(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】人間の心臓または動物の心臓を刺激するための植込み可能なシステム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/368 20060101AFI20240613BHJP
A61N 1/37 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
A61N1/368
A61N1/37
(21)【出願番号】P 2022520835
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2020076726
(87)【国際公開番号】W WO2021099014
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-07-28
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512158181
【氏名又は名称】バイオトロニック エスエー アンド カンパニー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】BIOTRONIK SE & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Woermannkehre 1 12359 Berlin Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デール、トーマス
【審査官】段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-524997(JP,A)
【文献】特表2005-525179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/368
A61N 1/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の心臓または動物の心臓を刺激するための植込み可能なシステムであって、
当該システムは、プロセッサと、メモリユニットと、人間の心臓または動物の心臓のヒス束または他の心臓領域を刺激する刺激ユニットと、当該心臓の電気信号を感知する感知ユニットと、植込み可能なシステムの機能パラメータを確認する診断ユニットとを備え、
前記メモリユニットは、コンピュータで読み取り可能なプログラムを含み、
当該プログラムが前記プロセッサ上で実行されているとき、前記プログラムは、
a)診断ユニットにより、植込み可能なシステムの少なくとも1つの誤動作状態が存在するかどうかを検出するステップと、
b)人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極が刺激ユニットに接続されているかどうかを確認するステップ(220)と、
c)前記誤動作状態が検出されたときに、植込み可能なシステムの動作状態を安全モードに切り替えるステップであって、前記安全モードは、少なくとも第1の安全モード(230)および第2の安全モード(240)から選択される、ステップと、
を実行するように前記プロセッサに作動させ、
さらに、
i)ステップb)で実行された確認するステップ(220)が、前記人間の心臓または前記動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた前記電極が前記刺激ユニットに接続されていないことを示したときに、前記第1の安全モード(230)が選択され、当該第1の安全モード(230)は、前記植込み可能なシステムはヒス束ペーシングに対するいかなる特定の要件も満たさないように、前記植込み可能なシステムの第1の安全動作をもたらし、
ii)ステップb)で実行された確認するステップ(220)が、前記人間の心臓または前記動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた前記電極が刺激ユニットに接続されていることを示したときに、前記第2の安全モード(240)が選択され、当該第2の安全モード(240)は、前記植込み可能なシステムがヒス束ペーシングの特定の要件を満たすことができるように、前記植込み可能なシステムの第2の安全動作をもたらす、植込み可能なシステム。
【請求項2】
前記安全モードへの切り替えに必要な情報は、前記植込み可能なシステムの不揮発性メモリ、冗長メモリまたは回復可能メモリに記憶されていることを特徴とする、請求項1に記載の植込み可能なシステム。
【請求項3】
前記人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極が刺激ユニットに接続されているかどうかを確認するステップ(220)は、前記メモリユニットに記憶されている情報に基づいて行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の植込み可能なシステム。
【請求項4】
前記診断ユニットは、メモリエラー、ソフトウェアランタイムエラー、ソフトウェアステータスエラー、検出されたサイバー攻撃、パラメータエラー、植込み可能なシステムのリセット状態の起動、バッテリ消耗、および植込み可能なシステムの外部電磁干渉のうちの少なくとも1つの事象に基づいて、誤作動状態を検出するように構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の植込み可能なシステム。
【請求項5】
前記第2の安全動作は、
人間の心臓又は動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極が接続される刺激ユニットの電極端子のヒス束ペーシング設定、
人間の心臓又は動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極によって与えられる刺激の刺激エネルギー、
ヒス束固有の信号を感知するための前記感知ユニットの感知感度、
前記植込み可能なシステムの刺激動作モード、
人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極によって与えられる刺激の周波数、
人間の心臓または動物の心臓を刺激するための第2の電極が接続される前記刺激ユニットの第2の電極端子のヒス束ペーシング設定、
の少なくとも1つによることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の植込み可能なシステム。
【請求項6】
前記プログラムは、
a)保護モードが外部信号によって起動されたときに、植込み可能なシステムの動作状態を保護モードに切り替えるステップであって、当該保護モードは、少なくとも第1および第2の保護モードから選択され、
i)ステップb)において実行された確認(220)により、人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極が刺激ユニットに接続されていないことが示された場合、第1の保護モードが選択され、当該第1の保護モードは、植込み可能なシステムがヒス束ペーシングに関するいかなる特定の要件も満たさない植込み可能なシステムの第1の保護動作をもたらし、
ii)ステップb)において実行された確認により、人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極が刺激ユニットに接続されていることが示された場合、第2の保護モードが選択され、当該第2の保護モードは、植込み可能なシステムがヒス束ペーシングに関する特定の要件を満たすことができる植込み可能なシステムの第2の保護操作をもたらす、
ことを追加で実行するようにプロセッサに促すことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の植込み可能なシステム。
【請求項7】
前記第2の安全動作は、
人間の心臓又は動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極が接続される刺激ユニットの電極端子のヒス束ペーシング設定、
人間の心臓又は動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極によって与えられる刺激の刺激エネルギー、
ヒス束固有の信号を感知するための前記感知ユニットの感知感度、
前記植込み可能なシステムの刺激動作モード、
人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極によって与えられる刺激の周波数、
人間の心臓または動物の心臓を刺激するための第2の電極が接続される前記刺激ユニットの第2の電極端子のヒス束ペーシング設定、
の少なくとも1つによることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の植込み可能なシステム。
【請求項8】
前記プログラムは、設定可能なプログラミングパラメータの関数として、前記第2の安全動作の構成を確立するように、または個別に適合させるようにプロセッサに促すことを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の植込み可能なシステム。
【請求項9】
前記プログラムは、前記第2の安全動作の構成を、前記植込み可能なシステムに記憶された一部の情報の関数として自動的に決定するように前記プロセッサに促すことを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の植込み可能なシステム。
【請求項10】
前記植込み可能なシステムは、データ遠隔送信ユニットを備え、前記プログラムは、前記データ遠隔送信ユニットによって前記安全モードの作動
を遠隔監視システムに送信するように前記プロセッサに促すことを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の植込み可能なシステム。
【請求項11】
コンピュータで読み取り可能なコードを含むコンピュータプログラム製品であって、前記コードがプロセッサ上で実行されているときに、プロセッサに以下のステップを実行するように促すもの
であり、
a)人間の心臓または動物の心臓を刺激するための植込み可能なシステムの機能パラメータを確認する診断ユニットによって、前記植込み可能なシステムの少なくとも1つの誤動作状態が存在するかどうかを検出するステップ
と、
b)人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極が、人間の心臓または動物の心臓のヒス束または同様の心臓領域を刺激するための刺激ユニットに接続されているかどうかを確認し(220)、かつ、その電極が、人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するための刺激ユニットに接続されているかどうかを確認する(220)
ステップと、
c)誤動作状態が検出されたときに、植込み可能なシステムの動作状態を安全モードに切り替えるステップであって、安全モードは、少なくとも第1の安全モード(230)および第2の安全モード(240)から選択されるステップと、を備え、
i)ステップb)で実行された確認(220)が、人間心臓または動物心臓のヒス束を刺激するために設けられた前記電極が前記刺激ユニットに接続されていないことを示したときに、前記第1の安全モード(230)が選択され、当該第1の安全モード(230)は、前記植込み可能なシステムがヒス束ペーシングに関するいかなる特定の要件も満たさない植込み可能なシステムの第1の安全動作をもたらし、
ii)ステップb)で実行された確認(220)が、人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた前記電極が前記刺激ユニットに接続されていることを示したときに、前記第2の安全モード(240)が選択され、当該第2の安全モード(240)は、前記植込み可能なシステムがヒス束ペーシングの特定の要件を満たすことができるように、植込み可能なシステムの第2の安全動作をもたらす、プログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文による人間の心臓または動物の心臓を刺激するための植込み可能なシステム、請求項11の前文によるそのような植込み可能なシステムの動作を制御するための方法、および請求項12の前文によるそのような方法を実施するのに適したコンピュータプログラム製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
心臓ペースメーカーなど、人間の心臓や動物の心臓を刺激する植込み可能なシステムは以前から知られていた。これらは、様々な機能を実行することができる。治療された心臓を正常な状態に戻すために、その過程で対応する心臓ペースメーカーによって様々な刺激プログラムが実行されることがある。また、ヒス束(His bundle)を刺激する心臓ペースメーカーも知られている。
【0003】
ヒス束は、心臓伝導系の一部を構成する特定の心筋細胞の束である。ヒス束は房室結節から遠位、心尖部方向に位置している。
【0004】
従来の心臓ペースメーカーや植込み可能な除細動器では、ヒス束ペーシングが頻繁に行われている。このような従来の装置の刺激出力は、その過程でヒス束の電極に接続される。そして、従来の装置は、通常、利用可能なパラメータ値範囲の範囲内で、一定の譲歩をしながら、ヒス束ペーシングの必要性に適合される。
【0005】
従来の人間や動物の心臓を刺激する装置には、一般に安全モード(バックアップモードともいう)がある。装置の一部に障害が検出されると、安全モードは、装置の継続的な動作のために通常確立された装置設定を使用することによって起動される。しかし、一般に、従来から利用されている装置設定では、十分なヒス束ペーシングを行うことができない。例えば、心臓を刺激するための装置の右心房端子にヒス束電極を接続しても、この装置の安全モードとして右心室ペーシングのVVIモードが記憶されていることがある。VVIモードでは、右心室信号のみが感知される。さらに、右心室ペーシングのみが行われる。また、VVIモードでは、心臓の固有活動を検知すると、心臓ペースメーカーによる刺激が抑制される。しかし、右心房端はVVIモードでは全く対処されなくなった。その結果、ヒス束ペーシングは行われなくなり、そのような装置を装着した患者は、供給不足に陥る。
【0006】
米国特許第6996437号明細書には、心臓の心室ペーシング用に設計された心臓ペースメーカーの様々な安全モードが記載されている。
【0007】
米国特許第8688234号明細書には、患者のヒス束をペーシングするのに適した心臓ペースメーカーが記載されている。その中で、異なるペーシングモードが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第6996437号明細書
【文献】米国特許第8688234号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、障害が発生した場合でも確実にヒス束ペーシングを行うことができる人間の心臓または動物の心臓を刺激する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、請求項1の特徴を有するような、人間の心臓または動物の心臓を刺激するための植込み可能なシステムによって達成される。
【0011】
このようなシステムは、プロセッサ、メモリユニット(記憶装置)、および人間の心臓または動物の心臓のヒス束または他の心臓領域を刺激するための刺激ユニット(刺激装置)から構成されている。さらに、このようなシステムは、この心臓の電気信号を感知するための感知ユニット(感知装置)を含んでいる。さらに、植込み可能なシステムの機能パラメータを確認するための診断ユニット(診断装置)が提供される。
【0012】
本発明によれば、植込み可能なシステムは、メモリユニットがコンピュータ読み取り可能なプログラムを含み、このプログラムがプロセッサ上で実行されているときに、プロセッサに後述するステップを実行するように促すことを特徴とする。
【0013】
このようにして、一方では、診断ユニットによって、植込み可能なシステムの少なくとも1つの誤動作状態が存在するかどうかが検出される。
【0014】
一方、人間の心臓や動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極が刺激部に接続されているかどうかを確認する。つまり、患者のヒス束を刺激するために植込み可能なシステムが提供されているかどうかを確認する。
【0015】
故障状態が検出された場合、植込み可能なシステムの動作状態は、実行されたプログラムに従って、安全モード(バックアップモードともいう)に切り替えられる。この安全モードは、少なくとも第1の安全モードと第2の安全モードとから選択することができる。
【0016】
そして、心臓のヒス束を刺激するための電極の有無を確認した結果、その電極が接続されていないことが判明した場合に、第1の安全モードが選択される。第1の安全モードは、植込み可能なシステムがヒス束ペーシングのためのいかなる特定の要件も満たさない、植込み可能なシステムの第1の安全動作を保証する。ヒス束を刺激するために設けられた電極が植込み可能なシステムの刺激ユニットに接続されていない場合、ヒス束ペーシングに特別に合わせた安全動作は必要ない。むしろ、例えば、VVIモードのような関連技術から知られた安全モードを第1の安全モードとして使用することが可能である。
【0017】
一方、ヒス束を刺激するのに適した電極が刺激ユニットに接続されているかどうかを確認する際に、そのことが確認された場合は、第2の安全モードが選択される。第2の安全モードは、植込み可能なシステムの第2の安全動作を保証する。この第2の安全動作において、植込み可能なシステムは、ヒス束ペーシングのための特定の要件を満たすことができる。例えば、第2の安全モードに起因する第2の安全動作では、7.の範囲内の振幅を有する刺激パルスが使用される。5V~30V、特に12V~30V、特に15V~25V、特に20V~22Vの範囲の振幅と、1ms~15ms、特に2ms~12ms、特に3ms~10ms、特に4ms~9ms、特に5ms~8msの範囲のパルス幅を有する刺激パルスは、ヒス束の刺激のために設けられた電極が接続されている刺激ユニットの端末により実施、実施又は提供することが可能である。
【0018】
このように、請求項の植込み可能なシステムは、ヒス束ペーシングに適した電極がシステムの刺激ユニットに接続されているか否かの機能として、異なる安全モードを選択し適用することができるように設計されている。このようにして、ヒス束ペーシングに適した電極が接続されていない場合には、従来通り、従来の安全モードに対応する安全モード(すなわち、第1の安全モード)を選択することができ、植込み可能なシステムの簡単な基本機能を保証することができる。一方、ヒス束刺激に適した電極が植込み可能なシステムの刺激ユニットに接続されている場合には、同様に従来の安全モードの基本機能を満足しつつも、さらにヒス束ペーシングも可能な別の安全モード(すなわち第2の安全モード)を選択することが可能である。これにより、先行技術から知られている心臓ペースメーカで発生する患者の供給不足の状況を回避することができる。このように、第2の安全モードにより、誤動作の検出により植込型システムの一般的な動作状態や他の動作状態が安全モードや安全動作に切り替わったとしても、ヒス束刺激装置の生命維持のための刺激療法を行うことが可能となる。
【0019】
一変形例では、植込み可能なシステムは、心臓ペースメーカーとして構成される。別の変形例では、植込み可能な心臓除細動器(ICD:Implantable Cardioverter-Defibrillator)として構成される。別の変形例では、心臓再同期療法(CRT:Cardiac Resynchronization Therapy)を実施するためのデバイスとして構成される。別の変形例では、植込み可能なシステムは、ICD機能を有する心臓再同期療法用の装置(CRT-D装置)として構成されている。別の変形例では、システムは、植込み可能なリードレスペースメーカ又はペーサ(iLP:Implantable Leadless Pacemaker or Pacer)として構成される。
【0020】
一変形例では、システムの動作状態を安全モードに切り替えるために必要な情報は、植込み可能なシステムの不揮発性メモリ、冗長メモリ、または回復可能メモリに記憶される。このメモリは、植込み可能なシステムのメモリユニット、植込み可能なシステムのメモリユニットのメモリ領域、またはメモリユニットとは別のメモリであってもよい。特に好適な変形例は、スイッチングに必要な一部の情報を不揮発性メモリに記憶させることを含む。特に好適な不揮発性メモリは、ROM、EPROM、EEPROM、およびFLASH(登録商標)タイプのメモリである。これにより、セーフティモードへの切り替えに必要な情報を不用意に消去することなく、いつでも呼び出せる状態を特に容易に確保することができる。これにより、機器の信頼性を高めることができる。
【0021】
一変形例では、植込み可能なシステムは、ヒス束ペーシングのために設けられた電極がシステムの刺激ユニットに接続されているかどうかを自動的に検出することが可能である。これは、例えば、ヒス束ペーシング用に設けられた電極のコネクタプラグのコードを読み出すことによって達成することができる。
【0022】
別の変形例では、人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極が刺激ユニットに接続されているかどうかに関する確認は、メモリユニットまたは植込み可能なシステムの別のメモリに記憶されている情報を使用して行われる。例えば、そのような情報は、植込み可能なシステムの植込みの設定内でメモリユニットに記憶されることができる。そのとき、ヒス束ペーシングに適した電極のコネクタプラグが特定の構成を有することは必要ない。むしろ、術者は、ヒス束ペーシングのために設けられた電極を植込み可能なシステムと共に植込む際に、このシステムがそのようなヒス束刺激電極を備えているという情報を植込み可能なシステムに記憶させることができる。この変形例で必要とされるのは、対応する情報が記憶されているかどうかを植込み可能なシステムのメモリに問い合わせることだけである。そして、そのようなヒス束ペーシングに適した電極が実際に接続されていると仮定し、その後、誤作動が発生した場合に、植込み可能なシステムの動作状態が第2の安全モードに切り替えられるようにする。
【0023】
ある変形例では、診断ユニットは、特定のイベントに基づいて、植込み可能なシステムの誤動作状態が存在するか否かを検出できるように設計されている。誤動作状態が検出されるこれらの事象は、この変形例では、メモリエラー(いわゆるシングルビットアップセットなど)、ソフトウェア実行時エラー、ソフトウェア状態エラー、検出されたサイバー攻撃(すなわち、認可なしに植込み可能なシステムに遠隔アクセスする試み)、パラメータエラー、植込み可能なシステムのリセット状態の起動(ここで、この場合、植込み可能なシステムのリセット状態が起動される)、などを含む。一般に、植込み可能なシステムの異なるリセット状態が考えられ、設定可能である)、電池の消耗(すなわち、植込み可能なシステムの電池が予め定義された容量限界に達するか、それを下回ると、システムの完全な動作がもはや保証されない)、および植込み可能なシステムの外部電磁干渉が考えられる。
【0024】
このような外部からの電磁波の干渉は、例えば、磁気共鳴画像装置(MRI)が発するような強い永久磁場であることがある。患者が、例えば、ある時間枠内にMRI検査が実施されることを知っている場合、医師は、対応する情報を植込み可能なシステムに記憶させることができる。強い磁場は植込み可能なシステムの機能を損なう可能性があるため、植込み可能なシステムは、あらかじめ定義可能な時間帯に、システムが永久磁場にさらされているかどうかの検出に対する監視精度を高めて感応させる。この場合、植込み可能なシステムの誤作動を防止するために、安全モードの1つを直接選択して作動させることができる。このように、このようなMRI環境の検出は、誤動作状態として識別され、安全モードの1つを作動させる結果となることが可能である。MRI検査終了後、植込み可能なシステムを通常の動作状態に手動で戻すことができる。
【0025】
一変形例では、第2の安全動作は、以下に説明する構成のうち少なくとも1つを備えることを特徴とする。
【0026】
例えば、ヒス束ペーシング用に設けられた電極が接続される刺激装置の電極端子の特定のヒス束ペーシング設定を、設定として第2の安全動作中に実施することができる。ヒス束電極が接続される電極端子は、例えば、上述したように、ユーザ依存の情報を用いて選択することができる。
【0027】
代替案として、または追加として、ヒス束を刺激するためのヒス束電極によって送達され得る刺激のための刺激エネルギーは、特定の心臓のヒス束を刺激するのに適するように、特別に設定され得る。好適な刺激エネルギー(電圧およびパルス幅によって特徴付けられる)は、上述したとおりである。
【0028】
代替的にまたは追加的に、ヒス束固有の信号を検知するための検知ユニットの検知感度(感知感度)を設定することができる。そうすれば、安全動作において、実際に彼の束固有の信号が正しく感知されることが保証される。
【0029】
代替案として、または追加案として、植込み可能なシステムの刺激動作モードを、ヒス束ペーシングに特有の動作モードに設定することができる。これは、例えば、植込み可能なシステムの異なる機能(特に、刺激、感知および/または感知されたまたは実行された事象の記憶)に関連する特定のパラメータ範囲を指定することによって行われることが可能である。
【0030】
代替または追加として、刺激の頻度(刺激速度)を設定することができ、これはヒス束ペーシングに適した電極によって供給することができる。
【0031】
また、人間の心臓や動物の心臓のヒス束を刺激するための電極が追加接続された刺激装置の追加電極端子(いわゆるヒス束バックアップ刺激端子)の特定のヒス束ペーシング設定を代替または追加で実施することも可能である。
【0032】
ある変形例では、プログラムは、プロセッサに、以下に説明するステップを追加で実行するように促す。この追加のステップでは、保護モードが外部信号によって起動された場合に、植込み可能なシステムの動作状態が保護モードに切り替えられる。植込み可能なシステムの機能の装置内部診断によって起動される安全モードとは対照的に、保護モードは、したがって、外部信号によって起動されることができるモードである。保護モードは、例えば、プログラミング装置の緊急機能によって起動させることができる。これは、例えば、医師が、検査中に、植込み可能なシステムが意図された方法で機能していないことを立証したときに、医師によって実行され得る。
【0033】
一実施形態によれば、保護モードは、刺激装置のための標準化された均一な安全動作モードを表し、これは、ヒス束ペーシング用に設計された植込みを装着したすべての患者に対して使用することができる。対照的に、安全モードは、例えば、個々の装置設定に依存し、患者固有の方法で構成され得る。
【0034】
そして、保護モードは、少なくとも第1の保護モードと第2の保護モードから選択される。
【0035】
そして、第1の安全モードと同様に、事前の確認により、人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極が刺激ユニットに接続されていないことが確認された場合に、第1の保護モードが選択される。第1の保護モードは、植込み可能なシステムを第1の保護動作に移行させ、その際、植込み可能なシステムは、ヒス束ペーシングのためのいかなる特定の要件も満たさないようにする。その理由は、システムの刺激ユニットにヒス束電極が接続されていない場合、ヒス束ペーシングのための特定の要件を考慮する必要がないからである。
【0036】
一方、第2の保護モードは、ヒス束ペーシングに適した電極が刺激ユニットに接続されているかどうかを事前に確認した結果、そのような電極が存在することが判明した場合に選択される。第2の保護モードは、植込み可能なシステムの第2の保護動作を起動し、このとき、植込み可能なシステムは、ヒス束ペーシングの特定の要件を満たすことが可能である。第2の保護モードは、第2の安全モードと同等である。特に、本願で第2の安全モードに関して説明されているすべての変形は、したがって、第2の保護モードにも直接適用することができる。
【0037】
一変形例では、このように、第2の保護動作は、以下の構成のうち少なくとも1つを備えることを特徴とする。人間の心臓又は動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極が接続される刺激ユニットの電極端子のヒス束ペーシング設定、人間の心臓又は動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極によって与えられる刺激のエネルギー、ヒス束特有の信号を感知するための感知ユニットの感知感度。植込み可能なシステムの刺激動作モード、人間心臓又は動物心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極によって与えられる刺激の刺激周波数、及び人間の心臓又は動物の心臓を刺激するための第2の電極が接続される刺激ユニットの第2の電極端子のヒス束ペーシング設定、を備える。第2の電極は、例えば、右心室刺激電極または左心室刺激電極とすることができ、第2の電極端子は、それに応じて、右心室刺激電極用端子または左心室刺激電極用端子とすることができる。
【0038】
一変形例では、第2の安全動作の構成(及び/又は第2の保護動作の構成)が、設定可能なプログラミングパラメータの関数として、設定可能又は個別に適応可能であることが可能である。この目的のために、ユーザが、対応するプログラミングパラメータを、植込み可能なシステムが植え込まれた患者の必要性に適合させることが可能である。そして、患者固有の状況に対処することが可能であり、それによって、システムの個別の安全動作または保護動作が可能になる。
【0039】
一変形例では、一部の情報が植込み可能なシステムに記憶され、それに基づいて、第2の安全動作(および/または第2の保護動作)の構成が自動的に決定される。つまり、この変形例では、第2の安全動作の構成に関するパラメータの設定オプションが提供されない。この変形例では、第2の安全動作(および/または第2の保護動作)が常に予め設定されたパラメータを用いて実行されるため、特定のパラメータを不用意に設定するリスクを排除することができる。
【0040】
一変形例では、植込み可能なシステムは、データ遠隔送信ユニットを備える。この変形例では、プログラムは、データ遠隔送信ユニットによって、安全モードの起動を遠隔監視システムに送信するようにプロセッサに促すことができる。その後、遠隔監視システムにおいて、植込み可能なシステムにおいて誤動作状態が感知され、その結果、安全モードが作動されたことを検出することが可能である。そして、植込み可能なシステムが植え込まれた患者及び/又は医師に、植込み可能なシステムの機能を確認する必要があることを通知することができる。
【0041】
一変形例では、植込み可能なシステムのプログラミングに使用できるプログラミングデバイスに、安全モードが作動したことが表示される。また、どの安全モードが起動されたかをプロセス中に表示することも可能である。このようにして、ヒス束ペーシングに適した電極の存在に関して特定の植込み可能なシステム用に記憶された設定が実際に正しいかどうかを特に容易に確認することができる。さらに、安全モードの起動または停止が成功したかどうかを特に容易に確認することができる。
【0042】
本発明の一態様は、上記の説明による人間の心臓または動物の心臓を刺激するための植込み可能なシステムの動作を制御する方法に関するものである。この方法は、以下に説明するステップを備えることを特徴とする。
【0043】
1つの方法ステップにおいて、植込み可能なシステムの機能パラメータを確認するための診断ユニットによって、植込み可能なシステムの少なくとも1つの誤動作状態が存在するかどうかが検出される。
【0044】
さらなる方法ステップでは、人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極が、植込み可能なシステムの刺激ユニットに接続されているかどうかが確認される。この刺激ユニットは、人間の心臓または動物の心臓のヒス束または別の心臓領域を刺激するように設計されている。
【0045】
さらなる方法ステップにおいて、誤動作状態が検出された場合、植込み可能なシステムの動作状態が安全モードに切り替えられる。安全モードは、工程で、少なくとも第1の安全モードおよび第2び安全モードから選択され得る。
【0046】
そして、先に完了した確認により、人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極が刺激ユニットに接続されていないことが示されたときに、第1の安全モードが選択される。第1の安全モードは、植込み可能なシステムの第1の安全動作の起動をもたらし、その際、植込み可能なシステムは、ヒス束ペーシングのためのいかなる特定の要件も満たさない。なぜなら、ヒス束ペーシングのために設けられた電極が全くシステムの刺激ユニットに接続されていない場合、一般にこれは要求されないからである。
【0047】
これに対して、先に完了した確認により、人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するのに適した電極が刺激ユニットに接続されていることが判明した場合に、第2の安全モードが選択される。第2の安全モードは、植込み可能なシステムがヒス束ペーシングのための特定の要件を満たすことができる、植込み可能なシステムの第2の安全動作を引き起こす。
【0048】
本発明の一態様は、コンピュータ可読コードを含むコンピュータプログラム製品であって、コードがプロセッサ上で実行されているときに、プロセッサに、以下に説明するステップを実行するように促すコンピュータプログラム製品に関するものである。
【0049】
1つの方法ステップにおいて、植込み可能なシステムの機能パラメータを確認するための診断ユニットによって、植込み可能なシステムの少なくとも1つの誤動作状態が存在するかどうかが検出される。
【0050】
さらなる方法ステップでは、人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極が、植込み可能なシステムの刺激ユニットに接続されているかどうかが確認される。この刺激ユニットは、人間の心臓または動物の心臓のヒス束または別の心臓領域を刺激するように設計されている。
【0051】
さらなる方法ステップにおいて、誤動作状態が検出された場合、植込み可能なシステムの動作状態が安全モードに切り替えられる。安全モードは、工程で、少なくとも第1の安全モードおよび第2の安全モードから選択され得る。
【0052】
そして、先に完了した確認により、人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極が刺激ユニットに接続されていないことが示されたときに、第1の安全モードが選択される。第1の安全モードは、植込み可能なシステムの第1の安全動作の起動をもたらし、その際、植込み可能なシステムは、ヒス束ペーシングのためのいかなる特定の要件も満たさない。なぜなら、ヒス束ペーシングのために設けられた電極が全くシステムの刺激ユニットに接続されていない場合、一般にこれは要求されないからである。
【0053】
これに対して、先に完了した確認により、人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するのに適した電極が刺激ユニットに接続されていることが判明した場合に、第2の安全モードが選択される。第2の安全モードは、植込み可能なシステムがヒス束ペーシングのための特定の要件を満たすことができる、植込み可能なシステムの第2の安全動作を引き起こす。
【0054】
本発明の別の態様は、そのような治療を必要とする人間の患者または動物の患者を治療するための方法に関するものである。この治療は、人間の心臓または動物の心臓を刺激するための植込み可能なシステムによって、特に、上記の説明による植込み可能なシステムによって実施される。このような植込み可能なシステムは、人間の心臓または動物の心臓のヒス束または別の心臓領域を刺激するための刺激ユニットを含んでいる。これはさらに、この心臓の電気信号を感知するための感知ユニットを含んでいる。最後に、このようなシステムは、診断ユニットを備え、この診断ユニットは、植込み可能なシステムの機能パラメータを確認するために使用される。医療方法は、以下に説明するステップから構成される。
【0055】
1つの方法ステップにおいて、診断ユニットは、植込み可能なシステムの少なくとも1つの誤動作状態が存在するか否かを検出する。
【0056】
さらに、人間の心臓や動物の心臓のヒス束を刺激するための電極が、刺激ユニットに接続されているかどうかを確認するステップもある。
【0057】
さらなる方法ステップにおいて、誤動作状態が検出された場合、植込み可能なシステムの動作状態が安全モードに切り替えられる。安全モードは、工程で、少なくとも第1の安全モードおよび第2の安全モードから選択され得る。
【0058】
そして、先に完了した確認により、人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するために設けられた電極が刺激ユニットに接続されていないことが示されたときに、第1の安全モードが選択される。第1の安全モードは、植込み可能なシステムの第1の安全動作の起動をもたらし、その際、植込み可能なシステムは、ヒス束ペーシングのためのいかなる特定の要件も満たさない。なぜなら、ヒス束ペーシングのために設けられた電極が全くシステムの刺激ユニットに接続されていない場合、一般にこれは要求されないからである。
【0059】
これに対して、先に完了した確認により、人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するのに適した電極が刺激ユニットに接続されていることが判明した場合に、第2の安全モードが選択される。第2の安全モードは、植込み可能なシステムがヒス束ペーシングのための特定の要件を満たすことができる、植込み可能なシステムの第2の安全動作を引き起こす。
【0060】
医療上の必要性があれば、植込み可能なシステムが植え込まれた患者の人間または動物の心臓が、植込み可能なシステムを用いて刺激される。この刺激は、先に選択された安全モードによって規定される植込み可能なシステムの安全動作の一部として実行される。
【0061】
植込み可能なシステムに関連して説明したすべての変形例および代替実施形態は、互いに任意に組み合わせて、説明した方法および説明したコンピュータプログラム製品に適用することができる。方法の記載された変形例は、さらに、互いに任意に組み合わされ、それぞれの他の方法およびコンピュータプログラム製品および植込み可能システムに適用されることができる。同様に、コンピュータプログラム製品の記述された変形は、互いに任意に組み合わされ、記述された方法および記述された植込み可能なシステムに適用され得る。
【0062】
以下、本発明の態様の詳細について、例示的な実施形態および図に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】人間または動物の心臓を刺激するための植込み可能なシステムにヒス束ペーシングに適した電極を接続するための異なる電極構成を示す概略図である。
【
図2】心臓や動物の心臓を刺激する植込み可能なシステムの動作を制御する方法を示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1は、人間の心臓または動物の心臓のヒス束を刺激するのに適した電極を、当該心臓を刺激するための装置に接続するために可能な異なる電極の構成を示す概略図である。
【0065】
第1の電極構成110において、シングルチャンバ(一心室)刺激が行われる。このため、ヒス束ペーシングに適した電極は、右心房RAを刺激するための電極または右心室RVを刺激するための電極の電極端子に接続される。このようなペースメーカは、一心室ペースメーカ又はデマンドペースメーカとも呼ばれることができる。少なくとも安全モードでは、典型的には、刺激が右心室で行われ、感知が右心室で行われ、抑制動作モードが実行される(VVI)モードで動作される。これは、ペースメーカーが、心臓の固有活動が検出されない場合にのみペーシングパルスを印加することを意味する。このモードでは、ヒス束電極を使用して右心室または両心室を刺激することが可能である。
【0066】
ヒス束ペーシングのために設けられた電極がこのようなペースメーカのRA端子に接続され、このようなペースメーカがVVI安全モードに入ると、十分なヒス束ペーシングができなくなる。したがって、現在説明されている発明は、特に、第1の電極構成110を有する心臓ペースメーカを改良するために好適である。しかしながら、以下に説明する更なる電極構成もまた、典型的には、従来の安全モードの選択の結果として、患者の供給不足の状況をもたらす。現在請求されている発明は、ヒス束ペーシングのために特別に構成された安全モードを確保し、ヒス束電極が接続されたときにこの安全モードを作動させることを可能にすることによって、この点に関する是正措置も提供するものである。
【0067】
第2の電極構成120において、ヒス束を刺激するために使用される電極は、右心室RVの端子に接続される。さらに、右心房RA用の端子にも動脈電極が接続されている。このようなペースメーカーは、DDDモード(デュアルペーシング(すなわち、心房及び心室)、デュアル感知(すなわち、心房及び心室)、デュアル動作モード(すなわち、トリガ又は抑制))で動作させることが可能である。このモードでは、ヒス束電極を使用して右心室または両心室を刺激することが可能である。その結果、心房とヒス束の順次ペーシングが可能になる。
【0068】
第3の電極構成130では、ヒス束を刺激するのに適した電極は、心臓ペースメーカーの右心室RVまたは左心室LV用の端子に接続される。これに対して、左心室を刺激するために設けられた電極は、左心室LVまたは右心室RVを刺激するための、やはり空いている端子に接続される。さらに、心房電極は、右心房RA用の端子に接続される。このような刺激装置は、特に、心臓再同期療法(CRT)用の装置である。両室刺激だけでなく、オプションのヒス束ペーシングによる心臓再同期も可能である。
【0069】
第4の電極構成140では、ヒス束を刺激するために用いられる電極は、ペースメーカの右心房用端子RAに接続される。さらに、右心室を刺激するための電極は、右心室RVのための対応する端子に接続される。このようなペースメーカは、RV安全モードを実施することができ、特に、DDDモードでの動作に適している。
【0070】
第5の電極構成150では、ヒス束ペーシング用に設けられた電極が左心室LV用の端子に接続される。さらに、右心房RA用の端子には心房用電極が接続され、右心室RV用の端子には心室用電極が接続されている。このような装置は、特にCRT装置でもあり、右心室または両心室の刺激を可能にし、さらに心臓再同期療法を実施する際にオプションでヒス束ペーシングを可能にするものである。
【0071】
第6の電極構成160では、ヒス束ペーシング用に設けられた電極は、やはり、右心房用端子RAに接続される。さらに、心室電極が2つ設けられ、そのうち右心室に配置された電極は右心室RV用の端子に接続され、左心室電極は左心室LV用の端子に接続されている。このような電極構成は、ヒス束ペーシングのオプションで両心室刺激と心臓再同期を行うことができるCRT装置に特に適している。
【0072】
現在請求項に記載されている発明の実施態様は、
図1に電極構成が示されている様々な刺激装置において有用であり、また企図されたものである。というのは、従来の安全モードが選択されたときに、患者が供給不足になる可能性があるという問題が、これらの電極構成のすべてにおいて生じるからである。ヒス束ペーシングの特定の要件に合わせた安全モードを選択するオプションは、ヒス束ペーシングに適した電極が対応する刺激装置に接続されたときに、そのような供給不足の状況を回避することを可能にする。
【0073】
図2は、本発明による第2の安全モードを実施することができる、動物または人間の心臓を刺激するための植込み可能なシステム(以下、刺激装置と呼ぶ)の動作を制御するための方法の概略フローチャートを示す図である。
【0074】
この刺激装置は、初期状態では、通常の動作モード210で作動している。対応する診断ユニットによって周期的に実行される自己テストの結果としてエラー状態が検出されると、ヒス束を刺激するのに適した電極が刺激装置に接続されているかどうかについての確認220が実行される。これは、例えば、ヒス束ペーシングに適した電極が接続されたときに刺激装置に記憶される内部情報を照会することによって達成され得る。
【0075】
確認220が、ヒス束ペーシングに適した電極が刺激装置に接続されていないことを示す場合、第1の安全モード230が選択され、その方法によって、その後、刺激装置の第1の安全動作が実行される。
【0076】
これに対し、確認220により、ヒス束ペーシング用に設けられた電極が刺激装置に接続されていることが示されると、第2の安全モード240が選択され、刺激装置を第2の安全動作に移行させる。この第2の安全動作は、特にヒス束ペーシングの必要性に合わせたものであり、それによって、この安全モードにおいても十分なヒス束ペーシングが可能である。
【0077】
特に、刺激装置が最初に安全モードの1つに移行される結果となるエラー状態を除去する復元手順250の後、刺激装置はその通常の動作モード210に再び移行される。