(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】固形毛髪洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20240614BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20240614BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240614BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20240614BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/46
A61K8/73
A61Q5/02
A61K8/34
(21)【出願番号】P 2022118427
(22)【出願日】2022-07-26
(62)【分割の表示】P 2021535634の分割
【原出願日】2021-01-13
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2020142398
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390029654
【氏名又は名称】株式会社マックス
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】森 典史
(72)【発明者】
【氏名】今井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】細井 良茂
(72)【発明者】
【氏名】大野 健剛
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表平06-511486(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0014313(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0002297(US,A1)
【文献】米国特許第10555890(US,B2)
【文献】特表2009-508836(JP,A)
【文献】Earth Rhythm Murumuru Butter Shampoo Bar for Curly & Wavy Hair,100% Biodegradable, Plastic free Packaging, 80g,[online],2018年12月03日,<URL:https://www.amazon.in/Soapworks-Murumuru-Butter-Shampoo-Curly/dp/B07HJ8VL1P>,[検索日:2023.06.23]
【文献】New Flag, Germany,Shampoo Bar,Mintel GNPD [online],2020年02月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#7240121, [検索日:2023.06.23], 表題部分及び成分
【文献】New Flag, Germany,Shampoo Bar,Mintel GNPD [online],2020年05月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#7606791, [検索日:2023.06.23], 表題部分及び成分
【文献】New Flag, Germany,Floral Flair Intensely Repairing Shampoo Bar,Mintel GNPD [online],2019年08月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#6805059, [検索日:2023.06.23], 表題部分及び成分
【文献】New Flag, Germany,Moisturising Solid Shampoo,Mintel GNPD [online],2018年05月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#5700897, [検索日:2023.06.23], 表題部分及び成分
【文献】New Flag, Germany,Shampoo Bar,Mintel GNPD [online],2019年08月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#6825495, [検索日:2023.06.23], 表題部分及び成分
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/00-19/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ココイルイセチオン酸アルカリ金属塩、(B)カチオン化グアーガム、(C)水、及び(E)多価アルコールを含む
固形毛髪洗浄剤組成物であって、
前記(A)成分を55~80重量%、前記(C)成分を5~25重量%含み、
前記(C)成分1重量部に対する前記(B)成分の含有量が0.05~1.5重量部である、固形毛髪洗浄剤組成物。
【請求項2】
(A)ココイルイセチオン酸アルカリ金属塩、(B)カチオン化グアーガム、(C)水、及び(E)多価アルコールを含む固形毛髪洗浄剤組成物であって、
前記(A)成分を55~80重量%、前記(C)成分を5~25重量%含み、
前記(C)成分1重量部に対する前記(B)成分の含有量が0.05~1.5重量部であり、
前記(A)成分100重量部に対する前記(B)成分の含有量が1~20重量部である、固形毛髪洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記(A)成分100重量部に対する前記(E)成分の含有量が0.5~10重量部である、請求項
1又は2に記載の固形毛髪洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記(C)成分1重量部に対する前記(E)成分の含有量が0.05~0.5重量部である、請求項
1~3のいずれかに記載の固形毛髪洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固形毛髪洗浄剤組成物に関する。より具体的には、本発明は、使用時の剤の手取れ性と保存時の亀裂抑制性とが両立した固形毛髪洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪洗浄剤組成物は、一般的に、洗浄力及び気泡力を発揮するアニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤等の界面活性剤と、当該組成物の粘度を高める増粘剤とを含んで構成されている。また、非特許文献1によると、毛髪洗浄剤組成物にカチオン性ポリマーを配合することで、アニオン性界面活性剤とカチオン性ポリマーとがコアセルベートを形成し、このコアセルベートがシャンプーすすぎ時の使用感を向上させる。
【0003】
コアセルベート技術は様々な毛髪洗浄剤組成物に応用されている。例えば、特許文献1には、アニオン界面活性剤、所定のカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース、及び所定のモノアルキルグリセリルエーテル又はモノアルケニルグリセリルエーテルを含む水性毛髪洗浄剤が開示されている。また、特許文献2には、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性高分子、及び所定のポリオキシアルキレンアルキルアミンを含む毛髪洗浄剤組成物が開示されている。さらに、特許文献3には、N-長鎖アシルグルタミン酸塩、両性界面活性剤、カチオン性解離を有する水溶性高分子、及びポリオキシアルキレン脂肪酸モノイソプロパノールアミドを含有し、25℃におけるpHが4.0~6.0であるシャンプー組成物が開示されている。
【0004】
一方、近年、プラスチックの環境問題等の観点から、固形の毛髪洗浄剤組成物(シャンプーバー、固形シャンプ―)が注目されつつある。固形の毛髪洗浄剤組成物は、非特許文献2、非特許文献3等の商品として上市されており、ココイルイセチオン酸ナトリウム、ココアルキル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ナトリウム等の界面活性剤を用いて設計されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】日本化粧品技術者会誌 Vol.38 No.3 2004、p.211~219
【文献】スカルプケアソープ「サボン モーヴ」全成分,[online],P.F.C.D.ジャパン,[令和2年8月11日検索],インターネット <URL:https://www.pgcd.jp/promotion/scalpcare/trial/09/?argument=SIMOb79c&dmai=a5e904ca4c82a9&utm#source=ca#google&utm#medium=cpc&utm#campaign=brand&utm#term=0000051&gclid=CjwKCAjw4MP5BRBtEiwASfwAL93god9o-4dEffeWj6vgJ6HxFVkwf14#aV3w2SdhpGD8blDMYcp#9hoCFJQQAvD#BwE>
【文献】エティークシャンプー バー ピンカリシャス,[online],株式会社ピー・エス・インターナショナル,[令和2年8月11日検索],インターネット <URL:https://ethicame.com/shop/products/ET000109>
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-232933号報
【文献】特開2015-048307号公報
【文献】国際公開第2016/067853号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に広く浸透している顔又は全身を洗浄するための固形皮膚洗浄剤組成物では、顔のように比較的狭い表面積を洗う場合には手の上で固形剤を転がせば適量の少量の剤を簡単に取ることができ、また、身体のように広い表面積を洗う場合にはスポンジ又はタオル等の表面凹凸のある道具に固形剤をこすりつければ適量の比較的多くの剤を簡単に取ることができ、そのような使い方が広く浸透している。
【0008】
一方、固形毛髪洗浄剤組成物では、その特性上、洗浄すべき表面積が広い割に、適量の剤を採ることが難しい。例えば手の上で固形剤を転がして剤を取ろうとすると、必要量の剤を集めるまでに時間がかかる。また、髪に直接固形剤をこすりつける方法も考えられるが、付着した剤の目視が難しいため取るべき剤の量コントロールが難しく、こすりつける力が強すぎると、すすぎ後も洗浄剤が固形のまま髪に付着し続けてしまう可能性もある。これまでの固形毛髪洗浄剤組成物では、剤の手取れ性(毛髪洗浄に必要な十分量の剤を固形洗浄剤から効率的に手で取ることができる特性)について何ら検討されてこなかった。
【0009】
本発明者は、固形毛髪洗浄剤組成物からの剤の手取れ性を向上させるための組成を検討した。すると、使用時の剤の手取れ性が向上した場合には、固形剤自体が保存中に亀裂が発生し易くなり保存安定性が悪くなるという課題に直面した。
【0010】
そこで、本発明の目的は、使用時の剤の手取れ性と保存時の亀裂抑制性とが両立した固形毛髪洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討の結果、ココイルイセチオン酸アルカリ金属塩、及び水を含む固形毛髪洗浄剤組成物にカチオン化グアーガムを配合することによって、使用時の剤の手取れ性と保存時の亀裂抑制性とを両立できることを見出した。本発明は、この知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0012】
項1. (A)ココイルイセチオン酸アルカリ金属塩、(B)カチオン化グアーガム、及び(C)水を含む、固形毛髪洗浄剤組成物。
項2. 前記(A)成分100重量部に対する前記(B)成分の含有量が1~20重量部である、項1に記載の固形毛髪洗浄剤組成物。
項3. 前記(C)成分1重量部に対する前記(B)成分の含有量が0.05~1.5重量部である、項1又は2に記載の固形毛髪洗浄剤組成物。
項4. 前記(C)成分を5~25重量%含む、項1~3のいずれかに記載の固形毛髪洗浄剤組成物。
項5. 更に(D)カチオン化グアーガム以外のカチオン化ポリマーを含む、項1~4のいずれかに記載の固形毛髪洗浄剤組成物。
項6. 前記(D)成分が、ジアリルジメチル四級アンモニウムハライドを構成単位に含むポリマーである、項5に記載の固形毛髪洗浄剤組成物。
項7. 前記(A)成分100重量部に対する前記(D)成分の含有量が0.1~10重量部である、項5又は6に記載の固形毛髪洗浄剤組成物。
項8. 更に(E)多価アルコールを含む、項1~7のいずれかに記載の固形毛髪洗浄剤組成物。
項9. 前記(A)成分100重量部に対する前記(E)成分の含有量が0.5~10重量部である、項8に記載の固形毛髪洗浄剤組成物。
項10. 前記(C)成分1重量部に対する前記(E)成分の含有量が0.05~0.5重量部である、項8又は9に記載の固形毛髪洗浄剤組成物。
項11. さらに(F)ヤシ油脂肪酸及び/又は(G)イセチオン酸アルカリ金属塩を含む、項1~10のいずれかに記載の固形毛髪洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、使用時の剤の手取れ性と保存時の亀裂抑制性とが両立した固形毛髪洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物は、(A)ココイルイセチオン酸アルカリ金属塩(以下、「(A)成分」とも表記する)、(B)カチオン化グアーガム(以下、「(B)成分」とも表記する)、及び(C)水(以下、「(C)成分」とも表記する)を含有することを特徴とする。以下、本発明の固形毛髪洗浄剤組成物について詳述する。
【0015】
(A)ココイルイセチオン酸アルカリ金属塩
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物は、(A)成分としてココイルイセチオン酸アルカリ金属塩を含有する。ココイルイセチオン酸アルカリ金属塩は、固形毛髪洗浄剤組成物の成型性、泡立ち、及び/又はすすぎ時の滑らかさについて優れた特性を付与することができる。
【0016】
ココイルイセチオン酸アルカリ金属塩の具体例としては、ココイルイセチオン酸ナトリウム及びココイルイセチオン酸カリウムが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、好ましい(A)成分としては、ココイルイセチオン酸ナトリウムが挙げられる。
【0017】
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物において、(A)成分の含有量としては、毛髪洗浄剤組成物が固形に製剤できることを限度として特に限定されないが、例えば、55~80重量%が挙げられる。固形毛髪洗浄剤組成物の成型性、泡立ち、及び/又はすすぎ時の滑らかさを向上させる観点等から、(A)成分の含有量としては、好ましくは、57~80重量%、又は60~80重量%が挙げられる。保存時の亀裂抑制性をより一層向上させる観点から、好ましくは55~75重量%、より好ましくは55~70重量%、さらに好ましくは55~65重量%が挙げられる。
【0018】
(B)カチオン化グアーガム
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物は、(B)成分としてカチオン化グアーガムを含有する。(A)成分及び(C)成分を含む固形毛髪洗浄剤組成物においてカチオン化グアーガムを配合することで、使用時の剤の手取れ性と保存時の亀裂抑制性とを両立できる。また、カチオン化グアーガムは、固形毛髪洗浄剤組成物の泡立ち及び/又はすすぎ時の滑らかさについて優れた特性を付与することもできる。
【0019】
カチオン化グアーガムは、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、又は塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]グアーガム等とも呼ばれ、カチオン化ポリマーの1種として公知の成分である。
【0020】
カチオン化グアーガムの窒素含量としては特に限定されないが、例えば、0.2~3.0重量%、好ましくは1~2重量%が挙げられる。窒素含量は、ケルダール法により、カチオン化グアーガムを硫酸で分解して硫酸アンモニウムとし、そのアンモニアを定量することにより測定することができる。詳細には、「医薬部外品原料規格2006(薬事日報社)」一般試験法 44.窒素定量法を参考に記載された方法により測定できる。
【0021】
本発明で用いることができるカチオン化グアーガムとしては、例えば、Jaguar C14S(窒素含量:1.3重量%~1.7重量%)、Jaguar C-500(窒素含量:1.15重量%~1.45重量%)等のJaguarシリーズ(Rhodia社製);N-Hance CG14(窒素含量:1.25重量%~1.55重量%)、N-Hance 3299(窒素含量:1.15重量%~1.45重量%)、N-Hance CCG45(窒素含量:1.15重量%~1.45重量%)等のN-Hanceシリーズ(Ashland社製、Aqualon部門);カチナールCG-100S(窒素含量:1.0重量%~1.7重量%)、カチナールCG-100LD(窒素含量:1.0重量%~2.0重量%)(東邦化学工業株式会社製);Guarsafe JK140(窒素含量:1.3重量%~1.7重量%)(JINGKIN CHEMISTRY COMPANY製)等が挙げられる。
【0022】
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物において、(B)成分の含有量としては、得るべき使用時の剤の手取れ性及び保存時の亀裂抑制性の程度、若しくは、それらに加えて、所望の泡立ち及び/又はすすぎ時の滑らかさの程度に応じて決定すればよいが、例えば、1~15重量%、1~12重量%、1~8、又は1~5重量%が挙げられる。使用時の剤の手取れ性及び/又は保存時の亀裂抑制性をより一層向上させる観点、若しくは、当該観点に加えて固形毛髪洗浄剤組成物の成型性、泡立ち及び/又はすすぎ時の滑らかさも向上させる観点から、(B)成分の含有量としては、好ましくは2~5.5重量%、より好ましくは3~5重量%、さらに好ましくは3.9~4.5重量%が挙げられる。
【0023】
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物において、(A)成分と(B)成分との比率については、上記各成分の含有量により定まるが、使用時の剤の手取れ性及び/又は保存時の亀裂抑制性をより一層向上させる観点、若しくは、当該観点に加えて固形毛髪洗浄剤組成物の泡立ち及び/又はすすぎ時の滑らかさも向上させる観点から、(A)成分100重量部に対する(B)成分の含有量として、例えば1~20重量部、好ましくは2~20重量部、より好ましくは4.5~20重量部、さらに好ましくは6.5~20重量部が挙げられる。また、固形毛髪洗浄剤組成物の成形性及び/又は泡立ち性を高める観点から、(A)成分100重量部に対する(B)成分の含有量として、例えば1~10重量部、好ましくは1~9重量部、より好ましくは1~8重量部、さらに好ましくは1~7.5重量部が挙げられる。
【0024】
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物において、(C)成分と(B)成分との比率については、各成分の含有量により定まるが、使用時の剤の手取れ性及び/又は保存時の亀裂抑制性をより一層向上させる観点、若しくは、当該観点に加えて固形毛髪洗浄剤組成物の泡立ち及び/又はすすぎ時の滑らかさも向上させる観点から、(C)成分1重量部に対する(B)成分の含有量として、例えば0.05~1.5重量部、好ましくは0.09~1.5重量部、より好ましくは0.15~1.5重量部、さらに好ましくは0.19~1.5重量部が挙げられる。また、固形毛髪洗浄剤組成物の成形性及び/又は泡立ち性を高める観点から、(C)成分1重量部に対する(B)成分の含有量として、例えば0.05~0.71重量部、好ましくは0.05~0.51重量部、さらに好ましくは0.05~0.4重量部、一層好ましくは0.05~0.35重量部が挙げられる。
【0025】
(C)水
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物は、(C)成分として水を含有する。水の存在は、保存時の亀裂の発生の要因になりうるが、本発明の固形毛髪洗浄剤組成物は、保存時の亀裂抑制性に優れる。
【0026】
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物において、(C)成分の含有量としては、毛髪洗浄剤組成物が固形に製剤できることを限度として特に限定されないが、例えば、5~25重量%、好ましくは7~23重量%、より好ましくは9~21.5重量%、さらに好ましくは12~20重量%、14~19重量%、又は16~18重量%が挙げられる。
【0027】
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物において、(A)成分と(C)成分との比率については、上記各成分の含有量により定まるが、(A)成分100重量部に対する(C)成分の含有量として、例えば10~38重量部、好ましくは15~35重量部、より好ましくは20~34重量部、22~32重量部、又は24~30重量部が挙げられる。
【0028】
(D)カチオン化グアーガム以外のカチオン化ポリマー
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物は、(D)成分としてカチオン化グアーガム以外のカチオン化ポリマーを含有することができる。カチオン化グアーガム以外のカチオン化ポリマーは、単独では、使用時における剤の手取れ性を向上させることはできないが、(B)成分と共に(A)成分及び(C)成分を含む固形毛髪洗浄剤組成物に配合されることで、使用時における剤の手取れ性を一層向上させることができる。また、カチオン化グアーガム以外のカチオン化ポリマーをさらに配合されることで、すすぎ時の滑らかさを一層向上させることもできる。
【0029】
カチオン化グアーガム以外のカチオン化ポリマーとしては特に限定されず、ジアリルジメチル四級アンモニウムハライドを構成単位に含むポリマー及びカチオン化セルロース等が挙げられる。
【0030】
カチオン化グアーガム以外のカチオン化ポリマーの分子量としては特に限定されないが、例えば、重量平均分子量で1千~100万が挙げられる。使用時における剤の手取れ性向上効果をさらに高める観点、及び/又は、すすぎ時の滑らかさを一層向上させる観点から、カチオン化グアーガム以外のカチオン化ポリマーとしては、好ましくは1万~50万であり、より好ましくは10万~40万、さらに好ましくは15~25万、一層好ましくは17~20万が挙げられる。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される。
【0031】
カチオン化グアーガム以外のカチオン化ポリマーのカチオン化度としては特に限定されないが、例えば、カチオン密度で4meq/g以上が挙げられる。使用時における剤の手取れ性向上効果をさらに高める観点、及び/又は、すすぎ時の滑らかさを一層向上させる観点から、カチオン化グアーガム以外のカチオン化ポリマーのカチオン密度としては、好ましくは5meq/g以上、より好ましくは5.5meq/g以上、さらに好ましくは6meq/g以上が挙げられる。カチオン化グアーガム以外のカチオン化ポリマーのカチオン密度の範囲の上限としては特に限定されないが、例えば10meq/g以下、好ましくは9meq/g以下、より好ましくは8meq/g以下、さらに好ましくは7meq/g以下、一層好ましくは6.5meq/g以下、特に好ましくは6.3meq/g以下が挙げられる。
【0032】
カチオン化グアーガム以外のカチオン化ポリマーとしては、上記の中でも、使用時における剤の手取れ性向上効果をさらに高める観点、及び/又は、すすぎ時の滑らかさを一層向上させる観点から、ジアリルジメチル四級アンモニウムハライドを構成単位に含むポリマーであることが好ましい。ハライドの具体例としては、クロリド及びブロミドが挙げられ、好ましくはクロリドが挙げられる。
【0033】
ジアリルジメチル四級アンモニウムハライドを構成単位に含むポリマーの具体例としては、例えば、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド単独重合体(ポリクオタニウム-6)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリルアミド共重合体(ポリクオタニウム-7)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム-22)等が挙げられる。これらのジアリルジメチル四級アンモニウムハライドを構成単位に含むポリマーの中でも、使用時における剤の手取れ性向上効果をさらに高める観点、及び/又は、すすぎ時の滑らかさを一層向上させる観点から、好ましくはジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム-22)が挙げられる。
【0034】
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物が(D)成分を含む場合、(D)成分の含有量としては、特に限定されず、例えば0.1~5重量%が挙げられる。使用時における剤の手取れ性向上効果をさらに高める観点、及び/又は、すすぎ時の滑らかさを一層向上させる観点から、(D)成分の含有量としては、好ましくは0.15~4.5重量%、より好ましくは0.4~4.2重量%、さらに好ましくは0.6~4重量%、一層好ましくは1~4重量又は2~3重量%が挙げられる。
【0035】
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物が(D)成分を含む場合、(A)成分と(D)成分との含有比率については、上記各成分の含有量により定まるが、使用時における剤の手取れ性向上効果をさらに高める観点、及び/又は、すすぎ時の滑らかさを一層向上させる観点から、(A)成分100重量部に対する(D)成分の含有量として、例えば0.1~10重量部、好ましくは0.3~10重量部、より好ましくは0.9~10重量部、さらに好ましくは1~10重量部、一層好ましくは2~8重量部、3~6重量部、4~5重量部、又は4.5~5重量部が挙げられる。
【0036】
(E)多価アルコール
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物は、(E)成分として多価アルコールを含有することができる。多価アルコールは、固形毛髪洗浄剤組成物の保存時の亀裂抑制性を一層向上させることができる。
【0037】
多価アルコールとしては特に限定されず、2価アルコール及び3価アルコールが挙げられる。これらの多価アルコールの中でも、保存時の亀裂抑制性向上効果をさらに高める観点及び/又は優れたすすぎ時の滑らかさを得る観点からは、好ましくは3価アルコールが挙げられる。また、これらの多価アルコールの中でも、優れた成形性を得る観点からは、好ましくは2価アルコールが挙げられる。
【0038】
2価アルコールとしては特に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールが挙げられる。これらの2価アルコールの中でも、優れた使用時の手取れ性を得る観点から、好ましくは1,3-ブチレングリコールが挙げられる。3価アルコールとしては特に限定されないが、好ましくはグリセリンが挙げられる。
【0039】
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物が(E)成分を含む場合、(E)成分の含有量としては、特に限定されず、例えば0.1~15重量%が挙げられる。保存時の亀裂抑制性向上効果をさらに高める観点から、(E)成分の含有量としては、好ましくは0.5~15重量%、より好ましくは2.4~15重量%、さらに好ましくは5~15重量%が挙げられる。また、優れた成形性を得る観点から、(E)成分の含有量としては、好ましくは0.1~10重量%、好ましくは0.1~8重量%、より好ましくは0.1~7重量%が挙げられる。
【0040】
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物が(E)成分を含む場合、(A)成分と(E)成分との比率については、上記各成分の含有量により定まるが、(A)成分100重量部に対する(E)成分の含有量として、保存時の亀裂抑制性向上効果をさらに高める観点から、例えば0.5~10重量部、好ましくは2~10重量部、4~10重量部、より好ましくは5~10重量部、さらに好ましくは6~10重量部が挙げられ、優れた成形性を得る観点から、例えば0.5~7重量部、又は0.5~6重量部が挙げられる。
【0041】
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物が(E)成分を含む場合、(C)成分と(E)成分との含有比率については、上記各成分の含有量により定まるが、保存時の亀裂抑制性向上効果をさらに高める観点から、例えば、(C)成分1重量部に対する(E)成分の含有量として、例えば0.05~0.5重量部、好ましくは0.1~0.5重量部、より好ましくは0.13~0.5重量部、さらに好ましくは0.3~0.5重量部、一層好ましくは0.39~0.5重量部が挙げられ、優れた成形性を得る観点から、好ましくは0.05~0.42重量部、より好ましくは0.05~0.3重量部、さらに好ましくは0.05~0.22重量部が挙げられる。
【0042】
(F)ヤシ油脂肪酸及び/又は(G)イセチオン酸アルカリ金属塩
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物は、(F)成分としてヤシ油脂肪酸及び(G)成分としてイセチオン酸アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられ、好ましくはナトリウム塩が挙げられる。)の少なくともいずれかを含有することができる。
【0043】
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物が(F)成分を含む場合、(F)成分の含有量としては、例えば5~15重量%、好ましくは8~10重量%が挙げられる。
【0044】
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物が(F)成分を含む場合、(A)成分と(F)成分との比率については、上記各成分の含有量により定まるが、(A)成分100重量部に対する(F)成分の含有量として、例えば10~20重量部、好ましくは13~16重量部が挙げられる。
【0045】
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物が(G)成分を含む場合、(G)成分の含有量としては、例えば0.5~2.5重量%、好ましくは1~2重量%が挙げられる。
【0046】
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物が(G)成分を含む場合、(A)成分と(G)成分との比率については、上記各成分の含有量により定まるが、(A)成分100重量部に対する(G)成分の含有量として、例えば1~4重量部、好ましくは2~3.2重量部が挙げられる。
【0047】
他の成分
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物には、前述の(A)~(C)成分、及び必要に応じて配合される(D)~(G)成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、毛髪洗浄剤組成物及び/又は固形洗浄剤の技術分野で通常使用される添加成分を含有していてもよい。このような添加成分としては、例えば、界面活性剤((A)成分以外のアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等)、油性基剤(高級アルコール、エステル油、植物油、炭化水素油等)、(F)成分以外の高級脂肪酸、(B)成分及び(D)成分以外の増粘剤、有機溶剤、美白剤、細胞賦活剤、消炎剤、抗菌剤、保湿剤、植物エキス、清涼化剤、無機粉体、パール剤、キレート剤、着色剤、顔料、香料、消臭剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0048】
用途
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物は、毛髪若しくは毛髪及び頭皮を洗浄する目的で用いられる。使用時には、固形毛髪洗浄剤組成物から、適量の剤を毛髪若しくは毛髪及び頭皮に付着させ、毛髪若しくは毛髪及び頭皮を洗浄することができる。適量の剤を取る方法としては、固形毛髪洗浄剤組成物を適量の水とともに手のひらに擦り付けることで剤をとる方法、毛髪に直接擦り付ける方法が挙げられるが、本発明の固形毛髪洗浄剤組成物が剤の手取れ性に優れるため、これらの方法の中でも、手のひらに擦り付けることで剤をとる方法が好ましい。
【0049】
製造方法
本発明の固形毛髪洗浄剤組成物は、前述する前述の(A)~(C)成分、及び必要に応じて配合される(D)~(G)成分、並びに必要に応じて配合される他の成分を混合して、固形状に調製することによって製造される。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
表1に示す固形毛髪洗浄剤組成物(30.0g/個、5.8cm×4.2cm×1.0cm)を調製した。具体的には、表1に示す成分を3本ロールにより粉砕及び混合し、更に50℃に設定した押し出し機にて混錬したものを、金型を用いたプレス機により成形した。成型物を金型より取り外し、室温まで自然冷却することで、固形毛髪洗浄剤組成物を製造した。それぞれの固形毛髪洗浄剤組成物で用いた成分の詳細は以下の通りである。
・ココイルイセチオン酸ナトリウム:PUREACT I-78(Innospec Active Chemicals LLC)含有成分
・ラウロイルグルタミン酸ナトリウム:アミノサーファクト ALMS-P1(旭化成ファインケム株式会社)
・ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム:アミノフォーマー FLMS-P1(旭化成ファインケム株式会社)
・グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:カチナールCG-100LD(東邦化学工業株式会社)
・ポリクオタニウム-10:ポイズC-150L(花王株式会社)
・ポリクオタニウム-22:Merquat295(日本ルーブリゾール)、カチオン密度6.0meq/g、重量平均分子量19万
・ヤシ油脂肪酸:PUREACT I-78含有成分
・イセチオン酸ナトリウム:PUREACT I-78含有成分
【0052】
得られた固形毛髪洗浄剤組成物について、以下のようにして、使用時の手取れ性、保存時の亀裂抑制性、成型性、泡立ち、及びすすぎ時の滑らかさについて評価を行った。結果を表1に示す。
【0053】
<使用時の剤の手取れ性>
固形毛髪洗浄剤組成物に100gの水をかけてまんべんなく濡らし、水滴を切って、手のひらの上で5回往復こすりつけ、手に移った剤の量を、実施例4の固形毛髪洗浄剤組成物の場合の量を10点、比較例1の固形毛髪洗浄剤組成物の場合の量を1点とする10段階で評価した。評点が大きいほど、使用時の剤の手取れ性に優れていると判断される。評点が6点以上である場合に、所望の手取れ性が達成できていると判断した。
【0054】
<保存時の亀裂抑制性>
固形毛髪洗浄剤組成物を、5℃の水中に2時間浸漬し、その後水中から取り出して、温度5℃、湿度30%RHの環境下で1日放置した。その後、固形毛髪洗浄剤組成物における亀裂密度(固形毛髪洗浄剤組成物の表面積に対する亀裂が占める面積割合)について、全く亀裂が生じていない場合を10点、比較例2の固形毛髪洗浄剤組成物による亀裂密度の程度(大きな亀裂が多数生じている)を1点とする10段階で、亀裂密度を10段階で評価した。評点が大きいほど、保存時の亀裂抑制性に優れていると判断される。評点が5点以上であれば、保存時の亀裂抑制性に関して実商品として問題ないレベルであると判断した。
【0055】
<成型性>
固形毛髪洗浄剤組成物の形状と金型の形状との差異及びその程度について評価した。具体的には、固形毛髪洗浄剤組成物の形状が金型の形状の通りに成形され、金型形状との乖離がない(へこみ及び欠けのいずれも認められない)場合を5点、比較例1の固形毛髪洗浄剤組成物の形状にみられる、へこみ及び/又は欠けによる金型形状との乖離の程度を1点とする5段階で、金型形状との乖離の程度を5段階で評価した。評点が大きいほど、成型性に優れ、固形毛髪洗浄剤組成物の外観の美観に優れていると判断される。
【0056】
<泡立ち>
固形毛髪洗浄剤組成物0.5gを、100gの水を用いて手のひらで10秒間泡立て操作を行った。実施例13の固形毛髪洗浄剤組成物による泡の量を10点、泡立たない場合を1点とし、泡立て操作による泡の量を10段階で評価した。評点が大きいほど、固形毛髪洗浄剤組成物は泡立ちに優れていると判断される。
【0057】
<すすぎ時の滑らかさ>
固形毛髪洗浄剤組成物1.0gを用いて毛髪を洗浄し、湯(38℃)ですすいだ。すすぎ時の毛髪の滑らかさについて、実施例4の固形毛髪洗浄剤組成物の場合を10点(非常に滑らか)、比較例2の固形毛髪洗浄剤組成物の場合を1点(きしむ)とする10段階で評価した。評点が大きいほど、固形毛髪洗浄剤組成物はすすぎ時の滑らかさに優れていると判断される。
【0058】