(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/32 20060101AFI20240614BHJP
H02K 9/06 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
H02K1/32 Z
H02K9/06 C
(21)【出願番号】P 2020185091
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 章洋
(72)【発明者】
【氏名】有賀 信雄
(72)【発明者】
【氏名】根本 達也
(72)【発明者】
【氏名】川端 俊亮
(72)【発明者】
【氏名】諸星 時男
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-114135(JP,A)
【文献】特開平08-298736(JP,A)
【文献】実開昭51-100803(JP,U)
【文献】特開2003-324901(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0212742(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/32
H02K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
前記ステータ内に配置されるロータと、を備え、
前記ロータは、
円筒状であり、且つ外周面が前記ステータの内周面に対向するように配置されるロータコア部と、
前記ステータに対して前記ロータコア部を回転可能に支持するコア部支持部材と、
前記ロータコア部を冷却する冷却部と、を有し、
前記冷却部は、
筒状であり且つ前記ロータコア部の内周面との間に径方向内側に間隔をあけて配置される筒状ベース部と、
前記筒状ベース部の外周面から前記ロータコア部の内周面に向かって延出するように形成され、且つ前記筒状ベース部の内部と外部とを連通させるノズル部と、を有し、
前記コア部支持部材は、
前記筒状ベース部内に供給する冷媒を通すための冷媒供給口と、
前記ロータコア部と前記筒状ベース部との間から冷媒を排出するための冷媒排出口と、を有する、
モータ。
【請求項2】
前記冷却部は、
前記ロータコア部の内周面に対して直接的又は間接的に突設される放熱用のフィンを有する、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記冷媒供給口に冷媒を供給する冷媒供給手段を備える、
請求項1又は請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
軟質な素材で平板状に形成され且つ複数の貫通孔が形成されている板状部と、前記ノズル部を構成する筒部であって、内部が前記貫通孔と連通するようにして前記板状部に対して一体に立設された複数の筒部とを有するノズル形成部材を備え、
前記筒状ベース部には、径方向に貫通する複数の貫通孔が形成され、
前記板状部は、前記複数の筒部のそれぞれが前記筒状ベース部の前記貫通孔の位置に合わせて配置された状態で、前記筒状ベース部の内周面または外周面に重ねて取り付けられる、
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関し、特に、ロータを冷却する構造を備えたモータに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のモータとして、例えば、特許文献1に開示されているような、コイルを有する筒状のステータと、磁石を有し、且つステータに対して径方向内側(ステータの径方向における内側)に間隔をあけて回転可能に配置されているロータと、ロータの回転軸となるシャフトと、を備える回転電機が知られている。
【0003】
前記回転電機には、ロータを冷却するための構造が設けられている。より具体的に説明すると、前記回転電機におけるロータを冷却するための構造は、シャフトに対して軸線方向における一端から他端に亘って貫通するように形成された軸心冷媒路と、該軸心冷媒路に連通し、且つシャフトの外周面で開口する径方向冷媒路と、軸心冷媒路に供給する冷媒を流通させるための冷媒供給管とで構成されている。
【0004】
前記回転電機によれば、冷媒供給管に冷媒を供給すると、該冷媒が軸心冷媒路、径方向冷媒路を通り、シャフトとロータの間の空間に流れ込むため、ロータを内周面側から冷却できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の回転電機では、径方向冷媒路を通ってシャフトとロータの間の空間に流れ込んだ冷媒は、ロータの内周面側や前記軸線方向に広がるように流れるため、特にロータの内周面側においてロータと十分に熱交換する前に排出されてしまうことがある。そのため、前記回転電機では、ロータの冷却性能が低くなるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、冷却性能が高いモータの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のモータは、
ステータと、
前記ステータ内に配置されるロータと、を備え、
前記ロータは、
円筒状であり、且つ外周面が前記ステータの内周面に対向するように配置されるロータコア部と、
前記ステータに対して前記ロータコア部を回転可能に支持するコア部支持部材と、
前記ロータコア部を冷却する冷却部と、を有し、
前記冷却部は、
筒状であり且つ前記ロータコア部の内周面との間に径方向内側に間隔をあけて配置される筒状ベース部と、
前記筒状ベース部の外周面から前記ロータコア部の内周面に向かって延出するように形成され、且つ前記筒状ベース部の内部と外部とを連通させるノズル部と、を有し、
前記コア部支持部材は、
前記筒状ベース部内に供給する冷媒を通すための冷媒供給口と、
前記ロータコア部と前記筒状ベース部との間から冷媒を排出するための冷媒排出口と、を有する。
【0009】
上記構成のモータによれば、筒状ベース部の外周面に突設したノズル部からロータコア部の内周面に向けて冷媒が送られるように構成されているため、筒状ベース部とロータコア部の間の空間では、ロータコア部側の領域が熱交換する前の新鮮な冷媒で満たされ易くなり、これにより、ロータコア部の冷却性能を向上させることができる。
【0010】
また、本発明のモータでは、
前記冷却部は、
前記ロータコア部の内周面に対して直接的又は間接的に突設される放熱用のフィンを有する、ように構成されていてもよい。
【0011】
上記構成のモータによれば、ロータコア部の熱がフィンに移るため、ロータコア部の熱をフィンに逃がすとともに、ロータコア部の内周面とフィンの両方を使ってロータコア部で生じた熱と冷媒とを熱交換できるため、ロータコア部の冷却性能がさらに向上する。
【0012】
また、本発明のモータは、
前記冷媒供給口に冷媒を供給する冷媒供給手段を備えるようにしてもよい。
【0013】
上記構成のモータによれば、冷媒供給手段によって冷媒供給口に強制的に冷媒を供給し続けることができるため、ロータコア部の内周面に対して安定して冷媒を送り続けることができるため、ロータコア部の冷却性能を安定させることもできる。
【0014】
さらに、本発明のモータは、
軟質な素材で平板状に形成され且つ複数の貫通孔が形成されている板状部と、前記ノズル部を構成する筒部であって、内部が前記貫通孔と連通するようにして前記板状部に対して一体に立設された複数の筒部とを有するノズル形成部材を備え、
前記筒状ベース部には、径方向に貫通する複数の貫通孔が形成され、
前記板状部は、前記複数の筒部のそれぞれが前記筒状ベース部の前記貫通孔の位置に合わせて配置された状態で、前記筒状ベース部の内周面または外周面に重ねて取り付けられていてもよい。
【0015】
上記構成のモータでは、ノズル形成部材の板状部を筒状ベース部の内周面又は外周面に重ねて取り付けることによって複数のノズル部を一度に形成することができるようになっている。
【0016】
このように、上記構成のモータは、板状部に対して複数のノズル部が一体に立設されているノズル形成部材を用いることによって、筒状ベース部に対して複数のノズル部を設けるための手間を抑えることができ、これにより、冷却性能を向上させることができるモータを容易に製造できるようになっている。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明のモータは、冷却性能が高いという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るモータの斜視図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係るモータの斜視図である。
【
図3】
図3は、同実施形態に係るモータを一方の回転支持部側から見た図である。
【
図4】
図4は、同実施形態に係るモータにおけるロータの分解斜視図である。
【
図8】
図8は、同実施形態に係るモータのノズル形成部材を表側から見た図である。
【
図10】
図10は同実施形態に係るモータのノズル部の形成方法の説明図であり、(a)はノズル形成部材を筒状カバー部に配置している状態の説明図、(b)はノズル形成部材を筒状カバー部に固定した後の状態の説明図。
【
図12】
図12において、(a)、(b)はフィンとノズル部の配置位置の説明図である。
【
図13】
図13は、同実施形態に係るモータにおける冷媒供給口から冷媒排出口までの冷媒の流れの説明図である。
【
図14】
図14は、同実施形態に係るモータでの冷媒の流れの説明図であり、筒状ベース部内からノズル部を通じて筒状ベース部とコア部の間の空間に向かう冷媒の流れの説明図である。
【
図15】
図15において、(a)はフィンとノズル部の配置の一例の説明図であり、(b)はフィンとノズル部の配置の別の一例の説明図であり、(c)はフィンとノズル部の配置のさらに別の一例の説明図である。
【
図16】
図16において、(a)は本発明の他の実施形態に係るモータのノズル部の形成方法の説明図であり、(b)は本発明の別の実施形態に係るモータのノズル部の形成方法の説明図である。
【
図17】
図17は、
図16(a)に図示しているノズル形成部材を用いたノズル部の形成方法の説明図であり、(a)はノズル形成部材を筒状カバー部に配置している状態の説明図、(b)はノズル形成部材を筒状カバー部に固定した後の状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態にかかるモータについて、添付図面を参照しつつ説明する。
【0020】
本実施形態に係るモータ1は、
図1乃至
図3に示すように、ハウジング2と、
図5に示すように、ハウジング2内に固定されている円筒状のステータ3と、ステータ3に対向するロータ4と、ロータ4を冷却するための冷媒を供給する冷媒供給手段5と、を備えている。
【0021】
なお、採番していないが、ステータ3にはコイルが設けられている。
【0022】
ロータ4は、ステータ3の内周面に対向配置されており、積層鋼板で形成された磁性体であり且つ永久磁石が組み込まれているロータコア部40と、ハウジング2内でステータ3に対してロータ4を回転可能に支持するコア部支持部材41と、ロータ内部を冷却する冷却部42と、を有する。
【0023】
本実施形態に係るモータ1は、コイルが設けられたステータ3の内側でロータ4が回転するように構成された、いわゆる、ラジアルギャップモータである。なお、ステータ3に対してロータ4を回転させる構成には、公知の構成を採用することができる。
【0024】
ここで、コア部支持部材41は、ロータ4の回転力を外部に伝達するための回転軸が取り付けられるように構成されている。本実施形態のコア部支持部材41は、
図4に示すように、円筒状であり且つ冷却部42を収容する円筒状のスリーブ410と、スリーブ410の端部に取り付けられている端壁部411と、を有する。
【0025】
冷却部42は、円筒状であり、モータ1に組み込まれる前の状態においては、軸線方向における両端が開口しており、放熱用のフィン420が形成されているフィン形成部421と、軸線方向における両端が開口しており、ノズル部422bが形成され、フィン形成部421内に配置されるノズル形成部422と、ノズル形成部422内に配置される供給空間形成部425で構成されている。
【0026】
図4に示すように、フィン形成部421は、フィン形成部421の外周面とスリーブ410の内周面とは篏合して、スリーブ410に対して相対回転不能となるように固定されている。
【0027】
フィン形成部421の内周面には、径方向内方に向けて突設するように、前記フィン420が複数形成されている。各フィン420は、前記フィン形成部421の内周面からノズル形成部421の外周面に向かって突出するように形成されている。なお、本実施形態のフィン420の形状は、ピン状であるが、熱交換に適した形状であれば、例えば、板状や片状等であってもよい。
【0028】
ノズル形成部422は、スリーブ420内においてコア部40の内側に配置される円筒状の筒状ベース部422aと、筒状ベース部422aの外周面から径方向外方(筒状ベース部422aの径方向外方)に向けて突設されたノズル部422bと、を有する。
【0029】
筒状ベース部422aは、金属製である。そして、筒状ベース部422aの外径は、フィン形成部421の内径よりも小さくなっている。さらに、筒状ベース部422aは、外周面全周がフィン形成部421の内周面に対して間隔をあけて対向するように配置される。また、筒状ベース部422aには、
図7に示すように、径方向において貫通する複数の貫通孔422aaが形成されている。
【0030】
ノズル部422bは、筒状(円筒状)である。また、ノズル部422bは、筒状ベース部422aの外周面よりも筒状ベース部422aの径方向外方に向かって突出し、且つ内部の孔(ノズル孔と称する)422baが筒状ベース部422aの貫通孔422aaに連通した状態(すなわち、筒状ベース部422aの内側の空間と外側の空間とを連通させている状態)となるように構成されている。
【0031】
なお、便宜上、フィン420と、ノズル部422bとは、
図5乃至
図6には図示しておらず、また、後述する筒状ベース部422aの貫通孔422aaは、
図4乃至
図6には図示していない。
【0032】
供給空間形成部425は、金属製である。そして、供給空間形成部425の外径は、ノズル形成部422の筒状ベース部422aの内径よりも小さくなっている。さらに、供給空間形成部425は、外周面全周が筒状ベース部422aの内周面に対して間隔をあけて対向するように配置される。
【0033】
ここで、本実施形態のノズル形成部422は、
図8、
図9に示すように、複数の連通孔423aa(
図9参照)が形成されている板状部423aと、筒状であり且つ内部が連通孔423aaと連通するようにして板状部423aに対して一体に立設された複数の筒部423bと、を有するノズル形成部材423を用いて形成されている。
【0034】
また、
図10(b)に示すように、ノズル形成部材423の筒部423bがノズル形成部422におけるノズル部422bに相当する。
【0035】
ノズル形成部材423は、例えば、合成ゴム等の柔軟性を有する素材で構成されており、射出整形等により形成することができる。ノズル形成部材423は、合成ゴム以外の素材で構成されていてもよいが、軽量の素材が用いられることが好ましい。
【0036】
ノズル形成部材423を用いたノズル形成部422のノズル部422bの形成方法では、ノズル形成部材423を筒状ベース部422aへの固定位置に配置する配置工程と(
図10(a)参照)、配置工程の後に、ノズル形成部材423を筒状ベース部422aに固定する固定工程と(
図10(b))、が行われる。
【0037】
配置工程では、
図11に示すように、ノズル形成部材423の筒部423bを筒状ベース部422aの貫通孔422aaに挿入して、筒部423bの内部の空間(ノズル孔422ba)を介してノズル形成部材423の径方向内側と筒状ベース部422aの径方向外側が連通するように、ノズル形成部材423を筒状ベース部422aに配置する。なお、本実施形態の配置工程では、筒状ベース部422aの内周面よりも内側にノズル形成部材423を配置されている。
【0038】
固定工程では、筒状ベース部422aの内周面に板状部423aの外面を密接させた状態で、筒状ベース部422aの内周面に板状部423aの外面を固定する。この工程において、板状部423aの両端部(筒状ベース部422aの周方向に対応する方向の両端部)を突き合わせた状態で接合すれば、筒状ベース部422aの内部の空間(板状部423aの内側の空間)に供給された冷媒が板状部423aの両端部の間から漏れてしまうことを防止できるようにもなる。
【0039】
図7に示すように、ノズル部422bの先端とフィン形成部421の内周面との間隔Cが短い程、冷却性能は向上するが、流路抵抗が大きくなる。ノズル部422bの内径dを基準とした場合、ノズル部422bの先端とフィン形成部421の内周面との間隔Cは、ノズル部422bの内径dよりも大きくなっていることが好ましい。
【0040】
また、ノズル部422bの長さLを短くすると、ノズル部422bの重量を小さくできる一方で、フィン形成部421の内周面に衝突した冷媒を排出するための流路断面積(筒状ベース部422aの外周面からノズル部422bの先端までの領域)が小さくなるため、流路抵抗が大きくなる。そのため、ノズル部422bの長さLを基準とすると、ノズル部422の先端とフィン形成部421の内周面との間隔Cは、ノズル部422bの長さLよりも小さくなっていることが好ましい。
【0041】
なお、ノズル部422bを並べる間隔であるピッチ(隣り合うノズル部422bの中心軸線同士の距離)pは、小さくなるほど冷却性能が向上するが、冷媒を排出するために用いられる空間が多数のノズル部422bによって占有されてしまうため、冷媒の排出し易さは下がり、且つ流路抵抗は大きくなる。
【0042】
また、フィン420は、
図12(a)、
図12(b)に示すように、ノズル部422bに対して同心とならない位置(ノズル部422bの軸線方向において、ノズル部422bの前方からずれた位置)に配置されることが好ましい。このようにすれば、ノズル部422bから噴射されてフィン形成部421の内周面に衝突する衝突噴流が流れる領域(いわゆる、よどみ領域)Aの外側にフィン形成部421を配置することができるため、衝突噴流の流れがフィン420に乱されず、衝突噴流により効率よく冷却を行うことができる。
【0043】
また、衝突噴流が流れる領域Aの外側の領域は、フィン形成部421を冷媒で冷却しにくい領域となるが、この領域にはフィン420が配置されているため、フィン420と冷媒との間でも熱交換が行われるため、冷却の効率がさらに高まるようになっている。
【0044】
各端壁部411は、
図6に示すように、筒状ベース部422aの端部とフィン形成部421の端部と供給空間形成部425の端部が固定される端壁本体部411aと、端壁本体部411aに設けられ、且つ回転軸を挿通可能な軸孔が形成された軸固定部411bと、を有する。
【0045】
上述のように、端壁本体部411aには、ノズル形成部422の端部とフィン形成部421の端部と供給空間形成部425の端部が固定されているため、ロータ4(スリーブ410)の内部の空間は、ノズル形成部422によって、供給空間形成部425とノズル形成部422の間の空間(
図5において符号S1を付している空間)と、ノズル形成部422とフィン形成部421の間の空間(
図5において符号S2を付している空間)とに区分けされている。
【0046】
また、端壁本体部411aには、
図5に示すように、空間S1内に冷媒を供給するための冷媒供給口411aaと、空間S2内から冷媒を排出するための冷媒排出口411abと、が形成されている。
【0047】
そして、冷媒供給手段5によって冷媒供給口411aaから空間S1に供給された冷媒は、ノズル部422bを通って空間S2に移った後に冷媒排出口411abから排出されるようになっている。
【0048】
軸固定部411bの軸孔の内径は、供給空間形成部425の内径よりも小さくなっている。すなわち、軸孔に通す回転軸としてのシャフトの外径も、供給空間形成部425の内径よりも小さくなっている。
【0049】
ここで、本実施形態のハウジング2は、ステータ3を収容するケース部20と、ケース部20に対して軸固定部411bを回転可能に支持する一対の回転支持部21と、を有する。
【0050】
回転支持部21は、ケース部20の両端に配置され、且つ中心部(径方向での中心部)で軸固定部411bを回転可能に支持する軸受けを有するように構成されているため。そのため、モータ1では、ステータ3とハウジング2に対してロータ4を構成するロータコア部40とコア部支持部材41と冷却部42とが供回りするようになっている。
【0051】
冷媒供給手段5は、例えばファンや、ブロア、ポンプ等をコア部支持部材41の冷媒供給口411aaに取付して、冷媒を連続的に送ることができるように構成されていればよい。また、冷媒は、気体の他、液体であってもよい。
【0052】
本実施形態に係るモータ1の構成は、以上の通りである。続いて、本実施形態のモータにおける冷媒の流れを説明する。
【0053】
図13に示すように、冷媒供給手段5によって、ノズル形成部422内の空間S1に供給された冷媒は、ノズル部422bを通じてノズル形成部422内からノズル形成部422とフィン形成部421の間の空間S2に向かって流れる。
【0054】
ノズル部422bに入った冷媒は、
図14に示すように、フィン形成部421の内周面に対して垂直方向に向かって流れる。この時、冷媒は噴流状態であり、フィン420及びフィン形成部421の内周面に衝突するように流れ、その後フィン形成部421の内周面側に沿って流れて、冷媒排出口411abを通じて空間S2の外部に排出される。
【0055】
なお、冷媒供給手段5が冷媒供給口411aaに冷媒を送り続けている間は、フィン420及びフィン形成部421の内周面には常に新鮮な冷媒(フィン420やフィン形成部421の内周面と熱交換する前の冷媒)が供給されるため、空間S2内では、フィン形成部421側に新鮮な冷媒が流れ続け、ノズル形成部422b側にはフィン420やロータコア部40の内周面と熱交換した冷媒が流れるようになっている。
【0056】
以上のように、本実施形態に係るモータ1によれば、ノズル形成部422bの外周面に突設したノズル部422からフィン形成部421の内周面に向けて冷媒が送られるように構成されており、ノズル部422bからフィン形成部421の内周面に向かって流れた冷媒は、フィン形成部421と熱交換した後にノズル部422bの基端側に流れる。
【0057】
そのため、空間S2では、フィン形成部421側で熱交換する前の新鮮な冷媒で満たされ易くなるとともに、熱交換した後の冷媒がフィン形成部421側に集まり易くなる。これにより、冷却部42の冷却性能が向上する。なお、本実施形態のモータ1は、ノズル部422bによって冷媒の噴流が生じるようになっているため、フィン420の基端部から先端部に亘る広い範囲にわたって冷媒を当てることが可能になり冷却性能がさらに向上する。
【0058】
また、本実施形態のモータ1では、フィン形成部421の内周面に放熱用のフィン420を複数突設することにより、フィン形成部421に生じた熱がフィン420に伝達しやすくなっている。そのため、フィン形成部421の熱をフィン420に逃がすことができるとともに、フィン形成部421の内周面とフィン420の両方を使ってフィン形成部421に生じた熱と冷媒を熱交換できるため、ロータコア部40の冷却性能がさらに向上する。
【0059】
さらに、本実施形態では、ファン等で構成される冷媒供給手段5によって、冷媒供給口411aaに対して連続的に冷媒を供給し続けることができるため、フィン形成部421の内周面に対して安定して冷媒を送り続けることができる。このため、本実施形態のモータは、フィン形成部421の冷却性能を安定させることもできる。
【0060】
なお、本実施形態のモータ1では、ノズル形成部材423の板状部423aを筒状ベース部422aの内周面又は外周面に重ねて取り付けることによって複数のノズル部422bを一度に形成することができるようになっている。
【0061】
このように、本実施形態のモータ1は、板状部423aに対して複数のノズル部422bが一体に立設されているノズル形成部材423を用いることによって、複数のノズル部422bを一つ一つ筒状ベース部422aに取り付ける場合と比べて、複数のノズル部422bを設けるための手間を抑えることができ、これにより、冷却性能を向上させることができるモータ1を容易に製造することもできるようになっている。
【0062】
なお、本発明に係るモータは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0063】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、フィン420の先端は、ノズル部422bの先端よりも径方向外方に位置している。
【0064】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、ロータ1を径方向から見た場合に、フィン420とノズル部422bとは、互いにずれた位置に配置されていればよく、例えば、
図15(a)に示すように、冷却部42の軸線方向と周方向とで交互に整列されていてもよいし、
図15(b)に示すように、間欠的に配置されていてもよい。また、
図15(c)に示すように、一行、若しくは一列に亘ってフィン420を並べて配置することも可能である。
【0065】
上記実施形態において、ノズル形成部材423の連通孔423aaは、筒部423b側が狭くなるようにテーパー状となるように形成されていたが、この構成に限定されない。例えば、連通孔423aaは、全長に亘って内径が一定となっていてもよい。
【0066】
上記実施形態において、ノズル形成部材423の板状部423aは、筒状ベース部422aの内周面に重ねられていたが、この構成に限定されない。例えば、ノズル形成部材423の板状部423aは、
図16(a)に示すように、筒状ベース部422aの外周面に重ねられていてもよいし、さらには、
図16(b)に示すように、筒状ベース部422aに対して筒部423b(ノズル部422bを構成する部材)のみが直接設けられていてもよい。
【0067】
図16(a)に示すノズル形成部材423を用いる場合は、配置工程において、板状部423aの連通孔423aaと、筒部423bの内部の空間と、筒状ベース部422aの貫通孔422aaとが互いに連通するようにしてノズル形成部材422を筒状ベース部422aに配置し(
図17(a)、
図18参照)、固定工程で筒状ベース部422aの外周面に板状部423aの内面を密接させた状態で、筒状ベース部422aの外周面に板状部423aの内面を固定すればよい(
図17(b)参照)。この場合においても、複数のノズル部422bを一度に形成することができる。
【0068】
なお、
図16(b)に示すように、筒状ベース部422aに対してノズル部422bを構成する部材のみが直接設ける場合、ノズル部422bは、筒状ベース部422aの外周面にノズル部422bが固定されていてもよいし、筒状ベース部422aの貫通孔422aaに挿し込まれた状態で筒状ベース部422aに対して固定されていてもよい。
【0069】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、ノズル形成部材423には、金属がインサート成型されていてもよい。このようにすれば、ノズル形成部材423の強度を高めることができる。
【0070】
上記実施形態において、ノズル形成部材423は、平板状(シート状)となっていたが、この構成に限定されない。例えば、ノズル形成部材423は予め筒状に形成されていてもよい。
【0071】
上記実施形態のモータ1では、冷媒供給手段5によって冷媒供給口411aaから筒状ベース部422aよりも内側の空間に冷媒を供給していたが、この構成に限定されない。例えば、筒状ベース部422aの内部の空間に外気を取り込めるようにしたうえで、遠心力により筒状ベース部422a内の空気がノズル部422bを通じてロータコア部40に向けて噴射されるようにしてもよい。また、冷媒供給手段5は、コア部支持部材41に取付されてなくてもよい。例えば、コア部支持部材41の冷媒供給口411aaとモータ1の外部に設置されるファン等を配管ダクトでつないで、冷媒を送る構成にしてもよい。
【0072】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、モータ1は、所謂、ダイレクトドライブモータであり、例えば、航空機のプロペラを駆動させるためのモータとして用いられる。また、航空機のプロペラを駆動させるためのモータに用いる場合は、回転数が低く且つ軽量であることが求められるため、コア部支持部材41が中空の構造となる。
【0073】
上記実施形態のモータ1では、冷媒排出口411abは、コア部支持部材41及び回転支持部21の両方に形成されていたが、この構成に限定されない。例えば、片方にのみ形成して、冷媒を空間S2の外部に排出されるようにしてもよい。
【0074】
上記実施形態のモータ1では、空間S1は、供給空間形成部425とノズル形成部422の間に形成されていたが、この構成に限定されない。例えば、軸孔にシャフトが挿通した状態において、シャフトの外周面とノズル形成部422の内周面の間の空間を空間S1として使用してもよい。この場合、モータ1の内部空間をデッドスペースとならないように有効活用することが可能である。
【0075】
上記実施形態のモータ1では、供給空間形成部425は金属製であったが、これに限定されず、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)等のような軽量で強度が高い材料を使用してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…モータ、2…ハウジング、3…ステータ、4…ロータ、5…冷媒供給手段、20…ケース部、21…回転支持部、40…コア部、41…フィン、42…コア部支持部材、420…スリーブ、421…筒状ベース部、421a…貫通孔、422…ノズル部、423…端壁部、423a…端壁本体部、423aa…冷媒供給口、423ab…冷媒排出口、423b…軸固定部、424…ノズル形成部材、424a…板状部、424aa…連通孔、424b…筒部、425…供給空間形成部、C…ノズル部の先端とコア部の内周面との間隔、d…ノズル部の内径、L…ノズル部の長さ、p…ノズル部の形成ピッチ