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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】半導体製造装置用部材
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023517749
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2022044618
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖也
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
(72)【発明者】
【氏名】石川 征樹
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-150071(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0411355(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-0650290(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0067117(KR,A)
【文献】特開2009-224526(JP,A)
【文献】国際公開第2011/043063(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハ載置面を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通し、内周面に雌ねじが設けられたプラグ配置穴と、
外周面に雄ねじが設けられ、前記プラグ配置穴の前記雌ねじに螺合された緻密質プラグと、
前記プラグ配置穴の前記雌ねじと前記緻密質プラグの前記雄ねじとの間に設けられ、前記セラミックプレートの下面から上面まで連通するガス通路と、
前記セラミックプレートの下面に接合層を介して接合された導電性のベースプレートと、
前記ベースプレート及び前記接合層に設けられ、前記ガス通路にガスを供給するガス供給路と、
を備え
前記雌ねじは、前記雌ねじの谷部に横方向に延びるスリット溝を有し、前記スリット溝は、前記雌ねじに沿って螺旋状に形成されている、
半導体製造装置用部材。
【請求項2】
前記雌ねじ及び前記雄ねじの少なくとも一方は、規格で定められた寸法に比べて、谷の深さが深くなるように設けられている、
請求項1に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項3】
前記雌ねじ及び前記雄ねじの少なくとも一方は、規格で定められた寸法に比べて、山の高さが低くなるように設けられている、
請求項1又は2に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項4】
前記ガス通路の上下方向の最大長さは、0.5mm以下である、
請求項1又は2に記載の半導体製造装置用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置用部材として、上面にウエハ載置面を有するセラミックプレートと、セラミックプレートを上下方向に貫通するプラグ配置穴と、プラグ配置穴に配置されたプラグと、セラミックプレートの下面に設けられたベースプレートと、ベースプレートに設けられたガス供給路と、を備えたものが知られている。例えば、特許文献1には、プラグの外周面に雄ねじを設けると共にプラグ配置穴の内周面に雌ねじを設け、プラグ配置穴にプラグを螺合し、プラグを介してガス供給路からウエハ載置面にガスを供給する構造が開示されている。プラグ配置穴に螺合されたプラグは、上下方向に貫通する穴を有し、その穴を介してガス供給路からウエハ載置面にガスを供給する。あるいは、プラグ配置穴に螺合されたプラグは、多孔質からなり、内部に存在する気孔を介してガス供給路からウエハ載置面にガスを供給する。こうしたプラグは、ねじにより取り付けや取り外しを容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-150071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、上下方向に貫通する穴をプラグに設けた場合、ウエハ載置面からベースプレートまでの距離が短いため、耐電圧が低く、ウエハをプラズマで処理する際にその穴を介してアーク放電が発生することがあった。また、プラグを多孔質とした場合、プラグ内部に存在する気孔が多いため、やはり耐電圧が低く、ウエハをプラズマで処理する際に気孔を介してアーク放電が発生することがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ねじ付きのプラグを備えた半導体製造装置用部材において、アーク放電の発生を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の半導体製造装置用部材は、
上面にウエハ載置面を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通し、内周面に雌ねじが設けられたプラグ配置穴と、
外周面に雄ねじが設けられ、前記プラグ配置穴の前記雌ねじに螺合された緻密質プラグと、
前記プラグ配置穴の前記雌ねじと前記緻密質プラグの前記雄ねじとの間に設けられ、前記セラミックプレートの下面から上面まで連通するガス通路と、
前記セラミックプレートの下面に接合層を介して接合された導電性のベースプレートと、
前記ベースプレート及び前記接合層に設けられ、前記ガス通路にガスを供給するガス供給路と、
を備えたものである。
【0007】
この半導体製造装置用部材では、緻密質プラグはプラグ配置穴に螺合されているため、緻密質プラグを交換する必要が生じた場合に緻密質プラグを容易に交換することができる。また、ガスは、緻密質プラグを介してではなく、プラグ配置穴の雌ねじと緻密質プラグの雄ねじとの間のガス通路を介して、ガス供給路からウエハ載置面に供給される。ガス通路は、ねじに沿って形成される螺旋状の通路であるため、ウエハ載置面からベースプレートまでの沿面距離を長くすることができる。そのため、耐電圧が高くなり、ウエハをプラズマで処理する際にガス通路を介してアーク放電が発生するのを抑制することができる。
【0008】
なお、本明細書では、上下、左右、前後などを用いて本発明を説明することがあるが、上下、左右、前後は、相対的な位置関係に過ぎない。そのため、半導体製造装置用部材の向きを変えた場合には上下が左右になったり左右が上下になったりすることがあるが、そうした場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0009】
[2]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記雌ねじ及び前記雄ねじの少なくとも一方は、規格で定められた寸法に比べて、谷の深さが深くなるように設けられていてもよい。こうすれば、ガス通路を流れるガスの流量を多くすることができる。
【0010】
[3]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]又は[2]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記雌ねじ及び前記雄ねじの少なくとも一方は、規格で定められた寸法に比べて、山の高さが低くなるように設けられていてもよい。こうしても、ガス通路を流れるガスの流量を多くすることができる。
【0011】
[4]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]~[3]のいずれかに記載の半導体製造装置用部材)において、前記ガス通路の上下方向の最大長さは、0.5mm以下であってもよい。ガス通路の上下方向の最大長さが0.5mm以下ならば、ウエハをプラズマで処理する際にガス通路内で異常放電(グロー放電)が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】半導体製造装置用部材10の縦断面図。
図2】セラミックプレート20の平面図。
図3図1における雌ねじ25と雄ねじ55の部分拡大図。
図4】雌ねじ25と雄ねじ55の別例の部分拡大図。
図5】雌ねじ25と雄ねじ55の別例の部分拡大図。
図6】雌ねじ25と雄ねじ55の別例の部分拡大図。
図7】雌ねじ25と雄ねじ55の別例の部分拡大図。
図8】半導体製造装置用部材110の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。図1は半導体製造装置用部材10の縦断面図、図2はセラミックプレート20の平面図、図3図1における雌ねじ25と雄ねじ55の部分拡大図(図1において2点鎖線で囲った部分の拡大図)である。
【0014】
半導体製造装置用部材10は、セラミックプレート20と、プラグ配置穴24と、ベースプレート30と、緻密質プラグ50と、ガス通路60とを備えている。
【0015】
セラミックプレート20は、アルミナ焼結体や窒化アルミニウム焼結体などのセラミック製の円板(例えば直径300mm、厚さ5mm)である。セラミックプレート20の上面は、ウエハ載置面21となっている。セラミックプレート20は、電極22を内蔵している。セラミックプレート20のウエハ載置面21には、図2に示すように、外縁に沿ってシールバンド21aが形成され、全面に複数の円形小突起21bが形成されている。シールバンド21a及び円形小突起21bは同じ高さであり、その高さは例えば数μm~数10μmである。電極22は、静電電極として用いられる平面状のメッシュ電極であり、直流電圧を印加可能となっている。この電極22に直流電圧が印加されるとウエハWは静電吸着力によりウエハ載置面21(具体的にはシールバンド21aの上面及び円形小突起21bの上面)に吸着固定され、直流電圧の印加を解除するとウエハWのウエハ載置面21への吸着固定が解除される。なお、ウエハ載置面21のうちシールバンド21aや円形小突起21bの設けられていない部分を、基準面21cと称する。
【0016】
プラグ配置穴24は、セラミックプレート20を上下方向に貫通する貫通する貫通穴であり、ベースプレート30のガス穴34に対向している。プラグ配置穴24は、電極22を上下方向に貫通しているが、プラグ配置穴24の内周面には電極22は露出していない。プラグ配置穴24は、図3に示すように、内周面に雌ねじ25を有する。プラグ配置穴24は、図2に示すように、セラミックプレート20の複数箇所(例えば周方向に沿って等間隔に設けられた複数箇所)に設けられている。
【0017】
ベースプレート30は、熱伝導率の良好な円板(セラミックプレート20と同じ直径かそれよりも大きな直径の円板)である。ベースプレート30の内部には、冷媒(例えばフッ素系不活性液体などの電気絶縁性の液体)が循環する冷媒流路32やガスをガス通路60へ供給するガス穴34が形成されている。ガス穴34は、ベースプレート30を上下方向に貫通するように設けられている。冷媒流路32は、平面視でベースプレート30の全面にわたって入口から出口まで一筆書きの要領で形成されている。ベースプレート30の材料としては、例えば、金属や複合材料などが挙げられる。金属としては、Al、Al合金、Moなどが挙げられる。複合材料としては、金属とセラミックとの複合材料などが挙げられる。金属とセラミックとの複合材料としては、金属マトリックス複合材料(メタル・マトリックス・コンポジット(MMC))やセラミックマトリックス複合材料(セラミック・マトリックス・コンポジット(CMC))などが挙げられる。こうした複合材料の具体例としては、Si,SiC及びTiを含む材料やSiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料などが挙げられる。Si,SiC及びTiを含む材料をSiSiCTiといい、SiC多孔質体にAlを含浸させた材料をAlSiCといい、SiC多孔質体にSiを含浸させた材料をSiSiCという。ベースプレート30の材料としては、セラミックプレート20の材料と熱膨張係数の近いものを選択するのが好ましい。ベースプレート30は、RF電極としても用いられる。具体的には、ウエハ載置面21の上方には上部電極(図示せず)が配置され、その上部電極とベースプレート30とからなる平行平板電極間に高周波電力を印加するとプラズマが発生する。
【0018】
金属接合層40は、セラミックプレート20の下面とベースプレート30の上面とを接合している。金属接合層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。金属接合層40は、はんだや金属ろう材で形成された層であってもよい。金属接合層40は、貫通穴42を有している。貫通穴42は、平面視でプラグ配置穴24を包含する大きさに形成され、ガス穴34に連通している。なお、ガス穴34及び貫通穴42が本発明のガス供給路に相当する。
【0019】
緻密質プラグ50は、ガスが通過不能な電気絶縁性の円柱部材である。緻密質プラグ50の外周面には、図3に示すように、雄ねじ55が設けられている。緻密質プラグ50の雄ねじ55は、プラグ配置穴24の雌ねじ25に螺合されている。図3には、雌ねじ25と雄ねじ55として、規格品である一般用メートルねじ(JIS B 0205)を採用した例を示す。緻密質プラグ50の上面は、シールバンド21aの上面や円形小突起21bの上面よりも低い位置にある。本実施形態では、緻密質プラグ50の上面は、ウエハ載置面21の基準面21cと同じ高さになっている。また、緻密質プラグ50の全長は、プラグ配置穴24の全長と同じになっている。緻密質プラグ50としては、セラミック緻密質体を用いることができる。セラミック緻密質体としては、例えばセラミックプレート20と同じ材料の緻密質体を用いることができる。
【0020】
ガス通路60は、プラグ配置穴24の雌ねじ25と緻密質プラグ50の雄ねじ55との間に設けられ、セラミックプレート20の下面から上面(ウエハ載置面21)まで連通している。ガス通路60は、図3に示すように、雌ねじ25の断面台形の山部25aと雄ねじ55の断面円弧状(R形状)の谷部55bとの空隙61と、雌ねじ25の断面円弧状(R形状)の谷部25bと雄ねじ55の断面台形の山部55aとの空隙62とで構成される。空隙61は、セラミックプレート20の下面から上面(ウエハ載置面21)まで連通するように、雄ねじ55の谷部55bに沿って螺旋状に形成されている。空隙62は、セラミックプレート20の下面から上面(ウエハ載置面21)まで連通するように、雌ねじ25の谷部25bに沿って螺旋状に形成されている。
【0021】
次に、こうして構成された半導体製造装置用部材10の使用例について説明する。まず、図示しないチャンバー内に半導体製造装置用部材10を設置した状態で、ウエハWをウエハ載置面21に載置する。そして、チャンバー内を真空ポンプにより減圧して所定の真空度になるように調整し、セラミックプレート20の電極22に直流電圧をかけて静電吸着力を発生させ、ウエハWをウエハ載置面21(具体的にはシールバンド21aの上面や円形小突起21bの上面)に吸着固定する。次に、チャンバー内を所定圧力(例えば数10~数100Pa)の反応ガス雰囲気とし、この状態で、チャンバー内の天井部分に設けた図示しない上部電極と半導体製造装置用部材10のベースプレート30との間に高周波電圧を印加させてプラズマを発生させる。ウエハWの表面は、発生したプラズマによって処理される。ベースプレート30の冷媒流路32には、冷媒が循環される。ガス穴34には、図示しないガスボンベからバックサイドガスが導入される。バックサイドガスとしては、熱伝導ガス(例えばヘリウム等)を用いる。バックサイドガスは、ガス穴34、貫通穴42及びガス通路60を通って、ウエハWの裏面とウエハ載置面21の基準面21cとの間の空間に供給され封入される。このバックサイドガスの存在により、ウエハWとセラミックプレート20との熱伝導が効率よく行われる。なお、バックサイドガスは、緻密質プラグ50自体を通過することはない。
【0022】
次に、半導体製造装置用部材10の製造例について説明する。まず、セラミックプレート20及び緻密質プラグ50を準備する。セラミックプレート20及び緻密質プラグ50は既に説明した通りのものである。次に、緻密質プラグ50をセラミックプレート20のプラグ配置穴24に螺合する。具体的には、緻密質プラグ50の上面又は下面に粘着性のツマミを付着させ、そのツマミを手で摘まんで緻密質プラグ50をプラグ配置穴24の上部開口又は下部開口から螺合する。このとき、緻密質プラグ50の上面がウエハ載置面21の基準面21cと一致するように螺合する。本明細書で「一致」とは、完全に一致する場合のほか、実質的に一致する場合(例えば公差の範囲に入る場合など)も含む(以下同じ)。続いて、粘着性のツマミを取り外し、必要に応じてツマミを取り外した面を清掃する。その後、セラミックプレート20の下面とベースプレート30の上面とをTCBにより接合する。これにより、金属接合層40が形成され、半導体製造装置用部材10が得られる。なお、これとは別の製造例として、緻密質プラグ50をプラグ配置穴24に螺合する前にセラミックプレート20の下面とベースプレート30の上面とをTCBにより接合し、その後、緻密質プラグ50をプラグ配置穴24の上部開口から螺合してもよい。
【0023】
以上詳述した半導体製造装置用部材10では、緻密質プラグ50はプラグ配置穴24に螺合されているため、緻密質プラグ50を交換する必要が生じた場合に緻密質プラグ50を容易に交換することができる。また、ガスは、緻密質プラグ50を介してではなく、プラグ配置穴24の雌ねじ25と緻密質プラグ50の雄ねじ55との間のガス通路60を介して、ガス穴34からウエハ載置面21に供給される。ガス通路60は、雌ねじ25や雄ねじ55に沿って形成される螺旋状の通路であり、ウエハ載置面21からベースプレート30までの距離(沿面距離)を長くすることができる。そのため、耐電圧が高くなり、ウエハWをプラズマで処理する際にガス通路60を介してアーク放電が発生するのを抑制することができる。
【0024】
また、緻密質プラグ50の上面は、シールバンド21aの上面や円形小突起21bの上面よりも低い位置にある。そのため、緻密質プラグ50の上面でウエハWを持ち上げてしまうことがない。
【0025】
更に、緻密質プラグ50の上面は、ウエハ載置面21の基準面21cと同じ高さである。そのため、ウエハWの下面と緻密質プラグ50の上面との間の空間の高さが低く抑えられる。したがって、この空間で放電が発生するのを防止することができる。
【0026】
更にまた、ガス通路60(空隙61,62)の上下方向の最大長さHmax(図3)は、0.5mm以下であることが好ましい。ガス通路60の上下方向の最大長さが0.5mm以下ならば、ウエハWをプラズマで処理する際にガス通路60内で異常放電(グロー放電)が発生するのを抑制することができる。例えば、ガス通路60に流すガスがヘリウムの場合、プラズマ発生時にヘリウムが電離するのに伴って生じた電子が加速して別のヘリウムに衝突することにより異常放電が起きるが、ガス通路60の上下方向の最大長さHmaxが0.5mm以下であれば、ガス通路60内では電子は十分加速することはできないため異常放電の発生を抑制することができる。ガス通路60内での異常放電の発生をより抑制するには、この最大長さを0.2mm以下にすることが好ましい。
【0027】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0028】
上述した実施形態では、雌ねじ25と雄ねじ55として規格品である一般用メートルねじを採用したが、他の規格品(例えばメートル台形ねじやインチねじ(ユニファイねじ)など)を採用してもよい。
【0029】
上述した実施形態では、雌ねじ25と雄ねじ55として規格品である一般用メートルねじを採用したが、規格品を改良したものを採用してもよい。例えば、図4に示すように、規格品である一般用メートルねじ(図3)に比べて、雄ねじ55の山部55aの高さを低くすると共に、雌ねじ25の山部25aの高さを低くしてもよい。こうすることにより、ガス通路60(空隙61,62)を流れるガスの流量を多くすることができる。なお、一般用メートルねじに比べて、雄ねじ55の山部55a及び雌ねじ25の山部25aのいずれか一方の高さを低くしてもよい。
【0030】
あるいは、図5に示すように、一般用メートルねじに比べて、雄ねじ55の谷部55bの深さを深くすると共に、雌ねじ25の谷部25bの深さを深くしてもよい。こうすることによっても、ガス通路60(空隙61,62)を流れるガスの流量を多くすることができる。なお、一般用メートルねじに比べて、雄ねじ55の谷部55b及び雌ねじ25の谷部25bのいずれか一方の深さを深くしてもよい。
【0031】
あるいは、図6に示すように、一般用メートルねじに比べて、雄ねじ55の山部55aの高さを低くすると共に、雌ねじ25の山部25aの高さを低くし、雄ねじ55の谷部55bの深さを深くすると共に、雌ねじ25の谷部25bの深さを深くしてもよい。こうすれば、ガス通路60(空隙61,62)を流れるガスの流量を更に多くすることができる。
【0032】
あるいは、図7に示すように、一般用メートルねじにおいて、雌ねじ25の谷部25bに横方向に延びるスリット溝25cを設けてもよい。スリット溝25cは、谷部25bの深さを深くする一例に相当する。スリット溝25cは、雌ねじ25に沿って螺旋状に形成されるため、ガス通路60(空隙62)を流れるガスの流量を多くすることができる。なお、こうしたスリット溝25cを図4~6の雌ねじ25の谷部25bに設けてもよい。また、図3~6の雄ねじ55の谷部55bにスリット溝25cと同様のスリット溝を設けてもよい。
【0033】
上述した実施形態では、雌ねじ25の山部25aや雄ねじ55の山部55aを断面台形としたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば断面円弧状(R形状)としてもよい。また、雌ねじ25の谷部25bや雄ねじ55の谷部55bを断面円弧状(R形状)としたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば断面台形としてもよいし、断面三角形としてもよい。
【0034】
上述した実施形態において、ガス通路60を流れるガスの流量を調整したい場合には、ガス通路60の数のほか、プラグ配置穴24の雌ねじ25と緻密質プラグ50の雄ねじ55のねじピッチ、ねじ径(呼び径)、ねじ形状(例えば上述の図4図7)等で調整することができる。
【0035】
上述した実施形態では、緻密質プラグ50の上面は、ウエハ載置面21の基準面21cと同じ高さとしたが、特にこれに限定されない。例えば、ウエハ載置面21の基準面21cの高さから緻密質プラグ50の上面の高さを引いた差Δhが0.1mm以下の範囲になるようにしてもよい。換言すれば、緻密質プラグ50の上面を、ウエハ載置面21の基準面21cよりも0.1mm以下の範囲で低い位置に配置してもよい。このようにしても、ウエハWの下面と緻密質プラグ50の上面との間の空間の高さは比較的低く抑えられる。したがって、この空間で放電が発生するのを防止することができる。
【0036】
上述した実施形態では、緻密質プラグ50の全長をプラグ配置穴24の全長と同じとしたが、特にこれに限定されない。例えば、緻密質プラグ50の全長をプラグ配置穴24の全長よりも短くしてもよいし、緻密質プラグ50の全長をプラグ配置穴24の全長よりも長くしてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、ベースプレート30に、ガス供給路を構成するガス穴34を設けたが、特にこれに限定されない。例えば、図8に示す半導体製造装置用部材110のように、ベースプレート30に、ガス穴34の代わりに、平面視でベースプレート30と同心円のリング部64aと、ベースプレート30の裏面からリング部64aへガスを導入する導入部64bと、リング部64aから各ガス通路60へガスを分配する分配部64cとを設けてもよい。図8では、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付した。導入部64bの数は、分配部64cの数よりも少なく、例えば1本としてもよい。こうすれば、ベースプレート30に繋ぐガス配管の数をガス通路60の数(緻密質プラグ50の数)よりも少なくすることができる。この場合、緻密質プラグ50はプラグ配置穴24の上部開口から螺合することになる。
【0038】
上述した実施形態において、セラミックプレート20に内蔵される電極22として、静電電極を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、電極22に代えて又は加えて、セラミックプレート20にヒータ電極(抵抗発熱体)を内蔵してもよいし、RF電極を内蔵してもよい。
【0039】
上述した実施形態では、セラミックプレート20とベースプレート30とを金属接合層40で接合したが、金属接合層40の代わりに樹脂接合層を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、半導体製造装置に用いられる部材、例えばセラミックヒータ、静電チャックヒータ、静電チャックなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10,110 半導体製造装置用部材、20 セラミックプレート、21 ウエハ載置面、21a シールバンド、21b 円形小突起、21c 基準面、22 電極、24 プラグ配置穴、25a 山部、25b 谷部、25c スリット溝、30 ベースプレート、32 冷媒流路、34 ガス穴、40 金属接合層、42 貫通穴、50 緻密質プラグ、55a 山部、55b 谷部、60 ガス通路、61,62 空隙、64a リング部、64b 導入部、64c 分配部。
【要約】
半導体製造装置用部材10は、セラミックプレート20と、プラグ配置穴24と、緻密質プラグ50と、ガス通路60と、ベースプレート30とを備える。セラミックプレート20は、上面にウエハ載置面21を有する。プラグ配置穴24は、セラミックプレート20を上下方向に貫通し、内周面に雌ねじ25を備える。緻密質プラグ50は、外周面に雄ねじ55を備え、プラグ配置穴24の雌ねじ25に螺合されている。プラグ配置穴24の雌ねじ25と緻密質プラグ50の雄ねじ55との間には、セラミックプレート20の下面から上面まで連通するガス通路60が設けられている。ベースプレート30は、セラミックプレート20の下面に接合され、ガス供給路を有している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8