(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】正極活物質、その製造方法、及びそれを含む正極を含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240614BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240614BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240614BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/505
C01G53/00 A
(21)【出願番号】P 2022538922
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 KR2019018508
(87)【国際公開番号】W WO2021132761
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】10-2019-0174169
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521363413
【氏名又は名称】エスエム ラブ コーポレーション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SM LAB CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】27,Gacheongongdan 1-gil,Samnam-myeon,Ulju-gun,Ulsan 44953,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セオ ミン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジ ヨン
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/120973(WO,A1)
【文献】特開2013-182782(JP,A)
【文献】特表2017-536686(JP,A)
【文献】特表2018-506156(JP,A)
【文献】特開2015-118898(JP,A)
【文献】国際公開第2015/005439(WO,A1)
【文献】特表2022-520866(JP,A)
【文献】特表2022-521211(JP,A)
【文献】特開2008-152923(JP,A)
【文献】特表2018-521456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Liの一部がNaで置換され、Ni原子及びCo原子を含むリチウム遷移金属酸化物粒子と、
前記リチウム遷移金属酸化物粒子表面に配されたコバルト含有コーティング層と、を含み、
前記リチウム遷移金属酸化物粒子が、表面から粒子中心方向に、Co原子の濃度が低減する濃度勾配領域を含む、正極活物質
であって、
前記リチウム遷移金属酸化物粒子は、下記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物を含む、正極活物質。
Li
1-x
Na
x
M
1-(α+β+γ)
W
α
Mg
β
Ti
γ
O
2-a
S
a
・・・(化学式1)
化学式1で、
Mは、W、Mg、Ti、Na及びSを除いたアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、ポスト遷移金属及び非金属元素のうちから選択された1種以上の元素であり、
0<x≦0.01、0<α≦0.01、0<β≦0.005、0<γ≦0.005、0<a≦0.01、0<α+β+γ≦0.02である。
【請求項2】
前記濃度勾配領域は、前記リチウム遷移金属酸化物粒子表面から粒子中心方向に、Ni原子の濃度が増大する、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記濃度勾配領域は、前記リチウム遷移金属酸化物粒子表面から中心方向に、500nm距離までの領域を含む、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記化学式1で、β及びγは、それぞれ0<β≦0.003、0<γ≦0.003である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記Mは、Ni、Co、Mn、Al、V、Ca、Zr、B及びPのうちから選択された1種以上の元素である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記リチウム遷移金属酸化物は、単一粒子である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記リチウム遷移金属酸化物は、単結晶である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項8】
Liの一部がNaで置換され、Ni原子及びCo原子を含むリチウム遷移金属酸化物粒子と、
前記リチウム遷移金属酸化物粒子表面に配されたコバルト含有コーティング層と、を含み、
前記リチウム遷移金属酸化物粒子が、表面から粒子中心方向に、Co原子の濃度が低減する濃度勾配領域を含む、正極活物質であって、
前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式2ないし4のうちいずれか一つで表される、正極活物質。
Li
1-x’
Na
x’
Ni
y1’
Co
y2’
Mn
y3’
W
α'
Mg
β'
Ti
γ’
O
2-a’
S
a’
・・・(化学式2)
Li
1-x”
Na
x”
Ni
y1”
Co
y2”
Al
y3”
W
α”
Mg
β”
Ti
γ”
O
2-a”
S
a”
・・・(化学式3)
Li
1-x’’’
Na
x’’’
Ni
y1’’’
Co
y2’’’
W
α’’’
Mg
β’’’
Ti
γ’’’
O
2-a’’’
S
a’’’
・・・
(化学式4)
化学式2で、
0<x’≦0.01、0<α’≦0.01、0<β’≦0.005、0<γ’≦0.005、0<a’≦0.01、0<α’+β’+γ’≦0.02、0.48≦y1’<1、0<y2’≦0.2、0<y3’≦0.3、y1’+y2’+y3’+α’+β’+γ’=1であり、
化学式3で、
0<x”≦0.01、0<α”≦0.01、0<β”≦0.005、0<γ”≦0.005、0<a”≦0.01、0<α”+β”+γ”≦0.02、0.73≦y1”<1、0<y2”≦0.2、0<y3”≦0.05、y1”+y2”+y3”+α”+β”+γ”=1であり、
化学式4で、
0<x’’’≦0.01、0<α’’’≦0.01、0<β’’’≦0.005、0<γ’’’≦0.005、0<a’’’≦0.01、0<α’’’+β’’’+γ’’’≦0.02、0.78≦y1’’’<1、0<y2’’’≦0.2、y1’’’+y2’’’+α’’’+β’’’+γ’’’=1である。
【請求項9】
前記化学式2で、0<β’≦0.003、0<γ’≦0.003、0<α’+β’+γ’≦0.016であり、
前記化学式3で、0<β”≦0.003、0<γ”≦0.003、0<α”+β”+γ”≦0.016であり、
前記化学式4で、0<β’’’≦0.003、0<γ’’’≦0.003、0<α’’’+β’’’+γ’’’≦0.016である、請求項
8に記載の正極活物質。
【請求項10】
前記リチウム遷移金属酸化物の平均粒径(D
50)は、0.1μmないし20μmである、請求項1
または8に記載の正極活物質。
【請求項11】
前記コーティング層は、下記化学式5で表されるコバルト含有化合物を含む、請求項1
または8に記載の正極活物質:
Li
x1Co
y1M’
z1O
a1・・・(化学式5)
化学式5で、
M’は、Coを除いた1種以上の遷移金属であり、
0.5<x1、0<y1<1、0<z1<1及び1<a1<3である。
【請求項12】
0.3≦y1/(y1+z1)<1である、請求項
11に記載の正極活物質。
【請求項13】
前記コーティング層は、下記化学式6で表されるコバルト含有化合物を含む、請求項1
または8に記載の正極活物質:
Li
x1Co
y1Ni
z11M2
z12M3
z13O
2・・・(化学式6)
化学式6で、
M2及びM3は、互いに独立して、Mn、B、Zr、P、Ca、Al、W、Mg、V及
びTiのうちから選択された1種以上の遷移金属であり、
0.5<x1<1.1、0.3≦y1<1、0<z11≦0.7、0≦z12<1及び
0≦z13<1である。
【請求項14】
Liの一部がNaで置換され、Ni原子及びCo原子を含むリチウム遷移金属酸化物粒子を準備する段階と、
前記リチウム遷移金属酸化物粒子、Co元素含有化合物を混合し、正極活物質前駆体を得る段階と、
前記正極活物質前駆体を焼成し、正極活物質を得る段階と、を含み、
前記正極活物質は、表面にコバルト含有コーティング層、及び表面から粒子中心方向にCo原子の濃度が低減する濃度勾配領域を含む、正極活物質の製造方法
であって、
前記リチウム遷移金属酸化物粒子を準備する段階は、 Li元素含有化合物、Na元素含有化合物、W元素含有化合物、Mg元素含有化合物、Ti元素含有化合物、M元素含有化合物及びS元素含有化合物を混合し、リチウム遷移金属酸化物前駆体を得る段階と、
前記リチウム遷移金属酸化物前駆体を熱処理し、下記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物粒子を含む正極活物質を得る段階と、を含む、正極活物質の製造方法。
Li
1-x
Na
x
M
1-(α+β+γ)
W
α
Mg
β
Ti
γ
O
2-a
S
a
・・・(化学式1)
化学式1で、
Mは、W、Mg、Ti、Na及びSを除いたアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、ポスト遷移金属及び非金属元素のうちから選択された1種以上の元素であり、
0<x≦0.01、0<α≦0.01、0<β≦0.005、0<γ≦0.005、0<a≦0.01、0<α+β+γ≦0.02である。
【請求項15】
前記混合段階は、機械的混合する段階を含む、請求項
14に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項16】
前記熱処理段階は、第1熱処理段階及び第2熱処理段階を含み、
前記第1熱処理段階の熱処理温度は、前記第2熱処理段階の熱処理温度より高い、請求項
14に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項17】
前記焼成する段階は、500℃ないし900℃の温度で、1ないし6時間遂行される、
請求項
14に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項18】
請求項1ないし
13のうちいずれか1項に記載の正極活物質を含む正極と、
負極と、
電解質と、を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規組成の正極活物質、その製造方法、及びそれを含む正極を具備したリチウム二次電池に関する。
【0002】
本発明は、「中大型リチウム二次電池用高強度/長寿命/高安定性Ni-rich NCA(>210mAh/g、@4.3V)正極素材開発」という題目の課題固有番号P0009541の産業通商資源部の資金を支援されてなされた。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、1991年、Sony社によって商用化された後、mobile IT製品のような小型家電から、中大型電気自動車及びエネルギー保存システムまで、多様な分野で需要が急増している。特に、中大型電気自動車及びエネルギー保存システムのためには、低価型高エネルギー正極素材が必須なものであるが、現在商用化されている正極活物質である単結晶形LiCoO2(LCO)の主原料であるコバルトは、高価である。
【0004】
そのために、最近、中大型二次電池用正極活物質として、LCOの代わりに、Coの一部を他の遷移金属で置換したLiNixCoyMnzO2(NCM)(x+y+z=1)及びLiNixCoyAlzO2(NCA)(x+y+z=1)で表されるNi系正極活物質を使用し、そのようなNCM系正極活物質及びNCA系正極活物質は、原料であるニッケルの価格が廉価であり、で高い可逆容量を有するという長所を有する。特に、高容量の側面において、Niのモル比が50モル%以上であるNCM及びNCAが注目されている。一般的に、そのようなNi系正極活物質は、共沈法で合成された遷移金属化合物前駆体をリチウムソースと混合させた後、固相に合成して製造される。しかしながら、そのように合成されたNi系正極素材は、小さい一次粒子が塊になっている二次粒子形態で存在し、長期間の充電/放電過程において、二次粒子内部に微細亀裂(micro-crack)が生じるという問題点が存在する。該微細亀裂は、正極活物質の新たな界面と電解液との副反応を誘発し、その結果、ガス発生による安定性低下、及び電解液枯渇による電池性能低下のような電池性能劣化が誘発される。また、高エネルギー密度具現のために、電極密度の増大(>3.3g/cc)を必要とするが、それは、二次粒子の崩壊を誘発し、電解液との副反応による電解液枯渇を誘発し、初期寿命急落を誘発する。結局、既存の共沈法で合成した二次粒子形態のNi系正極活物質は、高エネルギー密度を具現することができないということを意味する。
【0005】
前述の二次粒子形態のNi系正極活物質の問題点を解決すべく、最近、単粒子型Ni系正極活物質に係わる研究がなされている。単結晶形Ni系正極活物質は、そのエネルギー密度具現のために、電極密度増大時(>3.3g/cc)、粒子の崩壊が発生せず、すぐれた電気化学性能を具現することができる。しかしながら、そのような単結晶形Ni系正極活物質は、電気化学評価時、不安定なNi3+イオン、Ni4+イオンにより、構造的及び/または熱的な不安定さにより、バッテリ安定性が低下してしまうという問題点が提起された。従って、高エネルギーリチウム二次電池開発のために、単結晶Ni系正極活物質の不安定なNiイオンを安定化させる技術への要求が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一態様によれば、前述のような単結晶Ni系正極活物質における不安定なNiイオンを安定化させ、正極活物質内のCo濃度勾配領域、及び正極活物質表面に配されるCo含有コーティング層により、正極活物質の構造的安定性が向上され、充放電時、粒子の亀裂を抑制し、高エネルギー密度が具現され、長寿命特性が向上された正極活物質を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様により、Liの一部がNaで置換され、Ni原子及びCo原子を含むリチウム遷移金属酸化物粒子と、
前記リチウム遷移金属酸化物粒子表面に配されたコバルト含有コーティング層と、を含み、前記リチウム遷移金属酸化物粒子が、表面から粒子中心方向に、Co原子の濃度が低減する濃度勾配領域を含む正極活物質が提供される。
【0008】
他の態様により、Liの一部がNaで置換され、Ni原子及びCo原子を含むリチウム遷移金属酸化物粒子を準備する段階と、
前記リチウム遷移金属酸化物粒子、Co元素含有化合物を混合し、正極活物質前駆体を得る段階と、
前記正極活物質前駆体を焼成し、正極活物質を得る段階と、を含み、
前記正極活物質は、表面にCo含むコーティング層、及び表面から粒子中心方向にCo原子の濃度が低減する濃度勾配領域を含む正極活物質の製造方法が提供される。
【0009】
さらに他の態様により、前記正極活物質を含む正極と、負極と、電解質と、を含むリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様による正極活物質は、単結晶及び単一粒子のリチウム遷移金属酸化物粒子を含み、単結晶内のLi元素のうち一部がNaで置換され、遷移金属において、Coの濃度が、リチウム遷移金属酸化物粒子表面から粒子中心方向に低減する濃度勾配領域を含み、前記リチウム遷移金属酸化物粒子表面にコバルト含有コーティング層を含むことにより、充放電時、粒子の亀裂による崩壊を防止し、高Ni系リチウム遷移金属酸化物に存在する不安定なNiイオンが安定化され、体積当たり容量が増加し、寿命安定性が向上された。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1及び比較例1の正極活物質に係わるSEM(scanning electron microscope)写真である。
【
図2】実施例1及び比較例1の正極活物質の粒度分布を示すグラフである。
【
図3】比較例1の正極活物質の高解像度透過電子顕微鏡(HR-TEM:high resolution transmission electron microscopy)写真である。
【
図4】実施例1の正極活物質の高解像度透過電子顕微鏡(HR-TEM)写真である。
【
図5A】実施例1の正極活物質の高解像度透過電子顕微鏡(HR-TEM)写真である。
【
図5B】実施例1の正極活物質のエネルギー分散型X線分析(EDX:energy dispersive X-ray spectroscopy)写真である。
【
図6A】実施例1の正極活物質の高解像度透過電子顕微鏡(HR-TEM)写真である。
【
図6B】実施例1の正極活物質のFFT(fast Fourier transform)写真である。
【
図7】実施例4、及び比較例11ないし15のハーフセルに係わる寿命維持率グラフである。
【
図8】実施例4、及び比較例16ないし18のハーフセルに係わる寿命維持率グラフである。
【
図9】実施例5及び比較例19のハーフセルに係わる寿命維持率グラフである。
【
図10】実施例6及び比較例20のハーフセルに係わる寿命維持率グラフである。
【
図11】例示的な具現例によるリチウム電池の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下で説明される本創意的思想(present inventive concept)は、多様な変換を加えることができ、さまざまな実施例を有することができるが、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明によって詳細に説明する。しかしながら、それは、本創意的思想を特定の実施形態について限定するものではなく、本創意的思想の技術範囲に含まれる全ての変換、均等物または代替物を含むと理解されなければならない。
【0013】
以下で使用される用語は、単に特定実施例について説明するために使用されたものであり、本創意的思想を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。以下において、「含む」または「有する」というような用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせが存在するということを示すものであり、1またはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせの存在または付加の可能性を事前に排除するものではないと理解されなければならない。以下で使用される「/」は、状況により、「及び」とも解釈され、あるいは「または」とも解釈される。
【0014】
図面において、さまざまな層及び領域を明確に表現するために、厚みを拡大するか、あるいは縮小させて示されている。明細書全体を通じて、類似した部分については、同一図面符号を付した。明細書全体において、層、膜、領域、板のような部分が、他部分の「上」または「上部」にあるとするとき、それは、他部分の真上にある場合だけではなく、その中間に、さらに他部分がある場合も含む。明細書全体において、第1、第2のような用語は、多様な構成要素についての説明に使用されうるが、該構成要素は、用語によって限定されるものではない。該用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみに使用される。
【0015】
取り立てて定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるところと同一の意味を有する。また、一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、関連技術及び本開示内容の文脈内のその意味と一致する意味を有すると解釈されなければならなず、理想化されたり、過度に形式的な意味に解釈されたりしてはならないということがまた理解されるであろう。
【0016】
「族」は、国際純正・応用化学連合(「IUPAC」)1-18族族分類システムによる元素周期律表のグループを意味する。
【0017】
特定の具現例が記述されたが、現在予想されていないか、あるいは予想することができない代案、修正、変形、改善及び実質的均等物が、出願人または当業者に生じうる。従って、出願されて修正されうる添付請求範囲は、そのような全ての代案、修正、変形、改善及び実質的均等物を含むと意図される。
【0018】
以下において、例示的な具現例による正極活物質、その製造方法、及びそれを含む正極を含むリチウム二次電池についてさらに詳細に説明する。
【0019】
一具現例による正極活物質は、Liの一部がNaで置換され、Ni原子及びCo原子を含むリチウム遷移金属酸化物粒子と、前記リチウム遷移金属酸化物粒子表面に配されたコバルト含有コーティング層と、を含み、前記リチウム遷移金属酸化物粒子が、表面から粒子中心方向に、Co原子の濃度が低減する濃度勾配領域を含むものでもある。
【0020】
前記正極活物質は、Liの一部がNaで置換されることにより、充電時、Liイオンの脱離による構造的変形が抑制され、正極活物質の長寿命特性が向上され、リチウム遷移金属酸化物粒子が、表面から粒子中心方向に、Co原子の濃度が低減する濃度勾配領域を含むことにより、結晶構造の安定性がさらに向上され、充放電過程において、結晶の崩壊を抑制し、寿命特性が向上されるだけではなく、表面において、不安定なNi(III)及びNi(IV)イオンの分布を減らし、コア中心において、Ni(II)イオンの分布を増大させることにより、Niイオンの電解液との副反応を抑制するだけではなく、高いNiイオン含量により、正極活物質の高容量が得られる。従って、前記正極活物質は、高容量及び長寿命特性を有する。また、前記リチウム遷移金属酸化物粒子表面に配されたコバルト含有コーティング層を含むことにより、電解液とリチウム遷移金属酸化物粒子との副反応を抑制することにより、正極活物質の劣化が抑制され、長寿命特性が向上される。
【0021】
一具現例によれば、前記濃度勾配領域は、前記リチウム遷移金属酸化物粒子表面から中心方向に、500nm距離までの領域を含むものでもある。
【0022】
例えば、前記濃度勾配領域は、前記リチウム遷移金属酸化物粒子表面から中心方向に、250nm距離までの領域を含むものでもある。
【0023】
前記濃度勾配領域が、前記リチウム遷移金属酸化物粒子表面から前記距離ほど存在することにより、正極活物質の高容量特性及び長寿命特性が達成される。
【0024】
一具現例によれば、前記濃度勾配領域は、前記リチウム遷移金属酸化物粒子表面から粒子中心方向に、Ni原子の濃度が増大しうる。
【0025】
一具現例によれば、前記濃度勾配領域において、前記リチウム遷移金属酸化物粒子表面から粒子中心方向に、Co原子の濃度は、低減し、Ni原子の濃度は、増大しうる。
【0026】
前記リチウム遷移金属酸化物粒子表面からCo原子の濃度が漸進的に低減し、Ni原子の濃度が漸進的に増大することにより、正極活物質の高容量特性及び長寿命特性が達成される。
【0027】
一具現例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物粒子は、下記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物を含むものでもある:
Li1-xNaxM1-(α+β+γ)WαMgβTiγO2-aSa・・・(化学式1)
【0028】
前記化学式1で、M、x、α、β、γ、aについては、下記で具体的に後述する。
【0029】
前記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物は、Liの一部がNaで置換され、Mの一部がW、Mg、及びTiで置換され、Oの一部がSで置換されることにより、それを含むリチウム二次電池の充放電時、リチウム遷移金属酸化物の構造的安定性が向上され、単位体積当たり容量が増大し、寿命安定性が向上される。
【0030】
また、MがNiを含む高Ni系リチウム遷移金属酸化物において、少量のW、Mg及びTiの置換は、リチウム遷移金属酸化物に存在する不安定なニッケルイオン、例えば、Ni3+、Ni4+をして、安定したニッケルイオンの形態であるNi2+への還元を誘発させることにより、充放電時、不安定なニッケルイオンと電解液との副反応による正極活物質の劣化、及び容量低下が抑制される。
【0031】
前記リチウム遷移金属酸化物粒子は、濃度勾配領域に加え、遷移金属として、W、Mg、Tiを少量含むことにより、リチウム遷移金属酸化物粒子内に分布する不安定なニッケルイオン、例えば、Ni3+、Ni4+をして、安定したニッケルイオンの形態であるNi2+への還元を誘発させ、充放電時、正極活物質の劣化を防止し、容量低下を顕著に抑制することができる。
【0032】
一具現例によれば、前記化学式1で、Mは、W、Mg、Ti、Na及びSを除いたアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、ポスト遷移金属及び非金属元素のうちから選択された1種以上の元素でもある。
【0033】
例えば、Mは、K、Rb、Cs、Fr、Be、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、La、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、B、Al、Ga、In、Tl、C、Si、Ge、Sn、Pb、N、P、As、Sb、Bi、N、P、As、Sb、Bi、Se、Te及びPoのうちから選択された1種以上の元素でもある。
【0034】
一具現例によれば、Mは、W、Mg、Ti、Na及びSを除いたアルカリ土類金属元素、遷移金属元素、ポスト遷移金属及び非金属元素のうちから選択された1種以上の元素でもある。
【0035】
例えば、Mは、Be、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、La、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、B、Al、Ga、In、Tl、C、Si、Ge、Sn、Pb、N、P、As、Sb、Bi、N、P、As、Sb、Bi、Se、Te及びPoのうちから選択された1種以上の元素でもある。
一具現例によれば、Mは、Ni、Co、Mn、Al、V、Ca、Zr、B及びPのうちから選択された1種以上の元素でもある。
【0036】
例えば、Mは、Ni、Co、Mn、Al、V、Ca、Zr、B及びPのうちから選択された1種以上の元素でもある。例えば、Mは、Ni、Co、Mn及びAlのうちから選択された1種以上の元素でもある。
【0037】
一具現例によれば、前記xは、0<x≦0.01でもある。ここで、xは、化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物において、Liに対するNaの置換モル比を意味する。前記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物のLiの一部がNaで置換されることにより、構造的安定性が向上されうる。Liが位置する格子空間にNaが置換される場合、リチウムに比べ、イオン半径が大きいNaの介入により、充電状態において、リチウムの脱離時、リチウム遷移金属酸化物内の酸素原子間の反撥力による結晶構造の膨脹が抑制され、その結果、反復的充電時にも、リチウム遷移金属酸化物の構造的安定性が達成される。
【0038】
一具現例によれば、前記αは、0<α≦0.01でもある。ここで、αは、化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物において、M元素に対するWの置換モル比を意味する。Wが前記範囲で置換される場合、リチウム遷移金属酸化物の構造的安定性が向上される。Wの置換モル比が0.01を超える場合、結晶構造上のたわみによる構造的安定性の低下が誘発され、不純物としてWO3が形成され、電気化学的特性の低下が招かれうる。
【0039】
一具現例によれば、前記βは、0<β≦0.005でもある。ここで、βは、化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物において、M元素に対するMgの置換モル比を意味する。Mgの置換モル比が前記範囲を満足する場合、充電状態において、リチウム遷移金属酸化物の構造的膨脹が抑制されうる。
【0040】
一具現例によれば、前記γは、0<γ≦0.005でもある。ここで、γは、化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物において、M元素に対するTiの置換モル比を意味する。Tiの置換モル比が前記範囲を満足する場合、充電状態において、リチウム遷移金属酸化物の構造的膨脹が抑制されうる。
【0041】
前述のW、Mg、Tiが、前記モル比で前記リチウム遷移金属酸化物で置換される場合、充電状態において、リチウム脱離時にも、リチウム遷移金属酸化物において、酸素間の相互作用による結晶の構造的膨脹抑制により、構造的安定性が向上され、寿命特性が向上される。
【0042】
一具現例によれば、α、β及びγの和は、0<α+β+γ≦0.02でもある。例えば、α、β及びγの和は、0<α+β+γ≦0.016でもある。α+β+γが前記範囲を満足する場合、リチウム遷移金属酸化物の構造的安定性が保証される。α+β+γが0.02を超える場合、不純物相が形成され、それは、リチウム脱離時、抵抗として作用するだけではなく、反復的充電時、結晶構造の崩壊が引き起こされてしまう。
【0043】
一具現例によれば、前記化学式1で、β及びγは、それぞれ0<β≦0.003、0<γ≦0.003でもある。
【0044】
例えば、前記化学式1で、β=γでもある。β=γである場合、例えば、Mg及びTiのモル比が同一である場合、充電時及び放電時、リチウム遷移金属酸化物内の電荷均衡がなされ、結晶構造の崩壊が抑制され、構造的安定性が向上され、その結果、寿命特性が向上される。
【0045】
一具現例によれば、前記aは、0<a≦0.01でもある。例えば、0<a≦0.005、0<a≦0.003または0<a≦0.001でもある。ここで、aは、化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物において、O元素に対するSの置換モル比を意味する。
【0046】
酸素元素の一部がSで置換されることにより、遷移金属との結合力が増大し、リチウム遷移金属酸化物の結晶構造の転移が抑制され、その結果、リチウム遷移金属酸化物の構造的安定性が向上される。
【0047】
なお、Sの置換モル比が0.01を超える場合、S陰イオンの反撥力により、結晶構造が不安定になり、かえって寿命特性が低下される。
【0048】
一具現例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、単一粒子でもある。該単一粒子は、複数の粒子が凝集されて形成された二次粒子、または複数の粒子が凝集され、凝集体の周囲がコーティングされて形成された粒子とは、区分される概念である。前記リチウム遷移金属酸化物が単一粒子の形態を有することにより、高い電極密度においても、粒子の崩壊を防止することができる。従って、リチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質の高エネルギー密度の具現が可能になる。また、複数の単一粒子が凝集された二次粒子に比べ、圧延時、崩壊が抑制され、高エネルギー密度の具現が可能であり、粒子の崩壊による寿命劣化も防止することができる。
【0049】
一具現例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、単結晶を有することができる。該単結晶は、単一粒子とは区別される概念を有する。該単一粒子は、内部に、結晶の類型及び個数にかかわらず、1つの粒子に形成された粒子を称するものであり、該単結晶は、粒子内にただ1つの結晶を有するものを意味する。そのような単結晶のリチウム遷移金属酸化物は、構造的安定性が非常に高いだけではなく、多結晶に比べ、リチウムイオン伝導が容易であり、多結晶の活物質に比べ、高速充電特性にすぐれる。
【0050】
一具現例によれば、前記正極活物質は、単結晶及び単一粒子である。該単結晶及び該単一粒子によって形成されることにより、構造的に安定し、高密度の電極の具現が可能であり、それを含むリチウム二次電池が、向上された寿命特性及び高エネルギー密度を同時に有することができる。
【0051】
一具現例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式2ないし4のうちいずれか一つによっても表される。
【0052】
Li1-x’Nax’Niy1’Coy2’Mny3’Wα’Mgβ’Tiγ’O2-a’Sa’ ・・・(化学式2)
Li1-x”Nax”Niy1”Coy2”Aly3”Wα”Mgβ”Tiγ”O2-a”Sa” ・・・(化学式3)
Li1-x’’’Nax’’’Niy1’’’Coy2’’’Wα’’’Mgβ’’’Tiγ’’’O2-a’’’Sa’’’・・・(化学式4)
【0053】
一具現例によれば、前記化学式2で
0<x’≦0.01、0<α’≦0.01、0<β’≦0.005、0<γ’≦0.005、0<a’≦0.01、0<α’+β’+γ’≦0.02、0.48≦y1’<1、0<y2’≦0.2、0<y3’≦0.3、y1’+y2’+y3’+α’+β’+γ’=1でもある。
【0054】
前記化学式3で、
0<x”≦0.01、0<α”≦0.01、0<β”≦0.005、0<γ”≦0.005、0<a”≦0.01、0<α”+β”+γ”≦0.02、0.73≦y1”<1、0<y2”≦0.2、0<y3”≦0.05、y1”+y2”+y3”+α”+β”+γ”=1でもある。
【0055】
前記化学式4で、
0<x’’’≦0.01、0<α’’’≦0.01、0<β’’’≦0.005、0<γ’’’≦0.005、0<a’’’≦0.01、0<α’’’+β’’’+γ’’’≦0.02、0.78≦y1’’’<1、0<y2’’’≦0.2、y1’’’+y2’’’+α’’’+β’’’+γ’’’=1でもある。
【0056】
例えば、前記化学式2で、0<β’≦0.003、0<γ’≦0.003、0<α’+β’+γ’≦0.016であり、前記化学式3で、0<β”≦0.003、0<γ”≦0.003、0<α”+β”+γ”≦0.016であり、前記化学式4で、0<β’’’≦0.003、0<γ’’’≦0.003、0<α’’’+β’’’+γ’’’≦0.016でもある。
【0057】
前記組成を満足するリチウム遷移金属酸化物は、内部において不安定なNiイオンを安定化させることができ、高エネルギー密度及び長寿命安定性を保有することができる。
【0058】
一般的な高ニッケル系リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物を含む正極活物質の場合、不安定なNiイオンの安定化が必須的であるが、結晶内の遷移金属サイトのうち一部に、W、Mg及びTiが導入されることにより、正極活物質が、全体的に電荷均衡をなすことができることになり、Ni(II)イオンから、不安定なNi(III)またはNi(IV)イオンへの酸化を抑制し、不安定なNi(III)またはNi(IV)は、Ni(II)にも還元される。一方、遷移金属の一部を、異種元素であるW、Mg及びTiで置換することによる伝導度の損失は、Oの一部をSで置換することによって補償され、Liの一部をNaで置換するにより、充放電時の構造的変形によるLiの伝導度低下も抑制することにより、単結晶の構造的に安定した高容量及び長寿命の正極活物質を得た。
【0059】
一具現例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物の平均粒径(D50)は、0.1μmないし20μmでもある。例えば、前記平均粒径(D50)は、0.1μmないし15μm、0.1μmないし10μm、1μmないし20μm、5μmないし20μm、1μmないし15μm、1μmないし10μm、5μmないし15μm、または5μmないし10μmでもある。前記リチウム遷移金属酸化物の平均粒径が前記範囲に属する場合、所望する体積当たりエネルギー密度を具現することができる。前記リチウム遷移金属酸化物の平均粒径が20μmを超える場合、充放電容量の急激な低下をもたらすことになり、0.1μm以下である場合、所望する体積当たりエネルギー密度を得難い。
【0060】
一具現例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、表面にコバルト含有化合物を含むコバルト含有コーティング層をさらに含むものでもある。
【0061】
例えば、前記コバルト含有化合物は、コバルト、及びコバルト以外の1種以上の元素を含み、前記化合物内コバルト含量が、他の元素に比べても多い。前記コバルト含有化合物は、化合物内コバルト含量が30モル%以上でもある。
【0062】
一具現例によれば、前記コーティング層は、下記化学式5で表されるコバルト含有化合物を含むものでもある:
Lix1Coy1M’z1Oa1・・・(化学式5)
【0063】
前記化学式5で、
M’は、Coを除いた1種以上の遷移金属であり、
0.5<x1、0<y1<1、0<z1<1及び1<a1<3である。
【0064】
一具現例によれば、前記化学式5で、0.3≦y1/(y1+z1)<1でもある。例えば、前記化学式5で、0.3<y1/(y1+z1)<1、例えば、0.5≦y1/(y1+z1)<1でもある。
【0065】
他の具現例によれば、前記コーティング層は、下記化学式6で表されるコバルト含有化合物を含むものでもある:
Lix1Coy1Niz11M2z12M3z13O2・・・(化学式6)
【0066】
前記化学式6で、
M2及びM3は、互いに独立して、Mn、B、Zr、P、Ca、Al、W、Mg、V及びTiのうちから選択された1種以上の遷移金属であり、0.5<x1<1.1、0.3≦y1<1、0<z11≦0.7、0≦z12<1及び0≦z13<1である。
【0067】
例えば、前記化学式6で、0.8≦x1<1.1、0.5≦y1<1、0<z11<0.5、0<z12<0.5及び0≦z13<1でもある。
【0068】
一具現例によれば、前記コーティング層は、前記リチウム遷移金属酸化物の少なくとも一部を覆うようにも配される。例えば、前記コーティング層は、前記リチウム遷移金属酸化物の表面を完全に覆うことができる。
【0069】
一具現例によれば、前記コーティング層は、200nm以下の厚みを有することができる。前記コーティング層の厚みが200nm以下である場合、リチウム移動に対する抵抗層として作用せず、残留リチウムを十分に低減させる効果を有する。
【0070】
一具現例によれば、前記コバルト含有化合物は、前記リチウム遷移金属酸化物と同一結晶学的構造を有することができる。それにより、充放電時、リチウムイオンの移動が容易であり、コーティング層の存在にもかかわらず、優秀な率特性が得られる。
【0071】
例えば、前記コバルト含有化合物は、層状構造を含むものでもある。例えば、前記コバルト含有化合物は、層状構造のみを有することができる。それにより、充放電過程においても、安定した結晶構造を維持し、安定したコーティング層を形成し、その結果、リチウム遷移金属酸化物の電解液との直接的な接触を抑制し、電解液との副反応を抑制することができる。
【0072】
以下、一態様による正極活物質の製造方法について詳細に説明する。
【0073】
一具現例による正極活物質の製造方法は、Liの一部がNaで置換され、Ni原子及びCo原子を含むリチウム遷移金属酸化物粒子を準備する段階と、前記リチウム遷移金属酸化物粒子及びCo元素含有化合物を混合し、正極活物質前駆体を得る段階と、前記正極活物質前駆体を焼成し、正極活物質を得る段階と、を含み、前記正極活物質は、表面にコバルト含有コーティング層を含み、表面から粒子中心方向に、Co原子の濃度が低減する濃度勾配領域を含む。
【0074】
一具現例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物粒子を準備する段階は、
Li元素含有化合物、Na元素含有化合物、W元素含有化合物、Mg元素含有化合物、Ti元素含有化合物、M元素含有化合物及びS元素含有化合物を混合し、リチウム遷移金属酸化物前駆体を得る段階と、前記リチウム遷移金属酸化物前駆体を熱処理し、下記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物粒子を得る段階と、を含むものでもある:
Li1-xNaxM1-(α+β+γ)WαMgβTiγO2-aSa・・・(化学式1)
【0075】
前記化学式1で、
Mは、W、Mg、Ti、Na及びSを除いたアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、ポスト遷移金属及び非金属元素のうちから選択された1種以上の元素であり、
0<x≦0.01、0<α≦0.01、0<β≦0.005、0<γ≦0.005、0<a≦0.01、0<α+β+γ≦0.02である。
【0076】
前記化学式1に係わる具体的な説明は、前述のところを参照する。
【0077】
前記混合段階は、前記特定元素含有化合物を機械的混合することを含む。前記機械的混合は、乾式で行われる。前記機械的混合は、機械的力を加え、混合する物質を粉砕して混合し、均一な混合物を形成するのである。機械的混合は、例えば、化学的に不活性であるビード(beads)を利用するボールミル(ball mill)、遊星ミル(planetary mill)、撹拌ボールミル(stirred ball mill)、振動ミル(vibrating mill)のような混合装置を利用しても行われる。このとき、混合効果を極大化させるために、エタノールのようなアルコール、ステアリン酸のような高級脂肪酸を選択的に少量添加することができる。
【0078】
前記機械的混合は、酸化雰囲気で行われるが、それは、遷移金属供給源(例:Ni化合物)において、遷移金属の還元を防ぎ、活物質の構造的安定性を具現するためのものである。
【0079】
前記リチウム元素含有化合物は、リチウムの水酸化物、酸化物、窒化物、炭酸化物、またはそれらの組み合わせを含むものでもあるが、それらに限定されるものではない。例えば、リチウム前駆体は、LiOHまたはLi2CO3でもある。
【0080】
前記Na元素含有化合物は、Naの水酸化物、酸化物、窒化物、炭酸化物、またはそれらの組み合わせを含むものでもあるが、それらに限定されるものではない。例えば、NaOH、Na2CO3、またはそれらの組み合わせでもある。
【0081】
前記W元素含有化合物は、Wの水酸化物、酸化物、窒化物、炭酸化物、またはそれらの組み合わせを含むものでもあるが、それらに限定されるものではない。例えば、W(OH)6、WO3、またはそれらの組み合わせでもある。
【0082】
前記Mg元素含有化合物は、Mgの水酸化物、酸化物、窒化物、炭酸化物、またはそれらの組み合わせを含むものでもあるが、それらに限定されるものではない。例えば、Mg(OH)2、MgCO3、またはそれらの組み合わせでもある。
【0083】
前記Ti元素含有化合物は、Tiの水酸化物、酸化物、窒化物、炭酸化物、またはそれらの組み合わせを含むものでもあるが、それらに限定されるものではない。例えば、Ti(OH)2、TiO2、またはそれらの組み合わせでもある。
【0084】
前記M元素含有化合物は、W、Mg、Ti、Na及びSを除いたアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、準金属元素、及び非金属元素のうち1種以上の元素の水酸化物、酸化物、窒化物、炭酸化物、またはそれらの組み合わせを含むものでもあるが、それらに限定されるものではない。例えば、Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH)2、Ni0.9Co0.05Al0.05(OH)2またはNi0.9Co0.1(OH)2でもある。
【0085】
前記S元素含有化合物は、Sの水酸化物、酸化物、窒化物、炭酸化物、アンモニウム化物、またはそれらの組み合わせを含むものでもあるが、それらに限定されるものではない。例えば、(NH4)2Sでもある。
【0086】
一具現例によれば、前記正極活物質前駆体を得る段階は、混合材料として、Co元素含有化合物をさらに含んでもよい。
【0087】
前記Co元素含有化合物は、Co元素を提供することができる化合物であり、Coの水酸化物、酸化物、窒化物、炭酸化物、酢酸塩、またはそれらの組み合わせを含む。例えば、酢酸コバルトでもある。
【0088】
前記リチウム遷移金属酸化物粒子を準備する段階において、前記熱処理段階は、第1熱処理段階及び第2熱処理段階を含むものでもある。前記第1熱処理段階及び前記第2熱処理段階は、連続して遂行されるか、あるいは第1熱処理段階後、休息期を有することができる。また、前記第1熱処理段階及び前記第2熱処理段階は、同一チャンバ内でなされるか、あるいは互いに異なるチャンバ内においてもなされる。
【0089】
前記第1熱処理段階における熱処理温度は、前記第2熱処理段階における熱処理温度よりも高い。
【0090】
前記第1熱処理段階は、熱処理温度が、800℃ないし1,200℃で遂行されうる。前記熱処理温度は、例えば、850℃ないし1,200℃、860℃ないし1,200℃、870℃ないし1,200℃、880℃ないし1,200℃、890℃ないし1,200℃、または900℃ないし1,200℃でもあるが、それらに限定されるものではなく、前記範囲内において、任意の2つの地点を選択して構成された範囲をいずれも含む。
【0091】
前記第2熱処理段階は、熱処理温度は、700℃ないし800℃で遂行されうる。前記熱処理温度は、710℃ないし800℃、720℃ないし800℃、730℃ないし800℃、740℃ないし800℃、750℃ないし800℃、700℃ないし780℃、700℃ないし760℃、700℃ないし750℃、または700℃ないし730℃でもあるが、それらに限定されるものではなく、前記範囲内において、任意の2つの地点を選択して構成された範囲をいずれも含む。
【0092】
一具現例によれば、前記第1熱処理段階における熱処理時間は、前記第2熱処理段階における熱処理時間よりも短い。
【0093】
例えば、前記第1熱処理段階において、熱処理時間は、3時間ないし5時間、4時間ないし5時間、または3時間ないし4時間でもあるが、それらに限定されるのではなく、前記範囲内において、任意の2つの地点を選択して構成された範囲をいずれも含む。
【0094】
例えば、前記第2熱処理段階において、熱処理時間は、10時間ないし20時間、10時間ないし15時間でもあるが、それらに限定されるのではなく、前記範囲内において、任意の2つの地点を選択して構成された範囲をいずれも含む。
【0095】
前記第1熱処理段階は、800℃ないし1,200℃の熱処理温度において、3ないし5時間熱処理する段階を含むものでもある。
【0096】
前記第2熱処理段階は、700℃ないし800℃の熱処理温度において、10ないし20時間熱処理する段階を含むものでもある。
【0097】
前記第1熱処理段階は、リチウム遷移金属酸化物が層状構造の正極活物質を形成すると共に、粒子の成長を誘発し、単結晶の形状をなすようにする。前記第1熱処理段階においては、二次粒子形状のリチウム遷移金属酸化物内のそれぞれの一次粒子が急激に成長し、粒子間応力に耐えることができないことにより、一次粒子の内部が現れながら、互いに融合され、二次電池用単結晶正極活物質が形成されると見られる。前記第2熱処理段階は、第1熱処理段階よりも低い温度で熱処理を長期間行うことにより、第1熱処理段階で生成された層状構造の結晶度を高める。該第1熱処理段階及び該第2熱処理段階を介し、単一相、単結晶、単一粒子の高ニッケル系正極活物質が得られる。
【0098】
一具現例によれば、前記焼成する段階は、500℃ないし900℃の温度で遂行されうる。例えば、前記焼成する段階は、600℃ないし900℃の温度で遂行されうる。一具現例によれば、前記焼成する段階は、1時間ないし6時間遂行されうる。例えば、前記焼成する段階は、2時間ないし4時間遂行されうる。
【0099】
一具現例によれば、前記焼成する段階は、500℃ないし900℃の温度で、1ないし6時間遂行されうる。前記焼成温度及び前記焼成時間でもって、正極活物質前駆体を焼成することにより、Co原子が濃度勾配を有する濃度勾配領域が形成され、表面にコバルト含有コーティング層が形成された正極活物質が得られる。
【0100】
前記コバルト含有コーティング層を形成するための焼成過程において、前記リチウム遷移金属酸化物粒子内に含まれているCo原子と異なる異種遷移金属元素が拡散され、Co原子と複合粒子を形成することができる。前記複合粒子に係わる内容は、前述の化学式5及び6に係わる説明を参照する。
【0101】
一具現例によれば、前記製造方法によって製造されたリチウム遷移金属酸化物は、単結晶、単一粒子であり、前記単結晶は層状構造を有することができる。また、前記リチウム遷移金属酸化物の平均粒径は、0.1μmないし20μmでもある。
【0102】
また、前記正極活物質の製造方法によって製造されたリチウム遷移金属酸化物は、W、Mg及びTi元素は、構造内M元素のサイトで置換され、S元素がOサイトで置換され、Na元素がLiのサイトで置換されることにより、既存に、Ni2+の酸化を抑制するだけではなく、既存に存在する不安定なNi3+イオンのNi2+イオンへの還元が誘発され、構造的安定性及び高密度のリチウム遷移金属酸化物が得られる。また、還元されたNi2+イオンとLi+イオンとが、イオン半径が類似しており、Li/Ni無秩序化(disordering)が促進され、Li脱離時、空格子をNiイオンが充填することにより、結晶の構造的安定性が図られる。
【0103】
さらには、Co濃度勾配領域、及び正極活物質表面にCo含有コーティング層をさらに含むことにより、既存の、単に遷移金属が追加置換された場合に比べ、容量特性及び寿命特性が向上された。
【0104】
他の態様によれば、前述の正極活物質を含む正極が提供される。
【0105】
さらに他の態様によれば、前記正極と、負極と、電解質と、を含むリチウム二次電池が提供される。
【0106】
前記正極、及びそれを含むリチウム二次電池は、次のような方法によっても製造される。
【0107】
まず、正極が準備される。
【0108】
例えば、前述の正極活物質、導電材、バインダ及び溶媒が混合された正極活物質組成物が準備される。前記正極活物質組成物が金属集電体上に直接コーティングされ、正極板が製造される。代案としては、前記正極活物質組成物が別途の支持体上にキャスティングされた後、前記支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされ、正極板が製造されうる。前記正極は、前述の形態に限定されるものではなく、前記形態以外の形態でもある。
【0109】
前記導電材としては、天然黒鉛、人造黒鉛のような黒鉛;カーボンブラック;炭素ナノチューブのような導電性チューブ;フルオロカーボン、酸化亜鉛、チタン酸カリウムのような導電性ウィスカ;酸化チタンのような導電性金属酸化物;などが使用されうるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、導電材として使用されうるものであるならば、いずれも使用されうる。
【0110】
前記バインダとしては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、及びそれらの混合物・金属塩、またはスチレンブタジエンゴム系ポリマーなどが使用されうるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、バインダとして使用されうるものであるならば、いずれも使用されうる。さらに他のバインダの例としては、前述のポリマーのリチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩またはNa塩などが使用されうる。
【0111】
前記溶媒としては、N-メチルピロリドン、アセトンまたは水などが使用されうるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野で使用されうるものであるならば、いずれも使用されうる。
【0112】
前述の正極活物質、導電材、バインダ及び溶媒の含量は、リチウム電池において、一般的に使用されるレベルである。リチウム電池の用途及び構成により、前述の導電材、バインダ及び溶媒のうち一以上が省略されうる。
【0113】
次に、負極が準備される。
【0114】
例えば、負極活物質、導電材、バインダ及び溶媒を混合し、負極活物質組成物が準備される。前記負極活物質組成物が、3μmないし500μmの厚みを有する金属集電体上に直接コーティングされて乾燥され、負極板が製造される。代案としては、前記負極活物質組成物が別途の支持体上にキャスティングされた後、前記支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされ、負極板が製造されうる。
【0115】
前記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発させずに、導電性を有したものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、銅、ニッケル、銅の表面にカーボンで表面処理したものが使用されうる。
【0116】
前記負極活物質は、当該技術分野において、リチウム電池の負極活物質として使用されうるものであるならば、いずれも可能である。例えば、リチウム金属、リチウムと合金可能な金属、遷移金属酸化物、非遷移金属酸化物及び炭素系材料からなる群のうちから選択された1以上を含むものでもある。
【0117】
例えば、前記リチウムと合金可能な金属は、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、Sb、Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Siではない)、Sn-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Snではない)などでもある。前記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、SeまたはTeでもある。
【0118】
例えば、前記遷移金属酸化物は、リチウムチタン酸化物、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などでもある。
【0119】
例えば、前記非遷移金属酸化物は、SnO2、SiOx(0<x<2)などでもある。
【0120】
前記炭素系材料としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはそれらの混合物でもある。前記結晶質炭素は、無定形、板状、鱗片状(flake)、球形または纎維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛でもあり、前記非晶質炭素は、ソフトカーボン(soft carbon)(低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メゾ相ピッチ(mesophase pitch)炭化物、焼成されたコークスなどでもある。
【0121】
負極活物質組成物において、導電材、バインダ及び溶媒は、前記正極活物質組成物の場合と同一のものを使用することができる。
【0122】
前述の負極活物質、導電材、バインダ及び溶媒の含量は、リチウム電池で一般的に使用するレベルである。該リチウム電池の用途及び構成により、前述の導電材、バインダ及び溶媒のうち1以上が省略されうる。
【0123】
次に、前記正極と前記負極との間に挿入されるセパレータが準備される。
【0124】
前記セパレータは、リチウム電池において一般的に使用されるものであるならば、いずれも使用可能である。電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら、電解液含湿能にすぐれるものが使用されうる。前記セパレータは、単一膜または多層膜でもあり、例えば、ガラスファイバ、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはそれらの組み合わせ物のうちから選択されたものであり、不織布形態でも織布形態でもよい。また、ポリエチレン/ポリプロピレン2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレン3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層セパレータのような混合多層膜が使用されうる。例えば、リチウムイオン電池には、ポリエチレン、ポリプロピレンのような巻き取り可能なセパレータが使用され、リチウムイオンポリマー電池には、有機電解液含浸能にすぐれるセパレータが使用されうる。例えば、前記セパレータは、下記方法によっても製造される。
【0125】
高分子樹脂、充填剤及び溶媒を混合し、セパレータ組成物が準備される。前記セパレータ組成物が、電極上部に直接コーティングされて乾燥され、セパレータが形成されうる。または、前記セパレータ組成物が支持体上にキャスティングされて乾燥された後、前記支持体から剥離させたセパレータフィルムが電極上部にラミネーションされ、セパレータが形成されうる。
【0126】
前記セパレータ製造に使用される高分子樹脂は、特別に限定されるものではなく、電極板の結合剤として使用される物質がいずれも使用されうる。例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、またはそれらの混合物などが使用されうる。
【0127】
次に、電解質が準備される。
【0128】
例えば、前記電解質は有機電解液でもある。また、前記電解質は、固体でもある。例えば、ボロン酸化物、リチウム酸窒化物などでもあるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野で固体電解質として使用されうるものであるならば、いずれも使用可能である。前記固体電解質は、スパッタリング法のような方法で、前記負極上にも形成される。
【0129】
例えば、有機電解液は、有機溶媒にリチウム塩が溶解されても製造される。
【0130】
前記有機溶媒は、当該技術分野において、有機溶媒として使用されうるものであるならば、いずれも使用されうる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートのような環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネートのような鎖状カーボネート;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブテロラクトンのようなエステル類;1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2-ジオキサン、2-メチルテトラヒドロフランのようなエーテル類;アセトニトリルのようなニトリル類;ジメチルホルムアミドのようなアミド類などがある。それらを、単独または複数個組み合わせて使用することができる。例えば、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを混合した溶媒を使用することができる。
【0131】
また、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリルのような重合体電解質に電解液を含浸させたゲル相重合体電解質や、LiI、Li3N、LixGeyPzSα、LixGeyPzSαXδ(Xは、F、Cl、Brであり)のような無機固体電解質を使用することができる。
【0132】
前記リチウム塩も、当該技術分野において、リチウム塩として使用されうるものであるならば、いずれも使用されうる。例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、LiC4F9SO3、LiAlO2、LiAlCl4、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(ただし、x、yは、自然数である)、LiCl、LiI、またはそれらの混合物などである。
【0133】
図11から分かるように、前記リチウム電池1は、正極3、負極2及びセパレータ4を含む。前述の正極3、負極2及びセパレータ4が巻き取られたり、折り畳まれたりして、電池ケース5に収容される。次に、前記電池ケース5に有機電解液が注入され、キャップ(cap)アセンブリ6に密封され、リチウム電池1が完成される。前記電池ケース5は、円筒状、角形、ポーチ型、コイン型または薄膜型などでもある。例えば、前記リチウム電池1は、薄膜型電池でもある。前記リチウム電池1は、リチウムイオン電池でもある。
【0134】
前記正極と前記負極との間にセパレータが配され、電池構造体が形成されうる。前記電池構造体がバイセル構造に積層された後、有機電解液に含浸され、得られた結果物がポーチに収容されて密封されれば、リチウムイオンポリマー電池が完成される。
【0135】
また、前記電池構造体は、複数個積層され、電池パックを形成し、そのような電池パックが、高容量及び高出力が要求される全ての機器に使用されうる。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気車両(EV:electric vehicle)などに使用されうる。
【0136】
また、前記リチウム電池は、寿命特性及び高率特性にすぐれるので、電気車両に使用されうる。例えば、プラグインハイブリッド車(PHEV:plug-in hybrid electric vehicle)のようなハイブリッド車両に使用されうる。また、多量の電力保存が要求される分野に使用されうる。例えば、電気自転車、電動工具、電力保存用システムなどに使用されうる。
【実施例】
【0137】
以下の製造例、実施例及び比較例を介し、本発明がさらに詳細に説明される。ただし、該実施例は、本発明を例示するためのものであるのみ、それらだけでもって、本発明の範囲が限定されるものではない。
【0138】
(正極活物質の製造)
実施例1
100gのNi0.8Co0.1Mn0.1(OH)2、及び41.8gのLi2CO3、3.0gのWO3、0.27gのMgCO3、0.24gのTiO2、0.45gのNaOH、並びに0.75gの(NH4)2Sを、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、1,000℃で4時間、及び700℃で10時間熱処理し、リチウム遷移金属酸化物粒子を得た。
次に、2gの酢酸コバルトと、100gの前記リチウム遷移金属酸化物粒子とを、30分間機械的に混合し、混合された粉末を、800℃で3時間焼成し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0139】
実施例2
100gのNi0.90Co0.05Al0.05(OH)2、及び42.4gのLi2CO3、3.0gのWO3、0.27gのMgCO3、0.24gのTiO2、0.45gのNaOH、並びに0.75gの(NH4)2Sを、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、970℃で4時間、及び700℃で10時間熱処理し、リチウム遷移金属酸化物粒子を得た。
次に、2gの酢酸コバルトと、100gの前記リチウム遷移金属酸化物粒子とを、30分間機械的に混合し、混合された粉末を、800℃で3時間焼成し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0140】
実施例3
100gのNi0.9Co0.1(OH)2、及び42.0gのLi2CO3、3.0gのWO3、0.27gのMgCO3、0.24gのTiO2、0.45gのNaOH、並びに0.75gの(NH4)2Sを、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、970℃で4時間、及び700℃で10時間熱処理し、リチウム遷移金属酸化物粒子を得た。
次に、2gの酢酸コバルトと、100gの前記リチウム遷移金属酸化物粒子とを、30分間機械的に混合し、混合された粉末を、800℃で3時間焼成し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0141】
比較例1
100gのNi0.8Co0.1Mn0.1(OH)2、及び41.8gのLi2CO3、3.0gのWO3、0.27gのMgCO3、0.24gのTiO2、0.45gのNaOH、並びに0.75gの(NH4)2Sを、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、1,000℃で4時間、及び700℃で10時間熱処理し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0142】
比較例2
100gのNi0.8Co0.1Mn0.1(OH)2、及び41.8gのLi2CO3、0.27gのMgCO3、0.24gのTiO2を、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、1,000℃で4時間、及び700℃で10時間熱処理し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0143】
比較例3
100gのNi0.8Co0.1Mn0.1(OH)2、及び41.8gのLi2CO3、0.27gのMgCO3、0.45gのNaOHを、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、1,000℃で4時間、及び700℃で10時間熱処理し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0144】
比較例4
100gのNi0.8Co0.1Mn0.1(OH)2、及び41.8gのLi2CO3、3.0gのWO3、0.27gのMgCO3を、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、1,000℃で4時間、及び700℃で10時間熱処理し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0145】
比較例5
100gのNi0.8Co0.1Mn0.1(OH)2、及び41.8gのLi2CO3、0.75gの(NH4)2Sを、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、1,000℃で4時間、及び700℃で10時間熱処理し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0146】
比較例6
100gのNi0.8Co0.1Mn0.1(OH)2、及び41.8gのLi2CO3を、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、1,000℃で4時間、及び700℃で10時間熱処理し、リチウム遷移金属酸化物粒子を得た。
次に、2gの酢酸コバルトと、前記リチウム遷移金属酸化物粒子とを機械的に混合し、800℃で3時間焼成し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0147】
比較例7
100gのNi0.8Co0.1Mn0.1(OH)2、及び41.8gのLi2CO3、3.0gのWO3、0.27gのMgCO3を、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、1,000℃で4時間、及び700℃で10時間熱処理し、リチウム遷移金属酸化物粒子を得た。
次に、2gの酢酸コバルトと、前記リチウム遷移金属酸化物粒子とを機械的に混合し、800℃で3時間焼成し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0148】
比較例8
100gのNi0.8Co0.1Mn0.1(OH)2、及び41.8gのLi2CO3、3.0gのWO3、0.27gのMgCO3、0.24gのTiO2、0.45gのNaOH、並びに0.75gの(NH4)2Sを、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、1,000℃で4時間、及び700℃で10時間熱処理し、リチウム遷移金属酸化物粒子を得た。
次に、2gの酢酸コバルトをエタノールに溶解させた後、前記リチウム遷移金属酸化物粒子を添加し、30分間撹拌する。80℃で撹拌された溶液を1時間撹拌させることにより、エタノール溶媒を蒸発させ、混合された粉末を、800℃で3時間焼成し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0149】
比較例9
100gのNi0.9Co0.05Al0.05(OH)2、及び42.4gのLi2CO3、3.0gのWO3、0.27gのMgCO3、0.24gのTiO2、0.45gのNaOH、並びに0.75gの(NH4)2Sを、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、970℃で4時間、及び700℃で10時間熱処理し、正極活物質を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0150】
比較例10
100gのNi0.9Co0.1(OH)2、及び42.0gのLi2CO3、3.0gのWO3、0.27gのMgCO3、0.24gのTiO2、0.45gのNaOH、並びに0.75gの(NH4)2Sを、約15分機械的に混合する。混合された粉末を、970℃で4時間、及び700℃で10時間熱処理し、リチウム遷移金属酸化物粒子を得た。得られた正極活物質の具体的な組成は、表1で確認することができる。
【0151】
(ハーフセルの製造)
実施例4
実施例1で得た正極活物質:導電材:バインダを、94:3:3の重量比で混合し、スラリーを製造した。ここで、前記導電材としては、カーボンブラックを使用し、前記バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)をN-メチル-2-ピロリドン溶媒に溶解させて使用した。
前記スラリーをAl集電体に均一に塗布し、110℃で2時間乾燥させ、正極電極を製造した。極板のローディングレベルは、11.0mg/cm2であり、電極密度は、3.6g/ccであった。
前記製造された正極を作業電極として使用し、リチウムホイルを相対電極として使用し、エチレンカーボネート(EC)/EMC(エチルメチルカーボネート)/DEC(ジエチルカーボネート)を3/4/3の体積比で混合した混合溶媒に、リチウム塩としてLiPF6を、1.3Mの濃度になるように添加した液体電解液を使用し、一般的に知られている工程により、CR2032ハーフセルを作製した。
【0152】
実施例5,6
実施例1で得た正極活物質の代わりに、実施例2,3で得た正極活物質をそれぞれ使用した点を除いては、実施例4と同一方法でハーフセルを作製した。
【0153】
比較例11ないし20
実施例1で得た正極活物質の代わりに、比較例1ないし7で得た正極活物質をそれぞれ使用した点を除いては、実施例4と同一方法でハーフセルを作製した。
【0154】
【0155】
評価例1:正極活物質の組成評価
実施例1及び比較例1で合成した正極活物質につき、700-ES(Varian)装備を利用し、ICP(inductively coupled plasma)分析を進め、その結果は、下記表2に記載されている。
【0156】
表2を参照すれば、比較例1及び実施例1のICP分析結果、単粒子型Ni系正極活物質表面へのCo濃度勾配領域及びCo含有コーティング層の導入は、正極活物質内の他遷移金属との置換により、正極活物質において、Co元素の比率を1.6モル%増大させ、他遷移金属のモル数は、低減したことが分かる。また、ICP分析時、真空で分析をしても、微量の大気中の酸素及び二酸化炭素の流入により、物質に含まれている酸素の化学量論的値は、分析し難い。
【0157】
【0158】
評価例2:正極活物質の粒度評価
実施例1及び比較例1で合成した正極活物質の外観は、Verios 460(FEI社)装備を利用し、SEM(scanning electron microscope)イメージを得て、
図1に示されている。また、Cilas 1090(Scinco社)装備を利用し、粒度分布を測定し、下記表3及び
図2に示した。
【0159】
表3及び
図1,2を参照すれば、実施例1の単粒子型正極活物質は、Co濃度勾配領域及びCo含有コーティング層が導入されているが、比較例1の単粒子型正極活物質に比べ、粒径に大きい変化が観察されておらず、実施例1の正極活物質表面において、Co含有化合物が数百nmサイズの粒子として存在することを確認した。
【0160】
【0161】
評価例3:正極活物質の濃度勾配領域評価
実施例1及び比較例1で得た正極活物質につき、高解像度透過電子顕微鏡(HR-TEM:high resolution transmission electron microscopy)を利用して写真を撮り、エネルギー分散型X線分析(EDX:energy dispersive X-ray spectroscopy)を進めた。その結果は、下記の表4及び表5、及び
図3及び
図4に示されている。
【0162】
【0163】
【0164】
表4及び
図3を参照すれば、正極活物質内遷移金属、例えば、Ni、Co及びMnの濃度が、正極活物質の表面及び中心方向に、実質的に一定に維持されていることが分かる。
【0165】
表5及び
図4を参照すれば、正極活物質内遷移金属において、Coの濃度は、正極活物質の表面から中心方向に低減し、Niの濃度は、反対に増大する傾向性を確認した。また、Co濃度勾配層は、約500nmであることが分かった。特定理論に拘束されることなしに、遷移金属において、コバルトイオンは、ニッケルイオン対比で、層状構造を有する正極活物質の構造的安定性に寄与をするので、正極活物質の表面に、相対的に安定したコバルトが過量に含まれることにより、充放電時、正極活物質の構造的安定性を向上させ、長寿命特性を向上させると見られる。
【0166】
評価例4:正極活物質のコーティング層評価
実施例1で得た正極活物質につき、高解像度透過電子顕微鏡(HR-TEM)を利用して写真を撮り、エネルギー分散型x線分析(EDX:energy dispersive X-ray spectroscopy)分析を進めた。その結果は、下記表6及び
図5A、
図5B、
図6A、
図6Bに示されている。
【0167】
【0168】
表6、並びに
図5A及び
図5Bを参照すれば、実施例1の粒子表面EDX分析結果、リチウム遷移金属酸化物粒子表面に、約200nm以下のコバルト含有コーティング層が確認された。また、コーティング層内に含まれているコバルト含有化合物を分析した結果、コバルト含量が、約30モル%以上ほど主元素(main element)として含まれていることを確認した。
【0169】
さらには、
図6A及び
図6Bを参照すれば、実施例1の正極活物質において、リチウム遷移金属酸化物粒子とコバルト含有コーティング層との結晶学的構造は、いずれも層状構造を有するということを確認した。該リチウム遷移金属酸化物粒子と、それを取り囲むコーティング層とが同一結晶学的構造を有することにより、リチウムイオンの移動が容易であり、コーティング層の存在にもかかわらず優秀な率特性を保有する。
【0170】
また、層状構造の構造的安定性に起因し、コーティング層が、リチウム遷移金属酸化物粒子を電解液から保護する保護膜の機能を有することにより、電気化学評価時、寿命安定性が向上されるという結果をもたらす。
【0171】
評価例5:常温寿命評価
実施例4ないし6、及び比較例8ないし14で作製したハーフセルを、10時間休止させた後、0.1Cで4.3VまでCCモードで充電した後、0.05Cに該当する電流までCVモードで充電を進めた。次に、0.1Cで、3.0VまでCCモードで放電し、化成工程を完了した。
【0172】
次に、常温(25℃)において、0.5Cで、4.3VまでCCモードで充電した後、0.05Cに該当する電流までCVモードで充電を進めた。次に、1Cで、3.0VまでCCモードで放電を進め、この過程を総50回反復した。
【0173】
初期容量につき、50回の充電後及び放電後の容量維持率を計算し、その結果は、下記表7に示されている。また、サイクルによる容量維持率を示したグラフは、
図5ないし
図7に示されている。
【0174】
【0175】
表7及び
図7を参照すれば、実施例4及び比較例11の常温寿命結果によれば、濃度勾配領域及びコバルト含有コーティング層を含む場合(実施例4)、コーティング層及び濃度勾配領域を含んでいない場合に比べ、50サイクルにおいて、約2%の向上された寿命維持率を示した。層状構造を有するコバルト含有コーティング層が構造的安定性を向上させるだけではなく、電解液とリチウム遷移金属酸化物粒子との直接接触を防ぐことにより、正極活物質の劣化が抑制されることによるものである。さらに、実施例4のハーフセルの場合、濃度勾配領域を含んでおらず、Na元素、W元素、Mg元素、Ti元素及びS元素のうち1種以上の元素が導入されていない正極活物質を適用した比較例11ないし15に比べ、50サイクルにおいて、最大約8%の向上された寿命維持率を示した。さらには、濃度勾配領域及びコバルト含有コーティング層は、含むが、Na元素、W元素、Mg元素、Ti元素及びS元素のうち1種以上の元素が導入されていない正極活物質を適用した比較例16及び17に比べ、50サイクルにおいて、最大約4%の向上された寿命維持率を示し、濃度勾配領域だけ含み、コバルト含有コーティング層を含んでいない比較例18に比べ、50サイクルにおいて、1%の向上された寿命維持率を示した。
【0176】
そのようなデータを介し、Na元素、W元素、Mg元素、Ti元素及びS元素、濃度勾配領域及びコバルト含有化合物を含むコーティング層が同時に適用される場合、最もすぐれた寿命特性が得られるという点を確認した。
【0177】
また、ニッケル・コバルト・マンガン(NCM)系正極活物質以外に、ニッケル・コバルト・アルミニウム(NCA)系正極活物質、及びニッケル・コバルト(NC)系正極活物質の場合も、濃度勾配領域及びコバルト含有化合物を含むコーティング層の導入が、寿命特性を約4%向上させるということを確認した。
【0178】
以上においては、図面及び実施例を参照し、本発明による望ましい具現例について説明されたが、それらは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野で通常の知識を有した者であるならば、それらから、多様な変形、及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定められるものである。