(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ステアリングホイール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B62D 1/10 20060101AFI20240613BHJP
B60R 21/20 20110101ALI20240613BHJP
【FI】
B62D1/10
B60R21/20
(21)【出願番号】P 2022558979
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(86)【国際出願番号】 JP2021037696
(87)【国際公開番号】W WO2022091768
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2020179066
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】金 眞根
(72)【発明者】
【氏名】シャタラキ グルダット
(72)【発明者】
【氏名】パンディ マルドフ
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/158503(WO,A1)
【文献】特開2012-071803(JP,A)
【文献】国際公開第2020/003777(WO,A1)
【文献】特開2020-019379(JP,A)
【文献】中国実用新案第207943015(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00-1/28
B60R 21/16/21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボス部及び取付け孔を有するベース部と、リム部と、前記ボス部又は前記ベース部と前記リム部とを連結するスポーク部と、を備えた芯金と、
前記取付け孔内に挿入されるピンを有するエアバッグモジュールと、
前記ベース部に取り付けられる取付け部と、前記エアバッグモジュールが前記芯金に設置されるように前記取付け孔内に位置して前記ピンを係止するピン係止部と、を有する保持スプリングと、
を備え、
前記ベース部には、前記保持スプリングが取り付けられるスプリング装着部が設けられ、
前記スプリング装着部は、
前記ベース部のベース面から隆起した本体柱部と、
基端側が前記本体柱部に連続し、前記本体柱部から延出された延出部と、を有し、
前記保持スプリングの前記取付け部は、前記ベース面と前記延出部との間に位置して、前記本体柱部を挟むようにして取り付けられ、
前記延出部は、前記取付け部に対して前記保持スプリングの抜止めを構成し、
前記本体柱部の第1の側に延出された第1部分と、前記第1の側とは反対側の、前記本体柱部の第2の側に延出された第2部分と、を有し、
前記第1部分及び前記第2部分の先端側は、前記ベース部に非連結となって
おり、
前記本体柱部の長手方向に直交する方向における、前記第1部分の先端側と前記第2部分の先端側との間の距離は、同方向における、前記取付け部の最大幅よりも大きく、
前記第1部分の先端側及び前記第2部分の先端側は、それぞれ、前記本体柱部から見て、前記取付け部よりも外側に位置しており、
前記第1部分及び前記第2部分の少なくとも一つは、前記本体柱部の長手方向に直交する方向に延出され、
前記第1部分と前記第2部分とは、前記本体柱部の長手方向においてオフセットされている、ステアリングホイール。
【請求項2】
前記第1部分の先端側とこれが非連結状態で対向する前記ベース部との間の隙間、及び、前記第2部分の先端側とこれが非連結状態で対向する前記ベース部との間の隙間は、それぞれ、前記保持スプリングの線径よりも大きい、請求項
1に記載のステアリングホイール。
【請求項3】
前記第1部分と前記第2部分とは、サイズ及び長さの少なくとも一つが互いに異なる、請求項
1又は2に記載のステアリングホイール。
【請求項4】
前記ベース部は、前記第1部分の先端側及び前記第2部分の先端側に対向する位置にそれぞれ開口部を有している、請求項
1から3のいずれか一項に記載のステアリングホイール。
【請求項5】
前記保持スプリングは、直線的に延びる直線部を有し、
前記取付け部は、一端が前記直線部につながる略U字状部分を有し、
前記ピン係止部は、前記直線部の一部からなる、請求項1から
4のいずれか一項に記載のステアリングホイール。
【請求項6】
前記取付け部は、前記略U字状部分の他端から前記直線部に近づく方向に延び、かつ、その後、前記直線部から離れる方向に延びる湾曲部をさらに有し、
前記本体柱部は、前記湾曲部を受けるように湾曲した側部を有する、請求項
5に記載のステアリングホイール。
【請求項7】
前記取付け孔に取り付けられる保持部材をさらに有し、
前記保持部材は、
前記取付け孔内に配置され、前記ピンが挿入される筒部と、
前記筒部に形成された切欠き部と、を有し、
前記ピン係止部は、前記切欠き部を介して前記筒部内に位置され、前記ピンを係止する、請求項1から
6のいずれか一項に記載のステアリングホイール。
【請求項8】
前記保持スプリングは、前記スプリング装着部への取り付けに際し90度回転されて、前記ベース面と前記延出部との間に位置するように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のステアリングホイール。
【請求項9】
前記保持スプリングは、直線的に延びる直線部を有し、
前記取付け部は、
一端が前記直線部につながる略U字状部分と、
前記略U字状部分の他端から前記直線部に近づく方向に延び、かつ、その後、前記直線部から離れる方向に延びる湾曲部と、を有し、
前記直線部は、前記略U字状部分とは反対側である先端側に、前記湾曲部から離れる方向に傾斜した傾斜部を有し、かつ、前記略U字状部分と前記傾斜部との間に前記ピン係止部を有する、請求項8に記載のステアリングホイール。
【請求項10】
前記保持スプリングでは、
前記直線部の一部が、前記ベース部に形成された開口部に対向し、
前記傾斜部の端部が、前記開口部を超えて、前記ベース面上に位置又は前記ベース面に対向し、
前記保持スプリングは、前記スプリング装着部への取り付けに際し、前記傾斜部の端部が前記開口部内に挿入した状態から90度回転されて、前記開口部内に挿入していた部分が出た後、前記開口部を超えた位置で、前記ベース面上に位置又は前記ベース面に対向可能となるように構成されている、請求項9に記載のステアリングホイール。
【請求項11】
前記本体柱部は、前記開口部を横切るブリッジ部を有しており、
前記ブリッジ部と前記ベース面との間は、前記保持スプリングの前記直線部が通過可能であり、
前記ブリッジ部は、前記直線部に対して前記保持スプリングの抜止めを構成する、請求項10に記載のステアリングホイール。
【請求項12】
前記保持スプリングは、前記取付け部が前記延出部の前記第1部分及び前記第2部分から外れた位置では、前記ベース面上で回転可能である、請求項1から11のいずれか一項に記載のステアリングホイール。
【請求項13】
ボス部、取付け孔及びスプリング装着部を有するベース部と、リム部と、前記ボス部又は前記ベース部と前記リム部とを連結するスポーク部と、を備えた芯金であって、前記スプリング装着部が、前記ベース部のベース面から隆起した本体柱部と、基端側が前記本体柱部に連続し、前記本体柱部から延出された延出部と、を有し、
前記延出部が、前記本体柱部の第1の側に延出された第1部分と、前記第1の側とは反対側の、前記本体柱部の第2の側に延出された第2部分と、を有し、前記
第1部分及び前記第2部分の先端側が、前記ベース部に非連結となっており、
前記第1部分と前記第2部分とが、前記本体柱部の長手方向においてオフセットされている、当該芯金の裏側にバックカバーを樹脂材料により成形する工程と、
前記バックカバーが成形された前記芯金の裏側に保持スプリングを取り付ける工程であって、前記保持スプリングの取付け部を
前記延出部の前記第1部分及び前記第2部分から外れた位置で前記保持スプリングを90度回転させて、前記取付け部を前記ベース面と前記延出部との間に位置させ
た後、前記保持スプリングを前記ベース面上で水平移動させて、前記取付け部を前記スプリング装着部の前記本体柱部を挟むようにして取り付け、前記延出部の
前記第1部分及び前記第2部分によって前記取付け部に対して前記保持スプリングの抜止めを構成すると共に、前記保持スプリングのピン係止部を前記取付け孔内に位置させる工程と、
前記芯金の表側にエアバッグモジュールを組み付ける工程であって、前記エアバッグモジュールに設けたピンを前記取付け孔内に挿入して、前記保持スプリングの前記ピン係止部に係止させる工程と、
を含む、ステアリングホイールの製造方法。
【請求項14】
前記バックカバーは、前記ベース部の周縁を囲繞する周壁部を有する、請求項13に記載のステアリングホイールの製造方法。
【請求項15】
前記バックカバーを成形する工程の後に、
前記取付け孔内に配置される筒部と、前記筒部に形成された切欠き部とを有する保持部材を前記取付け孔に取り付ける工程をさらに含み、
前記バックカバーが成形された前記芯金の裏側に前記保持スプリングを取り付ける工程では、前記保持スプリングの前記ピン係止部を前記切欠き部を介して前記筒部内に挿入し、
前記芯金の表側に前記エアバッグモジュールを組み付ける工程では、前記エアバッグモジュールの前記ピンを前記筒部内に挿入して、前記保持スプリングの前記ピン係止部に係止させる、請求項13又は14に記載のステアリングホイールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるステアリングホイールとして、スナップフィット機構などのワンタッチ取付機構によって、エアバッグモジュールをステアリングホイールの芯金に取り付けたものが知られている(例えば特許文献1及び2参照)。この種の構造では、エアバッグモジュールにピンを設ける一方で、芯金に保持バネ(ワイヤ状のスプリング)を取り付けておく。そして、エアバッグモジュールのピンを芯金のピン孔に挿入し、保持バネに係止させるようにしている。
【0003】
例えば、特許文献1では、芯金のベース部に凸段部を形成し、凸段部にバネ挿通孔を穿設し、バネ挿通孔に保持バネを挿入し、保持バネの長手方向の中間部でエアバッグモジュールのピンを係止している。保持バネの長手方向の両側は、バネ挿通孔からはみ出ており、このはみ出た部分がリブや突起等に係合することで、保持バネがバネ挿通孔に保持されるとされている(同文献の段落0047参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-50876号公報
【文献】特開2010-69934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の走行中などにおいては、ステアリングホイールに車両からの振動が伝わる。この点、特許文献1では、バネ挿通孔における保持バネの保持態様によっては、車両からの振動を受けやすいおそれがある。また、保持バネの取付けが複雑となるおそれがある。
【0006】
本発明は、保持スプリングへの振動の影響を低減することができ、その取付け性にも配慮したステアリングホイール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るステアリングホイールは、ボス部及び取付け孔を有するベース部と、リム部と、ボス部又はベース部とリム部とを連結するスポーク部と、を備えた芯金と、取付け孔内に挿入されるピンを有するエアバッグモジュールと、ベース部に取り付けられる取付け部と、エアバッグモジュールが芯金に設置されるように取付け孔内に位置してピンを係止するピン係止部と、を有する保持スプリングと、を備え、ベース部には、保持スプリングが取り付けられるスプリング装着部が設けられ、スプリング装着部は、ベース部のベース面から隆起した本体柱部と、基端側が本体柱部に連続し、本体柱部から延出された延出部と、を有し、保持スプリングの取付け部は、ベース面と延出部との間に位置して、本体柱部を挟むようにして取り付けられ、延出部は、取付け部に対して保持スプリングの抜止めを構成し、延出部の先端側は、ベース部に非連結となっている。
【0008】
この態様によれば、エアバッグモジュールが芯金に設置された状態では、エアバッグモジュールのピンが芯金の取付け孔内に位置し、保持スプリングのピン係止部に係止される。保持スプリングは、その取付け部を介して、芯金のベース部のスプリング装着部に抜け止め状態で取り付けられる。この抜け止めを構成するスプリング装着部の延出部の先端側をベース部に対して非連結にしているため、延出部の先端側にはベース部からの振動が直接的には入力されない。したがって、抜け止めのための部分(延出部)を介した保持スプリングへの振動の影響を低減することができる。加えて、このような非連結により延出部の先端側とベース部との間には隙間ができるため、芯金のベース部の軽量化に寄与できると共に、保持スプリングの取付け性の向上にも寄与できる。例えば、保持スプリングを取り付ける際に、上記隙間を利用することが可能となり得る。
【0009】
本発明の一態様においては、延出部は、本体柱部の第1の側に延出された第1部分と、第1の側とは反対側の、本体柱部の第2の側に延出された第2部分と、を有し、第1部分及び第2部分の各先端側が、ベース部に非連結となっていてもよい。
【0010】
この態様によれば、本体柱部の両側(第1の側及び第2の側)に保持スプリングの抜け止めを構成することができる。これにより、振動の影響の低減を図りつつ、保持スプリングの抜け止めを向上することができる。
【0011】
本発明の一態様においては、本体柱部の長手方向に直交する方向における、第1部分の先端側と第2部分の先端側との間の距離は、同方向における、取付け部の最大幅よりも大きくてもよい。また、他の態様においては、第1部分の先端側及び第2部分の先端側は、それぞれ、本体柱部から見て、取付け部よりも外側に位置してもよい。
【0012】
このような態様によれば、延出部の第1部分及び第2部分の少なくとも一部に対して保持スプリングの取付け部が対向し、抜け止めを構成することができる。
【0013】
本発明の一態様においては、第1部分の先端側とこれが非連結状態で対向するベース部との間の隙間、及び、第2部分の先端側とこれが非連結状態で対向するベース部との間の隙間は、それぞれ、保持スプリングの線径よりも大きくてもよい。
【0014】
この態様によれば、保持スプリングの取り付けに際して、保持スプリングを両方又は一方の隙間を通過させることができる。よって、保持スプリングの取付け性を向上することができる。
【0015】
本発明の一態様においては、第1部分及び第2部分の少なくとも一つは、本体柱部の長手方向に直交する方向に延出されていてもよい。
【0016】
この態様によれば、本体柱部を挟むようにして取り付けられた保持スプリングの取付け部に対して、本体柱部の長手方向に直交する方向において抜け止めを構成することができる。よって、抜け止めを向上することができる。
【0017】
この場合、第1部分と第2部分とは、本体柱部の長手方向においてオフセットされていてもよい。
【0018】
この態様によれば、本体柱部の長手方向に直交する方向において段違いとなるように、延出部の第1部分と第2部分とにより抜け止めを構成することができる。よって、抜け止めをさらに向上することができる。
【0019】
本発明の一態様においては、第1部分と第2部分とは、サイズ及び長さの少なくとも一つが互いに異なるものであってもよい。
【0020】
この態様によれば、延出部の各部の設計の自由度を高めることができる。
【0021】
本発明の一態様においては、ベース部は、第1部分の先端側及び第2部分の先端側に対向する位置にそれぞれ開口部を有していてもよい。
【0022】
この態様によれば、ベース部の軽量化を図ることができる。
【0023】
本発明の一態様においては、保持スプリングは、直線的に延びる直線部を有し、取付け部は、一端が直線部につながるU字状部分を有し、ピン係止部は、直線部の一部からなるものであってもよい。
【0024】
また、保持スプリングの取付け部は、U字状部分の他端から直線部に近づく方向に延び、かつ、その後、直線部から離れる方向に延びる湾曲部をさらに有し、本体柱部は、湾曲部を受けるように湾曲した側部を有してもよい。
【0025】
この態様によれば、保持スプリングの湾曲部を本体柱部の側部で受けるため、スプリング装着部における保持スプリングの取り付けが強化される。
【0026】
本発明の一態様においては、ステアリングホイールは、取付け孔に取り付けられる保持部材をさらに有し、保持部材は、取付け孔内に配置され、ピンが挿入される筒部と、筒部に形成された切欠き部と、を有し、ピン係止部は、切欠き部を介して筒部内に位置され、ピンを係止してもよい。
【0027】
本発明の一態様に係るステアリングホイールの製造方法は、ボス部、取付け孔及びスプリング装着部を有するベース部と、リム部と、ボス部又はベース部とリム部とを連結するスポーク部と、を備えた芯金であって、スプリング装着部が、ベース部のベース面から隆起した本体柱部と、基端側が本体柱部に連続し、本体柱部から延出された延出部と、を有し、延出部の先端側が、ベース部に非連結となっている、当該芯金の裏側にバックカバーを樹脂材料により成形する工程と、バックカバーが成形された芯金の裏側に保持スプリングを取り付ける工程であって、保持スプリングの取付け部を、ベース面と延出部との間に位置させて、スプリング装着部の本体柱部を挟むようにして取り付け、延出部によって取付け部に対して保持スプリングの抜止めを構成すると共に、保持スプリングのピン係止部を取付け孔内に位置させる工程と、芯金の表側にエアバッグモジュールを組み付ける工程であって、エアバッグモジュールに設けたピンを取付け孔内に挿入して、保持スプリングのピン係止部に係止させる工程と、を含む。
【0028】
この態様によれば、上記同様に、製造されたステアリングホイールにおいては、保持スプリングの抜け止めを構成する延出部の先端側をベース部に対して非連結にしているため、抜け止めのための部分を介した保持スプリングへの振動の影響を低減することができる。加えて、非連結により生じる隙間によって、芯金のベース部の軽量化と保持スプリングの取付け性の向上を図ることができる。とりわけ、バックカバーの成形後に保持スプリングを取り付けることができるようになり、ステアリングホイールの製造プロセス上も有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態に係るステアリングホイールの外観を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係るステアリングホイールについて、エアバックモジュールを省略して、芯金及びバックカバーを分解して示す正面斜視図である。
【
図3】実施形態に係るステアリングホイールのエアバックモジュールを示す斜視図である。
【
図4】実施形態に係るステアリングホイールの芯金を裏側から示す斜視図である。
【
図6】実施形態に係るステアリングホイールの芯金を裏側から示す斜視図であり、
図4からバックカバーを省略した図である。
【
図7】実施形態に係るステアリングホイールの芯金を裏側から示す斜視図であり、
図6からエアバッグモジュールを省略した図である。
【
図8】(A)は斜め下側から見た保持部材の斜視図であり、(B)は斜め上方から見た保持部材の斜視図である。
【
図10】(A)はスプリング装着部を拡大して示す
図5の拡大図であり、(B)は(A)のB-B線で切断した端面図である。
【
図11】実施形態に係るステアリングホイールのバックカバーを裏側から示す斜視図である。
【
図12】実施形態に係るステアリングホイールの製造方法を示すフローチャートである。
【
図13】保持スプリングを芯金の裏側に取り付ける工程の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の好適な実施形態に係るステアリングホイールについて説明する。
【0031】
ステアリングホイールは、自動車などの車両の運転席側に配置されるものであり、複数の機能を有している。例えば、ステアリングホイールは、車両の操舵装置としての機能を有している。具体的には、ステアリングホイールは、一般に傾斜した状態で車体に備えられるステアリングシャフトの上端部に装着される。運転手からの操舵力がステアリングホイールからステアリングシャフトに伝達され、ステアリングギア等を介して車輪に伝達され、車輪の向きが変更される。
【0032】
また、ステアリングホイールは、車両緊急時のフロントエアバッグとしての機能を有している。車両緊急時とは、例えば、車両の衝突が発生した時をいう。フロントエアバッグとしての機能は、主として、ステアリングホイールの芯金に設置されたエアバッグモジュールによって達成される。これらの機能に加え、ステアリングホイールは、ホーン装置としての機能や、車両からステアリングホイールへの振動を減衰するダイナミックダンパとしての機能を有していてもよい。ダイナミックダンパとしての機能は、例えば、エアバッグモジュールと芯金との間に設けられたダンパユニットによって達成される。
【0033】
以下では、説明の便宜のために、XYZの三軸を次のとおり定義する。ステアリングシャフトの軸方向を「Z軸方向」とし、Z軸方向に直交する平面においてアナログ12時間時計の9時と3時とを結ぶ方向を「X軸方向」とし、また、同時計の12時と6時とを結ぶ方向を「Y軸方向」とする。X軸方向は、ステアリングホイール又は車両の幅方向に相当する方向であり得る。また、X軸及びY軸によって構成される平面を「XY面」と呼ぶ。Z軸方向において、Z軸第1方向はステアリングシャフトの下端部側に向かい、Z軸第2方向はステアリングシャフトの上端部側(運転者側)に向かっている。また、Z軸第1方向は芯金の裏側に向かい、Z軸第2方向は芯金の表側に向かっている。
【0034】
図1及び2に示すように、ステアリングホイール1は、芯金2及びエアバッグモジュール3を有している。エアバッグモジュール3は、芯金2の表側の中央に組み付けられている。芯金2の裏側には、バックカバー4が設けられている。
【0035】
芯金2は、ステアリングホイール1の骨組み部分を構成し、ステアリングホイール1の形状を形成する。芯金2は、中央のボス部20を有するベース部21と、運転者が把持する円環状のリム部22と、ボス部20又はベース部21とリム部22とを連結するスポーク部23とを有する。ボス部20は、ステアリングシャフトに連結される。ベース部21は、中央にボス部20を含む部分であり、ボス部20の周辺部に、エアバッグモジュール3を取り付けるための複数(ここでは3つ)の取付け孔24、24、24を有している。各取付け孔24は、ベース部21を貫通している。スポーク部23は、ここでは3つあり、ベース部21から3方向へ延出してステアリングホイール1の外周のリム部22に連結されている。
【0036】
芯金2は、例えば、鉄、アルミニウム、マグネシウムなどの金属及び樹脂等により成形される。芯金2には、その一部又は全部を覆うように、例えば発砲ポリウレタン樹脂などの軟質合成樹脂被覆の層が設けられる。このような層は複数層であってもよい。例えば、芯金2の外側に向かって順次、絶縁層としてのウレタン層と、ステアリングホイール1を温めるヒーター機能のためのヒーター電極の層と、絶縁層としての表皮層と、運転者によるステアリングホイール1の把持を検知するためのセンサ電極の層と、を設けてもよい。
【0037】
バックカバー4は、芯金2の裏側から芯金2の一部を隠している。例えば、バックカバー4は、芯金2のボス部20及びスポーク部23が外部(運転者)から見えないように、芯金2の裏側においてボス部20及びスポーク部23の周辺部を覆っている。バックカバー4は、樹脂材料により成形される。例えば、バックカバー4は、ウレタンにより成形される。後述するように、バックカバー4は、芯金2の裏側に一体成形される。
【0038】
図3に示すように、エアバッグモジュール3は、折り畳まれたエアバッグクッションを収容するリテーナ31と、リテーナ31に支持されたインフレータ32と、折り畳まれたエアバッグクッション及びインフレータ32を運転手側から覆うモジュールカバー33と、を有している。
【0039】
リテーナ31、インフレータ32及びモジュールカバー33は、公知の構成を採用することができる。例えば、リテーナ31は、XY面に沿った底面35の中央にインフレータ32を取り付けると共に、底面35から立ちあがる周壁に留め具によってモジュールカバー33を取り付けられる。インフレータ32は、ガス噴出孔を有する低背の中空円盤体を有する。モジュールカバー33は、ホーンを鳴らすときに運転者が押すホーンスイッチとして機能することができる。車両緊急時、インフレータ32が、車両のセンサから信号を受信して作動し、エアバッグクッションにガスを供給する。ガスの供給を受けたエアバッグクッションは、急速に膨張してモジュールカバー33を破裂させて、車室空間の運転者側に向かって膨張し、運転者を拘束する。
【0040】
エアバッグモジュール3は、複数(ここでは3つ)のピン41、41、41を有している。ピン41は、エアバッグモジュール3と芯金2とを連結するためのものである。3つのピン41は、芯金2の3つの取付け孔24に対応する位置に設けられている。例えば、3つのピン41は、エアバッグモジュール3をZ軸方向に直交する平面においてアナログ12時間時計で見た場合、3時、6時及び9時の方向に配置される。ピン41は、リテーナ31の底面35からZ軸第1方向(芯金2側)へ向かって突出するように設けられており、芯金2の取付け孔24に挿入可能となっている。ピン41の先端部には、ピン41の軸方向に直交する方向に係止溝42が形成されている。係止溝42は、ピン41の周方向にわたって環状に形成されている。係止溝42は、エアバッグモジュール3を芯金2に取り付けた際に、後述する保持スプリング52(
図4参照)によって係止される。
【0041】
ピン41の基端側には、ピン41の外周を取り巻くようにしてコイルスプリング44が設けられている。コイルスプリング44は、一端側がリテーナ31の底面35に保持され、他端側が自由端となっている。エアバッグモジュール3が芯金2に組み付けられた際、コイルスプリング44の他端側が芯金2のベース部21に接触し、リテーナ31がコイルスプリング44によってベース部21から離反する方向に付勢される。
【0042】
この組付け状態では、エアバッグモジュール3は、コイルスプリング44によって、芯金2に対して相対変位可能(とりわけZ軸方向に進退可能)となる。このため、コイルスプリング44は、車体からの芯金2の振動をエアバッグモジュール3に伝えるダンパユニットとして機能し得る。また、コイルスプリング44は、モジュールカバー33がホーンスイッチとして機能する場合にも有利に機能する。例えば、モジュールカバー33が運転者によってZ軸第1方向に押されると、エアバッグモジュール3はコイルスプリング44の付勢力に抗してベース部21に近づく。このとき、エアバッグモジュール3及びベース部21のそれぞれに設けた接点を電気的に導通させ、ホーンを鳴らすことができる。
【0043】
図4~7は、芯金2を裏側から示している。
図6は、
図4からバックカバー4を省略した図であり、
図7は、
図6からエアバッグモジュール3を省略した図である。
図4~7に示すように、芯金2のベース部21の取付け孔24、24、24には、それぞれ、保持部材51、51、51が取り付けられている。また、3つの取付け孔24、24、24の近傍には、それぞれ、保持スプリング52、52、52が設けられている。エアバッグモジュール3の組付けに際して、エアバッグモジュール3の各ピン41が、対応する保持部材51の内部に挿入され、ピン41の係止溝42が、保持スプリング52に係止される。
【0044】
図8に示すように、保持部材51は、筒部61と、筒部61に形成された切欠き部62と、を有している。また、保持部材51は、筒部61の一端側の外周面からリング状に突出するフランジ部63を有している。保持部材51は、例えば合成樹脂などにより成形されたカラーとして機能し、エアバッグモジュール3のピン41と芯金2の取付け孔24との相対的な位置又は間隔を保持する。
【0045】
筒部61は、取付け孔24内に配置される。筒部61は、略円筒状に形成されており、内部にピン41を挿入可能に構成されている。切欠き部62は、筒部61の内部と外部とを連通するように、筒部61の軸方向の途中を切り欠くことで形成されている。例えば、切欠き部62は、筒部61の軸方向に直交する方向において筒部61の略半部まで切り欠かれており、筒部61の軸方向に直交する方向において筒部61の内部を外部に連通させている。フランジ部63は、取付け孔24の開口縁に当接される(参照:
図10(B))。具体的には、フランジ部63は、芯金2の表側においてベース部21の表面21aに当接し、保持部材51が取付け孔24から芯金2の裏側に抜け落ちることを阻止する。
【0046】
図9に示すように、保持スプリング52は、例えば金属などの線材により形成されており、弾性変形可能に構成されている。保持スプリング52は、芯金2のベース部21に取り付けられる取付け部71と、エアバッグモジュール3のピン41を係止するピン係止部72と、を有している。取付け部71は、略U字状部分82を有し、ピン係止部72は、直線状の部分からなっている。
【0047】
また、保持スプリング52は、直線的に延びる直線部81を有している。取付け部71は、一端が直線部81につながる略U字状部分82と、略U字状部分82の他端から延びる湾曲部73と、を有している。直線部81は、先端側に、湾曲部73から離れる方向にわずかに傾斜した傾斜部84を有している。直線部81の一部が、ピン係止部72となっている。具体的には、ピン係止部72は、直線部81の、傾斜部84と取付け部71との間の一部からなっている。
【0048】
取付け部71の略U字状部分82は、直線部81の延長上の第1腕部82aと、第1腕部82aに対向する第2腕部82bと、第1腕部82aと第2腕部82bとを連結する連結部82cと、を有している。第2腕部82bは、外向きに湾曲している。第1腕部82aと第2腕部82bとは、互いに切離方向へ弾性変形可能となっている。湾曲部73は、第2腕部82bの端部から直線部81に近づく方向に延び、かつ、その後、直線部81から離れる方向に延びている。すなわち、湾曲部73は、第2腕部82bとは逆に、内向きに湾曲している。
【0049】
ピン係止部72は、エアバッグモジュール3のピン41の係止溝42に係止可能に構成されている。ピン係止部72は、保持部材51の切欠き部62を介して保持部材51の筒部61内に位置され、ピン41を係止する。係止した状態では、ピン係止部72には復元力が作用して、ピン41が抜けないようになっている。具体的には、係止した状態では、ピン係止部72は、係止溝42によって外向きに押されるようになる。このとき、ピン係止部72を途中に有する直線部81が略U字状部分82につながっているため、ピン係止部72には、復元力が作用する。こうして、ピン係止部72が係止溝42に係止され、エアバッグモジュール3が芯金2に設置される。
【0050】
次に、
図10を参照して、保持スプリング52が取り付けられるスプリング装着部90について説明する。スプリング装着部90は、芯金2のベース部21に設けられている。詳細には、スプリング装着部90は、各取付け孔24の近傍において、ベース部21の裏側に形成されている(参照:
図7)。
【0051】
スプリング装置部90は、ベース部21のベース面21bから隆起した本体柱部91と、本体柱部91から延出された延出部92と、を有している。ベース面21bは、ベース部21の裏面を構成しており、ベース面21bよりもZ軸第1方向に本体柱部91やボス部20が突出するように形成されている(参照:
図7)。
【0052】
本体柱部91には、その先端側が挟まれるようにして保持スプリング52の取付け部71が取り付けられる。具体的には、本体柱部91の先端面91aに取付け部71の連結部82cが接触し、かつ、本体柱部91の先端側の両側面に取付け部71の第1腕部82a及び第2腕部82bがそれぞれ接触又は対向して、本体柱部91の先端側に略U字状部分82が取り付けられる。
【0053】
また、本体柱部91は、取付け部71の湾曲部73を受けるように湾曲した側部91dと、側部91dとは反対側の直線的な側部91eと、を有している。側部91dは、側部91eに向かうように内向きに湾曲している。本体柱部91の先端側に略U字状部分82が取り付けられた状態では、側部91dに湾曲部73が接触し、かつ、側部91eに直線部81の一部が接触又は対向するようになる。このとき、湾曲部73が側部91dによって外向きに押され、湾曲部73に復元力が作用し、湾曲部73が側部91dに押し付けられる。これにより、保持スプリング52が本体柱部91の長手方向に抜けないようになっている。
【0054】
他の実施態様では、湾曲部73や、湾曲した側部91dを設けないようにすることも可能である。例えば、取付け部71が、略U字状部分82を利用して、本体柱部91の長手方向に抜けないように本体柱部91に取り付けられるようにしてもよい。
【0055】
延出部92は、基端側が本体柱部91に連続していると共に、先端側がベース部21に対して非連結となっている。ここでは、延出部92は、本体柱部91の先端側において、本体柱部91の両側に延出されている。具体的には、延出部92は、本体柱部91の第1の側に延出された第1部分101と、第1の側とは反対側の、本体柱部91の第2の側に延出された第2部分102と、を有し、第1部分101及び第2部分102の先端側が、ベース部21に非連結となっている。
【0056】
第1部分101及び第2部分102は、本体柱部91の長手方向に直交する方向に延出されている。また、第1部分101と第2部分102とは、本体柱部91の長手方向においてオフセットされている。ここでは、第1部分101の方が、第2部分102よりも本体柱部91の先端側に位置している。
【0057】
他の実施態様では、第1部分101及び第2部分102の一方又は両方を、本体柱部91の長手方向に直交する方向以外に延出させることも可能である。また、第1部分101及び第2部分102の一方を省略し、本体柱部91の片側からのみ延出する延出部92とすることも可能である。
【0058】
第1部分101及び第2部分102は、本体柱部91の高さ方向の一部から延出されており、第1部分101及び第2部分102とベース部21のベース面21bとの間には、保持スプリング52のための空間が構成されている。例えば、第1部分101及び第2部分102は、本体柱部91におけるZ軸第1方向の部位からベース面21bと平行に延出されている。そして、第1部分101及び第2部分102の各下面とベース面21bとの間には、保持スプリング52の取付け部71を位置させることが可能な隙間が構成されている。
【0059】
第1部分101及び第2部分102は、取付け部71に対して、保持スプリング52の抜止めを構成する。例えば、第1部分101は、取付け部71の第1腕部82aの下側(Z軸第1方向)に位置し、第1腕部82aに接触して保持スプリング52の抜止めを構成する。同様に、第2部分102は、取付け部71の第2腕部82bの下側(Z軸第1方向)に位置し、第2腕部82bに接触して保持スプリング52の抜止めを構成する。
【0060】
このような抜止めを構成するために、第1部分101及び第2部分102の形状、サイズ又は寸法などが工夫されている。例えば、本体柱部91の長手方向に直交する方向における、第1部分101の先端側と第2部分102の先端側との間の距離は、同方向における、取付け部71の最大幅よりも大きくなっている。取付け部71の最大幅は、ここでは、第1腕部82aと第2腕部82bの最も外側に湾曲した部位との間の距離となっている。また、別の見方をすると、第1部分101の先端側及び第2部分102の先端側は、それぞれ、本体柱部91から見て、取付け部71よりも外側に位置していると言える。
【0061】
第1部分101の先端側とこれが非連結状態で対向するベース部21との間の隙間、及び、第2部分102の先端側とこれが非連結状態で対向するベース部21との間の隙間は、それぞれ、保持スプリング52の線径よりも大きくなっている。例えば、第1部分101の先端側は、保持スプリング52の線径よりも、ベース部21における部位から離れている。同様に、第2部分102の先端側は、保持スプリング52の線径よりも、ベース部21における部位から離れている。このような寸法設定とすることで、保持スプリング52の取り付けに際して、保持スプリング52を当該隙間を通過させることができるようになっている。
【0062】
第1部分101と第2部分102とは、サイズ及び長さの少なくとも一つが互いに異なっている。例えば、第1部分101は、第2部分102よりも、僅かであるが太くかつ長くなっている。ただし、他の実施態様では、第1部分101と第2部分102とを同サイズ及び同長さとしてもよい。
【0063】
ベース部21は、第1部分101の先端側及び第2部分102の先端側に対向する位置にそれぞれ開口部111、112を有している。ここでは、開口部111、112は、略方形の開口であり、それぞれ、第1部分101及び第2部分102の全体に対向している。このため、開口部111と開口部112との間のベース面21bの部分から本体柱部91が隆起している。
【0064】
また、ベース部21は、取付け孔24を挟んで開口部111と反対側に開口部113を有している。開口部113は、同様に略方形の開口となっている。開口部113は、保持スプリング52の直線部81(直線部81の直線部分、傾斜部84、及び/又はこの直線部分と傾斜部84との境界)の一部に対向している。保持スプリング52の端部(傾斜部84の端部)は、開口部113を超えて、ベース面21b上に位置又はベース面21bに対向している。
【0065】
なお、本体柱部91は、先端面91aと反対側に向かって延びており、先端面91aと反対側において本体柱部91の長手方向と直交する方向に延びるブリッジ部120を有している。ブリッジ部120は、例えば、延出部92の第1部分101と同方向に向かって延び、開口部113を横切って、ボス部20に連結されている。ブリッジ部120は、その下側(開口部113側)を保持スプリング52の直線部81を通過可能に構成されている。また、本体柱部91は、先端面91aとブリッジ部120との間の、取付け孔24に対応する位置で、延出部92の第2部分102側に半円周状に湾曲している。ただし、他の実施態様では、このような半円周状の湾曲部を設けなくてもよく、本体柱部91は、長手方向に沿って直線的に延びる部位であってもよい。
【0066】
スプリング装着部90に保持スプリング52が取り付けられた状態では、上述したように、本体柱部91の先端側に取付け部71の略U字状部分82が取り付けられ、本体柱部91の側部91dで取付け部71の湾曲部73を受け、本体柱部91の側部91eに直線部81の一部が接触又は対向する。この状態では、延出部92の第1部分101及び第2部分102が、取付け部71に対して保持スプリング52の抜け止めを構成する。なお、ブリッジ部120も、直線部81に対して保持スプリング52の抜け止めを構成する。保持スプリング52のピン係止部72は、保持部材51の切欠き部62に挿入される。この状態でエアバッグモジュール3のピン41が保持部材51の筒部61内に挿入されると、ピン41によってピン係止部72が弾性的に変形し、その復元力によってピン41の係止溝42に係止される。
【0067】
続いて、
図11を参照して、バックカバー4の一例を説明する。バックカバー4は、芯金2の裏側に一体成形されるものであり、芯金2の一部を隠す。例えば、バックカバー4は、芯金2のスポーク部23を覆うスポークカバー部131、132、133を有している。また、バックカバー4は、芯金2のベース部21の周縁を囲繞する周壁部135を有している。周壁部135は、ベース部21の周縁からZ軸第1方向に立ち上がっており、その根元側の部分でスポークカバー部131、132、133につながっている。
【0068】
次に、
図12を参照して、ステアリングホイール1の製造方法について説明する。まず、芯金2を鋳造により成形する(S11)。次に、芯金2の裏側にバックカバー4を樹脂材料により成形する(S12)。例えば、芯金2を金型にセットし、ウレタンによりバックカバー4をインサート成形する。これにより、芯金2の裏側にバックカバー4が一体成形される。次に、保持部材51を芯金2の取付け孔24に取り付ける(S13)。具体的には、芯金2の表側から保持部材51の筒部61を取付け孔24内に挿入し、フランジ部63をベース部21の表面21aに当接させる。
【0069】
次いで、保持スプリング52を芯金2の裏側に取り付ける(S14)。この一例の流れについて、
図13を参照して説明する。まず、保持スプリング52の端部(傾斜部84の端部)を開口部113に向け(
図13(A))、開口部113に挿入して、保持スプリング52をベース面21b上で水平姿勢にする(
図13(B))。上述したように、延出部92の第1部分101の先端側がベース部21に非連結であり、ベース部21との間の隙間が保持スプリング52の線径よりも大きいため、保持スプリング52を隙間を通過させてベース面21b上に位置させることができる。
【0070】
次に、保持スプリング52を取付け孔24に向かって移動させ、ピン係止部72を切欠き部62を介して保持部材51の筒部61内に挿入する(
図13(C))。これにより、ピン係止部72が取付け孔24内に位置される。次に、保持スプリング52を90度回転させる(
図13(D))。すると、保持スプリング52の取付け部71がベース面21bと延出部92との間に位置するようになる。最後に、保持スプリング52をベース面21b上で水平移動させ(
図13(E))、取付け部71を本体柱部91を挟むようにして取り付け、延出部92によって取付け部71に対して保持スプリング52の抜き止めを構成する。これにより、保持スプリング52の取付け工程(S14)が完了する。このような取付け工程では、芯金2にバックカバー4が成形されていた状態であっても、芯金2の中央部の中で保持スプリング52を取り付けることができる。
【0071】
最後に、芯金2の表側にエアバックモジュール3を組み付ける(S15)。具体的には、保持スプリング52を取り付けた芯金2を裏返して、芯金2の表側をエアバックモジュール3のピン41に対向させる。上述した保持スプリング52の取付け態様や保持部材51の取付態様によって、芯金2を裏返しても、保持部材51及び保持スプリング52が芯金2から落下しないようになっている。エアバックモジュール3のピン41を取付け孔24内の筒部61内に挿入し、係止溝42にピン係止部72を係止させる。すなわち、スナップフィットさせる。これにより、芯金2にエアバックモジュール3が組み付けられ、ステアリングホイール1が製造される。
【0072】
以上説明したとおり、実施形態に係るステアリングホイール1によれば、芯金2のベース部21には、保持スプリング52が取り付けられるスプリング装着部90が設けられる。スプリング装着部90は、ベース部21のベース面21bから隆起した本体柱部91と、基端側が本体柱部91に連続し、本体柱部91から延出された延出部92と、を有する。保持スプリング52の取付け部71は、ベース面21bと延出部92との間に位置して、本体柱部91を挟むようにして取り付けられる。延出部92は、取付け部71に対して保持スプリング52の抜止めを構成し、延出部92の先端側は、ベース部21に非連結となっている。
【0073】
この態様によれば、保持スプリング52の抜け止めを構成するスプリング装着部90の延出部92が、その先端側をベース部21に対して非連結にしているため、延出部92の先端側にはベース部21からの振動が直接的に入力されない。したがって、抜け止めのための部分(延出部92)を介した保持スプリング52への振動の影響を低減することができる。加えて、このような非連結により延出部92の先端側とベース部21との間には隙間ができるため、ベース部21の軽量化に寄与できると共に、保持スプリング52の取付け性の向上にも寄与できる。例えば、バックカバー4の成形後に保持スプリング52を取り付けることができるようになり、ステアリングホイール1の製造プロセス上も有利となる。
【0074】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。例えば、保持部材51を省略することも可能である。
【符号の説明】
【0075】
1…ステアリングホイール、2…芯金、3…エアバッグモジュール、4…バックカバー、20…ボス部、21…ベース部、21a…表面、21b…ベース面、22…リム部、23…スポーク部、24…取付け孔、31…リテーナ、32…インフレータ、33…モジュールカバー、35…底面、41…ピン、42…係止溝、44…コイルスプリング、51…保持部材、52…保持スプリング、61…筒部、62…切欠き部、63…フランジ部、71…取付け部、72…ピン係止部、73…湾曲部、81…直線部、82…略U字状部分、82a…第1腕部、82b…第2腕部、82c連結部、84…傾斜部、90…スプリング装着部、91…本体柱部、91a…先端面、91d、91e…側部、92…延出部、101…第1部分、102…第2部分、111、112、113…開口部、120…ブリッジ部、131、132、133…スポークカバー部、135…周壁部