(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】がんを監視及び治療するための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20240614BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240614BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240614BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240614BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240614BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240614BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20240614BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20240614BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240614BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240614BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20240614BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240614BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240614BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z ZNA
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/04
A61P37/04
C12Q1/06
G01N33/48 P
G01N33/53 K
G01N33/574 A
G01N33/574 D
C07K16/18
C12N15/12
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2018553112
(86)(22)【出願日】2017-04-14
(86)【国際出願番号】 US2017027768
(87)【国際公開番号】W WO2017181111
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-04-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-19
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウォーリン, ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ヘグデ, プリティ
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】天野 貴子
【審判官】田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】”Adding Anti-PD-L1 Antibody to Bevacizumab Induces Responses in mRCC”,[ONLINE],2015年03月02日,http://www.onclive.com/conference-coverage/gu-2015/adding-anti-pd-l1-antibody-to-bevacizumab-induces-responses-in-mrcc
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/B IOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベバシズマブ及びアテゾリズマブを含む抗がん療法での治療に対する、以前に未治療の進行性腎細胞癌(RCC)または以前に未治療の転移性RCCを有するヒト患者の応答を監視することを補助するための方法であって、
(a)前記抗がん療法の投与後の時点で前記患者から得られる腫瘍試料中の、以下の遺伝子セット、
CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG及びPRF1、
のmRNA発現レベルを決定することと、
(b)前記腫瘍試料中の前記遺伝子の発現レベルを基準レベルと比較し、それにより前記抗がん療法での治療に対する、前記患者における前記応答を監視することと、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記腫瘍試料中の、以下の遺伝子セット:
CXCL9、CXCL10、CXCL11、及びCXCL13;または
GZMB、KLRK1、及びSLAMF7
のうちの1つ以上のmRNA発現レベルを決定すること、並びに、
前記腫瘍試料中の前記遺伝子の発現レベルを基準レベルと比較すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
CXCL9、CXCL10、CXCL11、及びCXCL13の発現レベルが決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
GZMB、KLRK1、及びSLAMF7の発現レベルが決定される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記基準レベルが、前記抗がん療法の投与前に得られる、前記患者からの腫瘍試料中の前記遺伝子の発現レベルである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記基準レベルが、患者から得られた治療前の腫瘍試料からの遺伝子のベースライン発現レベルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝子の発現レベルが、前記基準レベルと比較して、前記患者から得られる前記腫瘍試料中で増加する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、及びPRF1の発現レベルが、前記基準レベルと比較して、少なくとも約2倍増加する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、及びPRF1の発現レベルが、前記基準レベルと比較して、少なくとも約15倍増加する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、及びPRF1の発現レベルが、前記基準レベルと比較して、少なくとも約50倍増加する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
CXCL9、CXCL10、CXCL11、及びCXCL13の発現レベルが、前記基準レベルと比較して、少なくとも約3倍増加する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項12】
CXCL9、CXCL10、CXCL11、及びCXCL13の発現レベルが、前記基準レベルと比較して、少なくとも約80倍増加する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
CXCL9、CXCL10、CXCL11、及びCXCL13の発現レベルが、前記基準レベルと比較して、少なくとも約250倍増加する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
GZMB、KLRK1、及びSLAMF7の発現レベルが、前記基準レベルと比較して、少なくとも約2倍増加する、請求項2または4に記載の方法。
【請求項15】
GZMB、KLRK1、及びSLAMF7の発現レベルが、前記基準レベルと比較して、少なくとも約8倍増加する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
GZMB、KLRK1、及びSLAMF7の発現レベルが、前記基準レベルと比較して、少なくとも約13倍増加する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記遺伝子の前記増加した発現レベルが、前記患者が前記抗がん療法に対して応答していることを示す、請求項7~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記患者からの前記腫瘍試料が、前記抗がん療法の投与の約4~約6週間後に得られる、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
RCCは、以前に未治療の転移性RCCである、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記mRNA発現レベルが、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、逆転写qPCR(RT-qPCR)、RNA配列決定、マイクロアレイ分析、インサイチュハイブリダイゼーション、または遺伝子発現の逐次分析(SAGE)を使用して決定される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記腫瘍試料が、ホルマリン固定パラフィン包埋、新鮮、アーカイブ、または凍結されている、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記患者は、ヒト患者である、請求項1~
21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2017年4月13日に作製された該ASCIIコピーは、名称が50474-132WO2_Sequence_Listing_4_13_17_ST25であり、サイズが110,043バイトである。
【0002】
本発明は一般に、がん、例えば、腎臓癌を診断、監視、及び治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
がんは、依然としてヒトの健康に対する最も致命的な脅威のうちの1つである。米国単独でも、毎年約130万人の新たな患者ががんを発症し、心血管疾患に続く第2の主要な死亡原因であり、死亡のおよそ4件に1件を占める。固形腫瘍は、そのような死亡の大部分に関与する。特定のがんの治療において著しい前進があったものの、全てのがんについての全5年生存率は、過去20年間で約10%しか改善されていない。特に、腎臓癌は、1990年代から発生率が上昇しており、男性及び女性の両方において現在最も一般的な10のがんの1つとなっている。
【0004】
抗血管新生剤を他の抗がん剤(抗腫瘍免疫を促進する薬物など)と対合させる併用療法は、腎臓癌などのがんの治療のための見込みある新たなアプローチを提供している。
【0005】
したがって、当該技術分野において、腎臓癌を含むがんの改善された療法及び診断方法に対する満たされていない必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、がん、例えば、腎臓癌(例えば、転移性腎細胞癌(mRCC))を監視、診断、及び治療するための組成物及び方法を提供する。
【0007】
一態様において、本発明は、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法での治療に対する、腎臓癌を有する患者の応答を監視する方法であって、(a)抗がん療法の投与後の時点で患者から得られる生物学的試料中の、以下の遺伝子、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、もしくはPRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、もしくはCXCL13、またはGZMB、KLRK1、もしくはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルを決定することと、(b)生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルを基準レベルと比較し、それにより抗がん療法での治療に対する、患者における応答を監視することとを含む、前記方法を特徴とする。
【0008】
いくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1つ以上の発現レベルは、腫瘍微小環境におけるCD8+Tエフェクター(Teff)細胞の存在と相関する。いくつかの実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1つ以上の発現レベルは、腫瘍微小環境におけるTh1ケモカインの存在と相関する。いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7の存在は、腫瘍微小環境におけるナチュラルキラー(NK)細胞の存在と相関する。
【0009】
いくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1つ以上の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、及びPRF1の発現レベルが決定される。
【0010】
いくつかの実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1つ以上の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの少なくとも2つまたは少なくとも3つの発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、及びCXCL13の発現レベルが決定される。
【0011】
いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの少なくとも2つの発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、及びSLAMF7の発現レベルが決定される。
【0012】
いくつかの実施形態において、基準レベルは、(i)抗がん療法の投与前に得られる、患者からの生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベル、(ii)基準集団における1つ以上の遺伝子の発現レベル、(iii)1つ以上の遺伝子に事前に割り当てられた発現レベル、(iv)抗がん療法の投与後である以前の時点で、患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベル、または(v)その後の時点で患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子の発現レベルは、基準レベルと比較して、患者から得られる生物学的試料中で増加する。
【0013】
いくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1つ以上の発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約2倍増加する。いくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1つ以上の発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約15倍増加する。いくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1つ以上の発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約50倍増加する。
【0014】
いくつかの実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1つ以上の発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約3倍増加する。いくつかの実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1つ以上の発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約80倍増加する。いくつかの実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1つ以上の発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約250倍増加する。
【0015】
いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約2倍増加する。いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約8倍増加する。いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約13倍増加する。
【0016】
いくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子の増加した発現レベルは、患者がVEGFアンタゴニストに対して応答していることを示す。
【0017】
別の態様において、本発明は、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法での治療に対する、腎臓癌を有する患者の応答を監視する方法であって、(a)抗がん療法の投与後の時点で患者から得られる生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルを決定することと、(b)生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルを基準レベルと比較し、それにより抗がん療法での治療に対する、患者における応答を監視することとを含む、前記方法を特徴とする。いくつかの実施形態において、基準レベルは、(i)抗がん療法の投与前に得られる、患者からの生物学的試料中のMHC-Iの発現レベル、(ii)基準集団におけるMHC-Iの発現レベル、(iii)MHC-Iに事前に割り当てられた発現レベル、(iv)抗がん療法の投与後である以前の時点で、患者から得られる生物学的試料中のMHC-Iの発現レベル、または(v)その後の時点で患者から得られる生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルからなる群から選択される。
【0018】
いくつかの実施形態において、MHC-Iの発現レベルは、基準レベルと比較して、患者から得られる生物学的試料中で増加する。いくつかの実施形態において、MHC-Iの発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約2倍増加する。いくつかの実施形態において、MHC-Iの増加した発現レベルは、患者が抗がん療法に対して応答していることを示す。
【0019】
別の態様において、本発明は、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法での治療に対する、腎臓癌を有する患者の応答を監視する方法であって、(a)抗がん療法の投与後の時点で患者から得られる生物学的試料中の、以下の遺伝子、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上の発現レベルを決定することと、(b)生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルを基準レベルと比較し、それにより抗がん療法での治療に対する、患者における応答を監視することとを含む、前記方法を特徴とする。
【0020】
いくつかの実施形態において、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、及びCXCL10の発現レベルが決定される。
【0021】
いくつかの実施形態において、基準レベルは、(i)抗がん療法の投与前に得られる、患者からの生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベル、(ii)基準集団における1つ以上の遺伝子の発現レベル、(iii)1つ以上の遺伝子に事前に割り当てられた発現レベル、(iv)抗がん療法の投与後である以前の時点で、患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベル、または(v)その後の時点で患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルからなる群から選択される。
【0022】
いくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子の発現レベルは、基準レベルと比較して増加する。いくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子の増加した発現レベルは、患者が抗がん療法に対して応答していることを示す。
【0023】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者からの生物学的試料は、抗がん療法の投与の約4~約6週間後に得られる。いくつかの実施形態において、本方法は、MHC-Iまたは1つ以上の遺伝子の発現レベルが、基準レベルと比較して増加する患者に、抗がん療法の1回分以上の追加の用量を投与するステップを更に含む。
【0024】
別の態様において、本発明は、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法で、腎臓癌を有する患者を治療する方法であって、(a)抗がん療法の投与後の時点で患者から得られる生物学的試料中の、以下の遺伝子、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、もしくはPRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、もしくはCXCL13、またはGZMB、KLRK1、もしくはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルを決定することと、(b)生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルを基準レベルと比較することと、(c)患者の1つ以上の遺伝子の発現レベルが、基準レベルと比較して増加する場合、患者への抗がん療法の投与を継続することとを含む、前記方法を特徴とする。
【0025】
いくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1つ以上の発現レベルは、腫瘍微小環境におけるCD8+Tエフェクター(Teff)細胞の存在と相関する。いくつかの実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1つ以上の発現レベルは、腫瘍微小環境におけるTh1ケモカインの存在と相関する。いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、またはSMALF7の存在は、腫瘍微小環境におけるナチュラルキラー(NK)細胞の存在と相関する。
【0026】
いくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1つ以上の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、及びPRF1の発現レベルが決定される。
【0027】
いくつかの実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1つ以上の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの少なくとも2つまたは少なくとも3つの発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、及びCXCL13の発現レベルが決定される。
【0028】
いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの少なくとも2つの発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、及びSLAMF7の発現レベルが決定される。
【0029】
いくつかの実施形態において、基準レベルは、(i)抗がん療法の投与前に得られる、患者からの生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベル、(ii)基準集団における1つ以上の遺伝子の発現レベル、(iii)1つ以上の遺伝子に事前に割り当てられた発現レベル、(iv)抗がん療法の投与後である以前の時点で、患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベル、または(v)その後の時点で患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルからなる群から選択される。
【0030】
いくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1つ以上の発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約2倍増加する。いくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1つ以上の発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約15倍増加する。いくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1つ以上の発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約50倍増加する。
【0031】
いくつかの実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1つ以上の発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約3倍増加する。いくつかの実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1つ以上の発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約80倍増加する。いくつかの実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1つ以上の発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約250倍増加する。
【0032】
いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約2倍増加する。いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約8倍増加する。いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約13倍増加する。
【0033】
別の態様において、本発明は、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法で、腎臓癌を有する患者を治療する方法であって、(a)抗がん療法の投与後の時点で患者から得られる生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルを決定することと、(b)生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルを基準レベルと比較することと、(c)患者の1つ以上の遺伝子の発現レベルが、基準レベルと比較して増加する場合、患者への抗がん療法の投与を継続することとを含む、前記方法を特徴とする。いくつかの実施形態において、基準レベルは、(i)VEGFアンタゴニストの投与前に得られる、患者からの生物学的試料中のMHC-Iの発現レベル、(ii)基準集団におけるMHC-Iの発現レベル、(iii)MHC-Iに事前に割り当てられた発現レベル、(iv)VEGFアンタゴニスの投与後である以前の時点で、患者から得られる生物学的試料中のMHC-Iの発現レベル、または(v)その後の時点で患者から得られる生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、MHC-Iの発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約2倍増加する。
【0034】
別の態様において、本発明は、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法で、腎臓癌を有する患者を治療する方法であって、(a)抗がん療法の投与後の時点で患者から得られる生物学的試料中の、以下の遺伝子、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上の発現レベルを決定することと、(b)生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルを基準レベルと比較することと、(c)患者の1つ以上の遺伝子の発現レベルが、基準レベルと比較して増加する場合、患者への抗がん療法の投与を継続することとを含む、前記方法を特徴とする。いくつかの実施形態において、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、及びCXCL10の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、基準レベルは、(i)抗がん療法の投与前に得られる、患者からの生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベル、(ii)基準集団における1つ以上の遺伝子の発現レベル、(iii)1つ以上の遺伝子に事前に割り当てられた発現レベル、(iv)抗がん療法の投与後である以前の時点で、患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベル、または(v)その後の時点で患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルからなる群から選択される。
【0035】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者からの生物学的試料は、抗がん療法の投与の約4~約6週間後に得られる。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニストは、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブである。いくつかの実施形態において、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される。
【0036】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のそのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のB7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1及びB7-1の両方への結合を阻害する。
【0037】
いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、MPDL3280A(アテゾリズマブ)、YW243.55.S70、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号19のHVR-H1配列、配列番号20のHVR-H2配列、及び配列番号21のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号22のHVR-L1配列、配列番号23のHVR-L2配列、及び配列番号24のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1への結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L2への結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1及びPD-L2の両方への結合を阻害する。
【0039】
いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、CT-011(ピディリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、及びBGB-108からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、Fc融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、Fc融合タンパク質は、AMP-224である。
【0040】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、本方法は、追加の治療剤を患者に投与することを更に含む。いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、免疫療法剤、細胞毒性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、抗血管新生剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0041】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、腎臓癌は、腎細胞癌である。いくつかの実施形態において、腎細胞癌は、転移性腎細胞癌である。
【0042】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、発現レベルは、mRNA発現レベルである。いくつかの実施形態において、mRNA発現レベルは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、逆転写qPCR(RT-qPCR)、RNA配列決定、マイクロアレイ分析、インサイチュハイブリダイゼーション、及び遺伝子発現の逐次分析(SAGE)からなる群から選択される方法を使用して決定される。
【0043】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、発現レベルは、タンパク質発現レベルである。いくつかの実施形態において、タンパク質発現レベルは、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光法、質量分析法、フローサイトメトリー、及びウェスタンブロットからなる群から選択される方法を使用して決定される。
【0044】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者から得られる生物学的試料は、腫瘍試料または細胞試料である。いくつかの実施形態において、腫瘍試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)、新鮮、アーカイブ、または凍結されている。いくつかの実施形態において、細胞試料は、末梢CD8+T細胞を含む。
【0045】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、患者は、ヒト患者である。
【0046】
別の態様において、本発明は、腎臓癌を患う患者を治療する方法における使用のための、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法であって、患者から得られる生物学的試料が、基準レベルと比較して、以下の遺伝子、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、もしくはPRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、もしくはCXCL13、またはGZMB、KLRK1、もしくはSLAMF7のうちの1つ以上の増加した発現レベルを有することが決定されている、前記抗がん療法を特徴とする。
【0047】
別の態様において、本発明は、腎臓癌を患う患者の治療における使用のための薬物の製造における、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法の使用であって、患者から得られる生物学的試料が、基準レベルと比較して、以下の遺伝子、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、もしくはPRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、もしくはCXCL13、またはGZMB、KLRK1、もしくはSLAMF7のうちの1つ以上の増加した発現レベルを有することが決定されている、前記使用を特徴とする。
【0048】
別の態様において、本発明は、腎臓癌を患う患者の治療における使用のための、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む組成物であって、患者から得られる生物学的試料が、基準レベルと比較して、以下の遺伝子、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、もしくはPRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、もしくはCXCL13、またはGZMB、KLRK1、もしくはSLAMF7のうちの1つ以上の増加した発現レベルを有することが決定されている、前記組成物を特徴とする。
【0049】
別の態様において、本発明は、腎臓癌を患う患者を治療する方法における使用のための、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法であって、患者から得られる生物学的試料が、基準レベルと比較して、MHC-Iの増加した発現レベルを有することが決定されている、前記抗がん療法を特徴とする。
【0050】
別の態様において、本発明は、腎臓癌を患う患者の治療における使用のための薬物の製造における、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法の使用であって、患者から得られる生物学的試料が、基準レベルと比較して、MHC-Iの増加した発現レベルを有することが決定されている、前記使用を特徴とする。
【0051】
別の態様において、本発明は、腎臓癌を患う患者の治療における使用のための、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む組成物であって、患者から得られる生物学的試料が、基準レベルと比較して、MHC-Iの増加した発現レベルを有することが決定されている、組成物を特徴とする。
【0052】
別の態様において、本発明は、腎臓癌を患う患者を治療する方法における使用のための、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法であって、患者から得られる生物学的試料が、基準レベルと比較して、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、またはCCR7から選択される1つ以上の遺伝子の増加した発現レベルを有することが決定されている、前記抗がん療法を特徴とする。
【0053】
別の態様において、本発明は、腎臓癌を患う患者の治療における使用のための薬物の製造における、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法の使用であって、患者から得られる生物学的試料が、基準レベルと比較して、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、またはCCR7から選択される1つ以上の遺伝子の増加した発現レベルを有することが決定されている、前記使用を特徴とする。
【0054】
別の態様において、本発明は、腎臓癌を患う患者の治療における使用のための、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む組成物であって、患者から得られる生物学的試料が、基準レベルと比較して、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、またはCCR7から選択される1つ以上の遺伝子の増加した発現レベルを有することが決定されている、前記組成物を特徴とする。いくつかの実施形態において、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、MPDL3280A(アテゾリズマブ)、YW243.55.S70、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニストは、抗VEGF抗体である。いくつかの実施形態において、抗VEGF抗体は、ベバシズマブである。
【0055】
別の態様において、本発明は、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法で治療される腎臓癌を有する患者の応答を監視する方法であって、(a)抗がん療法の投与後の時点で患者から得られる腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数を決定することと、(b)腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数を基準試料と比較し、それにより抗がん療法での治療を受ける患者における応答を監視することとを含む、前記方法を特徴とする。
【0056】
別の態様において、本発明は、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法で、腎臓癌を有する患者を治療する方法であって、(a)抗がん療法の投与後の時点で患者から得られる腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数を決定することと、(b)腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数を基準試料と比較することと、(c)患者の試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数が、基準レベルと比較して増加する場合、患者への抗がん療法の投与を継続することとを含む、前記方法を特徴とする。いくつかの実施形態において、患者から得られる腫瘍試料は、基準試料と比較して、CD8+T細胞の数の増加を有する。いくつかの実施形態において、患者から得られる腫瘍試料は、基準試料と比較して、CD8+T細胞の数の少なくとも2倍の増加を有する。いくつかの実施形態において、患者から得られる腫瘍試料は、基準試料と比較して、CD8+T細胞の数の5倍の増加を有する。いくつかの実施形態において、患者から得られる腫瘍試料は、基準試料と比較して、CD68+/CD163+マクロファージの数の増加を有する。
【0057】
前述の態様のいずれかのいくつかの実施形態において、基準試料は、抗がん療法の投与前に得られる、患者の腫瘍試料である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】アテゾリズマブ及びベバシズマブ併用治療を受ける腎細胞癌(RCC)患者間の経時的な腫瘍負荷を示すグラフである。グラフ上の点は、標的病変の最長径和(SLD)におけるベースラインからの最大低下を示す。PRは部分奏効、PDは疾患進行、SDは疾患安定。
【
図2】各RCC患者の研究治療の持続期間を示すグラフである。最初のPRまたはCRの時間を円で示し、最初のPDの時間を三角で示し、治療中断を黒色の棒で示し、分析時点で依然治療中の患者を矢印で特定する。
【
図3】ベバシズマブ(「Bev」)治療後の腫瘍バイオマーカーの遺伝子発現レベルを示すグラフである。治療中の腫瘍試料の発現レベルを、ベースライン発現レベル(治療前)に対して示す。血管符号遺伝子(ANGPT2、CD34、DLL4、EGFL7、及びESM1)を黒色で示し、CD8T細胞エフェクター遺伝子(CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、IFNG、及びPRF1)を模様付きの灰色で示し、Th1ケモカイン(CXCL10、CXCL11、CXCL13、及びCXCL9)を白色で示し、ナチュラルキラー(NK)細胞遺伝子(GZMB、KLRK1、及びSLAMF7)を無地の灰色で示す。
【
図4】アテゾリズマブ及びベバシズマブ併用治療(「Bev+Atezo」)後の腫瘍バイオマーカーの遺伝子発現レベルを示すグラフである。治療中の腫瘍試料の発現レベルを、ベースライン発現レベル(治療前)に対して示す。血管符号遺伝子(ANGPT2、CD34、DLL4、EGFL7、及びESM1)を黒色で示し、CD8T細胞エフェクター遺伝子(CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、IFNG、及びPRF1)を模様付きの灰色で示し、Th1ケモカイン(CXCL10、CXCL11、CXCL13、及びCXCL9)を白色で示し、NK細胞遺伝子(GZMB、KLRK1、及びSLAMF7)を無地の灰色で示す。
【
図5】免疫組織化学(IHC)によって評価される、患者3の腫瘍試料中の免疫及び血管系マーカーのタンパク質発現を示す一連の代表的な画像である。CD31は染色した濃灰色(第1行)であり、CD8は染色した濃灰色(第2行)であり、MHC-Iは染色した濃灰色(第3行)であり、PD-L1は染色した濃灰色(第4行)である。治療前の試料を左側の列に示し、ベバシズマブ後の試料を中間の列に示し、ベバシズマブ+アテゾリズマブ後の試料を右側の列に示す。
【
図6】IHCによって評価される、示される時点での免疫及び血管系マーカーの定量化を示す一連のグラフである。CD31発現を上部パネルに示し、CD8発現を中間パネルに示し、MHC-I発現を下部パネルに示す。P値は、対応のあるt検定によって決定した。「VPOSVE」は、血管密度の尺度である。
【
図7】IHCによって評価される、患者3の腫瘍試料の連続切片からの、免疫及び血管系マーカーのタンパク質発現を示す一連の代表的な画像である。第1行は、CD34、アルファ平滑筋アクチン(αSMA)、及びポドプラニンの発現を示す。第2行は、CD8及びKi67の発現を示す。第3行は、CD68及びCD163の発現を示す。治療前の試料を左側の列に示し、ベバシズマブ後の試料を中間の列に示し、ベバシズマブ+アテゾリズマブ後の試料を右側の列に示す。
【
図8】IHCによって評価される、腫瘍試料中のCD34及びαSMAのタンパク質発現を示す一連の代表的な画像である。治療前の試料を左側の列に示し、ベバシズマブ後の試料を中間の列に示し、ベバシズマブ+アテゾリズマブ後の試料を右側の列に示す。個々の患者1~6の切片を各行に配置する。各患者の応答もまた示す。
【
図9】IHCによって評価される、腫瘍の連続切片からの、免疫及び血管系マーカーのタンパク質発現を示す一連の代表的な画像である。第1行は、CD34、αSMA、及びポドプラニンの発現を示す。第2行は、CD8及びKi67の発現を示す。第3行は、CD68及びCD163の発現を示す。ベバシズマブ後の試料を左側の列に示し、ベバシズマブ+アテゾリズマブ後の試料を右側の列に示す。
【
図10】IHCによって評価される、ベバシズマブ+アテゾリズマブ後の腫瘍の連続切片からの、免疫及び血管系マーカーのタンパク質発現を示す一連の代表的な画像である。上部画像は、CD34、αSMA、及びポドプラニンの発現を示す。中間画像は、CD8及びKi67の発現を示す。下部画像は、CD68及びCD163の発現を示す。
【
図11】ベバシズマブ及びベバシズマブ+アテゾリズマブ治療に応答した、腫瘍におけるVEGF転写物発現の上方制御を示すグラフである。発現は、ハウスキーピング(HK)遺伝子発現に対して正規化する。各線は、個々の患者を表す。
【
図12】IHCによって評価される、腫瘍切片からのCD8(染色した濃灰色)のタンパク質発現を示す一連の代表的な画像である。治療前の試料を左側の列に示し、ベバシズマブ後の試料を中間の列に示し、ベバシズマブ+アテゾリズマブ後の試料を右側の列に示す。個々の患者1~6の切片を各行に配置する。各患者の応答もまた示す。
【
図13】IHCによって評価される、腫瘍切片からのCD8及びKi67のタンパク質発現を示す一連の代表的な画像である。治療前の試料を左側の列に示し、ベバシズマブ後の試料を中間の列に示し、ベバシズマブ+アテゾリズマブ後の試料を右側の列に示す。個々の患者1~6の切片を各行に配置する。
【
図14A】治療前の時点の各患者について、1平方ミリメートル(mm
2)の腫瘍面積当たりのCD8またはKi67及びCD8の両方を発現する細胞の数を示す一連のグラフである。
図14Aは、患者1及び2のデータを示す。
図14Bは、患者3及び4のデータを示す。
図14Cは、患者5のデータを示す。各患者の応答もまた示す。
【
図14B】治療前の時点の各患者について、1平方ミリメートル(mm
2)の腫瘍面積当たりのCD8またはKi67及びCD8の両方を発現する細胞の数を示す一連のグラフである。
図14Aは、患者1及び2のデータを示す。
図14Bは、患者3及び4のデータを示す。
図14Cは、患者5のデータを示す。各患者の応答もまた示す。
【
図14C】治療前の時点の各患者について、1平方ミリメートル(mm
2)の腫瘍面積当たりのCD8またはKi67及びCD8の両方を発現する細胞の数を示す一連のグラフである。
図14Aは、患者1及び2のデータを示す。
図14Bは、患者3及び4のデータを示す。
図14Cは、患者5のデータを示す。各患者の応答もまた示す。
【
図15A】ベバシズマブ後の時点の各患者について、1mm
2の腫瘍面積当たりのCD8またはKi67及びCD8の両方を発現する細胞の数を示す一連のグラフである。
図15Aは、患者1及び2のデータを示す。
図15Bは、患者3及び5のデータを示す。
図15Cは、患者6のデータを示す。各患者の応答もまた示す。
【
図15B】ベバシズマブ後の時点の各患者について、1mm
2の腫瘍面積当たりのCD8またはKi67及びCD8の両方を発現する細胞の数を示す一連のグラフである。
図15Aは、患者1及び2のデータを示す。
図15Bは、患者3及び5のデータを示す。
図15Cは、患者6のデータを示す。各患者の応答もまた示す。
【
図15C】ベバシズマブ後の時点の各患者について、1mm
2の腫瘍面積当たりのCD8またはKi67及びCD8の両方を発現する細胞の数を示す一連のグラフである。
図15Aは、患者1及び2のデータを示す。
図15Bは、患者3及び5のデータを示す。
図15Cは、患者6のデータを示す。各患者の応答もまた示す。
【
図16A】ベバシズマブ+アテゾリズマブ後の時点の各患者について、1mm
2の腫瘍面積当たりのCD8またはKi67及びCD8の両方を発現する細胞の数を示す一連のグラフである。
図16Aは、患者1及び2のデータを示す。
図16Bは、患者3及び4のデータを示す。
図16Cは、患者5及び6のデータを示す。各患者の応答もまた示す。
【
図16B】ベバシズマブ+アテゾリズマブ後の時点の各患者について、1mm
2の腫瘍面積当たりのCD8またはKi67及びCD8の両方を発現する細胞の数を示す一連のグラフである。
図16Aは、患者1及び2のデータを示す。
図16Bは、患者3及び4のデータを示す。
図16Cは、患者5及び6のデータを示す。各患者の応答もまた示す。
【
図16C】ベバシズマブ+アテゾリズマブ後の時点の各患者について、1mm
2の腫瘍面積当たりのCD8またはKi67及びCD8の両方を発現する細胞の数を示す一連のグラフである。
図16Aは、患者1及び2のデータを示す。
図16Bは、患者3及び4のデータを示す。
図16Cは、患者5及び6のデータを示す。各患者の応答もまた示す。
【
図17A】CX3CR1を発現する腫瘍試料中のCD8
+細胞のパーセンテージを示す一連のフローサイトメトリープロットである。治療前の試料を左側の列に示し、ベバシズマブ後の試料を中間の列に示し、ベバシズマブ+アテゾリズマブ後の試料を右側の列に示す。各行は、個々の患者の結果を示す。
図17Aは、患者2及び3のデータを示す。
図17Bは、患者5及び6のデータを示す。
【
図17B】CX3CR1を発現する腫瘍試料中のCD8
+細胞のパーセンテージを示す一連のフローサイトメトリープロットである。治療前の試料を左側の列に示し、ベバシズマブ後の試料を中間の列に示し、ベバシズマブ+アテゾリズマブ後の試料を右側の列に示す。各行は、個々の患者の結果を示す。
図17Aは、患者2及び3のデータを示す。
図17Bは、患者5及び6のデータを示す。
【
図18】フローサイトメトリー分析に基づく、全CD8
+細胞(左)のパーセンテージとしての、及び腫瘍抗原特異的(Dex-APC
+)T細胞(右)のパーセンテージとしての、CX3CR1の発現を示すグラフである。
【
図19】血液中の抗原特異的T細胞の代表的な発生頻度を示す一連のフローサイトメトリープロットである。採血を腫瘍生検時点と一致させた、2人のHLA-A2陽性患者からの代表的なデータを示す。
【
図20】示される治療時点での腫瘍におけるケモカイン発現(CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、及びCXCL10)の変化を示す一連のグラフである。発現は、ハウスキーピング(HK)遺伝子発現に対して正規化した。
【
図21A】患者6の腫瘍試料中の、治療前後の浸潤リンパ球(TIL)のTCRβ配列決定の結果を示す一連のグラフである。各群の最上位クローン(最大25)を示す。
図21A(下部パネル)、22B、及び22Cにおいて、趨勢となるTCRβクローン集団の有病率をより濃い線で示す。
【
図21B】患者6の腫瘍試料中の、治療前後の浸潤リンパ球(TIL)のTCRβ配列決定の結果を示す一連のグラフである。各群の最上位クローン(最大25)を示す。
図21A(下部パネル)、22B、及び22Cにおいて、趨勢となるTCRβクローン集団の有病率をより濃い線で示す。
【
図21C】患者6の腫瘍試料中の、治療前後の浸潤リンパ球(TIL)のTCRβ配列決定の結果を示す一連のグラフである。各群の最上位クローン(最大25)を示す。
図21A(下部パネル)、22B、及び22Cにおいて、趨勢となるTCRβクローン集団の有病率をより濃い線で示す。
【
図22】ベバシズマブ+アテゾリズマブ治療前後のTILの患者3のTCRβ配列決定の結果を示すグラフである。
【
図23A】患者2、3、及び6の、治療前のPBMC、ベバシズマブ+アテゾリズマブ後の末梢血単核球細胞(PBMC)、及びベバシズマブ+アテゾリズマブ後のTILのTCRβ配列決定の結果を示す一連のグラフである。
図23Aは、患者2及び3のデータを示し、
図23Bは、患者6のデータを示す。各群の最上位クローン(最大25)を示す。
【
図23B】患者2、3、及び6の、治療前のPBMC、ベバシズマブ+アテゾリズマブ後の末梢血単核球細胞(PBMC)、及びベバシズマブ+アテゾリズマブ後のTILのTCRβ配列決定の結果を示す一連のグラフである。
図23Aは、患者2及び3のデータを示し、
図23Bは、患者6のデータを示す。各群の最上位クローン(最大25)を示す。
【
図24】患者3及び6の、各治療時点での、PBMCプール対TILプール中のウイルス抗原特異的クローンの数を示すヒートマップである。
【発明を実施するための形態】
【0059】
I.序文
本発明は、がん、例えば、腎臓癌(例えば、腎細胞癌(RCC)、例えば、転移性RCC)を診断、監視、及び治療するための方法を提供する。本発明は、少なくとも部分的には、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及び/またはPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)を含む抗がん療法での治療が、バイオマーカー(例えば、免疫学的バイオマーカー、例えば、CD8+Teff細胞(例えば、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、及びPRF1)、Th1ケモカイン(例えば、CXCL9、CXLC10、CXCL11、及びCXCL13)、NK細胞(例えば、GZMB、KLRK1、及びSLAMF7)、抗原提示(例えば、MHC-I)、ならびに免疫輸送分子(例えば、CCL2、CCL5、CCR5、CXCL1、及びCCR7)、ならびに/または免疫細胞(例えば、CD8+Teff細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージ)の腫瘍浸潤に関連する遺伝子)の発現レベルの変化をもたらすという発見に基づく。本発明は、本発明のバイオマーカーの発現レベルを検出及び比較することによって、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)を含む併用抗がん療法での治療に対する、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者の応答を監視するための方法を提供する。本発明はまた、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)を投与することによって、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者を治療するための方法も提供する。
【0060】
II.定義
本明細書に記載される本発明の態様及び実施形態が、態様及び実施形態「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」を含むことが理解される。本明細書で使用される場合、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」、及び「the(その)」は、別段示されない限り、複数の参照対象を含む。
【0061】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、当業者にとって容易に既知であるそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
【0062】
本明細書で使用される場合、「個体」、「患者」、または「対象」という用語は、互換的に使用され、治療が所望される任意の単一の動物、より好ましくは哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、動物園の動物、雌ウシ、ブタ、ヒツジ、及び非ヒト霊長類などの非ヒト動物を含む)を指す。特定の実施形態において、本明細書の患者は、ヒトである。患者は、「がん患者」、すなわち、がんを患うか、またはがんを患うリスクにあるか、または1つ以上のがんの症状を患う者であり得る。
【0063】
「がん」及び「がん性」という用語は、典型的に未制御の細胞成長を特徴とする哺乳動物における生理学的病態を指すか、または説明する。この定義には、良性がん及び悪性がん、ならびに休止状態の腫瘍または微小転移が含まれる。がんの例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫(髄芽細胞腫及び網膜芽細胞腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫及び滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリノーマ、及び島細胞癌を含む)、中皮腫、神経鞘腫(聴神経腫を含む)、髄膜腫、腺癌、黒色腫、ならびに白血病またはリンパ系腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。そのようながんのより具体的な例としては、腎臓癌(例えば、腎細胞癌(RCC)、例えば、転移性RCC)、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮性扁平上皮細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌(gastric cancer)または胃癌(stomach cancer)(消化管癌を含む)、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、肝細胞癌、乳癌(転移性乳癌を含む)、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、メルケル細胞癌、菌状息肉症、精巣癌、食道癌、胆道の腫瘍、頭頸部癌、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽細胞性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非開裂細胞性NHL、巨大病変性NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、及びワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症を含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞性白血病、慢性骨髄芽球性白血病、及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)、及びメグス症候群に関連する異常な血管増殖が挙げられる。いくつかの実施形態において、がんは、腎臓癌である。特定の実施形態において、腎臓癌は、RCC(例えば、mRCC)である。
【0064】
「初期がん」または「初期腫瘍」とは、侵襲性もしくは転移性でないか、または0期、I期、もしくはII期がんとして分類されるがんを意味する。
【0065】
「進行性」がんは、局所侵襲または転移のいずれかによって発生部位または発生器官の外側に伝播しているものである。
【0066】
「難治性」がんは、化学療法剤などの抗腫瘍剤ががん患者に投与されているにも関わらず進行するものである。難治性がんの一例は、プラチナ製剤不応性であるものである。
【0067】
「再発」がんは、初期療法への応答後に、初期部位または遠位部位のいずれかにおいて再成長したものである。
【0068】
「細胞増殖性障害」及び「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。一実施形態において、細胞増殖性障害は、がんである。
【0069】
「腫瘍」という用語は、本明細書で使用される場合、悪性または良性に関わらず、全ての腫瘍性細胞の成長及び増殖、ならびに全ての前がん性及びがん性の細胞及び組織を指す。
【0070】
「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、及び「腫瘍」は、本明細書において言及される場合、相互排他的ではない。
【0071】
「障害」とは、哺乳動物を問題の障害に罹患させる病理学的病態を含む慢性及び急性障害または疾患を含むが、これらに限定されない、治療から利益を受ける任意の病態である。
【0072】
「検出」という用語は、直接的及び間接的検出を含む、任意の検出方法を含む。
【0073】
「試料」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、物理的、生化学的、化学的、及び/または生理学的特徴に基づいて特徴付け及び/または特定される、細胞及び/または他の分子実体を含有する、対象となる患者及び/または個体から得られるか、またはそれに由来する組成物を指す。例えば、「疾患試料」という語句及びその変化形は、特徴付けされる細胞及び/または分子実体を含有することが予期されるか、またはそれを含有することが既知である、対象となる患者から得られる任意の試料を指す。試料としては、組織試料、初代または培養細胞または細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、全血、血液由来の細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物、及び組織培養培地、組織抽出物(均質化組織など)、腫瘍組織、細胞抽出物、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
本明細書で使用される場合、「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」という表現は互換的に使用され、全てのそのような表記は子孫を含む。したがって、「形質転換体」及び「形質転換細胞」という単語は、初代対象細胞及び導入数に関わらずそれに由来する培養物を含む。全ての子孫は、故意または不慮の変異のために、DNA含有量が正確には同一でない可能性があることもまた理解される。最初に形質転換された細胞内でスクリーニングされたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異子孫が含まれる。異なる表記が意図される場合、それは、文脈から明らかとなるだろう。
【0075】
「バイオマーカー」及び「マーカー」という用語は、本明細書において、DNA、RNA、タンパク質、炭水化物、糖脂質、または細胞系分子マーカーを指すために互換的に使用され、患者の試料中のその発現または存在は、標準的な方法(または本明細書に開示される方法)によって検出することができる。そのようなバイオマーカーとしては、表2に明記される遺伝子及びタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、マーカーは、細胞(例えば、CD8+T細胞またはCD68+/CD163+マクロファージ)であり得る。そのようなバイオマーカーの発現は、VEGFアンタゴニスト及び/またはPD-L1軸結合アンタゴニストに対して感受性または応答性である患者から得られる試料中で、基準レベル(例えば、患者(例えば、がんを有し、VEGFアンタゴニスト及び/もしくはPD-L1軸結合アンタゴニストに対する応答性について試験されている患者)群/集団の試料中のバイオマーカーの発現レベル中央値、患者(例えば、がんを有し、VEGFアンタゴニスト及び/もしくはPD-L1軸結合アンタゴニストに対して応答していないと特定された患者)群/集団の試料中のバイオマーカーの発現レベル中央値、事前時間に個体から以前に得られた試料中のレベル、または原発腫瘍の設定においてVEGFアンタゴニスト及び/もしくはPD-L1軸結合アンタゴニストでの事前治療を受け、かつ現在転移を経験している可能性がある患者の試料中のレベルを含む)よりも高いか、または低いことが決定され得る。
【0076】
本明細書で使用される場合、「CD8A」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CD8Aを指す。この用語は、「完全長」の非プロセス型CD8A及び細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のCD8Aを包含する。この用語はまた、天然に存在するCD8Aのバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。一例示的なヒトCD8Aの核酸配列を、配列番号34に明記する。ヒトCD8Aによってコードされる一例示的なタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号35に示す。
【0077】
本明細書で使用される場合、「CD8B」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CD8Bを指す。この用語は、「完全長」の非プロセス型CD8B及び細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のCD8Bを包含する。この用語はまた、天然に存在するCD8Bのバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。一例示的なヒトCD8Bの核酸配列を、配列番号36に明記する。ヒトCD8Bによってコードされる一例示的なタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号37に示す。
【0078】
本明細書で使用される場合、「EOMES」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然EOMES(エオメソデルミン)を指す。この用語は、「完全長」の非プロセス型EOMES及び細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のEOMESを包含する。この用語はまた、天然に存在するEOMESのバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。一例示的なヒトEOMESの核酸配列を、配列番号38に明記する。ヒトEOMESによってコードされる一例示的なタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号39に示す。
【0079】
本明細書で使用される場合、「GZMA」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然GZMA(グランザイムA)を指す。この用語は、「完全長」の非プロセス型GZMA及び細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のGZMAを包含する。この用語はまた、天然に存在するGZMAのバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。一例示的なヒトGZMAの核酸配列を、配列番号40に明記する。ヒトGZMAによってコードされる一例示的なタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号41に示す。
【0080】
本明細書で使用される場合、「GZMB」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然GZMB(グランザイムB)を指す。この用語は、「完全長」の非プロセス型GZMB及び細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のGZMBを包含する。この用語はまた、天然に存在するGZMBのバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。一例示的なヒトGZMBの核酸配列を、配列番号42に明記する。ヒトGZMBによってコードされる一例示的なタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号43に示す。
【0081】
本明細書で使用される場合、「IFNG」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然IFNG(インターフェロン、ガンマ)を指す。この用語は、「完全長」の非プロセス型IFNG及び細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のIFNGを包含する。この用語はまた、天然に存在するIFNGのバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。一例示的なヒトIFNGの核酸配列を、配列番号44に明記する。ヒトIFNGによってコードされる一例示的なタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号45に示す。
【0082】
本明細書で使用される場合、「PRF1」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然PRF1(パーフォリン1、ポア形成タンパク質としても知られる)を指す。この用語は、「完全長」の非プロセス型PRF1及び細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のPRF1を包含する。この用語はまた、天然に存在するPRF1のバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。一例示的なヒトPRF1の核酸配列を、配列番号46に明記する。ヒトPRF1によってコードされる一例示的なタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号47に示す。
【0083】
本明細書で使用される場合、「CXCL9」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CXCL9(ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド9)を指す。この用語は、「完全長」の非プロセス型CXCL9及び細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のCXCL9を包含する。この用語はまた、天然に存在するCXCL9のバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。一例示的なヒトCXCL9の核酸配列を、配列番号48に明記する。ヒトCXCL9によってコードされる一例示的なタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号49に示す。
【0084】
本明細書で使用される場合、「CXCL10」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CXCL10(ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド10)を指す。この用語は、「完全長」の非プロセス型CXCL10及び細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のCXCL10を包含する。この用語はまた、天然に存在するCXCL10のバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。一例示的なヒトCXCL10の核酸配列を、配列番号50に明記する。ヒトCXCL10によってコードされる一例示的なタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号51に示す。
【0085】
本明細書で使用される場合、「CXCL11」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CXCL11(ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド11)を指す。この用語は、「完全長」の非プロセス型CXCL11及び細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のCXCL11を包含する。この用語はまた、天然に存在するCXCL11のバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。一例示的なヒトCXCL11の核酸配列を、配列番号52に明記する。ヒトCXCL11によってコードされる一例示的なタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号53に示す。
【0086】
本明細書で使用される場合、「CXCL13」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CXCL13(ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド11)を指す。この用語は、「完全長」の非プロセス型CXCL13及び細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のCXCL13を包含する。この用語はまた、天然に存在するCXCL13のバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。一例示的なヒトCXCL13の核酸配列を、配列番号54に明記する。ヒトCXCL13によってコードされる一例示的なタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号55に示す。
【0087】
本明細書で使用される場合、「KLRK1」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然KLRK1(キラー細胞レクチン様受容体サブファミリーK(カッパ)、メンバー1)を指す。この用語は、「完全長」の非プロセス型KLRK1及び細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のKLRK1を包含する。この用語はまた、天然に存在するKLRK1のバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。一例示的なヒトKLRK1の核酸配列を、配列番号56に明記する。ヒトKLRK1によってコードされる一例示的なタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号57に示す。
【0088】
本明細書で使用される場合、「SLAMF7」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然SLAMF7(SLAMファミリーメンバー7)を指す。この用語は、「完全長」の非プロセス型SLAMF7及び細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のSLAMF7を包含する。この用語はまた、天然に存在するSLAMF7のバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。一例示的なヒトSLAMF7の核酸配列を、配列番号58に明記する。ヒトSLAMF7によってコードされる一例示的なタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号59に示す。
【0089】
本明細書で使用される場合、「CX3CR1」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CX3CR1(CXC3ケモカイン受容体1、当該技術分野においてフラクタルカイン受容体またはG-タンパク質共役型受容体13(GPR13)としても知られる)を指す。この用語は、「完全長」の非プロセス型CX3CR1及び細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のCX3CR1を包含する。この用語はまた、天然に存在するCX3CR1のバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。一例示的なヒトCX3CR1の核酸配列を、配列番号70に明記する。ヒトCX3CR1によってコードされる一例示的なタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号71に示す。
【0090】
本明細書で使用される場合、「CCL2」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CCL2(ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド2)を指す。この用語は、「完全長」の非プロセス型CCL2及び細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のCCL2を包含する。この用語はまた、天然に存在するCCL2のバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。一例示的なヒトCCL2の核酸配列を、配列番号60に明記する。ヒトCCL2によってコードされる一例示的なタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号61に示す。
【0091】
本明細書で使用される場合、「CCL5」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CCL5(ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5)を指す。この用語は、「完全長」の非プロセス型CCL5及び細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のCCL5を包含する。この用語はまた、天然に存在するCCL5のバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。一例示的なヒトCCL5の核酸配列を、配列番号62に明記する。ヒトCCL5によってコードされる一例示的なタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号63に示す。
【0092】
本明細書で使用される場合、「CCR5」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CCR5(ケモカイン(C-Cモチーフ)受容体5)を指す。この用語は、「完全長」の非プロセス型CCR5及び細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のCCR5を包含する。この用語はまた、天然に存在するCCR5のバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。一例示的なヒトCCR5の核酸配列を、配列番号64に明記する。ヒトCCR5によってコードされる一例示的なタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号65に示す。
【0093】
本明細書で使用される場合、「CX3CL1」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CX3CL1(ケモカイン(C-X3-Cモチーフ)リガンド1、当該技術分野においてフラクタルカインとして知られる)を指す。この用語は、「完全長」の非プロセス型CX3CL1及び細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のCX3CL1を包含する。この用語はまた、天然に存在するCX3CL1のバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。一例示的なヒトCX3CL1の核酸配列を、配列番号66に明記する。ヒトCX3CL1によってコードされる一例示的なタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号67に示す。
【0094】
本明細書で使用される場合、「CCR7」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然CCR7(ケモカイン(C-Cモチーフ)受容体7)を指す。この用語は、「完全長」の非プロセス型CCR7及び細胞内のプロセシングから生じる任意の形態のCCR7を包含する。この用語はまた、天然に存在するCCR7のバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。一例示的なヒトCCR7の核酸配列を、配列番号68に明記する。ヒトCCR7によってコードされる一例示的なタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号69に示す。
【0095】
本明細書で使用される場合、「MHC-I」という用語は、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源に由来する任意の天然MHC-I(主要組織適合複合体-I)を指す。ヒトMHC-Iはまた、ヒト白血球抗原I(HLA-I)とも称される。MHC-IまたはHLA-Iの発現レベルは、任意のHLA-I遺伝子または偽遺伝子(例えば、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、HLA-K、もしくはHLA-L)、あるいはこれらのハプロタイプの発現レベルを決定することによって評価することができる。発現レベルは、遺伝子または偽遺伝子の全部または一部(例えば、MHC-Iアルファ鎖もしくはHLA-I組織適合抗原アルファ鎖)の検出によって評価することができる。
【0096】
「発現のレベル」または「発現レベル」という用語は一般に互換的に使用され、一般に生物学的試料中のバイオマーカーの量を指す。「発現」は一般に、情報(例えば、遺伝子コード情報及び/またはエピジェネティック情報)が、細胞内に存在し、そこで機能する構造に変換されるプロセスを指す。したがって、本明細書で使用される場合、「発現」は、ポリヌクレオチドへの転写、ポリペプチドへの翻訳、または更にはポリヌクレオチド及び/もしくはポリペプチド修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)を指し得る。転写されたポリヌクレオチド、翻訳されたポリペプチド、またはポリヌクレオチド及び/もしくはポリペプチド修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)の断片も、それらが選択的スプライシングによって生成された転写物もしくは分解された転写物に起源を持つか、または例えば、タンパク質分解によるポリペプチドの翻訳後プロセシングに起源を持つかどうかに関わらず、発現されたものと見なされるべきである。「発現遺伝子」は、mRNAとしてポリヌクレオチドに転写され、その後、ポリペプチドに翻訳される遺伝子を含み、RNAに転写されるが、ポリペプチドに翻訳されない遺伝子(例えば、転移RNA及びリボソームRNA)も含む。
【0097】
「増加した発現」、「増加した発現レベル」、「増加したレベル」、「上昇した発現」、「上昇した発現レベル」、または「上昇したレベル」は、疾患もしくは障害(例えば、がん)を患っていない個体(複数可)、内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)、または療法(例えば、VEGFアンタゴニスト及び/もしくはPD-L1アンタゴニストを含む抗がん療法)の投与前に得られる試料中のバイオマーカーのレベルなどの対照との比較での、個体におけるバイオマーカーの発現の増加またはそのレベルの増加を指す。
【0098】
「減少した発現」、「減少した発現レベル」、「減少したレベル」、「低下した発現」、「低下した発現レベル」、または「低下したレベル」は、疾患もしくは障害(例えば、がん)を患っていない個体(複数可)、内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)、または療法(例えば、VEGFアンタゴニスト及び/もしくはPD-L1アンタゴニストを含む抗がん療法)の投与前に得られる試料中のバイオマーカーのレベルなどの対照との比較での、個体におけるバイオマーカーの減少発現またはそのレベルの減少を指す。いくつかの実施形態において、低下した発現は、発現がほとんどまたは全くないことである)。
【0099】
対象となるタンパク質を「発現する」試料または細胞は、タンパク質をコードするmRNAまたはタンパク質(その断片を含む)が、試料または細胞内に存在すると決定されるものである。
【0100】
個体に対する臨床的利益の増加に関連するバイオマーカーの「量」または「レベル」は、生物学的試料中で検出可能なレベルである。これらは、当業者にとって既知であり、かつ本明細書にも開示される方法によって測定され得る。評価されるバイオマーカーの発現レベルまたは量を使用して、治療に対する応答を決定することができる。
【0101】
「に基づく」という語句は、本明細書で使用される場合、1つ以上のバイオマーカーについての情報が、例えば、治療決定、添付文書に提供される情報、またはマーケティング/宣伝指針などを伝えるために使用されることを意味する。
【0102】
「ハウスキーピングバイオマーカー」という用語は、全ての細胞型において典型的に同様に存在するバイオマーカーまたはバイオマーカーの群(例えば、ポリヌクレオチド及び/またはポリペプチド)を指す。いくつかの実施形態において、ハウスキーピングバイオマーカーは、「ハウスキーピング遺伝子」である。「ハウスキーピング遺伝子」は、本明細書において、その活性が細胞機能の維持に必須であるタンパク質をコードし、かつ全ての細胞型において典型的には同様に存在する遺伝子または遺伝子の群を指す。
【0103】
本明細書で使用される場合、「増幅」は一般に、所望される配列の複数のコピーを生成するプロセスを指す。「複数のコピー」は、少なくとも2つのコピーを意味する。「コピー」は、鋳型配列に対する完全な配列相補性または同一性を必ずしも意味しない。例えば、コピーは、デオキシイノシンなどのヌクレオチド類似体、意図的な配列改変(鋳型にハイブリダイズ可能であるが相補的ではない配列を含むプライマーを通して導入される配列改変など)、及び/または増幅中に生じる配列誤差を含み得る。
【0104】
「多重PCR」という用語は、単一反応で2つ以上のDNA配列を増幅する目的で、2つ以上のプライマーセットを使用して単一源(例えば、個体)から得られる核酸上で実行される単一PCR反応を指す。
【0105】
本明細書で使用される場合、「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」技術は一般に、核酸、RNA、及び/またはDNAの微量の特定の小片が、例えば、米国特許第4,683,195号に記載されるように増幅される手順を指す。一般に、オリゴヌクレオチドプライマーが設計され得るように、対象となる領域またはそれを越える領域の末端から得られる配列情報が入手可能である必要があり、これらのプライマーは、増幅される鋳型の逆鎖と配列が同一または同様となる。これら2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅される材料の末端と一致し得る。PCRを使用して、特定のRNA配列、全ゲノムDNAに由来する特定のDNA配列、及び全細胞RNAから転写されたcDNA、バクテリオファージ配列、またはプラスミド配列などを増幅することができる。一般には、Mullis et al.,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263(1987)and Erlich,ed.,PCR Technology,(Stockton Press,NY,1989)を参照されたい。本明細書で使用される場合、PCRは、プライマーとしての既知の核酸(DNAまたはRNA)の使用を含む、核酸試験試料を増幅するための核酸ポリメラーゼ反応法の唯一の例ではなく一例であると見なされ、核酸の特定の小片を増幅もしくは生成するために、または特定の核酸に相補的である核酸の特定の小片を増幅もしくは生成するために、核酸ポリメラーゼを利用する。
【0106】
「定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応」または「qRT-PCR」は、PCR産物の量がPCR反応の各ステップで測定されるPCRの一形態を指す。この技術は、例えば、Cronin et al.,Am.J.Pathol.164(1):35-42(2004)及びMa et al.,Cancer Cell5:607-616(2004)を含む、様々な刊行物に説明されている。
【0107】
「マイクロアレイ」という用語は、基質上のハイブリダイズ可能なアレイ要素、好ましくはポリヌクレオチドプローブの規則配置を指す。
【0108】
「診断」という用語は、本明細書において、分子的または病理学的状態、疾患、または病態(例えば、がん)の特定または分類を指すために使用される。例えば、「診断」は、特定の種類のがんの特定を指し得る。「診断」はまた、例えば、病理組織的基準によるか、または分子特徴によるがんの特定のサブタイプの分類も指し得る(例えば、バイオマーカーのうちの1つまたはそれらの組み合わせの発現を特徴とするサブタイプ(例えば、特定の遺伝子、または該遺伝子によってコードされるタンパク質))。
【0109】
「腫瘍浸潤免疫細胞」は、本明細書で使用される場合、腫瘍またはその試料中に存在する任意の免疫細胞を指す。腫瘍浸潤免疫細胞としては、腫瘍内免疫細胞、腫瘍周囲免疫細胞、他の腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞)、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。そのような腫瘍浸潤免疫細胞は、例えば、Tリンパ球(CD8+Tリンパ球及び/もしくはCD4+Tリンパ球など)、Bリンパ球、または顆粒球(例えば、好中球、好酸球、及び好塩基球)、単球、マクロファージ(例えば、CD68+/CD163+マクロファージ)、樹状細胞(例えば、指状嵌入樹状細胞)、組織球、ならびにナチュラルキラー(NK)細胞を含む他の骨髄系細胞であり得る。
【0110】
「腫瘍細胞」は、本明細書で使用される場合、腫瘍またはその試料中に存在する任意の腫瘍細胞を指す。腫瘍細胞は、当該技術分野において既知である、かつ/または本明細書に記載される方法を使用して、腫瘍試料中に存在し得る他の細胞、例えば、間質細胞及び腫瘍浸潤免疫細胞から区別され得る。
【0111】
「基準試料」、「基準細胞」、「基準組織」、「対照試料」、「対照細胞」、または「対照組織」は、本明細書で使用される場合、比較目的で使用される試料、細胞、組織、標準物、またはレベルを指す。一実施形態において、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、同じ患者または個体の身体の健常かつ/または非疾患部分(例えば、組織もしくは細胞)から得られる。例えば、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、疾患細胞または組織に隣接する健常かつ/または非疾患細胞または組織(例えば、腫瘍に隣接する細胞または組織)であり得る。別の実施形態において、基準試料は、同じ患者または個体の身体の未治療の組織及び/または細胞から得られる。更に別の実施形態において、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、患者または個体ではない個体の身体の健常かつ/または非疾患部分(例えば、組織または細胞)から得られる。更に別の実施形態において、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、患者または個体ではない個体の身体の未治療の組織及び/または細胞から得られる。別の実施形態において、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、療法(例えば、VEGFアンタゴニスト及び/またはPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法)の投与前に患者から得られる。
【0112】
「相関する」または「相関すること」は、任意の方法で、第1の分析またはプロトコルの性能及び/または結果を第2の分析またはプロトコルの性能及び/または結果と比較することを意味する。例えば、第2のプロトコルを実行する上で第1の分析もしくはプロトコルの結果を使用しても、かつ/または第1の分析もしくはプロトコルの結果を使用して、第2の分析もしくはプロトコルが実行されるべきかを決定してもよい。ポリペプチド分析またはプロトコルの実施形態に関して、ポリペプチド発現分析またはプロトコルの結果を使用して、特定の治療レジメンが実行されるべきかを決定してもよい。ポリヌクレオチド分析またはプロトコルの実施形態に関して、ポリヌクレオチド発現分析またはプロトコルの結果を使用して、特定の治療レジメンが実行されるべきかを決定してもよい。
【0113】
本明細書で使用される場合、「治療」(及び「治療する」または「治療すること」などのその文法的変化形)は、治療されている個体の自然経過を改変する試みの中での臨床的介入を指し、予防のために、または臨床病理過程中のいずれかで実行され得る。治療の望ましい効果としては、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的病理学的帰結の縮小、転移の予防、疾患進行速度の減少、疾患状態の寛解または緩和、及び緩解または予後の改善が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、抗体(例えば、抗VEGF抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、またはこれらの組み合わせ)を使用して、疾患の発達を遅延させるか、または疾患もしくは障害の進行を減速させる。
【0114】
本明細書で使用される場合、「投与すること」は、化合物(例えば、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体)及び/もしくはPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体))または組成物(例えば、薬学的組成物、例えば、VEGFアンタゴニスト及び/もしくはPD-L1軸結合アンタゴニスト含む薬学的組成物)の投薬量を患者に与える方法を意味する。本明細書に記載される方法において利用される組成物は、例えば、筋肉内、静脈内、皮内、経皮的、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、くも膜下腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、局所的、腫瘍内、腹膜内、皮下、結膜下、小胞内、経粘膜、心膜内、臍帯内、眼球内、眼窩内、硝子体内(例えば、硝子体内注射によって)、点眼によって、経口的、局所的、経皮的、吸入によって、注射によって、埋め込みによって、注入によって、継続注入によって、標的細胞の直接的な局所灌流浴によって、カテーテルによって、洗浄によって、クリームで、または脂質組成物で投与されてもよい。本明細書に記載される方法で利用される組成物はまた、全身または局所投与されてもよい。投与方法は、様々な要因(例えば、投与されている化合物または組成物、及び治療されている病態、疾患、または障害の重症度)に応じて異なり得る。
【0115】
「治療有効量」は、哺乳動物において疾患または障害を治療または予防するための治療剤の量を指す。がんの場合、治療有効量の治療剤は、がん細胞の数を低下、原発腫瘍サイズを低下、末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍成長をある程度阻害、かつ/または障害に関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減し得る。薬物が、既存のがん細胞の成長を予防し得る、かつ/またはそれらを殺滅し得る限り、この薬物は、細胞増殖抑制性かつ/または細胞毒性であり得る。がん治療に関して、インビボでの有効性は、例えば、生存期間、疾患進行までの期間(TTP)、奏効率(例えば、完全奏効(CR)及び部分奏効(PR))、奏効期間、ならびに/または生活の質を評価することにより測定され得る。
【0116】
「同時に」という用語は、本明細書において、投与の時間が少なくとも部分的に重複している、2つ以上の治療剤の投与を指すために使用される。したがって、同時投与は、1つ以上の薬剤(複数可)の投与が、1つ以上の他の薬剤(複数可)の投与の中断後に継続するときの投薬レジメンを含む。例えば、いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストは、同時に投与され得る。
【0117】
「低下させる」または「阻害する」は、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。低下または阻害は、治療されている障害の症状、転移の存在またはサイズ、または原発腫瘍のサイズに言及し得る。
【0118】
本明細書における治療剤の「固定」または「一定」用量は、患者の体重(WT)または体表面積(BSA)に関わらずヒト患者に投与される用量を指す。したがって、この固定用量または一定用量は、mg/kg用量またはmg/m2用量としてではなく、むしろ治療剤の絶対量として提供される。
【0119】
本明細書における「負荷」用量は一般に、患者に投与される治療剤の初期用量を含み、その後その1つ以上の維持用量(複数可)が続く。一般に、単回負荷用量が投与されるが、本明細書において複数回負荷用量が企図される。通常、維持用量(複数可)で達成され得るよりも早く治療剤の所望される安定状態濃度を達成するために、投与される負荷用量(複数可)の量は、投与される維持用量(複数可)の量を超える、かつ/または負荷用量(複数可)は、維持用量(複数可)よりも頻繁に投与される。
【0120】
本明細書における「維持」用量または「延長」用量は、治療期間にわたって患者に投与される治療剤の1つ以上の用量を指す。通常、維持用量は、およそ毎週、およそ2週間毎、およそ3週間毎、またはおよそ4週間毎などの治療間隔で投与される。
【0121】
本発明の文脈における「に対する応答性」という語句は、がん(例えば、腎臓癌、例えば、RCC、例えば、転移性RCC)を患うか、それを患うことが疑われるか、またはそれを患う傾向にある患者が、療法、例えば、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及び/またはPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)を含む抗がん療法に対する応答を示すことを示す。当業者であれば、容易に、本発明の方法に従うVEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及び/またはPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)で治療される人間が、応答を示すかを決定する立場にあるだろう。例えば、応答は、腫瘍成長の縮小及び/もしくは停止、腫瘍サイズの低下、ならびに/またはがんの1つ以上の症状の寛解などの、がんによる苦痛の減少によって反映され得る。好ましくは、応答は、がんの転移性変換の指標またはがんの指標の減少または縮小、例えば、転移の形成の予防または転移の数もしくはサイズの低下によって反映され得る。
【0122】
「抗がん療法」という用語は、がんを治療する上で有用な療法を指す。抗がん治療剤の例としては、細胞毒性剤、化学療法剤、成長阻害剤、放射線療法において使用される薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、及びがんを治療するための他の薬剤、例えば、以下の標的、つまり、PDGFR-β、BlγS、APRIL、BCMA受容体(複数可)、TRAIL/Apo2、及び他の生理活性及び有機化学薬剤などのうちの1つ以上に結合する、抗CD20抗体、血小板由来成長因子阻害剤(例えば、GLEEVEC(商標)(メシル酸イマチニブ))、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、アンタゴニスト(例えば、中和抗体)が挙げられるが、これらに限定される。これらの組み合わせもまた、本発明に含まれる。
【0123】
「抗血管新生剤」または「血管新生阻害剤」は、血管新生、脈管形成、または望まれない血管透過性を、直接的または間接的のいずれかで阻害する、低分子物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、単離されたタンパク質、組み換えタンパク質、抗体、またはこれらのコンジュゲートもしくは融合タンパク質を指す。抗血管新生剤は、血管新生因子またはその受容体に結合し、その血管新生活性を遮断する薬剤を含むことを理解されたい。例えば、抗血管新生剤は、上記に定義される血管新生剤に対する抗体または他のアンタゴニスト、例えば、VEGF-Aに対する抗体またはVEGF-A受容体(例えば、KDR受容体またはFlt-1受容体)、抗PDGFR阻害剤(GLEEVEC(商標)(メシル酸イマチニブ)など)である。抗血管新生剤はまた、天然血管新生阻害剤、例えば、アンジオスタチン、エンドスタチンなども含む。例えば、Klagsbrun and D’Amore,Annu.Rev.Physiol.,53:217-39(1991)、Streit and Detmar,Oncogene,22:3172-3179(2003)(例えば、悪性黒色腫における抗血管新生療法を列挙する表3)、Ferrara&Alitalo,Nature Medicine5(12):1359-1364(1999)、Tonini et al.,Oncogene,22:6549-6556(2003)、及びSato Int.J.Clin.Oncol.,8:200-206(2003)を参照されたい。
【0124】
「細胞毒性剤」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞の機能を阻害もしくは防止する物質、及び/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えばAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、例えば、メトトレキサート、アドリアミシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、ミトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他の挿入剤、酵素及びその断片(核酸分解酵素など)、抗生物質、及び細菌、真菌、植物、または動物起源の小分子毒素または酵素的に活性な毒素などの毒素(それらの断片及び/またはバリアントを含む)、ならびに以下に開示される様々な抗腫瘍剤または抗がん剤を含むことが意図される。殺腫瘍剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
【0125】
「化学療法剤」は、がんの治療に有用な化学化合物を含む。化学療法剤の例としては、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millennium Pharm.)、ジスルフィラム、没食子酸エピガロカテキン、サリノスポラミドA、カーフィルゾミブ、17-AAG(ゲルダナマイシン)、ラディシコール、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDH-A)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、スニチブ(SUTENT(登録商標)、Pfizer/Sugen)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、フィナスネート(VATALANIB(登録商標)、Novartis)、オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、Sanofi)、5-FU(5-フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標)、Pfizer)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファミブ(SCH66336)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、Bayer Labs)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、AG1478、アルキル化剤(チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミドなど)、アルキルスルホネート(ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなど)、アジリジン(ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパなど)、エチレンイミン及びメチラメラミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロメラミンを含む)、アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン)、カンプトテシン(トポテカン及びイリノテカンを含む)、ブリオスタチン、カリスタチン、CC-1065(そのアゾゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成類似体を含む)、クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8)、副腎皮質ステロイド(プレドニゾン及びプレドニゾロンを含む)、酢酸シプロテロン、5α-還元酵素(フィナステリド及びデュタステリドを含む)、ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、バルプロ酸、モセチノスタットドラスタチン、アルデスロイキン、タルクデュオカルマイシン(合成類似体KW-2189及びCB1-TM1を含む)、エリュテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチイン、スポンギスタチン、ナイトロジェンマスタード(クロラムブシル、クロマファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなど)、ニトロソ尿素(クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムヌスチンなど)、エンジイン抗生物質などの抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンω1I(Angew Chem.Intl.Ed.Engl.33:183-186,1994)、ダイネミシン(ダイネミシンAを含む)、ビスホスホネート(クロドロネートなど)、エスペラミシン、ならびにネオカルジノスタチン発色団及び関連する色素タンパク質エンジイン発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)(ドキソルビシン)、モルフォリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン(マイトマイシンCなど)、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン、抗代謝剤(メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)など)、葉酸類似体(デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなど)、プリン類似体(フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなど)、ピリミジン類似体(アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなど)、アンドロゲン(カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなど)、抗副腎剤(アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなど)、葉酸補充剤(フロリン酸など)、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン、ベストラブシル、ビサントレン、エダトラキセート、デフォファミン、デメコルチン、ジアジクオン、エルフォミチン、酢酸エリプチニウム、エポチロン、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、レンチナン、ロニダイニン、メイタンシノイド(メイタンシン及びアンサマイトシンなど)、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダムノール、ニトラエリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ロソキサントロン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.)、ラゾキサン、リゾキシン、シゾフラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジクオン、2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン、トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA、及びアングイジン)、ウレタン、ビンデシン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン、アラビノシド(「Ara-C」)、シクロホスファミド、チオテパ、タキソイド(例えば、TAXOL(パクリタキセル、Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、ABRAXANE(登録商標)(クレモフォールを含まない)、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Ill.)、及びTAXOTERE(登録商標)(ドセタキセル、ドキセタキセル、Sanofi-Aventis))、クロランムブシル、GEMZAR(登録商標)(ゲムシタビン)、6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート、白金類似体(シスプラチン及びカルボプラチンなど)、ビンブラスチン、エトポシド(VP-16)、イホスファミド、ミトキサントロン、ビンクリスチン、NAVELBINE(登録商標)(ビノレルビン)、ノバントロン、テニポシド、エダトレキサート、ダウノマイシン、アミノプテリン、カペシタビン(XELODA(登録商標))、イバンドロネート、CPT-11、トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000、ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、レチノイド(レチノイン酸など)、ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、及び誘導体が挙げられる。
【0126】
化学療法剤としてはまた、抗エストロゲン剤及び選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)などの、腫瘍に対してホルモン作用を制御または阻害するように作用する抗ホルモン剤(例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)、クエン酸タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン(iodoxyfene)、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びFARESTON(登録商標)(クエン酸トレミファインを含む)、副腎におけるエストロゲン産生を制御するアロマターゼ酵素を阻害する、アロマターゼ阻害剤(例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、AROMASIN(登録商標)(エキセメスタン、Pfizer)、フォルメスタニー、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボロゾール)、FEMARA(登録商標)(レトロゾール、Novartis)、及びARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾール、AstraZeneca)など)、抗アンドロゲン剤(フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリンなど)、ブセレリン、トリプテレリン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ジエチルスチルベストロール、プレマリン、フルオキシメステロン、全てのトランスレチオニン酸、フェンレチニド、及びトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体)、タンパク質キナーゼ阻害剤、脂質キナーゼ阻害剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関係するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの(PKC-アルファ、Ralf、及びH-Rasなど)、リボザイム(VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標))及びHER2発現阻害剤など)、遺伝子療法ワクチンなどのワクチン(例えば、ALLOVECTIN(登録商標)、LEUVECTIN(登録商標)、及びVAXID(登録商標))、PROLEUKIN(登録商標)、rIL-2、トポイソメラーゼ1阻害剤(LURTOTECAN(登録商標)など)、ABARELIX(登録商標)rmRH、ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、及び誘導体も挙げられる。
【0127】
化学療法剤としてはまた、抗体(アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech)など)、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone)、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)、及び抗体薬物コンジュゲート、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標)、Wyeth)も挙げられる。本発明の化合物と組み合わせて薬剤としての治療潜在性を有する追加のヒト化モノクローナル抗体としては、アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピネオズマブ、ビバツズマブメルタンシン、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ、セルトリズマブペゴール、シドフシツズマブ、シドツズマブ、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ、ナタリズマブ、ニモツズマブ、ノロビズマブ、ヌマビズマブ、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ、ペクフシツズマブ、ペクツズマブ、パキセリズマブ、ラリビズマブ、ラニビズマブ、レスリビズマブ、レスリズマブ、レシビズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、シブロツズマブ、シプリズマブ、ソンツズマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、テフィバズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツクシツズマブ、ウマビズマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ビジリズマブ、及びインターロイキン-12p40タンパク質を認識するように遺伝子修飾された排他的にヒト配列の組み換え完全長IgG1λ抗体である、抗インターロイキン-12(ABT-874/J695、Wyeth Research and Abbott Laboratories)が挙げられる。
【0128】
化学療法剤としてはまた、EGFRに結合するか、または別様にそれと直接相互作用し、そのシグナル伝達活性を防止または低下させる化合物を指す「EGFR阻害剤」も挙げられ、これは、代替的には「EGFRアンタゴニスト」とも称される。そのような薬剤の例としては、EGFRに結合する抗体及び小分子が挙げられる。EGFRに結合する抗体の例としては、MAb579(ATCC CRL HB8506)、MAb455(ATCC CRL HB8507)、MAb225(ATCC CRL8508)、MAb528(ATCC CRL8509)(Mendelsohnらの米国特許第4,943,533号を参照されたい)、ならびにこれらのバリアント(キメラ化225(C225またはセツキシマブ、ERBUTIX(登録商標))及び再成形ヒト225(H225)(Imclone Systems Inc.のWO96/40210を参照されたい))、IMC-11F8完全ヒトEGFR標的抗体(Imclone)、II型変異体EGFRに結合する抗体(米国特許第5,212,290号)、米国特許第5,891,996号に記載されるEGFRに結合するヒト化及びキメラ抗体、ならびにEGFRに結合するヒト抗体(ABX-EGFまたはパニツムマブなど(Abgenix/AmgenのWO98/50433を参照されたい))、EMD55900(Stragliotto et al.Eur.J.Cancer32A:636-640(1996))、EGFR結合についてEGF及びTGF-アルファの両方と競合するEGFRに対して指向されたヒト化EGFR抗体であるEMD7200(マツズマブ)(EMD/Merck)、ヒトEGFR抗体HuMax-EGFR(GenMab)、E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3、及びE7.6.3として知られ、US6,235,883に記載される完全ヒト抗体、MDX-447(Medarex Inc)、ならびにmAb806またはヒト化mAb806(Johns et al.,J.Biol.Chem.279(29):30375-30384(2004))が挙げられる。抗EGFR抗体は、細胞毒性剤にコンジュゲートされ、故に免疫コンジュゲートを生成することができる(例えば、EP659439A2,Merck Patent GmbHを参照されたい)。EGFRアンタゴニストとしては、米国特許第5,616,582号、同第5,457,105号、同第5,475,001号、同第5,654,307号、同第5,679,683号、同第6,084,095号、同第6,265,410号、同第6,455,534号、同第6,521,620号、同第6,596,726号、同第6,713,484号、同第5,770,599号、同第6,140,332号、同第5,866,572号、同第6,399,602号、同第6,344,459号、同第6,602,863号、同第6,391,874号、同第6,344,455号、同第5,760,041号、同第6,002,008号、及び同第5,747,498号、ならびに以下のPCT公報、WO98/14451、WO98/50038、WO99/09016、及びWO99/24037に記載される化合物などの小分子が挙げられる。特定の小分子EGFRアンタゴニストとしては、OSI-774(CP-358774、エルロチニブ、TARCEVA(登録商標)Genentech/OSI Pharmaceuticals)、PD183805(CI1033、2-プロペンアミド、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]-6-キナゾリニル]-、ジヒドロクロリド、Pfizer Inc.)、ZD1839、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))4-(3’-クロロ-4’-フルオロアニリノ)-7-メトキシ-6-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン、AstraZeneca)、ZM105180((6-アミノ-4-(3-メチルフェニル-アミノ)-キナゾリン、Zeneca)、BIBX-1382(N8-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-N2-(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、Boehringer Ingelheim)、PKI-166((R)-4-[4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-yl]-フェノール)、(R)-6-(4-ヒドロキシフェニル)-4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン)、CL-387785(N-[4-[(3-ブロモフェニル)アミノ]-6-キナゾリニル]-2-ブチンアミド)、EKB-569(N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-3-シアノ-7-エトキシ-6-キナゾリニル]-4-(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミド)(Wyeth)、AG1478(Pfizer)、AG1571(SU5271、Pfizer)、二重EGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤(ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、またはN-[3-クロロ-4-[(3フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]-6[5[[[2メチルスルホニル)エチル]アミノ]メチル]-2-フラニル]-4-キナゾリンアミン)など)が挙げられる。
【0129】
化学療法剤としては、「チロシンキナーゼ阻害剤」(前段落に記載されるEGFR標的薬物を含む)、小分子HER2チロシンキナーゼ阻害剤(Takedaから入手可能なTAK165など)、ErbB2受容体チロシンキナーゼの経口選択的阻害剤であるCP-724,714(Pfizer及びOSI)、二重HER阻害剤(EGFRに優先的に結合するが、HER2及びEGFR過剰発現細胞の両方を阻害するEKB-569(Wyethから入手可能)など)、ラパチニブ(GSK572016、Glaxo-SmithKlineから入手可能)、経口HER2及びEGFRチロシンキナーゼ阻害剤、PKI-166(Novartisから入手可能)、pan-HER阻害剤(カネルチニブ(CI-1033、Pharmacia)など)、Raf-1阻害剤(Raf-1シグナル伝達を阻害するISIS Pharmaceuticalsから入手可能なアンチセンス薬剤ISIS-5132など)、非HER標的TK阻害剤(メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Glaxo SmithKlineから入手可能)など)、多標的チロシンキナーゼ阻害剤(スニチニブ(SUTENT(登録商標)、Pfizerから入手可能)など)、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤(バタラニブ(PTK787/ZK222584、Novartis/Schering AGから入手可能)など)、MAPK細胞外制御キナーゼI阻害剤CI-1040(Pharmaciaから入手可能)、キナゾリン(PD153035,4-(3-クロロアニリノ)キナゾリンなど)、ピリドピリミジン、ピリミドピリミジン、ピロロピリミジン(CGP59326、CGP60261、及びCGP62706など)、ピラゾロピリミジン、4-(フェニルアミノ)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン、クルクミン(ジフェルロイルメタン、4,5-ビス(4-フルオロアニリノ)フタルイミド)、ニトロチオフェン部分を含有するチルホスチン、PD-0183805(Warner-Lamber)、アンチセンス分子(例えば、HERコード核酸に結合するもの)、キノキサリン(米国特許第5,804,396号)、トリホスチン(米国特許第5,804,396号)、ZD6474(Astra Zeneca)、PTK-787(Novartis/Schering AG)、pan-HER阻害剤(CI-1033(Pfizer)など)、Affinitac(ISIS3521、Isis/Lilly)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標))、PKI166(Novartis)、GW2016(Glaxo SmithKline)、CI-1033(Pfizer)、EKB-569(Wyeth)、セマキシニブ(Pfizer)、ZD6474(AstraZeneca)、PTK-787(Novartis/Schering AG)、INC-1C11(Imclone)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標)、または以下の特許公報、米国特許第5,804,396号、WO1999/09016、WO1998/43960、WO1997/38983、WO1999/06378、WO1999/06396、WO1996/30347、WO1996/33978、WO1996/3397、及びWO1996/33980のいずれかに記載されるものが挙げられる。
【0130】
化学療法剤としてはまた、デキサメタゾン、インターフェロン、コルヒチン、メトプリン、シクロスポリン、アンホテリシン、メトロニダゾール、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アミホスチン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG生、ベバクジマブ、ベキサロテン、クラドリビン、クロファラビン、ダルベポエチンアルファ、デニロイキン、デクスラゾキサン、エポエチンアルファ、エロチニブ、フィルグラスチム、酢酸ヒストレリン、イブリツモマブ、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、レナリドミド、レバミゾール、メスナ、メトキサレン、ナンドロロン、ネララビン、ノフェツモマブ、オプレルベキン、パリフェルミン、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペグアスパラガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、キナクリン、ラスブリカーゼ、サルグラモスチム、テモゾロミド、VM-26、6-TG、トレミフェン、トレチノイン、オールトランスレチノイン酸(ATRA)、バルルビシン、ゾレドロネート、及びゾレドロン酸、ならびにこれらの薬学的に許容される塩も挙げられる。
【0131】
「プロドラッグ」という用語は、本明細書で使用される場合、親薬物と比較して腫瘍細胞に対して細胞毒性が低く、より活性な親形態へと酵素的に活性化または変換され得る、薬学的に活性な物質の前駆体または誘導体形態を指す。例えば、Wilman,“Prodrugs in Cancer Chemotherapy”Biochemical Society Transactions,14,pp.375-382,615th Meeting Belfast(1986)及びStella et al.,“Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery,”Directed Drug Delivery,Borchardt et al.,(ed.),pp.247-267,Humana Press(1985)を参照されたい。本発明のプロドラッグとしては、リン酸含有プロドラッグ、チオリン酸含有プロドラッグ、硫酸含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、任意で置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは任意で置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されず、これらは、より活性な非細胞毒性薬物へと変換され得る。本発明における使用のためのプロドラッグ形態に誘導体化され得る細胞毒性薬の例としては、上述の化学療法剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
「成長阻害剤」は、本明細書で使用される場合、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞(例えば、その成長がPD-L1発現に依存する細胞)の成長及び/または増殖を阻害する化合物または組成物を指す。したがって、成長阻害剤は、S期にある細胞のパーセンテージを著しく低下させるものであってもよい。成長阻害剤の例としては、G1停止及びM期停止を誘導する薬剤などの細胞周期進行(S期以外の場所で)を遮断する薬剤が挙げられる。古典的なM期遮断剤としては、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、ならびにトポイソメラーゼII阻害剤(アントラサイクリン系抗生物質ドキソルビシン((8S-シス)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リキソ-ヘキサピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオン)、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンなど)が挙げられる。G1で停止させるそれらの薬剤はまた、S期での停止、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、及びara-CなどのDNAアルキル化剤にも及ぶ。更なる情報は、“The Molecular Basis of Cancer,”Mendelsohn and Israel,eds.,Chapter1,entitled“Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs”by Murakami et al.(WB Saunders:Philadelphia,1995)(特に13頁)に見出すことができる。タキサン(パクリタキセル及びドセタキセル)は、いずれもイチイの木に由来する抗がん薬である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセルドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体に由来する微小管の組み立てを促進し、脱重合を防止することによって微小管を安定させ、細胞内の有糸分裂の阻害をもたらす。
【0133】
「放射線療法」とは、細胞に十分な損傷を誘導するための指向性ガンマ線またはベータ線の使用を意味し、正常に機能するその能力を制限するか、または細胞を完全に破壊する。線量及び治療期間を決定するための当該技術分野において既知である方法が多く存在することが理解されるだろう。典型的な治療は、1回投与として与えられ、典型的な線量は、1日当たり10~200単位(グレイ)の範囲である。
【0134】
「薬学的製剤」という用語は、調製物の中に含有される活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される患者にとって許容できないほど有毒である追加の構成成分を何ら含有しない調製物を指す。
【0135】
「薬学的に許容される担体」は、患者にとって無毒である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、緩衝液、賦形剤、安定剤、または保存剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
「添付文書」という用語は、そのような治療製品の適応症、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌症、及び/またはその使用に関する警告についての情報を含有する、治療製品の商業用パッケージに通例含まれる指示書を指すために使用される。
【0137】
「滅菌」製剤は、無菌であるか、または全ての生存微生物及びそれらの胞子を含まない。
【0138】
「製造品」は、少なくとも1つの試薬、例えば、疾患もしくは障害(例えば、がん)の治療のための薬物、または本明細書に記載されるバイオマーカーを特異的に検出するためのプローブを含む、任意の製造物(例えば、パッケージもしくは容器)またはキットである。特定の実施形態において、製造物またはキットは、本明細書に記載される方法を実行するためのユニットとして、推奨、流通、または販売される。
【0139】
「小分子」という用語は、約2000ダルトン以下、好ましくは約500ダルトン以下の分子量を有する任意の分子を指す。
【0140】
「標識」という単語は、本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドプローブなどの試薬または抗体に直接的または間接的にコンジュゲートまたは融合され、それがコンジュゲートまたは融合される試薬の検出を容易にする化合物または組成物を指す。標識は、それ自体が検出可能(例えば、放射性同位体標識もしくは蛍光標識)であり得るか、または酵素標識の場合、検出可能である基質化合物もしくは組成物の化学改変を触媒し得る。この用語は、検出可能な物質をプローブまたは抗体に共役すること(すなわち、物理的に連結すること)によるプローブまたは抗体の直接的標識、及び直接的に標識される別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識を包含することが意図される。間接的標識の例としては、蛍光標識された二次抗体を使用する一次抗体の検出、及び蛍光標識されたストレプトアビジンで検出され得るようなビオチンを有するDNAプローブの末端標識が挙げられる。
【0141】
「抗体」という用語は、最も広義に使用され、具体的には、それらが所望される生物学的活性を呈する限り、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を網羅する。
【0142】
「天然抗体」は通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖が1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に連結している一方で、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(VH)を有し、その後いくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(VL)を有し、その他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基が、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
【0143】
「単離された」抗体は、その自然環境の構成成分から特定及び分離され、かつ/または回収された抗体である。その自然環境の混入構成成分は、抗体の研究的、診断的、及び/または治療的使用と干渉する材料であり、それらには、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が含まれ得る。いくつかの実施形態において、抗体は、(1)例えば、ローリー法によって決定される、抗体の95重量%超、及びいくつかの実施形態において、99重量%超になるまで、(2)例えば、スピニングカップシークエネーターを使用することによって、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、または(3)例えば、クマシーブルーまたはシルバー染色を使用して、還元もしくは非還元条件下でSDS-PAGEによって均質性が得られるまで、精製される。単離された抗体は、組換え細胞内でインサイチュの抗体を含むが、これは、抗体の天然環境の少なくとも1つの構成成分が存在していないためである。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製されるだろう。
【0144】
「遮断」抗体または抗体「アンタゴニスト」は、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害または低下させる抗体である。例えば、VEGF特異的アンタゴニスト抗体は、VEGFに結合し、VEGFが血管内皮細胞増殖を誘導する能力を阻害する。好ましい遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を完全に阻害する。
【0145】
別段示されない限り、「多価抗体」という表現は、本明細書を通して、3つ以上の抗原結合部位を含む抗体を意味するために使用される。多価抗体は、好ましくは、3つ以上の抗原結合部位を有するように操作され、一般に、天然配列IgMまたはIgA抗体ではない。
【0146】
任意の哺乳動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明らかに異なる種類のうちの1つに割り当てることができる。
【0147】
「定常ドメイン」という用語は、抗原結合部位を含有する可変ドメインである免疫グロブリンの他方の部分と比較して、より保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2、及びCH3ドメイン(集合的に、CH)、ならびに軽鎖のCHL(またはCL)ドメインを含有する。
【0148】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「VH」と称され得る。軽鎖の可変ドメインは、「VL」と称され得る。これらのドメインは一般に、抗体の最可変部分であり、抗原結合部位を含有する。
【0149】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定のセグメントが配列において抗体間で広範囲にわたって異なるという事実を指す。可変または「V」ドメインは、抗原結合を媒介し、特定の抗体の、その特定の抗原に対する特異性を定義する。しかしながら、可変性は、可変ドメインの長さにわたって均等に分布していない。代わりに、V領域は、各々9~12アミノ酸長の「超可変領域」と呼ばれる極度の可変性を有するより短い領域によって分離された、15~30個のアミノ酸を有するフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変の伸長からなる。「超可変領域」または「HVR」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は一般に、例えば、VLでは残基約24~34(L1)、50~56(L2)、及び89~97(L3)、VHでは残基約26~35(H1)、49~65(H2)、及び95~102(H3)(一実施形態において、H1は、残基約31~35)からのアミノ酸残基、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))、ならびに/または「超可変ループ」からのアミノ酸残基(例えば、VLでは残基26~32(L1)、50~52(L2)、及び91~96(L3)、VHでは26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)、Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)を含む。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、ベータシート構造の一部を接続し、場合によっては、その一部を形成するループを形成する、3つの超可変領域によって接続された主にベータシート配置をとる4つのFRを含む。各鎖内の超可変領域は、FRによって近接近して一緒に保持され、他の鎖由来の超可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)を参照されたい)。したがって、HVR及びFR配列は一般に、VH(またはVL)において以下の配列、FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4で出現する。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接は関与しないが、抗体の抗体依存性細胞毒性(ADCC)への関与などの様々なエフェクター機能を呈する。
【0150】
本明細書の目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下に定義される、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワークまたは重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含み得るか、またはそれは、アミノ酸配列変化を含有し得る。いくつかの実施形態において、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの実施形態において、VLアクセプターヒトフレームワークの配列は、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
【0151】
「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、本明細書で使用される場合、配列が超可変性である、かつ/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含み、3つがVHにあり(H1、H2、H3)、3つがVLにある(L1、L2、L3)。天然抗体において、H3及びL3は、これらの6つのHVRのうちで最も高い多様性を提示し、特にH3が、抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられている。例えば、Xu et al.,Immunity13:37-45(2000)、Johnson and Wu,in Methods in Molecular Biology248:1-25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2003)を参照されたい。実際には、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ科抗体は、軽鎖の不在下で機能的であり、安定している。例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature363:446-448(1993)、Sheriff et al.,Nature Struct.Biol.3:733-736(1996)を参照されたい。
【0152】
いくつかのHVRの描写が本明細書で使用されており、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づくものであり、最も一般的に使用されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。代わりに、Chothiaは、構造的ループの位置に言及している(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。AbM HVRは、Kabat HVRとChothia構造的ループとの間の折衷案を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデル化ソフトウェアによって使用されている。「接触」HVRは、入手可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらのHVRの各々に由来する残基を、以下に記載する。
【0153】
HVRは、VL内の24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)、及び89~97または89~96(L3)、ならびにVH内の26~35(H1)、50~65、または49~65(H2)、及び93~102、94~102、または95~102(H3)のような「延長HVR」を含み得る。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabatら(上記参照)に従って番号付けされる。
【0154】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書に定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0155】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列の下位群からである。一般に、配列の下位群は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1-3にあるような下位群である。一実施形態において、VLでは、下位群は、Kabatら(上記参照)にあるような下位群カッパIである。一実施形態において、VHでは、下位群は、Kabatら(上記参照)にあるような下位群IIIである。
【0156】
「Kabatにあるような可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatにあるようなアミノ酸位置番号付け」という用語、及びそれらの変化形は、Kabatら(上記参照)における抗体の編集物の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮、またはそれへの挿入に対応する、より少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従う残基52a)を含み得、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従う残基82a、82b、及び82cなど)を含み得る。残基のKabat番号付けは、「標準の」Kabatにより番号付けされた配列との、抗体の配列の相同性領域での整列によって所与の抗体について決定され得る。
【0157】
Kabat番号付けシステムは一般に、可変ドメイン内の残基(およそ軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)に言及する場合に使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。「EU番号付けシステム」または「EU指標」は一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基に言及する場合に使用される(例えば、Kabatら(上記参照)に報告されるEU指標)。「KabatにあるようなEU指標」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。本明細書において別段述べられない限り、抗体の可変ドメイン内の残基番号への言及は、Kabat番号付けシステムによる残基番号付けを意味する。本明細書において別段述べられない限り、抗体の定常ドメイン内の残基番号への言及は、EU番号付けシステムによる残基番号付けを意味する(EU番号付けについては、例えば、米国仮出願第60/640,323号の図を参照されたい)。
【0158】
別段示されない限り、可変ドメイン内のHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書において、Kabatら(上記参照)に従って番号付けされる。
【0159】
「完全長抗体」、「無傷抗体」、及び「全抗体」という用語は、以下に定義される抗体断片ではなく、その実質的に無傷な形態にある抗体を指すために、本明細書において互換的に使用される。これらの用語は、具体的には、Fc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。
【0160】
「抗体断片」は、好ましくはその抗原結合領域を含む、無傷抗体の一部を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗体断片は、抗原結合断片である。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0161】
抗体のパパイン消化は、各々が単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、及び容易に結晶化する能力を反映する名称を持つ残基「Fc」断片を産生する。ペプシン処理は、F(ab’)2断片をもたらし、これは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができる。
【0162】
本明細書における「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む。一実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延長する。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在する場合もあれば、存在しない場合もある。本明細書において別段明記されない限り、Fc領域または定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に記載される、EU指標とも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。
【0163】
「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指し、抗体のアイソタイプにより異なる。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞毒性(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、ならびにB細胞活性化が挙げられる。
【0164】
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含有する最小抗体断片である。一実施形態において、二本鎖Fv種は、密接な非共有結合的会合にある1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種において、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖及び重鎖が二本鎖Fv種における構造に類似した「二量体」構造で会合し得るように、柔軟性ペプチドリンカーによって共有結合的に連結され得る。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用して、VH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義するのは、この立体配置においてである。集合的に、6つのHVRが抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、全結合部位よりも低い親和性ではあるが、単一可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえも、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0165】
Fab断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)もまた含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域に由来する1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端への数個の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書における表記である。F(ab’)2抗体断片は元々、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生されたものであった。抗体断片の他の化学共役もまた、既知である。
【0166】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含み、これにより、scFvが抗原結合に所望される構造を形成することが可能になる。scFvに関する概説については、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York,1994),pp.269-315を参照されたい。
【0167】
「多重特異性抗体」という用語は、最も広義に使用され、具体的には、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体を網羅し、VH-VL単位が多重エピトープ特異性を有する(すなわち、1つの生物学的分子上の2つの異なるエピトープまたは異なる生物学的分子上の各エピトープに結合することができる)。そのような多重特異性抗体としては、完全長抗体、2つ以上のVL及びVHドメインを有する抗体、抗体断片(Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、及びトリアボディなど)、共有結合的または非共有結合的に連結されている抗体断片が挙げられるが、これらに限定されない。「ポリエピトープ特異性」は、同じまたは異なる標的(複数可)上の2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。「二特異性」または「二重特異性」は、同じまたは異なる標的(複数可)上の2つの異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。しかしながら、二重特異性抗体とは対照的に、二特異性抗体は、アミノ酸配列が同一の2つの抗原結合アームを有し、各Fabアームは、2つの抗原を認識することができる。二特異性により、抗体が単一のFabまたはIgG分子として高い親和性で2つの異なる抗原と相互作用することが可能になる。一実施形態に従うと、IgG1形態の多重特異性抗体は、5μM~0.001pM、3μM~0.001pM、1μM~0.001pM、0.5μM~0.001pM、または0.1μM~0.001pMの親和性で各エピトープに結合する。「単一特異性」は、1つのエピトープにのみ結合する能力を指す。
【0168】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)(VH-VL)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間での対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を作製することができる。ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudson et al.,Nat.“Med.”9:129-134(2003)、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444-6448(1993)により詳細に説明されている。トリアボディ及びテトラボディもまた、Hudson et al.,Nat.“Med.”9:129-134(2003)に説明されている。
【0169】
抗体の「クラス」は、その重鎖が所有する定常ドメインまたは定常領域の種類を指す。5つの主要なクラスの抗体、つまり、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、「サブクラス」(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に更に分けることができる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0170】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体を指し、例えば、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な変異、例えば、天然に存在する変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。特定の実施形態において、そのようなモノクローナル抗体は典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含むプロセスによって得られたものである。例えば、選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組み換えDNAクローンのプールなどの複数のクローンから特有のクローンを選択することであり得る。選択された標的結合配列が、例えば、標的への親和性の改善、標的結合配列のヒト化、細胞培養物中でのその産生の改善、インビボでのその免疫原性の低下、多重特異性抗体の作製などを行うように更に改変されてもよく、改変された標的結合配列を含む抗体もまた、本発明のモノクローナル抗体であることを理解されたい。異なる決定基(エピトープ)に対して指向された異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、それらには典型的に他の免疫グロブリンが混入していないという点で有利である。
【0171】
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、いかなる特定の方法による抗体の産生も必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein,Nature256:495-97(1975)、Hongo et al.,Hybridoma14(3):253-260(1995)、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)、Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T cell Hybridomas563-681(Elsevier,N.Y.,1981))、組み換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)、ファージ提示技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624-628,1991、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597,1992、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310,2004、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093,2004、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA101(34):12467-12472,2004、及びLee et al.,J.Immunol.Methods284(1-2):119-132,2004を参照されたい)、ならびにヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座または遺伝子の一部または全部を有するヒトまたはヒト様抗体を動物において産生するための技術(例えば、WO1998/24893、WO1996/34096、WO1996/33735、WO1991/10741、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:2551,1993、Jakobovits et al.,Nature362:255-258,1993、Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33,1993、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、及び同第5,661,016号、Marks et al.,Bio/Technology10:779-783(1992)、Lonberg et al.,Nature368:856-859,1994、Morrison,Nature368:812-813,1994、Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845-851,1996、Neuberger,Nature Biotechnol.14:826,1996、及びLonberg et al.,Intern.Rev.Immunol.13:65-93,1995を参照されたい)を含む様々な方法によって作製することができる。
【0172】
本明細書におけるモノクローナル抗体には、具体的には、重鎖及び/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、ならびにそれらが所望される生物学的活性を呈する限りそのような抗体の断片を含む(例えば、米国特許第4,816,567号及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA81:6851-6855(1984)を参照されたい)。キメラ抗体としては、PRIMATIZED(登録商標)抗体が挙げられ、この抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルを対象となる抗原で免疫化することによって産生された抗体に由来する。
【0173】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞により産生された抗体、またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を所有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。
【0174】
非ヒト(例えば、齧歯類)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体に由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの超可変領域に由来する残基が、所望される抗体特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域に由来する残基によって置き換えられている。いくつかの事例において、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には見出されない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能を更に改良するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、及び典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、超可変ループの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRの全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体はまた、任意で、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も含む。更なる詳細については、Jones et al.,Nature321:522-525,1986、Riechmann et al.,Nature332:323-329,1988、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596,1992を参照されたい。
【0175】
出発または基準ポリペプチドの「バリアント」または「変異体」(例えば、基準抗体またはその可変ドメイン(複数可)/HVR(複数可))は、(1)出発または基準ポリペプチドのアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有し、かつ(2)天然変異誘発または人工(人造)変異誘発のいずれかを通して出発または基準ポリペプチドから得られた、ポリペプチドである。そのようなバリアントとしては、例えば、本明細書において「アミノ酸残基改変」と称される、対象となるポリペプチドのアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/またはそれへの挿入、及び/またはその置換が挙げられる。したがって、バリアントHVRは、出発または基準ポリペプチド配列(供給源抗体または抗原結合断片のものなど)に対してバリアント配列を含むHVRを指す。この文脈において、アミノ酸残基改変は、出発または基準ポリペプチド配列(基準抗体またはその断片のものなど)内の対応する位置のアミノ酸とは異なるアミノ酸を指す。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせによって、最終バリアントまたは変異体構築物に到達することができるが、但し、最終構築物が所望される機能的特性を所有することを条件とする。グリコシル化部位の数または位置の変化などのアミノ酸変化により、ポリペプチドの翻訳後プロセスも改変され得る。
【0176】
「野生型(WT)」もしくは「基準」配列または「野生型」もしくは「基準」タンパク質/ポリペプチド(基準抗体のHVRまたは可変ドメインなど)の配列は、変異の導入を通してバリアントポリペプチドが得られる基準配列であり得る。一般に、所与のタンパク質の「野生型」配列は、自然界で最も一般的な配列である。同様に、「野生型」遺伝子配列は、自然界で最も一般的に見出されるその遺伝子の配列である。変異は、天然プロセスまたは人為的手段のいずれかを通して、「野生型」遺伝子(及び故にそれがコードするタンパク質)に導入され得る。そのようなプロセスの産物は、最初の「野生型」タンパク質または遺伝子の「バリアント」または「変異体」形態である。
【0177】
「基準抗体」は、本明細書で使用される場合、抗体またはその断片を指し、その抗原結合配列が鋳型配列の役割を果たし、そこで本明細書に記載される基準に従う多様化が実行される。抗原結合配列は一般に、好ましくはフレームワーク領域を含む、抗体可変領域、好ましくは少なくとも1つのHVRを含む。
【0178】
本明細書で使用される場合、「ライブラリ」は、複数の抗体または抗体断片配列(例えば、本発明の抗VEGF抗体もしくは抗PD-L1抗体)、またはこれらの配列をコードする核酸を指し、これらの配列は、例えば、本明細書の方法に従ってこれらの配列に導入されるバリアントアミノ酸の組み合わせの点で異なる。
【0179】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との単一結合部位の間の非共有結合的相互作用の合計の強度を指す。別段示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は一般に、解離定数(Kd)によって表され得る。親和性は、本明細書に記載される方法を含む、当該技術分野において既知である一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な例証的かつ例示的な実施形態が、本明細書に記載される。
【0180】
抗体の標的分子への結合に関して、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープに「特異的な結合」または「に特異的に結合する」または「に特異的である」という用語は、非特異的相互作用とは測定可能な程度異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、対照分子の結合との比較での分子の結合を決定することによって測定することができる。例えば、特異的結合は、標的、例えば、過剰な非標識標的に類似した対照分子との競合によって決定され得る。この場合、標識された標的の、プローブへの結合が、過剰な非標識標的によって競合的に阻害される場合に、特異的結合が示される。「特異的結合」、または特定のポリペプチドもしくは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「に特異的に結合する」もしくは「に特異的である」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、10-4M以下、あるいは10-5M以下、あるいは10-6M以下、あるいは10-7M以下、あるいは10-8M以下、あるいは10-9M以下、あるいは10-10M以下、あるいは10-11M以下、あるいは10-12M以下の標的に対するKd、または10-4M~10-6Mまたは10-6M~10-10Mまたは10-7M~10-9Mの範囲のKdを有する分子によって呈され得る。当業者によって理解されるように、親和性及びKd値は、反比例する。抗原に対する高い親和性は、低いKd値によって測定される。一実施形態において、「特異的結合」という用語は、ある分子が、いかなる他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープにも実質的に結合することなく、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する結合を指す。
【0181】
「親和性成熟」抗体は、そのような改変を所有しない親抗体と比較して、1つ以上の超可変領域(HVR)に1つ以上の改変を有し、そのような改変により抗体の抗原に対する親和性が改善される抗体を指す。
【0182】
基準抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいて、基準抗体のその抗原への結合を50%以上遮断する抗体、及び逆に、競合アッセイにおいて、抗体のその抗原への結合を50%以上遮断する基準抗体を指す。
【0183】
「免疫コンジュゲート」は、細胞毒性剤を含むが、これに限定されない1つ以上の異種分子(複数可)にコンジュゲートされる抗体である。
【0184】
本明細書で使用される場合、「イムノアドヘシン」という用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを組み合わせる、抗体様分子を表す。構造的には、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識及び結合部位以外である所望される結合特異性を有する(すなわち、「異種の」)アミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドヘシン部分は典型的には、少なくとも受容体またはリガンドの結合部位を含む近接アミノ酸配列である。イムノアドヘシン中の免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG1、IgG2(IgG2A及びIgG2Bを含む)、IgG3、またはIgG4サブタイプ、IgA(IgA1及びIgA2を含む)、IgE、IgD、またはIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。Ig融合物は好ましくは、Ig分子内の少なくとも1つの可変領域の場所に、本明細書に記載されるポリペプチドまたは抗体のドメインの置換を含む。特に好ましい実施形態において、免疫グロブリン融合物は、IgG1分子のヒンジ、CH2、及びCH3、またはヒンジ、CH1、CH2及びCH3領域を含む。免疫グロブリン融合物の産生については、米国特許第5,428,130号もまた参照されたい。例えば、本明細書における療法に有用な薬物としての有用なイムノアドヘシンとしては、免疫グロブリン配列の定常ドメインに融合される、PD-L1もしくはPD-L2の細胞外ドメイン(ECD)もしくはPD-1結合部分、またはPD-1の細胞外もしくはPD-L1もしくはPD-L2結合部分(それぞれ、PD-L1 ECD-Fc、PD-L2 ECD-Fc、及びPD-1 ECD-Fcなど)を含むポリペプチドが挙げられる。細胞表面受容体のIg FcとECDとのイムノアドヘシンの組み合わせは、可溶性受容体と称されることがある。
【0185】
「融合タンパク質」及び「融合ポリペプチド」は、ともに共有結合的に連結されている2つの部分を有するポリペプチドを指し、ここで、これらの部分の各々は、異なる特性を有するポリペプチドである。この特性は、インビトロまたはインビボでの活性などの生物学的特性であり得る。この特性はまた、標的分子への結合及び反応の触媒作用などの、単純な化学的または物理的特性でもあり得る。これらの2つの部分は、単一のペプチド結合によって直接的に、またはペプチドリンカーを通して連結され得るが、それらは、互いの読み枠内にある。
【0186】
本明細書に特定されるポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、最大の配列同一性パーセントを達成するように、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後に、かついかなる保存的置換も配列同一性の一部とは見なさずに、候補配列内のアミノ酸残基が、比較されるポリペプチド内のアミノ酸残基と同一であるパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するための整列は、当該技術分野の範囲内の様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。当業者であれば、比較されている配列の完全長にわたって最大の整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、整列を測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.によって記述され、ソースコードは、ユーザ文書と共に米国著作権庁(Washington D.C.,20559)に提出されており、米国著作権番号TXU510087の下に登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaを通して公的に入手可能である。ALIGN-2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0Dで使用する場合はコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムにより設定されており、変動しない。
【0187】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況において、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対するある特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下、
100×分数X/Y
のように計算され、式中、Xは、配列整列プログラムALIGN-2によって、そのプログラムのAとBとの整列において完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBへのアミノ酸配列同一性%は、BのAへのアミノ酸配列同一性%とは等しくないことが理解されるだろう。別段具体的に述べられない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるようにALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる。
【0188】
本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、及び/またはそれらの類似体、あるいはDNAまたはRNAポリメラーゼによって、または合成反応によってポリマーに組み込むことができる任意の基質であり得る。したがって、例えば、本明細書に定義されるポリヌクレオチドとしては、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖領域を含むDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、ならびに一本鎖及び二本鎖領域を含むRNA、一本鎖もしくはより典型的には二本鎖であり得るか、または一本鎖及び二本鎖領域を含み得るDNA及びRNAを含むハイブリッド分子が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用される場合、RNAもしくはDNA、またはRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。そのような領域内の鎖は、同じ分子に由来しても、異なる分子に由来してもよい。これらの領域は、これらの分子のうちの1つ以上の全てを含み得るが、より典型的には、これらの分子のうちのいくつかの領域のみを含む。三重螺旋領域の分子のうちの1つは、多くの場合、オリゴヌクレオチドである。「ポリヌクレオチド」という用語は、具体的には、cDNAを含む。
【0189】
ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーの組み立て前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成成分によって中断され得る。ポリヌクレオチドは、例えば、標識とのコンジュゲートなどによって合成後に更に修飾され得る。他の種類の修飾としては、例えば、天然に存在するヌクレオチドのうちの1つ以上を類似体と置換する「キャップ」、ヌクレオチド間修飾、例えば、非電荷性結合(例えば、メチルホスホン酸、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、及びカルバメートなど)によるもの、ならびに電荷性結合(例えば、ホスホロチオエート及びホスホロジチオエートなど)によるもの、懸垂部分、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、及びポリ-L-リシンなど)などを含有するもの、挿入剤(例えば、アクリジン及びソラーレンなど)によるもの、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、及び酸化金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾結合(例えば、アルファアノマー核酸など)によるもの、ならびにポリヌクレオチド(複数可)の未修飾形態が挙げられる。更に、糖内に通常存在するヒドロキシル基のうちのいずれかは、例えば、ホスホン酸基、リン酸基によって置き換えられるか、標準保護基により保護されるか、もしくは活性化されて、追加のヌクレオチドへの追加の結合を調製してもよく、または固体もしくは半固体支持体にコンジュゲートされてもよい。5’及び3’末端OHをリン酸化するか、またはアミンもしくは1~20個の炭素原子の有機キャッピング基部分と置換することができる。他のヒドロキシルもまた、標準保護基に誘導体化されてもよい。ポリヌクレオチドはまた、例えば、2’-O-メチル-、2’-O-アリル、2’-フルオロ-または2’-アジド-リボース、炭素環糖の類似体、α-アノマー糖、エピマー糖(アラビノース、キシロース、またはリキソースなど)、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、アクリル酸類似体、及び脱塩基ヌクレオシド類似体(メチルリボシドなど)を含む、当該技術分野において一般に既知であるリボース糖またはデオキシリボース糖の類似形態も含有することができる。1つ以上のホスホジエステル結合は、代替的な連結基に置き換えられてもよい。これらの代替的な連結基としては、リン酸がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、“(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、またはCH2(「ホルムアセタール」)に置き換えられる実施形態が挙げられるが、これらに限定されず、各RまたはR’は独立して、Hであるか、または置換もしくは非置換アルキル(1-20C)(任意でエーテル(-O-)結合を含有する)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアラルジルである。ポリヌクレオチド内の全ての結合が同一である必要はない。前述の説明は、RNA及びDNAを含む、本明細書で言及される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0190】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」は一般に、約250ヌクレオチド長未満であるが、必ずしもそうではない、短い一本鎖ポリヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチドは、合成であってもよい。「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、相互排他的ではない。ポリヌクレオチドについての上記の説明は、オリゴヌクレオチドに等しく完全に適用可能である。
【0191】
「プライマー」という用語は、核酸にハイブリダイズすることができ、一般に遊離3’-OH基を提供することによって相補的核酸の重合を可能にする、一本鎖ポリヌクレオチドを指す。
【0192】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は、互換的に使用され、外因性核酸が導入されている細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞としては、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が挙げられ、これらには、初代形質転換細胞及び継代の数に関わらずそれに由来する子孫が含まれる。子孫は、核酸含有量が親細胞と完全に同一ではない場合があるが、変異を含み得る。最初に形質転換された細胞についてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異子孫が、本明細書に含まれる。
【0193】
「ベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、それが結合している別の核酸を運搬することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、及びそれが導入されている宿主細胞のゲノム内に組み込まれたベクターを含む。特定のベクターは、それらが動作可能に結合している核酸の発現を指向することができる。そのようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。
【0194】
「単離された」核酸分子は、核酸の天然源中の、それが通常関連する少なくとも1つの混入核酸分子から特定及び分離される核酸分子である。単離された核酸分子は、それが自然界で見出される形態または設定以外である。したがって、単離された核酸分子は、天然細胞内に存在する核酸分子とは区別される。しかしながら、単離された核酸分子は、例えば、核酸分子が天然細胞の染色体位置とは異なる染色体位置にある抗体を通常発現する細胞内に含有される核酸分子を含む。
【0195】
「変異」と、野生型配列などの基準ヌクレオチド配列との比較での、ヌクレオチド(複数可)の欠失、挿入、または置換である。
【0196】
本明細書で使用される場合、「コドンセット」は、所望されるバリアントアミノ酸をコードするために使用される一組の異なるヌクレオチドトリプレット配列を指す。一組のオリゴヌクレオチドは、例えば、そのコドンセットによって提供されるヌクレオチドトリプレットの全ての可能な組み合わせを表し、かつ所望されるアミノ酸群をコードする配列を含む、固相合成によって合成され得る。コドン表記の標準形式は、IUBコードのものであり、これは、当該技術分野において既知であり、かつ本明細書に記載される。コドンセットは、典型的には、イタリック体の3つの大文字、例えば、
などによって表される。特定の位置に選択されたヌクレオチド「縮重」を有するオリゴヌクレオチドの合成、例えば、TRIMアプローチ(Knappek et al.,J.Mol.Biol.296:57-86,1999)、Garrard et al.,Gene128:103,1993)は、当該技術分野において周知である。特定のコドンセットを有するそのような組のオリゴヌクレオチドは、商業的核酸合成機(例えば、Applied Biosystems,Foster City,CAから入手可能)を使用して合成さすることができるか、または商業的に得ることができる(例えば、Life Technologies,Rockville,MDから)。したがって、特定のコドンセットを有する合成された一組のオリゴヌクレオチドは、典型的には、異なる配列を有する複数のオリゴヌクレオチドを含み、差異は、全体配列内のコドンセットによって確立される。本発明に従って使用されるオリゴヌクレオチドは、可変ドメイン核酸鋳型へのハイブリダイゼーションを可能にする配列を有し、例えば、クローニング目的に有用な制限酵素部位も含み得るが、必ずしも含むわけではない。
【0197】
「制御配列」という表現は、特定の宿主生物における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。原核生物に好適な制御配列としては、例えば、プロモーター、任意に、オペレーター配列、及びリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを利用することが既知である。
【0198】
核酸は、それが別の核酸配列と機能的関係に置かれているときに「作動可能に連結される」。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合に、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結されるか、プロモーターまたはエンハンサーは、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合に、コード配列に作動可能に連結されるか、またはリボソーム結合部位は、それが翻訳を容易にするように位置付けられる場合に、コード配列に作動可能に連結される。一般に、「作動可能に連結される」は、連結されるDNA配列が近接していること、及び分泌リーダーの場合、近接しており、読み取り相にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、近接していなくてもよい。連結は、好都合な制限部位でのライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが、従来の慣例に従って使用される。
【0199】
「血管内皮成長因子」または「VEGF」という用語は、Swiss Prot受託番号P15692、遺伝子ID(NCBI):7422によって例示される、血管内皮成長因子タンパク質Aを指す。「VEGF」という用語は、Swiss Prot受託番号P15692、遺伝子ID(NCBI):7422のアミノ酸配列を有するタンパク質、及びその相同体及びアイソフォームを包含する。「VEGF」という用語はまた、既知のアイソフォーム、例えば、VEGFのスプライスアイソフォーム、例えば、VEGF111、VEGF121、VEGF145、VEGF165、VEGF189、及びVEGF206を、それらの天然に存在する対立遺伝子形態及びプロセス型形態とともに包含し、これには、Ferrara Mol.Biol.Cell.21:687,2010、Leung et al.,Science,246:1306.1989、及びHouck et al.,Mol.Endocrin.,5:1806,1991に記載されるVEGF165のプラスミン切断によって生成される110個のアミノ酸のヒト血管内皮細胞成長因子が含まれる。「VEGF」という用語はまた、マウス、ラット、または霊長類などの非ヒト種に由来するVEGFも指す。特定の種に由来するVEGFは、ヒトVEGFではhVEGF及びマウスVEGFではmVEGFなどの用語によって示されることがある。「VEGF」という用語はまた、165個のアミノ酸のヒト血管内皮細胞成長因子のアミノ酸8~109または1~109を含む、ポリペプチドの切断型形態を指すためにも使用される。VEGFの任意のそのような形態への言及は、本出願では、例えば、「VEGF109」、「VEGF(8~109)」、「VEGF(1~109)」、または「VEGF165」によって特定することができる。「切断型」天然VEGFのアミノ酸位置は、天然VEGF配列に示されるように番号付けされる。例えば、切断型天然VEGFにおけるアミノ酸17位(メチオニン)はまた、天然VEGFでも17位(メチオニン)である。切断型天然VEGFは、KDR及びFlt-1受容体に対して、天然VEGFに匹敵する結合親和性を有する。「VEGFバリアント」という用語は、本明細書で使用される場合、天然VEGF配列に1つ以上のアミノ酸変異を含むVEGFポリペプチドを指す。任意で、この1つ以上のアミノ酸変異には、アミノ酸置換(複数可)が含まれる。本明細書に記載されるVEGFバリアントを簡潔に表記するために、数字は、推定上の天然VEGF(Leungら(上記参照)及びHouckら(上記参照)に提供される)のアミノ酸配列に沿ったアミノ酸残基の位置を指すことに留意されたい。別段明記されない限り、「VEGF」は、本明細書で使用される場合、VEGF-Aを示す。
【0200】
「VEGFアンタゴニスト」または「VEGF特異的アンタゴニスト」という用語は、VEGFに結合するか、VEGF発現レベルを低下させるか、またはVEGF生物学的活性(1つ以上のVEGF受容体へのVEGF結合、VEGFシグナル伝達、ならびにVEGF媒介血管新生及び内皮細胞生存または増殖を含むが、これらに限定されない)を中和、遮断、阻害、抑止、低下、または妨害することができる分子を指す。例えば、VEGF生物学的活性を中和、遮断、阻害、抑止、低下、または妨害することができる分子は、1つ以上のVEGF受容体(VEGFR)(例えば、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、膜結合VEGF受容体(mbVEGFR)、または可溶性VEGF受容体(sVEGFR))に結合することによってその効果を発揮することができる。VEGFに特異的に結合するポリペプチド、抗VEGF抗体及びそれらの抗原結合断片、VEGFに特異的に結合し、それにより1つ以上の受容体へのその結合を隔離する受容体分子及び誘導体、融合タンパク質(例えば、VEGF-Trap(Regeneron))、ならびにVEGF121-ゲロニン(Peregrine)が、本発明の方法において有用なVEGF特異的アンタゴニストとして含まれる。VEGF特異的アンタゴニストには、VEGFポリペプチドのアンタゴニストバリアント、VEGFポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも1つの断片に相補的なアンチセンス核酸塩基オリゴマー、VEGFポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも1つの断片に相補的な小分子RNA、VEGFを標的とするリボザイム、VEGFに対するペプチボディ、及びVEGFアプタマーも含まれる。VEGFアンタゴニストには、VEGFRに結合するポリペプチド、抗VEGFR抗体、及びそれらの抗原結合断片、ならびにVEGFRに結合し、それによりVEGF生物学的活性(例えば、VEGFシグナル伝達)を遮断、阻害、抑止、低下、または妨害する誘導体、または融合タンパク質も含まれる。VEGF特異的アンタゴニストには、VEGFまたはVEGFRに結合し、かつVEGF生物学的活性を遮断、阻害、抑止、低下、または妨害することができる非ペプチド小分子も含まれる。したがって、「VEGF活性」という用語は、VEGFのVEGF媒介生物学的活性を具体的に含む。特定の実施形態において、VEGFアンタゴニストは、VEGFの発現レベルまたは生物学的活性を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低下または阻害する。いくつかの実施形態において、VEGF特異的アンタゴニストによって阻害されるVEGFは、VEGF(8-109)、VEGF(1-109)、またはVEGF165である。
【0201】
本明細書で使用される場合、VEGFアンタゴニストとしては、抗VEGFR2抗体及び関連分子(例えば、ラムシルマブ、タニビルマブ、アフリベルセプト)、抗VEGFR1抗体及び関連分子(例えば、イクルクマブ、アフリベルセプト(VEGF Trap-Eye、EYLEA(登録商標))、及びジブ-アフリベルセプト(VEGF Trap、ZALTRAP(登録商標)))、二重特異性VEGF抗体(例えば、MP-0250、バヌシズマブ(VEGF-ANG2)、及びUS2001/0236388に開示される二重特異性抗体)、抗VEGF、抗VEGFR1、及び抗VEGFR2アームのうちの2つの組み合わせを含む二重特異性抗体、抗VEGFA抗体(例えば、ベバシズマブ、セバシズマブ)、抗VEGFB抗体、抗VEGFC抗体(例えば、VGX-100)、抗VEGFD抗体、ならびに非ペプチド小分子VEGFアンタゴニスト(パゾパニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、スチバーガ、カボザンチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、オランチニブ、テラチニブ、ドビチニグ、セジラニブ、モテサニブ、スルファチニブ、アパチニブ、フォレチニブ、ファミチニブ、及びチボザニブ)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0202】
「抗VEGF抗体」は、十分な親和性及び特異性でVEGFに結合する抗体である。特定の実施形態において、抗体は、VEGFへの十分に高い結合親和性を有し、例えば、抗体は、100nM~1pMのKd値でhVEGFに結合し得る。抗体親和性は、例えば、表面プラズモン共鳴に基づくアッセイ(PCT出願公開第WO2005/012359号に記載されるBIAcore(登録商標)アッセイなど)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、及び競合アッセイ(例えば、放射免疫アッセイ(RIA))によって決定することができる。
【0203】
特定の実施形態において、抗VEGF抗体は、VEGF活性が関与する疾患または病態を標的とし、それを妨害する上での治療剤として使用され得る。また、この抗体は、例えば、治療薬としてのその有効性を評価するために、他の生物学的活性アッセイに供され得る。そのようなアッセイは、当該技術分野において既知であり、抗体の標的抗原及び意図される用途に依存する。例としては、HUVEC阻害アッセイ、腫瘍細胞成長阻害アッセイ(例えば、WO89/06692に記載されるもの)、抗体依存性細胞毒性(ADCC)及び補体媒介細胞毒性(CDC)アッセイ(米国特許第5,500,362号)、ならびにアゴニスト活性または造血アッセイ(WO95/27062を参照されたい)が挙げられる。抗VEGF抗体は通常、VEGF-BまたはVEGF-Cなどの他のVEGF相同体にも、PIGF、PDGF、またはbFGFなどの他の成長因子にも結合しない。一実施形態において、抗VEGF抗体は、ハイブリドーマATCC HB10709によって産生されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体である。別の実施形態において、抗VEGF抗体は、ベバシズマブ(BV、AVASTIN(登録商標))として既知の抗体を含むが、これらに限定されない、Prestaら(Cancer Res.57:4593-4599,1997)に従って生成される組み換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体である。
【0204】
「rhuMAb VEGF」または「AVASTIN(登録商標)」としても知られる抗VEGF抗体「ベバシズマブ(BV)」は、Prestaら(Cancer Res.57:4593-4599,1997)に従って生成される組み換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体である。これは、変異型ヒトIgG1フレームワーク領域と、ヒトVEGFがその受容体に結合するのを遮断するマウス抗hVEGFモノクローナル抗体A.4.6.1に由来する抗原結合性の相補性決定領域とを含む。フレームワーク領域の大半を含む、ベバシズマブのアミノ酸配列のおよそ93%がヒトIgG1に由来し、配列の約7%がマウス抗体A4.6.1に由来する。ベバシズマブは、約149,000ダルトンの分子質量を有し、グリコシル化されている。ベバシズマブ及び他のヒト化抗VEGF抗体は、2005年2月26日に発行された米国特許第6,884,879号に更に記載されており、参照によりその開示の全体が明示的に本明細書に組み込まれる。追加の好ましい抗体としては、PCT出願公開第WO2005/012359号に記載されるG6またはB20系統の抗体(例えば、G6-31、B20-4.1)が挙げられる。追加の好ましい抗体については、米国特許第7,060,269号、同第6,582,959号、同第6,703,020号、同第6,054,297号、WO98/45332、WO96/30046、WO94/10202、EP0666868B1、米国特許出願公開第2006009360号、同第20050186208号、同第20030206899号、同第20030190317号、同第20030203409号、及び同第20050112126号、ならびにPopkovら(Journal of Immunological Methods288:149-164,2004)を参照されたい。他の好ましい抗体としては、残基F17、M18、D19、Y21、Y25、Q89、191、K101、E103、及びC104を含むか、またはあるいは、残基F17、Y21、Q22、Y25、D63、183、及びQ89を含むヒトVEGF上の機能的エピトープに結合するものが挙げられる。
【0205】
VEGFアンタゴニストが「単一の抗腫瘍剤」として投与される場合、それは、がんを治療するために投与される唯一の抗腫瘍剤であり、すなわち、それは、化学療法などの別の抗腫瘍剤との組み合わせでは投与されない。
【0206】
「抗VEGF抗体をコードする核酸」は、抗体重鎖及び軽鎖(またはそれらの断片)をコードする1つ以上の核酸分子を指し、単一のベクターまたは別個のベクター内の核酸分子(複数可)を含み、そのような核酸分子(複数可)は、宿主細胞内の1つ以上の場所に存在する。
【0207】
免疫機能障害の文脈における「機能障害」という用語は、抗原刺激に対する免疫応答性が低下した状態を指す。この用語には、抗原認識は生じ得るが、後に続く免疫応答が感染または腫瘍成長の制御に無効である、「消耗」及び/または「アネルギー」の両方の共通要素が含まれる。
【0208】
本明細書で使用される場合、「機能障害性」という用語には、抗原認識に対する不応性または無応答性、具体的には、抗原認識を、増殖、サイトカイン産生(例えば、IL-2)、及び/または標的細胞殺滅などの下流T細胞エフェクター機能に翻訳する能力の障害も含まれる。
【0209】
「アネルギー」という用語は、T細胞受容体を通して送達される不完全または不十分なシグナル(例えば、Ras活性化の不在下での細胞内Ca2+の増加)から生じる抗原刺激に対する無応答の状態を指す。T細胞アネルギーはまた、共刺激の不在下における抗原での刺激に際しても生じ得、結果的に細胞は、共刺激の文脈においても、抗原によるその後の活性化に不応性になる。無応答状態は、多くの場合、インターロイキン2の存在により覆され得る。アネルギーT細胞は、クローン増殖を受けない、かつ/またはエフェクター機能を獲得しない。
【0210】
「消耗」という用語は、多くの慢性感染及びがん発症中に生じる持続的TCRシグナル伝達から生じるT細胞機能障害の状態としてのT細胞消耗を指す。これは、それが不完全なまたは不十分なシグナル伝達を通してではなく、持続的シグナル伝達から生じるという点で、アネルギーとは区別される。これは、機能的エフェクターまたはメモリーT細胞とは異なるエフェクター機能不良、阻害性受容体の持続的発現、及び転写状態によって定義される。消耗は、感染及び腫瘍の最適な制御を妨げる。消耗は、外因性の負の制御性経路(例えば、免疫制御性サイトカイン)及び細胞内因性の負の制御性(共刺激性)経路(PD-1、B7-H3、B7-H4など)の両方から生じ得る。
【0211】
「T細胞機能を増強すること」は、持続したもしくは増幅された生物学的機能を有するようにT細胞を誘導するか、引き起こすか、もしくは刺激すること、または消耗されたもしくは不活性のT細胞を再生もしくは再活性化することを意味する。T細胞機能の増強の例としては、介入前のそのようなレベルとの比較での、CD8+T細胞からのγ-インターフェロンの分泌の増加、増殖の増加、抗原応答性(例えば、ウイルス、病原体、または腫瘍のクリアランス)の増加が挙げられる。一実施形態において、増強のレベルは、少なくとも50%、あるいは60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、または200%の増強である。この増強を測定する様式は、当業者にとって既知である。
【0212】
「腫瘍免疫」は、腫瘍が免疫認識及びクリアランスを回避するプロセスを指す。したがって、治療的概念として、腫瘍免疫は、そのような回避が減弱し、腫瘍が免疫系によって認識及び攻撃されるときに「治療される」。腫瘍認識の例としては、腫瘍結合、腫瘍収縮、及び腫瘍クリアランスが挙げられる。
【0213】
「免疫原性」は、特定の物質が免疫応答を誘発する能力を指す。腫瘍は、免疫原性であり、腫瘍免疫原性の増強により、免疫応答による腫瘍細胞のクリアランスが支援される。腫瘍免疫原性の増強の例としては、PD-L1軸結合アンタゴニストでの治療が挙げられる。
【0214】
「プログラム死リガンド1」及び「PD-L1」という用語は、本明細書において、天然配列PD-L1ポリペプチド、ポリペプチドバリアント、ならびに天然配列ポリペプチド及びポリペプチドバリアントの断片(これらは、本明細書において更に定義される)を指す。本明細書に記載されるPD-L1ポリペプチドは、ヒト組織型から、もしくは別の供給源からなどの様々な供給源から単離されるか、または組み換え法もしくは合成法によって調製されたものであり得る。
【0215】
「天然配列PD-L1ポリペプチド」には、対応する、自然界に由来するPD-L1ポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれる。
【0216】
「PD-L1ポリペプチドバリアント」またはその変化形は、本明細書に定義されるPD-L1ポリペプチド、一般には活性PD-L1ポリペプチドが、本明細書に開示される天然配列PD-L1ポリペプチド配列のいずれかと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有することを意味する。そのようなPD-L1ポリペプチドバリアントには、例えば、天然アミノ酸配列のN末端またはC末端に1つ以上のアミノ酸残基が付加または欠失されたPD-L1ポリペプチドが含まれる。通常、PD-L1ポリペプチドバリアントは、本明細書に開示される天然配列PD-L1ポリペプチド配列と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有するだろう。通常、PD-L1バリアントポリペプチドは、少なくとも約10アミノ酸長であり、あるいは少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、281、282、283、284、285、286、287、288、もしくは289アミノ酸長、またはそれ以上である。任意で、PD-L1バリアントポリペプチドは、天然PD-L1ポリペプチド配列と比較して1個以下の保存的アミノ酸置換、あるいは天然PD-L1ポリペプチド配列と比較して2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以下の保存的アミノ酸置換を有するだろう。
【0217】
「PD-L1軸結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達から生じるT細胞機能障害を除去するように、PD-L1軸結合パートナーとその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用を阻害し、結果として、T細胞機能が復元または増強される分子を指す。本明細書で使用される場合、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト及びPD-1結合アンタゴニスト、ならびにPD-L1とPD-1との間の相互作用を妨害する分子(例えば、PD-L2-Fc融合物)を含む。
【0218】
「抗PD-L1抗体」及び「PD-L1に結合する抗体」という用語は、抗体がPD-L1を標的とする上で診断剤及び/または治療剤として有用になるように、十分な親和性でPD-L1に結合することができる抗体を指す。一実施形態において、抗PD-L1抗体の無関係の非PD-L1タンパク質への結合の程度は、例えば、RIAにより測定される、その抗体のPD-L1への結合の約10%未満である。特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は、異なる種に由来するPD-L1の間で保存されているPD-L1のエピトープに結合する。
【0219】
「抗PD-1抗体」及び「PD-1に結合する抗体」という用語は、抗体がPD-1を標的とする上で診断剤及び/または治療剤として有用になるように、十分な親和性でPD-1に結合することができる抗体を指す。一実施形態において、抗PD-1抗体の無関係の非PD-1タンパク質への結合の程度は、例えば、RIAにより測定される、その抗体のPD-1への結合の約10%未満である。特定の実施形態において、抗PD-1抗体は、異なる種に由来するPD-1の間で保存されているPD-1のエピトープに結合する。
【0220】
本明細書で使用される場合、「PD-L1結合アンタゴニスト」は、PD-L1と、PD-1及び/またはB7-1などのその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、抑止、または妨害する分子である。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の一態様において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1及び/またはB7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体及びそれらの抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、小分子アンタゴニスト、ポリヌクレオチドアンタゴニスト、ならびにPD-L1と、PD-1及び/またはB7-1などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、抑止、または妨害する他の分子を含む。一実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1またはPD-1を通して媒介されたシグナル伝達である、Tリンパ球及び他の細胞上で発現される細胞表面タンパク質によりまたはそれを介して媒介される負のシグナルを低下させ、これにより、機能障害T細胞の機能障害状態を軽減する。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。特定の一態様において、抗PD-L1抗体は、YW243.55.S70である。別の特定の態様において、抗PD-L1抗体は、MDX-1105である。更に別の特定の態様において、抗PD-L1抗体は、MEDI4736(ドルバルマブ)である。更に別の特定の態様において、抗PD-L1抗体は、MSB0010718C(アベルマブ)である。更に別の特定の態様において、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるアテゾリズマブ(MPDL3280A)である。
【0221】
本明細書で使用される場合、「PD-1結合アンタゴニスト」は、PD-1と、PD-L1及び/またはPD-L2などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、抑止、または妨害する分子である。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の一態様において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1及び/またはPD-L2への結合を阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体及びそれらの抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、小分子アンタゴニスト、ポリヌクレオチドアンタゴニスト、ならびにPD-1と、PD-L1及び/またはPD-L2との相互作用から生じるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、抑止、または妨害する他の分子を含む。一実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1またはPD-L1を通して媒介されたシグナル伝達である、Tリンパ球及び他の細胞上で発現される細胞表面タンパク質によりまたはそれを介して媒介される負のシグナルを低下させ、これにより、機能障害T細胞の機能障害状態を軽減する。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。特定の一態様において、PD-1結合アンタゴニストは、MDX-1106(ニボルマブ)である。別の特定の態様において、PD-1結合アンタゴニストは、MK-3475(ペンブロリズマブ)である。別の特定の態様において、PD-1結合アンタゴニストは、CT-011(ピディリズマブ)である。別の特定の態様において、PD-1結合アンタゴニストは、MEDI-0680(AMP-514)である。別の特定の態様において、PD-1結合アンタゴニストは、PDR001である。別の特定の態様において、PD-1結合アンタゴニストは、REGN2810である。別の特定の態様において、PD-1結合アンタゴニストは、BGB-108である。別の特定の態様において、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。
【0222】
PD-L1軸結合アンタゴニストが「単一の抗腫瘍剤」として投与される場合、それは、がんを治療するために投与される唯一の抗腫瘍剤であり、すなわち、それは、化学療法などの別の抗腫瘍剤との組み合わせでは投与されない。
【0223】
「PD-L1軸結合アンタゴニストをコードする核酸」は、抗体重鎖及び軽鎖(またはそれらの断片)をコードする1つ以上の核酸分子を指し、単一のベクターまたは別個のベクター内の核酸分子(複数可)を含み、そのような核酸分子(複数可)は、宿主細胞内の1つ以上の場所に存在する。
【0224】
「個体応答」または「応答」は、減速及び完全停止を含む疾患進行(例えば、がん進行)のある程度の阻害、腫瘍サイズの低下、隣接する末梢器官及び/もしくは組織へのがん細胞浸潤の阻害(すなわち、低下、減速、もしくは完全停止)、転移の阻害(すなわち、低下、減速、もしくは完全停止)、疾患もしくは障害(例えば、がん)に関連する1つ以上の症状のある程度の軽減、全生存期間及び無増悪生存期間を含む生存期間の長さの増加もしくは延長、ならびに/または治療後の所与の時点における死亡率の減少を非限定的に含む、個体への利益を示す任意のエンドポイントを使用して評価され得る。
【0225】
ある薬物での治療に対する患者の「有効な応答」または患者の「応答性」及び類似の単語は、がんなどの疾患もしくは障害のリスクにあるか、またはそれを患う患者に付与される臨床的または治療的利益を指す。一実施形態において、そのような利益には、生存期間(全生存期間及び無増悪生存期間を含む)を延長すること、客観的奏効(完全奏効もしくは部分奏効を含む)をもたらすこと、またはがんの徴候もしくは症状を改善することのうちのいずれか1つ以上が含まれる。一実施形態において、バイオマーカー(例えば、腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現、例えば、IHCを使用して決定されるもの)は、そのバイオマーカーを発現しない患者と比較して、ある薬物での治療(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体を含む治療)に応答性である可能性が増加していると予測される患者を特定するために使用される。一実施形態において、バイオマーカー(例えば、腫瘍浸潤免疫細胞におけるCD8A発現、例えば、IHCを使用して決定されるもの)は、同じレベルでバイオマーカーを発現しない患者と比較して、ある薬物(例えば、抗VEGF抗体及び/または抗PD-L1抗体)での治療に対して応答性である可能性が増加していると予測される患者を特定するために使用される。一実施形態において、バイオマーカーの存在は、そのバイオマーカーの存在を有しない患者と比較して、ある薬物での治療に応答する可能性がより高い患者を特定するために使用される。別の実施形態において、バイオマーカーの存在は、ある患者が、そのバイオマーカーの存在を有さない患者と比較して、ある薬物での治療から利益を被る可能性が増加していることを決定するために使用される。
【0226】
「客観的奏効」は、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を含む測定可能な応答を指す。いくつかの実施形態において、「奏効率(ORR)」は、完全奏効(CR)率及び部分奏効(PR)率の合計を指す。
【0227】
「完全奏効」または「CR」により、治療に応答した、がんの全ての徴候の消失(例えば、全ての標的病変の消失)が意図される。これは、必ずしもがんが治癒されたことを意味するものではない。
【0228】
本明細書で使用される場合、「部分奏効」または「PR」は、治療に応答した、1つ以上の腫瘍もしくは病変のサイズ、または身体内のがんの程度の減少を指す。例えば、いくつかの実施形態において、PRは、ベースラインSLDを基準として、標的病変の最長径和(SLD)における少なくとも30%の減少を指す。
【0229】
「持続的応答」は、治療の休止後の腫瘍成長の低下への持続的効果を指す。例えば、腫瘍サイズは、投与期の開始時のサイズと比較して同じままであるか、またはより小さくなり得る。いくつかの実施形態において、持続的応答は、治療期間と少なくとも同じか、治療期間の長さの少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍、もしくは3.0倍か、またはそれ以上の期間を有する。
【0230】
本明細書で使用される場合、「疾患安定」または「SD」は、治療開始以来の最小のSLDを基準として、PRと言えるほどの十分な標的病変の収縮も、PDと言えるほどの十分な増加もないことを指す。
【0231】
本明細書で使用される場合、「疾患進行」または「PD」は、治療開始以来の記録された最小のSLDを基準として、標的病変のSLDの少なくとも20%の増加または1つ以上の新たな病変の存在を指す。
【0232】
「生存期間」という用語は、患者が生存していることを指し、全生存期間及び無増悪生存期間を含む。
【0233】
本発明の文脈において、「無増悪生存期間」という語句は、治療中及び治療後の時間の長さを指し、その間に、治療している医師または調査者の評価に従って、患者の疾患は悪化しない(すなわち、進行しない)。当業者が理解するように、患者の無増悪生存期間は、患者がより長い時間の長さを経験する場合に改善または増強され、その間に、疾患は、類似の状況にある患者の対照群の平均(average)または平均(mean)無増悪生存期間と比較して進行しない。
【0234】
本明細書で使用される場合、「全生存期間」(OS)は、特定の期間後に生存している可能性が高い、群における個体のパーセンテージを指す。
【0235】
「生存延長」とは、未治療の患者と比較して(すなわち、その薬物で治療されていない患者と比較して)、または指定されたレベルでバイオマーカーを発現しない患者と比較して、及び/または承認済み抗腫瘍剤(例えば、抗VEGF抗体もしくはPD-L1軸結合アンタゴニスト)で治療された患者と比較して、治療された患者における全生存期間または無増悪生存期間が増加することを意味する。
【0236】
「利益」という用語は、最も広義に使用され、任意の望ましい効果を指し、本明細書に定義される臨床的利益を具体的に含む。臨床的利益は、様々なエンドポイント、例えば、減速及び完全停止を含む、疾患進行のある程度の阻害、疾患の発症及び/もしくは症状の数の低下、病変サイズの低下、隣接する末梢器官及び/もしくは組織内への疾患細胞浸潤の阻害(すなわち、低下、減速、もしくは完全停止)、疾患伝播の阻害(すなわち、低下、減速、もしくは完全停止)、疾患病変の退縮もしくは消失をもたし得るが、もたらさなくてもよい、自己免疫応答の減少、障害に関連する1つ以上の症状のある程度の軽減、治療後の無増悪提示期間(例えば、無増悪生存期間)の増加、全生存期間の増加、より高い奏効率、ならびに/または治療後の所与の時点における死亡率の減少を評価することによって測定され得る。
【0237】
III.方法
一態様において、本発明は、部分的には、1つ以上の免疫学的バイオマーカー(例えば、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、SLAMF7、MHC-I、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CCR7、CX3CL1)の発現レベルならびに/または免疫細胞(例えば、CD8+Teff細胞及び/もしくはCD68+/CD163+マクロファージ)の腫瘍浸潤の変化が、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及び/またはPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、PD-L1結合アンタゴニスト、例えば、アテゾリズマブ)を含む抗がん療法に対する患者の応答に関連するという発見に基づく。特定の実施形態において、そのようなバイオマーカーの発現に従って、治療に対する患者の応答を監視する方法が提供される。他の実施形態において、そのようなバイオマーカーの発現レベルまたは数に従って、がん(例えば、腎臓癌)を治療する方法が提供される。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法から利益を受ける可能性が高いがん患者を特定する方法が提供される。いくつかの実施形態において、がん患者のために、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法を選択する方法が提供される。本発明はまた、がん(例えば、RCC、例えば、mRCCなどの腎臓癌)を有する患者を治療するための方法も提供する。いくつかの事例において、本発明の方法は、本発明のバイオマーカーの発現レベルに基づいて、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法を患者に投与することを含む。
【0238】
A.治療に対する応答、診断、予後、及び患者選択を監視する方法
本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及び/またはPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)に対する応答と相関する、腎臓癌(例えば、腎細胞癌(RCC)、例えば、転移性RCC(mRCC))などのがんのバイオマーカー(例えば、免疫学的バイオマーカー)の特定、選択、及び使用に関する。この点に関して、本発明は、1つ以上のバイオマーカーの基準レベル(複数可)に対する、本発明のバイオマーカーのうちの1つ以上の発現プロファイル(複数可)を使用して、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)とPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)との組み合わせに対して感受性または応答性である患者を特定することに関する。いくつかの事例において、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)の投与は、基準レベル(複数可)に対する、1つ以上のバイオマーカーの腫瘍特異的発現レベル(複数可)の決定及び/または比較に基づく。
【0239】
本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法での治療に対する、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者の応答を監視する方法を提供し、本方法は、患者から得られる試料中の1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルを決定することと、試料中の1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを基準レベルと比較し、それにより抗がん療法での治療に対する患者の応答を監視することとを伴う。いくつかの実施形態において、発現レベルは、基準レベルと比較して増加する。例示的な免疫学的バイオマーカーの一覧を、以下の表2に明記する。いくつかの実施形態において、本方法は、以下の表2に明記されるバイオマーカーの発現レベルに基づいて、患者のために、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法を選択することを伴う。
表2.免疫学的バイオマーカー
【0240】
他の実施形態において、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法での治療から利益を受ける可能性が高いがん(例えば、腎臓癌)を有する患者を特定する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルを決定することと、試料中の1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを基準レベルと比較し、それにより抗がん療法での治療から利益を受ける可能性が高いものとして患者を特定することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準レベルとの比較での、生物学的試料中の1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、抗がん療法での治療から利益を受ける可能性が高いものとして患者を特定する。いくつかの実施形態において、免疫学的バイオマーカーを、表2に明記する。他の実施形態において、免疫学的バイオマーカーは、MHC-Iである。
【0241】
別の実施形態において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を診断または予後診断する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルを決定することと、試料中の1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを基準レベルと比較し、それによりそのがんを診断または予後診断することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準レベルとの比較での、生物学的試料中の1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、患者を診断または予後診断する。いくつかの実施形態において、免疫学的バイオマーカーを、表2に明記する。他の実施形態において、免疫学的バイオマーカーは、MHC-Iである。
【0242】
更に別の実施形態において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者が、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法での治療に応答する可能性が高いかを決定する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルを決定することと、試料中の1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを基準レベルと比較し、それにより抗がん療法に応答する可能性が高いものとして患者を特定することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準レベルとの比較での、生物学的試料中の1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、抗がん療法での治療に応答する可能性が高いものとして患者を特定する。いくつかの実施形態において、免疫学的バイオマーカーを、表2に明記する。他の実施形態において、免疫学的バイオマーカーは、MHC-Iである。
【0243】
他の実施形態において、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法の治療有効性を最適化する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルを決定することと、試料中の1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを基準レベルと比較することとを伴い、基準レベルとの比較での、生物学的試料中の1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、抗がん療法に応答する可能性が高い患者を特定する。いくつかの実施形態において、免疫学的バイオマーカーを、表2に明記する。他の実施形態において、免疫学的バイオマーカーは、MHC-Iである。
【0244】
また更なる実施形態において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者のために、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法を選択する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルを決定することと、試料中の1つ以上のバイオマーカーの発現レベルを基準レベルと比較することと、1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルに基づいて、患者のために、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法を選択することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準レベルとの比較での、生物学的試料中の1つ以上の免疫学的バイオマーカーの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)を使用して、抗がん療法を選択する。いくつかの実施形態において、免疫学的バイオマーカーを、表2に明記する。他の実施形態において、免疫学的バイオマーカーは、MHC-Iである。
【0245】
いくつかの実施形態において、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)含む抗がん療法での治療に対する、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者の応答を監視する方法を提供し、本方法は、抗がん療法の投与後の時点で患者から得られる生物学的試料中の、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の免疫学的バイオマーカーの発現レベルを決定することと、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを基準レベルと比較し、それにより抗がん療法での治療に対する患者における応答を監視することとを伴う。
【0246】
他の実施形態において、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法での治療から利益を受ける可能性が高いがん(例えば、腎臓癌)を有する患者を特定する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中のCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを決定することと、生物学的試料中のCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルを基準レベルと比較し、それにより抗がん療法での治療から利益を受ける可能性が高いものとして患者を特定することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準レベルとの比較での、生物学的試料中のCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、抗がん療法での治療から利益を受ける可能性が高いものとして患者を特定する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0247】
別の実施形態において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を診断または予後診断する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中のCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを決定することと、生物学的試料中のCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルを基準レベルと比較し、それによりそのがんを診断または予後診断することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準レベルとの比較での、生物学的試料中のCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、患者を診断または予後診断する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0248】
更に別の実施形態において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者が、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法での治療に応答する可能性が高いかを決定する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中のCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを決定することと、生物学的試料中のCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルを基準レベルと比較し、それにより抗がん療法に応答する可能性が高いものとして患者を特定することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準レベルとの比較での、生物学的試料中のCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、抗がん療法での治療に応答する可能性が高いものとして患者を特定する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0249】
他の実施形態において、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法の治療有効性を最適化する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中のCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを決定することと、生物学的試料中のCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルを基準レベルと比較することとを伴い、基準レベルとの比較での、生物学的試料中のCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、抗がん療法に応答する可能性が高い患者を特定する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0250】
また更なる実施形態において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者のために、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法を選択する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中のCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを決定することと、生物学的試料中のCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルを基準レベルと比較することと、基準レベルとの比較での、生物学的試料中のCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルに基づいて、患者のために、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法を選択することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準レベルとの比較での、生物学的試料中のCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)を使用して、抗がん療法を選択する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0251】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7つ)の発現レベルは、腫瘍微小環境におけるCD8+Tエフェクター(Teff)細胞の存在と相関する。いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1つ以上(例えば、1つ、2つ、または3つ)の発現レベルは、腫瘍微小環境におけるナチュラルキラー(NK)細胞の存在と相関する。CD8+Teff細胞及び/またはNK細胞の存在を検出する方法は、本明細書に記載され、例えば、腫瘍試料細胞のフローサイトメトリー分析(例えば、腫瘍生検における腫瘍浸潤免疫細胞の分析)を含む。特定の実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)の発現レベルは、腫瘍微小環境におけるTh1ケモカインの存在と相関する。腫瘍微小環境におけるTh1ケモカインの存在を検出する方法は、本明細書に記載され、例えば、腫瘍試料(例えば、腫瘍生検溶解物)のELISA分析を含む。
【0252】
前述の方法のいずれかの特定の実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7つ)の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、及びPRF1の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CD8Aのレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約60倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約15倍、約17倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約55倍、約60倍、または約1倍~約50倍)増加する。いくつかの実施形態において、CD8Aのレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、100倍、200倍、250倍、500倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、CD8Bのレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約60倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約15倍、約17倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約55倍、約60倍、または約1倍~約50倍)増加する。いくつかの実施形態において、CD8Bのレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、100倍、200倍、250倍、500倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、のレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約60倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約15倍、約17倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約55倍、約60倍、または約1倍~約50倍)増加する。いくつかの実施形態において、EOMESのレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、100倍、200倍、250倍、500倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、GZMAのレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約60倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約15倍、約17倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約55倍、約60倍、または約1倍~約50倍)増加する。いくつかの実施形態において、GZMAのレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、100倍、200倍、250倍、500倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、GZMBのレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約60倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約15倍、約17倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約55倍、約60倍、または約1倍~約50倍)増加する。いくつかの実施形態において、GZMBのレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、100倍、200倍、250倍、500倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、IFNGのレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約60倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約15倍、約17倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約55倍、約60倍、または約1倍~約50倍)増加する。いくつかの実施形態において、IFNGのレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、100倍、200倍、250倍、500倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、PRF1のレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約60倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約15倍、約17倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約55倍、約60倍、または約1倍~約50倍)増加する。いくつかの実施形態において、PRF1のレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、100倍、200倍、250倍、500倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。特定の実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの少なくとも2つまたは少なくとも3つの発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、及びCXCL13の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CXCL9のレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約300倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約20倍、約30倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、約100倍、約150倍、約200倍、約250倍、約3倍~約250倍、または約1倍~約80倍)増加する。いくつかの実施形態において、CXCL9のレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、80倍、100倍、150倍、200倍、250倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、CXCL10のレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約300倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約20倍、約30倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、約100倍、約150倍、約200倍、約250倍、約3倍~約250倍、または約1倍~約80倍)増加する。いくつかの実施形態において、CXCL10のレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、80倍、100倍、150倍、200倍、250倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、CXCL11のレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約300倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約20倍、約30倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、約100倍、約150倍、約200倍、約250倍、約3倍~約250倍、または約1倍~約80倍)増加する。いくつかの実施形態において、CXCL11のレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、80倍、100倍、150倍、200倍、250倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、CXCL13のレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約300倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約20倍、約30倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、約100倍、約150倍、約200倍、約250倍、約3倍~約250倍、または約1倍~約80倍)増加する。いくつかの実施形態において、CXCL13のレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、80倍、100倍、150倍、200倍、250倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。
【0253】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1つ以上(例えば、1つ、2つ、または3つ)の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの少なくとも2つの発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、及びSLAMF7の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、GZMBのレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約20倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約12倍、約13倍、約15倍、約20倍、約1倍~約8倍、または約1倍~約13倍)増加する。いくつかの実施形態において、GZMBのレベルは、基準レベルと比較して、約8倍以上(例えば、約8倍、9倍、10倍、13倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、KLRK1のレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約20倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約12倍、約13倍、約15倍、約20倍、約1倍~約8倍、または約1倍~約13倍)増加する。いくつかの実施形態において、KLRK1のレベルは、基準レベルと比較して、約8倍以上(例えば、約8倍、9倍、10倍、13倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、SLAMF7のレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約20倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約12倍、約13倍、約15倍、約20倍、約1倍~約8倍、または約1倍~約13倍)増加する。いくつかの実施形態において、SLAMF7のレベルは、基準レベルと比較して、約8倍以上(例えば、約8倍、9倍、10倍、13倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。
【0254】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者から得られる生物学的試料中のCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルは、基準レベルと比較して、(例えば、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約5.5倍、約6倍、約6.5倍、約7倍、約7.5倍、約8倍、約8.5倍、約9倍、約9.5倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍以上だけ)増加する。
【0255】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、基準レベルは、抗がん療法の投与前(例えば、数分、数時間、数日、数週間(例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7週間)、数ヶ月、または数年前)に得られる、患者からの生物学的試料中の1つ以上の遺伝子(例えば、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7)の発現レベルである。特定の実施形態において、基準レベルは、基準集団における1つ以上の遺伝子の発現レベルである。特定の実施形態において、基準レベルは、1つ以上の遺伝子に事前に割り当てられた発現レベルである。いくつかの実施形態において、基準レベルは、抗がん療法の投与後である以前の時点で、患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルである。他の実施形態において、基準レベルは、その後の時点(例えば、抗がん療法の投与の数分後、数時間後、数日後、数週間後、数ヶ月後、もしくは数年後)で患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルである。
【0256】
別の態様において、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法での治療に対する、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者の応答を監視する方法を提供し、本方法は、抗がん療法の投与後の時点で患者から得られる生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルを決定することと、生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルを基準レベルと比較し、それにより抗がん療法での治療に対する患者における応答を監視することとを伴う。いくつかの実施形態において、患者から得られる生物学的試料中の発現レベルは、基準レベルと比較して増加する。
【0257】
他の実施形態において、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法での治療から利益を受ける可能性が高いがん(例えば、腎臓癌)を有する患者を特定する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルを決定することと、生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルを基準レベルと比較し、それにより抗がん療法での治療から利益を受ける可能性が高いものとして患者を特定することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準レベルとの比較での、生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、抗がん療法での治療から利益を受ける可能性が高いものとして患者を特定する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0258】
別の実施形態において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を診断または予後診断する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルを決定することと、患者の試料中のMHC-Iの発現レベルを基準レベルと比較し、それによりそのがんを診断または予後診断することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準レベルとの比較での、生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、患者を診断または予後診断する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0259】
更に別の実施形態において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者が、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法での治療に応答する可能性が高いかを決定する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルを決定することと、患者の試料中のMHC-Iの発現レベルを基準レベルと比較し、それにより抗がん療法に応答する可能性が高いものとして患者を特定することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準レベルとの比較での、生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、抗がん療法での治療に応答する可能性が高いものとして患者を特定する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0260】
他の実施形態において、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法の治療有効性を最適化する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルを決定することと、患者の試料中のMHC-Iの発現レベルを基準レベルと比較することとを伴い、基準レベルとの比較での、生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、抗がん療法に応答する可能性が高い患者を特定する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0261】
また更なる実施形態において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者のために、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法を選択する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルを決定することと、生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルを基準レベルと比較することと、基準レベルとの比較での、患者の試料中のMHC-Iの発現レベルに基づいて、患者のために、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1アンタゴニストを含む抗がん療法を選択することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準レベルとの比較での、生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルの変化(例えば、増加または減少)を使用して、抗がん療法を選択する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0262】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、MHC-Iの発現レベルは、本明細書に記載される検出方法のいずれかによって、任意のヒト白血球抗原クラスI(HLA-I)遺伝子または偽遺伝子(例えば、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、HLA-K、もしくはHLA-L)、あるいはこれらのハプロタイプの発現レベルを決定することによって評価される。いくつかの実施形態において、MHC-Iの発現レベルは、MHC-Iアルファ鎖またはHLA-I組織適合抗原アルファ鎖のタンパク質発現によって評価される。
【0263】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、基準レベルは、抗がん療法の投与前(例えば、数分、数時間、数日、数週間(例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7週間)、数ヶ月、または数年前)に得られる、患者からの生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルである。他の実施形態において、基準レベルは、基準集団におけるMHC-Iの発現レベルである。他の実施形態において、基準レベルは、MHC-Iに事前に割り当てられた発現レベルである。他の実施形態において、基準レベルは、抗がん療法の投与後である以前の時点で、患者から得られる生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルである。他の実施形態において、基準レベルは、その後の時点(例えば、抗がん療法の投与の数分後、数時間後、数日後、数週間後、数ヶ月後、もしくは数年後)で患者から得られる生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルである。
【0264】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者から得られる生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルは、基準レベルと比較して、(例えば、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約5.5倍、約6倍、約6.5倍、約7倍、約7.5倍、約8倍、約8.5倍、約9倍、約9.5倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍以上だけ)増加する。いくつかの実施形態において、患者から得られる生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルは、少なくとも約2倍だけ増加する。
【0265】
更なる一態様において、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法での治療に対する、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者の応答を監視する方法を提供し、本方法は、抗がん療法の投与後の時点で患者から得られる生物学的試料中の、以下の遺伝子、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7つ)の発現レベルを決定することと、生物学的試料中のCX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上の発現レベルを基準レベルと比較し、それにより抗がん療法での治療に対する、患者における応答を監視することとを伴う。
【0266】
他の実施形態において、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法での治療から利益を受ける可能性が高いがん(例えば、腎臓癌)を有する患者を特定する方法を提供し、本方法は、抗がん療法の投与後の時点で患者から得られる生物学的試料中の、以下の遺伝子、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7つ)の発現レベルを決定することと、生物学的試料中のCX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上の発現レベルを基準レベルと比較し、それにより抗がん療法での治療から利益を受ける可能性が高いものとして患者を特定することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準レベルとの比較での、生物学的試料中のCX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、抗がん療法での治療から利益を受ける可能性が高いものとして患者を特定する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0267】
別の実施形態において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を診断または予後診断する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中の以下の遺伝子、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7つ)の発現レベルを決定することと、生物学的試料中のCX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上の発現レベルを基準レベルと比較し、それによりそのがんを診断または予後診断することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準レベルとの比較での、生物学的試料中のCX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、患者を診断または予後診断する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0268】
更に別の実施形態において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者が、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法での治療に応答する可能性が高いかを決定する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中の、以下の遺伝子、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7つ)の発現レベルを決定することと、生物学的試料中のCX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上の発現レベルを基準レベルと比較し、それにより抗がん療法に応答する可能性が高いものとして患者を特定することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準レベルとの比較での、生物学的試料中のCX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、抗がん療法での治療に応答する可能性が高いものとして患者を特定する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0269】
他の実施形態において、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法の治療有効性を最適化する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中の、以下の遺伝子、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7つ)の発現レベルを決定することと、生物学的試料中のCX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上の発現レベルを基準レベルと比較することとを伴い、基準レベルとの比較での、生物学的試料中のCX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)により、抗がん療法に応答する可能性が高い患者を特定する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0270】
また更なる実施形態において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者のために、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法を選択する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中の、以下の遺伝子、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7つ)の発現レベルを決定することと、生物学的試料中のCX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上の発現レベルを基準レベルと比較することと、基準レベルとの比較での、生物学的試料中のCX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上の発現レベルに基づいて、患者のために、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法を選択することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準レベルとの比較での、生物学的試料中のCX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上の発現レベルの変化(例えば、増加または減少)を使用して、抗がん療法を選択する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0271】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者から得られる生物学的試料中の発現レベルは、基準レベルと比較して増加する。いくつかの実施形態において、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、及びCXCL10の発現レベルが決定される。
【0272】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、基準レベルは、抗がん療法の投与前(例えば、数分、数時間、数日、数週間、数ヶ月、または数年前)に得られる、患者からの生物学的試料中の1つ以上の遺伝子(例えば、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、及び/またはCXCL10)の発現レベルである。他の実施形態において、基準レベルは、基準集団における1つ以上の遺伝子の発現レベルである。他の実施形態において、基準レベルは、1つ以上の遺伝子に事前に割り当てられた発現レベルである。他の実施形態において、基準レベルは、抗がん療法の投与後である以前の時点で、患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルである。他の実施形態において、基準レベルは、その後の時点で患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルである。
【0273】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者から得られる生物学的試料中のCX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、及び/またはCXCL10のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7つ)の発現レベルは、基準レベルと比較して、(例えば、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約5.5倍、約6倍、約6.5倍、約7倍、約7.5倍、約8倍、約8.5倍、約9倍、約9.5倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍以上だけ)増加する。
【0274】
上述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者からの生物学的試料は、抗がん療法の投与の約2~約10週間(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10週間)後に得られる。いくつかの実施形態において、患者からの生物学的試料は、抗がん療法の投与の約4~約6週間後に得られる。
【0275】
前述の方法のいずれかの特定の実施形態において、本発明の方法は、MHC-Iまたは1つ以上の遺伝子(例えば、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、SLAMF7、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、及び/またはCCR7)の発現レベルが、基準レベルと比較して増加する患者に、抗がん療法の1回分以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回分、またはそれ以上)の追加の用量を投与するステップを更に伴う。
【0276】
上述のバイオマーカーのいずれかの存在及び/または発現レベルは、DNA、mRNA、CDNA、タンパク質、タンパク質断片、及び/または遺伝子コピー数を含むが、これらに限定されない、当該技術分野において既知である任意の好適な基準に基づいて、定性的かつ/または定量的に評価することができる。免疫組織化学(「IHC」)、ウェスタンブロット分析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光活性化細胞選別(「FACS」)、MassARRAY、プロテオミクス、定量的血液系アッセイ(例えば、血清ELISA)、生化学的酵素活性アッセイ、インサイチュハイブリダイゼーション、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、サザン分析、ノーザン分析、全ゲノム配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)及び他の増幅型検出方法(分岐状DNA、SISBA、及びTMAなど)を含む)、RNA-Seq、マイクロアレイ分析、遺伝子発現プロファイリング、全ゲノム配列決定(WGS)、ならびに/または遺伝子発現の逐次分析(「SAGE」)、ならびにタンパク質、遺伝子、及び/もしくは組織アレイ分析によって実行され得る多種多様なアッセイのうちのいずれか1つを含むが、これらに限定されない、そのようなバイオマーカーを測定するための方法論は、当該技術分野において既知であり、当業者によって理解されている。遺伝子及び遺伝子産物の状態を評価するための典型的なプロトコルは、例えば、Ausubel et al.eds.(Current Protocols In Molecular Biology,1995),Units2(ノーザンブロット)、4(サザンブロット)、15(免疫ブロット)、及び18(PCR分析)に見出される。Rules Based MedicineまたはMeso Scale Discovery(「MSD」)から入手可能なアッセイなどの多重免疫アッセイもまた、使用され得る。
【0277】
前述の方法のいずれにおいても、バイオマーカーの発現レベルは、タンパク質発現レベルである。特定の実施形態において、本方法は、バイオマーカーの結合を許容する条件下で、生物学的試料を、本明細書に記載されるバイオマーカーに特異的に結合する抗体と接触させることと、抗体とバイオマーカーとの間で複合体が形成されるかを検出することとを含む。そのような方法は、インビトロ方法またはインビボ方法であり得る。いくつかの事例において、抗体を使用して、VEGFアンタゴニスト及び/またはPD-L1軸結合アンタゴニストでの療法に適格な患者、例えば、個体の選択のためのバイオマーカーを選択する。当該技術分野において既知であるか、または本明細書に提供される、タンパク質発現レベルを測定する任意の方法が使用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、フローサイトメトリー(例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS(商標)))、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫沈降、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光法、放射免疫アッセイ、ドットブロット、免疫検出法、HPLC、表面プラズモン共鳴、光学分光、質量分析法、及びHPLCからなる群から選択される方法を使用して決定される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞内で決定される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、腫瘍細胞内で決定される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞内及び/または腫瘍細胞内で決定される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーのタンパク質発現レベルは、末梢血単核球細胞(PBMC)内で決定される。
【0278】
特定の実施形態において、試料中のバイオマーカータンパク質の存在及び/または発現レベル/量は、IHC及び染色プロトコルを使用して試験される。組織切片のIHC染色は、試料中のタンパク質の存在を決定または検出する信頼できる方法であると示されている。これらの方法、アッセイ、及び/またはキットのいずれかのいくつかの実施形態において、バイオマーカーは、以下の遺伝子、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、SLAMF7、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、及びMHC-Iのタンパク質発現産物のうちの1つ以上である。一実施形態において、バイオマーカーの発現レベルは、(a)抗体によって試料(患者から得られる腫瘍試料など)のIHC分析を実行することと、(b)試料中のバイオマーカーの発現レベルを決定することとを含む方法を使用して決定される。いくつかの実施形態において、IHC染色強度は、基準との比較で決定される。いくつかの実施形態において、基準は、基準値である。いくつかの実施形態において、基準は、基準試料(例えば、対照細胞株染色試料、非がん患者の組織試料、または対象となるバイオマーカーについて負であることが決定される腫瘍試料)である。
【0279】
IHCは、形態的染色及び/またはインサイチュハイブリダイゼーション(例えば、FISH)などの追加の技術と組み合わせて実行され得る。2つの一般的なIHC法、つまり、直接アッセイ及び間接アッセイが利用可能である。第1のアッセイに従って、抗体の標的抗原への結合が直接決定される。この直接アッセイは、更なる抗体相互作用なしで可視化され得る蛍光タグまたは酵素標識一次抗体などの標識試薬を使用する。典型的な間接アッセイにおいて、非コンジュゲート一次抗体が抗原に結合し、その後、標識二次抗体がその一次抗体に結合する。二次抗体が酵素標識にコンジュゲートされる場合、発色基質または蛍光発生基質を添加して、抗原の可視化をもたらす。いくつかの二次抗体が一次抗体上の異なるエピトープと反応し得るため、シグナル増幅が生じる。
【0280】
IHCに使用される一次抗体及び/または二次抗体は典型的には、検出可能な部分で標識されるだろう。多数の標識が利用可能であり、これらは一般に、以下のカテゴリー、(a)35S、14C、1251、3H、及び131Iなどの放射性同位体、(b)コロイド金粒子、(c)希土類キレート(ユウロピウムキレート)、Texas Red、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコクリセリン、フィコシアニン、もしくは市販のフルオロフォア(SPECTRUM ORANGE7及びSPECTRUM GREEN7など)、ならびに/または上記のいずれか1つ以上の誘導体を含むが、これらに限定されない、蛍光標識に群分けされ得、(d)様々な酵素-基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号がこれらのいくつかについての概説を提供する。酵素標識の例としては、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ、例えば、米国特許第4,737,456号を参照されたい)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ(西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)など)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖類オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環式オキシダーゼ(ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、ならびにマイクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。
【0281】
酵素-基質の組み合わせの例としては、例えば、基質として水素ペルオキシダーゼを有する西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、発色基質としてパラ-ニトロフェニルリン酸を有するアルカリホスファターゼ(AP)、及び発色基質(例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)または蛍光発生基質(例えば、4-メチルアンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼ)を有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)が挙げられる。これらについての一般的な概説については、例えば、米国特許第4,275,149号及び同第4,318,980号を参照されたい。
【0282】
検体は、例えば、手動で、または自動化染色装置(例えば、Ventana BenchMark XTまたはBenchmark ULTRA装置)を使用して調製され得る。このようにして調製された検体は、載置され、カバーガラスがかけられ得る。その後、例えば、顕微鏡を使用してスライド評価が決定され、当該技術分野において慣習的に使用される染色強度基準が用いられ得る。一実施形態において、腫瘍からの細胞及び/または組織を、IHCを使用して試験するとき、染色は一般に、(試料中に存在し得る間質性組織または周辺組織とは対照的に)腫瘍細胞(複数可)内及び/または組織内で決定または評価されることを理解されたい。いくつかの実施形態において、腫瘍からの細胞及び/または組織を、IHCを使用して試験するとき、染色は、腫瘍内免疫細胞または腫瘍周囲免疫細胞を含む腫瘍浸潤免疫細胞内で決定または評価することを含むことが理解される。いくつかの実施形態において、バイオマーカーの存在は、IHCによって、0%超の試料中、少なくとも1%の試料中、少なくとも5%の試料中、少なくとも10%の試料中、少なくとも15%の試料中、少なくとも20%の試料中、少なくとも25%の試料中、少なくとも30%の試料中、少なくとも35%の試料中、少なくとも40%の試料中、少なくとも45%の試料中、少なくとも50%の試料中、少なくとも55%の試料中、少なくとも60%の試料中、少なくとも65%の試料中、少なくとも70%の試料中、少なくとも75%の試料中、少なくとも80%の試料中、少なくとも85%の試料中、少なくとも90%の試料中、少なくとも95%の試料中、またはそれ以上に検出される。試料は、当該技術分野において既知である任意の方法を使用して、例えば、病理学者または自動化画像分析によってスコア化され得る。
【0283】
これらの方法のいずれかのいくつかの実施形態において、バイオマーカーは、診断抗体(すなわち、一次抗体)を使用する免疫組織化学によって検出される。いくつかの実施形態において、診断抗体は、ヒト抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、診断抗体は、非ヒト抗原である。いくつかの実施形態において、診断抗体は、ラット、マウス、またはウサギ抗体である。いくつかの実施形態において、診断抗体は、ウサギ抗体である。いくつかの実施形態において、診断抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、診断抗体は、直接的に標識される。他の実施形態において、診断抗体は、間接的に標識される。
【0284】
前述の方法のいずれかの他の実施形態において、バイオマーカーの発現レベルは、核酸発現レベル(例えば、DNA発現レベルまたはRNA発現レベル(例えば、mRNA発現レベル)であり得る。核酸発現レベルを決定する任意の好適な方法が使用され得る。いくつかの実施形態において、核酸発現レベルは、qPCR、rtPCR、RNA-seq、多重qPCRもしくはRT-qPCR、マイクロアレイ分析、遺伝子発現の逐次分析(SAGE)、MassARRAY技術、またはインサイチュハイブリダイゼーション(例えば、FISH)、あるいはこれらの組み合わせを使用して決定される。
【0285】
細胞内のmRNAの評価のための方法は周知であり、例えば、遺伝子発現の逐次分析(SAGE)、全ゲノム配列決定(WGS)、相補的DNAプローブを使用するハイブリダイゼーションアッセイ(1つ以上の遺伝子に特異的な標識リボプローブを使用するインサイチュハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、及び関連技術など)、ならびに様々な核酸増幅アッセイ(遺伝子のうちの1つ以上に特異的な相補的プライマーを使用するRT-PCR(例えば、qRT-PCR)ならびに他の増幅型検出法(分岐状DNA、SISBA、及びTMAなど)など)が含まれる。加えて、そのような方法は、(例えば、アクチンファミリーメンバーなどの「ハウスキーピング」遺伝子の比較対照mRNA配列のレベルを同時に試験することによって)生物学的試料中の標的mRNAのレベルを決定することを可能にする1つ以上のステップを含み得る。任意で、増幅標的cDNAの配列が決定され得る。任意の方法は、マイクロアレイ技術によって組織または細胞試料中の標的mRNAなどのmRNAを試験または検出するプロトコルを含む。核酸マイクロアレイを使用して、試験及び対照組織試料からの試験及び対照mRNA試料を逆転写し、標識して、cDNAプローブを生成する。その後、プローブを、固体支持体に固定した核酸のアレイにハイブリダイズする。アレイは、アレイの各メンバーの配列及び位置が分かるように構成される。例えば、その発現がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む治療の臨床的利益の増加または低下と相関する様々な遺伝子の選択が、固体支持体上にアレイされ得る。特定のアレイメンバーとの標識プローブのハイブリダイゼーションは、プローブが由来する試料がその遺伝子を発現することを示す。
【0286】
いくつかの実施形態において、本発明は、抗がん療法の投与後の時点で患者から得られる腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数を決定することと、腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数を基準試料と比較し、それにより抗がん療法での治療を受ける患者における応答を監視することとによって、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法で治療した、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者の応答を監視する方法を提供する。
【0287】
他の実施形態において、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法での治療から利益を受ける可能性が高いがん(例えば、腎臓癌)を有する患者を特定する方法を提供し、本方法は、患者から得られる腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数を決定することと、腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数を基準試料と比較し、それにより抗がん療法での治療から利益を受ける可能性が高いものとして患者を特定することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準試料との比較での、腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数の変化(例えば、増加または減少)により、抗がん療法での治療から利益を受ける可能性が高いものとして患者を特定する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0288】
別の実施形態において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を診断または予後診断する方法を提供し、本方法は、患者から得られる腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数を決定することと、腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数を基準試料と比較し、それによりそのがんを診断または予後診断することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準試料との比較での、腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数の変化(例えば、増加または減少)により、患者を診断または予後診断する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0289】
更に別の実施形態において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者が、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法での治療に応答する可能性が高いかを決定する方法を提供し、本方法は、患者から得られる腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数を決定することと、腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数を基準試料と比較し、それにより抗がん療法に応答する可能性が高いものとして患者を特定することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準試料との比較での、腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数の変化(例えば、増加または減少)により、抗がん療法での治療に応答する可能性が高いものとして患者を特定する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0290】
他の実施形態において、本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法の治療有効性を最適化する方法を提供し、本方法は、患者から得られる腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数を決定することと、腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数を基準試料と比較することとを伴い、患者から得られる腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数を決定することと、腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数を基準試料と比較することとにより、抗がん療法に応答する可能性が高い患者を特定する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0291】
また更なる実施形態において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者のために、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法を選択する方法を提供し、本方法は、患者から得られる腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数を決定することと、腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数を基準試料と比較することと、基準試料を有する腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数に基づいて、患者のために、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法を選択することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準試料を有する腫瘍試料中のCD8+T細胞及び/またはCD68+/CD163+マクロファージの数の変化(例えば、増加または減少)を使用して、抗がん療法を選択する。いくつかの実施形態において、変化は増加である。他の実施形態において、変化は減少である。
【0292】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者から得られる腫瘍試料は、基準試料と比較して、(例えば、少なくとも約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3倍、約3.1倍、約3.2倍、約3.3倍、約3.4倍、約3.5倍、約3.6倍、約3.7倍、約3.8倍、約3.9倍、約4倍、約4.1倍、約4.2倍、約4.3倍、約4.4倍、約4.5倍、約4.6倍、約4.7倍、約4.8倍、約4.9倍、約5倍、約5.5倍、約6倍、約6.5倍、約7倍、約7.5倍、約8倍、約8.5倍、約9倍、約9.5倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍以上だけ)増加した数のCD8+T細胞及び/またはマクロファージ(例えば、CD68+/CD163+マクロファージ)を有する。
【0293】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者からの生物学的試料は、抗がん療法の投与の約2~約10週間(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10週間)後に得られる。いくつかの実施形態において、患者からの生物学的試料は、抗がん療法の投与の約4~約6週間後に得られる。
【0294】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、バイオマーカーの発現レベルまたは数は、組織試料、初代もしくは培養細胞もしくは細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、全血、血液由来の細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物、及び組織培養培地、組織抽出物(均質化組織など)、腫瘍組織、細胞抽出物、またはこれらの任意の組み合わせ中で検出される。
【0295】
例えば、前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、バイオマーカーの発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、PBMC、またはこれらの組み合わせ中で、既知の技術(例えば、フローサイトメトリーまたはIHC)を使用して検出される。腫瘍浸潤免疫細胞としては、腫瘍内免疫細胞、腫瘍周囲免疫細胞、またはこれらの任意の組み合わせ、及び他の腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。そのような腫瘍浸潤免疫細胞は、Tリンパ球(CD8+Tリンパ球(例えば、CD8+Tエフェクター(Teff)細胞)及び/もしくはCD4+Tリンパ球(例えば、CD4+Teff細胞)など)、Bリンパ球、または顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球、マクロファージ、樹状細胞(例えば、指状嵌入樹状細胞)、組織球、及びナチュラルキラー細胞(NK)を含む他の骨髄系細胞であり得る。いくつかの実施形態において、バイオマーカーの染色は、膜染色、細胞質染色、またはこれらの組み合わせとして検出される。他の実施形態において、バイオマーカーの不在は、基準試料との比較での、試料中の染色の不在または無染色として検出される。
【0296】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者から得られる試料は、組織、全血、血漿、血清、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態において、試料は組織試料である。いくつかの実施形態において、組織試料は腫瘍試料である。いくつかの実施形態において、腫瘍試料は、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、間質細胞、またはこれらの任意の組み合わせを含む。前述の実施形態のいずれにおいても、腫瘍試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍試料、アーカイブ腫瘍試料、新鮮腫瘍試料、または凍結腫瘍試料であり得る。
【0297】
前述の方法のいずれかの特定の実施形態において、バイオマーカーの発現レベルは、がん細胞を含有するか、それを含有することが疑われる生物学的試料中で評価される。試料は、例えば、がん(例えば、腎臓癌、特に、腎細胞癌)を患うか、がんを患うことが疑われるか、またはがんと診断された患者から得られる組織生検または転移性病変であり得る。いくつかの実施形態において、試料は、循環がん細胞、例えば、腎臓癌細胞を含むことが既知であるか、またはそれが疑われる、腎臓組織の試料、腎臓腫瘍の生検、既知もしくは疑われる転移性腎臓癌病変もしくは切片、または血液試料、例えば、末梢血液試料である。試料は、がん細胞(すなわち、腫瘍細胞)及び非がん細胞(例えば、T細胞またはNK細胞などのリンパ球)の両方を含み得、特定の実施形態において、がん細胞及び非がん細胞の両方を含む。がん/腫瘍細胞を含む組織切除片、生検、及び体液(例えば、血液試料)を含む生物学的試料を得る方法は、当該技術分野において周知である。
【0298】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者から得られる試料は、抗がん療法(例えば、がんの治療またはその症状の管理もしくは寛解のための療法)の開始後に採取される。したがって、いくつかの実施形態において、試料は、化学療法剤の投与または化学療法レジメンの開始後に採取される。
【0299】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者は、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫(髄芽細胞腫及び網膜芽細胞腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫及び滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリノーマ、及び島細胞癌を含む)、中皮腫、神経鞘腫(聴神経腫を含む)、髄膜腫、腺癌、黒色腫、ならびに白血病またはリンパ系腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、がんは、腎臓癌(例えば、腎細胞癌(RCC)、例えば、転移性RCC)、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮性扁平上皮細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌(gastric cancer)もしくは胃癌(stomach cancer)(消化管癌を含む)、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、肝細胞癌、乳癌(転移性乳癌を含む)、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌もしくは子宮癌、唾液腺癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、メルケル細胞癌、菌状息肉症、精巣癌、食道癌、胆道の腫瘍、頭頸部癌、B細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽細胞性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非開裂細胞性NHL、巨大病変性NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、及びワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症を含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞性白血病、慢性骨髄芽球性白血病、ならびに移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、母斑症、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)、またはメグス症候群に関連する異常な血管増殖である。好ましい実施形態において、患者は、腎臓癌(例えば、RCC、例えば、mRCC)を有する。患者は、任意で、進行性、難治性、再発性、化学療法耐性、及び/またはプラチナ製剤耐性形態のがんを有し得る。
【0300】
特定の実施形態において、第1の試料中のバイオマーカーの存在及び/または発現レベル/量が、第2の試料中の存在/不在及び/または発現レベル/量と比較して増加または上昇する。特定の実施形態において、第1の試料中のバイオマーカーの存在/不在及び/または発現レベル/量が、第2の試料中の存在及び/または発現レベル/量と比較して減少または低減する。特定の実施形態において、第2の試料は、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織である。
【0301】
特定の実施形態において、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られるとき以外の1つ以上の異なる時点で得られる同じ患者または個体に由来する、単一の試料または複数の試料の組み合わせである。例えば、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られるよりも早い時点で同じ患者または個体から得られる。そのような基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、基準試料ががんの初期診断中に得られる場合、かつ後にがんが転移性になったときに試験試料が得られる場合に有用であり得る。
【0302】
特定の実施形態において、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、患者ではない1人以上の健常な個体に由来する複数の試料の組み合わせである。特定の実施形態において、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、患者または個体ではない、疾患または障害(例えば、がん)を有する1人以上の個体に由来する複数の試料の組み合わせである。特定の実施形態において、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、正常組織に由来するプールされたRNA試料、または患者ではない1人以上の個体に由来するプールされた血漿もしくは血清試料である。特定の実施形態において、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、腫瘍組織に由来するプールされたRNA試料、または患者ではない、疾患もしくは障害(例えば、がん)を有する1人以上の個体に由来するプールされた血漿もしくは血清試料である。
【0303】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、上昇または増加した発現または数は、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織との比較での、本明細書に記載される方法及び/または当該技術分野において既知である方法などの方法によって検出されるバイオマーカー(例えば、タンパク質、核酸(例えば、遺伝子もしくはmRNA)、または細胞)のレベルまたは数の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のうちのいずれかの全体的な増加を指す。特定の実施形態において、上昇した発現または数は、試料中のバイオマーカーの発現レベル/量の増加を指し、増加は、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織中での、それぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、500倍、または1000倍のうちのいずれかである。いくつかの実施形態において、上昇した発現または数は、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)との比較での、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍以上を超える全体的な増加を指す。
【0304】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、低下した発現または数は、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織との比較での、本明細書に記載される方法などの当該技術分野において既知である標準的な方法によって検出されるバイオマーカー(例えば、タンパク質、核酸(例えば、遺伝子もしくはmRNA)、または細胞)のレベルの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のうちのいずれかの全体的な低下を指す。特定の実施形態において、低下した発現または数は、試料中のバイオマーカーの発現レベル/量の減少を指し、減少は、基準試料、基準細胞、基準組織、対照試料、対照細胞、または対照組織中のそれぞれのバイオマーカーの発現レベル/量の少なくとも約0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、または0.01倍のうちのいずれかである。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法の投与後の、上記に列挙されるバイオマーカーの減少した発現レベルは、患者が抗がん療法に適切に応答していないことを示す。
【0305】
B.治療方法
本発明は、がん(例えば、RCC、例えば、mRCCなどの腎臓癌)を有する患者を治療するための方法を提供する。いくつかの事例において、本発明の方法は、本発明のバイオマーカーの発現レベルに基づいて、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法を患者に投与することを含む。本明細書に記載される(例えば、「組成物」もしくは「実施例」の節に記載されるもの)か、または当該技術分野において既知である、VEGFアンタゴニスト、PD-L1軸結合アンタゴニスト、または他の抗がん剤が、本方法において使用され得る。
【0306】
いくつかの事例において、本方法は、抗がん療法の投与後の時点で患者から得られる生物学的試料中のバイオマーカー(例えば、表2に列挙されるバイオマーカーなどの免疫学的バイオマーカー)の存在及び/または発現レベルを決定することと、生物学的試料中の遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルを基準レベルと比較することと、発現レベルが発現レベルと比較して増加する場合、患者への抗がん療法の投与を継続することとを伴う。遺伝子発現レベルは、本明細書に記載されるか、または当該技術分野において既知である方法のいずれかを使用して決定または比較され得る。本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法を投与することによって、腎臓癌(例えば、RCC、例えば、mRCC)を患う患者の無増悪生存期間(PFS)及び/または全生存期間(OS)を改善するための方法に更に関する。本明細書に記載されるバイオマーカーのいずれかの発現レベルまたは数は、当該技術分野において既知である、かつ/または本明細書に(例えば、上記の節A及び/もしくは実施例に)記載される任意の方法を使用して決定され得る。
【0307】
いくつかの実施形態において、本発明は、患者から得られる生物学的試料中の、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、SLAMF7のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを決定することと、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、SLAMF7のうちの1つ以上の発現レベルを基準レベルと比較することと、患者の試料中の患者の1つ以上の遺伝子の発現レベルが、基準レベルと比較して変化(例えば、増加または減少)する場合、患者に抗がん療法を投与することとによって、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法で、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、抗がん療法は、患者の1つ以上の遺伝子の発現レベルが、基準レベルと比較して増加する場合に患者に投与される。
【0308】
他の実施形態において、本発明は、抗がん療法の投与後の時点で患者から得られる生物学的試料中の、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、SLAMF7のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを決定することと、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、SLAMF7のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルを基準レベルと比較することと、患者の1つ以上の遺伝子の発現レベルが、基準レベルと比較して増加する場合、患者への抗がん療法の投与を継続することとによって、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)を含む抗がん療法で、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者を治療する方法を提供する。
【0309】
特定の実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7つ)の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7つ)の発現レベルは、腫瘍微小環境におけるCD8+Teff細胞の存在と相関する。特定の実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1つ以上(1、2、3、または4つ)の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)の発現レベルは、腫瘍微小環境におけるTh1ケモカインの存在と相関する。いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1つ以上(例えば、1つ、2つ、または3つ)の存在が決定される。いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1つ以上(例えば、1つ、2つ、または3つ)の存在は、腫瘍微小環境におけるナチュラルキラー(NK)細胞の存在と相関する。
【0310】
特定の実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7つ)の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、またはPRF1のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、及びPRF1の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CD8Aのレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約60倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約15倍、約17倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約55倍、約60倍、または約1倍~約50倍)増加する。いくつかの実施形態において、CD8Aのレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、100倍、200倍、250倍、500倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、CD8Bのレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約60倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約15倍、約17倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約55倍、約60倍、または約1倍~約50倍)増加する。いくつかの実施形態において、CD8Bのレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、100倍、200倍、250倍、500倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、のレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約60倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約15倍、約17倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約55倍、約60倍、または約1倍~約50倍)増加する。いくつかの実施形態において、EOMESのレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、100倍、200倍、250倍、500倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、GZMAのレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約60倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約15倍、約17倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約55倍、約60倍、または約1倍~約50倍)増加する。いくつかの実施形態において、GZMAのレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、100倍、200倍、250倍、500倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、GZMBのレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約60倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約15倍、約17倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約55倍、約60倍、または約1倍~約50倍)増加する。いくつかの実施形態において、GZMBのレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、100倍、200倍、250倍、500倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、IFNGのレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約60倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約15倍、約17倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約55倍、約60倍、または約1倍~約50倍)増加する。いくつかの実施形態において、IFNGのレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、100倍、200倍、250倍、500倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、PRF1のレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約60倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約15倍、約17倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍、約50倍、約55倍、約60倍、または約1倍~約50倍)増加する。いくつかの実施形態において、PRF1のレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、100倍、200倍、250倍、500倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。
【0311】
特定の実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、または4つ)の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、またはCXCL13のうちの少なくとも2つまたは少なくとも3つの発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CXCL9、CXCL10、CXCL11、及びCXCL13の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CXCL9のレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約300倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約20倍、約30倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、約100倍、約150倍、約200倍、約250倍、約3倍~約250倍、または約1倍~約80倍)増加する。いくつかの実施形態において、CXCL9のレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、80倍、100倍、150倍、200倍、250倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、CXCL10のレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約300倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約20倍、約30倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、約100倍、約150倍、約200倍、約250倍、約3倍~約250倍、または約1倍~約80倍)増加する。いくつかの実施形態において、CXCL10のレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、80倍、100倍、150倍、200倍、250倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、CXCL11のレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約300倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約20倍、約30倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、約100倍、約150倍、約200倍、約250倍、約3倍~約250倍、または約1倍~約80倍)増加する。いくつかの実施形態において、CXCL11のレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、80倍、100倍、150倍、200倍、250倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、CXCL13のレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約300倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約20倍、約30倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、約100倍、約150倍、約200倍、約250倍、約3倍~約250倍、または約1倍~約80倍)増加する。いくつかの実施形態において、CXCL13のレベルは、基準レベルと比較して、約50倍以上(例えば、約50倍、80倍、100倍、150倍、200倍、250倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。
【0312】
いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの1つ以上(例えば、1つ、2つ、または3つ)の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、またはSLAMF7のうちの少なくとも2つの発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、GZMB、KLRK1、及びSLAMF7の発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、GZMBのレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約20倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約12倍、約13倍、約15倍、約20倍、約1倍~約8倍、または約1倍~約13倍)増加する。いくつかの実施形態において、GZMBのレベルは、基準レベルと比較して、約8倍以上(例えば、約8倍、9倍、10倍、13倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、KLRK1のレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約20倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約12倍、約13倍、約15倍、約20倍、約1倍~約8倍、または約1倍~約13倍)増加する。いくつかの実施形態において、KLRK1のレベルは、基準レベルと比較して、約8倍以上(例えば、約8倍、9倍、10倍、13倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。いくつかの実施形態において、SLAMF7のレベルは、基準レベルと比較して、約1倍~約20倍(例えば、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約12倍、約13倍、約15倍、約20倍、約1倍~約8倍、または約1倍~約13倍)増加する。いくつかの実施形態において、SLAMF7のレベルは、基準レベルと比較して、約8倍以上(例えば、約8倍、9倍、10倍、13倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍、またはそれ以上)増加する。
【0313】
いくつかの実施形態において、患者から得られる生物学的試料中のCD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個)の発現レベルは、基準レベルと比較して、(例えば、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約5.5倍、約6倍、約6.5倍、約7倍、約7.5倍、約8倍、約8.5倍、約9倍、約9.5倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍以上だけ)増加する。
【0314】
いくつかの実施形態において、基準レベルは、抗がん療法の投与前(例えば、数分、数時間、数日、数週間(例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7週間)、数ヶ月、または数年前)に得られる、患者からの生物学的試料中の1つ以上の遺伝子(例えば、CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、PRF1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、KLRK1、及び/またはSLAMF7)の発現レベルである。特定の実施形態において、基準レベルは、基準集団における1つ以上の遺伝子の発現レベルである。特定の実施形態において、基準レベルは、1つ以上の遺伝子に事前に割り当てられた発現レベルである。いくつかの実施形態において、基準レベルは、抗がん療法の投与後である以前の時点で、患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルである。他の実施形態において、基準レベルは、その後の時点(例えば、抗がん療法の投与の数分後、数時間後、数日後、数週間後、数ヶ月後、もしくは数年後)で患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルである。
【0315】
いくつかの実施形態において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者を治療する方法を提供し、本方法は、ある時点で患者から得られる生物学的試料(例えば、腫瘍試料)中のMHC-Iの発現レベルを決定することと、MHC-Iの発現レベルを基準レベルとを比較することと、患者の試料中のMHC-Iの発現レベルが、基準レベルと比較して変化(例えば、増加または減少)する場合、患者に抗がん療法を投与することとを伴う。いくつかの実施形態において、抗がん療法は、基準レベルと比較して、患者の試料中のMHC-Iの発現レベルが増加する場合に患者に投与される。
【0316】
いくつかの実施形態において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者を治療する方法を提供し、本方法は、抗がん療法の投与後の時点で患者から得られる生物学的試料(例えば、腫瘍試料)中のMHC-Iの発現レベルを決定することと、MHC-Iの発現レベルを基準レベルとを比較することと、MHC-Iの発現レベルが増加する場合、患者への抗がん療法の投与を継続することとを伴う。いくつかの実施形態において、基準レベルは、抗がん療法の投与前(例えば、数分、数時間、数日、数週間(例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7週間)、数ヶ月、または数年前)に得られる、患者からの生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルである。他の実施形態において、基準レベルは、基準集団におけるMHC-Iの発現レベルである。他の実施形態において、基準レベルは、MHC-Iに事前に割り当てられた発現レベルである。他の実施形態において、基準レベルは、抗がん療法の投与後である以前の時点で、患者から得られる生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルである。他の実施形態において、基準レベルは、その後の時点(例えば、抗がん療法の投与の数分後、数時間後、数日後、数週間後、数ヶ月後、もしくは数年後)で患者から得られる生物学的試料中のMHC-Iの発現レベルである。
【0317】
いくつかの実施形態において、MHC-Iの発現レベルは、基準レベルと比較して、(例えば、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3倍、約3.1倍、約3.2倍、約3.3倍、約3.4倍、約3.5倍、約3.6倍、約3.7倍、約3.8倍、約3.9倍、約4倍、約4.1倍、約4.2倍、約4.3倍、約4.4倍、約4.5倍、約4.6倍、約4.7倍、約4.8倍、約4.9倍、約5倍、約5.5倍、約6倍、約6.5倍、約7倍、約7.5倍、約8倍、約8.5倍、約9倍、約9.5倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍以上)増加する。いくつかの実施形態において、MHC-Iの発現レベルは、基準レベルと比較して、少なくとも約2倍増加する。
【0318】
いくつかの実施形態において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)患者を治療する方法を提供し、本方法は、患者から得られる生物学的試料中のCX3CR1、CCL2、CCL5、CCR7、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7つ)の発現レベルを決定することと、発現レベルを基準レベルとを比較することと、発現レベルが、基準レベルと比較して変化(例えば、増加または減少)する場合、患者に抗がん療法を投与することとを伴う。いくつかの実施形態において、抗がん療法は、基準レベルと比較して、患者の試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルが増加する場合に患者に投与される。いくつかの実施形態において、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、及びCXCL10の発現レベルが決定される。
【0319】
他の実施形態において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)患者を治療する方法を提供し、本方法は、抗がん療法の投与後の時点で患者から得られる生物学的試料中のCX3CR1、CCL2、CCL5、CCR7、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7つ)の発現レベルを決定することと、発現レベルを基準レベルとを比較することと、発現レベルが、基準レベルと比較して増加する場合、患者への抗がん療法の投与を継続することとを伴う。いくつかの実施形態において、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、またはCXCL10のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの発現レベルが決定される。いくつかの実施形態において、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、及びCXCL10の発現レベルが決定される。
【0320】
いくつかの実施形態において、基準レベルは、抗がん療法の投与前(例えば、数分、数時間、数日、数週間、数ヶ月、または数年前)に得られる、患者からの生物学的試料中の1つ以上の遺伝子(例えば、CX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、及び/またはCXCL10)の発現レベルである。他の実施形態において、基準レベルは、基準集団における1つ以上の遺伝子の発現レベルである。他の実施形態において、基準レベルは、1つ以上の遺伝子に事前に割り当てられた発現レベルである。他の実施形態において、基準レベルは、抗がん療法の投与後である以前の時点で、患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルである。他の実施形態において、基準レベルは、その後の時点で患者から得られる生物学的試料中の1つ以上の遺伝子の発現レベルである。
【0321】
いくつかの実施形態において、患者から得られる生物学的試料中のCX3CR1、CCL2、CCL5、CCR5、CX3CL1、CCR7、及び/またはCXCL10のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7つ)の発現レベルは、基準レベルと比較して、(例えば、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約5.5倍、約6倍、約6.5倍、約7倍、約7.5倍、約8倍、約8.5倍、約9倍、約9.5倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍以上だけ)増加する。
【0322】
別の態様において、本発明は、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者を治療する方法を提供し、本方法は、患者から得られる腫瘍試料中のT細胞(例えば、CD8+T細胞、例えば、CD8+Teff細胞)及び/またはマクロファージ(例えば、CD68+、CD168+、もしくはCD68+CD168+マクロファージ)の数を決定することと、腫瘍試料中のT細胞(例えば、CD8+T細胞、例えば、CD8+Teff細胞)及び/またはマクロファージ(例えば、CD68+、CD168+、もしくはCD68+CD168+マクロファージ)の数を、基準試料中のT細胞(例えば、CD8+T細胞、例えば、CD8+Teff細胞)及び/またはマクロファージ(例えば、CD68+、CD168+、もしくはCD68+CD168+マクロファージ)の数と比較することと、患者の試料中のT細胞(例えば、CD8+T細胞、例えば、CD8+Teff細胞)及び/またはマクロファージ(例えば、CD68+、CD168+、もしくはCD68+CD168+マクロファージ)の数が、基準試料と比較して変化(例えば、増加または減少)する場合、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法を患者に投与することとを伴う。いくつかの実施形態において、患者から得られる生物学的試料中のT細胞(例えば、CD8+T細胞、例えば、CD8+Teff細胞)及び/またはマクロファージ(例えば、CD68+、CD168+、もしくはCD68+CD168+マクロファージ)の数が、基準レベルと比較して増加する場合、抗がん療法が患者に投与される。
【0323】
更に別の態様において、抗がん剤の投与後の時点で患者から得られる腫瘍試料中のT細胞(例えば、CD8+T細胞、例えば、CD8+Teff細胞)及び/またはマクロファージ(例えば、CD68+、CD168+、もしくはCD68+CD168+マクロファージ)の数を決定することと、腫瘍試料中のT細胞(例えば、CD8+T細胞、例えば、CD8+Teff細胞)及び/またはマクロファージ(例えば、CD68+、CD168+、もしくはCD68+CD168+マクロファージ)の数を、基準試料中のT細胞(例えば、CD8+T細胞、例えば、CD8+Teff細胞)及び/またはマクロファージ(例えば、CD68+、CD168+、もしくはCD68+CD168+マクロファージ)の数と比較することと、患者の試料中のT細胞(例えば、CD8+T細胞、例えば、CD8+Teff細胞)及び/またはマクロファージ(例えば、CD68+、CD168+、もしくはCD68+CD168+マクロファージ)の数が、基準試料と比較して増加する場合、患者への抗がん療法の投与を継続することとによって、がん(例えば、腎臓癌)を有する患者を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、抗がん剤は、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストを含む。
【0324】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者から得られる腫瘍試料は、基準試料と比較して、(例えば、少なくとも約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.1倍、約2.2倍、約2.3倍、約2.4倍、約2.5倍、約2.6倍、約2.7倍、約2.8倍、約2.9倍、約3倍、約3.1倍、約3.2倍、約3.3倍、約3.4倍、約3.5倍、約3.6倍、約3.7倍、約3.8倍、約3.9倍、約4倍、約4.1倍、約4.2倍、約4.3倍、約4.4倍、約4.5倍、約4.6倍、約4.7倍、約4.8倍、約4.9倍、約5倍、約5.5倍、約6倍、約6.5倍、約7倍、約7.5倍、約8倍、約8.5倍、約9倍、約9.5倍、約10倍、約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、約15倍、約16倍、約17倍、約18倍、約19倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約100倍、約500倍、約1,000倍以上だけ)増加した数のCD8+T細胞及び/またはマクロファージを有する。
【0325】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)での併用療法は、好ましくは、無増悪生存期間(PFS)及び/または全生存期間(OS)を含む生存期間を延長及び/または改善する。一実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)での併用療法は、治療されているがんの承認済み抗腫瘍剤の投与または標準治療によって達成される生存期間と比較して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、またはそれ以上だけ生存期間を延長する。
【0326】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、バイオマーカーの発現レベルまたは数は、組織試料、初代もしくは培養細胞もしくは細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、全血、血液由来の細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物、及び組織培養培地、組織抽出物(均質化組織など)、腫瘍組織、細胞抽出物、またはこれらの任意の組み合わせ中で検出される。
【0327】
例えば、前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、バイオマーカーの発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、PBMC、またはこれらの組み合わせ中で、既知の技術(例えば、フローサイトメトリーまたはIHC)を使用して検出される。腫瘍浸潤免疫細胞としては、腫瘍内免疫細胞、腫瘍周囲免疫細胞、またはこれらの任意の組み合わせ、及び他の腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。そのような腫瘍浸潤免疫細胞は、Tリンパ球(CD8+Tリンパ球(例えば、CD8+Tエフェクター(Teff)細胞)及び/もしくはCD4+Tリンパ球(例えば、CD4+Teff細胞)など)、Bリンパ球、または顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球、マクロファージ、樹状細胞(例えば、指状嵌入樹状細胞)、組織球、及びナチュラルキラー細胞(NK)を含む他の骨髄系細胞であり得る。いくつかの実施形態において、バイオマーカーの染色は、膜染色、細胞質染色、またはこれらの組み合わせとして検出される。他の実施形態において、バイオマーカーの不在は、基準試料との比較での、試料中の染色の不在または無染色として検出される。
【0328】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者から得られる試料は、組織、全血、血漿、血清、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態において、試料は組織試料である。いくつかの実施形態において、組織試料は腫瘍試料である。いくつかの実施形態において、腫瘍試料は、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、間質細胞、またはこれらの任意の組み合わせを含む。前述の実施形態のいずれにおいても、腫瘍試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍試料、アーカイブ腫瘍試料、新鮮腫瘍試料、または凍結腫瘍試料であり得る。
【0329】
前述の方法のいずれかの特定の実施形態において、バイオマーカーの発現レベルまたは数は、がん細胞を含有するか、それを含有することが疑われる生物学的試料中で評価される。試料は、例えば、がん(例えば、腎臓癌、特に、腎細胞癌)を患うか、がんを患うことが疑われるか、またはがんと診断された患者から得られる組織生検または転移性病変であり得る。いくつかの実施形態において、試料は、循環がん細胞、例えば、腎臓癌細胞を含むことが既知であるか、またはそれが疑われる、腎臓組織の試料、腎臓腫瘍の生検、既知もしくは疑われる転移性腎臓癌病変もしくは切片、または血液試料、例えば、末梢血液試料である。試料は、がん細胞(すなわち、腫瘍細胞)及び非がん細胞(例えば、T細胞またはNK細胞などのリンパ球)の両方を含み得、特定の実施形態において、がん細胞及び非がん細胞の両方を含む。がん/腫瘍細胞を含む組織切除片、生検、及び体液(例えば、血液試料)を含む生物学的試料を得る方法は、当該技術分野において周知である。
【0330】
いくつかの実施形態において、患者から得られる試料は、抗がん療法(例えば、がんの治療またはその症状の管理もしくは寛解のための療法)の開始後に採取される。したがって、いくつかの実施形態において、試料は、化学療法剤の投与または化学療法レジメンの開始後に採取される。
【0331】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、患者は、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫(髄芽細胞腫及び網膜芽細胞腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫及び滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリノーマ、及び島細胞癌を含む)、中皮腫、神経鞘腫(聴神経腫を含む)、髄膜腫、腺癌、黒色腫、ならびに白血病またはリンパ系腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、がんは、腎臓癌(例えば、腎細胞癌(RCC)、例えば、転移性RCC)、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮性扁平上皮細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌(gastric cancer)もしくは胃癌(stomach cancer)(消化管癌を含む)、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、肝細胞癌、乳癌(転移性乳癌を含む)、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌もしくは子宮癌、唾液腺癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、メルケル細胞癌、菌状息肉症、精巣癌、食道癌、胆道の腫瘍、頭頸部癌、B細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽細胞性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非開裂細胞性NHL、巨大病変性NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、及びワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症を含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、有毛細胞性白血病、慢性骨髄芽球性白血病、ならびに移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、母斑症、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)、またはメグス症候群に関連する異常な血管増殖である。好ましい実施形態において、患者は、腎臓癌(例えば、RCC、例えば、mRCC)を有する。患者は、任意で、進行性、難治性、再発性、化学療法耐性、及び/またはプラチナ製剤耐性形態のがんを有し得る。
【0332】
がんの予防または治療のために、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及び/またはPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)の用量は、上記に定義される治療されるがんの種類、がんの重症度及び過程、予防もしくは治療目的で抗体が投与されるかどうか、以前の療法、患者の臨床歴及び薬物に対する応答、ならびに主治医の裁量に依存するだろう。
【0333】
いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及び/またはPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)は、一度に、または一連の治療にわたって患者に好適に投与され得る。1つの典型的な1日投薬量は、上述の要因に応じて、約1μg/kg~100mg/kg以上の範囲であり得る。病態に応じて数日間以上にわたる反復投与の場合、治療は一般に、疾患症状の所望される抑制が生じるまで持続されるだろう。そのような用量は、例えば、毎週または3週間毎に(例えば、患者が、VEGFアンタゴニスト及び/またはPD-L1軸結合アンタゴニストの用量を、例えば約2回~約20回、または例えば約6回受けるように)断続的に投与され得る。より高い初回負荷用量に続いて、1回以上のより低い用量が投与されてもよい。しかしながら、他の投薬量レジメンも有用であり得る。この療法の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易に監視される。
【0334】
例えば、一般的な提案として、ヒトに投与される治療有効量のVEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及び/またはPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)は、1回以上の投与によるかに関わらず、患者の体重の約0.01~約50mg/kgの範囲内だろう。いくつかの実施形態において、使用される抗体は、約0.01mg/kg~約45mg/kg、約0.01mg/kg~約40mg/kg、約0.01mg/kg~約35mg/kg、約0.01mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約25mg/kg、約0.01mg/kg~約20mg/kg、約0.01mg/kg~約15mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.01mg/kg~約5mg/kg、または約0.01mg/kg~約1mg/kgであり、これらは例えば、毎日、毎週、2週間毎、3週間毎、または毎月に投与される。いくつかの実施形態において、抗体は、15mg/kgで投与される。しかしながら、他の投薬量レジメンも有用であり得る。一実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及び/またはPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)は、21日周期(3週間毎、q3w)の1日目に約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約420mg、約500mg、約525mg、約600mg、約700mg、約800mg、約840mg、約900mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、または約1800mgの用量でヒトに投与される。
【0335】
いくつかの実施形態において、アテゾリズマブは、3週間毎(q3w)に1200mgで静脈内投与される。いくつかの実施形態において、ベバシズマブは、一度に、または一連の治療にわたって固定用量で投与される。固定用量が投与される場合、好ましくは、それは、約5mg~約2000mgの範囲内である。例えば、固定用量は、およそ420mg、およそ525mg、およそ840mg、またはおよそ1050mgであり得る。いくつかの実施形態において、ベバシズマブは、2週間毎に10mg/kgで静脈内投与される。いくつかの実施形態において、ベバシズマブは、3週間毎に15mg/kgで静脈内投与される。VEGFアンタゴニスト及び/またはPD-L1軸結合アンタゴニストの用量は、単回用量または複数回用量(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回以上の用量)として投与され得る。一連の用量が投与される場合、これらは、例えば、およそ毎週、およそ2週間毎、およそ3週間毎、またはおよそ4週間毎に投与され得る。併用治療において投与される抗体の用量は、単一治療と比較して、低下され得る。この療法の進行は、従来の技術によって容易に監視される。
【0336】
本明細書に記載されるVEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)ならびにPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗体、結合ポリペプチド、及び/または小分子)(任意の追加の治療剤)は、良好な医療慣例と一貫する様式で、製剤化、投薬、及び投与され得る。この文脈において考慮すべき要因としては、治療されている特定の障害、治療されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床病態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジューリング、及び医師に既知である他の要因が挙げられる。PD-L1軸結合アンタゴニスト及び/またはVEGFアンタゴニストは、任意で、問題の障害を予防または治療するために現在使用されている1つ以上の薬剤とともに製剤化されるか、それらと同時に投与されるが、その必要はない。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在するPD-L1軸結合アンタゴニスト及び/またはVEGFアンタゴニストの量、障害または治療の種類、ならびに上記に考察される他の要因に依存する。これらは一般に、本明細書に記載されるものと同じ投薬量及び投与経路で使用されるか、または本明細書に記載される投薬量の約1~99%、もしくは経験的/臨床的に適切であると決定される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
【0337】
いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)と同時に投与される。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、同じ製剤の一部として投与される。他の実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)は、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)とは別個に投与される。
【0338】
いくつかの実施形態において、前述の方法のいずれも、追加の治療剤の投与を含み得る。いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、免疫療法剤、細胞毒性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、抗血管新生剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0339】
いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、活性化共刺激分子に対して指向されるアゴニストと同時に投与される。いくつかの実施形態において、活性化共刺激分子としては、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127を挙げることができる。いくつかの実施形態において、活性化共刺激分子に対して指向されるアゴニストは、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127に結合するアゴニスト抗体である。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、阻害性共刺激性分子に対して指向されるアンタゴニストと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、阻害性共刺激分子としては、CTLA-4(CD152としても知られる)、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼを挙げることができる。いくつかの実施形態において、阻害性共刺激分子に対して指向されるアンタゴニストは、CTLA-4、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼに結合するアンタゴニスト抗体である。
【0340】
いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、CTLA-4(CD152としても知られる)に対して指向されるアンタゴニスト、例えば、遮断抗体と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、イピリムマブ(MDX-010、MDX-101、またはYERVOY(登録商標)としても知られる)と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、トレメリムマブ(チシリムマブまたはCP-675,206としても知られる)と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、B7-H3(CD276としても知られる)に対して指向されるアンタゴニスト、例えば、遮断抗体と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、MGA271と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、TGF-ベータに対して指向されるアンタゴニスト、例えば、メテリムマブ(CAT-192としても知られる)、フレソリムマブ(GC1008としても知られる)、またはLY2157299と組み合わせて投与され得る。
【0341】
いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、CD137(TNFRSF9、4-1BB、またはILAとしても知られる)に対して指向されるアゴニスト、例えば、活性化抗体と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、ウレルマブ(BMS-663513としても知られる)と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、CD40に対して指向されるアゴニスト、例えば、活性化抗体と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、CP-870893と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、OX40(CD134としても知られる)に対して指向されるアゴニスト、例えば、活性化抗体と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、抗OX40抗体(例えば、AgonOX)と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、CD27に対して指向されるアゴニスト、例えば、活性化抗体と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、CDX-1127と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、TIGITに対して指向されるアンタゴニスト、例えば、抗TIGIT抗体と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)に対して指向されるアンタゴニストと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、IDOアンタゴニストは、1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MTとしても知られる)である。
【0342】
いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、がんワクチンと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、がんワクチンは、ペプチドがんワクチンであり、これは、いくつかの実施形態において、個別化されたペプチドワクチンである。いくつかの実施形態において、ペプチドがんワクチンは、多価長ペプチド、多ペプチド、ペプチドカクテル、ハイブリッドペプチド、またはペプチドパルス樹状細胞ワクチンである(例えば、Yamada et al.,Cancer Sci,104:14-21,2013を参照されたい)。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、アジュバントと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、TLRアゴニスト、例えば、Poly-ICLC(HILTONOL(登録商標)としても知られる)、LPS、MPL、またはCpG ODNを含む治療と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、腫瘍壊死因子(TNF)アルファと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、IL-1と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、HMGB1と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、IL-10アンタゴニストと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、IL-4アンタゴニストと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、IL-13アンタゴニストと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、HVEMアンタゴニストと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、例えば、ICOS-Lの投与によるICOSアゴニスト、またはICOSに対して指向されるアゴニスト抗体と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、CX3CL1を標的とする治療と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、CXCL9を標的とする治療と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、CXCL10を標的とする治療と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、CCL5を標的とする治療と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、LFA-1またはICAM1アゴニストと組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ)及びPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例えば、アテゾリズマブ)は、セレクチンアゴニストと組み合わせて投与され得る。
【0343】
したがって、投与される場合、化学療法剤は通常、既知の投薬量で投与されるか、または薬物の複合作用もしくは化学療法剤の投与に起因する負の副作用のために、任意で低減される。そのような化学療法剤の調製ならびに投薬スケジュールは、製造業者の指示書に従って、または熟練した医師によって経験的に決定されるように使用され得る。化学療法剤がパクリタキセルである場合、好ましくは、それは、約130mg/m2~200mg/m2(例えば、およそ175mg/m2)の用量で、例えば、3時間にわたって、3週間毎に投与される。化学療法剤がカルボプラチンである場合、好ましくは、それは、患者の既存の腎機能に基づくカルバート式、または腎機能及び所望される血小板最下点を使用して、カルボプラチンの用量を計算することによって投与される。腎排泄は、カルボプラチンの排除の主要な経路である。体表面積に基づく経験的な用量計算と比較して、この投薬処方の使用は、さもなければ(平均を超える腎機能を有する患者における)過少量投薬または(障害された腎機能を有する患者)過量投薬をもたらし得る、治療前の腎機能の患者多様性の補償を可能にする。単一薬剤カルボプラチンを使用する4~6mg/mL/分の標的AUCは、以前に治療された患者において最も適切な用量範囲をもたらすようである。
【0344】
上記の治療レジメンに加えて、患者は、腫瘍及び/またはがん細胞の外科的除去に供され得る。
【0345】
上記のそのような併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が同じまたは別個の製剤中に含まれる場合)、ならびにVEGFアンタゴニスト及び/またはPD-L1軸結合アンタゴニストの投与が、追加の治療剤(複数可)の投与の前、それと同時、かつ/またはそれに続いて生じ得る、別個投与を包含する。一実施形態において、VEGFアンタゴニスト及び/またはPD-L1軸結合アンタゴニストの投与及び追加の治療剤の投与は、互いの約1カ月以内、または約1、2、もしくは3週間以内、または約1、2、3、4、5、もしくは6日以内に生じる。
【0346】
VEGFアンタゴニストまたはPD-L1軸結合アンタゴニストのいずれかが抗体(例えば、ベバシズマブまたはアテゾリズマブ)である実施形態において、投与される抗体は、ネイキッド抗体であり得る。投与されるVEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)及び/またはPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどのPD-L1結合アンタゴニスト)は、細胞毒性剤にコンジュゲートされ得る。好ましくは、コンジュゲートされたもの、かつ/またはそれが結合される抗原は、細胞によって内部移行され、それが結合するがん細胞を殺滅する上でのコンジュゲートの増加した治療有効性をもたらす。好ましい一実施形態において、細胞毒性剤は、がん細胞内の核酸を標的とするか、またはそれを妨害する。そのような細胞毒性剤の例としては、マイタンシノイド、カリケアマイシン、リボヌクレアーゼ、及びDNAエンドヌクレアーゼが挙げられる。
【0347】
本明細書に記載される方法において利用される組成物は、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、経皮的、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、くも膜下腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、局所的、腫瘍内、腹膜内、結膜下、小胞内、経粘膜、心膜内、臍帯内、眼球内、眼窩内、経口的、局所的、経皮的、硝子体内(例えば、硝子体内注射によって)、点眼によって、吸入によって、注射によって、埋め込みによって、注入によって、継続注入によって、標的細胞の直接的な局所灌流浴によって、カテーテルによって、洗浄によって、クリームで、または脂質組成物で、を含む、任意の好適な方法によって投与されてもよい。本明細書に記載される方法で利用される組成物はまた、全身または局所投与されてもよい。投与方法は、様々な要因(例えば、投与されている化合物または組成物、及び治療されている病態、疾患、または障害の重症度)に応じて異なり得る。いくつかの実施形態において、PD-L1軸結合アンタゴニストは、静脈内、筋肉内、皮下、局所的、経口的、経皮的、腹腔内、眼窩内、埋め込みによって、吸入によって、髄腔内、脳室内、または鼻腔内に投与される。投薬は、部分的には、投与が短時間であるか、または長期的であるかに応じて、例えば、任意の好適な経路によるもの、例えば、静脈内注射または皮下注射などの注射によるものであり得る。単回投与または様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むが、これらに限定されない、様々な投薬スケジュールが本明細書において企図される。
【0348】
IV.組成物
一態様において、本発明は、部分的には、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)とPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブなどの抗PD-L1抗体)との組み合わせが、腎臓癌などのがんにおいて抗腫瘍効果を有するという発見に基づく。特定の実施形態において、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストが提供される。これらの薬剤及びこれらの組み合わせは、例えば、本明細書に記載される方法のいずれかの一部として、がんの治療にとって有用である。
【0349】
A.例示的なVEGFアンタゴニスト
本発明のVEGFアンタゴニストは、VEGFに結合するか、VEGF発現レベルを低下させるか、またはVEGF生物学的活性を中和、遮断、阻害、抑止、縮小、もしくは妨害することができる任意の分子を含む。一例示的なヒトVEGFは、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号P15692、遺伝子ID(NCBI):7422に示される。
【0350】
いくつかの事例において、VEGFアンタゴニストは、抗VEGF抗体である。いくつかの実施形態において、抗VEGF抗体は、「rhuMab VEGF」または「AVASTIN(登録商標)」としても知られるベバシズマブである。ベバシズマブは、Prestaら(Cancer Res.57:4593-4599,1997)に従って生成される組み換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体である。これは、変異型ヒトIgG1フレームワーク領域と、ヒトVEGFがその受容体に結合するのを遮断するマウス抗hVEGFモノクローナル抗体A.4.6.1に由来する抗原結合性の相補性決定領域とを含む。フレームワーク領域の大半を含む、ベバシズマブのアミノ酸配列のおよそ93%がヒトIgG1に由来し、配列の約7%がマウス抗体A4.6.1に由来する。ベバシズマブは、約149,000ダルトンの分子質量を有し、グリコシル化されている。ベバシズマブ及び他のヒト化抗VEGF抗体は、2005年2月26日に発行された米国特許第6,884,879号に更に記載されており、参照によりその開示の全体が明示的に本明細書に組み込まれる。追加の好ましい抗体としては、PCT出願公開第WO2005/012359号に記載されるG6またはB20系統の抗体(例えば、G6-31、B20-4.1)が挙げられる。追加の好ましい抗体については、米国特許第7,060,269号、同第6,582,959号、同第6,703,020号、同第6,054,297号、WO98/45332、WO96/30046、WO94/10202、EP0666868B1、米国特許出願公開第2006009360号、同第20050186208号、同第20030206899号、同第20030190317号、同第20030203409号、及び同第20050112126号、ならびにPopkovら(Journal of Immunological Methods288:149-164,2004)を参照されたい。他の好ましい抗体としては、残基F17、M18、D19、Y21、Y25、Q89、191、K101、E103、及びC104を含むか、またはあるいは、残基F17、Y21、Q22、Y25、D63、183、及びQ89を含むヒトVEGF上の機能的エピトープに結合するものが挙げられる。
【0351】
他の事例において、VEGFアンタゴニストは、抗VEGFR2抗体または関連分子(例えば、ラムシルマブ、タニビルマブ、アフリベルセプト)、抗VEGFR1抗体または関連分子(例えば、イクルクマブ、アフリベルセプト(VEGF Trap-Eye、EYLEA(登録商標))、もしくはジブ-アフリベルセプト(VEGF Trap、ZALTRAP(登録商標)))、二重特異性VEGF抗体(例えば、MP-0250、バヌシズマブ(VEGF-ANG2)、もしくはUS2001/0236388に開示される二重特異性抗体)、抗VEGF、抗VEGFR1、及び抗VEGFR2アームのうちの2つの組み合わせを含む二重特異性抗体、抗VEGFA抗体(例えば、ベバシズマブ、セバシズマブ)、抗VEGFB抗体、抗VEGFC抗体(例えば、VGX-100)、抗VEGFD抗体、あるいは非ペプチド小分子VEGFアンタゴニスト(パゾパニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、スチバーガ、カボザンチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、オランチニブ、テラチニブ、ドビチニグ、セジラニブ、モテサニブ、スルファチニブ、アパチニブ、フォレチニブ、ファミチニブ、またはチボザニブ)である。
【0352】
上記に列挙される実施形態のいずれかにおける使用のための、そのようなVEGFアンタゴニスト抗体または本明細書に記載される他の抗体(例えば、VEGF発現レベルの検出のための抗VEGF抗体)は、以下の節Cの節i-viiに記載される特徴のいずれかを、単独または組み合わせで有し得ることが明示的に企図される。
【0353】
B.例示的なPD-L1軸結合アンタゴニスト
本発明のPD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストを含む。PD-1(プログラム死1)はまた、当該技術分野において、「プログラム細胞死1」、「PDCD1」、「CD279」、及び「SLEB2」とも称される。一例示的なヒトPD-1は、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q15116に示される。PD-L1(プログラム死リガンド1)はまた、当該技術分野において、「プログラム細胞死1リガンド1」、「PDCD1LG1」、「CD274」、「B7-H」、及び「PDL1」とも称される。一例示的なヒトPD-L1は、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9NZQ7.1に示される。PD-L2(プログラム死リガンド2)はまた、当該技術分野において、「プログラム細胞死1リガンド2」、「PDCD1LG2」、「CD273」、「B7-DC」、「Btdc」、及び「PDL2」とも称される。一例示的なヒトPD-L2は、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9BQ51に示される。いくつかの実施形態において、PD-1、PD-L1、及びPD-L2は、ヒトPD-1、PD-L1、及びPD-L2である。
【0354】
いくつかの事例において、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。いくつかの事例において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のそのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する。他の事例において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1への結合を阻害する。更に他の事例において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のB7-1への結合を阻害する。いくつかの事例において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1及びB7-1の両方への結合を阻害する。いくつかの事例において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、YW243.55.S70、MPDL3280A(アテゾリズマブ(atezolizumab))、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ(durvalumab))、及びMSB0010718C(アベルマブ(avelumab))からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号19のHVR-H1配列、配列番号20のHVR-H2配列、及び配列番号21のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号22のHVR-L1配列、配列番号23のHVR-L2配列、及び配列番号24のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0355】
いくつかの事例において、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。例えば、いくつかの事例において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する。いくつかの事例において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1への結合を阻害する。他の事例において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L2への結合を阻害する。更に他の事例において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1及びPD-L2の両方への結合を阻害する。いくつかの事例において、PD-1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの事例において、抗体は、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、CT-011(ピディリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、及びBGB-108からなる群から選択される。いくつかの事例において、PD-1結合アンタゴニストは、Fc融合タンパク質である。例えば、いくつかの事例において、Fc融合タンパク質は、AMP-224である。更なる一態様において、本発明は、薬物の製造または調製におけるPD-L1軸結合アンタゴニストの使用を提供する。一実施形態において、薬物は、がんの治療のためのものである。更なる一実施形態において、薬物は、腎臓癌(例えば、腎細胞癌(RCC)、例えば、転移性RCC(mRCC))を患う患者に有効量の薬物を投与することを含む、がんを治療する方法における使用のためのものである。そのような一実施形態において、本方法は、例えば以下に記載されるような有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を個体に投与することを更に含む。
【0356】
いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の一態様において、PD-1リガンド結合パートナーは、PD-L1及び/またはPD-L2である。別の実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のその結合リガンドへの結合を阻害する分子である。特定の一態様において、PD-L1結合パートナーは、PD-1及び/またはB7-1である。別の実施形態において、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の一態様において、PD-L2結合リガンドパートナーは、PD-1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドであり得る。
【0357】
いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、例えば以下に記載されるような、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、CT-011(ピディリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、及びBGB-108からなる群から選択される。MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、またはニボルマブとしても知られるMDX-1106は、WO2006/121168に記載される抗PD-1抗体である。ペンブロリズマブまたはランブロリズマブとしても知られるMK-3475は、WO2009/114335に記載される抗PD-1抗体である。hBAT、hBAT-1、またはピディリズマブとしても知られるCT-011は、WO2009/101611に記載される抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合したPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。B7-DCIgとしても知られるAMP-224は、WO2010/027827及びWO2011/066342に記載されるPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。
【0358】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、MDX-1106である。「MDX-1106」に対する代替的な名称としては、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、及びニボルマブが挙げられる。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(CAS登録番号:946414-94-4)である。また更なる一実施形態において、配列番号1からの重鎖可変領域アミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び/または配列番号2からの軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、単離された抗PD-1抗体が提供される。また更なる一実施形態において、重鎖及び/または軽鎖配列を含む、単離された抗PD-1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、重鎖配列、QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号1)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列、EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号2)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。
【0359】
いくつかの実施形態において、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L2結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、PD-L2結合アンタゴニストは、抗PD-L2抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの実施形態において、PD-L2結合アンタゴニストは、イムノアドヘシンである。
【0360】
いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、例えば、以下に記載されるような、抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1との間及び/またはPD-L1とB7-1との間の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、ヒト抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、YW243.55.S70、MPDL3280A(アテゾリズマブ)、MDX-1105、及びMEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。抗体YW243.55.S70は、WO2010/077634に記載される抗PD-L1である。BMS-936559としても知られるMDX-1105は、WO2007/005874に記載される抗PD-L1抗体である。MEDI4736(デュルバルマブ)は、WO2011/066389及びUS2013/034559に記載される抗PD-L1モノクローナル抗体である。本発明の方法に有用な抗PD-L1抗体の例、及びそれらの作製方法は、PCT特許出願第WO2010/077634、WO2007/005874、WO2011/066389、米国特許第8,217,149号、及びUS2013/034559に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0361】
WO2010/077634A1及びUS8,217,149に記載される抗PD-L1抗体は、本明細書に記載される方法において使用され得る。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、配列番号3の重鎖可変領域配列及び/または配列番号4の軽鎖可変領域配列を含む。また更なる一実施形態において、重鎖可変領域及び/または軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、重鎖配列、
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSA(配列番号3)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号4)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。
【0362】
一実施形態において、抗PD-L1抗体は、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3配列を含む重鎖可変領域を含み、
更に式中、X
1は、DまたはGであり、X
2は、SまたはLであり、X
3は、TまたはSである。特定の一態様において、X
1は、Dであり、X
2は、Sであり、X
3は、Tである。別の態様において、ポリペプチドは、以下の式、(FR-H1)-(HVR-H1)-(FR-H2)-(HVR-H2)-(FR-H3)-(HVR-H3)-(FR-H4)に従うHVR間に並置された可変領域重鎖フレームワーク配列を更に含む。更に別の態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。更なる一態様において、フレームワーク配列は、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークである。また更なる一態様において、フレームワーク配列のうちの少なくとも1つは、以下のものである。
【0363】
また更なる一態様において、重鎖ポリペプチドは、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含む可変領域軽鎖と更に組み合わされ、
式中、X
4は、DまたはVであり、X
5は、VまたはIであり、X
6は、SまたはNであり、X
7は、AまたはFであり、X
8は、VまたはLであり、X
9は、FまたはTであり、X
10は、YまたはAであり、X
11は、Y、G、F、またはSであり、X
12は、L、Y、F、またはWであり、X
13は、Y、N、A、T、G、F、またはIであり、X
14は、H、V、P、T、またはIであり、X
15は、A、W、R、P、またはTである。また更なる一態様において、X
4は、Dであり、X
5は、Vであり、X
6は、Sであり、X
7は、Aであり、X
8は、Vであり、X
9は、Fであり、X
10は、Yであり、X
11は、Yであり、X
12は、Lであり、X
13は、Yであり、X
14は、Hであり、X
15は、Aである。
【0364】
また更なる一態様において、軽鎖は、以下の式、(FR-L1)-(HVR-L1)-(FR-L2)-(HVR-L2)-(FR-L3)-(HVR-L3)-(FR-L4)に従うHVR間に並置された可変領域軽鎖フレームワーク配列を更に含む。また更なる一態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる一態様において、フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる一態様において、フレームワーク配列のうちの少なくとも1つは、以下のものである。
【0365】
別の実施形態において、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む、単離された抗PD-L1抗体または抗原結合断片が提供され、
(a)重鎖は、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含み、更に、
(b)軽鎖は、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含み、更に、
式中、X
1は、DまたはGであり、X
2は、SまたはLであり、X
3は、TまたはSであり、X
4は、DまたはVであり、X
5は、VまたはIであり、X
6は、SまたはNであり、X
7は、AまたはFであり、X
8は、VまたはLであり、X
9は、FまたはTであり、X
10は、YまたはAであり、X
11は、Y、G、F、またはSであり、X
12は、L、Y、F、またはWであり、X
13は、Y、N、A、T、G、F、またはIであり、X
14は、H、V、P、T、またはIであり、X
15は、A、W、R、P、またはTである。特定の一態様において、X
1は、Dであり、X
2は、Sであり、X
3は、Tである。別の態様において、X
4は、Dであり、X
5は、Vであり、X
6は、Sであり、X
7は、Aであり、X
8は、Vであり、X
9は、Fであり、X
10は、Yであり、X
11は、Yであり、X
12は、Lであり、X
13は、Yであり、X
14は、Hであり、X
15は、Aである。更に別の態様において、X
1は、Dであり、X
2は、Sであり、X
3は、Tであり、X
4は、Dであり、X
5は、Vであり、X
6は、Sであり、X
7は、Aであり、X
8は、Vであり、X
9は、Fであり、X
10は、Yであり、X
11は、Yであり、X
12は、Lであり、X
13は、Yであり、X
14は、Hであり、X
15は、Aである。
【0366】
更なる一態様において、重鎖可変領域は、(FR-H1)-(HVR-H1)-(FR-H2)-(HVR-H2)-(FR-H3)-(HVR-H3)-(FR-H4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(FR-L1)-(HVR-L1)-(FR-L2)-(HVR-L2)-(FR-L3)-(HVR-L3)-(FR-L4)に従うHVR間に並置された可変領域軽鎖フレームワーク配列を更に含む。また更なる一態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる一態様において、重鎖フレームワーク配列は、Kabat下位群I、II、またはIII配列に由来する。また更なる一態様において、重鎖フレームワーク配列は、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークである。また更なる一態様において、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、及び11として記載される。また更なる一態様において、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIV下位群配列に由来する。また更なる一態様において、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる一態様において、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、及び18として明記される。
【0367】
また更なる特定の一態様において、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域を更に含む。また更なる一態様において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。また更なる特定の一態様において、ヒト定常領域は、IgG1である。また更なる一態様において、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる一態様において、マウス定常領域は、IgG2Aである。また更なる特定の一態様において、抗体は、低下した、または最小のエフェクター機能を有する。また更なる特定の一態様において、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしFc変異」または非グリコシル化から生じる。また更なる一実施形態において、エフェクターなしFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0368】
更に別の実施形態において、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗PD-L1抗体が提供され、
(a)重鎖はそれぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号19)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号20)、及びRHWPGGFDY(配列番号21)と少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3配列を更に含むか、または
(b)軽鎖はそれぞれ、RASQDVSTAVA(配列番号22)、SASFLYS(配列番号23)、及びQQYLYHPAT(配列番号24)と少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3配列を更に含む。
【0369】
特定の一態様において、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0370】
別の態様において、重鎖可変領域は、(FR-H1)-(HVR-H1)-(FR-H2)-(HVR-H2)-(FR-H3)-(HVR-H3)-(FR-H4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(FR-L1)-(HVR-L1)-(FR-L2)-(HVR-L2)-(FR-L3)-(HVR-L3)-(FR-L4)に従うHVR間に並置された可変領域軽鎖フレームワーク配列を更に含む。更に別の態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる一態様において、重鎖フレームワーク配列は、Kabat下位群I、II、またはIII配列に由来する。また更なる一態様において、重鎖フレームワーク配列は、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークである。また更なる一態様において、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、及び11として記載される。また更なる一態様において、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIV下位群配列に由来する。また更なる一態様において、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる一態様において、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、及び18として明記される。
【0371】
また更なる特定の一態様において、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域を更に含む。また更なる一態様において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。また更なる特定の一態様において、ヒト定常領域は、IgG1である。また更なる一態様において、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる一態様において、マウス定常領域は、IgG2Aである。また更なる特定の一態様において、抗体は、低下した、または最小のエフェクター機能を有する。また更なる特定の一態様において、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしFc変異」または非グリコシル化から生じる。また更なる一実施形態において、エフェクターなしFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0372】
別の更なる実施形態において、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む、単離された抗PD-L1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、重鎖配列、
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号25)と少なくとも85%の配列同一性を有する、かつ/または
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号4)と少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0373】
特定の一態様において、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。別の態様において、重鎖可変領域は、(FR-H1)-(HVR-H1)-(FR-H2)-(HVR-H2)-(FR-H3)-(HVR-H3)-(FR-H4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(FR-L1)-(HVR-L1)-(FR-L2)-(HVR-L2)-(FR-L3)-(HVR-L3)-(FR-L4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。更に別の態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。更なる一態様において、重鎖フレームワーク配列は、Kabat下位群I、II、またはIII配列に由来する。また更なる一態様において、重鎖フレームワーク配列は、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークである。また更なる一態様において、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、及びWGQGTLVTVSS(配列番号27)として明記される。
【0374】
また更なる一態様において、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIV下位群配列に由来する。また更なる一態様において、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる一態様において、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、及び18として明記される。
【0375】
また更なる特定の一態様において、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域を更に含む。また更なる一態様において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。また更なる特定の一態様において、ヒト定常領域は、IgG1である。また更なる一態様において、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる一態様において、マウス定常領域は、IgG2Aである。また更なる特定の一態様において、抗体は、低下した、または最小のエフェクター機能を有する。また更なる特定の一態様において、最小のエフェクター機能は、原核細胞内での産生から生じる。また更なる特定の一態様において、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしFc変異」または非グリコシル化から生じる。また更なる一実施形態において、エフェクターなしFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0376】
更なる一態様において、重鎖可変領域は、(FR-H1)-(HVR-H1)-(FR-H2)-(HVR-H2)-(FR-H3)-(HVR-H3)-(FR-H4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(FR-L1)-(HVR-L1)-(FR-L2)-(HVR-L2)-(FR-L3)-(HVR-L3)-(FR-L4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。また更なる一態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる一態様において、重鎖フレームワーク配列は、Kabat下位群I、II、またはIII配列に由来する。また更なる一態様において、重鎖フレームワーク配列は、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークである。また更なる一態様において、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、以下のものである。
【0377】
また更なる一態様において、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIV下位群配列に由来する。また更なる一態様において、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる一態様において、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、以下のものである。
【0378】
また更なる特定の一態様において、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域を更に含む。また更なる一態様において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。また更なる特定の一態様において、ヒト定常領域は、IgG1である。また更なる一態様において、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる一態様において、マウス定常領域は、IgG2Aである。また更なる特定の一態様において、抗体は、低下した、または最小のエフェクター機能を有する。また更なる特定の一態様において、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしFc変異」または非グリコシル化から生じる。また更なる一実施形態において、エフェクターなしFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0379】
更に別の実施形態において、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗PD-L1抗体が提供され、
(c)重鎖はそれぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号19)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号20)、及びRHWPGGFDY(配列番号21)と少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3配列を更に含む、かつ/または、
(d)軽鎖はそれぞれ、RASQDVSTAVA(配列番号22)、SASFLYS(配列番号23)、及びQQYLYHPAT(配列番号24)と少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3配列を更に含む。
【0380】
特定の一態様において、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0381】
別の態様において、重鎖可変領域は、(FR-H1)-(HVR-H1)-(FR-H2)-(HVR-H2)-(FR-H3)-(HVR-H3)-(FR-H4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(FR-L1)-(HVR-L1)-(FR-L2)-(HVR-L2)-(FR-L3)-(HVR-L3)-(FR-L4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。更に別の態様において、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。また更なる一態様において、重鎖フレームワーク配列は、Kabat下位群I、II、またはIII配列に由来する。また更なる一態様において、重鎖フレームワーク配列は、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークである。また更なる一態様において、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、及びWGQGTLVTVSSASTK(配列番号31)として明記される。
【0382】
また更なる一態様において、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIV下位群配列に由来する。また更なる一態様において、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。また更なる一態様において、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、及び18として明記される。また更なる特定の一態様において、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域を更に含む。また更なる一態様において、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。また更なる特定の一態様において、ヒト定常領域は、IgG1である。また更なる一態様において、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。また更なる一態様において、マウス定常領域は、IgG2Aである。また更なる特定の一態様において、抗体は、低下した、または最小のエフェクター機能を有する。また更なる特定の一態様において、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしFc変異」または非グリコシル化から生じる。また更なる一実施形態において、エフェクターなしFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0383】
また更なる一実施形態において、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む、単離された抗PD-L1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、重鎖配列、
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTK(配列番号26)と少なくとも85%の配列同一性を有するか、または
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号4)と少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0384】
いくつかの実施形態において、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む、単離された抗PD-L1抗体が提供され、軽鎖可変領域配列は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む、単離された抗PD-L1抗体が提供され、重鎖可変領域配列は、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む、単離された抗PD-L1抗体が提供され、軽鎖可変領域配列は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、重鎖可変領域配列は、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、重鎖及び/または軽鎖のN末端の1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基が、欠失、置換、または修飾され得る。
【0385】
また更なる一実施形態において、重鎖及び軽鎖配列を含む、単離された抗PD-L1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、重鎖配列、
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号32)と少なくとも85%の配列同一性を有する、かつ/または
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号33)と少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0386】
いくつかの実施形態において、重鎖及び軽鎖配列を含む、単離された抗PD-L1抗体が提供され、軽鎖配列は、配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、重鎖及び軽鎖配列を含む、単離された抗PD-L1抗体が提供され、重鎖配列は、配列番号32のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、重鎖及び軽鎖配列を含む、単離された抗PD-L1抗体が提供され、軽鎖配列は、配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し、重鎖配列は、配列番号32のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0387】
いくつかの実施形態において、単離された抗PD-L1抗体は、非グリコシル化される。抗体のグリコシル化は典型的には、N結合またはO結合のいずれかである。N結合は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(式中、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的なグリコシル化部位が作製される。O結合グリコシル化は、糖類であるN-アセイルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンもまた使用され得る。抗体からのグリコシル化部位の除去は、上述のトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位について)のうちの1つが除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成される。この改変は、グリコシル化部位内のアスパラギン、セリン、またはスレオニン残基の、別のアミノ酸残基(例えば、グリシン、アラニン、または保存的置換)による置換によって行われ得る。
【0388】
本明細書の実施形態のいずれにおいても、単離された抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1、例えば、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9NZQ7.1に示されるヒトPD-L1、またはそのバリアントに結合することができる。
【0389】
また更なる一実施形態において、本明細書に記載される抗体のうちのいずれかをコードする単離された核酸が提供される。いくつかの実施形態において、核酸は、前述の抗PD-L1抗体のいずれかをコードする核酸の発現に好適なベクターを更に含む。また更なる特定の一態様において、ベクターは、核酸の発現に好適な宿主細胞内にある。また更なる特定の一態様において、宿主細胞は、真核細胞または原核細胞である。また更なる特定の一態様において、真核細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞である。
【0390】
抗体またはその抗原結合断片は、当該技術分野において既知である方法を使用して、例えば、そのような抗体または断片を産生するのに好適な条件下で、発現に好適な形態の前述の抗PD-L1抗体または抗原結合断片のいずれかをコードする核酸を含有する宿主細胞を培養することと、抗体または断片を回収することとを含むプロセスによって作製され得る。
【0391】
上記に列挙される実施形態のいずれかにおける使用のためのそのようなPD-L1軸結合アンタゴニスト抗体(例えば、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、及び抗PD-L2抗体)または本明細書に記載される他の抗体(例えば、PD-L1発現レベルの検出のための抗PD-L1抗体)が、以下の節Cの節i-viiに記載される特徴のいずれかを、単独または組み合わせで有し得ることが明示的に企図される。
【0392】
C.抗体
i.抗体親和性
特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体(例えば、抗VEGF抗体、抗PD-L1抗体、または抗PD-1抗体)は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0393】
一実施形態において、Kdは、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。一実施形態において、RIAは、対象となる抗体及びその抗原のFabバージョンによって実行される。例えば、抗原に対するFabの溶液結合親和性は、未標識抗原の一連の滴定の存在下で、Fabを最小濃度の(125I)標識抗原と平衡化し、その後抗Fab抗体コーティングプレートと結合した抗原を捕捉することによって測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881,1999を参照されたい)。アッセイの条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後PBS中2重量体積%のウシ血清アルブミンで2~5時間室温(およそ23℃)で遮断する。非吸着性プレート(Nunc番号269620)中、100pMまたは26pMの[125I]-抗原を対象となるFabの段階希釈液と混合する(例えば、Presta et al.,Cancer Res.57:4593-4599,1997における抗VEGF抗体、Fab-12の評価と一貫する)。その後、対象となるFabを一晩インキュベートするが、インキュベーションをより長い期間(例えば、約65時間)継続して、平衡に達することを確実にしてもよい。その後、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために混合物を捕捉プレートに移動させる。その後、溶液を除去し、PBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))を用いてプレートを8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μL/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、TOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)でプレートを10分間計数する。20%以下の最大結合をもたらす各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおける使用のために選択する。
【0394】
別の実施形態に従うと、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用するアッセイは、約10の応答単位(RU)で固定化抗原CM5チップによって25℃で実行される。一実施形態において、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)は、供給業者の指示書に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)によって活性化される。抗原を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/mL(約0.2μM)になるまで希釈した後に、5μL/分の流量で注入して、およそ10の応答単位(RU)の共役タンパク質を達成する。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応基を遮断する。動態測定のために、Fabの2倍段階希釈液(0.78nM~500nM)を、0.05%のポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤を含むPBS(PBST)中、25℃、およそ25μL/分の流量で注入する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)を、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2版)を使用して、会合センサーグラムおよび解離センサーグラムを同時に適合することによって、計算する。平衡解離定数(Kd)を、koff/konの比として計算する。例えば、Chenら(J.Mol.Biol.293:865-881,1999)を参照されたい。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによる会合速度が106M-1s-1を超える場合、会合速度は、ストップフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)または撹拌キュベットを有する8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定される場合に、増加する抗原濃度の存在下で、25℃で、PBS中20nMの抗-抗原抗体(Fab形態)(pH7.2)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加または減少を測定する蛍光消光技術を使用して決定することができる。
【0395】
ii.抗体断片
特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体(例えば、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体)は、抗体断片である。抗体断片としては、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、及びscFv断片、ならびに以下に記載される他の断片が挙げられるが、これらに限定されない。特定の抗体断片に関する概説については、Hudsonら(Nat.“Med.”9:129-134,2003を参照されたい)。scFv断片に関する概説については、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)を参照されたい。WO93/16185、ならびに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号もまた参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、増加したインビボ半減期を有するFab及びF(ab’)2断片の考察については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0396】
ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudson et al.Nat.“Med.”9:129-134,2003、及びHollinger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444-6448,1993を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディもまた、Hudsonら(Nat.“Med.”9:129-134,2003)に記載される。
【0397】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部もしくは一部、または軽鎖可変ドメインの全部もしくは一部を含む、抗体断片である。特定の実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA、例えば、米国特許第6,248,516B1号を参照されたい)。
【0398】
抗体断片は、既知の方法に従う、無傷抗体のタンパク質消化、ならびに組み換え宿主細胞(例えば、E.coliまたはファージ)による産生を含むが、これらに限定されない、様々な技術によって作製され得る。
【0399】
iii.キメラ抗体及びヒト化抗体
特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体(例えば、抗VEGF抗体、抗PD-L1抗体、または抗PD-1抗体)は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号及びMorrisonら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855,1984)に記載される。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または非ヒト霊長類(サルなど)に由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。更なる一例において、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスから変化した「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、その抗原結合断片が含まれる。
【0400】
特定の実施形態において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、非ヒト親抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低下させるために、ヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、1つ以上の可変ドメインを含み、そのHVR、例えば、CDR(またはそれらの部分)は、非ヒト抗体に由来し、そのFR(またはそれらの部分)は、ヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体はまた、任意で、ヒト定常領域の少なくとも一部も含むだろう。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体内のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を復元または改善するように、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)に由来する対応する残基で置換される。
【0401】
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法は、例えば、Almagro and Fransson,(Front.Biosci.13:1619-1633,2008)に概説され、例えば、Riechmannら(Nature332:323-329,1988)、Queenら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:10029-10033,1989)、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号、Kashmiriら(Methods36:25-34,2005)(特異性決定領域(SDR)移植を説明)、Padlan(Mol.Immunol.28:489-498,1991)(「リサーフェシング」を説明)、Dall’Acquaら(Methods36:43-60,2005)(「FRシャッフリング」を説明)、Osbournら(Methods36:61-68,2005)、ならびにKlimkaら(Br.J.Cancer,83:252-260,2000)(FRシャッフリングに対する「誘導選択」アプローチを説明)に更に詳細に記載されている。
【0402】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域としては、「最良適合」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296,1993を参照されたい)、軽鎖または重鎖可変領域の特定の下位群のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285,1992及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623,1993を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞変異型)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞株フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633,2008)、ならびにFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684,1997及びRosok et al.J.Biol.Chem.271:22611-22618,1996を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0403】
iv.ヒト抗体
特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体(例えば、抗VEGF抗体、抗PD-L1抗体、または抗PD-1抗体)は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において既知である様々な技術を使用して産生することができる。ヒト抗体は一般に、van Dijk and van de Winkel,(Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74,2001)及びLonberg(Curr.Opin.Immunol.20:450-459,2008)に記載されている。
【0404】
ヒト抗体は、抗原投与に応答して、無傷ヒト抗体またはヒト可変領域を有する無傷抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製され得る。そのような動物は典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または染色体外に存在するか、もしくは動物の染色体内にランダムに組み込まれている、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有する。そのようなトランスジェニックマウスにおいて、内因性免疫グロブリン遺伝子座は一般に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法に関する概説については、Lonberg(Nat.Biotech.23:1117-1125,2005)を参照されたい。例えば、米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号(XENOMOUSE(商標)技術を説明)、米国特許第5,770,429号(HUMAB(登録商標)技術を説明)、米国特許第7,041,870号(K-M MOUSE(登録商標)技術を説明)、ならびに米国特許出願公開第US2007/0061900号(VELOCIMOUSE(登録商標)技術を説明)もまた、参照されたい。そのような動物によって生成された無傷抗体からのヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって更に修飾され得る。
【0405】
ヒト抗体はまた、ハイブリドーマに基づく方法によっても作製され得る。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が、記載されている。例えば、Kozbor(J.Immunol.133:3001,1984)、Brodeurら(Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63,Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)、及びBoernerら(J.Immunol.,147:86,1991)を参照されたい。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体もまた、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562,2006に記載されている。追加の方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を説明)及びNi(Xiandai Mianyixue,26(4):265-268,2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを説明)に記載される方法が挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、Vollmers and Brandlein(Histology and Histopathology,20(3):927-937,2005)及びVollmers and Brandlein(Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91,2005)にも記載されている。
【0406】
ヒト抗体はまた、ヒト由来ファージ提示ライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても生成され得る。その後、そのような可変ドメイン配列は、所望されるヒト定常ドメインと組み合わされ得る。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技術を、以下に記載する。
【0407】
v.ライブラリ由来抗体
本発明の抗体(例えば、抗VEGF抗体、抗PD-L1抗体、または抗PD-1抗体)は、所望される活性(複数可)を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、ファージ提示ライブラリを生成し、所望される結合特性を保有する抗体についてそのようなライブラリをスクリーニングするための様々な方法が、当該技術分野において既知である。そのような方法は、例えば、Hoogenboomら(Methods in Molecular Biology178:1-37,O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に概説され、例えば、McCaffertyら(Nature348:552-554,1990)、Clacksonら(Nature352:624-628,1991)、Marksら.(J.Mol.Biol.222:581-597,1992)、Marks and Bradbury(Methods in Molecular Biology248:161-175,Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)、Sidhuら(J.Mol.Biol.338(2):299-310,2004)、Leeら(J.Mol.Biol.340(5):1073-1093,2004)、Fellouse,(Proc.Natl.Acad.Sci.USA101(34):12467-12472,2004)、及びLeeら(J.Immunol.Methods284(1-2):119-132,2004)に更に記載されている。
【0408】
特定のファージ提示法において、VH及びVL遺伝子のレパートリーが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により別個にクローニングされ、ファージライブラリ内で無作為に組み換えられ、これがその後、Winterら(Ann.Rev.Immunol.,12:433-455,1994)に記載されるように抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、典型的には、一本鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとして抗体断片を提示する。免疫化源に由来するライブラリは、ハイブリドーマの構築を必要とすることなく、高親和性抗体を免疫原に提供する。あるいは、Griffithsら(EMBO J,12:725-734,1993)によって記載されるように、ナイーブレパートリーは、(例えば、ヒトから)クローニングされて、いかなる免疫化も伴わずに、幅広い非自己抗原及び自己抗原に対する抗体の単一源を提供することができる。最後に、ナイーブライブラリはまた、Hoogenboom and Winter(J.Mol.Biol.,227:381-388,1992)に記載されるように、幹細胞からの再配置されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使用して、高度可変CDR3領域をコードし、かつインビトロで再配置を達成することによって、合成的にも作製され得る。ヒト抗体ファージライブラリについて記載する特許公報としては、例えば、米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号が挙げられる。
【0409】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書においてヒト抗体またはヒト抗体断片と見なされる。
【0410】
vi.多重特異性抗体
上記の態様のいずれか1つにおいて、本明細書に提供される抗体(例えば、抗VEGF抗体、抗PD-L1抗体、または抗PD-1抗体)は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体であり得る。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。特定の実施形態において、結合特異性の一方は、PD-L1へのものであり、他方は、任意の他の抗原へのものである。特定の実施形態において、結合特異性の一方は、VEGFへのものであり、他方は、任意の他の抗原へのものである。特定の実施形態において、二重特異性抗体は、PD-L1の2つの異なるエピトープに結合し得る。特定の実施形態において、二重特異性抗体は、VEGFの2つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異性抗体を使用して、PD-L1またはVEGFを発現する細胞に細胞毒性剤を局所化することもできる。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片として調製され得る。
【0411】
多重特異性抗体を作製するための技術としては、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組み換え同時発現(Milstein and Cuello,Nature305:537,1983)、WO93/08829、及びTraunecker et al.EMBOJ.10:3655,1991を参照されたい)ならびに「ノブインホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。多重特異性抗体はまた、静電ステアリング効果を操作して抗体Fc-ヘテロ二量体分子を作製すること(例えば、WO2009/089004A1を参照されたい)、2つ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号及びBrennan et al.Science229:81,1985を参照されたい)、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelny et al.J.Immunol.148(5):1547-1553,1992を参照されたい)、「ダイアボディ」技術を使用して二重特異性抗体断片を作製すること(例えば、Hollinger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444-6448,1993を参照されたい)、及び一本鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al.J.Immunol.152:5368,1994を参照されたい)、ならびに例えば、Tutt et al.J.Immunol.147:60,1991)に記載される三重特異性抗体を調製することによっても作製され得る。
【0412】
「オクトパス抗体」を含む3つ以上の機能的抗原結合部位を有する操作された抗体もまた、本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照されたい)。
【0413】
本明細書の抗体または断片は、PD-L1及び別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用FAb」または「DAF」も含む。本明細書の抗体または断片はまた、VEGF及び別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「DAF」も含む。
【0414】
vii.抗体バリアント
特定の実施形態において、本発明の抗体(例えば、抗VEGF抗体、抗PD-L1抗体、及び抗PD-1抗体)のアミノ酸配列バリアントが企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。そのような修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内における、残基からの欠失、及び/またはそこへの挿入、及び/またはその置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせによって、最終構築物に到達することができるが、但し、最終構築物が所望される特性、例えば、抗原結合を所有することを条件とする。
【0415】
a.置換、挿入、及び欠失バリアント
特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換変異誘発の対象となる部位には、HVR及びFRが含まれる。保存的置換は、表1の「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化は、表1の「例示的な置換」の見出しの下に示され、アミノ酸側鎖のクラスを参照して以下に更に記載する通りである。アミノ酸置換が対象となる抗体に導入され得、その産物が、所望される活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の減少、またはADCCもしくはCDCの改善についてスクリーニングされ得る。
表1.例示的かつ好ましいアミノ酸置換
アミノ酸は、以下の一般的な側鎖特性に従って群分けされ得る。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
(3)酸性:Asp、Glu、
(4)塩基性:His、Lys、Arg、
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro、
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0416】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴うだろう。
【0417】
1種類の置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、更なる研究のために選択される、結果として得られるバリアント(複数可)は、親抗体と比較して、特定の生物学的特性の修飾(例えば、改善)(例えば、親和性の増加及び/もしくは免疫原性の低下)を有する、かつ/または実質的に保持された親抗体の特定の生物学的特性を有するだろう。一例示的な置換バリアントは、例えば、本明細書に記載されるものなどのファージ提示に基づく親和性成熟技術を使用して好都合に生成され得る、親和性成熟抗体である。簡潔には、1つ以上のHVR残基が変異され、バリアント抗体がファージ上に提示され、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0418】
改変(例えば、置換)がHVR内で行われて、例えば、抗体親和性が改善され得る。そのような改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照されたい)、及び/または抗原と接触する残基内で行われ得、結果として得られるバリアントVHまたはVLが結合親和性について試験される。二次ライブラリを構築し、それから再選択することによる親和性成熟が、例えば、Hoogenboomら(Methods in Molecular Biology178:1-37,O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態において、多様性が、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のうちのいずれかによって、成熟のために選択された可変遺伝子に導入される。その後、二次ライブラリが作製される。その後、ライブラリがスクリーニングされて、所望される親和性を有する任意の抗体バリアントが特定される。多様性を導入する別の方法は、数個のHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)がランダム化されるHVR指向性アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデル化を使用して、特異的に特定され得る。特に、CDR-H3及びCDR-L3が、多くの場合、標的となる。
【0419】
特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、そのような改変が、抗体が抗原に結合する能力を実質的に低下させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的改変(例えば、本明細書に提供される保存的置換)がHVR内で行われ得る。そのような改変は、例えば、HVR内の抗原接触残基の外側であってもよい。上記に提供されるバリアントVH配列及びVL配列のある特定の実施形態において、各HVRは、改変されないか、または1つ、2つ、もしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有するかのいずれかである。
【0420】
変異誘発のために標的とされ得る抗体の残基または領域の特定に有用な方法は、Cunningham and Wells(Science,244:1081-1085,1989)によって記載されるように、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法において、残基または標的残基の群(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)が特定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)により置き換えられて、抗体と抗原との相互作用に影響が及ぼされたかが決定される。更なる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置に導入され得る。あるいは、または加えて、抗体と抗原との間の接触点を特定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基及び隣接する残基は、置換の候補として標的とされ得るか、または排除され得る。バリアントは、スクリーニングされて、それらが所望される特性を含有するかが決定され得る。
【0421】
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドの範囲であるアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、酵素(例えば、ADEPTのための)またはポリペプチドへの抗体のN末端もしくはC末端の融合が挙げられ、これは抗体の血清半減期を増加させる。
【0422】
b.グリコシル化バリアント
特定の実施形態において、本発明の抗体を改変して、抗体がグリコシル化する程度を増加または減少させることができる。本発明の抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作製または除去されるように、アミノ酸配列を改変することによって好都合に達成することができる。
【0423】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物が改変され得る。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、N結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH15:26-32,1997を参照されたい。オリゴ糖としては、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「幹」内のGlcNAcに結合したフコースを挙げることができる。いくつかの実施形態において、本発明の抗体内のオリゴ糖の修飾は、改善された特定の特性を有する抗体バリアントを作製するために行われ得る。
【0424】
一実施形態において、Fc領域に(直接的または間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体バリアントが提供される。例えば、そのような抗体内のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であり得る。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載されるMALDI-TOF質量分析法によって測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計に対する、Asn297の糖鎖内のフコースの平均量を計算することにより決定される。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体におけるわずかな配列多様性のため、297位から約±3アミノ酸上流または下流、すなわち、294~300位の間に位置してもよい。そのようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開第2003/0157108号、同第2004/0093621号を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体バリアントに関する刊行物の例としては、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazakiら(J.Mol.Biol.336:1239-1249,2004)、及びYamane-Ohnukiら(Biotech.Bioeng.87:614,2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545,1986)、米国特許出願第US2003/0157108A1号、及びWO2004/056312A1号(特に実施例11))、ならびにアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614,2004、Kanda,Y.et al.Biotechnol.Bioeng.94(4):680-688,2006、及びWO2003/085107を参照されたい)が挙げられる。
【0425】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、二分されたオリゴ糖を有する抗体バリアントが更に提供される。そのような抗体バリアントは、低下したフコシル化及び/または改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体バリアントの例は、例えば、WO2003/011878、米国特許第6,602,684号、及びUS2005/0123546に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントもまた、提供される。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体バリアントは、例えば、WO1997/30087、WO1998/58964、及びWO1999/22764に記載されている。
【0426】
c.Fc領域バリアント
特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾が、本発明の抗体のFc領域内に導入され得、それによりFc領域バリアントが生成され得る。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0427】
特定の実施形態において、本発明は、全てではないがいくつかのエフェクター機能を所有し、それにより、インビボでの抗体の半減期が重要であるが、更に特定のエフェクター機能(補体及びADCCなど)が不要であるか、または有害である用途に対して望ましい候補となる、抗体バリアントを企図する。インビトロ及び/またはインビボ細胞毒性アッセイを実行して、CDC及び/またはADCC活性の低下/欠乏を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行して、抗体がFcγR結合を欠く(故にADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にすることができる。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞が、FcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch and Kinet(Annu.Rev.Immunol.9:457-492,1991)の464頁の表3に要約される。対象となる分子のADCC活性を評定するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA83:7059-7063,1986を参照されたい)及びHellstrom,I et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA82:1499-1502,1985、米国特許第5,821,337号、Bruggemann et al.J.Exp.“Med.”166:1351-1361,1987)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法が用いられもよい(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞毒性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA、及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい)。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、または加えて、対象となる分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynesら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA95:652-656,1998)に開示されるものなどの動物モデルにおいて評価されてもよい。C1q結合アッセイを実行して、抗体がC1qに結合することができず、故にCDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評定するために、CDCアッセイが実行されてもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al.J.Immunol.Methods202:163,1996、Cragg et al.Blood.101:1045-1052,2003、及びCragg et al.Blood.103:2738-2743,2004を参照されたい)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期決定もまた、当該技術分野において既知である方法を使用して実行することができる(例えば、Petkova et al.Int’l.Immunol.18(12):1759-1769,2006を参照されたい)。
【0428】
低下したエフェクター機能を有する抗体としては、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有するものが挙げられる(米国特許第6,737,056号及び同第8,219,149号)。そのようなFc変異体は、残基265及び297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体を含む、アミノ酸265位、269位、270位、297位、及び327位のうちの2つ以上に置換を有するFc変異体を含む(米国特許第7,332,581号及び同第8,219,149号)。
【0429】
FcRへの改善または縮小した結合を有する特定の抗体バリアントが、記載されている(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604,2001を参照されたい)。
【0430】
特定の実施形態において、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298位、333位、及び/または334位(残基のEU番号付け)での置換を有するFc領域を含む。
【0431】
いくつかの実施形態において、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及Idusogieら(J.Immunol.164:4178-4184,2000)に記載される、改変(すなわち、改善または縮小のいずれか)したC1q結合および/または補体依存性細胞毒性(CDC)をもたらす改変が、Fc領域内で行われる。
【0432】
増加した半減期と、母体IgGの胎児への導入に関与する新生児Fc受容体(FcRn)への改善された結合とを有する抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587,1976、及びKim et al.J.Immunol.24:249,1994)が、米国公開第2005/0014934A1号に記載されている。それらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する1つ以上の置換を有するFc領域を含む。そのようなFcバリアントとしては、Fc領域残基238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上での置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものが挙げられる(米国特許第7,371,826号)。
【0433】
Fc領域バリアントの他の例に関しては、Duncan and Winter(Nature322:738-40,1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、及びWO94/29351もまた参照されたい。
【0434】
d.システイン操作された抗体バリアント
特定の実施形態において、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されている、システイン操作された抗体、例えば、「thioMAb」を作製することが望ましい場合がある。特定の実施形態において、置換された残基は、抗体の到達可能な部位で生じる。それらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基が抗体の到達可能な部位に位置付けられ、それを使用して、抗体を他の部分(薬物部分またはリンカー-薬物部分など)にコンジュゲートして、本明細書に更に記載される免疫コンジュゲートを作製することができる。特定の実施形態において、以下の残基、軽鎖のV205(Kabat番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け)、及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)のいずれか1つ以上が、システインで置換され得る。システイン操作された抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように生成され得る。
【0435】
e.抗体誘導体
特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、当該技術分野において既知であり、かつ容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含有するように更に修飾され得る。抗体の誘導体化に好適な部分としては、水溶性ポリマーが挙げられるが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造する上で有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量のものであり得、分岐状または非分岐状であり得る。抗体に結合するポリマーの数は異なり得、2つ以上のポリマーが結合する場合、それらは同じ分子であっても異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、改善される抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が定義された条件下で療法に使用されるかどうかなどを含むが、これらに限定されない、考慮すべき要因に基づいて決定され得る。
【0436】
別の実施形態において、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る、抗体及び非タンパク質性部分のコンジュゲートが提供される。一実施形態において、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA102:11600-11605,2005)。放射線は、任意の波長のものであり得、通常の細胞を傷つけないが、抗体-非タンパク質性部分に近位の細胞が殺滅される温度まで非タンパク質性部分を加熱する波長を含むが、これらに限定されない。
【0437】
f.免疫コンジュゲート
本発明はまた、化学療法剤もしくは薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、またはそれらの断片)、あるいは放射性同位体などの1つ以上の細胞毒性剤にコンジュゲートされた、本明細書の抗体(例えば、抗VEGF抗体、抗PD-L1抗体、または抗PD-1抗体)を含む免疫コンジュゲートも提供する。
【0438】
一実施形態において、免疫コンジュゲートは、抗体が1つ以上の薬物にコンジュゲートされた抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であり、この薬物としては、マイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、及び欧州特許第EP0425235B1号を参照されたい)、モノメチルオーリスタチン薬物部分DE及びDFなどのオーリスタチン(MMAE及びMMAF)(米国特許第5,635,483号、同第5,780,588号、及び同第7,498,298号を参照されたい)、ドラスタチン、カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、及び同第5,877,296号、Hinman et al.Cancer Res.53:3336-3342,1993、ならびにLode et al.Cancer Res.58:2925-2928,1998を参照されたい)、アントラサイクリン(ダウノマイシンまたはドキソルビシンなど)(Kratz et al.Current Med.Chem.13:477-523,2006、Jeffrey et al.Bioorganic&Med.Chem.Letters16:358-362,2006、Torgov et al.,Bioconj.Chem.16:717-721(2005)、Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA97:829-834(2000)、Dubowchik et al.,Bioorg.&Med.Chem.Letters12:1529-1532,2002、King et al.,J.Med.Chem.45:4336-4343,2002、及び米国特許第6,630,579号を参照されたい)、メトトレキサート、ビンデシン、タキサン(ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、及びオルタタキセルなど)、トリコテセン、ならびにCC1065が挙げられるが、これらに限定されない。
【0439】
別の実施形態において、免疫コンジュゲートは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンチンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、マイトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、ならびにトリコテセンを含むが、これらに限定されない、酵素活性毒素またはその断片にコンジュゲートされた本明細書に記載される抗体を含む。
【0440】
別の実施形態において、免疫コンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートされて放射性コンジュゲートを形成する、本明細書に記載される抗体を含む。放射性コンジュゲートの産生には、様々な放射性同位体が利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体が挙げられる。放射性コンジュゲートが検出のために使用される場合、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えば、tc99mもしくはI123、または核磁気共鳴(NMR)画像法(磁気共鳴画像法、MRIとしても知られる)のためのスピン標識(再びヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、もしくは鉄など)を含み得る。抗体及び細胞毒性剤のコンジュゲートは、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHClなど)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン2,6-ジイソシアネートなど)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)などの多様な二官能性タンパク質カップリング剤を使用して作製され得る。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.(Science238:1098,1987)に記載されるように調製され得る。炭素-14で標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲートのための一例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞内での細胞毒性薬の放出を容易にする「切断可能リンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al.Cancer Res.52:127-131,1992、米国特許第5,208,020号)が使用され得る。
【0441】
本明細書の免疫コンジュゲートまたはADCは、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、ならびに(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)市販されているSVSB(サクシニミジル-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)を含むが、これらに限定されない架橋剤試薬で調製されるコンジュゲートを明示的に企図するが、これらに限定されない。
【0442】
D.薬学的製剤
本発明に従って使用される、VEGFアンタゴニスト及びPD-L1軸結合アンタゴニストの治療製剤(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体及びアテゾリズマブなどの抗PD-L1抗体)の治療製剤は、所望される純度を有するアンタゴニストを、凍結乾燥された製剤または水溶液の形態にある任意の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することによって保管のために調製される。製剤に関する一般情報については、例えば、Gilman et al.(eds.)The Pharmacological Bases of Therapeutics,8th Ed.,Pergamon Press,1990、A.Gennaro(ed.),Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,Mack Publishing Co.,Pennsylvania,1990、Avis et al.(eds.)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications Dekker,New York,1993、Lieberman et al.(eds.)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets Dekker,New York,1990、Lieberman et al.(eds.),Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems Dekker,New York,1990、及びWalters(ed.)Dermatological and Transdermal Formulations(Drugs and the Pharmaceutical Sciences),Vol119,Marcel Dekker,2002を参照されたい。
【0443】
許容される担体、賦形剤、または安定剤は、レシピエントに対し、用いられる投薬量及び濃度で無毒であり、緩衝液(リン酸、クエン酸、及び他の有機酸など)、アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤、保存剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチルもしくはプロピルパラベンなど)、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールなど)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなど)、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなど)、単糖類、二糖類、及び他の炭水化物(グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む)、キレート剤(EDTAなど)、糖類(スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなど)、塩形成対イオン(ナトリウムなど)、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)、ならびに/または非イオン性界面活性剤(TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)など)を含む。
【0444】
本明細書の製剤はまた、2つ以上の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有し得る。そのような薬品の種類及び有効量は、例えば、製剤中に存在するアンタゴニストの量及び種類、ならびに患者の臨床的パラメータに依存する。
【0445】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術によって、もしくは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタシレート)マイクロカプセル内、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロ乳濁液、ナノ粒子、及びナノカプセル)内、またはマクロ乳濁液中にも取り込まれ得る。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences16th edition,Osol,A.Ed.,1980に開示されている。
【0446】
徐放性調製物が調製され得る。徐放性調製物の好適な例としては、アンタゴニストを含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスが挙げられ、このマトリクスは、成形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態にある。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びγエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー(LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能なマイクロスフェア)など)、ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0447】
インビボ投与に使用される製剤は、滅菌されなければならない。これは、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成される。
【0448】
上記の製造品のうちのいずれも、PD-L1軸結合アンタゴニストの代わりに、またはそれに加えて本明細書に記載される免疫コンジュゲートを含み得ることを理解されたい。
【実施例】
【0449】
実施例1:材料及び実験方法
A.研究設計
実施例1~4に記載されるIb相研究の目標は、以前に未治療の進行転移性腎細胞癌(mRCC)を有する患者に対する、3週間毎(q3w)に静脈内注入によって同時に投与されるベバシズマブ(ヒト、モノクローナルの操作された抗VEGF抗体)との組み合わせでの、抗PD-L1抗体アテゾリズマブの安全性及び耐容性を評価することであった。調査者の見解において患者が臨床的利益を経験している(すなわち、疾患進行に起因する許容されない毒性または症候的悪化が不在である)限り、治療を継続した。偽進行が疑われる場合、または混合応答の証拠が存在する場合、患者には、調査者の裁量で研究治療を受け続けさせた。研究の目的には、ベバシズマブ及びアテゾリズマブの投与に関連する、腫瘍及び循環薬力学的マーカーについての評価、ならびに治療併用の抗腫瘍活性についての予備評価が含まれた。
【0450】
安全性評価(臨床的及び研究室的)を、スクリーニング時及び治験を通して実行した。最終評価は、最終用量の30日後までに行った。有害事象(AE)の発生率、性質、及び重症度を、National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)バージョン4.0に従って等級分けした。
【0451】
いかなる評価可能または測定可能な疾患もスクリーニング時に記述し、各腫瘍評価時に再評価した。周期2、4、6、8、12、及び16の終了時、または臨床的に示される場合に、腫瘍評価を実行した。薬物投与周期の最終週の間、及び次の周期の治療開始前に評価を実行した。疾患進行以外の理由で研究治療を中断した患者は、患者が疾患進行を経験するか、更なる全身がん療法を開始するか、または死亡するまで、12週間毎に腫瘍評価を継続した。
【0452】
プロトコル定義された用量制限毒性(DLT)基準には、標準等級3または4以上の血液学的及び非血液学的毒性が含まれた。標識されたq3wの用量のベバシズマブと組み合わせて投与される、推奨2相用量のアテゾリズマブで投薬を開始し、DLTは報告されなかった。
【0453】
B.患者
患者が事前に全身療法を受けていない進行性または転移性RCCを有する場合、彼らは、Ib相研究のこのコホートへの参加に適格であった。患者は、少なくとも18歳であり、適切な血液学的及び終末器官機能を有し、かつ0または1のEastern Cooperative Oncology Group活動指標を有することが必要とされた。疾患は、固形癌効果判定基準(RECIST)に従って測定可能でなければならない。既知の原発性中枢神経系(CNS)悪性腫瘍もしくは症候性CNS転移、自己免疫疾患の病歴もしくはリスク、またはヒト免疫不全ウイルス、B型肝炎、もしくはC型肝炎感染の病歴を有する患者は除外した。抗CTLA-4、抗PD-1、もしくは抗PD-L1治療抗体、または経路標的剤での事前治療を受けた患者、及び研究開始前の特定の期間内に全身免疫賦活性剤または全身免疫抑制薬物で治療された患者もまた除外した。
【0454】
研究中の10人の患者のうち6人から、治療後の両方の時点で十分な生腫瘍細胞を有する生検を得た。6つの対(すなわち、治療中の両方の時点での同じ患者からの生検)のうち、7つは腎病変に由来し、4つは腹部/胸壁に由来し、1つは肺病変に由来し、1つはリンパ節に由来し、5つは未公表の病変に由来した。
【0455】
C.PD-L1、CD8、及びMHC-Iの免疫組織化学分析
厚さ4μmのホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片を、4.3mg/mlの濃度を使用して、自動化染色プラットフォーム(BenchMark、Ventana)で、抗ヒトPD-L1ウサギモノクローナル抗体(クローンSP142、Ventana,Tucson,AZ)によりPD-L1について染色し、ジアミノベンジジンによりシグナルを可視化し、切片をヘマトキシリンで対比染色した。腫瘍細胞及び腫瘍浸潤免疫細胞上のPD-L1発現を評価した。腫瘍細胞について、PD-L1陽性腫瘍細胞の割合は、腫瘍細胞の総数のパーセンテージとして予想され、腫瘍細胞は、典型的には、細胞質染色の可変的に強度の構成成分を有する膜染色を示した。所与の腫瘍試料中のPD-L1陽性腫瘍細胞の分布は、典型的には、非常に限局的であり、個体凝集体として成長する腫瘍内では、PD-L1陽性腫瘍細胞は、悪性細胞と間質含有腫瘍浸潤免疫細胞との界面でより一般的に観察された。腫瘍浸潤免疫細胞について、腫瘍を占有するPD-L1陽性腫瘍浸潤免疫細胞のパーセンテージを決定した。マクロファージ及び樹状細胞などの明らかに識別可能な細胞質を有する腫瘍浸潤免疫細胞は、PD-L1の膜染色パターンを示した。これは、細胞質をほとんど有さない小リンパ系形態の細胞について決定がより困難であった。PD-L1陽性腫瘍浸潤免疫細胞は、典型的には、腫瘍体積の周辺に向かって可変的なサイズの凝集体として、腫瘍体積を解剖する間質帯域内で、間質内に散在した単細胞として、または腫瘍浸潤免疫細胞凝集体内に見られた。面積当たり1%未満、1%以上だが5%未満、5%以上だが10%未満、または10%以上の細胞がPD-L1陽性である場合に、検体をそれぞれIHC0、1、2、または3としてスコア化した。複数の検体を有する患者におけるPD-L1のIHCスコアは、最高スコアに基づいた。CC1抗原回収及びOMNIMAP(商標)検出技術を使用して、Discovery XT自動染色器(Ventana)で、CD8(クローンSP16(Epitomics))IHCを実行した。
【0456】
全てのMHC-IのIHCステップを、Ventana Discovery XT自動化プラットフォーム(Ventana Medical Systems、Tucson,AZ)で実行した。切片をCell Conditioner1で標準時間処理し、その後、1:5000の希釈度の一次抗体、MHCクラスI(EP1395Y、Novusカタログ番号NB110-57201)内、37℃で60分間インキュベートした。結合した一次抗体を、OMNIMAP(商標)抗ウサギHRP検出キット、その後DAB(Ventana Medical Systems、Tucson,AZ)によって検出した。切片をHematoxylin II(Ventana Medical Systems、Tucson,AZ)で4分間、青色発色溶液で4分間対比染色し、その後、脱水し、カバーガラスをかけた。低、中、及び高MHC-Iを内因的に発現するヒト細胞ペレットを、陽性対照として並行して使用した。陰性対照は、ウサギモノクローナル(クローンDA1E、Cell Signaling Technology、カタログ番号3900S)アイソタイプ抗体を使用して実行した。腫瘍細胞内のMHC-I染色を、Hスコアシステムを使用してスコア化した。簡潔には、腫瘍細胞膜の染色強度を、無、低、中、または高3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)シグナル強度に対応して、それぞれ0、1、2、または3の数値に割り当てた。全腫瘍面積との比較での、異なる染色強度の細胞のパーセンテージを、目視評価によって決定した。以下、1×(1+細胞の%)+2×(2+細胞の%)+3×(3+細胞の%)=Hスコアのように、膜強度スコアに所与の腫瘍試料中に存在する各集団の面積パーセンテージを乗じることによって、最終スコアを計算した。症例は、2人の独立した病理学者によってスコア化された。スコア化の括弧は、100以下、101~200、及び201~300のスコアとして定義され、一致は、同じ括弧内に入る独立したスコアとして定義された。いかなる不一致も、症例の相互審査時に解決した。
【0457】
D.二重及び三重色免疫組織化学ならびに全スライドデジタル分析
FFPE腫瘍組織の連続した4μmの厚さの切片を、Ventana Benchmark XTまたはBenchmark Ultra自動化プラットフォーム(Ventana Medical Systems、Tucson,AZ)を使用して、以下の院内開発IHCアッセイ、Ki67/CD8、PDPN/CD34/ASMA、及びCD163/CD68で染色した。
【0458】
Ki67/CD8アッセイについて、切片をCell Conditioner1で64分間処理した。その後、切片を一次抗体Ki67(30-9、RTU、Ventana)内、37℃で4分間インキュベートした。結合した一次抗体を、OptiView DAB IHC検出キット(Ventana Medical Systems、Tucson,AZ)によって検出した。その後、スライドを1:100の希釈度の一次抗体抗CD8(SP239、Spring Biosciences)内、37℃で60分間インキュベートした。結合した一次抗体を、UltraView Universal AP Red検出キット(Ventana Medical Systems、Tucson,AZ)によって検出した。切片をHematoxylin II(Ventana Medical Systems、Tucson,AZ)で4分間、青色発色溶液で4分間対比染色し、その後、脱水し、カバーガラスをかけた。
【0459】
PDPN/CD34/ASMAアッセイについて、切片をCell Conditioner1で32分間処理した。その後、切片を一次抗体抗ポドプラニン(D2-40、RTU、Ventana)内、37℃で16分間インキュベートした。結合した一次抗体を、OptiView DAB IHC検出キット(Ventana Medical Systems、Tucson,AZ)によって検出した。その後、スライドを一次抗体抗CD34(QBEnd/10、RTU、Ventana)内、37℃で16分間インキュベートした。結合した一次抗体を、iView Blue Plus検出キット(Ventana Medical Systems、Tucson,AZ)によって検出した。最後に、スライドを一次抗体抗平滑筋アクチン(「SMActin」)(1A4、RTU、Ventana)内、37℃で16分間インキュベートした。結合した一次抗体を、UltraView Universal AP Red検出キット(Ventana Medical Systems、Tucson,AZ)によって検出した。切片をHematoxylin II(Ventana Medical Systems、Tucson,AZ)で4分間、青色発色溶液で4分間対比染色し、その後、脱水し、カバーガラスをかけた。
【0460】
CD163/CD68アッセイについて、切片をCell Conditioner1で32分間処理し、切片を一次抗体抗CD163(MRQ-26、RTU、Ventana)内、37℃で8分間インキュベートした。結合した一次抗体を、OptiView DAB IHC検出キット(Ventana Medical Systems、Tucson,AZ)によって検出した。その後、スライドを一次抗体抗CD68(KP-1、RTU、Ventana)内、37℃で8分間インキュベートした。結合した一次抗体を、UltraView Universal AP Red検出キット(Ventana Medical Systems、Tucson,AZ)によって検出した。切片をHematoxylin II(Ventana Medical Systems、Tucson,AZ)で4分間、青色発色溶液で4分間対比染色し、その後、脱水し、カバーガラスをかけた。既知の方法に従って、適切な陰性及び陽性対照を実行した。
【0461】
全スライドに基づく、IHC染色した物体の検出及び分類のためのアルゴリズムは、Matlabにおいて執筆された。明視野染色分離の後、IHC染色した物体を細胞候補として検出した。全ての細胞候補について、定量的特徴を抽出した。その後、教師あり機械学習を使用して、候補を様々な細胞クラス(例えば、CD8+/Ki67-細胞)に分類した。(病理学者によって提供される)真及び偽の染色した物体の正解データギャラリーを使用して、分類方法を訓練した。最後に、(デジタルスライドアノテーションを通して病理学者によって提供される)分類した細胞及び腫瘍面積を報告し、病理学審査のために品質管理(QC)画像を生成した。自動化デジタルスライド分析の結果を、以下のように腫瘍面積について報告した。Ki67-/CD8+及びKi67+/CD8+細胞密度(1mm2当たりの細胞数)、CD68+/CD163+及びCD68+/CD163-面積カバー度のパーセント(全腫瘍面積に対する面積カバー度)、CD34+/αSMA-及びCD34+/αSMA+血管密度(1mm2当たりの血管数)。
【0462】
E.FFPE腫瘍組織からのRNA単離
RNA単離を、Schleifmanら(PLoS One8:e74231,2014)に記載されるように実行した。簡潔には、腫瘍FFPE切片をマクロ解剖して腫瘍性組織を濃縮し、腫瘍溶解緩衝液及びプロテイナーゼKを使用して組織を溶解させて、核酸の完全な消化及び放出を可能にした。High Pure FFPE RNA Micro Kit(Roche Applied Sciences、Indianapolis,IN)を製造業者のプロトコルに従って使用して、RNAを単離した。QIAAMP(登録商標)DNA FFPE Tissue Kit(Qiagen、Hilden,Germany)を製造業者のプロトコルに従って使用して、DNAを単離した。分析が実行されるまで、RNA及びDNAを280uCで保管した。
【0463】
F.Fluidigm及びNanostring発現分析
BioMark HD(商標)リアルタイムPCR Platform(Fluidigm)をSchleifmanら(PLoS One8:e74231,2014)に記載されるように使用して、遺伝子発現分析を実行した。発現パネル内の全てのTAQMAN(登録商標)アッセイは、FAM(商標)染料標識TAQMAN(登録商標)小溝結合剤(MGB)プローブを使用し、受注生産または特注設計のいずれかでLife Technologiesを通して発注したものであり、4つの基準遺伝子、SP2、GUSB、TMEM55B、及びVPS33Bを含んだ。これらの4つの基準遺伝子(SP2、GUSB、TMEM55B、及びVPS33B)のCt値の幾何中央値を各試料について計算し、以下の通りデルタCt(ΔCt)法を使用して発現レベルを決定した。Ct(標的遺伝子)2幾何中央値Ct(基準遺伝子)。研究中の患者にわたる(免疫チップ(iChip)によって測定される)mRNA発現レベル中央値をカットオフとして使用して、高発現対低発現カテゴリー化を導出した。Pは、t検定によって決定した。
【0464】
R/Bioconductorパッケージ「NanoStringQCPro」を使用して、NanoString遺伝子発現データを処理した。陰性対照及びブランク測定の両方に基づいてプローブ及びレーン特異的背景を計算する前に、陽性対照計数によって生計数データを調節した。背景補正後、計数をlog2変換し、ハウスキーピング遺伝子発現(TMEM55B、VPS33B、TBP、及びTUBB)によって正規化した。
【0465】
G.TCR配列決定
TCRβレパートリーの増幅及び配列決定を、Klingerら(PLoS One8:e74231,2013)によって記載されるようにAdaptive Biotechnologiesで実行した。
【0466】
H.フローサイトメトリー
CD3、CD8、HLA-DR、及びKi-67発現の全血フローサイトメトリーを、確立されたプロトコルに従ってLabCorp中央研究室で実行した。末梢血単核球細胞(PBMC)をPrecision Bioservicesで単離し、フラクタルカイン受容体発現の分析及び腫瘍特異的T細胞の検出のために、凍結保存した試料をGenentechに輸送した。PBMCを解凍し、一晩休ませ、細胞の小アリコートを抗HLA-A2-FITC(BB7.2、BD)及び抗CD45-APC-H7(2D1、BD)で染色して、HLA-A2状態を決定した。残りの細胞を、HLA-A
*0201/ペプチドデキストラマーとペンタマーとの混合物(Immudex and Proimmune、表1を参照されたい)で室温で10分間染色し、その後、抗CD3-BV510(UCHTI、Biolegend)、抗CD8-A700(RPA-T8、BD)、抗CD4-PE-Cy7(RPA-T4、eBioscience)、抗CD45RA-eVolve605(HI100、eBioscience)、抗CCR7-BV421(G043H7、Biolegend)、抗CX3CR1-PerCP-eFluor710(2A9-1、eBioscience)、及びFixable Viability Dye eFluor780(eBioscience)で氷上で30分間染色した。データ取得及びFACSDIVA(商標)v8ソフトウェアを実装するBD FACSARIA(商標)での選別前に、試料を2回洗浄した。50,000個のCD8
+T細胞のうち、最低10個のデキストラマー陽性事象が、腫瘍特異的応答と見なされた。表3は、フローサイトメトリーに使用したデキストラマーの一覧を示す。
表3.フローサイトメトリーのためのデキストラマー
【0467】
I.統計分析
2回用量以上のアテゾリズマブ及びベバシズマブを21日毎に静脈内に受けた、10人全てのRCCを有する患者からのデータを使用して、ベースライン特徴及び有害事象率を決定した。有効性をRECIST v1.1に従って評価した。確認された最良の客観的全奏効率を、調査者が報告した評価から導出した。客観的奏効率(ORR)は、完全奏効または部分奏効のうちの最良の客観的全奏効率を有する患者の数を、ベースライン腫瘍評価を有する患者の総数で除したものとして定義された。
【0468】
カットオフ日に生存しており、疾患進行を経験しない患者は、最終腫瘍評価の時点で打ち切った。奏効期間をカプラン・マイヤー法によって得た。全てのAE、治療に関連するAE、及び等級3~4のAEは、10人全ての患者から提供される。
【0469】
実施例2:遺伝子発現分析は、ベバシズマブ単独療法ならびにベバシズマブ及びアテゾリズマブ併用両方に関連するバイオマーカーを特定する
1b相臨床研究を実行し、以前に未治療のmRCCを有する10人の患者が、単回用量のベバシズマブをC1D1に受け、その後、アテゾリズマブ及びベバシズマブの併用投与をC2D1に開始して3週間毎に受けた。患者コホートのベースラインの人口統計を、表4に示す。RECIST v1.1を使用して、10人の患者のうち4人において部分奏効(PR)が観察された一方で、追加の5人の患者は、延長した疾患安定(SD)(
図1及び2)を有した。この小コホートにおいて観察された臨床活性は、いずれかの単独療法によって以前に得られたものよりも高かった。奏効期間には達しておらず、奏功までの時間の中央値は4.2ヶ月であった。
表4.ベースラインの人口統計
【0470】
安全性、耐容性、及び臨床活性に加えて、上述のIb相研究の1つの重要な目的は、併用活性の機構を評価することであった。治験設計は、局所腫瘍免疫微小環境に対するベバシズマブの効果を具体的に調べるためのベバシズマブでの予行期間を含み、その後、アテゾリズマブを使用する免疫チェックポイント遮断による併用療法が続いた。治療前、ベバシズマブの15~18日後、及びアテゾリズマブ及びベバシズマブ併用治療開始の4~6週間後に、腫瘍生検及び血液を採取した。
【0471】
ベバシズマブ単独療法または併用療法に関連する腫瘍マーカーを特定するために、90個の遺伝子のPCRに基づくFluidigmパネル及び800個の遺伝子のカスタムNanoStringパネルの両方を使用して、遺伝子発現分析を実行した。VEGF下流シグナル伝達活性を反映する血管系新生に関連する遺伝子は、全ての患者において治療中の両方の時点で有意に減少し(
図3)、ベバシズマブの抗血管新生活性を確認した。驚くべきことに、治療前の時点とベバシズマブ単独治療の時点との比較は、Th1ケモカイン(CXCL9、CXLC10、CXCL11、及びCXCL13)(治療前のレベルと比較して約0.7倍~6.9倍の範囲)、CD8Tエフェクターマーカー(CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、及びPRF1)(治療前のレベルと比較して約0.4倍~6.2倍の範囲)、ならびにNK細胞マーカー(GZMB、KLRK1、及びSLAMF7)(治療前のレベルと比較して約0.7倍~8.2倍の範囲)の増加した遺伝子発現が存在したことを明らかにした(
図3)。ベバシズマブ治療により、6人の患者のうち4人が、Th1シグナル伝達に関連する遺伝子符号の有意な増加を示した。重要なことに、個々の患者レベルで、これらの符号は、VEGF依存性符号の低下の程度と無関係であった。IHCによるFasL発現は、RCCを含むいくつかのがんにおいて免疫細胞に対する潜在的な障壁として記載されている(Motz et al.Nat.“Med.”20:607-615,2014)。この研究において、ベバシズマブまたは併用治療によるFasL遺伝子発現の一貫した変化は観察されなかった。全体として、これらの差異は、ベバシズマブ単独治療が、腫瘍微小環境における最も有意な治療誘導改変を反映するTh1関連符号によって、腫瘍免疫微小環境の調節をもたらすことを示す。
【0472】
Th1ケモカイン(CXCL9、CXLC10、CXCL11、及びCXCL13)、CD8T-エフェクターマーカー(CD8A、CD8B、EOMES、GZMA、GZMB、IFNG、及びPRF1)、ならびにNK細胞マーカー(GZMB、KLRK1、及びSLAMF7)の増加した発現は、アテゾリズマブをベバシズマブと組み合わせて投与した時に増強された(
図4)。Th1ケモカイン符号の発現レベルは、治療前と比較して、ベバシズマブ+アテゾリズマブ時点で2.9~250.4倍増加し、ベバシズマブ単独時点と比較して、0.9~81.8倍増加した。CD8T
eff符号の発現レベルは、治療前と比較して、ベバシズマブ+アテゾリズマブ時点で0.8~51.8倍増加し、ベバシズマブ単独時点と比較して、0.3~17.6倍増加した。NK細胞符号の発現レベルは、治療前と比較して、ベバシズマブ+アテゾリズマブ時点で0.7~7.8倍増加し、ベバシズマブ単独時点と比較して、0.4~13.1倍増加した。
【0473】
実施例3:治療中の両方の時点での、ベバシズマブ単独療法後または併用療法の血管応答及び免疫応答のバイオマーカーの特徴付け
腫瘍内で観察される免疫及び血管遺伝子発現の変化を確認するために、治療前及び治療中組織の免疫及び血管タンパク質発現の変化を免疫組織化学によって評価した。血管を覆う内皮細胞のマーカーであるCD31の減少が観察された(
図5及び6)。内皮細胞の別のマーカーであるCD34のアルファ-平滑筋アクチン(αSMA)での二重染色は、未熟または不安定な血管(CD34
+/αSMA
-)は、発表された他の報告と一貫して、ベバシズマブ治療(
図7及び8)によって主に影響が及ぼされることを示した(例えば、Gasparini et al.Nat.Clin.Pract.Oncol.2:562-577,2005を参照されたい)。内皮細胞の形態学的変化はまた、イピルミマブ及びベバシズマブ治療後の転移性黒色腫における発見と一貫して、併用治療でも明らかであった(例えば、Hodi et al.Cancer Immunol.Res.2:632-642,2014を参照されたい)。加えて、CD68
+/CD163
-マクロファージではなくCD68
+/CD163
+マクロファージの文脈的局所化は、治療中の4人の患者において、ベバシズマブ療法によってほとんど影響がなかった成熟した血管ではなく未熟な血管に隣接して観察された(
図7、9、及び10)。理論によって拘束されることを望むものではないが、1つの潜在的な説明は、不安定な血管に局所化されたマクロファージが、ベバシズマブによって引き起こされる炎症及び血管誘導変化に応答している可能性があることである。マクロファージは、VEGFを分泌することによって血管新生を促進することが示されており(Lamagna et al.J.Leukoc.Biol.80:705-713,2006)、VEGF転写物発現は治療中の腫瘍内で上方制御された(
図11)。
【0474】
腫瘍内CD8
+T細胞の増加は、1人を除く全ての患者において併用治療後に明白であった(
図5、6、及び12)。しかしながら、IFN-γ応答遺伝子であるPD-L1の上方制御は、免疫組織化学によって1人の患者においてのみ検出され、この患者はPRを示した(
図5)。逆に、かつ予想外に、MHC-I染色における同時増加は、ベバシズマブ及び併用治療の両方の後に観察された(
図5及び6)。抗VEGF抗体療法によるMHC-Iの調節は、前述されておらず、CD8
+T細胞の増加と一貫して関連はしなかった。以前の研究は、低酸素症がHIF-1αを通した増加したMHC-I発現に関連することを見出している(Ghosh et al.Mol.Cell.Biol.33:2718-2731,2013)。
【0475】
併用療法時のCD8
+T細胞密度の増加が、増強された腫瘍内増殖または増加した輸送に起因するかに言及するために、増殖マーカーKi67でのCD8の二重免疫組織化学染色を用いた。Ki67
+/CD8
+細胞対Ki67
-/CD8
+細胞の比は、治療中変化しないままであり(
図7、13、14A~14C、15A~15C、及び16A~16C)、これは、CD8
+T細胞の増加が増強された腫瘍内増殖によるものではなく、増殖するCD8
+T細胞の増加した輸送及び浸潤によるものであることを示唆する。
【0476】
実施例4:併用療法後の抗原特異的T細胞応答の特徴付け
腫瘍内CD8
+T細胞の上昇が増加した輸送によるものであるかを確認するために、周辺の細胞集団の表現型をフローサイトメトリーによって決定した。前述のRCC腫瘍抗原ペプチドを含有するHLA-A2デキストラマー(表1)を使用して、抗原特異的T細胞が患者の血液中に存在するか、及びこれらの細胞集団が治療によって変化するかを決定した。10人の患者のうち、2人においてのみ、HLA-A2陽性患者が治療前の時点でDex-APCチャネル内の細胞について陽性であった(
図19)。これら2人の患者のうち、患者6のみが、腫瘍内CD8
+T細胞の増加を示した。興味深いことに、Dex-APC陽性染色は、患者6については併用治療後の時点までに少なくとも3倍減少したが、患者2についてはそうではなく、患者2は、腫瘍内CD8
+T細胞の増加を示さなかった。これらの変化は、周辺から腫瘍へのRCC抗原特異的T細胞輸送を示唆する。
【0477】
遺伝子発現データはまた、いくつかの他のケモカイン及びケモカイン受容体が、治療中の患者腫瘍内で増加したことも示した(
図20)。最も有意な変化は、フラクタルカイン(CX3CL1)で生じ、これは、炎症環境または低酸素環境において活性化された内皮細胞膜上で発現されることが知られている(Szukiewicz et al.Mediators Inflamm.2013:437576,2013、Umehara et al.Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.24:34-40,2004)。
【0478】
フラクタルカイン、CX3CR1の受容体は、武装CD8
+T細胞(パーフォリン
+/グランザイムB
+)上で発現されることが示されている(Nishimura et al.J.Immunol.168:6173-6180,2002)。本研究において、CX3CR1は、併用治療後に末梢CD8
+T細胞上で上方制御された(
図13)。更に、デキストラマー陽性細胞(
図19)の大部分はまた、CX3CR1も発現した(患者2及び6についてそれぞれ84%及び100%、
図16A及び16C)。腫瘍におけるフラクタルカイン及び他のケモカイン、ならびに治療中のCD8
+T細胞上のCX3CR1の一致した上方制御は、CD8
+T細胞の増加した腫瘍浸潤の機構を示唆する。
【0479】
腫瘍に対してT細胞受容体(TCR)配列決定を実行し、一致したPBMCからCD8
+T細胞を選別して、T細胞レパートリーの治療誘導変化及びT細胞の腫瘍への輸送を調査した。患者3及び6の治療前及び治療中のTILからの最上位クローンの比較は、いくつかのクローンが治療中に保持されたことを示した(
図21A~21C及び22)。ベバシズマブ単独後に出現するクローンが存在した一方で、他のクローンは併用療法の後にのみ出現した。治療前の腫瘍内では検出されるが、治療中の腫瘍内では検出されないクローンもまた存在した。まとめると、腫瘍内T細胞組成物中のこれらの動的変化は、抗腫瘍T細胞応答が治療中に発展していることを示唆する。
【0480】
選別された末梢CD8
+T細胞からのTCR配列の評価は、治療前の試料と治療中の試料との間で最上位クローンの多くが維持されることを示したが、PBMC対治療中のTIL内に見出されるクローン間にいくらかの重複も存在した(
図23A及び23B)。特に、腫瘍内CD8
+T細胞が治療中に増加しなかった患者である患者2のPBMCとTILとの間には、共通のクローンは存在しなかった。患者3及び6について、PBMCとTILとの間に類似の発生頻度で存在するいくつかのクローンが存在した。Adaptive Public Clone Databaseのブラストは、最上位PBMCクローンのいくつかがウイルス抗原を認識する可能性が高いが、これらのクローンのいくつかのみがTIL内で検出されたことを明らかにし、これは、腫瘍抗原特異的T細胞が腫瘍へと移動している可能性があることを更に示唆した(
図24)。治療中のTIL内の最上位クローンの大部分は、血液中により一層低いレベルで存在した一方で、血液中で最もドミナントなクローンは、腫瘍内では検出されない。最上位クローンの相対的割合は、TILと比較して、PBMC内では維持されないため、これは、併用治療によって誘導された腫瘍内のCD8
+T細胞の増加が選択的輸送機構を通して生じることを示唆し得る。浸潤が偏っておらず、腫瘍内で抗原特異的T細胞の保持が存在することもまた可能である。
【0481】
他の実施形態
前述の発明は、明確な理解のために例証及び実施例によって多少詳細に記載されているが、これらの説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。
【配列表】