(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】スペーサ、浮上防止具、スペーサの浮き上がり防止方法、及びコンクリート基礎を施工する方法
(51)【国際特許分類】
E04C 5/20 20060101AFI20240614BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
E04C5/20
E04G21/02 103A
(21)【出願番号】P 2020121970
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】506125720
【氏名又は名称】株式会社NSP KS
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 捷也
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-164753(JP,A)
【文献】実開昭63-192516(JP,U)
【文献】特開2017-031769(JP,A)
【文献】特開平10-196048(JP,A)
【文献】特開2014-214516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/20
E04G 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠の内側に第1のコンクリート打設をしてベース部を形成し、前記ベース部が硬化した後、前記型枠と鉄筋との間の前記ベース部上に第2のコンクリート打設をして立ち上がり部を形成する二回打ち工法によりコンクリート基礎を施工する際に、
前記ベース部と前記立ち上がり部との間の境界の打ち継ぎ目がグランドラインよりも低くなるように
、前記第1のコンクリート打設前に前記型枠と前記鉄筋との間に設置されることで、前記ベース部上に前記立ち上がり部のための空間を確保するように構成されたスペーサであって、
前記スペーサは、硬化した前記ベース部からの剥離を可能とする、柔軟性及び伸縮性を有する発泡性材料から成る、
スペーサ。
【請求項2】
前記発泡性材料は、発泡プラスチック、又は、発泡ゴムである、
請求項1に記載のスペーサ。
【請求項3】
前記発泡性材料は、ウレタンフォームである、
請求項1又は2に記載のスペーサ。
【請求項4】
前記スペーサは、前記型枠と前記鉄筋とによって挟まれて圧縮され、前記型枠と前記鉄筋との間に固定されるように構成された、
請求項1から3のいずれか1項に記載のスペーサ。
【請求項5】
前記スペーサは、丸まった形状である、
請求項1から4のいずれか1項に記載のスペーサ。
【請求項6】
前記スペーサは、複数の前記発泡性材料が積層されて成る、
請求項1から5のいずれか1項に記載のスペーサ。
【請求項7】
前記スペーサの幅は、型枠と鉄筋との間の間隔よりも大きい、
請求項1から6のいずれか1項に記載のスペーサ。
【請求項8】
第1のコンクリート打設の際、型枠と鉄筋との間に設置された請求項1から7のいずれか1項に記載のスペーサの浮き上がりを防止するための浮上防止具であって、
前記鉄筋に取り付けるための取付部と、
少なくともコンクリートの打設目標高さを示す表示部を備えたターゲットを上下動可能に支持するための支持部と、
を備え、
少なくとも一部が前記スペーサ上に配置される、
浮上防止具。
【請求項9】
第1のコンクリート打設の際、型枠と鉄筋との間に設置された請求項1から7のいずれか1項に記載のスペーサの浮き上がりを防止する方法であって、
前記鉄筋に取り付けるための取付部と、少なくともコンクリートの打設目標高さを示す表示部を備えたターゲットを上下動可能に支持するための支持部と、を備える浮上防止具を準備する工程と、
前記浮上防止具の少なくとも一部が前記スペーサ上に配置されるように、前記取付部を前記鉄筋に取り付ける工程と、
を含む方法。
【請求項10】
発泡性材料から成る、
請求項8に記載の浮上防止具。
【請求項11】
前記浮上防止具の幅は、
前記型枠と
前記鉄筋との間の間隔よりも大きい、
請求項10に記載の浮上防止具。
【請求項12】
コンクリート基礎を施工する方法であって、
型枠の内側に第1のコンクリート打設をしてベース部を形成する工程と、
前記ベース部が硬化した後、前記型枠と鉄筋との間の前記ベース部上に第2のコンクリート打設をして立ち上がり部を形成する工程と、を含み、
前記ベース部と前記立ち上がり部との間の境界の打ち継ぎ目がグランドラインよりも低くなるように、前記第1のコンクリート打設前に前記型枠と前記鉄筋との間にスペーサを設置することで、前記ベース部上に前記立ち上がり部のための空間を確保し、
前記スペーサは、硬化した前記ベース部からの剥離を可能とする、柔軟性及び伸縮性を有する発泡性材料から成り、
前記スペーサが前記ベース部から剥離された後、前記第2のコンクリート打設によって前記立ち上がり部が形成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二回打ち工法によりコンクリート基礎を施工する際に使用されるスペーサに関する。また、本発明は、当該スペーサの浮き上がりを防止するための浮上防止具に関する。また、本発明は、当該スペーサの浮き上がりを防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート基礎(以下、単に「基礎」と表記する)の施工方法として、コンクリートの打設を二回に分けて行う二回打ち工法が知られている。二回打ち工法では、まず、ベース部のコンクリートを打設し、ベース部が硬化した後、ベース部上に立ち上がり部のコンクリートを打設して、立ち上がり部を施工する。二回打ち工法により基礎を施工すると、ベース部と立ち上がり部との間の境界である打ち継ぎ目が生じる。
【0003】
打ち継ぎ目が露出していると基礎の見栄えがよくないため、打ち継ぎ目を隠すために、打ち継ぎ目がグランドライン(以下、「GL」と表記する)よりも下方に位置するように基礎を施工することが行われている。打ち継ぎ目をGLよりも下げるための治具として、従来、
図9に示す切欠きプレート100が使用されている。以下では、
図9及び
図10を参照して、切欠きプレート100、及び切欠きプレート100を使用した基礎の施工方法について説明する。
【0004】
切欠きプレート100は、鉄製の板材をJ字型に折り曲げることにより構成されている。切欠きプレート100には、切欠きプレート100がコンクリートから剥離しやすいようにするために、コンクリートの打設前に剥離剤が塗布される。
図10(a)に示すように、切欠きプレート100は、その底部がGLよりも低くなるように、型枠(外枠)Pに希土類磁石を用いて取り付けられる。
図10(b)及び(c)に示すように、切欠きプレート100は、ベース部Bの施工が完了した後、型枠P及びベース部Bから取り外される。切欠きプレート100は、その底部がGLよりも低くなるように配置されているため、施工されたベース部Bの外面は、GLよりも低くなる。したがって、打ち継ぎ目をGLよりも低くすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の切欠きプレートは、鉄製のため重く、扱いづらいという問題がある。また、従来、型枠の内面には、基礎の中性化を防止するため、あるいは、基礎の外観(見た目)を向上させるために養生シートが設置されることがある。切欠きプレートに剥離剤が塗布されていると、その剥離剤によって養生シートを汚してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、打ち継ぎ目をGLよりも低くすることができると共に、基礎の施工における作業性を向上させることができるスペーサを提供することを目的とする。また、本発明は、当該スペーサの浮き上がりを防止するための浮上防止具を提供することを目的とする。また、本発明は、当該スペーサの浮き上がりを防止する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(項目1)
二回打ち工法によりコンクリート基礎を施工する際に、打ち継ぎ目がグランドラインよりも低くなるようにするためのスペーサであって、
発泡性材料から成る、
スペーサ。
(項目2)
前記発泡性材料は、発泡プラスチック、又は、発泡ゴムである、
項目1に記載のスペーサ。
(項目3)
前記発泡性材料は、ウレタンフォームである、
項目1又は2に記載のスペーサ。
(項目4)
前記発泡性材料は、柔軟性及び伸縮性を有する、
項目1から3のいずれか1項に記載のスペーサ。
(項目5)
前記スペーサは、丸まった形状である、
項目1から4のいずれか1項に記載のスペーサ。
(項目6)
前記スペーサは、複数の前記発泡性材料が積層されて成る、
項目1から5のいずれか1項に記載のスペーサ。
(項目7)
前記スペーサの幅は、型枠と鉄筋との間の間隔よりも大きい、
項目1から6のいずれか1項に記載のスペーサ。
(項目8)
項目1から7のいずれか1項に記載のスペーサの浮き上がりを防止するための浮上防止具であって、
鉄筋に取り付けるための取付部と、
少なくともコンクリートの打設目標高さを示す表示部を備えたターゲットを上下動可能に支持するための支持部と、
を備え、
少なくとも一部が前記スペーサ上に配置される、
浮上防止具。
(項目9)
項目1から7のいずれか1項に記載のスペーサの浮き上がりを防止する方法であって、
鉄筋に取り付けるための取付部と、少なくともコンクリートの打設目標高さを示す表示部を備えたターゲットを上下動可能に支持するための支持部と、を備える浮上防止具を準備する工程と、
前記浮上防止具の少なくとも一部が前記スペーサ上に配置されるように、前記取付部を前記鉄筋に取り付ける工程と、
を含む方法。
(項目10)
項目1から7のいずれか1項に記載のスペーサの浮き上がりを防止するための浮上防止具であって、
発泡性材料から成る、
浮上防止具。
(項目11)
前記浮上防止具の幅は、型枠と鉄筋との間の間隔よりも大きい、
項目10に記載の浮上防止具。
【発明の効果】
【0008】
発泡性材料は、軽量で且つコンクリートからの剥離性が高い。したがって、発泡性材料から成るスペーサを使用することにより、打ち継ぎ目をGLよりも低くすることができると共に、基礎の施工における作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】(a)スペーサの設置後で且つベース部のコンクリートを打設する前の断面図、(b)ベース部のコンクリートを打設した後の断面図、(c)スペーサを取り外した後の断面図である。
【
図6】第一実施形態の浮上防止具の使用状態を示す断面図である。
【
図8】第二実施形態の浮上防止具の使用状態を示す断面図である。
【
図9】従来使用されている切欠きプレートの斜視図である。
【
図10】(a)切欠きプレートの設置後で且つベース部のコンクリートを打設する前の断面図、(b)ベース部のコンクリートを打設した後の断面図、(c)切欠きプレートを取り外した後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のスペーサ10及び浮上防止具20について図面を参照しながら説明する。以下で説明する実施形態は、本発明の一具体例を示すものに過ぎない。本発明は、以下で説明する実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0011】
<1 スペーサ>
本発明のスペーサ10は、二回打ち工法により基礎を施工する際に、打ち継ぎ目をGLよりも下げるために使用される。すなわち、本発明のスペーサ10は、ベース部Bの外面を、GLよりも下げるために使用される。
【0012】
本発明のスペーサ10は、発泡性材料から成る。発泡性材料は、好ましくは発泡プラスチック又は発泡ゴムであり、例えば、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォームを使用することができる。発泡性材料は、柔軟性及び伸縮性を有することがより好ましい。このような観点及び入手容易性の観点から、発泡性材料としては、ウレタンフォームが特に好ましい。
【0013】
図1に示すように、スペーサ10は、丸まった形状であることが好ましい。スペーサ10は、例えば、矩形状で且つ板状の発泡性材料の両端を丸めることにより、スペーサ10全体を丸まった形状とすることができる。
【0014】
次に、
図2を参照して、スペーサ10の使用方法について説明する。
図2(a)に示すように、スペーサ10は、型枠(外枠)Pと鉄筋(縦筋及び/又は横筋)Tとの間に配置される。スペーサ10は、型枠Pの内面に接する部分の下端がGLよりも下方に位置するように配置される。配置前のスペーサ10の幅は、型枠Pと鉄筋Tとの間の間隔よりも大きい。したがって、スペーサ10を型枠Pと鉄筋Tとの間に配置したとき、スペーサ10は型枠Pと鉄筋Tとによって挟まれて圧縮され、型枠Pと鉄筋Tとの間に固定される。
【0015】
図2(b)に示すように、スペーサ10を所定の位置に配置した後、ベース部Bのコンクリートを打設する。
図2(c)に示すように、ベース部Bのコンクリートが硬化した後、スペーサ10をベース部Bから引き剥がす。スペーサ10をベース部Bから剥がした後、ベース部Bのうちスペーサ10が存在していた部分は他の部分と比べて凹んでいる。スペーサ10を剥がした後のベース部Bの外面は、GLよりも下方に位置しているため、ベース部B上に立ち上がり部を形成するためのコンクリートを打設すると、打ち継ぎ目はGLよりも下方に位置することになる。
【0016】
<2 スペーサの特徴>
上記で説明した実施形態により、以下のような効果を得ることができる。
【0017】
スペーサ10は発泡性材料から成るため、軽量であり、扱いやすい。また、スペーサ10が発泡性材料から成ることにより、スペーサ10に剥離剤を塗布しなくても、スペーサ10をコンクリート(ベース部B)から容易に剥離させることができる。このように、発泡性材料から成るスペーサ10を使用することにより、打ち継ぎ目をGLよりも低くすることができると共に、基礎の施工における作業性を向上させることができる。
【0018】
発泡プラスチック又は発泡ゴム、特にウレタンフォームは、入手が容易であるため、これらの材料によってスペーサ10を構成することにより、基礎の施工コストを低下させることができる。
【0019】
スペーサ10が柔軟性及び伸縮性を有していることにより、スペーサ10をコンクリートから容易に剥がすことができる。
【0020】
スペーサ10が丸まった形状であることにより、耐圧縮性が高くなり、コンクリートの圧力によってスペーサ10が潰れてしまうことを防止できる。スペーサ10の潰れを防止できることにより、スペーサ10をコンクリートから剥がした後にできる空間の広さを十分に確保できる。これにより、その空間に、立ち上がり部を形成するためのコンクリートを十分に進入させることができるため、基礎の強度低下を防止できる。
【0021】
型枠Pと鉄筋Tとの間に配置される前のスペーサ10の幅が、型枠Pと鉄筋Tとの間の間隔よりも大きくなっていることにより、他の部材を使用することなく、スペーサ10を所定の位置に固定することができる。
【0022】
<3 スペーサの変形例>
上記実施形態は、スペーサ10の好ましい一具体例を示すものである。本発明は、上記の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。本発明は、例えば、以下の変形例に示す構成を採用することができ、以下に示す変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0023】
(1)スペーサ10は、
図3に示すように、複数の発泡性材料が積層された積層体が丸められた形態であってもよい。このような構成により、スペーサ10の耐圧縮性をより向上させることができる。なお、
図3に示すスペーサ10の変形例では、発泡性材料が2層に積層されているが、積層する発泡性材料はこれに限定されず、3層以上であってもよい。
【0024】
(2)スペーサ10として、板状の発泡性材料を丸めて使用するのではなく、円筒状又は円柱状(真円又は楕円)に成形された発泡性材料を使用してもよい。
【0025】
(3)スペーサ10は、取付部材によって、所定の位置に配置されてもよい。例えば、取付部材として紐やワイヤを使用し、紐やワイヤによってスペーサ10を鉄筋Tに固定するようにしてもよい。
【0026】
<4 浮上防止具>
図面を参照しつつ、浮上防止具について説明する。スペーサ10は軽量であるため、ベース部Bのコンクリートが流し込まれたときに、所定の位置から浮き上がってしまうおそれがある。そこで、スペーサ10の浮き上がりを防止するために、浮上防止具20、20’を使用することが好ましい。
【0027】
<4-1 第一実施形態>
図4から
図6を参照して、浮上防止具の第一実施形態について説明する。
【0028】
図4及び
図5に示すように、浮上防止具20は、取付部21と、支持部22と、一対の操作部23と、ロック部24と、を備える。浮上防止具20は、好ましくはプラスチック製の一体成形品である。
【0029】
取付部21は、浮上防止具20自体を縦筋T’に取り付けるための部分である。取付部21は、湾曲した二つの取付片21aを備える。二つの取付片21aは離隔して設けられており、二つの取付片21aによって囲まれる空間には縦筋T’が配置される。浮上防止具20は、二つの取付片21aによって縦筋T’を挟むことで、上下方向にズレないように縦筋T’に取り付けられる。
【0030】
支持部22は、コンクリート及びレベリング材の打設目標高さを表示する表示部を有するターゲット30を、上下動可能に支持するための部分である。ターゲット30は、本体部31と、ネジ部32と、コンクリート用表示部33と、レベリング材用表示部34と、を備える。本体部31は、上下方向に延びる棒状である。ネジ部32は、本体部31の下部に形成されている。コンクリート用表示部33は、コンクリートの打設目標高さを表示する部分であり、本体部31の上部から外方に延びる羽根である。レベリング材用表示部34は、レベリング材の打設目標高さを表示する部分であり、本実施形態では本体部31の上端である。
【0031】
支持部22は、取付部21よりも上方で、且つ、取付部21からずれた位置に設けられている。支持部22は、円筒状であり、その内面には、ターゲット30のネジ部32と螺合可能な突起部22aが設けられている。
【0032】
操作部23は、取付部21を縦筋T’に取り付ける際に、二つの取付片21aを離隔するように移動させ、縦筋T’を挟む空間を広げるための部分である。各操作部23はそれぞれ各取付片21aと接続されている。二つの操作部23が互いに接近するように操作部23を摘まむことにより、二つの取付片21aは離隔するように移動する。これにより、二つの取付片21aによって囲まれる空間が広がり、取付部21を縦筋T’に取り付けることができるようになる。二つの取付片21aによって囲まれる空間内に縦筋T’を配置した後、操作部23から手を離すことにより、二つの取付片21aは互いに接近するように移動し、二つの取付片21aによって縦筋T’を挟むことができる。
【0033】
ロック部24は、取付部21を縦筋T’に取り付けた後、二つの操作部23が互いに接近することを規制する部分である。浮上防止具20がロック部24を有していることにより、取付部21の緩みを抑え、浮上防止具20が上下方向にズレたり、あるいは浮上防止具20が縦筋T’から外れてしまうことを防止できる。ロック部24は、一方の操作部23の内面から延びるロック片24aと、他方の操作部23の内面に設けられ、ロック片24aが係合する係合部24bと、から成る。取付部21を縦筋T’に取り付けた後、ロック片24aを係合部24bに係合させることにより、二つの操作部23を互いに接近させることができなくなる。
【0034】
図6を参照して、浮上防止具20の使用方法について説明する。浮上防止具20は、その一部がスペーサ10上に位置するように縦筋T’に取り付けられる。
図6に示す実施形態では、操作部23がスペーサ10上に位置している。
【0035】
浮上防止具20は縦筋T’に上下方向にズレないように取り付けられているため、浮上防止具20の少なくとも一部がスペーサ10上に配置されていることにより、スペーサ10の浮き上がりを防止することができる。
【0036】
基礎を施工する際には、通常、上記で説明したようなターゲット30、及びターゲット30を所定高さに支持するための補助具が使用される。本発明の浮上防止具20は、ターゲット30を支持するための補助具としての機能と、スペーサ10の浮き上がりを防止するための浮上防止具としての機能の両方を備えているため、浮上防止具20を用いれば、補助具と浮上防止具とを別々に準備する必要がない。そのため、基礎の施工コストを低下させることができる。
【0037】
なお、スペーサ10上に配置される部分は操作部23に限定されず、浮上防止具20の別の部分であってもよい。
【0038】
<4-2 第二実施形態>
次に、
図7及び
図8を参照して、浮上防止具の第二実施形態について説明する。浮上防止具20’は、発泡性材料から成る。浮上防止具20’に使用される発泡性材料は、スペーサ10に使用可能な発泡性材料として挙げた材料を使用することができる。浮上防止具20’の形状は特に限定されないが、例えば、円筒状又は円柱状(真円又は楕円)である。
【0039】
図8に示すように、スペーサ10を所定の位置に配置した後、浮上防止具20’をスペーサ10上で且つ型枠Pと鉄筋Tとの間に配置する。配置前の浮上防止具20’の幅は、型枠Pと鉄筋Tとの間の間隔よりも大きい。したがって、浮上防止具20’を型枠Pと鉄筋Tとの間に配置したとき、浮上防止具20’は型枠Pと鉄筋Tとによって挟まれて圧縮され、型枠Pと鉄筋Tとの間に固定される。
【0040】
浮上防止具20’は型枠Pと鉄筋Tとの間に固定されているため、浮上防止具20’の少なくとも一部がスペーサ10上に配置されていることにより、スペーサ10の浮き上がりを防止することができる。
【0041】
浮上防止具20’は発泡性材料から成るため、軽量であり、扱いやすい。このように、発泡性材料から成る浮上防止具20’を使用することにより、基礎の施工における作業性を向上させることができる。
【0042】
発泡プラスチック又は発泡ゴム、特にウレタンフォームは、入手が容易であるため、基礎の施工コストを低下させることができる。
【0043】
型枠Pと鉄筋Tとの間に配置される前の浮上防止具20’の幅が、型枠Pと鉄筋Tとの間の間隔よりも大きくなっていることにより、他の部材を使用することなく、浮上防止具20’を所定の位置に固定することができる。
【0044】
なお、浮上防止具20’は、取付部材によって、所定の位置に配置されてもよい。例えば、取付部材として紐やワイヤを使用し、紐やワイヤによって浮上防止具20’を鉄筋Tに固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 スペーサ
20、20’ 浮上防止具
21 取付部
22 支持部
23 操作部
30 ターゲット
33 コンクリート用表示部
P 型枠
T 鉄筋
T’ 縦筋