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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ロボットシステム及びロボット作業方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20240613BHJP
   B25J 5/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
B25J5/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022571554
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2021047585
(87)【国際公開番号】W WO2022138724
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2020215817
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】掃部 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】岡 朋暉
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-208857(JP,A)
【文献】特開2019-030925(JP,A)
【文献】特開2010-094777(JP,A)
【文献】特開2010-128935(JP,A)
【文献】特開2019-188576(JP,A)
【文献】特開2004-243499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の関節を有するロボットアームを含む自走ロボットと、
操作者による操作を受け付ける、前記自走ロボットを操作するための操作部と、
前記操作者により視認される表示器と、
前記自走ロボットに搭載され、当該自走ロボットの周囲の状況を撮像する周囲カメラと、
処理回路と、を備え、
前記処理回路は、
前記ロボットアームの姿勢を含む前記自走ロボットの姿勢を時々刻々模擬する自走ロボット模擬画像を生成し、
前記周囲カメラで撮像された周囲状況画像と、生成された前記自走ロボット模擬画像とを含み、前記表示器に表示される複合画像を生成するように構成され
前記処理回路は、前記自走ロボットから眺めた一人称視点の複合画像を生成する場合、
前記自走ロボット模擬画像において前記自走ロボットにおける前記ロボットアームの前記周囲状況画像に写っていない部分の少なくとも一部を模擬するアーム模擬部分が、前記周囲状況画像に写った前記ロボットアームの一部に繋がるように前記自走ロボット模擬画像を生成し、且つ、
前記生成された自走ロボット模擬画像の前記アーム模擬部分が、前記周囲状況画像に写った前記ロボットアームの一部に繋がるように、前記一人称視点の複合画像を生成するように構成されている、ロボットシステム。
【請求項2】
前記ロボットアームは、前記1以上の関節をそれぞれ駆動する1以上のモータと、前記1以上のモータの回転角をそれぞれ検知する1以上の回転角検知部とを備え、
前記処理回路は、少なくとも、前記1以上の回転角検知部で検知された回転角に基づいて、前記自走ロボット模擬画像を生成するように構成されている、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記処理回路は、前記自走ロボットの予定移動経路が前記周囲状況画像に重ねて示された前記複合画像を生成するように構成されている、請求項1又は2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記処理回路は、前記自走ロボットの前記ロボットアームの姿勢の変化を示すアーム動画が、前記周囲状況画像または前記自走ロボット模擬画像に重ねて示された前記複合画像を生成するように構成されている、請求項1乃至のいずれかに記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記処理回路は、前記周囲カメラで撮像された前記周囲状況画像及び前記自走ロボットの姿勢に基づいて、前記ロボットアームが前記自走ロボットの周囲の物体と干渉するか否かを判定し、干渉すると判定した場合に、干渉警告信号を出力する、請求項1乃至のいずれかに記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記表示器は、出力される前記干渉警告信号に応じて、干渉警告を表す画像を表示するように構成されている、請求項に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記表示器とは別個に配置され、出力される前記干渉警告信号に応じて、干渉警告を報知する干渉警告報知器をさらに備える、請求項に記載のロボットシステム。
【請求項8】
ロボットアームを備える自走ロボットを操作することと、
前記ロボットアームの姿勢を含む前記自走ロボットの姿勢を時々刻々模擬する自走ロボット模擬画像を生成することと、
前記自走ロボットに、当該自走ロボットの周囲の状況を撮像する周囲カメラを設けることと、
前記周囲カメラで撮像された周囲状況画像と前記自走ロボット模擬画像とを含む複合画像を生成することと、
前記複合画像を表示することと、を含む、ロボット作業方法であって、
前記自走ロボットから眺めた一人称視点の複合画像を生成する場合、
前記自走ロボット模擬画像において前記自走ロボットにおける前記ロボットアームの前記周囲状況画像に写っていない部分の少なくとも一部を模擬するアーム模擬部分が、前記周囲状況画像に写った前記ロボットアームの一部に繋がるように前記自走ロボット模擬画像を生成し、且つ、
前記生成された自走ロボット模擬画像の前記アーム模擬部分が、前記周囲状況画像に写った前記ロボットアームの一部に繋がるように、前記一人称視点の複合画像を生成する、ロボット作業方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットシステム及びロボット作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自律移動可能なロボットの周囲を撮像し、その撮像された画像を操作者が見ながら移動させることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-031897号公開特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自律走行可能なロボット(以下、自走ロボットと呼ぶ)の中には、ロボットアームを備えるものがある、そのような自走ロボットを走行させる場合、ロボットアームが周囲の物体と干渉しやすい。上記従来の技術では、そのことに全く言及していない。
【0005】
本開示は上記のような課題を解決するためになされたもので、ロボットアームを備える自走ロボットが周囲の物体と干渉することを回避可能なロボットシステム及びロボット作業方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示のある形態(aspect)に係る、ロボットシステムは、1以上の関節を有するロボットアームを含む自走ロボットと、操作者による操作を受け付ける、前記自走ロボットを操作するための操作部と、前記操作者により視認される表示器と、前記自走ロボットに搭載され、当該自走ロボットの周囲の状況を撮像する周囲カメラと、処理回路と、を備え、前記処理回路は、前記ロボットアームの姿勢を含む前記自走ロボットの姿勢を時々刻々模擬する自走ロボット模擬画像を生成し、前記周囲カメラで撮像された周囲状況画像と、生成された前記自走ロボット模擬画像とを含み、前記表示器に表示される複合画像を生成するように構成される。ここで、「時々刻々模擬する」とは、模擬画像生成部で自走ロボット模擬画像が連続する動画が生成され、当該自走ロボット模擬画像が当該動画の瞬時画像であることを明確にするための文言であり、それ以外に特段の意味はない。
【0007】
また、本開示の他の形態(aspect)に係るロボット作業方法は、ロボットアームを備える自走ロボットを操作することと、前記ロボットアームの姿勢を含む前記自走ロボットの姿勢を時々刻々模擬する自走ロボット模擬画像を生成することと、前記自走ロボットに、当該自走ロボットの周囲の状況を撮像する周囲カメラを設けることと、前記周囲カメラで撮像された周囲状況画像と前記自走ロボット模擬画像とを含む複合画像を生成することと、前記複合画像を表示することと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、ロボットアームを備える自走ロボットが周囲の物体と干渉することを回避可能なロボットシステム及びロボット作業方法を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施形態に係るロボットシステムの構成の一例を示す模式図である。
図2図2は、図1の操作ユニットの構成の一例を示す平面図である。
図3図3は、図1の周囲カメラの撮像範囲を模式的に示す図である。
図4図4は、図3のロボットシステムの制御系統の構成を示す機能ブロックである。
図5図5は、周囲状況画像と自走ロボット模擬画像との複合画像を、自走ロボットを俯瞰する視点から眺めた画像として示す俯瞰視点図である。
図6図6は、周囲状況画像と自走ロボット模擬画像との複合画像を、自走ロボットを上方の視点から眺めた画像として示す上視点図である。
図7図7は、周囲状況画像と自走ロボット模擬画像との複合画像を、自走ロボットから眺めた画像として示す一人称視点図である。
図8図8は、自走ロボットの予定移動経路が周囲状況画像に重ねて示された複合画像を示す図である。
図9図9は、自走ロボットのロボットアームの姿勢の変化を示すアーム動画が自走ロボット模擬画像及び周囲状況画像に重ねて示された複合画像を示す図である。
図10A図10Aは、自走ロボットのロボットアームの姿勢の変化を示すアーム動画の一コマを示す図である。
図10B図10Bは、自走ロボットのロボットアームの姿勢の変化を示すアーム動画の一コマを示す図である。
図10C図10Cは、自走ロボットのロボットアームの姿勢の変化を示すアーム動画の一コマを示す図である。
図10D図10Dは、自走ロボットのロボットアームの姿勢の変化を示すアーム動画の一コマを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、以下の図は、本開示を説明するための図であるので、本開示に無関係な要素が省略される場合、誇張等のために寸法が正確でない場合、簡略化される場合、複数の図において互いに対応する要素の形態が一致しない場合等がある。また、本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0011】
(実施形態)
図1は、本開示の実施形態に係るロボットシステム100の構成の一例を示す模式図である。
【0012】
[ハードウェアの構成]
図1を参照すると、実施形態に係るロボットシステム100は、ロボットアーム121A,121Bを備える自走ロボット1と、自走ロボット1を操作するための操作部21(図2の21A,21B)を含む操作ユニット2と、ロボットアーム121A,121Bの姿勢を含む自走ロボット1の姿勢を時々刻々模擬する自走ロボット模擬画像160(図5図7参照)を生成する模擬画像生成部115(図4)と、自走ロボット1に設けられ、当該自走ロボット1の周囲の状況を撮像する周囲カメラ17と、周囲カメラ17で撮像された周囲状況画像50(図5図7参照)及び模擬画像生成部115で生成された自走ロボット模擬画像160含む複合画像501,601,701(図5図7参照)を生成する複合画像生成部116(図4参照)と、複合画像生成部116で生成された複合画像501,601,701を表示する上記操作ユニット2の表示部23(図2参照)と、を備える。以下、この構成を詳しく説明する。
【0013】
本実施形態のロボットシステム100は、自律走行作可能な走行部11と走行部11に設けられたアーム部13とを備える自走ロボット1と、操作ユニット(コンソール)2と、を備える。
【0014】
自走ロボット1と操作ユニット2とは、例えば、データ通信ネットワーク3を介して接続される。自走ロボット1と操作ユニット2とが、直接、有線又は無線で接続されてもよい。
【0015】
以下、ロボットシステム100におけるこれらの要素を詳しく説明する。
【0016】
<ロボットシステム100の用途>
ロボットシステム100の用途は特に限定されない。以下では、自走ロボット1が、個人の邸宅内で介護を行う場合を例示する。
【0017】
<データ通信ネットワーク3>
データ通信ネットワーク3は、データ通信可能なネットワークであればよい。データ通信ネットワーク3として、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等が例示される。
【0018】
<自走ロボット1>
図1を参照すると、自走ロボット1は、基本的に、自律走行可能な走行部11と当該走行部11に設けられたアーム部(ロボットアーム)13とを含むように構成されておればよい。
【0019】
自走ロボット1は、ここでは、走行部11と、昇降部12と、アーム部13とを備える。
【0020】
走行部11は、例えば、台車で構成される(以下では、台車11と表記する)。台車11は、基部に前輪及び後輪からなる車輪11aを備える。前輪及び後輪の一方が操舵輪であり、前輪及び後輪の少なくとも一方が駆動輪である。また、台車の前部に昇降部12が設けられ、台車11の後部に、物品を置くための置き棚11bが設けられている。
【0021】
台車11は、さらに、バッテリ及びモータを備えていて、台車11は、モータがバッテリを電源として車輪11aを駆動することによって自律走行する。また、昇降部12、アーム部13、並びに、後述するロボット側表示部14、ロボット側マイクロフォン15、及びロボット側放音部16は、このバッテリを電源として動作する。
【0022】
昇降部12は、基部122と、基部122に対して昇降する昇降軸123と、を備える。昇降軸123は、例えば上下方向に延在している。
【0023】
昇降軸123の上部に、第1ロボットアーム121A及び第2ロボットアーム121Bの各基端部が、昇降軸123の中心軸の周りに回動自在に設けられている。第2ロボットアーム121Bは、第1ロボットアーム121Aの上側に設けられている。第1ロボットアーム121A及び第2ロボットアーム121Bはそれぞれの回転位置が入れ替わることができ、左右の区別はない。
【0024】
第1ロボットアーム121A及び第2ロボットアーム121Bは、それぞれ、多関節ロボットアームで構成され、それぞれ、先端にハンド124A及びハンド124Bを備える。
【0025】
ハンド124A及びハンド124Bは、特に限定されないが、ここでは、対象物を把持することが可能な形状に形成されている。
【0026】
昇降軸123の前方には、周囲カメラ17が設けられている。周囲カメラ17は、この他、台車11の右側部(参照符号17で図示)、後部(図1に示さず)、及び左側部(図1に示さず)に設けられている。これらの4つの周囲カメラは、互いに同じ高さ位置に設けられている。4つの周囲カメラ17は、操作者Pが、自走ロボット1の周囲の状況(環境)を確認するためのデバイスである。周囲カメラ17については、後で詳しく説明する。
【0027】
第2ロボットアーム121Bの先端部には、手先カメラ18が設けられている。手先カメラ18は、一対のハンド124A,124Bが把持しようとする対象物を、操作者Pが確認するためのデバイスである。
【0028】
昇降軸123の上端部には、支持部材125を介して、ロボット側表示部14が取り付けられている。ロボット側表示部14は、例えば、液晶ディスプレイで構成される。
【0029】
ロボット側表示部14の適所には、ロボット側マイクロフォン15、ロボット側放音部16、及び主カメラ19が設けられている。
【0030】
ロボット側表示部14、ロボット側マイクロフォン15、ロボット側放音部16、及び主カメラ19は、自走ロボット1が、人(以下、対話者という)と対話するためのデバイス群である。ロボット側表示部14は、対話者に伝達しようとする情報(画像情報、文字情報等)を表示する。ロボット側マイクロフォン15は、対話者の音声を取得する。ロボット側放音部16は、例えば、スピーカで構成され、対話者に伝達しようとする音声情報を放音する。主カメラ19は、対話者を撮像する。
【0031】
台車11は、さらに、演算回路モジュールCm1及びロボット側通信部113を備える。演算回路モジュールCm1は、プロセッサPr1とメモリMe1とを備える。演算回路モジュールCm1は、後述するように、ロボット制御部(コントローラ)112、模擬画像生成部115、複合画像生成部116、干渉警告部117(図4参照)を構成する。模擬画像生成部115、複合画像生成部116および干渉警告部117の一部または全部は、後述の演算回路モジュールCm2により構成されてもよい。
【0032】
<操作ユニット2>
図2は、図1の操作ユニット2の構成の一例を示す平面図である。操作ユニット2は、自走ロボット1を操作できるものであれば、特に限定されない。操作ユニット2は、図2に示すように、左右の操作部21A,21Bが、一体化されていてもよいし、個別に形成された複数の操作部で構成されてもよい。操作部は、操作者が操作できるものであれば、特に限定されない。操作部(操作具、操作子)として、キー、ジョイスティック、ハンドル、タッチパネル等が例示される。
【0033】
また、操作ユニット2は、図2に示すように、操作部21A,21Bと、操作側表示部23、操作側マイクロフォン25、及び操作側放音部26と、が一体化されていてもよいし、操作部21A,21Bと、操作側表示部23、操作側マイクロフォン25、及び操作側放音部26とが、別個に形成されていてもよい。
【0034】
図2を参照すると、操作ユニット2は、本体20を備える。本体20は、扁平な直方体状の箱に形成されている。
【0035】
本体20の左端部及び右端部には、それぞれ、左手操作部21A及び右手操作部21Bが設けられている。これらの左手操作部21A及び右手操作部21Bが、操作部21を構成する。左手操作部21A及び右手操作部21Bには、それぞれ、所定の一群の操作キー29が配置されている。この所定の一群の操作キー29は、例えば、ゲーム機の周知の操作キー群と同様に構成される。従って、この所定の一群の操作キー29の説明を省略する。操作者Pが、これらの一群の操作キー29を両手で、適宜、操作すると、その操作に応じて、自走ロボット1の走行部、昇降部、及びアーム部13が動作する。つまり、操作部21は、自走ロボット1の走行部、昇降部、及びアーム部13を操作するためのキー操作信号を出力するように構成されている。
【0036】
本体20の上面の中央部に、操作者Pにより視認される操作側表示部23が設けられている。操作側表示部23は、例えば、タッチスクリーンである。ただし、操作側表示部23は、画像を表示するものであればよく、タッチスクリーンでなくてもよい。例えば、操作側表示部23は、操作ユニット2とは別個に配置された液晶ディスプレイでもよいし、ヘッドマウントディスプレイであってもよい。操作側表示部23は、操作者Pが自走ロボット1を操作するために必要な情報(画像情報、文字情報等)を表示する。例えば、操作側表示部23には、主カメラ19で撮像された主画像、手先カメラ18で撮像された手先画像が、適宜、表示される。また、操作側表示部23には、後述する複合画像501,601,701(図5図7参照)が表示される。
【0037】
本体20の上面の適所には、操作側マイクロフォン25及び操作側放音部26が設けられている。操作側マイクロフォン25は、対話者の音声を取得する。操作側放音部26は、例えば、スピーカで構成され、ロボット側マイクロフォン15で取得された対話者の音声を放音する。操作側放音部26は、さらに、ヘッドフォン26aを備える。本体20の適所には、音声出力端子が設けられており、この音声出力端子にヘッドフォン26aの接続コード30を接続すると、操作側放音部26の出力部がスピーカからヘッドフォン26aに切り替わり、ヘッドフォン26aからロボット側マイクロフォン15で取得された対話者の音声等が放音される。
【0038】
本体20の内部には、演算回路モジュールCm2及び操作側通信部28が設けられている。演算回路モジュールCm2は、プロセッサPr2とメモリMe2とを備える。演算回路モジュールCm2は、後述するように、操作制御部27(図4参照)を構成する。
【0039】
<周囲カメラ17>
図3は、図1の周囲カメラ17の撮像範囲を模式的に示す図である。
【0040】
図3を参照すると、4つの周囲カメラ17が、自走ロボット1の前部、右側部、後部、及び後部に、それぞれ、設けられている。これらの4つの周囲カメラ17は、平面視(上面視)において、自走ロボット1の所定の中心軸Cに対し、前後及び左右に対称に設けられている。また、これらの4つの周囲カメラ17は、自走ロボット1の高さ方向の中程に互いに同じ高さ位置に設けられている。
【0041】
各周囲カメラ17は、広角カメラ、ここでは、画角が180度のカメラで構成される。従って、4つの周囲カメラ17の撮像範囲151A~151Dは、各周囲カメラ17の横方向の両端部において、互いに重なる。
【0042】
周囲カメラ17は、ここでは、3Dカメラ(3次元カメラ)で構成される。3Dカメラは、横及び縦(X及びY)の2次元情報だけではなく、奥行き(Z)の情報をも取得できるカメラである。3Dカメラとして、例えば、複数のカメラを用いて視差を利用するステレオ方式のカメラ、光の飛行時間を利用するToF方式のカメラ、及び、パターン化された光を利用する構造化照明方式のカメラが例示される。これらのカメラは周知であるので、詳しい説明を省略する。
【0043】
ここでは、これらの4つの周囲カメラ17で撮像した画像を組み合わせて画像処理することによって、周囲を、俯瞰する視点から眺めた画像(以下、俯瞰視点画像と呼ぶ。図5参照。)、周囲を、上方の視点から眺めた画像(以下、上視点画像と呼ぶ。図6参照)、及び周囲を、自走ロボット1から眺めた画像(以下、一人称視点画像と呼ぶ。図7参照)の3種類の画像を取得する。周囲カメラ17の撮像画像は奥行情報を含むので、このような画像処理を行うことが可能である。
【0044】
これらの画像は、後述するように、自走ロボット模擬画像と組み合わせて複合画像に合成される。
【0045】
[制御系統の構成]
図4は、図1のロボットシステム100の制御系統の構成を示す機能ブロックである。
【0046】
以下、ロボットシステム100の制御系統の構成を「基本的な構成」、「複合画像に関する構成」、及び「干渉警告に関する構成」に分けて説明する。
【0047】
<基本的な構成>
{操作ユニット2側の構成}
図4を参照すると、操作ユニット2は、操作部21、操作側表示部23、操作側マイクロフォン25、操作側放音部26、操作制御部27、及び操作側通信部28を備える。
【0048】
操作部21は、操作者Pの一群の操作キー29の操作に応じたキー操作信号を、操作制御部27に出力する。
【0049】
操作側表示部23は、操作制御部27から入力される画像表示信号に従って、画像を表示する。また、操作側表示部23は、後で詳しく説明する複合画像指定情報、予定移動経路情報、及びアーム動画情報を出力する。さらに、操作側表示部23は、表示画像切替情報を出力する。
【0050】
操作側マイクロフォン25は、操作者Pの音声を取得し、これを操作者音声信号として、操作制御部27に出力する。
【0051】
操作側放音部(干渉警告報知部)26は、操作制御部27から入力される対話者音声信号及び干渉警告音声信号に従って、それぞれ、対話者音声及び干渉警告音声を放音する。操作側放音部26は、干渉警告報知器に対応する。
【0052】
操作制御部27は、操作部21から入力されるキー操作信号に応じた操作信号を生成し、これを操作側通信部28に出力する。この操作信号は、例えば、予め設定された「一群の操作キー29のキー操作信号の組み合わせ」に対する「自走ロボットの走行部の動作、昇降部の動作、アーム部の動作」の割り当て情報に基づいて生成される。
【0053】
また、操作制御部27は、操作側マイクロフォン25から入力される操作者音声信号を、操作側通信部28に出力する。また、操作制御部27は、操作側表示部23から入力される複合画像指定情報、予定移動経路情報、及びアーム動画情報を操作側通信部28に出力する。
【0054】
一方、操作制御部27は、操作側通信部28から入力される複合画像信号、手先画像信号、及び主画像信号に基づいて、適宜、複合画像、手先画像、及び主画像の表示信号を生成し、これらを操作側表示部23に出力する。この際、操作制御部27は、操作側表示部23から入力される表示切替情報に応じて、複合画像、手先画像、及び主画像の表示信号を切り替える。
【0055】
また、操作制御部27は、操作側通信部28から入力される干渉警告信号に基づいて、干渉警告画像信号を操作側表示部23に出力し、且つ、前記干渉警告信号に基づいて干渉警告音声信号を生成し、これを操作側マイクロフォン25に出力する。
【0056】
また、操作制御部27は、操作側通信部28から入力される対話者音声信号を操作側放音部26に出力する。
【0057】
操作側通信部28は、データ通信可能な通信器で構成される。操作側通信部28は、操作制御部27から入力される操作信号、操作者音声信号、及び複合画像指定情報、予定移動経路情報、及びアーム動画情報を、それぞれ、通信データ(パケット)に変換して、ロボット側通信部113に送信する。
【0058】
また、操作側通信部28は、ロボット側通信部113から複合画像信号、手先画像信号、主画像信号、干渉警告信号、及び対話者音声信号の通信データを受信し、これらを、それぞれ、複合画像信号、手先画像信号、主画像信号、干渉警告信号、及び対話者音声信号に戻して操作制御部27に出力する。
【0059】
これらの通信は、ここでは、データ通信ネットワーク3を介して、行われる。
【0060】
ここで、操作制御部27は、プロセッサPr2とメモリMe2とを有する演算回路モジュールCm2で構成される。操作制御部27は、この演算回路モジュールCm2において、メモリMe2に格納された制御プログラムをプロセッサPr2が実行することによって実現される機能ブロックである。この演算回路モジュールCm2は、具体的には、例えば、マイクロコントローラ、MPU、FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)等で構成される。これらは、集中制御を行う単独の演算回路モジュールで構成されてもよく、分散制御を行う複数の演算回路モジュールで構成されてもよい。
【0061】
{自走ロボット1側の構成}
自走ロボット1は、走行部11、昇降部12、アーム部13、ロボット側表示部14、ロボット側マイクロフォン15、ロボット側放音部16、周囲カメラ17、手先カメラ18、主カメラ19、ロボット制御部112、ロボット側通信部113、模擬画像生成部115、複合画像生成部116、及び干渉警告部117を備える。
【0062】
ロボット側通信部113は、データ通信可能な通信器で構成される。ロボット側通信部113は、操作側通信部28から、操作信号、操作者音声信号、及び複合画像指定情報、予定移動経路情報、及びアーム動画情報の通信データを受信し、これらを、操作信号、操作者音声信号、及び複合画像指定情報、予定移動経路情報、及びアーム動画情報に戻して、これらをロボット制御部112に出力する。
【0063】
また、ロボット側通信部113は、ロボット制御部112から入力される複合画像信号、手先画像信号、主画像信号、干渉警告信号、及び対話者音声信号を通信データ(パケット)に変換し、これらを操作側通信部28に送信する。
【0064】
ロボット制御部112は、ロボット側通信部113から入力される操作信号を、走行部11、昇降部12、及びアーム部13に出力する。
【0065】
また、ロボット制御部112は、ロボット側通信部113から入力される複合画像指定情報、予定移動経路情報、及びアーム動画情報を複合画像生成部116に出力する。
【0066】
また、ロボット制御部112は、適宜、画像表示信号を生成して、これをロボット側表示部14に出力する。
【0067】
また、ロボット制御部112は、ロボット側通信部113から入力される操作者音声信号をロボット側放音部16に出力する。なお、この場合、ロボット制御部112は、例えば、ロボット側表示部14に、所定の作業現場に応じた制服を着用した人物画像(例えば、イラスト画像)を表示させ、操作者音声信号を、当該人物に適合する音声(例えば、当該従業員の性別に対応し、且つ、ソフトな音声)の信号に変換してもよい。
【0068】
また、ロボット制御部112は、複合画像生成部116から入力される複合画像信号、手先カメラ18から入力される手先画像信号、及び主カメラ19から入力される主画像信号を、ロボット側通信部113に出力する。
【0069】
走行部11、昇降部12、及びアーム部13は、ロボット制御部112から入力される操作信号に従って動作する。
【0070】
ロボット側表示部14は、ロボット制御部112から入力される画像表示信号に従って、画像を表示する。
【0071】
ロボット側マイクロフォン15は、対話者(例えば、顧客)の音声を取得し、これを対話者音声信号として、ロボット制御部112に出力する。
【0072】
ロボット側放音部16は、ロボット制御部112から入力される操作者音声信号に従って、音声を放音する。ロボット側放音部16は、例えば、スピーカで構成される。
【0073】
周囲カメラ17は、自走ロボット1の周囲の状況(環境)を撮像して、これを周囲状況画像として、複合画像生成部116及び干渉警告部117に出力する。
【0074】
手先カメラ18は、第2ロボットアーム121Bの手先の環境を撮像して、これを手先画像として、ロボット制御部112に出力する。第2ロボットアーム121Bの手先の環境として、ハンド124Bが把持しようとする対象物等が例示される。
【0075】
主カメラ19は、立っている人の視野に相当する視野を撮像して、これを、主画像としてロボット制御部112に出力する。自走ロボット1が対話者と対面している場合には、この主画像に対話者の画像が存在する。
【0076】
ここで、ロボット制御部112、模擬画像生成部115、複合画像生成部116、及び干渉警告部117は、プロセッサPr1とメモリMe1とを有する演算回路モジュールCm1で構成される。プロセッサPr1は、処理回路の一例である。模擬画像生成部115、複合画像生成部116、及び干渉警告部117は、それぞれ、模擬画像生成回路、複合画像生成回路、及び干渉警告回路とも称し得る。ロボット制御部112、模擬画像生成部115、複合画像生成部116、及び干渉警告部117は、この演算回路モジュールCm1において、メモリMe1に格納された制御プログラムをプロセッサPr1が実行することによって実現される機能ブロックである。この演算回路モジュールCm1は、具体的には、例えば、マイクロコントローラ、MPU、FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)等で構成される。これらは、集中制御を行う単独の演算回路モジュールで構成されてもよく、分散制御を行う複数の演算回路モジュールで構成されてもよい。
【0077】
ここで、本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成又はプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、「ユニット」又は「部」は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラム又は構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、「ユニット」又は「部」は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアは、ハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【0078】
<複合画像に関する構成>
複合画像に関する構成を、以下、構成要素毎に順に説明する。
【0079】
{模擬画像生成部115}
図1及び図4を参照すると、自走ロボット1の第1及び第2ロボットアーム121A,121Bは、各関節をモータMA(図4参照)によって駆動され、姿勢が変化する。各関節には、このモータMAの回転角を検知する回転角検知部EA(図4参照)が設けられている。この回転角検知部EAは、例えば、エンコーダで構成される。従って、各関節のモータMAの回転角を利用して、第1及び第2ロボットアーム121A,121Bの姿勢をリアルタイムで取得することができる。
【0080】
模擬画像生成部115は、第1及び第2ロボットアーム121A,121Bの各関節の回転角検知部EAから出力される回転角に基づいて、第1及び第2ロボットアーム121A,121Bの姿勢を時々刻々模擬するアーム部画像を生成する。
【0081】
自走ロボット1の昇降部12には、昇降軸123を昇降させるモータML(図4参照)の回転角を検知する回転角検知部EL(図4参照)が設けられている。この回転角検知部ELは、例えば、エンコーダで構成される。従って、このモータMLの回転角を利用して、昇降部12の姿勢をリアルタイムで取得することができる。模擬画像生成部115は、この回転角検知部ELから出力される回転角に基づいて、昇降部12の姿勢を時々刻々模擬する昇降部画像を生成する。
【0082】
そして、模擬画像生成部115は、上記アーム画像と上記昇降部画像を合成することによって、第1及び第2ロボットアーム121A,121Bの姿勢を含む自走ロボット1の姿勢を時々刻々模擬する自走ロボット模擬画像160(図5乃至図7参照)を生成する。そして、この自走ロボット模擬画像160を複合画像生成部116に出力する。自走ロボット模擬画像160の生成には、例えば、自走ロボット1のCADデータが用いられる。自走ロボット模擬画像160は、自走ロボット1の姿勢の明確性を大きく損なわない限度で、簡略化してもよい。
【0083】
具体的には、模擬画像生成部115は、複合画像生成部116から入力される複合画像指定情報に従って、自走ロボット1を俯瞰する視点から眺めた自走ロボット模擬画像160と、自走ロボット1を上方から眺めた自走ロボット模擬画像160と、自走ロボット1から眺めた周囲状況画像50の周縁部(ここでは、上端部の左端部及び右端部)に配置される、後述するアーム模擬部分160aからなる自走ロボット模擬画像160との3種類の自走ロボット模擬画像のいずれかを生成する。
【0084】
{複合画像生成部116}
複合画像生成部116は、上述のように、4つの周囲カメラ17から入力される撮像画像を、組み合わせて画像処理することによって、俯瞰視点画像、上視点画像、及び一人称視点画像の3種類の画像を生成する。そして、これらを、模擬画像生成部115から入力される自走ロボット模擬画像と組み合わせて複合画像に合成する。
【0085】
この場合、自走ロボット模擬画像は3次元の情報を含むので、俯瞰視点画像、上視点画像、及び一人称視点画像に合わせて、自走ロボット模擬画像を、正確にこれらの3種類の視点の画像に変換することが可能である。
【0086】
図5は、周囲状況画像50と自走ロボット模擬画像160との複合画像501を、自走ロボットを俯瞰する視点から眺めた画像として示す俯瞰視点図である。図6は、周囲状況画像50と自走ロボット模擬画像160との複合画像601を、自走ロボットを上方の視点から眺めた画像として示す上視点図である。図7は、周囲状況画像50と自走ロボット模擬画像160との複合画像701を、自走ロボットから眺めた画像として示す一人称視点図である。図5図7は、例えば、自走ロボット1が、個人の邸宅内を介護のために移動する様子を示している。
【0087】
図5を参照すると、この俯瞰視点の複合画像501は、自走ロボット1を俯瞰する視点から眺めた周囲状況画像50の手前に、自走ロボット1を俯瞰する視点から眺めた自走ロボット模擬画像160が配置されている。周囲状況画像50は、広角の周囲カメラ17で撮像されているため、歪んでいる。
【0088】
図6を参照すると、この上視点の複合画像601は、自走ロボット1を上方から眺めた周囲状況画像50の手前に、自走ロボット1を上方から眺めた自走ロボット模擬画像160が配置されている。
【0089】
図7を参照すると、この一人称視点の複合画像701は、自走ロボット1から眺めた周囲状況画像50の周縁部(ここでは、上端部の左端部及び右端部)に、自走ロボット1のロボットアーム121A,121Bの一部を模擬するアーム模擬部分160aが自走ロボット模擬画像160として配置されている。具体的には、周囲状況画像50の上端部の左端部及び右端部にロボットアーム121A,121Bの先端部50aが写っている。アーム模擬部分160aは、その先端部が周囲状況画像50に写ったロボットアーム121A,121Bの先端部50aに繋がるように示されている。
【0090】
なお、ここでは、周囲カメラ17が、ロボットアーム121A,121Bの下方且つ前方に配置されているため、ロボットアーム121A,121Bの先端部以外の部分は、周囲状況画像には写らない。そこで、上述のように、自走ロボット模擬画像160のアーム模擬部分160aが、周囲状況画像50に写ったロボットアーム121A,121Bの先端部50aに繋がるように、周囲状況画像50の上端部の左端部及び右端部に配置されている。この場合、自走ロボット模擬画像160におけるロボットアームの基端部の模擬部分(周囲カメラ17の背後に存在する)を示そうとすると、それを周囲状況画像50の中央部に示すことになり、肝心の周囲状況画像50の中央部が示されないことになる。そのため、自走ロボット模擬画像160におけるロボットアームの模擬部分は、ロボットアームの基端部に対応する部分を示さずに、周囲状況画像50の上端部の左端部及び右端部に分離して示されており、これにより、周囲状況画像50の中央部を示すことが可能になっている。なお、自走ロボット模擬画像160におけるロボットアームの模擬部分を大胆に模式化(簡略化)して、例えば、ロボットアームの基端部に対応する部分を周囲画像50の上側又は下側に配置するようにして、自走ロボット模擬画像160を生成してもよい。
【0091】
複合画像生成部116は、上記合成によって、これらの3種類の複合画像501,601,701を生成する。具体的には、複合画像生成部116は、ロボット制御部112から複合画像指定情報が入力されると、この複合画像指定情報を模擬画像生成部115に出力するとともに、3種類の複合画像501,601,701のうちの、指定された複合画像を生成し、これをロボット制御部112に出力する。
【0092】
<自走ロボット1の予定移動経路802に関する構成>
図8は、自走ロボット1の予定移動経路802が周囲状況画像50に重ねて示された複合画像を示す図である。
【0093】
図8を参照すると、複合画像801では、自走ロボット1の予定移動経路802が周囲状況画像50に重ねて示されている。この予定移動経路802は、自走ロボット模擬画像160から目標位置まで延びるように示される。
【0094】
複合画像生成部116は、ロボット制御部112から予定移動経路情報を受け取ると、自走ロボット1の予定移動経路802を周囲状況画像50に重ねて示す。この場合、複合画像生成部116は、例えば、予定移動経路情報に示された自走ロボット1の目標位置と自走ロボット1の現在位置とに基づいて、予定移動経路802を生成する。なお、自走ロボット1の現在位置は、例えば、自走ロボット1の走行部を駆動するモータの回転角から取得する。
【0095】
また、複合画像生成部116は、ロボット制御部112が受け取る操作信号に基づいて、予定移動経路802を生成してもよい。この場合、操作信号における自走ロボット1の移動(走行)目標値(指令値)が自走ロボット1の目標位置とされる。また、予定移動経路情報は、自走ロボット1の移動目標位置を含まない。なお、図8は、俯瞰視点の複合画像において、予定移動経路802を示しているが、これと同様に、上視点又は一人称視点の複合画像において、予定移動経路802を示すことができる。
【0096】
<アーム動画に関する構成>
図9は、自走ロボット1のロボットアーム121A,121Bの姿勢の変化を示すアーム動画803が自走ロボット模擬画像160及び周囲状況画像50に重ねて示された複合画像901を示す図である。図10A乃至図10Dは、それぞれ、自走ロボット1のロボットアーム121の姿勢の変化を示すアーム動画803の一コマを示す図である。図10A乃至図10Dにおいて、ロボットアーム121A,121Bは、簡略化されて示されている。U字状のケーブルの図示も省略されている。アーム動画803におけるロボットアームは、実際のロボットアーム121A,121Bに忠実に示されてもよく、もっと、簡略化されてもよい。
【0097】
図9を参照すると、複合画像生成部116は、ロボット制御部112からアーム動画情報を受け取ると、アーム動画803を自走ロボット模擬画像160及び周囲状況画像50に重ねて示す。なお、アーム動画803を自走ロボット模擬画像160のみ又は周囲状況画像50のみに重ねて示してもよい。このアーム動画803は、図10A乃至図10Dに示すように、ロボットアーム121A,121Bが変化する様子を示す。
【0098】
この場合、複合画像生成部116は、例えば、アーム動画情報に示されたロボットアーム121A,121Bの目標位置(姿勢)とロボットアーム121A,121Bの現在の位置(姿勢)とに基づいて、アーム動画803を生成する。なお、自走ロボット1の現在位置は、上述の、第1及び第2ロボットアーム121A,121Bの各関節の回転角検知部EAから出力される回転角から取得する。
【0099】
また、複合画像生成部116は、ロボット制御部112が受け取る操作信号に基づいて、予定移動経路802を生成してもよい。この場合、操作信号におけるロボットアーム121A,121Bの位置指令値がロボットアーム121A,121Bの目標位置とされる。また、アーム動画情報は、ロボットアーム121A,121Bの目標位置を含まない。なお、図9は、上視点の複合画像において、アーム動画803を示しているが、これと同様に、俯瞰視点又は一人称視点の複合画像において、アーム動画803を示すことができる。
【0100】
<干渉警告に関する構成>
干渉警告部117は、周囲カメラ17から入力される周囲状況画像と自走ロボット1の姿勢とに基づいて、干渉警告信号を生成し、これをロボット制御部112に出力する。
【0101】
周囲状況画像は、3次元の情報を含む。干渉警告部117は、まず、周囲状況画像から自走ロボット1の両側方向及び進行方向に存在する物体の3次元の輪郭(以下、単に物体という)を、画像処理によって、抽出する。次いで、干渉警告部117は、抽出した物体と自走ロボット1との距離を、周囲状況画像の奥行き(深度)情報を利用して取得する。次いで、干渉警告部117は、例えば、抽出した物体の自走ロボット1との距離及び方角から、自走ロボット1が、当該物体と干渉するか否かを判定する。干渉警告部117は、自走ロボット1が当該物体と干渉すると判定した場合には、干渉警告信号を、ロボット制御部112に出力する。
【0102】
すると、この干渉警告信号が、ロボット制御部112、ロボット側通信部113、操作側通信部28を介して、操作制御部27に送られる。すると、操作制御部27が、この干渉警告信号に応じて、操作側表示部23に、干渉警告表示を表示させるとともに、操作側放音部26に干渉警告音声を放音させる。
【0103】
[動作]
次に、以上のように構成されたロボットシステム100の動作(ロボット作業方法)を説明する。
【0104】
図1及び図2を参照すると、操作者Pは、操作ユニット2の操作部21を操作して、個人の邸宅内を、介護のために自走ロボット1を走行させる。この走行の際に、自走ロボット1に介護に必要な作業を行わせる。この際、操作者Pは、主に、操作ユニット2の操作側表示部23に表示される主画像及び手先画像を見ながら、自走ロボット1に、この作業を行わせる。この際、操作者Pは、操作側表示部23にタッチすることによって、操作側表示部23に、主画像、手先画像、及び複合画像を切り替えて表示させることができる。また、必要に応じて、操作者Pは、操作ユニット2の操作側マイクロフォン25及び操作側放音部26と、自走ロボット1のロボット側表示部14、ロボット側マイクロフォン15、及びロボット側放音部16とを利用して、介護者又は介護者の関係者と対話する。
【0105】
また、操作者Pは、自走ロボット1を走行させる場合、操作側表示部23にタッチして、当該操作側表示部23に所望の複合画像501,601,701を表示させる。複合画像501,601,701は、自走ロボット1が進行すると、それに連れて、周囲状況画像50が、時々刻々変化し、且つ、作業のためにアーム部13及び昇降部12の姿勢が変化すると、自走ロボット模擬画像160が、それに伴って、時々刻々変化する。この場合、特に、自走ロボット模擬画像160においてアーム部の姿勢が時々刻々変化するので、操作者Pは、自走ロボット1を、周囲の物体と干渉しないように走行させことができる。
【0106】
また、この場合、操作者Pが、操作側表示部23にタッチして、自走ロボット1の移動目標位置を含む予定移動経路情報を入力すると、自走ロボット1の予定移動経路802を含む複合画像801が、操作側表示部23に表示される。操作者Pは、この予定移動経路802を参照しながら、的確に自走ロボット1を走行させることができる。
【0107】
操作者Pが、操作側表示部23にタッチして、自走ロボット1のロボットアーム121A,121Bの目標位置を含むアーム動画情報を入力すると、アーム動画803を含む複合画像901が、操作側表示部23に表示される。操作者Pは、このアーム動画803を参照しながら、的確にロボットアーム121A,121Bを操作して、作業を好適に行うことができる。
【0108】
また、自走ロボット1が走行の際に周囲の物体と干渉しそうになると、操作側表示部23に、干渉警告表示が表示されるとともに、操作側放音部26から干渉警告音声が放音される。操作者Pは、この干渉警告表示及び干渉警告音声によって、干渉の可能性を察知し、操作ユニット2を操作して、自走ロボット1に、必要な干渉回避動作を行わせる。
【0109】
(その他の実施形態)
上記実施形態において、模擬画像生成部115は、昇降部12の姿勢変化を省略した自走ロボット模擬画像160を生成するように構成されていてもよい。
【0110】
以上に説明したように、本開示の実施形態によれば、ロボットアーム121A,121Bを備える自走ロボット1が周囲の物体と干渉することを回避することができる。
【0111】
また、ロボットアーム121A,121Bは、各関節を駆動するモータMAの回転角を検知する回転角検知部EAを備え、模擬画像生成部116は、少なくとも、ロボットアーム121A,121Bの各関節に対応する回転角検知部EAで検知された回転角に基づいて、自走ロボット模擬画像160を生成するように構成されている。
【0112】
従って、自走ロボット模擬画像160が、ロボットアーム121A,121Bの各関節に対応する回転角検知部EAで検知された回転角に基づいて生成されるので、自走ロボット模擬画像160におけるロボットアーム121A,121Bの姿勢がリアルタイムの正確な姿勢になる。その結果、ロボットアーム121A,121Bを備える自走ロボット1が周囲の物体と干渉することをより的確に回避できる。
【0113】
また、ロボットシステム100は、複合画像生成部116が自走ロボット1から眺めた一人称視点の複合画像701を生成する場合、模擬画像生成部115が、自走ロボット模擬画像160において自走ロボット1におけるロボットアーム121A,121Bの周囲状況画像50に写っていない部分の少なくとも一部を模擬するアーム模擬部分160aが、周囲状況画像に写った前記ロボットアームの一部50aに繋がるように自走ロボット模擬画像160を生成し、且つ、複合画像生成部116が、前記生成された自走ロボット模擬画像160のアーム模擬部分160aが、周囲状況画像50に写ったロボットアームの一部50aに繋がるように、一人称視点の複合画像50を生成するように構成されている。
【0114】
従って、周囲カメラ17の配置上、自走ロボット1のロボットアーム121A,121Bの全体が写らない周囲状況画像50を用いる一人称視点の複合画像701においても、自走ロボット1におけるロボットアーム121A,121Bの周囲状況画像50に写っていない部分の少なくとも一部を模擬するアーム模擬部分160aを含む自走ロボット模擬画像160を好適に生成することができる。
【0115】
また、複合画像生成部116は、自走ロボット1の予定移動経路802が周囲状況画像50に重ねて示された複合画像801を生成するように構成されている。
【0116】
従って、操作者Pが、自走ロボット1の予定移動経路802を見ながら、的確に自走ロボットを走行させることができる。
【0117】
また、複合画像生成部116は、自走ロボット1のロボットアーム121A,121Bの姿勢の変化を示すアーム動画803が周囲状況画像50及び自走ロボット模擬画像160の少なくとも一方に重ねて示された複合画像601を生成するように構成されている。従って、操作者Pが、この動画803を見ながら、的確にロボットをアーム121A,121Bを操作して作業を行うことができる。
【0118】
また、ロボットシステム100は、周囲カメラ17で撮像された周囲状況画像及び自走ロボット1の姿勢に基づいて、ロボットアーム121A,121Bが自走ロボット1の周囲の物体と干渉するか否かを判定し、干渉すると判定した場合に、干渉警告信号を出力する干渉警告部117をさらに備えている。
【0119】
従って、干渉警告信号を利用して、ロボットアーム121A,121Bと自走ロボット1の周囲の物体との干渉回避を図ることができる。
【0120】
また、表示部23は、干渉警告部116から出力される干渉警告信号に応じて、干渉警告を表す画像を表示するように構成されている。
【0121】
従って、操作者Pが、表示部23の表示を見て、ロボットアーム121A,121Bと自走ロボット1の周囲の物体との干渉の可能性を知ることができる。
【0122】
ロボットシステム100は、表示器23とは別個に設けられ、干渉警告部116から出力される干渉警告信号に応じて、干渉警告を報知する干渉警告報知部26をさらに備えている。
【0123】
従って、操作者Pが、干渉警告報知部26の報知によって、ロボットアーム121A,121Bと自走ロボット1の周囲の物体との干渉の可能性を知ることができる。
【0124】
上記説明から、当業者にとっては、多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきである。
【0125】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【0126】
本開示の一態様に係るロボットシステムは、1以上の関節を有するロボットアームを含む自走ロボットと、操作者による操作を受け付ける、前記自走ロボットを操作するための操作部と、前記操作者により視認される表示器と、前記自走ロボットに搭載され、当該自走ロボットの周囲の状況を撮像する周囲カメラと、処理回路と、を備え、前記処理回路は、前記ロボットアームの姿勢を含む前記自走ロボットの姿勢を時々刻々模擬する自走ロボット模擬画像を生成し、前記周囲カメラで撮像された周囲状況画像と、生成された前記自走ロボット模擬画像とを含み、前記表示器に表示される複合画像を生成するように構成される。
【0127】
この構成によれば、表示器に、ロボットアームの姿勢を含む自走ロボットの姿勢を時々刻々模擬する自走ロボット模擬画像が、周囲カメラで撮像された周囲状況画像と一緒に表示されるので、操作者がその表示を見て、ロボットアームを備える自走ロボットが周囲の物体と干渉することを回避するよう操作部を操作できる。
【0128】
前記ロボットアームは、前記1以上の関節をそれぞれ駆動する1以上のモータと、前記1以上のモータの回転角をそれぞれ検知する1以上の回転角検知部とを備え、前記処理回路は、少なくとも、前記1以上の回転角検知部で検知された回転角に基づいて、前記自走ロボット模擬画像を生成するように構成されてもよい。
【0129】
上記のロボットシステムにおいて、前記処理回路は、前記自走ロボットから眺めた一人称視点の複合画像を生成する場合、前記自走ロボット模擬画像において前記自走ロボットにおける前記ロボットアームの前記周囲状況画像に写っていない部分の少なくとも一部を模擬するアーム模擬部分が、前記周囲状況画像に写った前記ロボットアームの一部に繋がるように前記自走ロボット模擬画像を生成し、且つ、前記生成された自走ロボット模擬画像の前記アーム模擬部分が、前記周囲状況画像に写った前記ロボットアームの一部に繋がるように、前記一人称視点の複合画像を生成するように構成されてもよい。
【0130】
上記のロボットシステムにおいて、前記処理回路は、前記自走ロボットの予定移動経路が前記周囲状況画像に重ねて示された前記複合画像を生成するように構成されてもよい。
【0131】
上記のロボットシステムにおいて、前記処理回路は、前記自走ロボットの前記ロボットアームの姿勢の変化を示すアーム動画が、前記周囲状況画像または前記自走ロボット模擬画像に重ねて示された前記複合画像を生成するように構成されてもよい。
【0132】
上記のロボットシステムにおいて、前記処理回路は、前記周囲カメラで撮像された前記周囲状況画像及び前記自走ロボットの姿勢に基づいて、前記ロボットアームが前記自走ロボットの周囲の物体と干渉するか否かを判定し、干渉すると判定した場合に、干渉警告信号を出力してもよい。
【0133】
上記のロボットシステムは、前記表示器は、出力される前記干渉警告信号に応じて、干渉警告を表す画像を表示するように構成されてもよい。
【0134】
上記のロボットシステムは、前記表示器とは別個に配置され、出力される前記干渉警告信号に応じて、干渉警告を報知する干渉警告報知器をさらに備えてもよい。
【0135】
本開示の一態様に係るロボット作業方法は、ロボットアームを備える自走ロボットを操作することと、前記ロボットアームの姿勢を含む前記自走ロボットの姿勢を時々刻々模擬する自走ロボット模擬画像を生成することと、前記自走ロボットに、当該自走ロボットの周囲の状況を撮像する周囲カメラを設けることと、前記周囲カメラで撮像された周囲状況画像と前記自走ロボット模擬画像とを含む複合画像を生成することと、前記複合画像を表示することと、を含む。
【0136】
この構成によれば、ロボットアームを備える自走ロボットが周囲の物体と干渉することを回避できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D