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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】体液からのイオンの除去
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/02 20060101AFI20240613BHJP
   B01J 39/02 20060101ALI20240613BHJP
   B01J 39/10 20060101ALI20240613BHJP
   B01J 39/14 20060101ALI20240613BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20240613BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20240613BHJP
   C01B 33/20 20060101ALI20240613BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
A61M1/02 100
B01J39/02
B01J39/10
B01J39/14
B01J20/10 C
B01D15/00 M
B01D15/00 N
C01B33/20
A61M1/36 165
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023519248
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 US2021071626
(87)【国際公開番号】W WO2022072999
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-04-25
(31)【優先権主張番号】63/085,804
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598055242
【氏名又は名称】ユーオーピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】シレジマニ-レカリウ、ミモザ
(72)【発明者】
【氏名】ホッジス、ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ヤクブザク、パウリナ
(72)【発明者】
【氏名】コレフ、エフゲニー
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】シーツ、ウィリアム
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06332985(US,B1)
【文献】特表2010-512939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/02
A61M 1/36
B01J 39/02
B01J 39/10
B01J 39/14
B01J 20/10
B01D 15/00
C01B 33/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pb2+、Hg2+、K、及びNH 毒素又はそれらの混合物を体液から除去するためのイオン交換体であって、
前記イオン交換体が、無水ベースで、以下の実験式:
r+ s+Si
(式中、Aは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ヒドロニウムイオン、アンモニウムイオン、第四級アンモニウムイオン、及びそれらの混合物からなる群から選択される交換可能な陽イオンであり、「r」は、Aの加重平均原子価であり、1から2まで変化し、「p」は、Aの全金属(全金属=M)に対するモル比であり、1から5まで変化し、「M」は、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるフレームワーク希土類金属であり、「s」は、Mの加重平均原子価であり、3から4まで変化し、「n」は、Siの全金属に対するモル比であり、3~10の値を有し、「m」は、Oの全金属に対するモル比であり、
【数1】
によって得られる)を有する希土類シリケート組成物である、イオン交換体。
【請求項2】
体液、透析溶液、又は前記体液と前記透析溶液との混合物の組み合わせを含む組成物であって、前記組み合わせが、無水ベースで、以下の実験式:
r+ s+Si
(式中、Aは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ヒドロニウムイオン、アンモニウムイオン、第四級アンモニウムイオン、及びそれらの混合物からなる群から選択される交換可能な陽イオンであり、「r」は、Aの加重平均原子価であり、1から2まで変化し、「p」は、Aの全金属(全金属=M)に対するモル比であり、1から5まで変化し、「M」は、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるフレームワーク希土類金属であり、「s」は、Mの加重平均原子価であり、3から4まで変化し、「n」は、Siの全金属に対するモル比であり、3~10の値を有し、「m」は、Oの全金属に対するモル比であり、
【数2】
によって得られる)を有する希土類シリケートイオン交換体を更に含む、組成物。
【請求項3】
希土類シリケートイオン交換体のための支持材料を含有するマトリックスを含む装置であって、前記希土類シリケートイオン交換体が、無水ベースで、以下の実験式:
r+ s+Si
(式中、Aは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ヒドロニウムイオン、アンモニウムイオン、第四級アンモニウムイオン、及びそれらの混合物からなる群から選択される交換可能な陽イオンであり、「r」は、Aの加重平均原子価であり、1から2まで変化し、「p」は、Aの全金属(全金属=M)に対するモル比であり、1から5まで変化し、「M」は、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるフレームワーク希土類金属であり、「s」は、Mの加重平均原子価であり、3から4まで変化し、「n」は、Siの全金属に対するモル比であり、3~10の値を有し、「m」は、Oの全金属に対するモル比であり、
【数3】
によって得られる)を有し、
前記希土類シリケートイオン交換体がPb2+、Hg2+、K、及びNH 毒素又はそれらの混合物を体液から除去する、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の記載)
本出願は、2020年9月30日に出願された、米国特許仮出願第63/085,804号の優先権を主張し、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、重金属毒素、例えば、鉛及び水銀イオン、並びに代謝毒素、例えば、カリウム及びアンモニウムイオンを体液から除去するための体内及び体外プロセスに関する。血液又は他の体液は、毒素を選択的に除去することができる希土類シリケートイオン交換組成物に接触して置かれる。代替的に、血液を、最初に透析溶液と接触させ、次いで、この透析溶液を希土類金属シリケートイオン交換組成物と接触させる。
【背景技術】
【0003】
哺乳動物、例えばヒトにおいて、腎臓及び/又は肝臓が、身体からの代謝廃棄産物の除去に失敗した場合、身体の他の臓器の大部分もまたやがて衰える。したがって、血液の体外処置によって患者の血液から毒素を除去するための、安全かつ有効な方法を発見しようと、広範囲にわたる努力が行われてきた。昏睡及び肝不全という疾病の原因と考えられている、低分子毒素、タンパク質結合分子又はより大きな分子を除去するための多数の方法が提案されてきた。これらの毒性化合物の一部は、クレアチン、アンモニア、フェノール、メルカプタン、短鎖脂肪酸、芳香族アミノ酸、偽神経伝達物質(オクトパミン)、神経阻害剤(グルタミン酸)及び胆汁酸塩として特定されている。当技術は、このような毒素を含有する血液を処置するいくつかの方法を示している。古典的な方法は、当然ながら透析である。透析は、半透性膜を通過する拡散によって、液体から第2の液体に物質を除去することとして定義される。身体外部の血液の透析(血液透析)は、「人工腎臓」の基礎となる。現在、一般に使用されている人工腎臓の処置手順は、1940年代にKolffによって開発されたものに類似している。1940年代以来、人工腎臓又は人工肝臓の改善に取り組んだ開示がいくつか存在する。すなわち、米国特許第4,261,828号は、血液を解毒する装置を開示している。この装置は、木炭又は樹脂、及び場合により酵素担体などの吸着剤が充填された筐体を備える。血液と吸着剤との間の直接接触を防止するため、吸着剤は、吸着される物質に対して透過性であるが、赤血球の構成成分と吸着剤との間の直接接触を防止するコーティング剤によりコーティングされ得る。米国特許第4,581,141号は、透析に使用するための組成物を開示しており、これは、表面吸着性物質、水、懸濁化剤、ウレアーゼ、カルシウムをロードした陽イオン交換体、脂肪族カルボン酸樹脂及び代謝可能な有機酸緩衝液を含有する。カルシウムをロードした陽イオン交換体は、カルシウム交換されたゼオライトとすることができる。欧州特許第0046971(A1)号は、ゼオライトWは、アンモニアを除去する血液透析に使用され得ることを開示している。最後に、米国特許第5,536,412号は、血液ろ過及び血漿ろ過デバイスを開示している。この場合、血液は、中空繊維膜の内部を流れ、血液が流れている間、吸着剤懸濁液が、中空繊維膜の外面に循環される。別の工程は、血液の血漿画分を、膜の内部に交互に出入りさせて、それによって毒素の除去を達成することを含む。吸着剤は、ゼオライト又は陽イオン交換樹脂などのイオン交換体と一緒になった活性炭とすることができる。
【0004】
上記の特許に開示されている吸着剤に伴う課題が存在する。例えば、木炭は、水、リン酸塩、ナトリウム又は他のイオンのいずれも除去しない。ゼオライトは、透析溶液に部分的にしか溶解することができず、アルミニウム及び/又はケイ素が血液中に入ることが可能であるという欠点を有する。更に、ゼオライトは、血液に由来するナトリウムイオン、カルシウムイオン及びカリウムイオンを吸着する可能性があり、それによって、これらのイオンを血液に戻すことが必要となり得る。
【0005】
最近になって、体液(とりわけ、血液)などの流体に実質的に不溶な微多孔質イオン交換体の例、すなわち、米国特許第5,888,472号、米国特許第5,891,417号、及び米国特許第6,579,460号のジルコニウムをベースとするシリケート及びチタンをベースとするシリケートが開発されている。血液又は透析液から毒性のアンモニウム陽イオンを除去するために、これらのジルコニウムをベースとするシリケート又はチタンをベースとするシリケートの微多孔質イオン交換体を使用することが、米国特許第6,814,871号、米国特許第6,099,737号及び米国特許第6,332,985号に記載されている。更に、これらの組成物のいくつかは、カリウムイオン交換においても選択的であり、体液からカリウムイオンを除去して高カリウム血症の疾患を治療することができることが見出されたが、これは、米国特許第8,802,152号、米国特許第8,808,750号、米国特許第8,877,255号、米国特許第9,457,050号、米国特許第9,662,352号、米国特許第9,707,255号、米国特許第9,844,567号、米国特許第9,861,658号、米国特許第10,413,569号、米国特許第10,398,730号、米国特許出願公開第2016/0038538号、及び米国特許第10,695,365号で論じられている。例えば、透析におけるこれらの物質のex-vivo用途は、米国特許第9,943,637号に記載されている。
【0006】
血液適合性ポリマーもまた、体液を処置するデバイスに組み込まれている。米国特許第9033908号は、血液から毒素を除去するための、小型の卓上型デバイス及び装着可能なデバイスを開示している。このデバイスは、血液適合性多孔質ポリマーマトリックスに埋め込まれたナノ粒子を利用する収着フィルタを特徴とする。このデバイス及びフィルタシステムによって標的とされる毒性物質の中には、カリウム、アンモニア、リン酸塩、ウレア及び尿酸がある。同様に、ポリジアセチレンをベースとするナノ粒子が拘束されている架橋化ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートからなる3D印刷ヒドロゲルマトリックスが、メリチンという毒素の除去に成功を収めたことが証明されている(Nat.Commun.,5,3774,2014)。
【0007】
代謝廃棄物から誘導される毒素に加えて、ヒトは、例えば、摂取、皮膚からの吸収、又は吸入によって身体に進入するおそれがある環境毒素の影響を受けやすい。一般的な周知の毒性金属は鉛である。長年にわたり、鉛は、テトラエチル鉛の形態でガソリンの重要な成分、及び塗料の重要な成分であった。現在、これらの産業では、鉛はもはや使用されていないか、又はほとんど使用されていないが、依然として環境面で危険である。鉛含有塗料により塗装されている古い家におけるリフォーム作業は、吸入されるおそれがあるか、又は近傍土壌に行き着くおそれがあるダストを生成し、鉛は、地下水に漏出されるか、又は植物によって取り込まれる。信頼性に乏しい又は規制されていない給水は、最も注目すべきことに、米国ミシガン州のフリントにおける最近の例であるPb2+毒性への危険な曝露を呈し、これは、一部の居住者が、新しい都市水供給源に曝露した後の血液中において、危険なほどに高いPb2+レベルを有することが判明した。鉛混入は、神経系及び泌尿器系に影響を及ぼすこと、並びに曝露した子供における学習及び発達障害を含めた、多数の不健全な健康への影響に関連している。罹患患者の血液から鉛を除去すると、更に曝露及び損傷が低減される。
【0008】
別の周知の毒性金属は水銀である。環境中に見出されるほとんどの人が生成した水銀は化石燃料の燃焼に由来し、主な源は石炭燃焼発電プラントであるが、さまざまな工業プロセスも環境中に水銀を放出する。環境中の水銀は、重金属の非常に有毒な形態であるメチル水銀の形態で魚介類に生物蓄積し、汚染された海産物の消費は、ヒトにおける水銀中毒の最も一般的な原因である。一旦体内に入ると、メチル水銀は二価の水銀に変換される可能性が高く、そこで還元-酸化経路に供給される。別の一般的な曝露源は、水銀アマルガムから構成される歯科用充填物からのものである。水銀の血中レベルの上昇は、神経障害及び腎不全を含む多種多様な疾病を引き起こす可能性があり、これらの有害作用は小児において増幅される。
【0009】
キレート療法は、しばしば、重金属中毒の好ましい治療である。キレート剤CaNaEDTA(エチレンジアミン四酢酸)は、血液からPb2+を除去するために使用されてきたが、この錯体は、胃腸管による吸収が乏しく、多くの場合、静脈内投与されなければならない。このキレートは、Pb2+を動員し、脳を含む他の組織にこれを移動させることができることが観察された(Int.J.Environ.Res.Public Health,2010,7,2745-2788)。ジメルカプトコハク酸(Dimercaptosuccinic acid、DMSA)は、重金属中毒に対する解毒剤として認識されており、Pb2+及びHg2+中毒を治療するために使用されてきた(米国特許第5,519,058号を参照されたい)。支持型キレート剤、すなわち、樹脂に結合されたキレート剤が、透析様式での重金属除去に使用されており、この場合、血液は、半透明膜の一方の側に存在し、樹脂支持型のものは、もう一方の側でキレートを形成する(米国特許第4612122号を参照されたい)。
【0010】
ゼオライトは、慢性鉛中毒を処置するために提案されており、米国特許出願公開第20180369279(A1)号では、ピル状形態で服用されるが、ゼオライトは、とりわけ、胃腸管における安定性に限界がある。
【0011】
出願人らは、希土類シリケートイオン交換組成物として特定された微多孔質組成物が、体液又は透析溶液などの溶液からPb2+、Hg2+、K、及びNH イオンを選択的に除去することができることを決定した。微多孔質組成物のいくつかは、米国特許第6,379,641号に記載されており、これは参照により組み込まれる。これらのイオン交換体は、無水ベースで、以下のそれらの実験式:
r+ s+ 1-x’t+ Si
(式中、Aは、ナトリウムなどの交換可能な陽イオンであり、Mは、希土類元素の群から選択される少なくとも1種の元素であり、M’は、+2、+3、+4、又は+5の原子価を有するフレームワーク金属である)によって更に特定される。組成物は、体液(中性及び軽度の酸性又は塩基性のpH)に実質的に不溶であるため、それらは、胃腸系から重金属及び代謝毒素を除去するために経口摂取され、また透析溶液から毒素、具体的には、Pb2+、Hg2+、K、及びNH を除去するために使用され得る。
【発明の概要】
【0012】
上述のように、本発明は、体液、透析溶液、及びそれらの混合物からなる群から選択される流体から、Pb2+、Hg2+、K、NH 、又はそれらの組み合わせなどの重金属及び代謝毒素を除去するためのプロセスであって、毒素を含有する流体を希土類シリケートイオン交換体とイオン交換条件で接触させ、それによって流体から毒素を除去することを含み、希土類シリケートイオン交換体が、無水ベースで、以下の実験式:
r+ s+ 1-x’t+ Si
を有する、プロセスに関する。
この式において、「A」は、均衡陽イオンとしても働く構造指向性陽イオンであり、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ヒドロニウムイオン、アンモニウムイオン、第四級アンモニウムイオン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。アルカリ金属の具体例としては、ナトリウム、カリウム、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。アルカリ土類金属の例としては、マグネシウム及びカルシウムが挙げられるが、これらに限定されない。「r」は、Aの加重平均原子価であり、1から2まで変化する。「A」の全金属(全金属=M+M’)に対するモル比である「p」の値は、1から5まで変化する。フレームワーク構造は、ケイ素、少なくとも1種の希土類元素(M)、及び場合によりM’金属から構成される。全金属はM+M’として定義され、希土類金属Mである全金属のモル分率は「1-x」によって得られ、一方、M’金属である全金属のモル分率は「x」によって得られる。Mで表される希土類元素は、+3又は+4の原子価であり、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム物を含む。Mについてのこれらの選択肢に従って、Mの加重平均原子価「s」は、3から4まで変化する。同様に、2種以上のM’金属が存在することができ、各M’金属は異なる原子価を有することができる。フレームワーク中に置換され得るM’金属は、+2、+3、+4、又は+5の原子価を有する。これらの金属の例としては、亜鉛(+2)、鉄(+3)、チタン(+4)、ジルコニウム(+4)、及びニオブ(+5)が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、M’の加重平均原子価「t」は、2から5まで変化する。最後に、「n」は、Siの全金属に対するモル比であり、3~10の値を有し、「m」は、Oの全金属に対する比であり、
【0013】
【数1】
によって得られる。
【0014】
本目的及び他の目的、並びに本実施形態及び他の実施形態は、「発明を実施するための形態」の後に明確になろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
明記されるとおり、本出願人らは、体液及び透析溶液から選択される流体から毒素を除去するための新しいプロセスを開発した。本プロセスの必須要素の1つはイオン交換体であり、これは、大容量及び強力な親和性、すなわち、少なくとも1種以上の重金属又は代謝毒素、具体的には、Pb2+、Hg2+、K、又はNH に対して選択性を有する。組成物は、以下の複合実験式(無水ベースで):
r+ s+ 1-x’t+ Si
を有する希土類シリケートとして特定される。
この式において、「A」は、均衡陽イオンとしても働く構造指向性陽イオンであり、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ヒドロニウムイオン、アンモニウムイオン、第四級アンモニウムイオン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。アルカリ金属の具体例としては、ナトリウム、カリウム、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。アルカリ土類金属の例としては、マグネシウム及びカルシウムが挙げられるが、これらに限定されない。「r」は、Aの加重平均原子価であり、1から2まで変化する。「A」の全金属(全金属=M+M’)に対するモル比である「p」の値は、1から5まで変化する。フレームワーク構造は、ケイ素、少なくとも1種の希土類元素(M)、及び場合によりM’金属から構成される。全金属はM+M’として定義され、希土類金属Mである全金属のモル分率は「1-x」によって得られ、一方、M’金属である全金属のモル分率は「x」によって得られる。Mで表される希土類元素は、+3又は+4の原子価であり、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム物を含む。Mについてのこれらの選択肢に従って、Mの加重平均原子価「s」は、3から4まで変化する。同様に、2種以上のM’金属が存在することができ、各M’金属は異なる原子価を有することができる。フレームワーク中に置換され得るM’金属は、+2、+3、+4、又は+5の原子価を有する。これらの金属の例としては、亜鉛(+2)、鉄(+3)、チタン(+4)、ジルコニウム(+4)、及びニオブ(+5)が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、M’の加重平均原子価「t」は、2から5まで変化する。最後に、「n」は、Siの全金属に対するモル比であり、3~10の値を有し、「m」は、Oの全金属に対する比であり、
【0016】
【数2】
によって得られる。
【0017】
組成物は、SiO四面体酸化物単位、少なくとも1種の希土類金属酸化物単位、及び場合によりM’金属酸化物単位から構成されるフレームワーク構造を有する。更に、希土類金属は、6、7、又は8配位であり、M’金属は、4、5、又は6配位である。
【0018】
本明細書に記載の希土類シリケートは、ケイ素の反応性源、希土類金属(M)、場合によりM’金属、少なくとも1種の陽イオン(A)、及び水を組み合わせることによって調製される反応混合物の水熱結晶化によって調製される。ケイ素源としては、コロイド状シリカ、ヒュームドシリカ、テトラオルトシリケート、及びナトリウムシリケートが挙げられるが、これらに限定されない。希土類金属(M)の源としては、金属ハロゲン化物、金属硝酸塩、金属酢酸塩、金属硫酸塩、金属酸化物、金属含水酸化物、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。希土類金属(M)前駆体の具体例としては、硫酸セリウム(III)、硫酸セリウム(IV)、塩化イットリウム、酸化イッテルビウム、硝酸イッテルビウム、硫酸イッテルビウム八水和物、炭酸イッテルビウム、及びシュウ酸イッテルビウムが挙げられるが、これらに限定されない。M’金属の源としては、金属ハロゲン化物、金属硝酸塩、金属酢酸塩、金属酸化物、金属含水酸化物、金属アルコキシド、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。具体例としては、塩化亜鉛、ジルコニウムブトキシド、塩化チタン(IV)、塩化チタン(III)溶液、塩化ニオブ(V)、及び酸化ニオブ(V)が挙げられるが、これらに限定されない。アルカリ源としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化ルビジウム、及びハロゲン化セシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
一般に、本発明で使用される希土類シリケートイオン交換組成物を調製するために使用される水熱プロセスは、必要な構成成分の反応性源を含有する反応混合物を形成することを伴い、酸化物のモル比に関して、以下の式:
a A2/mO:1-b MOh/2:b M’Og/2:c SiO:d H
(式中、「a」は、1~100の値を有し、「m」は、構成成分Aの原子価であり、+1又は+2の値を有し、「b」は、0~1.0未満の値を有し、「h」は、構成成分Mの原子価であり、+3又は+4の値を有し、「g」は、構成成分M’の原子価であり、+2、+3、+4、又は+5の値を有し、「c」は、0.5~150の値を有し、「d」は、30~10000の値を有する)によって表される。
【0020】
反応混合物は、適切な希土類金属、ケイ素、鋳型陽イオン、及び場合によりM’元素の源を任意の順序で混合して所望の混合物を得ることによって調製される。混合物の塩基性度は、過剰のアルカリ水酸化物、第四級水酸化アンモニウム、及び/又は混合物の他の構成物質の塩基性化合物を加えることによって制御される。反応混合物は、次いで、100℃~300℃の温度で、自発生圧力下、1時間~30日の期間、密閉反応容器内で反応する。反応が完了した後に、得られた混合物をろ過又は遠心分離して、固体生成物を単離し、これを脱イオン水により洗浄して、空気中で、又は100℃で乾燥させる。上述のように、本発明の組成物は、四面体SiO単位のフレームワーク構造、少なくとも1つの希土類金属酸化物単位、及び場合によりM’金属酸化物単位を有する。このフレームワークは、多くの場合、2.5Å~15Åまでかなり変化する一様な細孔径を有する結晶内細孔系を有する微多孔質構造体をもたらす。一方、組成物のフレームワークは、層形成され得るか、又は非晶質であり得る。
【0021】
合成されるとおり、本発明の組成物は、層間に、又は他の電荷を等しくする位置において、細孔内にアルカリ又はアルカリ土類金属鋳型剤の一部を含有する。これらの金属は、交換可能な陽イオンとして記載され、それらの金属は、他の(二次)A’陽イオンと交換され得ることを意味する。一般に、交換可能な陽イオンAは、他のアルカリ金属陽イオン(K、Na、Rb、Cs)、アルカリ土類陽イオン(Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+)、ヒドロニウムイオン、又はそれらの混合物から選択されるA’陽イオンと交換され得る。陽イオンA’は、陽イオンAとは異なることが理解される。1種の陽イオンを別のものに交換するために使用される方法は、当分野で周知であり、組成物を所望の陽イオン(過剰モル濃度で)を含有する溶液と交換条件で接触させることを含む。交換条件は、25℃~100℃の温度、及び20分間~2時間の時間を含む。最終生成物中に存在する具体的な陽イオン(又はその混合物)は、組成物の特定の使用、及び使用されている具体的な組成物に依存するであろう。特定の組成物の1つはイオン交換体であり、この場合、陽イオンA’は、Na、Ca2+及びHイオンの混合物である。
【0022】
上述のように、本発明の材料は、高いpHで調製され、そのため、それらが曝露される任意の液体のpHを増加させ得る。胃腸液などの体液は、消化管全体にわたって酸性であり、下部胃では1.0程度の低いpH値に達する。血液のpHは7.4である。体液のこれらのカテゴリーの両方は、本発明の合成されたままの材料に直接曝露される場合、pHが上昇する。したがって、本発明の材料をイオン交換することが好ましい。1つの好ましい実施形態では、合成されたままの希土類シリケートイオン交換体は、酸で処理されて、イオン交換体のプロトン/ヒドロニウム交換バージョンを形成し、これは、体液と接触した際のpH上昇を回避する。別の実施形態では、合成されたままの希土類シリケートイオン交換体は、Na若しくはCa2+陽イオン又はその両方で交換されてもよい。第3の実施形態では、合成されたままの希土類シリケートイオン交換体は、Na若しくはCa2+又はその両方でのその後のイオン交換の前に、最初に酸でイオン交換されてもよい。Pb2+中毒の治療を受けている患者が低カルシウム血症である場合、患者におけるCa2+レベルの低減を回避するために、希土類シリケートイオン交換体のCa2+交換形態を使用することが有利であろう。
【0023】
ある種の例では、四級アンモニウム陽イオンが通常、水酸化物源として合成に使用される場合、四級アンモニウム陽イオンは生成物に組み込まれ得る。通常、四級アンモニウム陽イオンは、生成物への組み込みに一層高い親和性を有するアルカリ陽イオンによって、多くの場合、置き換えられるので、上記のことは、この場合には該当しない。しかし、第四級アンモニウムイオンは、生成物から除去されなければならない。これは、多くの場合、前の段落で言及したイオン交換プロセスによって実施され得る。時として、第四級アンモニウムイオンは、細孔内に捕捉されることがあり、イオン交換によって第四級アンモニウム陽イオンを除去することが可能ではないことがあり、この場合、焼成が必要である。通常、焼成は、空気気流中、又は窒素気流とその後の空気気流中で、試料をある温度又は500~600℃まで、2~24時間、加熱することからなる。このプロセスでは、四級アンモニウム陽イオンは分解されて、残留プロトンによって置き換えられる。焼成が、一旦、完了すると、試料は、上記のとおり、所望の陽イオンA’組成物にイオン交換され得る。
【0024】
これらのイオン交換組成物は、粉末形態で使用することができるか、又は当分野で周知の手段によってさまざまな形状に形成することができることもやはり本発明の範囲内にある。これらのさまざまな形状の例としては、丸状、押出成形物、球体、ペレット及び不規則形状粒子が挙げられる。これは、米国特許第6,579,460(B1)号及び米国特許第6,814,871(B1)号に既に実証されている。本発明のイオン交換組成物はまた、理想的には、米国特許第9,033,908(B2)号に開示されている収着フィルタ中などの、血液と適合可能な多孔質ネットワークに挿入されている又は結合していることを含む、多孔質ネットワーク中に支持されていてもよい。多孔質ネットワークは、天然又は合成ポリマー、及びバイオポリマー及びメソ細孔金属酸化物、及びシリケートからなっていてもよい。好適な天然ポリマー(バイオポリマー)は、炭水化物又はタンパク質のオリゴマー及びポリマーから作製されている、架橋炭水化物又はタンパク質を含むことができる。バイオポリマーは、好ましくは多糖である。多糖の例としては、1,3-、1,4-及び/又は1,6-連結基を有するα-グルカンが挙げられる。これらの中で、アミロース、アミロペクチン及びデキストリンを含めた「デンプンファミリー」がとりわけ好ましいが、プルラン、エルシナン、ロイテラン及び他のα-グルカンもまた好適である。ただし1,6-連結基の割合は、好ましくは、70%未満、より好ましくは60%未満である。他の好適な多糖としては、β-1,4-グルカン(セルロース)、β-1,3-グルカン、キシログルカン、グルコマンナン、ガラクタン、及びガラクトマンナン(グアーガム及びローカストビーンガム)、キサンタン、ガティ、カラギーナンのような不均質ガムを含む他のガム、アルギネート、ペクチン、β-2,1-及びβ-2,6-フルクタン(イヌリン及びイエバン)などが挙げられる。好ましいセルロースは、カルボキシメチルセルロース(CMC、例えば、AKZO NobelからのAKUCELL)である。このように使用することができる炭水化物は、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、アラビノース、マンノース、ガラクトース、ラクトース、並びにこれらの糖のオリゴマー及びポリマー、セルロース、デキストリン(マルトデキストリンなど)、アガロース、アミロース、アミロペクチン、及びガム、例えばグアーガムなどのC、H、及びO原子だけからなる炭水化物である。好ましくは、重合度(degree of polymerization、DP)がDP2からのオリゴマー炭水化物又はDP50からのポリマー炭水化物が使用される。これらは、デンプン(アミロース、アミロペクチン)、セルロース及びガム、又はリン酸化若しくは酸化によって形成され得るそれらの誘導体などの天然ポリマーとすることができる。デンプンは、陽イオン性又は陰イオン性変性デンプンであってもよい。変性され得る好適な(変性)デンプンの例は、トウモロコシ-デンプン、バレイショ-デンプン、米-デンプン、タピオカデンプン、バナナデンプン及びキャッサバデンプンである。他のポリマーもまた使用され得る(例えば、カプロラクトン)。ある種の実施形態では、バイオポリマーは、陽イオン性デンプン、最も好ましくは、酸化されたデンプン(例えば、次亜塩素酸塩により酸化されたC6)である。酸化レベルは、吸着剤材料の適用に適するよう自由に選択されてもよい。非常に好適には、酸化レベルは、5~55%、最も好ましくは、25~35%、更により好ましくは28%及び32%である。最も好ましくは、酸化されたデンプンは、架橋化されている。好ましい架橋剤は、ジエポキシドである。架橋レベルは、吸着剤材料の適用に適するよう自由に選択されてもよい。非常に好適には、架橋レベルは、0.1~25%、より好ましくは1~5%、及び最も好ましくは2.5~3.5%である。使用することができるタンパク質としては、アルブミン、オボアルブミン、カゼイン、ミオシン、アクチン、グロブリン、ヘモグロビン、ミオグロビン、ゼラチン及び小ペプチドが挙げられる。タンパク質については、植物又は動物性材料の加水分解物から得られるタンパク質もまた使用することができる。特に、好ましいタンパク質ポリマーは、ゼラチン又はゼラチンの誘導体である。
【0025】
明記したとおり、これらの組成物は、体液、透析溶液、及びそれらの混合物から選択される流体から、金属及び代謝毒素Pb2+、Hg2+、K、及びNH を吸着する際に特定の利用性を有する。本明細書で使用する場合、及び「特許請求の範囲」において、体液は、以下に限定されないが、血液、血漿及び胃腸液を含む。同様に、組成物は、限定されないが、ヒト、ウシ、ブタ、ヒツジ、サル、ゴリラ、ウマ、イヌなどを含む、任意の哺乳動物の身体の体液を処置するために使用されることが意図されている。本プロセスは、ヒトの身体から毒素を除去するのに特に好適である。流体に、所望のイオン交換体を直接又は間接的に接触させるための手段がいくつか存在し、こうして、毒素を除去する。技法の1つは血管潅流であり、これは、上記のイオン交換組成物をカラムに充填し、血液をこのカラムに流すことを含む。このようなシステムの1つは、米国特許第4,261,828号に記載されている。同‘828特許に明記されているとおり、イオン交換組成物は、好ましくは、球体などの所望の形状に形成される。更に、イオン交換組成物粒子は、セルロース誘導体などの化合物によりコーティングされ得、このセルロース誘導体は、血液と適合可能であるが、赤血球成分に非透過性である。1つの特定の例では、上記の所望のイオン交換組成物の球体は中空繊維に充填されており、それにより半透性膜をもたらすことができる。1種より多いタイプのイオン交換組成物が、本プロセスの効率を増強するため、本プロセスにおいて混合及び使用することができることをやはり指摘するべきである。
【0026】
本プロセスを実施するための別の方法は、米国特許第5,536,412号に記載されているものなどの、当分野で公知の手段によって、モレキュラーシーブ吸着剤の懸濁液又はスラリーを調製することである。同‘412特許に記載されている装置もまた、本プロセスを実施するために使用することができる。本プロセスは、金属毒素を含有する流体、例えば血液を中空繊維の内部に通過させること、及び当該通過の間に、中空繊維膜の外面に吸着剤懸濁液を循環させることを基本的に含む。同時に、陽性圧の断続的なパルスを吸着剤溶液に適用し、その結果、流体が、交互に中空繊維膜内部から出る、及びこの中に再度入り、これによって、毒素を流体から除去する。
【0027】
別のタイプの透析は、腹膜透析である。腹膜透析では、腹腔又は腹部の空洞(腹部)を、腹腔に挿入したカテーテルを介して、腹膜に接触する透析流体又は溶液で満たす。腹部における臓器の外側を取り囲む膜である腹膜を介して、血液から透析流体に毒素及び過剰の水が流れる。透析液は、毒素を除去するのに十分な時間(滞留時間)、身体に留まる。必要とされる滞留時間後、透析液は、カテーテルを介して腹腔から除去される。2つのタイプの腹膜透析が存在する。連続的な外来腹膜透析(continuous ambulatory peritoneal dialysis、CAPD)では、透析は1日中行われる。このプロセスは、腹腔中に透析溶液を維持すること、及び消費された透析液(毒素を含有する)を定期的に除去すること、及び腹腔に新しい透析溶液を再充填することを含む。これは、1日中、数回行われる。第2のタイプは、自動化腹膜透析又はAPDである。APDでは、透析溶液は、患者が睡眠している夜間にデバイスによって交換される。どちらのタイプの透析でも、交換毎に新しい透析溶液が使用されなければならない。
【0028】
本発明の希土類シリケートイオン交換体は、腹膜透析中に使用される透析溶液を再生成するために使用することができ、それによって、血液を浄化するために必要な透析液の量、及び/又は交換を行うために必要な時間の量が更に低下する。この再生成は、従来の透析に関して上記の手段のいずれかによって行われる。例えば、間接接触プロセスでは、腹腔に由来する透析液、すなわち腹膜を通過して移動された金属毒素を捕捉する第1の透析液は、ここで、膜に接触され、第2の透析溶液及び金属毒素は、膜を通過して移動され、これによって、第1の透析溶液が精製される、すなわち精製済み透析溶液になる。金属毒素を含有する第2の透析溶液は、上記のイオン交換体のうちの少なくとも1種を含有する少なくとも1つの吸着床に流される。これによって金属毒素が除去され、精製済みの第2の透析溶液が得られる。毒性金属イオン、すなわちPb2+、Hg2+、K、又はNH が除去されるまで、吸着剤床に第2の透析溶液を連続的に循環させることが通常、好ましい。第1の透析溶液が腹腔に循環されることがやはり好ましく、これによって、毒性金属の除去効率が向上し、全滞留時間が低下する。
【0029】
直接接触プロセスもまた行うことができ、この場合、第1の透析溶液が腹腔に導入され、次に、少なくとも1種のイオン交換体を含有する少なくとも1つの床に流される。上記のとおり、これは、CAPD又はAPDとして実施され得る。透析溶液の組成は、身体における適切な電解質バランスを確実にするため、さまざまとなり得る。これは、透析を実施するためのさまざまな装置と共に当分野で周知である。
【0030】
希土類シリケートイオン交換体はまた、経口摂取され得る丸状又は他の形状に形成され得、イオン交換体が腸を通過すると、胃腸液中の毒素を捕捉し、最後に排出される。胃内の高酸性内容物からイオン交換体を保護するため、成形物品は、胃内で溶解しないが、腸内で溶解するさまざまなコーティング剤によりコーティングされていてもよい。
【0031】
やはり明記したとおり、本組成物は、さまざまな交換可能な陽イオン(「A」)を用いて合成されるが、陽イオンを、血液と一層適合可能な、又は血液に悪影響を及ぼさない二次陽イオン(A’)と交換することが好ましい。この理由のため、ナトリウム、カルシウム、ヒドロニウム及びマグネシウムが好ましい陽イオンである。好ましい組成物は、ナトリウム及びカルシウム又はナトリウム、カルシウム及びヒドロニウムイオンを含有するものである。ナトリウム及びカルシウムの相対量は、かなりさまざまになり得、血液中のこれらのイオンの組成及び濃度に依存する。
【0032】
標準x線粉末回折技法を使用して、以下の実施例において表されるx線パターンを得た。放射線源は、45kV及び35mAで動作した高強度X線管であった。銅K-アルファ放射からの回折パターンは、適切なコンピュータベースの技法によって得た。平坦な圧縮粉末試料を、2°から70°(2θ)まで、連続的に走査した。オングストローム単位での面間隔(d)は、θとして表される回折ピークの位置から得て、この場合θは、デジタル化されたデータから観察されるブラッグ角である。バックグラウンドを減算した後の回折ピークの積分面積から強度を求め、「I」は、最も強い線又はピークの強度であり、「I」は、他のピークのそれぞれの強度である。
【0033】
当業者によって理解されるように、パラメータ2θの決定は、人為的及び機械的誤差の両方を受けやすく、これは組み合わせて、2θの各報告値に対して±0.4°の不確実性を課し得る。この不確実性はまた、当然ながら、2θ値から計算されるd面間隔の報告値で現れる。この不正確さは、当分野全体を通して一般的なものであり、本結晶性物質を相互と、及び先行技術の組成物と差別化することを妨げる程のものではない。報告されるx線パターンにおいて、d層間隔の相対強度は、それぞれ、非常に強いこと、強いこと、中程度及び弱いことを表す、vs、s、m及びwの表記によって表示される。100×I/Iの観点から、上記の表記は以下のように定義される。
w>0-15;m>15-60:s>60-80、及びvs>80-100
【0034】
特定の例では、合成された生成物の純度は、そのx線粉末回折パターンを参照して評価することができる。したがって、例えば、試料が純粋であると述べられている場合、この試料のx線パターンが結晶性不純物に起因する線を含まないことのみが意図されており、非晶質物質が存在しないことを意図するものではない。
【0035】
本発明を一層完全に例示するために、以下の「実施例」が記載される。実施例は例示目的に過ぎず、添付の「特許請求の範囲」に記載されるような本発明の広範な範囲に対する過度の限定として意図するものではないことを理解されたい。
【実施例
【0036】
実施例1:ナトリウムイッテルビウムシリケート
高速オーバーヘッド撹拌器を備えた250mLビーカーにおいて、9.71gのNaOHペレット(98%)を25.00gの脱イオン水に溶解した。この溶液に、20.25gのコロイド状シリカ(Ludox AS-40、40%SiO)を添加し、60分間激しく撹拌した。別に、5.25gのYbCl-6HO(99.9%)を、3.75gの濃縮HSOを含有する125.00gの脱イオン水に溶解して、透明な溶液を得た。次いで、温浸したSiOを含有する溶液を、オーバーヘッド撹拌器を使用して400RPMで激しく撹拌しながら、YbCl-6HO溶液に滴加し、均一な白色の反応混合物を得た。30分間撹拌した後、次いで、反応混合物を45ccオートクレーブに移し、静的条件下で、200℃で4日間温浸した。室温に冷却した後、生成物を遠心分離により単離した。次いで、試料を脱イオン水中に再分散させ、次いで、再び遠心分離し、このプロセスを2回繰り返した。次いで、最終生成物を100℃で一晩乾燥させた。
【0037】
生成物の化学分析により、Na3.72YbSi7.7818.93の実験式を得、その粉末X線回折パターンは、表1に列挙される代表的な回折線を特徴とした。
【0038】
【表1】
【0039】
実施例2:ナトリウムイットリウムシリケート
高速オーバーヘッド撹拌器を備えた250mLビーカーにおいて、4.85gのNaOHペレット(98%)を12.50gの脱イオン水に溶解した。この溶液に、10.13gのコロイド状シリカ(Ludox AS-40、40%SiO)を添加し、60分間激しく撹拌した。別に、2.59gのY(NO-6HO(99.9%)を、1.88gの濃縮HSOを含有する62.50gの脱イオン水に溶解して、透明な溶液を得た。次いで、温浸したSiOを含有する溶液を、オーバーヘッド撹拌器を使用して400RPMで激しく撹拌しながら、Y(NO-6HO溶液に滴加し、均一な白色の反応混合物を得た。30分間撹拌した後、次いで、反応混合物を45ccオートクレーブに移し、静的条件下で、200℃で4日間温浸した。室温に冷却した後、生成物を遠心分離により単離した。次いで、試料を脱イオン水中に再分散させ、次いで、再び遠心分離し、このプロセスを2回繰り返した。次いで、最終生成物を100℃で一晩乾燥させた。
【0040】
生成物の化学分析により、Na3.66YSi7.8318.99の実験式を得、その粉末X線回折パターンは、表2に列挙される代表的な回折線を特徴とする。
【0041】
【表2】
【0042】
実施例3:ナトリウムエルビウムシリケート
高速オーバーヘッド撹拌器を備えた250mLビーカーにおいて、5.80gのNaOHペレット(98%)を18.07gの脱イオン水に溶解した。この溶液に、12.16gのコロイド状シリカ(Ludox AS-40、40%SiO)を添加し、60分間激しく撹拌した。別に、3.10gのErCl-6HO(99.9%)を、2.25gの濃縮HSOを含有する78.02gの脱イオン水に溶解して、わずかに赤色を伴う透明な溶液を得た。次いで、温浸したSiOを含有する溶液を、オーバーヘッド撹拌器を使用して400RPMで激しく撹拌しながら、ErCl-6HO溶液に滴加し、わずかに赤色を伴う均一な反応混合物を得た。30分間撹拌した後、次いで、反応混合物を45ccオートクレーブに移し、静的条件下で、200℃で4日間温浸した。室温に冷却した後、生成物を遠心分離により単離した。次いで、試料を脱イオン水中に再分散させ、次いで、再び遠心分離し、このプロセスを2回繰り返した。次いで、最終生成物を100℃で一晩乾燥させた。
【0043】
生成物の化学分析により、Na3.71ErSi8.0221.90の実験式を得、その粉末X線回折パターンは、表3に列挙される代表的な回折線を特徴とする。
【0044】
【表3】
【0045】
実施例4:K交換されたイッテルビウムシリケート
この実施例に記載の生成物を、実施例1のイオン交換によって合成して、カリウム形態を得た。2gの実施例1に記載の生成物を100mLの脱イオン水に分散させ、続いて200mLの2M KCl溶液を添加した。混合物を50℃で2時間撹拌し、続いて冷却した。得られた固体を遠心分離により回収し、このプロセスを更に2回繰り返した。最終生成物を3回洗浄し、100℃で一晩乾燥させた。
【0046】
生成物の粉末X線回折パターンは、表4に示す代表的な回折線を特徴とする。
【0047】
【表4】
【0048】
実施例5:K交換されたイットリウムシリケート
この実施例に記載の生成物を、実施例2のイオン交換によって合成して、カリウム形態を得た。2gの実施例2に記載の生成物を100mLの脱イオン水に分散させ、続いて200mLの2M KCl溶液を添加した。混合物を50℃で2時間撹拌し、続いて冷却した。得られた固体を遠心分離により回収し、このプロセスを更に2回繰り返した。最終生成物を3回洗浄し、100℃で一晩乾燥させた。
【0049】
生成物の化学分析により、K2.65YSi5.7214.27の実験式を得、その粉末X線回折パターンは、表5に列挙される代表的な回折線を特徴とする。
【0050】
【表5】
【0051】
実施例6:スズを添加したナトリウムイッテルビウムシリケート
実施例1のスズを添加したバージョンを以下のように調製した。高速オーバーヘッド撹拌器を備えた250mLビーカーにおいて、6.45gのNaOHペレット(98%)を20.13gの脱イオン水に溶解した。この溶液に、13.49gのコロイド状シリカ(Ludox AS-40、40%SiO)を添加し、60分間激しく撹拌した。別に、3.19gのYbCl-6HO(99.9%)を、2.43gの濃縮HSOを含有する80.10gの脱イオン水に溶解して、透明な溶液を得た。次いで、温浸したSiOを含有する溶液を、オーバーヘッド撹拌器を使用して400RPMで激しく撹拌しながら、YbCl-6HO溶液に滴加し、均一な白色の反応混合物を得た。1時間撹拌した後、0.18gのSnCl-5HOを添加し、反応溶液を更に1時間撹拌した。次いで、得られた反応混合物を45ccオートクレーブに移し、静的条件下で、200℃で4日間温浸した。室温に冷却した後、生成物を遠心分離により単離した。次いで、試料を脱イオン水中に再分散させ、次いで、再び遠心分離し、このプロセスを2回繰り返した。次いで、最終生成物を100℃で一晩乾燥させた。
【0052】
エネルギー分散型X線分光法を備えた走査電子顕微鏡を使用した生成物の分析は、材料中のSnの均一な分布を示した。生成物の化学分析により、Na5.00Yb0.73Sn0.27Si7.6819.50の実験式を得、その粉末X線回折パターンは、表6に列挙される代表的な回折線を特徴とする。
【0053】
【表6】
【0054】
実施例7:カリウムイッテルビウムシリケート
高速オーバーヘッド撹拌器を備えた250mLビーカーにおいて、16.07gのKOHペレット(86%)を26.37gの脱イオン水に溶解した。この溶液に、42.93gのコロイド状シリカ(Ludox AS-30、30%SiO)を添加し、30分間激しく撹拌した。別に、5.29gのYbCl・6HO(99%)を8.33gの脱イオン水に溶解させて第2の溶液を調製し、次いで、これを撹拌しながら滴加した。反応混合物を2.5時間激しく撹拌し、次いで高速ブレンダーに移し、そこで1分間均一化した。次いで、混合物を45ccオートクレーブに移し、静的条件下で、200℃で5日間温浸した。室温に冷却した後、生成物を遠心分離により単離し、脱イオン水で洗浄し、次いで100℃で一晩乾燥させた。
【0055】
生成物の化学分析により、K3.67YbSi7.8919.11の実験式を得、その粉末X線回折パターンは、表7に示されるデータを特徴とした。
【0056】
【表7】
【0057】
実施例8:ナトリウムセリウムシリケート
高速オーバーヘッド撹拌器を備えた250mLビーカーにおいて、19.41gのNaOHペレット(98%)を50.50gの脱イオン水に溶解した。この溶液に、40.51gのコロイド状シリカ(Ludox AS-40、40%SiO)を添加し、60分間激しく撹拌した。別に、8.98gのCe(SO(99.9%)を、7.50gの濃縮HSOを含有する250.40gの脱イオン水に溶解して、明るいオレンジ色の溶液を得た。次いで、温浸したSiOを含有する溶液を、オーバーヘッド撹拌器を使用して400RPMで激しく撹拌しながら、Ce(SO溶液に滴加し、均一な白色の反応混合物を得た。60分間撹拌した後、次いで、反応混合物を45ccオートクレーブに移し、静的条件下で、200℃で4日間温浸した。室温に冷却した後、生成物を遠心分離により単離し、脱イオン水で洗浄し、次いで100℃で一晩乾燥させた。
【0058】
得られた生成物中のCeの酸化状態を、X線吸収端近傍分光法(X-ray absorption near edge spectroscopy、XANES)を使用して分析し、これは、本質的にすべてのセリウム原子が+4酸化状態(Ce4+)であることを示した。生成物の化学分析により、Na1.24CeSi3.689.98の実験式を得、その粉末X線回折パターンは、表8に示されるデータを特徴とした。
【0059】
【表8】
【0060】
実施例9:NH 交換されたセリウムシリケート
以下の実施例に記載の生成物を、実施例9のイオン交換によって合成して、アンモニウム形態を得た。3gの実施例9に記載の生成物を、250mLの2M NHCl交換溶液に分散させた。3種のイオン交換を、各工程50℃で2時間行った。交換した固体を遠心分離を使用して単離し、脱イオン水で洗浄し、次いで100℃で一晩乾燥させた。生成物の粉末X線回折パターンは、表9に示す代表的な回折線を特徴とする。
【0061】
【表9】
【0062】
実施例10:溶液からのPb2+及びHg2+イオンの除去
実施例1~9に開示された試料を試験して、Na、K、Mg、及びCaを含む、体内に見出される必須電解質も含有する溶液からPb2+及びHg2+イオンを選択的に吸着するそれらの能力を決定した。試験溶液は、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、及び硝酸鉛(又は水銀)を酢酸ナトリウム緩衝溶液に溶解することによって調製した。緩衝溶液を使用して4.7の一定のpHを維持し、4.18gの酢酸ナトリウム及び2.49gの酢酸を1Lの脱イオン水に溶解することによって1Lの緩衝溶液を調製した。試験溶液は、最初にICPによって分析され、3000ppmのNa、300ppmのK、25ppmのMg2+、25ppmのCa2+、及び200ppbのPb2+(又は200ppbのHg2+)の濃度を含有した。試験のために、100mgの希土類シリケートイオン交換体を、100mLの試験溶液と共に125mLのプラスチックボトルに入れた。蓋をしたボトルを室温で2時間回転させた。イオン交換体を試験溶液と所望の時間接触させたら、固体/溶液懸濁液を0.2μmシリンジフィルタに通して固体を除去し、次いで溶液をICPを使用して分析する。溶液と固体との間の金属の分布に関するK値は、以下の式を使用して計算した:
【0063】
【数3】
式中、V=廃棄模擬物質の体積(mL)
Ac=イオン交換体に吸収された陽イオンの濃度(g/mL)
W=評価したイオン交換体の質量(g)
Sc=反応後上澄み中の陽イオンの濃度(g/mL)
以下の表10及び表11は、それぞれ、Pb2+及びHg2+の取り込み研究の結果を要約する。表中のブランクのままのデータは、電解質濃度の統計的変化がないこと、又は希土類イオン交換体からの陽イオンの放出による濃度の増加がないことを示す。この用途においてイオン交換体を含むときの基準は、それが重金属(Pb2+、Hg2+)の少なくとも75%を除去しなければならない一方で、同時に試験溶液中の他の電解質の10%超を除去してはならないことである。
【0064】
【表10】
【0065】
【表11】
【0066】
実施例12:溶液からのK及びNH イオンの除去
実施例1~9に開示された試料を試験して、Mg及びCaを含む、体内に見出される必須電解質を含有する模擬透析溶液からK及びNH イオンを選択的に吸着するそれらの能力を決定した。試験溶液は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム二水和物、塩化マグネシウム六水和物、及び塩化アンモニウムを1Lの40mM(mM=ミリモル)重炭酸ナトリウム溶液に溶解することによって調製した。試験溶液は、最初に水性陽イオン液体クロマトグラフィーによって分析され、507ppmのNH 、109ppmのK、3053ppmのNa、37ppmのCa2+、及び9.5ppmのMg2+の濃度を含有した。試験のために、100mgの希土類シリケートイオン交換体を、20mLの透析溶液と共に20mLのプラスチックバイアルに入れた。次いで、バイアルを室温で2時間回転させた。イオン交換体を試験溶液と所望の時間接触させたら、固体/溶液懸濁液を0.2μmシリンジフィルタに通して固体を除去し、次いで溶液を水性液体クロマトグラフィーを使用して分析した。
【0067】
表11及び表12は、取り込み研究の結果を要約したものであり、それぞれ、陽イオン濃度(ppmで表される)の変化及び各材料によって吸収された陽イオンの量をmmol/グラムベースで示す。
【0068】
【表12】
【0069】
【表13】
【0070】
特定の実施形態
以下を特定の実施形態と併せて説明するが、本明細書は、前述の説明及び添付の「特許請求の範囲」の範囲を例解するものであり、限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【0071】
本発明の第1の実施形態は、Pb2+、Hg2+、K、及びNH 毒素又はそれらの混合物を体液から除去するプロセスであって、毒素を含有する体液をイオン交換体と接触させて、イオン交換体と体液との間のイオン交換によって体液から毒素を除去することを含み、イオン交換体が、無水ベースで、実験式:Ar+ s+ 1-x’t+ Si(式中、Aは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ヒドロニウムイオン、アンモニウムイオン、第四級アンモニウムイオン、及びそれらの混合物からなる群から選択される交換可能な陽イオンであり、「r」は、Aの加重平均原子価であり、1から2まで変化し、「p」は、Aの全金属(全金属=M+M’)に対するモル比であり、1から5まで変化し、「M」は、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるフレームワーク希土類金属であり、「s」は、Mの加重平均原子価であり、3から4まで変化し、「1-x」は、Mである全金属のモル分率であり、M’は、+2、+3、+4、又は+5の原子価を有するフレームワーク金属であり、「t」は、M’の加重平均原子価であり、2から5まで変化し、「x」は、M’である全金属のモル分率であり、0から0.99まで変化し、「n」は、Siの全金属に対するモル比であり、3~10の値を有し、「m」は、Oの全金属に対するモル比であり、
【0072】
【数4】
によって得られる)を有する希土類シリケート組成物である、プロセスである。本発明の実施形態は、体液が、全血液、血漿、又は血液の他の構成成分、胃腸液、及び血液、血漿、血液の他の構成成分又は胃腸液を含有する透析溶液からなる群から選択される、本段落における先行実施形態から本段落における第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてである。本発明の実施形態は、x=0である、本段落における先行実施形態から本段落における第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてである。本発明の実施形態は、Aが、カルシウムとアルカリ金属との混合物である、本段落における先行実施形態から本段落における第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてである。本発明の実施形態は、Aが、カリウムではない、本段落における先行実施形態から本段落における第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてである。本発明の実施形態は、Aが、アンモニウムではない、本段落における先行実施形態から本段落における第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてである。本発明の実施形態は、イオン交換体が、膜に組み込まれた中空繊維に充填されている、本段落における先行実施形態から本段落における第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてである。本発明の実施形態は、イオン交換体が、セルロース誘導体組成物を含むコーティング剤によりコーティングされた粒子表面に含まれている、本段落における先行実施形態から本段落における第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてである。本発明の実施形態は、本プロセスが、血液潅流プロセスであり、体液は、イオン交換体を含有するカラムに通過させる、本段落における先行実施形態から本段落における第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてである。本発明の実施形態は、透析溶液が腹腔に導入され、次に、少なくとも1種のイオン交換体を含有する少なくとも1つの吸着剤床に流される、本段落における先行実施形態から本段落における第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてである。本発明の実施形態は、イオン交換体が、経口摂取される成形物品に形成され、次いでイオン交換体と哺乳動物の腸内の胃腸液に含有されているPb2+、Hg2+、K、及びNH 毒素との間でイオン交換し、次いで毒素を含有するイオン交換体を排出する、本段落における先行実施形態から本段落における第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてである。本発明の実施形態は、成形物品が、胃内の条件によって溶解しないコーティング剤によりコーティングされている、本段落における先行実施形態から本段落における第1の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてである。
【0073】
本発明の第2の実施形態は、体液、透析溶液、又は体液と透析溶液との混合物の組み合わせを含む組成物であって、組み合わせが、無水ベースで、実験式:Ar+ s+ 1-x’t+ Si(式中、Aは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ヒドロニウムイオン、アンモニウムイオン、第四級アンモニウムイオン、及びそれらの混合物からなる群から選択される交換可能な陽イオンであり、「r」は、Aの加重平均原子価であり、1から2まで変化し、「p」は、Aの全金属(全金属=M+M’)に対するモル比であり、1から5まで変化し、「M」は、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるフレームワーク希土類金属であり、「s」は、Mの加重平均原子価であり、3から4まで変化し、「1-x」は、Mである全金属のモル分率であり、M’は、+2、+3、+4、又は+5の原子価を有するフレームワーク金属であり、「t」は、M’の加重平均原子価であり、2から5まで変化し、「x」は、M’である全金属のモル分率であり、0から0.99まで変化し、「n」は、Siの全金属に対するモル比であり、3~10の値を有し、「m」は、Oの全金属に対するモル比であり、
【0074】
【数5】
によって得られる)を有する希土類シリケートイオン交換体を更に含む、組成物である。本発明の実施形態は、体液が、全血液、血漿、他の血液構成成分又は胃腸液である、本段落における先行実施形態から本段落における第2の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてである。
【0075】
本発明の第3の実施形態は、希土類シリケートイオン交換体のための支持材料を含有するマトリックスを含む装置であって、希土類シリケートイオン交換体が、無水ベースで、実験式:Ar+ s+ 1-x’t+ Si(式中、Aは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ヒドロニウムイオン、アンモニウムイオン、第四級アンモニウムイオン、及びそれらの混合物からなる群から選択される交換可能な陽イオンであり、「r」は、Aの加重平均原子価であり、1から2まで変化し、「p」は、Aの全金属(全金属=M+M’)に対するモル比であり、1から5まで変化し、「M」は、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるフレームワーク希土類金属であり、「s」は、Mの加重平均原子価であり、3から4まで変化し、「1-x」は、Mである全金属のモル分率であり、M’は、+2、+3、+4、又は+5の原子価を有するフレームワーク金属であり、「t」は、M’の加重平均原子価であり、2から5まで変化し、「x」は、M’である全金属のモル分率であり、0から0.99まで変化し、「n」は、Siの全金属に対するモル比であり、3~10の値を有し、「m」は、Oの全金属に対するモル比であり、
【0076】
【数6】
によって得られる)を有する、装置である。本発明の実施形態は、マトリックスが、生体適合性ポリマー及び金属酸化物及びシリケートを含む多孔質ネットワークを備える、本段落における先行実施形態から本段落における第3の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてである。本発明の実施形態は、生体適合性ポリマーが、架橋炭水化物又はタンパク質を含む、本段落における先行実施形態から本段落における第3の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてである。本発明の実施形態は、生体適合性ポリマーが、1,3-、1,4-又は1,6連結基を有するα-グルカンから選択される多糖類である、本段落における先行実施形態から本段落における第3の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてである。本発明の実施形態は、生体適合性ポリマーが、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、アラビノース、マンノース、ガラクトース、ラクトース、並びに1種以上の炭水化物を含むオリゴマー及びポリマーから選択される炭水化物である、本段落における先行実施形態から本段落における第3の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてである。本発明の実施形態は、生体適合性ポリマーが、アルブミン、オボアルブミン、カゼイン、ミオシン、アクチン、グロブリン、ヘモグロビン、ミオグロビン、ゼラチン及び小ペプチドから選択されるタンパク質を含む、本段落における先行実施形態から本段落における第3の実施形態までのうちの1つ、いずれか、又はすべてである。
【0077】
更に詳述することなく、前述の説明を使用して、当業者が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明を最大限まで利用し、かつ本発明の本質的な特性を容易に確認することができ、本発明のさまざまな変更及び修正を行い、さまざまな使用及び条件に適合させることができると考えられる。したがって、先行する好ましい特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなるようにも本開示の残りを限定するものではなく、添付の「特許請求の範囲」の範囲内に含まれるさまざまな修正及び同等の構成を網羅することを意図するものである。
【0078】
上記では、すべての温度は摂氏度で記載され、すべての部及び百分率は、別途記載のない限り、重量基準である。