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特許7503649手術中に患者の下肢を位置決めするための装置、及び上記装置を含む外科的位置決めシステム
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  • 特許-手術中に患者の下肢を位置決めするための装置、及び上記装置を含む外科的位置決めシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】手術中に患者の下肢を位置決めするための装置、及び上記装置を含む外科的位置決めシステム
(51)【国際特許分類】
   A61G 13/12 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
A61G13/12 B
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022564121
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 IB2021053229
(87)【国際公開番号】W WO2021214643
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】102020000008854
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512073792
【氏名又は名称】メダクタ・インターナショナル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】ベルナルドーニ,マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】シッカルディ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ,エルメーテ
(72)【発明者】
【氏名】ギアルディエロ,ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】ロード,フレデリック
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-514110(JP,A)
【文献】特表2015-528367(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0238380(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端(2p)を介して、患者のための支持装置(100)に接続可能であり、前記患者の下肢の牽引軸(X)を画定する少なくとも1つの支持構造(2)と、
前記支持構造(2)上でスライド移動可能な牽引スライド(3)と、
前記牽引スライド(3)に接続可能な患者の下肢の遠位端のための把持体(4)と、
を備え、
前記支持構造(2)は、内部可動ロックシステムを含む少なくとも1つのアクチュエータ(8)を有し、患者のための前記支持装置に接続されると吊り下げられ、
前記牽引スライド(3)は、ハンドル(31)及びレバーシステム(32)を有し、前記支持構造(2)の空間内での自動ロック解除及び移動を達成するために、前記レバーシステム(32)をスライド並進ロック位置から第1スライド並進ロック解除位置へ移動させることによって作動可能な第1コマンドにより、支持構造(2)に沿った前記牽引スライド(3)のスライドロックを解除することができ、前記レバーシステム(32)を第2スライド並進ロック解除位置へ移動させることによって作動可能な第2コマンドにより、前記牽引スライド(3)と流体接続されたアクチュエータ(8)の可動ロックシステムを解除することができる、
手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項2】
前記支持構造(2)は、
前記牽引スライド(3)のためのスライドガイド(6)を含みかつ前記牽引軸(X)と平行な長手方向軸(5a)に沿って直線状に展開する中央支持バー(5)と、
前記中央支持バー(5)の近位端(5p)に配置されかつ横方向に延びる、患者のための支持装置(100)への接続部分(9)と、を有し、
前記少なくとも1つのアクチュエータ(8)は、前記接続部分(9)から前記中央支持バー(5)まで延在して、多角形構造を画定する、
請求項1に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項3】
前記牽引スライド(3)は、前記中央支持バー(5)に取り付けられた前記スライドガイド(6)上をスライドする1つ又は複数の滑り止め(7)に結合される、
請求項2に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項4】
前記スライドガイド(6)は、前記中央支持バー(5)の長手方向軸(5a)に沿って整列された複数の孔(11)を有し、前記複数の孔(11)は、互いに平行なそれぞれの中心軸(11a)を有する、
請求項2又は3に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項5】
前記レバーシステム(32)は、前記支持構造(2)の空間内において、
スライド並進ロック位置と、
前記第1コマンドが作動される第1スライド並進ロック解除位置と、
前記第2コマンドが作動される第2スライド並進ロック解除位置と、
をとることができる解除レバー(321)を有し、
前記解除レバー(321)の前記スライド並進ロック位置、前記第1スライド並進ロック解除位置、及び前記第2スライド並進ロック解除位置は、順に配置され、作動可能である、
請求項に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項6】
前記レバーシステム(32)は、前記中央支持バー(5)の縦軸(5a)に直交する垂直方向に沿ってスライド移動可能な先端(322)をさらに備え、
前記解除レバー(321)は、その前記第1スライド並進ロック解除位置で、前記先端(322)に作用して、前記スライドガイド(6)に存在する前記複数の孔(11)のそれぞれの孔(11)から係合を解除し、前記スライドガイド(6)に沿って前記牽引スライド(3)の並進を可能にする、
請求項5に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項7】
前記レバーシステム(32)は、前記第1スライド並進ロック解除位置に続く前記第2スライド並進ロック解除位置で前記解除レバー(321)によって作動可能な解除システム(324)をさらに備え、
前記解除システム(324)は、前記アクチュエータ(8)の前記内部可動ロックシステムと相互作用して、前記支持構造(2)の空間における回転運動をロック解除する、
請求項5に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項8】
前記中央支持バー(5)は、少なくとも一方の側に、前記中央支持バー(5)に沿った前記牽引スライド(3)の位置を検出するための目盛付きスケール(12)を有する、
請求項2に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項9】
前記中央支持バー(5)と前記接続部分(9)との間、前記接続部分(9)と前記アクチュエータ(8)との間、及び前記アクチュエータ(8)と前記中央支持バー(5)との間に配置された複数の二重結合部(13)を備え、前記支持構造(2)が空間内で回転運動を実行できるようにし、前記牽引スライド(3)が前記スライドガイド(6)に沿って並進できるようにする、
請求項8に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項10】
前記アクチュエータ(8)は、少なくとも1つの流体ばね(8’)を有し、前記アクチュエータ(8)の前記内部可動ロックシステムは、前記流体ばね(8’)のステム可動ロックシステムを含む、
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項11】
前記牽引スライド(3)に関連付け可能であり、前記把持体(4)に接続可能な回転グループ(14)を備え、
前記回転グループ(14)は、第1構成(14’)及び第2(14”)構成を提示し、実施される外科的処置に応じて、及び/又は装置が処置される肢に関連付けられているかどうかに応じて、前記手術中に患者の下肢を位置決めするための装置上で代替的又は同時に操作することを実施可能である、
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項12】
前記回転グループ(14)は、前記第1構成(14’)によると、前記患者の下肢を前記牽引軸(X)に対して継続的に内部又は外部方向に回転させるように適合されている、
請求項11に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項13】
前記回転グループ(14)は、第1構成(14’)において、
前記牽引スライド(3)に接続するための本体(141)と、
前記牽引スライド(3)に接続された前記回転グループ(14)が下肢の位置と自然な傾きに適応できるようにする揺動グループ(142)と、
コマンドハンドホイール(143)と、
前記コマンドハンドホイール(143)からの回転を下肢の前記把持体(4)に伝達できるロッド(144)と、
前記ロッド(144)の第1の端部(144b)にしっかりと接続され、前記回転グループ(14)を下肢の遠位端の前記把持体(4)に接続する接続フック(145)と、
下肢に加えられた回転角度を検出するための目盛付きリングナット(146)と、
を備える、請求項12に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項14】
下肢の遠位端の前記把持体(4)に接続可能であり、前記牽引スライド(3)によって支持される、下肢の牽引におけるミリ単位の運動のための微牽引機構(15)を備える、
請求項13に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項15】
前記微牽引機構(15)は、
前記把持体(4)に接続可能なネジ付きバー(151)と、
前記牽引スライド(3)が前記支持構造(2)に対して不動であるとき、前記牽引スライド(3)に対して前記把持体(4)のミリ単位の並進を作動させるためのコマンド要素(152)と、を備える、
請求項14に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項16】
前記微牽引機構(15)のネジ付きバー(151)は、前記回転グループ(14)の前記ロッド(144)にねじ込み可能であり、
前記コマンド要素(152)は、前記ネジ付きバー(151)を回転させて、前記ロッド(144)とのねじ込みを促進し、続く牽引スライド(3)に対するロッド(144)及び把持体(4)の並進を促進する、
請求項15に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項17】
前記ロッド(144)は、目盛付きであり、前記回転グループ(14)を通ってスライドする、
請求項16に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項18】
前記回転グループ(14)は、前記第2構成(14”)によると、個別の方法で、15°から25°の間で事前定義された角度ピッチに従い、前記患者の下肢を前記牽引軸(X)に対して内部又は外部方向に回転させるように適合されている、
請求項11に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項19】
前記回転グループ(14)は、前記第2構成(14”)によると、
回転ピン(242)によって前記牽引スライド(3)に接続された揺動体(241)と、
前記揺動体(241)に回転可能に接続され、前記回転グループ(14)を前記下肢の前記把持体(4)に接続するための前記接続フック(145)を第1端(243b)で担持する回転軸(243)と、
前記回転軸(243)に接続され、所定の角度ピッチに従って前記回転軸(243)を回転させることができる操作器官(244)と、
前記操作器官(244)の動きをロック及びロック解除するように適合されている操作器官(244)と係合するロックピン(245)と、
を有する、
請求項18に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項20】
前記支持構造(2)は、遠位端(5d)に、手術前の設定段階で前記手術中に患者の下肢を位置決めするための装置(1)を移動させるための少なくとも1つのホイール(16)を有する、
請求項1~請求項19のいずれか1項に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項21】
患者用支持装置(100)付き前記手術中に患者の下肢を位置決めするための装置(1)の前記接続部分(9)は、迅速結合(18)を有する、
請求項2に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置。
【請求項22】
請求項1~請求項21のいずれか1項に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置(1)と、
接続して補強するための少なくとも1つのブラケット(10)を介して前記手術中に患者の下肢を位置決めするための装置(1)に結合された患者用の支持装置(100)と、
を備える外科用位置決めシステム。
【請求項23】
患者のための前記支持装置(100)は、手術台、又は手術台を覆うように配置されたアダプタ平面である、
請求項22に記載の外科用位置決めシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術中に患者の肢、特に下肢を位置決めするための装置、及び上記装置を備える手術位置決めシステムに関する。
【0002】
本発明の装置の主題は、整形外科手術の分野に適用され、特に前方アプローチによる股関節置換手術及び関節鏡手術において有用な用途を見出す。
【背景技術】
【0003】
従来技術は、患者の股関節プロテーゼの部分的又は全体的な置換のための様々な外科技術を提案している。
【0004】
現在広く使用されている技術は、その低侵襲性が特に高く評価されており、商品名AMIS(登録商標)で知られているが、大腿筋膜張筋と縫工筋/大腿直筋の間の筋肉間面を通過して股関節に到達する前方アプローチを想定している。しかしながら、この技術を正しく実行するためには、患者の下肢の一連の操作を行い、外科医が常に手術部位への最適なアクセス条件で手術できるようにする必要がある。
【0005】
この場合、最初の嚢切開手術を容易にするために、仰臥位の患者の手足を最初に軽く牽引する必要がある。その後、次の大腿骨頸部の骨切り術の前に牽引力をわずかに増加させる必要がある。骨切り術が行われると、切断された大腿骨頭を引き抜くことができるように、さらなる牽引とその後の関節の外旋が適用される。次に、寛骨臼が粉砕されて交換用カップが配置される前に、肢の牽引が解除される。大腿義足の導入に備えて、再度牽引を行い、90°以上の外旋を行い、牽引を解除し、肢を過伸展させて内転させる。その後、縫合前に肢を元の位置に戻す。
【0006】
上記の外科技術の簡単な説明から容易に明らかなように、実施される操作の数と精度は、下肢を位置決めするための補助装置の使用を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
今日まで知られている位置決め装置は、この分野のニーズを実質的に満たしているが、それにもかかわらず、未解決の問題がある。
【0008】
まず、そのような装置は専任の操作者によって操作されなければならない。外科医と器械操作者に加えて、手術室に追加の人員が必要とあり、手術の費用が増加する。さらに、下肢を動かす操作を第三者の操作者に委任する必要があるため、外科医は自分の作業を他の人の作業と調整することを余儀なくされ、不便につながる可能性がある。
【0009】
これらの問題に対処するために、国際公開第2014/045199号は、同出願人に代わり、牽引軸と延長軸が、好ましくは空気圧タイプのアクチュエータによって制御される装置を提案している。制御ペダルによって、外科医はアクチュエータを適切に操作して、手術のさまざまな段階で手足の牽引及び伸展運動を引き起こすことができる。
【0010】
しかしながら、この解決策でさえも、手術台上に組み立てる際に多くの人員又は専用の二次装置を必要とする装置であるため、主に重量及び大きさに関連する問題がないわけではない。さらに、構造として重量が大きいため、装置は脚部を有することになるが、これは外科医及び装置自体を手術部位内で移動させる担当者の動きを妨げる。さらに、現在使用されている装置は、まさに地面に置かれているため、空間、特に高さ域において、外科医が容易かつ自由に動くのを妨げている。
【0011】
現在知られている下肢位置決め装置は、牽引や回転などの可能性のある動きの複雑な保持機構を備えており、肢を動かせるようにするために操作者が最初にロックを解除する必要があり、したがって外科手術がスムーズではなくなる。
【0012】
出願人はまた、AMIS(登録商標)手術の終了時に、(伸展/牽引動作に続く)脚の伸展及び(外転/内転に続く)その回転に関して、手術した脚を手術前の段階と同じ位置に戻すことがしばしば困難であることを発見した。患者に不快感を与えないように、脚を初期状態と同じ状態に再配置することが基本である。したがって、脚自体の術前位置との比較が不可欠である。
【0013】
したがって、本発明の根底にある技術的課題は、従来技術に記載された欠点を解決し、構造的に軽く、かさばらず、特に外科医だけで十分に操作できる位置決め装置を考案することである。
【0014】
本発明の別の目的は、使用が簡単な移動機構を提供し、外科医が構造物、つまり肢を滑らかに移動できるようにする位置決め装置を提案することである。
【0015】
最後に、本発明の目的は、正しい脚の位置を正確かつ簡単に確認し、手術を受けた脚の手術前の位置と迅速に比較できる位置決め装置を提供することである。
【0016】
これらを含め、他の目的は、添付の特許請求の範囲に記載の手術中に患者の下肢を位置決めするための装置、及び上記装置を備える手術位置決めシステムによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
特に、第1の態様によれば、本発明は、近位端を介して、患者のための支持装置に接続可能であり、患者の下肢の牽引軸を画定する少なくとも1つの支持構造と、支持構造上でスライド移動可能な牽引スライドと、牽引スライドに接続可能な患者の下肢の遠位端のための把持体と、を備える手術中に患者の下肢を位置決めするための装置に関する。支持構造は、患者のための支持装置に接続されると、吊り下げられ、牽引スライドと油圧接続されており、空間内で支持構造を移動させる少なくとも1つのアクチュエータを含む。アクチュエータは、内部可動ロックシステムを有する。
【0018】
牽引スライドはさらに、ハンドル及びレバーシステムを有し、支持構造の空間内での自動ロック解除及び移動を達成するために、レバーシステムをロック位置から第1ロック解除位置へ移動させることによって作動可能な第1コマンドにより、支持構造に沿ったスライドの摺動ロックを解除することができ、レバーシステムを第2ロック解除位置へ移動させることによって作動可能な第2コマンドにより、アクチュエータの可動ロックシステムを解除することができる。
【0019】
支持構造は、牽引スライドのためのスライドガイドを含みかつ下肢の牽引軸と平行な長手方向軸に沿って直線状に展開する中央支持バーを有する。支持構造は、中央バーの近位端に配置されかつ横方向に延びる、患者のための支持装置への接続のための部分をさらに有する。アクチュエータは、接続部分から中央バーまで延在して、多角形構造を画定する。
【0020】
さらに、牽引スライドは、中央バーに取り付けられたスライドガイド上をスライドする1つ又は複数の滑り止めに結合される。
【0021】
スライドガイドは、中央支持バーの長手方向軸に沿って整列された複数の孔を有する。孔は、互いに平行なそれぞれの中心軸を有する。スライド内部の先端は、この穴のひとつに結合し、スライドガイドに沿った牽引スライドの動きをロックする。
【0022】
レバーシステムは、支持構造の空間内において、スライド静止又はスライド並進ロック位置と、第1コマンドが作動される第1スライド並進ロック解除位置と、第2コマンドが作動される第2スライド並進ロック解除位置と、の3つの位置をとることができる解除レバーを有する。3つの位置は、順番に配置される。したがって、支持構造の空間内で並進スライドの移動をロック解除し、回転移動をロック解除するコマンドを順に作動可能である。
【0023】
レバーシステムは、中央支持バーの縦軸に直交する垂直方向に沿ってスライド移動可能な先端をさらに備える。解除レバーは、その第1のロック解除位置で、先端に作用して、スライドガイドに存在する複数の孔のそれぞれの穴から係合を解除し、スライドガイドに沿って牽引スライドの並進を可能にする。これはすべて、第1コマンドがアクティブ化された後に発生する。
【0024】
レバーシステムは、第1ロック解除位置に続く第2ロック解除位置で解除レバーによって作動可能な解除システムをさらに有する。解除システムは、アクチュエータの内部可動ロックシステムと相互作用して、支持構造の空間運動をロック解除する。これはすべて、第2コマンドがアクティブ化された後に発生する。
【0025】
中央支持バーは、少なくとも一方の側に、支持バーに沿って牽引スライドの位置を検出し、術前位置での下肢の長さを確立するための目盛り付きスケールを有する。この測定値は、手術の最後に肢の正しい位置と位置合わせを復元するために使用される。
【0026】
装置はさらに、中央支持バーと接続部分との間、接続部分とアクチュエータとの間、及びアクチュエータと中央支持バーとの間に配置された複数の二重結合部を備える。これらの二重結合部により、支持構造が空間内で適切な回転運動を行い、牽引スライドがスライドガイドに沿って並進できるようになる。
【0027】
アクチュエータは、少なくとも1つの流体ばね、好ましくは2つのガススプリングを有する。アクチュエータ、したがって流体ばねには、空間内での移動が必要でないときに、アクチュエータ、したがって支持構造の移動をロックするための内部可動ロックシステムが提供される。
【0028】
装置はまた、牽引スライドに関連付け可能であり、把持体に接続可能な回転グループを備える。回転グループは、第1及び第2構成を有し、実施される外科的処置に応じて、及び/又は装置が処置される肢又は処置されない肢に関連付けられているかどうかに応じて、装置上で代替的又は同時に実施可能である。
【0029】
さらに、第1構成による回転グループは、好ましくは、手術肢を管理するために、低侵襲アプローチAMIS(登録商標)(又はDAA直接前方アプローチ)による股関節置換術に使用され、一方、第2構成による回転グループは、一般に「対側」と呼ばれる非手術肢をサポートするために、低侵襲アプローチAMIS(登録商標)(又はDAA直接前方アプローチ)による股関節置換術、及び関節鏡視下手術で有利に使用される。
【0030】
回転グループは、第1構成によれば、患者の下肢を継続的に、かつ手術段階中に外科医によって確立されたピッチに従って、患者の矢状軸に対して内側又は外側の方向に、つまり牽引軸に対して内側又は外側の方向に回転するように適合される。
【0031】
回転グループは、第1構成において、牽引スライドに接続するための本体と、牽引スライドに接続された回転グループが下肢の位置と自然な傾きに適応できるようにする揺動グループと、外科医により操作可能なコマンドハンドホイールと、コマンドハンドホイールからの回転を下肢の把持体に伝達できるロッドと、ロッドの第1の端部にしっかりと接続され、回転グループを下肢の遠位端の把持体に接続する接続フックと、下肢に加えられた回転角度を検出するための目盛付きリングナットと、を備える。
【0032】
さらに、位置決め装置は、下肢の遠位端の把持体に接続可能であり、牽引スライドによって支持される、下肢の牽引におけるミリ単位の運動のための微牽引機構を備える。
【0033】
微牽引機構又はミリメートル牽引機構は、前述の接続フックによって把持体に接続可能であり、牽引スライドへの接続を可能にする前述の揺動グループによって牽引スライドによって支持されるロッドを有する。このようにして、ロッドは下肢の位置と自然な傾きに適応する。微牽引機構又はミリメートル牽引機構は、牽引スライドが支持構造に対して固定されている場合牽引スライド及び支持構造に対する把持体のミリ単位の並進を作動するためのコマンド要素をさらに備える。
【0034】
微牽引機構は、ロッドにねじ込み可能なねじ付きバーも有する。コマンド要素は、ロッドとのねじ込みを促進するためにねじ付きバーを回転させ、牽引スライドに対するロッドと把持体の並進運動を引き起こす。
【0035】
微細牽引機構のロッドは、第1構成によると、目盛りが付けられ、回転グループの中をスライドする。
【0036】
回転グループは、第2構成によると、個別の方法で、事前定義された角度ピッチに従い、患者の下肢を矢状軸に対して内部又は外部方向に、つまり牽引軸に対して内部又は外部方向に回転させるように適合されている。
【0037】
第2構成において、回転グループは、回転ピンによって牽引スライドに接続された揺動体と、揺動体に回転可能に接続され、回転グループを下肢の遠位端の把持体に接続するための接続フックを自由端で担持する回転軸と、回転軸に接続され、所定の角度ピッチに従って回転軸を回転させることができる操作器官と、操作器官の動きをロック及びロック解除するように適合されている操作器官と係合するロックピンと、を有する。
【0038】
支持構造は、遠位端に、手術前の設定段階で装置を移動させるための少なくとも1つのホイールを有する。このホイールは、地面に置かれた他の点や支持点を持たない装置全体の移動を可能にし、手術台に近づけて持ち上げ、吊り下げた状態で手術台又は患者の臥位面に接続する。
【0039】
装置を患者の臥位面に接続するための部分は、装置のフック及びフックからの取り外し操作を容易にするための迅速結合を有する。
【0040】
第2の態様によれば、本発明はまた、前述のものによる位置決め装置と、接続及び支持装置強化のための少なくとも1つのブラケットを介して位置決め装置に結合された患者のための支持装置と、を備える外科用位置決めシステムに関する。
【0041】
患者のための支持装置は、手術台、又は手術台を覆うように配置されたアダプタ平面であってもよい。
【0042】
さらなる特徴及び利点は、非限定的な例として与えられた統合された図面を参照して、本発明の2つの好ましいが排他的ではない本発明の実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明は、例としてのみ提供される添付の図面を参照して、以下の詳細な説明によってより明確になるであろう。
図1】本発明の第1構成による患者の下肢を位置決めするための装置の斜視図である。
図2】本発明の第2構成による患者の下肢を位置決めするための装置の斜視図である。
図3A】本発明の装置の主題の牽引軸Xに平行な縦軸に沿った部分的に断面になっており、いくつかの詳細をよりよく強調するために回転グループが取り除かれ、解除レバーがロック又は休止状態にある斜視図である。
図3B】本発明の装置の主題の牽引軸Xに平行な縦軸に沿って部分的に断面になっており、いくつかの詳細をよりよく強調するために回転グループが取り除かれ、解除レバーが第1並進ロック解除状態にある斜視図である。
図3C】本発明の装置の主題の牽引軸Xに平行な縦軸に沿って部分的に断面になっており、いくつかの詳細をよりよく強調するために回転グループが取り除かれ、支持構造の空間において解除レバーが第2ロック解除状態にある斜視図である。
図4】本発明の主題である、装置の残りの部分から分離された、第1構成による、回転グループのみの斜視図である。
図5】本発明の主題である、装置の残りの部分から分離された、第2構成による、回転グループのみの斜視図である。
図6】特に、装置を患者の支持装置に接続するための部分を示す、装置の別の詳細を示す斜視図である。
図7】第1構成による、本発明の外科用位置決めシステムの主題の斜視図である。
図8】第2構成による、本発明の外科用位置決めシステムの主題の斜視図である。
図9】第3の構成による、本発明の外科用位置決めシステムの主題の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
前述の図では、本発明による手術中に患者の下肢を位置決めするための装置は、まとめて1と記載されている。
【0045】
本発明の主題である位置決め装置1は、低侵襲アプローチAMIS(登録商標)(又はDAA直接前方アプローチ)による股関節置換外科処置及び股関節鏡検査の外科処置において使用することができる。
【0046】
さらに、位置決め装置1は、支持及び位置決め手段として手術を受ける肢に、又は支持手段のみとして手術を受けない肢に使用することができる。
【0047】
以下に説明するように、特定の用途及び使用される外科的処置に応じて、装置は異なる構成を呈する。
【0048】
位置決め装置1は、外科用位置決めシステム200に統合され、これは一般に、脚ごとに1つずつ、2つの位置決め装置1を有する。実施される外科手術及び2つのタイプの装置の組み合わせに応じて、図7、8及び9に示され、以下で詳細に説明されるように、位置決めシステム200の異なる構成もあり得る。
【0049】
具体的には、この装置は、股関節置換術において、低侵襲アプローチAMIS(登録商標)(又はDAA直接前方アプローチ)を介して手術される脚に使用され、最終的には、手術中の非手術肢の指示/位置決めとして、又は同じ外科的処置、又は関節鏡視下外科的処置中の指示/位置決めの手段としても使用される。
【0050】
本発明による位置決め装置1は、近位端2pを介して患者用の支持装置100に接続可能な少なくとも1つの支持構造2を備える。好ましくは、患者のための支持装置100は、手術台、又は少なくとも部分的に手術台を覆うように配置されたアダプタテーブルである。
【0051】
支持構造2は、患者の手足の牽引軸Xに沿って展開する。
【0052】
装置1はさらに、支持構造2上をスライド移動可能であり、患者の下肢の遠位端(足)用の把持体4が接続可能な、肢を動かすための牽引スライド3を備える。具体的には、把持体4は、肢自体又は足に外傷を引き起こすことなく、牽引又は回転運動を肢全体に伝達するために、足の周りを包む一種のブーツ又は装具であってもよい。
【0053】
図1又は2に示されるように、支持構造2は、牽引軸Xに平行な縦軸5aに沿って直線状に展開する中央支持バー5を有する。中央支持バー5は、牽引スライド3のためのスライドガイド6を含む。
【0054】
特に、牽引スライド3は、中央バー5に取り付けられたスライドガイド6上をスライドする、(図3A~3Cに見られる)1つ以上の滑り止め7に結合される。中央支持バー5の少なくとも一方の側には、支持バー5自体に沿って牽引スライド3の位置を検出し、下肢の長さを術前位置に設定するように適合された目盛付きスケール12が配置されている。好ましくは、中央支持バー5の両側に1つずつ、2つの目盛付きスケール12がある。
【0055】
支持構造2はさらに、支持構造2全体を空間内で移動させるために、牽引スライド3に油圧接続された少なくとも1つのアクチュエータ8を有する。
【0056】
好ましくは、アクチュエータ8は、少なくとも1つの流体ばね、例えばガススプリング8’を備える。図示の構成では、2つのガススプリング8’が設けられている。好ましくは、アクチュエータ8は、内部可動ロックシステム、具体的には流体(好ましくはガス)ばねのステム可動ロックシステム8’を備える。
【0057】
支持構造2は、患者用の支持装置に接続されると、懸架される。すなわち、支持構造2は、いかなる方法でも地面に置かれることなく、患者が横になっている装置(臥位面又はテーブル)への接続によってのみ支持される。
【0058】
したがって、動作段階で使用する場合及び使用しない場合のどちらの場合においても、装置1を支持するために、床に設置され、支持構造から下向きに突出する脚はない。
【0059】
これに関して、中央支持バー5の近位端5pに、支持構造2を患者用の支持装置100に結合するための接続部分9が設けられる。上記接続部分9は、中央バー5に対して横方向に延在し、接続及び補強ブラケット10に結合することができる。
【0060】
図7、8、又は9に見られるように、接続及び補強ブラケット10が患者用の支持装置100の両側に設けられ、それぞれが、患者が横たわっている装置100の構造を補強する目的、及び股関節の人工装具手術の場合(図示せず)に、患者の太ももを支持する部品を取り付ける目的を有する。
【0061】
遠位端5dにおいて、支持バー5、したがって支持構造2は、少なくとも1つ、好ましくは2つのホイール16を有し、これは、手術前のセットアップ段階で装置1を動かし、臥位装置100の近くに装置を配置し、次に臥位装置に取り付けるために使用される。一旦臥位装置100に接続されると、装置1は吊り下げられたままであり、ブラケット10に接続された接続部分9のみによって臥位装置100に結合され、床にさらに設置点が置かれることはない。このようにして、装置1は、全体として非常にコンパクトな構造となり、下にある領域に突出し、手術段階で外科医の動きを妨げる可能性のある不必要な突起がない。
【0062】
アクチュエータ8は、接続部分9と中央バー5との間に延在して、多角形構造を規定する。より詳細には、アクチュエータ8は、一方の側で中央バー5の下で牽引スライド3、特に滑り止め7に接続され、他方の側で中央バーの結束部分とは反対側の接続部分9の端部で中央バー5に接続される。牽引スライド3への接続により、牽引スライド3の並進移動により、アクチュエータ8のガススプリング8’のステムが伸長又は短縮される。
【0063】
図1、2、及び3に示すように、牽引スライド3は、スライド自体の構造として機能するハンドル31と、第1コマンドで支持構造2に沿ったスライド3のスライドをロック解除でき、第2コマンドでアクチュエータのロックシステムを解除して、牽引の自動ロック解除し、すなわち、支持構造2の空間でロック解除を達成し、これにより自由に空間移動させる、レバーシステム32と、を有する。
【0064】
換言すれば、牽引機構3は、動かされる肢の並進移動と、支持構造2全体の空間における回転運動との両方のための単一の指令器官である。
【0065】
牽引スライド3は、好ましく図示された構成では一種の操縦桿として作られているので、外科医は牽引スライド3の制御とコマンドだけで牽引スライド自体を容易につかみ、中央支持バーの軸5aに沿って、次に、スライドガイド6に沿って移動させることができる。また、さまざまな手術段階を実行するのに最適な方法で支持構造2を配置するために、決められた軸に沿って支持構造2全体を回転移動させることもできる。これは、スライドガイド6上の牽引スライド3の接続と、アクチュエータ8と牽引スライド3自体との間の流体接続の両方によって可能になる。
【0066】
支持構造2の回転は、垂直ヒンジ軸9a及び水平ヒンジ軸9bを中心として発生し、以下に説明するとおり、支持構造2を患者用の支持装置100に接続するために、中央支持バー5と部分9との間に存在する複数の二重結合部13を通過する。
【0067】
したがって、外科医は、牽引機構3の低作用することによって、中央支持バー5の軸5aに沿って患者の肢の並進を作動させ、支持構造2全体の空間における回転運動をロック解除することができる。これは、ハンドル31と、上述のように、レバーシステム32に一定の圧力力を加えることによって作動する第1のコマンドによって、スライドガイド6に沿った牽引システム3のスライドをロック解除するレバーシステム32とによって行われる。引き続いてレバーシステム32により大きな圧力をかけることにより、牽引機構3と流体接続しているアクチュエータ8のガススプリング8’の動きをロックするためのシステムを解除する第2コマンドが作動し、したがって空間において支持構造2の回転運動を可能にする。
【0068】
この構造について詳細に説明すると、レバーシステム32は、(図3Aに示されるように)スライド3の並進ロック位置(又は休止位置)をとることができる解除レバー321を有し、この位置で、スライドガイド6に沿った牽引スライド3の任意の動きを防止する。このロック位置では、支持構造2全体の空間内での動きも防止される。
【0069】
解除レバー321は、スライド3(図3B)の第1並進ロック解除位置をとることができ、この位置で前述の第1コマンドが作動される。言い換えれば、ハンドル31に作用し、解除レバー321を第1エンドストップまで押すことによって、第1コマンドが作動され、スライドガイド6に沿った牽引スライド3の自由な並進を可能にする。この第1ロック解除位置では、支持構造2の空間内での移動が防止される。したがって、外科医は、スライドをスライドガイド6に沿って自由に動かし、スライドガイドに沿ってより迅速に所望の位置に位置決めすることができる。このような自由で粗い動きは、通常、把持体4を牽引スライド3に結合する前の術前段階で行われる。
【0070】
解除レバー321は、最終的に、支持構造2の空間内で自由に回転運動する第2ロック解除位置(図3Cに示す)をとることができ、このロック解除は、前述の第2のコマンドを作動させることによって行われる。換言すれば、再びハンドル31に作用し、第2エンドストップまで解除レバー321により大きな圧力を加えることによって、アクチュエータ8のガススプリング8’の移動ロックシステムを解除する第2コマンドが作動される。この動作により、支持構造2全体の空間内での自由な動きが可能になり、したがって、支持構造2は、接続部分9を通る垂直軸を中心に上昇、下降、又は横方向に回転することができると同時に、スライド3をスライドガイド6に沿って自由に並進させることができる。もちろん、これらはすべて、ハンドル31を介して牽引スライド3を握り続け、解除レバー321への圧力を維持して、第2コマンドの動作を延長する(したがって、アクチュエータのロックシステム8を解除し続ける)外科医によって制御される。
【0071】
解除レバー321がとる3つの位置は順次である。すなわち、第2ロック解除位置に切り換えるには、解除レバー321をロック位置から第1ロック解除位置へ、さらにそこから第2ロック解除位置へと移動させ、第2ロック解除位置から第2ロック位置へ戻すためには、解除レバー321を第1のロック解除位置に配置し、その後ロック位置に配置する必要がある。
【0072】
したがって、第2ロック解除位置では、解除レバー321が第2エンドストップにあるとき、患者の臥位装置100に結合されている接続部分9に対する空間内での支持構造2の動きの自動解除が行われる。位置は連続的であり、第1コマンドは第1ロック解除位置を通過する際に作動されるので、スライドガイド6に沿った牽引スライド3の自由な並進も、第2ロック解除位置で行われる移動中に有効のままである。
【0073】
なお、外科医によるレバー321への作用を解除すると、上記レバーは、第1又は第2ロック解除位置にあるかどうかに関係なく、自動的にロック位置に戻る。
【0074】
スライドガイド6に沿って、特に中央支持バー5の縦軸5aに沿って、複数の孔11が整列され、それぞれの中心軸11aは互いに平行である。
【0075】
レバーシステム32は、中央支持バー5の縦軸5aに直交する垂直方向に沿ってスライド移動可能な先端322をさらに有する。先端322は牽引スライド3内をスライドする。
【0076】
第1コマンドは、解除レバー321の第1ロック解除位置で作動する。この第1コマンドにより、解除レバー321が先端322に作用して、スライドガイド6のそれぞれの孔11から外れ、スライドガイド6に沿ったスライド3の自由な並進が可能になる。
【0077】
レバーシステム32は、第2ロック解除位置で解除レバー321によって作動可能な、例えば流体解除システムなどの少なくとも1つの解除システム324をさらに有する。解除システム324は、支持構造2の空間的、特にヒンジ軸9a及び9bを中心とした回転運動をロック解除するために、アクチュエータ8の内部可動ロックシステムと相互作用する。この一連のフェーズは、解除レバー321の第2コマンドを作動することによって発生する。
【0078】
支持構造2は、支持構造2自体の異なる構成要素の接続点に配置された複数の二重結合部13を有する。具体的には、上述のように、二重結合部13は、支持構造2が空間内で必要な運動を行うことを可能にするために、好ましくは外科的処置を正しく実行するために必要な内転/外転の動きに適合するような所定の角度範囲で、中央支持バー5と接続部分9との間に存在する。特に、二重結合部13は、患者の臥位面に直交する垂直ヒンジ軸9aを中心として、及び患者の臥位面に平行な水平ヒンジ軸9bを中心として支持構造2の回転を可能にする。上述のように、支持構造2のそのような空間移動は、解除レバー321の第2コマンドの作動に続いて発生し、これにより自動牽引ロック解除が作動される。
【0079】
接続部分9とアクチュエータ(又は複数のアクチュエータ)8との間、及びアクチュエータ(又は複数のアクチュエータ)8と中央支持バー5との間には、さらなる二重結合部13が設けられ、牽引スライド3がスライドガイド6に沿って並進できるようにする。
【0080】
詳細に述べると、牽引スライド3に組み込まれるレバーシステム32の構造は、それぞれのアクチュエータ8と流体接続する解除システム324を作動させるコマンドドロワー323をさらに有する。
【0081】
操作者は、解除レバー321を押すことによって、解除レバー321に存在する傾斜スロット326により持ち上げられたプラグ325によって先端322に作用する。したがって、先端322は、先端322が一時的に挿入されているスライドガイド6に存在する孔11の1つから自身を解除することによって、垂直方向に沿って移動する。その結果、牽引スライド3は、もはやスライドガイド6に拘束されておらず、スライドガイド6自体に沿って並進し、必要に応じて下肢に大まかな牽引を加えるために所望の領域に配置されることができる。
【0082】
解除レバー321を強く押すと、解除レバー321はコマンドドロワー323と接触し、コマンドドロワー323は、牽引方向Xに沿って並進し、次に、コマンドドロワー323が解除システム324を有効にする。解除システム(又はシステム)324内に存在する流体、例えば油、は圧力下に置かれ、2本のチューブを介してアクチュエータ8のロックシステム、又は好ましくはガススプリング8’のロックシステムに作用する。
【0083】
この時点で、接続部分9を中央支持バー5及びアクチュエータ8に接続する二重結合部13により、操作者は中央支持バー5を動かして、それを所望の屈曲/伸展及び/又は内転/伸展、又は外転位置又は外科的処置(AMIS(登録商標)又は関節鏡)によって必要とされる位置に配置することができる。
【0084】
圧力を緩めると、内部スラストスプリング327により、解除レバー321が第2ロック解除位置から第1ロック解除位置に移動し、その結果、解除システム324がそれぞれの静止位置に戻り、アクチュエータ8(特定のガススプリング8’)のロックシステムが作用に戻り、アクチュエータ8の動きを防止し、したがって、空間における支持構造2の回転運動を防止する。圧力をさらに緩めると、解除レバー321は、再度内部スラストスプリング327により、第1ロック解除位置からロック位置に移動し、先端322が下がり、スライドガイド6にある孔11の1つに係合して、牽引スライド3がスライドするのを防止する。
【0085】
位置決め装置1は、牽引スライド3と関連付け可能であり、把持体4に接続された回転グループ14をさらに備える。回転グループ14は、装置1全体が手術される肢で使用されるか、手術されない手足で使用されるかに応じて、又は行われる外科手術(AMIS(登録商標)又は関節鏡検査)に応じて、支持構造2上で交互に実施可能な2つの異なる構成を有する。
【0086】
両方の構成において、図4及び5に示されるように、回転グループ14は、下肢が牽引軸X自体に対して内部又は外部方向に回転することを可能にする。
【0087】
特に、第1構成14’(図4)によれば、回転グループ14は、患者の下肢を連続的に内部又は外部方向に回転させることができ、操作の必要性に最適に適応するために所望の角度だけ肢を回転させることができる。特に、回転グループ14は、以下に説明する第1構成14’によると、AMIS(登録商標)手術中に使用される位置決め装置1の支持構造2上に実装されることが好ましい(図7)。
【0088】
回転グループ14は、第1構成14’において、スライド3に設けられた適切なハウジング17に挿入可能な適切な接続シャンク又はピン148を介して牽引スライド3に接続するための本体141と、牽引スライド3に接続された回転グループ14が、患者の下肢の位置と自然な傾きに適応できることを可能にする揺動グループ142と、を備える。
【0089】
回転グループ14は、図4に示される第1構成14’によると、外科的処置において肢に必要な回転を与えるために操作者によって使用されるコマンドハンドホイール143と、下肢に加えられた回転角度を検出する目盛付きリングナット146と、をさらに備える。
【0090】
回転は、コマンドハンドホイール143から、展開軸144aに沿って延びるロッド144を介して下肢の把持体4に伝達される。ロッド144は、その第1端144bでハンドホイール143に接続され、第1端と反対側の第2端144cで把持体4を引っ掛けるための接続フック145に接続されている。後者は、次に、接続フック145との接続のための適切な手段を提供し、把持体4を回転グループ14と結び付け、したがって牽引スライド3と結び付ける。
【0091】
揺動グループ142の内部には、ハンドホイール143からロッド144への運動の伝達を作動又は非作動にする機構があり、ロッド144は、その第2端144cで把持体4を支持する。操作者がハンドホイール143を操作しない場合、ロッド144は回転せず、その結果、患者の下肢も牽引軸Xを中心に回転しない。これは、回転をロックする揺動グループ142内の機構の結果である。操作者がハンドホイール143に加えた回転に続いて、前述の機構がロッド144に、したがって把持体4に運動を伝達することによって回転を作動させ、把持体4は、下肢を包むことによって、操作者によって加えられる回転Rの方向に回転を引き起こす。ハンドホイール143の回転が停止すると、揺動グループ142内の機構がハンドホイール143、ロッド144、把持体4をロックし、したがって下肢を目盛付きリングナット146に示される角度位置にロックする。
【0092】
装置1は、下肢の牽引におけるミリメートル単位の動きのための微牽引機構15をさらに備える。このような微牽引機構15は、把持体4に接続可能なロッド144の、したがって下肢のミリメートル単位の並進を促進する。
【0093】
微細な牽引は、支持構造2に対して固定位置にある牽引スライド3に対して、把持体4、したがって下肢のミリメートル並進を引き起こす。
【0094】
微牽引機構15は、牽引グループ14を介して牽引スライド3によって支持される。
【0095】
微牽引機構15は、ロッド144にねじ込まれたねじ付きバー151を含み、ロッド144は、前述の接続フック145を介して把持体4に接続可能である。
【0096】
ロッド144は、下肢の牽引方向Xに沿った実際の動きを制御するために、その軸展開に沿って目盛付きスケール147を有する。
【0097】
ねじ付きバー151は、それを回転させるコマンド要素152によって作動される。回転に続いて、ねじ付きバー151は、ロッド144の第1端144bに位置するねじと噛み合い、したがって、軸144aに沿ったロッド自体144の微細な、つまりミリメートル単位の並進を引き起こす。
【0098】
操作者は、コマンド要素152、例えばクロスバーによってねじ付きバー151に接続されたノブに回転を加えることによって、ねじ付きバー151自体を回転させる。後者は、それ自体をロッド144の内側にねじ込むことによって、目盛付きロッド144を並進させ、操作者が選択した回転方向に応じて、肢に必要な細かい牽引運動を与えるか、方向Xに沿って肢を解除する。
【0099】
目盛付きロッド144は、回転グループ14、特に揺動グループ142を通過する。ロッド144の外部セクションの適切な幾何学的形状と、ロッド144が揺動グループ142を通過する孔の適切な形状によって、肢の回転に応じて、肢の回転中、ロッド144は、二次的な微動作を与えることなく回転運動を伝達することができる。
【0100】
位置決め装置1の様々な構成要素(支持バー5上、目盛付きリングナット146上、ロッド144上)の様々な目盛付きスケールによって、外科手術の終了時に、肢を初期状態に再配置し、最終状況を手術前と比較することが可能である。
【0101】
図5に図示された第2構成14”による回転グループ14は、患者の下肢を牽引軸Xに対して、従って患者の矢状軸に対して、離散的に、即ち15°と25°との間、好ましくは20°から成る予め定められた角度ピッチに従って内部方向又は外部方向に回転させるように適合されている。
【0102】
第2構成14”による回転グループ14は、スライド3に設けられた適切なハウジング17に挿入可能な回転ピン242によって牽引スライド3に接続された揺動体241と、揺動体241に回転可能に接続され、第1の端243bに、把持体4を回転グループ14、したがって牽引スライド3と結合するための接続フック145を有する回転軸243と、から構成されている。
【0103】
第1構成で起こることと同様に、第2構成14”でも、揺動体241によって、牽引スライド3に連結された回転グループ14が、把持体4に含まれる患者の下肢の自然な位置と傾きに適応することができる。
【0104】
第2構成14”に係る回転グループ14は、さらに、回転軸243に接続され、回転軸243を、回転軸243の長手軸243aを中心に、15°以上25°以下、好ましくは20°からなる所定の角度ピッチに従って回転可能な回転レバー等の操作器官244を有する。揺動体241上に設けられた目盛248は、外科医に角度ピッチセットの指示を与える。また、揺動体241に接続され、操作器官244と係合するロックピン245が設けられており、操作器官244自体の動き、ひいては回転軸243の回転、つまり肢の回転もロック及び解除するよう適合されている。
【0105】
揺動体241は、回転グループ14を牽引スライド3に接続し、その垂直軸242aを中心に±15°回転して、外科手術中に肢体が受ける内転/外転回転に適応させ、肢に過剰な損傷可能性のある屈曲を受けさせることがないようにする回転ピン242に固定されている。
【0106】
揺動体241はまた、ピン246に固定され、体が垂直軸242aに直交する軸246aを中心に揺動し、肢の傾斜に適応することを可能にする。
【0107】
操作者は、ロックピン245に作用することにより、回転ロックを解除し、15°から25°、好ましくは20°の個別のピッチで、必要な回転方向に操作器官244、ひいては肢を回転させることができる。ロックピン245の牽引を解除することにより、操作器官244、ひいては回転軸243及び患者の足を担持する把持体4が到達した位置に再びロックされる。肢の回転は、確立された回転角度である±80°を超えるのを防止する2つのストッパー247の存在によって制限される。
【0108】
装置を臥位装置100に接続する場合は、中央支持バー5の遠位端5dにあるホイール16(又は複数のホイール)上を移動させ、手術台との近接部まで引きずって移動させることで変位させる。
【0109】
手術前の段階(セットアップ)において、装置は、接続部分9を手術室の床レベルから持ち上げることによって組み立てられ、装置1を中央支持バー5の遠位端5dに位置するホイール(又は複数ホイール)16上にのみ静止させ、接続部分9は臥位装置100に引っ掛けられる。
【0110】
装置1は、臥位装置にある右及び/又は左のブラケット10に結合される。前述のように、このブラケットは、装置全体を吊り下げて支持しなければならない構造を強化するのに役立つ。
【0111】
接続部分9は、迅速結合18を介して支持装置100に接続される(図6に示す)。
【0112】
構成的な例として、ただし排他的でない例としては、例えば、ブラケット10に設けられたT字型の支持ガイドなどを収容するための溝19と、可動ピンなどが挿入される円筒座20とを備え、円筒座挿入されることにより、装置が引っ掛け方向と反対方向にスライドすることを防止できる。
【0113】
垂直軸ピン9a及び水平軸ピン9bを備える二重結合部13は、装置の屈曲/伸展及び内転/外転運動を可能にする。最後に、アクチュエータ又はガススプリングの二重結合部13の支持体として機能する2つの円筒形ブラケット21を設けることができる。
【0114】
次に、この装置は、本発明に記載された内容に従って、位置決め装置1それ自体と、少なくとも1つの接続及び補強ブラケット10によって位置決め装置1に結合された患者用の支持装置100とからなる位置決めシステム200に統合される。
【0115】
本装置は、使用する回転グループの構成により、低侵襲アプローチAMIS(登録商標)(又はDAA direct anterior approach)による人工股関節置換術、同手術時の非手術肢の支持/位置決め、関節鏡手術時の支持/位置決め手段として使用される。
【0116】
好ましくは、位置決めシステムは、本発明による2つの位置決め装置1を含み、1つは各下肢専用である。装置に搭載する回転群の組み合わせにより、様々な構成が可能である。実際、肢が手術を受けていなくても、該当する装置によって支持されることは有利である。
【0117】
適用対象に応じて、装置は次の構成で使用される。
図7-AMIS(登録商標)(又はDAA)アプローチによる両側人工股関節外科手術のための構成で、患者の両肢のための第1構成14’による回転グループと共に装置が存在する。この構成では、両肢が手術されるので、第1構成14’による回転群を備えた装置は、股関節手術と一時的に手術されない肢の支持/位置決めとして代替的に使用される。
図8-関節鏡手術手順のための構成、両方の器具が存在し、それぞれ、第2構成14”による回転グループを有する。一方の器具は、手術した肢に使用され、第2の器具は、手術していない肢の支持/位置決めに使用される。
図9-AMIS(登録商標)アプローチ(又はDAA)による人工股関節手術のための構成で、手術肢に応じて、装置は、手術肢のための微牽引機構15を有する第1構成14’による回転グループと、非手術肢の支持/位置決めに用いられる第2構成14”による回転グループとを有している。
【0118】
本発明は、支持構造の等方性及び地面に載る要素が不在であることにより、記載された構造が軽量であるため、所定の目的を達成する。これは、装置の空間内での容易な移動を可能にし、他の操作者の助けなしに外科医自身によってそのように移動させることができる。また、地面に届く突起物がないため、位置決めシステム全体として安全性が高く、外科医が手術台上で自由に動くことができる。肢の牽引や回転のためのすべてのコマンドに、外科医がすぐにアクセスでき、簡単に作動することができる。ムーブメントの保持機構が簡素化され、シンプルなコマンド器官で操作できるため、手術手順がスムーズになる。
【0119】
最後に、多数の目盛付きスケールと微牽引コマンドの存在により、脚の正確な位置を正確かつ簡単に確認し、手術を受けた肢の手術前の位置と迅速に比較できる位置決め装置を提供することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0120】
【文献】国際公開第2014/045199号
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9