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特許7503658患者の機械的換気のための気管内デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】患者の機械的換気のための気管内デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/04 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
A61M16/04 A
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022570476
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 ES2020070319
(87)【国際公開番号】W WO2021234183
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】522450082
【氏名又は名称】ブラボー ガルシア,ペドロ ルイス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ブラボー ガルシア,ペドロ ルイス
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04091816(US,A)
【文献】特開平07-323088(JP,A)
【文献】特表2000-506418(JP,A)
【文献】特表平06-509971(JP,A)
【文献】特表2016-520337(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0186211(US,A1)
【文献】米国特許第04341210(US,A)
【文献】国際公開第2006/095075(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者(3)の機械的換気のための気管内デバイスであって、換気チューブ(10)を含む気管内デバイスが、
患者(3)の気道に挿入されるように意図された、遠位端(11)を有する遠位部分と、
換気マシンに接続されるように意図された、近位端(12)を有する近位部分と、
障壁(13)と、
前記障壁(13)を変形させるために前記障壁(13)に接続可能な圧力手段であって、前記圧力手段が、前記障壁(13)を患者(3)に挿入する前に前記障壁(13)を折り畳むための負圧を印加し、挿入されると、前記負圧を解放するように、前記障壁(13)および空気栓弁(23)に接続された可撓性導管(22)を含む、圧力手段と、
を含む、気管内デバイスであり、
前記気管内デバイスは、前記障壁(13)が、前記遠位エリアにおいて前記換気チューブ(10)を覆い、挿入時に、前記患者(3)の喉頭(5)の声門下領域(14)、ならびに声門領域(15)、さらに声門上領域(16)の形態を占め、それに適応するように構成された固体粘弾性材料で作られ、前記障壁(13)がその長さに沿って可変の断面を有し、前記障壁(13)が、
より遠位位置において、前記遠位端(11)から増加する横断面を有する、前記声門下領域(14)に適応するための第1の部分(17)と、
より近位位置において、前記第1の部分(17)とは反対側の、前記第1の部分(17)から増加する横断面を有する、前記声門上領域(16)に適応するための第2の部分(18)とを含む、障壁(13)と、
を含むことを特徴とする、気管内デバイス。
【請求項2】
前記障壁(13)が、前記換気チューブ(10)の最遠位3分の1に沿って延びることを特徴とする、請求項1に記載の気管内デバイス。
【請求項3】
前記障壁(13)が回転の対称を有することを特徴とする、請求項1~2のいずれか一項に記載の気管内デバイス。
【請求項4】
前記障壁(13)の前記第1の部分(17)が、直線状または凸状の長手方向断面を有することを特徴とする、請求項1に記載の気管内デバイス。
【請求項5】
前記第1の部分(17)が円錐形状を有することを特徴とする、請求項4に記載の気管内デバイス。
【請求項6】
前記第1の部分(17)が10mm~65mmの長さを有する、請求項3~5のいずれか一項に記載の気管内デバイス。
【請求項7】
前記第1の部分(17)が前記遠位端(11)から増加する横断面を有することを特徴とする、請求項3~6のいずれか一項に記載の気管内デバイス。
【請求項8】
前記障壁(13)の前記第2の部分(18)が、直線状または凸状の長手方向断面を有することを特徴とする、請求項1に記載の気管内デバイス。
【請求項9】
前記第2の部分(18)が円錐形状を有することを特徴とする、請求項8に記載の気管内デバイス。
【請求項10】
前記第2の部分(18)が10mm~75mmの長さを有することを特徴とする、請求項1、8、および9のいずれか一項に記載の気管内デバイス。
【請求項11】
前記第1の部分(17)および前記第2の部分(18)が、前記患者(3)の前記声門領域(15)を占めるように意図された接合部(19)で一緒になることを特徴とする、請求項1、8、9、および10のいずれか一項に記載の気管内デバイス。
【請求項12】
前記接合部(19)が、4mm~15mmの長さ、ならびに3mm~24mmの直径を有することを特徴とする、請求項1および8~11のいずれか一項に記載の気管内デバイス。
【請求項13】
前記障壁(13)が、前記接合部(19)に位置する不透過性を有する配置マーク(20)をさらに含むことを特徴とする、請求項11~12のいずれか一項に記載の気管内デバイス。
【請求項14】
前記障壁(13)が、前記患者(3)内の前記気管内デバイスの位置をチェックするために、前記遠位端(11)に放射線不透過性のチェックマーク(21)を組み込むことを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の気管内デバイス。
【請求項15】
前記換気チューブ(10)が、前記換気チューブ(10)の屈曲を防止し、任意の接続または動きからの張力が前記換気チューブ(10)に沿って伝達されることを防止するためのコイル形状の内側補強材を含む補強セグメント(24、26)を含み、前記換気チューブ(10)が、前記患者(3)によって噛まれ得るエリアに対応する非補強セグメント(25)を、前記補強セグメント(24、26)と前記非補強セグメント(25)とが交互になるように、さらに含むことを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の気管内デバイス。
【請求項16】
前記換気チューブ(10)が、前記遠位部分に位置する第1の補強セグメント(24)と、それに続く前記患者(3)が噛むことができるエリアに位置する第1の非補強セグメント(25)と、その次に続く前記近位部分に位置する第2の補強セグメント(26)とを有することを特徴とする、請求項15に記載の気管内デバイス。
【請求項17】
前記近位端(12)まで延びる第2の非補強セグメント(27)が前記第2の補強セグメント(26)に続くことを特徴とする、請求項16に記載の気管内デバイス。
【請求項18】
前記換気チューブ(10)が、その前記遠位部分において、前記障壁(13)によって覆われた前記エリアの少なくとも一部に、消毒放射線放出器(28)を含むことを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の気管内デバイス。
【請求項19】
前記消毒放射線放出器(28)が、前記換気チューブ(10)の内部を通って延び、不透明材料で覆われた光ファイバであって、前記障壁(13)に対応する前記エリアおいて不透明材料から解放されて、前記エリアにおいて消毒放射線を放出する、光ファイバを含むことを特徴とする、請求項18に記載の気管内デバイス。
【請求項20】
前記障壁(13)に医療用活性物質が含浸されていることを特徴とする、請求項1~19のいずれか一項に記載の気管内デバイス。
【請求項21】
前記障壁(13)および/または前記換気チューブ(10)にナノ粒子タイプの抗菌剤が含浸されていることを特徴とする、請求項1~20のいずれか一項に記載の気管内デバイス。
【請求項22】
前記近位端(12)において、前記換気チューブ(10)が、前記換気マシンへの安全かつ迅速な接続を容易にするために、前記換気チューブ(10)の前記直径値に関する情報を提供するインジケータ(29)を組み込むことを特徴とする、請求項1~21のいずれか一項に記載の気管内デバイス。
【請求項23】
前記インジケータ(29)が、あらかじめ設定された色分類に従って、前記直径値を示す色を有するキャップを含むことを特徴とする、請求項22に記載の気管内デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科的使用のための器具およびデバイスの分野内に含まれ得る。特に、本発明の目的は、患者と換気マシンとの間のインターフェースとして患者の機械的換気に使用される気管内デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
患者(3)の機械的換気は、麻酔下(外科的処置または診断的処置)または重大な状況(緊急事態または集中治療)のいずれかで、患者(3)と換気マシンとの間のインターフェースを必要とし、これは現在、様々な設計のマスクとして、および気管内チューブ(1)において具現化されており、100年を超えて使用されており、その設計は、わずかな変形を受けただけで、本質的には変化していない。これは、その使用に由来するリスクおよび合併症が、この長期間にわたって一定のままであることを意味する。
【0003】
図1は、現況技術の前記気管内チューブ(1)のうちの1つの使用を示す。前記気管内チューブ(1)は、全身麻酔の間、患者(3)が眠ると、患者(3)の口または鼻を通して声門下領域の気管(4)に到達するまで挿入される導管(2)を含む。前記気管内チューブ(1)は、人工呼吸器などとも呼ばれる換気マシン(前記図1には示されていない)に接続され、その機能は、患者(3)の呼吸を維持することである。導管(2)が正しく配置されていても、胃の内容物の一部が患者(3)の肺に移動し、重篤な呼吸障害を引き起こすことがある。同様に、咽頭および口腔または鼻腔内で行われる外科的介入では、上気道(声門の上)で生成された分泌物または血液が下気道に入る危険性がある。このリスクを最小限にするために、障壁としてガーゼタンポナーデを使用することが示されている。
【0004】
気道病変は、いずれかの病院で毎日投与される麻酔中に起こる。咽頭痛(嚥下痛)、声の変化(声道の刺激による嚥下障害)、または声の喪失(失声症)など、声帯または喉頭の病変は、術後の期間に反映される。声帯の特定の部分、例えばアリテノイドに影響を及ぼす病変は、1日を通して声の消耗を引き起こす。
【0005】
ビデオ喉頭鏡検査の出現によって、筋弛緩薬の逆転の改善と共に、挿管の適応症の増加が予想され、患者(3)の安全性が高まる。これが、換気および麻酔を維持しながら、安全性を高め、合併症を減らし、したがって、現在の状況を劇的に改善する新しいデバイスを有することが必要である理由である。
【0006】
肺道内に留まる細菌が流行する可能性があることから、気道の確保がますます進み、将来的に密閉性の良くないデバイスの使用は避けることが好ましい。
【0007】
同様に、このデバイスは、患者がより安全に換気されることを可能にし、流行時に換気を必要とする場合に、患者と関与する医療専門家の両方にとって、感染の可能性を低減する。
【0008】
文献US6745773B1(GOBEL)、US2010/051035A1(JENKINS)、US2013/146062A1(SCHUMACHER)、WO2010/091440A2(BHATT)、US2020/030560A1(JENKINS)、US2017/281966A1(BASIONY)、およびWO2006/125986A1(LARYNGEAL MASK)は、気管カフのいくつかのモデルを開示している。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、患者の機械的換気において、より高い安全性と低い合併症の発生率を保証する患者の機械的換気のための気管内デバイスによって、前述の問題を解決する。
【0010】
本発明の気管内デバイスは、換気チューブおよび障壁を含み、換気チューブは、患者の気道に挿入されるように意図された、遠位端を有する遠位部分と、換気マシンに接続されるように意図された、近位端を有する近位部分とを含む。
【0011】
さらに、障壁は、遠位エリアにおいて換気チューブを覆う固体粘弾性材料で作られ、挿入時に、患者の喉頭の声門下領域、ならびに声門領域および声門上領域を占めるように構成されており、そのため、障壁はその長さに沿って可変の断面を有する。後述するように、障壁は、上述の3つの領域、すなわち声門下、声門、および声門上に作用するので、三重の効果を有する。
【0012】
より好ましい例では、障壁は、円筒形接合部に一緒になる2つの切頭円錐形部分を含み、隣接する構造に対するより良好な治療による適応を可能にする方法で、気管、声帯、および声門上領域のレベルで異なる直径を再現し、ならびに位置の変化、発作など、患者によって行われる任意の動きを減衰させる。前述によれば、障壁を含むことにより、声帯、気管、および声門上領域において、三重の保護が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
説明を補足し、本発明の特徴をより容易に理解できるようにする目的で、本発明の実用的な好ましい例示的実施形態によれば、前記説明は、限定ではなく例示として、以下を表す1組の図面を伴う。
図1】現況技術の気管内チューブを用いて挿管された患者の概略図である。
図2】本発明の気管内デバイスの例示的な実施形態の等身大の斜視図である。
図3】本発明のデバイスによって挿管された患者の概略図である。
図4】小児患者の特定の症例に対する本発明の例示的な実施形態における三重効果障壁の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による、患者(3)の機械的換気のための気管内デバイスの好ましい例示的な実施形態の詳細な説明について、上記で言及された図1図4を用いて以下に提供される。
【0015】
本発明の気管内デバイスは、後述するように、三重障壁経声門デバイスを構成し、ETTと略記することができる。
【0016】
図2および図3は、気管内デバイスの好ましい実施形態の等身大の斜視図を提供する。気管内デバイスは、遠位端(11)を備える遠位部分と、近位端(12)を備える近位部分とを備える換気チューブ(10)を含み、遠位部分は、患者(3)の気道に挿入されるように意図され、一方、近位部分は、換気マシン(図示せず)に接続されるように意図される。
【0017】
図1および図3は、換気チューブ(10)が、粘弾性挙動を有する変形可能な固体材料から作られ、換気チューブ(10)の遠位部分に配置され、挿入時に、患者(3)の喉頭(5)の声門下領域(14)、ならびに声門領域(15)および声門上領域(16)も占めるように意図された障壁(13)で覆われていることを示す。図示の例では、障壁(13)は、換気チューブ(10)の最遠位約3分の1を占めている。障壁(13)は、長さと横断面の両方において、上述の声門下領域(14)、声門領域(15)および声門上領域(16)の形態に適応するのに適した寸法を有する。特に、障壁(13)は、その長さに沿って可変の横断面を有する。障壁(13)は、障壁(13)の横断面が各点において対応する直径の値によって画定されるように、回転対称性を有することが好ましい。
【0018】
障壁(13)の異なる断面/直径値は、患者(3)および/または死体における気管の解剖学的研究から導出される。
【0019】
より遠位の位置では、障壁(13)は、好ましくは、直線状または凸状(凹状ではない)の長手方向断面を有する第1の部分(17)を有し、例えば、第1の部分(17)は、声門下領域(14)に適応するように円錐形状を有する。第1の部分(17)の構成は、成人患者(3)に関して小児患者(3)の場合は異なっていてもよい。成人患者の場合、例示的な実施形態によると、図2および図3を参照すると、第1の部分(17)は、遠位端(11)から増加する横断面(または直径)、ならびに好ましくはそれぞれ29mmおよび19mmのより大きいおよびより小さい端直径を有し、声門下領域(14)の形態に適切に適応し、これは、一般に、14~18mmの前後の直径および18~22mmの横直径を有する(内部距離、外部距離はより大きい)。障壁(13)の第1の部分(17)と患者(3)の喉頭(5)の声門下領域(14)との間の直径差は、気道を大気圧で密封し保護するのに十分な圧力が発生するように設定される。一方、小児患者(3)、特に9歳までについては、図4を参照すると、第1の部分(17)は、遠位端(11)から増加する横断面(または直径)を有することができ、より大きいおよびより小さい端直径は、成人の場合よりも狭い寸法を有する。いずれの場合も、換気チューブ(10)および障壁(13)、特に障壁(13)の第1の部分(17)は、小児と成人の両方の異なる患者(3)の形態に基づいて、一般性を失うことなく、または性能を失うことなく、異なる寸法で製造することができる。
【0020】
図2および図3はまた、障壁(13)が、より近位の位置において、第1の部分(17)とは反対側の第2の部分(18)を含み、横断面(または直径)は第1の部分(17)から増加し、好ましくは長手方向断面が直線または凸状(凹状ではない)であり、例えば、第2の部分(18)は声門上領域(16)に適応するように円錐形である。例示的な実施形態によれば、第2の部分(18)は、障壁(13)の第1の部分(17)について説明した理由と同様の理由で、それぞれ19mmおよび34mmのより小さいおよびより大きい端直径を有する。
【0021】
図2および図3を続けると、声帯のレベルで声門領域(15)を占めるように意図された、障壁(13)の第2の部分(18)との第1の部分(17)の接合部(19)を示し、記載された好ましい例によれば、声帯の最大開口は一般に10~15mm(安静時、男性で6~7mm、女性で1~2mm)であるので、19mmの周知の直径を有する。より一般的には、接合部(19)は、4mm~15mmの好ましい長さ、ならびに3mm~24mmの好ましい直径を有する。
【0022】
好ましくは、図1および図3に示されるように、第1の部分(17)の第2の部分(18)との接合部(19)に位置し、患者(3)の声帯の高さ、したがって声門領域(15)に位置するように意図される、好ましくは不透明であり、より好ましくは黒色である配置マーク(20)が提供される。
【0023】
例として、記載される好ましい実施形態では、障壁(13)は、10.5cmの全長を有し、そのうち5.5cmが第1の部分(17)に対応し、5cmが第2の部分(18)に対応する。より一般的には、第1の部分(17)は、10mm~65mmの好ましい長さを有することができる。同様に、第2の部分(18)は、10mm~75mmの好ましい長さを有することができる。
【0024】
図2および図3は、デバイスが患者(3)に挿入された後の気道における障壁(13)の各部分(17,18)の位置を示し、声門下領域(14)は声帯の下にあり、声門領域(15)は声帯の高さにあり、声門上領域(16)は声帯の上にあり、喉頭蓋の基部までである。
【0025】
図2および図3は、遠位端(11)において、図2を参照すると、好ましくは、マーフィーアイ(6)が存在せず、一方、放射線不透過性のチェックマーク(21)が存在することを示しており、これにより、デバイスが患者(3)に挿入されると、気管内デバイスの遠位部分、したがって気管内デバイス全体の正確な位置が、X線撮影によってチェックされることが可能になる。
【0026】
形状とサイズの両方におけるデバイスの構成は、喉頭(5)、すなわち喉頭蓋、脊髄、アリテノイドなど、患者(3)の気管(4)および咽頭によって提示される解剖学的範囲によって決定される。
【0027】
障壁(13)は、粘弾性挙動を有する変形可能な固体材料から構成されるので、障壁(13)を、折り畳まれた状態、すなわち、それ自体に圧縮した状態で患者(3)内に挿入し、障壁(13)に負圧を加え、挿入されると、前記圧縮を解放し、または正圧を加えることさえも可能である。要するに、本発明のデバイスは、流体の圧力および押し下げの影響によって障壁(13)を変形させるために障壁(13)に接続可能な圧力手段を含むことができる。これは、例えば、障壁(13)に可撓性導管(22)を接続し、次に、例えば三方活栓弁(23)などの活栓弁(23)に接続し、三方活栓弁(23)からシリンジ(30)によって吸引することによって実行することができる。デバイスが患者(3)の内部に配置され、前述の三方活栓弁(23)を使用すると、周囲空気が障壁(13)に向かって自由に通過し、それによって大気圧で膨張を達成するか、またはシリンジ(30)により空気を注入することによって正圧を印加することが可能である。障壁(13)は、気管切開カニューレに適応させることができる。
【0028】
図2および図3は、以下に説明するように、換気チューブ(10)内の補強部分および非補強部分の配置を示す。現況技術では、外装された気管内チューブ(1)とも呼ばれる補強された気管内チューブが知られており、これは、あらゆる接続または動きからの張力がデバイス全体に沿って伝達されることを防止し、また、チューブが容易に曲がることを防止するために、チューブ内に収容された、呼気のためのばね形状の内側補強材を有することによって特徴付けられる。しかしながら、患者(3)が、麻酔から目覚めたとき、または機械的換気を必要とする間に、これらの補強チューブのうちの1つを噛んだ場合、補強チューブは変形し、サイズの減少に続く抵抗の増加のために換気が困難になる。ときには、破砕は、分泌物がそれを通って吸い込まれるのを防ぐ。これらの上述の欠点は、補強されていないチューブを使用することによって回避される。補強チューブおよび非補強チューブに関連付けられた利点を単一チューブ内に有するために、本発明のデバイスは、換気チューブ(10)内に、補強セグメント(24,26)と非補強セグメント(25,27)とを交互に有する。一般に、換気チューブ(10)は、大部分が、すでに述べた利点を有する補強型であり、患者(3)が換気チューブ(10)に噛むことができるエリアでは非補強型である。特に、換気チューブ(10)は、遠位部分に位置する第1の補強セグメント(24)と、患者(3)が噛むことができるエリアに位置する第1の非補強セグメント(25)と、その後すでに近位部分に位置する第2の補強セグメント(26)とを有する。好ましくは、近位端(12)まで延びる第2の非補強セグメント(27)がそれに続く。補強セグメント(24,26)と非補強セグメント(25,27)との記載された組み合わせは、本発明の関連する新規性である。
【0029】
好ましくは、換気チューブ(10)は、その遠位部分において、障壁(13)によって覆われたエリアの少なくとも一部に、例えば、200~280nmのタイプCの紫外線(UV)放射を放出する消毒放射線放出器(28)を収容する。好ましくは、消毒放射線放出器(28)は、換気チューブ(10)の内部を通って延び、不透明材料で覆われた光ファイバであって、障壁(13)に対応するエリアにおいて不透明材料から解放されて、前記エリアにおいて、例えばUV放射など放射線を放出する光ファイバを含む。消毒放射線放射器(28)、特に光ファイバは、適切な場合には、放射線不透過性チェックマーク(21)に到達することができる。
【0030】
近位端(12)において、換気チューブ(10)は、換気マシンへの安全かつ迅速な接続を容易にするために、換気チューブ(10)の直径値に関する情報を提供するインジケータ(29)を組み込むことができる。好ましくは、インジケータ(29)はキャップであってもよい。さらに好ましくは、インジケータ(29)、特にキャップは、あらかじめ設定された色分類に従って、直径値を示す色を有する。色分類は、これらのデバイスのより安全かつより速い利用可能性を可能にし、特に時間が本質である緊急事態において重要である。この簡単な分類によって、現在可能ではない、必要とされるチューブを迅速に位置特定することができる。例示的な例によれば、6.0、6.5、7.0、7.5および8.0mmの直径に対して、ピンク色、青色、赤色、緑色および黄色がそれぞれ使用される。
【0031】
好ましくは、障壁(13)は、少なくとも最外層において、防腐剤、局所麻酔剤などの医学的活性物質で含浸されるように、部分的に透過性のポリマー(例えば、ナイロン6)から作られる。
【0032】
同様に、内部および/または外部の換気チューブ(10)と障壁(13)の両方は、好ましくは、細菌から保護するために、ナノ粒子(銀、Ag-Np、および酸化亜鉛、ZnO-Npなど)で含浸される。
【0033】
このようにして、デバイスのより硬い部分は、患者(3)の気道の最も繊細な構造、すなわち喉頭(5)および気管(4)と決して接触せず、これは、これらの貴重な構造への損傷の可能性を大幅に低減する。同様に、患者(3)が、麻酔から目覚めている間、または機械的換気から離脱している間、デバイスに適応することをより容易にする。これはすべて、麻酔中の典型的な気道病変(咽頭痛、または嚥下痛、嚥下障害、および失声症などの音声障害)の出現を防止する(または少なくとも最小限に抑える)。
【0034】
一方、障壁(13)の長さおよび延長は、デバイスの外面に沿った患者(3)の気道の汚染に対してより大きい保護を与える。長さが長いことは、汚染物質が移動する距離が大きく、加えて、構造の解剖学的構造を尊重しない従来の気管内チューブ(1)のバルーン(7)のものよりもはるかに長いという単純な事実に起因して、いかなる汚染物質または分泌物も内部にアクセスすることがより困難であることを意味する。声門および声門上の空間の役割を新規の方法で基本的な障壁として考慮することによって、気道の汚染を妨げる2つの他のポイントを確立することができる。解剖学的適応は、より良好な密閉性を可能にする。
【0035】
本発明のデバイスの使用は、気道が声門上領域(16)からすでに分離されているので、背景で言及した咽頭タンポナーデを行う必要性を回避する。したがって、適切な密閉性を達成できないことに加えて、咽頭の刺激を引き起こすガーゼタンポナーデを行う必要はない。
【0036】
さらに、デバイスは、気道狭窄の発生率を劇的に減少させ、気管切開の適応を回避または減少させることによって、機械的換気が現在のものよりも著しく長い期間維持されることを可能にする。現況技術の気管内チューブ(1)を使用した長期挿管の場合、気管狭窄の発生率が高く、患者の罹患率(3)および時には死亡率を増加させる。これは、次の理由によるものである。
・気管(4)の壁上の気管内チューブ(1)のバルーン(7)は、気管(4)の非常に短い部分に押し付けられる。
・気管(4)が潅流される毛細管潅流圧よりも高いバルーン(7)の膨張圧値。
・気管内チューブが静止して狭窄を引き起こす気管(4)の部位は、褥瘡エリア(9)として知られており、図2を参照されたい。これには、気管(4)の人工的かつ侵襲的な開口を確立することと、気管(4)を外部から導くこととからなる外科的処置である気管切開を行う必要がある場合が少なくない。前記手順は、気管(4)の狭窄を回避するために、機械的換気の8~10日目から必要である。しかしながら、気管切開はまた、気管潰瘍、偽経路、出血、感染、軟組織の歪み、気道の閉塞などの合併症をもたらし得る。しかしながら、この技術は、気管切開後狭窄の発生率が20~30%と高くなることを妨げない。
【0037】
気管(4)における正常な動作に必要な毛細血管血圧は、20~30mmHgであるが、これは大きく変動し、患者(3)の抵抗力および状態に依存する。したがって、気管(4)の潅流を維持するために、本発明のデバイスの障壁(13)が効果的に協働する接触面を増加させることによって生成される応力を分散させる必要がある。
【0038】
障壁(13)の長さを考慮すると、通常、気管(4)を損傷する可能性がある正圧を印加する必要はない。さらに、正圧を加える必要がある場合、加えられた圧力が障壁(13)の表面に沿って分配されており、これは従来の気管内チューブ(1)のバルーン(7)のものよりもはるかに大きいので、さらに気道に非常に低減された実際の押圧を及ぼすことになる非常に減圧された圧力が必要とされる。現況技術による気管内チューブ(1)(図1参照)と本発明のデバイスの障壁(13)(図2)との接触面間の比較を観察することができる。
【0039】
気管狭窄の主な原因は、気管の後壁上にカニューレまたはチューブが静止していることであり、ここは、気管(4)が、非線維化部分であるので、栄養を与えられる場所であるため、最も脆弱なエリアが位置する。これは、褥瘡エリア(8)において気管内チューブ(1)と接触することによって損傷される。図3と比較すると、障壁(13)の使用により、褥瘡エリア(8)に損傷が生じないことが観察される。
【0040】
現況技術の気管内チューブ(1)の使用は、時に能動的または受動的に、気管支吸引、ならびに腸の逆流を引き起こすことがある。これは、気道が完全に保護または密閉されていないためである。声門上領域(16)は保護されておらず、気管内チューブ(1)のバルーン(7)は短く、したがって、気管(4)の壁との相互作用の表面が小さいので、腸または口腔の細菌がその部位を通過し、気道の汚染を引き起こす可能性は高い。機械的換気に関連付けられた感染症は、現在、集中治療室における滞在日数の増加を表し、これらの患者(3)の死亡率を有意に増加させる。さらに、これらの院内感染は、通常、根絶することが困難な多剤耐性細菌によって引き起こされる。
【0041】
通常、長期の挿管を必要とする患者(3)では、気管切開と呼ばれる侵襲的外科的処置が、8~10日目頃に適応となるが、合併症を伴わないわけではなく、コストが上がり、資源を転用する。加えて、この予防的気管切開が何回も行われるが、機械的換気が患者(3)から取り除かれた直後であるため、処置は回避され得た(結果論になるが)。この予防的介入を必要とする人を予測する方法を取得しようとする試みにもかかわらず、これらの方法は失敗し、最終的に気管狭窄病変が生じる前に気管切開が(より悪くないものとして)行われる。本発明のデバイスによって、経口気管換気を維持することが可能な日数が増加し、現在の気管切開の多くを回避する。
【0042】
機械的換気に関連付けられた非常に恐ろしい院内肺炎をもたらす汚染経路が2つあり、気管内チューブ(1)の外面および内面である。上述のように、本発明は、3つの解決策を提供する。
・声門下(14)、声門(15)および声門上(16)の3つの領域における障壁(13)の長さおよび気道との接触面をより大きくしていること。
・障壁(13)を、銀もしくは酸化亜鉛ナノ粒子、または防腐剤もしくは他の物質で含浸させること、細菌バイオフィルムの形成を防止すること、およびデバイスの外面を通る気道の感染性侵入に対する活性障壁を作り出すことの可能性。
・デバイスの内面による気道の汚染に対する保護を与える、遠位部への短波紫外線(UVC200~280nm)の放射の可能性。
【0043】
これらの可能性は、患者だけでなく、患者に接する人員も保護するので、空気感染する高い能力を有する病原菌の流行状況において望ましい。
【0044】
さらに、これらの解決策は、気道の汚染の可能性を低減する。機械的換気の必要性が短期間(24時間未満)である場合、最後の2つの解決策は無視することができ、したがって、製造コストを低減することができる。
【0045】
遠位部分の構成のおかげで、デバイスは、選択的肺換気が生じる可能性を非常に大幅に低減する。デバイスが適切に配置されると、声帯上に置かれなければならない点とその最遠位点との間の距離は、好ましい例によれば5.5cmである。現況技術の気管内チューブ(1)では、この距離は9.0cmであり、したがって、気管竜骨に触れて損傷を与えたり、選択的挿管を引き起こしたりすることがあり、その結果、気道内圧の増加、気管支痙攣、麻酔必要量の増加、期外収縮などの合併症が生じる。
【0046】
気管(4)は、長さに非常にばらつきがあり(実際、必ずしも同じ数のリングを有するわけではない)、7~15cmの範囲である。加えて、首の動きによって、3~4個のリングを収縮させることによって、長さが短くなることもある。したがって、気管竜骨に衝突すること、または選択的肺挿管を行うことは、本発明のデバイスによって回避される。安全性の向上のために、気管内チューブ(1)に存在するマーフィーアイ(6)は、好ましくは考慮されない。
【0047】
本発明のデバイスは、気道の取り扱いに関連付けられた院内肺炎および感染を低減することを可能にする。
【0048】
障壁(13)に経口麻酔薬を含浸させる可能性は、患者(3)が麻酔処置中および麻酔処置の終了時にデバイスにより良好に適応することを可能にする。気管内チューブ(1)では、気管内チューブ(1)は、麻酔(喉頭反射による)から目覚めるときに拒絶されることが非常に一般的である。麻酔剤の含浸は、患者(3)によるより大きい受容および耐性をもたらす。
【0049】
本発明のデバイスは、長期間の換気プロセスにおいて、機械的換気およびそれからの離脱に対する患者(3)のより良好な耐性を提供する。同様に、遠位端に位置し、気管内チューブ(1)に存在しないチェックマーク(21)のおかげで、X線撮影によって患者(3)内での位置特定がより容易かつ明確になる。
図1
図2
図3
図4