(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】太陽電池の製造方法及び太陽電池
(51)【国際特許分類】
H01L 31/18 20060101AFI20240614BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20240614BHJP
H10K 30/50 20230101ALI20240614BHJP
H10K 30/85 20230101ALI20240614BHJP
H01L 31/0749 20120101ALI20240614BHJP
【FI】
H01L31/04 420
H10K30/40
H10K30/50
H10K30/85
H01L31/06 460
(21)【出願番号】P 2023146957
(22)【出願日】2023-09-11
【審査請求日】2023-09-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523111201
【氏名又は名称】株式会社PXP
(73)【特許権者】
【識別番号】322009206
【氏名又は名称】株式会社SOLABLE
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】杉本 広紀
(72)【発明者】
【氏名】深澤 一仁
(72)【発明者】
【氏名】河原 麻世
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/181842(WO,A1)
【文献】特開2017-119805(JP,A)
【文献】特開2015-018959(JP,A)
【文献】特開2017-126731(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109346540(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102270740(CN,A)
【文献】特開2010-183108(JP,A)
【文献】特開2012-064934(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106549107(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/20
H10K 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素源及び水素源を含むガスを供給しながらスパッタリング法によりn型酸化物半導体を成膜することで、光吸収層を含む基材上に電子輸送層を形成する工程を含み、
前記n型酸化物半導体は、キャリア濃度が1.0×10
20cm
-3以下の酸化物半導体であ
り、
前記工程において供給される前記ガス中の酸素源の濃度が、酸素分子換算で、0.12体積%以上2.0体積%以下であり、
前記工程において供給される前記ガス中に含まれる、酸素元素に対する水素元素のモル比が0.60倍以上4.0倍以下である、
太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記製造される太陽電池の標準試験条件下における開放電圧が、前記電子輸送層を形成する工程に代えて化学溶液堆積法を用いてn型酸化物半導体である電子輸送層を形成した太陽電池と比較して、70%以上である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記基材は、最表層に前記光吸収層、又は前記n型酸化物半導体とは異なる材料からなる第2の電子輸送層を有する、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記基材は、最表層に前記光吸収層を有し、
前記光吸収層が、カルコパイライト化合物、ケステライト化合物、又はペロブスカイト化合物を含む、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程において供給される前記ガス中の酸素源の濃度が、酸素分子換算で、
0.40体積%以上
1.8体積%以下である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程において供給される前記ガス中に含まれる、酸素元素に対する水素元素のモル比が
0.80倍以上
3.0倍以下である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記n型酸化物半導体は、バンドギャップが3.3eV以上である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記n型酸化物半導体が、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化硫化亜鉛、酸化マグネシウム亜鉛、酸化スズ亜鉛、又は酸化チタン亜鉛である、
請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記n型酸化物半導体が、酸化チタン亜鉛であり、
前記成膜は、4.0質量%以上20質量%以下の酸化チタンを含む、酸化亜鉛と酸化チタンとの混合物をスパッタリングターゲットに用いて実施される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記成膜は、前記基材を100℃以上200℃以下に加熱しながら実施される、
請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
第1電極層と、
光吸収層と、
水素元素が添加されたn型酸化物半導体である電子輸送層と、
第2電極層と、をこの順に、少なくとも備え、
前記n型酸化物半導体は、キャリア濃度が1.0×10
20cm
-3以下の酸化物半導体であ
り、
前記電子輸送層が、前記光吸収層上に設けられ、
前記電子輸送層において、全ての金属元素に対する水素元素のモル比が、0.001以上0.030以下である、
太陽電池。
【請求項12】
前記電子輸送層において、全ての金属元素に対する水素元素のモル比が、0.005以上0.020以下である、
請求項11に記載の太陽電池。
【請求項13】
前記光吸収層及び前記第2電極層の間に、水素元素が添加されたn型酸化物半導体である前記電子輸送層とは異なる材料からなる第2の電子輸送層をさらに備える、
請求項11に記載の太陽電池。
【請求項14】
前記光吸収層が、カルコパイライト化合物、ケステライト化合物、又はペロブスカイト化合物を含む、
請求項11~
13のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項15】
前記n型酸化物半導体は、バンドギャップが3.3eV以上である、
請求項11~
13のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項16】
前記n型酸化物半導体が、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化硫化亜鉛、酸化マグネシウム亜鉛、酸化スズ亜鉛、又は酸化チタン亜鉛である、
請求項
15に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の製造方法及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池の1種に、カルコパイライト化合物、ケステライト化合物、又はペロブスカイト化合物等を用いる化合物系太陽電池が存在する。化合物系太陽電池は、p型の光吸収層と電子輸送層としてのn型の異種材料とを積層する構造を有する。n型層としては一般的に硫化カドミウムが用いられている。
【0003】
非特許文献1及び2において、電子輸送層として、硫化カドミウムに代えて、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化硫化亜鉛、酸化マグネシウム亜鉛、酸化スズ亜鉛、及び酸化チタン亜鉛のようなn型酸化物半導体を用いることが検討されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】E.B. Yousfi et al., Cadmium-free buffer layers deposited by atomic later epitaxy for copper indium diselenide solar cells, Thin Solid Films, 361-362, 183-186 (2000)
【文献】Soumyadeep Sinha et al., A review on atomic layer deposited buffer layers for Cu(In,Ga)Se2 (CIGS) thin film solar cells: Past, present, and future, Solar Energy, 209, 515-537 (2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電子輸送層として硫化カドミウムに代えてn型酸化物半導体を用いると、硫化カドミウムを用いた太陽電池と比較して、抵抗が高くなる傾向にあり、性能が劣る傾向にある。また、電子輸送層としてn型酸化物半導体を成膜する際、量産性の優れるスパッタリング法を用いると性能の向上が難しく、高性能の太陽電池を製造できる原子層積層法を用いると生産性の向上が難しい。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高性能と高生産性とを両立した太陽電池の製造方法及び太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態にかかる太陽電池の製造方法は、酸素源及び水素源を含むガスを供給しながらスパッタリング法によりn型酸化物半導体を成膜することで、光吸収層を含む基材上に電子輸送層を形成する工程を含む。
【0008】
本発明者らは、スパッタリング法を用いてn型酸化物半導体を成膜した際に太陽電池の性能が低下する要因の1つとして、n型酸化物半導体を成膜する対象基板の表面に成膜ダメージが生じることを見出した。本発明の一実施形態にかかる太陽電池の製造方法は、酸素源だけでなく、水素源を含むガスを供給しながらn型酸化物半導体を成膜することにより、スパッタリングにより基板に生じるダメージを軽減又は抑制できる。その結果、生産性高く、高性能の太陽電池を製造することができる。
【0009】
本発明の一実施形態にかかる太陽電池は、第1電極層と、光吸収層と、水素元素が添加されたn型酸化物半導体である電子輸送層と、第2電極層と、をこの順に、少なくとも備える。
【0010】
太陽電池において、電子輸送層を水素元素が添加されたn型酸化物半導体とすることにより、電子輸送層の下層に与える成膜ダメージを軽減又は抑制しながら、スパッタリングにより電子輸送層を形成することができる。その結果、かかる太陽電池は、高性能と高生産性とを両立することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高性能と高生産性とを両立した太陽電池の製造方法及び太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池の概略断面図である。
【
図2】本発明の別の一実施形態に係る太陽電池の概略断面図である。
【
図3】n型酸化物半導体の成膜工程における雰囲気条件と、スパッタリングによる成膜ダメージとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0014】
[太陽電池]
本実施形態に係る太陽電池は、第1電極層と、光吸収層と、水素元素が添加されたn型酸化物半導体である電子輸送層と、第2電極層と、をこの順に、少なくとも備える。太陽電池は、これらの層以外の層を備えていてもよいし、これらの層を複数備えていてもよい。
【0015】
図1に、一実施形態に係る太陽電池の概略断面図を示す。
図1に示す実施形態の太陽電池100は、基板107と、基板107上に設けられた第1電極層101と、第1電極層101上に設けられた正孔輸送層102と、正孔輸送層102上に設けられた光吸収層103と、光吸収層103上に設けられた電子輸送層104と、電子輸送層104上に設けられた第2電極層105と、第2電極層105上に設けられたグリッド電極106とを備える。太陽電池100は、典型的には、第2電極層105側からの光を受光して発電する。
【0016】
本実施形態の太陽電池100は、電子輸送層104が、水素元素が添加されたn型酸化物半導体である。したがって、[太陽電池の製造方法]において詳述するとおり、光吸収層103上に電子輸送層104を成膜する際の光吸収層103上に生じる成膜ダメージを軽減又は抑制しながら、スパッタリングにより電子輸送層104を形成することができると推察される。その結果、かかる太陽電池は、高性能と高生産性とを両立することができる。ただし、本発明は上記の推察により限定されない。
【0017】
基板107を除いた太陽電池100の厚さは、特に限定されないが、例えば、1.0μm以上10.0μm以下であり、1.1μm以上8.0μm以下であり、1.2μm以上6.0μm以下である。本実施形態の太陽電池100は、各層を十分に薄く形成することで、薄膜太陽電池を構成し得る。
【0018】
以下、太陽電池100に含まれ得る各構成について詳説する。
【0019】
なお、本明細書において、各層、又は各層に含まれる半導体を、ある化合物の名称で表現した場合、純粋な該化合物そのものだけでなく、その化合物の特性を失わない範囲で、微量の元素等がドープされた該化合物も包含するものとする。
【0020】
また、本実施形態において、太陽電池の各層における元素が、異なる酸化状態で存在し得るため、すべての酸化状態は、特に明確に記載されない限り、その元素の名称で呼ばれる。例えば、「水素元素」は、水素原子、水素イオン、水素化物イオン、化合物の状態の水素、及び単体の状態の水素を意味し得る。
【0021】
(基板)
基板107としては、特に限定されないが、例えば、青板硝子、低アルカリガラス等のガラス基板、ステンレス板、アルミ箔等の金属基板、ポリイミド樹脂基板、エポキシ樹脂基板等の樹脂基板を用いることができる。基板107の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上500μm以下であり、20μm以上250μm以下であり、30μm以上100μm以下である。基板107の厚さが上記範囲内であることにより、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。
【0022】
(第1電極層)
第1電極層101は、例えば、後述の光吸収層103で生じた正孔による電流を取り出すために設けられる。第1電極層101としては、導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、Mo、Cr、又はTi等の金属を材料とする金属導電層;金属以外の導電性無機化合物を材料とする導電性無機化合物導電層;導電性有機化合物を材料とする導電性有機化合物導電層を用いることができる。第1電極層101の厚さは、特に限定されないが、例えば、200nm以上800nm以下、又は300nm以上700nm以下である。第1電極層101の厚さが上記範囲内であることにより、電流をロスなく十分に取り出しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。
【0023】
(正孔輸送層)
本実施形態の太陽電池100は、正孔輸送層102を備えるが、省略してもよい。正孔輸送層102は、例えば、後述の光吸収層103で生じた正孔を光吸収層103から効率的に取り出し、後述の光吸収層103で正孔と同時に生じる電子と正孔とが再結合することを防ぐ機能を有する。正孔輸送層102は、p型半導体であることが好ましい。p型半導体に含まれる物質としては、特に限定されないが、例えば、ポリ(3,4-エチレン-ジオキシチオフェン):ポリスチレンスルフォネート(PEDOT:PSS)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)、及びポリ(3-オクチルチオフェン)(P3OT)等のポリチオフェン誘導体;2,2’-7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン(spiro-MeO-TAD)等のフルオレン誘導体;ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;トリフェニルアミン誘導体;ジフェニルアミン誘導体;ポリシラン誘導体;ポリアニリン誘導体等の有機化合物、並びに、酸化ニッケル、酸化モリブデン、酸化ガリウム銅、酸化アルミニウム銅、セレン化モリブデン、及びセレン化硫化モリブデン等の無機化合物が挙げられる。正孔輸送層102におけるp型半導体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
正孔輸送層102は、前述の有機化合物又は無機化合物から実質的になることが好ましく、前述の有機化合物又は無機化合物であることが好ましい。また、正孔輸送層102における前述の有機化合物又は無機化合物の含有量は、正孔輸送層102の総量に対して、好ましくは、80質量%以上100質量%以下であり、90質量%以上100質量%以下であり、95質量%以上100質量%以下であり、99質量%以上100質量%以下である。
【0025】
正孔輸送層102の厚さは、好ましくは、10nm以上100nm以下であり、15nm以上80nm以下であり、20nm以上60nm以下である。正孔輸送層102の厚さが上記範囲内であることにより、後述の光吸収層103で生じた正孔を光吸収層103から効率的に取り出し、後述の光吸収層103で正孔と同時に生じる電子と正孔とが再結合することを防ぐ機能を有しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。
【0026】
(光吸収層)
光吸収層103は、例えば、近赤外光、可視光、紫外光等の光を吸収して電子と正孔とを生じる機能を有する。近赤外光、可視光、紫外光等の光としては、例えば、太陽光が挙げられる。光吸収層103は、好ましくは、ペロブスカイト化合物、カルコパイライト化合物又はケステライト化合物を含む。ペロブスカイト化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。カルコパイライト化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ケステライト化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
ペロブスカイト化合物としては、一般式AMX3で表されるもの、及び一般式A2MX4で表されるものが挙げられる。ここで、Mは2価のカチオンを、Aは1価のカチオンを、Xは1価のアニオンを指す。
【0028】
1価のカチオンAとしては、特に限定されず、例えば、周期表第1族元素のカチオン、及び有機カチオンが挙げられる。これらの中でも、セシウムイオン、ルビジウムイオン、置換基を有していてもよいアンモニウムイオン(アミジニウムイオンを含む)、置換基を有していてもよいホスホニウムイオン、又は置換基を有していてもよいアミジニウムイオンが好ましい。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの例としては、1級アンモニウムイオン、及び2級アンモニウムイオンが挙げられる。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの具体例としては、アルキルアンモニウムイオン、アリールアンモニウムイオン、アミジニウムイオン、及びグアニジウムイオン等が挙げられる。特に、立体障害を避けるために、モノアルキルアンモニウムイオンが好ましく、安定性向上の観点からは、1つ以上のフッ素原子により置換されたアルキルアンモニウムイオンを用いることが好ましい。また、カチオンAとして2種類以上のカチオンの組み合わせを用いることもできる。1価のカチオンAとしては、例えば、メチルアンモニウムイオン、モノフッ化メチルアンモニウムイオン、ジフッ化メチルアンモニウムイオン、トリフッ化メチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、イソプロピルアンモニウムイオン、n-プロピルアンモニウムイオン、イソブチルアンモニウムイオン、n-ブチルアンモニウムイオン、t-ブチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、フェニルアンモニウムイオン、ベンジルアンモニウムイオン、フェネチルアンモニウムイオン、グアニジウムイオン、ホルムアミジニウムイオン、アセトアミジニウムイオン、及びイミダゾリウムイオン等が挙げられる。
【0029】
2価のカチオンMとしては、特に限定されず、例えば、2価の金属カチオン、及び半金属カチオンが挙げられる。具体的な例としては周期表第14族元素のカチオンが挙げられ、より具体的な例としては、鉛カチオン(Pb2+)、スズカチオン(Sn2+)、及びゲルマニウムカチオン(Ge2+)が挙げられる。また、カチオンMとして2種類以上のカチオンの組み合わせを用いることもできる。
【0030】
1価のアニオンXとしては、特に限定されず、例えば、ハロゲン化物イオン、酢酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、ホウ酸イオン、アセチルアセトナートイオン、炭酸イオン、クエン酸イオン、硫黄イオン、テルルイオン、チオシアン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、2,4-ペンタンジオナトイオン、及びケイフッ素イオン等が挙げられる。Xは1種類のアニオンであってもよいし、2種類以上のアニオンの組み合わせであってもよい。Xとしては、ハロゲン化物イオン、又はハロゲン化物イオンとその他のアニオンとの組み合わせを用いることが好ましい。ハロゲン化物イオンXの例としては、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオン等が挙げられる。
【0031】
ペロブスカイト化合物としては、有機-無機ペロブスカイト化合物が挙げられ、特にハライド系有機-無機ペロブスカイト化合物が挙げられる。ペロブスカイト化合物の具体例としては、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbCl3、CH3NH3SnI3、CH3NH3SnBr3、CH3NH3SnCl3、CH3NH3PbI(3-x)Clx、CH3NH3PbI(3-x)Brx、CH3NH3PbBr(3-x)Clx、CH3NH3Pb(1-y)SnyI3、CH3NH3Pb(1-y)SnyBr3、CH3NH3Pb(1-y)SnyCl3、CH3NH3Pb(1-y)SnyI(3-x)Clx、CH3NH3Pb(1-y)SnyI(3-x)Brx、及びCH3NH3Pb(1-y)SnyBr(3-x)Clx、並びに、上記の化合物においてCH3NH3の代わりにCFH2NH3、CF2HNH3、CF3NH3、又はNH2CH=NH2を用いたもの等が挙げられる。なお、上記式中、xは0以上3以下、yは0以上1以下の任意の値を示す。
【0032】
カルコパイライト化合物としては、好ましくは、I-III-VI2族カルコパイライト化合物が挙げられる。I-III-VI2族カルコパイライト化合物としては、特に限定されないが、例えば、CuAlS2、CuAlSe2、CuAlTe2、CuGaS2、CuGaSe2、CuGaTe2、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、AgAlS2、AgAlSe2、AgAlTe2、AgGaS2、AgGaSe2、AgGaTe2、AgInS2、AgInSe2、AgInTe2、及びこれらの組み合わせが挙げられる。「これらの組み合わせ」とは、特に限定されないが、例えば、CuGaS2及びCuInSe2を組み合わせたときのCu(InxGa1-x)(SeyS1-y)2(0≦x≦1、0≦y≦1)が挙げられる。これらのカルコパイライト化合物の中でも、CuGaS2、CuGaSe2、CuInS2、CuInSe2、Cu(InxGa1-x)(SeyS1-y)2(0≦x≦1、0≦y≦1)が好ましく、Cu(InxGa1-x)(SeyS1-y)2(0≦x≦1、0≦y≦1)がより好ましい。なお、本実施形態において、CIS化合物というときは、Cu、In、Seを含むカルコパイライト化合物であり、CIGS化合物というときは、Cu、In、Ga、Seを含むカルコパイライト化合物であり、CIGSS化合物というときは、Cu、In、Ga、Se、Sを含むカルコパイライト化合物である。
【0033】
ケステライト化合物としては、好ましくは、I2-II-IV-VI4族ケステライト化合物が挙げられる。I2-II-IV-VI4族ケステライト化合物としては、特に限定されないが、例えば、Cu2ZnSnS4、Cu2ZnSnSe4、Cu2ZnGeS4、Cu2ZnGeSe4、Cu2MnSnS4、Cu2MnSnSe4、Cu2MnGeS4、Cu2MnGeSe4、Ag2ZnSnS4、Ag2ZnSnSe4、Ag2ZnGeS4、Ag2ZnGeSe4、Ag2MnSnS4、Ag2MnSnSe4、Ag2MnGeS4、Ag2MnGeSe4、及びこれらの組み合わせが挙げられる。「これらの組み合わせ」とは、特に限定されないが、例えば、Cu2ZnSnS4及びAg2ZnSnSe4を組み合わせたときの(CuxAg1-x)2ZnSn(SySe1-y)4(0≦x≦1)が挙げられる。Cu2ZnSn(SxSe1-x)4(0≦x≦1、0≦y≦1)が挙げられる。これらのケステライト化合物の中でも、Cu2ZnSnS4、Cu2ZnSnSe4、Ag2ZnSnS4、Ag2ZnSnSe4、(CuxAg1-x)2ZnSn(SySe1-y)4(0≦x≦1、0≦y≦1)が好ましく、(CuxAg1-x)2ZnSn(SySe1-y)4(0≦x≦1、0≦y≦1)がより好ましい。なお、本実施形態において、CZTS化合物というときは、Cu、Zn、Sn、Sを含むケステライト化合物であり、ACZTS化合物というときは、Ag、Cu、Zn、Sn、Sを含むケステライト化合物であり、ACZTSS化合物というときは、Ag、Cu、Zn、Sn、S、Seを含むケステライト化合物である。
【0034】
光吸収層103におけるペロブスカイト化合物、カルコパイライト化合物、又はケステライト化合物の含有量は、光吸収層103が、可視光、紫外光等の光を吸収して電子と正孔とを生じる機能を有すれば特に限定されない。より具体的には、特に限定されないが、光吸収層103の総質量に対して、50質量%以上100質量%以下であり、60質量%以上100質量%以下であり、70質量%以上100質量%以下であり、80質量%以上100質量%以下であり、90質量%以上100質量%以下である。
【0035】
光吸収層103は、上記材料の他に、バインダー、界面活性剤等の添加剤を含んでもよい。上記添加剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、光吸収層103の総質量に対して、0.1~10質量%である。光吸収層103は上記添加剤を含まなくてもよい。
【0036】
光吸収層103の厚さは、好ましくは、0.5μm以上10.0μm以下であり、0.5μm以上7.5μm以下であり0.5μm以上5.0μm以下であり、0.5μm以上3.0μm以下である。光吸収層103の厚さが上記範囲内であることにより、可視光、紫外光等の光を吸収して電子と正孔とを生じる機能を有しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。
【0037】
本実施形態の太陽電池100は、光吸収層103を2層有していてもよい。この場合、1層目の光吸収層103が含む物質と、2層目の光吸収層103が含む物質とは異なってもよく、同一でもよいが、異なる場合が好ましい。太陽電池100が光吸収層103を2層有することにより、光吸収層103が吸収できる光の波長領域を拡大できる傾向にあり、結果として、太陽電池の性能が向上する傾向にある。また、本実施形態の太陽電池100は、光吸収層103を3層以上有していてもよい。
【0038】
(電子輸送層)
電子輸送層104は、水素元素が添加されたn型酸化物半導体であり、光吸収層103で生じた電子を光吸収層103から効率的に取り出し、光吸収層103で電子と同時に生じる正孔と電子とが再結合することを防ぐ機能を有する。
【0039】
水素元素が添加されたn型酸化物半導体のバンドギャップが、好ましくは、3.3eV以上であり、3.4eV以上であり、3.5eV以上であり、3.6eV以上である。また、水素元素が添加されたn型酸化物半導体のバンドギャップは、特に限定されないが、例えば、3.3eV以上5.0eV以下であり、3.4eV以上4.5eV以下であり、3.5eV以上4.0eV以下である。バンドギャップが上記数値範囲内であることにより、電子輸送層104の透過性が向上するため、光吸収層103が吸収する光量が増大し、結果として、太陽電池の変換効率が向上する傾向にある。
【0040】
バンドギャップの測定方法としては、公知の手法を用いることができる。より具体的には、特に限定されないが、例えば、分光透過率測定や分光量子効率測定等によって測定される。
【0041】
水素元素が添加されたn型酸化物半導体のキャリア濃度が、好ましくは、1.0×1020cm-3以下であり、5.0×1019cm-3以下であり、2.5×1019cm-3以下である。また、水素元素が添加されたn型酸化物半導体のキャリア濃度は、特に限定されないが、例えば、1.0×1016cm-3以上1.0×1020cm-3以下であり、1.0×1017cm-3以上5.0×1019cm-3以下であり、1.0×1018cm-3以上2.5×1019cm-3以下である。キャリア濃度が上記数値範囲内であることにより、光吸収層103で生じた電子を光吸収層103から効率的に取り出せるため、光吸収層103で電子と同時に生じる正孔と電子とが再結合することを防ぐことが可能になり、結果として、太陽電池の変換効率が向上する傾向にある。
【0042】
キャリア濃度の測定方法としては、公知の手法を用いることができる。より具体的には、特に限定されないが、例えば、ホール測定等によって測定される。
【0043】
水素元素が添加されたn型酸化物半導体の屈折率は、特に限定されない。n型酸化物半導体の屈折率は、例えば1.8以上であり、好ましくは、2.1以上である。また、屈折率は、特に限定されないが、例えば、1.8以上3.0以下であり、2.1以上2.8以下であり、2.1以上2.6以下である。電子輸送層104の屈折率は隣接する層との屈折率が大きくなりすぎないように、適宜調整することが好ましい。
【0044】
屈折率の測定方法としては、公知の手法を用いることができる。より具体的には、特に限定されないが、例えば、分光透過率測定や分光エリプソメトリー測定等によって測定される。
【0045】
水素元素が添加されたn型酸化物半導体の比抵抗率が、好ましくは、1.6×10-2Ωcm以上であり、1.8×10-2Ωcm以上であり、2.0×10-2Ωcm以上である。また、水素元素が添加されたn型酸化物半導体の比抵抗率は、特に限定されないが、例えば、1.6×10-2Ωcm以上1.0×102Ωcm以下であり、1.8×10-2Ωcm以上10.0Ωcm以下であり、2.0×10-2Ωcm以上1.0Ωcm以下である。比抵抗率が上記数値範囲内であることにより、太陽電池の変換効率が向上する傾向にある。
【0046】
比抵抗率の測定方法としては、公知の手法を用いることができる。より具体的には、特に限定されないが、例えば、4探針法により測定される。
【0047】
水素元素が添加されたn型酸化物半導体としては、バンドギャップが3.3eV以上であり、キャリア濃度が1.0×1020cm-3以下であるものが好ましい。さらに、水素元素が添加されたn型酸化物半導体としては、バンドギャップが3.3eV以上であり、キャリア濃度が1.0×1020cm-3以下であり、比抵抗率が1.6×10-2Ωcm以上であるものが好ましい。
【0048】
バンドギャップが3.3eV以上であり、キャリア濃度が1.0×1020cm-3以下であり、比抵抗率が1.6×10-2Ωcm以上である水素元素が添加されたn型酸化物半導体におけるn型酸化物半導体に含まれる物質としては、好ましくは、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化硫化亜鉛(硫黄元素が添加された酸化亜鉛)、酸化マグネシウム亜鉛(マグネシウム元素が添加された酸化亜鉛)、酸化スズ亜鉛(スズ元素が添加された酸化亜鉛)、及び酸化チタン亜鉛(チタン元素が添加された酸化亜鉛)が挙げられる。この中でも、酸化チタン亜鉛(チタン元素が添加された酸化亜鉛)が好ましい。n型酸化物半導体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
硫黄元素が添加された酸化亜鉛において、電子輸送層104による機能をより確実に発現させる観点から、好ましくは、酸素元素に対する硫黄元素のモル比が、0以上0.7以下であり、0.1以上0.4以下である。
【0050】
マグネシウム元素が添加された酸化亜鉛において、電子輸送層104による機能をより確実に発現させる観点から、好ましくは、亜鉛元素に対するマグネシウム元素のモル比が、0以上0.4以下であり、0.1以上0.3以下である。
【0051】
スズ元素が添加された酸化亜鉛において、電子輸送層104による機能をより確実に発現させる観点から、好ましくは、亜鉛元素に対するスズ元素のモル比が、0以上1.0以下であり、0.2以上0.4以下である。
【0052】
チタン元素が添加された酸化亜鉛において、電子輸送層104による機能をより確実に発現させる観点から、好ましくは、亜鉛元素に対するチタン元素のモル比が、0以上0.3以下であり、0.05以上0.2以下である。
【0053】
水素元素が添加されたn型酸化物半導体において、電子輸送層104による機能をより確実に発現させる観点から、好ましくは、全ての金属元素に対する水素元素のモル比が、0.001以上0.030以下であり、0.005以上0.020以下であり、0.007以上0.015以下であり、0.009以上0.013以下である。
【0054】
水素元素が添加されたn型酸化物半導体である電子輸送層104は、後述する電子輸送層形成工程により形成された電子輸送層であってもよい。
【0055】
n型酸化物半導体である電子輸送層104は、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化硫化亜鉛、酸化マグネシウム亜鉛、酸化スズ亜鉛、又は酸化チタン亜鉛から実質的になることが好ましく、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化硫化亜鉛、酸化マグネシウム亜鉛、酸化スズ亜鉛、又は酸化チタン亜鉛であることが好ましい。また、n型酸化物半導体である電子輸送層104における酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化硫化亜鉛、酸化マグネシウム亜鉛、酸化スズ亜鉛、又は酸化チタン亜鉛の含有量は、電子輸送層104の総量に対して、好ましくは、80質量%以上100質量%以下であり、90質量%以上100質量%以下であり、95質量%以上100質量%以下であり、99質量%以上100質量%以下である。
【0056】
電子輸送層104の厚さは、好ましくは、50nm以上150nm以下であり、55nm以上140nm以下であり、60nm以上135nm以下であり、65nm以上130nm以下である。電子輸送層104の厚さが上記範囲内であることにより、光吸収層103で生じた電子を光吸収層103から効率的に取り出し、光吸収層103で電子と同時に生じる正孔と電子とが再結合することを防ぐ機能を有しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。
【0057】
(第2電極層)
第2電極層105は、例えば、光吸収層103で生じた電子による電流を取り出すために設けられる。太陽電池100において、典型的には、第2電極層105を通過した光を光吸収層103が吸収するため、光吸収層103が吸収する光量を増大させるために、第2電極層105は透明電極層であることが好ましい。透明電極とは、高い電気伝導性と高い可視光透過性を兼ね備えた材料を用いた電極である。高い電気伝導性とは、特に限定されないが、例えば、比抵抗率が5.0×10-3Ωcm以下であることを意味する。高い可視光透過性とは、特に限定されないが、例えば、400~1300nmの波長領域での平均透過率が80%以上であることを意味する。透明電極の材料としては、公知の材料を用いることができ、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、水素含有酸化インジウム(IOH)、フッ素含有酸化スズ(FTO)、ホウ素含有酸化亜鉛(ZnO:B)、アルミニウム含有酸化亜鉛(ZnO:Al)等が挙げられる。
【0058】
第2電極層105を透明電極とする場合の、上記材料の含有量は、第2電極層105が透明電極として機能すれば特に限定されない。より具体的には、特に限定されないが、上記材料の含有量は、第2電極層105の総質量に対して、50質量%以上100質量%以下であり、60質量%以上100質量%以下であり、70質量%以上100質量%以下であり、80質量%以上100質量%以下であり、90質量%以上100質量%以下であり、95質量%以上100質量%以下である。
【0059】
第2電極層105の厚さは、特に限定されないが、例えば、100nm以上1500nm以下であり、200nm以上1000nm以下である。第2電極層105の厚さが上記範囲内であることにより、電流をロスなく十分に取り出しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。
【0060】
(グリッド電極)
グリッド電極106は、例えば、第2電極層105から電気を取り出すために設けられるが、省略してもよい。グリッド電極106の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、Mo、Cr、Ag、Cu、Ni、Al又はTi等の金属;金属以外の導電性無機化合物;導電性有機化合物を用いることができる。
【0061】
グリッド電極106における上記材料の含有量は、グリッド電極106が電極として機能すれば特に限定されない。より具体的には、特に限定されないが、上記材料の含有量は、グリッド電極106の総質量に対して、50質量%以上100質量%以下であり、60質量%以上100質量%以下であり、70質量%以上100質量%以下であり、80質量%以上100質量%以下であり、90質量%以上100質量%以下である。
【0062】
グリッド電極106の厚さは、特に限定されないが、例えば、5μm以上50μm以下である。グリッド電極106の厚さが上記範囲内であることにより、電流をロスなく十分に取り出しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化が可能となる傾向にある。
【0063】
[変形例]
上記の
図1に示す太陽電池100は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではなく、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な変形が可能である。
【0064】
例えば、本実施形態の太陽電池100は、正孔輸送層102と、正孔輸送層102の上に設けられた光吸収層103と、光吸収層103の上に設けられた電子輸送層104と、電子輸送層104の上に設けられた第2電極層105と、を1セットとして、第1電極層101の上に、上記セットを2セット積層してもよく、3セット以上積層してもよい。また、最上部の第2電極層105の上にグリッド電極106を有していてもよい。
【0065】
各層101~107のいずれかが複数存在する場合は、当該複数の層は互いに同じであってよく、異なっていてよい。例えば、光吸収層を複数備える場合、各光吸収層は、吸収スペクトルが異なる化合物を含んでいてよく、各光吸収層に接する電子輸送層及び正孔輸送層は、接している光吸収層の性質に応じて選択されてよい。
【0066】
また、本実施形態の太陽電池100は、必要に応じて各層の間、グリッド電極106の上、又は基板107の下に他の層を有していてもよい。例えば、正孔輸送層102が、それぞれ異なる材料を含む2以上の正孔輸送層を有していてもよく、グリッド電極106上に、外部からの汚染を防ぐための汚染防止層を有していてもよい。また、電子輸送層104が、それぞれ異なる材料を含む2以上の電子輸送層を有していてもよい。ただし、そのうちの少なくとも1つの層は、水素元素が添加されたn型酸化物半導体である。
【0067】
図2に、電子輸送層を2層有する一実施形態に係る太陽電池の概略断面図を示す。
図2に示す実施形態の太陽電池200は、基板107と、基板107上に設けられた第1電極層101と、第1電極層101上に設けられた正孔輸送層102と、正孔輸送層102上に設けられた光吸収層103と、光吸収層103上に設けられた第1電子輸送層201と、第1電子輸送層201上に設けられた第2電子輸送層202と、第2電子輸送層202上に設けられた第2電極層105と、第2電極層105上に設けられたグリッド電極106とを備える。太陽電池200は、典型的には、第2電極層105側からの光を受光して発電する。
【0068】
図2に示す太陽電池200は、
図1に示す太陽電池100と比較して、電子輸送層104に代えて第1電子輸送層201及び第2電子輸送層202を備える点で異なる。その他の構成については、太陽電池100と同様であってよい。
【0069】
(電子輸送層)
太陽電池200は、第1電子輸送層201及び第2電子輸送層202を備える。第1電子輸送層201及び第2電子輸送層202の少なくとも一方は、水素元素が添加されたn型酸化物半導体である。第1電子輸送層201及び第2電子輸送層202のいずれが、水素元素が添加されたn型酸化物半導体であってもよく、その両方が、水素元素が添加されたn型酸化物半導体であってもよい。第1電子輸送層201又は第2電子輸送層202が、水素元素が添加されたn型酸化物半導体である場合、当該n型酸化物半導体の例示及び好ましい態様は電子輸送層104と同様又は同じである。
【0070】
第1電子輸送層201及び第2電子輸送層202のいずれかは、水素元素が添加されたn型酸化物半導体以外の電子輸送層であってよい。そのような電子輸送層としては、n型半導体であることが好ましい。n型半導体に含まれる物質としては、特に限定されないが、例えば、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化硫化亜鉛、酸化マグネシウム亜鉛、酸化スズ亜鉛、酸化チタン亜鉛のような酸化物半導体;硫化カドミウム、酸化硫化インジウム、及び硫化インジウムのような硫化物半導体;並びに、PEIE(エトキシ化ポリエチレンイミン)、及びPEI(ポリエチレンイミン)のような有機化合物が挙げられ、中でも、硫化物半導体が好ましく、硫化カドミウム、及び硫化インジウムが好ましい。第1電子輸送層201及び第2電子輸送層202におけるn型半導体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
水素元素が添加されたn型酸化物半導体以外の電子輸送層は、前述の酸化物半導体、硫化物半導体、又は有機化合物から実質的になることが好ましく、前述の酸化物半導体、硫化物半導体、又は有機化合物であることが好ましい。また、水素元素が添加されたn型酸化物半導体以外の電子輸送層における前述の酸化物半導体、硫化物半導体、又は有機化合物の含有量は、当該電子輸送層の総量に対して、好ましくは、80質量%以上100質量%以下であり、90質量%以上100質量%以下であり、95質量%以上100質量%以下であり、99質量%以上100質量%以下である。
【0072】
[太陽電池の製造方法]において詳述するとおり、電子輸送層として水素元素が添加されたn型酸化物半導体を形成する場合、当該n型酸化物半導体の下層に対する成膜ダメージを軽減又は抑制できると推察される。また、水素元素が添加されたn型酸化物半導体は、その上に別の層を形成する際に成膜ダメージが生じにくい。したがって、第1電子輸送層201を水素元素が添加されたn型酸化物半導体とする場合、光吸収層103に対する成膜ダメージを軽減又は抑制することができ、さらに第1電子輸送層201は第2電子輸送層202を形成する際の成膜ダメージに耐性を有する。第2電子輸送層202を水素元素が添加されたn型酸化物半導体とする場合、第1電子輸送層201に対する成膜ダメージを軽減又は抑制することができ、さらに第2電子輸送層202は第2電極層105を形成する際の成膜ダメージに耐性を有する。
【0073】
太陽電池200は、一態様において、第1電子輸送層201が、水素元素が添加されたn型酸化物半導体である。この場合、水素元素が添加されたn型酸化物半導体は、光吸収層103上に設けられる。
【0074】
太陽電池200は、一態様において、第2電子輸送層202が、水素元素が添加されたn型酸化物半導体である。この態様において、第1電子輸送層201が、水素元素が添加されたn型酸化物半導体でない場合、水素元素が添加されたn型酸化物半導体とは異なる電子輸送層が、光吸収層103と水素元素が添加されたn型酸化物半導体である第2電子輸送層202との間に設けられる。
【0075】
第1電子輸送層201又は第2電子輸送層202が、水素元素が添加されたn型酸化物半導体である場合、その第1電子輸送層201又は第2電子輸送層202の厚さは、好ましくは、40nm以上140nm以下であり、50nm以上130nm以下であり、55nm以上120nm以下である。
【0076】
第1電子輸送層201又は第2電子輸送層202が、水素元素が添加されたn型酸化物半導体でない場合、その第1電子輸送層201又は第2電子輸送層202の厚さは、当該電子輸送層の機能や含まれる材料により調整すればよいが、例えば、10nm以上60nm以下であり、15nm以上50nm以下であり、20nm以上40nm以下である。
【0077】
[太陽電池の製造方法]
(電子輸送層形成工程)
本実施形態に係る太陽電池の製造方法は、酸素源及び水素源を含むガスを供給しながらスパッタリング法によりn型酸化物半導体を成膜することで、光吸収層を含む基材上に電子輸送層を形成する工程(以下、「電子輸送層形成工程」という。)を含む。
【0078】
本発明者らは、スパッタリング法を用いてn型酸化物半導体を成膜した際に太陽電池の性能が低下する要因の1つとして、スパッタリング法による成膜により、n型酸化物半導体を成膜する対象基板に成膜ダメージが生じることを見出した。本実施形態に係る太陽電池の製造方法は、酸素源だけでなく、水素源を含むガスを供給しながらn型酸化物半導体を成膜することにより、スパッタリングにより基板に生じる成膜ダメージを軽減又は抑制でき、その結果、生産性高く、高性能の太陽電池を製造することができる。本発明者らは、水素源を含むガスの供給による、成膜ダメージの軽減又は抑制の効果の要因の1つとして、スパッタリングの際に基板表面に生じる酸素の活性種を水素源が捕捉することを推定している。すなわち、酸化物半導体をスパッタリング法により成膜する際に、酸素源を含むガスが供給されるところ、本発明者らは、成膜ダメージの要因の1つが、当該酸素源から発生する活性種が酸化物半導体を形成しようとする基板の表面にダメージを与えることであるとの仮説を立てた。本発明者らは、鋭意検討の結果、当該活性種を捕捉しながら電子輸送層として適切なn型酸化物半導体を形成する方法として、水素源を含むガスを供給しながらn型酸化物半導体をスパッタリング法により成膜することを見出した。なお、上記の予測及び仮説は本発明の説明のためにされるものであり、本発明を限定する趣旨ではない。
【0079】
本実施形態に係る太陽電池の製造方法は、従来の太陽電池の製造方法と比較してさらに以下の利点を有し得る。上記のとおり、従来の方法でスパッタリング法により電子輸送層を形成すると、電子輸送層の下層に対して成膜ダメージを生じてしまうため、従来の太陽電池の製造方法は、電子輸送層を形成する際に、原子層積層法や化学溶液堆積法等の高コストの成膜法を用いる。これに対して、本実施形態に係る太陽電池の製造方法は、電子輸送層を量産化に適したスパッタリング法により形成することができるため、生産性高く高性能の太陽電池を製造することができる。また、化学溶液堆積法等の成膜法はウェットプロセスである一方、太陽電池の製造方法のほとんどの工程はドライプロセスである。したがって、電子輸送層の成膜時にウェットプロセスを用いる方法と比較して、本実施形態に係る太陽電池の製造方法は、電子輸送層もドライプロセスで形成することができるため、さらに製造にかかる時間を短縮することができる。なお、本明細書において、ウェットプロセスとは、溶液を用いた工程を意味する。また、ドライプロセスとは、溶液を用いない工程を意味する。
【0080】
スパッタリングにより基板に生じる成膜ダメージは、実施例1に示すように開放電圧維持率を測定することで評価することができる。すなわち、成膜ダメージは、本実施形態に係る製造方法により製造した太陽電池と、化学溶液堆積法を用いて電子輸送層を形成した太陽電池(対照例)とについて、標準試験条件下における開放電圧を測定し、対照例の太陽電池の開放電圧を基準として、本実施形態に係る製造方法により製造した太陽電池の開放電圧の値を算出することで評価することができる。太陽電池の標準試験条件は、分光スペクトルAM1.5の光を放射照度1kW/m2で入射し太陽電池温度が25℃である試験条件である。
【0081】
本実施形態に係る太陽電池の製造方法、及び電子輸送層形成工程において、開放電圧維持率が、好ましくは、60%以上であり、70%以上であり、75%以上であり、80%以上であり、85%以上であり、90%以上である。本実施形態に係る製造方法は、酸素源及び水素源を含むガスを供給しながら、スパッタリング法により電子輸送層を形成するため、スパッタリング法を用いて電子輸送層を形成しているにもかかわらず、基材に与える成膜ダメージを軽減又は抑制できる。そのため、スパッタリング法に代えて化学溶液堆積法を用いて電子輸送層を形成した太陽電池と比較しても、高いレベルの開放電圧を維持できると考えられる。
【0082】
開放電圧維持率の基準として、化学溶液堆積法を用いて電子輸送層を形成した太陽電池に代えて、原子層積層法を用いて電子輸送層を形成した太陽電池を用いてもよい。本実施形態に係る太陽電池の製造方法、及び電子輸送層形成工程において、原子層積層法を用いて電子輸送層を形成した太陽電池を基準とした、本実施形態に係る製造方法により製造した太陽電池の開放電圧の値は、好ましくは、60%以上であり、70%以上であり、75%以上であり、80%以上であり、85%以上であり、90%以上である。
【0083】
電子輸送層形成工程では、酸素源及び水素源を含むガスを供給しながらスパッタリング法によりn型酸化物半導体を成膜することで、光吸収層を含む基材上に電子輸送層を形成する。より具体的には、光吸収層を含む基材を加熱し、かつ酸素源及び水素源を含むガスを供給しながら、適当なスパッタリングターゲットを用いて、基材上にn型酸化物半導体を成膜する。
【0084】
n型酸化物半導体を成膜する基材は、光吸収層を含む基材であればよいが、光吸収層、及び第1電極を含む基材が好ましく、光吸収層、正孔輸送層、及び第1電極がこの順に積層された積層構造を含む基材がより好ましく、光吸収層、正孔輸送層、第1電極、及び基板がこの順に積層された積層構造を含む基材がさらに好ましい。
【0085】
一実施形態において、基材は表面に光吸収層を有していてよく、この場合n型酸化物半導体は光吸収層上に成膜される。一実施形態において、基材は表面に電子輸送層を有していてよく、この場合n型酸化物半導体は電子輸送層上に成膜される。基材は、例えば、光吸収層、正孔輸送層、第1電極、及び基板がこの順に積層された積層体、電子輸送層、光吸収層、正孔輸送層、第1電極、及び基板がこの順に積層された積層体、又はこれらの積層体において正孔輸送層を含まない積層体であってよい。基材としての積層体が電子輸送層を含む場合、かかる電子輸送層は、水素元素が添加されたn型酸化物半導体である電子輸送層であってよく、その他の電子輸送層であってよい。具体的には、太陽電池200における第1電子輸送層201であってよい。上記のような基材を用いることで、より簡便に太陽電池を製造することができる。
【0086】
基材が含み得る、電子輸送層、光吸収層、正孔輸送層、第1電極、及び基板は、それぞれ、第1電子輸送層201、光吸収層103、正孔輸送層102、第1電極層101、及び基板107と同じ又は同様であってよい。
【0087】
電子輸送層形成工程におけるスパッタリングターゲットは、成膜するn型酸化物半導体に含まれる元素を含んでいればよく、成膜するn型酸化物半導体に含まれる金属元素を含むことが好ましく、成膜するn型酸化物半導体に含まれる金属の酸化物を含むことが好ましい。例えば、酸化チタン亜鉛(チタン元素が添加された酸化亜鉛)は、酸化チタン及び酸化亜鉛の混合物をスパッタリングターゲットとすることで、成膜することができる。また、硫黄元素を含むn型酸化物半導体は、成膜するn型酸化物半導体に含まれる金属の硫化物を含むスパッタリングターゲットを用いることで成膜することができる。成膜するn型酸化物半導体における金属元素、並びに酸素元素及び硫黄元素を含むその他の元素の含有率は、スパッタリングターゲットに添加する元素を調整することで制御することができる。
【0088】
一実施形態において、スパッタリングターゲットは、酸化チタン及び酸化亜鉛の混合物である。これにより、酸化チタン亜鉛(チタン元素が添加された酸化亜鉛)を成膜できる。スパッタリングターゲットにおける酸化チタンの含有量は、該混合物の総質量に対して、好ましくは、4.0質量%以上20質量%以下であり、5.0質量%以上19質量%以下であり、6.0質量%以上18質量%以下である。また、その残部が酸化亜鉛の含有量であってよい。
【0089】
電子輸送層形成工程において供給するガスは、酸素源及び水素源を含む。該ガスは、不活性ガス、好ましくはアルゴンガスを主成分としてよい。酸素源としては、酸素元素を含むガスであれば特に限定されないが、例えば、H2O蒸気、O2ガス、及びO3ガスが挙げられ、O2ガスが好ましい。水素源としては、水素元素を含むガスであれば特に限定されないが、例えば、H2O蒸気、及びH2ガスが挙げられ、H2ガスが好ましい。
【0090】
供給ガスにおける酸素源の濃度は、酸素分子換算で、好ましくは、0.12体積%以上2.0体積%以下であり、0.40体積%以上1.8体積%以下であり、0.70体積%以上1.6体積%以下であり、0.80体積%以上1.5体積%以下であり、0.90体積%以上1.5体積%以下であり、1.0体積%以上1.5体積%以下である。酸素分子換算の酸素源の濃度は、具体的には以下のとおり計算する。酸素源がH2O蒸気のとき、H2O蒸気は酸素元素を1つ含むため、上記ガスにおけるH2O蒸気の濃度が1.0体積%であるとき、酸素分子換算の酸素源の濃度は、1.0体積%の半分である0.5体積%となる。酸素源がO2ガスのとき、O2ガスは酸素元素を2つ含むため、上記ガスにおけるO2ガスの濃度が1.0体積%であるとき、酸素分子換算の酸素源の濃度は、1.0体積%となる。
【0091】
供給ガス中に含まれる、酸素元素に対する水素元素のモル比(H/O)は、好ましくは、0.60以上4.0以下であり、0.80倍以上3.0倍以下であり、1.0倍以上2.5倍以下であり、1.2倍以上2.0倍以下であり、1.3倍以上1.8倍以下である。酸素元素に対する水素元素のモル比は、具体的には以下のとおり計算する。酸素源としてO2ガス、水素源としてH2O蒸気を用いた上記ガスであって、上記ガスにおける酸素源の濃度が0.8体積%、上記ガスにおける水素源の濃度が1.6体積%であるとき、水素源であるH2O蒸気は、1分子当たり水素元素2個及び酸素元素1個を有し、酸素源であるO2ガスは、1分子当たり酸素元素2個を有する。したがって、酸素元素に対する水素元素のモル比は、(1.6×2)÷(1.6+0.8×2)=1.0倍と計算される。酸素源としてO2ガス、水素源としてH2ガスを用いる場合、O2ガスとH2ガスとの体積比がモル比に対応する。
【0092】
供給ガスの酸素源及び水素源は、以下の条件(1)又は(2)を満たすことが特に好ましい。
(1)酸素源の濃度が、酸素分子換算で、0.80体積%以上1.6体積%以下であり、酸素源の濃度(酸素分子換算、体積%での値)をy、酸素元素に対する水素元素のモル比(H/O)をxとしたとき、以下の式を満たす:
0.85y+0.1≦x≦3.0y-0.9
(2)酸素源の濃度が、酸素分子換算で、0.12体積%以上0.80体積%未満であり、酸素源の濃度(酸素分子換算、体積%での値)をy、酸素元素に対する水素元素のモル比(H/O)をxとしたとき、以下の式を満たす:
0.78≦x≦-2.2y+3.3
【0093】
供給ガスにおける不活性ガス(例えば、アルゴンガス)の濃度は、特に限定されないが、例えば、90.0体積%以上99.0%体積%以下であり、91.0体積%以上98.5%体積%以下であり、92.0体積%以上98.0%体積%以下であり、93.0体積%以上97.5%体積%以下であり、94.0体積%以上97.0%体積%以下である。酸素源及び水素源を除いた残部を不活性ガスとしてよい。
【0094】
電子輸送層形成工程において、光吸収層を含む基材を加熱しながら、スパッタリング処理をすることが好ましい。加熱温度(熱源温度)は、特に限定されないが、例えば80℃以上230℃以下でよく、好ましくは、100℃以上200℃以下、120℃以上180℃以下である。なお、基板として金属基板を用いた場合は、基材の温度と加熱温度はほぼ同一になる。
【0095】
スパッタリング法のその他の成膜条件は、成膜するn型酸化物半導体の種類や、スパッタリングターゲットの種類により調整すればよい。例えば、印加電力:0.5~3.0W/cm2、成膜圧力:0.5~3.0Paとしてよい。また、スパッタリング中は雰囲気の温度は制御されなくてもよい。
【0096】
本実施形態に係る太陽電池の製造方法は、光吸収層を含む基材を準備する工程と、これに続く上記の電子輸送層形成工程を含んでいてよい。本実施形態に係る太陽電池の製造方法は、上記の電子輸送層形成工程に続いて、電子輸送層上に他の層を形成する工程を含んでいてよい。
【0097】
光吸収層を含む基材を準備する工程は、第1電極層を形成する工程、正孔輸送層を形成する工程、光吸収層を形成する工程、及び電子輸送層を形成する工程の少なくとも1つを含んでよい。電子輸送層上に他の層を形成する工程は、さらなる電子輸送層を形成する工程、第2電極層を形成する工程、及びグリッド電極を形成する工程の少なくとも1つを含んでよい。
【0098】
本実施形態に係る太陽電池の製造方法は、少なくとも、第1電極層を形成する工程、光吸収層を形成する工程、上記の電子輸送層形成工程、及び第2電極層を形成する工程をこの順に含んでいてよい。
【0099】
以下、適宜、
図1及び2を参照しながら、本実施形態に係る太陽電池の製造方法に含まれ得る各工程について詳説する。
【0100】
(第1電極層形成工程)
第1電極層形成工程では、例えば、基板107上に第1電極層101を形成してもよい。第1電極層101を形成する手法としては、ドライプロセス及びウェットプロセスが挙げられるが、ドライプロセスが好ましい。ドライプロセスとしては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング法により、金属導電層である第1電極層101を形成する手法が挙げられる。スパッタリング法の成膜条件としては、特に限定されないが、例えば、印加電力:1.0~3.0W/cm2、成膜雰囲気:アルゴン雰囲気、成膜圧力:0.5~3.0Paとしてもよい。また、スパッタリング中は雰囲気の温度及び被スパッタ基板の温度は制御されなくてもよい。なお、被スパッタ基板とは、スパッタリングを行う際のステージ上の基板であって、スパッタリングターゲット由来の化合物がその上に積層する、基板のことである。第1電極層形成工程においては、例えば、基板107を被スパッタ基板としてもよい。
【0101】
(正孔輸送層形成工程)
正孔輸送層形成工程では、例えば、第1電極層101上に正孔輸送層102を形成してもよい。正孔輸送層102を形成する手法としては、ドライプロセス及びウェットプロセスが挙げられるが、ドライプロセスが好ましい。ドライプロセスとしては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング法により、有機化合物又は無機化合物を含むp型半導体である正孔輸送層102を形成する手法が挙げられる。スパッタリング法の成膜条件としては、特に限定されないが、例えば、印加電力:0.5~3.0W/cm2、成膜雰囲気:アルゴン雰囲気、成膜圧力:0.5~3.0Paとしてもよい。また、スパッタリング中は雰囲気の温度及び被スパッタ基板の温度は制御されなくてもよい。また、光吸収層103を形成する際に、第1電極層101の元素と、光吸収層103に含まれる元素との化合物を形成し、第1電極層101と光吸収層103の間に、正孔輸送層102を形成する方法でもよい。
【0102】
(光吸収層形成工程)
光吸収層形成工程では、例えば、正孔輸送層102上に光吸収層103を形成してもよい。正孔輸送層102を有しない場合は、第1電極層101上に光吸収層103を形成してもよい。光吸収層103を形成する手法としては、ドライプロセス及びウェットプロセスが挙げられるが、ドライプロセスが好ましい。ドライプロセスとしては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング法により、ペロブスカイト化合物、カルコパイライト化合物又はケステライト化合物を含む光吸収層103を形成する手法が挙げられる。スパッタリング法の成膜条件としては、特に限定されないが、例えば、印加電力:0.5~3.0W/cm2、成膜雰囲気:アルゴン雰囲気、成膜圧力:0.5~3.0Paとしてもよい。また、スパッタリング中は雰囲気の温度及び被スパッタ基板の温度は制御されなくてもよい。また、スパッタ後に、窒素またはセレン及び硫黄雰囲気中で、350℃以上650℃以下でアニールしてもよい。
【0103】
光吸収層103がアルカリ金属元素を含むとき、光吸収層形成工程は、アルカリ金属元素が添加されたスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング法により、ペロブスカイト化合物、カルコパイライト化合物又はケステライト化合物を含む光吸収層103を形成することが好ましい。また、基板107又は第1電極層101にアルカリ金属元素を添加しておき、光吸収層103形成時に、光吸収層103にアルカリ金属元素を熱拡散させる方法でもよい。
【0104】
(追加の電子輸送層形成工程)
本実施形態に係る太陽電池の製造方法は、上記の電子輸送層形成工程に加えて、追加の電子輸送層形成工程を含んでいてよい。追加の電子輸送層形成工程を含む場合、
図2に示すような、第1電子輸送層201及び第2電子輸送層202を含む太陽電池200を形成することができる。追加の電子輸送層形成工程は、上記の電子輸送層形成工程と同様に、酸素源及び水素源を含むガスを供給しながらスパッタリング法によりn型酸化物半導体を成膜することで、光吸収層を含む基材上に電子輸送層を形成する工程であってもよいし、上記の電子輸送層形成工程とは異なる方法で電子輸送層を形成する工程であってもよい。
【0105】
追加の電子輸送層形成工程では、例えば、光吸収層103上に第1電子輸送層201を形成してもよく、上記の電子輸送層形成工程において形成された第1電子輸送層201上に第2電子輸送層202を形成してもよい。
【0106】
上記の電子輸送層形成工程とは異なる方法で電子輸送層を形成する工程としては、水素源を含まないガスを供給しながらスパッタリング法によりn型酸化物半導体を成膜する工程、及びスパッタリング法以外の方法によりn型酸化物半導体を成膜する工程が挙げられる。
【0107】
スパッタリング法の成膜条件としては、特に限定されないが、例えば、印加電力:0.5~3.0W/cm2、成膜雰囲気:酸素を含み得るアルゴン雰囲気、成膜圧力:0.5~3.0Paとしてもよい。また、スパッタリング中は雰囲気の温度は制御されなくてもよい。スパッタリング中において、被スパッタ基板を加熱することが好ましい。その他のスパッタリングの条件は、上記の電子輸送層形成工程を参照してよい。
【0108】
スパッタリング法以外の方法によりn型酸化物半導体を成膜する工程としては、化学溶液堆積法及び原子層積層法が挙げられる。これらの方法は、従来公知である。
【0109】
(第2電極層形成工程)
第2電極層形成工程では、例えば、電子輸送層104又は第2電子輸送層202上に第2電極層105を形成してもよい。第2電極層105を形成する手法としては、ドライプロセス及びウェットプロセスが挙げられるが、ドライプロセスが好ましい。ドライプロセスとしては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング法により、透明電極層である第2電極層105を形成する手法が挙げられる。スパッタリング法の成膜条件としては、特に限定されないが、例えば、印加電力:0.5~3.0W/cm2、成膜雰囲気:アルゴン雰囲気、成膜圧力:0.5~3.0Paとしてもよい。また、スパッタリング中は雰囲気の温度及び被スパッタ基板の温度は制御されなくてもよい。
【0110】
(グリッド電極形成工程)
グリッド電極形成工程では、例えば、第2電極層105上にグリッド電極106を形成してもよい。グリッド電極106を形成する手法としては、ドライプロセス及びウェットプロセスが挙げられる。具体的には、例えば、スパッタリング法や蒸着法、ペースト状の導電材料を第2電極層105上に印刷する手法、または導電性ワイヤーを圧着する方法が挙げられる。
【0111】
[太陽電池の使用方法]
本実施形態の太陽電池は、従来の太陽電池と同様に、太陽電池の温度が45~85℃程度となる、通常の温度環境下で用いることができる。また、本実施形態の太陽電池は、従来の太陽電池とは異なり、太陽電池の温度が85℃を超えるような、高温の温度環境下(例えば、宇宙、成層圏、砂漠、熱帯、ビルの屋上、自動車のルーフ、飛行機の外壁上等)でも好適に用いることができる。
【0112】
また、本実施形態の太陽電池は、街灯、センサー、デジタルサイネージ等に用いる独立電源デバイスとして用いることができる。また、本実施形態の太陽電池は、モバイルエネルギーデバイスとしても用いることができる。
【0113】
[付記]
本開示の実施形態は、以下の態様を含む。
[1]
酸素源及び水素源を含むガスを供給しながらスパッタリング法によりn型酸化物半導体を成膜することで、光吸収層を含む基材上に電子輸送層を形成する工程を含む、
太陽電池の製造方法。
[2]
前記製造される太陽電池の標準試験条件下における開放電圧が、前記電子輸送層を形成する工程に代えて化学溶液堆積法を用いてn型酸化物半導体である電子輸送層を形成した太陽電池と比較して、70%以上、好ましくは80%以上である、
[1]に記載の製造方法。
[3]
前記基材は、最表層に前記光吸収層、又は前記n型酸化物半導体とは異なる材料からなる第2の電子輸送層を有する、
[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]
前記基材は、最表層に前記光吸収層を有し、
前記光吸収層が、カルコパイライト化合物、ケステライト化合物、又はペロブスカイト化合物を含む、
[1]~[3]のいずれか1つに記載の製造方法。
[5]
前記工程において供給される前記ガス中の酸素源の濃度が、酸素分子換算で、0.12体積%以上2.0体積%以下、好ましくは0.8体積%以上1.6体積%以下である、
[1]~[4]のいずれか1つに記載の製造方法。
[6]
前記工程において供給される前記ガス中に含まれる、酸素元素に対する水素元素のモル比が0.60倍以上4.0倍以下、好ましくは1.0倍以上2.0倍以下である、
[1]~[5]のいずれか1つに記載の製造方法。
[7]
前記n型酸化物半導体は、バンドギャップが3.3eV以上であり、かつ、キャリア濃度が1.0×1020cm-3以下の酸化物半導体である、
[1]~[6]のいずれか1つに記載の製造方法。
[8]
前記n型酸化物半導体が、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化硫化亜鉛、酸化マグネシウム亜鉛、酸化スズ亜鉛、又は酸化チタン亜鉛である、
[7]に記載の製造方法。
[9]
前記n型酸化物半導体が、酸化チタン亜鉛であり、
前記成膜は、4.0質量%以上20質量%以下の酸化チタンを含む、酸化亜鉛と酸化チタンとの混合物をスパッタリングターゲットに用いて実施される、
[1]~[8]のいずれか1つに記載の製造方法。
[10]
前記成膜は、前記基材を100℃以上200℃以下に加熱しながら実施される、
[9]に記載の製造方法。
[11]
第1電極層と、
光吸収層と、
水素元素が添加されたn型酸化物半導体である電子輸送層と、
第2電極層と、をこの順に、少なくとも備える、
太陽電池。
[12]
前記電子輸送層が、前記光吸収層上に設けられている、
[11]に記載の太陽電池。
[13]
前記光吸収層及び前記第2電極層の間に、水素元素が添加されたn型酸化物半導体である前記電子輸送層とは異なる材料からなる第2の電子輸送層をさらに備える、
[11]に記載の太陽電池。
[14]
前記第2の電子輸送層が、前記光吸収層と水素元素が添加されたn型酸化物半導体である前記電子輸送層との間に設けられている、
[13]に記載の太陽電池。
[15]
前記光吸収層が、カルコパイライト化合物、ケステライト化合物、又はペロブスカイト化合物を含む、
[11]~[14]のいずれか1つに記載の太陽電池。
[16]
前記n型酸化物半導体は、バンドギャップが3.3eV以上であり、かつ、キャリア濃度が1.0×1020cm-3以下の酸化物半導体である、
[11]~[15]のいずれか1つに記載の太陽電池。
[17]
前記n型酸化物半導体が、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化硫化亜鉛、酸化マグネシウム亜鉛、酸化スズ亜鉛、又は酸化チタン亜鉛である、
[16]に記載の太陽電池。
【実施例】
【0114】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0115】
[実施例1]
(太陽電池の作製方法)
図1に示すような、電子輸送層が1層である太陽電池を作製した。基板107として、厚さ50μmのチタン箔を用いた。この基板107上に、スパッタリング法を用いて、金属モリブデンを含む第1電極層101を厚さ600nmで形成した。
【0116】
次に、第1電極層101上に、スパッタリング法を用いて、アルカリ金属元素であるナトリウム元素及びカリウム元素、並びにCIGSS化合物を含む光吸収層103を厚さ2μmで形成した。また、光吸収層103を形成する際に、第1電極層101と光吸収層103の間に、セレン化モリブデンを含む正孔輸送層102を厚さ50nmで形成した。
【0117】
次に、光吸収層103上に、スパッタリング法を用いて、水素元素が添加され、チタン元素が添加された酸化亜鉛を含むn型酸化物半導体である電子輸送層104を厚さ100nmで形成した。スパッタリング法の条件は、以下のとおりとした。
スパッタリングターゲット:酸化亜鉛と酸化チタンの混合物(酸化チタンが14質量%となるようにした。)
成膜雰囲気:アルゴン・水素ガス・酸素ガス雰囲気(供給した混合ガスにおける酸素ガスの体積濃度について、0.12体積%~1.6体積%の複数の条件でスパッタリングを実施した。また、酸素ガスに対する水素ガスの体積比について、0.67~4.0の複数の条件でスパッタリングを実施した。)
成膜時の被スパッタ基板の加熱温度:160℃
【0118】
なお、供給した混合ガスにおける水素ガスの体積濃度が1.6体積%、酸素ガスの体積濃度が1.2体積%である条件で成膜した電子輸送層104中の水素元素量を、RBS/HFS法により測定したところ、全ての金属元素に対する水素元素のモル比が0.011であった。
【0119】
次に、電子輸送層104上に、スパッタリング法を用いて、水素含有酸化インジウム(IOH)を含む透明電極層である第2電極層105を厚さ300nmで形成した。
【0120】
(成膜ダメージの推定)
まず、対照例の太陽電池を作製した。実施例1と同様にして、基板上に第1電極層、光吸収層まで形成した。その後、化学溶液堆積法を用いてチタン元素が添加された酸化亜鉛を含むn型酸化物半導体である電子輸送層を厚さ100nmで、光吸収層上に形成した。その後、電子輸送層上に、第2電極層を形成した。第2電極層の形成方法は、実施例1と同様とした。
【0121】
化学溶液堆積法による、電子輸送層の形成は、以下のように行った。すなわち、硫酸カドミウム、チオ尿素、及びアンモニアを含む水溶液をビーカーに入れた後、この溶液中に光吸収層の表面を浸漬したうえで、水溶液を室温から徐々に温めながら、n型酸化物半導体である電子輸送層を形成した。
【0122】
次に、対照例の太陽電池及び実施例1の各条件で作製した太陽電池の開放電圧(V
oc)を測定した。開放電圧はI-V曲線から求めることができる。具体的には、I-V曲線と、グラフ上のx軸(電圧軸)との交点がV
ocである。I-V曲線は、太陽電池の標準試験条件下(分光スペクトルAM1.5の光を放射照度1kW/m
2で入射し太陽電池温度が25℃である試験条件)で測定した。実施例1の各条件で作製した太陽電池の開放電圧を、対照例の太陽電池の開放電圧で割った値を開放電圧維持率として算出した。スパッタリング工程で供給した混合ガスにおける酸素ガスの体積濃度と、水素ガスに対する酸素ガスの体積比と、開放電圧維持率との関係を表1に示す。表1中、太字及び下線で強調した値が、実測値であり、その他の値は、少なくとも2つの隣接する値の平均値である。また、表1に基づいて線形補間により作成したグラフを
図3に示す。以下の実施例2及び3では、水素ガスの体積濃度が1.6体積%、酸素ガスの体積濃度が1.2体積%である条件(酸素ガスに対する水素ガスの体積比は、1.3)を採用した。
【0123】
【0124】
[実施例2]
(太陽電池の作製方法)
実施例1の太陽電池の作製方法において、チタン元素が添加された酸化亜鉛を含むn型酸化物半導体である電子輸送層の厚さ、スパッタリングターゲットの酸化チタンの割合、成膜時の被スパッタ基板の加熱温度を変更することで、複数の太陽電池を作製した(各条件は以下の表2-3を参照。)。
【0125】
(変換効率)
まず、対照例の太陽電池を作製した。対照例の太陽電池は、電子輸送層以外は、実施例1の太陽電池と同様に作製した。対照例の太陽電池において、電子輸送層として、光吸収層上に、化学溶液堆積法を用いて、硫化カドミウムを含むn型半導体を厚さ70nmで形成した。
【0126】
次に、実施例2の太陽電池、及び対照例の太陽電池について、変換効率を測定した。I-V曲線を、太陽電池の標準試験条件下(分光スペクトルAM1.5の光を放射照度1kW/m2で入射し太陽電池温度が25℃である試験条件)で測定した。各太陽電池の変換効率を以下の式により算出した。なお、変換効率は、I-V曲線における最適動作点での出力(最大出力:Pmax)を太陽電池が受ける光エネルギーEで除した値である。
変換効率(%)=Pmax÷E×100
【0127】
実施例2の各条件で作製した太陽電池の変換効率を、対照例の太陽電池の変換効率で割った値を変換効率比として算出した。チタン元素が添加された酸化亜鉛を含むn型酸化物半導体である電子輸送層の厚さ、スパッタリングターゲットの酸化チタンの割合、又は成膜時の被スパッタ基板の加熱温度と、変換効率比との関係を以下の表2-3に示す。なお、表中「-」は太陽電池の作製を行っていないことを示す。
【0128】
【0129】
【0130】
[実施例3]
(太陽電池の作製方法)
図2に示すような、電子輸送層が2層である太陽電池を作製した。電子輸送層を2層形成したこと以外は、実施例1と同様にして太陽電池を作製した。
【0131】
電子輸送層の形成は以下のようにした。まず、光吸収層103上に、硫化インジウムを含むn型半導体、又は硫化カドミウムを含むn型半導体である第1電子輸送層201を厚さ30nmで形成した。硫化カドミウムを含むn型半導体は、化学溶液堆積法を用いて形成した。また、硫化インジウムを含むn型半導体は、スパッタリング法を用いて形成した。スパッタリング法の条件は、以下のとおりとした。
スパッタリングターゲット:硫化インジウム
成膜雰囲気:アルゴン雰囲気
成膜時の被スパッタ基板の加熱温度:200℃
【0132】
次に、第1電子輸送層201上に、スパッタリング法を用いて、水素元素が添加され、チタン元素が添加された酸化亜鉛を含むn型酸化物半導体である第2電子輸送層202を形成した。n型酸化物半導体(第2電子輸送層202)の厚さ、スパッタリングターゲットの酸化チタンの割合、及び/又は成膜時の被スパッタ基板の加熱温度を以下の表4-5の各値に変更したこと以外は、実施例1における電子輸送層と同様にして第2電子輸送層202を形成した。
【0133】
各条件で作製した太陽電池について、実施例2と同様にして、変換効率を測定した。また、同様に、硫化カドミウムを含むn型半導体である電子輸送層を備える対照例の太陽電池に対する変換効率比を算出した。結果を以下の表4-5に示す。なお、表中「-」は太陽電池の作製を行っていないことを示し、「RT」は室温であることを示す。
【0134】
【0135】
【符号の説明】
【0136】
100,200…太陽電池、101…第1電極層、102…正孔輸送層、103…光吸収層、104…電子輸送層、105…第2電極層、106…グリッド電極、107…基板、201…第1電子輸送層、202…第2電子輸送層。
【要約】
【課題】高性能と高生産性とを両立した太陽電池の製造方法及び太陽電池を提供すること。
【解決手段】酸素源及び水素源を含むガスを供給しながらスパッタリング法によりn型酸化物半導体を成膜することで、光吸収層を含む基材上に電子輸送層を形成する工程を含む、太陽電池の製造方法。
【選択図】
図1