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特許7503599タウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法およびタウリンを製造する方法
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  • 特許-タウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法およびタウリンを製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】タウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法およびタウリンを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 303/22 20060101AFI20240613BHJP
   C07C 303/44 20060101ALI20240613BHJP
   C07C 309/08 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C07C303/22
C07C303/44
C07C309/08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022113000
(22)【出願日】2022-07-14
(65)【公開番号】P2023095750
(43)【公開日】2023-07-06
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】202111602226.5
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520336182
【氏名又は名称】チェンジャン ヨンアン ファーマシュティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ファン シーチュエン
(72)【発明者】
【氏名】リ シャオボ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ フェン
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-063060(JP,A)
【文献】特開2021-038216(JP,A)
【文献】特開2019-001772(JP,A)
【文献】特開2018-027930(JP,A)
【文献】特表2017-533883(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110590613(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110483342(CN,A)
【文献】特表2015-501331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 303/22
C07C 303/44
C07C 309/08
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法であって、
タウリン母液にアルカリ金属水酸化物を添加し、加熱して第一の温度でタウリン、イセチオン酸誘導体及びタウリン誘導体の加水分解反応を行い、生成したアンモニアを除去し、アンモニアが除去された溶液を蒸発させ濃縮してイセチオン酸アルカリ金属塩溶液を得ることを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
得られたイセチオン酸アルカリ金属塩溶液から不純物を除去し、不純物除去後のイセチオン酸アルカリ金属塩溶液を濃縮して結晶化させてイセチオン酸アルカリ金属塩を分離することを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法。
【請求項3】
前記第1の温度は20~350℃であり、前記加水分解反応の時間は1分を超えることを特徴とする請求項1に記載のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法。
【請求項4】
アルカリ量が母液中のタウリンのモル量の20%以上である、ことを特徴とする請求項1に記載のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法。
【請求項5】
前記不純物除去方法は、得られたイセチオン酸アルカリ金属塩溶液に脱色剤を添加して脱色する、ことを特徴とする請求項2に記載のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法。
【請求項6】
前記脱色剤を添加して脱色する工程において、脱色剤を0.5~5時間撹拌する、ことを特徴とする請求項5に記載のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法。
【請求項7】
前記脱色剤は活性炭又はイオン交換樹脂であり、活性炭の脱色反応温度は15~95℃である、ことを特徴とする請求項5又は6に記載のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法。
【請求項8】
前記濃縮させ結晶化させる工程の反応温度が20℃~80℃である、ことを特徴とする請求項2に記載のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法。
【請求項9】
前記添加するアルカリはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩化合物又はアルカリ金属亜硫酸塩化合物であること、を特徴とする請求項1に記載のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法。
【請求項10】
タウリン母液をイセチオン酸アルカリ金属塩溶液に転化させる工程において、連続的にアンモニアを除去し、除去したアンモニアを回収する請求項1に記載のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法。
【請求項11】
請求項2に記載のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法においてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造し、当該イセチオン酸アルカリ金属塩を用いて、ココイルイセチオン酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸一水和物、4-ヒドロキシエチルピペラジニルエタンスルホン酸、4-ヒドロキシエチルピペラジニルエタンスルホン酸ナトリウム、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)、ピペラジン-N,N’-ビス(3-エタンスルホン酸)二ナトリウム塩、イセチオン酸、メチルタウリンナトリウム、メチルタウリン及び/又はタウリンを製造する方法。
【請求項12】
前記タウリン母液は、タウリン製造工程において、粗タウリンを分離して得られたものである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法。
【請求項13】
請求項1又は2に記載のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法においてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造し、当該イセチオン酸アルカリ金属塩を、エチレンオキシド法によるタウリン製造工程におけるアンモニア分解反応に用いることにより、エチレンオキシド法によるタウリン製造工程におけるタウリン母液のリサイクルを完了するタウリンを製造する方法。
【請求項14】
イセチオン酸アルカリ金属塩溶液中のイセチオン酸アルカリ金属塩の含有量が20%を超える、ことを特徴とする請求項1に記載のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タウリンの製造技術に関し、特にタウリン母液のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タウリンの化学名は2-アミノエタンスルホン酸であり、生体細胞内に最も豊富に含有されている硫黄含有遊離アミノ酸である。タウリンの化学合成経路は主にエチレンオキシド法とエタノールアミン法を含む。そのうち、エチレンオキシド法で製造する場合、以下の3つのステップを含む。
【0003】
エチレンオキシドを出発原料とし、エチレンオキシドと亜硫酸水素ナトリウムを付加反応させてイセチオン酸ナトリウムを得る。このイセチオン酸ナトリウムをアンモニア分解(ammonolysis)してタウリン酸ナトリウムを得る。タウリン酸ナトリウムを、例えば塩酸、硫酸やイオン交換樹脂、電気透析などにより酸性化してタウリンを得、そしてさらに分離及び精製して製品を得る。主な反応は次のとおりである。
【化1】

【化2】

【化3】

付加反応における副反応:
【化4】
【0004】
全体の反応工程にわたり、エチレングリコールやエチレングリコールの重合体、イセチオン酸誘導体やタウリン誘導体などの副生成物が生じることは避けられない。アンモニア分解反応は可逆反応であり、約20%を超えるイセチオン酸ナトリウムが製造システムに沿って次の工程に進む。アンモニア分解反応を終えた溶液を中和した後、分離した母液を濃縮し、1~3回の分離及び抽出により最終母液を得る。最終母液中は主にタウリン、イセチオン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、エチレングリコールやポリエチレングリコールなどの不純物を含み、それらは高度に汚染された排出物である。既存の製造方法では、使用された母液をリサイクルする場合、副生成物が蓄積する問題があった。副生成物が閾値に達した場合、一部の母液を排出する方法でしか解決できず、それは廃棄物と汚染を引き起こす。
【0005】
特許文献1~4には、硫酸を用いてタウリン酸ナトリウムを中和し、タウリン及び硫酸ナトリウムを得る方法が記載されている。冷却後に結晶懸濁液を濾過することにより、粗タウリンを容易に得ることができる。しかし、廃棄された母液にはタウリン、硫酸塩やその他の有機不純物が含まれている。
【0006】
特許文献5には、アミノ基機能化触媒及びその製造方法並びにタウリン母液中からエチレングリコール及びその誘導体の不純物を除去する方法が記載されており、触媒の準備工程に大量の有機物を使用し、製造方法及び操作は複雑であり、しかも新たな不純物が導入される。
【0007】
特許文献6には、タウリン結晶母液中から有用成分を効率的に分離する方法が記載されており、その方法はタウリン結晶母液を原料とし、最初に塩化バリウム沈殿法を用いて硫酸塩を除去し、次に塩酸で酸性化することで有効成分をタウリンとイセチオン酸に転化させ、さらにタウリンとイセチオン酸を、エタノールを用いてエステル化することでエステル化物を生成し油相に移し、油相を分離した後、加水分解してタウリンとイセチオン酸を得、最後に蒸発させ結晶化し及び冷却して結晶化させイセチオン酸とタウリンを連続的に分離し、イセチオン酸を水酸化ナトリウムで中和反応させ、イセチオン酸ナトリウムを得ることを含む。この方法ではは、重金属バリウムを導入するため、微量の残留物があり、その後の製品の品質に影響を与えるとともに、一方で製造工程においてエタノールなどの新たな不純物が使用される。
【0008】
そのため、タウリン母液の有効なリサイクルを検討することは非常に重要な課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】中国特許出願公開第101508657号明細書
【文献】中国特許出願公開第101508658号明細書
【文献】中国特許出願公開第101508659号明細書
【文献】中国特許出願公開第101486669号明細書
【文献】中国特許出願公開第112570001号明細書
【文献】中国特許出願公開第111233717号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来技術においてタウリン母液のリサイクル効率が低いという問題を解決するタウリン母液のリサイクル方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、タウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法であって、
タウリン母液にアルカリを添加した後、第1の温度に加熱し、第一の温度で加水分解反応を行い、生成したアンモニアを除去し、アンモニアを除去した溶液を蒸発させ濃縮してイセチオン酸アルカリ金属塩溶液を得ることを含む。
【0012】
本発明のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法の一実施形態としては、得られたイセチオン酸アルカリ金属塩溶液から不純物を除去し、不純物除去後のイセチオン酸アルカリ金属塩溶液を濃縮して結晶化させイセチオン酸アルカリ金属塩を分離することを含む。
【0013】
本発明のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法の一実施形態としては、前記第1の温度は20~350℃であり、前記加水分解反応は1分を超えて行われ、好ましくは、前記第1の温度は140~280℃であり、前記加水分解反応の時間は0.5~5時間である。
【0014】
本発明のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法の一実施形態としては、アルカリ量が母液中のタウリンのモル量の少なくとも20%以上であり、好ましくは、母液中のタウリンとアルカリとのモル量比が1:0.5~1.5である。
【0015】
本発明のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法の一実施形態としては、前記不純物除去は、得られたイセチオン酸アルカリ金属塩溶液に脱色剤を添加して脱色することである。
【0016】
本発明のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法の一実施形態としては、脱色剤を添加して脱色する工程において、脱色剤を0.5~5h撹拌することである。
【0017】
本発明のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法の一実施形態としては、脱色剤は活性炭又はイオン交換樹脂であり、活性炭の脱色反応温度が15~95℃、好ましくは35~65℃である。
【0018】
本発明のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法の一実施形態としては、濃縮して結晶化を行う温度が20℃~80℃である。
【0019】
本発明のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法の一実施形態としては、添加するアルカリはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩化合物又はアルカリ金属亜硫酸塩化合物であり、アルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムが最も好ましい。
【0020】
本発明のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法の一実施形態としては、タウリン母液をイセチオン酸アルカリ金属塩溶液に転化する工程において、連続的にアンモニアを除去し、除去したアンモニアを回収することである。
【0021】
本発明のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法の一実施形態としては、分離されたイセチオン酸アルカリ金属塩を用いて、ココイルイセチオン酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ココニルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸一水和物、4-ヒドロキシエチルピペラジニルエタンスルホン酸、4-ヒドロキシエチルピペラジニルエタンスルホン酸ナトリウム、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)、ピペラジン-N,N’-ビス(3-エタンスルホン酸)二ナトリウム塩、イセチオン酸、メチルタウリンナトリウム、メチルタウリン及び/又はタウリンを製造することである。
【0022】
本発明のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法の一実施形態としては、前記タウリン母液は、タウリン製造工程において、粗タウリンを分離して得られることである。
【0023】
本発明のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法の一実施形態としては、分離されたイセチオン酸アルカリ金属塩を、エチレンオキシド法によるタウリン製造工程におけるアンモニア分解反応に用いることにより、エチレンオキシド法によるタウリン製造工程におけるタウリン母液のリサイクルを完了することである。
【0024】
本発明のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法の一実施形態としては、イセチオン酸アルカリ金属塩溶液中のイセチオン酸アルカリ金属塩の含有量が20%を超えることである。
【0025】
以上のように、本発明はタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を効率的かつ簡便に製造する方法であり、工業化が極めて容易であり、タウリン母液を効果的にリサイクルすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】タウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法のフロー図である。
図2】タウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法における加水分解のための母液をリサイクルするフロー図である。
図3】タウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法における結晶化及び精製のための母液をリサイクルするのフロー図である。
図4】タウリン製造工程におけるタウリンのリサイクルのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の技術的効果を説明するために、以下では、例を用いて説明し、以下の実施例は本発明の実施を示しているが、その範囲を限定することを意図しているわけではない。特に断らない限り、以下の実施例において使用される原料は市販品であり、使用される方法はすべて通常の方法であり、材料含有量はすべて質量体積百分率を指す。HPLC及びLC-MS分析により、検出反応中の物質の含有量が示されている。
【0028】
タウリン母液の汎用的で簡便かつ効率的なリサイクル方法を提供するために、発明者は多くの関連研究と実験を行っている。
【0029】
発明者は、実験を通じて、所定の条件下でタウリン酸アルカリ金属塩をイセチオン酸アルカリ金属塩に転化できることを発見した。これに基づいて発明者は、タウリン母液を繰り返しリサイクルさせることにより、イセチオン酸アルカリ金属塩を製造できることを実験により確認した。
【0030】
したがって、この発見は、タウリン母液の更なるリサイクルを可能とする。
【0031】
発明者の前記実験に基づいて、本発明は、タウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法であって以下を含む方法を提供する、
タウリン母液をイセチオン酸アルカリ金属塩に転化させた後、イセチオン酸アルカリ金属塩の含有量は増加する、またイセチオン酸アルカリ金属塩の溶解度が非常に大きいので、低下させた温度で吸着脱色することにより不純物を分離し、その後、濃縮して結晶化させることによりイセチオン酸アルカリ金属塩を分離することにより、高含有量のイセチオン酸アルカリ金属塩を得る。分離されたイセチオン酸アルカリ金属塩はタウリンの原料として使用することができる。
【0032】
本実施態様では、タウリン母液をイセチオン酸アルカリ金属塩に転化させることにより、タウリン母液のリサイクルを実現し、タウリン製造のリサイクルを実現する。
【0033】
発明者はまた、タウリンを抽出した後の母液に、一定量のタウリンが含まれていることを発見した。母液にアルカリを添加し、所定の温度条件下で一定時間反応させることにより、イセチオン酸ナトリウムとアンモニアが得られる。したがって、また、タウリン母液をイセチオン酸アルカリ金属塩溶液に転化させる方法をさらに提供し、また、イセチオン酸アルカリ金属塩溶液の使用を提供する。タウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する前述の方法と組み合わせることにより、タウリン母液を効率的に循環利用してイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する目的を達成することができる。、図1に示すように、本実施態様では、さらにステップ(1)~ステップ(3)を含む。
【0034】
ステップ(1):加水分解ステップ、タウリン母液に適量の液体アルカリを添加した後、一定の温度に加熱し、一定時間反応させ、生成したアンモニアを連続的に排出させ吸収させる。次に、溶液を適度に蒸発させ濃縮して、含有量が20%を超えるイセチオン酸ナトリウム溶液を得る。上記の反応は任意の圧力で行ってもよいが、一般的には常圧で行う。
【0035】
発明者の更なる実験の結果、一定の範囲内で加水分解反応温度が高いほど、反応にかかる時間が短く、得られるイセチオン酸ナトリウムの含有量が高くなることを見出した。これは、温度が高いほど加水分解の発生が助長されることを示している。温度が一定値を超えると、イセチオン酸ナトリウムの含有量は一定の低下傾向にある、主に温度が高すぎるとイセチオン酸ナトリウムが不安定に分解するためである。また、加水分解工程に適切なアルカリ金属を添加すれば、加水分解にも有利である。
【0036】
したがって、加水分解時間は少なくとも1分より長く、一般的に0.5時間~5時間であり、加水分解温度は20~350℃、好ましくは140~280℃である。
【0037】
液体アルカリとしては、アルカリ金属水酸化物などのアルカリ化合物であってもよく、水酸化ナトリウムであることが好ましい。添加するアルカリ金属の量については、当業者が適宜選択することができる。好ましい解決策も存在し、例えば、アルカリ金属の添加量が少ないと、不安定で分解しやすいイセチオン酸が存在し、不安定で分解しやすいが、本発明者らの研究を通じて添加するアルカリ金属のモル量はタウリンのモル量の0.2倍以上であることが好ましいことを、研究を通じて見出した。金属水酸化物に加えて、アルカリ金属炭酸塩化合物、アルカリ金属亜硫酸塩化合物等を選択してもよい。
【0038】
したがって、液体アルカリ量はタウリン等当量(モル比)の0.2倍以上であり、タウリンと液体アルカリのモル比が1:0.5~1.5であることが好ましい。
【0039】
発明者はまた、加水分解反応の工程でアンモニアを連続的に回収することも、イセチオン酸ナトリウムの生成に有利であることを見出した。化学平衡によれば、生成物を速やかに移動させるほど、反応が正方向に進むのに有利であることを発見した。したがって、加水分解工程においてアンモニアを間接的に排出することに加えて、反応工程でアンモニアを連続的に回収することもできる。
【0040】
ステップ(2):脱色及び不純物除去ステップ、含有量が20%を超えるイセチオン酸ナトリウム溶液に脱色剤を添加して脱色し、撹拌した後、濾過することを含む。
該脱色剤は、イオン交換樹脂又は活性炭等であってもよい。
【0041】
さらに、脱色反応温度は10~100℃であってもよく、脱色除去温度は35~65℃であることが好ましく、
撹拌時間は1分を超え、好ましくは0.5~5時間である。
【0042】
ステップ(3):濃縮して結晶化させるステップ、脱色後のイセチオン酸ナトリウム溶液を濃縮して、結晶化させ、精製し、分離し固体のイセチオン酸アルカリ金属塩及び母液を得ることを含む。
【0043】
図2及び図3に示すように、ここで得られた固体のイセチオン酸塩は、タウリンを循環的に製造するための原料としても、他の反応の原料としても利用可能である。濃縮して結晶化させた後の母液を再度結晶化して精製してリサイクルしてもよいし、ステップ(1)のタウリン母液として加水分解反応に直接戻してもよい。
【0044】
ここで、濃縮して結晶化させる温度は20℃~150℃、好ましくは50℃~80℃である。
【0045】
濃縮して結晶化させることは、単効果、多重効果、熱蒸気再圧縮(TVR)、機械的蒸気再圧縮(MVR)等の間欠的又は連続的に濃縮させ結晶化させることができる。
【0046】
分離には、遠心分離、濾過などの固液分離装置を用いることができる。
【0047】
発明者はさらに研究した結果、タウリン母液をイセチオン酸アルカリ金属塩溶液に転化させることにより、1回又は複数回循環可能であること、すなわちタウリン母液にアルカリを添加して一定の温度でイセチオン酸塩溶液に加水分解し、アンモニアを排出した後、タウリン母液を同じ条件で再度又は複数回イセチオン酸塩溶液に加水分解すること、あるいは、濃縮して結晶化させることによりイセチオン酸塩を抽出した母液を再度加水分解し、さらにイセチオン酸塩溶液に転化させることが可能であることを発見した。したがって、上記実施態様では、イセチオン酸塩溶液を形成するためにステップ(1)を複数回繰り返してもよい。ステップ(1)をステップ(2)及びステップ(3)と組み合わせてイセチオン酸アルカリ金属塩を生成し、ステップ(3)で得られたタウリン母液を複数回リサイクルしてもよい。
【0048】
発明者が広範な実験を行ったところ、タウリンを260℃で水酸化ナトリウムと2時間加水分解反応させて得られたイセチオン酸ナトリウムとアンモニアの混合物が好ましいことを発見した。タウリンは一定の条件下で逆反応を起こし、加水分解してイセチオン酸ナトリウムとアンモニアを生成し得る。タウリン抽出後の母液には、タウリン、イセチオン酸ナトリウム、イセチオン酸誘導体やタウリン誘導体などが一定量含まれている。母液を260℃で水酸化ナトリウムの存在下で2時間反応させても、イセチオン酸ナトリウムとアンモニアが得られ得る。イセチオン酸誘導体及びタウリン誘導体はいずれも異なる程度でイセチオン酸塩に加水分解される。
【0049】
以上に基づき、本実施態様では、タウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法であって、図1図3に示すように、加水分解ステップに水酸化ナトリウムを添加するタ方法を説明する。この方法は以下を含む。
【0050】
ステップ(1):加水分解ステップ、タウリン母液に適量の水酸化ナトリウムを添加した後、所定の温度に加熱し、所定時間反応させ、生成したアンモニアを連続的に排出して吸収させる。その後、溶液を適度に蒸発させ濃縮し、含有量が20%を超えるイセチオン酸ナトリウム溶液を得る
ここで、加水分解温度は30~350℃で、加水分解時間は0.5h~50hであり、水酸化ナトリウム量は少なくともタウリン当量の0.2倍であり、タウリン母液中のタウリンと水酸化ナトリウムとのモル量比が1:0.5~1.5であることが好ましい。
【0051】
ステップ(2):脱色及び不純物除去ステップ、含有量が20%を超えるイセチオン酸ナトリウム溶液に活性炭を添加して脱色し、脱色工程において継続的に撹拌し、脱色完了時に濾過する。
さらに、脱色及び不純物除去温度は0~100℃であり、撹拌時間は0.5~5時間であってもよい。
【0052】
ここで、脱色及び不純物除去温度は35℃~65℃であることが好ましい。
【0053】
ステップ(3):濃縮し結晶化させるステップ、脱色後のイセチオン酸ナトリウム溶液を濃縮して結晶化させ固体のイセチオン酸ナトリウムと母液とを得る。濃縮して結晶化させた後の母液を、不純物を除去した後、結晶化により精製することでリサイクルできる。又はステップ(1)の加水分解に戻してもよい。
【0054】
ここで、濃縮して結晶化させる温度は50℃~80℃である。
【0055】
またさらに、他の実施態様では、母液を加水分解して得られたイセチオン酸アルカリ金属塩を他の製品、例えばココイルイセチオン酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸一水和物、4-ヒドロキシエチルピペラジニルエタンスルホン酸、4-ヒドロキシエチルピペラジニルエタンスルホン酸ナトリウム、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)、ピペラジン-N,N’-ビス(3-エタンスルホン酸)二ナトリウム塩、イセチオン酸、メチルタウリンナトリウム、メチルタウリンなどの製造に用いることができ、タウリン母液のリサイクルの目的が達成される。
【0056】
図4に示すように、本実施態様では、エチレンオキシド法によるタウリン製造工程いてタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法によるタウリン母液のリサイクルを紹介する。具体的な方法は次のステップを含む。
S1.エチレンオキシドと亜硫酸水素塩溶液とを反応させてイセチオン酸塩を得る。
S2.S1で得られたイセチオン酸塩とアンモニアとをアルカリ金属存在下で混合してアンモニア分解反応をする。
S3.アンモニア分解反応後、過剰なアンモニアを蒸発させ除去する。
S4.得られたタウリン塩をタウリンに転化させる。
S5.得られたタウリン溶液を濃縮して結晶化させ、粗タウリンとタウリン母液とを分離する。
S6.粗タウリンを脱色、再結晶、分離しタウリン精製品を得、乾燥して最終タウリン生成物を得て、分離後、タウリン精製母液を脱色し、又はS5の濃縮し結晶化させる工程に戻してリサイクルする。
S7.S5で粗タウリンを抽出した母液に適量のアルカリを添加し、その後加熱して加水分解し、アンモニアを蒸発させ除去してイセチオン酸塩溶液を得る。
S8.S7のステップで得られた溶液から脱色及び不純物除去する。
S9.ステップS8で得られた溶液を濃縮して結晶化させる。
S10.S9で得られた結晶化した溶液を固液分離して固体のイセチオン酸塩を得て、ここで、固体イセチオン酸塩はS2ステップに戻してリサイクルすることができ、固液分離された後の母液は、リサイクルのためにS7又はS9のステップに戻すことができる。
【0057】
以上から、本発明のタウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩を製造する方法は、タウリン製造工程において、主にタウリン溶液を濃縮して結晶化させ、粗タウリンとタウリン母液を分離して得た後、タウリン母液のリサイクルに使用できる。そして、上述したステップS7~S10によって行われる。
【0058】
もちろん、母液の実際の取得はこれに限定されるものではなく、タウリンを製造する母液の製造工程を有していれば、他のタウリン製造プロセスに拡張することもできる。
【0059】
以下、いくつかの異なる実験により、本発明の有する技術的効果を証明する。
【0060】
1.本実施例は、タウリンを水酸化ナトリウムの存在下、異なる温度で加水分解する実験を示す。
3L反応釜にタウリン62.5g(0.50mol)を添加し、精製水1000mlで溶解し、水酸化ナトリウム24gを添加した。表1の異なる温度にそれぞれ加熱し、2時間保温しながら撹拌し、反応中に放出されたアンモニアガスを吸収させた。
【0061】
【表1】
【0062】
2.本実施例には、タウリン母液を水酸化ナトリウムの存在下、異なる温度で加水分解する実験を示す。
3L反応釜にタウリンを10%、イセチオン酸ナトリウムを15%含むタウリン母液625mlを添加し、次に精製水1000mlで溶解し、水酸化ナトリウム24gを添加した。それぞれ表2のように異なる温度に加熱し、2時間保温しながら撹拌した。反応中に放出されたアンモニアガスを吸収させた。
【0063】
【表2】
【0064】
3.本実施例には、タウリン母液を異なるアルカリ金属で加水分解する実験を示す。
3L反応釜にタウリンを10%、イセチオン酸ナトリウムを15%含むタウリン母液625mlを添加し、精製水1000mlで溶解し、表3のように異なるアルカリ金属を添加した。得られた溶液を260℃に加熱し、2時間保温しながら撹拌した。反応中に放出されたアンモニアガスを吸収させた。
【0065】

【表3】
【0066】
4.本実施例には、タウリン母液の加水分解後のイセチオン酸ナトリウムの精製及びその後で使用する実験を示す。
3L反応釜にタウリンを10%、イセチオン酸ナトリウムを15%含むタウリン母液1250mlを添加し、精製水1000mlで溶解し、水酸化ナトリウム48gを添加した。260℃で2時間保温しながら撹拌し、反応中に放出されたアンモニアガスを吸収させた。反応後の溶液を脱色し、不純物を除去した後、濃縮及び結晶化し、1回抽出し、イセチオン酸ナトリウムの固体235gを得、その中の水分は4.5%、エチルスルホン酸ナトリウムの含有量は95%、エチレングリコールの含有量は0.01%未満、硫酸イオンの含有量は0.01%未満であった。次いで、得られた固体を用いて、ココイルイセチオン酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸一水和物、4-ヒドロキシエチルピペラジニルエタンスルホン酸、4-ヒドロキシエチルピペラジニルエタンスルホン酸ナトリウム、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)、ピペラジン-N,N’-ビス(3-エタンスルホン酸)二ナトリウム塩、イセチオン酸、メチルタウリンナトリウム、メチルタウリンなどの製品をそれぞれ製造したところ、すべて対応する合格製品が得られた。
【0067】
発明者の長期の実験のまとめに基づいて、本開示は、タウリン母液を用いてイセチオン酸アルカリ金属塩溶液を製造する方法を提供する。ここでタウリン母液を加水分解してイセチオン酸アルカリ金属塩に転化させることができる。これにより、当業者によりイセチオン酸のアルカリ金属塩を柔軟に適用されタウリン母液のリサイクルを実現した。
【0068】
また、本発明は、タウリン製造のリサイクルを達成する方法を提供し、タウリン母液をイセチオン酸アルカリ金属塩に転化させることで、イセチオン酸アルカリ金属塩の含有量を増加させ、また、イセチオン酸アルカリ金属塩の溶解性が高いので、降温での脱色吸着により不純物を分離し、さらに濃縮して結晶化させることによりイセチオン酸アルカリ金属塩を分離することにより、さらに不純物を分離し、それにより高含有量のイセチオン酸アルカリ金属塩を得て、分離されたイセチオン酸アルカリ金属塩をタウリンの原料として使用することができる。本発明によるイセチオン酸アルカリ金属塩を製造するリサイクル工程は、不連続、半連続又は連続的に行われてもよい。
【0069】
以上のように、本発明により提供された一般的なタウリン母液リサイクル方法は、不純物を効率的かつ簡便に分離する方法であり、工業化が極めて容易であり、タウリン母液を効果的にリサイクルすることができる。
【0070】
なお、以上は本発明の好ましい実施形態にすぎず、当業者にとっては、本発明の技術原理を逸脱することなく、若干の改良及び変形が可能であり、これらの改良及び変形も本発明の保護範囲とみなされるべきである。
図1
図2
図3
図4