(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】水性エネルギー硬化型インクジェットインク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/101 20140101AFI20240613BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20240613BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20240613BHJP
【FI】
C09D11/101
C09D11/322
C09D11/30
(21)【出願番号】P 2022542150
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(86)【国際出願番号】 US2020013063
(87)【国際公開番号】W WO2021141597
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コントラクター ムズリム エイチ
(72)【発明者】
【氏名】トアライン スペンサー キュウ
(72)【発明者】
【氏名】カミングス スティーブン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ブキャナン スティーブン
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-195737(JP,A)
【文献】特開2018-123293(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068292(WO,A1)
【文献】特開2018-149803(JP,A)
【文献】特開2012-144645(JP,A)
【文献】特開2012-052066(JP,A)
【文献】特開2014-046483(JP,A)
【文献】特開2015-224340(JP,A)
【文献】特表2014-529637(JP,A)
【文献】特開2019-005992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/21
C09D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)
水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して0.1~10重量%の非光重合性樹脂と、
(B)
水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して30~70重量%の水溶性光重合性モノマーと、
(C)50~300nmの平均粒径を有する顔料と、
(D)水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して少なくとも25重量%の水と
を含有する、水性エネルギー硬化型インクジェットインクであって、
前記水溶性光重合性モノマー(B)が、(B1)モノエチレン性不飽和モノマーと(B2)ポリエチレン性不飽和モノマーとの混合物であ
り、
ポリエチレン性不飽和モノマー(B2)のモノエチレン性不飽和モノマー(B1)に対する重量比が0.45:1~5:1である、水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
【請求項2】
前記非光重合性樹脂(A)が、ポリビニルピロリドン、ポリ(2-オキサゾリン)、又はポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートハイブリッド分散体である、請求項1に記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
【請求項3】
前記非光重合性樹脂(A)が、4,000~6,000g/molの重量平均分子量を有する、請求項1又は2に記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
【請求項4】
前記非光重合性樹脂(A)が水溶性であり、ハンセン溶解度パラメータ(δ)が23.0~27.0MPa
1/2である、請求項1~3のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
【請求項5】
前記水溶性光重合性モノマー(B)が、(ポリ)アルキレングリコール官能基を含む、請求項1~
4のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
【請求項6】
前記顔料(C)がコーティングされていない、請求項1~
5のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
【請求項7】
前記顔料(C)が、水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して0.1~10重量%の量で存在する、請求項1~
6のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
【請求項8】
(D1)有機溶媒を更に含有する、請求項1~
7のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
【請求項9】
(E)界面活性剤を更に含有する、請求項1~
8のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
【請求項10】
(G)ワックスを更に含有する、請求項1~
9のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
【請求項11】
(H)シランを更に含む、請求項1~
10のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
【請求項12】
基材の上に印刷画像を形成する方法であって、
インクジェットプリントヘッドを用いて前記基材の上に請求項1~
11のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインクを塗布する工程と、
乾燥させる工程と、
次いで前記水性エネルギー硬化型インクジェットインクを硬化させる工程と
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性エネルギー硬化型インクジェットインクに関し、具体的には、(A)非光重合性樹脂、(B)水溶性光重合性モノマー、(C)平均粒径が50~300nmである顔料、及び(D)水を含有する水性エネルギー硬化型インクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で提供される「背景技術」の説明は、本開示の文脈を一般的に提示することを目的とする。この背景技術の項に記載されている範囲での本発明者らの研究、及び出願時に従来技術とみなされない可能性がある説明の態様は、本発明に対する従来技術として明示的にも暗示的にも認められない。
【0003】
揮発性有機化合物(VOC)が配合されたインクは蒸気を放出し、環境を汚染する可能性がある。この問題及び他の問題の結果として、環境に優しいインクを調製することに関する努力は、水性インクに向かってシフトしている。従来、このような水性インクは、水性ポリマーバインダー(典型的にはアクリルラテックス)と顔料(又は着色剤)の水中分散体とのブレンドから製造される。次いで、これらのインクからの水の蒸発は、フィルム残留物を形成する。しかしながら、水性インクの乾燥は遅いプロセスであり、包装及びラベル付けに使用される薄いプラスチックフィルムへの接着は困難である。
【0004】
そのような薄いプラスチックフィルム上での接着を改善するために、インクは、エネルギー硬化型(例えば、UV/EB)成分を用いて配合されてもよい(例えば、特許文献1及び特許文献2-それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。しかしながら、エネルギー硬化型成分の含有量が高すぎるインクは、一旦硬化すると、高度の収縮のために薄いプラスチックフィルムのしわ及び表面欠陥を引き起こす可能性がある。更に、接着性を改善しようとする試みにおけるそのような薄いプラスチックフィルムの表面処理はまた、表面欠陥をもたらす可能性がある。このようなしわ/表面欠陥は、接着性及び画像印刷品質に悪影響を及ぼす。
【0005】
エネルギー硬化型(例えば、UV/EB)成分を用いて配合された硬化インクに関して、硬化速度と得られる印刷画像の柔軟性との間にはトレードオフが存在し、所望の速硬化エネルギー硬化型成分は、許容できない柔軟性を有する印刷画像をもたらす(印刷画像は剛性が高すぎ、曲げられたときに亀裂が入る)。
【0006】
したがって、水性エネルギー硬化型インクジェットインクにおいて、許容可能な(1)乾燥速度、(2)印刷品質(収縮表面欠陥に関連する)、(3)接着性、(4)硬化速度、及び(5)印刷画像柔軟性の間でバランスをとることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2013/0050366号明細書
【文献】特開第2012-097191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に鑑みて、印刷品質、接着性、及び印刷画像の柔軟性を犠牲にすることなく、速い乾燥及び硬化速度を提供することができる水性インクジェットインクが必要とされている。
【0009】
したがって、本開示の1つの目的は、これらの基準を満たす新規な水性エネルギー硬化型インクジェットインクを提供することである。
【0010】
本開示の別の目的は、前記水性エネルギー硬化型インクジェットインクの乾燥及び硬化形態を含む新規な印刷物を提供することである。
【0011】
本開示の別の目的は、基材上に前記水性エネルギー硬化型インクジェットインクを塗布し、乾燥させ、次いで硬化させることによって、基材上に印刷画像を形成する新規な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これら及び他の目的は、以下の詳細な説明の中で明らかになるであろうが、(A)非光重合性樹脂、(B)水溶性光重合性モノマー、及び(C)50~300nmの平均粒径を有する顔料の(D)水中での組み合わせが、印刷された画像品質、接着性、又は柔軟性に悪影響を及ぼすことなく、速乾性及び硬化性インクを提供するという本発明者らの発見によって達成された。
【0013】
したがって、本発明は以下のものを提供する。
(1)(A)非光重合性樹脂と、
(B)水溶性光重合性モノマーと、
(C)50~300nmの平均粒径を有する顔料と、
(D)水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して少なくとも25重量%の水と
を含有する、水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
(2)前記非光重合性樹脂(A)が、ポリビニルピロリドン、ポリ(2-オキサゾリン)、又はポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートハイブリッド分散体である、(1)に記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
(3)前記非光重合性樹脂(A)が、4,000~6,000g/molの重量平均分子量を有する、(1)又は(2)に記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
(4)前記非光重合性樹脂(A)が水溶性であり、ハンセン溶解度パラメータ(δ)が23.0~27.0MPa1/2である、(1)~(3)のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
(5)前記非光重合性樹脂(A)が、水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して0.1~10重量%の量で存在する、(1)~(4)のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
(6)前記水溶性光重合性モノマー(B)が、水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して30~70重量%の量で存在する、(1)~(5)のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
(7)前記水溶性光重合性モノマー(B)が、(ポリ)アルキレングリコール官能基を含む、(1)~(6)のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
(8)前記水溶性光重合性モノマー(B)が、(B2)ポリエチレン性不飽和モノマー、又は(B1)モノエチレン性不飽和モノマーと(B2)ポリエチレン性不飽和モノマーとの混合物である、(1)~(7)のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
(9)前記顔料(C)がコーティングされていない、(1)~(8)のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
(10)前記顔料(C)が、水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して0.1~10重量%の量で存在する、(1)~(9)のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
(11)(D1)有機溶媒を更に含有する、(1)~(10)のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
(12)(E)界面活性剤を更に含有する、(1)~(11)のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
(13)(F)光開始剤を更に含有する、(1)~(12)のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
(14)(F)光開始剤を実質的に含まない、(1)~(12)のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
(15)(G)ワックスを更に含有する、(1)~(14)のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
(16)前記ワックス(G)がポリオレフィンワックスである、(15)に記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
(17)(H)シランを更に含有する、(1)~(16)のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインク。
(18)基材と、前記基材上に配置された(1)~(17)のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインクの乾燥及び硬化形態とを含む、印刷物。
(19)基材上に印刷画像を形成する方法であって、
インクジェットプリントヘッドを用いて前記基材上に(1)~(17)のいずれかに記載の水性エネルギー硬化型インクジェットインクを塗布する工程と、
乾燥させる工程と、
次いで水性エネルギー硬化型インクジェットインクを硬化させる工程と
を含む、方法。
(20)前記水性エネルギー硬化型インクジェットインクが、50~70℃の乾燥温度で1~2分間乾燥され、それにより、前記基材に塗布された前記水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して、少なくとも25重量%の前記水性エネルギー硬化型インクジェットインクの重量損失がもたらされる、(19)に記載の方法。
【0014】
前述の段落は、一般的な紹介のために提供されたものであり、以下の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。記載された実施形態は、更なる利点とともに、以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明では、他の実施形態が利用されてもよく、本明細書に開示される本実施形態の範囲から逸脱することなく、構造的及び動作的変更が行われてもよいことを理解されたい。
【0016】
「硬化性」及び「光重合性」という用語は、化学線、加速粒子線、及び熱エネルギー、例えば、紫外線(UV)エネルギー、スペクトルの可視領域からの放射線、赤外線(IR)エネルギー、電子ビーム(EB)エネルギー、熱エネルギー、又は他のエネルギー源等の好適な硬化刺激(エネルギー源)に応答して重合、硬化、及び/又は架橋する材料/組成物の能力を説明するものである。「エネルギー硬化型」という用語は、上記のもの等のエネルギー源への曝露による全ての形態の硬化を包含することを意図しており、具体的には紫外線(UV)エネルギー及び電子ビーム(EB)エネルギーが挙げられる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「硬化された(cured)」という用語は、組成物中に存在する硬化性/光重合性成分が、(1)化学結合、(2)機械的結合、又は(3)化学結合と機械的結合との組み合わせの形成を介して重合、架橋、及び/又は硬化を受けて、重合又は架橋ネットワークを形成する組成物を指す。「硬化された」という用語は、組成物中に存在する硬化性/光重合性官能基の50重量%未満、又は40重量%未満、又は30重量%未満、又は20重量%未満、又は10重量%未満、又は5重量%未満が重合及び/又は架橋されている「部分的に硬化された」組成物と、組成物中に存在する硬化性/光重合性官能基の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、更により好ましくは少なくとも95重量%、なお更により好ましくは少なくとも99重量%が重合及び/又は架橋されている「完全に硬化された」組成物の両方を含むことを意図する。上記の硬化の程度は、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いて反応したエチレン性不飽和基のパーセントを測定することによって定量化することができる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「エチレン性不飽和」とは、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニル、アリル等の硬化性/光重合性であるC=Cを含有する基を指す。このようなエチレン性不飽和基は、モノマー、オリゴマー及び/又はポリマーとして分類される材料中に存在してもよく、ここで、「モノマー」は、その分子が一緒に結合してオリゴマー又はポリマーを形成し得る化合物であり、「オリゴマー」は、比較的少ない繰り返し構造単位(すなわち、2、3又は4繰り返し単位)を含むポリマー化合物であり、そして「ポリマー」は、多くの繰り返し構造単位(すなわち、5以上の繰り返し単位)から構成される大きな分子又は巨大分子を指す。アルコキシル化化合物は、オリゴマー又はポリマーの定義から除外され、本明細書では別段の指示がない限りモノマーと見なされる。例えば、エトキシル化(15)トリメチロールプロパントリアクリレートは、本明細書ではモノマーと見なされる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「モノエチレン性不飽和」は、1分子当たり1つのエチレン性不飽和基を有する化合物/成分を指し、一方、「ポリエチレン性不飽和」は、1分子当たり2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8つ等)のエチレン性不飽和基を有する化合物/成分を指す。例えば、「モノエチレン性不飽和モノマー」は、硬化刺激に曝露されたときに硬化に関与し得る1つのエチレン性不飽和基を含有するモノマー材料を指す。
【0020】
「(メタ)アクリレート」という用語は、本明細書では、アクリレート基及びメタクリレート基の両方を指すために使用される。言い換えれば、この用語は、「メタ」が任意選択であると読まれるべきである。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリル酸系化合物及びアクリル酸エステル系化合物の両方を総称して用いるものとする。
【0021】
本明細書で使用される場合、「アルコキシル化」又は「アルコキシレート」は、2~4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキレンオキシドとの反応、そのオリゴマー化、又はその重合から誘導される(ポリ)エーテル基(すなわち、(ポリ)アルキレングリコール)を含有する化合物を指し、具体的には、エトキシル化化合物(エチレンオキシド(EO)との反応から誘導される(ポリ)エチレングリコール含有化合物)、プロポキシル化化合物(プロピレンオキシド(PO)との反応から誘導される(ポリ)プロピレングリコール含有化合物)、及びブトキシル化化合物(ブチレンオキシド(BO)との反応から誘導される(ポリ)ブチレングリコール含有化合物)、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
本明細書において様々なインク/組成物に言及する場合、「実質的に含まない」という語句は、特に明記しない限り、インク/組成物中に存在する特定の成分(例えば、光開始剤)の量が、インク/組成物の総重量に対して、約1重量%未満、好ましくは約0.5重量%未満、より好ましくは約0.1重量%未満、更により好ましくは約0.05重量%未満、なお更により好ましくは0重量%であることを表す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「任意選択の」又は「任意選択に」という用語は、続いて記載される事象が起こり得るかもしくは起こり得ないか、又は続いて記載される成分が存在し得るかもしくは存在し得ない(例えば、0重量%)ことを意味する。
【0024】
特に明記しない限り、「水溶性」は、水中で自由に可溶性/混和性である化合物/成分を含む、25℃の水中で50g/L以上(≧5重量%)の溶解度を有する化合物/成分を指し、一方、「水不溶性」は、25℃の水中で50g/L未満(<5重量%)の溶解度を有する化合物/成分を指す。
【0025】
(水性エネルギー硬化型インクジェットインク)
本開示は、許容可能な(1)乾燥速度、(2)印刷品質、(3)接着性、(4)硬化速度、及び(5)印刷画像柔軟性を有する/提供する水性エネルギー硬化型インクジェットインクに関する。
【0026】
本開示の水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、一般に、以下の成分:(A)非光重合性樹脂、(B)水溶性光重合性モノマー、(C)50~300nmの平均粒径を有する顔料、及び(D)水を含有し、必要に応じて(D1)有機溶媒、(E)界面活性剤、(F)光開始剤、(G)ワックス、(H)シラン、及び(I)添加剤(例えば、蛍光増白剤、安定剤、セキュリティタガント等)を含有する。
【0027】
[(A)非光重合性樹脂]
開示される水性エネルギー硬化型インクジェットインクに使用される樹脂は、ホモポリマー又はコポリマーのいずれかのポリマー化合物であり、それら自体は非光重合性であり、したがって、乾燥したとき又はエネルギー(硬化)源(例えば、UV又はEB源)に曝されたときにいかなる化学変化も受けない。したがって、光重合性樹脂とは異なり、非光重合性樹脂(A)は、エネルギー源に曝されたときに収縮することなくフィルム形成をもたらす。このように、非光重合性樹脂(A)の使用は、望ましい接着性及び印刷品質結果を有する水性エネルギー硬化型インクジェットインクを提供する。
【0028】
非光重合性樹脂(A)は、水性エネルギー硬化型インクジェットインク中に、水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して、10重量%まで、例えば少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも1重量%、更により好ましくは少なくとも1.5重量%、なお更により好ましくは少なくとも1.6重量%、及び10重量%まで、好ましくは8重量%まで、好ましくは6重量%まで、より好ましくは4重量%まで、更により好ましくは2重量%まで、なお更により好ましくは1.8重量%までの量で存在し得る。
【0029】
開示される水性エネルギー硬化型インクジェットインクにおける使用に好適な非光重合性樹脂(A)は、7,000g/molまでの比較的低い重量平均分子量、例えば、少なくとも3,000g/mol、好ましくは少なくとも3,200g/mol、好ましくは少なくとも3,400g/mol、好ましくは少なくとも3,600g/mol、好ましくは少なくとも3,800g/mol、好ましくは少なくとも4,000g/mol、及び7,000g/molまで、好ましくは6,800g/molまで、好ましくは6,600g/molまで、好ましくは6,400g/molまで、好ましくは6,200g/molまで、好ましくは6,000g/molまでの重量平均分子量を有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、非光重合性樹脂(A)は水溶性である。例えば、非光重合性樹脂(A)は、25℃における水への溶解度が少なくとも50g/L、好ましくは少なくとも75g/L、好ましくは少なくとも100g/L、好ましくは少なくとも150g/L、好ましくは少なくとも200g/L、好ましくは少なくとも250g/L、好ましくは少なくとも300g/L、好ましくは少なくとも350g/L、より好ましくは少なくとも400g/L、更により好ましくは少なくとも450g/L、なお更により好ましくは少なくとも500g/Lであってもよい。いくつかの実施形態では、非光重合性樹脂(A)は、少なくとも23.0、好ましくは少なくとも23.5、好ましくは少なくとも24.0、好ましくは少なくとも24.5、好ましくは少なくとも25.0、及び27.0まで、好ましくは26.5まで、好ましくは26.0まで、好ましくは25.5までのハンセン溶解度パラメータ(MPa1/2の単位でのδ)を有する。
【0031】
水溶性である非光重合性樹脂(A)に関しては、複素環式モノマーの重合から形成されるものが具体的に挙げられる。非光重合性樹脂(A)は、光重合性基を含有する複素環式モノマーの重合から形成されてもよく、ここで、光重合性基は重合され、複素環は重合後に無傷のままである(すなわち、非光重合性樹脂は、繰り返し複素環式単位を含有し、その中に残りの光重合性基は存在しない)、又は非光重合性樹脂(A)は、複素環式モノマーの開環重合から形成されてもよく、ここで、非光重合性樹脂は、繰り返し複素環式単位を実質的に含まない。複素環式モノマーは、4員、5員、6員又は7員の単環式複素環、好ましくは5員の複素環を含有してもよく、これは飽和、部分不飽和又は完全不飽和であってもよく、炭素原子並びに窒素(N)、酸素(O)及び硫黄(S)からなる群から独立して選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子を含有してもよい。好ましくは、非光重合性樹脂(A)は、2個のヘテロ原子、好ましくはO及び/又はN、より好ましくは1個がNであり1個がOである2個のヘテロ原子を含有する複素環式モノマーの重合から形成される。好ましい実施形態において、非光重合性樹脂(A)は、ポリビニルピロリドン及び/又はポリ(2-オキサゾリン)である。
【0032】
<ポリビニルピロリドン>
いくつかの実施形態において、非光重合性樹脂(A)は、ポリビニルピロリドン(PVP)のホモポリマーであり、具体的には、Ashlandから入手可能なPVP K-12が挙げられる。ポリビニルピロリドンの低分子量(例えば、3,000~7,000g/mol)コポリマーも本明細書で使用することができ、これには、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ビニルピロリドン/ビニルカプロラクタムコポリマー、及びビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチルコポリマー等のビニルピロリドン/(メタ)アクリレートコポリマーを含むが、これらに限定されない。
【0033】
<ポリ(2-オキサゾリン)>
いくつかの実施形態において、非光重合性樹脂(A)は、ポリ(2-オキサゾリン)であり、これは2-オキサゾリンのリビングカチオン開環重合から形成され得る。好ましくは、ポリ(2-オキサゾリン)は、(2-アルキル-2-オキサゾリンの開環から調製される)ポリ(2-アルキル-2-オキサゾリン)であり、ここで、アルキル基は、水素、及び少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個の炭素原子から、6個まで、好ましくは5個まで、より好ましくは4個までの炭素原子のいずれかから構成される。ポリ(2-アルキル-2-オキサゾリン)のアルキル基の例としては、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、及びシクロプロピル、好ましくはメチル及びエチルを挙げることができるが、これらに限定されない。本明細書で有用なポリ(2-オキサゾリン)は、様々なα-末端基(リビングカチオン開環重合を開始することから形成されるもの)及びω-末端基(リビングカチオン開環重合を停止させる基)を含有し得る。例えば、ポリ(2-オキサゾリン)は、水素、メチル、アリル、プロパルギル、及びベンジルを含むがこれらに限定されないα-末端基、並びにヒドロキシ、非置換アミノ基(-NH2)及び置換アミノ基(例えば、2-ヒドロキシエチルアミン、ピペラジン等)を含むアミノ、アジド、及びチオール(-SH)を含むがこれらに限定されないω-末端基を有し得る。好ましい実施形態において、ポリ(2-オキサゾリン)は、上記の末端基の任意の組み合わせを含むポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)又はポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)であり、より好ましくは、水素α-末端基及びヒドロキシω-末端基を含むポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)又はポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)である。Polymer Chemistry Innovations,Inc.から入手可能な5,000g/molの目標分子量を有するポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)であるAQUAZOL 5、及びAVROXAから入手可能な低分子ULTROXA製品は、開示される水性エネルギー硬化型インクジェットインクにおいて有用なポリ(2-オキサゾリン)の具体例である。
【0034】
あるいは、非光重合性樹脂(A)は、水分散性であってもよい。いくつかの実施形態では、非光重合性樹脂(A)は、ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートハイブリッド分散体である。ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートハイブリッド分散体は、水性ポリウレタン及びポリ(メタ)アクリレート分散体(エマルジョン)を最初に独立して調製し、次いで機械的混合下で一緒に混合する物理的方法によって調製することができる。あるいは、ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートハイブリッド分散体は、ポリウレタン分散体を最初に調製し、次いで(メタ)アクリレート(及び任意選択に他のビニルモノマー)をポリウレタン分散体中で重合させる化学的方法に従って調製することができ、場合によっては、ポリウレタンが種粒子として作用し、(メタ)アクリレート(及び任意選択に他のビニルモノマー)がポリウレタン粒子内で重合されるコア-シェル乳化重合である。
【0035】
ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートハイブリッド分散体のポリウレタン部分は、以下の(i)と(ii)との反応から形成される複数のウレタン基(-O-C(O)-NH-)を含有するポリマー又はオリゴマー(プレポリマー)であってもよい。
(i)脂肪族、脂環式及び/又は芳香族ポリイソシアネート等の適切なポリイソシアネート(少なくとも2つのイソシアネート官能基を含有する有機化合物)であって、具体的には、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、3(4)-イソシアナトメチル-メチルシクロヘキシルイソシアネート(IMCI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(2,2,4及び/又は2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネート)、ビス(4,4′-イソシアナト-シクロヘキシル)メタン(H12MDI)、ビス(イソシアネート-メチル)-メチルシクロヘキサン、1,8-ジイソシアナトオクタン、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-及び/又は2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,4′-及び/又は4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリフェニルメタン-4,4′,4″-トリイソシアネート等;及び
(ii)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオール(例えば、1,2-、1,3-、1,4-ブタンジオール)、ペンタンジオール(例えば、1,5-ペンタンジオール)、ヘキサンジオール(例えば、1,6-ヘキサンジオール)、グリセリン、1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジ(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ペンタントリオール(例えば、1,2,5-ペンタントリオール)、ヘキサントリオール(例えば、1,2,6-ヘキサントリオール)、ネオペンチルグリコール、マンニトール、ソルビトール、グルコース、フルクトース、マンノース、スクロース、特殊ポリオール(例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリスルフィドポリオール等)等の適切なポリオール、及び上記ポリオールのいずれかのアルコキシル化付加物。
【0036】
当業者によく知られているように、ポリウレタンは、ウレタン基に加えて、尿素、アロファネート、ビウレット、カルボジイミド、オキサゾリジニル、イソシアヌレート、ウレトジオン、エーテル、エステル、カーボネート等の追加の基を含有することができる。
【0037】
ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートハイブリッド分散体のポリ(メタ)アクリレート部分は、アルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等)及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の水酸基を含有するものを含む)等の1つ以上の(メタ)アクリレートの重合から形成され得る。このようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、ポリオール(ジオール、トリオール等)(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサンジオール、ペンタエリスリトール等)と(メタ)アクリル酸とを、得られる生成物が1つ以上の水酸基を含むような量で反応させることによって調製され得る。具体的な例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及び上記のいずれかのアルコキシル化付加物が挙げられるが、これらに限定されない。上記の(メタ)アクリレートモノマーのコポリマーもまた、本明細書に現れる「ポリ(メタ)アクリレート」という用語に含まれる。水性エネルギー硬化型インクジェットインクにおいて有用なポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートハイブリッド分散体を提供するための(メタ)アクリレートモノマーの重合は、当業者に公知の任意の重合技術によって達成され得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル)から作製される樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂(アクリル樹脂)、ポリ(メタ)アクリルアミド樹脂、ポリ(酢酸ビニル)樹脂、水溶性エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びこれらの任意のブレンド又はコポリマーから作製される樹脂(上記の1つ以上と列挙されていない別のポリマータイプとから形成される任意のブレンド又はコポリマーを含む)、並びにこれらのエマルジョン又は分散体を実質的に含まない。このような樹脂の具体例としては、BASFから入手可能な8,500g/molの重量平均分子重量を有するアクリル樹脂であるJONCRYL 678、Celaneseから入手可能なアクリルエマルジョンであるAVICOR 2550、Unitikaから入手可能なポリオレフィンエマルジョンであるUNITIKA YA-4010及びUNITIKA SE-1030N、BASFから入手可能なアクリルコポリマーであるDISPEX GA40、並びにIndulorから入手可能なスチレン及びアクリレートに基づくエマルジョンポリマーであるINDUPRINT SE 245が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
いくつかの実施態様において、水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、ポリビニルピロリドンホモポリマーPVP K-15、PVP K-30、PVP K-60、PVP K-85、PVP K-90、及びPVP K-120(それぞれAshlandから入手可能);LUVITEC VA 64P、LUVITEC VA 6535P、及びLUVISKOL VA37E(それぞれBASFから入手可能)、PVP/VA E-535、PVP/VA I-335、PVP/VA W-635、及びPVP/VA W-735(それぞれAshlandから入手可能)等のビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー;BASFから入手可能なLUVITEC VPC 55K 65W等のビニルピロリドン/ビニルカプロラクタムコポリマー;ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、例えばAshlandから入手可能なSOREZ HS-205等のビニルピロリドン/(メタ)アクリレートコポリマー;並びにPolymer Chemistry Innovations, Inc.から入手可能なAQUAZOL 50、AQUAZOL 200、及びAQUAZOL 500等の中~高分子量のポリ(2-オキサゾリン)等の中~高分子量(例えば、>7,000g/mol)の非光重合性樹脂を実質的に含まない。例えば、アクリルホモポリマー、アクリルコポリマー(例えば、アクリル/スチレンコポリマー)、アクリルエマルジョン等のアクリル樹脂;ポリオレフィンエマルジョン等のポリオレフィン樹脂;及び、上記のような他の中~高分子量の非光重合性樹脂は、安定ではない水性エネルギー硬化型インクジェットインクを形成する傾向であることが見いだされている。
【0040】
好ましい実施形態では、本開示の水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、光重合性樹脂、すなわち、光重合性基を含有し、したがって硬化源に供されたときに化学変化(すなわち、重合、架橋等)を受けるポリマー化合物を実質的に含まない。例えば、光重合性樹脂としては、エネルギー硬化型ポリウレタン、例えば(メタ)アクリル化ポリウレタン分散体、例えばポリイソシアネート、ポリオール、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのウレタン化から調製されるものが挙げられるが、これらに限定されず、特許文献2公報及び欧州特許出願公開第2,703,459号明細書(それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されており、具体的にはUCECOAT 2801、UCECOAT 2804、UCECOAT 6558、UCECOAT 7177、UCECOAT 7655、UCECOAT 7710(それぞれAllnexから入手可能)、NEORAD R441(Fitz Chem LLC.から入手可能)、及びBAYHYDROL UV2317(Covestroから入手可能)が挙げられる。
【0041】
[(B)水溶性光重合性モノマー]
水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、それが水溶性である限り、すなわち、25℃における水への溶解度が少なくとも50g/L、好ましくは少なくとも55g/L、好ましくは少なくとも60g/L、好ましくは少なくとも65g/L、好ましくは少なくとも70g/L、好ましくは少なくとも75g/L、好ましくは少なくとも80g/L、好ましくは少なくとも85g/L、好ましくは少なくとも90g/L、好ましくは少なくとも95g/L、好ましくは少なくとも100g/L、好ましくは少なくとも150g/L、好ましくは少なくとも200g/L、好ましくは少なくとも250g/L、好ましくは少なくとも300g/L、好ましくは少なくとも350g/L、より好ましくは少なくとも400g/L、更により好ましくは少なくとも450g/L、なお更により好ましくは少なくとも500g/Lである限り、任意の光重合性モノマーを用いて配合され得る。
【0042】
水性エネルギー硬化型インクジェットインク中に存在する水溶性光重合性モノマー(B)の総量は、水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して、少なくとも30重量%から、好ましくは少なくとも32重量%、好ましくは少なくとも34重量%、好ましくは少なくとも36重量%、好ましくは少なくとも38重量%、より好ましくは少なくとも40重量%、更により好ましくは少なくとも42重量%、なお更により好ましくは少なくとも44重量%、及び70重量%まで、好ましくは68重量%まで、好ましくは66重量%まで、好ましくは64重量%まで、好ましくは62重量%まで、好ましくは60重量%まで、好ましくは58重量%まで、より好ましくは56重量%まで、更により好ましくは54重量%まで、なお更により好ましくは52重量%までのいずれかであり得る。
【0043】
水溶性光重合性モノマー(B)は、(B1)モノエチレン性不飽和モノマー、(B2)ポリエチレン性不飽和モノマー(ジエチレン性不飽和、トリエチレン性不飽和等)、又はそれらの混合物であってもよく、好ましくは、水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、ポリエチレン性不飽和モノマー(B2)又はモノエチレン性不飽和モノマー(B1)とポリエチレン性不飽和モノマー(B2)との混合物を用いて配合される。安定性の観点から、本明細書で利用される水溶性光重合性モノマー(B)は、(ポリ)エーテル官能基(すなわち、(ポリ)アルキレングリコール官能基)、好ましくは(ポリ)エチレングリコール官能基を含有することが好ましい。
【0044】
モノエチレン性不飽和モノマー(B1)は、単一のエチレン性不飽和(光重合性)基を含有するモノマーであり、エチレン性不飽和基は、例えば、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、又はアリル基である。好ましい実施形態において、モノエチレン性不飽和モノマー(B1)は、モノ(メタ)アクリレートモノマーである。水溶性であり、本明細書中で利用され得るモノエチレン性不飽和モノマー(B1)の適切な例としては、ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート);(ポリ)アルキレングリコール官能基、好ましくは(ポリ)エチレングリコール官能基を含有するモノ(メタ)アクリレート(例えば、少なくとも2モル当量、好ましくは少なくとも4モル当量、好ましくは少なくとも6モル当量、好ましくは少なくとも8モル当量、より好ましくは少なくとも10モル当量、更により好ましくは少なくとも20モル当量、なお更により好ましくは少なくとも40モル当量の反応形態のアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド)、及び600モル当量まで、好ましくは550モル当量まで、好ましくは500モル当量まで、好ましくは400モル当量まで、好ましくは300モル当量まで、好ましくは200モル当量まで、より好ましくは100モル当量まで、更により好ましくは80モル当量まで、なお更により好ましくは60モル当量までの反応形態のアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド)を含有するもの)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
モノエチレン性不飽和モノマー(B1)の具体例としては、ジエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(例えば、CD545)、メトキシポリエチレングリコール(550)モノアクリレートモノマー(例えば、CD553)、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート(例えば、CD611)、トリエチレングリコールエチルエーテルメタクリレート(例えば、CD730)、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート(例えば、SR256)、メトキシポリエチレングリコール(350)モノメタクリレート(例えば、SR550)、及びメトキシポリエチレングリコール(350)モノアクリレート(例えば、SR551)が挙げられ、それぞれSartomer Co.Inc.から入手可能であり、これらの2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。好ましいモノエチレン性不飽和モノマー(B1)は、Sartomer Co.Inc.から入手可能なメトキシポリエチレングリコール(350)モノアクリレート(例えば、SR551)である。
【0046】
好ましい実施形態において、水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、モノエチレン性不飽和モノマー(B1)を、水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも12重量%、より好ましくは少なくとも14重量%、更により好ましくは少なくとも16重量%、なお更により好ましくは少なくとも18重量%、及び30重量%まで、好ましくは28重量%まで、好ましくは26重量%まで、より好ましくは24重量%まで、更により好ましくは22重量%まで、なお更により好ましくは20重量%までの量で含有する。
【0047】
ポリエチレン性不飽和モノマー(B2)は、ジエチレン性不飽和モノマー、トリエチレン性不飽和モノマー、又はそれ以上のエチレン性不飽和化合物(例えば、テトラ-、ペンタ-等のエチレン性不飽和モノマー)であってよく、エチレン性不飽和(光重合性)基は、例えば、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、アリル基、又はこれらの混合物である。好ましくは、ポリエチレン性不飽和モノマー(B2)は、少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含有し、より好ましくは全てのエチレン性不飽和基が(メタ)アクリレート基であり、更により好ましくは全てのエチレン性不飽和基がアクリレート基である。
【0048】
いくつかの実施形態では、ポリエチレン性不飽和モノマー(B2)は、ポリオールの水酸基のうちの2つ、3つ、4つ、又はそれ以上が光重合性基(例えば、(メタ)アクリレート官能基)で官能化されているポリオールをベースにしていてもよい。例示的なポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオール(例えば、1,2-、1,3-、1,4-ブタンジオール)、ペンタンジオール(例えば、1,5-ペンタンジオール)、ヘキサンジオール(例えば、1,6-ヘキサンジオール)、グリセリン、1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジ(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ペンタントリオール(例えば、1,2,5-ペンタントリオール)、ヘキサントリオール(例えば、1,2,6-ヘキサントリオール)、ネオペンチルグリコール、マンニトール、ソルビトール、グルコース、フルクトース、マンノース、スクロース、及び上記ポリオールのいずれかのアルコキシル化付加物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、ポリエチレン性不飽和モノマー(B2)は、(ポリ)エーテル官能基(すなわち、(ポリ)アルキレングリコール官能基)、好ましくは(ポリ)エチレングリコール官能基を含有し、例えば、少なくとも2モル当量、好ましくは少なくとも5モル当量、好ましくは少なくとも10モル当量、好ましくは少なくとも20モル当量、より好ましくは少なくとも40モル当量、更により好ましくは少なくとも60モル当量、なお更により好ましくは少なくとも80モル当量のアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド)を反応形態で含有し、1,000モル当量まで、好ましくは900モル当量まで、好ましくは800モル当量まで、好ましくは700モル当量まで、好ましくは600モル当量まで、好ましくは500モル当量まで、好ましくは400モル当量まで、より好ましくは300モル当量まで、更により好ましくは200モル当量まで、なお更により好ましくは100モル当量までのアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド)を反応形態で含有するものである。
【0049】
水溶性であり、本明細書で利用することができるジエチレン性不飽和モノマーの好適な例としては、Sigma-Aldrichから入手可能なテトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート(例えば、SR344)、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート(例えば、SR610)、ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート(例えば、SR252)、及びポリエチレングリコール(1000)ジメタクリレート(例えば、SR740A)(それぞれSartomer Co.Inc.から入手可能)が挙げられ、これらの2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0050】
水溶性であり、本明細書で利用することができるトリエチレン性不飽和モノマーの好適な例としては、エトキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、SR499)、エトキシル化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、SR9035)、及びエトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、SR415)(それぞれSartomer Co.Inc.から入手可能)、好ましくはエトキシル化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、SR9035)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
好ましい実施形態では、水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、ポリエチレン性不飽和モノマー(B2)、好ましくはトリエチレン性不飽和モノマーを、例えば、水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも22重量%、好ましくは少なくとも24重量%、より好ましくは少なくとも26重量%、更により好ましくは少なくとも27重量%、なお更により好ましくは少なくとも28重量%、及び40重量%まで、好ましくは38重量%まで、より好ましくは36重量%まで、更により好ましくは34重量%まで、なお更により好ましくは32重量%までの量で含有する。
【0052】
印刷画像の柔軟性と硬化速度との望ましいバランスのために、水溶性光重合性モノマー(B)は、好ましくは、モノエチレン性不飽和モノマー(B1)とポリエチレン性不飽和モノマー(B2)との混合物である。いくつかの実施形態では、ポリエチレン性不飽和モノマー(B2)のモノエチレン性不飽和モノマー(B1)に対する重量比は、少なくとも0.45:1、好ましくは少なくとも0.5:1、好ましくは少なくとも0.6:1、好ましくは少なくとも0.7:1、好ましくは少なくとも0.8:1、好ましくは少なくとも0.9:1、好ましくは少なくとも1:1、好ましくは少なくとも1.1:1、好ましくは少なくとも1.2:1、より好ましくは少なくとも1.3:1、更により好ましくは少なくとも1.4:1、なお更により好ましくは少なくとも1.5:1であり、5:1まで、好ましくは4:1まで、より好ましくは3:1まで、更により好ましくは2:1まで、なお更により好ましくは1.6:1までである。好ましい実施形態では、ポリエチレン性不飽和モノマー(B2)は、モノエチレン性不飽和モノマー(B1)よりも多い量で存在する。
【0053】
水不溶性光重合性モノマー及び/又は光重合性オリゴマー(水溶性又は水不溶性のいずれか)の含有が許容される場合もあるが、好ましい実施形態では、水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、水不溶性光重合性モノマー、光重合性オリゴマー(水溶性又は水不溶性のいずれか)、又はその両方を実質的に含まない。
【0054】
[(C)顔料]
開示される水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、1種以上の顔料を適切に選択することによって、任意の所望の色を有するように配合することができる。水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、いかなる特定の色にも限定されず、許容される色としては、シアン、マゼンタ、イエロー、及びキー(ブラック)(「CMYK」)、白(純白、卵殻、クリーム、象牙色等の様々な色調の白を含む)、赤、青、オレンジ、緑、ライトシアン、ライトマゼンタ、及びバイオレットが挙げられるが、これらに限定されないことは、当業者には容易に理解されるはずである。一般に、顔料は、水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも1重量%、更により好ましくは少なくとも2重量%、なお更により好ましくは少なくとも3重量%、及び20重量%まで、好ましくは15重量%まで、より好ましくは10重量%まで、更により好ましくは8重量%まで、なお更により好ましくは7重量%までの量で使用することができる。
【0055】
本明細書で利用される顔料は、一般に、印刷ノズル、毛管、又は印刷装置の他の構成要素を実質的に詰まらせることなく印刷ヘッドから確実に噴射され得るほど十分に小さく、かつ水性エネルギー硬化型インクジェットインクの粘度を許容できないレベルまで増加させないほど十分に大きいサイズのものである。顔料の許容可能な平均粒径は、少なくとも50nmから、好ましくは少なくとも60nm、好ましくは少なくとも70nm、好ましくは少なくとも80nm、好ましくは少なくとも85nm、好ましくは少なくとも90nm、好ましくは少なくとも100nm、好ましくは少なくとも120nm、好ましくは少なくとも140nm、より好ましくは少なくとも160nm、更により好ましくは少なくとも180nm、なお更により好ましくは少なくとも200nm、及び300nmまで、好ましくは280nmまで、より好ましくは260nmまで、更により好ましくは240nmまで、なお更により好ましくは220nmまでの範囲であってよい。例えば、白色顔料が利用される場合、白色顔料は典型的には200~300nmの平均粒径を有することができ、黒色又は有色顔料が利用される場合、黒色/有色顔料は典型的には100~200nmの平均粒径を有することができる。市販の顔料は、得られたままで使用されてもよく、又は所望の粒径仕様を満たすように粉砕及びふるい分けされてもよい。例えば、レーザー回折及び/又は走査型電子顕微鏡法を使用して、顔料の粒子サイズを測定することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用される顔料は、少なくとも40nm、好ましくは少なくとも50nm、より好ましくは少なくとも60nm、更により好ましくは少なくとも70nm、及び100nmまで、好ましくは90nmまで、より好ましくは80nmまで、更により好ましくは75nmまでのD10粒径(粒子の10%がより小さく、粒子の90%がより大きいサイズ)を有する。好ましい実施形態では、開示される水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、85nm未満、好ましくは80nm未満、好ましくは70nm未満、好ましくは60nm未満、好ましくは50nm未満、好ましくは45nm未満、より好ましくは40nm未満、更により好ましくは35nm未満、なお更により好ましくは30nm未満の粒径を有するいかなる顔料も含有しない。
【0057】
本開示の好ましい顔料はコーティングされておらず、例えば、樹脂等の有機コーティング、例えば、特許文献1(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている樹脂コーティング、又はシリカ、アルミナ、アルミナ-シリカ、ホウ酸、及びジルコニアコーティング等の無機コーティングでコーティングされていない顔料である。
【0058】
本明細書で使用することができる顔料の具体例としては、PALIOGEN Violet 5100(BASFから入手可能)、HELIOGEN Green L8730(BASFから入手可能)、SUNFAST Blue 15:3及び15:4(Sun Chemicalから入手可能)、LITHOL Fast Scarlet L4300(BASFから入手可能)、SUNBRITE orange、red、及びyellow pigment(Sun Chemicalから入手可能)、HELIOGEN Blue L6900(BASFから入手可能)、PALIOGEN Blue L6470(BASFから入手可能)、NOVO PERM Yellow FGL(Clariantから入手可能)、Ink Jet Yellow 4G(Clariantから入手可能)、及びCINQUASIA Magenta D4535(BASFから入手可能)等の着色顔料;PALIOGEN Black L0086(BASFから入手可能)、REGAL 330(Cabotから入手可能)、MOGUL L及びREGAL 400R(Cabotから入手可能)、及びカーボンブラックPBL 7(Cabotから入手可能)等の黒色顔料及びカーボンブラック;ピグメントホワイト1(水酸化炭酸鉛)、ピグメントホワイト3(硫酸鉛)、ピグメントホワイト4(酸化亜鉛)、ピグメントホワイト5(リトポン)、ピグメントホワイト6(二酸化チタン)、ピグメントホワイト7(硫化亜鉛)、ピグメントホワイト10(炭酸バリウム)、ピグメントホワイト11(三酸化アンチモン)、ピグメントホワイト12(酸化ジルコニウム)、ピグメントホワイト14(オキシ塩化ビスマス)、ピグメントホワイト17(次硝酸ビスマス)、ピグメントホワイト18(炭酸カルシウム)、ピグメントホワイト19(カオリン)、ピグメントホワイト21(硫酸バリウム)、ピグメントホワイト24(水酸化アルミニウム)、ピグメントホワイト25(硫酸カルシウム)、ピグメントホワイト27(二酸化ケイ素)、ピグメントホワイト28(メタケイ酸カルシウム)、及びピグメントホワイト32(リン酸亜鉛セメント)等の白色顔料;並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
[溶媒系]
水(D)は、開示される水性エネルギー硬化型インクジェットインク中に存在する。典型的には、水は、水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して、少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも27重量%、好ましくは少なくとも29重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、更により好ましくは少なくとも32重量%、なお更により好ましくは少なくとも34重量%、及び55重量%まで、好ましくは50重量%まで、好ましくは45重量%まで、好ましくは42重量%まで、より好ましくは40重量%まで、更により好ましくは38重量%まで、なお更により好ましくは36重量%までの量で存在する。水(D)は、本明細書の水性エネルギー硬化型インクジェットインクに使用される溶媒系の全て又は大部分を構成することが好ましい。
【0060】
水性エネルギー硬化型インクジェットインクには、相溶性有機溶媒(D1)を任意選択で使用することができる。1つ以上の有機溶媒(D1)を含有することは、特定の成分の溶媒和を助け、乾燥時間を改善する目的のために許容できる揮発性を有する水性エネルギー硬化型インクジェットインクを提供することができる。いくつかの実施形態では、有機溶媒(D1)は、水性エネルギー硬化型インクジェットインク中に、水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも1重量%、更により好ましくは少なくとも2重量%、なお更により好ましくは少なくとも3重量%、及び20重量%まで、好ましくは18重量%まで、好ましくは15重量%まで、より好ましくは13重量%まで、更により好ましくは11重量%まで、なお更により好ましくは10重量%までの量で存在する。
【0061】
有機溶媒(D1)の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
・メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等の1~8個の炭素原子を含有する低級アルコール;
・エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類;
・エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、及びジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のグリコールエーテル類;
・エーテル類(非グリコールエーテル類)、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、及びテトラヒドロフラン等の4~8個の炭素原子を含むエーテル;
・ケトン類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、3-ペンタノン、シクロヘキサノン及びジアセトンアルコールを含む3~6個の炭素原子を含むケトン類;
・3~8個の炭素原子を有するものを含むエステル、例えばメチルアセテート、エチルアセテート、n-ブチルアセテート、メチルラクテート、エチルラクテート、ブチルラクテート、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、エトキシプロピルアセテート;
・並びにそれらの混合物。
【0062】
好ましい実施形態では、有機溶媒(D1)が使用される場合、有機溶媒は、好ましくはグリコール、好ましくはプロピレングリコールである。
【0063】
[(E)界面活性剤]
本明細書の水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、必要に応じて、乾燥/硬化前に、例えば、インクの表面張力を低下させ、かつ/又は基材表面の湿潤及びレベリングを補助するために、界面活性剤(E)を任意選択で配合することができる。表面活性剤(E)を含有することは任意であるが、含有される場合、水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して、0.001重量%から、好ましくは0.005重量%から、より好ましくは0.1重量%から、更により好ましくは1重量%から、及び5重量%まで、好ましくは4重量%まで、好ましくは3重量%まで、より好ましくは2重量%まで、更により好ましくは1.5重量%までの量で使用される。
【0064】
界面活性剤(E)は、その疎水性及び親水性の両方によって選択することができ、水溶性であってもよいが、水溶性である必要はない。界面活性剤(E)は、任意選択で光重合性基を含み、架橋させるか、さもなければ硬化したインクネットワークの一部となることを可能にする。許容可能な界面活性剤(E)としては、ポリシロキサン、フッ素含有ポリマー、ジェミニ界面活性剤、及びこれらのコポリマー、これらの組み合わせ、並びに共有結合した2種以上の界面活性剤を含有するこれらの多官能性界面活性剤、例えば、上記の界面活性剤タイプの1種とポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテル等とから作製されるコポリマー又は多官能性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
具体的な例としては、Siltech Corporationから入手可能なSILTECH C-20、C-42、C-101、C-241、C-442、及びC-468、並びにByk Chemieから入手可能なBYK-333及び377等のポリエーテルシロキサンコポリマー;Siltech Corporationから入手可能なSILTECH C-32、並びにMomentiveから入手可能なCOATOSIL 1211C及び3573等の有機変性シリコーン(例えば、アルキル及び/又はアリール変性シリコーン);Evonik Industriesから入手可能なTEGO Rad 2100、Rad 2200、Rad 2250、Rad 2300、並びにByk Chemieから入手可能なBYK-UV 3500及び3530等の光架橋性シリコーンアクリレート又はシリコーンポリエーテルアクリレート;Byk Chemieから入手可能なBYK-381及び361N等のポリアクリレート;3M Corporationから入手可能なFC-4430及びFC-4432等のフルオロポリマー;Evonik Industriesから入手可能なSURFYNOL及びDYNOL界面活性剤等のアセチレンジオール及びアセチレングリコール系ジェミニ界面活性剤;Evonik Industriesから入手可能なTEGO Twin 4100等のポリシロキサン系ジェミニ界面活性剤;並びにこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0066】
好ましい実施形態において、界面活性剤(E)は、ジェミニ界面活性剤、好ましくはシロキサン系ジェミニ界面活性剤であり、具体的にはEvonik Industriesから入手可能なTEGO Twin 4100が挙げられる。
【0067】
[(F)光開始剤]
水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、任意選択で、加速粒子放射線による硬化(例えば、電子ビーム硬化)のために配合することができ、したがって、光開始剤の使用は必要とされない。EB硬化等の加速粒子硬化刺激で硬化されるように設計された場合、水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、光開始剤(F)を含んでもよいが、好ましくは実質的に含まず、より好ましくは光開始剤(F)を完全に含まない(例えば、0重量%)。
【0068】
水性エネルギー硬化型インクジェットインクがUVエネルギー等の化学線硬化刺激に供される場合、十分な硬化のために光開始剤(F)の使用が必要となる場合がある。したがって、水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、光開始剤(F)を、必要に応じて、水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して、5重量%まで、例えば、少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.2重量%、好ましくは少なくとも0.4重量%、より好ましくは少なくとも0.6重量%、更により好ましくは少なくとも0.8重量%、なお更により好ましくは少なくとも1重量%、及び5重量%まで、好ましくは4重量%まで、好ましくは3重量%まで、より好ましくは2.5重量%まで、更により好ましくは2重量%まで、なお更により好ましくは1.5重量%までの量で含有することができる。
【0069】
適切な硬化を提供する任意の光開始剤(F)は、水溶性であるもの又は水不溶性であるものを含めて、本明細書中で任意選択に使用することができる。本開示において光開始剤(F)を指す場合、「水溶性」とは、25℃の水中で少なくとも5.0g/Lの溶解度を有するものを指し、一方、「水不溶性」とは、25℃の水中で5.0g/L未満の溶解度を有するものを指す。使用され得る光開始剤の適切な例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
・1-[4-(2-ヒドロキシエトキシル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノン(例えば、OMNIRAD 2959、以前はIrgacure 2959、IGM resinsから入手可能)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、GENOCURE CPK、Rahnから入手可能)、及び1-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノン(例えば、OMNIRAD 73、IGM resinsから入手可能)等のα-ヒドロキシケトン;
・エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィナート(例えば、OMNIRAD TPO-L、IGM resinsから入手可能)等のベンゾイルホスフィナート;
・フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(例えば、OMNIRAD 819、IGM resinsから入手可能)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド(例えば、GENOCURE TPO、Rahnから入手可能)、及びビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド等のアシル及びビス-アシルホスフィンオキシド;
・2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4′-モルホリノブチロフェノン(例えば、GENOCURE BDMM、Rahnから入手可能)、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシ-アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(例えば、OMNIRAD BDK、IGM resinsから入手可能)、及び2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン等のアルキルフェノン;
・トリメチルベンゾフェノン及びメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン;
・オキシ-フェニル-酢酸2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル及びオキシ-フェニル酢酸2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル(例えば、OMNIRAD 754、IGM resinsから入手可能)等のフェニルグリオキシレート;並びに
・これらの組み合わせ。
【0070】
好ましい実施形態において、光開始剤(F)は水溶性であり、より好ましくは水溶性α-ヒドロキシケトンであり、具体的には、IGM resinsから入手可能なOMNIRAD 2959が挙げられる。
【0071】
[(G)ワックス]
本明細書の水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、例えば、水性エネルギー硬化型インクジェットインクを使用して作製された印刷物の取り扱いに関連する様々な特性、例えば、滑り若しくは潤滑、摩擦、引掻き、又は耐摩耗性、及びブロッキング防止(スタック性)を改善するために、任意選択でワックス(G)を配合することができる。ワックス(G)を含有することは任意であるが、含有される場合、ワックス(G)は、水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して、少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.2重量%、好ましくは少なくとも0.4重量%、より好ましくは少なくとも0.6重量%、更により好ましくは少なくとも0.8重量%、なお更により好ましくは少なくとも1重量%、及び10重量%まで、好ましくは8重量%まで、好ましくは6重量%まで、より好ましくは5重量%まで、更により好ましくは4重量%まで、なお更により好ましくは3重量%までの量で使用することができる。
【0072】
ワックス(G)としては、キャンデリラワックス、みつろう、ライスワックス、及びラノリン等の動植物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレンオキシドワックス、及びペトロラタム等のペトロレウム系ワックス;モンタンワックス及びオゾケライト等の鉱物系ワックス;カーボンワックス、ヘキストワックス、ポリオレフィンワックス、及びエチレンビス(ステアロアミド等のステアリン酸アミドワックス、α-オレフィンマレイン酸無水物共重合体等の合成共重合体ワックスを含む合成ワックス;等、並びにこれらの分散体/エマルジョンが挙げられる。ワックス(G)は、非光重合性樹脂(A)の定義を満たしていてもよいが、ワックス(G)は、少なくとも、非ワックス状ポリマーと比較したワックスの異なる特性、例えば、ゆるやかな(不明確な)融点のために、本開示において別個の異なる成分/材料であると見なされる。
【0073】
本開示の好ましいワックス(G)は、ポリオレフィンワックス(合成)である。好ましくは、ポリオレフィンワックスは、未変性(例えば、酸化されていない、酸変性されていない、又は特殊なモノマーで変性されていない)であり、狭い分子量分布を有する完全に非極性で線状のポリオレフィンワックスである。特に好ましいワックス(G)は、ポリオレフィンワックスエマルジョンであるものである。ポリオレフィンワックスは、例えば、D50粒子径が少なくとも1μm、好ましくは少なくとも2μm、好ましくは少なくとも3μm、より好ましくは少なくとも4μm、更により好ましくは少なくとも5μm、なお更により好ましくは少なくとも5.5μmであり、50μmまで、好ましくは40μmまで、好ましくは30μmまで、好ましくは20μmまで、好ましくは15μmまで、好ましくは12.5μmまで、より好ましくは10μmまで、更により好ましくは8μmまで、なお更により好ましくは6μmまでを有し、微粒子化されていてもよい。
【0074】
ポリオレフィンワックスの好適な例としては、ポリエチレンワックス、好ましくは高密度ポリエチレンワックス、より好ましくは微粉化高密度ポリエチレンワックス;及びポリプロピレンワックス、好ましくはメタロセン系ポリプロピレンワックス、より好ましくは微粉化メタロセン系ポリプロピレンワックスが挙げられるが、これらに限定されず、具体的には、花王株式会社製のJCCL-PEワックス、順番にHYTEC-E-6500(東邦化学工業株式会社製のポリエチレンワックス)、CERIDUST3610(微粉化高密度ポリエチレンワックス)、及びCERIDUST6050M(微粉化メタロセン系ポリプロピレンワックス)(それぞれClariantから入手可能)が挙げられる。
【0075】
上述のポリオレフィンワックスは、水性エネルギー硬化型インクジェットインクに組み込まれた場合、水性エネルギー硬化型インクジェットインク自体の安定性を妨げずに、有利な取り扱い関連特性を有する印刷画像を生成することが見出された。一方、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)ワックス(例えば、NANOFLON 119N、Shamrockから入手可能)等の他のタイプの合成ワックス、及びカルナウバワックス(例えば、CERASPERSE UV 636、以前はEVERGLIDE UV 636、これはUVモノマーのトリ(プロピレン)グリコールジアクリレート中に分散されたカルナウバワックスであり、Shamrockから入手可能)等の他のタイプの植物性及び動物性ワックスは、インク不安定性を引き起こし、混合直後にインクが層に分離する結果となる。
【0076】
[(H)シラン]
1つ以上のシラン(H)は、例えば接着性付与剤として機能するために、水性エネルギー硬化型インクジェットインク中に任意選択で含まれ得る。有用なシラン(H)は、例えば、基材へのインク成分の架橋及び/又は接着を促進するために、水性エネルギー硬化型インクジェットインク中の様々な成分及び基材上に見出される有機官能基と反応することができる複数の反応性部位(多官能性)を有するものである。
【0077】
シラン(H)は、少なくとも1つの反応性シラン基を含有する小分子シランであってもよく、又は少なくとも3つの反応性シラン基を含有するシランオリゴマー(比較的少ない繰り返し単位を含有する部分加水分解及び縮合シラン)であってもよい。例えば、シラン(H)は、6つまで、好ましくは5つまで、好ましくは4つまで、好ましくは3つまでの反応性シラン基を含有することができる。シラン(H)中に存在する反応性シラン基は、Si原子に直接結合した少なくとも1つの加水分解性基を有する任意のものであってよい。加水分解性基としては、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、t-ブトキシ、及び置換変異体、並びにこれらの基の1つ以上の混合物)及びハロ基(例えば、クロロ、ブロモ)(アルコキシ基とハロ基との混合物を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、各反応性シラン基は、1つ、2つ、又は3つの加水分解性基を有することができ、これらは同じであっても異なっていてもよく、好ましくは同じであり、より好ましくは存在する各加水分解性基はメトキシである。
【0078】
シラン(H)は、単一タイプの多官能性であってもよく、水性エネルギー硬化型インクジェットインク/基材中に見出される有機官能基と反応することができる唯一の基である複数の反応性シラン基を含有してもよい。例えば、シラン(H)は、イソシアヌレート含有シランであってもよく、好ましくはトリス(3-(トリアルコキシシリル)アルキル)イソシアヌレート(例えば、米国特許第9,617,454B2号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるもの等)、より好ましくはトリス(3-(トリメトキシシリル)アルキル)イソシアヌレート、更により好ましくはトリス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート(例えば、Momentiveから入手可能なSILQUEST A-LINK 597)であってもよい。
【0079】
あるいは、シラン(H)は、混合多官能性であってもよく、水性エネルギー硬化型インクジェットインク中の様々な成分及び基材上に見出される有機官能基と反応することができる1つ以上の他の種類の反応性部位に加えて、1つ以上の反応性シラン基を含有してもよい。例えば、シラン(H)は、エポキシ官能性シラン(反応性シラン基(複数可)及び反応性エポキシ基(複数可)を含有する)であってもよい。特に、シラン(H)は、エポキシアルキルトリアルコキシシラン、好ましくはエポキシアルキルトリメトキシシラン;グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン、好ましくはグリシドキシアルキルトリメトキシシラン;又はエポキシ官能性(アルコキシ)シランオリゴマー、好ましくはグリシドキシアルキル(アルコキシ)シランオリゴマー、より好ましくはグリシドキシアルキル(メトキシ)シランオリゴマーであってよく;具体的には、SILQUEST A-186(β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)、SILQUEST A-187(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、及びCOATOSIL MP 200シラン(γ-グリシドキシプロピル(メトキシ)シランオリゴマー)(それぞれMomentiveから入手可能)が挙げられる。
【0080】
一般に、存在する場合、水性エネルギー硬化型インクジェットインク中で使用されるシラン(H)の量は、水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して、少なくとも0.05重量%から、好ましくは少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.2重量%、好ましくは少なくとも0.4重量%、より好ましくは少なくとも0.6重量%、更により好ましくは少なくとも0.8重量%、なお更により好ましくは少なくとも1重量%、及び5重量%まで、好ましくは4重量%まで、より好ましくは3重量%まで、更により好ましくは2重量%まで、なお更により好ましくは1.5重量%までの範囲である。
【0081】
[(I)添加剤]
本開示の水性エネルギー硬化型インクジェットインクはまた、様々なインク特性及び性能を改善するために、様々な添加剤と任意選択で配合することができる。例えば、水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、任意選択で、蛍光増白剤、安定剤、セキュリティタガント、湿潤剤、光増感剤、殺真菌剤、pH調整剤、退色防止剤、又は水性インク系で使用されることが知られている任意の他のインク添加剤のうちの1つ以上を含有することができる。
【0082】
各添加剤は、当技術分野で認識されている使用量で任意選択に含まれてもよく、例えば、各添加剤は、水性エネルギー硬化型インクジェットインクの総重量に対して、0.0001重量%から、好ましくは0.001重量%から、好ましくは0.01重量%から、好ましくは0.1重量%から、より好ましくは0.5重量%から、更により好ましくは1重量%から、なお更により好ましくは2重量%から、及び10重量%まで、好ましくは9重量%まで、好ましくは8重量%まで、好ましくは7重量%まで、好ましくは6重量%まで、より好ましくは5重量%まで、更により好ましくは4重量%まで、なお更により好ましくは3重量%までの量で添加され得る。
【0083】
[特性]
本明細書に開示される水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、一般に、25℃で少なくとも5cP、好ましくは少なくとも6cP、好ましくは少なくとも8cP、好ましくは少なくとも10cP、好ましくは少なくとも12cP、好ましくは少なくとも14cP、好ましくは少なくとも16cP、好ましくは少なくとも18cP、及び35cPまで、好ましくは33cPまで、好ましくは30cPまで、好ましくは28cPまで、好ましくは26cPまで、好ましくは24cPまで、好ましくは22cPまで、好ましくは20cPまでの粘度(センチポアズ、cP)を有する。粘度は、例えば、Rheometrics Fluid Rheometer RFS3、ARES rheometer(両方ともTA Instrumentsの一部門であるRheometrics製)、又はHaake Roto Visco 1 rheometer、AMETEK Brookfield製のBrookfield DV-E粘度計、及びTCP/P-Peltier温度制御ユニットを使用して測定することができる。
【0084】
接着性は、ASTM D3359-09(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に従ってクロスハッチ接着テープ試験によって測定することができ、この規格に従って0B~5Bスケールで定量化することができる。本明細書に開示される水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、3B以上、好ましくは4B以上、より好ましくは5Bの接着性能評価で、様々な基材上に有利な接着特性を提供する。
【0085】
印刷品質は、印刷された画像の単純な目視検査によって、又は当業者に公知の画像鮮明度ソフトウェア、例えば、Personal Image Analysis System(PIAS)ソフトウェアを使用することによって決定することができる。
【0086】
水性エネルギー硬化型インクジェットインクの乾燥速度は、以下に記載される実施例に従って、例えば、基材、新鮮な試料(新たに塗布された水性エネルギー硬化型インクジェットインクを有する基材)を秤量し、60℃で2分間乾燥させ、次いで乾燥した試料を再秤量して、基材の重量を計算した後の水性エネルギー硬化型インクジェットインクの重量損失を求めることによって、特定の時間内に加えられた加熱下での被覆面積当たりの失われた水又は他の揮発性成分の量(mg)として測定することができる(単位:mg/cm2・s)。乾燥速度の結果は、新たに塗布された水性エネルギー硬化型インクジェットインクの開始重量を100としたときの、乾燥した水性エネルギー硬化型インクジェットインクの割合を差し引いた重量損失で表すことができ、次のように分類される。3-不合格、遅い乾燥(0~<25%重量損失);2-合格、許容可能な乾燥(25~35%重量損失);1-合格、速い乾燥(>35%重量損失)。本明細書の水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、許容可能な(2)又は速い(1)乾燥速度、好ましくは速い(1)乾燥速度を有する。
【0087】
水性エネルギー硬化型インクジェットインクの硬化速度は、後述する実施例に従って、(i)UV硬化条件又は(ii)EB硬化条件に供された後のインクの表面状態(タック)の観点から測定することができる。硬化速度を試験するために、水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、(i)H型UV電球を用いた1,000mJ/cm2のUVフルエンス(線量)によるUV硬化条件、又は(ii)例えば、Electron Crosslinking AB(スウェーデン)、Comet AG(スイス)又はEnergy Sciences,Inc.(ESI)(米国)から入手可能な電子ビーム発生器を用いた3.5Mrad線量の電子ビーム照射によるEB硬化条件に供することができる。次いで、硬化したインクの表面状態(タック)を、接触を使用して、あるいは国際標準ISO 12634(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)によるタック測定を使用して決定することができ、インクは次のように分類される。3-不合格、遅い硬化(粘着性、タックは経時的に退色せず、インクをこすり落とすことができる);2-合格、許容可能な硬化(わずかなタック、タックが経時的に退色する);1-合格、速い硬化(タックなし)。本明細書の水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、許容可能な(2)又は速い(1)硬化速度、好ましくは速い(1)硬化速度を有する。
【0088】
[製造方法]
本明細書に記載される水性エネルギー硬化型インクジェットインクの実施形態は、当業者に公知の任意の好適な技術によって、例えば、非光重合性樹脂(A)、水溶性光重合性モノマー(B)、及び水(D)、並びに任意の所望の任意選択成分(例えば、有機溶媒(D1)、界面活性剤(E)、光開始剤(F)、ワックス(G)、シラン(H)、及び添加剤(I)(例えば、蛍光増白剤、安定剤、安全保障のための追跡用添加物(security taggant)等))を組み合わせ、均一な分散体が形成されるまで20~45℃の温度でかき混ぜる(例えば、撹拌、超音波処理、振盪)ことによって調製することができる。次いで、50~300nmの平均粒径を有する顔料(B)を添加することができ、得られた混合物を、均一な分散体が形成されるまで20~45℃の温度でかき混ぜる(例えば、撹拌、超音波処理、振盪)。
【0089】
(印刷物)
水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、多種多様な印刷物の製造のために、三次元部品及びロール形態で供給される平坦なシート又はウェブを含む様々な基材上に印刷することができる。加えて、基材は、様々な表面タイプ、例えば、平坦な表面、構造化された表面、例えば、粒状化された表面、及び三次元表面、例えば、湾曲した及び/又は複雑な表面を有することができ、これらは、湾曲した及び/又は複雑な表面の全ての部分に到達するためにインクが移動しなければならない長い距離のために、困難な基材であることがよく知られている。このような印刷物は、グラフィックアート、織物、包装(例えば、食品包装、医薬品包装等)、宝くじ、ビジネスフォーム、出版等の産業に適しており、その例としては、タグ又はラベル、宝くじ券、出版物、パッケージング(軟包装)、折り畳み式カートン、硬質容器(プラスチックカップや桶、ガラス容器、金属缶、ボトル、ジャー、及びチューブ)、店頭ディスプレイ等が挙げられる。特に好ましい印刷物は、包装に使用されるものであり、例えば、薄いプラスチックフィルム(例えば、可撓性包装)、好ましくは食品/製品包装(例えば、一次、二次、又は三次食品包装)であり、食品、非食品、医薬品、及び/又はパーソナルケア用品を含んでもよい。
【0090】
水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、多孔質又は浸透性基材上に印刷されてもよく、その例としては、非コート紙、木材、膜、及び布(例えば、織布、不織布、及びホイルラミネート布が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
水性エネルギー硬化型インクジェットインクはまた、非多孔性又は非浸透性基材、例えば、様々なプラスチック、ガラス、金属(例えば、鋼、アルミニウム等)、及び/又は非浸透紙(例えば、コート紙)上に印刷されてもよい。これらとしては、成形プラスチック部品及びプラスチックフィルムの平坦なシート又はロールが挙げられ得るが、これらに限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリスチレン(OPS)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、延伸ポリプロピレン(OPP)等のポリオレフィン、ポリ乳酸(PLA)、ナイロン及び延伸ナイロン、ポリ塩化ビニル(PVC)、セルローストリアセテート(TAC)、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアセタール、ポリビニルアルコール(PVA)等を含むものが挙げられる。
【0092】
(印刷画像の形成方法)
本開示は、水性エネルギー硬化型インクジェットインクを、その実施形態の1つ以上において、インクジェットプリントヘッドを用いて基材の表面上に塗布し、乾燥させ、続いて水性エネルギー硬化型インクジェットインクを硬化させることによって、基材上に印刷画像を形成する方法を提供する。本明細書に記載される水性エネルギー硬化型インクジェットインクの使用は、有利な(1)乾燥速度、(2)印刷品質(収縮表面欠陥に関連する)、(3)接着性、(4)硬化速度、及び(5)印刷画像柔軟性を提供することによって、水性インク系に共通する問題を克服する。
【0093】
インクジェット印刷の当業者に公知の任意のドロップオンデマンドプリントヘッドを使用して、本方法において水性エネルギー硬化型インクジェットインクを塗布することができる。例えば、印刷解像度、印刷速度、プリントヘッド及びインク温度、駆動電圧及びパルス幅等の典型的なパラメータは、インクジェットプリントヘッドの仕様に従って調整することができる。本明細書の方法における使用に一般的に好適なインクジェットプリントヘッドは、2~80pLの範囲の液滴サイズ及び10~100kHzの範囲の液滴周波数を有し、例えば、高品質のプリントを得ることができる。
【0094】
基材上への塗布後、水性エネルギー硬化型インクジェットインクを乾燥させる。好ましくは、水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、外部加熱、IR又はn-IRを使用して、例えば、加熱要素(例えば、ニクロム線ヒーター)、加熱ランプ、温風/熱風加熱デバイス等を使用して乾燥させて、塗布されたエネルギー硬化型インクジェットインクの乾燥を促進し、かつ/又は乾燥速度を増加させる。水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、特定の基材、塗布されるインクの量等に応じて様々な条件下で乾燥され得るが、典型的には、塗布された水性エネルギー硬化型インクジェットインクの出発重量に対して、少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも35重量%、更により好ましくは少なくとも40重量%、なお更により好ましくは少なくとも45重量%、及び60重量%まで、好ましくは55重量%まで、より好ましくは50重量%までの重量損失(蒸発による)を引き起こすのに好適な条件下で乾燥される。
【0095】
例えば、水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、少なくとも35℃、好ましくは少なくとも40℃、好ましくは少なくとも45℃、より好ましくは少なくとも50℃、更により好ましくは少なくとも55℃、なお更により好ましくは少なくとも60℃、及び100℃まで、好ましくは90℃まで、好ましくは80℃まで、より好ましくは75℃まで、更により好ましくは70℃まで、なお更により好ましくは65℃までの乾燥温度で、10分まで、例えば少なくとも0.5分、好ましくは少なくとも1分、より好ましくは少なくとも1.5分、更により好ましくは少なくとも2分、及び10分まで、好ましくは8分まで、より好ましくは6分まで、更により好ましくは4分まで、なお更により好ましくは3分までの期間乾燥させることができる。
【0096】
許容可能な程度まで乾燥させた後、水性エネルギー硬化型インクジェットインクを硬化させる。任意の硬化刺激を利用することができるが、紫外線(UV)エネルギー及び/又は電子ビーム(EB)エネルギーの使用が好ましい。どの硬化刺激を使用するかにかかわらず、エネルギー源は、塗布されたインクが乾燥した直後に硬化ステップを実施できるように、ヒーターのインラインかつ直接下流に配置することができるが、他の構成も企図される。
【0097】
水性エネルギー硬化型インクジェットインクが光開始剤(F)と共に配合される場合、UV光を使用して十分な硬化度を達成することができる。好適なUV光源としては、H型UV電球(水銀蒸気バルブ)、短波UVランプ、溶融石英等のフィルターコーティングを有する白熱ランプ(ハロゲンランプ)、ガス放電ランプ、及びUVレーザーが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、600ワット/インチまでの最大出力を有するもの等のH型UV電球がUV硬化方法に使用される。いくつかの実施形態では、水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、少なくとも350mJ/cm2、好ましくは少なくとも500mJ/cm2、好ましくは少なくとも600mJ/cm2、好ましくは少なくとも700mJ/cm2、より好ましくは少なくとも800mJ/cm2、更により好ましくは少なくとも900mJ/cm2、なお更により好ましくは少なくとも1,000mJ/cm2、及び1,500mJ/cm2まで、好ましくは1,400mJ/cm2まで、より好ましくは1,300mJ/cm2まで、更により好ましくは1,200mJ/cm2まで、なお更により好ましくは1,100mJ/cm2までのフルエンス(線量)を有するUV光を用いて硬化される。
【0098】
あるいは、水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、光開始剤(F)が存在するか否かにかかわらず、EBエネルギーを用いて硬化させることができる。電子ビーム硬化法では、電子が真空チャンバからメタルホイルを通って出て、反応チャンバ内の基板上の水性エネルギー硬化型インクジェットインクに到達する。電子ビーム硬化プロセスは、典型的にはほとんど熱を発生せず、したがって熱処理による基板の歪みを防止するのに役立つ。電子ビーム照射に曝露されると、水性エネルギー硬化型インクジェットインク中に存在する任意の硬化性/光重合性成分(例えば、水溶性光重合性モノマー(B))は、重合、架橋、及び/又は硬化を受ける。
【0099】
水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、Electron Crosslinking AB(スウェーデン)、Comet AG(スイス)又はEnergy Sciences,Inc.(ESI)(米国)から入手可能な電子ビーム発生器等の任意の電子ビーム発生器を使用して、電子ビーム照射に曝露され得る。いくつかの実施形態では、水性エネルギー硬化型インクジェットインクは、少なくとも0.5Mrad、好ましくは少なくとも1Mrad、好ましくは少なくとも1.5Mrad、好ましくは少なくとも2Mrad、より好ましくは少なくとも2.5Mrad、更により好ましくは少なくとも3Mrad、なお更により好ましくは少なくとも3.5Mradであって、10Mradまで、好ましくは9Mradまで、好ましくは8Mradまで、好ましくは7Mradまで、より好ましくは6Mradまで、更により好ましくは5Mradまで、なお更により好ましくは4Mradまでの電子ビーム照射の線量に曝露されることによって、十分な程度まで硬化される。電子ビーム照射の線量は、基材の寸法及び表面特性、水性エネルギー硬化型インクジェットインクのコーティング厚さ、及び/又は所望の硬化レベルに基づいて、例えば線量及び/又は曝露時間を増減することによって調整することができる。
【0100】
本明細書に開示される方法では、様々な電子ビーム加速電位を使用することができるが、典型的には300kV未満の加速電位が使用され、好ましくは260kV未満、より好ましくは240kV未満、更により好ましくは220kV未満、例えば約70~約200kVの範囲の加速電位が使用される。
【0101】
本開示の方法は、任意選択で、硬化操作中に不活性ガスを供給して、フリーラジカル重合を阻害する酸素を置換する(「不活性化する」)ことを含み得る。いくつかの実施形態では、約200ppm未満、好ましくは180ppm未満、より好ましくは160ppm未満、更により好ましくは140ppm未満の酸素が硬化中に存在する。好適な不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス等、任意のものを使用することができるが、これらに限定されない。
【0102】
また、本明細書の方法では、水性エネルギー硬化型インクジェットインクを塗布する前に、コロナ処理、大気圧プラズマ処理、及び火炎処理等の基材表面処理を任意選択に使用して、印刷物特性、例えばインク接着性を改善することができることも認識すべきである。これらの表面処理プロセスは、インライン(すなわち、生産稼働中)又はオフライン(すなわち、基板は、生産稼働前に、例えば、別の施設で基板を製造する間に表面処理される)で行われ得る。このような基材表面処理のパラメータは、印刷される基材材料、利用される特定の水性エネルギー硬化型インクジェットインク、適用される印刷方法、並びに印刷物の所望の特性及び用途に応じて大きく変動し得る。
【0103】
以下の実施例は、水性エネルギー硬化型インクジェットインクを更に例示することを意図しており、特許請求の範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0104】
<水性エネルギー硬化型インクジェットインク>
水性エネルギー硬化型インクジェットインクのいくつかの例を、以下の表1~3に示す。なお、各成分の含有量は、総重量を100%としたときの重量%で表される。SR551はメトキシポリエチレングリコール(350)モノアクリレートであり、SR344はポリエチレングリコール(400)ジアクリレートであり、SR610はポリエチレングリコール(600)ジアクリレートであり、SR9035はエトキシル化(15)トリメチロールプロパントリアクリレートであり、それぞれSartomer Co.Inc.から入手可能である。PVP K-12は、Ashlandから入手可能なポリビニルピロリドン(PVP)の低分子量(4,000~6,000g/mol)ホモポリマーである。AQUAZOL 5は、Polymer Chemistry Innovationsから入手可能な、5,000g/molの目標分子量を有するポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)である。UCECOAT 2801は、Allnexから入手可能な水中アクリル化ポリウレタン分散体(アニオン性)である。TEGO Twin 4100は、Evonik Industriesから入手可能なポリシロキサン系ジェミニ界面活性剤である。OMNIRAD 2959は、IGM resinsから入手可能な1-[4-(2-ヒドロキシエトキシル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノン(光開始剤)である。JCCL-PEワックスは、花王株式会社製の合成ポリエチレンワックスである。COATOSIL MP 200シランは、Momentiveから入手可能なγ-グリシドキシプロピル(メトキシ)シランオリゴマーである。カーボンブラックPBL 7は、Cabotから入手可能な黒色顔料である。「Comp.Ex」は比較例を指す。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
(調製方法)
インクを、非光重合性樹脂(A)、水溶性光重合性モノマー(B)、及び水(D)、並びに任意の所望の任意選択成分(例えば、有機溶媒(D1)、界面活性剤(E)、光開始剤(F)、ワックス(G)、シラン(H)、及び添加剤(I)(例えば、蛍光増白剤、安定剤、セキュリティタガント等))を組み合わせることによって調製し、内容物を、均一な分散体が形成されるまで25℃で撹拌した。次いで、平均粒径50~300nmの顔料(B)を添加し、得られた混合物を、均一な分散体が形成されるまで25℃で撹拌した。
【0109】
<水性エネルギー硬化型インクジェットインクの評価方法>
(乾燥速度測定)
乾燥速度は、特定の時間内に加えられた加熱下での被覆面積当たりの失われた水又は他の揮発性成分の量(mg)として測定することができる(単位:mg/cm2・s)。
【0110】
乾燥速度評価を実施するために、基材を最初に秤量し、重量を記録した。次に、試験される水性エネルギー硬化型インクジェットインクを基材上に塗布することによって新鮮な試料を調製し、新鮮な試料の重量を測定し、記録した。次いで、新鮮な試料を60℃で2分間乾燥させ、乾燥した試料を再秤量して、基材の重量を計算した後の水性エネルギー硬化型インクジェットインクの重量損失を求めた。乾燥速度の結果は、新たに塗布された水性エネルギー硬化型インクジェットインクの開始重量を100としたときの、乾燥した水性エネルギー硬化型インクジェットインクの割合を差し引いた重量損失で表され、表4にしたがって分類される。
【0111】
【0112】
(硬化速度測定)
水性エネルギー硬化型インクジェットインクの硬化速度は、乾燥した試料(上記の乾燥速度測定にしたがって調製)を、
(i)H型UV電球を使用してUVフルエンス(線量)を1,000mJ/cm2としたUV硬化条件、又は
(ii)スイスのComet AG社製の電子ビーム発生器を使用して、3.5Mradの電子ビーム照射を行うEB硬化条件のどちらかに供することによって測定した。
【0113】
次いで、硬化したインクの表面状態(タック)を指で(接触を用いて)測定し、表5に従って分類した。
【0114】
【0115】
<水性エネルギー硬化型インクジェットインク性能>
【表6】
【0116】
【0117】
数値の限界又は範囲が本明細書に記載されている場合、端点も含まれる。また、数値の限界又は範囲内のすべての値及び部分範囲は、明示的に記載されているかのように具体的に含まれる。
【0118】
本明細書で使用される場合、単語「a」及び「an」等は、「1つ以上」という意味を有する。
【0119】
明らかに、本発明の多数の変更及び変形が上記の教示に照らして可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、本明細書に具体的に記載された以外の方法で実施され得ることが理解されるべきである。
【0120】
上記のすべての特許及び他の参考文献は、詳細に記載されている場合と同じように、この参考文献によって完全に本明細書に組み込まれる。