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特許7503826鉄道車両の放送システム、無線端末、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】鉄道車両の放送システム、無線端末、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04H 20/62 20080101AFI20240614BHJP
   H04H 60/25 20080101ALI20240614BHJP
   H04H 60/27 20080101ALI20240614BHJP
   H04H 60/90 20080101ALI20240614BHJP
   B61D 37/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
H04H20/62
H04H60/25
H04H60/27
H04H60/90
B61D37/00 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020094515
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021190843
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592066860
【氏名又は名称】八幡電気産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 充男
(72)【発明者】
【氏名】山本 聡
(72)【発明者】
【氏名】平塚 友久
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-206136(JP,A)
【文献】特開2000-318612(JP,A)
【文献】特開昭61-084132(JP,A)
【文献】特開平08-079199(JP,A)
【文献】特表2015-506120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04H 20/62
H04H 60/25
H04H 60/27
H04H 60/90
B61D 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両内において、前記鉄道車両内の放送内容を示す、複数の言語のテキストデータを生成する装置と、
前記鉄道車両内に設置され、前記複数の言語のテキストデータの無線送信を行う車内サーバと、
前記車内サーバから前記複数の言語のテキストデータを受信し、前記複数の言語の中から選択された言語のテキストデータを用いて、前記放送内容の音声出力及び前記放送内容の文字表示の少なくとも一方を行う無線端末と、
を含み
前記装置は、前記鉄道車両内への放送内容を示す音声信号の音声認識によって、所定言語のテキストデータを生成する音声認識部と、前記所定言語のテキストデータを用いて、前記複数の言語のうちの残りの言語への翻訳処理を行う翻訳処理部と、前記複数の言語のテキストデータを前記車内サーバに送信する送信部とを含む
鉄道車両の放送システム。
【請求項2】
鉄道車両内において、前記鉄道車両の放送内容を示す、複数の言語のテキストデータを生成する装置と、
前記鉄道車両内に設置された車内サーバであって、前記複数の言語の中から選択された言語のテキストデータを用いて前記放送内容の音声出力及び前記放送内容の文字表示の少なくとも一方を行う無線端末に対し、前記複数の言語のテキストデータの無線送信を行う車内サーバと、
を含み、
前記装置は、前記鉄道車両内への放送内容を示す音声信号の音声認識によって、所定言語のテキストデータを生成する音声認識部と、前記所定言語のテキストデータを用いて、前記複数の言語のうちの残りの言語への翻訳処理を行う翻訳処理部と、前記複数の言語のテキストデータを前記車内サーバに送信する送信部とを含む
鉄道車両の放送システム。
【請求項3】
前記装置は、前記鉄道車両が地上基地局との誘導無線通信によって受信した前記放送内容についての前記複数の言語のテキストデータを生成する
請求項1又は2に記載の鉄道車両の放送システム。
【請求項4】
鉄道車両内において、前記鉄道車両内の放送内容を示す、複数の言語のテキストデータを生成する装置であって、
前記鉄道車両内への放送内容を示す音声信号の音声認識によって、所定言語のテキストデータを生成する音声認識部と、
前記所定言語のテキストデータを用いて、前記複数の言語のうちの残りの言語への翻訳処理を行う翻訳処理部と、
前記複数の言語のテキストデータを、前記鉄道車両内に設置され、前記複数の言語のテキストデータの無線通信を行う車内サーバに送信する送信部とを含
装置。
【請求項5】
鉄道車両内において、前記鉄道車両内の放送内容を示す、複数の言語のテキストデータを生成する装置が、
前記鉄道車両内への放送内容を示す音声信号の音声認識によって、所定言語のテキストデータを生成することと、
前記所定言語のテキストデータを用いて、前記複数の言語のうちの残りの言語への翻訳処理を行うことと、
前記複数の言語のテキストデータを、前記鉄道車両内に設置され、前記複数の言語のテキストデータの無線通信を行う車内サーバに送信することと
を含む方法。
【請求項6】
鉄道車両内において、前記鉄道車両内の放送内容を示す、複数の言語のテキストデータを生成する装置が有するコンピュータに、
前記鉄道車両内への放送内容を示す音声信号の音声認識によって、所定言語のテキストデータを生成するステップと、
前記所定言語のテキストデータを用いて、前記複数の言語のうちの残りの言語への翻訳処理を行うステップと、
前記複数の言語のテキストデータを、前記鉄道車両内に設置され、前記複数の言語のテキストデータの無線通信を行う車内サーバに送信するステップと
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の放送システム、無線端末、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両において、駅からの出発、到着、扉が開く側、乗り換え等の案内放送を自動的に放送する自動放送装置が搭載されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、自動放送用データを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された自動放送用データを変更するための変更データを、無線通信を介して取得するデータ取得部と、データ取得部により取得された変更データに基づいて、記憶部に記憶された自動放送用データを変更する制御部とを備え、記憶部は自動放送用データのうち書き換えが必要なデータを格納する書き換え可能領域と、書き換えが不要なデータを格納する書き換え不要領域とを有し、データ取得部は、既に書き換え可能領域に格納されているデータを含む変更データを取得するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。また、日本語での自動放送に続けて、英語、中国語、朝鮮語(韓国語)などの所定言語での自動放送が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-216709号公報
【文献】特開2018-137598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の言語について自動放送を行う場合、主要な言語として、日本語、英語、中国語、韓国語、ドイツ語、スペイン語、及びポルトガル語の7カ国語についての放送を行えば、殆どの乗客に放送内容を理解してもらえると考えられる。
【0005】
しかしながら、駅間の距離による放送時間の制限によって、日本語のみでの放送、日本語及び英語での放送、或いは、乗客の傾向に応じて、日本語を含む3~4カ国語での放送を行うのが実情であった。このため、乗客によっては、自身が理解できる言語で放送がされない場合があった。
【0006】
本発明は、乗客に所望の言語で鉄道車両の放送内容を提供可能な鉄道車両の放送システム、無線端末、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、鉄道車両内において、前記鉄道車両の車内放送内容を示す、複数の言語のテキストデータを生成する装置と、前記鉄道車両内に設置され、前記複数の言語のテキストデータの無線送信を行う車内サーバと、前記車内サーバから前記複数の言語のテキストデータを受信し、前記複数の言語の中から選択された言語のテキストデータを用いて、前記車内放送内容の音声出力及び放送内容の文字表示の少なくとも一方を行う無線端末と、を含む鉄道車両の放送システムである。
【0008】
また、本発明の他の態様は、鉄道車両内において、前記鉄道車両の車内放送内容を示す、複数の言語のテキストデータを生成する装置と、前記鉄道車両内に設置された車内サーバであって、前記複数の言語の中から選択された言語のテキストデータを用いて前記車内放送内容の音声出力及び放送内容の文字表示の少なくとも一方を行う無線端末に対し、前記複数の言語のテキストデータの無線送信を行う車内サーバと、を含む鉄道車両の放送シ
ステムである。
【0009】
鉄道車両の放送システムに関して、前記装置は、前記鉄道車両が地上基地局との誘導無線通信によって受信した前記車内放送内容についての前記複数の言語のテキストデータを生成する、構成を採用してもよい。
【0010】
鉄道車両の放送システムに関して、前記装置は、車内放送内容を示す音声信号の音声認識によって、所定言語のテキストデータを生成する音声認識部と、前記所定言語のテキストデータを用いて、前記複数の言語のうちの残りの言語への翻訳処理を行う翻訳処理部と、前記複数の言語のテキストデータを前記車内サーバに送信する送信部とを含む端末である、構成を採用してもよい。端末は、固定端末であっても携帯端末であってもよい。
【0011】
本発明の他の態様は、複数の言語の中から選択された言語を受け付ける受付部と、鉄道車両内において、前記鉄道車両内に設置された車内サーバとの無線通信によって、前記鉄道車両の車内放送内容を示す、前記複数の言語のテキストデータを受信する受信部と、前記複数の言語のテキストデータに含まれる、前記複数の言語の中から選択された言語のテキストデータを用いて前記車内放送内容の音声出力及び放送内容の文字表示の少なくとも一方を行う処理部と、を含む無線端末である。
【0012】
本発明の他の態様は、鉄道車両内の無線端末に、複数の言語の中から選択された言語を受け付ける処理と、前記鉄道車両内に設置された車内サーバから、前記鉄道車両の車内放送内容を示す、前記複数の言語のテキストデータを受信する処理と、前記複数の言語のテキストデータに含まれる、前記複数の言語の中から選択された言語のテキストデータを用いて前記車内放送内容の音声出力及び放送内容の文字表示の少なくとも一方を行う処理と、を実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、乗客に所望の言語で鉄道車両の車内放送内容を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、鉄道車両の放送システムの一例を示す。
図2図2は、端末の構成例を示す。
図3図3は、車内サーバ及び無線端末の構成例を示す。
図4図4は、無線端末の画面表示例を示す。
図5図5は、放送システムにおける処理例を示すフローチャートである。
図6図6は、放送システムにおける処理例を示すフローチャートである。
図7図7は、放送システムにおける処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、実施形態に係る鉄道車両の放送システム、無線端末、及びプログラムについて説明する。実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。図1は、鉄道車両に搭載された放送システムの一例を示す。図2は、図1に示した端末の構成例を示す。
【0016】
図1において、鉄道車両10は、破線で模式的に示される。通常、鉄道車両は、先頭車両と、先頭車両に連結され、客室を有する1又は2以上の客車とを含む。鉄道車両10には、鉄道車両の放送システムとしての車内放送システム、非常通報システム、セキュリティカメラシステムなどが搭載されている。
【0017】
車内放送システムは、自動放送装置100と、制御増幅器(C.AMP)106と、及び出
力増幅器(P.AMP)107と、出力増幅器107に接続された1又は2以上の車内スピー
カ108とを含む。車内スピーカ108は客室内に設置されている。
【0018】
自動放送装置100は、情報管理装置50に接続され、情報管理装置50と情報をやりとり(入出力、又は送受信)する。情報管理システム50は、列車運行に関する様々なデータを扱う装置であり、様々なデータや情報を記憶するための記憶装置(メモリ)を含んでいる。情報管理装置50には、自動放送装置100、他の車両に存する放送装置、列車情報管理システムなど、様々な装置がアクセスする。情報管理装置50が有するメモリに関して、どのアドレスにどの情報が格納されているかは、情報管理装置50にアクセスする装置において既知であり、各装置は、適宜のアドレスにデータや情報を格納し、適宜のアドレスに格納されたデータや情報を取得する。
【0019】
列車情報管理システムは、車両の力行やブレーキ、出区点検、車内空調管理、行先表示機、車内案内表示装置などの各種車載機器を一括して管理するコンピュータシステムである。自動放送装置100は、列車情報管理システムから、鉄道車両10の客室内部の案内表示、及び自動放送用の基本となるデータなどを、情報管理装置50を介して取得することが可能である。列車情報管理システムは、一般的に「モニタ装置」と呼ばれる、例えば、INTEROS(INtegrated Train ommunication networks for Evolvable Railway Operation System)、TIMS(Train Information Management System)又はMONなどである。情
報管理装置50は、列車情報(列車種別・列車番号または運行番号・行先・列車の現在位置・次停車駅など)、主要機器の動作状態、ドアの開閉状態、車内環境(温度・湿度・乗車率)、空調設定、自動放送・車内案内表示装置の設定、緊急時・故障時の操作支援、機器の遠隔操作などに関する情報を管理し、適宜の情報を自動放送装置100等に供給することができる。
【0020】
自動放送装置100は、情報管理装置50とデ-タ通信を行い、自動放送の設定情報や、列車の現在位置、時刻情報などを情報管理装置50から取得する。自動放送装置100は、制御増幅器106及び出力増幅器107と音声線及び放送起動線を介して接続される。
【0021】
自動放送装置100は、情報管理装置50と接続されたCPU102と、記憶装置103と、テキスト選択部104と、テキスト選択部104と接続された音声合成部105とを含んでいる。音声合成部105は、制御増幅器(C.AMP)106と接続される。制御増幅
器106は、出力増幅器(P.AMP)107と接続され、出力増幅器107には、車内スピ
ーカ108が接続されている。また、車内スピーカ108は、情報管理装置50とも接続され、放送用のデジタル信号を直接受信することも可能である。
【0022】
また、自動放送装置100は、情報管理装置50と接続されたCPU102と、CPU102に接続された第1放送エンジン121と、第1放送エンジン121及びCPU102に接続された第2放送エンジン122とをさらに含む。第2放送エンジン122は、音声合成部105に接続される。第2放送エンジン122は、表示装置123に接続される。
【0023】
記憶装置103は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、及びEEPROM
(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などであり、プログラム及
びデータを記憶する。記憶装置103には、自動放送用の音声メモリ及びテキストデータを記憶するための記憶領域が設けられている。記憶装置103は、情報管理装置50から取得される(情報管理装置50が管理している)鉄道車両10の運行に関する情報に従っ
て、車内放送を自動的に行うための自動放送プログラムを記憶している。自動放送プログラムには、自動放送の内容を示すテキストデータ(自動放送テキストデータ)が含まれている。自動放送テキストデータは、背景技術で説明した不変部分と可変部分とを合わせた放送内容の文章を示すテキストデータである。
【0024】
CPU102は、プロセッサ又は制御部の一例であり、記憶装置103に記憶されたプログラムを実行することによって、自動放送装置としての動作制御を含む様々な処理を行う。自動放送装置100は、記憶装置103に予め記憶されたテキストデータを用いて行う自動放送(第1のモード)と、第1放送エンジン121及び第2放送エンジン122を用いてリアルタイムに生成されるテキストデータを用いて行う自動放送(第2のモード)と、予め記憶されたテキストデータとリアルアイムに生成されるテキストデータとの双方を用いて行う自動放送(第3のモード)とのいずれかで動作することができる。
【0025】
CPU102は、第1のモードでは、情報管理装置50から得られた鉄道車両の運行に関する情報に基づいて、自動放送プログラムの実行を開始し、自動放送テキストデータを音声合成部105に供給するために、テキスト選択部104に指示を与える。テキスト選択部104は、指示された自動放送テキストデータを記憶装置103から取得し(読み出し)、音声合成部105へ供給する。
【0026】
音声合成部105は、音声合成によって自動放送テキストデータに基づく音声信号を生成し、制御増幅器106に接続する。音声信号は制御増幅器106及び出力増幅器107で増幅された後、車内スピーカ108に接続され、音声信号に対応する音声が車内スピーカ108から放音される。なお、マイク109に入力された音声を制御増幅器106に接続することで、乗務員の音声などを車内スピーカ108から放送できる。また、音声合成部105は、生成した音声データをデジタル信号としてCPU102に戻し、CPU102は、そのデジタル音声データを、情報管理装置50が有するメモリの所定アドレスに書き込む。ここに、図1は、複数の車両からなる鉄道車両10(編成)のうちの、自動放送装置100を備える先頭車両における設備を例示しており、自動放送装置100を備える車両以外の車両における放送装置は、所定アドレスに書き込まれたデジタル音声データを取得し、そのデジタル音声データを用いた自動放送を行う。これによって、1編成における複数の車両で、同内容の自動放送が行われる。
【0027】
テキスト選択部104及び音声合成部105は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの汎用又は専用のハードウェア(集積回路、又はプロセッサ及びメモリ)を用いて構成される。音声合成の手法に制限はなく、既存の適宜の音声合成の手法を適用することができる。音声合成部105から作られた合成音声のデジタルデータは列車情報システム50が有するメモリに格納され、他の車両の車内放送用デジタルデータとして取り扱われる。他の車両の出力増幅器(P.AMP)では、情報管理装置50に格納されている合成音声のデジタルデータを復調
し、その他の車両には、復調によって得られたアナログ信号の音声が放送される。
【0028】
CPU102は、第2のモードでは、第1放送エンジン121及び第2放送エンジンの動作を制御する。第1放送エンジン121は、列車情報管理システムからの鉄道車両10の運行に関する情報として、列車情報(列車種別、列車番号または運行番号、行先(目的地)、路線、方面、現在位置、次の停車駅、途中停車駅、扉が開く側など)を情報管理装置50から取得し、これらのテキストデータを生成する。第1放送エンジン121は、放送文章のひな形のテキストデータ(例えば、「この列車は〇〇線、<種別>、〇〇行きです。」)を取得し、ひな形のテキストデータの「〇〇」の部分に、列車情報として得られた路線、種別、目的地のテキストデータを組み込むことで、放送文章のテキストデータ(放送テキストデータ)を生成する。
【0029】
第2放送エンジン122は、第1放送エンジン121で生成される放送テキストデータ(第1の放送テキストデータと称する)の放送とともに放送する追加の放送テキストデータ(第2の放送テキストデータともいう)を取得する。第2放送エンジン122は、次停車駅が主要駅の場合、駅間の距離が長い場合など、必要に応じて記憶装置103(記憶装置103以外でもよい)から第2放送エンジン122用のテキストデータを取得(捕捉)する。
【0030】
情報管理装置50から得られる列車の運行に関する情報には、乗客が鉄道車両10を利用する場合の注意事項を示す注意情報、マナー条項を示すマナー情報、車両内外の設備などの各種案内に係る案内情報は含まれていない。このため、第1放送エンジン121が生成する第1の放送テキストデータだけでは、現状の車内放送において放送される内容よりも、情報が不足する。記憶装置103は、第2放送エンジン122用のテキストデータとして、注意情報、マナー情報、及び案内情報を含む放送文章のテキストデータを記憶装置103は記憶しており、プログラム(事前の設定、又はCPU102からの指示)に従って、第1の放送テキストデータとともに放送する第2の放送テキストデータに該当するテキストデータを記憶装置103から読み出す。
【0031】
但し、読み出しが設定されていない場合、及び、追加の放送テキストデータに基づく音声を放送する時間を確保できない場合には、第2の放送テキストデータの取得は行われない。第1及び第2の放送テキストデータは、音声合成部105に接続される。表示装置123は、鉄道車両10の内外の少なくとも一方に設けられ、第1及び第2の放送テキストデータに基づく放送文章の文字を表示する。
【0032】
車内放送システムは、さらに、IR(誘導無線)通信回路133と、端末134と、翻訳サーバ136と、車内サーバ135とを含む。車内サーバ135は、無線端末140と無線通信することができる。端末134は、鉄道車両10に乗った乗務員が所持する携帯端末(タブレット端末など)を想定している。但し、端末134は鉄道車両10に据え付けられた固定端末であってもよい。端末134は、テキストデータを生成する「装置」の一例である。
【0033】
図2に示すように、端末134は、通信インタフェース(通信IF)151と、CPU152と、記憶装置153と、入力装置154と、ディスプレイ155と、マイク156とを含む。鉄道車両10は、地上基地局131と誘導無線によって通信可能である。鉄道車両10が走行する線路に沿って、誘導線132が敷設されており、誘導線132を流れる地上基地局131からの信号は、電磁誘導作用によってIR通信回路133に受信され、鉄道車両10内の各所に伝達される。各所の一つとして、信号は、携帯端末134の通信IF151によって受信される。地上基地局131からの信号は、運転指令所のオペレータの音声信号である場合と、放送内容を示すテキストデータである場合とがある。なお、鉄道車両10の乗務員は、送受話器137を用いて音声を、IR通信回路133及び誘導線132を用いて地上基地局131に伝達することができる。
【0034】
記憶装置153は、CPU152によって実行または使用されるプログラム及びデータを記憶している。CPU152は、プログラムの実行によって、音声認識部161、「翻訳処理部」の一例である多言語翻訳部(翻訳部)162、音声合成部163として動作することができる。音声認識部161は、地上基地局131からの音声信号、マイク156から入力された乗務員(車掌、運転手)等の音声信号について、音声認識処理によってテキストデータを生成する。なお、本実施形態では、音声合成部105と音声合成部163とが設けられている。テキストの翻訳を行わない場合には、音声合成部105が行われ、翻訳が行われる場合には、音声合成部163が用いられる。なお、音声合成部105及び
音声合成部163の一方は省略可能である。
【0035】
翻訳部162は、音声認識部161からのテキストデータ、携帯端末134が受信する、第1放送エンジン121及び第2放送エンジン122からのテキストデータ、及び入力装置154を用いて入力されたテキストデータ(いずれも日本語のテキストデータであると仮定する)に対し、残りの6カ国語へ翻訳する処理を行う。6カ国語は、例えば、英語、中国語、韓国語、ドイツ語、スペイン語、及びポルトガル語であるが、これら以外の言語でもよい。また、6より多くても少なくてもよい。入力装置154は、ボタン、キー、タッチパネルなどである。
【0036】
翻訳部162は、携帯端末134の通信機能を用いて、翻訳サーバ136と通信を行い、日本語のテキストデータを翻訳サーバ136に送り、6カ国語への翻訳結果を翻訳サーバ136から受け取る。翻訳サーバ136の処理の一部又は全部を翻訳部162が行うようにしてもよい。
【0037】
7カ国分のテキストデータは、送信部として動作する通信IF151によって車内サーバ135に送信される。また、ディスプレイ155に、テキストデータに基づく放送文章を表示することもできる。また、テキストデータは音声合成部163に送られる。テキストデータは音声合成により音声信号に変換され、音声信号は制御増幅器106に接続される。これによって、1又は2以上の言語による車内放送が行われる。また、音声合成部163は、音声合成によって得られたアナログ信号をデジタル音声信号に変換し、CPU102に送る。CPU102は、情報管理装置50のメモリの所定アドレスに、デジタル音声信号のデータを記憶する。他の車両の放送装置は、このデジタル音声信号のデータにアクセスし、取得したデジタル音声データを他の車両での自動放送に使用する。
【0038】
図3は、車内サーバ135及び無線端末140の構成例を示す。図3において、車内サーバ135は、バス26を介して相互に接続された、処理部又は制御部(コントローラ)としてのプロセッサ21と、記憶装置22と、通信インタフェース(通信IF)23と、入力装置24と、ディスプレイ25とを含む。車内サーバ135は、1台の情報処理装置(コンピュータ)から構成されていても、2以上の情報処理装置の集合であってもよい。
【0039】
記憶装置22は、記憶装置103と同様のものを適用することができ、プログラム及びデータの記憶領域、プログラムの展開領域、プログラムの作業領域、及び通信データのバッファ領域などとして使用される。
【0040】
通信IF23は、通信処理を行う回路であり、端末134及び無線端末140との通信を司る。通信IF23は、無線LAN(WiFi)などの無線通信規格に適合または準拠する通信回路である。無線通信規格は、無線LAN(WiFi)以外(BLEなど)であってもよい。
【0041】
入力装置24は、例えば、キー、ボタン、ポインティングデバイス、タッチパネル等の少なくとも一つを含み、情報の入力に使用される。ディスプレイ25は例えば液晶ディスプレイなどであり、情報及びデータを表示する。プロセッサ21は、例えばCPU(Central Processing Unit)などである。プロセッサ21は、記憶装置22に記憶された各種
のプログラムを実行することによって、車内サーバ135としての様々な処理を行う。
【0042】
例えば、無線端末140に対する情報の提供が、Webベースで行われる場合、プロセッサ21は、プログラムの実行によってWebサーバとして動作し、7カ国語のテキストデータ(「複数の言語のテキストデータ」の一例)を無線端末140に提供するためのWebページを作成し、WebサーバにアクセスしてきたWebブラウザ(無線端末140
)に対し、該当のWebページを介して7カ国語のテキストデータを送信する。また、無線端末140に、7カ国語のテキストデータを扱うアプリケーションプログラム(アプリ)がインストールされている場合、プログラム21は、そのアプリと通信を行い、アプリからの提供要求に応じて7カ国語のテキストデータを無線端末140に送信する処理を行う。
【0043】
無線端末140は、鉄道車両10の乗客が所持するスマートデバイス(スマートフォン及びタブレット端末など)である。但し、無線端末140は、ラップトップ型のパーソナルコンピュータ(PC)、Personal Digital Assistant(PDA)、ウェアラブルコンピュータ等の携帯端末(可搬性を有する通信端末)であってもよい。無線端末140は、汎用の携帯端末でも専用の携帯端末でもよい。
【0044】
無線端末140は、バス36を介して相互に接続された、プロセッサ31と、記憶装置32と、通信インタフェース(通信IF)33と、入力装置34と、ディスプレイ35と、スピーカ36とを含む。プロセッサ31、記憶装置32、通信IF33、入力装置34、及びディスプレイ35の夫々は、プロセッサ21、記憶装置22、通信IF23、入力装置24、及びディスプレイ25について説明したものと同様のものを適用可能である。但し、用途及び使用目的等の違いに応じて、車内サーバ135に適用されるものと性能の異なるものが適用される。プロセッサ31は、記憶装置32に記憶された各種のプログラムを実行することによって、様々な処理を行う。プロセッサ31は、「受付部」及び「処理部」の一例である。また、通信IF33は、「受信部」及び「送信部」の一例である。
【0045】
例えば、プロセッサ31は、図4に示すような、言語の選択画面をディスプレイ35に表示する。選択画面は、車内サーバ135から提供されるWebページ、又はアプリによって表示されるアプリ固有の画面である。選択画面には、7カ国の言語(日本語で図示しているが、実際は表示言語設定に従う)とチェックボックスとが表示され、無線端末140のユーザは、所望の言語にチェックを入れる。プロセッサ31は、チェックされた言語をユーザの希望言語として受け付ける。
【0046】
プロセッサ31は、7カ国語のテキストデータを受信した場合に、希望言語のテキストデータを抽出し、抽出したテキストデータの音声合成によって音声信号を生成し、音声信号をスピーカ36に接続することによって、希望言語の音声を出力させる。これによって、無線端末140のユーザは、自身の所望する言語で放送内容を聴取することができる。また、プロセッサ31は、抽出したテキストデータに基づく文字(放送文章)を、ディスプレイ35に表示することもできる。音声出力と文字表示とは一方の選択的に、又は並列に実行することができ、無線端末140のユーザは、耳と目で放送内容を適正に理解することができる。
【0047】
なお、CPU152、プロセッサ21及びプロセッサ31の夫々として、複数個のCPUを適用しても、マルチコア型のCPUを適用してもよい。CPUによって行われる処理の少なくとも一部が、DSP(Digital Signal Processor)又はGPU(Graphical Processing Unit)のようなCPU以外のプロセッサによって行われてもよい。また、CPU
によって行われる処理の少なくとも一部が、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)及びFPGA(Field Programmable Gate Array)などを含む専用又は汎用の集積回路、或いはプロセッサと集積回路との組み合わせにより実行されてもよい。組み合わせは、マイクロコントローラ(MCU)、SoC(System-on-a-chip)、システムLSI、又はチップセットなどと呼ばれる。
【0048】
図5図6及び図7は、車内放送システムにおける動作例を示すフローチャートである。図5において、地上基地局131から送信されたテキストデータは、誘導無線通信(I
R通信)によって鉄道車両10で受信され、IR通信テキストとして、端末134の翻訳部162に送られる(S001)。また、IR通信で受信された音声信号は、端末134の音声認識部161に入力され(S002)、音声認識部161は、音声信号に対する音声認識処理を行う(S003)。音声認識によって得られた音声認識テキストは、翻訳部162に送られる(S004)。
【0049】
端末134の入力装置154を用いて、乗務員等が放送文章を入力すると(S005)、放送文章の手入力テキストが生成され(S006)、手入力テキストは翻訳部162に入力される。また、自動放送装置100の第1放送エンジン121及び第2放送エンジン122によって生成された放送文章のテキストデータを生成し(S007)、テキストデータは翻訳部162に送られる。自動放送装置100からのテキストデータは、記憶装置103から読み出されたテキストデータであってもよい。
【0050】
翻訳部162は、IR通信テキスト、音声認識テキスト、手入力テキスト、自動放送装置100からのテキストに対する翻訳処理を行う(S008)。これによって、7カ国語のテキストデータが得られ、車内サーバ135に送られる。車内サーバ135は、7カ国語のテキストデータを無線端末140で扱うことのできるデータ形式に変換し、無線送信する。
【0051】
無線端末140では、ユーザが希望する選択言語(「所定言語」の一例)を受け付け、選択言語を示す情報を記憶装置32に保存しておく(S01)。無線端末140は、車内サーバ135からの7カ国のテキストデータを取得した場合に、保存しておいた選択言語を示す情報を取得し、この情報に基づく言語のテキストデータを7カ国語のテキストデータから抽出する(S010)。無線端末140は、抽出した言語のテキストデータの音声合成処理によって、音声信号を生成し、音声信号に基づく放送音声をスピーカ36から出力する処理を行う(S011)。また、無線端末140は、抽出した言語のテキストデータの言語に基づく放送文章を、ディスプレイ35に表示する処理を行う(S012)。S011の処理はS012の処理と並列に行われてもよく、S012の後に行われてもよい。これによって、選択言語の放送音声の聴取、及び放送文章の視認(黙読又は音読)を、無線端末140のユーザである乗客は行うことができる。
【0052】
実施形態に係る放送システム、無線端末、及びプログラムによれば、鉄道車両10の運行状況から、乗客の希望する言語での放送が行われない場合に、車内サーバ135から送信されるテキストデータを乗客の所持する無線端末140で取得し、希望言語による放送文章の音声出力及び文字表示を無線端末140に行わせることができる。これによって、車内スピーカ108からの放送音声の内容を理解できなくても、無線端末140からの音声や文字により、放送内容を適正に理解することができる。
【0053】
また、実施形態に係る放送システムによれば、地上基地局131からIR通信によって提供されるテキストデータや音声信号に係るテキストデータを、無線端末140に接続し、希望する言語で、音声の聴取及び文字の視認を行うことができる。以上説明した実施形態の構成は、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
10・・・鉄道車両
100・・・自動放送装置
102・・・CPU
105・・・音声合成部
108・・・車内スピーカ
121・・・第1放送エンジン
122・・・第2放送エンジン
131・・・地上基地局
133・・・IR通信回路
134・・・端末
135・・・車内サーバ
140・・・無線端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7