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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/08 20060101AFI20240613BHJP
   B43K 7/00 20060101ALI20240613BHJP
   B43K 7/08 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B43K24/08 110
B43K7/00 100
B43K7/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023076920
(22)【出願日】2023-05-08
(62)【分割の表示】P 2019104678の分割
【原出願日】2019-06-04
(65)【公開番号】P2023087127
(43)【公開日】2023-06-22
【審査請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2018109544
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大本 慶
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-56129(JP,A)
【文献】特開2011-73334(JP,A)
【文献】実開昭63-201792(JP,U)
【文献】特開平11-254878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00- 1/12
B43K 3/00
B43K 5/00- 8/24
B43K 21/00-21/26
B43K 24/00-24/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するリフィルと、
前記リフィルを内蔵する軸筒と、
前記リフィルの後端に当接し、軸筒の後端に装着される部品とを備えた筆記具であって、
前記部品には、
筒状の外筒部と、
前記外筒部より小径でかつ軸心同一であり、前端縁が前記外筒部の前端縁より後方に位置する内筒部と、
前記内筒部の後端側を閉塞する底部と、
前記底部の内面及び前記内筒部の内周面に囲まれる空間であって、前記リフィルの後端から内容物が流出した際にこれを貯留する第1貯留部と、
前記外筒部と前記内筒部との間の空間を周方向に複数の区画に仕切る複数の仕切部と、
前記複数の区画のうちの少なくとも一部の区画において前記内筒部の先端より後端側の箇所を閉塞する隔壁と、
前記隔壁を有する区画において前記隔壁より先端側の空間である第2貯留部と、
前記内筒部の前端縁のうち前記第2貯留部に臨む部分に設けられる切り欠きであって、前記第1貯留部と前記第2貯留部とを連絡する換気口と、
が設けられているとともに、
前記部品には、前記仕切部の先端面である第1当接部と、前記内筒部の内周に形成される先端側からの段部である第2当接部と、が設けられていることを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記軸筒は、後端にノックボタンを備えたノック式筆記具用の軸筒であることを特徴とすることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
【請求項3】
互いに形状が異なる、インクを収容する複数のリフィルと、
前記複数のリフィルのいずれをも内蔵可能な軸筒と、
を備えてなる筆記具セットであって、
前記軸筒の後端には、該軸筒に前記リフィルが内蔵されると該リフィルの後端に当接する部品が装着され、
前記部品には、
筒状の外筒部と、
前記外筒部より小径でかつ軸心同一であり、前端縁が前記外筒部の前端縁より後方に位置する内筒部と、
前記内筒部の後端側を閉塞する底部と、
前記底部の内面及び前記内筒部の内周面に囲まれる空間であって、前記リフィルの後端から内容物が流出した際にこれを貯留する第1貯留部と、
前記外筒部と前記内筒部との間の空間を周方向に複数の区画に仕切る複数の仕切部と、
前記仕切部の先端面である第1当接部と、
前記内筒部の内周に形成される先端側からの段部である第2当接部と、
前記複数の区画のうちの少なくとも一部の区画において前記内筒部の先端より後端側の箇所を閉塞する隔壁と、
前記隔壁を有する区画において前記隔壁より先端側の空間である第2貯留部と、
前記内筒部の前端縁のうち前記第2貯留部に臨む部分に設けられる切り欠きであって、前記第1貯留部と前記第2貯留部とを連絡する換気口と、
が設けられているとともに、
少なくとも前記軸筒は、後端にノックボタンを備えたノック式筆記具用の軸筒であることを特徴とする筆記具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気孔を有する部品を備えた筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクを収容するリフィルと、リフィルを内蔵する軸筒とを備えた筆記具(たとえば、ボールペンなど)が知られている。この軸筒の後端には、リフィルを固定するための尾栓が装着されることがあった。
【0003】
ところが、特に乳幼児が尾栓を誤飲して気道に詰まらせると、窒息するおそれがあった。そこで、気道に尾栓を詰まらせても空気を流通させるために、尾栓に通気孔を設けた筆記具が公開されている(特許文献1及び2参照)。
【0004】
特許文献1記載の筆記具では、リフィルの後端側の内部に連通多孔質体を設けてインクの漏出を抑制している。しかし、尾栓が下を向いた状態で衝撃を与えた場合に、インクが逆流して連通多孔質体を通過し、さらには尾栓の通気孔から漏出することがあった。
【0005】
また、特許文献2記載の筆記具では、尾栓に通気孔を設けてはいるものの、空気の流通量はリフィル内の減圧を防止できる程度であった。したがって、特に乳幼児が気道に尾栓を詰まらせた際に窒息を防止できる程度の空気の流通を確保するのは困難であった。
【0006】
そこで、インクの逆流を防ぐとともに空気の流通を確保した尾栓が開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-119477号公報
【文献】特開2004-306349号公報
【文献】特開2012-56129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施態様は、インク等の内容物が逆流しても部品の通気孔から漏出することを防止することの可能な筆記具を提供することを課題とする。
【0009】
さらに別の実施態様では、上記課題とともに、様々な形態のリフィルを交換して対応可能な筆記具を提供することをも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、本願の第1の実施態様は、
インクを収容するリフィルと、
前記リフィルを内蔵する軸筒と、
前記リフィルの後端に当接し、軸筒の後端に装着される部品とを備えた筆記具であって、
前記部品には、
筒状の外筒部と、
前記外筒部より小径でかつ軸心同一であり、前端縁が前記外筒部の前端縁より後方に位置する内筒部と、
前記内筒部の後端側を閉塞する底部と、
前記底部の内面及び前記内筒部の内周面に囲まれる空間であって、前記リフィルの後端から内容物が流出した際にこれを貯留する第1貯留部と、
前記外筒部と前記内筒部との間の空間を周方向に複数の区画に仕切る複数の仕切部と、
前記複数の区画のうちの少なくとも一部の区画において前記内筒部の先端より後端側の箇所を閉塞する隔壁と、
前記隔壁を有する区画において前記隔壁より先端側の空間である第2貯留部と、
前記内筒部の前端縁のうち前記第2貯留部に臨む部分に設けられる切り欠きであって、前記第1貯留部と前記第2貯留部とを連絡する換気口と、
が設けられているとともに、
前記第1貯留部から前記内容物が溢れた際には、該内容物は前記換気口から前記第2貯留部へ流入してここに貯留されることが可能となっていることを特徴とする。
【0011】
「筆記具」としては、たとえばボールペン、フェルトペン又は筆ペンなどが挙げられる。この筆記具において、「先端」とは、リフィルの筆記部分が存在する側の端部を意味する。一方、「後端」とは、前記先端と反対の端部を意味する。なお、本開示においては、ここでいう「先端」に近い側を「先端側」といい、その反対側を「後端側」という。
【0012】
「インク」は、たとえば油性インク、水性インク又はゲルインクなどが挙げられる。
【0013】
「リフィル」とは、たとえば、前記インクを収容するインク収容管のような筒状構造と、この筒状構造の先端に装着される筆記部分とを備えた、交換可能な部材をいう。このリフィルとしては、筆記部分としてボールペンチップを備えたボールペンリフィル又は筆記部分としてフェルトペン芯若しくは筆ペン芯を備えたインクリフィルなどが挙げられる。
【0014】
「軸筒」とは、前記リフィルを内蔵する筒状の部材をいう。
【0015】
「部品」とは、前記軸筒の後端に装着される部材をいい、たとえば、所謂尾栓がこれに該当する。この部品は、以下の構成を備える。
【0016】
前記部品は、外側の「外筒部」及び内側の「内筒部」という二重の筒状構造を呈する。内筒部は、外筒部より小径でかつ軸心同一である。また、内筒部の前端縁は、外筒部の前端縁より後方に位置する。
【0017】
「底部」とは、前記内筒部の後端側を塞ぐ構造である。
【0018】
「第1貯留部」とは、前記底部の内面と前記内筒部の内周面とで囲まれる空間である。この第1貯留部の先端側は、前記軸筒に収容された前記リフィルの後端に面している。そして、このリフィルの後端から内容物が流出した場合には、この第1貯留部にその流出した内容物が貯留される。なお、この「内容物」とは、端的には前記インクをいうが、前記インク以外に前記リフィルに収容される物質(たとえば、インクの後端に注入されるフォロワー)がある場合には、このような物質をも含む。
【0019】
「仕切部」とは、前記外筒部と前記内筒部との間の空間を周方向に複数の区画に仕切る構造である。換言すると、前記外筒部と前記内筒部とは、この仕切部で連結されている。
【0020】
この複数の区画のうちの少なくとも一部の区画において、前記内筒部の先端より後端側の箇所を閉塞する構造が「隔壁」である。すなわち、この隔壁は、前記内筒部の先端には設けられることはないが、それより後端側の箇所であれば、たとえば後端に設けられることとしてもよい。
【0021】
そして、前記隔壁の設けられている前記区画において、前記隔壁より先端側の空間が「第2貯留部」である。
【0022】
さらに、前記内筒部の前端縁のうち前記第2貯留部に臨む部分には切り欠きが設けられ、この切り欠きが前記第1貯留部と前記第2貯留部とを連絡する「換気口」となっている。この換気口を通じて、前記第1貯留部から溢れた前記内容物が、前記通気部へは流出せずに、前記第2貯留部へ流入してここで貯留されることが可能となっている。よって、前記第1貯留部では貯留しきれないほど前記リフィルから前記内容物が溢れた場合でも、前記第2貯留部によってさらに貯留することが可能となっているため、前記内容物の、前記筆記具の外部への漏出の可能性がより低減することとなっている。
【0023】
また、本願の第2の実施態様は、前記第1の実施態様の特徴に加え、前記部品には、前記仕切部の前端縁である第1当接部と、前記内筒部の内周に形成される先端側からの段部である第2当接部と、がさらに設けられているとともに、
前記軸筒には、互いに異なる形状に形成された複数のリフィルのいずれをも内蔵可能であることを特徴とする。
【0024】
すなわち、前記仕切部の前端縁が「第1当接部」となっている。また、この第1当接部より後端側において、前記内筒部の内周に形成される、先端側から見て段部となっている箇所が「第2当接部」である。換言すると、この第2当接部を境に、後端側の内接円直径は先端側の内接円直径より小さい。また、前記第1当接部の内接円直径は前記第2当接部の内接円直径より大きい。
【0025】
以上により、前記第1当接部には、より太いリフィルが当接し、また、前記第2当接部にはより細いリフィルが当接することが可能である。よって、前記軸筒には、複数種類、少なくとも2種類の太さのリフィルを内蔵することが可能となっている。
【0026】
本願の第3の実施態様は、前記第1又は第2の実施態様の特徴に加え、前記複数の区画のうちの一部の区画は、前記隔壁が設けられずに先端側から後端側まで貫通した通気部となっていることを特徴とする。
【0027】
すなわち、前記仕切部で仕切られている複数の区画のうちの一部であって、先端側から後端側までが貫通している区画が「通気部」である。換言すると、この通気部においては、先端側から後端までを遮る構造が存在しない。なお、前記部品においてこの通気部の後端側の開口部分を、通気孔と称する。これにより、通気孔から外筒部の先端側の開口部分にかけて、前記部品の内部を流通可能となっている。よって、この通気部によって、前記部品を誤飲した際にも気道が確保される。
【0028】
また、前記複数の区画のうち、前記通気部以外の区画において、前記内筒部の先端より後端側の箇所を閉塞する構造が前記した「隔壁」である。すなわち、この隔壁は、前記内筒部の先端には設けられることはないが、それより後端側の箇所であれば、たとえば後端に設けられることとしてもよい。
【0029】
さらに、本願の第4の実施態様は、前記第1から第3までのいずれかの実施態様の特徴に加え、前記軸筒は内部が視認可能な材質で形成されるとともに、
前記軸筒の先端側の内部には、前記リフィルの先端側の外径を保持する飾り部材が挿入されていることを特徴とする。
【0030】
たとえば、前記飾り部材に様々な衣装を施すことで、装飾効果を奏することができる。さらに、この飾り部材を前記リフィルに収容される前記インクの色と同色又は同系色に着色することで、その飾り部材が前記軸筒を透して視認可能となるため、インク色の表示に利用することができる。
【0031】
本願の第5の実施態様は、互いに形状が異なる、インクを収容する複数のリフィルと、
前記複数のリフィルのいずれをも内蔵可能な軸筒と、
を備えてなる筆記具セットであって、
前記軸筒の後端には、該軸筒に前記リフィルが内蔵されると該リフィルの後端に当接する部品が装着され、
前記部品には、
筒状の外筒部と、
前記外筒部より小径でかつ軸心同一であり、前端縁が前記外筒部の前端縁より後方に位置する内筒部と、
前記内筒部の後端側を閉塞する底部と、
前記底部の内面及び前記内筒部の内周面に囲まれる空間であって、前記リフィルの後端から内容物が流出した際にこれを貯留する第1貯留部と、
前記外筒部と前記内筒部との間の空間を周方向に複数の区画に仕切る複数の仕切部と、
前記仕切部の前端縁である第1当接部と、
前記内筒部の内周に形成される先端側からの段部である第2当接部と、
前記複数の区画のうちの少なくとも一部の区画において前記内筒部の先端より後端側の箇所を閉塞する隔壁と、
前記隔壁を有する区画において前記隔壁より先端側の空間である第2貯留部と、
前記内筒部の前端縁のうち前記第2貯留部に臨む部分に設けられる切り欠きであって、前記第1貯留部と前記第2貯留部とを連絡する換気口と、
が設けられているとともに、
前記第1貯留部から前記内容物が溢れた際には、該内容物は前記換気口から前記第2貯留部へ流入してここに貯留されることが可能となっていることを特徴とする。
【0032】
すなわち、本実施態様の筆記具セットとは、前記軸筒に、前記複数のリフィルのいずれかを組み合わせることで、前記筆記具が形成されるものである。
【0033】
なお、本実施態様における各構成の意義については、前記第1及び第2の実施態様における各構成と同様である。
【0034】
この筆記具セットは、たとえば、前記複数のリフィルと前記軸筒とを同梱した製品として形成することが可能である。
【0035】
本願の第6の実施態様は、前記第5の実施態様の特徴に加え、前記複数の区画のうちの一部の区画は、前記隔壁が設けられずに先端側から後端側まで貫通した通気部となっていることを特徴とする。
【0036】
この通気部の意義については、前記第3の実施態様で述べたとおりである。
【0037】
本願の第7の実施態様は、前記第5又は第6の実施態様の特徴に加え、前記軸筒は内部が視認可能な材質で形成されるとともに、
前記軸筒の先端側の内部には、前記リフィルの先端側の外径を保持する飾り部材が挿入されていることを特徴とする。
【0038】
なお、本実施態様における各構成の意義については、前記第4の実施態様における各構成と同様である。
【0039】
本願の第8の実施態様は、前記第5から第7までのいずれかの実施態様の特徴に加え、前記軸筒は、後端にノックボタンを備えたノック式筆記具用の軸筒であることを特徴とする。
【0040】
すなわち、筆記具セットを構成する軸筒は、着脱可能なキャップを備えた筆記具用の軸筒であってもよいが、本実施態様では、これに換えて、又はこれに加えて、ノック式筆記具用の軸筒を備えることとしている。
【発明の効果】
【0041】
本願の各実施態様は、上述のように構成されているので、以下に記す効果を奏する。
【0042】
すなわち、前記第1の実施態様によると、前記リフィルの後端から流出した前記内容物を前記第1貯留部に貯留するようになっている。これにより、前記内容物が逆流しても前記通気部から外部へ漏出することを防止できる。
【0043】
さらに、前記第1貯留部から溢れた前記インクは、前記換気口から第2貯留部に流入して貯留され、通気部へは流出しないようになっている。これにより、インクが第1貯留部から溢れてもなお前記の通気部から外部へ漏出することを防止できる。
【0044】
また、前記第2の実施態様によると、前記第1の実施態様の効果に加え、複数の形状のリフィルを前記軸筒内に収容することができる。
【0045】
さらに、前記第3の実施態様によると、前記第1又は第2の実施態様の効果に加え、空気が前記通気部によって前記部品の内部を流通するようになっている。これにより、特に乳幼児が気道に前記部品を詰まらせた際に気道を確保して窒息を防止することができる。
【0046】
そして、前記第4の実施態様によると、前記第1から第3までのいずれかの実施態様の効果に加え、前記飾り部材により、様々な意匠効果や、前記リフィルが内蔵する前記インクの色の表示効果を発揮させることができる。
【0047】
また、前記第5の実施態様によると、
前記リフィルの後端から流出した前記内容物を前記第1貯留部に貯留するようになっている。これにより、前記内容物が逆流しても前記通気部から外部へ漏出することを防止できる。
【0048】
さらに、前記第1貯留部から溢れた前記インクは、前記換気口から第2貯留部に流入して貯留され、通気部へは流出しないようになっている。これにより、インクが第1貯留部から溢れてもなお前記の通気部から外部へ漏出することを防止できる。
【0049】
また、複数の形状のリフィルを前記軸筒内に収容することができる。
【0050】
さらに、前記第6の実施態様によると、前記第5の実施態様の効果に加え、空気が前記通気部によって前記部品の内部を流通するようになっている。これにより、特に乳幼児が気道に前記部品を詰まらせた際に気道を確保して窒息を防止することができる。
【0051】
そして、前記第7の実施態様によると、前記第5又は第6の実施態様の効果に加え、前記飾り部材により、様々な意匠効果や、前記リフィルが内蔵する前記インクの色の表示効果を発揮させることができる。
【0052】
また、前記第8の実施態様によると、ノック式筆記具においても前記第5から第7までのいずれかの実施態様の効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】第1実施形態に係る筆記具の側面図(A)及び側面断面図(B)である。
図2図1の筆記具におけるリフィルの側面図(A)及び側面断面図(B)である。
図3図1の筆記具における軸筒の側面図(A)及び側面断面図(B)である。
図4図1の筆記具における飾り部材を斜視図(A)、側面断面図(B)及び底面図(C)にて示したものである。
図5図1の筆記具における部品の側面図である。
図6図5の部品の平面図である。
図7図5の部品の底面図である。
図8図5の部品を、図6及び図7におけるVIII-VIII断面にて示したものである。
図9図5の部品を、図6及び図7におけるIX-IX断面にて示したものである。
図10図5の部品の斜視図であって、図6及び図7におけるX-X一部断面を示す。
図11図1の筆記具の後端部分の側面断面図である。
図12図1の筆記具の後端部分の斜視断面図である。
図13】第2実施形態に係る筆記具の側面図(A)及び側面断面図(B)である。
図14図13の筆記具におけるリフィルの側面図(A)、側面断面図(B)である。
図15図13の筆記具における筆記具の後半部分の側面断面図である。
図16】第3実施形態に係る筆記具セットの正面図である。
図17】第4実施形態に係る筆記具の側面図(A)及び側面断面図(B)である。
図18】第5実施形態に係る筆記具の側面図(A)及び側面断面図(B)である。
図19図17及び図18の筆記具における部品の側面図(A)、前方斜視図(B)及び後方斜視図(C)である。
図20図19の部品の底面図である。
図21図19の部品を、図20におけるXXI-XXI断面にて示したものである。
図22図19の部品を、図20におけるXXII-XXII断面にて示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明の各実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図に記された符号のうち、複数の図面において共通するものについては、以下の各図の説明において記述がない場合であっても同じ技術的意義を有するものである。また、側面図として示した図面においては、図面の左側が平面側かつ先端側であり、図面の右側が底面側かつ後端側である。
【0055】
(第1実施形態)
<外観>
図1(A)は、第1実施形態に係る筆記具10の側面図である。本図に示すように、本実施形態の筆記具10は、ボールペンとして構成されている。この筆記具10は、後端に尾栓としての部品40が装着されている軸筒30の先端に、クリップ37を備えたキャップ36が装着された外観を呈している。
【0056】
図1(B)は、前記筆記具10の側面断面図である。本図に示すように、本実施形態の筆記具10においては、インク24を収容するリフィル20が前記軸筒30に内蔵されており、また、このリフィル20の後端は前記部品40に当接して支持されている。このリフィル20において前記インク24を収容するインク収容管23の先端には、継手22を介してボールペンチップ21が装着されている。このボールペンチップ21の先端には樹脂玉26が装着されている。この樹脂玉26は、前記ボールペンチップ21の先端を保護する目的で装着されるもので、前記リフィル20の使用前に除去されるものである。さらに、前記リフィル20に収容されている前記インク24の後端にはグリース状のフォロワー25が注入されている。なお、前記リフィル20の先端側には、前記軸筒30の先端側の内面との間に飾り部材70が挿入されるが、これについては後述する。
【0057】
<リフィル20>
図2(A)は、前記筆記具10における前記リフィル20の側面図である。前述したように、前記リフィル20は、円柱状の合成樹脂製のインク収容管23の先端に、合成樹脂製の継手22を介して金属製のボールペンチップ21が装着された外観を呈している。
【0058】
図2(B)は、前記筆記具10における前記リフィル20の側面断面図である。前述したように、インク収容管23には、前記したようにインク24が収容されている。本実施形態のインク24は、水性ゲルインクである。このインク24に加え、その後端にはグリース状のフォロワー25が注入されている。なお、このフォロワー25の中に、比重が同じになるように調整した合成樹脂製の円柱状のフロートを浮遊させることとしてもよい。
【0059】
<軸筒30>
図3(A)は、前記筆記具における前記軸筒30の側面図である。前記軸筒30は、内部が視認可能な合成樹脂を材質として筒状に形成されている。前記軸筒30の先端部分は、一旦外径が縮小し、さらにその先で外周が先細に縮径されたテーパー部31となっている。
【0060】
図3(B)は、前記軸筒30の側面断面図である。前記テーパー部31の先端には開口部35が形成され、ここから前記リフィル20の前記ボールペンチップ21が突出する(図1(B)参照)。また、前記軸筒30の前記テーパー部31を覆うように、前記キャップ36が着脱自在に装着される(図1(A)及び図1(B)参照)。
【0061】
また、図3(B)に示すように、軸筒30の後端部分には、その内周が後端へ向かって段状に拡径された段状凹部33が形成されている。この段状凹部33の後端側の部分には、前記部品40を螺合させるための雌螺子溝34が形成されている。一方、前記軸筒の先端部分の内周面には、内方へ突出した係止突起32が形成されている。
【0062】
<飾り部材70>
図4(A)は、前記飾り部材70の外観を斜視図で示したものである。飾り部材70は、前記インク24の色と同色又は同系色に着色された合成樹脂製で、略筒状の後方部72の先端側に、外周が先細に縮径された前方部71が一体に形成された外観を呈している。前記後方部72の外周には、環状に突出した、軸筒30との振れ止めとしての制振突条73が形成されている。さらに、この制振突条73の後端側であって、前記後方部72の外周後端には、係止突条78が形成されている。この係止突条78は、前記軸筒30に装着する際、前記係止突起32を弾性変形にて乗り越えるようにしてその先端側に位置することで、これら係止突起32と係止突条78とが互いに係止することとなっている。また、前記前方部71の先端には、前方開口74が形成されている。
【0063】
図4(B)は前記飾り部材70の側面断面図である。また、図4(C)は前記飾り部材70の底面図である。これら両図に示すように、前記飾り部材70の内周面は、その先端側が段状に縮径した縮径段部75となっており、ここからさらに小径の孔としての前記前方開口74が形成されている。この前方開口74を、前記リフィル20の前記ボールペンチップ21が貫通する(図1(B)参照)。また、前記後方部72の後端は、前記前方開口74より大径の後方開口76となっている。さらに、前記飾り部材70の内周面には、長手方向に沿った6本の内方リブ77が、軸心に対して等配されるようにして内方に突設されている。これらの内方リブ77は、前記リフィル20の前記継手22の外周を支持する(図1(B)参照)。
【0064】
以上の構成により、前記飾り部材70は、前記リフィル20の先端部分の外径を保持する機能に加え、前記したように前記インク24の色と同色又は同系色に着色されているため、前記リフィル20に収容されている前記インク24の色を表示する機能も兼ねている。
【0065】
<部品40>
図5は、前記筆記具10における前記部品40の側面図である。本図に示すように、前記部品40においては、側面視では略円筒状の外観を呈する外筒部50が視認される。この外筒部50の後端側の外周面には、長手方向に沿って6本の凸部53が等配されて突設されている。また、外筒部の先端側の外周面はやや小径に形成され、この部分が前記軸筒30に装着された際に、段状凹部33(図3(B)参照)と嵌合する嵌合部52となっている。この嵌合部52の後方側の部分には、前記雌螺子溝34と螺合するための雄螺子溝51が形成されている。
【0066】
図6は、前記部品40の平面図である。図7は、前記部品40の底面図である。図8は、図6及び図7におけるVIII-VIII断面図である。図9は、図6及び図7におけるIX-IX断面図である。そして、図10は、前記部品40の斜視図であって、図6及び図7におけるX-X一部断面が示されている。
【0067】
これら図6図10に示すように、前記部品40は、より大径の筒状の外筒部50と、この外筒部50に収容される、より小径の筒状の内筒部60とを有している。より詳細には、前記内筒部60は、前記外筒部50の中に軸心同一で位置している(図6及び図7参照)。また、前記内筒部60の開放した前端は、前記外筒部50の開放した前端より後端寄りに位置している(図8図10参照)。さらに、前記内筒部60の後端側は、底部41によって閉鎖している(図7図10参照)。なお、前記底部41は先端側からも視認可能である(図6参照)。
【0068】
なお、前記底部41は、前記外筒部50の後端側の面と捉えることもできる。すなわち、前記外筒部50の前記底部41は、いくつかの開口部(後述する通気孔44(図7参照))を備えることで、少なくとも前記内筒部60の後端側を閉塞している、ということもできる。このように捉えると、前記底部41は、前記外筒部50の後端側の筒口において少なくとも中心部分を閉塞する部分であり、この底部41の前記中心部分の内面から先端側に突出する筒状の構造が、前記内筒部60である、ともいえる。そして、前記底部の内面及び前記内筒部60の内周面に囲まれる空間を、第1貯留部61と称する(図8図10参照)。
【0069】
前記外筒部50と前記内筒部60とは、等配された6本の仕切部42(図6及び図7参照)で長手方向に沿って連結されている。これらの仕切部42によって、前記外筒部50と前記内筒部60との間の空間は周方向に6つの区画に仕切られている。
【0070】
これら6つの区画のうちの一部、具体的には4つにおいては、先端側から後端側までが完全に貫通している(図9参照)。これら4つの区画は、通気部43と称される(図6及び図7参照)。これら通気部43の後端縁は、底面視(図7参照)にて孔として認識できる。これらの孔を通気孔44と称する。この通気部53によって、この通気孔44から前記外筒部50の先端側の筒口にかけて空気が前記部品40の内部を流通し得るようになっており、万一、乳幼児がこの部品40を誤飲して気道を詰まらせた場合、窒息を防止することができる。
【0071】
また、前記6つの区画のうちの、前記通気部43以外の残りの2つの区画においては、前記内筒部60の先端より後端側の箇所が隔壁46で閉塞されている(図6及び図7参照)。これら2つの区画において、この隔壁46より先端側の空間を、第2貯留部45(図10参照)と称する。なお、前記内筒部60の前端縁のうち、前記第2貯留部45に臨む部分には切り欠きが設けられる。この切り欠きが、前記第1貯留部61と前記第2貯留部45とを連絡する換気口62である。筆記によって前記リフィル20の前記インク24が減少した際には、外部の空気がこの換気口62から前記インク収容管23に流入することとなっている。
【0072】
前記仕切部42の先端面は、第1当接部47と称される。この第1当接部47から先端方向に、内方に突出する前方リブ54が6本延設されている(図8図10参照)。これらの6本の前方リブ54は、前記リフィル20の後端部分の外周に当接する部分である。
【0073】
また、前記第1貯留部61の後端側の部分の内周面に、6本の後方リブ64が長手方向に沿って突設されており(図10参照)、これら後方リブ64の先端面は、第2当接部63と称される(図6及び図10参照)。換言すると、前記第1当接部47より後端側において、前記内筒部60の内周に形成される、先端側から見て段部となっている箇所が第2当接部63である。すなわち、この第2当接部63を境に、後端側の内接円直径は先端側の内接円直径より小さい。また、前記第1当接部47の内接円直径は前記第2当接部63の内接円直径より大きい。
【0074】
前記部品40は、上記した構造が、合成樹脂により一体に形成されたものである。
【0075】
<部品40の装着>
本実施形態では、図3(A)及び図3(B)に示す前記軸筒30に、まず、図4(A)~図4(C)に示す前記飾り部材70が装着される。次に、前記軸筒30の後端から、図2(A)及び図2(B)に示す前記リフィル20が装着される。そして、前記軸筒30の後端の前記雌螺子溝34に、図5図10に示す前記部品40の前記雄螺子溝51を螺合させる。このようにして、前記筆記具10の後端部分の側面断面図である図11に示すように、前記部品40が前記軸筒30に装着される。この状態においては、前記インク収容管23の後端は、前記第1当接部47に当接した状態で前記部品40に支持されている。なお、前記リフィル20の全長の公差部分は、前記軸筒30への前記部品40の螺入具合によって調節することが可能である。
【0076】
図12は、前記筆記具10の後端部分の斜視断面図である。前述したように、前記第1当接部47は、前記インク収容管23の後端縁に当接している。また、前記底部41の内面及び前記内筒部60の内周面に囲まれる空間は、前述したように第1貯留部61となっている。この第1貯留部61には、前記フォロワー25や、それに加えて前記インク24のような内容物が前記インク収容管23の後端から流出した場合、これを貯留することが可能となっている。なお、前記第1当接部47と前記インク収容管23の後端縁との間には、表面張力により前記内容物が滲出できない程度の遊びを有していてもよい。
【0077】
また、前記前方リブ54と前記リフィル20の後端部分の外周との間には、表面張力により前記内容物が滲出できない程度の遊びを有するように形成してもよい。すなわち、前記軸筒30の後端に前記部品40を装着する際に、6本の前記前方リブ54の内側に、前記リフィル20の後端部分が緩嵌されるように形成してもよい。
【0078】
なお、前記部品40の固定方法は前記したような螺合には限らない。たとえば、前記外筒部50の外周及び前記軸筒30の内周にそれぞれ、前記雄螺子溝51及び前記雌螺子溝34の代わりに突起を設け、該突起同士を係合させることにより前記部品40を固定してもよい。あるいは、前記雄螺子溝51及び前記雌螺子溝34の代わりに、前記外筒部50の外周又は軸筒30の内周のいずれか一方に突起を設けるとともに他方には溝を設け、該溝に該突起を嵌合させることにより前記部品40を固定してもよい。あるいは、接着剤により前記部品40を前記軸筒30に接着させて固定してもよいし、レーザー等を用いて前記部品40と前記軸筒30とを溶着させて固定してもよい。あるいは、前記前方リブ54が前記リフィル20の後端部分の外周に圧着するように形成してもよい。すなわち、前記軸筒30の後端に前記部品40を装着する際に、6本の前記前方リブ54の内方に前記リフィル20の後端部分を圧入するように、前記部品40を装着することとしてもよい。
【0079】
<内容物の逆流>
図12を参照しつつ、前記インク収容管23に収容されている、前記インク24及び前記フォロワー25のような内容物の逆流について説明する。前記ボールペンチップ21を上向きにした状態で前記筆記具10に衝撃を与えたり、あるいは長時間放置したりすると、前記インク収容管23の内容物が前記部品40へ向けて逆流することがある。このような逆流した前記内容物は、前記内筒部60に流入して前記第1貯留部61に貯留される。
【0080】
前記内容物の前記第1貯留部61への流入がさらに続き、前記第1貯留部61に溜まった前記内容物が前記内筒部60の前記換気口62まで溢れると、前記内容物はこの換気口62を通じて前記第2貯留部45へ流入する。そして、この第2貯留部45に流入した前記内容物は、前記仕切部42に遮られて隣接する前記通気部43へ流出されず、この第2貯留部45に貯留され続ける。このように、前記内容物が逆流しても、前記部品40の前記通気孔44から漏出することが防止できる。
【0081】
(第2実施形態)
<外観>
図13(A)は、第2実施形態に係る筆記具10の側面図である。本図に示すように、本実施形態の筆記具10は、ボールペンとして構成されている。この筆記具10は、後端に尾栓としての部品40が装着されている軸筒30の先端に、クリップ37を備えたキャップ36が装着された外観を呈している。
【0082】
図13(B)は、前記筆記具10の側面断面図である。本図に示すように、本実施形態の筆記具10においては、インク24を収容するリフィル20が前記軸筒30に内蔵されており、また、このリフィル20の後端は前記部品40に当接して支持されている。このリフィル20において前記インク24を収容するインク収容管23の先端には、ボールペンチップ21が装着されている。このボールペンチップ21の先端には樹脂玉26が装着されている。この樹脂玉26は、前記ボールペンチップ21の先端を保護する目的で装着されるもので、前記リフィル20の使用前に除去されるものである。なお、前記リフィル20の先端側には、前記軸筒30の先端側の内面との間に飾り部材70が挿入されるが、これについては前記第1実施形態と同様である(図4(A)~図4(C)参照)。
【0083】
<リフィル20>
図14(A)は、前記筆記具10における前記リフィル20の側面図である。前述したように、前記リフィル20は、円柱状の合成樹脂製のインク収容管23の先端に、金属製のボールペンチップ21が装着された外観を呈している。
【0084】
図14(B)は、前記筆記具10における前記リフィル20の側面断面図である。前述したように、インク収容管23には、前記したようにインク24が収容されている。本実施形態のインク24は、油性インクである。なお、本実施形態におけるインク収容管23は、前記第1実施形態におけるインク収容管23(図2(A)及び図2(B)参照)よりも細径である。
【0085】
<軸筒30>
前記軸筒30については、前記第1実施形態と同様である(図3(A)及び図3(B)参照)。
【0086】
<部品40>
前記部品40については、前記第1実施形態と同様である(図5図10参照)。
【0087】
<部品40の装着>
本実施形態では、前記軸筒30(図3(A)及び図3(B)参照)に、まず、前記飾り部材70(図4(A)~図4(C))が装着される。次に、前記軸筒30の後端から、図14(A)及び図14(B)に示す前記リフィル20が装着される。そして、前記軸筒30の後端の前記雌螺子溝34に、前記部品40の前記雄螺子溝51を螺合させる。このようにして、前記筆記具10の後端部分の側面断面図である図15に示すように、前記部品40が前記軸筒30に装着される。この状態においては、前記インク収容管23の後端は、前記第2当接部63に当接した状態で前記部品40に支持されている。なお、前記リフィル20の全長の公差部分は、前記軸筒30への前記部品40の螺入具合によって調節することが可能である。
【0088】
(第1実施形態及び第2実施形態の総括)
以上述べたとおり、前記軸筒30、前記飾り部材70及び前記部品40については前記第1実施形態及び前記第2実施形態において共通の構造を有している。そして、この共通の構造で、前記第1実施形態のような比較的太径の前記リフィル20、及び、前記第2実施形態のような比較的細径の前記リフィル20といった、異なる形状のリフィル20、20のいずれをも内蔵可能となっている。なお、いずれの前記リフィル20の場合でも、その長さの公差については前記部品40の前記軸筒30への螺入具合で微調整が可能となっている。
【0089】
(筆記具セット80)
図16は、第3実施形態に係る筆記具セット80の正面図である。この筆記具セット80は、前記部品40及び前記クリップ37を備えた前記キャップ36が装着された前記軸筒30と、前記第1実施形態及び前記第2実施形態における各リフィル20、20とが、透明樹脂製の包装81に同梱されたものである。各リフィル20、20は、異なるインク種であるか、又は、インク粘度若しくはインク色が異なっている。しかし、筆記可能距離がほぼ等しくなるようなインク量が各リフィル20、20には収容されているので、各リフィル20、20の使用頻度がほぼ等しい場合、一方のリフィルのみが先に使い終わるようなことは起こりにくくなり、ユーザーの利便性が向上する。なお、異なるインク種とは、インクに用いる主溶剤が異なるものを示し、いわゆる油性インク、水性インク、エマルジョンインク等をいう。
【0090】
使用の際には、前記包装81より前記軸筒30及び各リフィル20、20を取り出し、前記軸筒30から前記部品40を取り外した上で、各リフィル20、20のうちのいずれかを、前記軸筒30に挿入し、前記したように前記部品40を取り付ける。これによって、前記第1実施形態に係る筆記具10(図1(A)及び図1(B)参照)又は前記第2実施形態に係る筆記具10(図13(A)及び図13(B)参照)のいずれかが形成される。
【0091】
(第4実施形態)
<外観>
図17(A)は、第4実施形態に係る筆記具10の側面図である。本図に示すように、本実施形態の筆記具10は、軸筒30の後端からノックボタンとしてのノックカバー39が突出した、いわゆるノック式筆記具として構成されている。この筆記具10の軸筒30の後端側面には、クリップ37が一体に形成されている。また、軸筒30の先端には、外周が先細に縮径されたテーパー部31となっている先軸30Aが装着されている。
【0092】
図17(B)は、図17(A)の筆記具10の側面断面図である。本図に示すように、本実施形態の筆記具10においては、インク24を収容するリフィル20が前記軸筒30に内蔵されており、また、このリフィル20の後端に回転子としての部品40が装着されている。このインク24は水性ゲルインクであり、インク収容管23内のインク24の後端にはグリース状のフォロワー25が注入されている。本実施形態では、リフィル20の後端は、この部品40の先端側を構成する外筒部50に抱持されている。さらに、この部品40の後端には、リフィル20を出没させるためのノック棒38、及び色や機能表示部材としてノック棒38に嵌合しているノックカバー39を備えている。このリフィル20におけるインク収容管23の長さ及び外径は、前記第1実施形態におけるリフィル20(図2(A)及び(B)参照)と同様であり、リフィル20を構成する各部についても前記第1実施形態と同様である。
【0093】
先軸30Aの後方部分は、軸筒30の先端内周面に螺入されて固定されており、前方部分が前記したテーパー部31となっている。このテーパー部31の先端には開口部35が形成され、ここからリフィル20のボールペンチップ21が、ノックカバー39への操作に伴い出没する。なお、本実施形態では、リフィル20の継手22(図2(B)参照)と、先軸30Aの開口部35のやや後方に形成されている段部との間に、ノックスプリング27が介装されている。
【0094】
リフィル20の先端側には、軸筒30の先端側の内面との間に、弾性を有する環状の飾り部材70が挿入されており、リフィル20の軸筒30内部における振れ止めとして機能している。
【0095】
(第5実施形態)
<外観>
図18(A)は、第5実施形態に係る筆記具10の側面図である。本図に示すように、本実施形態の筆記具10は、軸筒30の後端からノックボタンとしてのノックカバー39が突出した、いわゆるノック式筆記具として構成されている。この筆記具10の軸筒30の後端側面には、クリップ37が一体に形成されている。また、軸筒30の先端には、外周が先細に縮径されたテーパー部31となっている先軸30Aが装着されている。
【0096】
図18(B)は、図18(A)の筆記具10の側面断面図である。本実施形態の筆記具10においては、前記第2実施形態におけるリフィル20(図14(A)及び(B)参照)とほぼ同様の構造を有するリフィル20が装着されている他、軸筒30、先軸30A、回転子としての部品40、ノック棒38及びノックカバー39の構造は前記した第4実施形態と同じである。このリフィル20に収容されているインク24は油性インクである。なお、本実施形態では、リフィル20の後端は、この部品40の後方側を構成する内筒部60に抱持されている。また、本実施形態では、リフィル20のインク収容管23の先端付近において外方に突出するように形成された隆起部23Aと、先軸30Aの開口部35のやや後方に形成されている段部との間に、ノックスプリング27が介装されている。
【0097】
リフィル20の先端側には、軸筒30の先端側の内面との間に、弾性を有する平板環状の飾り部材70が挿入されている。この飾り部材70の外径は軸筒30の内径より大きく形成されており、リフィル20が軸筒30に挿入された状態では外周側が軸心方向へ撓んだ状態となることで、リフィル20の軸筒30内部における振れ止めとして機能している。
【0098】
(部品40)
前記した回転子としての前記部品40は、前記第4実施形態及び前記第5実施形態で共通である。図19(A)は、その部品40の側面図であり、図19(B)はその前方斜視図であり、図19(C)はその後方斜視図である。これらの図に示すように、前記部品40の前方部分は、側面視において略円筒状の外観を呈する外筒部50となっている。また、この外筒部50の後方には、外筒部50より小径でかつ軸心同一の内筒部60が一体に形成されている。この内筒部60の前端縁68は、図19(B)に示すように、外筒部50の底面から僅かに前方へ突出している。この内筒部60の後端からは、より小径な略円柱状の接続突起67が突設されている。この接続突起67は、図17(B)及び図18(B)に示すように後方に位置するノック棒38との接続に関与する部分である。また、この内筒部60の外側面には、三方に等配され(図19(C)参照)、長手方向に沿って形成された側面リブ65が形成されている。この側面リブ65の後端面は、内筒部60の後端面とともに、後方に位置するノック棒38との間でカム動作に関与するカム歯66を構成する。
【0099】
図20は、前記部品40の平面図である。図21は、図20におけるXXI-XXI断面図である。図22は、図20におけるXIII-XIII断面図である。
【0100】
これら図20図22に示すように、前記部品40は、より大径の筒状の外筒部50と、大部分がこの外筒部50の後方に位置するとともに、前端縁68の部分のみがこの外筒部50の内部に位置する、より小径の筒状の内筒部60とを有している。前記内筒部60は、前記外筒部50と軸心同一である(図20参照)。また、前記内筒部60の開放した前端は、前記外筒部50の開放した前端より後端寄りに位置している(図21参照)。さらに、前記内筒部60の後端側は、底部41によって閉鎖している(図20図22参照)。なお、前記底部41は先端側からも視認可能である(図20参照)。内筒部60の後端からは、前記した接続突起67が突設されている。
【0101】
そして、前記底部の内面及び前記内筒部60の内周面に囲まれる空間を、第1貯留部61と称する(図20図22参照)。
【0102】
前記外筒部50の内側面と前記内筒部60の前端縁68とは、等配された6本の仕切部42(図20参照)で連結されている。これらの仕切部42によって、前記外筒部50と前記内筒部60との間の空間は周方向に6つの区画に仕切られている。
【0103】
これらの6つの区画は、前記内筒部60の前端縁68より後端側の箇所が隔壁46で閉塞されている(図20及び図21参照)。この隔壁46で閉塞されているこれら6つの区画を、第2貯留部45(図20及び図21参照)と称する。なお、これら6つの区画の内、軸心を挟んで対向する2つの区画においては前記内筒部60の前端縁68に切り欠きが設けられている。この切り欠きが、前記第1貯留部61と前記第2貯留部45とを連絡する換気口62である。筆記によって前記リフィル20の前記インク24が減少した際には、外部の空気がこの換気口62から前記インク収容管23に流入することとなっている。
【0104】
前記仕切部42の先端面は、第1当接部47と称される。この第1当接部47から先端方向に、内方に突出する前方リブ54が6本延設されている(図20図22参照)。これらの6本の前方リブ54は、前記リフィル20の後端部分の外周に当接する部分である。
【0105】
また、前記第1貯留部61の後端側の部分の内周面に、6本の後方リブ64が長手方向に沿って突設されており(図20図22参照)、これら後方リブ64の先端面は、第2当接部63と称される(図20図22参照)。換言すると、前記第1当接部47より後端側において、前記内筒部60の内周に形成される、先端側から見て段部となっている箇所が第2当接部63である。すなわち、この第2当接部63を境に、後端側の内接円直径は先端側の内接円直径より小さい。また、前記第1当接部47の内接円直径は前記第2当接部63の内接円直径より大きい。
【0106】
前記部品40は、上記した構造が、合成樹脂により一体に形成されたものである。
【0107】
<部品40の装着>
本実施形態では、前記部品40の接続突起67に、前記ノック棒38(図17及び図18参照)が外挿された状態で、軸筒30の先端から後方へ挿入される。そして、軸筒30の後端から突出したノック棒38に、図17及び図18に示すようにノックカバー39が装着される。
【0108】
そして、前記第4実施形態においては、より太径のリフィル20(図2(A)及び図2(B)参照)に飾り部材70(図17(B)参照)を外挿してから、リフィル20の後端側が軸筒30の先端から挿入される。そしてリフィル20の後端は部品40の外筒部50に進入し、第1当接部47に当接した状態で保持される(図17(B)参照)。このとき、飾り部材70はリフィル20の外側面と軸筒30の内側面とで挟まれた状態となることで、リフィル20の振れ止めとして機能する。この状態で、リフィル20の先端にノックスプリング27を外挿してから、軸筒30の先端に先軸30Aを螺着して、図17(A)及び図17(B)に示す筆記具10となる。
【0109】
一方、前記第5実施形態においては、より細径のリフィル20(図14(A)及び図14(B)参照)に飾り部材70(図18(B)参照)を外挿してから、リフィル20の後端側が軸筒30の先端から挿入される。そしてリフィル20の後端は部品40の外筒部50を通過して内筒部60に進入し、第2当接部63に当接した状態で保持される(図18(B)参照)。このとき、飾り部材70はリフィル20の外側面と軸筒30の内側面とで挟まれた状態となることで、リフィル20の振れ止めとして機能する。この状態で、リフィル20の先端にノックスプリング27を外挿してから、軸筒30の先端に先軸30Aを螺着して、図18(A)及び図18(B)に示す筆記具10となる。
【0110】
<第4実施形態及び第5実施形態の総括>
以上述べたとおり、前記部品40は、より太径の水性ゲルインクを収容するリフィル20(図2(A)及び図2(B)参照)にも、また、より細径の油性インクを収容するリフィル(図14(A)及び図14(B)参照)にも対応している。よって、同一の部品40、ノック棒38及びノックカバー39並びに先軸30Aが装着された同一の軸筒30に、少なくとも2種類の太さのリフィル20が装着可能となっている。なお、前記インク収容管23に収容されている、前記インク24及び前記フォロワー25のような内容物の逆流については、前記第1実施形態で説明したとおりである。
【0111】
また、前記第3実施形態で述べた筆記具セット80に、第4実施形態及び第5実施形態における軸筒30(部品40、ノック棒38、ノックカバー39及び先軸30Aとともに)を、前記第3実施形態における軸筒30の代わりに、あるいはこれとともに、包装81に同梱することとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、ボールペン、フェルトペン又はマーキングペンなどの筆記具に利用可能である。
【符号の説明】
【0113】
10 筆記具
20 リフィル 21 ボールペンチップ 22 継手
23 インク収容管 23A 隆起部 24 インク
25 フォロワー 26 樹脂玉 27 ノックスプリング
30 軸筒 30A 先軸 31 テーパー部
32 係止突起 33 段状凹部 34 雌螺子溝
35 開口部 36 キャップ 37 クリップ
38 ノック棒 39 ノックカバー
40 部品 41 底部 42 仕切部
43 通気部 44 通気孔 45 第2貯留部
46 隔壁 47 第1当接部
50 外筒部 51 雄螺子溝 52 嵌合部
53 凸部 54 前方リブ
60 内筒部 61 第1貯留部 62 換気口
63 第2当接部 64 後方リブ 65 側面リブ
66 カム歯 67 接続突起 68 前端縁
70 飾り部材 71 前方部 72 後方部
73 制振突条 74 前方開口 75 縮径段部
76 後方開口 77 内方リブ 78 係止突条
80 筆記具セット 81 包装
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