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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/29 20180101AFI20240613BHJP
   C09J 7/21 20180101ALI20240613BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20240613BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240613BHJP
   C09J 107/00 20060101ALI20240613BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C09J7/29
C09J7/21
C09J7/24
C09J7/38
C09J107/00
C09J11/08
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022518457
(86)(22)【出願日】2020-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2020018015
(87)【国際公開番号】W WO2021220363
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000145079
【氏名又は名称】株式会社寺岡製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】浅井 雄志
(72)【発明者】
【氏名】岡村 優紀
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/095578(WO,A1)
【文献】特開2017-128651(JP,A)
【文献】特開平10-036786(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056499(WO,A1)
【文献】特開平11-061062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来の繊維の織布、編布又は不織布の両面もしくは片面にオレフィン樹脂をラミネートした基材と、該基材の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを含む粘着テープであって、該粘着剤層が粘着剤成分としての天然ゴムと、木質系フィラーと、植物由来の可塑剤と、粘着付与剤と、を含有する粘着テープ。
【請求項2】
バイオベース度が50質量%以上である請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層は、前記天然ゴム100質量部に対し、前記木質系フィラーを10~250質量部、前記植物由来の可塑剤を5~50質量部、前記粘着付与を30~150質量部含有する請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記木質系フィラーが、粉末セルロースである請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記粉末セルロースの平均粒子径が1~50μmである請求項4に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記植物由来の可塑剤が、液状天然ゴム、大豆油又はエポキシ化大豆油である、請求項1~5のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記植物由来の可塑剤が、液状天然ゴムである請求項1~のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記液状天然ゴムの重量平均分子量(Mw)が100,000以下である請求項に記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記粘着付与剤が、植物由来の粘着付与剤である請求項1~のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項10】
前記植物由来の粘着付与剤がテルペン樹脂である請求項に記載の粘着テープ。
【請求項11】
前記粘着付与剤が、70℃~150℃の範囲の軟化点を有する粘着付与剤の1つもしくは複数の組み合わせからなる請求項1~10のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項12】
記植物由来の繊維が、レーヨンである請求項1~11のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項13】
前記オレフィン樹脂が、バイオポリオレフィンである請求項1~12のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項14】
前記バイオポリオレフィンが、バイオポリエチレンである請求項13に記載の粘着テープ。
【請求項15】
前記オレフィン樹脂が前記織布、編布又は不織布の片面に設けられ、前記粘着剤層が前記基材の片面に設けられている、請求項1~14のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項16】
前記オレフィン樹脂と前記粘着剤層とは、前記織布、編布又は不織布の異なる面に設けられている、請求項15に記載の粘着テープ。
【請求項17】
記基材が織布を用いた基材である、請求項1~16のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項18】
前記基材が織布の片面にオレフィン樹脂をラミネートした基材であり、
前記織布の他面に粘着剤層が設けられている、請求項1~14のいずれか1項に粘着テープ。
【請求項19】
植物由来の繊維を織布に形成し、該織布の片面又は両面にオレフィン樹脂をラミネートした基材と、該基材の片面又は両面に設けられた粘着剤層とを含む粘着テープであって、該粘着剤層が天然ゴムと、木質系フィラーと、植物由来の可塑剤と、粘着付与剤と、を含有する粘着テープ。
【請求項20】
前記織布の片面にオレフィン樹脂が積層され、前記織布の他面に粘着剤層が設けられている、請求項19に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用、養生用等に用いる粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーヨン紡績糸を経糸および緯糸に用いた織布の一方の面にポリエチレン樹脂層を設け、もう一方の面にゴム系粘着剤層を設けた構造の布粘着テープが、包装用や養生用等の用途において用いられている。このような用途に用いられる粘着テープのゴム系粘着剤は、例えば天然ゴム等を素練りして低分子量化させ、各配合材料と混練することで製造される。しかし、このようなゴム系粘着剤を使用した粘着テープは、ゴム系粘着剤が低分子量化しているため、粘着テープを巻き回してロール状とした際に、ロールの変形や、ロールの側面から当該ゴム系粘着剤がはみ出してロールの側面にベタツキが生じる、などの問題がある。
【0003】
包装用、養生用等に用いる布粘着テープは、製造後に梱包され、小売店や小売店の倉庫に配送されて、店頭に陳列されたり、直接ユーザーに配送されたりする。そのため配送中にテープ同士の接触による変形や、テープ側面に対し荷重がかかることで、包装材とテープ側面がくっつき、包装材が剥がしにくくなるなどの不具合が発生するおそれがある。特に粘着剤層が厚いテープはその影響を受けやすく、変形や側面ベタツキの抑制が求められている。
【0004】
一方、粘着テープは包装用途や養生用途などに使用された後、剥がされて焼却処分されるため、石油由来の材料を多く用いた場合には、二酸化炭素に代表される温室効果ガスの排出が問題となる。粘着テープの温室効果ガス排出を抑制する技術として、特許文献1が挙げられる。特許文献1では粘着テープの温室効果ガス排出を抑制する技術が開示されており、基材にバイオベース材料を用いたものであるが、粘着剤成分の多くは石油由来の材料を用いているため、材料全体に占めるバイオベース材料の割合であるバイオベース度は低く、温室効果ガス排出の抑制効果が限定的であるという問題がある。
【0005】
また、従来、粘着テープの粘着剤に用いられるゴム系粘着剤には、充填剤として重質炭酸カルシウムを多く含有しており、安価かつ入手性の良さからこれまで広く用いられてきた。しかしながら、重質炭酸カルシウムを多く含んだ粘着テープを焼却処分した場合には、重質炭酸カルシウムの脱炭酸により二酸化炭素が発生するため、温室効果ガスが多く排出されることとなる。そのため粘着テープに植物由来の材料を多く用い、かつ重質炭酸カルシウムと代替可能な木質系フィラーを用いることで、焼却処分による温室効果ガスの排出を抑制することが求められている。しかし、粘着剤の充填剤に木質系フィラーを用いた場合、粘着剤中のフィラーの分散性が悪くなり、基材への塗工性が低下し、粘着面の平滑性が損なわれ、粘着特性の低下を引き起こすという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】W02015/056499号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、粘着テープに求められる粘着力、保持力などの要求特性を満たしながら、変形しにくく、側面のベタツキを抑制することが可能で、かつ温室効果ガスの排出量を抑制することが可能な粘着テープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下の構成を採用することにより、前記課題を解決するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の粘着テープは、植物由来の繊維にポリオレフィンをラミネート加工した基材と、該基材の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを含む粘着テープであって、該粘着剤層が天然ゴムと、木質系フィラーと、植物由来の可塑剤と、粘着付与剤と、を含有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粘着テープは、粘着剤の充填剤に植物由来の木質系フィラーを用いることで、粘着剤の形状安定性が高まり、重質炭酸カルシウムなどの鉱物由来のフィラーと比べてテープが変形しにくく、テープ側面のベタツキも低減される。また粘着剤の軟化成分に植物由来の可塑剤を用いることで、木質系フィラーを用いていても粘着面の平滑性が保たれ、要求特性の低下を抑えることが可能である。さらに、植物由来の材料を含むため、焼却による大気中の二酸化炭素の増加を抑制することが可能であり、重質炭酸カルシウムの脱炭酸による二酸化炭素の排出を防止することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の粘着テープは、植物由来の繊維にポリオレフィンをラミネート加工した基材と、該基材の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを含む粘着テープである。
【0012】
[粘着剤層]
粘着剤層は天然ゴムと、木質系フィラーと、植物由来の可塑剤と、粘着付与剤と、を含有する。以下、各成分について詳細に説明する。
【0013】
(天然ゴム)
本発明の粘着剤層に用いられる粘着剤成分は、天然ゴムを含有する。
天然ゴムは、へベア・ブラジリエンスと呼ばれるゴムノキから採取された樹液(ラテックス)を固形化したものである。天然ゴムは、ギ酸等の酸で凝固、乾燥してシート化するシートゴムと、ゴム農園においてラテックス採取用のカップの中で自然に凝固させて得られたカップランプを粉砕、洗浄を繰り返し、乾燥後プレスして製造するブロックゴムに大別される。
【0014】
シートゴムの分類は「天然ゴム各種等級品の国際品質包装標準」(通称「グリーンブック」)の格付けにより、品種は原料と製造方法により定められている。シートを燻煙しながら乾燥させたリブドスモークドシート(RSS)や、凝固物を十分に水洗し、熱風で乾燥したクレープなどがある。シートゴムは、例えばRSS#3、RSS#1、ペールクレープ、ソールクレープ等の等級に分類される。本発明の粘着剤成分としてシートゴムを用いる場合、これらの何れか1つの等級を単独で使用してもよいし、複数の等級を併用してもよい。
【0015】
ブロックゴムは凝固した小粒状のゴムを洗浄・乾燥させた後、プレス成形し、ISO規格(ISO2000)によって格付けされた天然ゴムである。標準グレードであるTSR20、TSR10、粘度安定剤として塩酸ヒドロキシルアミンが添加されているTSRCVグレード、変色防止剤にピロ亜硫酸ナトリウムが添加されているTSRLグレードなどがある。本発明の粘着剤成分としてブロックゴムを用いる場合、これらの何れか1つのグレードを単独で使用してもよいし、複数のグレードを併用してもよい。
なお、本明細書において天然ゴムと記載する場合には、特に言及しない限り、後述する液状天然ゴムは含まない。
【0016】
(木質系フィラー)
本発明の粘着剤層は、充填剤として木質系フィラーを含有する。木質系フィラーとしては、例えば粉末状のセルロース、リグニン化合物等が挙げられる。中でも粉末セルロースは、繊維質の形状から粘着剤を補強する効果を示し、また嵩高いためテープ厚さに占める粘着剤量減による材料コスト削減が可能である。
【0017】
粉末セルロースは、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸(すなわち、無機酸)で酸加水分解処理したパルプなどのセルロース原料を粉砕処理して得られる酸処理セルロースと、酸加水分解処理を施さないパルプなどのセルロース原料を機械粉砕して得られる機械粉砕セルロースがある。粉末セルロースは、要求される性能等に応じて適宜選択し、使用することができる。
【0018】
木質系フィラーは平均粒子径が1μm以上50μm以下であることが好ましい。平均粒子径が50μm以下であれば、粘着剤層の表面平滑性が損なわれることがない。なお、粘着面が平滑でない場合、粘着テープは被着体に対して十分な密着性が得られず、粘着性能を十分に発揮することができないことがある。また平均粒子径が1μm以上であれば、所望の嵩高さが得られ、粘着剤層の厚さを確保することができる。また、テープ厚さに占める粘着剤量の増加を抑制し、材料コストの上昇を抑えることができる。ここで採用している平均粒子径はD50で示されるメディアン径である。
【0019】
木質系フィラーの添加量は、天然ゴム100質量部に対し10~250質量部が好ましく、より好ましくは50~150質量部である。10質量部以上であれば、粘着剤のゴム弾性の高まりを抑え、粘着剤を基材に塗布する際の塗工性の低下を抑制できる。一方、250質量部以下では粘着剤のゴム弾性の低下を抑制し、粘着性能の低下を防止できる。
【0020】
(可塑剤)
本発明の粘着剤層には、粘着剤の軟化成分として植物由来の可塑剤を含む。植物由来の可塑剤としては、液状天然ゴム、大豆油、ひまわり油、菜種油、綿実油、亜麻仁油、コーン油、キャノーラ油、パーム油、またはそれらが改質されたもの(例えばエポキシ化大豆油等)等を用いることができる。これらの植物由来の可塑剤は、何れか1つの種類を単独で使用してもよいし、複数の種類を併用してもよい。
【0021】
可塑剤として液状天然ゴムを用いた場合、配合中の急激な粘度低下を抑えることができるため、粘着剤の分散性が良好となる。また、大豆油等の植物油を用いた場合、植物油と木質系フィラーが極性基をもつため親和性が高く、配合中の急激な粘度低下が起こらず分散性が良好となる。中でも液状天然ゴムが好ましい。
【0022】
液状天然ゴムは、天然ゴムを解重合して得られる。解重合する方法としては、例えば、ロール機等を用いてせん断力を用いたメカノケミカル反応によりゴム分子を切断する方法、ゴム溶液に紫外線を照射することによって光化学反応で分解する方法、フェニルヒドラジンを用いた化学的酸化分解する方法、ラジカル発生剤の存在下で空気酸化する方法などがある。
【0023】
液状天然ゴムの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、更に好ましくは40,000以下である。Mwが100,000以下であれば、粘着剤層の濡れ性の低下が抑制され、低温時などの貼りつけ性の悪化を防止できる。
【0024】
植物由来の可塑剤の添加量は、天然ゴム100質量部に対し好ましくは5~50質量部であり、より好ましくは10~30質量部である。可塑剤が5質量部以上であれば、粘着剤層の濡れ性の低下が抑制され、低温時などの貼りつけ性の悪化が防止できる。50質量部以下であれば可塑剤がブリードすることなく、被着体の汚染や、粘着性能の経時変化を抑制できる。
【0025】
(粘着付与剤)
本発明の粘着剤層は、粘着付与剤を含む。粘着付与剤として、植物由来の粘着付与剤を用いることで、さらにバイオベース度の向上を図ることができる。植物由来の粘着付与剤としては、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂等が挙げられる。中でもテルペン樹脂はバイオベース度が高く、二酸化炭素排出量の低減が可能なため好適である。粘着付与剤は、何れか1つの種類を単独で使用してもよいし、複数の種類を併用してもよい。
【0026】
粘着付与剤としては、軟化点が70℃~150℃の範囲から選択されることが好ましい。軟化点が70℃以上であることで、粘着力の低下を抑制し、また、側面ベタツキも抑制できる。また、軟化点が150℃以下であることにより、天然ゴムとの相溶性に優れ、粘着力の低下を抑制できる。
【0027】
テルペン樹脂としては、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、及びリモネン重合体等の未変性テルペン重合体;テルペン重合体をフェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、及び炭化水素変性等から選択される1種以上の処理により変性した変性テルペン重合体等が挙げられる。変性テルペン重合体の例としては、テルペンフェノール樹脂及び芳香族変性テルペン樹脂等が挙げられる。これらは、何れか1つの種類を単独で使用してもよいし、複数の種類を併用してもよい。
【0028】
ロジン樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、及びトール油ロジン等の未変性ロジン;未変性ロジンを水添化、不均化、重合、及び化学修飾等から選択される1種以上の処理により変性した変性ロジン;各種ロジン誘導体等が挙げられる。
ロジン誘導体としては、例えば、未変性ロジン又は変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンエステル類;未変性ロジン又は変性ロジンを不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン、不飽和脂肪酸変性ロジン類、又は不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシ基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;未変性ロジン又は変性ロジンを、アクリル酸、フマル酸、又はマレイン酸等の酸類で変性した酸変性ロジン類;ロジンエステル類を、アクリル酸、フマル酸、又はマレイン酸等の酸類で変性した酸変性ロジンエステル類等が挙げられる。これらは、何れか1つの種類を単独で使用してもよいし、複数の種類を併用してもよい。
【0029】
粘着付与剤の添加量は、天然ゴム100質量部に対し好ましくは30~150質量部であり、より好ましくは60~120質量部である。粘着付与剤が30質量部以上であれば、粘着力の低下を抑制でき、150質量部以下であれば、粘着テープを剥離する際の再剥離性の低下が抑制できる。
【0030】
(その他の配合材料)
粘着剤層には、上記の成分以外に当該分野において公知の配合成分を含有させることができる。例えば、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、導電材、素練り促進剤、着色剤などが挙げられる。
【0031】
[基材]
本発明の粘着テープに用いる基材には、植物由来の繊維にポリオレフィンをラミネート加工した積層体を用いる。
【0032】
(植物由来の繊維)
植物由来の繊維としては、レーヨン、綿、カポック、亜麻、ラミー、大麻、黄麻、マニラ麻、サイザル麻、しゅろ、ここやし、キュプラ等が挙げられる。植物由来の繊維は何れか1つもしくは複数を併用してもよい。また、これらの混紡に関しては任意であり、特に限定されるものではない。また繊維は、織布、編布、不織布等どの形態でもよく、特に限定されない。
【0033】
(ポリオレフィン)
ポリオレフィンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、等が挙げられる。バイオベース度を高める観点からはバイオポリオレフィンを使用することが好ましい。ここで、バイオポリオレフィンとは、サトウキビなどの植物由来のバイオエタノールから製造されたポリオレフィンを意味する。バイオポリオレフィンの製造方法は特に限定されず、公知の種々の方法を採用できる。バイオポリオレフィンとしては、例えば市販のバイオポリエチレンを用いることができる。バイオポリオレフィンは、何れか1つの種類を単独で使用してもよいし、複数の種類を併用してもよい。
【0034】
[バイオベース度]
本発明の粘着テープにおいて、バイオベース度が50%以上となるように各材料を選択することが好ましい。粘着テープのバイオベース度とは、粘着テープ全体の質量に占めるバイオマス由来成分の質量割合をいう。粘着テープのバイオベース度は、ISO16620-4(バイオベース質量含有率の求め方)により求めることができる。具体的には粘着テープ全体の質量(A)とバイオマス由来成分の質量(B)を算出し、以下の式により算出される値である。
バイオベース度(%)={質量(B)/質量(A)}×100
バイオベース度が高いほど、実質的な二酸化炭素排出量を低減することが可能となる。本発明においては、従来にない粘着剤層のバイオベース度を効果的に高めることができることから、粘着テープとして90%以上のバイオベース度の達成も容易である。なお、共重合体や複数種の材料を組み合わせて使用する場合などにおいて、一部にバイオマス由来成分を使用し、残りを石油由来成分等を使用している場合は、各成分のバイオマス由来成分の割合に応じてバイオベース度を計算する。
【0035】
本発明の粘着テープに用いるバイオマス由来成分とは、再生可能な植物由来の有機資源のことを言い、化石資源のような採掘によって枯渇する材料は除外される。バイオマス由来成分は、例えば、上記再生可能な有機資源そのものであってもよく、上記有機資源を化学的にまたは生物学的に変性したり、有機資源を用いて合成したりすることにより得られる材料であってもよい。
【0036】
バイオマス由来成分も、焼却によって二酸化炭素を放出するが、放出される二酸化炭素は、植物が成長過程で光合成により大気中から吸収した二酸化炭素と同量であるため、大気中の二酸化炭素の増減には影響を及ぼさないと考えることができる。このような考え方はカーボンニュートラルと呼ばれる。粘着テープの構成材料として、バイオマス由来成分を用いることによって、二酸化炭素量の低減が実現できる。
【0037】
[粘着テープの製造方法]
粘着テープの製造方法は、特に制限されず、従来公知の方法で製造することができる。例えば、基材は植物由来の繊維を所望の織布等に成形し、その両面もしくは片面にオレフィン樹脂をラミネートする。ラミネート方法はオレフィン樹脂のフィルムを織布に重ねて熱圧着したり、オレフィン樹脂を熱溶融して織布に押出成形したりする方法などいずれでもよい。また、ラミネート層を形成する織布等の面に表面処理を施してからラミネート層を形成することができる。
【0038】
次に、別途混合調製した粘着剤組成物を基材の片面あるいは両面に塗布し、粘着剤層を形成する。粘着剤組成物を塗布する基材面には密着性を向上するために表面処理を施すことができる。
【0039】
表面処理としては、物理的又は化学的なアンカー処理(AC処理)が施される。物理的処理としては、コロナ処理、UV処理、スパッタリング処理などが挙げられ、化学的処理としては有機チタン系、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系などから選んだ樹脂を塗布する処理が挙げられる。なお、バイオベース度を高める観点からは物理的処理が好ましい。
【0040】
粘着剤層は、各種塗布装置により塗布して形成される。塗布装置としては、例えば、カレンダー塗工機、ロールコーター、ダイコーター、リップコーター、マイヤーバーコーター、グラビアコーター等を挙げることができる。
【0041】
ここで、基材の厚みとしては、50~500μmの範囲が好ましく、100~300μmの範囲がより好ましい。100μm以上であることで基材の剛性が向上し作業性が良くなり、500μm以下であることで被着体凹凸面への密着性が向上し、被着体から剥がれにくくなる。
粘着剤層は、例えば、片面当たりの塗布量は30~400g/mの範囲から目的に合わせて選択することができ、テープの厚みとしては80~900μmの範囲から選択することができる。

製造された粘着テープはロール状に巻き回し、所定の幅に切断する。切断されたテープは側面に包装材、例えばポリエチレンフィルム等で保護し、他のテープの粘着剤同士が接触することを防止して箱詰め等される。
本発明に係る粘着テープは、テープ側面のベタツキが効果的に抑制できる。
【実施例
【0042】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また、各原材料の物性値等は製造者のカタログ値を採用している。
【0043】
[実施例1]
経糸および緯糸共に30番手のレーヨン糸を用い、経密度45本/インチ、緯密度35本/インチになるように織布を製織した。この織布の一方の面にバイオマス低密度ポリエチレン(商品名「SBC818」、BRASKEM S.A.製、密度0.918g/cm)を加工温度300℃のTダイスによる押出ラミネート加工により成膜し、総厚200μmの基材を作製した。粘着剤組成物は、ニーダーにより素練りした天然ゴム100質量部に、充填剤として平均粒子径が32μmの粉末セルロース(1)(商品名「KCフロックW-200」、日本製紙(株)製)100質量部、可塑剤として重量平均分子量(Mw)が40,000である液状天然ゴム(1)(商品名「DPR-40」、DPR INDUSTRIES INC.製)25質量部、粘着付与剤としてテルペン樹脂(商品名「YSレジンPX1000」、ヤスハラケミカル(株)製、軟化点:100±5℃)100質量部を混合し調製した。前記織布の他方の面にこの粘着剤組成物をカレンダー塗工機で100μmの膜厚となるように塗布し、総厚300μmの粘着テープを得た。
【0044】
[実施例2]
充填剤として平均粒子径が37μmの粉末セルロース(2)(商品名「KCフロックW-100」、日本製紙(株)製)80質量部に変更した以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を実施例1と同様の基材上に塗布し、総厚300μmの粘着テープを得た。
【0045】
[実施例3]
充填剤として平均粒子径が45μmの粉末セルロース(3)(商品名「KCフロックW-50」、日本製紙(株)製)40質量部に変更した以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を実施例1と同様の基材上に塗布し、総厚300μmの粘着テープを得た。
【0046】
[実施例4]
充填剤として平均粒子径が24μmの粉末セルロース(4)(商品名「KCフロックW-400」、日本製紙(株)製)120質量部に変更した以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を実施例1と同様の基材上に塗布し、総厚300μmの粘着テープを得た。
【0047】
[実施例5]
可塑剤として重量平均分子量(Mw)が80,000である液状天然ゴム(2)(商品名「DPR-400」、DPR INDUSTRIES INC.製)25質量部に変更した以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を実施例1と同様の基材上に塗布し、総厚300μmの粘着テープを得た。
【0048】
[実施例6]
可塑剤として大豆油(商品名「ニッカ大豆白絞油」、日華油脂(株)製)25質量部に変更した以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を実施例1と同様の基材上に塗布し、総厚300μmの粘着テープを得た。
【0049】
[実施例7]
可塑剤としてエポキシ化大豆油(商品名「アデカサイザーO-130P」、(株)ADEKA製)25質量部に変更した以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を実施例1と同様の基材上に塗布し、総厚300μmの粘着テープを得た。
【0050】
[比較例1]
経糸および緯糸共に30番手のレーヨン糸を用い、経密度45本/インチ、緯密度35本/インチになるように織布を製織した。この織布の片側に低密度ポリエチレン(商品名「NUC8008」、密度0.918g/cm、日本ユニカー製)を加工温度300℃のTダイスによる押出ラミネート加工により成膜し、総厚200μmの基材を作製した。粘着剤組成物は、ニーダーにより素練りした天然ゴム100質量部に、充填剤として平均粒子径が12μmの重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製)200質量部、可塑剤としてプロセスオイル(商品名「モービルサーム610」、EMGルブリカンツ合同会社製)25質量部、粘着付与剤としてC5樹脂(商品名「T-REZ RC100」、JXTGエネルギー製、軟化点:95~105℃)100質量部を混合し作製した。この粘着剤組成物をカレンダー塗工機で上記基材上に100μmの膜厚になるように塗布し、総厚300μmの粘着テープを得た。
【0051】
[比較例2]
ニーダーにより素練りした天然ゴム100質量部に、充填剤として平均粒子径が10μmのでんぷん粉(林純薬工業(株)製、第1級でんぷん)180質量部、可塑剤としてプロセスオイル(商品名「モービルサーム610」、EMGルブリカンツ合同会社製)25質量部、粘着付与剤としてC5樹脂(商品名「T-REZ RC100」、JXTGエネルギー製、軟化点:95~105℃)100質量部を混合し粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を比較例1と同様の基材上に塗布し、総厚300μmの粘着テープを得た。
【0052】
<試験方法>
以上、各実施例及び比較例として得られたテープサンプルの諸特性を以下の方法で試験し、評価を行った。その結果を表1、表2に記載した。
【0053】
[粘着力]
JIS Z 0237(粘着テープ・粘着シートの試験方法)の10(粘着力)に準じて、粘着力を測定した。但し、試験条件は以下の通りとした。[粘着テープの幅:10mm、引きはがし角度:180度、試験温度:23℃]
【0054】
[保持力]
JIS Z 0237(粘着テープ・粘着シートの試験方法)の13(保持力)に準じて、保持力を測定した。但し、試験条件は以下の通りとした。[粘着テープの面積:幅25mm×長さ25m、錘:1000g、試験温度:40℃]
【0055】
[定荷重剥離力]
幅10mmのテープを23℃50%RHの環境下でステンレス鋼(SUS304BA)板に貼り、2kgのゴムローラを1往復させて圧着した。同環境下で30分放置後、これをテープ端部に100gの錘を吊した状態で90度方向に荷重を掛け、常温(23℃)で落下するまでの時間を測定した。
【0056】
[降伏点荷重]
50mm幅で25mのテープを、23℃50%RHの環境下でテープの側面のみが接触する平行な2枚の板で挟み、圧縮試験機で荷重を加えて破壊するまでの応力を測定し、降伏点荷重値を求めた。
【0057】
[側面ベタツキ]
50mm幅で25mのテープを、テープの側面が下になるように置き、テープとテープの間にPEパッキンを挟み、5巻重ねて40℃の乾燥機に28日間放置し、常温に戻したのち、最下段のテープ側面のベタツキ状態を下記の基準で評価した。
〇:PEパッキンを容易に剥がすことができる。
×:PEパッキンを容易に剥がすことができない。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明した通り、本発明における粘着テープは、降伏点荷重値の結果から、変形しにくく、テープ側面のベタツキを抑制することが可能であり、包装や養生など種々の分野において、従来品と同様に広く利用することができる。またバイオベース度を90%以上とすることも容易であることから、温室効果(炭酸)ガス排出の抑制が高いレベルで実現できる。