(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】miRNAの抽出方法、および、miRNAの解析方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20240614BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20240614BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240614BHJP
C12M 1/34 20060101ALN20240614BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20240614BHJP
【FI】
C12N15/10 110Z
C12Q1/6806 Z
G01N33/50 P
C12M1/34 Z
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2020553963
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2019042499
(87)【国際公開番号】W WO2020090860
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2018203527
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトのアドレス:http://advances.sciencemag.org/content/3/12/e1701133.full ウェブサイトの掲載日:平成29年12月15日 公開者名:Takao Yasui、Takeshi Yanagida、Satoru lto、Yuki Konakade、Daiki Takeshita、Tsuyoshi Naganawa、Kazuki Nagashima、Taisuke Shimada、Noritada Kaji、Yuta Nakamura、lvan Adiyasa Thiodorus、Yong He、Sakon Rahong、Masaki Kanai、Hiroshi Yukawa、Takahiro Ochiya、Tomoji Kawai、Yoshinobu Baba 刊行物名:”Unveiling massive numbers of cancer-related urinary-microRNA candidates via nanowires”,Science Advances, 15 Dec 2017:Vol. 3, no. 12,e1701133 DOI: 10.1126/sciadv.1701133 ウェブサイトのアドレス:http://advances.sciencemag.org/cgi/content/full/3/12/e1701133/DC1 ウェブサイトの掲載日:平成29年12月15日 公開者名:Takao Yasui、Takeshi Yanagida、Satoru lto、Yuki Konakade、Daiki Takeshita、Tsuyoshi Naganawa、Kazuki Nagashima、Taisuke Shimada、Noritada Kaji、Yuta Nakamura、lvan Adiyasa Thiodorus、Yong He、Sakon Rahong、Masaki Kanai
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「がん転移メカニズム解明にむけた人工超空間の創製」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519035643
【氏名又は名称】Craif株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174252
【氏名又は名称】赤津 豪
(74)【代理人】
【識別番号】100158366
【氏名又は名称】井戸 篤史
(72)【発明者】
【氏名】安井 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】馬場 嘉信
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/154951(WO,A1)
【文献】YASUI Takao.et al.,Science advances,2017年,e1701133, p.1-19
【文献】BIO INDUSTRY,2015年,Vol.32,p.15-19
【文献】BUNSEKI KAGAKU,2015年,Vol.64,p.413-419
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/10
C12Q 1/68
C12M 1/00
C12M 1/34
G01N 33/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外小胞を捕捉できるデバイスを用いたサンプル液中の細胞外小胞からのmiRNAの抽出方法であって、
該miRNAの抽出方法は、
サンプル液とデバイスとを接触させることで、サンプル液中の細胞外小胞をデバイスに捕捉する細胞外小胞捕捉工程、
細胞外小胞を捕捉したデバイスを細胞外小胞の破砕液と接触させることで、細胞外小胞を破砕し、細胞外小胞からmiRNAを破砕液中に抽出するmiRNA抽出工程、
前記細胞外小胞捕捉工程と前記miRNA抽出工程との間に、細胞外小胞を捕捉したデバイスを洗浄するデバイス洗浄工程、
を含む、miRNAの抽出方法。
【請求項2】
前記洗浄工程が、デバイスからRNaseを除去する工程である、請求項1に記載のmiRNAの抽出方法。
【請求項3】
前記洗浄工程が、デバイスを洗浄液に所定時間浸漬する工程である、請求項1又は2に記載のmiRNAの抽出方法。
【請求項4】
前記デバイスが、破砕液に対して耐久性がある材料で形成されている、請求項1~3いずれか一項に記載のmiRNAの抽出方法。
【請求項5】
該デバイスは、セルロースファイバーで構成された不織布を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載miRNAの抽出方法。
【請求項6】
セルロースファイバーが、セルロースナノファイバーである、請求項5に記載のmiRNAの抽出方法。
【請求項7】
前記デバイスが、
ナノワイヤ、
セルロースファイバーを用いて作製した構造体、および、
セルロースナノファイバーを用いて作製した構造体、
から選択される何れか一つを含む、
請求項4に記載のmiRNAの抽出方法。
【請求項8】
前記デバイスが、セルロースナノファイバーを用いて作製した構造体である、
請求項7に記載のmiRNAの抽出方法。
【請求項9】
前記サンプル液が、非侵襲性の生体サンプル液である、
請求項1~8の何れか一項に記載のmiRNAの抽出方法。
【請求項10】
前記サンプル液が、唾液である、
請求項9に記載のmiRNAの抽出方法。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載のmiRNAの抽出方法
を含み、
前記miRNAの抽出方法におけるmiRNA抽出工程で抽出した破砕液中に含まれるmiRNAを解析する解析工程を含む、
サンプル液中の細胞外小胞に含まれるmiRNAの解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願における開示は、miRNAの抽出方法、および、miRNAの解析方法に関する。特に、細胞外小胞(Extracellular Vesicles、エクソソーム;以下、「EVs」と記載することがある。)を捕捉できるデバイスを用い、サンプル液中のEVsからmiRNAを抽出するmiRNAの抽出方法、および、miRNAの抽出方法で得られた抽出液中に含まれるmiRNAを解析するmiRNAの解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
EVsは、生体内の細胞から分泌される40~1000nm程の大きさを持った膜小胞体であり、血液、尿、唾液、精液などの体液中に存在している。その表面には、分泌細胞由来の膜タンパク質や接着分子、酵素等が存在し、内部にはmRNAやmiRNAといった核酸が含まれている。そのため、他の細胞に伝播し、取り込まれることで受容細胞へ影響を与える。
【0003】
近年、EVsの生体内での機能の一つとして、がん転移の誘発性があることが明らかとなり、注目を集めている。がん転移とは、がん細胞が、がんの発生部位から血管やリンパを媒介して他の臓器へ伝播し増殖することを言い、がんによる死亡率が高いこともこの転移に起因する。このがん転移の発生に関して、がん原発巣のがん細胞由来のEVsが、血管を通って他の臓器へ伝播し、がん転移性ニッチを形成することや、がん細胞由来のEVsが、正常細胞の異常な増殖を誘発し、がん腫瘍形成へと発展させることなど、EVsとがん転移に関する研究が報告されている(非特許文献1参照)。
【0004】
また、EVs中の含まれるmiRNAが、疾患に対するバイオマーカーとして用いられることも知られている(非特許文献2および3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Sonia A. Melo,et al.,“Cancer Exosomes Perform Cell-Independent MicroRNA Biogenesis and Promote Tumorigenesis”, Cancer Cell 26, 707-721, November 10, 2014 http://dx.doi.org/10.1016/j.ccell.2014.09.005
【文献】Amanda Michael,et al., “Exosomes from Human Saliva as a Source of microRNA Biomarkers”, Oral Dis. 2010 January;16(1):34-38. doi:10.1111/j.1601-0825.2009.01604.x.
【文献】Kazuya Iwai、et al., “Isolation of human salivary extracellular vesicles by iodixanol density gradient ultracentrifugation and their characterizations”, Journal of Extracellular Vesicles 2016,5:30829-http://dx.doi.org/10.3402/jev.v5.30829
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記非特許文献2および3に記載されているとおり、サンプル中(非特許文献2および3では唾液)のEVsに含まれるmiRNAを、疾患に対するバイオマーカーとして用いることは知られている。ところで、非特許文献2および3には、サンプル液を超遠心分離することで、サンプル液中からEVsを回収することが記載されている。しかしながら、超遠心による分離は、超遠心後にEVsを含む画分を回収する必要がある。
【0007】
そのため、超遠心分離工程が必須となり、作業手順が増えるという問題がある。更に、サンプル液の量が少ない場合、サンプル液中に含まれる微量のmiRNAまで解析するためには、サンプル液中に含まれるEVsを回収する際に、ロスを少なくする必要がある。しかしながら、超遠心分離によりEVsを回収する方法では、EVsを含む画分を採取する操作過程で、サンプル中に含まれるEVsの一部を捨ててしまう恐れがあるという問題がある。また、サンプル液中のEVsの分離方法としては、超遠心法以外にも、市販のキットを用いた、凝集試薬法も知られている。しかしながら、凝集試薬法に関しても、サンプル液中のEVsを凝集した後は、遠心分離等により凝集したEVsを分離する必要があり、作業手順が増えるとともに、EVsの分離作業中にロスが生じるという問題がある。したがって、サンプル液から、作業手順が簡単で且つ効率的にEVsを回収する方法が求められる。
【0008】
本出願における開示は、上記問題点を解決するためになされたものであり、鋭意研究を行ったところ、[1]EVsを捕捉できるデバイスとサンプル液を接触させることで、EVsをデバイスに捕捉させ、[2]EVsを捕捉したデバイスを直接EVsの破砕液と接触させることで、[3]デバイスで捕捉したEVsを分離する工程を要せず、デバイスに捕捉したEVsから直接miRNAを抽出できること、を新たに見出した。
【0009】
すなわち、本出願における開示の目的は、新たなmiRNAの抽出方法、および、該miRNAの抽出方法で抽出したmiRNAを解析する解析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願における開示は、以下に示す、miRNAの抽出方法、および、miRNAの解析方法に関する。
【0011】
(1)細胞外小胞を捕捉できるデバイスを用いたサンプル液中の細胞外小胞からのmiRNAの抽出方法であって、該miRNAの抽出方法は、
サンプル液とデバイスとを接触させることで、サンプル液中の細胞外小胞をデバイスに捕捉する細胞外小胞捕捉工程、
細胞外小胞を捕捉したデバイスを細胞外小胞の破砕液と接触させることで、細胞外小胞を破砕し、細胞外小胞からmiRNAを破砕液中に抽出するmiRNA抽出工程、
を含む、miRNAの抽出方法。
(2)前記細胞外小胞捕捉工程と前記miRNA抽出工程との間に、細胞外小胞を捕捉したデバイスを洗浄するデバイス洗浄工程、
を含む、上記(1)に記載のmiRNAの抽出方法。
(3)前記デバイスが、破砕液に対して耐久性がある材料で形成されている、
上記(1)または(2)に記載のmiRNAの抽出方法。
(4)該デバイスは、セルロースファイバーで構成された不織布を含む、上記(1)~(3)のいずれかに記載miRNAの抽出方法。
(5)セルロースファイバーが、セルロースナノファイバーである、上記(4)に記載のmiRNAの抽出方法。
(6)前記デバイスが、
ナノワイヤ、
セルロースファイバーを用いて作製した構造体、および、
セルロースナノファイバーを用いて作製した構造体、
から選択される何れか一つを含む、
上記(3)に記載のmiRNAの抽出方法。
(7)前記デバイスが、セルロースナノファイバーを用いて作製した構造体である、
上記(6)に記載のmiRNAの抽出方法。
(8)前記サンプル液が、非侵襲性の生体サンプル液である、
上記(1)~(7)の何れか一つに記載のmiRNAの抽出方法。
(9)前記サンプル液が、唾液である、
上記(8)に記載のmiRNAの抽出方法。
(10)上記(1)~(9)の何れか一つに記載のmiRNAの抽出方法で抽出した破砕液中に含まれるmiRNAを解析する解析工程を含む、
サンプル液中の細胞外小胞に含まれるmiRNAの解析方法。
【発明の効果】
【0012】
本出願で開示するmiRNAの抽出方法により、超遠心分離等によりサンプル液中のEVsを分離する工程を要せず、デバイスに捕捉したEVsから直接miRNAを抽出できる。また、miRNAの抽出方法により抽出したmiRNAを解析することで、微量のmiRNAも解析できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、抽出方法の第1の実施形態のフローチャートである。
【
図2】
図2A乃至
図2Dは、第3の実施形態に係るデバイス1の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第3の実施形態に係るデバイス1の一例である、ナノワイヤ3を基板2の第1面に形成したデバイス1aの作製工程の一例を説明するための図である。
【
図4】
図4A乃至
図4Cはカバー部材4の各種態様を示す図である。
図4Dは第1面にナノワイヤを形成した基板2を表す。
【
図5】
図5は、第4の実施形態に係るデバイス1bの作製工程の一例を説明するための図である。
【
図6】
図6A乃至
図6Eは、図面代用写真で、それぞれ、作製したデバイス1乃至5の写真である。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、図面代用写真で、(a)miRNA抽出後にデバイスを遠沈管から取り出した後の遠沈管の写真、(b)遠沈管から取り出したデバイスの写真である。
【
図8】
図8A及び
図8Bは、図面代用写真で、(a)miRNA抽出工程終了直後の遠沈管の写真、(b)miRNA抽出後にデバイスを遠沈管から取り出した後の遠沈管の写真、(c)遠沈管から取り出したデバイスの写真である。
【
図9】
図9は、デバイス1乃至4を用いて抽出したmiRNA抽出液中に含まれる、miRNAの種類を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、miRNAの抽出方法(以下、単に「抽出方法」と記載することがある。)、および、miRNAの解析方法(以下、単に「解析方法」と記載することがある。)について、詳しく説明する。なお、本明細書において、同種の機能を有する部材には、同一または類似の符号が付されている。そして、同一または類似の符号の付された部材について、繰り返しとなる説明が省略される場合がある。
【0015】
(抽出方法の第1の実施形態)
図1を参照して、抽出方法の第1の実施形態について説明する。
図1は、抽出方法の第1の実施形態のフローチャートである。抽出方法の第1の実施形態は、細胞外小胞(EVs)捕捉工程(ST1)、miRNA抽出工程(ST2)を含んでいる。細胞外小胞(EVs)捕捉工程(ST1)では、サンプル液とEVsを捕捉できるデバイスとを接触させることで、サンプル液中のEVsをデバイスに捕捉する。miRNA抽出工程(ST2)では、EVsを捕捉したデバイスをEVsの破砕液と接触させることでEVsを破砕し、EVsからmiRNAを破砕液中に抽出する。
【0016】
サンプル液としては、EVsを含むものであれば特に制限はなく、血液、リンパ液、骨髄液、精液、母乳、羊水、尿、唾液、鼻水、汗、涙、胆液、脳脊髄液等の生体サンプル液が挙げられる。また、生体サンプル液以外のサンプル液としては、細胞培養上清、培地または緩衝液等にEVsを添加した実験用のサンプル液、等が挙げられる。サンプル液として生体サンプル液を用いた場合、患者負担の軽減を考慮すると、尿、唾液、鼻水、汗、涙等の非侵襲性サンプル液が好ましい。
【0017】
なお、後述する実施例に示すとおり、本出願で開示する抽出方法の第1の実施形態で抽出したmiRNAを解析すると、多くの種類のmiRNAを解析することができた。換言すると、従来の方法では解析できなかった微量のmiRNAも解析することができた。したがって、同じ種類のサンプル液であれば、少ない量で抽出方法を実施することができる。また、超遠心分離によりEVsを分画・回収するためには、数ml程度のサンプル液が必要とされている。しかしながら、例えば、唾液や涙等、数mlの量を採取することが患者にとって大きな負担になる生体サンプル液もある。抽出方法の第1の実施形態では、従来の超遠心分離による方法と比較して、サンプル液の量が少なくてもmiRNAを抽出できるので、唾液中のEVsに含まれるmiRNAの抽出に特に有用である。
【0018】
EVsの破砕液は、EVsが破砕できれば特に制限はなく、例えば、市販の細胞溶解バッファー(Cell Lysis Buffer)を用いればよい。細胞溶解バッファーとしては、細胞溶解バッファーM(富士フィルム和光純薬株式会社製、038-21141)、RIPA Buffer(富士フィルム和光純薬株式会社製、182-02451)等が挙げられる。なお、デバイスを破砕液に浸漬する時間は、EVsを破砕してmiRNAを取り出すことができれば特に制限はない。なお、デバイスについては後述する。
【0019】
(抽出方法の第2の実施形態)
抽出方法の第2の実施形態は、
図1に示す細胞外小胞(EVs)捕捉工程(ST1)とmiRNA抽出工程(ST2)の間に、EVsを捕捉したデバイスを洗浄するデバイス洗浄工程を含む点で抽出方法の第1の実施形態と異なり、その他の点は抽出方法の第1の実施形態と同様である。生体から抽出した生体サンプル液、例えば、唾液、汗、鼻水等には、外部から侵入したウイルス等から生体を守るため、ウイルス等の異物のRNAを分解する酵素であるRNaseを含んでいる。そのため、唾液、汗、鼻水等のRNaseを含む生体サンプル液からmiRNAを抽出する場合、細胞外小胞捕捉工程の際に、デバイスにRNaseが吸着する恐れがある。そして、RNaseが吸着したデバイスでmiRNA抽出工程を実施すると、EVsから抽出したmiRNAがRNaseにより分解される恐れがある。
【0020】
そのため、デバイス洗浄工程では、EVsを捕捉したデバイスを洗浄することで、デバイスからRNaseを除去する。デバイス洗浄工程では、EVsを捕捉したデバイスを洗浄液に所定時間浸漬し、洗浄すればよい。洗浄時間は特に制限はないが、短すぎると洗浄効果がなく、長すぎると捕捉したEVsが剥がれるとの問題が発生する。例えば、デバイスを洗浄液に、1~2000秒程度、浸漬すればよい。洗浄液としては、純水、PBS、NaCl、生理食塩水、PBS等の各種緩衝液等が挙げられる。なお、洗浄液として純水を用いた場合、長時間洗浄を行うと、浸透圧の関係で捕捉したEVsがバーストする恐れがある。したがって、洗浄液として純水を用いた場合は、緩衝液等と比較して、洗浄時間は短めに設定することが望ましい。
【0021】
(miRNAの解析方法の実施形態)
miRNAの解析方法の実施形態は、抽出方法の第1または第2の実施形態により抽出した破砕液中のmiRNAを解析する解析工程を含んでいる。miRNAの解析は、公知のmiRNA解析方法を用いればよい。例えば、(1)miRneasy Mini Kit(QIAGEN)を用いてmiRNAを含む全RNAを抽出し、3D-Gene(登録商標)miRNAチップを用いて約2500種のmiRNAの中から網羅的解析を行い、チップ画像を数値化し、発現比の算出、変動遺伝子解析、クラスター解析を行う、(2)miRNeasy Serum/Plasma kit (Qiagen)を用いて、破砕液中の全miRNAを単離し、miScript II RT Kit (Qiagen)を用いcDNAを合成し、次いで、定量的リアルタイムPCRで定量する、等の方法が挙げられる。
【0022】
以下に、本出願で開示するmiRNAの抽出方法に用いることができるデバイスについて説明する。デバイスは、EVsを捕捉することができれば特に制限はないが、EVsの捕捉効率等の向上のため、デバイスは「ナノ構造体」を含むことができる。なお、本明細書において「ナノ構造体」とは、相互作用によりEVsを吸着することができ、且つ、同種で同量の材料の最小となる面積と比較して、比表面積を大きくすることでEVsの吸着効率を高めた構造体を意味する。ナノ構造体は、例えば、微細な孔(ナノポア)を有する材料を用いる、または、微細な繊維(ワイヤ)を凝集(密集)させる等により作製することができる。また、ナノ構造体の形状に特に制限はなく、例えば、フィルム状;糸(紐)状;円柱状、角柱状、或いは、不定形状等の立体形状;等の何れであってもよい。以下に、フィルム状およびナノワイヤを用いたデバイスの各実施形態を説明するが、以下のデバイスの実施形態は単なる例示であって、デバイスは以下に例示する実施形態に限定されない。
【0023】
(デバイスの第1の実施形態)
デバイスの第1の実施形態は、セルロースナノファイバーを用いて作製したフィルムをナノ構造体として用いる。セルロースナノファイバーを得るためには、先ず、木材チップから木材繊維(セルロースファイバー)を取り出してパルプ化する。このセルロースファイバーは、無数のセルロースナノファイバーが束になって構成されている。次に、このセルロースファイバーを、TEMPO触媒の存在下で、溶媒中で高圧で繊維同士を衝突させ、束になっているセルロースファイバーを解すことでセルロースナノファイバーを得ることができる。なお、前記のセルロースナノファイバーの作製方法は単なる例示で、その他の方法であってもよい。第1の実施形態に係るデバイスは、得られたセルロースナノファイバーを含む溶媒を吸引濾過することで、セルロースナノファイバー同士が表面張力により凝集・フィルム化することで作製できる。セルロースナノファイバーを分散する溶媒としては、水等が挙げられる。
【0024】
なお、第1の実施形態に係るデバイスは、作製したフィルムのセルロースナノファイバー同士が隙間(ナノポア)を有するようにしてもよい。ナノポアのサイズを調整することで、EVsの捕捉効率を向上することができる。ナノポアのサイズは、例えば、約1nm~200nm、約1nm~100nmとすることができる。ナノポアの平均サイズは、水銀圧入法で測定することができる。ナノポアは、吸引濾過して凝集した湿潤状態のセルロースナノファイバーに、ターシャリーブチルアルコール、エタノール、イソプロパノール等の表面張力の低い液体を加えて引き続き吸引し、凝集したセルロースナノファイバーの塊に含まれる溶媒を、これら低表面張力の溶媒で置換・乾燥することで形成できる。ナノポアのサイズは、加える溶媒を変えることで調整できる。なお、上記のナノポアの形成およびサイズの調整は、単なる例示であって、その他の方法でナノポアの形成およびサイズの調整を行ってもよい。例えば、セルロースファイバーを解す高圧処理条件や、パルプの種類・バクテリア・ホヤといったセルロース原料を変えることでセルロースナノファイバーの幅を変え、ナノポアのサイズを調整してもよい。ある態様では、作製したフィルムは不織布であり得る。ナノポアを設けた場合、捕捉するEVsが増え、多くの種類のmiRNAの解析ができる。
【0025】
(デバイスの第2の実施形態)
デバイスの第2の実施形態は、セルロースナノファイバーに代え、セルロースファイバー(パルプ)を用いて作製したフィルムをナノ構造体として用いている点で、第1の実施形態と異なる。第2の実施形態に係るデバイスは、セルロースナノファイバーに代え、セルロースファイバー(パルプ)を溶媒に分散する以外は、デバイスの第1の実施形態と同様の手順で作製すればよい。セルロースファイバー同士の隙間、および、セルロースファイバー表面に存在するセルロースナノファイバー同士の隙間も、第1の実施形態と同様の手順で作製およびサイズの調整ができる。なお、セルロースナノファイバーの幅は約3nm~100nmであることから、約1nm~200nm程度のサイズのナノポアが形成される。一方、セルロースファイバーの幅は約20μm~40μmである。したがって、隙間のサイズは、第1の実施形態と異なり、nm~μmオーダーで、約1nm~200nm、および、約1μm~100μmのマルチスケールである。
【0026】
第1および第2の実施形態に係るデバイスは、作製したフィルムを適当なサイズに切断してそのまま用いることができる。或いは、後述するmiRNA抽出工程の際に用いる遠沈管等に切断したデバイスを貼り付ける、マスクに貼り付けることで咳中のEVsを捕捉する、タオル等に貼り付け汗中のEVsを捕捉できるようにしてもよい。また、デバイスの第1および第2の実施形態はフィルム状であるが、その他の形状であってもよい。例えば、糸(紐)状にする場合は、吸引濾過する際に糸(紐)状に溝が形成されている型(吸引濾過フィルター)を用いればよい。また、セルロース(ナノ)ファイバーが分散した溶媒をアセトン等の凝固浴に射出して紡糸してもよい。所定の立体形状にする場合は、所定の形状が形成されている型(吸引濾過フィルター)を用いて吸引濾過すればよい。また、不定形の立体形状にする場合は、先ず、吸引濾過フィルターの一部のみにセルロース(ナノ)ファイバーが分散した溶媒を投入し、吸引濾過によりセルロース(ナノ)ファイバーが凝集した塊を作製し、前記セルロース(ナノ)ファイバーが凝集した塊の作製を繰り返すことで、不定形の立体形状のナノ構造体を作製することができる。また、セルロース(ナノ)ファイバーが分散した溶媒を所望の形状の容器に入れ、凍結乾燥処理することによっても立体形状のナノ構造体を作製することができる。また、デバイスは、セルロース(ナノ)ファイバーのみで作製してもよいし、本開示の目的を損なわない範囲内であれば充填剤等を添加してもよい。例えば、湿潤紙力増強剤としてのポリアミドアミンエピクロロヒドリンといった充填剤の添加、ナノワイヤ(ナノワイヤは後述する第3の実施形態を参照)を単体で添加、等が挙げられる。
【0027】
(デバイスの第3の実施形態)
デバイスの第3の実施形態は、ナノワイヤをデバイスとして用いている。
図2A乃至
図2Dは、第3の実施形態に係るデバイス1の一例を示す図である。
図2Aはデバイス1aの上面図、
図2Bは
図2AのX-X’断面図、
図2Cは
図2AのY-Y’断面である。また、
図2Dは
図2Cに示す実施形態の変形例の断面図である。デバイス1aは、基板2、ナノワイヤ3、カバー部材4を少なくとも含み、
図2B乃至
図2D(以下、
図2に共通する説明は、単に「
図2」と記載することがある。以下の段落においても同様である。)に示すデバイス1aでは、ナノワイヤ3を形成するための触媒層5を含んでいる。デバイス1aは、基板2上にナノワイヤ3を形成するための触媒層5が形成され、触媒層5の上にナノワイヤ3が形成されている。なお、本明細書において「第1面」とは、基板2のナノワイヤ3が形成されている側の面の最表面を意味する。したがって、後述するとおり、基板2の「第1面」とカバー部材の「第2面」が液密に密着と記載した場合、「第1面」の部材は、製法により、基板2、触媒層5または被覆層になる。さらに、カバー部材の「第2面」と密着する「第1面」にナノワイヤが成長している場合もあるが、その場合はナノワイヤの根元にある平坦部を「第1面」とする。また、本明細書においてナノワイヤの「先端」とは、ナノワイヤの両方の端部の内、基板2の第1面から離れた方のナノワイヤの端部を意味し、基板2の第1面側のナノワイヤの端部は、本明細書ではそのまま「端部」と記載する。
【0028】
カバー部材4は、カバー部材用基材41、カバー部材用基材41に形成された流路42を含む。なお、本明細書において「第2面」とは、カバー部材用基材41の流路42が形成される側の面(流路42の開口部分を仮想平面とした場合、該仮想平面に続く面)を意味する。
図2Bに示す例では、カバー部材用基材41の触媒層5と接している面が第2面に相当する。また、
図2Cに示す例では、カバー部材4は、サンプル投入孔43およびサンプル回収孔44を含んでいる。サンプル投入孔43およびサンプル回収孔44は、
図2Cに示すように、流路42と第2面とは反対側の面45を貫通するようにカバー部材用基板41に形成されている。なお、
図2Cに示す例は、サンプル液をデバイス1aの上方から投入および回収する例を示しているが、サンプル投入孔43およびサンプル回収孔44の位置は、投入したサンプル液がナノワイヤ3を形成した領域を通過し、通過後にサンプル液を回収できれば特に制限はない。例えば、
図2Dに示すように、流路42の側壁にサンプル投入孔43およびサンプル回収孔44を形成してもよい。
【0029】
第3の実施形態に係るデバイス1aは、フォトリソグラフィ技術を用いて作製することができる。
図3は第3の実施形態に係るデバイス1の一例である、ナノワイヤ3を基板2の第1面に形成したデバイス1aの作製工程の一例を説明するための図である。なお、
図3は、
図2AのX-X’方向の断面図を表している。
【0030】
(1)基板2を準備する。
(2)基板2上に、ナノワイヤ3作製用の粒子をECR(Electron Cyclotron Resonance)スパッタリング、又は触媒をECRスパッタリング、EB(Electron Beam)蒸着、PLD(Pulsed Laser Deposition)、ALD(Atomic Layer Deposition)、することで触媒層5を形成する。なお、本明細書において「触媒層」と記載した場合、ナノワイヤ作製用の「粒子」又は「触媒」の「層」を意味する。
(3a、3b)フォトリソグラフィ用のレジスト6を塗布し、ナノワイヤ3を成長させる場所をフォトリソグラフィでパターニングする。フォトリソグラフィのパターニングは、ナノワイヤ3を成長させたいパターンで形成すればよい。例えば、ナノワイヤ3をランダムに成長させたい場合は、基板2上のナノワイヤ3を形成する領域の触媒層5が全て露出するようにパターニングすればよい(3a参照)。また、所定間隔でナノワイヤ3を成長させる場合は、所定間隔のドット状に触媒層5が露出するようにパターニングあるいは、フォトリソグラフィによる描画をすればよい(3b参照)。フォトリソグラフィでパターニング、あるいは描画した後は、パターニングあるいは描画した部分のレジスト6を現像・除去する。
(4a、4b)レジストが除去され、触媒層5が露出した場所からナノワイヤ3を成長させる。
(5a、5b)残りのレジストを除去することで、第1面に形成した触媒層5上にナノワイヤ3を形成した基板2を作製できる。
【0031】
図4A乃至
図4Cはカバー部材4の各種態様を示す図である。カバー部材4は、カバー部材用基材41の第2面47を切削、或いは、カバー部材用基材41の材料に凸状の鋳型を押し付けることで、簡単に作製できる。また、凸状の鋳型を押し付けることでカバー部材4を作製した場合、サンプル投入孔43およびサンプル回収孔44は、転写後に生検トレパン、超音波ドリル等を用いて形成すればよい。カバー部材4は、切削範囲、鋳型の形状を変えることで、例えば、
図4Aおよび
図4Bに示すように、流路42の断面積を簡単に変えることができる。また、
図4Cに示すように、流路42の任意の面に、通過するサンプル液に乱流を発生させるための非平面領域46を形成することもできる。非平面領域46は、通過するサンプル液に乱流を発生できれば特に制限はなく、例えば、凸部等を形成すればよい。カバー部材4は、流路42の断面積や形状が異なる複数種類を準備することができる。
【0032】
そして、
図3に示す工程により作製した第1面にナノワイヤ3を形成した基板2(
図4D)に、所期の断面積や形状の流路42を有するカバー部材4を被せることで、デバイス1aを作製することができる。
【0033】
基板2は、触媒層5を積層することができれば特に制限はない。例えば、シリコン、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス等が挙げられる。
【0034】
触媒層5に関し、ナノワイヤ3作製用の粒子としては、例えば、ZnOが挙げられる。また、ナノワイヤ3作製用の触媒としては、例えば、金、プラチナ、アルミニウム、銅、鉄、コバルト、銀、錫、インジウム、亜鉛、ガリウム、クロム、および、それらの酸化物等が挙げられる。
【0035】
フォトリソグラフィ用のレジスト6としては、OFPR8600LB、SU-8等、半導体分野で一般的に用いられているものであれば特に制限はない。また、レジスト6の除去液としては、ジメチルホルムアミドとアセトン等、半導体分野で一般的な除去液であれば特に制限はない。
【0036】
ナノワイヤ3は、触媒層5から公知の方法で成長させればよい。例えば、触媒層5としてZnO微粒子を用いた場合は、水熱合成方法を用いて作製することができる。具体的には、硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO3)2・6H2O)、ヘキサメチレンテトラミン(C6H12N4)を脱イオン水に溶解した前駆体溶液に、加熱した基板2を浸漬させることで、ZnO粒子(触媒層5)が露出している部分から、ZnOナノワイヤ3を成長させることができる。
【0037】
触媒層5として触媒を用いる場合は、次の工程でナノワイヤ3を作製することができる。
(a)SiO2、Li2O、MgO、Al2O3、CaO、TiO2、Mn2O3、Fe2O3、CoO、NiO、CuO、ZnO、Ga2O3、SrO、In2O3、SnO2、Sm2O3、EuO等の材料を用い、パルスレーザーデポジション、VLS(Vapor-Liquid-Solid)法等の物理蒸着法でコアナノワイヤを形成する。
(b)SiO2、TiO2等を用い、スパッタリング、EB(Electron Beam)蒸着、PVD(Physical Vapor Deposition)、ALD(Atomic Layer Deposition)等の一般的な蒸着法により、コアナノワイヤの周囲に被覆層を形成する。なお、上記(b)の被覆層は必須ではなく、必要に応じて実施すればよい。
【0038】
ナノワイヤ3の直径は目的に応じて適宜調整すればよい。ナノワイヤ3の直径は、ZnO微粒子を用いて形成する場合は、ZnO微粒子のサイズを変更すればよい。また、作製したナノワイヤ3に被覆層を形成する場合は、被覆層を形成する際の蒸着時間を変えることで直径を適宜調整することができる。
【0039】
カバー部材4を作製するための材料としては、切削または鋳型を転写できるものであれば特に制限はない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、AS(アクリロニトリルスチレン)樹脂、アクリル樹脂(PMMA)等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド、シリコーンゴム等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0040】
なお、
図2乃至
図4に示す例は、デバイス1の単なる例示に過ぎず、基板2にナノワイヤが形成されていれば特に制限はない。例えば、国際公開第2015/137427号に記載の手順により、基板2上に形成した流路内にナノワイヤを形成してもよい。
【0041】
(デバイスの第4の実施形態)
第4の実施形態に係るデバイス1bは、ナノワイヤ3の端部が基板2aの第1面に埋め込まれている点、および、基板2aを作製する材料が第3の実施形態に係るデバイス1aと違う点、で異なり、その他の点では、第3の実施形態に係るデバイス1aと同じである。
【0042】
図5は、第4の実施形態に係るデバイス1bの作製工程の一例を説明するための図である。
(5)第3の実施形態に係るデバイス1aで作製した、第1面にナノワイヤ3を形成した基板2を鋳型として準備する。
(6)基板2aを形成する材料を、鋳型に塗布する。
(7)基板2aを鋳型から剥離することで、第1面にナノワイヤ3の一部が埋め込まれた基板2aを形成する。
(8)基板2aの第1面に埋め込まれたナノワイヤ3を更に成長させることで、ナノワイヤ3の端部が第1面に埋め込まれた基板2aを作製する。ナノワイヤ3の成長は第1の実施形態と同様の手順で行うことができる。
そして、図示は省略するが、第3の実施形態と同様の手順で作製したカバー部材4を基板2aに被せることで、デバイス1bを作製できる。
【0043】
基板2aを形成する材料は、ナノワイヤ3を埋め込むことができれば特に制限はなく、例えば、カバー部材4と同様の材料が挙げられる。
【0044】
デバイスとして、第1及び第2の実施形態に示すフィルム状のデバイスを用いた場合は、細胞外小胞捕捉工程(ST1)において、フィルムにサンプル液を滴下、或いは、サンプル液中にフィルムを浸漬すればよい。また、デバイスとして、第3及び第4の実施形態の基板上にナノワイヤを形成したデバイス1a、1bを用いた場合は、細胞外小胞捕捉工程(ST1)において、サンプル投入孔からサンプル液を投入すればよい。
【0045】
そして、デバイスとして、第1及び第2の実施形態に示すフィルム状のデバイスを用いた場合は、miRNA抽出工程(ST2)において、フィルムを破砕液に浸漬すればよい。また、デバイスとして、第3及び第4の実施形態の基板上にナノワイヤを形成したデバイスを用いた場合は、miRNA抽出工程(ST2)において、サンプル投入孔から破砕液を投入し、抽出したmiRNAを含む破砕液を回収すればよい。
【0046】
なお、上記第3及び第4の実施形態に係るデバイス1a、1bは、カバー部材4が形成されているが、カバー部材4を設けなくてもよい。その場合は、細胞外小胞捕捉工程(ST1)において、サンプル液をナノワイヤに滴下、或いは、サンプル液を入れた容器にナノワイヤが接触するようにデバイスを浸漬すればよい。また、miRNA抽出工程(ST2)では、破砕液が入っている容器に、ナノワイヤ部分を浸漬すればよい。
【0047】
更に、上記第3及び第4の実施形態に係るデバイス1a、1bは、基板の第1面にナノワイ3が形成されているが、ナノワイヤ3を単独でデバイスとしてもよい。その場合は、細胞外小胞捕捉工程(ST1)において、サンプル液を入れたチューブ等にナノワイヤを投入することで、ナノワイヤとサンプル液が接触するようにすればよい。また、miRNA抽出工程(ST2)では、サンプル液をチューブから除去した後に、破砕液をチューブに投入すればよい。ナノワイヤ3を単独でデバイスとして用いた場合でも、デバイスに捕捉したEVsから直接miRNAを抽出できる。ナノワイヤ3を単独でデバイスとする場合は、例えば、基板の第1面からナノワイ3を回収すればよい。
【0048】
後述する実施例に示すとおり、上記各実施形態に示したデバイスは、サンプル液中のEVsを捕捉することができる。なお、EVsを破砕液で破砕し、抽出したmiRNAを網羅的に解析する場合、破砕液によりデバイスが破壊されると、解析工程に破壊された残渣が悪影響を及ぼすことがある。したがって、デバイスは、破砕液に対して耐久性がある、例えば、少なくとも5分、好適には30分以上の、破砕液に対する耐久性があれば良い。上記の実施形態では、ナノワイヤまたはセルロースナノファイバーで構成したフィルムは、破砕液に対して耐久性があるので、より好ましいデバイスといえる。
【0049】
なお、上記のデバイスは、単なる例示であり、EVsを吸着できれば(好ましくは破砕液に対して耐久性がある)、上記の実施形態のデバイスに限定されない。そのようなデバイスとしては、表面に小孔が多数存在するポーラス材料が挙げられる。具体的には、活性炭やゼオライト等のミクロポーラス材料、二酸化ケイ素(メソポーラスシリカ)や酸化アルミニウム等のメソポーラス材料、軽石等のマクロポーラス材料等が挙げられる。また、ポーラス材料以外では、溶融ガラスやポリマーから作製したフィルターが挙げられる。
【0050】
以下に実施例を掲げ、本出願で開示する実施形態を具体的に説明するが、この実施例は単に実施形態の説明のためのものである。本出願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。
【実施例】
【0051】
〔デバイスの作製〕
【0052】
<デバイス1>
以下の手順により、セルロースナノファイバーから、ナノポアを有するフィルム状のデバイスを作製した。
(1)針葉樹漂白クラフトパルプをスギノマシン社製の湿式微粒化装置(スターバースト HJP-25005E)で処理して得られた幅15~100nmのナノセルロース400mgを200mLの水に投入し、ナノセルロース水分散液を得た。
(2)上記のナノセルロース水分散液を、濾過装置(KG-90、アドバンテック東洋濾紙株式会社)と吸引装置(アスピレーター AS-01、アズワン株式会社)を用い、親水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)メンブレンフィルター(H020A090C、アドバンテック東洋濾紙株式会社)を介して、濾過脱水を行った。
(3)続いて、脱水処理したナノセルロース集合体上にターシャリーブチルアルコール(
tBuOH、06104-25、ナカライテスク株式会社)を200mL滴下して濾過する溶媒置換工程を行った。
(4)得られた湿潤状態のナノセルロース集合体を110℃、1MPa、15minの条件でホットプレス乾燥処理(AYSR-5、神藤金属工業所株式会社)した後、PTFEメンブレンフィルターから剥離することでフィルムを得た。
(5)作製したフィルムを、1辺が1cmの正方形にカットすることで、デバイス1を作製した。
図6Aは、作製したデバイス1のSEM写真である。作製したフィルムのナノポアのサイズは、約数nm~100nmであった。
【0053】
<デバイス2>
デバイス1の
tBuOHによる置換工程を実施しなかった以外は、デバイス1と同様の手順で、セルロースナノファイバーから、フィルム状のデバイスを作製した。
図6Bは、作製したデバイス2のSEM写真である。写真から明らかなように、デバイス2は、セルロースナノファイバー同士の間にナノポアが形成されなかった。
【0054】
<デバイス3>
以下の手順により、パルプ(セルロースファイバー)から、マイクロサイズのポアを有するフィルム状のデバイスを作製した。
(1)針葉樹漂白クラフトパルプ400mgを水200mLに投入し、パルプ水分散液を得た。
(2)上記のパルプ水分散液を、濾過装置(KG-90、アドバンテック東洋濾紙株式会社)と吸引装置(アスピレーター AS-01、アズワン株式会社)を用い、ステンレスメッシュフィルター(SUS304、300メッシュ、株式会社くればぁ)を介して、濾過脱水を行った。
(3)続いて、脱水処理したパルプ集合体上にターシャリーブチルアルコール(
tBuOH、06104-25、ナカライテスク株式会社)を200mL滴下して濾過する溶媒置換工程を行った。
(4)得られた湿潤状態のパルプ集合体を110℃、1MPa、15minの条件でホットプレス乾燥処理(AYSR-5、神藤金属工業所株式会社)した後、ステンレスメッシュフィルターから剥離することでフィルムを得た。
(5)作製したフィルムを、1辺が1cmの正方形にカットすることで、デバイス3を作製した。
図6Cは、作製したデバイス3の写真である。作製したフィルムのポアのサイズは、約数nm~100nm、および、約1μm~100μmのマルチスケールであった。
【0055】
<デバイス4>
デバイス3の
tBuOHによる置換工程を実施しなかった以外は、デバイス3と同様の手順で、パルプ(セルロースファイバー)から、フィルム状のデバイスを作製した。
図6Dは、作製したデバイス4の写真である。作製したフィルムのポアのサイズは、約1μm~100μmであった。
【0056】
<デバイス5>
以下の手順により、ナノワイヤを基板に形成した流路に埋め込んだデバイスを作製した。
(1)先ず、Si(100)基板(Advantech Co.,Ltd.)にPDMS埋め込み型ナノワイヤデバイスの流路パターニングを行った。Si基板表面にポジティブレジスト(OFPR-8600 LB,Tokyo Ohka Kogyo Co. Ltd.)を500rpm(5sec)、3000rpm(120sec)の条件でスピンコーター(MS-A100、ミカサ株式会社)によって回転塗布した後、ホットプレート上にて90℃、12min加熱することで溶媒を蒸発させてレジストを基板上に固定させた。加熱後の基板上にガラスマスクをのせ、露光機で600mJ/cm2のi線を照射することによってレジストの軟化を行った。最後にこの基板を現像液(NMD-3、Tokyo Ohka Kogyo Co.,Ltd.)に10秒ほど浸漬することで軟化したレジストのはく離を行い、現像液から基板を取り出し流水洗浄を行った。次いで、ホットプレートにて90℃、5min加熱することでパターニングを完了した。
【0057】
(2)次に、基板表面にナノワイヤ成長のシード層となるCr層の作製を行った。Cr層作製のスパッタリング装置(EIS-200ERT-YN、エリオニクス株式会社)の条件は、1.2×10-2Pa、14minで、135nmのCr層を堆積させた。この基板をホットプレート上で、70℃に温めた2-プロパノールに40min浸した後に、超音波機器による2minの超音波処理を行うことで流路外のレジストを大まかに取り除いた。その後、別の容器に入れた70℃の2-プロパノールに基板を移し、10min浸漬した後に1minの超音波処理を行うことで流路外のレジストを完全に取り除いた。最後にさらに別の容器に入れた70℃の2-プロパノールで濯ぐことで、基板上に乗った細かいCr粒子を取り除いた。これらの手順によって、基板上では流路部分にのみCr層が堆積している状態となった。この基板を400℃の電気炉で2h加熱することによってCr層を酸化させ、ナノワイヤ成長のシード層作製を完了した。
【0058】
(3)超純水200mLに対して、ヘキサメチレンテトラミン(HMTA;085-00335,Wako Pure Chemical Industries, Ltd.)が15mMとなるように溶解し、スターラーによって7min撹拌した。その後、さらに硝酸亜鉛六水和物(12323,Alfa Aesar)が15mMとなるように溶解した後に、7min撹拌することでナノワイヤ成長溶液とした。ここで76mm×52mm×0.8~1.0mmのスライドガラスに、上記の手順によって準備された流路の形に酸化Cr層が蒸着した基板2枚をカーボンテープにて貼り合わせ、成長溶液中に浸し、送風定温高温器にて95℃、3h加熱することで、ナノワイヤを成長させた。その後、ビーカーから基板を取り出し、非特異的に成長したナノワイヤを除去するために超純水にて洗い流した。
【0059】
(4)上記(3)で作製したナノワイヤが成長した基板をシャーレの上に貼り付けた。そのシャーレへ、PDMSプレポリマー(Silpot 184、Dow Corning Toray Ind.,Ltd.)と硬化剤(Silpot 184 CAT,Dow Corning Toray Ind.,Ltd.)を重量比10:1で容器に入れた後、2000rpm、2min、2200rpm、6minの条件で混合したものを注ぎ込んだ。これを2h真空引きすることでポリマー中の気泡を取り除き、次いで、80℃のホットプレート上で2h加熱することで重合を進行させてポリマーを硬化させた。これらの操作によってSi基板上のナノワイヤがPDMS中へと埋め込まれた。このナノワイヤが埋め込まれたPDMSをSi基板から剥離させ、スライドガラスにPDMS埋め込み型ナノワイヤを貼り付けた。そして、上記(3)と同様の条件で、PDMS埋め込まれたナノワイヤを成長させた。成長後、ビーカーから埋め込み型ナノワイヤを取り出し、非特異的に成長したナノワイヤを超純水によって洗い流すことによって取り除くことでPDMS埋め込み型ナノワイヤの作製を完了した。
【0060】
(5)Si基板上にネガ型フォトレジスト(SU-8 3025、日本化薬株式会社)をスピンコーターで塗布し、流路部分が露光できる形状のフォトマスクを被せ、露光・現像することで、流路を形成する部分が凸状となる鋳型を作製した。次に、作製した鋳型をシャーレに入れた。次に、上記(4)と同様のPDMSプレポリマーと硬化剤を重量比10:1で容器に入れた後、2000rpmで2min、2200rpmで6minの条件で混合したものを、シャーレに注ぎ込み、2h真空引きすることでポリマー中の気泡を取り除いた。2h経過後、80℃のホットプレート上で2h加熱することで重合を進行させてポリマーを硬化させた。この硬化させたポリマーを切り抜き、流路に0.32mmのパンチで投入孔および回収孔をあけることで、カバー部材を作製した。
(6)最後に、上記(4)で作製したナノワイヤを有する基板上に、上記(5)作製したカバー部材を被せた。また、投入孔および回収孔にPEEKチューブを挿入し、接着剤で固定することで、デバイス5を作製した。
図6Eは、作製したデバイス5のナノワイヤの拡大写真である。
【0061】
[miRNAの抽出および解析]
<実施例1>
サンプル液として唾液を用い、デバイスにはデバイス1乃至4を用い、以下の手順で、唾液中に含まれるEVsからmiRNAの抽出および解析を行った。
(1)サンプル液の調整
被検者から唾液を収集した。実施例1では唾液をそのまま用いたが、唾液中の不純物を取り除くため、必要に応じて唾液を遠沈管に入れ、遠心分離により不純物を取り除いてもよい。なお、この遠心分離は、あくまでも不純物を取り除くためで、EVsを分画・回収するための超遠心分離とは異なる。
【0062】
(2)サンプル中のEVsの捕捉
唾液サンプル10μlを、デバイス1乃至4に滴下して、約10秒間放置することで、唾液サンプル中のEVsをデバイスに捕捉した。次に、デバイスをピンセットで摘み、PBSに約10秒間浸漬することで、RNase等の洗浄を行った。
【0063】
(3)miRNAの抽出
破砕液として、細胞溶解バッファーM(038-21141,Wako)を用いた。遠沈管に破砕液1mlを入れ、次いで、上記(2)でEVsを捕捉したデバイスを遠沈管に投入し、ボルテックスで約3秒攪拌した後、5分間静置することで、EVsを捕捉したデバイスから直接EVsを溶解し、miRNAの抽出を行った。
図7Aはデバイス1を用いた際の写真で、(a)miRNA抽出後にデバイス1を遠沈管から取り出した後の遠沈管の写真、(b)遠沈管から取り出したデバイス1の写真である。
図7Bはデバイス2を用いた際の写真で、(a)miRNA抽出後にデバイス2を遠沈管から取り出した後の遠沈管の写真、(b)遠沈管から取り出したデバイス2の写真である。
図8Aはデバイス3を用いた際の写真で、(a)miRNA抽出工程終了直後の遠沈管の写真、(b)miRNA抽出後にデバイス3を遠沈管から取り出した後の遠沈管の写真、(c)遠沈管から取り出したデバイス3の写真である。
図8Bはデバイス4を用いた際の写真で、(a)miRNA抽出工程終了直後の遠沈管の写真、(b)miRNA抽出後にデバイス4を遠沈管から取り出した後の遠沈管の写真、(c)遠沈管から取り出したデバイス4の写真である。
図7A及び
図7Bに示すように、セルロースナノファイバーから作製したデバイス1及びデバイス2を用いた場合は、破砕液でEVsを破砕した後でも、遠沈管内にデバイス由来の繊維等は見られず、また、取り出したデバイスは元の形状を維持していた。そのため、miRNAの抽出後は、ピンセットでデバイスを取り除くだけで、miRNA抽出液を作製できた。
【0064】
一方、
図8A及び
図8Bに示すように、パルプ(セロロースファイバー)から作製したデバイス3及びデバイス4を用いた場合は、遠沈管内にデバイスから分離した繊維が見られ、取り出したデバイスは一部が欠損していた。そのため、デバイス3及びデバイス4を用いた場合は、後述するmiRNA解析の際に不純物として邪魔になるデバイス由来の繊維を、遠心分離で除去した。
【0065】
(4)miRNAの解析
次に、miRNA抽出液に含まれるmiRNAの種類を、3D-Gene(登録商標)(東レ株式会社製)ヒトmiRNAチップを用い、以下の手順で解析を行った。
(a)miRNA抽出液を、キット製造者の取扱説明書に従い、SeraMi Exosome RNA精製カラムキット(System Biosciences Inc.)を用いて精製した。
(b)精製したmiRNA抽出液15μlを、マイクロアレイおよび3D-GeneHuman miRNA Oligoチップver.21(Toray Industries)を使用してmiRNAプロファイリングを分析した。3D-Geneは、2565ヒトmiRNAプローブを含んでおり、miRNA抽出液から、最大2565種類のmiRNAの発現を解析できる。
(c)miRNA抽出液中の各miRNAの発現レベルは、各マイクロアレイ中のすべてのmiRNAのバックグラウンドを差し引いたシグナル強度を計算し、その後にグローバルノーマライゼイションすることで解析した。
【0066】
図9は、デバイス1乃至4を用いて抽出したmiRNA抽出液中に含まれる、miRNAの種類を示すグラフである。なお、各デバイスとも、3回の解析結果の平均値である。
図9に示す通り、デバイス1乃至4の何れのデバイスを用いた時でも、デバイスに捕捉したEVsから直接miRNAを抽出できることを確認した。また、
図7および
図8に示すとおり、パルプから作製したデバイス3及びデバイス4は、EVsを破砕中にデバイスの一部が欠損し、遠沈管内にデバイスから分離した繊維が見られた。したがって、サンプル液からのmiRNAの抽出に続き、miRNAの解析を行う場合は、デバイス1及びデバイス2の方が好ましいことが明らかとなった。
【0067】
なお、従来の唾液を超遠心分離してEVsを分離し、miRNAを解析する方法では、上記非特許文献2では、10頁に記載されているとおり27種類であった。また、上記非特許文献3では、Fig.7に記載されているとおり、解析できたmiRNAは93種類であった。加えて、非特許文献3に記載の方法では、唾液を5ml、或いは、15mlも使用することが記載されているが、そのような大量の唾液を採取することは被検者(患者)の負担が非常に大きい。一方、デバイス1乃至4を用いた場合は、わずか10μlの唾液を用いて、700種類を超えるmiRNAの解析に成功した。換言すると、含有量が微量のmiRNAに関しても、解析できたことを意味する。
【0068】
以上の結果より、デバイス1乃至デバイス4を用いると、従来の超遠心分離を用いたEVsの分離方法等と比較して、唾液サンプル液中のEVsからのmiRNAの抽出作業手順を簡略化できる。また、EVsを捕捉したデバイスから直接miRNAを抽出できる(及び、高割合で唾液中のEVsをデバイスに捕捉できる)ので、miRNA抽出作業中のロスが少なくなり、高精度のmiRNA解析ができるという顕著な効果を確認した。したがって、本出願で開示するmiRNAの抽出方法は、サンプル液中に含まれるmiRNAの解析方法の際のサンプル調整方法として非常に有用である。また、生体サンプル液として、被侵襲性で且つ大量の採取が難しい唾液から高精度のmiRNAの解析ができたことから、健康診断等の際に、デバイス1乃至デバイス4を舌に接触することで、がん診断を併せて実施することが期待される。
【0069】
<実施例2>
サンプル液として尿を用い、デバイスにはデバイス5を用い、以下の手順で、尿中に含まれるEVsからmiRNAの抽出および解析を行った。
(1)サンプルの調整
市販の尿(Proteogenex、BioreclamationIVT、EW Biopharma)1mLを、1.5mL遠沈管に分注し、この遠沈管を冷却遠心機にセットし、3000×g、15min、4℃の条件で遠心分離することによって不純物を沈殿させた。以下では、この不純物を除いた上澄み部分のことを尿サンプルと記載する。
【0070】
(2)尿サンプル中のEVsの捕捉
上記尿サンプル1mLを、シリンジポンプによって流量50μL/minの条件で、デバイス5に導入し、ナノワイヤに尿サンプル中のEVsを捕捉させた。
(3)miRNAの抽出
破砕液として、実施例1と同様の細胞溶解バッファーMを用い、破砕液1mLをデバイスに導入することで捕捉したEVsを溶解し、miRNA抽出液を作製した。
(4)miRNAの解析
実施例1と同様の手順で解析を行った。
【0071】
同一の手順で228回実験を行ったこところ、デバイス5を用い、平均1144種類のmiRNAを検出できた。以上の結果より、ナノワイヤに捕捉したEVsから直接miRNAを抽出できたことを確認した。
【0072】
更に、従来の超遠心分離によりEVsを分離し、miRNAを解析する方法では、同一の手順で3回実験を行ったところ、解析できたmiRNAは171、261、352種類であった。また、樹脂ベースのEVs吸着担体を用いた市販のEVs濃縮キットであるExoQuick(フナコシ株式会社製)を用いた実験では、解析できたmiRNAの種類は、337、355、491種類であった。
【0073】
以上の結果より、唾液以外の生体サンプル、また、木材繊維から作製したデバイス以外のEVs捕捉用デバイスを用いた場合にも、実施例1に記載と同様の顕著な効果を確認した。
【0074】
以上の結果より、唾液以外の生体サンプル、また、木材繊維から作製したデバイス以外のEVs捕捉用デバイスを用いた場合にも、実施例1に記載と同様の顕著な効果を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本出願で開示するmiRNAの抽出方法、および、miRNAの解析方法は、サンプル液中から簡単且つ高精度にmiRNAを抽出および解析できる。したがって、医療機関、大学、企業、研究機関等において、細胞実験等に有用である。
【符号の説明】
【0076】
1、1a~1b…デバイス、2、2a…基板、3…ナノワイヤ、4…カバー部材、5…触媒層、6…レジスト、41…カバー部材用基材、42…流路、43…サンプル投入孔、44…サンプル回収孔、45…第2面とは反対側の面、46…非平面領域、47…第2面