(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】放射線治療計画のための線量マップを予測する方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
A61N5/10 P
(21)【出願番号】P 2023531504
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2021083314
(87)【国際公開番号】W WO2022122442
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-07-24
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522454806
【氏名又は名称】レイサーチ ラボラトリーズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ホルムストローム,マッツ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】カリッツォ,ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】ホセイン,アドナン
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0171325(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108766563(CN,A)
【文献】特表2017-520319(JP,A)
【文献】特表2020-533075(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0070436(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療対象の患者の少なくとも一部分を含む治療部位についての推定空間放射線治療線量分布を生成するための機械学習システムをトレーニングする方法であって、
複数のトレーニングデータセットを前記機械学習システムに入力することであって、前記複数のトレーニングデータセットのそれぞれが、治療部位のための実際空間放射線治療線量分布及び前記治療部位内の1つ以上の関心領域のみについての線量情報を含む前記実際空間放射線治療線量分布の一部であるトレーニング部分放射線治療線量分布を含む、複数のトレーニングデータセットを前記機械学習システムに入力することと、前記実際空間放射線治療線量分布に基づいて出力を評価することと、を含む方法。
【請求項2】
前記複数のトレーニングデータセットが前記治療部位に関連した画像データ及び/又は構造データも含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
治療対象の患者の少なくとも一部分を含む治療部位についての推定空間放射線治療線量分布を生成するコンピュータ実装方法であって、
前記治療部位内の1つ以上の関心領域についての線量情報を含む計画部分放射線治療線量分布を、請求項1に記載の方法に従ってトレーニングされた機械学習システムに入力することと、
前記計画部分放射線治療線量分布に基づいて前記治療部位についての推定空間放射線治療線量分布を前記機械学習システムが生成することと、を含む方法。
【請求項4】
前記計画部分放射線治療線量分布が、前記患者のための以前に計算された計画に基づいて、前記以前に計算された計画の一部が前記患者に提供された後に決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記治療部位についての推定空間放射線治療線量分布を生成することが、
計画部分線量情報からの
線量情報を保持することを含む、請求項3又は4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記治療部位についての推定空間放射線治療線量分布を生成することが、前記1つ以上の関心領域における
線量分布が
計画部分線量情報からの線量情報から一定の限度内でのみ逸脱することを許容することを含む、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記推定空間放射線治療線量分布を評価することと、
前記推定空間放射線治療線量分布の評価の結果に応じて計画部分放射線治療線量を修正することと、
前記修正された
計画部分放射線治療線量に基づいて更新された推定空間放射線治療線量分布を生成することと、
前記更新された推定空間放射線治療線量分布を総線量として出力することと、を更に含む、請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記推定空間放射線治療線量分布に基づいて線量模倣を行うこと、を更に含む、請求項3から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記入力されるデータセットが、
放射線治療を行う際に使用される照射装置の機械パラメータ及び/又はビームセットアップに関する情報を更に含む、請求項3から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記入力されるデータセットが、前記治療部位に関連した画像データ及び/又は構造データを更に含む、請求項3から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の関心領域が標的を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の関心領域が1つ以上のリスク臓器を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記機械学習システムがU-Net又はV-Netである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
コンピュータで実行される場合に、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法を前記コンピュータに実行させるコンピュータ可読コード手段を含むコンピュータプログラム。
【請求項15】
プロセッサとプログラムメモリとを備え、前記プログラムメモリが請求項14に記載のコンピュータプログラムを保持するコンピュータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本発明は、放射線治療計画、具体的には代替的に線量マップと称されることもある線量分布の予測に関する。
【背景技術】
【0002】
[002]線量計画は、放射線治療計画の重要な要素であり、計画標的体積(Planning Target Volume:PTV)への高い線量及び周囲のリスク臓器(Organs At Risk:OAR)への可能な限り低い線量を保証するなどの臨床目標に基づいている。計画を得る1つの方法は、治療部位全体のための空間線量分布を予測し、この予測した線量分布に基づいて計画することである。患者に実際に供給される線量は、物理法則及び照射装置の技術的限界のために予測した線量と異なることになる。現実的かつ物理的に達成可能な線量分布にできるだけ近い予測線量分布から計画最適化を開始することは、これによって臨床目標により上手く適応した計画がもたらされるために常に望ましい。この要件を満たす推定又は予測空間線量分布に到達するためにいくつかの努力が行われてきている。これは、治療部位のある部分における所望の線量の変化が必然的に治療部位の他の部分における変化を生じさせるためにより困難になっている。
【0003】
[003]近年、かかる推定又は予測線量分布を治療部位の画像及びセグメント化された構造から得た構造データに基づいて生成する際に機械学習が用いられている。かかる方法は常に満足のいく結果をもたらすわけではない。具体的には、ある臓器又は他の種類の関心領域における予測線量の変化が、他の臓器の予測線量の適切な変化を生じさせないことがある。かかる変化は、例えば予測線量分布が臨床目標を達成せず、例えば標的に対する最小処方線量又はOARにおける最大線量拘束値に達していない場合に起こることがある。
【0004】
[004]Ming Maらによる「Incorporating dosimetric features into the prediction of 3D VMAT dose distributions using deep convolutional neural network」Phys.Med.Biol.64(2019)125017(11pp)は、セグメント化された画像に基づく線量予測法が不十分な標的線量をもたらすことがあるという問題を緩和しようとし、線量計画法においてよく使用される輪郭データに加えて、PTVのみを考慮する計画からの線量分布を含むことを提案する。このPTV限定計画は、リスク臓器に危害を加えたくないという要望を無視しながら可能な限り最良の標的線量を確保することを目的として標的についてのみ得られている。
【発明の概要】
【0005】
[005]本発明は、放射線治療計画において使用される実行可能な推定線量分布、具体的には物理的に実現可能な線量分布によく似ているものを提供することを目的とする。
【0006】
[006]本発明は、治療対象の患者の少なくとも一部分を含む治療部位についての推定空間放射線治療線量分布を生成するための機械学習システムをトレーニングする方法であって、複数のトレーニングデータセットを前記機械学習システムに入力することであって、前記複数のトレーニングデータセットのそれぞれが、治療部位のための実際空間放射線治療線量分布及び前記治療部位内の1つ以上の関心領域のみについての線量情報を含む前記実際空間放射線治療線量分布の一部であるトレーニング部分放射線治療線量分布を含む、複数のトレーニングデータセットを前記機械学習システムに入力することと、前記実際空間放射線治療線量分布に基づいて出力を評価することと、を含む方法に関する。トレーニングデータセットにおいて使用される空間放射線治療線量分布は、例えば供給可能線量又はコンピュータ生成された線量として任意の適切な方法で得られることがある。
【0007】
[007]本発明はまた、治療対象の患者の少なくとも一部分を含む治療部位についての推定空間放射線治療線量分布を生成するコンピュータ実装方法であって、治療部位内の1つ以上の関心領域についての線量情報を含む計画部分放射線治療線量分布を上記に従ってトレーニングされた機械学習システムに入力することと、計画部分放射線治療線量分布に基づいて治療部位のための推定空間放射線治療線量分布を機械学習システムが生成することとを含む方法に関する。
【0008】
[008]したがって、上記の方法は、トレーニングされた機械学習システムを使用することによって構造データ又は他の種類の画像データの入力なしに、治療部位全体の1つ以上の部分のみをカバーする計画部分空間線量分布からの完全な空間線量分布の推定を可能にする。本発明に係る方法は、治療部位に関する部分線量情報のみに基づいて物理的に実行可能な予測又は推定線量分布を可能にすることになる線量予測を可能にする。つまり、画像データ及び構造データが必要とされない。計画部分線量分布は、任意のタイプの照射装置の照射可能線量又は任意のアルゴリズムを使用して生成される合成線量分布である場合がある。
【0009】
[009]トレーニングデータセットは更に、治療部位に関する画像情報及び/又は構造情報を含むことがある。これによって、線量の減少と組織の種類及び構造との間に相関関係があるときに、より正確な予測線量分布を生成することができるようになるより高度なモデルが可能になる。
【0010】
[010]典型的には、推定線量分布を生成する方法では、計画部分放射線治療線量分布は、1つ以上の関心領域について、臨床医などの人間オペレータや、適切にトレーニングされた機械学習モデルなどのアルゴリズムによって設定される。計画部分放射線治療線量分布は、患者について以前に計算した計画であって、その一部が患者に供給された後の計画に基づいている場合がある。推定線量分布を生成することは、計画部分線量分布で設定された1つ以上の線量が、予め設定された限度内でしか、又は固定量であり得るかもしくは線量に対して決定され得る一定の量だけしか変化しないように制約を受けることがある。代替的に、制約は、計画部分線量分布で設定された1つ以上の線量が全く変化しないように設定されることがある。
【0011】
[011]推定線量分布を生成する方法の実施形態はまた、推定総放射線治療線量分布を評価し、推定の結果に応じて計画部分放射線治療線量分布を修正し、修正した計画部分放射線治療線量分布に基づいて更新した推定総放射線治療線量分布を生成し、更新した推定総放射線治療線量分布を総線量分布として出力することを含む。これは、線量分布を最も重要な関心領域に入力することによって計画の再計算に入力データを提供することが簡単な方法であるため、計画の部分間に変更が必要な場合に特に有用である。
【0012】
[012]推定線量分布を生成するステップは更に、推定又は予測空間線量分布に基づいて線量模倣を行うステップを含むことがある。本明細書では推定と予測という用語は同義に使用される。
【0013】
[013]機械学習システムへの入力データは更に、線量照射に使用することが意図された照射装置の機械パラメータ及び/又はビームセットアップに関する情報を含むことがある。線量模倣について、空間線量分布は、RayStation(登録商標)などの放射線治療計画システムに見られる最適化フレームワークを使用して模倣される可能性がある。この情報は、照射装置の能力を考慮することによって、達成不可能な予測を回避できるように線量予測を改善するのに使用されることがある。
【0014】
[014]有利には、部分線量分布情報に含まれる線量は、典型的には臨床目標が設定された標的及び1つ以上のリスク臓器などの関心領域をカバーすることを考慮するのに最も重要な線量となるように選択される。これはトレーニング部分線量分布と計画部分線量分布の両方に適用される。
【0015】
[015]使用される機械学習ネットワークは、U-NetやV-netなどのピクセル又はボクセルを処理することができる任意の深層学習システムである場合がある。
【0016】
[016]本発明はまた、コンピュータで実行される場合に、以上で考察した方法のいずれか1つに係る方法をコンピュータに実行させるコンピュータ可読コード手段を含むコンピュータプログラムに関する。コンピュータプログラムは、コンピュータ可読コードを保持する非一時的記憶媒体を備えることがある。
【0017】
[017]本開示はまた、プロセッサと、かかるコンピュータプログラムを保持するように構成されているプログラムメモリとを備えたコンピュータに関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
[018]以下では、本発明について添付の図面を参照しながら例としてより詳細に説明する。
【0019】
【
図1】本発明の方法の実施形態のフローチャートである。
【
図3】最適化を導くための本発明に係る方法の可能な実装形態のフローチャートである。
【
図4a】
図3の方法の2つの異なるステップにおける推定線量を示す。
【
図4b】
図3の方法の2つの異なるステップにおける推定線量を示す。
【
図5】機械学習システムをトレーニングする全体的な方法を示す。
【
図6】本発明の実施形態が実装され得るコンピュータシステムの概略的概観である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[019]
図1は、予測又は推定線量マップを生成する本発明の方法の実施形態のフローチャートである。ステップS11において、計画部分線量分布が治療部位の少なくとも1つのエリアについて設定される。計画部分線量分布は、臨床医などの人間オペレータによって、適切にトレーニングされた機械学習システムによって、又は任意の他の適切な方法で設定されることがある。典型的には、標的への線量及び1つ以上のリスク臓器への線量が設定される。計画部分線量分布は、以下でより詳細に考察される適切にトレーニングされた機械学習システムに入力される。ステップS12において、推定総線量分布が機械学習システムによって決定され、ステップS13において出力される。ステップS14において推定総線量分布は評価される。評価は人間オペレータによって、又は適切にトレーニングされた機械学習システムなどのアルゴリズムによって行われることがある。総線量分布は許容可能であると認められる場合、ステップS16において出力され、そこから後続のステップS17における従来の方法による線量模倣に使用されることがある。推定総線量分布がステップS14において許容不可能であると認められる場合、オペレータ又はアルゴリズムは、それぞれステップS15において治療部位のエリアに望ましい線量を変更し、ステップS12に戻る可能性がある。そして機械学習システムは、ステップS13において再度評価され得る精緻化された推定総線量分布を返すことになる。本明細書を通して、治療部位という用語は患者の一部分又は患者の体全体を指すことがある。また、治療部位は、患者を配置するカウチなどの、線量照射に影響を及ぼし得る患者の外部の構造を含むことがある。ステップS14、S15及びS16が任意選択的なステップであることが理解されるべきである。評価を望まない場合、方法はステップS13からステップS17に直接進む可能性がある。この場合、第1の推定総線量分布が線量模倣に直接使用される。推定総線量分布は空間線量分布である。
【0021】
[020]S15における変更は、オペレータにより実行可能であるとみなされる任意の変更である場合がある。例えば、標的範囲が良好であるが、線量が直腸、膀胱又は脊髄などのOARにおいて高過ぎる場合、オペレータはそのOARにより低い線量を設定することがある。この変更は線量マップの他の部分に影響を及ぼすことになる。なぜならこの方法は、標的範囲が良好でありかつOARの線量が低いべきである新しい線量推定のためにステップS12に戻らなければならないためである。評価は、任意の数の評価基準を満たすべく治療部位の複数のエリアをカバーするために拡張される可能性がある。
【0022】
[021]ステップS12において推定線量を決定するために、関心領域に許容される計画部分線量分布に含まれる変更量を制限すべきである。一部の実施形態では、変更が許容されないことがある、つまり、推定線量分布はまさにこれらの関心領域に指定された線量を有しなければならない。他の実施形態では、一定のGy数としての、又は該当する関心領域の線量に対する予め設定された限度内の一定レベルの変更が許容されることがある。
【0023】
[022]
図2は、
図1の方法の構造を概略的に示している。計画部分線量分布21が、このケースでは前立腺23である標的、及び、できるだけ低い線量を受ける必要がある、このケースでは直腸であるリスク臓器24の線量を含む。計画部分線量分布21の考慮されるべき部分、つまり線量が設定されている部分である前立腺23及び直腸24は、マスクによって画定されている。輪郭線26が治療部位の範囲を画定し、マスクを含む可能性もある。計画部分線量分布21及び輪郭線26は、総予測線量分布29を出力するためにトレーニングされた機械学習システム28への入力として使用される。前立腺23に対応するエリアの内側の密なドットパターンは、このエリアが高線量であることを示している。前立腺の周囲のエリア27が、このエリアの線量がより低いことを示すために密度が低いパターンを有する。当然のことながら、
図2は大幅に簡略化されている。実際の線量分布は通常、様々な線量を有するより多くの様々な関心領域を有することになる。
【0024】
[023]本発明に従って使用される機械学習システムは、U-NetやV-netを含む、ピクセル又はボクセルを処理することができる任意の深層学習システムである場合がある。トレーニングデータセットは、トレーニング部分線量分布と、トレーニング部分線量分布に対応する正しい完全な線量分布とを含む。好ましくは多様な異なる線量分布が含まれる必要がある。トレーニング部分線量分布は、選択されたエリアにのみ線量が存在するように総線量分布のエリアをマスクすることによって総線量分布から得られる可能性がある。トレーニングデータセットはまた、線量予測の精度を高めるために、治療部位に関連した画像データ及び/又は構造データを含むことがある。
【0025】
[024]トレーニングは、体の特定領域、又はその領域上で具体的にトレーニングするための治療部位、例えば頭部、頸部又は腹部に関連がある場合がある。十分な量のトレーニングデータの利用可能性に応じて、体全体について機械学習システムをトレーニングすることもできる。
【0026】
[025]本発明の方法の1つの具体的な適用分野は、予備計画策定を促進することである。予備計画策定は、計画を当初計画されていたのと異なる照射機械での使用のために再計算する必要がある場合に用いられる。これは、例えば第1の機械に問題があるために行われることがある。かかるケースでは、当初の計画は新しい機械パラメータ及びそのビームセット構成について更新されなければならなくなる。これによって、機械が異なれば特性が異なることから実際の線量分布に変化が生じる。本発明の実施形態に係る方法を用いて、新しい線量形状は、1つ以上の関心領域の線量を新しい総線量分布を出力することになる上記の機械学習システムに入力することによって再調整される可能性がある。典型的には関心領域は、標的及び1つ以上のリスク臓器であるが、標的又は他の構造の一部、例えば標的のリスク臓器に危険なほど近いために総線量を受けるべきではない部分である場合もある。この新しい線量分布は、新しい照射機械のために計画を再計算するのに使用される可能性がある。
【0027】
[026]本発明の実施形態に係る方法はまた、例えば
図3を参照した以下に記載の導かれる最適化手順において用いられることがある。
【0028】
[027]ステップS31において、予測線量が適切な方法で得られる。予測線量は、例えば、均一減衰がある標的処方を満たすように最適化された計画に関してトレーニングされた機械学習システムから出力されることがある。
【0029】
[028]オペレータは、ステップS32においてCG(Clinical Goals:臨床目標)又は最適化関数に基づいて1つ以上の関心領域における予測線量を修正する。
【0030】
[029]ステップS33において、修正した領域線量及び標的は計画部分線量分布として設定され、ステップS34において、部分モデルを使用して新しい空間線量分布を予測する。部分モデルは、様々なトレードオフ及び増強された線量を含む複数の計画に関してトレーニングされている。ステップS35において、新しい予測線量分布は人間オペレータによって又は適切なアルゴリズムによって検討される。新しい予測線量分布が許容される場合、総線量分布はステップS36において出力され、プロセスは臨床目標及び最適化関数からの入力、並びに関心領域の外側の外部線量を用いる線量模倣S37に進む。新しい予測線量分布が不十分な場合、オペレータは、ステップS32に戻ることによってより多くの臨床目標及び最適化関数を追加することがある。
【0031】
[030]
図3の線量計画法の利点は、ユーザ/診療所が自身のモデルをトレーニングする必要がなくなることである。入力として使用される線量によって、ユーザの臨床的入力が特定のモデルを必要とせずに直接適応されることが保証されることになる。
【0032】
[031]
図4a及び
図4bは、
図3の方法のステップを単純化した例として示している。
図4aはステップS11の一例であり、予測線量が標的、この例では前立腺43のためにのみ設定された計画部分線量に基づいている場合の患者の治療部位41を示す。図に示すように、線量は前立腺43の外側で均一に減少し、前立腺43を直接取り囲む第1のエリア45で低くなり、第1のエリア45を取り囲む第2のエリア47で更に低くなる。第1及び第2のエリア45、47は、破線で区切られた様子が示されている。この線量分布は満足のいく標的範囲を提供する一方、前立腺の近くに位置する、直腸及び膀胱を含むリスク臓器に許容できないほど高い線量をもたらすことになる。この例では、単純化するために直腸のみが考慮される。
【0033】
[032]したがって、
図4bでは、直腸に対応するエリア44の線量が、直腸の保護を確実にするためにゼロに設定される。概略的に示した標的領域43及び直腸44の線量に基づいた結果として生じる総線量分布は直腸エリア44で減少し、前立腺43を取り囲む第1及び第2のエリア45’、47’の部分で線量が増加する。
【0034】
[033]
図5は、本発明の方法を実行するために機械学習システムをトレーニングする全体的な方法である。入力データが、線量計画から生じる実際の線量分布に基づくいくつかのトレーニングセット50を含む。各トレーニングセットは、その一部であるトレーニング部分線量分布51及び実際総線量分布53を含む。トレーニング部分線量分布51は、治療部位内の1つ以上の関心領域に実際総線量分布53から選択した線量を含む。55におけるトレーニングは、トレーニング部分線量分布に基づく出力を同じトレーニングセットからの実際線量分布と比較することによって、機械学習システムからの出力を評価することを含む。トレーニングの結果は、トレーニングされた機械学習モデル57である。
【0035】
[034]
図6は、本発明の実施形態に係る方法が実行され得るコンピュータシステムの概略図である。コンピュータ61が、プロセッサ63、1つ以上のデータメモリ64、65及び1つ以上のプログラムメモリ66を備える。好ましくは、ユーザ入力手段67、68もまた、キーボード、マウス、ジョイステック、音声認識手段又は任意の他の利用可能なユーザ入力手段の形態で存在する。ユーザ入力手段はまた、外部メモリユニットからデータを受信するように構成されることがある。
図6が本発明に係る方法を実行するのに使用され得る様々なコンポーネントを示すためにのみ提供されていること、及び実際のコンピュータアーキテクチャが変化し得ることが理解されるべきである。コンポーネントの1つ以上、又はシステム全体はクラウド環境に実装されることがある。
【0036】
[035]線量予測を精緻化するために、入力データは、照射装置のための機械パラメータ及び/又はビームセットアップに関する情報を含むこともある。代替的に又はこれに加えて、入力データセットは更に、治療部位に関連した画像データ及び/又は構造データを含むことがある。
【0037】
[036]データメモリ64、65は、典型的には部分線量情報及び線量予測ステップからの出力データを含む必要入力データを含む。入力データは、コンピュータ61において生成されるか、又は周知のいずれかの方法で、別の記憶手段からもしくはユーザ入力によって受信されることがある。当然のことながら、データメモリ64は概略的にのみ示されている。例えば、入力データ用の1つのデータメモリ、線量分布又は照射パラメータ用の1つなど、それぞれが1つ以上の様々な種類のデータを保持するいくつかのデータメモリユニットが存在する場合がある。
【0038】
[037]プログラムメモリ66は、以上で考察した機械学習システムと、好ましくは線量模倣プログラムとを保持する。当然のことながら、データメモリ64、65及び/又はプログラムメモリ66は、必ずしもプロセッサ63と同じコンピュータの一部ではなく、プロセッサから到達可能な任意のコンピュータに、例えばクラウド環境に位置している場合がある。