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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/38 20060101AFI20240614BHJP
   B65D 25/24 20060101ALI20240614BHJP
   B65D 25/36 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
B65D81/38 L
B65D25/24
B65D25/36
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020211701
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098266
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】591007295
【氏名又は名称】株式会社アプリス
(73)【特許権者】
【識別番号】000129493
【氏名又は名称】株式会社クラウン・パッケージ
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】田邉 敦士
(72)【発明者】
【氏名】三堂地 広晶
(72)【発明者】
【氏名】甘利 明敏
(72)【発明者】
【氏名】井上 昌大
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-145046(JP,A)
【文献】特開2013-233949(JP,A)
【文献】特開2010-120659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/38
B65D 25/24
B65D 25/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆錐台状の胴部を有するプラスチック製の容器本体と、
両端開口の逆錐台筒状であり、前記容器本体の胴部に外嵌される紙製のスリーブと、
を備え、
前記容器本体は、前記胴部の下方に周方向に沿って延在し、前記胴部から外方に膨出した下部突起部を有し、
前記スリーブは、
前記胴部に外嵌された際に前記下部突起部の直上の高さに位置し、当該下部突起部に対して上から引っ掛かる下端縁部と、
前記下端縁部の一部範囲から延出し、前記容器本体の最下端よりも下方に延ばされた複数の足部と、
を有し、
前記複数の足部は、前記スリーブが平坦に折り畳まれていた際の各折り筋の位置に延在していること、
を特徴とする容器。
【請求項2】
前記折り筋は、前記スリーブの対角の位置に2本形成され、
前記足部は、2本の前記折り筋の位置と、2本の前記折り筋と等距離にある2点の位置の計4本延在していること、
を特徴とする請求項1記載の容器。
【請求項3】
前記折り筋にはミシン目又は輪の内側から切り込まれたハーフカットが形成されていること、
を特徴とする請求項1又は2記載の容器。
【請求項4】
前記下部突起部は、前記胴部の周方向に沿って間欠的に並ぶこと、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の容器。
【請求項5】
前記胴部の周方向に沿って無端状に延在し、前記胴部から外方に膨出した環状突起部を有し、
前記下部突起部は、前記環状突起部から更に外方へ膨出していること、
を特徴とする請求項4記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製の容器本体と紙製のスリーブを備える容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットコーヒー等の熱い液体が容器に注がれて提供されることがある。即席麺やスープ等の即席食品を収容した容器に熱湯を注ぐことで食べられるようにすることがある。電子レンジによって容器と共に内容物を加熱する場合もある。容器内の飲食物が熱せられている場合、飲食物の熱が容器を介して飲食者の手に伝達するため、容器の把持は容易でない。
【0003】
そこで、容器本体に紙製のスリーブが装着されることがある。紙製のスリーブは高い断熱効果を有する。この断熱効果が高いスリーブを介して容器本体を把持することで、熱は直に手に伝わらない。スリーブの断熱効果を高めるためには、容器本体とスリーブとの間に空気層を作出することが重要である。そこで、スリーブは、段ボール、エンボス紙、その他の形状によって容器本体との間に空気層を作出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-168345号公報
【文献】特許第5320347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、化学的に安定な物質であるために自然分解し難いプラスチックの使用が環境問題となっており、容器本体に使用されるプラスチックの減量が要望される。そこで、紙製のスリーブを容器本体に外嵌して容器本体の強度を補えるようにすることで、容器本体を薄肉化させ、プラスチック量を減量することが考えられる。この場合、容器本体に収容される飲食物は、熱せられたものに限らない。
【0006】
しかしながら、紙製はプラスチック製と比べると高価であり、容器全体のコストが高くなる。そのため、紙製のスリーブを容器本体に外嵌した容器の普及を阻害している。換言すれば、容器を大量生産することで低コスト化を実現できれば、紙製のスリーブを容器本体に外嵌した容器が普及し易くなり、プラスチック問題に対応することもできる。
【0007】
大量生産を達成する一つの方法論として作業の単純化が挙げられる。例えば、環状に開いたスリーブを作業台に載置し、上から容器本体を降ろして嵌め入れる方法が考えられる。この方法は、容器本体を降ろすだけで、スリーブは不動であり、単純な作業である。また、スリーブと容器本体の向きを合わす必要がある場合、スリーブは少なくとも不動であるため、スリーブと容器本体の向きがズレる虞が低減し、スリーブと容器本体との向き調整が不要となるケースが多くなり、更に単純な作業となる。
【0008】
しかし、容器の一般的な外観は、容器本体の中腹域にスリーブが外嵌され、容器本体の上部と下部がスリーブから露出している。そうすると、容器本体が作業台に着地し、容器本体とスリーブの両下端部が揃うまでが、容器本体をスリーブに挿入することができる限界であり、スリーブを容器本体に密着する高さまで上げることができない。従って、この方法は単純であるが採用できない。
【0009】
容器を逆さまにして作業台に載置し、上から環状に開いたスリーブを降ろす方法が考えられる。この方法であれば、スリーブを容器本体に密着するまで嵌め込むことができる。しかし、容器に食品や飲料物を入れてフィルムで封止する工程までは容器が上向きである。スリーブを装着する段階で容器本体を逆さまにしなくてはならず、容器本体を反転させる余計な作業又は装置が必要となる。
【0010】
更に、容器本体の反転によって、容器本体とスリーブとの向きがズレてしまい、位置合わせを必要とするケースが多くなる。従って、この方法自体は単純であるが、この単純方法を作用するために他の方法を追加せねばならず、全体としては単純作業にはならなくなる。
【0011】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、作業台にスリーブに載置したまま、容器本体をスリーブに向けて降ろすだけで、容器本体とスリーブとの嵌合を完了させることができる容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明の実施形態に係る容器は、逆錐台状の胴部を有するプラスチック製の容器本体と、両端開口の逆錐台筒状であり、前記容器本体の胴部に外嵌される紙製のスリーブと、を備え、前記容器本体は、前記胴部の下方に周方向に沿って延在し、前記胴部から外方に膨出した下部突起部を有し、前記スリーブは、前記胴部に外嵌された際に前記下部突起部の直上の高さに位置し、当該下部突起部に対して上から引っ掛かる下端縁部と、前記下端縁部の一部範囲から延出し、前記容器本体の最下端よりも下方に延ばされた複数の足部と、を有し、前記複数の足部は、前記スリーブが平坦に折り畳まれていた際の各折り筋の位置に延在していること、を特徴とする。
【0013】
前記折り筋は、前記スリーブの対角の位置に2本形成され、前記足部は、2本の前記折り筋の位置と、2本の前記折り筋と等距離にある2点の位置の計4本延在しているようにしてもよい。
【0014】
前記折り筋にはミシン目又は輪の内側から切り込まれたハーフカットが形成されているようにしてもよい。
【0015】
前記下部突起部は、前記胴部の周方向に沿って間欠的に並ぶようにしてもよい。
【0016】
前記胴部の周方向に沿って無端状に延在し、前記胴部から外方に膨出した環状突起部を有し、前記下部突起部は、前記環状突起部から更に外方へ膨出しているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スリーブを作業台に載置して、上から容器本体を降ろして押し込むだけでよく、スリーブと容器本体の向き調整も不要なので、容器本体にスリーブを機械的に外嵌でき、安価に大量生産できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】容器の側面図である。
図2】容器本体の側面図である。
図3】容器本体の下方を底面に沿って切ったA-A断面図である。
図4】容器本体の上方を底面に沿って切ったB-B断面図である。
図5】スリーブの下方側から見た斜視図である。
図6】容器本体とスリーブの寸法を示すための断面図である。
図7】スリーブのブランクを示し、(a)は、スリーブの展開図であり、(b)はスリーブを折り畳んだ状態の図である。
図8】容器の製造の一工程を示す模式図である。
図9】折り畳まれていたスリーブの輪を拡げる作業状態を示す斜視図である。
図10】容器を底部側から見た平面図である。
図11】内容物が充填された容器の軸に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る容器について図面を参照しつつ詳細に説明する。各図面においては、理解容易のため、厚み、寸法、位置関係、比率又は形状等を強調して示している場合があり、本発明は、それら強調に限定されるものではない。以下、容器の底側を下方又は下側といい、開口側を上方又は上側という。
【0020】
(容器)
図1は、容器3の側面図である。図1に示すように、容器3は、容器本体1とスリーブ2とを有する。容器本体1は、材料にプラスチックを使用してシート成型により製造される。一方、スリーブ2は、材料に紙を使用して折り曲げ加工により製造される。このスリーブ2は、波形シートの両面にライナーシートを貼り合わせた両面段ボール、又は波形シートの片面にライナーシートを貼り合わせた片面段ボールである。
【0021】
容器本体1は、上端の開口17に向けて漸次拡径する逆錐台の有底筒形状を有する。このスリーブ2は、両端面が開口した逆錐台筒形状の輪を成している。容器本体1とスリーブ2の筒形状としては、真円、楕円、角丸長方形、卵形、その他のオーバル状を含む各種円形状、及び多角形状が含まれる。但し、容器本体1に外嵌できれば、スリーブ2の形状は容器本体1と同形に限らない。
【0022】
スリーブ2は、容器本体1に外嵌される。この容器本体1には、周方向に沿って無端状に延在する下部環状突起部141が形成されている。この下部環状突起部141からは、更に間欠的に下部大突起部142が膨出している。スリーブ2は、下端縁部232で下部大突起部142に引っ掛かり、容器本体1からの脱落が抑制されている。
【0023】
また、スリーブ2は、複数の足部24を備えている。足部24は例えば4本備えられている。足部24は、下端縁部232の一部範囲が下方へ向けて延長されることで作出されている。スリーブ2の足部24は、スリーブ2が容器本体1に装着されたとき、容器本体1の底部11の最下端111よりも下方まで延びている。従って、容器3が置かれた状態では、スリーブ2の足部24が載置面に着地し、容器3は足部24で支持されている。容器本体1の底部11は載置面に届かずに、載置面から浮き上がっている。
【0024】
容器3には開口17から飲食物等の内容物が充填され、フィルム(不図示)が口縁12に熱接着等で貼着され、容器本体1内部へのホコリや紙粉等の異物の混入、また飲食物の飛び出しが阻止されている。飲食時には、口縁12からフィルムが剥離され、飲食者によって開口17から飲食物が取り出される。
【0025】
(容器本体)
図2は、容器本体1の側面図である。図2に示すように、この容器本体1は、底を塞ぐ底部11、開口17を有する胴部13、及び開口17の周りに形成された口縁12を備える。底部11は、浅い皿形状を有する。胴部13は、底部11の皿縁に沿って無端状に延在し、底部11の皿縁から立ち上がる。胴部13は、全体的には開口17に向けて漸次拡径する。口縁12は、胴部13の上端周縁に沿って無端状に延在し、容器本体1の半径方向外方に放射状に拡がって環形状を成す。
【0026】
胴部13は、円形状又は多角形状等の逆錐台筒形状を有する。図3は、容器本体の下方を底面に沿って切ったA-A断面図である。図2及び図3に示すように、胴部13の下端131、換言すれば底部11との境界には、下部環状突起部141が形成されている。下部環状突起部141は、胴部13を1周に亘って無端状に延在する。下部環状突起部141は、同一高さを維持して延在している。そして、この下部環状突起部141は、胴部13の外表面から半径方向外方に1周に亘って同長膨出している。また、下部環状突起部141は、1周に亘って上下方向に同一の厚みを有している。
【0027】
この下部環状突起部141には下部大突起部142が形成されている。下部大突起部142は、下部環状突起部141から更に胴部13の半径方向外方へ膨出している。尚、下部大突起部142とは、下部環状突起部141を基準に更に膨出しているものであり、膨出の程度は特に限定されない。この下部大突起部142は、下部環状突起部141の半径方向外方端面141aから突出し、下部環状突起部141に沿って胴部13の周方向に延びている。下部大突起部142の上下方向の厚みは下部環状突起部141と同一である。この下部大突起部142は、下部環状突起部141上に複数形成されている。複数の下部大突起部142は、下部環状突起部141に沿って間欠的に一列に並んでいる。
【0028】
即ち、下部環状突起部141と下部大突起部142とを合わせた突起全体としては、胴部13の1周に亘って無端状に繋がった環形状が設けられ、その環形状は周方向に凹凸を交互に繰り返した外形を有する。
【0029】
図4は、容器本体の上方を底面に沿って切ったB-B断面図である。図2及び図4に示すように、胴部13の上端領域であるが上端132よりも下方には、上部環状突起部151が形成されている。上部環状突起部151は、胴部13を1周に亘って無端状に延在する。上部環状突起部151は、同一高さを維持して延在している。そして、この上部環状突起部151は、胴部13の外表面から半径方向外方に1周に亘って同長膨出している。また、上部環状突起部151は、1周に亘って上下方向に同一の厚みを有している。
【0030】
この上部環状突起部151には上部大突起部152が形成されている。上部大突起部152は、上部環状突起部151から更に胴部13の半径方向外方へ膨出している。尚、上部大突起部152とは、上部環状突起部151を基準に更に膨出しているものであり、膨出の程度は特に限定されない。この上部大突起部152は、上部環状突起部151の半径方向外方端面151aから突出し、上部環状突起部151に沿って胴部13の周方向に延びている。上部大突起部152の上下方向の厚みは上部環状突起部151と同一である。この上部大突起部152は、上部環状突起部151上に複数形成されている。複数の上部大突起部152は、上部環状突起部151に沿って間欠的に一列に並んでいる。
【0031】
即ち、上部環状突起部151と上部大突起部152とを合わせた突起全体としては、胴部13の一周に亘って無端状に繋がった環形状が設けられ、その環形状は周方向に凹凸を交互に繰り返した外形を有する。
【0032】
(スリーブ)
図5は、スリーブ2を下方側から見た斜視図である。スリーブ2は、両端面に上側開口211と下側開口212を有した逆角錐台筒形状の輪を成しており、下側開口212を囲む下端縁部232から上側開口211を囲む上端縁部231に向けて直線的に拡径する。
【0033】
下端縁部232は、下側開口212を全周に亘って包囲する縁であり、足部24が延出する基端となる。この下端縁部232は、足部24を除き、スリーブ2における窄んだ側の最端に位置する。上端縁部231は、スリーブ2における拡がった側の最端の位置であり、スリーブ2を逆さまに置いたときに載置面に接する箇所である。上端縁部231を形成する縁、及び下端縁部232を形成する縁は、足部24を除き、1周に亘ってスリーブ2の軸と直交する同一平面上に延在する。
【0034】
このスリーブ2は、複数本の縦稜線221と複数面の台形側面222により形作られている。縦稜線221はスリーブ2の斜辺である。台形側面222は、スリーブ2の錐体面である。縦稜線221は、スリーブ2を一直線に縦断する。この縦稜線221は、スリーブ2の周に沿って等間隔に配設されている。縦稜線221の仮想延長線は、スリーブ2の真下中心で交差する。各台形側面222は、周方向に沿った幅が下端縁部232から上端縁部231に向けた方向に拡大している。各台形側面222は、縦稜線221を共通辺として連接し、スリーブ2の周に沿って1周に亘って連続する。
【0035】
足部24は、下端縁部232の一部範囲が下方へ延長されて成る。この足部24は、下端縁部232の円周等配位置に複数延出している。下端縁部232から下方へ向けて窄む逆台形状を成し、短辺部24aで載置面に着地する。足部24は、複数の縦稜線221のうちの一部と中心合わせがされて延出している。即ち、足部24の中心に一本の縦稜線221が通る。下端縁部232の両側は、当該下端縁部232を通る縦稜線221と隣の縦稜線221までには至らずに拡がる。即ち、足部24の下端縁部232の高さでの幅は、2面の台形側面222の長さには至らない。例えば、スリーブ2には、4本の足部24が90度間隔で延設されている。
【0036】
このスリーブ2と容器本体1との寸法関係を、スリーブ2を容器本体1に外嵌させた状態に基づいて示す。図6の(a)は、下端縁部232が最下端の位置を通るように、容器3を筒軸に沿って切断した断面図である。図6の(b)は、足部24を通るように、容器3を筒軸に沿って切断した断面図である。図6の(a)及び(b)に示すように、容器本体1の胴部13の傾斜角度とスリーブ2の傾斜角度は同一である。
【0037】
スリーブ2の中心軸から下端縁部232までの辺心距離R232は、容器本体1の中心軸から下部大突起部142の突出根元、換言すれば下部環状突起部141の先端までの半径距離R142S以上であり、容器本体1の中心軸から下部大突起部142の突出外端までの半径距離R142E以下である。
【0038】
従って、スリーブ2の下端縁部232内周面と容器本体1の下部大突起部142の突出根元とは、概略同一周長である。スリーブ2を容器本体1に嵌め込んでいき、スリーブ2の下端縁部232が容器本体1の下部大突起部142の直上に位置したとき、スリーブ2の全内表面と容器本体1の全外表面とが一致し、スリーブ2が容器本体1に外嵌する。このとき、スリーブ2の下端縁部232が下部大突起部142に引っ掛かり、スリーブ2が容器本体1から抜け落ちるのが抑制される。
【0039】
下部環状突起部141を基準に、容器本体1の上端132までは高さH132である。また、下部環状突起部141を基準に、容器本体1の上部大突起部152までは高さH151である。このとき、スリーブ2の下端縁部232から上端縁部231までの高さH231は、高さH151超であり、高さH132未満である。従って、スリーブ2が容器本体1に外嵌したとき、スリーブ2は上部環状突起部151及び上部大突起部152に覆い被さる。
【0040】
容器本体1の上端132から底部11の最下端111までは高さH1である。一方、スリーブ2の上端縁部231から足部24の短辺部24aまでは、高さH1よりも長い高さH2である。そして、容器本体1の下部環状突起部141から底部11の最下端111までは高さH141である。一方、スリーブ2の下端縁部232から足部24の短辺部24aまでは、高さH141よりも長い高さH24である。従って、スリーブ2が容器本体1に外嵌したとき、スリーブ2の足部24は、容器本体1の底部11の最下端111よりも下方まで延び拡がる。
【0041】
図7は、スリーブ2のブランク28を示し、(a)は、スリーブ2の展開図であり、(b)はスリーブ2を折り畳んだ状態の図である。スリーブ2のブランク28は環状扇形(annular sector)シートである。ブランク28は、スリーブ2の台形側面222を並べて成る。ブランク28の一方の端縁には、貼合片284が連接して備えられている。スリーブ2は、ブランク28を折り曲げ、貼合片284を他方の端縁領域に重ね合わせて接着することで、折り畳まれた平坦シートとして作製され、輸送及び保管される。
【0042】
ブランク28は、例えば観音開き折り加工されて平坦シートになっている。即ち、ブランク28内の左外側領域282と右外側領域283が内側領域281に重ねられている。左外側領域282と右外側領域283のうち、貼合片284が連接している方が下層に配置され、貼合片284が連接していない方が上層に配置され、貼合片284を含めて重複した領域が接着されている。
【0043】
スリーブ2の対角に位置する2本の縦稜線221を左外側領域282と内側領域281との境界、及び右外側領域283と内側領域281との境界に選択する。内側領域281と左外側領域282の境界、及び内側領域281と右外側領域283の境界には、ブランク28が平坦シートに折り畳まれたことによる折り筋27が付く。また、内側領域281と左外側領域282の境界、及び内側領域281と右外側領域283の境界には、ブランク28を平坦シートに折り畳み易いように、ミシン目26が入れられている。即ち、スリーブ2の対角に位置する2本の縦稜線221には、折り筋27が付いており、更にミシン目26が入っている。
【0044】
尚、ブランク28が折り畳まれたときに折られなかった縦稜線221にも、多角環形状に整形し易いように、ハーフカットが形成されていてもよい。ハーフカットは、胴部13との対面から切り込まれ、対向面には届かない溝部である。
【0045】
足部24は、この折り筋27が入った縦稜線221と中心合わせがされて延出している。他の足部24は、スリーブ2の対角に位置する2本の折り筋27と等間隔の位置に形成される。例えば、スリーブ2が2本の折り筋27が付く観音開き折り加工されて平坦シートに折り畳まれ、またスリーブ2に4本の足部24が形成されている場合、2本の折り筋27と等間隔の位置のうちの一つは、左外側領域282と右外側領域283と繋がる境界である。左外側領域282と右外側領域283に足部24の半分ずつが形成されており、左外側領域282と右外側領域283が繋がると、1本の足部24が作出される。
【0046】
2本の折り筋27と等間隔の位置のうちの他の一つは、内側領域281の中心であり、内側領域281の中心に位置する縦稜線221と中心合わせをされて、もう一本の足部24が延設されている。例えば内側領域281の中心に折り筋27が更に付く内巻き四つ折り加工が、スリーブ2にされている場合、内側領域281の中心に位置する縦稜線221にも折り筋27が付き、この折り筋27に足部24が形成されることになる。
【0047】
(組み付け)
図8は、容器3を製造する一工程を示す模式図である。図8に示すように、スリーブ2は、足部24を下にして作業台4に載置される。スリーブ2は、折り畳まれたブランク28を環状に拡げて多角形状に整形してから作業台4に載置される。作業台4は、工場内での平坦なステージ又はコンベアの上面である。容器本体1をスリーブ2の上方に配置し、容器本体1の底部11側をスリーブ2に向けて、容器本体1をスリーブ2の環内に降ろす。そして、容器本体1を底部1111側からスリーブ2の上側開口211を通してスリーブ2内に挿し込む。
【0048】
このとき、容器本体1の下部大突起部142から底部11の最下端111までの高さH141よりも、スリーブ2の下端縁部232から足部24の短辺部24aまでの高さH24のほうが長い(図6参照)。従って、図8に示すように、スリーブ2内を胴部13が通っていくとき、スリーブ2の下端縁部232が下部環状突起部141を乗り越え、下部大突起部142に対して上方から引っ掛かるまで、容器本体1の底部11から足部24の短辺部24aまでに空間が残る。即ち、スリーブ2の下端縁部232が下部環状突起部141を乗り越え、下部大突起部142に対して上方から引っ掛かるまで、容器本体1の底部11が作業台4に着地してしまうことなく、スリーブ2内を容器本体1が進行できる。
【0049】
また、スリーブ2内を胴部13が通っていくとき、容器本体1の底部11が作業台4に着地することなく、スリーブ2の上端縁部231は上部環状突起部151を乗り越えて、容器本体1の上端132と一致又は上端132の近辺にまで達する。スリーブ2は、上部環状突起部151に覆い被さっており、上部環状突起部151上の上部大突起部152がスリーブ2の内周面に食い込む。
【0050】
容器本体1及びスリーブ2が上方に拡径した形状を有するために、スリーブ2が容器本体1の周りで回転すると、容器本体1からスリーブ2に対して下方への抗力成分が与えられ、スリーブ2が下方に降りてしまう。しかし、スリーブ2に上部大突起部152が食い込むことで、スリーブ2は容器本体1にロックされて回転し難くなり、スリーブ2が下方に降り難くなり、スリーブ2が容器本体1から外れ難くなる。
【0051】
このように、スリーブ2を載置し、上から容器本体1を押し入れても、足部24の存在により、容器本体1の底部11が作業台4に到達する前に、容器本体1とスリーブ2との嵌合が完了する。従って、作業者又は装置は、容器本体1のみを把持し、作業台4上のスリーブ2を不動のまま押し込めばよい。このように、この容器本体1とスリーブ2により成る容器は、容器本体1とスリーブ2の嵌合を単純作業にでき、容器の大量生産が可能となっている。
【0052】
ここで、足部24については、下部大突起部142よりも下方へ延びているから、容器本体1をスリーブ2に挿し入れる嵌合作業中、足部24は下部大突起部142に終始被さっている。仮に、足部24が下部大突起部142に密着していた場合、嵌合作業中、足部24は、下部大突起部142に対して挿し入れ方向とは逆の反発力を与えている。
【0053】
この反発力が生じていると、容器本体1へのスリーブ2の挿し入れミス、即ち、スリーブ2の下端縁部232が下部環状突起部141を乗り越えて、下部大突起部142に対して上方から引っ掛かる前に嵌合作業を終了してしまう虞が生じる。この挿し入れミスを低減するためには、スリーブ2に容器本体1を差し込むとき、足部24の内周面24bと下部大突起部142とが重ならないように、容器本体1とスリーブ2の周方向の向きを位置合わせしなければならない。そのため、容器3の大量生産性が低下し、大きなコスト削減につながらない。
【0054】
しかし、図9は、折り畳まれていたスリーブ2の輪を拡げる作業状態を示す斜視図であるが、作業台4に置いたスリーブ2に容器本体1を差し入れる嵌合作業に先立って、スリーブ2は折り畳まれていた状態から多角形の輪に整形される作業が介在している。この作業においては、折り畳まれたブランク28の両端の折り筋27同士を近づけるように力が加えられる。このとき、両折り筋27と等距離にある縦稜線221が率先して折れ曲がり易い。
【0055】
足部24は、この折り筋27が付いた箇所と、率先して折れ曲がり易い箇所に形成されている。図10は、容器3を底部11側から見た平面図である。図10に示すように、足部24が付いている箇所は、スリーブ2が折り畳まれていたこと、又は輪を拡げる作業において率先して折れ曲がり易い箇所であるために、足部24の内周面24bと胴部13との間に空間部29が発生する。つまり、足部24と下部大突起部142とが重なる位置にあっても、足部24の内周面24bと下部大突起部142とは、密着せずに離間している。
【0056】
そうすると、容器本体1とスリーブ2の周方向の向きを位置合わせし、足部24の内周面24bと下部大突起部142とが重ならないように処置しなくとも、足部24から下部大突起部142に上方へ向けた反発力は与えられない。従って、容器本体1とスリーブ2の周方向の向きを位置合わせ作業も排除でき、容器3の大量生産性が更に向上し、大きなコスト削減につながる。
【0057】
また、足部24が折り筋27の付いた箇所と、率先して折れ曲がり易い箇所に形成されていれば、足部24の内周面24b側には空間部29が発生するため、胴部13に1周に亘って無端状に延在する下部環状突起部141を形成しても、足部24の内周面24bと下部大突起部142とが離間し得る。
【0058】
大量生産のために容器本体1をシート成型するための金型を複数作成する場合を考える。このとき、胴部13の外表面から下部大突起部142を直接膨出させるための金型よりも、1周に亘って無端状に延在する下部環状突起部141を胴部13から膨出させ、その下部環状突起部141から下部大突起部142を膨出させるための金型のほうが、金型間の寸法誤差が小さい。即ち、精度誤差が小さい均一な金型を複数作成できる。従って、容器3の大量生産性が更に向上する。
【0059】
容器本体1をスリーブ2に挿し込む嵌合作業が終了した後は、容器本体1内に内容物が充填される。図11は内容物が充填された容器3の軸に沿った断面図である。図11に示すように、スープ5等の内容物が充填されると、容器本体1の胴部13は半径方向外方へ膨らむ。
【0060】
容器本体1の胴部が半径方向外方へ膨らむと、スリーブ2も張り拡げられる。足部24は、スリーブ2の下端縁部232に沿って間欠的に延出しているので、スリーブ2が張り拡がるのとは反対に、短辺部24aが容器本体1の底部11の中心側へ寄るように内側に倒れ込もうとする。
【0061】
少なくとも一部の足部24の中心に通る縦稜線221には、ミシン目26が設けられている。ミシン目26が設けられている領域は剛性が低くなっている。そのため、ミシン目26が通る足部24は、短辺部24aが容器本体1の底部11の中心側へ寄るように内側に倒れ込み易くなっている。
【0062】
足部24が内側に倒れ込むと、空間部29が解消されて、足部24の内周面24bと下部大突起部142とが近づき、足部24の内周面24bに下部大突起部142が食い込む。ミシン目26があると、下部大突起部142はミシン目26に食い込み易い。このように、足部24を間欠的に配し、足部24にミシン目26が通るようにすると、内容物を充填する時点で初めて足部24と下部大突起部142との嵌合が発生し、スリーブ2に容器本体1を挿し込み易く、スリーブ2を容器本体1から脱落し難くすることができる。
【0063】
(作用効果)
以上のように、この容器3の容器本体1は、下部大突起部142を備えるようにした。下部大突起部142は、胴部13の下方に周方向に沿って延在し、胴部13から外方に膨出する下部突起部である。また、容器3のスリーブ2は、下端縁部232と足部24を有するようにした。下端縁部232は、胴部13に外嵌された際に下部大突起部142の直上の高さに位置し、当該下部大突起部142に対して上から引っ掛かる。足部24は、下端縁部232の一部範囲から複数延出し、容器本体1の下端部よりも下方に延ばされる。
【0064】
この複数の足部24は、スリーブ2が平坦に折り畳まれていた際の各折り筋27の位置に延在しているようにした。これにより、スリーブ2を容器本体1に嵌め込んでいる嵌合工程中では、足部24の内周面24bと胴部13の外表面との間に空間部29が生じ、足部24と下部大突起部142とが離れている。従って、スリーブ2を作業台4に載置して、上から容器本体1を降ろして押し込むだけでよく、スリーブ2と容器本体1の向き調整も不要なので、容器本体1にスリーブ2を機械的に外嵌でき、安価に大量生産できる。
【0065】
折り筋27の位置とは、即ちスリーブ2が折れ曲がり易い箇所である。要するに、足部24が折れ曲がり易い箇所に設置されていれば、嵌合工程中に空間部29が生じる。折り筋27の位置以外にスリーブ2が折れ曲がり易い箇所としてはスリーブ2の対角の位置に形成された2本の折り筋27と等距離にある2点の位置が挙げられる。
【0066】
スリーブ2が観音開き加工で折り畳まれている場合、折り筋27の位置と、2本の折り筋27と等距離にある2点の位置の計4本の足部24を延在させるようにしてもよい。尚、観音開き加工に加えて、内側領域281の中心で折り曲げられ、左外側領域282と右外側領域283の面が重なり合っているように折り畳まれている場合には、観音開き加工において折り筋27と等距離にある2点の位置にも折り筋27が付き、4本の足部24は、全て折り筋27の位置に形成されることになる。
【0067】
ブランク28の折り畳まれ方に限定は無く、折り畳まれたときに折り筋27が付くところ、またはこれに加えて対角に位置する2本の折り筋27から等距離の位置に足部24を形成すればよい。例えば、ブランク28は二つ折りされていてもよく、貼合片284との境界位置と、この境界位置の対角に位置する縦稜線221に折り筋27が付く。この2本の折り筋27の位置に足部24を形成する。また、この2本の折り筋27と等距離にある2箇所に足部24を形成する。
【0068】
また、折り筋27にはミシン目26を形成するようにした。これにより、足部24は、ミシン目26により剛性が低くなっており、内容物が充填されることで内側に倒れ込み、下部大突起部142がミシン目26に食い込む。従って、スリーブ2に容器本体1を挿し込み易く、且つスリーブ2を容器本体1から脱落し難くすることができる。即ち、足部24の剛性を下げられればよく、ミシン目26以外にも、スリーブ2の輪の内側からハーフカット加工をしてもよい。
【0069】
下部大突起部142は、胴部13の周方向に沿って間欠的に並ぶようにしたが、離型が可能であれば、胴部13の1周に亘って無端状に繋がっていてもよい。但し、この容器3では、胴部13の周方向に沿って無端状に延在し、胴部13から外方に膨出した環状突起部である下部環状突起部141を有し、下部大突起部142は、下部環状突起部141から更に外方へ膨出し、胴部13の周方向に沿って間欠的に並んでいるようにした。
【0070】
これにより、離型性も良好になり、また下部環状突起部141の存在により均一な精度の金型を複数揃えることが容易になる。従って、容器3を安価に大量生産することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 容器本体
11 底部
111 最下端
12 口縁
13 胴部
131 下端
132 上端
141 下部環状突起部
142 下部大突起部
142a 半径方向外方端面
151 上部環状突起部
151a 半径方向外方端面
152 上部大突起部
17 開口
2 スリーブ
211 上側開口
212 下側開口
221 縦稜線
222 台形側面
231 上端縁部
232 下端縁部
24 足部
24a 短辺部
24b 内周面
26 ミシン目
27 折り筋
28 ブランク
281 内側領域
282 左外側領域
283 右外側領域
284 貼合片
29 空間部
3 容器
4 作業台
5 スープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11