCATCATGTACAGGAAATTCACGACGGAAAGCGACGTCTGGAGCCTGGGGGTCGTGTTGTGGGAGATTTTCACCTATGGCAAACAGCCCTGGTACCAGCTGTCAAACAATGAGGTGATAGAGTGTATCACTCAGGGCCGAGTCCTGCAGC
GACCCCGCACGTGCCCCCAGGAGGTGTATGAGCTGATGCTGGGGTGCTGGCAGCGAGAGCCCCACATGAGGAAGAACATCAAGGGCATCCATACCCTCCTTCAGAACTTGGCCAAGGCATCTCCGGTCGAACTGGACATTCTAGGC
[配列番号14]
【0054】
第二のコード配列が、好ましくは栄養因子のニューロトロフィンファミリーのメンバーである、TrkB受容体のアゴニストをコードすることは、認識されよう。それゆえTrkB受容体の好ましいアゴニストは、脳由来神経栄養因子(BDNF);神経成長因子(NGF);ニューロトロフィン-3(NT-3);ニューロトロフィン-4(NT-4);およびニューロトロフィン-5(NT-5);またはそれらの断片からなるアゴニストの群から選択され得る。
【0055】
これらのアゴニストそれぞれのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、当業者に公知であろう。しかし例として、ニューロトロフィン-4(NT-4)の一実施形態のアミノ酸配列は、実質的には以下の配列番号49に表される:
MLPLPSCSLPILLLFLLPSVPIESQPPPSTLPPFLAPEWDLLSPRVVLSRGAPAGPPLLFLLEAGAFRESAGAPANRSRRGVSETAPASRRGELAVCDAVSGWVTDRRTAVDLRGREVEVLGEVPAAGGSPLRQYFFETRCKADNAEEGGPGAGGGGCRGVDRRHWVSECKAKQSYVRALTADAQGRVGWRWIRIDTACVCTLLSRTGRA
[配列番号49]
【0056】
ニューロトロフィン-4(NT-4)のこの実施形態の核酸コード配列は、実質的に以下の配列番号50に表される:
ATGCTCCCTCTCCCCTCATGCTCCCTCCCCATCCTCCTCCTTTTCCTCCTCCCCAGTGTGCCAATTGAGTCCCAACCCCCACCCTCAACATTGCCCCCTTTTCTGGCCCCTGAGTGGGACCTTCTCTCCCCCCGAGTAGTCCTGTCTAGGGGTGCCCCTGCTGGGCCCCCTCTGCTCTTCCTGCTGGAGGCTGGGGCCTTTCGGGAGTCAGCAGGTGCCCCGGCCAACCGCAGCCGGCGTGGGGTGAGCGAAACTGCACCAGCGAGTCGTCGGGGTGAGCTGGCTGTGTGCGATGCAGTCAGTGGCTGGGTGACAGACCGCCGGACCGCTGTGGACTTGCGTGGGCGCGAGGTGGAGGTGTTGGGCGAGGTGCCTGCAGCTGGCGGCAGTCCCCTCCGCCAGTACTTCTTTGAAACCCGCTGCAAGGCTGATAACGCTGAGGAAGGTGGCCCGGGGGCAGGTGGAGGGGGCTGCCGGGGAGTGGACAGGAGGCACTGGGTATCTGAGTGCAAGGCCAAGCAGTCCTATGTGCGGGCATTGACCGCTGATGCCCAGGGCCGTGTGGGCTGGCGATGGATTCGAATTGACACTGCCTGCGTCTGCACACTCCTCAGCCGGACTGGCCGGGCC
[配列番号50]
【0057】
NT-4配列のためのシグナルペプチドのアミノ酸配列は、実質的に以下の配列番号51に表される:
MLPLPSCSLPILLLFLLPSVPIES
[配列番号51]
【0058】
このシグナルペプチドの核酸配列は、実質的に以下の配列番号52に表される:
ATGCTCCCTCTCCCCTCATGCTCCCTCCCCATCCTCCTCCTTTTCCTCCTCCCCAGTGTGCCAATTGAGTCC
[配列番号52]
【0059】
このNT-4配列のためのプロペプチドのアミノ酸配列は、実質的に以下の配列番号53に表される:
QPPPSTLPPFLAPEWDLLSPRVVLSRGAPAGPPLLFLLEAGAFRESAGAPANRSRR
[配列番号53]
【0060】
このプロペプチドの核酸配列は、実質的に以下の配列番号54に表される:
CAACCCCCACCCTCAACATTGCCCCCTTTTCTGGCCCCTGAGTGGGACCTTCTCTCCCCCCGAGTAGTCCTGTCTAGGGGTGCCCCTGCTGGGCCCCCTCTGCTCTTCCTGCTGGAGGCTGGGGCCTTTCGGGAGTCAGCAGGTGCCCCGGCCAACCGCAGCCGGCGT
[配列番号54]
【0061】
このNT-4配列のための成熟型タンパク質配列のアミノ酸配列は、実質的に以下の配列番号55に表される:
GVSETAPASRRGELAVCDAVSGWVTDRRTAVDLRGREVEVLGEVPAAGGSPLRQYFFETRCKADNAEEGGPGAGGGGCRGVDRRHWVSECKAKQSYVRALTADAQGRVGWRWIRIDTACVCTLLSRTGRA
[配列番号55]
【0062】
この成熟型NT-4タンパク質の核酸コード配列は、実質的に以下の配列番号56に表される:
GGGGTGAGCGAAACTGCACCAGCGAGTCGTCGGGGTGAGCTGGCTGTGTGCGATGCAGTCAGTGGCTGGGTGACAGACCGCCGGACCGCTGTGGACTTGCGTGGGCGCGAGGTGGAGGTGTTGGGCGAGGTGCCTGCAGCTGGCGGCAGTCCCCTCCGCCAGTACTTCTTTGAAACCCGCTGCAAGGCTGATAACGCTGAGGAAGGTGGCCCGGGGGCAGGTGGAGGGGGCTGCCGGGGAGTGGACAGGAGGCACTGGGTATCTGAGTGCAAGGCCAAGCAGTCCTATGTGCGGGCATTGACCGCTGATGCCCAGGGCCGTGTGGGCTGGCGATGGATTCGAATTGACACTGCCTGCGTCTGCACACTCCTCAGCCGGACTGGCCGGGCC
[配列番号56]
【0063】
したがって1つの好ましい実施形態において、第二のコード配列は、実質的に配列番号49もしくは55に表されるアミノ酸配列、またはそれらの断片もしくは変異体を含み得るニューロトロフィン-4(NT-4)をコードする。したがって第二のコード配列は、実質的に配列番号50もしくは56に表されるヌクレオチド配列、またはそれらの断片もしくは変異体を含み得る。
【0064】
しかしTrkB受容体の最も好ましいアゴニストとしては、プレプロ脳由来神経栄養因子(プレプロBDNF)、プロBDNFまたは成熟型BDNF(mBDNF)が挙げられる。BDNFは最初、小胞体上で見出されるリボソームにより、前駆体タンパク質のプレプロBDNFとして合成される。ヒトプレプロBDNF遺伝子(ENSG00000176697)によってコードされた少なくとも17の公知スプライスバリアントが存在する。プレプロBDNFは、粗面小胞体内に進入すると、プレプロBDNFが、シグナルペプチド(即ち、「プレ」配列)の開裂によってプロBDNFに変換される。プロBDNFは、プロBDNF上に存在するさらなるN-末端ペプチド配列の開裂によってmBDNFに変換される。その後、プロBDNFおよびmBDNFの両方が、細胞外空間に分泌され、そこでRGCおよび蝸牛細胞をはじめとする様々な細胞上の受容体に結合し、それらを活性化する。
【0065】
プロBDNFは、活性化されるとRGCおよび蝸牛細胞のアポトーシスを誘導する受容体p75NTRに優先的に結合し、それを活性化する。したがって1つの好ましい実施形態において、プロBDNFは、p75NTR受容体のアゴニストである。一実施形態において、該プロBDNFは、カノニカルなプロBDNFである。好ましくはカノニカルなプロBDNFは、本明細書では以下に表される配列番号15として参照されるアミノ酸配列、またはその断片もしくは変異体を含む:
APMKEANIRGQGGLAYPGVRTHGTLESVNGPKAGSRGLTSLADTFEHVIEELLDEDQKVRPNEENNKDADLYTSRVMLSSQVPLEPPLLFLLEEYKNYLDAANMSMRVRRHSDPARRGELSVCDSISEWVTAADKKTAVDMSGGTVTVLEKVPVSKGQLKQYFYETKCNPMGYTKEGCRGIDKRHWNSQCRTTQSYVRALTMDSKKRIGWRFIRIDTSCVCTLTIKRGR
[配列番号15]
【0066】
好ましくはこの実施形態において、第二のコード配列は、本明細書では以下に表される配列番号16として参照されるヌクレオチド配列、またはその断片もしくは変異体を含む:
GCCCCCATGAAAGAAGCAAACATCCGAGGACAAGGTGGCTTGGCCTACCCAGGTGTGCGGACCCATGGGACTCTGGAGAGCGTGAATGGGCCCAAGGCAGGTTCAAGAGGCTTGACATCATTGGCTGACACTTTCGAACACGTGATAGAAGAGCTGTTGG
ATGAGGACCAGAAAGTTCGGCCCAATGAAGAAAACAATAAGGACGCAGACTTGTACACGTCCAGGGTGATGCTCAGTAGTCAAGTGCCTTTGGAGCCTCCTCTTCTCTTTCTGCTGGAGGAATACAAAAATTACCTAGATGCTGCAAACATGTCCATGAGGGTCCGGCGCCACTCTGACCCTGCCCGCCGAGGGGAGCTGAGCGTGTGTGACAGTATTAGTGAGTGGGTAACGGCGGCAGACAAAAAGACTGCAGTGGACATGTCGGGCGGGACGGTCACAGTCCTTGAAAAGGTCCCTGTATCAAAAGGCCAACTGAAGCAATACTTCTACGAGACCAAGTGCAATCCCATGGGTTACACAAAAGAAGGCTGCAGGGGCATAGACAAAAGGCATTGGAACTCCCAGTGCCGAACTACCCAGTCGTACGTGCGGGCCCTTACCATGGATAGCAAAAAGAGAATTGGCTGGCGATTCATAAGGATAGACACTTCTTGTGTATGTACATTGACCATTAAAAGGGGAAGATAG
[配列番号16]
【0067】
別の実施形態において、該プロBDNFは、好ましくはバリンからメチオニンへの突然変異(下線のアミノ酸)を含む、プロBDNFのアイソフォーム2である。好ましくはプロBDNFのアイソフォーム2は、本明細書では以下に表される配列番号17として参照されるアミノ酸配列、またはその断片もしくは変異体を含む:
APMKEANIRGQGGLAYPGVRTHGTLESVNGPKAGSRGLTSLADTFEHMIEELLDEDQKVRPNEENNKDADLYTSRVMLSSQVPLEPPLLFLLEEYKNYLDAANMSMRVRRHSDPARRGELSVCDSISEWVTAADKKTAVDMSGGTVTVLEKVPVSKGQLKQYFYETKCNPMGYTKEGCRGIDKRHWNSQCRTTQSYVRALTMDSKKRIGWRFIRIDTSCVCTLTIKRGR
[配列番号17]
【0068】
しかし一実施形態において、該アゴニストは、プロBDNFまたはその断片もしくは変異体ではなく、代わりに第二のコード配列は、好ましくは成熟型BDNFをコードするヌクレオチド配列を含む。成熟型BDNF(mBDNF)は、活性化されるとRGCおよび/または蝸牛細胞の生存を促進するTrkBに優先的に結合し、それを活性化する。したがって成熟型BDNFは、TrkBの最も好ましいアゴニストである。第一の態様による構築物は、他の公知遺伝子構築物とは異なり、ミスフォールディングされていない成熟型BDNFタンパク質を生成することが可能であるため、有利である。
【0069】
したがって1つの好ましい実施形態において、第二のコード配列は、成熟型BDNFをコードするヌクレオチド配列を含む。mBDNFは、該遺伝子によってコードされた17のアイソフォーム全てに共通する。7つのタンパク質の異なる配列が存在し、そのうち5つは、カノニカル形態に伸長されたシグナル配列を有し、1つは、カノニカルなシグナル配列を有するが、バリンからメチオニンへの突然変異を有する(アイソフォーム2、4、7、8、9、10、11、12、13、14および16に共通する)。バリンからメチオニンへの突然変異は、細胞からのBDNF放出を減少させると考えられる。
【0070】
好ましくは成熟型BDNFは、本明細書では以下に表される配列番号18として参照されるアミノ酸配列、またはその断片もしくは変異体を含む:
HSDPARRGELSVCDSISEWVTAADKKTAVDMSGGTVTVLEKVPVSKGQLKQYFYETKCNPMGYTKEGCRGIDKRHWNSQCRTTQSYVRALTMDSKKRIGWRFIRIDTSCVCTLTIKRGR
[配列番号18]
【0071】
好ましくは第二のコード配列のこの実施形態は、本明細書では以下に表される配列番号19として参照されるヌクレオチド配列、またはその断片もしくは変異体を含む:
ATGACCATCCTTTTCCTTACTATGGTTATTTCATACTTTGGTTGCATGAAGGCTGCCCCCATGAAAGAAGCAAACATCCGAGGACAAGGTGGCTTGGCCTACCCAGGTGTGCGGACCCATGGGACTCTGGAGAGCGTGAATGGGCCCAAGGCAGGTTCAAGAGGCTTGACATCATTGGCTGACACTTTCGAACACGTGATAGAAGAGCTGTTGGATGAGGACCAGAAAGTTCGGCCCAATGAAGAAAACAATAAGGACGCAGACTTGTACACGTCCAGGGTGATGCTCAGTAGTCAAGTGCCTTTGGAGCCTCCTCTTCTCTTTCTGCTGGAGGAATACAAAAATTACCTAGATGCTGCAAACATGTCCATGAGGGTCCGGCGCCACTCTGACCCTGCCCGCCGAGGGGAGCTGAGCGTGTGTGACAGTATTAGTGAGTGGGTAACGGCGGCAGACAAAAAGACTGCAGTGGACATGTCGGGCGGGACGGTCACAGTCCTTGAAAAGGTCCCTGTATCAAAAGGCCAACTGAAGCAATACTTCTACGAGACCAAGTGCAATCCCATGGGTTACACAAAAGAAGGCTGCAGGGGCATAGACAAAAGGCATTGGAACTCCCAGTGCCGAACTACCCAGTCGT
ACGTGCGGGCCCTTACCATGGATAGCAAAAAGAGAATTGGCTGGCGATTCATAAGGATAGACACTTCTTGTGTATGTACATTGACCATTAAAAGGGGAAGATAG
[配列番号19]
【0072】
さらに別の好ましい実施形態において、該アゴニストは、N-末端にコンジュゲートされたシグナルペプチドを有するmBDNFである。以下に議論される通り、該シグナルペプチドは、プレプロBDNFのカノニカルなシグナルペプチド、またはIL-2のシグナルペプチド、または本発明者らによって作出された新規なシグナル配列であり得る。
【0073】
好ましくは第二のコード配列は、TrkB受容体のアゴニストのためのシグナルペプチド、最も好ましくはBDNFのためのシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。1つの好ましい実施形態において、該ヌクレオチド配列は、BDNFのためのカノニカルなシグナルペプチドをコードする。好ましくは第二のコード配列のこの実施形態は、本明細書では以下に表される配列番号20として参照されるアミノ酸配列、またはその断片もしくは変異体を含むシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む:
MTILFLTMVISYFGCMKA
[配列番号20]
【0074】
好ましくは第二のコード配列のこの実施形態は、本明細書では以下に表される配列番号21として参照されるヌクレオチド配列、またはその断片もしくは変異体を含む:
ATGACCATCCTTTTCCTTACTATGGTTATTTCATACTTCGGTTGCATGAAGGCG
[配列番号21]
【0075】
本発明者らは、一連の伸長したシグナルペプチドを作出した。好ましい実施形態において、BDNFのためのアイソフォームシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、アイソフォーム2、3、6、5および4からなる群から選択される。これらの伸長されたシグナルペプチドそれぞれの核酸およびアミノ酸配列は、以下の通り表される。
【0076】
アイソフォーム2
MFHQVRRVMTILFLTMVISYFGCMKA
[配列番号22]
ATGTTCCACCAGGTGAGAAGAGTGATGACCATCCTTTTCCTTACTATGGTTATTTCATACTTCGGTTGCATGAAGGCG
[配列番号23]
【0077】
アイソフォーム3および6
MQSREEEWFHQVRRVMTILFLTMVISYFGCMKA
[配列番号24]
ATGCAGAGCCGGGAAGAGGAATGGTTCCACCAGGTGAGAAGAGTGATGACCATCCTTTTCCTT ACTATGGTTATTTCATACTTCGGTTGCATGAAGGCG
[配列番号25]
【0078】
アイソフォーム5
MLCAISLCARVRKLRSAGRCGKFHQVRRVMTILFLTMVISYFGCMKA
[配列番号26]
ATGCTCTGTGCGATTTCATTGTGTGCTCGCGTTCGCAAGCTCCGTAGTGCAGGAAGGTGCGGGAAGTTCCACCAGGTGAGAAGAGTGATGACCATCCTTTTCCTTACTATGGTTATTTCATACTTCGGTTGCATGAAGGCG
[配列番号27]
【0079】
アイソフォーム4
MCGATSFLHECTRLILVTTQNAEFLQKGLQVHTCFGVYPHASVWHDCASQKKGCAVYLHVSVEFNKLIPENGFIKFHQVR
RVMTILFLTMVISYFGCMKA
[配列番号28]
ATGTGTGGAGCCACCAGTTTTCTCCATGAGTGCACAAGGTTAATCCTTGTTACTACTCAGAATGCTGAGTTTCTACAGAAAGGGTTGCAGGTCCACACATGTTTTGGCGTCTACCCACACGCTTCTGTATGGCATGACTGTGCATCCCAGAAGAAGGGCTGTGCTGTGTACCTCCACGTTTCAGTGGAATTTAACAAACTGATCCCTGAAAATGGTTTCATAAAGTTCCACCAGGTGAGAAGAGTGATGACCATCCTTTTCCTTACTATGGTTATTTCATACTTCGGTTGCATGAAGGCG
[配列番号29]
【0080】
したがって好ましい実施形態において、第二のコード配列は、本明細書では配列番号23、25、27または29のいずれか1つとして参照されるシグナル配列ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。好ましくは該シグナルペプチドは、本明細書では配列番号22、24、26または28のいずれか1つとして参照されるアミノ酸配列を含む。
【0081】
本発明者らはまた、アゴニスト、好ましくはBDNFのための新規なシグナルペプチドの様々な実施形態を作出した。これらのシグナルペプチドは、N-末端区分(付加されたリシン(K)およびアルギニン(R)残基を有する)および先行する疎水性領域(ロイシン(L)残基の付加を有する)の塩基性レベルを上昇させて、野生型カノニカルシグナル配列で観察されたレベルに比較してBDNFの分泌を増加させる。
【0082】
a)QTA003P(IL-2シグナル)
MYRMQLLSCIALSLALVTNS
[配列番号30]
ATGTACAGGATGCAACTCCTGTCTTGCATTGCACTAAGTCTTGCACTTGTCACAAACAGT
[配列番号31]
【0083】
b)QTA004P
MKRRVMIILFLTMVISYFGCMK
[配列番号32]
ATGAAAAGAAGAGTGATGATCATCCTTTTCCTTACTATGGTTATTTCATACTTCGGTTGCATGAAGAGCG
[配列番号33]
【0084】
c)QTA009P(修飾されたIL-2)
MRRMQLLLLIALSLALVTNS
[配列番号34]
ATGAGGAGGATGCAACTCCTGCTCCTGATTGCACTAAGTCTTGCACTTGTCACAAACAGT
[配列番号35]
【0085】
d)QTA010P
MRRMQLLLLTMVISYFGCMKA
[配列番号36]
ATGAGGAGGATGCAACTCCTGCTCCTGACTATGGTTATTTCATACTTCGGTTGCATGAAGGCG
[配列番号37]
【0086】
e)QTA0012P
MRILLLTMVISYFGCMKA
[配列番号38]
ATGAGAATCCTTCTTCTTACTATGGTTATTTCATACTTCGGTTGCATGAAGGCG
[配列番号39]
【0087】
f)QTA0013P
MRRILFLTMVISYFGCMKA
[配列番号40]
ATGAGAAGAATCCTTTTCCTTACTATGGTTATTTCATACTTCGGTTGCATGAAGGCG
[配列番号41]
【0088】
g)QTA0014P
MRRFLFLLVISYFGCMKA
[配列番号42]
ATGAGGAGGTTCCTTTTCCTTCTTGTTATTTCATACTTCGGTTGCATGAAGGCG
[配列番号43]
【0089】
i)QTA0015P
MRRFLFLLYFGCMKA
[配列番号44]
ATGAGGAGGTTCCTTTTCCTTCTTTACTTCGGTTGCATGAAGGCG
[配列番号45]
【0090】
図6は、該アゴニスト、好ましくはBDNFの分泌を増幅する本発明の構築物において用いられるシグナルペプチドのさらに好ましい実施形態のためのヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。該シグナルペプチドの第二の残基は、好ましくはリシン(K)またはアルギニン(R)などの1つまたは複数の塩基性残基によって置き換えられている、トレオニン(T)である。イソロイシン(I)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)およびロイシン(L)をはじめとするシグナルペプチド内の残基の次の延伸は、好ましくは1つまたは複数の疎水性残基によって置き換えられている。
【0091】
したがって好ましい実施形態において、第二のコード配列は、本明細書で配列番号31、33、35、37、39、41、43、45、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101または103のいずれか1つとして参照されるシグナル配列ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。好ましくは該シグナルペプチドは、本明細書で配列番号30、32、34、36、38、40、42、44、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100または102のいずれか1つとして参照されるアミノ酸配列を含む。
【0092】
したがって、本発明者らが、作製された適度なフォールディングのある成熟型BDNFの結果と、BDNF生成を有意に増幅してこれまで内在性配列で実現された上記物質を遊離する、完全に新規なシグナルペプチドの導入との組み合わせにより、過去に実現されなかったプロ配列の除去によりBDNF遺伝子配列を修飾したことは、認識されよう。
【0093】
好ましくは該遺伝子構築物は、左および/または右の逆位末端配列(ITRs)を含む。好ましくは各ITRは、該構築物の5’および/または3’末端に配置される。ITRは、ウイルス(例えば、AAVまたはレンチウイルス)血清型に特異的であり得、二次構造においてヘアピンループを形成する限りはいずれの配列でもあり得る。
【0094】
ITRの一実施形態(市販のAAVプラスミドからの左ITR)のDNA配列は、本明細書では以下の配列番号46として表される:
CCTGCAGGCAGCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGCCCGGGCGTCGGGCGACCTTTGGTCGCCCGGCCTCAGTGAGCGAGCGAGCGCGCAGAGAGGGAGTGGCCAACTCCATCACTAGGGGTTCCT
[配列番号46]
【0095】
ITRの別の実施形態(市販のAAVプラスミドからの右ITR)のDNA配列は、本明細書では以下の配列番号47として表される:
AGGAACCCCTAGTGATGGAGTTGGCCACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGGGCGACCAAAGGTCGCCCGACGCCCGGGCTTTGCCCGGGCGGCCTCAGTGAGCGAGCGAGCGCGCAGCTGCCTGCAGG
[配列番号47]
【0096】
前述のことから、当業者は、第一の態様の構築物の実施形態のヌクレオチド配列およびコードされたトランスジーンのアミノ酸配列を認識するであろう。しかし疑念を避けるために、プラスミドQTA020P(およびベクターQTA020V)内に含まれるネズミTrkB受容体-ウイルス2Aペプチド-mBDNFのためのコドン最適化2940bp配列のコード配列 は、本明細書では以下の配列番号107として参照される: ATGAGCCCATGGCTGAAGTGGCACGGACCAGCAATGGCAAGACTGTGGGGCCTGTGCCTGCTGGTGCTGGGCTTCTGGAGAGCCAGCCTGGCCTGTCCAACCTCCTGCAAGTGTAGCTCCGCCAGGATCTGGTGCACAGAGCCTTCTCCAGGCATCGTGGCCTTTCCCCGCCTGGAGCCTAACAGCGTGGATCCCGAGAATATCACCGAGATCCTGATCGCCAACCAGAAGCGGCTGGAGATCATCAATGAGGACGATGTGGAGGCCTACGTGGGCCTGAGAAACCTGACAATCGTGGACTCCGGCCTGAAGTTCGTGGCCTATAAGGCCTTTCTGAAGAACTCTAATCTGAGGCACATCAACTTCACCCGCAATAAGCTGACATCTCTGAGCCGGAGACACTTTCGGCACCTGGATCTGTCCGACCTGATCCTGACCGGCAATCCATTCACATGCTCTTGTGACATCATGTGGCTGAAGACCCTGCAGGAGACAAAGTCTAGCCCCGATACCCAGGACCTGTACTGTCTGAACGAGTCCTCTAAGAATATGCCTCTGGCCAACCTGCAGATCCCTAATTGTGGACTGCCAAGCGCCCGGCTGGCCGCACCTAACCTGACAGTGGAGGAGGGCAAGTCCGTGACACTGTCCTGTTCTGTGGGCGGCGATCCCCTGCCTACCCTGTATTGGGACGTGGGCAACCTGGTGTCTAAGCACATGAATGAGACCTCCCACACACAGGGCTCTCTGAGAATCACAAATATCAGCTCCGACGATAGCGGCAAGCAGATCTCTTGCGTGGCAGAGAACCTGGTGGGAGAGGATCAGGACAGCGTGAATCTGACCGTGCACTTCGCCCCCACCATCACATTTCTGGAGTCTCCTACCAGCGATCACCACTGGTGCATCCCCTTCACAGTGCGGGGAAACCCAAAGCCCGCCCTGCAGTGGTTTTACAACGGCGCCATCCTGAATGAGTCCAAGTATATCTGTACCAAGATCCACGTGACCAACCACACAGAGTACCACGGCTGCCTGCAGCTGGATAATCCCACCCACATGAACAATGGCGACTACACACTGATGGCCAAGAACGAGTATGGCAAGGACGAGAGGCAGATCAGCGCCCACTTCATGGGCCGCCCTGGAGTGGATTATGAGACCAACCCTAATTACCCAGAGGTGCTGTATGAGGACTGGACCACACCTACCGATATCGGCGACACCACAAACAAGTCTAATGAGATCCCAAGCACAGATGTGGCCGACCAGTCTAACAGGGAGCACCTGAGCGTGTACGCAGTGGTGGTCATCGCCTCCGTGGTGGGCTTCTGCCTGCTGGTCATGCTGCTGCTGCTGAAGCTGGCCCGCCACTCTAAGTTTGGCATGAAGGGCCCAGCCTCCGTGATCTCTAATGACGATGACAGCGCCAGCCCCCTGCACCACATCAGCAACGGCTCCAATACCCCTTCTAGCTCCGAGGGCGGCCCAGATGCCGTGATCATCGGCATGACAAAGATCCCCGTGATCGAGAACCCTCAGTACTTCGGCATCACCAATTCCCAGCTGAAGCCTGACACATTTGTGCAGCACATCAAGCGGCACAACATCGTGCTGAAGAGGGAACTGGGAGAGGGAGCCTTCGGCAAGGTGTTTCTGGCCGAGTGCTATAACCTGTGCCCAGAGCAGGATAAGATCCTGGTGGCCGTGAAGACCCTGAAGGATGCCAGCGACAACGCCCGGAAGGACTTCCACAGAGAGGCCGAGCTGCTGACAAATCTGCAGCACGAGCACATCGTGAAGTTTTACGGCGTGTGCGTGGAGGGCGACCCTCTGATCATGGTGTTCGAGTATATGAAGCACGGCGATCTGAACAAGTTTCTGAGAGCACACGGACCAGATGCCGTGCTGATGGCAGAGGGAAATCCCCCTACCGAGCTGACACAGTCTCAGATGCTGCACATTGCACAGCAGATTGCAGCAGGAATGGTGTACCTGGCCAGCCAGCACTTCGTGCACAGGGATCTGGCAACCAGAAACTGCCTGGTGGGAGAGAATCTGCTGGTGAAGATCGGCGACTTTGGCATGTCCCGGGACGTGTACTCTACCGACTACTATAGAGTGGGCGGCCACACAATGCTGCCCATCAGGTGGATGCCACCCGAGAGCATCATGTATCGCAAGTTCACCACAGAGTCTGACGTGTGGAGCCTGGGCGTGGTGCTGTGGGAGATCTTTACCTACGGCAAGCAGCCTTGGTATCAGCTGTCCAACAATGAAGTGATCGAGTGTATTACACAGGGACGCGTGCTGCAGAGGCCACGCACATGCCCCCAGGAGGTGTACGAGCTGATGCTGGGCTGTTGGCAGCGGGAGCCACACACCAGAAAGAACATCAAGAGCATCCACACACTGCTGCAGAATCTGGCCAAGGCCTCCCCCGTGTATCTGGACATCCTGGGCAGCGGAGCTACTAACTTCAGCCTGCTGAAGCAGGCTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCTATGAGAATCCTTCTTCTTACTATGGTTATTTCATACTTCGGTTGCATGAAGGCGCACTCCGACCCTGCCCGCCGTGGGGAGCTGAGCGTGTGTGACAGTATTAGCGAGTGGGTCACAGCGGCAGATAAAAAGACTGCAGTGGACATGTCTGGCGGGACGGTCACAGTCCTAGAGAAAGTCCCGGTATCCAAAGGCCAACTGAAGCAGTATTTCTACGAGACCAAGTGTAATCCCATGGGTTACACCAAGGAAGGCTGCAGGGGCATAGACAAAAGGCACTGGAACTCGCAATGCCGAACTACCCAATCGTATGTTCGGGCCCTTACTATGGATAGCAAAAAGAGAATTGGCTGGCGATTCATAAGGATAGACACTTCCTGTGTATGTACACTGACCATTAAAAGGGGAAGATAG
[配列番号107]
【0097】
プラスミドQTA029P(およびベクターQTA029V)内に含まれるヒトTrkB受容体-ウイルス2Aペプチド-mBDNFのためのコドン最適化2943bp配列のコード配列 は、本明細書では以下の配列番号108として参照される:
ATGTCATCTTGGATCCGCTGGCACGGGCCAGCGATGGCCCGATTGTGGGGCTTCTGCTGGCTTGTTGTAGGCTTCTGGCGCGCGGCGTTCGCGTGTCCGACCTCTTGCAAATGCTCAGCAAGCCGAATTTGGTGCTCAGACCCTAGTCCAGGAATTGTTGCATTCCCCCGACTGGAACCAAACTCCGTCGACCCGGAGAATATAACTGAGATATTTATTGCAAATCAAAAACGCCTTGAAATCATTAACGAGGATGACGTGGAGGCCTACGTTGGTTTGAGAAATCTTACTATTGTCGACTCCGGACTTAAATTTGTAGCTCATAAAGCCTTCCTGAAGAACTCTAATCTGCAGCACATTAATTTCACGAGAAATAAGCTGACCAGCTTGTCCCGGAAGCATTTCCGCCATCTCGACCTGAGCGAGCTCATACTGGTCGGAAACCCATTTACGTGCTCCTGTGACATCATGTGGATCAAAACTCTGCAAGAGGCGAAAAGTAGTCCGGATACCCAAGACCTTTACTGTCTTAATGAAAGCTCAAAAAATATCCCGCTGGCCAACCTGCAGATACCGAACTGCGGACTTCCTAGTGCGAATTTGGCTGCCCCAAATCTTACCGTCGAAGAAGGCAAATCAATCACGCTTTCTTGTTCTGTAGCTGGAGATCCAGTGCCTAATATGTATTGGGACGTGGGTAACCTCGTCTCAAAACATATGAACGAAACGAGCCACACCCAGGGCTCTTTGCGGATAACAAACATCTCCTCTGATGATTCTGGAAAGCAAATCAGTTGCGTAGCTGAAAATCTGGTTGGCGAAGATCAAGATTCAGTCAATCTGACAGTCCATTTCGCCCCAACGATCACCTTTCTGGAGAGCCCAACTAGCGATCACCACTGGTGTATTCCGTTTACGGTAAAAGGAAATCCAAAACCTGCACTCCAATGGTTTTATAATGGAGCCATCTTGAATGAAAGCAAATATATCTGTACTAAAATCCATGTGACGAATCACACCGAGTATCACGGGTGTCTTCAATTGGATAATCCAACCCATATGAATAATGGTGATTATACTTTGATAGCGAAGAACGAATACGGCAAAGACGAAAAGCAAATATCCGCACATTTCATGGGTTGGCCTGGCATCGACGACGGTGCGAACCCGAACTACCCAGATGTTATTTACGAGGATTATGGGACTGCGGCAAACGACATTGGCGACACCACAAACCGAAGCAACGAGATACCAAGTACTGACGTCACTGACAAAACGGGTCGAGAGCATTTGTCTGTTTACGCCGTTGTTGTTATCGCCTCAGTTGTCGGATTTTGCCTGTTGGTCATGCTTTTCCTCCTGAAGCTCGCGCGACATTCCAAGTTTGGCATGAAGGGGCCAGCAAGTGTTATATCCAATGATGATGATAGCGCTTCTCCATTGCACCACATAAGTAACGGCTCAAACACGCCGTCATCTAGTGAAGGTGGACCAGACGCGGTCATTATAGGGATGACTAAAATTCCCGTAATCGAAAACCCTCAGTACTTCGGCATAACCAACAGTCAGCTTAAACCCGATACTTTCGTGCAGCACATCAAAAGGCACAACATAGTCCTCAAGCGCGAACTCGGGGAGGGAGCCTTCGGAAAGGTCTTTCTTGCTGAGTGCTATAATTTGTGTCCTGAGCAGGATAAAATTCTTGTGGCTGTAAAAACTCTCAAAGATGCTTCCGACAACGCACGGAAGGATTTTCATCGGGAGGCCGAACTGTTGACGAATTTGCAGCACGAGCATATAGTAAAGTTCTACGGGGTATGTGTTGAGGGGGACCCGTTGATTATGGTCTTCGAGTATATGAAGCACGGGGACCTGAACAAATTTTTGCGCGCCCATGGGCCTGATGCCGTCCTTATGGCAGAAGGGAACCCTCCAACAGAACTCACCCAGAGTCAGATGTTGCACATAGCGCAACAGATCGCGGCCGGCATGGTTTACCTGGCCAGTCAACACTTCGTGCATAGAGATCTTGCCACTCGCAACTGTTTGGTCGGGGAGAACCTTCTGGTTAAGATTGGTGACTTTGGTATGTCACGAGATGTGTATTCCACTGACTATTACAGAGTTGGGGGTCATACAATGCTTCCTATTCGGTGGATGCCCCCCGAATCCATCATGTACAGAAAGTTCACGACAGAGAGTGATGTT TGG AGT CTCGGCGTGGTGCTCTGGGAAATTTTCACATACGGAAAGCAGCCGTGGTATCAACTTAGCAACAATGAGGTGATAGAGTGTATTACACAGGGTCGGGTGTTGCAGCGCCCTCGAACGTGCCCACAAGAAGTATATGAACTTATGCTCGGGTGCTGGCAAAGAGAACCACATATGAGAAAAAATATCAAGGGGATACATACATTGCTTCAGAACTTGGCCAAGGCATCACCCGTCTACCTCGATATACTGGGCAGCGGAGCTACTAACTTCAGCCTGCTGAAGCAGGCTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCTATGAGAATCCTTCTTCTTACTATGGTTATTTCATACTTCGGTTGCATGAAGGCGCACTCCGACCCTGCCCGCCGTGGGGAGCTGAGCGTGTGTGACAGTATTAGCGAGTGGGTCACAGCGGCAGATAAAAAGACTGCAGTGGACATGTCTGGCGGGACGGTCACAGTCCTAGAGAAAGTCCCGGTATCCAAAGGCCAACTGAAGCAGTATTTCTACGAGACCAAGTGTAATCCCATGGGTTACACCAAGGAAGGCTGCAGGGGCATAGACAAAAGGCACTGGAACTCGCAATGCCGAACTACCCAATCGTATGTTCGGGCCCTTACTATGGATAGCAAAAAGAGAATTGGCTGGCGATTCATAAGGATAGACACTTCCTGTGTATGTACACTGACCATTAAAAGGGGAAGATAG
[配列番号108]
【0098】
こうして最も好ましい実施形態において、該構築物は、実質的に配列番号107もしくは108に表されるヌクレオチド配列、またはその断片もしくは変異体を含む。
【0099】
本発明者らは、本発明の構築物を含む一連の組換え発現ベクターを作出した。
【0100】
したがって第二の態様によれば、第一の態様による遺伝子構築物を含む組換えベクターが提供される。
【0101】
該組換えベクターは、組換えAAV(rAAV)ベクターであり得る。該rAAVは、天然由来のベクター、またはハイブリッドAAV血清型を有するベクターであり得る。該rAAVは、AAV-1、AAV-2、AAV-3A、AAV-3B、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、およびAAV-11であり得る。好ましくは該rAAVは、rAAV血清型-2である。
【0102】
有利には組換えAAV2は、宿主生物体において最小限の免疫反応を誘発し、ベクター投与後少なくとも1年間、網膜内で持続され得る長期トランスジーン発現を媒介する。
【0103】
本明細書で用いられる用語「組換えAAV(rAAV)ベクター」は、少なくとも1種の末端反復配列を含む組換えAAV由来の核酸を意味する。
【0104】
該ベクターの好ましい実施形態を、図2~5に示す。
【0105】
本明細書に記載された構築物および発現ベクターを用いて、視神経障害および蝸牛障害を処置すること、より一般的には神経再生および生存を促進することができる。
【0106】
こうして第三の態様によれば、薬剤としての使用または治療における使用のための、第一様態様による遺伝子構築物、または第二の態様による組換えベクターが提供される。
【0107】
第四の態様によれば、視神経障害もしくは蝸牛障害を処置、予防もしくは改良することにおける使用のため、または神経再生および/もしくは生存を促進するための、第一様態様による遺伝子構築物、または第二の態様による組換えベクターが提供される。
【0108】
第五の態様によれば、対象における視神経障害もしくは蝸牛障害を処置、予防もしくは改良する方法、または対象における神経再生および/もしくは生存を促進する方法であって、第一様態様による遺伝子構築物、または第二の態様による組換えベクターの治療有効量を、そのような処置を必要とする対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0109】
好ましくは本発明による遺伝子構築物または組換えベクターは、遺伝子療法技術において用いられる。該構築物またはベクターによりコードされるアゴニストは、同じく該構築物/ベクターによりコードされるTrkBを活性化し、それにより網膜神経節細胞(RGC)または蝸牛細胞の生存を促進する。
【0110】
一実施形態において、処置される視神経障害は、緑内障、または頭部もしくは顔面への外傷、または血管損傷など、RGCの損失をもたらし得る他の病理生理学的状態、例えば視神経からの入力情報を受け取る目の構造または脳の領域への血液供給の部分的または完全な喪失であり得る。加えて該構築物を用いて、形質転換されていない、または形質転換された幹細胞を患者の目または視力に関連する領域に導入することによりRGCの置換を支援することもできる。
【0111】
一実施形態において、処置される蝸牛障害は、難聴または聴覚消失であり得る。本発明の構築物およびベクターは、TrkB受容体および該受容体のアゴニストの両方の局所的増加により、TrkB受容体アゴニストへの蝸牛細胞感受性を有意に増大する。該蝸牛細胞は、軸索を介して耳から脳幹まで聴覚シグナルを送信する有毛細胞または神経細胞のらせん神経節細胞であり得る。該有毛細胞は、内耳有毛細胞または外耳有毛細胞であり得る[42、43、44]。
【0112】
別の実施形態において、該構築物およびベクターを用いて、神経再生および/または生存を促進することができる。
【0113】
第一様態様による遺伝子構築物、または第二の態様による組換えベクターが、視神経障害もしくは蝸牛障害を処置、改良もしくは予防するため、または神経再生および/もしくは生存を促進するために、薬剤の中で使用され得、単独療法(即ち、本発明の第一様態様による遺伝子構築物、または第二の態様による組換えベクターの使用)として用いられ得ることは、認識されよう。あるいは本発明による遺伝子構築物または組換えベクターは、視神経障害もしくは蝸牛障害を処置、改良もしくは予防するため、または神経再生および/もしくは生存を促進するために、公知治療への補助として、または該公知治療と併用で用いられ得る。
【0114】
本発明による遺伝子構築物または組換えベクターは、特に用いられる手法に応じて、複数の異なる形態を有する組成物中で併用され得る。したがって例えば該組成物は、粉末、錠剤、カプセル、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、エアロゾル、スプレー、ミセル溶液、経皮貼付剤、リポソーム懸濁液の形態、または処置の必要があるヒトもしくは動物に投与され得る任意の他の適切な形態であり得る。本発明による薬剤のビヒクルが与えられる対象により十分忍容されるものであるべきことは、認識されよう。
【0115】
本発明による遺伝子構築物または組換えベクターはまた、徐放性または遅延放出性デバイスの中に組み込まれ得る。そのようなデバイスは、例えば皮膚表面または皮膚の下に挿入され得、該薬剤は、数週間または数ヶ月かけて放出され得る。該デバイスは、処置部位に少なくとも隣接して位置し得る。そのようなデバイスは、該遺伝子構築物または該組換えベクターでの長期処置が必要となり、通常は頻回投与(例えば、少なくとも1日1回の注射)が必要となる場合に、特に有利であり得る。
【0116】
好ましい実施形態において、本発明による薬剤は、血流、神経への注射、または処置を必要とする部位への直接の注射により、対象に投与され得る。例えば該薬剤は、網膜または耳に少なくとも隣接して注射され得る。注射は、静脈内(ボーラスまたは輸液)、または皮下(ボーラスまたは輸液)、または皮内(ボーラスまたは輸液)であり得る。
【0117】
必要とされる遺伝子構築物または組換えベクターの量が、生物活性および生物学的利用度によって決定され、該生物活性および生物学的利用度もまた、投与様式、該遺伝子構築物または該組換えベクターの生理化学的特性、および単独療法または併用療法のいずれとして用いられるか、に依存することは認識されよう。投与回数は、処置される対象の体内での環状ポリペプチドの半減期によっても影響を受けよう。投与されるべき最適な投薬量は、当業者に決定され得、使用される個々の遺伝子構築物または組換えベクター、医薬組成物の強度、投与様式、および視神経障害または蝸牛障害の進行度により変動するであろう。対象の年齢、体重、性別、食事および投与時間をはじめとする、処置される個々の対象に依存するさらなる因子が、投薬量を調整する要件となろう。
【0118】
一般に、0.001μg/kg体重~10mg/kg体重の間、または0.01μg/kg体重~1mg/kg体重の間の本発明による環状ポリペプチドの日用量が、用いられる遺伝子構築物または組換えベクターに応じて、視神経障害または蝸牛障害を処置、改良または予防するために用いられ得る。
【0119】
該遺伝子構築物または該組換えベクターは、視神経または蝸牛障害の発症前、発症時、または発症後に投与され得る。日用量が、単回投与(例えば、1日1回の注射または鼻腔スプレーの吸入)として与えられ得る。あるいは該遺伝子構築物または該組換えベクターは、1日に2回以上投与される必要があり得る。例として、該遺伝子構築物または該組換えベクターは、0.07μg~700mg(即ち、体重70kgを仮定して)の間の日用量を2回として(または処置される視神経または蝸牛障害の重症度に応じてそれよりも多く)投与され得る。処置を受ける患者は、起床時に初回用量を、その後、午後に第二の用量を(2回投与レジメンであれば)、またはその後3もしくは4時間間隔で受け得る。あるいは徐放性デバイスを用いて、本発明による遺伝子構築物または組換えベクターの最適用量を患者に提供することができ、反復投与の必要がない。
【0120】
医薬業界によって従来から用いられているような公知の手順(例えば、インビボ実験法、臨床試験など)を用いて、本発明の遺伝子構築物または組換えベクターの専用の配合剤、および精密な治療レジメン(薬剤の日用量および投与回数など)を形成させ得る。本発明者らは、それらが初めて、TrkB受容体およびTrkB受容体アゴニストのコード配列に動作可能に連結されたプロモーターをコードする遺伝子構築物を示唆すると考えている。
【0121】
第六の態様によれば、第一の態様による遺伝子構築物または第二の態様による組換えベクターと、医薬的に許容し得るビヒクルと、を含む医薬組成物が提供される。
【0122】
第七の態様によれば、第一の態様による遺伝子構築物、または第二の態様による組換えベクターを、医薬的に許容し得るビヒクルと接触させることを含む、第六の態様による医薬組成物を調製する方法が提供される。
【0123】
「対象」は、脊椎動物、哺乳動物、または飼育動物であり得る。このため本発明による組成物および薬剤を用いて、任意の哺乳動物、例えば家畜(例えば、ウマ)、ペットを処置することができ、または他の獣医学的適用において用いることができる。しかし最も好ましくは、該対象は、ヒトである。
【0124】
該遺伝子構築物、該組換えベクターまたは該医薬組成物の「治療有効量」は、対象に投与された時に、緑内障、聴覚消失を処置すること、または神経再生および/もしくは生存を促進するなどの所望の効果を生じること、が求められる前述のものの量である任意の量である。
【0125】
例えば、用いられる該遺伝子構築物、該組換えベクターまたは該医薬組成物の治療有効量は、約0.01mg~約800mg、好ましくは約0.01mg~約500mgであり得る。該遺伝子構築物、該組換えベクターまたは該医薬組成物の量が、約0.1mg~約250mg、最も好ましくは約0.1mg~約20mgの量であることが、好ましい。
【0126】
本明細書で参照される「医薬的に許容し得るビヒクル」は、医薬組成物を配合する上で有用であることが当業者に知られる任意の公知化合物または公知化合物の組み合わせである。
【0127】
一実施形態において、該医薬的に許容し得るビヒクルは、固体であり、該組成物は、粉末または錠剤の形態であり得る。固体の医薬的に許容し得るビヒクルとしては、香味剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁剤、染色剤、充填剤、滑剤、圧縮助剤、不活性結合剤、甘味剤、防腐剤、染色剤、コーティング剤、または錠剤崩壊剤としても作用し得る1種または複数の物質を挙げることができる。該ビヒクルはまた、カプセル化材料であり得る。粉末では、ビヒクルは、本発明による微細活性剤と混和された微細固体である。錠剤では、該活性剤(例えば、本発明による遺伝子構築物または組換えベクター)は、必要な圧縮特性を有するビヒクルと適切な割合で混合されて、所望の形状およびサイズで圧縮され得る。該粉末および錠剤は、好ましくは99%までの活性剤を含有する。適切な固体ビヒクルとしては、例えばリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリドン、低融点ワックスおよびイオン交換樹脂が挙げられる。別の実施形態において、該医薬ビヒクルは、ゲルであり得、該組成物は、クリームなどの形態であり得る。
【0128】
しかし該医薬ビヒクルは、液体であり得、該医薬組成物は、溶液の形態である。液体ビヒクルは、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エリキシルおよび圧縮された組成物を調製する際に用いられる。本発明による遺伝子構築物または組換えベクターは、水、有機溶媒、両方の混合物、または医薬的に許容し得る油もしくは脂肪などの医薬的に許容し得る液体ビヒクルに溶解または懸濁され得る。該液体ビヒクルは、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、防腐剤、甘味剤、香味剤、懸濁剤、増粘剤、色素、粘度調整剤、安定化剤または浸透圧調節剤などの他の適切な医薬添加剤を含有し得る。経口および非経口投与のための液体ビヒクルの適切な例としては、水(上記添加剤、例えばセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を一部含有する)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えばグリコールなど)およびそれらの誘導体、ならびに油(例えば、分別蒸留ココナッツオイルおよび落花生油)が挙げられる。非経口投与では、該ビヒクルはまた、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルであり得る。滅菌液体ビヒクルは、非経口投与用の滅菌液体形態の組成物において有用である。圧縮された組成物のための液体ビヒクルは、ハロゲン化炭化水素または他の医薬的に許容し得る噴射剤であり得る。
【0129】
滅菌溶液または懸濁液である液体医薬組成物は、例えば筋肉内、髄腔内、硬膜外、腹腔内、静脈内注射、そして特に皮下注射によって使用され得る。該遺伝子構築物または組換えベクターは、滅菌水、生理食塩水、または他の適当な滅菌注射可能媒体を用いて投与時に溶解または懸濁され得る滅菌固体組成物として調製され得る。
【0130】
本発明の遺伝子構築物、組換えベクターおよび医薬組成物は、他の溶質または懸濁剤(例えば、溶液を等張にするのに十分な生理食塩水またはグルコース)、胆汁酸塩、アラビアゴム、ゼラチン、モノオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート80(エチレンオキシドと共重合されたソルビトールおよびその無水物のオレイン酸エステル)などを含有する滅菌溶液または懸濁液の形態で経口投与され得る。本発明による遺伝子構築物、組換えベクターまたは医薬組成物はまた、液体または固体組成物形態のいずれかで経口投与され得る。経口投与に適した組成物としては、丸薬、カプセル、顆粒、錠剤および粉末などの固体形態、ならびに溶液、シロップ、エリキシルおよび懸濁液などの液体形態が挙げられる。非経口投与に有用な形態としては、滅菌溶液、エマルジョンおよび懸濁液が挙げられる。
【0131】
本発明が、変異体または断片をはじめとする、本明細書で参照される配列のいずれかのアミノ酸または核酸配列を実質的に含む任意の核酸もしくはペプチド、またはそれらの変異体、誘導体もしくは類似体に及ぶことは、認識されよう。用語「実質的にアミノ酸/ヌクレオチド/ペプチド配列」、「変異体」および「断片」は、本明細書で参照される配列の任意の1つのアミノ酸/ヌクレオチド/ペプチド配列と少なくとも40%の配列同一性を有する、例えば配列番号1~108として同定された配列などと40%の同一性を有する配列であり得る。
【0132】
参照される配列のいずれかと65%を超える、より好ましくは70%を超える、より好ましくは75%を超える、より好ましくは80%を超える配列同一性である配列同一性を有するアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列もまた、想定される。好ましくは該アミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列は、本明細書で参照される配列のいずれかと少なくとも85%の同一性、より好ましくは本明細書で参照される配列のいずれかと少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも92%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、より好ましくは少なくとも97%の同一性、より好ましくは少なくとも98%の同一性、最も好ましくは少なくとも99%の同一性を有する。
【0133】
熟練の技術者は、2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列間の同一性%を計算する方法を認識しているであろう。2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列の間の同一性%を計算するためには、2つの配列のアラインメントを最初に調整して、その後、配列同一性値の計算を行わなければならない。2つの配列のための同一性%は、(i)配列をアラインメントするために用いられる方法、例えばClustalW、BLAST、FASTA、Smith-Waterman(異なるプログラムで実行)、または3D比較からの構造アラインメント;および(ii)アラインメント法によって用いられるパラメータ、例えば局所アラインメント対全体的アラインメント、用いられるペア-スコア・マトリックス(例えば、BLOSUM62、PAM250、Gonnetなど)およびギャップ・ペナルティ、例えば機能的形態および定数、に応じて異なる値をとり得る。
【0134】
アラインメントを行ったら、2つの配列間の同一性%を計算するのに多くの異なる方法が存在する。例えば、(i)最短配列の長さ;(ii)アラインメントの長さ;(iii)配列の平均長;(iv)非ギャップ位置の数;または(iv)オーバーハングを除く同等の位置の数、により同一性の数を分別し得る。さらに同一性%が長さに強く依存することも、認識されよう。それゆえ、配列対が短いほど、偶然に起こると予測される配列同一性が高くなり得る。
【0135】
こうして、タンパク質またはDNA配列の正確なアラインメントが複雑なプロセスであることは、認識されよう。評判の良い多重アラインメントプログラムClustalW (Thompson et al., 1994, Nucleic Acids Research, 22, 4673-4680; Thompson et al., 1997, Nucleic Acids Research, 24, 4876-4882)は、本発明によるタンパク質またはDNAの多重アラインメントを作成するための好ましい方法である。ClustalWの適切なパラメータは、以下の通りであり得る:DNAアラインメントの場合、ギャップオープンペナルティ=15.0、ギャップ伸長ペナルティ=6.66、マトリックス=同一性。タンパク質のアラインメントの場合、ギャップオープンペナルティ=10.0、ギャップ伸長ペナルティ=0.2、マトリックス=Gonnet。DNAおよびタンパク質のアラインメントの場合、ENDGAP=-1、およびGAPDIST=4。当業者は、最適な配列アラインメントのためにこれらおよび他のパラメータを変動させる必要があり得ることを、認知しているであろう。
【0136】
好ましくは2つのアミノ酸/ポリヌクレオチド/ポリペプチド配列の間の同一性%の計算は、その後、(N/T)×100(式中、Nは、配列が同一残基を共有する位置の数であり、Tは、ギャップを含むがオーバーハングを含まない場合と比較された位置の総数である)などのアラインメントから計算され得る。こうして、2つの配列間の同一性%を計算するための最も好ましい方法は、(i)例えば先に表された通り、パラメータの適切なセットを用いてClustalWプログラムを利用した配列アラインメントを調整すること;ならびに(ii)NおよびTの値を、以下の式:配列同一性=(N/T)×100に挿入すること、を含む。
【0137】
類似の配列を同定するための別の方法は、当業者に公知であろう。例えば実質的に類似のヌクレオチド配列は、ストリンジェントな条件下でDNA配列またはそれらの相補体にハイブリダイズする配列によってコードされよう。ストリンジェントな条件とは、本発明者らによれば、ヌクレオチドがおよそ45℃で3×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、フィルター結合DNAまたはRNAにハイブリダイズし、その後、およそ20~65℃で0.2×SSC/0.1%SDSで少なくとも1回洗浄することを意味する。あるいは実質的に類似のポリペプチドは、例えば配列番号3および5で示された配列と、少なくとも1、しかし5、10、20、50または100未満のアミノ酸が異なり得る。
【0138】
遺伝子コードの縮退により、本明細書に記載された任意の核酸配列がコードされたタンパク質の配列に実質的に影響を及ぼさずに変動または変更され、それによりその機能的変異体を提供し得ることは、明白である。適切なヌクレオチド変異体は、配列内で同じアミノ酸をコードする異なるコドンの置換により改変され、こうしてサイレントチェンジを生じる配列を有するものである。他の適切な変異体は、相同的なヌクレオチド配列を有するが、置換したアミノ酸と類似の生物物理的特性の側鎖による、アミノ酸をコードする異なるコドンの置換により改変されて、保存的変更を生じる配列の全てまたは一部を含むものである。例えば小さな非極性疎水性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、およびメチオニンが挙げられる。大きな非極性疎水性アミノ酸としては、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンが挙げられる。極性中性アミノ酸としては、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。正電荷(塩基性)アミノ酸としては、リシン、アルギニンおよびヒスチジンが挙げられる。負電荷(酸性)アミノ酸としては、アルパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。それゆえ、アミノ酸が類似の生物物理的特性を有するアミノ酸で置き換えられ得ることは認識されると思われ、当業者はこれらのアミノ酸をコードするヌクレオチド配列を知っているであろう。
【0139】
別の態様によれば、チロシンキナーゼ受容体B(TrkB)を活性化するために、TrkBをコードする第一のコード配列と、TrkB受容体のアゴニストをコードする第二のコード配列とに動作可能に連結されたプロモーターを含み、それにより網膜神経節細胞(RGC)、神経細胞または蝸牛細胞の生存を促進する、遺伝子構築物が提供される。
【0140】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に記載された特色の全て、および/またはそのように開示された任意の方法もしくは工程のステップの全ては、そのような特色および/またはステップの少なくとも一部が互いに排他的となる組み合わせ以外の任意の組合せで、上記態様のいずれかと組み合わせられ得る。
【0141】
本発明のより良好な理解のために、そしてその実施形態がどのようにして実行され得るかを示すために、ここに添付の図面を例として参照する。
【図面の簡単な説明】
【0142】
図1】本発明による遺伝子構築物の一実施形態の略図である。
図2】カノニカルなシグナル配列(青色)+プロBDNF(赤色)およびmBDNF(黒色)を含有する「プラスミドQTA001PA」として知られる本発明による組換えベクターの第一の実施形態の略図である。それはまた、-IRES-GFP-配列(シアンおよび紫色)を含む。
図3】プロBDNFを含まず(しかしmBDNFのみを生成し)プラスミドQTA001PAと同じシグナル配列(青色)を含む「プラスミドQTA002P」として知られる本発明による組換えベクターの第二の実施形態の略図である。それはまた、-IRES-GFP-配列(シアンおよび紫色)を含む。
図4】プロBDNFを含まず(しかしmBDNFのみを生成し)IL-2シグナル配列(青色)を含む「プラスミドQTA003P」として知られる本発明による組換えベクターの第三の実施形態の略図である。それはまた、-IRES-GFP-配列(シアンおよび紫色)を含む。
図5】プロBDNFを含まず(しかしmBDNFのみを生成し)新規なシグナル配列(青色)を含む「プラスミドQTA004P」として知られる本発明による組換えベクターの第四の実施形態の略図である。それはまた、-IRES-GFP-配列(シアンおよび紫色)を含む。
図6】本発明の構築物内で用いられるシグナルペプチドの異なる実施形態のためのヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。第二の残基は、リシン(K)またはアルギニン(R)などの1つまたは複数の塩基性残基によって置き換えられ得るトレオニン(t)である。イソロイシン(I)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)およびロイシン(L)をはじめとする残基の次の延伸は、1つまたは複数の疎水性残基によって置き換えられ得る。
図7】異なるシグナルペプチド配列を有し、伸長されたプロBDNF成分のコード配列を有さない、mBDNFをコードする遺伝子を含むプラスミド(4μgDNA/ウェル)の形質導入後24時間目の特異的ELISAを用いたHEK293細胞からのBDNFの放出を示す(データは、n=4での平均±S.E.Mとして示される)。
図8】プラスミド形質導入の24時間後のHEK293細胞溶解物中のBDNF免疫反応性材料の細胞内濃度(任意の単位)のウェスタンブロットの結果を示す(データは、n=4での平均±S.E.Mとして示される)。
図9】細胞をQTA001PAで形質導入した場合の2つの分子量バンド(32kDaおよび14kDa)を示す細胞溶解物のウェスタンブロットにおけるBDNF免疫反応性を、QTA002P、QTA003PおよびQTA004Pでの単一の14kDaバンドのみに対比させて示す。
図10】選択的プロBDNF ELISAを用いたプラスミド形質導入の24時間後に特異的ELISAを用いて測定されたHEK293インキュベーション培地中のプロBDNF濃度を示す(データは、n=4での平均±S.E.Mとして示される)。
図11】プラスミドQTA002P(内在性カノニカルシグナルペプチド配列)およびQTA009P~QTA013PによるHEK293細胞溶解物中のBDNF発現を示す。データは、平均+S.E.Mとして示される。** QTA002Pとの比較でP<0.01。
図12】プラスミドQTA002P(内在性カノニカルシグナルペプチド配列)およびQTA009P~QTA013PによるHEK293細胞インキュベーション培地中のBDNF発現を示す。データは、平均+S.E.Mとして示される。** QTA002Pとの比較でP<0.01。
図13】HEK293細胞をプラスミドQTA015P(IRESスペーサーによって分離されたBDNFおよびeGFPを発現する)、QTA021P(機能的ウイルス2Aペプチド配列によって分離されたBDNFと、それに続くeGFPを発現する)、QTA022P(非機能的ウイルス2Aペプチド配列によって分離された、BDNFと、それに続くeGFPを発現する)、およびQTA023P(機能的ウイルス2Aペプチド配列によって分離された、eGFPと、それに続くBDNFのコードを発現する)で形質導入された後24時間目の該HEK293細胞からのウェスタンブロットを示す。データは、BDNF免疫反応性(A)、eGFP免疫反応性(B)およびHEK293細胞からインキュベーション培地に放出されたBDNFの量(C)として示される。データは、バンドの密度の平均+S.E.Mとして示される。
図14図14Aは、QTA020Vベクターでのトランスフェクションの48時間後のHEK293細胞ホモジネートのウェスタンブロットを示し、ウイルス2Aペプチド配列により分離されたTrkB受容体およびBDNFを含む大きな前駆体コード領域の効率的なプロセシングを示す。図14Bおよび14Cは、ウイルス2Aペプチド開裂後に生成されたトランスジーンタンパク質が、プロセシング(放出前に、TrkB受容体が細胞表面へ、そしてBDNFが貯蔵小胞へ)後のHEK293細胞内の正しい細胞内コンパートメントに輸送されたことを示す。
図15図15Aは、rAAV2ベクターであるQTA020Vのためのマウス網膜ホモジネート中のTrkB受容体発現を示し、図15Bは、BDNF発現を示す。データは、マウス網膜ホモジネートのウェスタンブロットの密度の平均+S.E.Mとして示される。** ナイーブ(未注射の動物)と比較してP<0.01。
図16】ウイルス2Aペプチド配列によって分離されたTrkB受容体およびBDNFのコードを含むrAAV2ベクターであるQTA020Vの注射後の免疫細胞化学的測定により示された、マウス網膜神経節細胞層におけるTrkB(A)およびBDNF(B)トランスジーンの発現を示す。
図17】rAAV2-CAG-eGFPベクターで処置された対照動物と対比されたマウスにおける視神経挫滅(ONC)に続く網膜神経節細胞(RGC)生存を示す。データは、網膜フラットマウント内のBrn3A陽性細胞によりカウントされた、動物あたりの網膜全体の網膜神経節細胞の平均数が平均+S.E.Mとして示される。*** 対照との比較でp<0.001、* P<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0143】
実施例
方法と材料
分子クローニングおよびプラスミド構築物
DNA配列のコドン最適化を、オンラインツール(http://www.idtdna.com/CodonOpt)を用いて実施し、DNAブロックを、Integrated DNA technologies, Inc.(IDT; 9180 N. McCormick Boulevard, Skokie, IL 60076-2920, USA)またはGenScript(860 Centennial Ave, Piscataway, NJ 08854, USA)によって合成した。マスタープラスミドQTA001PAと、次のプラスミドを作製するためのクローニングは、標準の分子生物学およびクローニング技術を利用して実施した。
【0144】
プラスミドの拡大および精製
DNAプラスミドを、SURE競合細胞(Agilent Technologies; cat.#200238)中で一晩、拡大し、Maxi-Prep精製後に2.29μg/μlのプラスミドを提供した。残りのプラスミドは、500μgスケールおよび最小限の内毒素が存在する形質導入品質に拡大した。
【0145】
HEK293培養およびプラスミドDNAでの細胞形質導入
HEK293細胞(400,000個)を、ポリ-L-リシン(10μg/mL、Sigma-Aldrich; cat.#P1274)コーティング6ウェルプレートにおいて、10%ウシ胎児血清(FBS)、1%ペニシリンおよび1%ストレプトマイシン(1%Pen/Strep)を含有するダルベッコ最小必須培地(DMEM)1.5mL中で80%コンフルエントになるまで培養した。その後、培地をDMEM(添加剤不含)2mLと交換した。2~3時間後に、プラスミドDNA 4μg+リポフェクタミン10μL(4μL/mL;Thermo Fisher Scientific; cat.#12566014)を含有するトランスフェクション培地のさらなる0.5mlを各ウェルに添加して、トランスフェクション期間全体および上清採取のために全容量2.5mlを得た。
【0146】
ELISAによるBDNF測定
HEK293細胞から分泌されたBDNFの量を、トランスフェクションの24時間後に細胞培地中で測定した。培地を遠心分離して、細胞破片を除去し、市販のヒトBDNF ELISAキット(Sigma-Aldrich、製品# RAB0026)を用いて測定した。試料を新たに作製されたBDNF標準と比較することにより、BDNF濃度を決定した。
【0147】
BDNFおよびTrkB受容体のウェスタンブロット
DMEMインキュベーション培地を除去し、低温リン酸緩衝生理食塩水で細胞を洗浄し、新たに調製された溶解緩衝液350μLをウェルに添加することにより、HEK293細胞内のBDNFおよびTrkB免疫反応性の量を測定した(Lysis-M試薬10ml+cOmplete Miniプロテアーゼインヒビターカクテル、Roche; cat.#04719964001 1錠+Haltホスファターゼインヒビターカクテル(100倍)、Thermo Scientific; cat.#78428 100μl)。細胞のホモジナイズ後に、タンパク質懸濁液を、BCAアッセイ(Pierce BCA タンパク質アッセイキット、Thermo Scientific; cat.#23227)を用いて定量した。1レーンにHEK293細胞溶解物タンパク質6μg~15μgの間を、Bis-Trisゲル(12%NuPAGE Novex; cat.#NP0342BOX、Thermo Scientific)でランダウン(run down)して、一晩インキュベートされた、一次ウサギポリクローナル抗BDNF抗体(Santa Cruz Biotechnology Inc; 製品# sc-546;1:500希釈)、ウサギポリクローナル抗TrkB抗体(Abcam; cat.#ab33655、1:2000希釈で使用)またはeGFP抗体(Abcam 製品#ab-290、1:500で使用)を用いたウェスタンブロットにより検査した。一次抗体を、HRPコンジュゲート化抗ウサギ抗体(Vector Laboratories; cat.#PI-1000、1:8000)、ならびにECL Prime(Amersham, GE Healthcare, UK)およびAllianceウェスタンブロット画像システム(UVItec Ltd, Cambridge, UK)を用いたシグナル検出で視覚化した。マウス網膜のウェスタンブロットでは、ベクター処置された動物の目を、新たに調製された溶解緩衝液(Lysis-M試薬10ml+cOmplete Miniプロテアーゼインヒビターカクテル、Roche; 製品#04719964001 1錠+Halt ホスファターゼインヒビターカクテル(100倍)、Thermo Scientific;#78428 100μl)500μL中でホモジナイズした。組織を1分間破壊し(Qiagen, TissueRuptor 製品#9001273)、その後、さらに15分間、氷上で保持した。
その後、タンパク質を上記の通りウェスタンブロットにより分析した。
【0148】
免疫細胞化学的測定
HEK293細胞(70,000個)を、4ウェルプレート内の13mmのポリ-L-リシンコーティングカバースリップに播種して、培地0.5ml中に10%FBSおよび1%Pen/Strepを含有するDMEMでインキュベートした。細胞が80%コンフルエントまで発育したら、2~3時間の間、培地をDMEM 0.4ml(添加剤不含)と交換し、その後、トランスフェクション培地(プラスミドDNA 0.8μg+リポフェクタミン2μl)のさらなる0.1mLを添加して、最終容量を0.5mlにした。カバースリップをPBSで2回洗浄して、室温の1Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の4%パラホルムアルデヒドで30分間固定した。細胞をPBSでさらに3回洗浄した後、5%正常ヤギ血清(NGS)、3%ウシ血清アルブミン(BSA)およびPBS中の0.3%TritonX-100中、室温で60分間インキュベートすることによりブロックして、浸透させた。その後、細胞を、ブロッキング溶液で希釈されたBDNF用(Santa Cruz Biotechnology Inc; 製品# sc-546;1:300希釈)またはTrkB用(Abcam 製品# ab33655、1:500希釈)の市販のウサギポリクローナル抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。alexa fluor 647 (Invitrogen, 製品# A21248、1:1000)にコンジュゲート化された二次抗ウサギ抗体を用いて室温で2時間、染色を明らかにした。細胞核もまた、1μg/ml DAPI (Thermo Scientific, 製品# D1306 1:8000)で対比染色した。細胞をさらに3回洗浄して、fluorSave(商標)試薬(Calbiochem/EMD Chemicals Inc., Gibbstown, NJ, USA)を添加した後、撮像した。撮像は、3倍デジタルズームおよび0.5~0.8シーケンシャルスキャンZステップ間隔を利用し、20倍対物レンズと、63倍油浸対物レンズを備えたLeica DM6000落射蛍光顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)またはLeica SP5共焦点顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)を用いて実施した。
【0149】
対照またはベクター処置動物からの網膜構造の免疫細胞化学的測定では、注意深く切除された目を、4%パラホルムアルデヒド/0.1%PBS(pH7.4)で一晩固定して、30%スクロース/0.1%PBS中、4℃で脱水した(24時間)。その後、最適切削温度化合物(OCT)(Sakura Finetek, Zoeterwoude, Netherlands)を含有するシリコンモールドに目を包埋して、ドライアイスで凍結させた。網膜の背腹/上下軸を通る13μm切片を、Bright OTF 5000クリオスタット(Bright Instruments, Huntingdon, UK)を用いてSuperfrost plusスライド(VWR 製品#631-0108)上に採取した。スライドをPBSで3回洗浄して、PBS中の5%正常ヤギ血清(NGS)、3%ウシ血清アルブミン(BSA)および0.3%TritonX-100を室温で60分間、浸透させた。その後、スライドを、BDNF用(Santa Cruz Biotechnology Inc; 製品# sc-546;1:300)またはTrkB用(Abcam 製品# ab33655、1:500)の市販のウサギポリクローナル抗体と共に4℃で一晩インキュベートして、ブロッキング溶液で希釈した。alexa fluor 647 (Invitrogen, 製品# A21248、1:1000)にコンジュゲート化された二次抗ウサギ抗体を用いて室温で2時間、染色を明らかにした。網膜細胞核もまた、1μg/ml DAPI(Thermo Scientific, 製品# D1306 1:8000)で対比染色した。細胞をさらに3回洗浄して、fluorSave(商標)試薬(Calbiochem/EMD Chemicals Inc., Gibbstown, NJ, USA)を添加した後、撮像した。撮像は、3倍デジタルズームおよび0.5~0.8シーケンシャルスキャンZステップ間隔を利用し、20倍対物レンズと、63倍油浸対物レンズを備えたLeica DM6000落射蛍光顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)またはLeica SP5共焦点顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)を用いて実施した。
【0150】
硝子体内注射
マウスを、7~10日の馴化期間の後、様々な試験群に無作為化した。それらをその後、ケタミン(50mg/kg)およびキシラジン(5g/kg)の腹腔内注射で麻酔した。1%局所テトラカイン点眼薬を、試験1日目に投与しした。1%トロピカミド点眼薬を用いて、瞳孔拡張(Pupillary dilation)を実行した。手術用顕微鏡を利用して、強膜部分層のパイロットホール(partial-thickness scleral pilot hole)を30ゲージの針で作製して、先端径30μmおよび先端長2.5mmの微細金属製マイクロピペットによる下部の強膜、脈絡膜および網膜への透過を容易にした。マイクロピペットをその後、10μlガラスシリンジ(Hamilton Co., Reno, NV)に連結させた後、群に応じてベクター懸濁液2μlをピペット内に引き上げた。硝子体内注射の間、レンズの透過または渦静脈の損傷を回避するように注意を払った。注射部位として、上側角膜輪部(supero-temporal limbus)の後部およそ3mmを目標に定めた。注射は1分間かけて緩徐に行い、ベクター懸濁液を拡散させた。右目は触れないまま、内部対側対照とした。
【0151】
視神経挫滅(ONC)
ベクター投与後3週間(21日)目に、マウスをONC処置に供するか、未処置とするか、または偽処置で挫滅させた。両眼手術用スコープの下、スプリングシザーで、結膜の、眼球に対して下位から開始して目の周囲に、一時的に小さな切開を作製した。これにより、眼球の後面を露出させて、視神経を視覚化させた。クロスアクションタイプの鉗子(Dumont #N7 cat.#RS-5027; Roboz)により、神経を圧迫するセルフクランピング作用からの圧力のみで、露出された視神経を眼球からおよそ1~3mmで10秒間つかんだ。10秒後に、視神経を解放し、鉗子を取り除いて、眼を回転させて適所に戻した。ONCの7日後に、動物を選別した。各群の両眼を、4%パラホルムアルデヒド/0.1%PBS(pH7.4)に一晩静置することにより固定した。その後、角膜からの後部眼構造の切除およびレンズの除去の後に、網膜フラットマウントを作製した。網膜フラットマウントを、4%パラホルムアルデヒド/0.1%PBSで30分間、後固定して、PBS中の0.5%Triton X-100で洗浄した。網膜を-80℃で10分間凍結し、核膜に浸透させて抗体の浸透性を改善した後、10%正常ロバ血清(NDS)、2%ウシ血清アルブミン(BSA)およびPBS中の2%Triton X-100の中、室温で60分間ブロッキングした。RGCをBrn3A(Santa Cruz, #sc-31984 1:200)に対する抗体で対比染色して、20倍対物レンズおよびLeica DM6000落射蛍光顕微鏡(Leica Microsystems, Wetzlar, Germany)を用いた蛍光顕微鏡測定により視覚化した。高解像度画像を、1.5倍デジタルズームおよび0.5~0.8シーケンシャルスキャンZステップ間隔を利用し、40倍油浸対物レンズを備えたLeica SP5共焦点顕微鏡(Leica Microsystems)を用いて得た。RGC細胞数を、核カウントのための画像ツール(image-based tool for counting nuclei)(ITCN)のプラグインを利用したImageJにより測定して、RGC/mm2の密度として表した。
【0152】
構築物およびベクター
本発明者らは、緑内障もしくは蝸牛の病気などの視神経病に罹患した対象を処置するため、または神経再生および/もしくは生存を促進するために用いられ得る、図1に示された遺伝子構築物を作製した。該構築物は、mBDNFの同時生成および局所放出により、RGCの細胞表面上のTrkB受容体の密度を維持または増大し、そしてTrkB受容体経路を通したシグナル伝達を維持または増進するように設計された。
【0153】
該構築物は、TrkB受容体およびそのアゴニストである成熟型脳由来神経栄養因子をコードするトランスジーンを含む。これらのトランスジーンは、ヒトシナプシンI(SYN I)プロモーターまたはCAGプロモーターのいずれかである単一プロモーターに動作可能に連結される。有利には、図1の構築物は、rAAV2ベクター内に入れられ得、コードするトランスジーンのサイズによって妨害されない。これは、第一のトランスジーンであるTrkBがウイルス2Aペプチド配列に連結された後、BDNFシグナルペプチドに、そしてその後、成熟型タンパク質に連結されるように該構築物が配向されているためである。ウイルス2Aペプチドの短いN-末端アミノ酸配列は、TrkB受容体の細胞内部分に付着したままであり、C-末端ウイルス2A配列からの残りのプロリンアミノ酸は、N-末端BDNFシグナルペプチドに付着したままで、最終的には開裂後にmBDNFタンパク質から除去されるため、この配向は免疫原性リスクも最小限に抑える。該ベクターは、対象に投与され得る、薬理学的に許容し得る緩衝溶液に入れられ得る。
【0154】
図2~5は、発現ベクターの様々な実施形態を示す。図2は、カノニカルなシグナル配列(青色)(即ち、MTILFLTMVISYFGCMKA(配列番号20])+プロBDNF(赤色)およびmBDNF(黒色)を含有する「プラスミドQTA001PA」として知られるベクターを示す。図3は、「プラスミドQTA002P」として知られるベクターを示す。それは、プロBDNFをコードせず、mBDNFのみを生成し、QTA001PAと同じシグナル配列(青色)をコードする。図4は、プロBDNFをコードせず、mBDNFのみを生成する「プラスミドQTA003P」として知られるベクターを示す。それは、mBDNFのカノニカルなシグナル配列の代わりに、IL-2シグナル配列(青色)を含む。最後に、図5は、「プラスミドQTA004P」として知られるベクターを示す。それは、プロBDNFをコードせず、代わりにmBDNFのみを生成する。それは、新規なシグナル配列(青色)[配列番号32]もコードする。
【0155】
本発明者らは、成熟型BDNF(mBDNF)エレメントから出発して、緑内障遺伝子療法のコンセプトに関係する構築物およびベクターを生成および研究した。彼らは、プロBDNFコード領域を有さずBDNF配列を含むプラスミド(QTA002P、図3参照)を用いたリポフェクタミン形質導入後の、HEK293細胞からのmBDNFの生成および放出を明確に実証した(図7参照)。該細胞から放出されたmBDNFは、酵母および他の細胞系の製造アプローチを用いてmBDNFの市販量を作製しようと試みた複数のグループによって報告された通り、予測された14kDaモノマーであり(ウェスタンブロットおよびBDNFのための市販の抗体を用いて測定)、タンパク質凝集体の証拠はない。それゆえmBDNFは、TrkB受容体を活性化するために、タンパク質分子に非共有結合の二量体を形成させることが可能な形態で放出される。
【0156】
BDNF(mBDNFとより大きく伸長されたプロBDNFタンパク質とを識別せず)のためのELISAを用いて、本発明者らは、内在性のカノニカルな18アミノ酸シグナルペプチド配列(MTILFLTMVISYFGCMKA)をコードするDNA配列を新規なペプチド配列(QTA004P、図5参照)で置換し、BDNF遺伝子を含有するプラスミドによる細胞のリポフェクタミン形質導入後に、HEK293インキュベーション培地に同等レベルのBDNFを放出することが可能であることも実証した(図7参照)。
【0157】
インターロイキン-2シグナルペプチド(QTA003P、図4参照)をコードする配列による内在性シグナルペプチドの置換は、培地からのBDNF放出においてあまり効果的ではなかった。培地に放出されたBDNFのレベルは、現在のところおよそ1~2nMであり、このアゴニスト濃度は、特異的なTrkB受容体を最大限に活性化させるのに十分である(およそ0.9nMのIC50)。BDNF放出のレベルは、プロBDNFとmBDNF配列の組み合わせを含み、18アミノ酸のカノニカルシグナルペプチドも含むプラスミドQTA001PA(図2参照)では、プラスミドQTA002P(図3参照)およびQTA004P(図5参照)に比較しておよそ35倍高い(876±87ng/mL BDNF)。
【0158】
リポフェクタミンプラスミド形質導入の24時間後に定量的ウェスタンブロットにより細胞内に残留するBDNFを測定し、QTA002PおよびQTA004PよりもQTA001PAで低いBDNF残留濃度が明らかとなった(図8参照)。
【0159】
その上、QTA001PAにより形質導入された細胞溶解物中のBDNFを免疫反応のおよそ半量が、プロBDNF(32kDaの分子量バンド)の形態であったが、プロBDNFのバンドは、QTA002P、QTA003PおよびQTA004Pで形質導入された細胞の溶解物中に存在しなかったが(図9参照)、それはおそらく、これらのプラスミドがプロBDNFを伸長されたコード配列を含有しないためであろう。
【0160】
プロBDNFに特異的なELISAを利用して、本発明者らは、QTA001PAにより形質導入された細胞から放出されたBDNF免疫反応性のおよそ70ng/mL(2.2nMまたは3.5%)がプロBDNFの形態であるが、大部分(96.5%または876ng/mL/63nM)がmBDNFとして放出されることも、実証することができた(図10参照)。伸長されたプロBDNFのコード配列を含まないQTA002P、QTA003PまたはQTA004Pにより形質導入された細胞から検出されたプロBDNF免疫反応性はなかった。
【0161】
したがって、プラスミドの全てが14kDa mBDNFタンパク質を生成することが可能であるが、HEK293細胞から放出されるmBDNFの量がタンパク質貯蔵および分泌小胞へのパッケージングの効率に大きく依存することは明らかである。プラスミドQTA001PA(図2参照)で生成されたプロBDNFとmBDNF配列の組み合わせを含む伸長形態のタンパク質はそれゆえ、細胞内に蓄積すると思われるより小さなmBDNFよりもかなり効率的に、分泌小胞にパッケージングされて、インキュベーション培地に放出される。
【0162】
図11を参照すると、プラスミドQTA009P~QTA013Pに含まれる新規な配列による、プラスミドQTA002Pに表される内在性のカノニカルなシグナルペプチド配列のコードの置換が、プラスミドでの形質導入の24時後にHEK293細胞内のBDNF濃度を上昇させることが示される。図12により、新規な配列(プラスミドQTA009P~QTA013P)による、プラスミドQTA002Pに含まれる内在性のカノニカルなシグナルペプチドコード配列の置換が、プラスミドでの形質導入の24時間後の測定で、HEK293細胞からのBDNFの放出を増加させることが実証される(ELISAによる測定)。
【0163】
図13に示される通り、ウイルス2Aペプチド配列の付加は、2つのトランスジーン:eGFPおよびBDNFへの大きな前駆体タンパク質のコード配列の効率的なプロセシングをもたらす。ウェスタンブロットは、プラスミド:(i)QTA015P(IRESスペーサーによって分離されたBDNFおよびeGFPを発現する)、(ii)QTA021P(機能的ウイルス2Aペプチド配列によって分離されたBDNFと、それに続くeGFPを発現する)、(iii)QTA022P(非機能的ウイルス2Aペプチド配列によって分離された、BDNFと、それに続くeGFPを発現する)、および(iv)QTA023P(機能的ウイルス2Aペプチド配列によって分離された、eGFPと、それに続くBDNFのコードを発現する)、で形質導入された後24時間目のHEK293細胞を示す。
【0164】
QTA021P(mBDNF-ウイルス2Aペプチド-eGFPのコドン最適化配列を含むプラスミド)のコード配列は、本明細書では以下の配列番号104として参照される:
ATGACTATCCTGTTTCTGACAATGGTTATTAGCTATTTCGGTTGCATGAAGGCTCACAGTGATCCCGCACGCCGCGGAGAACTTAGCGTGTGCGACAGCATCAGCGAGTGGGTCACCGCCGCCGATAAGAAGACCGCTGTGGATATGTCCGGCGGGACCGTCACTGTACTCGAAAAAGTTCCAGTGAGCAAAGGCCAACTGAAACAATATTTCTATGAAACTAAGTGCAACCCCATGGGGTACACCAAGGAGGGCTGCCGGGGAATCGACAAGAGACACTGGAATTCCCAGTGCCGGACCACTCAGAGCTACGTCCGCGCCTTGACGATGGATTCAAAGAAGCGCATCGGATGGCGGTTCATAAGAATCGACACCAGTTGTGTGTGCACGCTGACGATAAAACGGGGGCGGGCCCCCGTGAAGCAGACCCTGAACTTTGATTTGCTCAAGTTGGCGGGGGATGTGGAAAGCAATCCCGGGCCAATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTGTTCACCGGCGTTGTGCCAATACTGGTTGAGTTGGATGGCGATGTCAACGGACACAAATTTAGCGTAAGCGGGGAGGGAGAGGGCGACGCCACATATGGCAAGCTGACCCTGAAGTTCATTTGCACGACCGGCAAATTGCCCGTCCCTTGGCCCACACTTGTGACGACCCTGACTTATGGCGTACAGTGCTTCAGCAGGTACCCTGATCATATGAAGCAACACGACTTCTTTAAGAGTGCCATGCCAGAGGGATACGTCCAGGAAAGAACCATATTCTTCAAAGATGATGGAAATTACAAAACCCGGGCAGAGGTCAAGTTTGAAGGCGACACCCTGGTGAACAGGATCGAACTCAAAGGCATCGATTTCAAAGAGGACGGAAACATCCTCGGACACAAACTGGAATACAATTACAACAGCCACAACGTCTACATCATGGCAGATAAACAAAAGAACGGTATTAAAGTGAACTTCAAGATCCGGCACAACATCGAAGACGGCTCCGTCCAGCTTGCCGACCACTACCAGCAAAATACCCCGATCGGCGACGGCCCCGTTCTCCTCCCCGATAATCACTACCTGAGTACACAGTCAGCCTTGAGCAAAGACCCTAATGAAAAGCGGGACCACATGGTTTTGCTGGAGTTCGTTACCGCAGCGGGTATTACGCTGGGTATGGACGAGCTTTACAAGTAA
[配列番号104]
【0165】
QTA022P(mBDNF-非機能性ウイルス2Aペプチド-eGFPのコドン最適化配列を含むプラスミド)のコード配列は、本明細書では以下の配列番号105として参照される:
ATGACTATCCTGTTTCTGACAATGGTTATTAGCTATTTCGGTTGCATGAAGGCTCACAGTGATCCCGCACGCCGCGGAGAACTTAGCGTGTGCGACAGCATCAGCGAGTGGGTCACCGCCGCCGATAAGAAGACCGCTGTGGATATGTCCGGCGGGACCGTCACTGTACTCGAAAAAGTTCCAGTGAGCAAAGGCCAACTGAAACAATATTTCTATGAAACTAAGTGCAACCCCATGGGGTACACCAAGGAGGGCTGCCGGGGAATCGACAAGAGACACTGGAATTCCCAGTGCCGGACCACTCAGAGCTACGTCCGCGCCTTGACGATGGATTCAAAGAAGCGCATCGGATGGCGGTTCATAAGAATCGACACCAGTTGTGTGTGCACGCTGACGATAAAACGGGGGCGGGCCCCTGTCAAACAAACCCTCAATTTTGACTTGCTGAAGCTTGCTGGGGATGTCGAGTCCGCTGCCGCGGCTATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTGTTCACCGGCGTTGTGCCAATACTGGTTGAGTTGGATGGCGATGTCAACGGACACAAATTTAGCGTAAGCGGGGAGGGAGAGGGCGACGCCACATATGGCAAGCTGACCCTGAAGTTCATTTGCACGACCGGCAAATTGCCCGTCCCTTGGCCCACACTTGTGACGACCCTGACTTATGGCGTACAGTGCTTCAGCAGGTACCCTGATCATATGAAGCAACACGACTTCTTTAAGAGTGCCATGCCAGAGGGATACGTCCAGGAAAGAACCATATTCTTCAAAGATGATGGAAATTACAAAACCCGGGCAGAGGTCAAGTTTGAAGGCGACACCCTGGTGAACAGGATCGAACTCAAAGGCATCGATTTCAAAGAGGACGGAAACATCCTCGGACACAAACTGGAATACAATTACAACAGCCACAACGTCTACATCATGGCAGATAAACAAAAGAACGGTATTAAAGTGAACTTCAAGATCCGGCACAACATCGAAGACGGCTCCGTCCAGCTTGCCGACCACTACCAGCAAAATACCCCGATCGGCGACGGCCCCGTTCTCCTCCCCGATAATCACTACCTGAGTACACAGTCAGCCTTGAGCAAAGACCCTAATGAAAAGCGGGACCACATGGTTTTGCTGGAGTTCGTTACCGCAGCGGGTATTACGCTGGGTATGGACGAGCTTTACAAGTAA
[配列番号105]
【0166】
QTA023P(eGFP-ウイルス2Aペプチド-mBDNFのコドン最適化配列を含むプラスミド)のコード配列は、本明細書では以下の配列番号106として参照される:
ATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTGTTCACCGGGGTGGTGCCCATCCTGGTCGAGCTGGACGGCGACGTAAACGGCCACAAGTTCAGCGTGTCCGGCGAGGGCGAGGGCGATGCCACCTACGGCAAGCTGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCGGCAAGC
TGCCCGTGCCCTGGCCCACCCTCGTGACCACCCTGACCTACGGCGTGCAGTGCTTCAGCCGCTACCCCGACCACATGAAGCAGCACGACTTCTTCAAGTCCGCCATGCCCGAAGGCTACGTCCAGGAGCGCACCATCTTCTTCAAGGACGACGGCAACTACAAGACCCGCGCCGAGGTGAAGTTCGAGGGCGACACCCTGGTGAACCGCATCGAGCTGAAGGGCATCGACTTCAAGGAGGACGGCAACATCCTGGGGCACAAGCTGGAGTACAACTACAACAGCCACAACGTCTATATCATGGCCGACAAGCAGAAGAACGGCATCAAGGTGAACTTCAAGATCCGCCACAACATCGAGGACGGCAGCGTGCAGCTCGCCGACCACTACCAGCAGAACACCCCCATCGGCGACGGCCCCGTGCTGCTGCCCGACAACCACTACCTGAGCACCCAGTCCGCCCTGAGCAAGGACCCCAACGAGAAGCGCGATCACATGGTCCTGCTGGAGTTCGTGACCGCCGCCGGGATCACTCTCGGCATGGACGAGCTGTACAAGGCTCCCGTTAAACAAACTCTGAACTTCGACCTGCTGAAGCTGGCTGGAGACGTGGAGTCCAACCCTGGACCTATGACCATCCTTTTCCTTACTATGGTTATTTCATACTTCGGTTGCATGAAGGCGCACTCCGACCCTGCCCGCCGTGGGGAGCTGAGCGTGTGTGACAGTATTAGCGAGTGGGTCACAGCGGCAGATAAAAAGACTGCAGTGGACATGTCTGGCGGGACGGTCACAGTCCTAGAGAAAGTCCCGGTATCCAAAGGCCAACTGAAGCAGTATTTCTACGAGACCAAGTGTAATCCCATGGGTTACACCAAGGAAGGCTGCAGGGGCATAGACAAAAGGCACTGGAACTCGCAATGCCGAACTACCCAATCGTATGTTCGGGCCCTTACTATGGATAGCAAAAAGAGAATTGGCTGGCGATTCATAAGGATAGACACTTCCTGTGTATGTACACTGACCATTAAAAGGGGAAGATAG
[配列番号106]
【0167】
図14Aを参照すると、QTA020Vベクターでのトランスフェクションの48時間後のHEK293細胞ホモジネートのウェスタンブロットが示される。それは、ウイルス2Aペプチド配列により分離されたTrkB受容体およびBDNFを含む大きな前駆体コード領域の効率的プロセシングを示している。2つのTrkBおよびmBDNF免疫反応性トランスジーンは、予測された正しい分子量サイズ内である。TrkB受容体バンドを超える大きな前駆体タンパク質の染色が無いことに留意しなければならず、それは5つのリピートにおける前駆体タンパク質のほぼ全てまたは全てのプロセシングを示している。図14Bおよび14Cは、ウイルス2Aペプチド開裂後に生成されたトランスジーンタンパク質が、プロセシング後のHEK293細胞において正しい細胞内コンパートメントに輸送されたことを示している(放出前に、TrkB受容体が細胞表面へ、そしてBDNFが貯蔵小胞へ)。
【0168】
図15は、TrkB受容体およびBDNFの2つのコード領域を分離するウイルス2Aペプチド配列の付加が、rAAV2ベクター:QTA020Vの硝子体内注射後にマウス網膜内の2つのトランスジーンへの効率的プロセシングをもたらすことを示す。
【0169】
図16は、ウイルス2Aペプチド配列により分離されたTrkB受容体およびBDNFのコードを含むrAAV2ベクターであるQTA020Vの注射後の免疫細胞化学的測定により示されたマウス網膜神経節細胞層内のトランスジーンの発現を示す。標的網膜神経節細胞体が、抗Brn3A抗体で赤色に染色され、細胞核は、DAPIで青色に対比染色されて、網膜層を区別している。
【0170】
図17を参照すると、硝子体内注射(2μlの9x1012ベクター粒子/ml)による、QTA020V(ウイルス2Aペプチド配列により分離されたTrkB受容体およびBDNFのコードを含む)の前処置が、rAAV2-CAG-eGFPベクターで処置された対照動物に対比して、マウスの視神経挫滅後の網膜神経節細胞の生存に有意な神経保護効果を付与することが示される。QTA020Vベクターによる神経保護レベルはまた、BDNFのみを発現するベクターにより提供されるレベルよりも大きかった。3群全ての動物を、視神経障害処置に供し、網膜神経節細胞の数を、損傷の7日後に測定した。網膜神経節細胞は、偽処置での挫滅を受けた動物に対比して、対照(黒色のバー)で71%減少した(データは示さない。)
【0171】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図14-1】
図14-2】
図15
図16
図17
【配列表】
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