(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】準全方向性アンテナおよび信号トランシーバ
(51)【国際特許分類】
H01Q 19/22 20060101AFI20240613BHJP
H01Q 1/42 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
H01Q19/22
H01Q1/42
(21)【出願番号】P 2022570136
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(86)【国際出願番号】 CN2020125915
(87)【国際公開番号】W WO2021232689
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】202010438202.X
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ディン,フォン
(72)【発明者】
【氏名】ジィ,シンホォイ
(72)【発明者】
【氏名】マ,シミン
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-519508(JP,A)
【文献】特開2009-124577(JP,A)
【文献】国際公開第2017/191811(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 19/22
H01Q 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体を有する準全方向性アンテナであって、前記筐体は、設置領域の境界に面する金属背面カバーと、前記金属背面カバーと反対側に配置された前面カバーとを有しており;
前向きアンテナが前記筐体内に配置され、前記前向きアンテナが前記金属背面カバーとは反対方向に放射するように構成され;
さらに2つのサイド・アンテナが前記筐体内に配置され、前記2つのサイド・アンテナの第1のサイド・アンテナおよび第2のサイド・アンテナは、前記前向きアンテナの2つの側に対向して配置され;前記2つのサイド・アンテナのそれぞれの金属グラウンドが、前記金属背面カバーに信号接続され、それにより各サイド・アンテナの放射領域が、前記金属背面カバーと前記設置領域の境界との間の領域の少なくとも一部を含むようになっており;各サイド・アンテナの放射領域と前記前向きアンテナの放射領域との間に重複領域がある、
準全方向性アンテナ。
【請求項2】
各サイド・アンテナは平面逆F形アンテナである、請求項1に記載の準全方向性アンテナ。
【請求項3】
各サイド・アンテナの金属グラウンドは、前記金属背面カバーに重ね継ぎされる、請求項2に記載の準全方向性アンテナ。
【請求項4】
各サイド・アンテナの金属グラウンドは、前記金属背面カバーに
隙間を介して信号接続される、請求項2に記載の準全方向性アンテナ。
【請求項5】
前記隙間の寸法が1ミリメートル未満である、請求項4に記載の準全方向性アンテナ。
【請求項6】
前記前向きアンテナの放射角は、60°から80°の範囲である、請求項2に記載の準全方向性アンテナ。
【請求項7】
前記第1のサイド・アンテナの放射領域と前記前向きアンテナの放射領域との間に第1の重複領域が形成され、前記第2のサイド・アンテナの放射領域と前記前向きアンテナの放射領域との間に第2の重複領域が形成され、
前記第1の重複領域
は前記第2の重複領域と
形状およびサイズが同じである;または
前記第1の重複領域
は前記第2の重複領域と
形状および/またはサイズが異なる、
請求項2に記載の準全方向性アンテナ。
【請求項8】
各前向きアンテナが少なくとも1つの前向きアンテナ・ユニットを含む;および/または
各サイド・アンテナが少なくとも1つのサイド・アンテナ・ユニットを含む、
請求項2に記載の準全方向性アンテナ。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちいずれか一項に記載の準全方向性アンテナを有する信号トランシーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2020年5月21日に出願された「準全方向性アンテナおよび信号トランシーバ」と題する中国特許出願第202010438202.X号に対する優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本願は、アンテナ技術の分野に関し、特に、準全方向性アンテナおよび信号トランシーバに関する。
【背景技術】
【0003】
屋外の無線ローカルエリアネットワーク(wireless local area network、無線LAN)カバレッジ・シナリオでは、通例、全方向性アンテナで作られたアンテナ・システムは、通例が使用される。「全方向性アンテナ」とは、平面上で均等な放射を実現するアンテナをいい、「アンテナ・システム」とは、アンテナが電磁波を周囲の空間に放射するシステムをいう。全方向性アンテナは、直接設置できるので、費用効率がよく、便利である。
【0004】
全方向性アンテナの実際の用途では、ユーザーは、全方向性アンテナによって形成されるアンテナ装置がより魅力的であり、容易に指向的に気づかれないことを望むので、設置の間、アンテナ装置は、通例、壁に取り付けられるか、または、ポールを使用してフィールドの境界上に配置される。さらに、アンテナ装置の全方向性アンテナは、「隠される」ように設計される。全方向性アンテナの高利得を維持するために、いくつかのアンテナ装置では、全方向性アンテナは製品に統合されなければならない。
図1に示されるように、4つの全方向性アンテナ02が方向aに沿って柱状本体01の一端に直接配置されて、
図2に示される構造を形成する。さらに、
図3に示されるように、カモフラージュ・カバー03がアンテナを覆うために使用される。
図1、
図2および
図3に示される構造から、アンテナ装置は、柱状本体01の一端で全方向性アンテナ02を覆うためにカモフラージュ・カバー03を使用し、全方向性アンテナ02が製品の内部に配置されるものの、製品の全体的な長さが全方向性アンテナ02によって延び、アンテナ装置製品全体の寸法が増大することがわかる。したがって、アンテナ装置製品全体はより明白にある。反対に、アンテナ装置の全体的な寸法が制御される必要がある場合は、アンテナ装置は、アンテナ設置のために予約された、より少ないスペースをもつ。結果として、全方向性アンテナの長さは制限され、全方向性アンテナの短縮された長さが小さすぎるアンテナ利得につながる。さらに、全方向性アンテナの複数のグループが小さな設置スペース内に配置されると、アンテナと回路基板が互いに干渉して、ブロッキングまたは反射の現象を生じさせることがある。
【0005】
結論として、高いアンテナ利得は、アンテナ装置の寸法増加につながり、一方、低いアンテナ利得は、アンテナ装置の寸法減少につながる。よって、アンテナ装置の小型化と高いアンテナ利得という2つの要求を同時に満たすことはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願は、アンテナ装置の寸法を低減しつつ高いアンテナ利得を保証するために、準全方向性アンテナおよび信号トランシーバを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある側面によれば、本願は、準全方向性アンテナを提供する。この準全方向性アンテナは、壁に直接取り付けられてもよく、あるいは取り付けポールを使用して設置領域内に配置されてもよい。任意的に、設置領域がプレイグラウンドである場合、準全方向性アンテナは通例、プレイグラウンドの境界に設置される。群衆分布と取り付けポール本体の影響のため、アンテナのための後方放射を実装することは、実用的な利益を提供しない。これに基づき、設置領域がプレイグラウンドである場合は、準全方向性アンテナは、設置領域の境界にポールを立てることにより、ポールに取り付けられることができる。この場合、準全方向性アンテナ内の金属背面カバーは設置領域の境界に面しており、対応して、金属背面カバーと反対側に配置された前面カバーは、設置領域の内部に面する。前向きアンテナの2つの側面に反対に配置された2つのサイド・アンテナについては、2つのサイド・アンテナのそれぞれの金属グラウンドは、金属背面カバーに信号接続される。金属背面カバーはサイド・アンテナの金属グラウンドの一部として使用され、この構造はサイド・アンテナにおける金属グラウンドの総面積を拡大することができ、そのため金属背面カバーも放射に関与する。この場合、各サイド・アンテナによって放射されるエネルギーは、金属背面カバーによって反射されるのではなく、金属背面カバーと設置領域の境界との間の領域において分散される。これに基づいて、各サイド・アンテナの放射領域と前向きアンテナの放射領域との間に重複領域が形成されて、サイド・アンテナと前向きアンテナとの間の放射ギャップを回避し、準全方向性アンテナの利得を改善する。
【0008】
準全方向性アンテナは、2つのサイド・アンテナと1つの前向きアンテナを含む。サイド・アンテナおよび前向きアンテナは、筐体の内部空間が配置中に適切に使用される限り、アンテナ装置の小型化要件を満たすことができる。また、準全方向性アンテナでは、各サイド・アンテナの金属グラウンドが金属背面カバーに接続され、それにより、金属背面カバーも放射に関与し、サイド・アンテナによって生成されたエネルギーを反射しなくなる。この場合、各サイド・アンテナによって放射されるエネルギーは、前面側と背面側の両方に分散される。これは、各サイド・アンテナによって放射されるエネルギーの分散範囲を拡大し、準全方向性アンテナの利得を改善する。
【0009】
準全方向性アンテナの具体的な配置は、平面逆F形アンテナ(planner inverted F antenna、PIFA)の放射中心の両側での、平面逆F形アンテナの放射対称特性に基づく。任意的に、第1のサイド・アンテナと第2のサイド・アンテナの両方がPIFAアンテナであり、サイド・アンテナと前向きアンテナとの間の放射ギャップを回避し、準全方向性アンテナの利得を改善するために、前向きアンテナの放射は60°~80°の範囲に設定される。第1の重複領域および第2の重複領域の形状およびサイズは、同じであってもよく、または異なっていてもよい。これは、本明細書において限定されない。
【0010】
各サイド・アンテナの金属グラウンドおよび金属背面カバーが具体的に配置されている場合、ある可能な実装では、サイド・アンテナの金属グラウンドは、金属背面カバーに直接、重ね継ぎにされる。別の可能な実装では、サイド・アンテナの金属グラウンドは、金属背面カバーに結合される。任意的に、第1のサイド・アンテナの金属グラウンドと金属背面カバーとの間の信号接続態様は、前述の2つの態様のいずれかである。同様に、任意的に、第2のサイド・アンテナの金属グラウンドと金属背面カバーとの間の信号接続態様は、前述の2つの態様のいずれかである。すなわち、各準全方向性アンテナにおいて、第1のサイド・アンテナの金属グラウンドと金属背面カバーとの間の接続態様、および第2のサイド・アンテナの金属グラウンドと金属背面カバーとの間の接続方態様、同じであってもよく、または異なっていてもよい。サイド・アンテナの金属グラウンドが金属背面カバーに結合される場合、金属グラウンドと金属背面カバーとの間に1ミリメートル(mm)未満の隙間が形成される必要がある。
【0011】
前向きアンテナおよびサイド・アンテナが具体的に配置される場合、前向きアンテナに含まれる前向きユニットの数量および各サイド・アンテナに含まれるサイド・アンテナ・ユニットの数量は、要件に応じて設定されてもよい。具体的には、各前方ユニットは、一つまたは複数の前向きアンテナ・ユニットを含み、同様に、各サイド・アンテナは、一つまたは複数のサイド・アンテナ・ユニットを含む。前向きアンテナが複数のユニットを含む場合、および/または各サイド・アンテナが複数のユニットを含む場合、準全方向性アンテナは、複数入力複数出力(multiple input, multiple output、MIMO)技術を満たすことができる。この技術は、準全方向性アンテナを使用することにより、空間資源を最大限に利用し、複数入力複数出力を実現することができ、そのため、周波数スペクトル資源とアンテナ送信電力を増加させることなく、システム・チャネル容量を2倍にできる。
【0012】
別の側面によれば、本願は、信号トランシーバをさらに提供する。信号トランシーバは、準全方向性アンテナを含み、準全方向性アンテナは、前述の技術的解決策における任意の準全方向性アンテナである。準全方向性アンテナは、2つのサイド・アンテナと1つの前向きアンテナを含む。サイド・アンテナおよび前向きアンテナの配置中に、筐体の内部空間は、アンテナ装置の小型化要件を満たすよう適切に使用される。また、準全方向性アンテナでは、各サイド・アンテナの金属グラウンドが金属製背面カバーに接続され、それにより、金属製背面カバーも放射に関与し、サイド・アンテナによって生成されたエネルギーを反射しなくなる。この場合、各サイド・アンテナによって放射されるエネルギーは、前面側と背面側の両方に分散される。これは、各サイド・アンテナによって放射されるエネルギーの分布範囲を拡大し、信号トランシーバにおける準全方向性アンテナの利得を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【
図4】本願のある実施形態による準全方向性アンテナの概略構造図である。
【0017】
【
図5】本願のある実施形態による準全方向性アンテナの概略構造図である。
【0018】
【
図6】本願のある実施形態による準全方向性アンテナの概略構造図である。
【0019】
【
図7】本願のある実施形態による準全方向性アンテナの概略構造図である。
【0020】
【
図8】
図4に対応する準全方向性アンテナの内部構造の概略図である。
【0021】
【
図9】
図4に対応する準全方向性アンテナの内部構造の概略図である。
【0022】
【
図10】
図9の構造に対応する準全方向性アンテナの放射角度の概略図である。
【0023】
【
図11】本願のある実施形態による準全方向性アンテナのパターンである。
【0024】
【
図12】
図11に対応する準全方向性アンテナの試験された組み合わされたパターンである。
【0025】
【
図13】延長方向に沿った
図4の構造の断面概略図である。
【0026】
【
図14】本願のある実施形態による準全方向性アンテナの内部構造の概略図である。
【0027】
【
図15】本願のある実施形態による準全方向性アンテナの内部構造の概略図である。
【0028】
【
図16】本願のある実施形態による準全方向性アンテナの内部構造の概略図である。
【0029】
【
図17】本願のある実施形態による準全方向性アンテナの内部構造の概略図である。
【0030】
【
図18】本願のある実施形態による信号トランシーバの概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
まず、本願の適用シナリオが記述される。全方向性アンテナの費用効率のよさと容易な設置の利点に基づいて、屋外のWLANカバレッジ・シナリオでは通例、全方向性アンテナが使用される。現在、全方向性アンテナは、アンテナ装置を美しくし、ユーザーの装飾的要求を満たすために、アンテナ装置の内部に配置されている。しかしながら、アンテナ装置において、全方向性アンテナがアンテナ装置に一体化されていると、高いアンテナ利得を維持する必要がある場合にはアンテナ装置の寸法を小さくすることができず、アンテナ装置の全体的な小型化を維持する必要がある場合には高いアンテナ利得が保証できない。
【0032】
前述の適応シナリオに基づいて、本願のある実施形態は、アンテナの寸法を低減しつつ高いアンテナ利得を保証するために、準全方向性アンテナを提供する。準全方向性アンテナは、壁に直接取り付けられてもよく、あるいは、取り付けポールを使用して設置領域内に配置されてもよい。たとえば、設置領域がプレイグラウンドである場合、群衆分布および取り付けポール本体の影響ため、アンテナについて後方放射を実装することは、実用的な利益を提供しない。これに基づいて、設置領域の境界にポールを立てることにより、準全方向性アンテナをポールに取り付けることができる。
【0033】
本願の目的、技術的解決策、および利点をより明確にするために、下記は、添付の図面を参照して本願をさらに詳細に説明する。
【0034】
本願の以下の実施側面において使用される用語は、単に特定の実施形態を記述することを意図したものであって、本願を限定することは意図されていない。本明細書および本願の添付の特許請求の範囲で使用される単数形の「1つの」、「ある」、「前記」、「上記」、「この」、および「前記1つ」という用語は、文脈においてそうでないことがはっきり指定されているのでない限り、「一つまたは複数」のような複数形も含むことが意図される。用語「含む」、「有する」、「もつ」およびそれらの変形はすべて、特にそうでないことが強調されない限り、「…を含むが、それに限定されない」を意味する。
【0035】
本願の実施形態は、準全方向性アンテナを提供する。任意的に、準全方向性アンテナの筐体1の形状は、
図4に示される円柱、
図5に示される直方体、
図6に示される球、または
図7に示される不規則形状である。むろん、筐体1の形状は、代わりに別の形状であってもよく、詳細は、本明細書には記載されない。準全方向性アンテナの筐体1が
図4に示される円筒である例が記述のために使用される。
図8は、
図4に対応する準全方向性アンテナの内部構造の概略図である。
図8に示される構造では、本願のこの実施形態で提供される準全方向性アンテナは、円筒形筐体1と、前向きアンテナ2と、前向きアンテナ2の両側に配置された2つのサイド・アンテナ3とを含む。筐体1は、2つの部分で形成されている。一方の部分は、設置領域の境界に面するように構成された金属製の背面カバー11である。金属背面カバー11は、放熱を容易にし、金属背面カバー11はまた、前面カバー12と協働して囲まれた構造を形成する。他方の部分は、前面カバー12である。任意的に、前面カバー12はプラスチック製であってもよく、または金属のような別の材料でできていてもよい。前面カバー12と金属背面カバー11との間の協働の態様は、図中の構造に限定されないことを理解しておくべきである。
【0036】
図9に示される構造では、1つの前向きアンテナ2と、1つの第1のサイド・アンテナ31と、1つの第2のサイド・アンテナ32とが、本願のこの実施形態で提供される筐体1内に配置される。これら3つのアンテナは、すべて筐体1の内部に配置されており、これら3つのアンテナは、筐体1の寸法を小さくすることができるよう、空間において適切に配置される。このようにして、準全方向性アンテナの寸法を低減することができる。準全方向性アンテナの構造の明確な記述を容易にするために、方向Aを筐体1の前面側といい、方向Cを筐体1の背面側といい、方向Bを筐体1の左側といい、方向Dを筐体1の右側という。また、放射中心における前向きアンテナ2の放射方向は方向Aに向かい、放射中心における第1のサイド・アンテナ31の放射方向は方向Bに向かい、放射中心における第2のサイド・アンテナ32の放射方向は方向Dに向かうと規定されているが、ここでの規定は、単に準全方向性アンテナの明確な記述のためであることを理解しておくべきである。実際の用途においては、放射中心における前向きアンテナ2の放射方向、放射中心における第1のサイド・アンテナ31の放射方向、および放射中心における第2のサイド・アンテナ32の放射方向は、設計上の要件に応じて変更されてもよく、上記の構造に限定されるものではない。上記の特定の構造に関して、第1のサイド・アンテナ31および第2のサイド・アンテナ32の両方がPIFAアンテナである例を用いて記述が提供される。
【0037】
図10は、
図9の構造に対応する準全方向性アンテナの放射角度の概略図である。
図10を参照されたい。前向きアンテナ2の放射角はa1であり、a1は60°から80°の範囲でありうる。第1のサイド・アンテナ31の放射角範囲はa2であり、ここでa2は0°から180°の範囲でありうる。同様に、第2のサイド・アンテナ32の放射角範囲はa3であり、ここでa3は0°から180°の範囲でありうる。具体的には、本願のこの実施形態で提供される準全方向性アンテナにおいて、第1のサイド・アンテナ31の金属グラウンドは、金属背面カバー11に信号接続される。金属背面カバー11は、第1のサイド・アンテナ31の金属グラウンドの一部として使用される。これは、第1のサイド・アンテナ31の金属グラウンドの領域を拡大する。この場合、第1のサイド・アンテナ31によって背面側に向かって放射されたエネルギー、すなわち、c1の範囲内のエネルギーは、もはや金属背面カバー11によって反射されない。信号接続方式は、直接重ね継ぎ〔ラッピング(lapping)〕方式であってもよいし、または第1のサイド・アンテナ31の金属グラウンドと金属背面カバー11との間のギャップが1mm未満である結合方式が配置されてもよい。同様に、同じ原理に基づいて、第2のサイド・アンテナ32によって背面側に向かって放射されるエネルギー、すなわち、c2の範囲内のエネルギーは、もはや金属背面カバー11によって反射されない。さらに、a3のサイズおよびa2のサイズは、同じであってもよく、または異なっていてもよいことを理解されたい。a3およびa2が具体的に配置される場合、第1のサイド・アンテナ31と前向きアンテナ2との間の放射ギャップおよび/または第2のサイド・アンテナ32と前向きアンテナ2との間の放射ギャップを回避するために、第1のサイド・アンテナ31の放射領域と前向きアンテナ2の放射領域との間に第1の重複領域b1が存在し、第2のサイド・アンテナ32の放射領域と前向きアンテナ2の放射領域との間に第2の重複領域b2が存在する。b1のサイズおよびb2のサイズは、同じであってもよいし、異なっていてもよいことを理解されたい。
図10を参照しつつ、
図11を参照されたい。
図11は、準全方向性アンテナの放射パターンである。線Lによって囲まれた領域は、前向きアンテナ2の放射によって形成され、線Mによって囲まれた領域は、第1のサイド・アンテナ31の放射によって形成され、線Nによって囲まれた領域は、第2のサイド・アンテナ32の放射によって形成される。具体的には、
図10および
図11に示されるように、第1のサイド・アンテナ31および第2のサイド・アンテナ32の放射エネルギーは、前面側および背面側の両方に分布している。これは、第1のサイド・アンテナ31および第2のサイド・アンテナ32の放射エネルギーの分布範囲を拡大する。これに基づいて、
図12は、
図11に対応する準全方向性アンテナの試験された組み合わされたパターンである。
図12から、本願のこの実施形態で提供される準全方向性アンテナのエネルギーの分布範囲が広く、準全方向性アンテナの利得が改善できることがわかる。
【0038】
任意的に、
図13に示されるように、本願のこの実施形態で提供される準全方向性アンテナの筐体1において、前向きアンテナ2は、一つまたは複数の前向きアンテナ・ユニット21を含んでいてもよい。第1のサイド・アンテナ31は、一つまたは複数の第1のサイド・アンテナ・ユニット311を含んでいてもよく、各第1のサイド・アンテナ・ユニット311は、1つのPIFAアンテナである。複数の第1のサイド・アンテナ・ユニット311は、異なるPIFAアンテナを使用してもよく、すなわち、各PIFAアンテナは、使用要件に従って変化してもよいことを理解されたい。同様に、第2のサイド・アンテナ32は、一つまたは複数の第2のサイド・アンテナ・ユニット321を含んでいてもよく、各第2のサイド・アンテナ・ユニット321は、1つのPIFAアンテナである。複数の第2のサイド・アンテナ・ユニット321は、異なるPIFAアンテナを使用してもよく、すなわち、各PIFAアンテナは、使用要件に従って変化してもよい。前述の数量を設定するための複数の具体的な実装があり、これは以下のいくつかの実装を含むが、これらに限定されない。
【0039】
実装1:
図13を参照しつつ、
図14を参照する。筐体1内の前向きアンテナ2は、1つの前向きアンテナ・ユニット21を含み、第1のサイド・アンテナ31は、1つの第1のサイド・アンテナ・ユニット311(図の投影のため
図14には示されていない)を含み、第2のサイド・アンテナ32は、1つの第2のサイド・アンテナ・ユニット321を含む。
【0040】
実装2:この実装は、実装1に基づいて形成される。実装1と実装2との間の違いは、第2のサイド・アンテナ32が複数の第2のサイド・アンテナ・ユニット321を含むということにある。
【0041】
実装3:この実装は、実装1に基づいて形成される。実装1と実装3との間の違いは、第1のサイド・アンテナ31が複数の第1のサイド・アンテナ・ユニット311を含むということにある。
【0042】
実装4:この実装は、実装1に基づいて形成される。実装1と実装4との間の違いは、第1のサイド・アンテナ31が複数の第1のサイド・アンテナ・ユニット311を含み、第2のサイド・アンテナ32が複数の第2のサイド・アンテナ・ユニット321を含むということにある。
【0043】
図13を参照すると、前述の実装1~4では、筐体1内に配置される第1のサイド・アンテナ31に含まれる第1のサイド・アンテナ・ユニット311の数量と、第2のサイド・アンテナ32に含まれる第2のサイド・アンテナ・ユニット321の数量に対して一つまたは複数の変更がされるだけである。さらに、前向きアンテナ2は、常に、1つの前向きアンテナ・ユニット21を含むように制御される。前向きアンテナ2が複数の前向きアンテナ・ユニット21を含む場合、以下のいくつかの実装があることを理解されたい。
【0044】
実装5:この実装は、実装1に基づいて形成される。実装1と実装5との間の違いは、前向きアンテナ2が複数の前向きアンテナ・ユニット21を含むということにある。
【0045】
実装6:この実装は、実装2に基づいて形成される。実装2と実装6との間の違いは、前向きアンテナ2が複数の前向きアンテナ・ユニット21を含むということにある。
【0046】
実装7:この実装は、実装3に基づいて形成される。実装3と実装7との間の違いは、前向きアンテナ2が複数の前向きアンテナ・ユニット21を含むということにある。
【0047】
実装8:この実装は、実装4に基づいて形成される。実装4と実装8との間の違いは、前向きアンテナ2が複数の前向きアンテナ・ユニット21を含むということにある。
【0048】
前述の実装5は、実装1における前向きアンテナ2に含まれる前向きアンテナ・ユニット21の数量を「1」から複数に変更するものであり、これは数量の変更だけであるため、図には示されていない。同様に、前述の実装6は、実装2における前向きアンテナ2に含まれる前向きアンテナ・ユニット21の数量を「1」から複数に変更するものであり、これは数量の変更だけであるため、図には示されていない。同様に、前述の実装7は、実装3における前向きアンテナ2に含まれる前向きアンテナ・ユニット21の数量を「1」から複数に変更するものであり、これは数量の変更だけであるため、図には示されていない。同様に、前述の実装8は、実装4における前向きアンテナ2に含まれる前向きアンテナ・ユニット21の数量を「1」から複数に変更するものであり、これは数量の変更だけであるため、図には示されていない。
【0049】
前述の実装における「複数の」は、1よりも大きい任意の整数を指すことに留意されたい。前向きアンテナ2に対応する「複数の」、第1のサイド・アンテナ31に対応する「複数の」、および第2のサイド・アンテナ32に対応する「複数の」は、同じであってもよく、異なっていてもよいことを理解されたい。前向きアンテナ2、第1のサイド・アンテナ31、および第2のサイド・アンテナ32のそれぞれに対応する「複数の」が1より大きい任意の整数に設定されている場合、実装2ないし実装8の組み合わせに基づいて、複数の特定の実装がさらに形成されてもよい。たとえば、第1のサイド・アンテナ31が2つの第1のサイド・アンテナ・ユニット311を含み、第2のサイド・アンテナ32が3つの第2のサイド・アンテナ・ユニット321を含み、前向きアンテナ2が5つの前向きアンテナ・ユニット21を含む。詳細は、ここでは再度説明しない。
【0050】
実装における複数の値が1より大きい任意の整数に設定される場合、準全方向性アンテナはMIMOに合致することに留意されたい。この技術は、準全方向性アンテナを使用することにより、空間資源を最大限に利用し、複数入力複数出力を実現することができ、そのため、周波数スペクトル資源とアンテナ送信電力を増加させることなく、システム・チャネル容量を2倍にすることができる。
【0051】
本願のこの実装で提供される準全方向性アンテナが具体的に配置される場合、
図15は、柱状筐体1の延長方向に沿った、
図4の構造の断面概略図である。
図4を参照しつつ、
図15を参照されたい。第1の取り付け板4および第2の取り付け板5が、筐体1の内部に配置されてもよく、第2の取り付け板5は、支持構造を用いて、第1の取り付け板4の、金属背面カバー11とは反対の側に配置されてもよい。前向きアンテナ2を取り付けるための取り付け表面は、第2の取り付け板5の、金属背面カバー11とは反対の側に形成されており、サイド・アンテナ3を配置するためのレセプタクル6が、第2の取り付け板5と第1の取り付け板4との間に形成されている。
【0052】
さらに、ここでのレセプタクル6は、サイド・アンテナ3と1対1の対応関係にあるべきである。たとえば、
図16に示される構造では、1つの前向きアンテナ・ユニット21と1つの第2のサイド・アンテナ・ユニット321がある場合、1つの前向きアンテナ・ユニット21が取り付け表面に取り付けられ、さらに、レセプタクル6が前向きアンテナ・ユニット21の両側に配置される。具体的には、第2のサイド・アンテナ・ユニット321が配置される側に1つのレセプタクル6が配置され、該レセプタクル6の内部に1つの第2のサイド・アンテナ・ユニット321が配置される。
【0053】
たとえば、
図17に示される構造では、2つの前向きアンテナ・ユニット21と2つの第2のサイド・アンテナ・ユニット321がある場合、2つの前向きアンテナ・ユニット21が取り付け表面上に取り付けられ、2つの前向きアンテナ・ユニット21は、筐体1の延びている柱状方向に沿って配置される。さらに、レセプタクル6は、前向きアンテナ・ユニット21の2つの反対側に配置される。
【0054】
具体的には、それらの第2のサイド・アンテナ・ユニット321が配置された側に2つのレセプタクル6が配置され、それらのレセプタクル6の内部に2つの第2のサイド・アンテナ・ユニット321が配置される。本願のある実施形態は、さらに、信号トランシーバを提供する。信号トランシーバは、準全方向性アンテナを含み、準全方向性アンテナは、前述の技術的解決策における任意の準全方向性アンテナである。本願のこの実装で提供される信号トランシーバでは、
図18に示される構造において、準全方向性アンテナの筐体1が取り付けキット7に接続される。取り付けキット7は、ポールの形で示されている。取り付けキット7は、代替的に、別の構造形態であってもよく、詳細は、本明細書には記載されないことを理解されたい。
【0055】
前述の説明は、単に本願の具体的な実装であり、本願の保護範囲を制限することは意図されていない。本願に開示された技術的範囲内で当業者によって容易に割り出される任意の変形または置換は、本願の保護範囲にはいる。したがって、本願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に従うものとする。