(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】交通反射鏡及びその防曇方法
(51)【国際特許分類】
E01F 9/619 20160101AFI20240614BHJP
【FI】
E01F9/619
(21)【出願番号】P 2020171728
(22)【出願日】2020-10-12
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】596098254
【氏名又は名称】谷口商会株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】393015139
【氏名又は名称】株式会社テクノ21
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 勝正
(72)【発明者】
【氏名】谷口 亀三郎
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-194210(JP,U)
【文献】特開2016-194880(JP,A)
【文献】登録実用新案第3001059(JP,U)
【文献】登録実用新案第3161877(JP,U)
【文献】実開昭63-072698(JP,U)
【文献】実開昭54-093386(JP,U)
【文献】特開平11-172638(JP,A)
【文献】特開2007-092500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/619
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡板と、
鏡板の背面側に設けられた鏡板用蓄熱材と、
鏡板の前方上側を覆う上側庇部と、
上側庇部に連続して設けられ、鏡板の前方左側を覆う左側庇部と、
上側庇部に連続して設けられ、鏡板の前方右側を覆う右側庇部と、
上側庇部に設けられた庇用蓄熱材と
を備え
、
上側庇部、左側庇部及び右側庇部の前後幅W
1
が20cm以上であり、
左側庇部及び右側庇部の縦方向の長さW
2
が、鏡板の縦方向の長さの70%以上であり、
上側庇部が、上側庇部の概形を形成する上側庇部本体と、上側庇部本体の内側面に取り付けられた上側庇部カバー体とを有し、
庇用蓄熱材が、上側庇部本体と上側庇部カバー体との間に収容された
交通反射鏡。
【請求項2】
庇用蓄熱材が、左側庇部と右側庇部にも設けられた請求項1記載の交通反射鏡。
【請求項3】
上側庇部の面積における、庇用蓄熱材が設けられた領域の面積が占める割合が、30%以上とされた請求項1
又は2記載の交通反射鏡。
【請求項4】
遠赤外線を発する遠赤外線放射物質が、庇用蓄熱材に混合された請求項1~
3いずれか記載の交通反射鏡。
【請求項5】
遠赤外線を発する遠赤外線シートが、上側庇部の内面側に設けられた請求項1~
4いずれか記載の交通反射鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線路や道路の脇に設置される交通反射鏡に関する。本発明はまた、交通反射鏡の防曇方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
線路や道路等における見通しの悪い箇所には、目視による安全確認を補助するための交通反射鏡が設置されることがある。しかし、従来の交通反射鏡は、特に朝方に、反射鏡の鏡面が結露して曇ってしまい、目視確認がしにくくなるという問題を有していた。すなわち、夜間になると、外気温が低下するとともに、放射冷却によって鏡面の温度が外気温よりもさらに低い状態となる。そして、その後朝になり、外気温が上昇すると、鏡面の温度と外気温との差が大きく開くため、外気中の水蒸気が鏡面上で結露して反射鏡が曇るという問題である。
【0003】
このような状況に鑑みて、これまでには、防曇機能を備えた種々の交通反射鏡が提案されている。例えば、特許文献1の
図1には、ミラー1と枠体7との間に熱線2が配線された安全確認用ミラーAが記載されている。この安全確認用ミラーAでは、熱線2に電流を流すことで熱を発生させ、ミラー1の温度を上昇させることによって、ミラー1に結露が発生しにくくすることができるとされている。熱線2に流す電流は、支柱6の上部に設けられた太陽電池部3によって供給される。
【0004】
また、特許文献2の
図1には、鏡面板1と、鏡面板1の裏側に設けられた裏板2とを備え、鏡面板1と裏板2との間隙における鏡面板1のすぐ裏側に、容器4に入れたゲル状の蓄熱剤5を設けた道路反射鏡が記載されている。この道路反射鏡では、昼間の気温の高い時間に蓄熱剤5に蓄えられた熱エネルギーが、夜間から朝にかけてゆっくりと放出されることにより、鏡面板1が裏側から温められて、鏡面板1に結露が発生しにくくすることができるとされている。
【0005】
ところが、特許文献1に記載の安全確認用ミラーAは、熱線2に流すための電力を必要とするため、太陽電池部3を併設する必要があり、設置コストが高くなるという問題を有していた。また、故障が起こりやすく、メンテナンスの手間がかかるという問題も有していた。この点、特許文献2に記載の道路反射鏡は、シンプルな構成を採用しており、電力も必要としないため、低コストで設置でき、メンテナンスも簡単であるという点で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-172638号公報
【文献】特開2007-092500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に記載の道路反射鏡では、比較的温暖な地域に設置した場合には充分な防曇効果が奏されるものの、寒冷地や高地等、夜間の外気温が非常に低くなる地域に設置した場合には、充分な防曇効果が奏されにくかった。というのも、蓄熱剤5に蓄えることができる熱エネルギーの量は、蓄熱剤5の量に略比例するところ、同文献に記載の道路反射鏡では、鏡面板1と裏板2との間隙に蓄熱剤5を設けているため、寒冷地等において鏡面板1を充分に温めることができる量の蓄熱剤5を設けることが難しかったからである。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、低コストで設置でき、メンテナンスの手間が少ないことに加えて、寒冷地や高地等に設置した際にも高い防曇機能を発揮することができる交通反射鏡を提供するものである。また、この交通反射鏡で採用することができる交通反射鏡の防曇方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、
鏡板と、
鏡板の背面側に設けられた鏡板用蓄熱材と、
鏡板の前方上側を覆う上側庇部と、
上側庇部に設けられた庇用蓄熱材と
を備えた交通反射鏡
を提供することによって解決される。
【0010】
本発明の交通反射鏡においては、鏡板の背面側だけでなく、上側庇部にも蓄熱材を設けている。これにより、寒冷地や高地等に設置した場合であっても、充分な熱量を確保しているため鏡板をしっかりと温めることができ、鏡板に結露が発生しにくくすることができる。また、本発明の交通反射鏡は、電力を必要としないため、低コストで設置することができ、メンテナンスの手間も少なくすることができる。なお、鏡板用蓄熱材と庇用蓄熱材とは、同じ種類の蓄熱材であってもよいし、異なる種類の蓄熱材であってもよい。
【0011】
本発明の交通反射鏡においては、上側庇部に連続して設けられ、鏡板の前方左側を覆う左側庇部と、上側庇部に連続して設けられ、鏡板の前方右側を覆う右側庇部とをさらに備えるとともに、庇用蓄熱材を、左側庇部と右側庇部にも設けると好ましい。これにより、上側庇部、左側庇部及び右側庇部で鏡板を3方向から囲って、鏡板をしっかりと温めることができる。
【0012】
本発明の交通反射鏡においては、上側庇部におけるどの箇所に庇用蓄熱材を設けてもよい。本発明においては、上側庇部を、上側庇部の概形を形成する上側庇部本体と、上側庇部本体の内側面(上側庇部本体の外面における、鏡板に近い側の面。以下同じ。)に取り付けられた上側庇部カバー体とで構成し、庇用蓄熱材を、上側庇部本体と上側庇部カバー体との間に収容すると好ましい。これにより、庇用蓄熱材を鏡板に近い箇所に配することができ、よりしっかりと鏡板を温めることができる。また、上側庇部本体から上側庇部カバー体を取り外すことで、庇用蓄熱材の交換等を簡単に行うことができるため、メンテナンスの手間をより少なくすることもできる。本発明の交通反射鏡を、上側庇部だけでなく、上記の左側庇部や右側庇部も備えたものとする場合には、左側庇部や右側庇部においても同様の構成を採用することができる。すなわち、左側庇部を、左側庇部の概形を形成する左側庇部本体と、左側庇部本体の内側面に取り付けられた左側庇部カバー体とで構成するとともに、右側庇部を、右側庇部の概形を形成する右側庇部本体と、右側庇部本体の内側面に取り付けられた右側庇部カバー体とで構成し、左側庇部本体と左側庇部カバー体との間、及び、右側庇部本体と右側庇部カバー体との間にも庇用蓄熱材を収容する構成を採用することができる。
【0013】
本発明の交通反射鏡において、上側庇部の大きさや庇用蓄熱材の大きさは、特に限定されない。しかし、上側庇部や庇用蓄熱材が小さすぎると、鏡板を充分に温めることができないおそれがある。このため、本発明においては、上側庇部の前後幅を10cm以上とし、上側庇部の面積における、庇用蓄熱材が設けられた領域の面積が占める割合(上側庇部全体のうち、厚み方向におけるいずれかの箇所に庇用蓄熱材が設けられている領域の占める割合)を、30%以上とすると好ましい。これにより、鏡板をしっかりと温めることができる。本発明の交通反射鏡を、上側庇部だけでなく、上記の左側庇部や右側庇部も備えたものとする場合には、左側庇部や右側庇部においても同様の構成を採用することができる。
【0014】
本発明の交通反射鏡においては、遠赤外線を発する遠赤外線放射物質を、庇用蓄熱材に混合することも好ましい。これにより、鏡板をより効果的に温めることができる。
【0015】
本発明の交通反射鏡においては、遠赤外線を発する遠赤外線シートを上側庇部の内側面に設けることも好ましい。これにより、鏡板をより強力に温めることができる。本発明の交通反射鏡を、上側庇部だけでなく、上記の左側庇部や右側庇部も備えたものとする場合には、左側庇部や右側庇部においても同様の構成を採用することができる。
【0016】
上記課題は、また、
交通反射鏡における鏡板の背面側に鏡板用蓄熱材を配するとともに、
鏡板の前方上側を覆う上側庇部に庇用蓄熱材を配する
ことを特徴とする交通反射鏡の防曇方法
を提供することによっても解決される。
【0017】
この防曇方法は、上述した本発明の交通反射鏡を用いて好適に実施することができる。この防曇方法によって、寒冷地や高地等に設置した交通反射鏡の鏡面の曇りを防止又は軽減することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によって、低コストで設置でき、メンテナンスの手間が少ないことに加えて、寒冷地や高地等に設置した際にも高い防曇機能を発揮することができる交通反射鏡を提供することが可能になる。また、この交通反射鏡で採用することができる交通反射鏡の防曇方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】
図1と同様の斜視図であって、上側庇部本体、左側庇部本体及び右側庇部本体を透明な状態で示した図である。
【
図3】
図1の交通反射鏡を、同図におけるA-A平面で切断して示した断面図である。
【
図4】
図1の交通反射鏡における上側庇部カバー体を取り出して示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。
図1は、本発明の交通反射鏡1の斜視図である。
図2は、
図1と同様の斜視図であって、上側庇部本体21、左側庇部本体31及び右側庇部本体41を透明な状態で示した図である。
図3は、
図1の交通反射鏡1を、同図におけるA-A平面で切断して示した断面図である。
【0021】
本実施形態の交通反射鏡1は、
図1に示すように、鏡板10と、鏡板10の前方上側を覆う上側庇部20と、鏡板10の前方左側を覆う左側庇部30と、鏡板10の前方右側を覆う右側庇部40とを備えている。鏡板10の背面側には、上述した特許文献2に記載の道路反射鏡と同様に、鏡板用蓄熱材(図示省略)が設けられている。上側庇部20は、
図2及び
図3に示すように、上側庇部本体21と、上側庇部本体21の内側面に取り付けられた上側庇部カバー体22とで構成されており、上側庇部本体21と上側庇部カバー体22との間には上側庇用蓄熱材23が収容されている。また、左側庇部30は、左側庇部本体31と、左側庇部本体31の内側面に取り付けられた左側庇部カバー体32とで構成されており、左側庇部本体31と左側庇部カバー体32との間には左側庇用蓄熱材33が収容されている。さらに、右側庇部40は、右側庇部本体41と、右側庇部本体41の内側面に取り付けられた右側庇部カバー体42とで構成されており、右側庇部本体41と右側庇部カバー体42との間には右側庇用蓄熱材43が収容されている。
【0022】
本実施形態の交通反射鏡1は、寒冷地や高地等に設置した際にも、高い防曇機能を発揮することができる。すなわち、鏡板用蓄熱材(図示省略)に加えて、庇部(上側庇部20、左側庇部30及び右側庇部40)にも庇用蓄熱材(上側庇用蓄熱材23、左側庇用蓄熱材33及び右側庇用蓄熱材43)を設けたことで、鏡板10を背面側からだけでなく前面側からも温めることができる。このため、寒冷地等において外気温が非常に低くなったとしても、鏡板10に結露が発生しにくくすることができる。本発明においては、上側庇部20だけを設けるようにしてもよいが、本実施形態においては、上側庇部20に加えて左側庇部30と右側庇部40も設けている。これにより、鏡板10の前面側を3方向から囲って、暖められた鏡板10周辺の空気が外部に逃げにくくしている。さらに、上側庇部20だけでなく左側庇部30と右側庇部40にも庇用蓄熱材を設けることで、鏡板10をよりしっかりと温めることができるようになっている。
【0023】
本発明の交通反射鏡1において、上側庇用蓄熱材23を上側庇部20に対してどのようにして取り付けるかは、上側庇部20の形状や庇用蓄熱材の種類等によって適宜決定される。上側庇用蓄熱材23は、例えば、露出した状態で上側庇部20に取り付けるようにしてもよいが、本実施形態においては、既に述べたように、上側庇部本体21と、上側庇部本体21の内側面に取り付けた上側庇部カバー体22との間に上側庇用蓄熱材23を収容している。
【0024】
図4は、
図1の交通反射鏡1における上側庇部カバー体22を取り出して示した斜視図である。本実施形態においては、上側庇部カバー体22を、
図4に示すように、矩形状を為す底壁部22aと、底壁部22aの各辺部から立ち上がる4つの立ち上がり壁部22bとを有する薄型箱状(トレー状)に形成している。4つの立ち上がり壁部22bのうち、前側の立ち上がり壁部22bと後ろ側の立ち上がり壁部22bの先端縁には、それぞれ、フランジ状の取付部22cを設けている。
【0025】
本実施形態においては、
図2に示すように、この箱状の上側庇部カバー体22の内部に上側庇用蓄熱材23を収容した状態で、取付部22c(
図4)を上側庇部本体21の内側面にビス留めすることによって、上側庇部カバー体22を上側庇部本体21に取り付けている。これにより、上側庇用蓄熱材23を上側庇部本体21と上側庇部カバー体22とで覆って、長期間の使用に耐えうるように固定している。上側庇部カバー体22は、上側庇用蓄熱材23の一部を覆うものであってもよいが、本実施形態においては、上側庇用蓄熱材23の全体を覆うものとしている。左側庇部カバー体32及び右側庇部カバー体42についても、上側庇部カバー体22と同様に、矩形状の底壁部の周部から立ち上がる4つの立ち上がり壁部の先端縁にフランジ状の取付部を設けた形態としている。
【0026】
上側庇部カバー体22、左側庇部カバー体32及び右側庇部カバー体42の素材は、特に限定されず、樹脂や木やゴム等であってもよいが、金属を採用すると好ましい。本実施形態においては、上側庇部カバー体22、左側庇部カバー体32及び右側庇部カバー体42をステンレスで形成している。また、図には示していないが、上側庇部カバー体22、左側庇部カバー体32及び右側庇部カバー体42内に収容された庇用蓄熱材23,33,43の周りに断熱材を設けることも好ましい。
【0027】
本発明の交通反射鏡1において、上側庇部20の大きさは特に限定されない。しかし、上側庇部20が小さすぎると、必然的に上側庇用蓄熱材23が小さくなって、鏡板10を充分に温めることができないおそれがある。このため、上側庇部20の前後幅W
1(
図1を参照。)は、10cm以上とすると好ましく、20cm以上とするとより好ましい。しかし、上側庇部20が大きすぎると、積雪地域等に設置する場合に、上側庇部20が雪の重みに耐えられなくなるおそれがある。このため、上側庇部20の前後幅W
1は、50cm以下とすると好ましく、40cm以下とするとより好ましい。本実施形態においては、上側庇部20の前後幅W
1を約30cmとしている。左側庇部30の前後幅及び右側庇部40の前後幅についても同様とする。
【0028】
左側庇部30や右側庇部40を設ける場合において、左側庇部30や右側庇部40の長さW
2(
図1を参照。)は、鏡板10の大きさ等によって適宜決定される。しかし、左側庇部30や右側庇部40が短すぎると、必然的に左側庇用蓄熱材33や右側庇用蓄熱材43が小さくなって、鏡板10を充分に温めることができないおそれがある。このため、左側庇部30や右側庇部40の長さW
2は、鏡板10の縦方向の長さの50%以上とすると好ましく、70%以上とするとより好ましい。左側庇部30や右側庇部40の長さW
2は、鏡板10の縦方向の長さよりも長くてもよいが、通常、鏡板10の縦方向の長さと同程度以下とされる。本実施形態においては、鏡板10の縦方向の長さが60cmであるのに対して、左側庇部30及び右側庇部40の長さW
2を55cm程度としている。
【0029】
ところで、本実施形態においては、
図1に示すように、左側庇部30を、鏡板10に対して左方にやや傾斜して設けており、右側庇部40を、鏡板10に対して右方にやや傾斜して設けている。これにより、斜め方向からでも鏡板10を見やすくすることができる。鏡板10に対する左側庇部30の傾斜角度θ(鏡板10に略垂直な方向に対する傾斜角度。以下同じ。)は、5°以上とすると好ましく、10°以上とするとより好ましい。しかし、左側庇部30の傾斜角度θを大きくしすぎると、左側庇部30に設けた左側庇用蓄熱材33が鏡板10から遠ざかってしまい、鏡板10を充分に温めにくくなるおそれがある。このため、鏡板10に対する左側庇部30の傾斜角度θは、30°以下とすると好ましく、20°以下とするとより好ましい。本実施形態においては、鏡板10に対する左側庇部30の傾斜角度θを13°程度としている。鏡板10に対する右側庇部40の傾斜角度についても同様とする。
【0030】
本発明の交通反射鏡1において、上側庇用蓄熱材23の大きさは特に限定されない。しかし、上側庇部20が充分な大きさを有していたとしても、上側庇用蓄熱材23の大きさが不十分であった場合には、鏡板10を充分に温めることができないおそれがある。このため、上側庇部20の面積における、上側庇用蓄熱材23が設けられた領域の面積が占める割合P(庇部全体のうち、厚み方向におけるいずれかの箇所に庇用蓄熱材が設けられている領域の占める割合)を、30%以上とすると好ましい。割合Pは、40%以上とするとより好ましく、50%以上とするとさらに好ましい。割合Pは、100%としてもよいが、本実施形態のように、上側庇部本体21と上側庇部カバー体22との間に上側庇用蓄熱材23を収容する場合には、通常、90%以下とされる。本実施形態における割合Pは、60%程度となっている。左側庇部30の面積における、左側庇用蓄熱材33が設けられた領域の面積が占める割合や、右側庇部40の面積における、右側庇用蓄熱材43が設けられた領域の面積が占める割合についても、同様とする。
【0031】
庇用蓄熱材23,33,43には、種々の添加剤を加えることができる。本実施形態においては、庇用蓄熱材23,33,43に、遠赤外線を放射する遠赤外線放射物質を添加している。遠赤外線は、対象物と離れたところからでもエネルギーを伝えることができ、絶対温度の4乗に比例するエネルギー量を伝えることができる。したがって、遠赤外線放射物質を庇用蓄熱材23,33,43に加えることにより、鏡板10をより効果的に温めることができる。遠赤外線放射物質は、遠赤外線を放射する物質であればその種類を限定されないが、本実施形態においては、粉末状のセラミックスを用いている。遠赤外線放射物質としては、天然の鉱物等を用いてもよい。
【0032】
加えて、本実施形態においては、上側庇部カバー体22の外面22d(底壁部22aにおける、鏡板10に近い側の面。以下同じ。)と、左側庇部カバー体32の外面32dと、右側庇部カバー体42の外面42dとに、それぞれ、遠赤外線を放射する遠赤外線シート(図示省略)を貼り付けている。これにより、鏡板10をよりしっかりと温めることができる。遠赤外線シートを貼り付ける箇所は、上側庇部カバー体22の外面22dや左側庇部カバー体32の外面32dや右側庇部カバー体42の外面42dに限定されず、上側庇部20や左側庇部30や右側庇部40の内側面におけるどの箇所であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 交通反射鏡
10 鏡板
20 上側庇部
21 上側庇部本体
22 上側庇部カバー体
22a 底壁部
22b 立ち上がり壁部
22c 取付部
22d 外面
23 上側庇用蓄熱材
30 左側庇部
31 左側庇部本体
32 左側庇部カバー体
32d 外面
33 左側庇用蓄熱材
40 右側庇部
41 右側庇部本体
42 右側庇部カバー体
42d 外面
43 右側庇用蓄熱材