(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-12
(45)【発行日】2024-06-20
(54)【発明の名称】蓄電モジュール用圧力調整弁及び蓄電ユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 50/308 20210101AFI20240613BHJP
H01M 50/317 20210101ALI20240613BHJP
H01M 50/325 20210101ALI20240613BHJP
【FI】
H01M50/308
H01M50/317 201
H01M50/325
(21)【出願番号】P 2023548159
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2022029893
(87)【国際公開番号】W WO2023042569
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2024-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2021151486
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 勝好
(72)【発明者】
【氏名】長澤 基弘
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-61850(JP,A)
【文献】特開2020-77553(JP,A)
【文献】特開2013-161735(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0034757(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/308
H01M 50/317
H01M 50/325
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室内に弁体を収容したケースが蓄電装置に対して取りけられる蓄電モジュール用圧力調整弁であって、
前記ケースは、密封部材が設けられるとともに前記蓄電装置に接触する密封面と、該密封面に沿った所定のスライド方向に沿って移動することで前記蓄電装置に取り付け可能な取付部と、を有する、蓄電モジュール用圧力調整弁。
【請求項2】
前記ケースは、前記スライド方向に沿った一対の縁部を有し、
前記取付部は、前記縁部から外側に突出することで前記蓄電装置によって係止される被係止部である、請求項1に記載の蓄電モジュール用圧力調整弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蓄電モジュール用圧力調整弁と、蓄電装置と、を備えた蓄電ユニットであって、
前記蓄電装置は、前記取付部を保持する保持部を有する、蓄電ユニット。
【請求項4】
前記保持部は、前記密封面に沿うとともに前記スライド方向に直交する方向から前記ケースを挟み込む複数対の挟持部を有する、請求項3に記載の蓄電ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュール用圧力調整弁及び蓄電ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるバッテリ用の蓄電モジュールとして、圧力調整弁が設けられたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された蓄電モジュールでは、圧力調整弁が、ベース部材と、筒状部が形成されたケース部材と、筒状部に収容される弾性部材である弁体と、ケース部材の開口を塞ぐカバー部材と、を備えている。ベース部材が蓄電モジュールの枠体に対して溶着されるとともに、ケース部材がベース部材に対して溶着されることで、圧力調整弁が固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された蓄電モジュールでは、圧力調整弁を使用することで弁体等に劣化や異常等が発生した場合に、ケース部材がベース部材に対して溶着されているために圧力調整弁を取り外すことができず、部品の交換や点検をすることができなかった。このように、圧力調整弁のメンテナンス性を向上させることが望まれていた。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、メンテナンスを向上させることができる蓄電モジュール用圧力調整弁および該蓄電モジュール用圧力調整弁を備えた蓄電ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る蓄電モジュール用圧力調整弁は、弁室内に弁体を収容したケースが蓄電装置に対して取りけられる蓄電モジュール用圧力調整弁であって、前記ケースは、密封部材が設けられるとともに前記蓄電装置に接触する密封面と、該密封面に沿った所定のスライド方向に沿って移動することで前記蓄電装置に取り付け可能な取付部と、を有する。
【0007】
本発明の一態様に係る蓄電モジュール用圧力調整弁において、前記ケースは、前記スライド方向に沿った一対の縁部を有し、前記取付部は、前記縁部から外側に突出することで前記蓄電装置によって係止される被係止部である。
【0008】
本発明に係る蓄電ユニットは、上記の蓄電モジュール用圧力調整弁と、蓄電装置と、を備えた蓄電ユニットであって、前記蓄電装置は、前記取付部を保持する保持部を有する。
【0009】
本発明の一態様に係る蓄電ユニットにおいて、前記保持部は、前記密封面に沿うとともに前記スライド方向に直交する方向から前記ケースを挟み込む複数対の挟持部を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る蓄電モジュール用圧力調整弁によれば、メンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る蓄電モジュール用圧力調整弁を備えた蓄電ユニットの斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る蓄電モジュール用圧力調整弁の斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る蓄電モジュール用圧力調整弁の斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る蓄電モジュール用圧力調整弁の斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る蓄電モジュール用圧力調整弁の斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る蓄電モジュール用圧力調整弁の平面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る蓄電モジュール用圧力調整弁の側面図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る蓄電モジュール用圧力調整弁の底面図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る蓄電モジュール用圧力調整弁の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る蓄電モジュール用圧力調整弁1を備えた蓄電ユニット100の斜視図であり、
図2は、蓄電モジュール用圧力調整弁1の斜視図であり、
図3は、蓄電モジュール用圧力調整弁1の斜視図であり、
図4は、蓄電モジュール用圧力調整弁1の斜視図であり、
図5は、蓄電モジュール用圧力調整弁1の斜視図であり、
図6は、蓄電モジュール用圧力調整弁1の平面図であり、
図7は、蓄電モジュール用圧力調整弁1の側面図であり、
図8は、蓄電モジュール用圧力調整弁1の底面図であり、
図9は、蓄電モジュール用圧力調整弁1の要部を示す断面図である。
【0013】
図1~8に示すように、本発明の実施の形態に係る蓄電モジュール用圧力調整弁1は、弁室内に弁体を収容したケース2が蓄電装置10に取りけられる蓄電モジュール用圧力調整弁であって、ケース2は、密封部材21が設けられるとともに蓄電装置10に接触する密封面2Aと、密封面2Aに沿った所定のスライド方向(X方向)に沿って移動することで蓄電装置10に取り付け可能な取付部22と、を有する。また、蓄電ユニット100は、蓄電モジュール用圧力調整弁1と蓄電装置(蓄電モジュール)10とを備える。以下、蓄電モジュール用圧力調整弁1及び蓄電ユニット100について具体的に説明する。
【0014】
蓄電モジュール用圧力調整弁1は、蓄電装置10において内圧が上昇した際に放圧するように構成されている。蓄電装置10は、例えばニッケル水素電池であって、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両において、モータに電力を供給するために設けられる。
【0015】
ケース2は、例えば合成樹脂によって全体が直方体状に形成され、蓄電装置10側を向いた密封面2Aと、その反対側を向いた開放面2Bと、を有する。ケース2には、開放面2Bから見て複数の凹部が形成されており、この凹部が弁室を形成し、弾性部材である弁体が収容される。各々の凹部の底部には貫通孔が形成されており、密封面2A側から凹部内に気体を導入することができるようになっている。
【0016】
ケース2の開放面2B側にはカバー部材が設けられ、凹部が閉塞されるようになっている。このとき、カバー部材はケース2に対して着脱可能であることが好ましい。また、カバー部材には、弁体を弁閉側に押圧する押圧部が設けられていてもよい。
【0017】
ケース2の密封面2Aは、
図4,5に示すように枠状に形成されている。各々の枠内の領域は、蓄電装置10側の開口部に対応したものであり、各々の枠内の領域に適宜な数の凹部が形成されている。密封面2Aには、枠に沿って弾性部材である密封部材21が設けられる。密封部材21は、例えばゴムや樹脂等の弾性部材であればよく、例えば一体成形によりケース2に設けられていればよい。
【0018】
ここで、直方体状のケース2の延在方向(最も長い辺の方向)をX方向とする。また、後述するように、X方向がスライド方向となる。ケース2は、密封面2Aと開放面2Bとに挟まれるとともにX方向に沿った一対の側面2C,2Dを有する。即ち、側面2C,2Dが、スライド方向に沿った一対の縁部となる。側面2C,2Dのうち密封面2A側の部分には、それぞれ3つの取付部22が形成されている。
【0019】
取付部22は、側面2C,2Dから外側に突出する板状に形成されている。ここで、「外側に突出する」とは、側面2Cに形成された取付部22と側面2Dに形成された取付部22とが、互いに離れるように延びていることを意味する。X方向中央部に配置された取付部22は、他の取付部22よりもX方向寸法が大きい。これにより、中央部の取付部22が後述する挟持部121~123のうち中央の挟持部122のみと係合可能となっている。尚、全ての取付部の寸法が互いに異なっていてもよいし、中央の取付部の寸法が他よりも小さくてもよい。
【0020】
蓄電装置10は、蓄電機能を有するモジュールを収容する筐体11を備える。筐体11には、内圧が上昇した際に気体を放出するための開口部が形成されており、この開口部に対応するように蓄電モジュール用圧力調整弁1が設けられる。即ち、蓄電装置10の内圧が上昇した場合には、筐体11の開口部から気体が放出され、この気体がケース2の貫通孔を通過して凹部内に導入される。凹部内の圧力が予め設定された値以上となると、弁体が貫通孔を開放し、気体が外部空間に放出されるようになっている。
【0021】
蓄電装置10の筐体11には、取付部22を保持することで蓄電モジュール用圧力調整弁1のケース2を取り付けるための保持部12が設けられている。保持部12は、筐体11のうち開口部が形成された取付面11Aから突出するように形成されている。保持部12は、ケース2の取付部22に対応して3対の挟持部121~123によって構成されている。尚、取付部22及び挟持部121~123の数は上記に限定されない。取付面11Aは、ケース2の密封面2Aが接触する面である。各々の挟持部121~123は、取付面11Aに沿う(密封面2Aに沿う)とともにX方向に直交する方向からケース2を挟み込むように配置されている。
【0022】
ここで、筐体11に対するケース2の取付方法及び取付構造の詳細について説明する。まず、
図2に示すように、ケース2の密封面2Aを筐体11の取付面11Aに接触させるとともに、挟持部121,122によってケース2が挟み込まれた状態とする。この状態から、
図3に示すように筐体11に対してX方向に沿ってケース2をスライド移動させる。これにより、各々の取付部22が挟持部121~123に対応する位置まで移動して係止される。このような係止時において、密封部材21が圧縮されることで取付面11Aに対して密着することが好ましい。
【0023】
図9に示すように、挟持部121~123は、凹部120を有している。上記のようなスライド移動によって、取付部22が、凹部120に対してX方向に隣り合う壁部を乗り越え、凹部120に嵌まることで係止される。このように、取付部22が被係止部として機能する。尚、保持部12と取付部22との係止構造は、上記構造に限定されず、X方向のスライド移動によって係止されるものであればよい。また、係止時に壁部を乗り越えやすいように、取付部にテーパ部等を形成してもよい。
【0024】
上記のように取付部22が保持部12によって係止された状態において、筐体11の開口部と、密封面2Aの枠内の領域と、が対応し、筐体11から凹部内に気体を導入可能となり、蓄電モジュール用圧力調整弁1が機能することができる。
【0025】
蓄電ユニット100を使用することで蓄電モジュール用圧力調整弁1が弁の開閉を繰り返したり、弁体が経時劣化したりすることで、所望の弁開特性が得られなくなる場合がある。このような場合、
図3のように取付部22が保持部12によって係止された状態から、筐体11に対してX方向に沿ってケース2をスライド移動させ、
図2のように係止解除された状態とする。これにより、蓄電装置10から蓄電モジュール用圧力調整弁1を取り外すことができ、部品の交換や点検等の適宜なメンテナンス作業が可能となる。また、蓄電モジュール用圧力調整弁1全体を交換することもできる。
【0026】
上記のように着脱時にケース2をX方向に沿ってスライド移動させる際、装着時の移動方向および装着解除時の移動方向が決まっている(X方向の一方側に移動することで係止され、他方側に移動することで係止解除される)構成としてもよいし、どちらの方向に移動させても着脱のいずれもが可能であってもよい。
【0027】
このように、本発明の実施の形態に係る蓄電モジュール用圧力調整弁1によれば、ケース2が取付部22を有することで、スライド方向に沿って蓄電モジュール用圧力調整弁1と蓄電装置10とを相対移動させることで着脱可能となり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0028】
また、取付部22がケース2の側面2C,2Dから突出していることで、蓄電装置10によって取付部22を容易に係止することができる。
【0029】
また、保持部12がケース2を挟み込む複数対の挟持部121~123によって構成されていることで、ケース2をX方向に沿って案内することができ、着脱の作業性を向上させることができる。また、X方向に並んだ2対の挟持部の間に取付部22が位置するようにケース2を配置してからケース2をスライド移動させることができ、保持部が一対の挟持部のみによって構成される場合と比較して、着脱時のスライド量を小さくし、作業性を向上させることができる。
【0030】
尚、本発明は上記の実施の形態に限定されず、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、上記の本発明の実施の形態では、取付部22がケース2の側面2C,2Dから突出しているものとしたが、取付部が密封面から突出した突起状に形成され、この突起を受け入れる凹部や貫通孔が蓄電装置の取付面に形成されていてもよい。
【0031】
また、上記の本発明の実施の形態では、保持部12がケース2を挟み込む複数の挟持部121~123によって構成されているものとしたが、保持部は一対の挟持部のみによって構成されていてもよい。
【0032】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施の形態に係る蓄電モジュール用圧力調整弁に限定されるものではなく、本発明の概念及び請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0033】
1…蓄電モジュール用圧力調整弁、2…ケース、21…密封部材、22…取付部、2A…密封面、2B…開放面、2C,2D…側面(縁部)、10…蓄電装置(蓄電モジュール)、11…筐体、11A…取付面、12…保持部、121~123…挟持部、120…凹部、100…蓄電ユニット