(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】磁性異物除去装置
(51)【国際特許分類】
B03C 1/28 20060101AFI20240614BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20240614BHJP
B03C 1/10 20060101ALI20240614BHJP
B03C 1/14 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
B03C1/28 107
B03C1/28 103
B03C1/00 F
B03C1/00 A
B03C1/10 A
B03C1/14
(21)【出願番号】P 2023142602
(22)【出願日】2023-09-01
【審査請求日】2023-11-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518044631
【氏名又は名称】株式会社JMC
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅人
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-237876(JP,A)
【文献】特開2002-331255(JP,A)
【文献】特開2006-247488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 1/00- 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性異物を含む流体から前記磁性異物を磁場によって吸着除去する、磁性異物除去装置であって、
前記流体が導入される導入口、前記流体が排出される排出口、前記導入口及び前記排出口に連通し前記流体が流通する流通路を形成したケースと、
永久磁石からなる磁性部材と有しており、
前記ケースには、前記流通路を形成する一対の流通路形成壁が所定距離を隔てて対向するように配置されており、
前記磁性部材は、一対の前記流通路形成壁の、前記流通路とは反対側に設けられた磁性部材配置空間にそれぞれ対向するように配置されており、
前記磁性部材の一方又は両方は、前記磁性部材配置空間に設けられると共に前記磁性部材が当接する磁性部材当接面に対する距離を変化させる進退手段によって、所定位置に保持され
ており、
一対の前記流通路形成壁は、前記ケースの上下方向に配置され、一対の前記流通路形成壁に対応して、前記ケースの上下方向に、一対の前記磁性部材配置空間が設けられており、
前記ケースの下方に配置された前記流通路形成壁は、前記導入口側に配置される導入壁と、前記排出口側に配置される排出壁と、前記導入壁及び前記排出壁の間に設けられ、前記導入壁及び前記排出壁の下端部よりも上方に配置された上方壁部とを有しており、
前記上方壁部は、前記ケースの内寸よりも短い幅を有する底壁と、前記底壁の幅方向の両端に設けた段部を介して、前記ケースの上方に配置された前記流通路形成壁に当接する当接壁部とを有しており、
前記ケースの上方に位置する前記磁性部材配置空間に配置された前記磁性部材は、前記底壁よりも幅広となっており、
前記導入壁と、前記排出壁と、前記底壁と、前記当接壁部との内側に、前記ケースの下方に位置する前記磁性部材配置空間が設けられていることを特徴とする磁性異物除去装置。
【請求項2】
前記底壁よりも、前記流通路の、前記流体の流通方向における下流側の位置には、前記
磁性異物を捕捉する異物捕捉部が配置されている請求
項1記載の磁性異物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性異物を含む流体から磁性異物を磁場によって吸着除去するための、磁性異物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体には磁性異物が混入していることがあるが、通常、このような磁性異物は、流体の性質や性能等に影響を及ぼすため、除去する必要がある。
【0003】
流体から磁性異物を除去する装置としては、例えば、下記特許文献1には、磁性異物を含有する流動体の導入される導入口と、異物が除去された流動体が排出される排出口と、導入口と排出口間を連通する流動体移送通路と、平板状で長さaの永久磁石ユニットを収納する収納部と、それらを内部に形成するケース本体とを有し、流動体移送通路に長さbの平坦部を永久磁石ユニットと距離dを介して対峙する位置に形成した、異物除去装置が記載されている。
【0004】
また、ケース本体の平坦部は、導入口及び排出口の外面から下方に抉られた凹状溝の底面に形成され、凹状溝の底面には、永久磁石ユニットが搭載されている。そして、導入口から流動体移送通路に導入された流動体は、当該流動体移送通路を流れる際に、流動体に含まれた磁性異物が永久磁石ユニットによって吸着されて、除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、流体の性質等によっては、流体に作用する磁場の強さを調整したい場合がある。例えば、流体の粘性が高い場合には、流体から磁性異物を吸着除去しにくくなるので、流体に作用する磁場を強くしたいことがあった。
【0007】
しかし、上記特許文献1の異物除去装置においては、下ケース側の永久磁石ユニットは、下ケースの底面に凹設された収納部に嵌合配置され、また、上ケース側の永久磁石ユニットは、上ケースの平坦部の外面に載置されている。
【0008】
そのため、移動体移送通路に対して作用する磁場の強さを変更したい場合には、例えば、永久磁石ユニット自体の厚さや外径等を変更したり、ケース本体の下ケースの底面や上ケースの平坦部の厚さや形状等を変更したりする必要があり、流体の性質等に応じて、移動移送通路に作用する磁場の強さを柔軟に調整することはできなかった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、流体の性質等に応じて流通路に作用する磁場の強さを柔軟に調整することができる、磁性異物除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、磁性異物を含む流体から前記磁性異物を磁場によって吸着除去する、磁性異物除去装置であって、前記流体が導入される導入口、前記流体が排出される排出口、前記導入口及び前記排出口に連通し前記流体が流通する流通路を形成したケースと、永久磁石からなる磁性部材と有しており、前記ケースには、前記流通路を形成する一対の流通路形成壁が所定距離を隔てて対向するように配置されており、前記磁性部材は、一対の前記流通路形成壁の、前記流通路とは反対側に設けられた磁性部材配置空間にそれぞれ対向するように配置されており、前記磁性部材の一方又は両方は、前記磁性部材配置空間に設けられると共に前記磁性部材が当接する磁性部材当接面に対する距離を変化させる進退手段によって、所定位置に保持されており、一対の前記流通路形成壁は、前記ケースの上下方向に配置され、一対の前記流通路形成壁に対応して、前記ケースの上下方向に、一対の前記磁性部材配置空間が設けられており、前記ケースの下方に配置された前記流通路形成壁は、前記導入口側に配置される導入壁と、前記排出口側に配置される排出壁と、前記導入壁及び前記排出壁の間に設けられ、前記導入壁及び前記排出壁の下端部よりも上方に配置された上方壁部とを有しており、前記上方壁部は、前記ケースの内寸よりも短い幅を有する底壁と、前記底壁の幅方向の両端に設けた段部を介して、前記ケースの上方に配置された前記流通路形成壁に当接する当接壁部とを有しており、前記ケースの上方に位置する前記磁性部材配置空間に配置された前記磁性部材は、前記底壁よりも幅広となっており、前記導入壁と、前記排出壁と、前記底壁と、前記当接壁部との内側に、前記ケースの下方に位置する前記磁性部材配置空間が設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記発明によれば、ケースに設けられた一対の磁性部材配置空間にそれぞれ対向するように配置された磁性部材の一方又は両方が、磁性部材当接面に対する距離を変化させる進退手段によって所定位置に保持されるので、磁性異物を含む流体の性質等に応じて、磁性部材当接面に対する磁性部材の距離を、適宜変化させることができ、流体に作用する磁場の強弱を柔軟に調整することができる。
【0013】
また、ケース下方の流通路形成壁を構成する上方壁部は、ケースの内寸よりも短い幅を有する底壁と、底壁の延出方向の両端に設けた段部を介して、ケース上方の流通路形成壁に当接する当接壁部とを有しているので、ケース下方側の底壁と該底壁に対向するケース上方側の流通路形成壁との距離を狭めることができる。
【0014】
また、ケースの上方に位置する磁性部材配置空間に配置された磁性部材は、底壁よりも幅広となっているので、ケース下方側の底壁と該底壁に対向するケース上方側の流通路形成壁との距離を狭めた流通路に、磁性部材から強い磁場を作用させることができるため、流体からの磁性異物の吸着漏れを防止することができる。
【0015】
本発明の磁性異物除去装置においては、前記底壁よりも、前記流通路の、前記流体の流通方向における下流側の位置には、前記磁性異物を捕捉する異物捕捉部が配置されていることが好ましい。
【0016】
上記態様によれば、底壁よりも、流体の流通方向の下流側の位置には、磁性異物を捕捉する異物捕捉部が配置されているので、底壁で捕捉した磁性異物が、底壁内面から離脱したとしても、異物捕捉部にて捕捉することができ、流体からの磁性異物の吸着漏れをより確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ケースに設けられた一対の磁性部材配置空間にそれぞれ対向するように配置された磁性部材の一方又は両方が、磁性部材当接面に対する距離を変化させる進退手段によって所定位置に保持されるので、磁性異物を含む流体の性質等に応じて、磁性部材当接面に対する磁性部材の距離を、適宜変化させることができ、流体に作用する磁場の強弱を柔軟に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る磁性異物除去装置の一実施形態を示しており、その概略構成図である。
【
図2】同磁性異物除去装置の概略分解斜視図である。
【
図3】同磁性異物除去装置の概略平面説明図である。
【
図4】同磁性異物除去装置において、磁性部材の両方を、可動手段を介して、磁性部材当接面に対する距離を変化させた場合の説明図である。
【
図5】同磁性異物除去装置において、底壁と、磁性部材の磁石やヨークとの関係を示す説明図である。
【
図6】同磁性異物除去装置において、複数の磁石のレイアウトを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(磁性異物除去装置の一実施形態)
以下、図面を参照して、本発明に係る磁性異物除去装置の一実施形態について説明する。
【0020】
図1に示すように、この実施形態における磁性異物除去装置10(以下、単に「除去装置10」ともいう)は、磁性異物を含む流体から磁性異物を磁場によって吸着除去するものであって、流体が導入される導入口22a、流体(磁性異物が除去された流体)が排出される排出口23a、導入口22a及び排出口23aに連通し流体が流通する流通路R1を形成したケース15と、永久磁石からなる磁性部材58,68と有している。
【0021】
この実施形態におけるケース15は、第1ケース20と、該第1ケース20に着脱自在に組付けられる第2ケース40とから構成されている。なお、第1ケース20は、ケース20の上下方向において下方に配置されており、第2ケース40は、ケース20の上下方向において上方に配置されている。
【0022】
また、ケース15には、流通路R1を形成する一対の流通路形成壁25,43が、所定距離を隔てて対向するように配置されている(流通路形成壁25,43が所定間隔を空けて対向して配置されている、とも言える)。
【0023】
この実施形態の場合、一対の流通路形成壁25,43は、ケース20の上下方向に配置されている。ここでは、第1ケース20側に流通路形成壁25が設けられ、第2ケース40側に流通路形成壁43が設けられている。
【0024】
図2を併せて参照すると、この実施形態の第1ケース20は、略円筒状をなした周壁21を有しており、該周壁21の下端部であって、径方向に対向する箇所からは、略円筒状をなした筒状部22,23が径方向外方に向けてそれぞれ突出している。
【0025】
筒状部22の突出方向の先端部の内部空間が前記導入口22aをなしており、筒状部23の突出方向の先端部の内部空間が前記排出口23aをなしている。また、周壁21の上端部からは、略環状フランジ状をなした第1フランジ部21aが張り出している。
【0026】
更に
図1及び
図2に示すように、第1ケース20に設けられた流通路形成壁25は、導入口22a側に配置される導入壁26と、排出口23a側に配置される排出壁27と、導入壁26及び排出壁27の間に設けられ、導入壁26及び排出壁27の下端部よりも上方に配置された上方壁部28とを有している。
【0027】
上記の導入壁26及び排出壁27は、一対の筒状部22,23に対して所定距離を隔てて対向して配置されると共に、下方から上方に向けて相互に漸次接近するように傾斜させて立設している。また、導入壁26及び排出壁27の下端部からは、外方に向けてフランジ壁29,30が張り出しており、これらのフランジ壁29,30は周壁21の下端部内周を閉塞している。
【0028】
また、
図3に示すように、前記上方壁部28は、一対の筒状部22,23の配置方向(流体の流通方向に沿った方向とも言える。以下、「流通方向X」とする)に対して直交する方向に沿って所定幅で形成されている。なお、上方壁部28や、上方壁部28を構成する下記底壁33等の、幅に沿った方向を「幅方向Y」とする。
【0029】
更に
図2や
図3に示すように、上方壁部28は、ケース20の内寸(ここでは第1ケース20の、略円筒状をなした周壁21の内径を意味する)よりも短い幅で延びる底壁33と、底壁33の幅方向Yの両端から、段部32,32を介して、ケース20の上方に配置された流通路形成壁43に当接する当接壁部31,31とを有している。
【0030】
また、上方壁部28を構成する当接壁部31,31が、第2ケース40の流通路形成壁43に当接する(この実施形態では、捕捉部材形成部70の第3フランジ部71aを介して、流通路形成壁43に間接的に当接する)ことによって、底壁33と、一対の段部32,32と、第2ケース40の流通路形成壁43とで囲まれた空間が形成されることになり、この空間が、流通路R1のうち、上方壁部28を通過する部分となっている(流通路R1の一部をなしている)。
【0031】
また、底壁33の幅(幅方向Yに沿った長さ)は、第2ケース40側の流通路形成壁43や流通路形成壁43側に配置された磁性部材68よりも幅狭となっている(短くなる)。更に
図2に示すように、底壁33の幅は、第1ケース20側に配置される磁性部材58の長さに対しても幅狭に形成されている。
【0032】
更に
図1に示すように、導入壁26と、排出壁27と、上方壁部28との内側に、ケース20の下方に位置すると共に、流通路R1とは反対側に設けられ、磁性部材58が配置される磁性部材配置空間R2が形成されている(旧段落0030)。
【0033】
また、底壁33の幅は、それよりも上流側の流通路R1(導入口22a側における流通路)の幅や、下流側の流通路R1(排出口23a側における流通路)の幅よりも狭くなっている。このように、上方壁部28における流通路R1の幅、すなわち、磁性異物を吸着するための吸着区間の幅を狭めることで、当該流通路R1には、磁性部材58,68から、強い磁場が作用するようになっている。
【0034】
上記の磁性部材配置空間R2には、更に磁性部材58が当接する磁性部材当接面28aが設けられている。この実施形態の場合、流通路形成壁25を構成する上方壁部28の、底壁33及び段部32,32を含む流通路R1に向く面(内面又は上面とも言える)とは反対の外面(下面とも言える)が、磁性部材58が当接する磁性部材当接面28aをなしている。上記の磁性部材当接面28aに対して、進退手段を介して、磁性部材58が当接したり、近接したり、離間したりするようになっている(これについては後述する)。
【0035】
一方、第2ケース40は、第1ケース20の周壁21に適合する外径とされた略円筒状をなした周壁41と、該周壁41の下端部開口を閉塞するように配置される略円板状をなした流通路形成壁43とを有している。周壁41の下端部からは、略環状フランジ状をなした第2フランジ部41aが張り出している。
【0036】
また、
図1に示すように、周壁41と、流通路形成壁43との内側に、ケース20の上方に位置すると共に、流通路R1とは反対側に設けられ、磁性部材68が配置される磁性部材配置空間R3が形成されている。
【0037】
上記の磁性部材配置空間R3には、更に磁性部材68が当接する磁性部材当接面43aが設けられている。この実施形態の場合、流通路形成壁43の流通路R1に向く面(内面又は下面とも言える)とは反対の外面(上面とも言える)が、磁性部材68が当接する磁性部材当接面43aをなしている。上記の磁性部材当接面43aに対して、進退手段を介して、磁性部材68が当接したり、近接したり、離間したりするようになっている(これについては後述する)。
【0038】
そして、磁性部材58,68は、
図1に示すような磁性部材進退動作ユニット50,60によって、磁性部材当接面28a,43aに対して進退動作可能となっている。
【0039】
また、この実施形態における除去装置10において、磁性部材58,68は、一対の流通路形成壁25,43の、流通路R1とは反対側に設けられた磁性部材配空間R2,R3にそれぞれ対向するように配置されている。ここでは、第1ケース20の磁性部材配置空間R2に磁性部材58が配置され、第2ケース40の磁性部材配置空間R3に磁性部材68が配置される。
【0040】
図2に示すように、この実施形態における磁性部材58は、便宜上、所定方向に長く延びると共に所定厚さで形成された略長方形のブロック状をなしたものとして説明する。同様に、この実施形態における磁性部材68は、便宜上、外周が円形状で且つ所定厚さで形成された略円盤状をなしたものとして説明する。
【0041】
また、
図1及び
図4に示すように、一対の磁性部材58,68の両方は、磁性部材当接面28a,43aに対する距離を変化させる進退手段によって、所定位置に保持されるように構成されている(進退手段を介して、磁性部材当接面28a,43aに対する距離を変化可能なように進退動作するように構成されている、とも言える)。
【0042】
上記の磁性部材進退動作ユニット50は、基部51と、軸部54と、軸部54を支持する軸支持部53と、磁性部材58を付勢する付勢バネ57とを有している。
【0043】
基部51は、第1ケース20の流通路形成壁25のフランジ壁29,30に当接すると共に、その中央部に軸支持孔51aが形成されている。軸部54は、所定長さで延びており、前記軸支持孔51aに挿通されて、上下方向に進退動作可能となっている。この軸部54の、延出方向の先端部54a(上端部)に、磁性部材58が固定されている。
【0044】
また、軸支持部53は、基部51の軸支持孔51aの下面側に配置されており、軸部54の延出方向の基端部54bを支持する。更に、付勢バネ57は、基部51及び磁性部材58の間に配置されると共に、その両端部が上下一対のバネ支持部57a,57aによって支持されて、磁性部材58を常時上方側、すなわち、磁性部材当接面28a側に向けて付勢する。
【0045】
上記の付勢バネ57は、その軸心が軸部54と概ね同軸上となるように配置されている。なお、付勢バネ57は、磁性部材58の傾き等を抑制して、磁性部材58の厚さ方向の上面を、磁性部材当接面28aに対して平行に維持するためのものである。
【0046】
また、軸部54は、外周に雄ネジを形成したネジ軸となっている。この軸部54が、軸支持部53の内周に形成された雌ネジに螺合する。そして、軸部54の延出方向の基端部54b(下端部)を、図示しないハンドルや工具等を介して所定方向に回転させることで、軸部54の先端部54aが上下方向に進退動作する(昇降方向に軸方向移動する等とも言える)。すなわち、軸部54及び軸支持部53は、いわゆるボールネジ構造となっている。
【0047】
そして、
図1に示す状態、すなわち、磁性部材58の上面が磁性部材当接面28aに当接した状態から、軸部54の基端部54bを所定方向に回転操作すると、複数の付勢バネ57の付勢力に抗して、
図4に示すように、軸部54の先端部54aが下方向に所定距離退避し(下降方向に所定長さ軸方向移動する)、磁性部材58が磁性部材当接面28aから所定距離だけ離間する。
【0048】
一方、
図4に示す状態、すなわち、磁性部材58の上面が磁性部材当接面28aに対して離間した状態から、軸部54の基端部54bを、軸部下降時とは反対方向に回転操作すると、軸部54の先端部54aが上方向に所定距離進行して(上昇方向に所定長さ軸方向移動する)、磁性部材58が磁性部材当接面28aに対して近接したり当接したりする。
【0049】
また、磁性部材進退動作ユニット60は、基部61と、軸部64と、軸部64を支持する軸支持部63と、磁性部材68を付勢する付勢バネ67とを有している。
【0050】
基部61は、第2ケース40の周壁41の上端部に当接すると共に、その中央部に軸支持孔61aが形成されている。軸部64は、所定長さで延びており、前記軸支持孔61aに挿通されて、上下方向に進退動作可能となっている。この軸部64の、延出方向の先端部64a(下端部)に、磁性部材68が固定されている。
【0051】
また、軸支持部63は、基部61の軸支持孔61aの上面側に配置されており、軸部64の延出方向の基端部64bを支持する。更に、付勢バネ67は、基部61及び磁性部材68の間に配置されると共に、その両端部がバネ支持部67aによって支持されて、磁性部材68を常時下方側、すなわち、磁性部材当接面43a側に向けて付勢する。
【0052】
上記の付勢バネ67は、その軸心が軸部64と概ね同軸上となるように配置されている。なお、付勢バネ67は、磁性部材68の傾き等を抑制して、磁性部材68の厚さ方向の下面を、磁性部材当接面43aに対して平行に維持するためのものである。
【0053】
また、軸部64は、前記軸部54と同様に、外周に雄ネジを形成したネジ軸となっている。この軸部64が、軸支持部63の内周に形成された雌ネジに螺合する。そして、軸部64の延出方向の基端部64b(上端部)を所定方向に回転させることで、軸部64の先端部64aが上下方向に進退動作する。すなわち、軸部64及び軸支持部63は、いわゆるボールネジ構造となっている。
【0054】
そして、
図1に示す状態、すなわち、磁性部材68の下面が磁性部材当接面43aに当接した状態から、軸部64の基端部64bを所定方向に回転操作すると、付勢バネ67の付勢力に抗して、
図4に示すように、軸部64の先端部64aが上方向に所定距離退避し(上昇方向に所定長さ軸方向移動する)、磁性部材68が磁性部材当接面43aから所定距離だけ離間する。
【0055】
一方、
図4に示す状態、すなわち、磁性部材68の下面が磁性部材当接面43aに対して離間した状態から、軸部64の基端部54bを、軸部上昇時とは反対方向に回転操作すると、軸部64の先端部64aが下方向に所定距離進行して(下降方向に所定長さ軸方向移動する)、磁性部材68が磁性部材当接面43aに対して近接したり当接したりする。
【0056】
なお、この実施形態においては、いわゆるボールネジ構造をなした、第1ケース20における軸支持部53及び軸部54、第2ケース40における軸支持部63及び軸部64が、本発明における「進退手段」をなしている。
【0057】
また、
図1に示すように、磁性部材58の上面が磁性部材当接面28aに当接し、且つ、磁性部材68の下面が磁性部材当接面43aに当接した状態では、ケース下方側の底壁33と、該底壁33に対向する位置の、ケース上方側の流通路形成壁43との間に、磁性部材58,68からの磁場が強く作用する、強磁場作用領域Aが生じるようになっている。
【0058】
また、
図2に示すように、底壁33よりも、流通路R1の、流体の流通方向における下流側の位置には、磁性異物を捕捉する異物捕捉部75が配置されている。なお、
図3においては、便宜上、異物捕捉部75は省略している。
【0059】
この実施形態の場合、異物捕捉部75は、
図2に示すように、第1ケース20と第2ケース40との間に配置される、捕捉部材形成部70によって、底壁33の下流側に配置されるようになっている。
【0060】
また、捕捉部材形成部70は、略円環状をなした環状体71と、該環状体71の上端部から張り出した環状フランジ状をなした第3フランジ部71aと、前記環状体71の径方向の排出口23a側から、環状体71の軸方向下方に向けて延出した略円弧状をなした延出壁72と、該延出壁72の延出方向の先端(下端)から張り出した略三日月状をなした底部73とを有しており、延出壁72及び底部73が前記異物捕捉部75を構成している。
【0061】
更に、環状体71の、径方向に対向する箇所には、前記上方壁部28の当接壁部31,31が入り込む、切欠き71b,71bが形成されている。
【0062】
そして、
図1や
図4に示すように、捕捉部材形成部70の異物捕捉部75を、底壁33の下流側に位置合わせした状態で、捕捉部材形成部70の第3フランジ部71aが、第1ケース20の第1フランジ部21aと第2ケース40の第2フランジ部41aとで挟み込まれることによって、一対のケース20,40間に捕捉部材形成部70が挟持固定されて、その異物捕捉部75が底壁33の下流側に配置されるようになっている。
【0063】
この際、上方壁部28の当接壁部31,31が、環状体71の切欠き71b,71bに入り込んで、第3フランジ部71aの裏面に当接することで、当接壁部31,31は、第3フランジ部71aを介して、第2ケース40の流通路形成壁43に間接的に当接するようになっている。
【0064】
なお、一対のケース20,40は、図示しないクランプや固定具等によって、周壁21,41の端部どうしが離間しないように互いに固定されるようになっている。
【0065】
また、
図5に示すように、この実施形態においては、磁性部材58,68は、所定レイアウトで配置された複数の磁石80から構成されており、隣接する磁石80が、ヨーク85を介して同極どうしを対向した状態で配置されるようになっている。
【0066】
なお、
図1、
図3及び
図4においては、便宜上、複数の磁石80の表示は省略しており、単一の磁性部材58,68として図示している。更に
図5においては、便宜上、捕捉部材形成部70を省略している。これは後述する
図7~12に示す変形例においても同様である。
【0067】
より具体的には、この実施形態における各磁石80は、所定幅で且つ所定長さで延びる略角柱状(中実の角棒状)をなした永久磁石となっている。磁石80の幅方向の一端側がN極81をなし、幅方向の他端側がS極82をなしている。また、この実施形態におけるヨーク85は、例えば、純鉄や低炭素鋼等の金属からなる板状体となっている。
【0068】
そして、
図5に示すように、各磁石80は、隣接する磁石80,80のN極81,81どうしを対向配置すると共に、N極81,81の間にヨーク85を介在させるか、又は、隣接する磁石80,80のS極82,82どうしを対向して配置すると共に、S極82,82の間にヨーク85を介在させた状態で配置される。
【0069】
また、隣接する磁石80,80の同極どうしの間にヨーク85が配置されることで、磁石80の磁力がヨーク85に作用することになり、ヨーク85が磁性異物の吸着部分となる。
【0070】
なお、
図6には、第2ケース40側の磁石80のレイアウトが示されているが、略角柱状をなした複数の磁石80は、第2ケース40の周壁41を横切るように長く延びると共に、長さの異なる複数のものが用意されており、これらの複数の磁石80が、略円筒状をなした第2ケース40の周壁41内において、無駄なスペースを極力生じないレイアウトで配置されている。
【0071】
図5には、本実施形態の、底壁33と、磁性部材58,68の磁石80やヨーク85との関係が示されている。この
図5に示すように、磁性部材58を構成する磁石80,80間に配置されたヨーク85と、磁性部材68を構成する磁石80,80間に配置されたヨーク85とは、底壁33の幅方向Yにおいて整合する位置となっている。
【0072】
また、磁性部材58側の磁石80のN極81と、磁性部材68側の磁石80のS極82とが、底壁33の幅方向Yにおいて整合する位置に配置され、更に、磁性部材58側の磁石80のS極82と、磁性部材68側の磁石80のN極81とが、底壁33の幅方向Yにおいて整合する位置に配置されている(
図5参照)。
【0073】
(磁性異物除去装置の変形例)
本発明における磁性異物除去装置の構造や形状、磁性異物除去装置を構成するケーシングや磁性部材の形状や構造等は、上記態様に限定されるものではない。
【0074】
この実施形態のケース15は、第1ケース20及び第2ケース40からなる2部品構成となっているが、ケースとしては、一部品であってもよい。また、ケースの周壁は、略角筒状や略楕円筒状をなしていてもよい。更に、第2ケースの流通路形成壁を、第1ケースの流通路形成壁と同様な形状としてもよい。
【0075】
更に、この実施形態においては、第1ケース20側の磁性部材58、及び、第2ケース40側の磁性部材68の両方を、進退手段を介して進退動作させて、所定位置に保持する構成となっているが、磁性部材のどちらか一方を、進退手段を介して、磁性部材当接面に対する距離を変化可能なように進退動作させて、所定位置に保持する構成としてもよい。
【0076】
また、この実施形態においては、一対の流通路形成壁25,43は、ケース15の上方方向に配置されているが、一対の流通路形成壁部としては、例えば、ケースの左右方向や斜め方向に配置されていてもよく、特に限定はされない。
【0077】
更に、この実施形態では、いわゆるボールネジ構造をなした軸支持部53,63及び軸部54,64が本発明における「進退手段」をなしているが、進退手段としては、例えば、電動アクチュエータ、油圧シリンダー、エアシリンダー等であってもよく、磁性部材を磁性部材当接面に対して、当接させたり、近接させたり、離間させたりして、磁性部材当接面に対する距離を変化可能なように可動する構成であればよい。
【0078】
また、導入口22aよりも更に上流側に、流体に含まれる磁性異物が固まっていたり凝集していたりする場合に、これをほぐしたり分散させたりする目的で、周知のいわゆる解砕装置を配置してもよい。
【0079】
(磁性異物除去装置の作用効果)
次に、上記構造からなる除去装置10の使用方法及び作用効果について説明する。
【0080】
図1には、ケース15の第1ケース20及び第2ケース40が組付けられると共に、可動手段を介して、磁性部材58が磁性部材当接面28aに当接し、且つ、磁性部材68が磁性部材当接面43aに当接した状態が示されている。この場合、磁性部材当接面28a,43aに対する磁性部材58,68の離間した距離が0(当接・接触している)であるので、磁性部材当接面28a,43aには、磁性部材58,68からの磁場が最も強い状態で作用するようになっている。
【0081】
この状態で、磁性異物を含む流体が、ケース15の導入口22aから流通路R1内に導入されると、導入口22a側の流通路R1を流通した後、底壁33内に流入する。なお、
図1~4中の矢印Fが、流体の流通経路を示している。
【0082】
すると、流体が上方壁部28に形成した流通路R1内に流入して、底壁33と該底壁33に対向する位置の流通路形成壁43とで仕切られた強磁場作用領域A(
図1,5参照)を流体が通過することになる。すなわち、磁性部材当接面28a,43aの反対面に位置する強磁場作用領域Aを通過する流体に、磁性部材58,68からの強い磁場が作用する結果、流体に含有する磁性異物が吸着除去される。
【0083】
底壁33を通過した流体は、底壁33側の下流側の流通路R1、すなわち、排出口23a側の流通路R1を通過した後、排出口23aから図示しない下流側のラインへと排出される。
【0084】
そして、この除去装置10においては、
図1や
図4に示すように、ケース15に配置された一対の流通路形成壁25,43の磁性部材当接面28a,43aにそれぞれ配置された磁性部材58,68の両方が、磁性部材当接面28a,43aに対する距離を変化させる進退手段によって、所定位置に保持されるように構成されている。
【0085】
その結果、磁性異物を含む流体の性質等に応じて、流通路形成壁25,43の磁性部材当接面28a,43aに対する磁性部材58,68の距離を、適宜変化させることができるので、流体に作用する磁場の強弱を柔軟に調整することができる。これによって、流体の性質等に応じて、流体に作用する磁場を適切に選択することができるので、流体から磁性異物を効果的に吸着除去することができる。
【0086】
また、両ケース20,40を組付ける場合や(段取り時とも言える)、又は、流通路R1の内面に付着した磁性異物を取り除いたり、異物捕捉部75から磁性異物を取り除いたり、メンテナンスをしたりする際に、両ケース20,40を取外したい場合がある。
【0087】
上記のような場合には、第1ケース20側の磁性部材58を磁性部材当接面28aから離間させるか、第2ケース40側の磁性部材68を磁性部材当接面43aから離間させるか、磁性部材58,68の両方を磁性部材当接面28a,58aから離間させる。その結果、磁性部材58,68からの磁場や表面磁束密度を弱めることができるので、一方のケースに対して他方のケースを取付けたり取外したりする作業を簡単に行うことができる。
【0088】
また、
図2や
図3に示すように、この実施形態においては、ケース下方の流通路形成壁25を構成する上方壁部28は、ケース20の内寸よりも短い幅を有する底壁33と、底壁33の幅方向Yの両端に設けた段部32,32を介して、ケース上方の流通路形成壁43に当接する当接壁部31,31とを有している。
【0089】
そのため、ケース下方側の底壁33と該底壁33に対向するケース上方側の流通路形成壁43との距離を狭めることができる。また、ケース20の上方に位置する磁性部材配置空間R3に配置された磁性部材68は、底壁33よりも幅広となっているので、ケース下方側の底壁33と該底壁33に対向するケース上方側の流通路形成壁43との距離を狭めた流通路R1に、磁性部材68からの強い磁場を作用させることができるため、流体からの磁性異物の吸着漏れを防止することができる。
【0090】
更に
図2に示すように、この実施形態においては、底壁33よりも、流通路R1の、流体の流通方向における下流側の位置に、磁性異物を捕捉する異物捕捉部75が配置されている。
【0091】
上記態様によれば、底壁33で捕捉した磁性異物が、底壁33の内面から離脱したとしても、異物捕捉部75にて捕捉することができるので、流体からの磁性異物の吸着漏れをより確実に防止することができる。
【0092】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
10 磁性異物除去装置(除去装置)
15 ケース
20 第1ケース
22a 導入口
23a 排出口
25 流通路形成壁
26 導入壁
27 排出壁
28 上方壁部
28a 磁性部材当接面
31,31 当接壁部
32,32 段部
33 底壁
40 第2ケース
43 流通路形成壁
43a 磁性部材当接面
50,60 磁性部材進退動作ユニット
53,63 軸支持部
54,64 軸部
58,68 磁性部材
70 捕捉部材形成部
75 異物捕捉部
80 磁石
81 N極
82 S極
85 ヨーク
R1 流通路
【要約】
【課題】流体の性質等に応じて流通路に作用する磁場の強さを柔軟に調整できる磁性異物除去装置を提供する。
【解決手段】この磁性異物除去装置10は、流体が導入される導入口22a、流体が排出される排出口23a、導入口22a及び排出口23aに連通し流体が流通する流通路R1を形成したケース15と、永久磁石からなる磁性部材58,68と有し、ケース15には、流通路R1を形成する一対の流通路形成壁25,43が配置され、磁性部材58,68の両方が、磁性部材当接面28a,43aに対する距離を変化させる進退手段によって、所定位置に保持される。
【選択図】
図1