(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】検出器装置からの入力に依存してUV放射源の状態を設定する方法
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
A61L2/10
(21)【出願番号】P 2023539947
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(86)【国際出願番号】 EP2021087822
(87)【国際公開番号】W WO2022152566
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ヒートブリンク ルーラント ブードウェイン
(72)【発明者】
【氏名】サルテルス バルト アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ニーセン エドゥアルド マテウス ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】マルテンス ペーター
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特許第7019729(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0081874(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/08-2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線出射ウィンドウを有する放射体であって、少なくともUV放射を含む放射線を受け取り、前記放射線出射ウィンドウを介して当該放射体の外部に前記放射線の少なくとも一部を放射するように構成される放射体と、
前記放射線を提供するように構成される放射装置であって、UV放射を発するように構成される少なくとも1つのUV放射源を有する放射装置と、
前記放射線出射ウィンドウの位置における前記UV放射源によって放射されたUV放射の散乱、および、前記放射線出射ウィンドウの内側での前記UV放射源によって放射されたUV放射の反射のうちの少なくとも1つを通して得られる、少なくとも1つの検出器位置における前記放射体内での放射線の内部放射強度を検出するように構成される検出器装置と、
前記放射装置及び前記検出器装置に機能的に接続されたコントローラ装置であって、
前記少なくとも1つのUV放射源が維持レベルの強度で前記UV放射を提供する状態である通常状態に前記少なくとも1つのUV放射源をデフォルトとして設定するように構成され、前記検出器装置から入力を受信して、i)前記少なくとも1つの検出器位置において前記検出器装置によって検出された前記内部放射強度のパラメータを代表する少なくとも1つの安全性試験値を決定すること、 ii) 前記少なくとも1つの安全性試験値が、前記少なくとも1つの検出器位置に関連する値の安全範囲の内側にあるか外側にあるかを評価すること、 iii) 前記少なくとも1つの安全性試験値が安全基準値の範囲内から安全基準値の範囲外にシフトすることを含む外乱事象が発生した後に、前記少なくとも1つの安全性試験値が逆方向にシフトすることを含む後続の復帰事象が発生した後、前記少なくとも1つのUV放射源が前記維持レベルに対して増加されたレベルの強度でUV放射を提供する状態である殺菌状態に前記少なくとも1つのUV放射源を一時的に設定すること、を含むコントローラアルゴリズムを適用するように構成されるコントローラ装置と、
を有するシステム。
【請求項2】
前記コントローラアルゴリズムが、外乱事象と後続の復帰事象との間の経過した時間に関連して、および/または、先行する殺菌期間の持続時間に関連して、前記少なくとも1つのUV放射源が前記殺菌状態に設定される殺菌期間の持続時間を決定することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラアルゴリズムが、前記殺菌期間が経過した後、または、前記殺菌期間の間の外乱事象の発生に基づいて、前記少なくとも1つのUV放射源を前記通常状態に復帰させることを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラアルゴリズムが、外乱事象の発生後に復帰事象が続き、当該外乱事象と当該復帰事象との間に経過した時間が所定の最小時間未満である場合には、前記少なくとも1つのUV放射源を前記通常状態に維持することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの安全性試験値が、前記検出器装置により検出された前記放射線の前記内部放射強度の値、および/または、前記検出器装置により検出された前記放射線の前記内部放射強度の所定の方向における変化の値を表す、請求項1から
4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記放射装置が少なくとも2つのUV放射源を有し、前記コントローラアルゴリズムが、外乱事象の発生後に復帰事象が続いた後に前記少なくとも1つの検出器位置において前記検出器装置によりモニタされる前記放射体の領域にUV放射を放射するように構成される少なくとも1つの指定されたUV放射源を殺菌状態に一時的に設定することを含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラアルゴリズムが、前記少なくとも1つの指定されたUV放射源以外のUV放射源を前記通常状態を維持することを含む、
請求項
6に記載のシステム。
【請求項8】
前記UV放射の強度の前記維持レベルがゼロを超えるレベルであり、前記コントローラアルゴリズムが、前記少なくとも1つの指定されたUV放射源以外のUV放射源を適応状態に設定することを含み、当該適応状態において、前記UV放射源は、前記指定されたUV放射源が前記殺菌状態に設定されている間、前記維持レベルに対して減少したレベルにおける強度でUV放射を提供する、請求項
6に記載のシステム。
【請求項9】
前記UV放射の強度の前記維持レベルがゼロレベルである、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記検出器装置が少なくとも2つの検出器位置において前記放射体内における放射線の内部放射強度を検出するように構成され、前記コントローラアルゴリズムが、前記UV放射源と前記検出器位置との間の所定の関係に基づいて前記少なくとも1つの指定されたUV放射源を特定することを含む、請求項7から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記放射体が材料のスラブを有し、前記放射装置の前記少なくとも1つのUV放射源が前記材料のスラブに埋め込まれる、および/または、前記検出器装置の前記少なくとも1つの検出器が前記材料のスラブに埋め込まれる、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
UV波長よりも明確に長い波長の放射線を提供するように構成される少なくとも1つの放射源を有し、前記検出器装置が、前記明確に長い波長の放射線の内部放射強度を少なくとも検出するように構成される、請求項1から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のシステムを有するオブジェクトであって、前記システムの前記放射体の前記放射線出射ウィンドウが前記オブジェクトの外面にあるように構成される、オブジェクト
【請求項14】
家電製品、家具、建物の構造部材、車両の構造部材、衛生部品、医療機器およびこれらのコンポーネントを含むグループから選択される、請求項13に記載のオブジェクト。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載のシステムを既存のオブジェクトに追加する方法であって、前記システムの前記放射体が前記既存のオブジェクトの外側表面に適用される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線出射ウィンドウを備える放射体であって、少なくともUV放射を含む放射線を受け取り、当該放射線の少なくとも一部を放射線出射ウィンドウを介して放射体の外部に放射するように構成される放射体と、放射線を提供するように構成され、UV放射線を放射するように構成された少なくとも1つのUV放射源を備える放射装置と、少なくとも1つの検出器位置において放射体内の放射線の内部放射強度を検出するように構成された検出器装置と、放射装置および検出器装置に機能的に結合されたコントローラ装置と、を有するシステムに関する。
【0002】
さらに、本発明は、システムの放射体の放射線出射ウィンドウがオブジェクトの外側に配置される、前述のシステムを有するオブジェクトに関する。
【0003】
さらに、本発明は、前述のシステムを既存のオブジェクトに追加する方法に関し、システムの放射体は、既存のオブジェクトの外面に適用される。
【背景技術】
【0004】
WO 2018/215272 A1は、導波路素子と、光学センサと、制御システムとを備えるシステムを開示している。導波路素子は、放射線出射ウィンドウを有し、導波路素子はi)放射線を受け取るように構成され、放射線は少なくともUV放射を行美、ii)放射線出射ウィンドウを介して、放射線の少なくとも一部を導波路素子の外部に放射するように構成され、iii)放射線出射ウィンドウにおいて放射の一部を内部反射するように構成される。光学センサは、内部反射放射線の内部反射強度を感知するように構成される。制御システムは、光学センサに機能的に結合され、経時的な内部反射強度の低減が所定の第1の閾値に達することに応じて、放射線の強度を低減するように構成される。
【0005】
WO 2018/215272 A1は、UV放射が放射線出射ウィンドウ上に存在し得る微生物を死滅させるために、または微生物を不活性にするか、または再生できないようにするために使用されることを教示している。微生物の実例として、細菌が挙げられる。UV放射を使用する殺菌効果は、主に、UV放射の総線量によって決定される。UV放射を使用する状況では、ヒトを含む高等生物がUV放射を受ける位置にある場合、特に、高等生物が放射線出射面に物理的に接触することが可能である場合、特定の措置を講じる必要があるだろう。
【0006】
既知のシステムの動作中、あるオブジェクトがウィンドウに接触した場合、放射線は、放射線出射ウィンドウを介して導波路素子の外に結合される。このアウトカップリングは、導波路素子の内部に留まる放射線が少なくなることを意味し、(総)内部反射のフラストレーションとも呼ばれる。したがって、光学センサを用いて内部反射放射線の内部反射強度をモニタすることにより、何らかのオブジェクト、特に人間の手や指などの微生物よりもかなり大きい一部のオブジェクトがウィンドウに触れている状況を検出することができる。光学センサによって提供される信号においてかなりのステップが観察されるとき、これは、比較的大きなオブジェクトがウィンドウに接触していることを意味すると推測される。そのような状況における安全性を保証するために、放射線が少なくとも一時的に遮断される必要があることが決定され得る。
【0007】
とりわけ、WO 2018/215272 A1の主題である発明は、システムを含むオブジェクトを提供し、オブジェクトは外部表面を有し、システムの導波路素子の放射線出射ウィンドウは、外部表面の少なくとも一部として構成される。そのようなオブジェクトの例としては、ドアノブ、蛇口のノブ、トイレノブ、トイレの座席、手すり、台所のまな板、台所の壁、テーブル、または(他の)共通(家庭用)オブジェクト、すなわち、家庭またはオフィスなどで使用されるように特に設計されたオブジェクトが挙げられる。このようなオブジェクトの更なる例としては、クリーンルーム壁、ならびに手術台および手術室壁などの医療装置が挙げられる。WO 2018/215272 A1の主題である発明のそのような可能な実用的なアプリケーションの全ての文脈において、外部表面が殺菌状態に保たれる一方で、プロセスにおいて使用されるUV放射が、ヒトなどの高等生物に害を引き起こす可能性がある状況を回避する必要があることが重要である。
【0008】
一般的に言えば、WO 2018/215272 A1から知られているようなシステムを適用することは、表面の殺菌が汚染の回避に寄与するような状況において有益である。このような状況は、公共空間、作業環境、および家庭環境を含む、あらゆる種類の環境において起こり得る。例えば、殺菌措置が適用されない場合、公共空間内の制御ボタン及びタッチスクリーンは、制御ボタン及びタッチスクリーンを介して感染性疾患の移転が起こり得るので、健康リスクを伴うスポットを構成する。細菌およびウイルスは、第1の人によって制御ボタンまたはタッチスクリーン上に残され、その後、次の人によって拾われ、それによって、第1の人によって運ばれる疾患が広がる可能性がある。制御ボタンおよびタッチスクリーンの公共使用は、制御ボタンおよびタッチスクリーンがエレベータ、ATM機、注文端末、決済端末、および自動販売機などの多くのタイプのデバイスに見られるという事実に鑑みて、一般的である。
【0009】
上記で説明したように、WO 2018/215272 A1から知られているシステムは、放射線がウイルスまたは細菌粒子などの任意の形態の汚染が存在する導波路素子上のまさにその位置で導波路素子から外に結合されるので、表面の殺菌に有効である。本発明の文脈では、このシステムを動作させることは電力の供給を必要とし、これにより、このシステムは、主電源への接続が不可能な状況など、限られた量の電力しか利用できない状況での使用にあまり適していないことが認識される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、最小限の電力量のみで放射体の放射線出射ウィンドウの位置で殺菌結果を効果的に得る可能性が提供されるように、放射体と放射装置とを備えるシステムを設計することである。本発明の文脈において、放射体は必ずしもWO 2018/215272 A1に開示された導波路素子と同じである必要はなく、特に、必ずしも放射線ガイド機能を有する必要は無く、その点で(全)内部反射現象に依存するように構成される必要はないが、本発明はそのような導波路素子の使用を含む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述に鑑みて、本発明は、放射線出射ウィンドウを含む放射体であって、少なくともUV放射を含む放射線を受け取り、放射出射ウィンドウを介して放射体の外部に前記放射線の少なくとも一部を放射するように構成される放射体と、放射線を提供するように構成された放射装置であって、UV放射を放射するように構成された少なくとも1つのUV放射源を有する放射装置と、少なくとも1つの検出器位置における放射体内の放射線の内部放射強度を検出するように構成された検出器装置と、前記放射装置及び前記検出器装置に機能的に結合され、少なくとも1つのUV放射源が維持レベルの強度でUV放射を提供する状態である、少なくとも1つのUV放射源の通常状態をデフォルトとして設定するように構成され、検出器装置から入力を受信して、i)少なくとも1つの検出器位置において検出器装置によって検出された内部放射強度のパラメータを代表する少なくとも1つの安全性試験値を決定すること、 ii) 少なくとも1つの安全性試験値が、少なくとも1つの検出器位置に関連する値の安全範囲の内側にあるか外側にあるかを評価すること、 iii) 少なくとも1つの安全性試験値が安全基準値の範囲内から安全基準値の範囲外にシフトすることを含む外乱事象が発生した後に、少なくとも1つの試験値が逆方向にシフトすることを含む後続の復帰事象が発生した後、少なくとも1つのUV放射源が維持レベルに対して増加されたレベルの強度でUV放射を提供する状態である、少なくとも1つのUV放射源の殺菌状態を一時的に設定すること、を含むコントローラアルゴリズムを適用するように構成されるコントローラ装置と、を有するシステムを提供する。
【0012】
前述から、本発明によるシステムは、i)放射線出射ウィンドウを有する放射体であって、少なくともUV放射を含む放射線を受け取り、当該放射線の少なくとも一部を放射線出射ウィンドウを介して放射体の外部に放射するように構成される放射体、ii)放射線を提供するように構成された放射装置であって、UV放射を放射するように構成された少なくとも1つのUV放射源を有する放射装置、iii) 少なくとも1つの検出器位置における放射体内の放射線の内部放射強度を検出するように構成された検出器装置、及びiv)放射装置及び検出器装置に機能的に結合されたコントローラ装置を有する。明確にするために、検出器装置が少なくとも1つの検出器位置における放射体内の放射線の内部放射強度を検出するように構成されているということは、実際には、検出器装置が、少なくとも1つの検出器位置での内部放射強度に関連する任意のパラメータを計算し出力するためのデータを取得することが可能であり、検出器装置が少なくとも1つの検出器位置での内部放射強度の実際の値を決定することが可能である必要はないことを意味し得ることに留意されたい。
【0013】
本発明によるシステムのコントローラ装置は、少なくとも1つのUV放射源の通常状態をデフォルトとして設定するように構成され、この状態では、少なくとも1つのUV放射源は、維持レベルにおける強度でUV放射を提供する。さらに、コントローラ装置は、外乱事象と後続する復帰事象との発生が少なくとも1つの検出器位置に関して決定され得るように、検出器装置から受信された入力を処理するように構成される。これにより、コントローラ装置は、少なくとも1つのUV放射源の殺菌状態を一時的に設定することができ、この状態では、少なくとも1つのUV放射源は、維持レベルに対して増加したレベルの強度をUV放射に提供する。このようにして、外乱事象の発生が人間の手または指などの比較的大きなオブジェクトが放射線出射ウィンドウに接触していることを示し、その後の復帰事象の発生がオブジェクトが放射線出射ウィンドウから除去されていることを示すと仮定して、コントローラ装置は、UV放射線が適切であるとき、すなわち、放射線出射ウィンドウが接触され、その結果として汚染される可能性があるときに、UV放射線が提供される強度を一時的に増加させる措置を実施するように構成される。それ以外では、UV放射が提供される強度は維持レベルに維持され、それによって電力が節約される。UV放射の強度の維持レベルはゼロレベルであってもよいが、これは本発明の文脈において必要ではない。いずれにせよ、電力節約措置に基づいて、本発明は、殺菌機能を損なうことなくエネルギー消費を最小限に抑えることが望まれる状況においてシステムを適用する方法を提供する。そのような文脈の実用的な例は、システムがバッテリによって電力供給される状況、およびシステムが太陽電池または局所的なエネルギーハーベスティングのための別のコンポーネント/システムによって電力供給される状況である。また、放射線出射ウィンドウが殺菌された程度が十分であると想定される期間は、放射されるUV放射の強度がおそらくゼロまで低減されるようにシステムの動作を制御することは、システムの使用の安全性に寄与し、また、コンポーネントの長寿命を実現するという利点がある。
【0014】
外乱事象の発生は、少なくとも1つの検出器位置において検出器装置によって検出される内部放射強度のパラメータを表す安全性試験値が少なくとも1つの検出器位置に関連する安全基準値の範囲外にあるときに決定される。第1の実用的なオプションによれば、安全性試験値は、検出器装置によって検出された放射線の内部放射強度の値を表すことができる。第2の実用的なオプションによれば、安全性試験値は、検出器装置によって検出された放射線の内部放射強度の値の導関数、特に、所定の方向(すなわち、より高い値またはより低い値)における内部放射強度の変化の値を表すことができる。第1の実用的なオプションに関して、コントローラ装置は、内部放射強度の値を表す値が所定の閾値を上回るか下回るかを評価するように構成されることができる。第2の実用的なオプションに関して、コントローラ装置は、連続する検出動作の内部放射強度の値の間の差を表す値を計算し、その値が所定の閾値よりも大きいかどうかを評価するように、および/または、所定の方向における内部放射強度の変化率を表す値を計算し、その値が所定の閾値よりも大きいかどうかを評価するように構成され得る。本発明は、内部放射強度の変化の基礎となり得る、システムの構成、特に放射体の形状に関連する様々なオプションをカバーし、放射体を出る放射線の増加に起因するそのような変化のオプション、放射体内へと反射される放射線の増加に起因するそのような変化のオプション、および出射する放射線の変化と入ってくる放射線の変化との組み合わせに起因するそのような変化のオプションを含む。
【0015】
検出器装置の検出器位置の数は、自由に選択することができる。この点において、検出器位置の数を、放射線出射ウィンドウのサイズに、および/または、放射装置が2つ以上のUV放射源を含む場合にはUV放射源の数に関連付けることが有用であり得る。後者のオプションに関して、検出器位置の数は、UV放射源の数と同じであってもよく、同じでなくてもよいことに明確に留意されたい。いずれの場合も、検出器装置が少なくとも2つの異なる検出器位置で放射体内の放射線の内部放射強度を検出するように構成されるシステムの一実施形態では、検出器位置の各々について値の安全範囲が存在し、少なくとも1つの安全性試験値を決定するステップと、少なくとも1つの安全性試験値が値の安全範囲の内側または外側にあるかどうかを評価するステップとが、検出器位置ごとに実行される。この点において、本発明は、値の安全範囲が、2つの異なる検出器位置において同じであることと異なることの両方の可能性をカバーすることに留意されたい。完全性のために、上述のシステムの実施形態、すなわち、内部放射強度の検出が2つ以上の検出器位置で行われる実施形態では、検出器装置から受信される入力が2つ以上の検出器位置での外乱事象の発生を示すことが可能であることに留意されたい。そのような入力は、内部放射強度に対するその影響が2つ以上の検出器位置で見出され得るようなサイズのオブジェクトによって放射線出射ウィンドウが接触されたこと、および/または、同時に複数のオブジェクトによって放射線出射ウィンドウが接触されたことを表し得る。
【0016】
本発明は、少なくとも1つのUV放射源の殺菌状態が設定される殺菌期間の持続時間に関する様々なオプションを包含する。1つのオプションによれば、殺菌期間は単に予め定められた期間である。別のオプションによれば、コントローラアルゴリズムが殺菌期間の持続時間を決定することを含む。このプロセスでは、外乱事象とその後の復帰事象との間に経過する時間を考慮に入れることができ、その場合、殺菌期間の持続時間は、上述の時間がより長いときにより長く、おそらく所定の最大時間まで長く選択されることができ、または、先行する殺菌期間の持続時間を考慮に入れることができ、その場合、殺菌期間の持続時間は、先行する殺菌期間の持続時間が所定の最小持続時間よりも短いとき、より長くなるように選択されることができる。この点において考慮され得る他の有用なファクタもまた、本発明によって包含される。
【0017】
コントローラアルゴリズムは、殺菌期間が経過した後に、または殺菌期間中に外乱事象が発生したときに、少なくとも1つのUV放射源の通常状態を回復することをさらに含み得る。後者は、高等生物の紫外線への有害な曝露の状況を防止することによって安全性を保証するために行われる。これは、UV放射の強度の維持レベルが安全レベルである場合に特に適用可能である。そうでない場合、システムが、外乱事象の発生時に、少なくとも1つのUV放射源の適応状態、すわなち少なくとも1つのUV放射源が維持レベルに対して低減されたレベル(おそらくゼロレベル)の強度のUV放射を提供する状態を設定するように構成されている場合、有益である。
【0018】
放射線出射ウィンドウが短く/軽くだけ触れられている状況におけるシステムの反応を回避するために、コントローラアルゴリズムが、外乱事象の発生後に復帰事象が続き、外乱事象と復帰事象との間に経過した時間が所定の最小時間未満である場合には、少なくとも1つのUV放射源の通常状態を維持することが実用的であり得る。
【0019】
放射装置が少なくとも2つのUV放射源を含むシステムの一実施形態では、コントローラアルゴリズムが、外乱事象が発生し復帰事象が続いた後に、少なくとも1つの検出器位置で検出器装置によってモニタされる放射体の領域にUV放射を放射するように構成された少なくとも1つの指定されたUV放射源の殺菌状態を一時的に設定することを含む場合が有利である。実際、少なくとも1つの指定されたUV放射源の殺菌状態を設定することは、1つ以上のUV放射源がシステムに適用される場合に、更なる省電力措置であり、UV放射が提供される強度を一時的に増加させることは、これが適切である時に正確に行われるだけでなく、これが適切である場所にも行われる。さらに、コントローラアルゴリズムは、少なくとも1つの指定されたUV放射源以外の任意のUV放射源の通常状態を維持することを含んでもよい。これは、UV放射の強度の維持レベルがゼロレベルであるときに特に適用可能である。UV放射の強度の維持レベルがゼロを超えるレベルである場合、コントローラアルゴリズムは、少なくとも1つの指定されたUV放射源以外の任意のUV放射源の適応状態を設定することを含むことができ、その状態では、UV放射源は、指定されたUV放射源の殺菌状態が設定されている限り、維持レベルに対して減少されるレベル(おそらくゼロレベル)の強度のUV放射を提供し、それは、システムの殺菌機能を実際に劣化させることなく、常に可能な限り最低のレベルにシステムの電力消費を維持するのに役立ち得る。
【0020】
本発明は、少なくとも1つの指定されたUV放射源を特定する任意の適切な方法を包含する。例えば、少なくとも2つの検出器位置がある場合、コントローラアルゴリズムは、UV放射源と検出器位置との間の所定の関係に基づいて、少なくとも1つの指定されるUV放射源を特定することを含むことができる。これは、UV放射源の各々が、検出器装置からの入力に基づいてUV放射源のうちのどれが指定される放射源であるかを決定する際に、検出器位置のうちの少なくとも1つに割り当てられることを意味する。外乱事象の発生が検出器位置に関して見出されるとき、検出器位置に割り当てられた少なくとも1つのUV放射源は、少なくとも1つの指定されたUV放射源として示され、後続の復帰事象の発生後に殺菌状態される。
【0021】
本発明によるシステムの有利な実施形態では、コントローラ装置は、少なくとも1つの検出器位置に関連付けられた、値の安全基準範囲の調整を、自動化された態様で、すなわち、適切なアルゴリズムを実行することによって、および/または、システムがその目的のためにユーザ入力を受信するためのユーザインタフェイスを備えている場合、ユーザ入力に基づいて、可能にするように構成される。さらに、本発明は、固定システム設定である少なくとも1つの検出器位置に関連する値の安全基準範囲のオプションにも関することに留意されたい。いずれにせよ、基準範囲および/または基準レートを表す情報はデータベースなどに記憶されることができ、コントローラアルゴリズムは、そのような情報をデータベースなどから取り出すステップを含むことができる。
【0022】
検出器装置の検出器位置の数は自由に選択されることができることが先に示唆されている。検出器装置は、想定されるような検出器装置の機能を実現するための任意の適切な数の検出器を含むことができ、本発明は、検出器装置内に単一の検出器を有する可能性を含む。放射装置のUV放射源の数も自由に選択されることができる。放射体の構成および放射線出射ウィンドウのサイズに応じて、少なくとも2つのUV放射源がシステムに適用され、この少なくとも2つのUV放射源が放射体内で互いに距離を置いて配置される場合、および/または、検出器装置が放射体内で互いに距離を置いて配置された少なくとも2つの検出器を含む場合、有利であり得る。また、1つの検出器位置、すなわちほぼ同じ検出器位置に2つ以上の検出器を有することが可能であり、これらの検出器が異なる/反対方向からの放射線を検出するように構成および配置される場合、実用的であり得る。同様に、特定の位置に2つ以上のUV放射源を有することが可能であり、UV放射源が、異なる/反対方向にUV放射を放射するように構成され、配置される場合、実用的であり得る。放射体が材料のスラブを含み、少なくとも1つのUV放射源および/または少なくとも1つの検出器が材料のスラブに埋め込まれている場合、実用的であり得る。材料のスラブの材料は、例えばシリコーンであることができる。
【0023】
少なくとも1つのUV放射源は任意の適切なタイプであってもよく、例えば、LED、特にUV-C LEDであることができる。そのような場合、検出器装置は、例えば、LEDを放射線検出器として使用することが可能であるという事実を考慮して、同じLEDを備えることができ、コントローラ装置が、時々、放射源状態ではなく検出器状態にLEDを置くように構成される場合、実用的である。例えば、LEDは、90%または95%の時間などの主要な割合の間に放射線を放射するように駆動され、検出器として機能するために、残りの時間の間はオフにされ得る。放射装置が少なくとも2つのLEDを備える場合、コントローラ装置は、任意の所与の瞬間に、1つのLEDグループのLEDの状態を、別のLEDグループのLEDの状態とは異なるように設定するように構成されることがさらに可能である。LEDを放射光源及び検出器の両方として使用することは、必要とされるコンポーネントの数を低減することを可能とする少なくとも2つのLEDを含む放射装置の場合、放射線出射ウィンドウ上の接触位置を決定し、指定されるUV放射源を特定する精度が改善される。
【0024】
本発明の文脈において、検出器装置は、UV放射の内部放射強度検出するように構成されることが可能である。別のオプションは、システムが、UV放射源に加えて別のタイプの放射線源、すなわち、可視光または赤外線などの明らかにより長い波長の放射を提供するように構成された少なくとも1つの放射源を備え、検出器装置が明らかにより長い波長の放射の内部放射強度を少なくとも検出するように構成されることである。より長い波長の放射線の吸収が典型的には著しく低いという事実を考慮すると、外乱事象およびその後の復帰事象が少なくとも1つの検出器位置で発生するかどうかをチェックするステップが高い精度で実行されることができ、一方、追加の放射線源および検出器の数は制限されたままにすることができる。
【0025】
本発明はまた、システムの放射体の放射線出射ウィンドウがオブジェクトの外側に配置される、本明細書で前述したようなシステムを備えるオブジェクトに関する。このようなオブジェクトの例としては、WO 2018/215272 A1から公知のシステムに関して前述した例の全てが挙げられる。一般に、オブジェクトは、家庭用電化製品、家具、建物および車両のコンポーネント、衛生部分、医療装置ならびに前述のすべてのコンポーネントを含むグループから選択され得る。オブジェクトは、人間、特に異なる人間によって定期的かつ一時的に接触されることを特に意図されたドアノブ、制御ボタン、タッチスクリーンなどであることができる。
【0026】
本発明はまた、上述のシステムを既存のオブジェクトに追加する方法に関し、システムの放射体は、既存のオブジェクトの外面に適用される。これは、接着によること、固定手段を使用すること、またはスナップ接続もしくはフォーム閉鎖構成に基づくことを含む、任意の適切な方法で行われ得る。
【0027】
本発明の上記および他の態様は、i)放射線出射ウィンドウを備える放射体であって、少なくともUV放射を含む放射線を受け取り、放射線出射ウィンドウを介して放射体の外部に放射するように構成された放射体と、ii)UV放射を放射するように構成された少なくとも1つのUV放射源を有する、放射を提供するように構成された放射装置と、iii)少なくとも1つの検出器位置において放射体内の放射線の内部放射強度を検出するように構成された検出器装置と、iv)放射装置および検出器装置に機能的に結合されたコントローラ装置とを備えるシステムの以下の実施形態の詳細な説明から明らかであり、それらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明は、図面を参照してより詳細に説明され、図面において、等しい又は類似の部分は同じ参照符号によって示される。
【
図1】本発明の第1の実施形態によるシステムを概略的に示す図。
【
図2】本発明の第2の実施形態によるシステムの一部を概略的に示す図。
【
図3】本発明によるシステムを装備することができるいくつかのオブジェクトを概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の第1の実施形態によるシステム1を概略的に示す。
【0030】
システム1は、放射体10と、放射装置20と、検出器装置30と、コントローラ装置40とを備える。
【0031】
放射体10は、放射線出射ウィンドウ11を含む。
図1は、材料のスラブを含む放射体10の実用的なオプションを示しており、放射線出射ウィンドウ11は概ね平坦な外観である。
【0032】
放射装置20は、少なくともUV放射を含む放射線を放射するように構成される。図示の例では、放射装置20が、少なくとも放射線出射ウィンドウ11の内側に向かう、1つ以上の方向にUV放射を放射するように構成されたUV放射源21を備える。
図1において、UV放射は、矢印23によって示されている。UV放射源21の実例は、UV-C LEDである。
図1は、UV放射源21が放射体10の材料のスラブに埋め込まれる実用的なオプションを示しており、材料のスラブは、UV放射源21によって提供されるUV放射23に対して透明である。
【0033】
検出器装置30は、放射体10内の内部放射強度検出するように構成される。
図1は、放射体10の材料のスラブに埋め込まれた検出器31を含む検出器装置30の実用的なオプションを示す。
【0034】
コントローラ装置40は、放射装置20及び検出器装置30に機能的に結合され、システム1の動作を制御するように構成される。本発明は、コントローラ装置40と放射装置20と検出器装置30との間のデータ通信をそれぞれ有線方式で行うことを可能にするように構成された通信装置を備えるシステム1のオプションと、データ通信を無線方式で行うことを可能にするように構成された通信装置を備えるシステム1のオプションの両方をカバーし、データ通信を部分的に有線方式でかつ部分的に無線方式で行うことを可能にするように構成された通信装置を備えるシステム1のオプションもカバーする。
図1は、放射体10の材料のスラブに埋め込まれたユニットを備えるコントローラ装置40の実用的なオプションを示す。これは、追加的に又は代替的に、コントローラ装置40が放射体10の材料のスラブの外側に配置された少なくとも1つのユニットを備えることも可能であるという事実を変えない。
【0035】
放射装置20、検出器装置30及びコントローラ装置40は、任意の適切な態様で電力供給されることができる。本発明は特に、限られた量の電力しか利用できない状況に適用可能であり、これは、主電源に接続することが実用的でない状況における場合である。その観点から、放射装置20、検出器装置30及びコントローラ装置40のバッテリ41への電気的結合が例として挙げられ、これは、本発明がいかなる特定の電源にも限定されないという事実を変更しない。
【0036】
放射体10の放射線出射ウィンドウ11は、UV放射源21のUV放射23の一部を透過するように構成される。
図1において、放射線出射ウィンドウ11を通って放射体10から出射する放射は、破線24によって示されている。検出器31は、放射線出射ウィンドウ11から放射体10の材料のスラブ内に放射される内部放射25を受け取る位置にあり、内部放射25の強度を表す出力信号をコントローラ装置40に提供するように構成される。放射線出射ウィンドウ11の構造に応じて、内部放射25は、i)放射線出射ウィンドウ11の位置におけるUV放射源21によって放射されたUV放射23の散乱、およびii)放射線出射ウィンドウ11の内側でのUV放射源21によって放射されたUV放射23の反射のうちの少なくとも1つを通して得られる。UV放射源21によって放射されたUV放射23の散乱は、特に、
図1に概略的に示されるように、人の指などのオブジェクト5が放射線出射ウィンドウ11の外側に存在するときに生じるだろう。いずれにせよ、放射線出射ウィンドウ11がオブジェクト5と接触すると、出射放射線24と、放射線出射ウィンドウ11の内側から検出器31に向かって進む内部放射線25との両方が変化する可能性が高い。
【0037】
システム1内に放射装置20を有する主な目的は、放射線出射ウィンドウ11の外側を殺菌状態に保つことである。細菌またはウイルスが放射線出射ウィンドウ11の外側に行き着くと、細菌またはウイルスは、細菌またはウイルスの位置で、出射放射線24の影響下で死滅するか、または少なくとも不活性化される。このようにして、放射線出射ウィンドウ11を介した疾患の拡がりが防止される。システム1のこの機能性は、システム1の多くの可能な用途、特に放射線出射ウィンドウ11が人間及び/又は動物/ペットによって定期的及び一時的に接触される傾向がある用途において有利である。
【0038】
コントローラ装置40は、特にUV放射源21によって放射されるUV放射23の強度を設定する際に、検出器装置30によって提供される信号に応じて放射装置20を制御するように構成される。事実、コントローラ装置40は、デフォルトとしてUV放射源21が維持レベルの強度で放射線23を供給するUV放射源21の通常状態を設定し、UV放射源21が、検出器31の出力信号の変化を伴う外乱事象の発生とその後の復帰事象の後に、維持レベルに対して増加したレベルの強度でUV放射23を供給する、UV放射源21の殺菌状態を一時的に設定するように構成される。先に説明したように、検出器31の出力信号は、内部放射線25の強度を表す。この点において、内部放射線25の強度のパラメータを表す少なくとも1つの試験値が、値の安全基準範囲内から値の安全範囲外にシフトしたときに、外乱事象の発生が決定され、復帰事象の発生は、少なくとも1つの試験値の反対方向のシフトが見出されたときに決定されることに留意されたい。システム1の適切な機能を確実にするために、外乱事象の発生を評価する際に依拠する基準は、好ましくは、放射線出射ウィンドウ11上に比較的小さいオブジェクトが存在するとき、特に、細菌および/またはウイルスを含有する小さな液滴および/またはグリース/汚れなどの、数十~数百マイクロメートルまたはさらに小さい寸法を有するオブジェクトが存在するときには外乱事象の発生が決定されないが、比較的大きなオブジェクトが放射線出射ウィンドウ11上に存在するときにのみ、外乱事象の発生が決定されるように選択される。
【0039】
本発明は、一方では、放射線出射ウィンドウ11の殺菌状態を実現するのに適したシステム1を動作させる方法を提供し、その結果、放射線出射ウィンドウ11に接触する人間または高等動物に対する健康上の危険がなく、他方では最小量の電力しか必要としない。放射線出射ウィンドウ11の汚染が放射線出射ウィンドウ11への非常に大きな接触イベントによって引き起こされるという事実に鑑みて、本発明は、放射線出射ウィンドウ11の殺菌状態を可能な限り速く回復するために、そのようなイベントが起こった後に比較的高線量のUV放射線23を提供し、それ以外では、UV放射線23の強度を維持レベルにすることを提案する。このようにして、接触の事象中に放射線出射ウィンドウ11に移された可能性がある任意の微生物は、事象が起こった直後に死滅されるか、または少なくとも不活性化され、その後、システム1は、新しい接触事象が起こるまで、維持モードに切り替わる。UV放射源21の殺菌状態の持続時間は、予め定められた長さであることができ、または外乱事象とその後の復帰事象との間に経過した時間および/または先行する殺菌期間の持続時間などの1つまたは複数の関連する要因に基づいて決定されてもよい。
【0040】
本発明の文脈において、UV放射源21の任意の適切な数を選択することができ、UV放射源21の配置を、UV放射源21がUV放射23を放射体10の放射線出射ウィンドウ11のそれぞれの領域に、重複しているかどうかにかかわらず、放射する配置とすることが可能である。また、検出器31の任意の適切な数を、本発明の文脈において選択することができる。この点において、
図2は本発明の第2の実施形態によるシステム2の一部を概略的に示し、このシステム2は、複数のUV放射源21および複数の検出器31を含むことに留意されたい。そこで、システム2を拡張システム2と呼ぶ。拡張システム2は、本発明の第1の実施形態による上述のシステム1を、実際には統合された形で、複数備えていると見なされてもよく、その数は任意の適切な値となるように選択されることができる。説明のために、2つの放射線源21、22と2つの検出器31、32とを含む拡張システム2の一部が
図2に示されている。UV放射源21、22は、UV放射源21、22が放射体10の材料のスラブ全体にわたって、放射線出射ウィンドウ11に平行に延在する仮想平面において、一列に、または2Dアレイとして等しく分布するパターンを含む、任意の適切なパターンで配置されることができる。いずれにせよ、UV放射源21、22は、互いに距離を空けて配置されていると実用的である。検出器31、32についても同様である。
【0041】
ここで、拡張システム2がどのように動作するかについての一般的な説明が提供される。第1に、ほとんどの材料は、UV-C波長範囲の放射線に対して高い吸収を有することに留意されたい。例えば、シリコーン材料は、典型的には伝播距離cm当たり20%を超える放射線を吸収する。これにより、10cm後には(1-0.2)10=放射の約10%のみが残され、20cm後にはこれは約1%のみにさらに減少する。放射体10の材料のスラブの材料がシリコーンであると仮定すると、UV放射源が互いに10cmの距離で一行に配置され、UV放射線検出器31、32もまた互いに10cmの距離で、行が延在する方向に見たときにUV放射源21、22の間の中間位置に、一行に配置され、概ね、検出器位置において残される最も近いUV放射源21、22のUV放射23のパーセンテージが約33%であるのに対して、同じ検出器位置において残される2番目に近いUV放射源21、22のUV放射23のパーセンテージは約3.5%にすぎないことを考慮すると、検出器位置の各々における内部放射25の強度は、最も近いUV放射源21、22のUV放射23によって主に決定されることが分かる。
【0042】
前述のように、放射体10の放射線出射ウィンドウ11が
図2に概略的に示されるように、人の指などのオブジェクト5によって接触されるとき、これは、内部放射線25の強度の局所的変化を伴う。さらなる省電力措置として、放射装置20が2つ以上のUV放射源21、22を含む場合、拡張システム2の場合のように、コントローラ装置40は、1つ以上の検出器位置での外乱事象およびその後の復帰事象の発生の決定を通じて、接触された領域であると判定された領域にUV放射23を放射するように構成および配置された少なくとも1つのUV放射源21、22のみを殺菌状態に一時的に設定するように構成される。前述のように、放射体10の材料におけるUV放射23の吸収に基づいて、また、検出器装置30が設計される態様に基づいて、おそらく放射体10の材料のスラブ全体にわたる検出器位置の分布パターンによって、UV放射源のどれが、放射線出射ウィンドウ11への最近の接触の事象から生じる可能性のある健康リスクを排除するために、その事象に関与しているまさにその領域において、殺菌状態に一時的に置かれるべきである指定されるUV放射源21、22として特定されることができるかを決定することは、非常に良好に可能である。例えば、一方でUV放射源21、22と他方で少なくとも1つの検出器位置との間の所定の関係がコントローラ装置40に記憶され、コントローラ装置40が、検出器装置30からの入力を所定の関係に適用することによって、1つ以上の指定されるUV放射源21、22を特定さるように構成されることができる。これは、外乱事象が検出器位置で発生するたびに、1つまたは複数のUV放射源21、22が、指定されたUV放射源21、22として自動的に特定されることを意味する。
【0043】
1つ以上の指定されたUV放射源21、22を殺菌状態に一時的に設定することに関して、UV放射源23の強度の維持レベルがゼロレベルではない場合、指定されたUV放射源21、22以外の任意のUV放射源21、22の適応状態を設定することが可能であり、この状態では、関係するUV放射源21、22は、指定されたUV放射源21、22が殺菌状態に設定されている限り、維持レベルに対して減少したレベルの強度をUV放射源23に提供し、これはエネルギー節約の観点から、および/または一時点における総利用可能電力の観点から有益であり得る。
【0044】
図3は、特に、浴室100および浴室ドア101に見られるオブジェクト、すなわち、便座102、便器洗浄ノブ103、蛇口ノブ104、および浴室ドアのドアノブ105を含む、本発明によるシステム1, 2が装備された複数のオブジェクトを概略的に示す。示されたオブジェクトは、本発明の保護範囲に含まれる多くのオブジェクトのほんの一部である。オブジェクト102、103、104、105は、従来の設計とすることができ、その場合、システム1、2、またはシステム1、2の少なくとも放射体10および放射体10に配置されたコンポーネントは、オブジェクト102、103、104、105の外面に配置されることができ、またはオブジェクト102、103、104、105は、適合した設計とすることができ、この場合、システム1、2またはシステム1, 2の少なくとも放射体10および放射線体10に配置されたコンポーネントは、例えば、システム1、2の放射体10の放射線出射ウィンドウ11がオブジェクト102、103、104、105の元の外面の周囲の部分と同一平面であることができる、オブジェクト102、103、104、105の部材に沈んだ配置を有することができる。
【0045】
本発明の範囲は、前述の例に限定されず、添付の特許請求の範囲に規定されるような本発明の範囲から逸脱することなく、そのいくつかの修正および変更が可能であることは当業者には明らかであろう。本発明は、特許請求の範囲またはその均等物の範囲内に入る限り、そのようなすべての修正および変更を含むものと解釈されることが意図される。本発明が図面および詳細な説明において詳細に図示および説明されてきたが、そのような図示および説明は単なる例示であり、限定するものではないと考えられるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されない。図面は概略的であり、本発明を理解するために必要とされない詳細は省略されており、必ずしも縮尺通りではない。
【0046】
開示された実施形態に対する変形例は、図面、説明、および添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求された発明を実施する際に当業者によって理解され、達成されることができる。特許請求の範囲において、単語「有する」は他のステップ又は要素を除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。請求項におけるいかなる参照符号も、発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0047】
特定の実施形態のために、または特定の実施形態に関連して説明される要素および態様は、特に断らない限り、他の実施形態の要素よび態様と適切に組み合わせることができる。したがって、特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。
【0048】
本文で使用される用語「有する(comprise)」および「含む(include)」は、用語「からなる(consist of)」を包含するものとして当業者によって理解されるであろう。したがって、用語「有する(comprise)」または「含む(include)」は、実施形態に関して、「からなる(consist of)」を意味し得るが、別の実施形態においては、「少なくとも定義された種およびオプションとして1つ以上の他の種を含有する/持つ/備える」を意味する場合がある。
【0049】
本発明は、デフォルトとして設定される少なくとも1つのUV放射源21、22の通常状態が、UV放射23の強度の維持レベルとして、UV放射23の強度の比較的低いレベルを含む少なくとも2つの状態のうちの1つというオプションを包含する。例えば、ウィンドウ11上の接触の事象が通常は昼間にのみ予想され、夜間には予想されない環境において本発明が適用される場合、夜間にUV放射線23の強度がゼロレベルである少なくとも1つのUV放射源21、22の通常状態が設定され、日中に、UV放射線23の強度のレベルがいくらか高い少なくとも1つのUV放射源21、22の通常状態が設定されるようにすることができる。
【0050】
本発明の注目すべき態様を以下に要約する。システム1、2は、放射体10と、少なくともUV放射線23を含む放射線を放射体10に提供するように構成された放射装置20と、少なくとも1つの検出器位置において放射体10内の放射線25の内部放射強度を検出するように構成された検出器装置30と、放射装置20及び検出器装置30に機能的に結合されたコントローラ装置40とを備え、コントローラ装置40は、検出器装置30からの入力に応じて放射装置20を制御するように設計されたコントローラアルゴリズムを適用するように構成される。特に、検出器装置30からの入力が、放射体10の放射線出射ウィンドウ11への接触の事象に続いておきると仮定される、少なくとも1つの検出器位置における外乱事象として認定される内部放射強度の変化を示す場合、放射装置20の少なくとも1つのUV放射源21、22の状態を、維持状態から、UV放射線23の強度が増加した殺菌状態へと一時的に変更する動作が実行される。少なくとも1つのUV放射源21、22の殺菌状態を、接触の事象が生じた後にのみ設定することによって、また、放射装置20が複数のUV放射源21、22を含む場合には接触の事象に関与する領域を照射するように配置された1つ以上の放射線源21、22のみについて設定することによって、放射線出射ウィンドウ11の殺菌は最小量の電気エネルギーのみで実現される。