(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】電子部品冷却装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20240613BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
(21)【出願番号】P 2023049171
(22)【出願日】2023-03-27
(62)【分割の表示】P 2019211443の分割
【原出願日】2019-11-22
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2018219324
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郭 暁琳
(72)【発明者】
【氏名】朝柄 浩嗣
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和哉
(72)【発明者】
【氏名】殿本 雅也
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-169429(JP,A)
【文献】特開2018-074121(JP,A)
【文献】特開2018-032744(JP,A)
【文献】特開2016-205802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品(E)を冷却する電子部品冷却装置(10)であって、
上記電子部品と熱的に接触する冷却管(20)を備えており、
該冷却管は、冷媒を流通させる冷媒流路(22)と、該冷媒流路への冷媒の入口である冷媒入口(231)と、上記冷媒流路からの冷媒の出口である冷媒出口(232)とを有し、
上記冷媒流路には、インナフィン(24)が設けてあり、
上記冷却管と上記電子部品との積層方向(X)と、上記冷媒入口と上記冷媒出口との並び方向(Y)との双方に直交する方向を、幅方向(Z)としたとき、上記冷媒流路の上記幅方向における両外側部と、その間の中央部とには、上記インナフィンの形成パターンが互いに異なる外側流路(222)と中央流路(221)とが、それぞれ形成され、
上記外側流路における上記インナフィンは、上記積層方向から見たとき、上記並び方向に対して傾斜した複数の傾斜部(241)を有すると共に、該傾斜部の傾斜方向が、上記並び方向において交互に変わるように配置され、かつ、上記並び方向において隣り合う上記傾斜部の間には、上記幅方向に開口する連通路(223)が形成され、
上記中央流路における流路抵抗は、上記外側流路における流路抵抗よりも小さ
く、
上記中央流路は、上記並び方向において、上記電子部品よりも上流側から上記電子部品よりも下流側までにわたって連続して形成された上記インナフィンである連続インナフィン(242)を有し、該連続インナフィンによって互いに隔離された複数の分岐流路(224)が、上記電子部品よりも上流側から上記電子部品よりも下流側まで、互いに合流することなく連続している、電子部品冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を冷却する冷却装置として、液状の冷媒を流通させて、電子部品と冷媒との熱交換を行うものがある。かかる冷却装置においては、電子部品から受熱した冷媒の温度が上昇して、冷媒が沸騰することがある。そして、電子部品と熱接触する部分において、冷却器内の冷媒にドライアウトが生じると、電子部品の冷却が充分に行われなくなるおそがある。そのため、ドライアウトの発生を防ぐことが求められる。
【0003】
特許文献1においては、冷却サイクルにおいて、蒸発器内でドライアウトが発生しない範囲にて冷媒循環量を低減させるような制御を行うことが記載されている。そして、蒸発器通過後の冷媒の乾き度に応じて冷媒循環量を制御し、ドライアウトを防ぐ旨、特許文献1には記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法を、電子部品の冷却装置における冷媒の制御に採用しようとすると、冷却装置として制限が課されることとなる。
つまり、上記のように、蒸発器通過後の冷媒の乾き度に応じて冷媒循環量を制御するということは、当該方法は、少なくとも蒸発器を備えた冷却システムでなければ適用できない。すなわち、蒸発器と圧縮機と凝縮器と膨脹弁とを備える冷却サイクルが構成されていることが必要となる。したがって、特許文献1の技術は、適用範囲が狭く、効率のよい電子部品の冷却を実現する手法としては、必ずしも容易な手法とは言えない。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、効率のよい電子部品の冷却を容易に実現することができる電子部品冷却装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の参考態様は、内部に液状の冷媒を流通させて、電子部品(E)を冷却する冷却器(2)と、
上記冷却器内に導入される上記冷媒の温度を取得する冷媒温度取得部(3)と、
上記冷却器内を流通する上記冷媒の流量を取得する冷媒流量取得部(4)と、
上記電子部品における熱損失を推定する熱損失推定部(51)と、
上記冷媒温度取得部によって取得された冷媒温度(T)と、上記冷媒流量取得部によって取得された冷媒流量(V)と、に基づいて、上記電子部品における熱損失の適正上限閾値(Q1)を算出する損失閾値算出部(52)と、
上記冷却器を流通する上記冷媒の流量を制御する冷媒流量制御部(53)と、を有し、
上記冷媒流量制御部は、上記熱損失推定部によって推定された上記電子部品の熱損失である推定熱損失(Q)が、上記適正上限閾値を超えたとき、上記冷却器を流通する上記冷媒の流量を増加させるよう構成されている、電子部品冷却装置(1)にある。
【0008】
第2の参考態様は、内部に液状の冷媒を流通させて、電子部品(E)を冷却する冷却器(2)と、
上記冷却器内に導入される上記冷媒の温度を取得する冷媒温度取得部(3)と、
上記冷却器内を流通する上記冷媒の流量を取得する冷媒流量取得部(4)と、
上記冷却器内における流路内圧を取得する内圧取得部(60)と、
上記内圧取得部によって取得された上記流路内圧の振幅である内圧振幅(Pw)を算出する内圧振幅算出部(61)と、
上記冷媒温度取得部によって取得された冷媒温度(T)と、上記冷媒流量取得部によって取得された冷媒流量(V)と、に基づいて、上記内圧振幅の適正上限閾値(Pw1)を算出する振幅閾値算出部(62)と、
上記冷却器を流通する上記冷媒の流量を制御する冷媒流量制御部(63)と、を有し、
上記冷媒流量制御部は、上記内圧振幅算出部によって算出された上記内圧振幅が、上記適正上限閾値を超えたとき、上記冷却器を流通する上記冷媒の流量を増加させるよう構成されている、電子部品冷却装置(1)にある。
【0009】
本発明の第1の態様は、電子部品(E)を冷却する電子部品冷却装置(10)であって、
上記電子部品と熱的に接触する冷却管(20)を備えており、
該冷却管は、冷媒を流通させる冷媒流路(22)と、該冷媒流路への冷媒の入口である冷媒入口(231)と、上記冷媒流路からの冷媒の出口である冷媒出口(232)とを有し、
上記冷媒流路には、インナフィン(24)が設けてあり、
上記冷却管と上記電子部品との積層方向(X)と、上記冷媒入口と上記冷媒出口との並び方向(Y)との双方に直交する方向を、幅方向(Z)としたとき、上記冷媒流路の上記幅方向における両外側部と、その間の中央部とには、上記インナフィンの形成パターンが互いに異なる外側流路(222)と中央流路(221)とが、それぞれ形成され、
上記外側流路における上記インナフィンは、上記積層方向から見たとき、上記並び方向に対して傾斜した複数の傾斜部(241)を有すると共に、該傾斜部の傾斜方向が、上記並び方向において交互に変わるように配置され、かつ、上記並び方向において隣り合う上記傾斜部の間には、上記幅方向に開口する連通路(223)が形成され、
上記中央流路における流路抵抗は、上記外側流路における流路抵抗よりも小さく、
上記中央流路は、上記並び方向において、上記電子部品よりも上流側から上記電子部品よりも下流側までにわたって連続して形成された上記インナフィンである連続インナフィン(242)を有し、該連続インナフィンによって互いに隔離された複数の分岐流路(224)が、上記電子部品よりも上流側から上記電子部品よりも下流側まで、互いに合流することなく連続している、電子部品冷却装置にある。
【0010】
本発明の第3の参考態様は、電子部品(E)を冷却する電子部品冷却装置(10)であって、
上記電子部品と熱的に接触する冷却管(20)を備えており、
該冷却管は、冷媒を流通させる冷媒流路(22)と、該冷媒流路への冷媒の入口である冷媒入口(231)と、上記冷媒流路からの冷媒の出口である冷媒出口(232)とを有し、
上記冷媒流路には、インナフィン(24)が設けてあり、
上記冷却管と上記電子部品との積層方向(X)と、上記冷媒入口と上記冷媒出口との並び方向(Y)との双方に直交する方向を、幅方向(Z)としたとき、上記冷媒流路の上記幅方向における両外側部と、その間の中央部とには、上記インナフィンの形成パターンが互いに異なる外側流路(222)と中央流路(221)とが、それぞれ形成され、
上記中央流路における流路抵抗は、上記外側流路における流路抵抗よりも小さい、電子部品冷却装置にある。
【発明の効果】
【0011】
上記第1の参考態様にかかる電子部品冷却装置は、上記熱損失推定部と上記損失閾値算出部とを有する。熱損失推定部は、電子部品における熱損失を推定する。損失閾値算出部は、冷媒温度と冷媒流量とに基づいて上記適正上限閾値を算出する。そして、上記冷媒流量制御部において、推定熱損失が適正上限閾値を超えたとき、冷媒の流量を増加させる。
【0012】
すなわち、電子部品における熱損失と、現状の冷媒温度と、現状の冷媒流量と、に基づいて、冷媒の流量を適切に調整することが可能となる。その結果、効率のよい電子部品の冷却を容易に実現することができる。
【0013】
上記第2の参考態様にかかる電子部品冷却装置は、上記内圧振幅算出部と上記振幅閾値算出部とを有する。内圧振幅算出部は、内圧振幅を算出する。振幅閾値算出部は、冷媒温度と冷媒流量とに基づいて、内圧振幅の適正上限閾値を算出する。そして、内圧振幅Pwが適正上限閾値を超えたとき、上記冷媒流量制御部は、冷媒の流量を増加させる。
【0014】
すなわち、現状の内圧振幅と、現状の冷媒温度と、現状の冷媒流量と、に基づいて、冷媒の流量を適切に調整することが可能となる。その結果、効率のよい電子部品の冷却を容易に実現することができる。
【0015】
上記第1の態様にかかる電子部品冷却装置において、上記中央流路における流路抵抗は、上記外側流路における流路抵抗よりも小さい。これにより、中央流路における冷媒流量を多くすることができる。それゆえ、局部的な冷媒温度の上昇を抑制し、電子部品の冷却を効率よく行うことができる。
【0016】
上記第3の参考態様にかかる電子部品冷却装置によっても、効率のよい電子部品の冷却を容易に実現することができる。
【0017】
以上のごとく、上記態様によれば、効率のよい電子部品の冷却を容易に実現することができる電子部品冷却装置を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】参考形態1における、電子部品冷却装置の概念図。
【
図2】参考形態1における、電子部品冷却装置の冷媒制御のフロー図。
【
図3】
図2のフロー図を表し直した、冷媒制御のフロー図。
【
図4】参考形態2における、電子部品冷却装置の概念図。
【
図5】参考形態3における、電子部品冷却装置の概念図。
【
図6】参考形態3における、電子部品冷却装置の冷媒制御のフロー図。
【
図7】
図6のフロー図を表し直した、冷媒制御のフロー図。
【
図8】参考形態4における、電子部品冷却装置の概念図。
【
図9】参考形態5における、電子部品冷却装置の概念図。
【
図10】参考形態5における、電子部品冷却装置の冷媒制御のフロー図。
【
図11】
図10のフロー図を表し直した、冷媒制御のフロー図。
【
図12】実施形態6における、電子部品冷却装置の説明図。
【
図13】実施形態6における、冷却管の断面説明図であって、
図12のA-A線矢視断面相当の説明図。
【
図14】実施形態6における、オフセットウェーブパターンの説明図。
【
図15】実施形態6における、連続インナフィンと分岐流路の説明図。
【
図16】
参考形態7における、冷却管の断面説明図。
【
図17】
参考形態8における、冷却管の断面説明図。
【
図18】
参考形態9における、冷却管の断面説明図。
【
図19】
参考形態10における、冷却管の断面説明図。
【
図20】変形参考形態における、電子部品冷却装置の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(参考形態1)
電子部品冷却装置に係る参考形態について、
図1~
図3を参照して説明する。
本形態の電子部品冷却装置1は、
図1に示すごとく、冷却器2と、冷媒温度取得部3と、冷媒流量取得部4と、熱損失推定部51と、損失閾値算出部52と、冷媒流量制御部53と、を有する。
【0020】
冷却器2は、内部に液状の冷媒を流通させて、電子部品Eを冷却する。冷媒温度取得部3は、冷却器2内に導入される冷媒の温度を取得する。冷媒流量取得部4は、冷却器2内を流通する冷媒の流量を取得する。熱損失推定部51は、電子部品Eにおける熱損失を推定する。損失閾値算出部52は、冷媒温度取得部3によって取得された冷媒温度Tと、冷媒流量取得部4によって取得された冷媒流量Vと、に基づいて、電子部品Eにおける熱損失の適正上限閾値Q1を算出する。冷媒流量制御部53は、冷却器2を流通する冷媒の流量を制御する。
【0021】
冷媒流量制御部53は、推定熱損失Qが、適正上限閾値Q1を超えたとき、冷却器2を流通する冷媒の流量を増加させるよう構成されている。推定熱損失Qは、熱損失推定部51によって推定された電子部品Eの熱損失である。
【0022】
冷却器2は、アルミニウム等、熱伝導性に優れた金属によって構成されている。そして、電子部品Eは、冷却器2に熱的に接触するように配置されている。すなわち、電子部品Eは、冷却器2の表面に直接接触して配置され、或いは、熱伝導性を有する部材を介して、冷却器2と熱的に接触するように配置されている。また、電子部品Eは、冷媒に直接接触するように配されてもよい。
【0023】
冷却器2は、冷媒を導入する冷媒入口211と、冷媒を排出する冷媒出口212とを有する。冷媒入口211と冷媒出口212とには、それぞれ、冷媒を循環させる冷媒循環路11が接続されている。冷媒循環路11には、タンク111とポンプ112とが設けてある。
【0024】
ポンプ112は、タンク111に貯留された冷媒を、冷媒入口211から冷却器2に送り込む。冷却器2の冷媒出口212から排出された冷媒は、タンク111に戻される。冷却器2から排出された冷媒は、電子部品Eと熱交換した後の、高温となった冷媒である。この冷媒は、タンク111内、または、冷媒循環路11におけるタンク111の前もしくは後において、空冷等によって放熱される。そして、低温となった冷媒が、再び冷却器2に導入されることとなる。
【0025】
本形態において、冷媒温度取得部3は、冷媒入口211付近に設けられた温度センサとすることができる。温度センサ(すなわち冷媒温度取得部3)は、例えば、冷媒循環路11における、冷媒入口211の上流側の位置に設けてもよいし、冷却器2における冷媒入口211付近に設けてもよい。冷媒温度取得部3は、冷却器2に導入され電子部品Eと熱交換を行う前の冷媒の温度を取得できれば、特に配設箇所を限定されるものではない。
【0026】
また、冷媒流量取得部4は、冷媒流量を計測する流量計とすることができる。本形態においては、冷媒循環路11におけるポンプ112と冷却器2との間に設けられている。流量計は、冷却器2に設けてもよい。例えば、流量計を、冷却器2における冷媒入口211に設けてもよいし、冷媒出口212に設けてもよいし、冷媒入口211と冷媒出口212との間に設けてもよい。冷媒流量取得部4は、冷却器2における冷媒の流量を取得できれば、特に配設箇所を限定されるものではない。
【0027】
また、本形態において、熱損失推定部51は、電子部品Eの電流値から、電子部品Eの熱損失を推定するよう構成されたものとすることができる。熱損失推定部51は、損失閾値算出部52及び冷媒流量制御部53とともに、ECU(電子制御ユニット)5に設けられている。なお、電子部品Eの電流値は、例えば、電子部品Eもしくは電子部品Eに接続された配線に設けられた電流センサによって、取得することができる。
【0028】
損失閾値算出部52は、冷媒温度取得部3によって取得された冷媒温度Tと、冷媒流量取得部4によって取得された冷媒流量Vと、に基づいて、電子部品Eにおける熱損失の適正下限閾値Q2を算出するよう構成されている。適正下限閾値Q2は、適正上限閾値Q1よりも小さい。
冷媒流量制御部53は、推定熱損失Qが、適正下限閾値Q2を下回ったとき、冷却器2を流通する冷媒の流量を減少させるよう構成されている。
【0029】
次に、
図2のフローを参照して、本形態の電子部品冷却装置1における、冷媒流量の制御手法の一例を説明する。
まず、冷媒温度取得部3としての温度センサ、冷媒流量取得部4としての流量計、さらには電子部品Eの電流を取得する電流センサによって、それぞれ冷媒温度T、冷媒流量V、電子部品Eに流れる電流の電流値Iを取得する(ステップS1参照)。
【0030】
次に、冷媒温度T及び冷媒流量Vから、適正上限閾値Q1及び適正下限閾値Q2を算出する(ステップS2参照)。ここで、適正上限閾値Q1は、現状の冷媒の状態(すなわち冷媒温度及び冷媒流量)によって適切に対応可能な電子部品Eの熱損失の適正範囲の上限値として、設定することができる。すなわち、現状の冷媒にとって、電子部品Eの熱損失が大きすぎると、冷媒のドライアウトが生じるおそれがある。つまり、冷却器2内において冷媒が沸騰し、冷却器2における電子部品Eと熱的に接触する部位と液冷媒との間に気化した冷媒の層が介在してしまうような状態を招くおそれがある。かかるドライアウトの状態となると、冷媒による電子部品Eの冷却性能が大きく低下することとなるため、かかる状態を回避することが望ましい。
【0031】
そして、ドライアウトが発生し始める電子部品Eの熱損失は、現状の冷媒温度及び冷媒流量に応じて変動する。つまり、現状の冷媒温度が高いほど、ドライアウトが発生し始める電子部品Eの熱損失は小さく、現状の冷媒流量が少ないほど、ドライアウトが発生し始める電子部品Eの熱損失は小さい。
【0032】
つまり、ドライアウトを回避できる程度の電子部品Eの熱損失は、冷媒温度T及び冷媒流量Vに応じて変動する。そこで、まず、T及びVから、ドライアウトを回避できる適正な熱損失の上限値として、適正上限閾値Q1を算出する。
【0033】
また、適正下限閾値Q2は、電子部品Eの熱損失の適正範囲の下限値として、設定することができる。すなわち、現状の冷媒にとって、電子部品Eの熱損失が小さすぎる場合は、冷媒の冷却性能が過剰性能であると考えられる。つまり、必要以上の冷却能力が発揮される状態にて、現状の冷媒の温度や流量が設定されていることとなる。そうすると、電子部品冷却装置1の運転効率を向上させる余地があるといえる。
【0034】
このように、現状の冷却能力が過剰とならない程度の電子部品Eの熱損失は、現状の冷媒温度T及び冷媒流量Vに応じて変動する。つまり、現状の冷媒温度Tが高いほど、冷却能力が過剰とならない程度の電子部品Eの熱損失は小さく、現状の冷媒流量Vが少ないほど、冷却能力が過剰とならない程度の電子部品Eの熱損失は小さい。
【0035】
つまり、冷却能力が過剰とならない程度の電子部品Eの熱損失は、冷媒温度T及び冷媒流量Vに応じて変動する。そこで、まず、冷媒温度T及び冷媒流量Vから、冷却能力の過剰が回避される適正な熱損失の下限値として、適正下限閾値Q2を算出する。
【0036】
なお、適正上限閾値Q1及び適正下限閾値Q2は、上述の考え方に基づいて設定し得るが、その具体的な値については、適宜設定される。すなわち、適正上限閾値Q1については、例えば、ドライアウトの発生をどの程度確実に防ぐかによって、その設定値は変わり得る。また、適正下限閾値Q2については、例えば、冷却装置の運転効率をどの程度向上させるか、さらには、電子部品Eの冷却の確実性をどの程度向上させるか等に応じて、適宜設定される。
【0037】
また、熱損失推定部51によって、電流値Iに基づいて、電子部品Eの推定熱損失Qを算出する(ステップS3参照)。
そして、推定熱損失Qを、適正上限閾値Q1及び適正下限閾値Q2と、それぞれ比較する(ステップS4、S5参照)。ここで、推定熱損失Qが、適正上限閾値Q1以下、かつ、適正下限閾値Q2以上である場合、すなわち、Q2≦Q≦Q1 を満たしている場合には、特に冷媒流量を変更しない。
【0038】
これに対して、ステップS4において、推定熱損失Qが、適正上限閾値Q1を超えていると判断された場合、ドライアウトの発生が懸念されると判断される。そこで、この場合は、冷媒流量制御部53によって、冷媒流量を増加させる(ステップS6参照)。例えば、ポンプ112の出力を高める。
【0039】
一方、ステップS5において、推定熱損失Qが、適正下限閾値Q2を下回っていると判断された場合、冷却装置の過剰性能が懸念されると判断される。そこで、この場合は、冷媒流量制御部53によって、冷媒流量を減少させる(ステップS7参照)。例えば、ポンプ112の出力を低下させる。
【0040】
なお、ステップS6、ステップS7における、冷媒流量の増加量、減少量は、適宜設定することができる。また、この冷媒流量の増加、減少は、それぞれ、予め設定された所定量を増加、減少させるようにしてもよい。或いは、QとQ1との関係、QとQ2との関係、或いは、T、V、I等の検出値から、適切な増加量、減少量を算出することも考えられる。
【0041】
上述のフローにおける、ステップS2とステップS3とは、時系列的な順序は特にない。ただし、上述のように、冷媒温度T及び冷媒流量Vに基づいて、適正上限閾値Q1及び適正下限閾値Q2を算出する(
図3のステップS1a,S2参照)。また、電流値Iに基づいて、電子部品Eの推定熱損失Qを推定する(
図3のステップS1b,S3参照)。かかる手順を考慮すれば、
図2のフローは、
図3のフローのように表し直すこともできる。すなわち、
図2のフローにおけるステップS1~S3は、
図3のフローにおけるステップS1a,S1b,S2,S3に置き換えて表すことができる。
【0042】
なお、本形態において、電子部品冷却装置1は、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車等に搭載されるものとすることができる。また、電子部品Eは、電力変換装置の構成部品(例えば、半導体部品)とすることができる。また、本形態において、冷媒は、例えば、水とすることができる。
【0043】
次に、本形態の作用効果につき説明する。
上記電子部品冷却装置1は、熱損失推定部51と損失閾値算出部52とを有する。熱損失推定部51は、電子部品Eにおける熱損失を推定する。損失閾値算出部52は、冷媒温度Tと冷媒流量Vとに基づいて適正上限閾値Q1を算出する。そして、冷媒流量制御部53において、推定熱損失Qが適正上限閾値Q1を超えたとき、冷媒の流量を増加させる。
【0044】
すなわち、電子部品Eにおける熱損失と、現状の冷媒温度Tと、現状の冷媒流量Vと、に基づいて、冷媒の流量を適切に調整することが可能となる。その結果、効率のよい電子部品Eの冷却を容易に実現することができる。つまり、現状の冷媒流量Vを維持したときに、ドライアウトが発生する可能性を、電子部品Eの推定熱損失Q等に基づいて推定することができる。そして、その推定に基づいて、冷媒の流量を制御することができる。これにより、ドライアウトの発生を防ぎつつ、効率のよい電子部品Eの冷却を実現することができる。
【0045】
また、損失閾値算出部52は、冷媒温度Tと冷媒流量Vとに基づいて、電子部品Eにおける熱損失の適正下限閾値Q2を算出するよう構成されている。冷媒流量制御部53は、推定熱損失Qが適正下限閾値Q2を下回ったとき、冷却器2を流通する冷媒の流量を減少させる。これにより、電子部品Eの冷却能力として過剰な流量の冷媒が供給されることを抑制することができる。その結果、電子部品Eの冷却を充分に行いつつ、電子部品冷却装置1の運転効率を向上させることができる。
【0046】
上述のように、本形態においては、検出された冷媒温度T、冷媒流量V、及び電流値Iを用いて、Q2≦Q≦Q1が満たされるように、冷媒流量を調整することが可能となる。その結果、ドライアウトの発生を充分に防ぐことができる範囲で、極力冷媒流量を抑制することが可能となる。その結果、効率的な電子部品Eの冷却を実現することができる。
【0047】
以上のごとく、本形態によれば、効率のよい電子部品の冷却を容易に実現することができる電子部品冷却装置を提供することができる。
【0048】
(参考形態2)
本形態は、
図4に示すごとく、冷媒循環路11にバルブ113を設けた形態である。
本形態においては、バルブ113として、電磁弁を採用している。
【0049】
そして、本形態においては、冷媒流量取得部4として、バルブ113の開度から冷媒流量を推定するものを採用している。この場合、冷媒流量取得部4は、例えば、ECU5内に設けられ、バルブ113の開度を基に、冷媒流量Vを算出するよう構成するものとすることができる。すなわち、本形態においては、冷媒流量取得部4として、間接的に、冷却器2内の冷媒流量を取得するものを採用している。
【0050】
また、冷媒流量取得部4として、ポンプ112の出力やデューティから冷媒流量を算出するものを採用することもできる。また、冷媒流量取得部4は、バルブ113の開度と、ポンプ112の出力等との双方を基に、冷媒流量Vを算出するよう構成してもよい。
【0051】
また、冷媒流量制御部53は、バルブ113の開度を制御することで、冷却器2における冷媒流量を制御するよう構成されている。また、冷媒流量制御部53は、ポンプ112の出力とバルブ113の開度との双方を適宜調整することで、冷媒流量を制御するよう構成してもよい。
【0052】
その他は、参考形態1と同様である。なお、参考形態2以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0053】
本形態においては、バルブ113の開度を用いて、冷媒流量Vを推定するため、流量計を設ける必要が特にない。その結果、電子部品冷却装置1を簡素化することができる。
その他、参考形態1と同様の作用効果を有する。
【0054】
(参考形態3)
本形態は、
図5~
図7に示すごとく、冷却器2における流路内圧の振幅である内圧振幅を利用して、適正な冷媒流量の制御を行うことができるよう構成した、電子部品冷却装置1の形態である。
【0055】
本形態の電子部品冷却装置1は、
図5に示すごとく、冷却器2と、冷媒温度取得部3と、冷媒流量取得部4と、内圧取得部60と、内圧振幅算出部61と、振幅閾値算出部62と、冷媒流量制御部63と、を有する。冷却器2、冷媒温度取得部3、及び冷媒流量取得部4は、参考形態1にて示したものと同様である。
【0056】
内圧取得部60は、冷却器2内における流路内圧Pを取得する。内圧振幅算出部61は、内圧振幅Pwを算出する。内圧振幅Pwは、内圧取得部60によって取得された流路内圧Pの振幅である。振幅閾値算出部62は、冷媒温度取得部3によって取得された冷媒温度Tと、冷媒流量取得部4によって取得された冷媒流量Vと、に基づいて、内圧振幅Pwの適正上限閾値Pw1を算出する。冷媒流量制御部63は、冷却器2を流通する冷媒の流量を制御する。
【0057】
冷媒流量制御部63は、内圧振幅算出部61によって算出された内圧振幅Pwが、適正上限閾値Pw1を超えたとき、冷却器2を流通する冷媒の流量を増加させるよう構成されている。
【0058】
振幅閾値算出部62は、内圧振幅Pwの適正下限閾値Pw2を算出するよう構成されている。適正下限閾値Pw2は、冷媒温度取得部3によって取得された冷媒温度Tと、冷媒流量取得部4によって取得された冷媒流量Vと、に基づいて、算出される。適正下限閾値Pw2は、適正上限閾値Pw1よりも小さい。
冷媒流量制御部63は、内圧振幅Pwが、適正下限閾値Pw2を下回ったとき、冷却器2を流通する冷媒の流量を減少させるよう構成されている。
【0059】
内圧取得部60は、圧力センサによって構成することができる。圧力センサは、冷媒循環路11におけるポンプ112と冷却器2との間に設けてある。これにより、圧力センサによって冷却器2内の流路内圧を検出できる。なお、圧力センサは、冷却器2に設けることもできる。
【0060】
次に、
図6のフローを参照して、本形態の電子部品冷却装置1における、冷媒流量の制御手法の一例を説明する。
まず、冷媒温度取得部3としての温度センサ、冷媒流量取得部4としての流量計、さらには内圧取得部60としての圧力センサによって、それぞれ冷媒温度T、冷媒流量V、冷却器2の流路内圧Pを取得する(ステップS11参照)。
【0061】
次に、冷媒温度T及び冷媒流量Vから、適正上限閾値Pw1及び適正下限閾値Pw2を算出する(ステップS12参照)。ここで、適正上限閾値Pw1は、現状の冷媒流量Vを維持しても所定時間t1後にドライアウトを招くことがないと考えられる冷媒の内圧振幅Pwの上限値として、設定することができる。換言すると、適正上限閾値Pw1は、内圧振幅がこれを超えると、現状の冷媒流量Vを維持したとき、所定時間t1後にドライアウトを招くおそれがあると考えられる値として、設定できる。
【0062】
すなわち、冷媒は温度が高くなると沸騰し始めるが、その沸騰状態は、ドライアウトを招くほどの状態となるまで、徐々に変化する。この沸騰状態は、冷却器2内の流路内圧Pの振動の仕方によって把握することができる。つまり、冷媒が沸騰していない状態においては、特に流路内圧Pの振動は生じず、内圧振幅Pwは略ゼロである。しかし、冷媒が沸騰し始めると、流路内圧Pが振動し始め、その内圧振幅Pwが徐々に大きくなる。それゆえ、非沸騰状態からドライアウト発生までの間に徐々に大きくなる内圧振幅Pwを基に、ドライアウトの発生を予測することが可能である。
【0063】
また、適正下限閾値Pw2は、現状の冷媒流量Vを維持しても所定時間t2後にドライアウトを招くことがないと考えられる冷媒の内圧振幅Pwの上限値として、設定することができる。ここで、所定時間t2は、上述の所定時間t1よりも長い。つまり、ドライアウトの発生まで、比較的余裕がある冷媒の沸騰状態を示す内圧振幅Pwの上限値といえる。
【0064】
ここで、冷媒の沸騰状態は、非沸騰状態から、核沸騰状態を経て、遷移沸騰状態、膜沸騰状態へと移行する。ドライアウトは、遷移沸騰状態及び膜沸騰状態において生じ得るが、核沸騰状態の間は生じない。むしろ、核沸騰状態では、電子部品Eから冷媒への熱の移動が生じやすい。それゆえ、この核沸騰状態を保つことで、より効率的な冷却を実現することができる。
【0065】
それゆえ、ドライアウトを防ぎつつ、核沸騰状態を維持できるように、冷媒流量を調整することが望ましい。したがって、上述のように、ある程度小さい内圧振幅にて流路内圧Pの振動が生じている状態となるように、冷媒流量を制御することが望ましい。そのような適切な冷媒の沸騰状態を示す、内圧振幅Pwの範囲の下限値として、適正下限閾値Pw2を設定することができる。
【0066】
なお、適正上限閾値Pw1及び適正下限閾値Pw2は、上述の考え方に基づいて設定し得るが、その具体的な値については、適宜設定される。すなわち、適正上限閾値Pw1については、例えば、ドライアウトの発生をどの程度確実に防ぐかによって、その設定値は変わり得る。また、適正下限閾値Pw2については、例えば、核沸騰による冷却効果をどの程度利用するかによって、その設定値は変わり得る。
【0067】
また、
図6のステップS13において、内圧振幅算出部61によって、内圧振幅Pwを算出する。すなわち、圧力センサによって計測された流路内圧Pの微小時間内の変動に基づき、内圧振幅Pwを算出する。
【0068】
そして、内圧振幅Pwを、適正上限閾値Pw1及び適正下限閾値Pw2と、それぞれ比較する(ステップS14、S15参照)。ここで、内圧振幅Pwが、適正上限閾値Pw1以下、かつ、適正下限閾値Pw2以上である場合、すなわち、Pw2≦Pw≦Pw1 を満たしている場合には、特に冷媒流量を変更しない。
【0069】
これに対し、ステップS14において、内圧振幅Pwが、適正上限閾値Pw1を超えていると判断された場合、所定時間t1後にドライアウトの発生が懸念される。そこで、この場合は、冷媒流量制御部63によって、冷媒流量を増加させる(ステップS16参照)。例えば、ポンプ112の出力を高める。
【0070】
一方、ステップS15において、内圧振幅Pwが、適正下限閾値Pw2を下回っていると判断された場合、ドライアウトの発生までに余裕があると共に、冷媒の核沸騰による高い冷却性能を充分に活かせない可能性がある。そこで、この場合は、冷媒流量制御部63によって、冷媒流量を減少させる(ステップS17参照)。例えば、ポンプ112の出力を低下させる。
【0071】
なお、ステップS16、ステップS17における、冷媒流量の増加量、減少量は、適宜設定することができる。また、この冷媒流量の増加、減少は、それぞれ、予め設定された所定量を増加、減少させるようにしてもよい。或いは、内圧振幅Pwと適正上限閾値Pw1との関係、内圧振幅Pwと適正下限閾値Pw2との関係、或いは、冷媒温度T、冷媒流量V、内圧振幅Pw等の測定値から、適切な増加量、減少量を算出することも考えられる。
【0072】
上述のフローにおける、ステップS12とステップS13とは、時系列的な順序は特にない。ただし、上述のように、冷媒温度T及び冷媒流量Vに基づいて、適正上限閾値Pw1及び適正下限閾値Pw2を算出する(
図7のステップS11a,S12参照)。また、流路内圧Pの微小時間内の変動に基づき、内圧振幅Pwを算出する(
図7のステップS11b,S13参照)。かかる手順を考慮すれば、
図6のフローは、
図7のフローのように表し直すこともできる。すなわち、
図6のフローにおけるステップS11~S13は、
図7のフローにおけるステップS11a,S11b,S12,S13に置き換えて表すことができる。
その他は、参考形態1と同様である。
【0073】
次に、本形態の作用効果につき説明する。
上記電子部品冷却装置1は、内圧振幅算出部61と振幅閾値算出部62とを有する。内圧振幅算出部61は、内圧振幅Pwを算出する。振幅閾値算出部62は、冷媒温度Tと冷媒流量Vとに基づいて、内圧振幅Pwの適正上限閾値Pw1を算出する。そして、内圧振幅Pwが適正上限閾値Pw1を超えたとき、冷媒流量制御部63は、冷媒の流量を増加させる。
【0074】
すなわち、現状の内圧振幅Pwと、現状の冷媒温度Tと、現状の冷媒流量Vと、に基づいて、冷媒の流量を適切に調整することが可能となる。その結果、効率のよい電子部品Eの冷却を容易に実現することができる。つまり、現状の冷媒流量Vを維持したとしたときに、所定時間t1後にドライアウトが発生する可能性を、内圧振幅Pw等に基づいて推定することができる。そして、その推定に基づいて、冷媒の流量を制御することができる。これにより、ドライアウトの発生を防ぎつつ、効率のよい電子部品Eの冷却を実現することができる。
【0075】
また、振幅閾値算出部62は、冷媒温度Tと冷媒流量Vとに基づいて、内圧振幅の適正下限閾値Pw2を算出するよう構成されている。冷媒流量制御部63は、内圧振幅Pwが適正下限閾値Pw2を下回ったとき、冷却器2を流通する冷媒の流量を減少させる。これにより、過剰な冷媒の供給を抑制して、電子部品冷却装置1の運転の効率向上を図ることができる。そして、冷媒流量を抑制することで、核沸騰状態を利用して冷却能力を向上させることで、冷却効率を向上させることもできる。
【0076】
以上のごとく、本形態によれば、効率のよい電子部品の冷却を容易に実現することができる電子部品冷却装置を提供することができる。その他、参考形態1と同様の作用効果を有する。
【0077】
(参考形態4)
本形態は、
図8に示すごとく、冷媒循環路11にバルブ113を設けた形態である。
本形態においては、バルブ113として、電磁弁を採用している。バルブ113は、冷媒循環路11における、ポンプ112よりも下流側、かつ内圧取得部60よりも上流側に配置されている。
【0078】
そして、参考形態2と同様に、冷媒流量取得部4として、バルブ113の開度から冷媒流量Vを推定するものを採用している。また、冷媒流量取得部4として、ポンプ112の出力やデューティから冷媒流量を算出するものを採用することもできる。また、冷媒流量取得部4は、バルブ113の開度と、ポンプ112の出力等との双方を基に、冷媒流量Vを算出するよう構成してもよい。
【0079】
また、冷媒流量制御部63は、バルブ113の開度を制御することで、冷却器2における冷媒流量を制御するよう構成されている。また、冷媒流量制御部63は、ポンプ112の出力とバルブ113の開度との双方を適宜調整することで、冷媒流量を制御するよう構成してもよい。その他は、参考形態1と同様である。
【0080】
本形態においては、バルブ113の開度を用いて、冷媒流量Vを推定するため、流量計を設ける必要が特にない。その結果、電子部品冷却装置1を簡素化することができる。
その他、参考形態3と同様の作用効果を有する。
【0081】
(参考形態5)
本形態は、
図9~
図11に示すごとく、参考形態1と参考形態2とを組み合わせた形態である。
すなわち、本形態においては、推定熱損失Qと内圧振幅Pwとの双方を利用して、冷媒流量の制御を行うよう構成されている。
【0082】
本形態の電子部品冷却装置1は、
図9に示すごとく、冷却器2と、冷媒温度取得部3と、冷媒流量取得部4と、内圧取得部60と、内圧振幅算出部61と、振幅閾値算出部62と、熱損失推定部51と、損失閾値算出部52と、冷媒流量制御部73と、を有する。これらの各構成要素は、参考形態1又は参考形態3に示したものと同様である。なお、冷媒流量制御部73は、参考形態1に示したものと参考形態3に示したものとの双方の機能を有する。
【0083】
本形態の電子部品冷却装置1における冷媒流量の制御手法につき、
図10を参照して、説明する。
まず、冷媒温度T、冷媒流量V、電子部品Eに流れる電流の電流値I、及び流路内圧Pを取得する(ステップS21参照)。
【0084】
次に、冷媒温度T及び冷媒流量Vから、熱損失の適正上限閾値Q1及び適正下限閾値Q2、さらには、流路内圧の内圧振幅の適正上限閾値Pw1及び適正下限閾値Pw2を算出する(ステップS22参照)。
【0085】
また、電流値Iに基づいて、熱損失推定部51が電子部品Eの推定熱損失Qを算出すると共に、流路内圧Pに基づいて、内圧振幅算出部61が内圧振幅Pwを算出する(ステップS23)。
【0086】
そして、ステップS24において、推定熱損失Qと熱損失の適正上限閾値Q1とを比較すると共に、内圧振幅Pwと内圧振幅の適正上限閾値Pw1とを比較する。ここで、「Q≦Q1」と「Pw≦Pw1」との双方が満たされていれば、ステップS25に進む。一方、「Q≦Q1」と「Pw≦Pw1」との少なくとも一方が満たされていなければ、冷媒流量を増加させる(ステップS26参照)。つまり、推定熱損失Qが適正上限閾値Q1を超えているか、或いは、内圧振幅Pwが適正上限閾値Pw1を超えていれば、ドライアウトの発生が懸念されると判断され、冷媒流量を増加させる。
【0087】
また、ステップS25においては、推定熱損失Qと熱損失の適正下限閾値Q2とを比較すると共に、内圧振幅Pwと内圧振幅の適正下限閾値Pw2とを比較する。ここで、「Q≧Q2」と「Pw≧Pw2」との双方が満たされていれば、冷媒流量を変化させない。一方、「Q≧Q2」と「Pw≧Pw2」との少なくとも一方が満たされていなければ、冷媒流量を減少させる(ステップS27参照)。つまり、推定熱損失Qが適正下限閾値Q2を下回っているか、或いは、内圧振幅Pwが適正下限閾値Pw2を下回っていれば、冷却能力の過剰又は冷却効率の低下が懸念されると判断され、冷媒流量を減少させる。
【0088】
上述のフローにおける、ステップS22とステップS23とは、時系列的な順序は特にない。ただし、上述のように、冷媒温度T及び冷媒流量Vに基づいて、適正上限閾値Q1及び適正下限閾値Q2を算出する(
図11のステップS21a,S22a参照)。また、冷媒温度T及び冷媒流量Vに基づいて、適正上限閾値Pw1及び適正下限閾値Pw2を算出する(
図11のステップS21a,S22b参照)。また、流路内圧Pの微小時間内の変動に基づき、内圧振幅Pwを算出する(
図11のステップS21c,S23c参照)。また、電流値Iに基づいて、電子部品Eの推定熱損失Qを推定する(
図11のステップS21d,S23d参照)。かかる手順を考慮すれば、
図10のフローは、
図11のフローのように表し直すこともできる。すなわち、
図10のフローにおけるステップS21~S23は、
図11のフローにおけるステップS21a,S21c,S21d,S22a,S22b,S23c,S23dに置き換えて表すことができる。
その他は、参考形態1又は参考形態3と同様である。
【0089】
上述のように、本形態の電子部品冷却装置1においては、参考形態1にて示した冷媒流量を増加させる条件と、参考形態3にて示した冷媒流量を増加させる条件とのいずれか一方が満たされたとき、冷媒流量を増加させることとなる。それゆえ、より確実に、ドライアウトの発生を防ぐことができる。
【0090】
また、本形態の電子部品冷却装置1においては、参考形態1にて示した冷媒流量を減少させる条件と、参考形態3にて示した冷媒流量を減少させる条件とのいずれか一方が満たされたとき、冷媒流量を減少させることとなる。それゆえ、電子部品冷却装置1の運転効率をより向上させることができる。
その他、参考形態1又は参考形態3と同様の作用効果を有する。
【0091】
なお、本形態は、例えば、以下のように一部を変形した形態とすることもできる。すなわち、
図8のステップS25において、「Q≧Q2」と「Pw≧Pw2」との少なくとも一方が満たされていれば、冷媒流量を変化させないとの判断を行うようにする形態とすることもできる。或いは、ステップS25において、「Q≧Q2」を満たすか否かのみを判断するような形態としてもよいし、「Pw≧Pw2」を満たすか否かのみを判断するような形態としてもよい。
【0092】
(実施形態6)
本形態は、
図12~
図15に示すごとく、冷却管20内の冷媒流路22が、下記のような中央流路221と外側流路222とを有する、電子部品冷却装置10の形態である。
本形態の電子部品冷却装置10は、電子部品Eを冷却する冷却装置である。
図12に示すごとく、電子部品冷却装置10は、電子部品Eと熱的に接触する冷却管20を備えている。
【0093】
冷却管20は、
図13に示すごとく、冷媒を流通させる冷媒流路22と、冷媒流路22への冷媒の入口である冷媒入口231と、冷媒流路からの冷媒の出口である冷媒出口232とを有する。
【0094】
冷媒流路22には、インナフィン24が設けてある。
冷却管20と電子部品Eとの積層方向Xと、冷媒入口231と冷媒出口232との並び方向Yとの双方に直交する方向を、幅方向Zとする。冷媒流路の幅方向Zにおける両外側部と、その間の中央部とには、インナフィン24の形成パターンが互いに異なる外側流路222と中央流路221とが、それぞれ形成されている。
【0095】
図13、
図14に示すごとく、外側流路222におけるインナフィン24は、積層方向Xから見たとき、並び方向Yに対して傾斜した複数の傾斜部241を有する。そして、傾斜部241の傾斜方向が、並び方向Yにおいて交互に変わるように配置されている。また、並び方向Yにおいて隣り合う傾斜部241の間には、幅方向Zに開口する連通路223が形成されている。なお、このようなインナフィン24の形成パターンを、以下において、適宜、オフセットウェーブパターンOWともいう。
【0096】
中央流路221における流路抵抗は、外側流路222における流路抵抗よりも小さい。以下において適宜、積層方向Xを単にX方向ともいい、並び方向Yを単にY方向ともいい、幅方向Zを単にZ方向ともいう。
【0097】
本形態において、電子部品冷却装置10は、
図12に示すごとく、複数の冷却管20をX方向に積層配置したものとすることができる。X方向に隣り合う冷却管20同士は、互いの冷媒入口231同士及び冷媒出口232同士を接続している。X方向に隣り合う冷却管20の間には、電子部品Eが配置されている。電子部品Eは、一対の冷却管20によって、X方向から挟持されている。これにより、電子部品Eは、X方向の両面において冷却管20によって冷却できるよう構成されている。なお、本形態においては、一対の冷却管20の間に、2つの電子部品Eが、Y方向に並んで配置されている。
【0098】
電子部品冷却装置10は、X方向の一端に配置された冷却管20に、冷媒を導入する導入口121と、冷媒を排出する排出口122とを設けてある。冷却管20は、アルミニウム等、熱伝導性に優れた金属にて構成されている。また、インナフィン24も、アルミニウム等、熱伝導性に優れた金属にて構成されている。
【0099】
図13に示すごとく、冷媒流路22の中央流路221は、X方向から見て、電子部品Eと重なる。中央流路221は、Z方向の略全域にわたり、電子部品Eと重なる。また、冷媒流路22の外側流路222は、X方向から見て、その大半が重ならない。なお、ここで、電子部品Eは、例えば半導体素子等、冷却管20が受熱する部分を意味し、例えば、半導体素子等が樹脂モールドされているような場合において、樹脂部分を含まない。また、例えば、樹脂部にて複数の半導体素子等が一体化された半導体モジュール等の場合には、電子部品Eというときは、半導体モジュールではなく、そこに設けられた個々の半導体素子等を意味する。
【0100】
中央流路221は、連続インナフィン242を有する。連続インナフィン242は、
図13、
図15に示すごとく、Y方向において、電子部品Eよりも上流側から電子部品Eよりも下流側までにわたって連続して形成されたインナフィン24である。連続インナフィン242によって互いに隔離された複数の分岐流路224が、電子部品Eよりも上流側から電子部品Eよりも下流側まで、互いに合流することなく連続している。
【0101】
ここで、本形態においては、Y方向に複数個の電子部品Eが並んでいる。このような場合において、電子部品Eよりも上流側というときは、Y方向に並んだいずれの電子部品Eよりも、上流側であることを意味する。同様に、電子部品Eよりも下流側というときは、Y方向に並んだいずれの電子部品Eよりも、下流側であることを意味する。
【0102】
中央流路221には、複数の連続インナフィン242が並列配置されている。Z方向に隣り合う連続インナフィン242同士は、互いに略平行に形成されている。各連続インナフィン242は、X方向から見たとき、略波型形状を有するウェーブフィンである。そして、この波型形状の山同士、谷同士が、複数の連続インナフィン242の間で、互いにZ方向に重なるような位置に形成されている。
【0103】
これにより、連続インナフィン242同士の間に、略波型の分岐流路224が形成されている。ただし、連続インナフィン242の上流端と下流端においては、それぞれ、Y方向に略平行なストレート部24Sが形成されている。本形態においては、X方向から見て、上流側のストレート部24Sの下流端と、下流側のストレート部24Sの上流端との間に、2つの電子部品Eが配置されている。
【0104】
外側流路222においては、上述のように、オフセットウェーブパターンOWが形成されている。すなわち、外側流路222には、インナフィン24として、複数の傾斜部241が形成されている。また、外側流路222にも、上流側と下流側との双方に、インナフィン24のストレート部24Sが形成されている。外側流路222におけるインナフィン24は、ストレート部24S以外は、オフセットウェーブパターンOWとなっている。
【0105】
図14に示すごとく、オフセットウェーブパターンOWにおいて、多数の傾斜部241は、Y方向に対して傾斜している。そして、Y方向に隣り合う傾斜部241同士は、Y方向に対する傾斜の向きが互いに異なっている。本形態においては、X方向から見たとき、傾斜部241は、Y方向に対して、例えば30°~60°程度傾斜した状態にある。ただし、複数の傾斜部241のうちの一部は、Y方向に対して一方側に傾斜しており、複数の傾斜部241のうちの他の一部は、Y方向に対して他方側に傾斜している。そして、互いにY方向に隣り合う傾斜部241同士は、Y方向に対する傾斜の向きが逆となっている。
【0106】
また、複数の傾斜部241は、Z方向にも並んで配列されている。幅方向Zに配列された複数の傾斜部241は、Y方向に対する傾斜の向きが互いに同じである。
【0107】
なお、「Y方向に対する傾斜の向きが逆」とは、X方向から見たとき、Y方向の一方から他方へ向かうにつれてZ方向の互いに反対側へ向かうように傾斜していることを、意味する。また、「Y方向に対する傾斜の向きが同じ」とは、X方向から見たとき、Y方向の一方から他方へ向かうにつれてZ方向の互いに同じ側へ向かうように傾斜していることを、意味する。
【0108】
本形態において、X方向から見て、各傾斜部241は、略直線状に形成されている。Y方向に隣り合う傾斜部241同士は、上流側の傾斜部241を下流側に延長した仮想の延長線が、下流側の傾斜部241と交差するような状態で、配置されている。
そして、外側流路222においては、上記のような状態にて、複数の傾斜部241が配列されてインナフィン24が形成されているため、その間を流れる冷媒の流路抵抗が大きくなりやすい。すなわち、連続インナフィン242同士の間に分岐流路224が形成される中央流路221よりも、外側流路222の方が、冷媒の流路抵抗が大きくなっている。
【0109】
なお、本形態において、電子部品冷却装置10は、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車等に搭載されるものとすることができる。また、電子部品Eは、電力変換装置の構成部品(例えば、半導体素子)とすることができる。また、本形態において、冷媒は、例えば、水とすることができる。
【0110】
次に、本実施形態の作用効果につき説明する。
上記電子部品冷却装置10において、中央流路221における流路抵抗は、外側流路222における流路抵抗よりも小さい。これにより、中央流路221における冷媒流量を多くすることができる。それゆえ、局部的な冷媒温度の上昇を抑制し、電子部品Eの冷却を効率よく行うことができる。
【0111】
すなわち、冷媒入口231から導入された冷媒は、中央流路221にも外側流路222にも流入する。しかし、冷媒は、より流路抵抗が小さい方へ、多く流れる。したがって、流路抵抗が比較的小さい中央流路221の方が、外側流路222よりも多く、冷媒が流れることとなる。それゆえ、特に全体の冷媒の流量を増やさなくても、中央流路221における冷媒の流量を増やすことができる。その結果、例えば、冷媒を送り込むポンプの出力を上げるなどすることなく、中央流路221における冷媒の流量を増やすことができる。その結果、電子部品Eを効率的に冷却することが容易となる。
【0112】
特に、冷媒流路22内において、冷媒のドライアウトが生じることを効果的に抑制することができる。つまり、冷媒流路22において、電子部品Eから熱を受けるのは、主として、中央流路221に存在する冷媒となる。この冷媒の流量を、上述のように、多くすることができるため、当該冷媒の蒸発を抑制することができる。その結果、ドライアウトの発生を抑制することができる。これにより、冷却性能が低下することを抑制することができる。
【0113】
また、これに伴い、全体の冷媒の供給量を節約することができる。その結果、全体として、電子部品冷却装置10の運転効率を向上させることができる。
【0114】
また、中央流路221は、連続インナフィン242を有する。そして、複数の分岐流路224が、電子部品Eよりも上流側から電子部品Eよりも下流側まで、互いに合流することなく連続している。これにより、中央流路221の流路抵抗を、効果的に抑制することができる。その結果、中央流路221における冷媒の流量を多くしやすい。
【0115】
以上のごとく、本形態によれば、効率のよい電子部品の冷却を容易に実現することができる電子部品冷却装置を提供することができる。
【0116】
(
参考形態7)
本形態は、
図16に示すごとく、中央流路221の一部において、インナフィン24の形成パターンを、オフセットウェーブパターンOWとした形態である。
すなわち、中央流路221において、X方向から見て電子部品Eと重なる部分を、オフセットウェーブパターンOWとしている。そして、中央流路221において、X方向から見て電子部品Eと重ならない部分は、連通路223が形成されていない。
【0117】
外側流路222におけるインナフィン24の形成パターンは、実施形態6と同様である。
その他は、実施形態6と同様である。
【0118】
本形態においては、X方向から見て電子部品Eと重なる部分を、オフセットウェーブパターンOWとしている。これにより、電子部品Eと重なる部分において、冷媒とインナフィン24との接触面積が増えると共に、インナフィン24への冷媒の衝突が増える。それゆえ、電子部品Eと冷媒との熱交換効率を向上させることができる。
【0119】
また、電子部品Eと重なる領域、すなわち、電子部品Eから受熱しやすい領域に、オフセットウェーブパターンOWを形成することで、沸騰した冷媒が、連通路223を介して、Z方向に移動しやすくなる。これにより、冷媒流路22内のドライアウトを抑制すると共に、中央流路221への液冷媒の流入を促進しやすくなる。その結果、中央流路221における冷却性能を向上させることができる。
その他、実施形態6と同様の作用効果を有する。
【0120】
(
参考形態8)
本形態は、
図17に示すごとく、外側流路222の一部のみにオフセットウェーブパターンOWを形成した形態である。
【0121】
本形態においては、Y方向の位置が電子部品Eと重なる領域に、オフセットウェーブパターンOWを形成している。そして、外側流路222においても、中央流路221においても、Y方向に隣り合う傾斜部241の間に連通路223を設けない箇所を有する。本形態においては、Y方向における2つの電子部品Eの間の領域においては、冷媒流路22におけるZ方向の全体にわたり、連通路223が形成されていない。
【0122】
また、上流側の電子部品Eよりも上流側、及び、下流側の電子部品Eよりも下流側においては、外側流路222の一部に、連通路223が形成されている。一方、中央流路221には、上流側の電子部品Eよりも上流側、及び、下流側の電子部品Eよりも下流側において、連通路223が形成されていない。このようにすることで、中央流路221の流路抵抗を、外側流路222の流路抵抗よりも小さくしている。
その他は、参考形態7と同様である。
【0123】
本形態においては、冷媒流路22内における電子部品Eと重なる領域において、冷媒が沸騰したとき、冷媒蒸気を外側流路222まで逃すことができる。これにより、冷媒が沸騰しても、ドライアウトの発生を抑制することができる。また、中央流路221への液冷媒の流入をより促進しやすくなる。その結果、中央流路221における冷却性能をより向上させることができる。
その他、参考形態7と同様の作用効果を有する。
【0124】
(
参考形態9)
本形態は、
図18に示すごとく、Y方向の位置が上流側の電子部品Eと重なる領域に、オフセットウェーブパターンOWを形成し、Y方向の位置が下流側の電子部品Eと重なる領域には、オフセットウェーブパターンOWを形成しない形態である。
その他は、
参考形態8と同様である。
【0125】
本形態においては、特に、上流側の電子部品Eがより発熱しやすい部品である場合において、冷却効率の向上、ドライアウトの抑制を図りやすい。
その他、参考形態8と同様の作用効果を有する。
【0126】
(
参考形態10)
本形態は、
図19に示すごとく、
参考形態9とは逆に、Y方向の位置が下流側の電子部品Eと重なる領域に、オフセットウェーブパターンOWを形成し、Y方向の位置が上流側の電子部品Eと重なる領域には、オフセットウェーブパターンOWを形成しない形態である。
その他は、
参考形態8と同様である。
【0127】
本形態においては、Y方向の位置が下流側の電子部品Eと重なる領域に、オフセットウェーブパターンOWを形成している。2つの電子部品EがY方向に並んで配されている場合、上流側において受熱して高温となった冷媒が、さらに下流側においても受熱する。そのため、一般に、下流側の方が、より沸騰が生じやすい。そのため、この下流側の領域に、オフセットウェーブパターンOWを形成することで、ドライアウトの発生を効果的に抑制し、中央流路221への冷媒の流入を効果的に促進することができる。
その他、参考形態8と同様の作用効果を有する。
【0128】
参考形態1~5において、冷媒流量取得部は、流量計、或いはポンプの出力等、バルブの開度等に基づいて取得する形態を示したが、これに限られるものではない。例えば、冷媒流量取得部は、電子部品の電流、電子部品の温度、及び冷却器に導入される冷媒の温度から、冷媒流量を推定するよう構成されたものとすることもできる。
【0129】
また、参考形態1~5において、温度取得部として、温度センサを用いる形態を示したが、これに限られるものではない。例えば、温度取得部は、電子部品の電流、電子部品の温度、及び冷媒の流量等を基に算出し、間接的に冷媒温度を取得するものとすることもできる。
【0130】
また、例えば、冷却器へ供給される冷媒の温度を所定の値に設定して運転するようにした電子部品冷却装置であれば、温度取得部は、予め設定された所定の温度(例えば一定温度)を記憶するものであってもよい。
【0131】
つまり、このような電子部品冷却装置の場合、下記の変形参考形態(
図20参照)のように、参考形態1に示した温度センサも流量計も、不要とすることが可能となる。
【0132】
(変形参考形態)
本変形参考形態の電子部品冷却装置1においては、
図20に示すごとく、例えば、ECU5内に、冷媒温度取得部3及び冷媒流量取得部4を設ける。冷媒温度取得部3には、上述のように予め設定された所定の冷媒温度Tが入力され、記憶されている。この冷媒温度Tは、損失閾値算出部52へ送られると共に、冷媒流量取得部4にも送られる。冷媒流量取得部4は、冷媒温度取得部3から受け取った冷媒温度Tを、電子部品の電流及び電子部品の温度と共に用いて、冷却器2内の冷媒流量Vを算出する。
そして、損失閾値算出部52は、冷媒温度取得部3から受け取った冷媒温度Tと、冷媒流量取得部4から受け取った冷媒流量Vとを基に、電子部品Eにおける熱損失の適正上限閾値Q1及び適正下限閾値Q2を算出する。その他は、参考形態1と同様である。
【0133】
また、実施形態6に示したインナフィンの形成パターンは、一部の例であり、これら以外にも、種々の形態を採用することができる。
【0134】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0135】
1、10 電子部品冷却装置
2 冷却器
3 冷媒温度取得部
4 冷媒流量取得部
51 熱損失推定部
52 損失閾値算出部
53、63 冷媒流量制御部