(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】伝統的なDancheongにおけるHayeob顔料を代替することができる緑青顔料の調製方法
(51)【国際特許分類】
C09C 1/62 20060101AFI20240613BHJP
C09C 3/04 20060101ALI20240613BHJP
C09C 3/06 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C09C1/62
C09C3/04
C09C3/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023139590
(22)【出願日】2023-08-30
【審査請求日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】10-2023-0050520
(32)【優先日】2023-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 National Research Institute of Cultural Heritageのウェブサイト(https://www.nrich.go.kr/kor/boardView.do?menuIdx=283&bbscd=33&bbs_idx=43419&boardTypeGubun=1),令和4年8月30日 「伝統人工無機顔料」,National Research Institute of Cultural Heritage,令和4年12月9日 National Research Institute of Cultural Heritageのウェブサイト(https://www.nrich.go.kr:9165/seoul/boardView.do?menuIdx=283&bbscd=33&bbs_idx=46256&boardTypeGubun=1),令和5年1月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523330341
【氏名又は名称】ナショナル リサーチ インスティチュート オブ カルチュラル ヘリテージ
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL RESEARCH INSTITUTE OF CULTURAL HERITAGE
【住所又は居所原語表記】132 Munji-ro, Yuseong-gu, Daejeon, 34122, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン,ヨンソク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソンミョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ソンウ
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2010-0082542(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0173027(US,A1)
【文献】特開昭62-124154(JP,A)
【文献】特開平02-118082(JP,A)
【文献】特開昭61-042378(JP,A)
【文献】米国特許第05160381(US,A)
【文献】特開平9-225395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/62
C09C 3/04
C09C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑青顔料の調製方法であって、以下のステップ:
銅、ならびに、銅とスズ(Sn)、亜鉛(Zn)、および鉛(Pb)の少なくとも1とを含む銅合金の、少なくとも1を含む銅粉末を調製するステップ;および
銅粉末と塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムを含有する腐食剤とを混合することによって、銅粉末を腐食させるステップ、ここで、腐食剤が、総重量に基づき、75~90重量%の塩化ナトリウムおよび10~25重量%の塩化アンモニウムを包含する、
を含む、前記方法。
【請求項2】
腐食剤が、総重量に基づき、86~90重量%の塩化ナトリウムおよび10~14重量%の塩化アンモニウムを包含する、請求項1に記載の緑青顔料の調製方法。
【請求項3】
腐食させるステップにおいて、銅粉末および腐食剤が、1:2~1:4の重量比において混合される、請求項1に記載の緑青顔料の調製方法。
【請求項4】
調製方法が、腐食させるステップにおいて調製された腐食生成物を粉砕し、および湿式分画するステップをさらに包含する、請求項1に記載の緑青顔料の調製方法。
【請求項5】
調製方法が、粉砕されおよび湿式分画された粉末を、蒸留水と混合し、上清を除去することによって、残余の腐食剤を除去するステップをさらに包含する、請求項
4に記載の緑青顔料の調製方法。
【請求項6】
調製方法が、残余の腐食剤が除去された粉末を精製するステップをさらに包含する、請求項
5に記載の緑青顔料の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の背景
1.本発明の分野
本発明は、緑青顔料の調製方法に関する。
2.関連技術の記載
古代より、ヒトは、芸術品、例えば、絵画、壁画、または建築物のDancheong(木造建築物における伝統的なマルチカラー塗装)などにおいて美を表現するために様々な色の顔料を使用してきた。伝統的に使用される顔料は、主に、自然の土壌および岩石を使用して作されるが、金属、例えば、水銀、鉛、および銅などから合成的に作られる人工顔料もまた、主要な着色材料として報告されてきた。
【0002】
伝統的な人工顔料は、Eunju(朱)、Yeonbak (鉛白)、Yeondan(鉛丹)、Dongrok(緑青)、およびHoecheong(花紺青)を包含し、それらのうちDangrok(緑青)は、主に酸化銅から構成される緑の顔料として知られている。加えて、伝統的な緑の顔料として、文化遺産の伝統的なDancheongにおいてだけではなく、gwaebul(大きな仏教掛軸)、寺社の壁画、および絵画においても使用され、ならびに韓国の古代の文献記録において言及されている緑の顔料であるHayeobがある。しかしながら、それは文献において暗緑色としてのみ知られ、その組成物または特徴を同定する記録はなく、および自然から回収される天然顔料であるか、または合成されおよび製作される人工顔料であるか、明確ではない。しかしながら、国内絵画の文化遺産に関して行われた顔料の分析研究の結果によると、Hayeob顔料が主要な構成要素として主に銅(Cu)および(Cl)からなることが示唆され、および粒子形態学の分析はそれがおそらく人工的に合成されたDangrok(緑青)顔料であることを指し示している。
【0003】
古代の文献、例えば、Cheon-Gong-Gae-Mul(天工開物)、Boncho-Gang-Mok(本草綱目)、およびImwon-Gyeongje-Ji(林園經濟志)などにおいて、銅板を酢と反応させることによってDongrok(緑青顔料)を製作する方法を確認することが可能である。Kangら(2020)は、酢酸を使用して銅板を腐食させる酸腐食方法を適用することによって緑青顔料を製作し、および特徴付けする研究を行った。調査結果によると、酸エッチング方法によって製造された銅は、ポリゴナール粒子形状を呈し、酢酸銅構造または炭酸銅構造を有する。加えて、銅をベースとした二次生成物として単斜晶結晶構造を有するホーガナイト[Cu(CH3COO)2・H2O]が主要な構成物質無機物として同定された。韓国における絵画の文化遺産に関する顔料分析の研究において、マラカイト[Cu2CO3(OH)2]、アタカマイト[Cu2Cl(OH)3]、およびボタラッカイト[Cu2Cl(OH)3]のみが報告されたが、ホーガナイトは全く報告されず、絵画の文化遺産において使用されるものとは異なる顔料の可能性を示唆している。
【0004】
他方、古い文献記録の調査の結果によると、Dangrok(緑青)の製作方法は、酢を使用して銅板を腐食させる酸腐食方法だけではなく、塩素(Cl)化合物、または、酢および塩素化合物の組み合わせを使用する塩化物腐食方法を包含する。これは古代の文献において見出されることができ、Shinsu Boncho(新修本草)は、銅粉末を腐食剤(塩化ナトリウム、塩化アンモニウム)と混合し、次いでそれを自然と腐食させる方法として記載されるが、詳細な記載はない。さらにまた、塩化物腐食方法に関する文献記録は多くはないので、Dangrok(緑青)を複製するための製作方法に関するさらなる調査が必要である(非特許文献1を参照)。
結果的に、本発明者らは、伝統的なDancheong Hayeob顔料を代替することができるDongrok(緑青)顔料を製作するために古い文献記録および調査データを調査し、これに基づく製作技術を保証するのに必要な条件を探求し、保証された製造技術を適用することによって緑青顔料を製造し、本発明を完成させた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Oh, Joonsuk; Lee, Saerom; Hwang, Minyoung; 2020, Review of Copper Trihydroxychloride, a Green Pigment Composed of Copper and Chlorine. MUNHWAJAE, 53(2), pp. 64~87.
【発明の概要】
【0006】
本発明の概要
緑青顔料の調製方法を提供することが本発明の目的である。
上記の目的を達成するために、本発明の一側面において、本発明は、伝統的なDancheong Hyeob顔料を代替することができる緑青顔料の調製方法であって、以下のステップ:
銅;ならびに、銅とスズ(Sn)、亜鉛(Zn)、および鉛(Pb)の少なくとも1とを含む銅合金の、少なくとも1を含む銅粉末を調製するステップ;および
銅粉末と塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムを含有する腐食剤とを混合することによって、銅粉末を腐食させるステップ、ここで、腐食剤が、総重量に基づき、75~90重量%の塩化ナトリウムおよび10~25重量%の塩化アンモニウムを包含する、
を含む、前記方法を提供する。
【0007】
このとき、腐食剤は、総重量に基づき、86~90重量%の塩化ナトリウムおよび10~14重量%の塩化アンモニウムを包含し得る。
上記の腐食させるステップにおいて、銅粉末および腐食剤は、1:2以上の重量比において混合され得る。
腐食は、腐食テスターを使用する人工的な腐食によって実施され得る。
【0008】
緑青顔料の調製方法は、腐食させるステップにおいて調製された腐食生成物を粉砕し、および湿式分画するステップをさらに包含する。
緑青顔料の調製方法は、粉砕されおよび湿式分画された粉末を、蒸留水と混合し、上清を除去することによって、残余の腐食剤を除去するステップをさらに包含する。
緑青顔料の調製方法は、残余の腐食剤が除去された粉末を精製するステップをさらに包含する。
【0009】
本発明の別の側面において、本発明は、上記の調製方法を使用して調製される緑青顔料を提供する。
緑青顔料は、伝統的な着色のための緑の顔料であり得る。
【0010】
有利な効果
本発明は、様々な絵画の文化遺産、例えば、Dancheong、仏教絵画、寺社の壁画、および李氏朝鮮(Joseon Dynast)の肖像画などにおいて幅広く使用されてきた伝統的な緑の顔料である、Hayeobを代替し得る緑青顔料を提供するという有意な利点を有する。
本発明の調製方法は、様々な絵画の文化遺産に拡張されおよび適用され得、ならびにまた、国内外で必要とされる高価な天然顔料の代替顔料に関する研究の足掛かりとなることによって伝統的な技術を継続させることに大いに貢献し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な記載
【
図1】
図1は、調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)を観察した結果を示す一連の写真である。
【
図2】
図2は、調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)を自然に腐食させることによって調製された顔料の色を観察した結果を示す一連の写真である。
【
図3】
図3は、調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)を腐食剤と混合することによって人工的に腐食させる前に顔料の色を観察した結果を示す一連の写真である。
【
図4】
図4は、調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)を腐食剤と混合することによって人工的に腐食させた後に顔料の色を観察した結果を示す一連の写真である。
【0012】
【
図5A】
図5Aは、調製例1~5の銅粉末CUの人工的な腐食の期間に従う重量変化を評価した結果を示す一連のグラフである。
【
図5B】
図5Bは、調製例1~5の銅粉末CSの人工的な腐食の期間に従う重量変化を評価した結果を示す一連のグラフである。
【
図5C】
図5Cは、調製例1~5の銅粉末CZSの人工的な腐食の期間に従う重量変化を評価した結果を示す一連のグラフである。
【
図5D】
図5Dは、調製例1~5の銅粉末CPの人工的な腐食の期間に従う重量変化を評価した結果を示す一連のグラフである。
【
図5E】
図5Eは、調製例1~5の銅粉末CTの人工的な腐食の期間に従う重量変化を評価した結果を示す一連のグラフである。
【0013】
【
図6】
図6~10は、調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)の人工的な腐食期間を変化させることによって調製される顔料の色を観察した結果を示す写真である。
【
図7】
図6~10は、調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)の人工的な腐食期間を変化させることによって調製された顔料の色を観察した結果を示す写真である。
【
図8】
図6~10は、調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)の人工的な腐食期間を変化させることによって調製された顔料の色を観察した結果を示す写真である。
【
図9】
図6~10は、調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)の人工的な腐食期間を変化させることによって調製された顔料の色を観察した結果を示す写真である。
【
図10】
図6~10は、調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)の人工的な腐食期間を変化させることによって調製された顔料の色を観察した結果を示す写真である。
【0014】
【
図11】
図11は、調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)の人工的な腐食によって調製された顔料の色を観察した結果を示す一連の写真であり、ここで、腐食剤における塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムの比率は、0:1、1:2、1:1、2:1、および1:0である。
【
図12】
図12は、調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)の人工的な腐食によって調製された顔料の色を観察した結果を示す一連の写真であり、ここで、腐食剤における塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムの比率は、3:1、4:1、9:1、および19:1である。
【
図13】
図13は、調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)の人工的な腐食によって調製された顔料の色を観察した結果を示す一連の写真であり、ここで、腐食剤における塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムの比率は、19:1である。
【0015】
【
図14A】
図14Aは、本発明の緑青顔料の調製方法において、湿式ふるい分けプロセスに従う塩素イオンの濃度を測定した結果を示すグラフである。
【
図14B】
図14Bは、本発明の緑青顔料の調製方法において、湿式ふるい分けプロセスに従う塩素イオンの低減率を測定した結果を示すグラフである。
【
図15A】
図15Aは、本発明の緑青顔料の調製方法において、希釈プロセスにおける溶離時間に従う塩素イオンの濃度を評価した結果を示す一連のグラフである。
【
図15B】
図15Bは、本発明の緑青顔料の調製方法において、希釈プロセスにおける溶離時間に従う塩素イオンの増大率を評価した結果を示す一連のグラフである。
【0016】
【
図16A】
図16Aは、本発明の緑青顔料の調製方法において、希釈プロセスにおける75~100μmの粒子サイズを有する顔料について残余の腐食の除去率を評価した結果を示すグラフである。
【
図16B】
図16Bは、本発明の緑青顔料の調製方法において、希釈プロセスにおける45~75μmの粒子サイズを有する顔料について残余の腐食の除去率を評価した結果を示すグラフである。
【
図16C】
図16Cは、本発明の緑青顔料の調製方法において、希釈プロセスにおける0~34μmの粒子サイズを有する顔料について残余の腐食の除去率を評価した結果を示すグラフである。
【0017】
【
図17】
図17は、本発明の緑青顔料の調製方法において、精製プロセス前後の顔料の色の比較を示す一連の写真である。
【
図18】
図18は、本発明の緑青顔料の調製方法のプロセスチャートを示す図表である。
【
図19】
図19は、顔料が
図18のプロセスチャートに従う本発明の緑青顔料の調製方法を実施することによって調製されたとき、腐食剤における塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムの比率を変化させることによって調製された顔料の色の比較を示す一連の写真である。
【
図20】
図20は、
図19の色をHayeobの色と比較することによって評価した結果を示す一連のグラフである。
【0018】
【
図21】
図21は、本発明の緑青顔料の調製方法によって調製された緑の顔料を示す一連の写真である。
【
図22】
図22は、本発明の緑青顔料の調製方法によって調製された緑の顔料の収率を示すグラフである。
【
図23A】
図23Aは、本発明の緑青顔料の調製方法によって調製されたMサイズの緑の顔料の色度を示す一連のグラフである。
【
図23B】
図23Bは、本発明の緑青顔料の調製方法によって調製されたSサイズの緑の顔料の色度を示す一連のグラフである。
【
図24】
図24は、本発明の緑青顔料の調製方法によって調製された緑の顔料の粒子サイズ分布を示す一連のグラフである。
【0019】
【
図25】
図25は、本発明の緑青顔料の調製方法によって調製された緑の顔料を、倍率顕微鏡を用いて観察した結果を示す一連の写真である。
【
図26】
図26は、本発明の緑青顔料の調製方法によって調製された緑の顔料を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を示す一連の写真である。
【
図27】
図27は、本発明の緑青顔料の調製方法によって調製された緑の顔料の油吸収を評価した結果を示すグラフである。
【
図28】
図28は、本発明の緑青顔料の調製方法によって調製された緑の顔料を用いたX線蛍光分析の結果を示すグラフである。
【
図29】
図29は、本発明の緑青顔料の調製方法によって調製された緑の顔料を用いたX線回折分析の結果を示すグラフである。
【0020】
【
図30】
図30は、本発明の緑青顔料の調製方法によって調製された緑の顔料の安定性を評価するために、顔料上のUV照射の蓄積された量に従う色差(△E)を算出した結果を示すグラフである。
【
図31】
図31は、本発明の緑青顔料の調製方法によって調製された緑の顔料の安定性を評価するために、促進耐候性試験前後の色の比較を示す一連の写真である。
【
図32】
図32は、劣化前後の本発明の緑青顔料の調製方法によって調製された緑の顔料の色度と、文化遺産の場所において測定される伝統的なDancheong Hayeob顔料の色度との比較評価の結果を示すグラフである。
【0021】
好ましい態様の記載
下文に、本発明の好ましい態様が記載されるだろう。しかしながら、本発明の態様は様々な他の形態に改変され得、および、本発明の範囲は下記に記載の態様に限定されない。本発明の態様が本発明をより正確に説明するように与えられることは、この分野における平均的な知識を有する当業者によって十分に理解される。加えて、本明細書を通してずっと、要素の「包含」は、他に具体的に規定されない限り、他の要素を排除しないが、他の要素を包含してもよい。
【0022】
本発明の一側面において、本発明は、伝統的なDancheong Hyeob顔料を代替することができる緑青顔料の調製方法であって、以下のステップ:
銅;ならびに、銅とスズ(Sn)、亜鉛(Zn)、および鉛(Pb)の少なくとも1とを含む銅合金の、少なくとも1を含む銅粉末を調製するステップ;および
銅粉末と塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムを含有する腐食剤とを混合することによって、銅粉末を腐食させるステップ、ここで、腐食剤が、総重量に基づき、75~90重量%の塩化ナトリウムおよび10~25重量%の塩化アンモニウムを包含する、
を含む、前記方法を提供する。
【0023】
下文に、態様に従う緑青顔料の調製方法が、徐々に詳細に記載されるだろう。
態様に従う緑青顔料の調製方法は、伝統的な塩素腐食方法を使用して緑青顔料を製作する方法である。
態様に従う緑青顔料の調製方法において、銅;ならびに銅とスズ(Sn)、亜鉛(Zn)、および鉛(Pb)の少なくとも1とを含む銅合金の、少なくとも1の銅粉末を調製するステップが実施される。
このとき、銅粉末は、純粋な銅であってもよく、または銅とスズ(Sn)、亜鉛(Zn)、および鉛(Pb)の少なくとも1とを含む銅合金であってもよい。
【0024】
例えば、銅合金は、銅とスズ(Sn)との合金であり、および70~80重量%の銅(Cu)および20~30重量%のスズ(Sn)を包含してもよい。加えて、銅合金は、銅(Cu)と亜鉛(Zn)との合金であり、および75~85重量%の銅(Cu)および25~35重量%の亜鉛(Zn)を包含してもよい。加えて、銅合金は、銅(Cu)とスズ(Sn)と亜鉛(Zn)との合金であり、および75~85重量%の銅(Cu)および5~15重量%のスズ(Sn)および亜鉛(Zn)の各々を包含してもよい。加えて、銅合金は、銅(Cu)とスズ(Sn)と亜鉛(Zn)と鉛(Pb)との合金であり、および80~90重量%の銅(Cu)および3~7重量%のスズ(Sn)、亜鉛(Zn)、および鉛(Pb)の各々を包含してもよい。
【0025】
次に、態様に従う緑青顔料の調製方法において、銅粉末を塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムを含有する腐食剤と混合することによって銅粉末を腐食させるステップが実施される。
態様に従う緑青顔料の調製方法は、塩素化合物を腐食剤として使用する塩素腐食方法を用いて銅粉末を腐食させることによって、緑青顔料であるDangrokを製作する方法である。
腐食剤は、塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムを含み、総重量に基づき、75~90重量%の塩化ナトリウムおよび10~25重量%の塩化アンモニウムを含むことを特徴とする。
【0026】
これは、腐食剤を使用して、Hayeob色を有する緑青顔料を製作するためである。銅粉末が塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムを含有する腐食剤を用いて腐食されるとき、製作された顔料の緑みは塩化ナトリウムの含量が増大するに伴い増大する。塩化ナトリウムが75重量%未満において包含され、および、塩化アンモニウムが25重量%を超えて包含されるとき、調製された顔料の青さが増大し、緑色を呈さない問題をもたらす。他方、案化ナトリウムが90重量%を超えて、および95重量%を超えて包含され、ならびに塩化アンモニウムが10重量%未満および5重量%未満において包含されるとき、銅粉末が適切に腐食されないという問題がある。
【0027】
結果的に、Hayeobの色と同様または同じ緑色を有する緑青顔料を製造するために、腐食剤の総重量に基づき、75~90重量%の塩化ナトリウムおよび10~25重量%の塩化アンモニウムを包含することが好ましい。腐食剤の総重量に基づき、86~90重量%の塩化ナトリウムおよび10~14重量%の塩化アンモニウムを包含することが、より好ましくあり得る。
銅粉末を腐食させるステップにおいて、銅粉末および腐食剤は、好ましくは、1:2以上の重量比において混合され、およびより好ましくは、1:2~1:4または1:2~1:3の重量比において混合される。
【0028】
これは、腐食剤によって腐食速度およびこれに続く腐食剤の除去効率を改善するためである。腐食剤が銅粉末の量未満の量において包含される場合、腐食剤による腐食速度が緩やかであるので、顔料についての製造時間が長過ぎる可能性があるか、または銅粉末が適切に腐食されない可能性がある。腐食剤が銅粉末の量の3倍を超える量において包含される場合、腐食の完了後に残存する腐食剤は多く、およびよって、多量のエネルギーが腐食剤を除去するための追加のプロセスにおいて消費される可能性がある。
【0029】
このとき、腐食は大気雰囲気において自然に実行されてもよいが、腐食効率の観点から腐食テスターを使用する人工的な腐食を実施することが好ましい。
例えば、腐食させるステップにおいて、銅粉末および腐食剤は1:2の重量比において混合されてもよく、および人工的な腐食方法によって合計72時間(各8時間の9サイクル)腐食されてもよい。
【0030】
本発明の態様に従う緑青顔料の調製方法は、腐食させるステップにおいて調製される腐食生成物を粉砕し、湿式分画するステップをさらに包含してもよい。
粉砕することは、腐食生成物の粒子サイズを100μm以下に低減することによって、製作された顔料の色の一様性を改善するために実施される。
粉砕することは、方法が粉末を粉砕し得、および例えば、乳鉢(mortal mill)を使用して実施され得る限り、限定せずに、あらゆる方法を使用して実施され得る。
【0031】
加えて、分画することは、粒子サイズに基づき、100μm以下に粉砕される粉末を分類するために実施される。例えば、それは、3つの群:45μm以下、45μm~75μm、および75μm~100μmに分類され得る。
分画することは、好ましくは、湿式分画することであり、および好ましくは、蒸留水を使用する湿式ふるい分け方法によって実施され得る。これを通じて、粒子サイズによって顔料を分類すること、および同時に、残余の腐食剤を除去することの利点を有する。
【0032】
加えて、本発明の態様に従う緑青顔料の調製方法は、粉砕されおよび湿式分画された粉末を蒸留水と混合し、上清を除去することによって、残余の腐食剤を除去するステップをさらに包含してもよい。
このステップは、10ppm以下に粉砕および湿式分画することによって調製される顔料中の残余の腐食剤の含量を低減するためである。上記のステップを通じて顔料中の残余の腐食剤を除去することによって、顔料の安定性は、残余の腐食剤によって引き起こされるさらなる腐食を防止することによってさらに改善され得る。
例として、上記のステップは標的顔料を蒸留水と混合し、それを静置させ、次いで上清を除去することによって実施され得る。
【0033】
加えて、本発明の態様に従う緑青顔料の調製方法は、残余の腐食剤が除去された粉末を精製するステップをさらに包含してもよい。
顔料を製作するプロセスの間、白、グレーまたは茶の微粉末は、粉砕するステップにおいて生成されてもよく、それらは、塗布の間表面上に浮遊し、および緑の彩度未満であり得る。
結果的に、精製するステップは、顔料中の微粉末、具体的に言うと、5μm未満の微粉末を除去するためのステップである。
【0034】
精製するステップは、分画するステップにおいて分類される小さい粒子サイズを有する顔料粉末上で実施されてもよく、および具体的に言うと、水簸方法(elutriation method)によって実施されてもよい。
このとき、水簸方法は、顔料を蒸留水と混合し、および次いで、それを静置して蒸留水の上清を除去して、上清中に存在する微粉末を除去する方法である。
例として、水簸方法に従う精製プロセスは、第1段階および第2段階において個別に実行され得る。第1段階は、顔料を蒸留水で充填した600mlビーカー中に入れ、それを混合し、15分間放置し、および沈殿された粒子を除く上清を除去することによって実行される。第2段階は、静かに移された上清を十分に混合し、30分間放置し、および次いで沈殿物を除く上清を除去することによって実施され得る。この後、精製された顔料は、乾燥器を使用して、沈殿物を24時間60℃で乾燥させることによって得ることができる。
【0035】
本発明の別の側面において、本発明は、上記の調製方法を使用して調製される緑青顔料を提供する。
緑青顔料は、伝統的なDancheong着色のための緑の顔料である。
顔料は、色、物理的特性および構成要素の観点から、実際の文化遺産の場所において分析される伝統的なDancheong Hayeob顔料と同様または同一であるため、Hayeob顔料を代替することができる利点を有する。
【0036】
下文に、本発明は、以下の例および実験的例によって詳細に記載されるだろう。
しかしながら、以下の例および実験的例は本発明を例示するためのみであり、および本発明の内容はそれに限定されない。
【0037】
<材料>
古い文献記録を通じて確認される緑青顔料を製作する方法のうち、銅粉末を塩素化合物と反応させる塩素腐食方法において使用される材料は、銅粉末および腐食剤、例えば、塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムなどである。銅粉末は文献において主な材料として提示されているが、塩素腐食方法に関連する多くの文献があるわけではなく、および銅粉末の製造の困難性を考慮すると、銅粉末と共に銅板が製作方法における調査についての材料として使用され得る。
【0038】
(1)銅粉末
他方、日常生活において一般的に使用された銅器具が過去の緑青顔料の製造のための銅の供給源として使用された可能性が高い。三国時代後に一般的に使用される銅器具は、代表的な銅合金である、青銅または黄銅から作られている。青銅は、銅(Cu)、スズ(Sn)および鉛(Pb)から構成され、一方で、黄銅は、銅(Cu)および亜鉛(Zn)から構成される。青銅および黄銅は、日用品、例えば、器およびスプーンなどにおいて、ならびに祖先の儀礼および装飾的な品目において使用される器具において幅広く使用され、および主な構成要素の割合は、使用の目的、製造方法、および需要と供給材料に依存して変化した。
【0039】
Hayeob色を有する緑青顔料を製作するために使用される銅粉末の主な構成要素の組成物比率を、出土した遺物のうちの青銅器、Bangjjaの品、およびSangpyeong Tongboの分析結果に基づき、ならびに絵画の文化遺産の顔料の分析結果に基づき、選択した。調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)を、国内の製造業者を通じて、以下の表1において示される比率において純粋な銅または銅合金を製作することによって調製した。調製した銅粉末を
図1において示す。
【0040】
【0041】
(2)腐食剤
文献記録に従って、Kwangmyeong塩およびNyosaを、銅粉末を腐食させる腐食剤として使用した。Kwangmyeong塩はハロゲン化合物の無機塩であり、およびその主な構成要素は、塩化ナトリウム(NaCl)であり、一方で、Nyosaは、火山または温泉エリアにおいて見出される天然の塩化アンモニウム(NH4Cl)である。本発明の態様に従う塩素腐食方法を適用することによってHayeob色を有する緑青顔料を製作するために、99.5%塩化ナトリウム(SAMCHUN、Korea)および99.0%塩化アンモニウム (SAMCHUN、Korea)を国内会社から購入し、使用した。このとき、塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムを以下の表2および3において示される混合比率にて混合し、腐食剤を調製した。
【0042】
【0043】
【0044】
<実験例1>自然の腐食による顔料調製
以下の方法によって、腐食剤および銅粉末を2:1の重量比において混合し、次いで自然に腐食させて顔料を調製し、自然の腐食プロセスの間の色を確認した。結果を表2に示す。
- 顔料調製方法:調製例8の腐食剤を調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)の各々と銅粉末の重量に基づき200重量%の量において混合し、次いで20日間室温にて空気に曝して顔料を調製した。
【0045】
図2は、調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)の各々を調製例8の腐食剤(NA11)と混合することによって得られた混合物を自然に腐食させた後の0、1、3、6、10、16、および21日についての銅粉末の色を示す一連の写真である。
図2に示されるとおり、銅粉末のタイプを問わず、3日後、すべての銅粉末の色が腐食に起因して全面的に変化し、21日後、銅粉末が完全に腐食したことを視覚的に確認した。完全に腐食した顔料は青色を呈し、Hayeobの緑色を呈さなかった。
【0046】
<実験例2>人工的な腐食による顔料調製
以下の方法によって、腐食剤および銅粉末を2:1の重量比において混合し、次いで人工的に腐食させて顔料を調製し、人工的な腐食プロセスの間の色を確認した。結果を
図3および4に示す。
- 顔料調製方法:調製例6~10(NA10、NA01、NA11、NA21、およびNA12)の腐食剤の各々を調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)の各々と銅粉末の重量に基づき200重量%の量において混合し、混合物をKS規格D ISO 14993(金属および合金の腐食-塩ミストへの周期的曝露を含む加速された試験、乾燥および湿潤条件)に従い人工的に腐食させた。このとき、蒸留水を腐食テスター操作の間の噴霧プロセスにおいて噴霧し、8時間の1サイクルを伴う合計3サイクル(24時間、1日)を実施して顔料を調製した。
【0047】
図3は、人工的な腐食の前の銅粉末および腐食剤の混合物の色を示す一連の写真であり、
図4は、人工的な腐食後1日についての色を示す一連の写真である。
図3および4に示されるとおり、人工的な腐食の結果として、調製例6の腐食剤(NA10)を適用することによる人工的な腐食によって製造された顔料を除き、概して、緑または青の腐食生成物が製造されたことが見出された。
天然の腐食のケースにおいては、腐食は21日後に完了したが(実験例1を参照)、一方で人工的な腐食のケースにおいては、腐食は1日で完了したことが確認された。上記の結果から、人工的な腐食を使用する方法は、労働時間の効率の観点から、緑青顔料の製造により好適であると結論付けることができる。
【0048】
<実験例3>腐食期間の評価
Hayeob色を有する緑青顔料であるDongrokを腐食テスターを使用する人工的な腐食によって製造するのに好適な腐食期間を設定するために、調製例6~10の腐食剤(NA10、NA01、NA11、NA21、およびNA12)の各々を銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)の各々と混合し、次いで実験例2におけるものと同じやり方において人工的に腐食させた。人工的な腐食の合計11サイクルをそれらの各々に関して実施し、腐食期間に従う銅粉末の重量変化を分析し、結果を
図5A~5Eに示す。加えて、色変化を分析し、結果を
図6~10に示す。
【0049】
図5A~5Eは、調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)の人工的な腐食期間に従う重量変化を示す一連のグラフである。分析の結果として、最も多くの状態において、重量は腐食の開始時に急速に増大し、約5サイクル後に一定のままか、むしろ重量が減少する傾向があった。
図6~10は、人工的な腐食期間に従う調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)の色を示す写真である。
【0050】
図6に示されるとおり、調製例1の銅粉末(CU)のケースにおいて、人工的な腐食が進行するにつれて、全体的に緑の生成物が増大する傾向があった。調製例6の腐食剤を使用したとき、試料は黒に変化し、状態は維持され、結果として緑色は現れなかった。調製例6の腐食剤(NA10)を使用する条件を除いた他の条件において、色は7サイクル後に安定したが、形状において、最大11サイクルまで段々の膨張を示した。
図7に示されるとおり、調製例2の銅粉末(CS)のケースにおいて、すべての条件下で腐食が進行するにつれて、青色は減少し、緑に変化した試料の数が増大する傾向があった。他の銅粉末と異なり、暗緑の酸化物が調製例6の腐食剤(NA10)を使用する条件下で製造された。概して、7サイクル後に安定した腐食形態が示された。
【0051】
図8に示されるとおり、調製例3の銅粉末(CZ)のケースにおいて、総じて、青みがかった腐食生成物が製造された。調製例6の腐食剤(NA10)を使用する条件下では、青い腐食生成物がわずかのみ製造されたが、全体的な状態は暗赤の腐食物であった。概して、安定した腐食形態は7サイクル後に観察され、調製例9の腐食剤(NA21)を使用する条件下で、膨張状態が徐々に増大した。
図9に示されるとおり、調製例4の銅粉末(CP)のケースにおいて、調製例6の腐食剤(NA10)を使用する条件下では、緑の生成物はわずかのみ生成されたが、他の条件下では、全体的に緑の酸化物が製造された。腐食が進行するにつれて、青から緑に変化する現象が明確に観察され、概して、9サイクル後に安定した腐食状態が示された。
【0052】
図10に示されるとおり、調製例5の銅粉末(CT)のケースにおいて、NA10を使用する条件を除き、総じて、青または緑の腐食生成物が製造された。調製例8(NA11)および調製例9(NA21)の腐食剤を使用する条件下では、緑の腐食物が急速に製造され、一方で調製例2の腐食剤(NA01)を使用する条件下では、多くの青の腐食物が残存した。概して、5サイクル後に安定した腐食状態が示された。
上記の結果から、安定した緑青が完全な腐食を通じて製造される人工的な腐食期間は、少なくとも7サイクル以上(すなわち、56時間以上)、好ましくは9サイクル以上(すなわち、72時間以上)であることが確認された。
【0053】
<実験例4>腐食剤比率に従う評価
銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)の各々および腐食剤(0:1、1:2、1:1、2:1および1:0の重量比における塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムの混合物)の各々を1:2の重量比にて混合した後、人工的な腐食を実験例2におけるものと同じやり方において7サイクルについて実施した。結果を
図11に示す。
図11に示されるとおり、腐食剤における塩化アンモニウムの比率が増大したとき、青い腐食生成物が製造されたが、塩化ナトリウムの比率が増大したとき、緑の腐食生成物が製造される傾向があった。しかしながら、塩化アンモニウムが全くないとき、腐食は円滑に進行しなかった。結果的に、塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムを2:1の重量比において含有する調製例9の腐食剤を使用するとき、Hayeob色に最も近い緑色が現れたことが確認された。
【0054】
他方、塩化アンモニウムのより高いパーセンテージは、より青色をもたらすだろう。Hayeob色を呈するための塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムの最適な含量比率を確認するために、調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)を、塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムを3:1、4:1、9:1、および19:1の重量比において含有する(腐食剤の総重量に基づき、5、10、20、および25重量%の塩化アンモニウムを含有する)調製例11、12、15、および16の腐食剤を使用して人工的に腐食させて(7サイクル)、顔料を調製し、各々の色を確認した。結果を
図12に示す。
図12に示されるとおり、調製例3の銅粉末(CZ)を使用して調製される顔料のケースにおいては、塩化ナトリウムの比率が増大するにつれて、青色が消失し、緑の腐食生成物が製造され、他の銅粉末のケースにおいては、緑色がより暗くなる傾向があった。
【0055】
加えて、すべての顔料のうち調製例6の腐食剤(塩化ナトリウム:塩化アンモニウム=19:1)を使用して調製された顔料において大きな色変化が観察された。これを確認するために、顔料の各々を乳鉢を使用して100μm以下の粉末サイズに粉砕し、蒸留水を使用する湿式ふるい分けによって45μm以下、45~75μm、75~100μmにふるい分けし、サイズによる色を分析した。結果を
図13に示す。
図13に示されるとおり、調製例16の腐食剤を使用するケースにおいて、色における大きな変化が粒子サイズ範囲に従って見出され、緑の腐食生成物よりもむしろ多くの赤または黒の腐食生成物があったことが確認された。
【0056】
上記の結果から、腐食剤における塩化ナトリウムの割合が増大するにつれ緑の顔料が増大し、そのため、塩化ナトリウムのより高い割合がHayeob色を有する緑青顔料を製造するのに好適であるが、塩化ナトリウムの割合が95%を超える場合、腐食が完全には達成されず、そのためそれは最大でも95%未満で含有されるべきであることが見出された。
結果的に、Hayeob色を有する緑青顔料を調整するために使用される腐食剤は、塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムを包含し得、ここで、すべての5タイプの銅粉末においてHayeob色が現れるようにするために、塩化ナトリウムは、好ましくは75重量%~95重量%において、より好ましくは86重量%~93重量%において、および最も好ましくは90重量%において包含される。
加えて、すべての5タイプの銅粉末においてHayeob色が現れるようにするために、塩化アンモニウムは、好ましくは5重量%~25重量%の量において、より好ましくは7重量%~14重量%において、および最も好ましくは10重量%の量において包含される。
【0057】
<実験例5>湿式ふるい分けプロセスに従う残余の腐食剤の除去率の評価
顔料の製作プロセスの間の腐食後の湿式ふるい分けプロセスに従う残余の腐食剤の除去率を評価するために、銅粉末および腐食剤の重量比1:2(CU3:1、19:1(CU銅粉末、塩化ナトリウム:塩化アンモニウム=3:1、19:1)、CP3:1、19:1(CP銅粉末、塩化ナトリウム:塩化アンモニウム=3:1、19:1))における混合物を、実験例2の方法によって人工的に腐食させた(7サイクル)。次いで、粉末を乳鉢を使用して100μm以下のサイズへ粉砕し、蒸留水を使用する湿式ふるい分けを通じて45μm以下、45~75μm、および75μm~100μmにふるい分けした。排出された水を湿式ふるい分けプロセスの開始時、中盤、および終了時に回収し、100倍に希釈し、塩化物イオン(Cl
-)の濃縮率および低減率を測定し、結果を
図14Aおよび14Bに示し、これを通じて湿式ふるい分けプロセスの間の残余の腐食剤の含量における変化を分析した。
【0058】
図14Aおよび14Bに示されるとおり、分析の結果として、最初の塩素イオン濃度は205~876ppmであったが、後半においては、1.66~33.1ppmであり、約91.9~99.1%の減少率を示す。つまり、残余の腐食剤のほとんど90%以上が湿式ふるい分けによって除去されたことが確認された。しかしながら、塩素イオン濃度は100倍に希釈された水試料において測定され、そのため、追加の希釈が腐食生成物中の残存する腐食剤について必要とされた。
【0059】
<実験例6>湿式希釈プロセスに従う残余の腐食剤の除去率の評価
湿式ふるい分けによる残余の腐食剤の除去は極めて有効であるけれども残余の腐食剤の量は100~1000ppmの範囲における大きなものであり、そのため、これらの残余の腐食剤を除去するために追加の処置が必要とされる。結果的に、湿式ふるい分けにより選択された標的顔料の各粒子サイズについて、希釈プロセスが追加的に実施され、残余の腐食剤の除去率を評価し、結果を
図16A~16Cに示す。
【0060】
調製例1~5の銅粉末(CU、CS、CZ、CP、およびCT)の各々および調製例11の腐食剤(塩化ナトリウム:塩化アンモニウム=3:1)を1:2の重量比において混合し、これに続き、実験例2の方法によって人工的に腐食させた(7サイクル)。次いで、粉末を乳鉢を使用して100μm以下のサイズに粉砕し、蒸留水を使用する湿式ふるい分けを通じて45μm以下、45~75μm、および75μm~100μmにふるい分けした。分類された粉末を標的顔料として使用した。
標的顔料を蒸留水と混合することによる蒸留水交換を繰り返すことによって希釈プロセスを実行し、所定の時間静置し、次いで蒸留水を静かに注いだ。
【0061】
希釈プロセスにおいて顔料を蒸留水と混合した後、顔料中の腐食剤を静置するプロセスの間に溶離し、蒸留水と一緒に除去した。腐食剤を除去するプロセスの効率を改善するために、腐食剤の溶離時間を測定し、塩素イオン濃度および増大率を10分毎に測定した。結果として、
図15Aおよび15Bに示されるとおり、塩素イオン濃度は分析の初期段階において急速に増大し、60分後にある程度安定化された。塩素イオン濃度の増大率を分析した結果として、増大率は80分および90分にて0.7%および0.9%であり、1%未満の増大率を示す。上記の結果に基づき、塩化物イオン濃度の増大率が1%以下に維持された状態を一定な重量に到達したものとしてみなし、腐食剤の溶離時間を90分に設定した。
【0062】
算出された溶離時間に基づき、粒子サイズによって調製された標的顔料を希釈した。結果として、
図16A~16Cに示されるとおり、大きな顔料粒子を有する第2および第3段階顔料のケースにおいて、それらの最も多くは3から5の希釈後に10ppm以下の塩素イオン濃度を有することが見出された。小さい顔料粒子を有する第1段階のケースにおいて、塩素イオン濃度は、7~8の希釈を通じて10ppm以下に到達した。
上記の結果を通じて、顔料中の腐食剤の含量は、希釈プロセスを通じて10ppm以下に低減できることが確認された。
【0063】
<実験例7>微粉末除去のための精製プロセスに従う色評価
顔料は、それらが顔料それ自体の粉末状態にあるとき、および、それらが糊などの固着剤を使用して実際に塗るとき、色が異なる。湿式ふるい分けを通じて、顔料を45μm以下と45μm~100μmとの間の粒子に分類し、製作された顔料は液体糊(water glue)を使用して実際に塗るとき低い彩度を有し得る。これは、白、グレー、茶の微粒子は顔料製造のための腐食性材料を粉砕する過程において生成され、これらの粒子は塗布するとき表面に浮遊するためである。したがって、製作された緑青顔料の低い色度の問題を改善するために、精製プロセスを追加し、水簸方法を使用して緑青顔料中に含有される微粉末を除去した。
精製プロセスは、水簸方法を使用して微粒子を除去するプロセスであり、湿式ふるい分けプロセスの間45μm以下の粒子として選択された顔料に関して実施した。
【0064】
具体的に、水簸方法に従う精製プロセスを第1段階および段2段階において個別に実行した。第1段階を、顔料を600mlビーカー入れ、それを両流水で充填し、それを混合し、15分間放置し、沈殿した粒子を除く上清を除去することによって実行した。第2段階を、水を注がれた上清をよく混合し、30分間放置し、次いで沈殿物を除く上清を除去することによって実施した。その後、精製された顔料を、乾燥器を使用して24時間60℃にて沈殿物を乾燥させることによって得た。
精製プロセスを実施しなかった顔料および精製された顔料を塗布し、次いで色を比較した。結果を
図17に示す(5S7C腐食条件:腐食剤NA5:1、人工的な腐食7サイクル/6S7C:腐食剤NA6:1、人工的な腐食7サイクル)。
【0065】
図17に示されるとおり、精製プロセスによって製作される緑青顔料を使用して着色したとき、Hayeobの緑色はより顕著であったことが確認された。
上記の結果に基づき、本発明の態様に従うHayeob色を有する緑青顔料の調製方法は、
図18に示されるとおり、腐食、粉砕、湿式ふるい分け、塩除去、精製、および乾燥のステップにおいて実行され得る。より好ましくは、以下のプロセスを実施する方法によって実施されてもよい。銅粉末(銅;ならびに、銅とスズ(Sn)、亜鉛(Zn)、および鉛(Pb)の少なくとも1とを含む銅合金の、少なくとも1を含む)と、塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムを含有する腐食剤とをある比率において混合して、銅粉末を腐食させた。腐食剤は、75~95重量%の塩化ナトリウムおよび5~25重量%の塩化アンモニウムを包含するものであった。次いで、腐食生成物を粉砕および選別し、残余の腐食剤を除去するための希釈プロセスおよび微粒子を除去するための精製プロセスを実施した。
【0066】
<実験例8>腐食剤比率に従う評価(2)
実験例7におけるとおり、緑青顔料を、腐食、粉砕、湿式ふるい分け、塩除去、精製、および乾燥のステップを実施することによって調製した。腐食剤として、塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムを、3:1、4:1、5:1、6:1、および9:1の異なる重量比率において使用した。製作された顔料の色を確認し、結果を
図19に示し、Dancheong専門家によって選択される、伝統的なDancheong Hayeob色との比較の結果を
図20に示す。
【0067】
図19における色測定の結果および
図20における評価結果として、すべての5タイプの製造された顔料が、Hayeob色に近い緑または緑がかった青を示した。しかしながら、10重量%の最も低い塩化アンモニウム比率を有するケースがHayeob色に最も近かったことが見出された。
結果的に、伝統的なDancheong Hayeob顔料を代替することができる緑青顔料の調製方法は、最も好ましくは、下記の表4に示される方法によって実施され得る。
【0068】
【0069】
具体的に言うと、銅粉末を2倍の重量の腐食剤と混合し、塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムが9:1の比率において混合された腐食剤を使用し、次いで、人工的な腐食を、腐食テスターを使用して実施した。腐食を9サイクル(合計72時間)において実施し、腐食生成物を、乳鉢を使用して100μm以下へ粉砕した。湿式ふるい分け方法を通じた蒸留水を使用するふるい分けによって粉砕された試料を45μm以下および45~100μmの粒子へ選別し、残余の腐食剤の90%超をこのプロセスにおいて除去した。1時間攪拌後に上清を除去し、および1時間沈殿させるプロセスを、5回を超えて繰り返す希釈プロセスを通じて、顔料中に含有される腐食剤を除去し、色の安定性を改善させた。微粒子を水簸方法を使用する精製プロセスを通じて除去し、顔料の彩度を増大させた。最終的な顔料を、乾燥器を使用して、24時間、60℃にて乾燥させる乾燥プロセスを通じて調製した。
【0070】
<実験例9>調製された緑青顔料の色および収率の評価
緑青顔料を、調製例1~5の5タイプの銅粉末を使用して表5に示される方法によって調製した。各銅粉末の粒子サイズに従って、M(45~100μm)およびS(45μm以下)(Sは、微粒子が精製プロセスによって45μm以下の粒子から除去された状態である)に分けた。2タイプの顔料を各銅粉末について調製し、合計10タイプの緑青顔料を製作した。10の調製された顔料の色および収率を確認し、結果を
図21および22に示す。
【0071】
図21に示されるとおり、すべての調製された緑青顔料は一般に明るい緑から暗緑であり、Hayeob色を指し示し、大きな粒子サイズを有する顔料は相対的に暗い色を示した。
図22に示されるとおり、約60gの銅粉末を使用して緑青顔料を一度に製作し、4セットを一度に製造し、241~243gの銅粉末を概して使用し、267~299gの緑青顔料を製作し、110.7~123.6%の収率をもたらした。
【0072】
<実験例10>調製された緑青顔料の物理的特性の評価
色度、粒子サイズ分布、マイクロ構造、および油吸収を実験例8において調製された10タイプの緑青顔料について測定し、結果を
図23~27に示す。
図23Aおよび23Bは、10タイプの調製された顔料についての色度を測定した結果を示す一連のグラフである。
図23Aに示されるとおり、Mサイズ緑青顔料は、-9.71~-23.05のa
*値、-1.35~1.64のb
*値、および40.84~48.97のL
*値を示した。および、
図23Bに示されるとおり、Sサイズ緑青顔料は、-7.61~-20.76のa
*値、0.90~4.95のb
*値、および43.33~53.24の
*値を示した。概して、Sサイズ緑青顔料の輝度(L
*値)および緑み(-a
*値)はMサイズ緑青顔料よりも高いが、青み(b
*値)は相対的に低かった。銅粉末のタイプに応じて、CS、CP、およびCTの緑みはCUおよびCZよりも高く、ならびにCSの緑みが最も高かった。
【0073】
図24は、10タイプの調製された顔料の粒子サイズ分布を測定した結果を示す一連のグラフである。
図24に示されるとおり、概して、同様の分布パターンが100μmより下の銅粉末のタイプを問わず示された。大きな粒子を有するMサイズ緑青顔料は、中心として66.9μmの粒子サイズを有する相対的に狭い正規分布を示し、63.0~66.9の平均粒子サイズを示した。小さい粒子を有するSサイズ緑青顔料は、21.2の粒子サイズを中心とした正規分布に近い形状を示したが、10μm未満の相対的に多数の粒子を伴いわずかに広がり、19.6~29.4μmの平均粒子サイズを示した(
図61)。45μm以下に調製されたS顔料のケースにおいて、5μm以下の小さい粒子は各セクションの1%未満の割合を占め、それは精製プロセスの間の微粒子の除去に起因するものと考えられる。
【0074】
図25は、倍率顕微鏡を用いて調製された10タイプの顔料を観察した結果を示す一連の写真であり、および
図26は、走査電子顕微鏡を用いて顔料を観察した結果を示す一連の写真である。
図25に示されるとおり、倍率顕微鏡分析の結果として、青緑または緑の粒子がすべての10顔料において観察され、暗赤の粒子が緑の粒子間に存在した。とりわけ多数の暗赤の粒子が、CU銅粉末を用いて調製された緑青顔料において観察された。これは、腐食生成物の表面から分離された粒子が、腐食生成物を粉砕する過程において現れるという事実に起因すると考えられる。これは、おそらく、腐食が原材料の表面から発生し、一旦腐食層が形成されると、十分には腐食されていない内側に残存する銅または銅酸化物があり得るという腐食の性質に起因する。純粋な銅のケースにおいて、この特徴は、スズ、亜鉛、鉛糖が混合される合金のものより強く、そのため、相対的に多くの暗赤の粒子があることが決定される。
【0075】
図26に示されるとおり、FE-SEM分析の結果として、10顔料は概して粗い表面の粒子を有し、多くの多孔質の楕円粒子が観察され、多角形の粒子形状を示し、それは、無機の特異的な粒子形状を示した天然の無機顔料とは異なった。
図27は、調製された10タイプの顔料の油吸収を評価した結果を示すグラフである。油吸収は、顔料の基本的な特徴の一つであり、粒子形状、粒子サイズ、および粒子サイズ分布の影響を受け、顔料を使用するときの固着剤の混合比率を推定するための基準である。
緑青顔料の油吸収を測定した。結果として、
図27に示されるとおり、大きな粒子サイズを有するMサイズ顔料は、小さい粒子サイズを有するSサイズ顔料のものよりも相対的に高い油吸収を示した。Mサイズ顔料は、44.82~54.97ml/100gの油吸収を示し、CZで作られた緑青顔料が最も高い油吸収を示した。Sサイズ顔料は、36.62~43.97ml/100gの油吸収を示し、CUで作られた緑青顔料が最も高い油吸収を示した。
【0076】
<実験例11>調製された緑青顔料の構成要素の評価
X線蛍光分析およびX線回折分析を実施して実験例8において調製された10の緑青顔料の構成要素を分析した。結果を
図28および29に示す。
図28は、10顔料についてのX線蛍光分析の結果を示すグラフである。
図28に示されるとおり、緑青顔料の構成物質元素は、粒子サイズによって分類されたSサイズ顔料とMサイズ顔料との間で有意差を示さず、主に検出された元素は、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、および鉛(Pb)であった。それは、純粋な銅、およびスズ、亜鉛、および鉛を含有する銅合金で作られた緑青顔料であるため、主な元素は、銅および銅合金、原材料の影響に起因して検出されたと思われる。
【0077】
図29は、10の顔料についてのX線回折分析の結果を示す一連のグラフである。
図29に示されるとおり、粒子サイズによって分類されたSサイズ顔料とMサイズ顔料との間に有意差がなく、緑青顔料の主な構成物質無機物はアタカマイト(Cu
2Cl(OH)
3)と同定された。加えて、原材料銅粉末に含有される銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、および鉛(Pb)などの元素が検出された(
図29において、Ataは、アタカマイトであり、Claは、クリノアタカマイトであり、Cuは銅であり、Cprは、赤銅鉱であり、Kpsは、カペラサイト(kapellasite)であり、Zinは紅亜鉛鉱であり、Anaは、アナタカマイト(Anatacamite)であり、およびSalは、塩化アンモン石(salammoniac)である。)
【0078】
<実験例12>調製された緑青顔料の安定性の評価
促進耐候試験を実施して緑青顔料の安定性を評価した。安定性を、促進耐候試験プロセスにおいて規則的な間隔にて着色された見本の色度を測定し、および累積UV照射量に従う色差(ΔE)を算出することによって評価した。結果を
図30および31に示す。
【0079】
図30に示されるとおり、CS緑青顔料を排除する、CU、CZ、CP、およびCT緑青顔料は、同様の傾向を示した。試験の開始から、色差は11.9MJ/m
2のUV照射量になるまで急速に増大し、次いでその後徐々に増大した。CS緑青顔料のケースにおいて、色差は、試験の開始から試験の終了まで急速に増大する傾向があった。結果として、CUおよびCZ緑青顔料は、夫々、3.81および4.97の色差値を示し、相対的に良好な色変化を示したが、CS、CP、およびCT緑青顔料は、8以上の色差を示し、相対的に高い色変化を指し示した。
加えて、
図31を通じて安定性評価試験の前後の緑青顔料の色変化を調べたとき、試験前の青みがかった緑から試験後の増大した黄みとしての暗緑の色変化が見出された。
【0080】
<実験例13>伝統的なDancheong Hayeob顔料との比較評価
本発明の態様に従って調製された緑青顔料を、伝統的なDancheongにおける緑青顔料と推定されるHayeob顔料と比較した。
調製された緑青顔料の色を有する、伝統的なDancheong顔料であるHayeobの色と比較するために、伝統的なDancheong調査の結果およびDangrok顔料の劣化前後の色度を比較し、結果を
図32に示す。
【0081】
図32に示されるとおり、調製された緑青顔料は残存するHayeob顔料と比較して緑みにおいて同様の値を示したが、一方で黄みおいて有意により低かった。
他方、劣化後の緑青顔料の色は、黄みにおける有意な増大に起因して、伝統的なDancheongのHayeob色のものと同様の色を有したことが確認された。伝統的なDancheong顔料の複製に関する調査について、調製された緑青顔料は、劣化したとき、今日残存する伝統的なDancheongのHayeob色と同様の色を呈するという事実に遭遇した。
加えて、調製された緑青顔料の特徴分析の結果および伝統的なDancheong Hayeob顔料を比較した。結果として、純粋な銅および銅合金粉末(5タイプ)を使用する塩素腐食方法によって複製された緑青顔料は、文化遺産における伝統的なDanhceongのHayeobと同様の色および組成物、ならびに同様の粒子形状を有したことが確認された。
【要約】 (修正有)
【課題】緑青顔料の調製方法、とりわけ伝統的なDancheong Hyeob顔料を代替することができる緑青顔料の調製方法を提供する。
【解決手段】緑青顔料の調製方法は、以下のステップ:銅、ならびに、銅とスズ(Sn)、亜鉛(Zn)、および鉛(Pb)の少なくとも1とを含む銅合金の、少なくとも1を含む銅粉末を調製するステップ:および、銅粉末と塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムを含有する腐食剤とを混合することによって、銅粉末を腐食させるステップを含む。腐食剤は、総重量に基づき、75~90重量%の塩化ナトリウムおよび10~25重量%の塩化アンモニウムを包含する。
【選択図】なし