(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】棒状化粧料容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/20 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
A45D40/20 Z
(21)【出願番号】P 2020091240
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】谷 仁一
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3151931(JP,U)
【文献】中国実用新案第201703135(CN,U)
【文献】再公表特許第2018/110519(JP,A1)
【文献】特開2018-202144(JP,A)
【文献】特開2002-113991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00
B43L 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形状の棒状化粧料を前方に露出させる棒状化粧料容器であって、
前記棒状化粧料を内部に収容すると共に、前記棒状化粧料が露出する開口部を有する先筒
と、
前記先筒の内部であって前記棒状化粧料から見て前記開口部の反対側に位置する化粧料保持部材と、
を備え、
前記先筒の軸線方向に直交する平面で前記棒状化粧料を切断したときの前記棒状化粧料の断面は、前記先筒の径方向外側に突出する複数の突出部
、及び径方向内側に窪む複数の第1凹部を有し、
前記突出部及び前記第1凹部は前記先筒の周方向に沿って交互に並んでおり、
前記突出部が突出する方向である前記突出部の長手方向の長さは、前記突出部の根元部における前記突出部の幅よりも長
く、
前記先筒は、前記先筒の内部に前記棒状化粧料の複数の前記突出部のそれぞれが入り込む複数の第2凹部を有し、
前記第2凹部は、前記開口部と前記化粧料保持部材との間において前記軸線方向に延在しており、
前記化粧料保持部材は、複数の前記突出部の間に入り込んで前記棒状化粧料を保持する保持部を有し、
前記周方向に沿って並ぶ一対の前記第2凹部の間に位置する前記先筒の内面と、一対の前記突出部と、前記第1凹部とによって画成された領域に前記保持部が入り込んでいる、
棒状化粧料容器。
【請求項2】
前記先筒の前記開口部は、複数の前記突出部の間に入り込む突部を有し、
前記先筒の径方向外側から見たときの前記突部の形状は、前方に向かうに従って先細りする鋭角状とされている、
請求項1に記載の棒状化粧料容器。
【請求項3】
前記先筒の前記開口部は、前記棒状化粧料の前記突出部を露出すると共に後方に窪む複数の窪みを有する、
請求項1
または請求項2に記載の棒状化粧料容器。
【請求項4】
前記先筒の軸線方向に直交する平面で前記棒状化粧料を切断したときの前記棒状化粧料の断面は、前記複数の突出部の反対側に突出する幅広突出部を有する、
請求項1~
3のいずれか一項に記載の棒状化粧料容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固形状の棒状化粧料を収容する棒状化粧料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から棒状化粧料容器については種々のものが知られている。特許第3415750号公報には、棒状化粧料繰出容器が記載されている。棒状化粧料繰出容器は、容器本体と、容器本体の内部において軸線方向に移動可能に取り付けられた押し出し棒と、容器本体に脱着自在として装着されるカートリッジとを備える。カートリッジは、先筒として機能する収納筒と、収納筒の内側で軸線方向に移動可能とされたホルダとを有する。
【0003】
ホルダは、棒状化粧料を弾性的に保持する複数の保持片を備える。収納筒は断面が非円形状とされた非円形部を有し、非円形部は前方に向かうに従って横断面が小さくなると共に扁平さを増す楕円形とされている。非円形部の内部には、横断面が楕円形をなす貫通孔が軸線方向に延在している。また、ホルダの横断面形状、及び棒状化粧料の横断面形状は、当該貫通孔の横断面形状と相似形とされている。これにより、収納筒に対するホルダ及び棒状化粧料の回転が防止される。
【0004】
実用新案登録第3151931号公報には、棒状化粧料繰出容器が記載されている。棒状化粧料繰出容器は、本体筒と、本体筒の後端部に回転自在に連結された操作筒と、本体筒の前側に位置する先筒とを備える。本体筒及び操作筒の内部には、棒状化粧料支持体が設けられる。棒状化粧料支持体は、多角形状の棒状化粧料を把持する。
【0005】
棒状化粧料の横断面は、三角形状又は星形状等の多角形状とされている。先筒は、棒状化粧料を露出する開口部を有する。開口部には、先筒の周方向に沿って並ぶ複数の山部及び谷部が形成されており、棒状化粧料の角部は当該谷部に入り込んだ状態で開口部から露出する。開口部からは多角形状の棒状化粧料が露出するので、使用者は棒状化粧料の角の部分で塗布を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3415750号公報
【文献】実用新案登録第3151931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した棒状化粧料繰出容器では、角部を被塗布部に当てることによって細い線を描くことが可能となる。しかしながら、単に角部が設けられるだけでは、描いているうちに角部が比較的早いタイミングで丸くなってくるため、次第に細い線を描けなくなる。従って、角部で細い線を描くためには、繰出を行って頻繁に新たな角部を露出させなければならないので、細い線を容易に描くことができないという問題が生じうる。
【0008】
本開示は、細い線を容易に描くことができる棒状化粧料容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る棒状化粧料容器は、固形状の棒状化粧料を前方に露出させる棒状化粧料容器であって、棒状化粧料を内部に収容すると共に、棒状化粧料が露出する開口部を有する先筒と、先筒の内部であって棒状化粧料から見て開口部の反対側に位置する化粧料保持部材と、を備え、先筒の軸線方向に直交する平面で棒状化粧料を切断したときの棒状化粧料の断面は、先筒の径方向外側に突出する複数の突出部、及び径方向内側に窪む複数の第1凹部を有し、突出部及び第1凹部は先筒の周方向に沿って交互に並んでおり、突出部が突出する方向である突出部の長手方向の長さは、突出部の根元部における突出部の幅よりも長く、先筒は、先筒の内部に棒状化粧料の複数の突出部のそれぞれが入り込む複数の第2凹部を有し、第2凹部は、開口部と化粧料保持部材との間において軸線方向に延在しており、化粧料保持部材は、複数の突出部の間に入り込んで棒状化粧料を保持する保持部を有し、周方向に沿って並ぶ一対の第2凹部の間に位置する先筒の内面と、一対の突出部と、第1凹部とによって画成された領域に保持部が入り込んでいる。
【0010】
この棒状化粧料容器では、先筒の内部に固形状の棒状化粧料が収容されており、棒状化粧料は先筒の開口部から露出する。先筒の軸線方向に直交する平面で棒状化粧料を切断したときの棒状化粧料の断面は、先筒の径方向外側に突出する複数の突出部を有する。棒状化粧料が径方向外側に突出する複数の突出部を有することにより、突出部の先端部を被塗布部に当てることによって細い線を容易に描くことができる。突出部の突出方向の長さは、突出部の根元部の幅よりも長い。従って、突出部の先端部を被塗布部に当てて塗布を継続しても、突出部の先端部の幅を広がりにくくすることができる。よって、使用を継続しても突出部の幅を広がりにくくすることができるので、細い線を描き続けることができる。更に、突出方向の長さが幅方向の長さよりも長い複数の突出部を棒状化粧料が備えることにより、複数の細い線を共に描くことができ、更に棒状化粧料の折損を抑制することができる。
【0011】
先筒の開口部は、複数の突出部の間に入り込む突部を有し、先筒の径方向外側から見たときの突部の形状は、前方に向かうに従って先細りする鋭角状とされていてもよい。この場合、棒状化粧料の複数の突出部の間に入り込む鋭角状の突部が設けられることにより、先筒の開口部において棒状化粧料をより強固に保持することができる。従って、棒状化粧料が折損する可能性をより低減させることができる。
【0012】
前述した棒状化粧料容器では、棒状化粧料の開口部との反対側に位置する化粧料保持部材の保持部が複数の突出部の間に入り込んで棒状化粧料が保持される。よって、先筒の内部の化粧料保持部材によって棒状化粧料をより強固に保持することができるので、棒状化粧料の折損をより確実に抑制することができる。
【0013】
棒状化粧料の突出部が入り込む先筒の凹部が開口部から化粧料保持部材まで軸線方向に沿って延在しているので、開口部から化粧料保持部材までの間で棒状化粧料をより強固に保持することができる。
【0014】
先筒の開口部は、棒状化粧料の突出部を露出すると共に後方に窪む複数の窪みを有してもよい。この場合、先筒の開口部に後方に延びる窪みが設けられることにより、突出部の露出部分の長さを長くすることができる。従って、露出する突出部の先端部の領域を長く確保することができるので、細い線を一層容易に描くことができる。
【0015】
先筒の軸線方向に直交する平面で棒状化粧料を切断したときの棒状化粧料の断面は、複数の突出部の反対側に突出する幅広突出部を有してもよい。この場合、棒状化粧料の断面において、径方向の一方側に複数の突出部が設けられ、径方向の他方側に幅広突出部が設けられる。従って、一方側に突出する複数の突出部によって複数の細い線を容易に描くことができる。また、他方側に突出する幅広突出部によって太い線を容易に描くことができる。従って、複数の細い線を同時に描くことができると共に、太い線を描くことができる。その結果、化粧料の塗布を速やかに行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、細い線を容易に描くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る棒状化粧料容器を示す側面図である。
【
図2】
図1の棒状化粧料容器を
図1とは異なる方向から見た側面図である。
【
図4】
図1の棒状化粧料容器の先筒の断面斜視図である。
【
図5】
図1の棒状化粧料容器の先筒及び棒状化粧料を拡大した斜視図である。
【
図6】(a)は、
図3のB-B線断面図である。(b)は、棒状化粧料の突出部を拡大した断面図である。
【
図7】(a)は、
図1の棒状化粧料容器の化粧料保持部材を示す側面図である。(b)は、(a)の化粧料保持部材を(a)とは異なる方向から見た側面図である。
【
図8】
図7(a)及び
図7(b)の化粧料保持部材を示す斜視図である。
【
図9】(a),(b)及び(c)のそれぞれは、変形例に係る棒状化粧料の図である。
【
図10】第2実施形態に係る棒状化粧料容器を示す側面図である。
【
図13】
図10の棒状化粧料容器の先筒及び棒状化粧料を拡大した斜視図である。
【
図14】
図10の棒状化粧料容器の先筒、棒状化粧料及び化粧料保持部材を示す横断面である。
【
図16】(a),(b)及び(c)のそれぞれは、変形例に係る棒状化粧料を示す図である。
【
図17】更なる変形例に係る先筒及び棒状化粧料を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る棒状化粧料容器の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率及び角度は図面に記載のものに限定されない。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る棒状化粧料容器1を示す側面図である。
図2は、
図1とは異なる方向から棒状化粧料容器1を見た棒状化粧料容器1の側面図である。
図1及び
図2に示されるように、棒状化粧料容器1は、軸線方向D1に沿って延びる棒状を呈する。本開示において、「軸線」とは、棒状化粧料容器の先筒の中心軸を示しており、「軸線方向」とは、棒状化粧料容器の先筒の軸線が延びる方向を示している。「軸線方向」は、例えば、棒状化粧料容器1の長手方向と一致する。
【0020】
棒状化粧料容器1にはキャップが着脱自在となっており、
図1及び
図2は当該キャップを外した状態を示している。棒状化粧料容器1は、先筒2と、中筒3と、容器本体4とを外観構成として備える。以下では、容器本体4から見て先筒2が設けられる方向を「前」とし、先筒2から見て容器本体4が設けられる方向を「後」として説明する。但し、これらの方向は、説明の便宜のためのものであって、方向を限定するものではない。
【0021】
棒状化粧料容器1は、例えば、内部に収容された棒状化粧料Mを繰り出す(押し出す)ペンシルである。先筒2は、軸線方向D1に延びる細長い筒状を呈する。一例として、先筒2は、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの共重合成樹脂)で成形されている。
【0022】
先筒2は、棒状化粧料Mが露出する開口部2cを有する。棒状化粧料Mは、固形状とされており、先筒2の径方向外側に突出する複数の突出部M1を有する。以下では、「先筒2の軸線と直交する径方向」を単に「径方向」と称することがある。本実施形態において、棒状化粧料Mはアイブロウであってもよく、この場合、棒状化粧料容器1はアイブロウ繰出容器である。
【0023】
開口部2cは、複数の突出部M1の間に入り込む突部2dと、後方に窪む窪み2fとを有する。径方向外側から見たときの突部2dの形状は、前方に向かうに従って先細りする鋭角状とされている。窪み2fは、棒状化粧料Mの突出部M1を露出する部位に相当する。棒状化粧料M及び先筒2の形状については後に詳述する。
【0024】
中筒3は、例えば、POM(ポリアセタール)で成形されると共に、略円筒状に形成されている。中筒3は、先筒2の後側において先筒2に軸線方向D1に沿って係合する。中筒3は、軸線方向D1に延びる外周面3bと、外周面3bの前側に位置する傾斜面3cと、外周面3bにおいて突出する第1凸部3dと、外周面3bの第1凸部3dよりも前方において突出する第2凸部3fとを有する。
【0025】
傾斜面3cは、前方に向かうに従って中筒3が縮径するように傾斜するテーパ面である。例えば、中筒3は、複数の第1凸部3d、及び複数の第2凸部3fを備える。一例として、第1凸部3d及び第2凸部3fの数は各々3である。例えば、3つの第1凸部3dは中筒3の周方向に沿って等間隔に配置されており、3つの第2凸部3fは中筒3の周方向に沿って等間隔に配置されている。中筒3の径方向外側から見た第1凸部3dの形状は、例えば、円形状であり、中筒3の径方向外側から見た第2凸部3fの形状は軸線方向D1に沿って延びる直線状とされている。第1凸部3d及び第2凸部3fには、先筒2を覆う前述したキャップが係合する。
【0026】
図3は、
図1のA-A線断面図である。
図3に示されるように、棒状化粧料容器1は、前述した容器前部を構成する先筒2と、中筒3と、容器後部を構成する容器本体4と、容器本体4の内部に収容される化粧料保持部材5と、容器本体4の内部において化粧料保持部材5を保持する保持部材6と、を備える。
【0027】
本実施形態において、先筒2、中筒3、化粧料保持部材5及び保持部材6は、棒状化粧料Mを前方に繰り出す繰出機構10を構成する。先筒2は、前述した開口部2c、突部2d及び窪み2fを含む前側筒部2Aと、前側筒部2Aの後方に位置する後側筒部2Bとを含んでいる。
【0028】
前側筒部2Aは棒状化粧料容器1の前方に露出する部位であり、後側筒部2Bは前方から中筒3に挿入される部位である。前側筒部2Aは、前側筒部2Aの後端から先筒2が縮径する方向に延びる段差部2gを有する。前側筒部2Aは、後側筒部2Bに対して段差部2gから拡径すると共に、段差部2gから前方に向かうに従って徐々に縮径している。
【0029】
例えば、段差部2gの後面に中筒3の前端が対向する。後側筒部2Bは、中筒3に挿入される挿入部とされている。先筒2は、段差部2gの後側に位置する後側筒部2Bが中筒3に挿入されることにより、中筒3に軸線方向D1に係合され、且つ中筒3に相対回転可能に係合される。前側筒部2Aの内部には、棒状化粧料Mを収容する収容空間2hが軸線方向D1に沿って延びている。
【0030】
図4に示されるように、収容空間2hには、棒状化粧料Mの複数の突出部M1のそれぞれが入り込む複数の凹部2kが形成されている。複数の凹部2kのそれぞれは先筒2の内面2rに形成されている。また、内面2rの後方には、保持部材6が収容される収容空間2sと、コの字状のスリット2tとが形成されている。スリット2tは、軸線方向D1に延びると共に先筒2の周方向に沿って並ぶ一対の第1孔部2vと、一対の第1孔部2vの前端同士の間において先筒2の周方向に延びる第2孔部2wとを含む。先筒2と中筒3との相対回転のときに、第2孔部2wの外周側と中筒3の内周側とが接触して、スリット2t(第1孔部2v)によってほどよい回転抵抗を発生させることができ、更に、スリット2tは先筒2のがたつきを抑える機能を発揮する。
【0031】
図3及び
図4に示されるように、各凹部2kは、先筒2の開口部2cから、初期位置にある化粧料保持部材5の保持部5Aの後部付近まで軸線方向D1に沿って延在している。複数の凹部2kは、先筒2の周方向に沿って並ぶように配置されている。凹部2kについては後に詳述する。
【0032】
中筒3は、その前端から後端に向かって、前側筒部3A、後側筒部3B及びバネ部3Cをこの順に具備している。前側筒部3Aは、前述した外周面3b、傾斜面3c、第1凸部3d及び第2凸部3fを備える。中筒3のバネ部3Cは、棒状化粧料容器1の落下時等の外力作用時に、内部に伝わる衝撃を緩和して棒状化粧料容器1及び棒状化粧料Mを保護する。また、バネ部3Cは、棒状化粧料Mの前進限においてクラッチ回転を行うときに、保持部材6と容器本体4の突条4bとの回転方向の係合の解除を復帰させる機能を有する。
【0033】
前側筒部3Aと後側筒部3Bとの間には、中筒3の径方向外側に突出すると共に容器本体4の前端に入り込む鍔部3Dが設けられる。後側筒部3Bの外周面には、環状突起3gが設けられる。バネ部3Cは、環状突起3gの後方に設けられる。バネ部3Cは、軸線方向D1に伸縮可能とされている樹脂バネである。バネ部3Cは、本体部3jと、本体部3jの周面に沿って螺旋状に延び且つ本体部3jの内外を連通するスリット3kとによって形成されている。バネ部3Cは、外力が付与されたときに収縮することによって衝撃を緩和する。
【0034】
保持部材6は、例えば、POMで成形されると共に略円筒状に形成されている。保持部材6は、その前端から軸線方向D1に延びる前側筒部6bと、前側筒部6bの後方において拡径する後側筒部6cとを備える。前側筒部6bの内面には、螺合部20の一方を構成する螺旋状の突起6dが形成されている。後側筒部6cは、容器本体4の突条4bと回転方向に係合し、先筒2の後端2jと当接し回転可能に係合されている。
【0035】
化粧料保持部材5は、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)で成形されると共に、丸棒状に形成されている。化粧料保持部材5は、容器本体4の内部において移動する移動体としての機能と、棒状化粧料Mを保持する保持部材としての機能と、を有する。化粧料保持部材5は、棒状化粧料Mを保持する保持部5Aと、保持部5Aから後方に延びる軸体部5Bとを備える。なお、保持部5A及び軸体部5Bは、一体とされていてもよいし、別体とされていてもよい。軸体部5Bの外面には、螺合部20の他方を構成する雄螺子5bが形成されている。
【0036】
以上の棒状化粧料容器1において、先筒2に対して容器本体4を相対回転させると、容器本体4と共に中筒3と保持部材6が同期回転する。このとき、先筒2と化粧料保持部材5は回転方向に係合しているので、化粧料保持部材5と保持部材6とが相対回転する。
【0037】
上記の相対回転により、化粧料保持部材5の雄螺子5bと保持部材6の突起6dとによって構成された螺合部20の螺合作用が働く。当該螺合作用によって保持部材6から化粧料保持部材5が前進し、化粧料保持部材5が先筒2に対して摺動する。このように、先筒2に対して化粧料保持部材5が前進すると、棒状化粧料Mが先筒2の開口部2cから出現して棒状化粧料Mを使用可能な状態とされる。
【0038】
次に、先筒2及び棒状化粧料Mについてより詳細に説明する。
図5は、先筒2の開口部2c及び棒状化粧料Mを示す斜視図である。
図1、
図2及び
図5に示されるように、先筒2は、先筒2の段差部2gから開口部2cに向かうに従って徐々に縮径するテーパ面2mを有する。テーパ面2mは、例えば、開口部2cに向かって曲線状に縮径しており、テーパ面2mの曲率は開口部2cに近づくに従って徐々に大きくなっている。
【0039】
先筒2では、例えば、鋭角状の突部2dと窪み2fとが先筒2の周方向に沿って交互に並んでいる。径方向外側から見たときの突部2dの形状は山状とされており、例えば、突部2dは丸みを帯びた頂部2pを有する。更に、軸線方向D1(前側)から見た突部2dの形状が山形状とされていてもよい。
【0040】
径方向外側から見たときの窪み2fの形状は、例えば、鋭角状とされている。窪み2fは、一対の突部2dの間において後方に延びるように形成されており、例えば、鋭角状の底部2qを有する。底部2qは、丸みを帯びていてもよいし、丸みを帯びていなくてもよい。
【0041】
また、突部2dは、先筒2の径方向内側に突出していてもよい。この場合、突部2dは、棒状化粧料Mの径方向内側に入り込んでいる。棒状化粧料Mは、前述した突出部M1と、径方向内側に窪む凹部M2とを有する。棒状化粧料Mは、例えば、複数の突出部M1と複数の凹部M2とを備え、突出部M1及び凹部M2は、先筒2(棒状化粧料M)の周方向に沿って交互に並んでいる。
【0042】
軸線方向D1に沿って(前側から)見た棒状化粧料Mの形状は、例えば、複数の突出部M1のそれぞれが径方向外側に延びる放射状とされている。一例として、棒状化粧料Mは6個の突出部M1を備えている。一の突出部M1の突出方向(長手方向D2)と、当該一の突出部M1に隣接する突出部M1の突出方向との成す角度は、例えば、60°である。この場合、棒状化粧料Mの周方向に沿って6個の突出部M1が等間隔に配置されている。
【0043】
軸線方向D1に直交する平面で棒状化粧料Mを切断したときの棒状化粧料Mの断面形状は、上記同様、放射状とされている。棒状化粧料Mの当該断面形状は、例えば、軸線方向D1のどの位置においても同一である。棒状化粧料Mの当該断面形状と、前側から棒状化粧料Mを見たときの棒状化粧料Mの形状とは互いに同一である。
【0044】
図6(a)は、
図3のB-B線断面図である。
図6(b)は、棒状化粧料Mの突出部M1を拡大した断面図である。
図5、
図6(a)及び
図6(b)に示されるように、棒状化粧料Mの突出部M1は、U字状とされている。突出部M1は根元部M3を有し、例えば、根元部M3は突出部M1と凹部M2との境界部を示している。突出部M1は、例えば、棒状化粧料Mの断面形状における曲率半径の中心が径方向内側に位置する部分を示しており、凹部M2は当該曲率半径の中心が棒状化粧料Mの径方向外側に位置する部分を示している。この場合、根元部M3は、棒状化粧料Mの断面形状における曲率の境界部を示している。
【0045】
図6(a)及び
図6(b)に示されるように、突出部M1の長手方向D2の長さLは、突出部M1の根元部M3の幅Wよりも長い。この場合、突出部M1は扁平形状を有する。すなわち、複数の突出部M1のそれぞれは、先筒2の周方向に沿って並ぶ扁平部(板状部、羽根状部)とされている。従って、突出部M1の先端部M4を皮膚等の被塗布部に塗布し削れても先端部M4の太さを変わりにくくすることができる。
【0046】
突出部M1の先端部M4は、例えば、円弧状とされている。しかしながら、先端部M4は、例えば、放物線状等、円弧状以外の形状であってもよい。凹部M2は、先端部M4と同様、円弧状とされている。例えば、凹部M2の曲率半径は、先端部M4の曲率半径よりも小さい。
【0047】
前述したように、先筒2は棒状化粧料Mの複数の突出部M1のそれぞれが入り込む複数の凹部2kを備え、複数の凹部2kは先筒2の周方向に沿って並ぶように配置されている。複数の凹部2kは、複数の突出部M1に対応して設けられており、凹部2kには突出部M1の先端部M4が入り込んでいる。凹部2kの形状は、先端部M4の形状に倣う形状とされており、例えば、円弧状とされている。
【0048】
先筒2の収容空間2hにおいて、周方向に沿って並ぶ一対の突出部M1の間には化粧料保持部材5の保持部5Aが入り込んでいる。より具体的には、周方向に沿って並ぶ一対の凹部2kの間に位置する先筒2の内面2rと、一対の突出部M1と、凹部M2とによって画成された領域に保持部5Aが入り込んでいる。
【0049】
図7(a)は、化粧料保持部材5を示す側面図である。
図7(b)は、
図7(a)とは異なる方向から見た化粧料保持部材5の側面図である。
図8は、化粧料保持部材5の斜視図である。
図3、
図7(a)、
図7(b)及び
図8に示されるように、化粧料保持部材5は、保持部5Aで棒状化粧料Mを保持する棒状化粧料保持体(芯チャック押棒とも称される)である。
【0050】
化粧料保持部材5は、先筒2に対して軸線方向D1に沿って移動可能とされており、棒状化粧料Mを保持しつつ軸線方向D1に沿って棒状化粧料Mを移動させる。化粧料保持部材5は、先筒2及び保持部材6の内部に配置されており軸線方向D1に延在する。化粧料保持部材5の軸体部5Bは雄螺子5bを有し、例えば、雄螺子5bは、軸体部5Bの軸線方向D1の全体にわたって形成されている。
【0051】
化粧料保持部材5の保持部5Aは、軸体部5Bの前側に設けられる。保持部5Aは、棒状化粧料Mの後端面が突き当てられる基部5cと、基部5cから前方に延び出すと共に棒状化粧料Mの後側部分を保持する複数の保持片5dとを備える。保持片5dは、基部5cから前方に突出している。
【0052】
基部5cは、複数の保持片5dの後端において化粧料保持部材5の周方向に延在する部位を示しており、化粧料保持部材5の径方向外側に突出する突出部5fを有する。突出部5fは円弧状とされている。突出部5fと保持片5dは、例えば、化粧料保持部材5の周方向に沿って交互に設けられている。
【0053】
図6(a)、
図6(b)、
図7(a)、
図7(b)及び
図8に示されるように、保持部5Aは、例えば、棒状化粧料Mの突出部M1と同数の保持片5dを備える。保持部5Aは、各保持片5dが一対の突出部M1の間に入り込む(換言すれば一対の保持片5dの間に突出部M1が入り込む)ことによって棒状化粧料Mを保持する。保持部5Aが棒状化粧料Mを保持しているときに、保持片5dと突出部M1とは周方向に沿って交互に並んでいる。
【0054】
保持片5dは、例えば、軸線方向D1に沿って延びるアーム状とされている。一例として、保持片5dは、基部5cから延び出す幅広部5gと、幅広部5gの前側に位置する幅狭部5hと、径方向外側を向く傾斜面5jを有する先端部5kとを備える。保持片5d(幅広部5g及び幅狭部5h)の外周面5rは、例えば、円弧状に湾曲している。幅広部5gは、保持片5dの根元側(基部5c側)に位置しており、幅広部5gと幅狭部5hの間には、幅広部5gから幅狭部5hに遷移する傾斜面付きの遷移部5pが設けられる。また、基部5cは前進限の当接部としても機能する。
【0055】
先端部5kの傾斜面5jは、化粧料保持部材5の径方向外側を向くと共に化粧料保持部材5の先端5qに向かうに従って径方向内側に傾斜している。先端部5kは、前方を向く先端5qに向かうに従って薄くなっている。軸線方向D1に沿って(前側から)見た先端5qの形状は、例えば、径方向内側に丸められた角部を有する三角形状とされている。
【0056】
軸線方向D1に直交する平面で保持片5dを切断したときの保持片5dの断面形状は、前述した先端5qと同様、三角形状とされている。保持片5dは、棒状化粧料Mの凹部M2に入り込むと共に湾曲した角部5sと、角部5sから棒状化粧料Mの突出部M1に沿って延びる一対の傾斜面5tと、一対の傾斜面5tの間で延びる外周面5rとを有する。保持片5dは、角部5sが凹部M2に対向すると共に各傾斜面5tが突出部M1に沿うように棒状化粧料Mに入り込むことにより、棒状化粧料Mを強固に保持することが可能とされている。
【0057】
次に、本実施形態に係る棒状化粧料容器1から得られる作用効果について詳細に説明する。
図5、
図6(a)及び
図6(b)に示されるように、棒状化粧料容器1では、先筒2の内部に固形状の棒状化粧料Mが収容されており、棒状化粧料Mは先筒2の開口部2cから露出する。先筒2の軸線方向D1に直交する平面で棒状化粧料Mを切断したときの棒状化粧料Mの断面は、先筒2の径方向外側に突出する複数の突出部M1を有する。棒状化粧料Mが径方向外側に突出する複数の突出部M1を有することにより、突出部M1の先端部M4を被塗布部に当てることによって細い線を容易に描くことができる。
【0058】
突出部M1の突出方向の長さLは、突出部M1の根元部M3の幅Wよりも長い。従って、突出部M1の先端部M4を被塗布部に当てて塗布を継続しても、突出部M1の先端部M4の幅を広がりにくくすることができる。よって、使用を継続しても突出部M1の先端部M4の幅を広がりにくくすることができるので、細い線を描き続けることができる。更に、突出方向の長さLが幅方向の長さ(幅W)よりも長い複数の突出部M1を棒状化粧料Mが備えることにより、複数の細い線を共に描くことができ、更に棒状化粧料Mの折損を抑制することができる。
【0059】
先筒2の開口部2cは、複数の突出部M1の間に入り込む突部2dを有し、先筒2の径方向外側から見たときの突部2dの形状は、前方に向かうに従って先細りする鋭角状とされていてもよい。この場合、棒状化粧料Mの複数の突出部M1の間に入り込む鋭角状の突部2dが設けられることにより、先筒2の開口部2cにおいて棒状化粧料Mをより強固に保持することができる。従って、棒状化粧料Mが折損する可能性をより低減させることができる。
【0060】
図3、
図6(a)及び
図6(b)に示されるように、棒状化粧料容器1は、先筒2の内部であって棒状化粧料Mから見て開口部2cの反対側に位置する化粧料保持部材5を備え、化粧料保持部材5は、複数の突出部M1の間に入り込んで棒状化粧料Mを保持する保持部5Aを有していてもよい。この場合、棒状化粧料Mの開口部2cとの反対側に位置する化粧料保持部材5の保持部5Aが複数の突出部M1の間に入り込んで棒状化粧料Mが保持される。よって、先筒2の内部の化粧料保持部材5によって棒状化粧料Mをより強固に保持することができるので、棒状化粧料Mの折損及び抜け落ちをより確実に抑制することができる。
【0061】
図3及び
図4に示されるように、先筒2は、先筒2の内部に棒状化粧料Mの複数の突出部M1のそれぞれが入り込む複数の凹部2kを有し、凹部2kは、開口部2cと棒状化粧料Mを保持する化粧料保持部材5との間において軸線方向D1に延在していてもよい。この場合、棒状化粧料Mの突出部M1が入り込む先筒2の凹部2kが開口部2cから化粧料保持部材5まで軸線方向D1に沿って延在しているので、開口部2cから化粧料保持部材5までの間で棒状化粧料Mをより強固に保持することができる。
【0062】
図5に示されるように、先筒2の開口部2cは、棒状化粧料Mの突出部M1を露出すると共に後方に窪む複数の窪み2fを有してもよい。この場合、先筒2の開口部2cに後方に延びる窪み2fが設けられることにより、突出部M1の露出部分の長さを長くすることができる。従って、露出する突出部M1の先端部M4の領域を長く確保することができるので、細い線を一層容易に描くことができる。
【0063】
以上、第1実施形態に係る棒状化粧料容器1について説明した。しかしながら、棒状化粧料容器の各部の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、前述した例に限られることなく適宜変更可能である。例えば、第1実施形態では、棒状化粧料Mが6個の突出部M1を備え、棒状化粧料Mの周方向に沿って6個の突出部M1が等間隔に配置されている例について説明した。
【0064】
しかしながら、棒状化粧料の突出部の数、及び突出部の配置態様は、上記の例に限られない。
図9(a)、
図9(b)及び
図9(c)に示されるように、3個、4個又は5個の突出部M1が棒状化粧料Mの周方向に沿って並ぶように配置されていてもよい。一の突出部M1の突出方向と当該一の突出部M1に隣接する突出部M1の突出方向との成す角度は、例えば、120°、90°又は72°である。
【0065】
以上の各突出部M1であっても、突出方向の長さLが幅Wよりも長い複数の突出部M1を棒状化粧料Mが備えるので、複数の細い線を共に描くことができ、棒状化粧料Mの折損を抑制することができ、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。なお、突出部M1の数は7個、8個又は9個以上であってもよい。また、複数の突出部M1は、棒状化粧料Mの周方向に沿って等間隔に配置されていなくてもよい。更に、一の突出部M1の突出方向と当該一の突出部M1に隣接する突出部M1の突出方向との成す角度は、前述した例に限られず適宜変更可能である。
【0066】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る棒状化粧料容器31について
図10及び
図11を参照しながら説明する。
図10は、棒状化粧料容器31を示す側面図である。
図11は、
図10とは異なる方向から見た棒状化粧料容器31の側面図である。なお、棒状化粧料容器31の一部の構成は、前述した棒状化粧料容器1の一部の構成と同一である。従って、以下では、棒状化粧料容器1の構成と同一の構成に関する説明を適宜省略する。また、棒状化粧料容器1の構成と同一の構成には同一の符号を付して説明する。
【0067】
棒状化粧料容器31は、先筒32と、中筒3と、容器本体4とを外観構成として備える。先筒32は、棒状化粧料Nが露出する開口部32cを有する。棒状化粧料Nは、複数の突出部N1と、突出部N1の反対側に突出する幅広突出部N2とを備える。また、先筒32は軸線方向D1に直交する平面に対して傾斜する先端面32dを有し、先端面32dに開口部32cが形成されている。先端面32dは前方に突出する一対の突部32gを有し、一対の突部32gの間において棒状化粧料Nが使用状態まで繰り出し前方に露出している。
【0068】
開口部32cは、先端面32dに沿って後方に延びると共に先筒32の幅方向に沿って並ぶ一対の凹部32fを有する。一対の凹部32fのそれぞれに突出部N1が入り込んでいる。開口部32cは、例えば、棒状化粧料Nの先端面N3に倣った形状とされている。先端面N3は、軸線方向D1に直交する平面に対して傾斜しており、先筒32の先端面32dに沿って延在している。先端面N3の傾斜角度は、先端面32dの傾斜角度と略同一であってもよい。
【0069】
先筒32は、開口部32cに向かうに従って徐々に縮径するテーパ面32mを有する。テーパ面32mは、一対の凹部32fが並ぶ並設方向D3の両側のそれぞれに設けられる一対の湾曲凹部32pを有する。一対の湾曲凹部32pを指で摘まむことにより、先筒32を指で持ち上げて複数本の突出部N1で容易に複数の細い線を描くことができる。
【0070】
図12は、
図11のC-C線断面図である。
図12に示されるように、棒状化粧料容器31は、容器前部を構成する先筒32と、中筒3と、容器後部を構成する容器本体4と、容器本体4の内部に収容される化粧料保持部材35と、容器本体4の内部において化粧料保持部材35を保持する保持部材6と、を備える。棒状化粧料容器31では、先筒32、化粧料保持部材35及び棒状化粧料Nの構成が、前述した先筒2、化粧料保持部材5及び棒状化粧料Mの構成とは異なっている。
【0071】
図13は、先筒32の開口部32c及び棒状化粧料Nを示す斜視図である。
図11及び
図13に示されるように、先筒32では、例えば、鋭角状の突部32hを有し、一対の凹部32fの間に突部32hが設けられている。径方向外側から見たときの突部32hの形状は山状とされており、例えば、突部32hは丸みを帯びた頂部を有する。また、軸線方向D1(前側)から見た突部32hの形状が山形状とされていてもよい。
【0072】
径方向外側から見たときの凹部32fの形状は、例えば、鋭角状とされている。凹部32fは、突部32hの両側のそれぞれにおいて斜め後方に延びるように形成されている。凹部32fの底部(後端部)は、丸みを帯びていてもよいし、丸みを帯びていなくてもよい。
【0073】
突部32hは、先筒32の径方向内側に突出している。突部32hは、棒状化粧料Nの径方向内側に入り込んでいる。棒状化粧料Nは、前述した突出部N1と、径方向内側に窪む凹部N4とを有する。棒状化粧料Nは、例えば、複数の突出部N1と、凹部N4とを備え、突出部N1及び凹部N4は、先筒32(棒状化粧料N)の周方向(並設方向D3)に沿って並んでいる。
【0074】
図14は、
図12のD-D線断面図である。
図13及び
図14に示されるように、軸線方向D1に沿って見た棒状化粧料Nの形状は、例えば、複数の突出部N1のそれぞれが並設方向D3に交差する一方向D4に延びると共に、幅広突出部N2が一方向D4の反対方向D5に突出する形状とされている。
【0075】
棒状化粧料Nは、例えば、2個の突出部N1を含んでおり、一方の突出部N1の突出方向と他方の突出部N1の突出方向との成す角度は鋭角である。しかしながら、当該角度は、直角であってもよいし、鈍角であってもよい。軸線方向D1に直交する平面で棒状化粧料Nを切断したときの棒状化粧料Nの断面形状は、上記同様、複数の突出部N1が一方向D4に延びると共に幅広突出部N2が反対方向D5に突出する形状とされている。棒状化粧料Nの断面形状は、例えば、軸線方向D1のどの位置においても同一である。
【0076】
棒状化粧料Nの突出部N1は、U字状とされている。突出部N1は根元部N5を有する。突出部N1の一方向D4(長手方向、突出方向)の長さLは、突出部N1の根元部N5の幅Wよりも長い。突出部N1は、扁平状を有する。すなわち、複数の突出部N1のそれぞれは、先筒32の周方向に沿って並ぶ扁平部(板状部、羽根状部)とされている。
【0077】
棒状化粧料Nの幅広突出部N2は、反対方向D5に突出する部分であって且つ突出部N1の幅Wよりも幅Hが長い部位を示している。本実施形態において、幅広突出部N2は、曲線状に反対方向D5に突出する部分を示している。一例として、幅広突出部N2は、円弧状とされている。しかしながら、幅広突出部N2は、例えば放物線状等、円弧状以外の形状であってもよい。
【0078】
先筒32は、棒状化粧料Nの複数の突出部N1が入り込む複数の凹部32sを備え、凹部32sは開口部32cの凹部32fから後方に連続している。すなわち、凹部32sは開口部32cから化粧料保持部材35までの間に軸線方向D1に沿って延在している。複数の凹部32sは先筒32の周方向に沿って並ぶように配置されている。複数の凹部32sは、複数の突出部N1に対応して設けられており、凹部32sには突出部N1の先端部N6が入り込んでいる。凹部32sの形状は、先端部N6の形状に倣う形状とされており、例えば、円弧状とされている。
【0079】
先筒32における棒状化粧料Nの収容空間32tにおいて、周方向に沿って並ぶ一対の突出部N1の間、及び棒状化粧料Nの並設方向D3の両端側のそれぞれには、化粧料保持部材35の保持部35Aが入り込んでいる。より具体的には、周方向に沿って並ぶ一対の凹部32sの間に位置する先筒32の内面32vと、一対の突出部N1と、凹部N4とによって画成された領域、及び棒状化粧料Nの並設方向D3の両端側のそれぞれに形成された先筒32の凹部32w、に保持部35Aが入り込んでいる。
【0080】
図15は、化粧料保持部材35の斜視図である。
図15に示されるように、化粧料保持部材35は、保持部35Aと軸体部5Bとを備える。保持部35Aは、棒状化粧料Nを保持する棒状化粧料保持部(チャック)として機能する。保持部35Aは、棒状化粧料Nの後端が突き当てられる基部35cと、基部35cから前方に延び出すと共に棒状化粧料Nの後側部分を支持する第1保持片35d及び第2保持片35fとを備える。
【0081】
基部35cは、化粧料保持部材35の径方向外側に突出する突出部5fを有する。突出部5fの位置は棒状化粧料Nの突出部N1の位置に対応している。すなわち、突出部N1の後側に突出部5fが設けられる。基部35cは、例えば、一対の突出部5fを有し、一対の突出部5fの間に第1保持片35dが設けられる。また、基部35cは前進限の当接部としても機能する。
【0082】
第1保持片35dの形状は、例えば、前述した化粧料保持部材5の保持片5dの形状と同一である。第2保持片35fは、一例として、基部35cから延び出す延在部35gと、径方向外側を向く傾斜面35hを有する先端部35jとを備える。延在部35gの外周面35kは、例えば、円弧状に湾曲している。
【0083】
延在部35gは、その内周面35mに、径方向内側に突出するリブ部35pを備える。リブ部35pは、例えば、軸線方向D1に沿って延びており、棒状化粧料Nに入り込む部位である。このように、リブ部35pが並設方向D3の両側のそれぞれから棒状化粧料Nに入り込むことにより、化粧料保持部材35によって棒状化粧料Nを一層強固に保持できる。
【0084】
先端部35jの傾斜面35hは、化粧料保持部材35の径方向外側を向くと共に化粧料保持部材35の先端35qに向かうに従って径方向内側に傾斜している。例えば、先端部35jの幅(周方向の長さ)は、先端35qに向かうに従って狭くなっている。先端部35jは、前方を向く先端35qに向かうに従って薄くなっている。軸線方向D1に沿って見た先端35qの形状は、例えば、化粧料保持部材35の周方向に沿って延びる曲線状とされている。
【0085】
軸線方向D1に直交する平面で第1保持片35dを切断したときの第1保持片35dの断面形状は、棒状化粧料Nの凹部N4に倣った形状とされている。すなわち、第1保持片35dは、凹部N4を画成する棒状化粧料Nの内周面に沿うように設けられる凸部35rを備える。
【0086】
図14及び
図15に示されるように、軸線方向D1に直交する平面で第2保持片35fを切断したときの第2保持片35fの断面形状は、前述した先端35qと同様、周方向に沿って延びる曲線状とされている。第1保持片35dは一対の突出部N1の間の凹部N4に入り込み、第2保持片35fは内周面35mに形成されたリブ部35pが棒状化粧料Nに入り込むと共に内周面35mで棒状化粧料Nを支えることにより、棒状化粧料Nを強固に保持することが可能とされている。
【0087】
以上、第2実施形態に係る棒状化粧料容器31では、棒状化粧料Nが複数の突出部N1を有することにより、突出部N1の先端部N6を被塗布部に当てることによって細い線を容易に描くことができる。突出部N1の突出方向の長さLは、突出部N1の根元部N5の幅Wよりも長い。
【0088】
従って、突出部N1の先端部N6を被塗布部に当てて塗布を継続しても、突出部N1の先端部N6の形状を広がりにくくすることができる。更に、突出方向の長さLが幅Wよりも長い複数の突出部N1を棒状化粧料Nが備えることにより、棒状化粧料Nの折損や抜け落ちを抑制することができ、第1実施形態に係る棒状化粧料容器1と同様の作用効果を得られる。
【0089】
先筒32の軸線方向D1に直交する平面で棒状化粧料Nを切断したときの棒状化粧料Nの断面は、複数の突出部N1の反対側に突出する幅広突出部N2を有する。よって、棒状化粧料Nの断面において、径方向の一方側に複数の突出部N1が設けられ、径方向の他方側に幅広突出部N2が設けられる。従って、一方側に突出する複数の突出部N1によって複数の細い線を容易に描くことができる。また、他方側に突出する幅広突出部N2によって太い線を容易に描くことができる。その結果、化粧料の塗布を速やかに行うことができる。
【0090】
以上、第2実施形態に係る棒状化粧料容器31について説明した。この棒状化粧料容器31のように、複数の突出部N1のそれぞれは径方向外側に延びる放射状とされていなくてもよい。すなわち、突出部の突出方向がどの方向を向くかについては、前述した各例に限られず適宜変更可能である。複数の突出部N1は、棒状化粧料Nの周方向に沿って等間隔に配置されていなくてもよい。
【0091】
更に、棒状化粧料Nの突出部N1及び幅広突出部N2の形状、大きさ、数、突出方向及び配置態様は適宜変更可能である。例えば、
図16(a)に示されるように、棒状化粧料Nは、3個の突出部N1と1個の幅広突出部N2とを備えていてもよい。また、
図16(b)に示されるように、棒状化粧料Nは、4個の突出部N1と1個の幅広突出部N2とを備えていてもよい。この場合、3個又は4個の突出部N1の少なくともいずれかで細い線を容易に描くことができると共に、幅広突出部N2で太い線を容易に描くことができる。更に、突出部N1の数は5個以上であってもよいし、幅広突出部N2の数が複数であってもよい。
【0092】
前述の第2実施形態では、円弧状とされている幅広突出部N2について例示した。しかしながら、棒状化粧料Nは、
図16(c)に示されるように、円弧状の幅広突出部N2に代えて、矩形状の幅広突出部N7を備えていてもよい。この場合、突出部N1で細い線を描きつつ、幅広突出部N7によって太い線を容易に描くことができると共に、幅広突出部N7の角部N8によって塗布を行うことも可能となる。このように棒状化粧料Nの幅広突出部の形状は適宜変更可能である。突出部の形状についても同様である。
【0093】
また、
図17は、更なる変形例に係る先筒52及び棒状化粧料Qを示す斜視図である。先筒52は、前述した先筒32と同様、並設方向D3に沿って並ぶ一対の凹部52fを有する開口部52cを備え、一対の凹部52fのそれぞれに棒状化粧料Qの突出部Q1のそれぞれが入り込んでいる。棒状化粧料Qは、前述した棒状化粧料Nと同様、一方向D4に突出する一対の突出部Q1と、一対の突出部Q1の間に形成された凹部Q4と、反対方向D5に突出する幅広突出部Q2とを有する。
【0094】
図13及び
図17に示されるように、前述した棒状化粧料Nでは先筒32の先端に対して斜め後方(
図13では下方)に突出する一対の突出部N1と斜め前方に突出する幅広突出部N2とを備える。一方、棒状化粧料Qでは斜め前方(
図17では上方)に突出する一対の突出部Q1と斜め後方に突出する幅広突出部Q2とを備える。このように、複数の突出部及び幅広突出部の突出方向及び傾斜する向きについても適宜変更可能である。
【0095】
以上、本開示に係る棒状化粧料容器の種々の実施形態及び変形例について説明した。しかしながら、本開示に係る棒状化粧料容器は前述した各実施形態又は変形例に限られず更に変更することも可能である。例えば、前述の実施形態では、繰出機構10を備える棒状化粧料容器1について説明した。しかしながら、棒状化粧料容器の繰出機構の構成については、前述した各例に限られず適宜変更可能である。更に、繰出機構を有しない棒状化粧料容器であってもよい。例えば、繰出機構に代えて、ノック式等の機械的な押出機構、又はスクイーズ式の押出機構を備えていてもよい。
【0096】
また、前述の実施形態では、棒状化粧料Mがアイブロウであり、棒状化粧料容器1がアイブロウ繰出容器である例について説明した。しかしながら、本開示に係る棒状化粧料容器は、例えば、アイライナー、コンシーラー又はリップライナー等、種々の棒状化粧料に対しても適用させることができる。
【符号の説明】
【0097】
1,31…棒状化粧料容器、2,32、52…先筒、2A…前側筒部、2B…後側筒部、2c,32c,52c…開口部、2d…突部、2f…窪み、2g…段差部、2h…収容空間、2j…後端、2k…凹部、2m…テーパ面、2p…頂部、2q…底部、2r…内面、2s…収容空間、2t…スリット、2v…第1孔部、2w…第2孔部、3…中筒、3A…前側筒部、3b…外周面、3B…後側筒部、3c…傾斜面、3C…バネ部、3d…第1凸部、3D…鍔部、3f…第2凸部、3g…環状突起、3j…本体部、3k…スリット、4b…突条、5,35…化粧料保持部材、5A,35A…保持部、5B…軸体部、5b…雄螺子、5c,35c…基部、5d…保持片、5f…突出部、5g…幅広部、5h…幅狭部、5j…傾斜面、5k…先端部、5p…遷移部、5q…先端、5r…外周面、5s…角部、5t…傾斜面、6…保持部材、6b…前側筒部、6c…後側筒部、6d…突起、10…繰出機構、20…螺合部、32d…先端面、32f,52f…凹部、32g,32h…突部、32m…テーパ面、32p…湾曲凹部、32s…凹部、32t…収容空間、32v…内面、32w…凹部、35d…第1保持片、35f…第2保持片、35g…延在部、35h…傾斜面、35j…先端部、35k…外周面、35m…内周面、35p…リブ部、35q…先端、35r…凸部、D1…軸線方向、D2…長手方向、D3…並設方向、D4…一方向、D5…反対方向、H…幅、M,N,Q…棒状化粧料、M1,N1,Q1…突出部、M2…凹部、M3…根元部、M4…先端部、N2,Q2…幅広突出部、N3…先端面、N4,Q4…凹部、N5…根元部、N6…先端部、N7…幅広突出部、N8…角部、W…幅。