(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】SNAP25アンチセンスオリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240614BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240614BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240614BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240614BHJP
C07K 4/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C12N15/113 140Z
A61K31/7088
A61P17/00
A61P43/00 111
C07K4/00 ZNA
(21)【出願番号】P 2019535367
(86)(22)【出願日】2017-12-29
(86)【国際出願番号】 IB2017001727
(87)【国際公開番号】W WO2018127733
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-11-30
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-14
(32)【優先日】2017-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519043383
【氏名又は名称】オリパス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,ダラム
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,カンウォン
(72)【発明者】
【氏名】チョー,ボンジュン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ミン ウク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ヒュン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソヨン
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】福井 悟
【審判官】名和 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-518770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
によって表されるペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、
13と25との間の整数であり、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける[(5'→3')AUCCCAGGGUAACA]の14量体のプレmRNA配列と少なくとも10量体の相補的重複を有し、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAと完全に相補的で
あり、
T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nは、ヒドリド[H]基を表し、
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し、
Zは、置換若しくは非置換のアミノ基を表し、
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され、及び
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nの少なくとも
5つは、独立して、式II、式III、又は式IV:
【化2】
によって表される非天然核酸塩基から選択され、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、ヒドリド基であり、
L
1、L
2及びL
3は、塩基性アミノ基を核酸塩基部分に共有結合させる式V:
【化3】
によって表される共有結合リンカーであり、
Q
1及びQ
mは、置換又は非置換のメチレン(-CH
2-)基であり、並びにQ
mは、塩基性アミノ基に直接結合しており、
Q
2、Q
3、…、及びQ
m-1は、独立して、置換又は非置換のメチレン、及び酸素(-O-)から選択され、及び
mは、1と15との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、
13と19との間の整数であり、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける[(5'→3')AUCCCAGGGUAACA]の14量体のプレmRNA配列と少なくとも10量体の相補的重複を有し、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAと完全に相補的であり、
T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nはヒドリド基であり、
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し、
Zは置換又は非置換のアミノ基を表し、
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及び非天然核酸塩基から選択され、
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nの少なくとも5つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6はヒドリド基であり、
Q
1及びQ
mはメチレン基であり、並びにQ
mは、塩基性アミノ基に直接結合しており、
Q
2、Q
3、…、及びQ
m-1は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され、及び
mは、1と8との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
【請求項3】
請求項1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、
13と19との間の整数であり、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける[(5'→3')AUCCCAGGGUAACA]の14量体のプレmRNA配列と少なくとも10量体の相補的重複を有し、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAと完全に相補的であり、
T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nはヒドリド基であり、
Xはヒドリド基であり、
Yは、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し、
Zは置換又は非置換のアミノ基を表し、
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及び非天然核酸塩基から選択され、
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nの少なくとも5つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6はヒドリド基であり、
L
1は、-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-、-CH
2-O-(CH
2)
2-、-CH
2-O-(CH
2)
3-、-CH
2-O-(CH
2)
4-、又は-CH
2-O-(CH
2)
5-を表し、右端は、塩基性アミノ基に直接結合しており、及び
L
2及びL
3は、独立して、-(CH
2)
2-、-(CH
2)
3-、-(CH
2)
4-、-(CH
2)
5-、-(CH
2)
6-、-(CH
2)
7-、-(CH
2)
8-、-(CH
2)
2-O-(CH
2)
2-、-(CH
2)
3-O-(CH
2)
2-、及び-(CH
2)
2-O-(CH
2)
3-から選択され、右端は、塩基性アミノ基に直接結合している、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
【請求項4】
以下:
(N → C) Fethoc-A(6)TT-TG(6)T-TA(6)C-CC(1O2)T-GG(6)G-A(6)-NH
2
;
(N → C) Piv-A(6)TT-TG(6)T-TA(6)C-CC(1O2)T-GG(6)G-A(6)-NH
2;
(N → C) Fethoc-A(6)TT-TG(6)T-TA(2O2)C-CC(1O2)T-GG(5)G-A(5)-NH
2;
(N → C) Fmoc-Lys-A(6)TT-TG(6)T-TA(6)C-CC(1O2)T-GG(6)G-A(6)-NH
2
;
(N → C) Fethoc-Lys-Leu-TG(5)T-TA(5)C-CC(1O2)T-GG(5)G-A(2O2)T-Lys-NH
2;
(N → C) H-TG(5)T-TA(5)C-CC(1O2)T-GG(3)G-A(5)T-NH
2
;
(N → C) ベンゾイル-TG(5)T-TA(5)C-CC(1O3)T-GG(5)G-A(5)T-NH
2;
(N → C) n-ヘキサノイル-TG(5)T-TA(8)C-CC(1O2)T-GG(5)G-A(5)T-NH
2
;
(N → C) [N-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-TG(5)T-TA(4)C-CC(1O2)T-GG(5)G-A(5)T-NH
2;
(N → C) n-プロピル-TG(2O2)T-TA(5)C-CC(2O2)T-GG(5)G-A(5)T-NH
2;
(N → C) FAM-HEX-HEX-TG(2O2)T-TA(5)C-CC(2O2)T-GG(5)G-A(5)T-NH
2;
(N → C) n-プロピル-TG(2O2)T-TA(5)C-CC(2O2)T-GG(5)G-A(5)T-Arg-NH
2;
(N → C) n-ベンゾイル-Gly-TG(2O2)T-TA(5)C-CC(2O2)T-GG(5)G-A(5)T-NH
2;
(N → C) N-Me-N-フェニル-TG(5)T-TA(5)C-CC(1O5)T-GG(5)G-A(5)T-NH
2;
(N → C) p-トルエンスルホニル-TG(2O3)T-TA(5)C-CC(1O2)T-GG(5)G-A(5)T-Lys-NH
2;
(N → C) Fethoc-TG(5)T-TA(6)C-C(1O2)CT-GG(5)G-A(6)T-NH
2;
(N → C) ベンゼンスルホニル-TG(5)T-TA(2O3)C-CC(1O5)T-GG(5)G-A(6)T-NH
2;
(N → C) フェニル-TG(5)T-TA(6)C-C(1O2)CT-GG(5)G-A(6)T-NH
2
;
(N → C) Fethoc-TG(6)T-TA(3)C-CC(1O5)T-GG(6)G-A(3)T-NH
2;
(N → C) Fethoc-G(5)TT-A(5)CC(1O2)-CTG-G(5)GA(5)-TC(1O2)-NH
2;
(N → C) ベンジル-G(5)TT-A(5)CC(1O2)-CTG-G(5)GA(5)-TC(1O2)-NH
2;
(N → C) Fethoc-GTT-A(3)CC(1O5)-CTG(6)-GGA(3)-TC(1O5)-NH
2;
(N → C) Fethoc-TA(5)C-C(1O2)CT(1O5)-GG(5)G-A(5)TC-C(1O2)A-NH
2;
(N → C) Fmoc-Leu-TA(4)C-C(1O3)CT-GG(5)G-A(4)TC-C(1O3)A-NH
2;
(N → C) Fethoc-C(1O2)AT-TTG(6)-TTA(5)-CCC(1O2)-TG(6)-NH
2;
(N → C) Fethoc-CA(6)T-TTG(5)-TTA(5)-CCC(1O2)-TG(5)-NH
2
;
(N → C) Fethoc-CA(6)T-CA(6)T-TTG(5)-TTA(5)-CCC(1O2)-TG(5)-NH
2;
(N → C) Fethoc-A(5)TT-TG(5)T-TA(5)C-CC(1O2)T-GG(5)G-A(5)-NH
2;
(N → C) Fethoc-A(6)TT-TG(5)T-TA(6)C-C(1O2)CT-GG(5)G-A(5)-NH
2;及び,
(N → C) Fethoc-A(6)TT-TG(5)T-TA(6)C-C(1O2)CT-G(5)G-NH
2:
に提供されるペプチド核酸誘導体の群から選択される、請求項1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
A、G、T、及びCは、それぞれ、アデニン、グアニン、チミン、及びシトシンの天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり、
C(pOq)、A(p)、A(pOq)、G(p)、及びG(pOq)は、それぞれ、式VI、式VII、式VIII、式IX、及び式X
【化4】
によって表される非天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり、
p及びqは、整数であり、及び
N末端置換基及びC末端置換基の略語は、以下の通り具体的に定義され:「Fmoc-」は、「[(9-フルオレニル)メチルオキシ]カルボニル-」基の略語であり、「Fethoc-」は、「[2-(9-フルオレニル)エチル-1-オキシ]カルボニル」基の略語であり
、「ベンゾイル-」は、「ベンゼンカルボニル-」基の略語であり、「Piv-」は、「ピバリル-」基の略語であり、「n-プロピル-」は、「1-(n-プロピル)-」基の略語であり、「H-」は、「ヒドリド-」基の略語であり、「p-トルエンスルホニル」は、「(4-メチルベンゼン)-1-スルホニル-」基の略語であり、「-Lys-」は、アミノ酸残基「リジン」の略語であり、「-Val-」は、アミノ酸残基「バリン」の略語であり、「-Leu-」は、アミノ酸残基「ロイシン」の略語であり、「-Arg-」は、アミノ酸残基「アルギニン」の略語であり、「-Gly-」は、アミノ酸残基「グリシン」の略語であり、「[N-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-」は、「[N-1-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-」基の略語であり、「ベンジル-」は、「1-(フェニル)メチル-」基の略語であり、「フェニル-」は、「フェニル-」基の略語であり、「Me-」は、「メチル-」基の略語であり、「-HEX-」は、「6-アミノ-1-ヘキサノイル-」基の略語であり、「FAM-」は、「5又は6-フルオレセイン-カルボニル-(異性体混合物)」基の略語であり、及び「-NH
2」は、非置換の「-アミノ」基の略語である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を含む、該ペプチド核酸誘導体の投与によってヒトSNAP25遺伝子の発現を伴う疾患又は症状を治療するための医薬。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を含む、該ペプチド核酸誘導体の局所投与によってヒトSNAP25遺伝子の発現を伴う疾患又は症状を治療するための医薬。
【請求項7】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を含む、ヒトSNAP25遺伝子の発現を伴う疾患又は症状を治療するための医薬組成物。
【請求項8】
局所投与するための、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
ヒトSNAP25遺伝子の発現を伴う疾患又は症状を治療するための医薬の製造における、請求項1~
4のいずれか一項に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
【請求項10】
前記医薬が局所投与するためのものである、請求項
9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SNAP25タンパク質によって媒介される皮膚科学的徴候又は症状の治療のためのヒトSNAP25プレmRNAを標的とするペプチド核酸誘導体に関し、2017年1月6日に出願された米国仮出願第62/443,262号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に対する優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
エンドサイトーシスは、細胞が、大分子を細胞に取り込むためのプロセスである。それに対し、エキソサイトーシスは、細胞が、細胞内物質又は内容物を細胞から分泌するためのプロセスである。小胞の内容物又は物質を細胞から分泌するため、エキソサイトーシスをうまく採用している細胞種が豊富に存在する。神経細胞は、近隣の神経細胞又は近隣の組織と連絡するように運命づけられたその生理学的役割のため、エキソサイトーシスにより神経伝達物質を分泌するように進化してきた。エキソサイトーシスの別の例として、肥満細胞がエキソサイトーシスによりヒスタミンを放出し、結果として免疫細胞を動員する。
【0003】
分泌小胞は、細胞種に応じて変わる各種小胞物質を含む。例えば、神経細胞におけるシナプス前小胞はシナプス前ニューロン終末に位置し、神経伝達物質のカクテルを含む。小胞膜は細胞膜と融合し、シナプス領域に神経伝達物質を放出して近隣の細胞又は組織を生理学的に制御するか又は影響を及ぼす。膵島のβ-細胞はインスリンで満たされた小胞を有し、小胞は血中グルコースレベルに応答して、膜融合を伴うエキソサイトーシスを受けて血流中にインスリンを放出する[Cell Metabolism、vol 5、237-252 (2007)]。
【0004】
エキソサイトーシスは、小胞膜の、細胞膜との融合を伴う細胞プロセスである。エキソサイトーシスには2つの種類、すなわち「構成性」及び「調節性」が存在する。「構成性」エキソサイトーシスは刺激シグナルなしに自発的に発生する。それに対し、「調節性」エキソサイトーシスは特定の刺激シグナル、例えば運動神経細胞における細胞内カルシウムイオン濃度の増大により引き起こされる[Ann. Rev. Cell Dev. Biol. vol 16、19-49 (2000)]。
【0005】
シナプス接合部におけるエキソサイトーシス: 神経細胞は、神経細胞に特化した「シナプス接合部」と呼ばれる機構を使用して互いに連絡する。近隣の神経細胞間のシナプス接合部において発生するエキソサイトーシスプロセスを、
図1Aで概略的に説明する。まず、ニューロンの軸索により感知されたカルシウムイオン濃度の変化などの刺激シグナルに応答して、神経伝達物質粒子を含む小胞がシナプス前細胞膜と融合する。膜融合すると、神経伝達物質粒子がシナプス前接合部に放出される。次いで神経伝達物質粒子が拡散し、近隣の神経細胞の樹状突起の膜に発現された神経伝達物質受容体に結合する。最後に、神経伝達物質分子と複合体化すると受容体が活性化され、近隣の神経細胞の軸索から伝達されたニューロンシグナルを伝える。
【0006】
神経筋接合部におけるエキソサイトーシス: 運動ニューロンは、神経筋接合部におけるエキソサイトーシスを使用して筋肉の運動を制御する。筋肉では、運動ニューロンの軸索がいくつかの軸索終末に分岐して、筋細胞の筋細胞膜と接合部、すなわち神経筋接合部を形成する[Nat. Rev. Neuroscience、vol 2、791-805 (2001)]。ニューロンの軸索終末と筋細胞膜との間の隙間は、大きさ約30nmのシナプス間隙と呼ばれる。
【0007】
活動電位の形態の神経パルスが運動ニューロンの軸索終末に到達すると、シナプス伝達が神経筋接合部で開始される。運動ニューロンの軸索は、エキソサイトーシスにより神経伝達物質分子(すなわち脊椎動物ではアセチルコリン)をシナプス間隙に放出し、筋細胞膜に発現されたアセチルコリン受容体がアセチルコリンと複合体化すると活性化されて、筋線維の収縮を引き起こす。ニューロンの軸索と筋細胞との間の神経筋接合部において発生するエキソサイトーシスプロセスを、
図1Bで概略的に説明する。
【0008】
SNAREタンパク質及びニューロンエキソサイトーシス: 小胞膜及び神経細胞膜の融合は、「調節性」エキソサイトーシスに必須である。そのような「調節性」エキソサイトーシスは、SNARE(可溶性N-エチルマレイミド感受性因子付着タンパク質受容体)タンパク質によって媒介されることが知られている[Ann. Rev. Cell Dev. Biol. vol 16、19-49 (2000)]。ニューロンエキソサイトーシスには、3種のSNAREタンパク質、すなわち、小胞膜に位置する1回通過型膜貫通タンパク質である小胞結合膜タンパク質(VAMP2、シナプトブレビンとしても知られる)(v-SNARE)、25kDaのシナプトソーム関連タンパク質(SNAP25)、及びニューロン細胞膜に存在する1回膜貫通タンパク質であるシンタキシン1A(t-SNARE)が関与する。シンタキシン1A及びVAMP2はそれぞれ、小胞膜及びニューロン細胞膜内に係留するためのC末端膜貫通ドメインを有する。SNAP25の膜の係留は、タンパク質のいくつかのシステイン残基に共有結合したパルミトイル基により促進される[Am. J. Physiol. Cell Physiol. vol 285、C237-249 (2003)]。
【0009】
ニューロンの軸索の電位により、電位開口型カルシウムチャネルが活性化し、軸索内のカルシウムイオン濃度が増大して、カルシウムイオンがシナプトタグミンと複合体化することでシナプス小胞がシナプス前膜近くに引き寄せられる。次いで、
図2Aで概略的に説明されるように、シナプス小胞膜の、軸索細胞膜との融合が支援される。シンタキシン、SNAP25及びシナプトブレビンの三元複合体が形成されると、2つの膜が近接して方向づけられ、次いで膜融合を受けて、アセチルコリン粒子がシナプス間隙へ放出される[Toxins vol 2、24-53 (2010)]。したがって、SNAREタンパク質の三元複合体形成は、神経伝達物質の放出に関与する膜融合の必須要素である。
【0010】
ボツリヌス毒素A: ボツリヌス毒素(BTX)は、細菌ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)により産生される神経毒である。毒素の活性形態は、ジスルフィド結合で互いに繋ぎ留められた重鎖(100kDa)及び軽鎖(50kDa)からなるポリペプチド単鎖(150kDa)である。BTXは神経細胞に容易に取り込まれることが知られており、SNAREタンパク質を切断し、アセチルコリンの放出を遮断し、結果として神経細胞から神経細胞として非常に必須である特徴を奪う。BTXに曝露された神経細胞は近隣の筋線維の収縮を引き起こさない。
【0011】
神経細胞に流入すると、BTXは2つの部分、すなわち軽鎖及び重鎖に切断される。軽鎖は、神経毒としての役割に関与する亜鉛メタロプロテアーゼである。BTXサブタイプA、C及びEはSNAP25を切断する。それに対し、サブタイプB、D、F及びGはVAMPを分解し、サブタイプCはシンタキシンを加水分解する[Nature、vol 365、160-163 (1993)]。
【0012】
ボツリヌス毒素Aの美容的使用: ボツリヌス毒素Aはもともと、主に顔のシワを治療するための美容的使用のために、Allerganにより開発された。Botox(商標登録)はAllerganにより登録された有名な商標名であり、一般社会では大抵、BTXと同義であると見なされる。
【0013】
その生理学的活性を前提として、BTX Aを、原則として、頭頸部、まぶた、四肢、顎、及び声帯の過活動性の筋収縮又は痙攣を伴ういくつかの障害を治療するのに使用することができる。さらに、BTXを唾液分泌過多及び多汗症を含む分泌過多障害を治療するのに使用することもできる[Indian J. Dermatol. vol 55、8-14 (2010)]。
【0014】
Botox(商標登録)注射は顔のシワの治療用として2002年にUS FDAにより承認され、熟練した皮膚科医により適切に実施されれば安全であると見なされる。しかし、BTXはその毒性のために悪名高い。例えばBTX A型及びB型は、1.3~2.1ng/kgで静脈内注射されるとヒトにとって致死的であると推定される[Indian J. Dermatol. vol 55、8-14 (2010)]。美容的使用におけるBTXの安全性についてはさらなる懸念がある。顔面麻痺、筋脱力、及び嚥下困難が、筋肉内BTX注射を投与された対象において観察される最も一般的な有害事象である。より重篤な副作用が、局所筋肉内注射の過剰投与又は不十分な技術による全身曝露によって引き起こされ、これには頭痛、インフルエンザ様症候群、及びアレルギー反応が含まれる。繰り返されたBTX注射は抗原性応答を誘導することが知られており、これによりBTXの美容的使用が制限される。治療的使用による副作用は美容的使用より重篤となるおそれがあり、これには不整脈、心臓発作、発作、呼吸停止、及び死亡が含まれ得る[J. Am. Acad. Dermatol. vol 53、407-415 (2005)]。
【0015】
美容的使用でBTX注射を受けた対象における副作用を最小限にするため、従来の筋肉内局所注射経路の代わりに、BTXの局在化又は局所送達が非常に好ましいであろう。BTXは150Kサイズの高分子である。侵襲性の製剤に頼ることなく、真皮下の筋肉層深くにBTXを局所的に送達することは未だ過度の難題である。
【0016】
アルジレリン: アルジレリンはSNAP25タンパク質のN末端由来の合成ヘキサペプチドである。アルジレリンは顔のシワ用の美容製品として市販されている。ヘキサペプチドは、SNAP25タンパク質を有するSNARE複合体の形成を弱めると主張されている。ヘキサペプチドはBTXの機能を模倣しており、局所投与すると顔のシワを減少させるのに有用であろう。アルジレリンは、局所使用するとヒト対象において顔のシワを減少させることが報告された[Am. J. Clin. Dermatol. vol 14(2)、147-153 (2013)]。
【0017】
プレmRNA: 遺伝情報はDNA(2-デオキシリボース核酸)に保有される。DNAは転写されて、核内においてプレmRNA(プレメッセンジャーリボ核酸)を産生する。哺乳動物のプレmRNAは通常エクソン及びイントロンからなり、エクソン及びイントロンは以下に概略的に提供されるように互いに相互接続されている。エクソン及びイントロンは、
図2Bに概略的に説明されるように付番される。
【0018】
プレmRNAのスプライシング:
図3Aに概略的に要約されるように、プレmRNAは、「スプライシング」と総称される一連の複雑な反応によるイントロンの削除後に、mRNAにプロセシングされる[Ann. Rev. Biochem. 72(1)、291-336 (2003); Nature Rev. Mol. Cell Biol. 6(5)、386-398 (2005); Nature Rev. Mol. Cell Biol. 15(2)、108-121 (2014)]。スプライシングは、プレmRNAとスプライシングアダプター因子との間の「スプライスソームE複合体」(すなわち、初期スプライスソーム複合体)を形成することによって開始される。「スプライスソームE複合体」では、U1は、エクソンNとイントロンNの接合部に結合し、U2AF
35は、イントロンNとエクソン(N+1)の接合部に結合する。したがって、エクソン/イントロン又はイントロン/エクソンの接合部は、初期スプライスソーム複合体の形成にとって重要である。「スプライスソームE複合体」は、U2とさらに複合体化すると、「スプライスソームA複合体」に進化する。「スプライスソームA複合体」は、近隣のエクソンを隣接させるために、イントロンを削除又はスプライスアウトする一連の複雑な反応を受ける。
【0019】
リボソームタンパク質合成: タンパク質は、DNA(2-デオキシリボース核酸)によってコードされる。細胞刺激に応答して、又は自発的に、DNAは転写されて、核においてプレmRNA(プレメッセンジャーリボ核酸)を産生する。プレmRNAのイントロンは、酵素的にスプライスアウトされ、mRNA(メッセンジャーリボ核酸)を産生し、次いで、これが細胞質に移動する。細胞質では、リボソームと呼ばれる翻訳機構の複合体が、mRNAに結合し、mRNAに沿ってコードされた遺伝情報をスキャンしながらタンパク質合成を行う[Biochemistry vol 41、4503-4510 (2002); Cancer Res. vol 48、2659-2668 (1988)]。
【0020】
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO): 配列特異的様式で(すなわち、相補的に)DNA、mRNA及びプレmRNAを含む核酸に結合するオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)と呼ばれる。
【0021】
例えばASOが細胞質内でmRNAに強く結合する場合、ASOは、mRNAに沿ったリボソームタンパク質合成を阻害することが可能であり得る。その標的タンパク質のリボソームタンパク質合成を阻害するために、ASOは、細胞質内に存在する必要がある。
【0022】
ASOが核内でプレmRNAに強く結合する場合、ASOは、プレmRNAのmRNAへのスプライシングを阻害又は調節することが可能であり得る。プレmRNAのmRNAへのスプライシングを阻害又は調節するために、ASOは、核内に存在する必要がある。そのようなスプライシングのアンチセンス阻害により、ASOにより標的とされるエクソンを欠くmRNA(単数又は複数)が産生される。そのようなmRNA(複数可)は、「スプライスバリアント(複数可)」と呼ばれ、全長mRNAによってコードされるタンパク質よりも小さいタンパク質(複数可)をコードする。
【0023】
原則として、スプライシングは、「スプライスソームE複合体」の形成を阻害することによって中断し得る。ASOが(5'→3')エクソン-イントロンの接合部、すなわち、「5'スプライス部位」に強く結合する場合、ASOは、プレmRNAとU1因子との間の複合体形成、したがって「スプライスソームE複合体」の形成を遮断する。同様に、ASOが(5'→3')イントロン-エクソンの接合部、すなわち、「3'スプライス部位」に強く結合する場合、「スプライスソームE複合体」は形成できない。3'スプライス部位及び5'スプライス部位を
図3Bに概略的に説明する。
【0024】
非天然オリゴヌクレオチド: DNA又はRNAオリゴヌクレオチドは、内因性ヌクレアーゼによる分解を受けやすく、それらの治療的有用性を制限する。今日までに、多くの種類の非天然(すなわち天然に存在しない)オリゴヌクレオチドが、開発され、集中的に研究されている[Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. vol 33、533-540 (2006)]。それらのうちのいくつかは、DNA及びRNAと比較して、長期の代謝安定性を示す。
図4Aに提供されるのは、代表的な非天然オリゴヌクレオチドのうちのいくつかの化学構造である。そのようなオリゴヌクレオチドは、DNA又はRNAがするように、相補的核酸に予想通りに結合する。
【0025】
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド: ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(PTO)は、モノマーあたり、骨格のホスフェートの酸素原子の1つが、硫黄原子で置換されているDNA類似体である。そのような小さな構造変化は、PTOを、内在性ヌクレアーゼによる分解に対して比較的抵抗性にした[Ann. Rev. Biochem. vol 54、367-402 (1985)]。
【0026】
PTO及びDNAの骨格の構造的類似性を反映して、それらは両方とも、ほとんどの哺乳動物細胞種において細胞膜にあまり浸透しない。しかし、DNAのトランスポーター(複数可)を豊富に発現しているいくつかの種類の細胞については、DNA及びPTOは、良好な細胞浸透を示す。全身投与されたPTOは、肝臓及び腎臓に容易に分布することが知られている[Nucleic Acids Res. vol 25、3290-3296 (1997)]。
【0027】
インビトロでのPTOの細胞浸透を促進するために、リポフェクションが広く使用されている。しかし、リポフェクションは、細胞膜を物理的に変化させ、細胞毒性を引き出し、したがって、インビボでの長期の治療的使用に対して理想的ではないであろう。
【0028】
過去30年にわたって、アンチセンスPTO及びPTOの変異体は、がん、免疫学的障害、代謝性疾患などを治療するために臨床的に評価されている[Biochemistry vol 41、4503-4510 (2002); Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. vol 33、533-540 (2006)]。そのようなアンチセンス薬物候補の多くは、部分的にはPTOの乏しい細胞透過性のために、首尾よく開発されていない。乏しい細胞透過性を克服するために、治療活性のためにはPTOを高用量で投与する必要がある。しかし、PTOは、用量制限毒性、例えば、凝固時間の増加、補体活性化、尿細管性腎症、クッパー細胞活性化、及び免疫刺激、例えば、脾腫、リンパ過形成、単核細胞浸潤を示すことが知られている[Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. vol 33、533-540 (2006)]。
【0029】
多くのアンチセンスPTOは、肝臓又は腎臓からの大幅な寄与を有する疾患に対して臨床活性を示すことが見出されている。ミポメルセンは、LDLコレステロール輸送に関与するタンパク質であるアポB-100の合成を阻害するPTO類似体である。ミポメルセンは、おそらく肝臓へのその優先的な分布により、アテローム性動脈硬化症患者の集団において治療活性を示した[Circulation vol 118(7)、743-753 (2008)]。ISIS-113715は、タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP1B)の合成を阻害するPTOアンチセンス類似体であり、II型糖尿病患者において治療活性を示すことが見出された[Curr. Opin. Mol. Ther. vol 6、331-336 (2004)]。
【0030】
ロックド核酸: ロックド核酸(LNA)では、RNAの骨格リボース環は、RNA又はDNAに対する結合親和性を増加させるように構造的に拘束されている。したがって、LNAは、高親和性のDNA又はRNA類似体と見なしてもよい[Biochemistry vol 45、7347-7355 (2006)]。
【0031】
ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド: ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO)では、DNAの骨格ホスフェート及び2-デオキシリボースは、それぞれ、ホスホロアミデート及びモルホリンに置き換えられている[Appl. Microbiol. Biotechnol. vol 71、575-586 (2006)]。DNA骨格は負に帯電しているが、PMO骨格は帯電していない。したがって、PMOとRNAとの間の結合は、骨格間の静電反発力がなく、DNAとRNAとの間の結合よりも強い傾向がある。PMOはDNAと構造的に非常に異なるので、PMOは、DNA又はRNAを認識する肝臓トランスポーター(複数可)によって認識されないであろう。それにもかかわらず、PMOは細胞膜に容易には浸透しない。
【0032】
ペプチド核酸: ペプチド核酸(PNA)は、単位骨格としてN-(2-アミノエチル)グリシンを有するポリペプチドであり、Nielsen博士及び同僚らによって発見された[Science vol 254、1497-1500 (1991)]。PNAの化学構造及び略書した専門語を、
図4Bで説明する。DNA及びRNAと同様に、PNAもまた相補的核酸に選択的に結合する[Nature (London) vol 365、566-568 (1992)]。相補的核酸への結合において、PNAのN末端は、DNA又はRNAの「5'末端」と同等であると見なされ、PNAのC末端は、DNA又はRNAの「3'末端」と同等であると見なされる。
【0033】
PMOと同様に、PNA骨格は帯電していない。したがって、PNAとRNAとの間の結合は、DNAとRNAとの間の結合よりも強い傾向がある。PNAは化学構造においてDNAと著しく異なるので、PNAは、DNAを認識する肝臓トランスポーター(複数可)によって認識されず、DNA又はPTOの組織分布プロファイルとは異なる組織分布プロファイルを示すであろう。しかし、PNAも哺乳動物細胞膜にあまり浸透しない(Adv. Drug Delivery Rev. vol 55、267-280、2003)。
【0034】
PNAの膜透過性を改善するための修飾核酸塩基:
図4Cに例示するように、共有結合したカチオン性脂質又はその同等物を有する修飾核酸塩基(すなわち塩基)を導入することによって、PNAは、哺乳動物細胞膜に対して高度に透過性にされた。シトシン、アデニン、及びグアニンのそのような修飾核酸塩基は、それぞれ、グアニン、チミン、及びシトシンと予想通りに、相補的にハイブリダイズすることが見出された[PCT Appl. No. PCT/KR2009/001256; EP2268607; US8680253]。
【0035】
そのような修飾核酸塩基のPNAへの組み込みは、リポフェクションの状況をシミュレートしている。リポフェクションによって、ホスフェート骨格を有するオリゴヌクレオチド分子は、リポフェクタミンなどのカチオン性脂質分子で包まれ、そのようなリポフェクタミン/オリゴヌクレオチド複合体は、裸のオリゴヌクレオチド分子と比較して、かなり容易に細胞膜を浸透する傾向がある。
【0036】
良好な膜透過性に加えて、それらのPNA誘導体は、相補的核酸に対して超強力な親和性を有することが見出された。例えば、4~5個の修飾核酸塩基を11~13量体のPNA誘導体に導入すると、相補的DNAとの二重鎖形成において、20℃以上のTm増加が容易にもたらされた。そのようなPNA誘導体は、一塩基ミスマッチに対して非常に敏感である。一塩基ミスマッチは、修飾塩基の種類及びPNA配列に応じて、11~22℃のTm低下をもたらした。
【0037】
低分子干渉RNA(siRNA): 低分子干渉RNA(siRNA)は、20~25塩基対の二本鎖RNAを指す[Microbiol. Mol. Biol. Rev. vol 67(4)、657-685 (2003)]。siRNAのアンチセンス鎖は何らかの方法でタンパク質と相互作用し、「RNA誘導サイレンシング複合体」(RISC)を形成する。次いでRISCは、siRNAのアンチセンス鎖と相補的なmRNAの特定の部分に結合する。RISCと複合体化したmRNAは切断を受けて、二本鎖siRNAの別のコピーを生じる。したがってsiRNAはその標的mRNAの切断を触媒的に誘導し、結果としてそのmRNAによるタンパク質発現を阻害する。RISCはその標的mRNA内の完全に相補的な配列に必ずしも結合するわけではなく、そのため、siRNA療法ではオフターゲット効果の懸念が引き起こされる。DNA又はRNA骨格を有するその他のクラスのオリゴヌクレオチドと同様に、siRNAは乏しい細胞透過性を有し、したがって、良好な膜透過性を示すように適切に製剤化されるか又は化学的に修飾されない限り、乏しいインビトロ又はインビボ治療活性を示す傾向がある。
【0038】
SNAP25 ASO及びsiRNA: 神経細胞におけるSNAP25タンパク質の生理学的役割をよりよく理解するための生物学的手段として、SNAP25 ASO及びsiRNAが主に評価された[Nature vol 364、445-448 (1993); Eur. J. Neurosci. vol 20(6)、1593-1603 (2004); EMBO Reports vol 14(7) 645-651 (2013); J. Biol. Chem. vol 281(38)、28174-28184 (2006)]。SNAP25タンパク質の活性を下方制御するオリゴヌクレオチドは、BTXの有益な治療活性を安全に模倣するための局所的使用についてまだ研究されていない。オリゴヌクレオチドの分野では、経皮送達が大いなる技術的な難題であることに留意すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【文献】PCT Appl. No. PCT/KR2009/001256
【文献】EP2268607
【文献】US8680253
【非特許文献】
【0040】
【文献】Cell Metabolism、vol 5、237-252 (2007)
【文献】Ann. Rev. Cell Dev. Biol. vol 16、19-49 (2000)
【文献】Nat. Rev. Neuroscience、vol 2、791-805 (2001)
【文献】Am. J. Physiol. Cell Physiol. vol 285、C237-249 (2003)
【文献】Toxins vol 2、24-53 (2010)
【文献】Nature、vol 365、160-163 (1993)
【文献】Indian J. Dermatol. vol 55、8-14 (2010)
【文献】J. Am. Acad. Dermatol. vol 53、407-415 (2005)
【文献】Am. J. Clin. Dermatol. vol 14(2)、147-153 (2013)
【文献】Ann. Rev. Biochem. 72(1)、291-336 (2003)
【文献】Nature Rev. Mol. Cell Biol. 6(5)、386-398 (2005)
【文献】Nature Rev. Mol. Cell Biol. 15(2)、108-121 (2014)
【文献】Biochemistry vol 41、4503-4510 (2002)
【文献】Cancer Res. vol 48、2659-2668 (1988)
【文献】Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. vol 33、533-540 (2006)
【文献】Ann. Rev. Biochem. vol 54、367-402 (1985)
【文献】Nucleic Acids Res. vol 25、3290-3296 (1997)
【文献】Biochemistry vol 41、4503-4510 (2002)
【文献】Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. vol 33、533-540 (2006)
【文献】Circulation vol 118(7)、743-753 (2008)
【文献】Curr. Opin. Mol. Ther. vol 6、331-336 (2004)
【文献】Biochemistry vol 45、7347-7355 (2006)
【文献】Appl. Microbiol. Biotechnol. vol 71、575-586 (2006)
【文献】Science vol 254、1497-1500 (1991)
【文献】Nature (London) vol 365、566-568 (1992)
【文献】Adv. Drug Delivery Rev. vol 55、267-280、2003
【文献】Microbiol. Mol. Biol. Rev. vol 67(4)、657-685 (2003)
【文献】Nature vol 364、445-448 (1993)
【文献】Eur. J. Neurosci. vol 20(6)、1593-1603 (2004)
【文献】EMBO Reports vol 14(7) 645-651 (2013)
【文献】J. Biol. Chem. vol 281(38)、28174-28184 (2006)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明は、式I:
【化1】
によって表されるペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、10と25との間の整数であり、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける[(5'→3')AUCCCAGGGUAACA]の14量体のプレmRNA配列と少なくとも10量体の相補的重複を有し、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAと完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチによりヒトSNAP25プレmRNAと部分的に相補的であり、
S
1、S
2、…、S
n-1、S
n、T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nは、独立して、重水素(deuterido)[D]、ヒドリド[H]、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し、
X及びYは、独立して、ヒドリド、ホルミル[H-C(=O)-]、アミノカルボニル[NH
2-C(=O)-]、アミノチオカルボニル[NH
2-C(=S)-]、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノチオカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノチオカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルオキシチオカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシチオカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、置換若しくは非置換のアリールスルホニル、置換若しくは非置換のアルキルホスホニル基、又は置換若しくは非置換のアリールホスホニル基を表し、
Zは、ヒドリド、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し、
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され、及び
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nの少なくとも4つは、独立して、核酸塩基部分に共有結合した置換又は非置換アミノ基を有する非天然核酸塩基から選択される、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0042】
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける「エクソン7」のスキッピングを誘導し、「エクソン7」を欠くヒトSNAP25 mRNAスプライスバリアント(複数可)を生じ、したがってヒトSNAP25プレmRNAを転写する遺伝子の機能的活性を阻害するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1A】2つの近隣の神経細胞間のシナプス接合部において発生するエキソサイトーシスプロセスの概略図。
【
図1B】ニューロンの軸索と筋細胞との間の神経筋接合部において発生するエキソサイトーシスプロセスの概略図。
【
図2A】シナプス小胞膜の、軸索細胞膜との融合の概略図。
【
図2B】プレmRNA内でのエクソン及びイントロンの付番の概略図。
【
図3A】イントロンNの削除につながるスプライシングプロセスの概略図。
【
図3B】スプライスソームE複合体に関連する3'スプライス部位及び5'スプライス部位の概略図。
【
図4A】DNA及び非天然核酸の代表的な化学構造。
【
図4B】PNAの化学構造及び略書した専門語の例示。
【
図4C】ペプチド核酸の細胞透過性を改善するために使用される修飾核酸塩基の例。
【
図5-1】式Iのペプチド核酸誘導体について選択可能な天然又は非天然(修飾)核酸塩基の例。
【
図5-2】式Iのペプチド核酸誘導体について選択可能な天然又は非天然(修飾)核酸塩基の例。
【
図5-3】式Iのペプチド核酸誘導体について選択可能な天然又は非天然(修飾)核酸塩基の例。
【
図6A】式Iのペプチド核酸誘導体について選択可能な置換又は非置換のアルキル基の例。
【
図6B】式Iのペプチド核酸誘導体について選択可能な置換又は非置換のアルキルアシル、及び置換又は非置換のアリールアシル基の例。
【
図6C】式Iのペプチド核酸誘導体について選択可能な置換アルキルアミノ、置換アリールアミノ、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のアルキルスルホニル、置換又は非置換のアリールスルホニル、置換又は非置換のアルキルホスホニル、及び置換又は非置換のアリールホスホニル基の例。
【
図6D】式Iのペプチド核酸誘導体について選択可能な置換又は非置換のアルキルオキシカルボニル、置換又は非置換のアリールオキシカルボニル、置換又は非置換のアルキルアミノカルボニル、及び置換又は非置換のアリールアミノカルボニル基の例。
【
図6E】式Iのペプチド核酸誘導体について選択可能な置換又は非置換のアルキルオキシチオカルボニル、置換又は非置換のアルキルアミノチオカルボニル、置換又は非置換のアリールアミノチオカルボニル、及び置換又は非置換のアルキルオキシチオカルボニル基の例。
【
図7】A(アデニン)、G(グアニン)、T(チミン)、C(シトシン)、C(pOq)、A(p)、A(pOq)、G(p)、及びG(pOq)と略書されるPNAモノマーの化学構造。
【
図8】PNAのN末端又はC末端に対する置換基を記載するために使用される略語の化学構造。
【
図9】「(N→C)Fethoc-GA(5)A-C(1O2)TT-A(5)TC-CTA(5)-C(1O2)T-NH
2」と略書される14量体PNA誘導体の化学構造。
【
図10】「(N→C)Fmoc-Val-CTC(1O2)-A(5)TC-CTA(6)-C(1O3)TT-AA(2O2)C-NH
2」と略書される15量体PNA誘導体の化学構造。
【
図11】本発明のPNA誘導体を合成するために使用した例示的なFmoc-PNAモノマーの化学構造。
【
図12】本発明のSPPSに採用されている典型的なモノマー伸長サイクルの概略図。
【
図13A】HPLC精製前の「ASO1」のC
18-逆相HPLCクロマトグラム。
【
図13B】HPLC精製後の「ASO1」のC
18-逆相HPLCクロマトグラム。
【
図14】HPLC精製後の「ASO1」で得られたES-TOFマススペクトルデータ。
【
図15A】0(陰性対照)、10、100又は1,000zMの「ASO3」で処理したPC12細胞におけるネステッドPCR産物についての電気泳動分析データ(上)、全長mRNA及びエクソンスキッピングを有するスプライスバリアントmRNAについてのPCR産物のアンプリコンサイズを説明する図(下)。
【
図15B】エクソン5~7のスキッピングに割り当てられるPCR産物のサンガー配列決定データ。
【
図16A】0(陰性対照)、10、100又は1,000zMの「ASO3」で処理したPC12細胞における全長SNAP25 mRNAレベルの変化(標準誤差によるエラーバー)。
【
図16B】0(陰性対照)、10、100又は1,000zMの「ASO1」で処理したPC12細胞における全長SNAP25 mRNAレベルの変化(標準誤差によるエラーバー)。
【
図17A】0zM(陰性対照)、1zM、10zM、30zM、100zM、300zM、1aM、3aM又は10aMの「ASO3」で48時間処理したPC12細胞における、SNAP25ウエスタンブロットデータ(上図)及びβ-アクチンに対して正規化された相対的SNAP25発現レベル(下図)。
【
図17B】0(陰性対照)、100又は1,000zMの「ASO1」で48時間又は72時間処理したPC12細胞におけるSNAP25ウエスタンブロットデータ。
【
図18】0(陰性対照)、1、10及び100fMの「ASO1」を1日2回で4日間局所投与されたマウスの皮膚サンプルについてのSNAP25 IHC画像。
【
図19A】0zM(陰性対照)、1zM、10zM、100zM、1aM、10aM又は100aMの「ASO3」で48時間処理したSiMa細胞における、SNAP25ウエスタンブロットデータ(上図)及びβ-アクチンに対して正規化された相対的SNAP25発現レベル(下図)。
【
図19B】0zM(陰性対照)、1zM、10zM、100zM、1aM、10aM又は100aMの「ASO3」で処理したSiMa細胞における全長SNAP25 mRNAレベルの変化(標準誤差によるエラーバー)。
【発明を実施するための形態】
【0044】
発明の説明
本発明は、式I:
【化2】
によって表されるペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、10と25との間の整数であり、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける[(5'→3')AUCCCAGGGUAACA]の14量体のプレmRNA配列と少なくとも10量体の相補的重複を有し、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAと完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチによりヒトSNAP25プレmRNAと部分的に相補的であり、
S
1、S
2、…、S
n-1、S
n、T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nは、独立して、重水素[D]、ヒドリド[H]、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し、
X及びYは、独立して、ヒドリド、ホルミル[H-C(=O)-]、アミノカルボニル[NH
2-C(=O)-]、アミノチオカルボニル[NH
2-C(=S)-]、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノチオカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノチオカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルオキシチオカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシチオカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、置換若しくは非置換のアリールスルホニル、置換若しくは非置換のアルキルホスホニル基、又は置換若しくは非置換のアリールホスホニル基を表し、
Zは、ヒドリド、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し、
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され、及び
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nの少なくとも4つは、独立して、核酸塩基部分に共有結合した置換又は非置換アミノ基を有する非天然核酸塩基から選択される、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0045】
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける「エクソン7」のスキッピングを誘導し、「エクソン7」を欠くヒトSNAP25 mRNAスプライスバリアント(複数可)を生じ、したがってヒトSNAP25プレmRNAを転写する遺伝子の機能的活性を阻害するのに有用である。
【0046】
式Iの化合物を記載するために採用された「nは10と25との間の整数である」という条件は、文字通り、nが11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、及び24の整数の群から選択可能な整数であることを表す。
【0047】
式Iの化合物は、ヒトSNAP25遺伝子[NCBI参照配列: NG_029626.1から入手]から読み取られるヒトSNAP25プレmRNAの「エクソン7」の3'スプライス部位に相補的に結合する。ヒトSNAP25プレmRNAの「イントロン6」と「エクソン7」の接合部にまたがる[(5'→3')AUCCCAGGGUAACA]の14量体配列は、「イントロン6」由来の7量体及び「エクソン7」由来の7量体からなる3'スプライス部位である。したがって、14量体のプレmRNA配列は従来、[(5'→3')aucccag|GGUAACA]と表すことができ、イントロン及びエクソンの配列は、それぞれ「小」文字及び「大」文字で表され、イントロン-エクソン接合部は「|」で印を付けられる。プレmRNAについての従来の表記は、ヒトSNAP25プレmRNAの「イントロン6」と「エクソン7」の接合部にまたがる[(5'→3')cucuuuggaucccag|GGUAACAAAUGAUGC]の30量体配列によりさらに説明される。エクソンの付番は、報告されるSNAP25 mRNA転写物に応じて変わり得る。30量体のSNAP25配列の提供は、SNAP25 mRNAのエクソンの付番に関わらず、式Iの化合物の標的スプライス部位を明白に同定しようとするものである。
【0048】
式IのPNA誘導体中の天然(すなわち、天然に存在する)又は非天然(すなわち、天然に存在しない)核酸塩基の化学構造は、
図5に例示されている。本発明の天然又は非天然核酸塩基は、
図5に提供される核酸塩基を含むが、これらに限定されない。そのような天然及び非天然核酸塩基の提供は、許容可能な核酸塩基の多様性を説明しようとするものであり、したがって、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0049】
式IのPNA誘導体を記載するために採用された置換基は、
図6A~Eに例示されている。
図6Aは、置換又は非置換のアルキル基の例を提供する。置換又は非置換のアルキルアシル、及び置換又は非置換のアリールアシル基が、
図6Bに例示されている。
図6Cは、置換アルキルアミノ、置換アリールアミノ、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のアルキルスルホニル、置換又は非置換のアリールスルホニル、置換又は非置換のアルキルホスホニル、及び置換又は非置換のアリールホスホニル基の例を示す。
図6Dは、置換又は非置換のアルキルオキシカルボニル、置換又は非置換のアリールオキシカルボニル、置換又は非置換のアルキルアミノカルボニル、及び置換又は非置換のアリールアミノカルボニル基の例を提供する。
図6Eには、置換又は非置換のアルキルオキシチオカルボニル、置換又は非置換のアルキルアミノチオカルボニル、置換又は非置換のアリールアミノチオカルボニル、及び置換又は非置換のアルキルオキシチオカルボニル基の例が提供される。例としてのそのような置換基の提供は、許容可能な置換基の多様性を説明しようとするものであり、したがって、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。当業者は、オリゴヌクレオチド配列が、N末端又はC末端における置換基を超えて、標的プレmRNA配列へのオリゴヌクレオチドの配列特異的結合の最重要因子であることを容易に理解し得る。
【0050】
式Iの化合物は、先行技術[PCT/KR2009/001256]に例示されているように、相補的DNAに強く結合する。式IのPNA誘導体と、その全長相補的DNA又はRNAとの間の二重鎖は、水性緩衝液中で確実に測定するには高すぎるTm値を有する。式IのPNA化合物は、より短い長さの相補的DNAとの高いTm値をもたらす。
【0051】
式Iの化合物は、ヒトSNAP25遺伝子から転写されるヒトSNAP25プレmRNAの標的3'スプライス部位に強く結合し、前記化合物の標的エクソンを含む「スプライスソーム初期複合体」の形成に干渉する。本発明の化合物は「スプライスソーム初期複合体」の形成を立体的に阻害するので、SNAP25「エクソン7」は、スプライスアウトされて、「エクソン7」を欠くSNAP25 mRNAスプライスバリアント(複数可)を生じる。結果として、本発明の化合物は、SNAP25「エクソン7」のスキッピングを誘導する。
【0052】
前記化合物の、相補的プレmRNA配列に対する強い親和性のために、本発明の化合物は、1つ又は2つのミスマッチを有する部分的に相補的なプレmRNA配列にも強く結合し、SNAP25プレmRNA内の標的エクソンのスキッピングを誘導することができる。
【0053】
式Iの化合物は、良好な細胞透過性を有し、先行技術[PCT/KR2009/001256]において例示されているように、「裸の」オリゴヌクレオチドとして細胞内に容易に送達されることができる。したがって、本発明の化合物は、「裸の」オリゴヌクレオチドとして式Iの化合物で処理した細胞において、SNAP25プレmRNAにおける「エクソン7」のスキッピングを誘導して、SNAP25「エクソン7」を欠くSNAP25 mRNAスプライスバリアント(複数可)を生じる。式Iの化合物は、細胞における標的エクソンのスキッピングを強力に誘導するために、細胞内に送達するためのいかなる手段又は製剤も必要としない。式Iの化合物は、フェムトモル未満の濃度の「裸の」オリゴヌクレオチドとして本発明の化合物で処理した細胞において、SNAP25「エクソン7」のスキッピングを容易に誘導する。
【0054】
良好な細胞又は膜透過性のために、式IのPNA誘導体は、「裸の」オリゴヌクレオチドとして局所投与して、標的皮膚におけるSNAP25「エクソン7」のスキッピングを誘導することができる。前記化合物は、所期の治療的又は生物学的活性のために、標的組織への経皮送達を増加させるための製剤を必要としない。通常、式Iの化合物は、水及び共溶媒に溶解され、ピコモル未満の濃度で局所的又は経皮的に投与され、皮膚の投与部位周辺で所望の治療的又は生物学的活性を誘発する。本発明の化合物は、局所的治療活性を誘発するために、多量に又は侵襲的に製剤化される必要はない。
【0055】
式Iの化合物は、薬学的に許容可能な酸又は塩基と組み合わせて使用してもよく、薬学的に許容可能な酸又は塩基としては、限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、メタンスルホン酸、クエン酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。
【0056】
式IのPNA誘導体又はその薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能なアジュバントと組み合わせて対象に投与することができ、薬学的に許容可能なアジュバントとしては、限定されないが、クエン酸、塩酸、酒石酸、ステアリン酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エタノール、イソプロパノール、重炭酸ナトリウム、蒸留水、防腐剤(複数可)などが挙げられる。
【0057】
本発明の化合物は、1aM(すなわち10-18M)から1nM超の範囲の治療的又は生物学的に有効な濃度で対象に局所投与することができ、この濃度は、投与スケジュール、対象の症状又は状況などに応じて変わるであろう。
【0058】
好ましいのは、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、10と25との間の整数であり、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける[(5'→3')AUCCCAGGGUAACA]の14量体のプレmRNA配列と少なくとも10量体の相補的重複を有し、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAと完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチによりヒトSNAP25プレmRNAと部分的に相補的であり、
S
1、S
2、…、S
n-1、S
n、T
1、T
2、…、T
n-1、及びT
nは、独立して、重水素、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し、
X及びYは、独立して、ヒドリド、ホルミル、アミノカルボニル、アミノチオカルボニル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノチオカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノチオカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルオキシチオカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシチオカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、置換若しくは非置換のアリールスルホニル、置換若しくは非置換のアルキルホスホニル基、又は置換若しくは非置換のアリールホスホニル基を表し、
Zは、ヒドリド、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し、
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され、及び
B
1、B
2、…、B
n-1、及びB
nの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IV:
【化3】
によって表される非天然核酸塩基から選択され、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、独立して、ヒドリド、及び置換又は非置換のアルキル基から選択され、
L
1、L
2及びL
3は、塩基性アミノ基を核酸塩基部分に共有結合させる式V:
【化4】
によって表される共有結合リンカーであり、
Q
1及びQ
mは、置換又は非置換のメチレン(-CH
2-)基であり、並びにQ
mは、塩基性アミノ基に直接結合しており、
Q
2、Q
3、…、及びQ
m-1は、独立して、置換又は非置換のメチレン、酸素(-O-)、硫黄(-S-)、及び置換又は非置換のアミノ基[-N(H)-、又は-N(置換基)-]から選択され、及び
mは、1と15との間の整数である、
式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0059】
式Vを記載するために採用された「mは1と15との間の整数である」という条件は、文字通り、mが2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、及び14の整数の群から選択可能な整数であることを表す。
【0060】
興味深いのは、式IのPNAオリゴマー、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、11と21との間の整数であり、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける[(5'→3')AUCCCAGGGUAACA]の14量体のプレmRNA配列と少なくとも10量体の相補的重複を有し、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAと完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチによりヒトSNAP25プレmRNAと部分的に相補的であり、
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnはヒドリド基であり、
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し、
Zは置換又は非置換のアミノ基を表し、
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され、
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、ヒドリド、及び置換又は非置換のアルキル基から選択され、
Q1及びQmは、置換又は非置換のメチレン基であり、並びにQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており、
Q2、Q3、…、及びQm-1は、独立して、置換又は非置換のメチレン、酸素、及びアミノ基から選択され、及び
mは、1と11との間の整数である、
式IのPNAオリゴマー、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0061】
特に興味深いのは、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、11と19との間の整数であり、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける[(5'→3')AUCCCAGGGUAACA]の14量体のプレmRNA配列と少なくとも10量体の相補的重複を有し、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAと完全に相補的であり、
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnはヒドリド基であり、
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し、
Zは置換又は非置換のアミノ基を表し、
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され、
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、独立して、ヒドリド、及び置換又は非置換のアルキル基から選択され、
Q1及びQmはメチレン基であり、並びにQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており、
Q2、Q3、…、及びQm-1は、独立して、メチレン、酸素、及びアミノ基から選択され、及び
mは、1と9との間の整数である、
式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0062】
非常に興味深いのは、式IのPNAオリゴマー、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、11と19との間の整数であり、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける[(5'→3')AUCCCAGGGUAACA]の14量体のプレmRNA配列と少なくとも10量体の相補的重複を有し、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAと完全に相補的であり、
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnはヒドリド基であり、
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し、
Zは置換又は非置換のアミノ基を表し、
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され、
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され、
R1、R3、及びR5はヒドリド基であり、並びにR2、R4、及びR6は、独立して、ヒドリド、又は置換若しくは非置換のアルキル基を表し、
Q1及びQmはメチレン基であり、並びにQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており、
Q2、Q3、…、及びQm-1は、独立して、メチレン、酸素基から選択され、及び
mは、1と8との間の整数である、
式IのPNAオリゴマー、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0063】
さらに非常に興味深いのは、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、11と19との間の整数であり、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける[(5'→3')AUCCCAGGGUAACA]の14量体のプレmRNA配列と少なくとも10量体の相補的重複を有し、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAと完全に相補的であり、
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnはヒドリド基であり、
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し、
Zは置換又は非置換のアミノ基を表し、
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及び非天然核酸塩基から選択され、
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも5つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6はヒドリド基であり、
Q1及びQmはメチレン基であり、並びにQmは、塩基性アミノ基に直接結合しており、
Q2、Q3、…、及びQm-1は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され、及び
mは、1と8との間の整数である、
式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0064】
最も興味深いのは、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、11と19との間の整数であり、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける[(5'→3')AUCCCAGGGUAACA]の14量体のプレmRNA配列と少なくとも10量体の相補的重複を有し、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAと完全に相補的であり、
S1、S2、…、Sn-1、Sn、T1、T2、…、Tn-1、及びTnはヒドリド基であり、
Xはヒドリド基であり、
Yは、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し、
Zは置換又は非置換のアミノ基を表し、
B1、B2、…、Bn-1、及びBnは、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及び非天然核酸塩基から選択され、
B1、B2、…、Bn-1、及びBnの少なくとも5つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6はヒドリド基であり、
L1は、-(CH2)2-O-(CH2)2-、-CH2-O-(CH2)2-、-CH2-O-(CH2)3-、-CH2-O-(CH2)4-、又は-CH2-O-(CH2)5-を表し、右端は、塩基性アミノ基に直接結合しており、及び
L2及びL3は、独立して、-(CH2)2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-、-(CH2)6-、-(CH2)7-、-(CH2)8-、-(CH2)2-O-(CH2)2-、-(CH2)3-O-(CH2)2-、及び-(CH2)2-O-(CH2)3-から選択され、右端は、塩基性アミノ基に直接結合している、
式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0065】
具体的に興味深いのは、以下
(N → C) Fethoc-A(6)TT-TG(6)T-TA(6)C-CC(1O2)T-GG(6)G-A(6)-NH2;
(N → C) Fethoc-A(6)TC-TG(6)T-TA(6)C-CC(1O2)T-GG(6)G-A(6)-NH2;
(N → C) Piv-A(6)TT-TG(6)T-TA(6)C-CC(1O2)T-GG(6)G-A(6)-NH2;
(N → C) Fethoc-A(6)TT-TG(6)T-TA(2O2)C-CC(1O2)T-GG(5)G-A(5)-NH2;
(N → C) Fmoc-Lys-A(6)TT-TG(6)T-TA(6)C-CC(1O2)T-GG(6)G-A(6)-NH2;
(N → C) Fethoc-TG(5)T-TA(6)C-C(1O2)CT-GG(5)G-A(5)-NH2;
(N → C) Fethoc-TG(5)T-TA(6)C-C(1O2)CT-GG(5)T-A(5)-NH2;
(N → C) Fethoc-TG(5)T-TA(6)C-C(1O3)CT-GG(5)G-A(5)-NH2;
(N → C) Fethoc-Lys-Leu-TG(5)T-TA(5)C-CC(1O2)T-GG(5)G-A(2O2)T-Lys-NH2;
(N → C) H-TG(5)T-TA(5)C-CC(1O2)T-GG(3)G-A(5)T-NH2;
(N → C) ベンゾイル-TG(5)T-TA(6)C-C(1O3)CT-GG(5)G-A(5)-Val-Lys-NH2;
(N → C) ベンゾイル-TG(5)T-TA(5)C-CC(1O3)T-GG(5)G-A(5)T-NH2;
(N → C) n-ヘキサノイル-TG(5)T-TA(8)C-CC(1O2)T-GG(5)G-A(5)T-NH2;
(N → C) n-プロピル-TG(5)T-TA(6)C-C(1O3)CT-GG(5)G-A(5)-NH2;
(N → C) Ac-TG(5)T-TA(6)C-C(1O3)CT-GG(5)G-A(5)-NH2;
(N → C) [N-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-TG(5)T-TA(4)C-CC(1O2)T-GG(5)G-A(5)T-NH2;
(N → C) n-プロピル-TG(2O2)T-TA(5)C-CC(2O2)T-GG(5)G-A(5)T-NH2;
(N → C) FAM-HEX-HEX-TG(2O2)T-TA(5)C-CC(2O2)T-GG(5)G-A(5)T-NH2;
(N → C) n-プロピル-TG(2O2)T-TA(5)C-CC(2O2)T-GG(5)G-A(5)T-Arg-NH2;
(N → C) n-ベンゾイル-Gly-TG(2O2)T-TA(5)C-CC(2O2)T-GG(5)G-A(5)T-NH2;
(N → C) N-Me-N-フェニル-TG(5)T-TA(5)C-CC(1O5)T-GG(5)G-A(5)T-NH2;
(N → C) p-トルエンスルホニル-TG(2O3)T-TA(5)C-CC(1O2)T-GG(5)G-A(5)T-Lys-NH2
(N → C) Fethoc-TG(5)T-TA(6)C-C(1O2)CT-GG(5)G-A(6)T-NH2;
(N → C) ベンゼンスルホニル-TG(5)T-TA(2O3)C-CC(1O5)T-GG(5)G-A(6)T-NH2;
(N → C) フェニル-TG(5)T-TA(6)C-C(1O2)CT-GG(5)G-A(6)T-NH2;
(N → C) Fethoc-TG(5)G-TA(5)C-C(1O2)CT-TG(5)G-A(5)T-NH2;
(N → C) Fethoc-TG(5)T-AA(5)C-CC(1O2)T-GG(5)T-A(5)T-NH2;
(N → C) Fethoc-TG(6)T-TA(3)C-CC(1O5)T-GG(6)G-A(3)T-NH2;
(N → C) Fethoc-G(5)TT-A(5)CC(1O2)-CTG-G(5)GA(5)-TC(1O2)-NH2;
(N → C) ベンジル-G(5)TT-A(5)CC(1O2)-CTG-G(5)GA(5)-TC(1O2)-NH2;
(N → C) Fethoc-GTT-A(3)CC(1O5)-CTG(6)-GGA(3)-TC(1O5)-NH2;
(N → C) Fethoc-TA(5)C-C(1O2)CT(1O5)-GG(5)G-A(5)TC-C(1O2)A-NH2;
(N → C) Fmoc-Leu-TA(4)C-C(1O3)CT-GG(5)G-A(4)TC-C(1O3)A-NH2;
(N → C) Fethoc-C(1O2)AT-TTG(6)-TTA(5)-CCC(1O2)-TG(6)-NH2;
(N → C) Fethoc-CA(6)T-TTG(5)-TTA(5)-CCC(1O2)-TG(5)-NH2;
(N → C) Fethoc-A(6)TT-TG(5)T-TA(5)C-C(1O2)CT-G(5)-NH2;
(N → C) Fethoc-CA(6)T-CA(6)T-TTG(5)-TTA(5)-CCC(1O2)-TG(5)-NH2;
(N → C) Fethoc-A(5)TT-TG(5)T-TA(5)C-CC(1O2)T-GG(5)G-A(5)-NH2;
(N → C) Fethoc-A(6)TT-TG(5)T-TA(6)C-C(1O2)CT-GG(5)G-A(5)-NH2;及び
(N → C) Fethoc-A(6)TT-TG(5)T-TA(6)C-C(1O2)CT-G(5)G-NH2:
に提供される化合物の群から選択される、式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
A、G、T、及びCは、それぞれ、アデニン、グアニン、チミン、及びシトシンの天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり、
C(pOq)、A(p)、A(pOq)、G(p)、及びG(pOq)は、それぞれ、式VI、式VII、式VIII、式IX、及び式X
【0066】
【化5】
によって表される非天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり、
p及びqは、整数であり、及び
N末端置換基及びC末端置換基の略語は、以下の通り具体的に定義され:「Fmoc-」は、「[(9-フルオレニル)メチルオキシ]カルボニル-」基の略語であり、「Fethoc-」は、「[2-(9-フルオレニル)エチル-1-オキシ]カルボニル」基の略語であり、「Ac-」は、「アセチル-」基の略語であり、「ベンゾイル-」は、「ベンゼンカルボニル-」基の略語であり、「Piv-」は、「ピバリル-」基の略語であり、「n-プロピル-」は、「1-(n-プロピル)-」基の略語であり、「H-」は、「ヒドリド-」基の略語であり、「p-トルエンスルホニル」は、「(4-メチルベンゼン)-1-スルホニル-」基の略語であり、「-Lys-」は、アミノ酸残基「リジン」の略語であり、「-Val-」は、アミノ酸残基「バリン」の略語であり、「-Leu-」は、アミノ酸残基「ロイシン」の略語であり、「-Arg-」は、アミノ酸残基「アルギニン」の略語であり、「-Gly-」は、アミノ酸残基「グリシン」の略語であり、「[N-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-」は、「[N-1-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-」基の略語であり、「ベンジル-」は、「1-(フェニル)メチル-」基の略語であり、「フェニル-」は、「フェニル-」基の略語であり、「Me-」は、「メチル-」基の略語であり、「-HEX-」は、「6-アミノ-1-ヘキサノイル-」基の略語であり、「FAM-」は、「5又は6-フルオレセイン-カルボニル-(異性体混合物)」基の略語であり、及び「-NH
2」は、非置換の「-アミノ」基の略語である、
式IのPNA誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0067】
図7は、A、G、T、C、C(pOq)、A(p)、A(pOq)、G(p)、及びG(pOq)と略書されるPNAモノマーの化学構造をまとめて提供する。先行技術[PCT/KR2009/001256]で論じられているように、C(pOq)は、「グアニン」に対するその好ましいハイブリダイゼーションのために、「シトシン」に対応する修飾PNAモノマーと見なされる。A(p)及びA(pOq)は、「チミン」に対するそれらの強い親和性のために、「アデニン」として作用する修飾PNAモノマーと見なされる。同様に、G(p)及びG(pOq)は、「シトシン」とのそれらの産生的塩基対形成のために、「グアニン」と同等である修飾PNAモノマーであると考えられる。
【0068】
図8は、本発明における式IのPNA誘導体のN末端又はC末端に多様性を導入するために使用される置換基についての様々な略語の化学構造を明白に提供する。
【0069】
そのようなPNA誘導体に使用される略語を例示するために、「(N→C)Fethoc-GA(5)A-C(1O2)TT-A(5)TC-CTA(5)-C(1O2)T-NH
2」と略書される14量体PNA誘導体の化学構造は、
図9に提供される。別の例示として、「(N→C)Fmoc-Val-CTC(1O2)-A(5)TC-CTA(6)-C(1O3)TT-AA(2O2)C-NH
2」と略書される15量体PNA誘導体の化学構造は、
図10に提供される。
【0070】
「(N→C)Fethoc-A(6)TT-TG(6)T-TA(6)C-CC(1O2)T-GG(6)G-A(6)-NH2」の16量体PNA配列は、プレmRNAへの相補的結合において、「(5'→3')ATT-TGT-TAC-CCT-GGG-A」のDNA配列と同等である。この16量体PNAは、ヒトSNAP25プレmRNAの「イントロン6」と「エクソン7」の接合部にまたがる[(5'→3')cucuuuggaucccag|GGUAACAAAUGAUGC]の30量体のプレmRNA配列において「太字」及び「下線付き」として印を付けた、ヒトSNAP25プレmRNAとの16量体の相補的重複を有する。
【0071】
「(N→C)Fmoc-Leu-TA(4)C-C(1O3)CT-GG(5)G-A(4)TC-C(1O3)A-NH2」の14量体PNA配列は、プレmRNAへの相補的結合において、「(5'→3')TAC-CCT-GGG-ATC-CA」のDNA配列と同等である。この14量体PNAは、[(5'→3')cucuuuggaucccag|GGUAACAAAUGAUGC]の30量体のプレmRNA配列において「太字」及び「下線付き」として印を付けた、ヒトSNAP25プレmRNAとの14量体の相補的重複を有する。
【0072】
「(N→C)Fethoc-A(6)TC-TG(6)T-TA(6)C-CC(1O2)T-GG(6)G-A(6)-NH2」の16量体PNA配列は、プレmRNAへの相補的結合において、「(5'→3')ATC-TGT-TAC-CCT-GGG-A」のDNA配列と同等である。この16量体PNAは、単一ミスマッチに引用符("")で印を付けた[(5'→3')cucuuuggaucccag|GGUAACA"A"AUGAUGC]の30量体のプレmRNA配列において「太字」及び「下線付き」として印を付けた16量体配列との15量体の相補的重複を有する。この16量体PNAは、「エクソン7」での単一ミスマッチによりSNAP25「エクソン7」の3'スプライス部位と部分的に相補的である。
【実施例】
【0073】
発明の詳細な説明
PNAオリゴマーを調製するための一般手順
PNAオリゴマーは、必要に応じてわずかな改変を加えた先行技術[US6,133,444; WO96/40685]に開示された方法に従って、Fmoc化学に基づく固相ペプチド合成(SPPS)によって合成した。この研究で使用した固体支持体は、PCAS BioMatrix Inc. (Quebec, Canada)から購入したH-Rink Amide-ChemMatrixであった。修飾核酸塩基を有するFmoc-PNAモノマーは、先行技術[PCT/KR 2009/001256]に記載されているように、又はわずかな改変を加えて合成した。修飾核酸塩基を有するそのようなFmoc-PNAモノマー、及び天然核酸塩基を有するFmoc-PNAモノマーを使用して、本発明のPNA誘導体を合成した。修飾核酸塩基を有するFmoc-PNAモノマーが
図11に提供される。しかし、当業者にとって、そのようなPNAモノマーに対する保護基について、明らかに可能な多くのわずかな変形が存在する。したがって、
図11におけるFmoc-PNAモノマーは例と見なされるべきであり、したがって本発明の範囲を限定すると見なされるべきでない。PNAオリゴマーをC
18逆相HPLC(0.1%TFAを含む水/アセトニトリル又は水/メタノール)によって精製し、ESI/TOF/MSを含む質量分析法によって特徴付けた。
【0074】
図12は、本研究のSPPSにおいて採用されている典型的なモノマー伸長サイクルを概略的に例示しており、合成の詳細は以下のように提供される。しかし、当業者にとって、自動ペプチド合成機又は手動ペプチド合成機上でそのようなSPPS反応を効果的に実行することにおいて、明らかに可能な多くのわずかな変形が存在する。各反応工程は、以下のように簡単に提供される。
【0075】
[H-Rink-ChemMatrix樹脂の活性化] 1.5mLの20%ピペリジン/DMF中の0.01mmol(約20mg樹脂)のChemMatrix樹脂を、20分間、ライブラチューブ(libra tube)中でボルテックスし、脱Fmoc溶液をろ過して除いた。樹脂を、連続して、1.5mLの塩化メチレン(MC)、1.5mLのジメチルホルムアミド(DMF)、1.5mLのMC、1.5mLのDMF、及び1.5mLのMCでそれぞれ30秒間洗浄した。固体支持体上に得られた遊離アミンを、Fmoc-PNAモノマー又はFmoc-保護アミノ酸誘導体のいずれかとのカップリングに供した。
【0076】
[脱Fmoc] 樹脂を、1.5mLの20%ピペリジン/DMF中で7分間ボルテックスし、脱Fmoc溶液をろ過して除いた。樹脂を、連続して、1.5mLのMC、1.5mLのDMF、1.5mLのMC、1.5mLのDMF、及び1.5mLのMCでそれぞれ30秒間洗浄した。固体支持体上に得られた遊離アミンを、直ちにFmoc-PNAモノマーとのカップリングに供した。
【0077】
[Fmoc-PNAモノマーとのカップリング] 固体支持体上の遊離アミンを、Fmoc-PNAモノマーと以下のようにカップリングさせた。0.04mmolのFmoc-PNAモノマー、0.05mmolのHBTU[2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロ-ホスフェート]、及び10mmolのDIEA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)を、1mLの無水DMF中で2分間インキュベートし、遊離アミンを有する樹脂に添加した。樹脂溶液を1時間ボルテックスし、反応媒体をろ過して除いた。次いで、樹脂を、連続して、1.5mLのMC、1.5mLのDMF、及び1.5mLのMCでそれぞれ30秒間洗浄した。
【0078】
[キャッピング] カップリング反応後、1.5mLのキャッピング溶液(DMF中、5%無水酢酸及び6%2,6-ルチジン)中で5分間振盪することによって、未反応遊離アミンをキャッピングした。次いで、キャッピング溶液を、ろ過して除き、連続して、1.5mLのMC、1.5mLのDMF、及び1.5mLのMCでそれぞれ30秒間洗浄した。
【0079】
[N末端における「Fethoc-」基の導入] 通常の塩基性カップリング条件下で樹脂上の遊離アミンを「Fethoc-OSu」と反応させることによって、「Fethoc-」基をN末端に導入した。「Fethoc-OSu」[CAS番号179337-69-0、C20H17NO5、MW 351.36]の化学構造は、以下のように提供される。
【0080】
【0081】
[樹脂からの切断] 1.5mLの切断溶液(トリフルオロ酢酸中、2.5%トリ-イソプロピルシラン及び2.5%水)中で3時間振盪することによって、樹脂に結合したPNAオリゴマーを樹脂から切断した。樹脂をろ過して除き、ろ液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をジエチルエーテルで粉砕し、逆相HPLCによる精製のために、得られた沈殿物をろ過によって回収した。
【0082】
[HPLC分析及び精製] 樹脂から切断した後、PNA誘導体の粗生成物を、0.1%TFAを含有する水/アセトニトリル又は水/メタノール(勾配法)を溶出するC
18逆相HPLCによって精製した。
図13A及び
図13Bは、それぞれ、HPLC精製の前及び後の「ASO1」の例示的HPLCクロマトグラムである。「ASO1」のオリゴマー配列は、表1に提供されるとおりである。
【0083】
式IのPNA誘導体の合成例
ヒトSNAP25プレmRNAにおける「エクソン7」の3'スプライス部位を相補的に標的とするため、本発明のPNA誘導体を、上に提供された合成手順に従って又はわずかな改変を加えて調製した。ヒトSNAP25プレmRNAを標的とするそのようなPNA誘導体の提供は、式IのPNA誘導体を例示しようとするものであり、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0084】
表1は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける「エクソン7」の3'スプライス部位を相補的に標的とするPNA誘導体を、質量分析法による構造的特徴付けデータと共に提供する。表1におけるSNAP25 ASOの提供は、式IのPNA誘導体を例示しようとするものであり、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0085】
【0086】
図13Aは、「ASO1」の粗生成物で得られたHPLCクロマトグラムである。粗生成物は、C
18-RP分取HPLCによって精製した。
図13Bは、「ASO1」の精製生成物についてのHPLCクロマトグラムである。「ASO1」の純度は、分取HPLC精製後に著しく改善された。
図14は、「ASO1」の精製生成物で得られたESI-TOFマススペクトルを提供する。「ASO1」の分析データの提供は、式IのPNA誘導体が本発明においてどのように精製及び同定されたかを例示しようとするものであり、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0087】
相補的DNAに対するモデルPNA誘導体の結合親和性
表1におけるPNA誘導体を、N末端又はC末端のいずれかを相補的に標的とする10量体のDNAに対するそれらの結合親和性について評価した。結合親和性を、PNAと、10量体の相補的DNAとの間の二重鎖についてのTm値によって評価した。表1におけるPNA誘導体と、完全に相補的なDNAとの間の二重鎖は、水性緩衝溶液中で確実に測定するには高すぎるTm値を示した。緩衝溶液は、Tm測定中に沸騰する傾向があったからである。
【0088】
Tm値は、以下のようにUV/Vis分光計で測定した。15mLのポリプロピレンファルコンチューブ中の4mLの水性緩衝液(pH7.16、10mMのリン酸ナトリウム、100mMのNaCl)中の4μMのPNAオリゴマー及び4μMの相補的10量体DNAの混合溶液を、90℃で1分間インキュベートし、ゆっくりと周囲温度に冷却した。次いで、溶液を気密キャップを備えた3mLの石英UVキュベットに移し、先行技術[PCT/KR2009/001256]に記載されているように、又はわずかな改変を加えて、UV/可視分光光度計で260nmでTm測定に供した。Tm測定のための10量体の相補的DNAは、Bioneer(www.bioneer.com, Dajeon, Republic of Korea)から購入し、さらに精製することなく使用した。
【0089】
式IのPNA誘導体の観察されたTm値は、10量体のDNAへの相補的結合に関して非常に高く、未補正で表2に提供される。例えば、「ASO3」は、[(N→C)Fethoc-TG(5)T-TA(6)C-C(1O2)CT-GG(5)G-A(6)T-NH2]において「太字」及び「下線付き」として印を付けたPNAにおけるN末端10量体を標的とする10量体の相補的DNAとの二重鎖について、77.3℃のTm値を示した。それに対し、「ASO3」は、[(N→C)Fethoc-TG(5)T-TA(6)C-C(1O2)CT-GG(5)G-A(6)T-NH2]において「太字」及び「下線付き」として印を付けたPNAにおけるC末端10量体を標的とする10量体の相補的DNAとの二重鎖について、88.7℃のTmを示した。
【0090】
【0091】
式IのPNA誘導体の生物学的活性の実施例
表1において特定される式IのPNA誘導体を、ラット起源のPC12細胞及びヒト起源のSiMa細胞におけるSNAP25アンチセンス活性について、並びに局所投与した際にC57BL/6マウスの皮膚においてSNAP25発現を阻害するそれらの能力について評価した。生物学的実施例は、式IのPNA誘導体のアンチセンス活性を説明するための例として提供され、したがって、本発明の範囲を表1に列挙する化合物に限定すると解釈されるべきではない。
【0092】
[実施例1]
「ASO3」によって誘導されるエクソンスキッピング
特定される「ASO3」は、ヒトSNAP25プレmRNAの「イントロン6」と「エクソン7」の接合部にまたがる3'スプライス部位における14量体配列と完全に相補的な14量体ASOである。「ASO3」は、[(5'→3')cucuuuggaucccag|GGUAACAAAUGAUGC]の30量体のプレmRNA配列において「太字」及び「下線付き」として印を付けた14量体のプレmRNA配列と相補的に重複する。「ASO3」は、「イントロン6」との7量体の重複、及び「エクソン7」との別の7量体の重複を有する。
【0093】
それに対し、この14量体ASOは、単一ミスマッチに引用("")符で印を付けた[(5'→3')ugg"c"ucccag|GGUAACAAACGAUGC]の25量体のプレmRNA配列において「太字」及び「下線付き」として印を付けた、ラットゲノムDNA[NCBI参照配列: NC_005012から入手]から読み取られるラットSNAP25プレmRNAと13量体の相補的重複を有する。
【0094】
以下に提供されるように、「ASO3」を、PC12細胞(カタログ番号CRL-1721, ATCC)においてエクソンスキッピングを誘導するその能力について評価した。
【0095】
[細胞培養及びASO処理] PC12細胞は、5%FBS、10%ウマ血清、1%ストレプトマイシン/ペニシリン、1%L-グルタミン、及び1%ピルビン酸ナトリウムを補充したRPMI1640培地中で、5%CO2雰囲気下、37℃で維持した。5mLの培養培地を含む60mm培養皿中で増殖させた細胞を、0(陰性対照)、10、100又は1,000zMの「ASO3」で処理した。
【0096】
[RNA抽出及びワンステップPCRによるcDNA合成] 「ASO3」と共に42時間インキュベートした後、リボソーム翻訳を停止させるために細胞を100μg/mLシクロヘキシミドでさらに6時間処理した。次いで全RNAを、「Universal RNA Extraction Kit」(カタログ番号9767, Takara)を用いて、製造業者の説明書に従って抽出した。以下のサイクル条件: 50℃で30分、及び94℃で2分、続いて、94℃で30秒、50℃で30秒、及び72℃で1分の40サイクルに従って、エクソン特異的プライマーのセット[エクソン1_フォワード: (5'→3')ATGGCCGAGGACGCAGACA、及びエクソン14_リバース: (5'→3')AGCATCTTTGTTGCACGTTG]に対する、Platinum(登録商標)Taqポリメラーゼを用いたSuper Script(登録商標)ワンステップRT-PCRキット(カタログ番号10928-042, Invitrogen)を用いた25μLの逆転写反応に、200ngのRNA鋳型を供した。
【0097】
[ネステッドPCR増幅] 以下のサイクル条件: 95℃で2分、続いて、95℃で30秒、55℃で30秒、及び72℃で1分の34サイクルに従って、エクソン特異的プライマーのセット[エクソン1_フォワード: (5'→3')ATGGCCGAGGACGCAGACA、エクソン14n_リバース: (5'→3')TTGTTGGAGTCAGCGCCT]に対する20μLのネステッドPCR反応(カタログ番号K2612, Bioneer)に、1μLのcDNAを供した。
【0098】
[エクソンスキッピング生成物の同定] PCR産物を、2%アガロースゲルでの電気泳動分離に供した。標的サイズのバンドを回収し、サンガー配列決定により分析した。
【0099】
図15Aは、PCR産物の電気泳動データを提供し、10zM ASO処理サンプルで、エクソン5~7のスキッピングに割り当て可能なかすかなPCRバンドが生じた。リボソーム翻訳を停止させることにより全長mRNAを不安定化するために細胞をシクロヘキシミドで処理しても、エクソンスキッピングバンドはかすかにしか検出されなかった。したがって、エクソン5~7のスキッピングに割り当て可能なSNAP25 mRNAスプライスバリアントは、全長mRNAと比較して、細胞において乏しい代謝安定性を示す可能性が高い。エクソンスキッピングPCR産物について、
図15Bに示すようにエクソン5~7のスキッピングであることを配列決定した。エクソン6のスキッピングに割り当てられるPCR産物がASO濃度に関わらず観察されたため、エクソン6のスキッピングは自発的に発生すると考えられる。
【0100】
全長SNAP25 mRNAの強度は、10zM「ASO3」で処理した細胞で最も低下した。全長mRNA強度は、ASO濃度が10から1,000zMに増大するにつれて、陰性対照(すなわち、ASO処理なし)の強度まで徐々に増大した。ネステッドPCRデータにおける反転した用量反応パターンは、「ASO3」によるエクソンスキッピング中に蓄積された「エクソンイントロン環状RNA(EIciRNA)」による転写の上方制御によるものである可能性がある[Nature Struc. Mol. Biol. vol 22(3)、256-264 (2015)]。
【0101】
[実施例2]
「ASO3」で処理したPC12細胞におけるSNAP25 mRNAについてのqPCR
以下のように、「ASO3」を、PC12細胞におけるラットSNAP25 mRNAレベルの変化を誘導するその能力について、SNAP25ネステッドqPCRにより評価した。
【0102】
[細胞培養及びASO処理] 5mLの培養培地を含む60mm培養皿中で増殖させたPC12細胞を、0(陰性対照)、10、100又は1,000zMの「ASO3」で処理した(ASO濃度1つあたり培養皿2つ)。
【0103】
[RNA抽出及びワンステップRT-PCRによるcDNA合成] 「SNAP-ASO3」と共に42時間インキュベートした後、リボソーム翻訳を停止させるために細胞を100μg/mLシクロヘキシミドでさらに6時間処理した。次いで全RNAを、「Universal RNA Extraction Kit」(カタログ番号9767, Takara)を用いて細胞から抽出し、以下のサイクル条件: 50℃で30分、及び94℃で2分、続いて、94℃で30秒、55℃で30秒、及び72℃で1分の20サイクルに従って、エクソン特異的プライマーのセット[エクソン1_フォワード: (5'→3')ATGGCCGAGGACGCAGACA、及びエクソン14_リバース: (5'→3')AGCATCTTTGTTGCACGTTG]に対する、ワンステップRT-PCRキット(Invitrogen、USA)を用いた25μLの逆転写反応に、200ngのRNA鋳型を供した。
【0104】
[ネステッドqPCR増幅] 以下のサイクル条件: 95℃で3分、続いて、95℃で10秒、及び60℃で30秒の40サイクルに従って、エクソン特異的プライマーのセット[エクソン7q_フォワード: (5'→3')ATGGATGAAAACCTAGAGC、及びエクソン8q_リバース: (5'→3')CTTCCCAGCA-TCTTTGTT]に対する20μLのリアルタイムPCR反応に、100×に希釈した1μLの各cDNA溶液を供した。エクソン7とエクソン8の接合部を標的とする[(5'→3')5,6-FAM-CAGCCTTCT-ZEN-CCATGATCCT-3IABkFQ]のTaqmanプローブでqPCR反応を追跡し、全長SNAP25 mRNAを特異的に定量化した。
【0105】
図16AはqPCRデータを提供し、10zM及び100zMの「ASO3」で処理した細胞では、全長mRNAレベルがそれぞれ約50%及び20%有意に低下した(スチューデントのt検定)。しかし、1,000zMの「ASO3」で処理した細胞での全長mRNAレベルは、ASO処理なしの細胞(すなわち、陰性対照)のレベルよりわずかに大きかった。qPCRデータの反転した用量反応パターンは、「実施例1」に記載される、エクソンスキッピング中に観察された全長mRNAレベルの用量反応パターンとかなり一致しており、ASO用量が10から1,000zMに増大するにつれての転写の上方制御を示唆している。
【0106】
[実施例3]
「ASO1」で処理したPC12細胞におけるSNAP25 mRNAについてのqPCR
表1において特定される「ASO1」は、ヒトSNAP25プレmRNAのイントロン6とエクソン7の接合部にまたがる3'スプライス部位の16量体配列と完全に相補的な16量体ASOである。「ASO1」は、[(5'→3')cucuuuggaucccag|GGUAACAAAUGAUGC]の30量体のヒトプレmRNA配列において「太字」及び「下線付き」として印を付けた16量体の標的配列と相補的に重複する。「ASO1」は、イントロン6との6量体の重複、及びエクソン7との10量体の重複を有する。しかし、このASOは、単一ミスマッチに引用("")符で印を付けた[(5'→3')uggcucccag|GGUAACAAA"C"GAUGC]の25量体のプレmRNA配列において「太字」及び「下線付き」として印を付けたラットSNAP25プレmRNAとの単一ミスマッチを有する。
【0107】
別途注記されない限り、「実施例2」に記載されるように、「ASO1」を、PC12細胞におけるラットSNAP25 mRNAレベルの変化を誘導するその能力について、SNAP25ネステッドqPCRにより評価した。
【0108】
図16BはqPCRデータを提供し、10zM、100zM及び1,000zMの「SNAP-ASO1」で処理した細胞で、全長mRNAレベルがそれぞれ約50%、40%及び70%有意に低下した(スチューデントのt検定)。「ASO3」の場合と同様に、用量が10から100zMに増大するにつれて、「ASO1」でも反転した用量反応パターンが部分的に再生された。しかし、ASO濃度が1,000zMまで増大すると、全長mRNAレベルがさらに低下したことを考慮すると、「ASO1」のエクソンスキッピング有効性は、「ASO3」の有効性より強いようである。
【0109】
[実施例4]
「ASO3」による、PC12細胞におけるSNAP25タンパク質発現の阻害
以下のように「ASO3」を、PC12細胞におけるSNAP25タンパク質の発現を阻害するその能力について評価した。
【0110】
PC12細胞を、5mLの培養培地を含む60mm培養皿中で増殖させ、0zM(陰性対照)、1zM、10zM、30zM、100zM、300zM、1aM、3aM又は10aMの「ASO3」で48時間処理した。ウエスタンブロット分析中の潜在的な技術的アーチファクトを補うため、陰性対照の培養皿は4つあった。
【0111】
[細胞溶解] 次いで細胞を、1%SDS及び1×プロテイナーゼ阻害剤カクテル(cOmplete Mini、Roche)を補充した200μLの1×RIPA緩衝液(カタログ番号9806, Cell Signaling Tech)による氷上での溶解に供した。溶解物を1.5mlのe-チューブに回収し、100μLの5×サンプル緩衝液と混合し、5分間煮沸した。
【0112】
[ウエスタンブロット] 溶解物を4~15% TGX-PAGE勾配ゲル(カタログ番号456-1086, Bio-Rad)上で電気泳動分離に供し、次いで0.45μmのPVDFメンブレンに転写した。メンブレンを抗SNAP25抗体(カタログ番号S9684, Sigma)及び抗β-アクチン抗体(カタログ番号A3845, Sigma)でプローブした。
【0113】
図17Aは、PC12細胞溶解物で得られたSNAP25ウエスタンブロットデータ(上図)を、デンシトメトリーによりβ-アクチンに対し正規化された相対的SNAP25発現レベル(下図)と共に提供する。「ASO3」で処理した細胞では、SNAP25タンパク質レベルが10~60%低下した。陰性対照(すなわち、0zM「ASO3」)の発現レベルは、4サンプルの平均発現レベルである。
【0114】
[実施例5]
「ASO1」による、PC12細胞におけるSNAP25タンパク質発現の阻害
別途注記されない限り、「実施例4」に記載されるように、「ASO1」を、PC12細胞におけるSNAP25タンパク質発現を阻害するその能力について評価した。PC12細胞を0(陰性対照)、100又は1,000zMの「ASO1」で48時間又は72時間処理した(各ASO濃度につき培養皿1つ)。
【0115】
図17Bは、48時間(左)及び72時間(右)のASO処理についてのウエスタンブロットデータを提供する。「ASO1」は、両方の時点で、PC12細胞におけるSNAP25タンパク質の発現を大幅に阻害した。
【0116】
[実施例6]
マウスの「ASO1」を局所投与された皮膚におけるSNAP25タンパク質発現の阻害
「ASO1」は、マウスSNAP25プレmRNAの「エクソン7」の3'スプライス部位と完全に相補的である。下記のように、「ASO1」を、局所投与した際に皮膚においてSNAP25タンパク質の発現を阻害するその能力について評価した。
【0117】
[毛の切断及び群分け] 0、8日目に、雌性C57BL/6マウス(5週齢)を、ゾレチル(zoletil)/ロンプン(rompun)で麻酔し、背部の毛(約3cm×4cm)をバリカンで切断した。マウスを4つの群、すなわち、ASO処理なし群(陰性対照)並びに1fM、10fM及び100fM「ASO1」の3処理群に無作為に割り当てた(群あたり2匹の動物)。
【0118】
[局所投与] 母水性保存溶液を、3%(v/v)グリセリンを補充した30%(v/v)水性エタノール中で0(陰性対照)、1、10及び100fM「ASO1」に希釈することによって、「ASO1」の局所用溶液を調製した。各動物に、約100μLの局所用溶液を、1日2回(朝及び午後遅く)で0~4日目の間、綿ボールを使用して、毛を切断した背部の皮膚に局所投与した。
【0119】
[皮膚サンプリング] 4日目の午後に、ASOで局所的に処理した皮膚部分をサンプリングするため、動物をゾレチル/ロンプンで麻酔した後屠殺した。次いで下記のように、皮膚サンプルをSNAP25タンパク質に対する免疫組織化学(IHC)分析に供した。
【0120】
[SNAP25 IHC] 皮膚サンプルを、凍結切片化し、連続して、1:200希釈の一次抗SNAP25抗体(カタログ番号ab41455, Abcam)、1:200希釈の二次抗IgG(カタログ番号BA-1100, Vector)、及び次いで赤色蛍光タグ化のための1:200希釈のDylight594-ストレプトアビジン(カタログ番号SA-5594, Vector, CA, USA)を用いて免疫染色した。抗SNAP25抗体は、SNAP25タンパク質のC末端をプローブする。全長SANP25レベルの発現の変化を評価するため、IHC画像を、Zeissスライドスキャナーで撮影した。真皮の微細構造を局在化させるため、DAPI染色をさらに実施した。
【0121】
図18は、群ごとのSNAP25 IHC画像の代表的なセットを提供する。陰性対照群では、真皮下の筋肉層における全長SNAP25タンパク質発現が大きかった。筋肉層におけるSNAP25タンパク質発現は、筋肉層に埋まった運動ニューロンの軸索におけるSNAP25タンパク質発現から生じると考えられる。ASO処理群では、筋肉層における全長SNAP25タンパク質発現が著しく低下した。最も注目に値する低下が100fM「ASO1」処理群で観察された。皮膚における全長SNAP25タンパク質発現の阻害の程度は、PC12細胞において観察された程度(「実施例5」を参照)よりもはるかに強かった。
【0122】
BTXが、顔のシワを治療するため(アンチエイジングのため)に注射により広く使用されていることを考慮すると、真皮下の筋肉層におけるSNAP25タンパク質発現の阻害は、薬理学的及び治療的に重要である。BTX注射は、注射の一定の割合が場合によっては筋肉組織に分布する、安全性において懸念されるリスクに関連している。例えば、BTXが肺の平滑筋組織に分布した場合、対象は肺機能不全のリスクが高まる。
【0123】
SNAP25阻害活性は、標的組織におけるASO濃度によって決まる。局所投与すると、ASO濃度は、ASO投与した皮層から遠位の組織では急速に低下する。安全性において懸念される標的組織が、安全性における懸念を引き起こすのに十分な高い濃度のASOに曝露される可能性は低い。したがって、局所的使用のための式IのPNA誘導体は、安全性及び対象コンプライアンスについて、BTX注射よりも際立って有利である。
【0124】
[実施例7]
「ASO3」による、SiMa細胞におけるSNAP25タンパク質発現の阻害
以下のように、「ASO3」を、SiMaヒト神経芽腫細胞におけるSNAP25タンパク質の発現を阻害するその能力について評価した。
【0125】
[細胞培養及びASO処理] SiMa細胞(カタログ番号ACC164, DSMZ)は、10%FBS、1%ストレプトマイシン/ペニシリン、1%L-グルタミン、及び1%ピルビン酸ナトリウムを補充したRPMI1640培地中で、5%CO2雰囲気下、37℃で維持した。SiMa細胞を、5mLの培養培地を含む60mm培養皿中で増殖させ、0zM(陰性対照)、1zM~100aMの「ASO3」で48時間処理した。ウエスタンブロット分析中の潜在的な技術的アーチファクトを補うため、陰性対照の培養皿は3つあった。
【0126】
[溶解] 細胞を、0.1%SDS及び1×プロテイナーゼ阻害剤カクテル(cOmplete Mini, Roche)を補充した200μLの1×RIPA緩衝液(カタログ番号9806, Cell Signaling Tech)による氷上での溶解に供した。次いで溶解物を1.5mlのe-チューブに回収し、100μLの5×サンプル緩衝液と混合し、5分間煮沸した。
【0127】
[ウエスタンブロット] 溶解物を12%SDS-PAGEゲル上で電気泳動分離に供し、0.2μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)メンブレンに転写した。メンブレンを抗SNAP25抗体(カタログ番号ab41455, Sigma)及び抗β-アクチン抗体(カタログ番号A3845, Sigma)でプローブした。
【0128】
図19Aは、細胞溶解物で得られたSNAP25ウエスタンブロットデータ(上図)を、デンシトメトリーによりβ-アクチンに対し正規化された相対的SNAP25発現レベル(下図)と共に提供する。陰性対照(すなわち、0zM「ASO3」)の発現レベルは、3サンプルの平均発現レベルである。「ASO3」で処理した細胞では、SNAP25タンパク質レベルが40~50%低下した。
【0129】
[実施例8]
「ASO3」で処理したSiMa細胞におけるSNAP25 mRNAについてのqPCR
以下のように、「ASO3」を、SiMa細胞におけるヒトSNAP25 mRNAレベルの変化を誘導するその能力について、SNAP25ネステッドqPCRにより評価した。
【0130】
[細胞培養及びASO処理] SiMa細胞を、5mLの培養培地を含む60mm培養皿中で増殖させ、0zM(陰性対照)、1zM、10zM、100zM又は1aM、10aM、又は100aMの「ASO3」で処理した(ASO濃度1つあたり培養皿2つ)。
【0131】
[RNA抽出及びcDNA合成] 全RNAを、「RNeasy Mini Kit」(カタログ番号74106, Qiagen)を用いて、製造業者の説明書に従って細胞から抽出した。ランダムヘキサマーに対し、PrimeScript 第1鎖cDNA合成キット(カタログ番号6110B, Takara)を用いて、200ngのRNA鋳型を25μlの逆転写反応に供した。
【0132】
[qPCR増幅] エクソン特異的プライマーのセット[エクソン6_フォワード: (5'→3')GACGAAC-GGGAGCAGATG、及びエクソン8_リバース(2): (5'→3')ATCTCATTGCCCATATCCAGG]に対するPCR反応を、エクソン6とエクソン7の接合部を標的とするTaqmanプローブ[(5'→3')56-FAM-CGGCTTCAT-ZEN-CCGCAGGGTAACAA-3IABkFQ]でモニターした。サイクル条件: 95℃で3分、続いて、95℃で15秒、及び60℃で30秒の40サイクル。
【0133】
図19BはqPCRデータを提供し、1zM、100zM、1aM及び100aMの「ASO3」で処理した細胞では、全長ヒトSNAP25mRNAレベルが20~40%有意に低下した(スチューデントのt検定)。100aMのASOで処理した細胞は、40%の最も強い阻害を示した。
本発明は、以下の実施形態を包含する。
(実施形態1)
式I:
【化7】
によって表されるペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
nは、10と25との間の整数であり、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける[(5'→3')AUCCCAGGGUAACA]の14量体のプレmRNA配列と少なくとも10量体の相補的重複を有し、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAと完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチによりヒトSNAP25プレmRNAと部分的に相補的であり、
S
1
、S
2
、…、S
n-1
、S
n
、T
1
、T
2
、…、T
n-1
、及びT
n
は、独立して、重水素[D]、ヒドリド[H]、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し、 X及びYは、独立して、ヒドリド、ホルミル[H-C(=O)-]、アミノカルボニル[NH
2
-C(=O)-]、アミノチオカルボニル[NH
2
-C(=S)-]、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノチオカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノチオカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルオキシチオカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシチオカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、置換若しくは非置換のアリールスルホニル、置換若しくは非置換のアルキルホスホニル基、又は置換若しくは非置換のアリールホスホニル基を表し、
Zは、ヒドリド、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し、
B
1
、B
2
、…、B
n-1
、及びB
n
は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され、及び
B
1
、B
2
、…、B
n-1
、及びB
n
の少なくとも4つは、独立して、核酸塩基部分に共有結合した置換又は非置換アミノ基を有する非天然核酸塩基から選択される、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
(実施形態2)
実施形態1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、10と25との間の整数であり、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける[(5'→3')AUCCCAGGGUAACA]の14量体のプレmRNA配列と少なくとも10量体の相補的重複を有し、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAと完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチによりヒトSNAP25プレmRNAと部分的に相補的であり、
S
1
、S
2
、…、S
n-1
、S
n
、T
1
、T
2
、…、T
n-1
、及びT
n
は、独立して、重水素、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し、
X及びYは、独立して、ヒドリド、ホルミル、アミノカルボニル、アミノチオカルボニル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノチオカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノチオカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルオキシチオカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシチオカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、置換若しくは非置換のアリールスルホニル、置換若しくは非置換のアルキルホスホニル基、又は置換若しくは非置換のアリールホスホニル基を表し、
Zは、ヒドリド、ヒドロキシ、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、置換若しくは非置換のアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基を表し、
B
1
、B
2
、…、B
n-1
、及びB
n
は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され、及び
B
1
、B
2
、…、B
n-1
、及びB
n
の少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IV:
【化8】
によって表される非天然核酸塩基から選択され、
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
及びR
6
は、独立して、ヒドリド、及び置換又は非置換のアルキル基から選択され、
L
1
、L
2
及びL
3
は、塩基性アミノ基を核酸塩基部分に共有結合させる式V:
【化9】
によって表される共有結合リンカーであり、
Q
1
及びQ
m
は、置換又は非置換のメチレン(-CH
2
-)基であり、並びにQ
m
は、塩基性アミノ基に直接結合しており、
Q
2
、Q
3
、…、及びQ
m-1
は、独立して、置換又は非置換のメチレン、酸素(-O-)、硫黄(-S-)、及び置換又は非置換のアミノ基[-N(H)-、又は-N(置換基)-]から選択され、及び
mは、1と15との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(実施形態3)
実施形態1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、11と21との間の整数であり、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける[(5'→3')AUCCCAGGGUAACA]の14量体のプレmRNA配列と少なくとも10量体の相補的重複を有し、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAと完全に相補的であるか、又は1つ若しくは2つのミスマッチによりヒトSNAP25プレmRNAと部分的に相補的であり、
S
1
、S
2
、…、S
n-1
、S
n
、T
1
、T
2
、…、T
n-1
、及びT
n
はヒドリド基であり、
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアリールアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し、
Zは置換又は非置換のアミノ基を表し、
B
1
、B
2
、…、B
n-1
、及びB
n
は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され、
B
1
、B
2
、…、B
n-1
、及びB
n
の少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され、
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
及びR
6
は、独立して、ヒドリド、及び置換又は非置換のアルキル基から選択され、
Q
1
及びQ
m
は、置換又は非置換のメチレン基であり、並びにQ
m
は、塩基性アミノ基に直接結合しており、
Q
2
、Q
3
、…、及びQ
m-1
は、独立して、置換又は非置換のメチレン、酸素、及びアミノ基から選択され、及び
mは、1と11との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(実施形態4)
実施形態1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、11と19との間の整数であり、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける[(5'→3')AUCCCAGGGUAACA]の14量体のプレmRNA配列と少なくとも10量体の相補的重複を有し、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAと完全に相補的であり、
S
1
、S
2
、…、S
n-1
、S
n
、T
1
、T
2
、…、T
n-1
、及びT
n
はヒドリド基であり、
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルアミノカルボニル、置換若しくは非置換のアルキルスルホニル、又は置換若しくは非置換のアリールスルホニル基を表し、
Zは置換又は非置換のアミノ基を表し、
B
1
、B
2
、…、B
n-1
、及びB
n
は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され、
B
1
、B
2
、…、B
n-1
、及びB
n
の少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され、
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
及びR
6
は、独立して、ヒドリド、及び置換又は非置換のアルキル基から選択され、
Q
1
及びQ
m
はメチレン基であり、並びにQ
m
は、塩基性アミノ基に直接結合しており、
Q
2
、Q
3
、…、及びQ
m-1
は、独立して、メチレン、酸素、及びアミノ基から選択され、及び
mは、1と9との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(実施形態5)
実施形態1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、11と19との間の整数であり、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける[(5'→3')AUCCCAGGGUAACA]の14量体のプレmRNA配列と少なくとも10量体の相補的重複を有し、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAと完全に相補的であり、
S
1
、S
2
、…、S
n-1
、S
n
、T
1
、T
2
、…、T
n-1
、及びT
n
はヒドリド基であり、
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し、
Zは置換又は非置換のアミノ基を表し、
B
1
、B
2
、…、B
n-1
、及びB
n
は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及びウラシルを含む天然核酸塩基、並びに非天然核酸塩基から選択され、
B
1
、B
2
、…、B
n-1
、及びB
n
の少なくとも4つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され、
R
1
、R
3
、及びR
5
はヒドリド基であり、並びにR
2
、R
4
、及びR
6
は、独立して、ヒドリド、又は置換若しくは非置換のアルキル基を表し、
Q
1
及びQ
m
はメチレン基であり、並びにQ
m
は、塩基性アミノ基に直接結合しており、
Q
2
、Q
3
、…、及びQ
m-1
は、独立して、メチレン、酸素基から選択され、及び
mは、1と8との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(実施形態6)
実施形態1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、11と19との間の整数であり、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける[(5'→3')AUCCCAGGGUAACA]の14量体のプレmRNA配列と少なくとも10量体の相補的重複を有し、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAと完全に相補的であり、
S
1
、S
2
、…、S
n-1
、S
n
、T
1
、T
2
、…、T
n-1
、及びT
n
はヒドリド基であり、
X及びYは、独立して、ヒドリド、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し、
Zは置換又は非置換のアミノ基を表し、
B
1
、B
2
、…、B
n-1
、及びB
n
は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及び非天然核酸塩基から選択され、
B
1
、B
2
、…、B
n-1
、及びB
n
の少なくとも5つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され、
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
及びR
6
はヒドリド基であり、
Q
1
及びQ
m
はメチレン基であり、並びにQ
m
は、塩基性アミノ基に直接結合しており、
Q
2
、Q
3
、…、及びQ
m-1
は、独立して、メチレン、及び酸素基から選択され、及び
mは、1と8との間の整数である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(実施形態7)
実施形態1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩であって、
nは、11と19との間の整数であり、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAにおける[(5'→3')AUCCCAGGGUAACA]の14量体のプレmRNA配列と少なくとも10量体の相補的重複を有し、
式Iの化合物は、ヒトSNAP25プレmRNAと完全に相補的であり、
S
1
、S
2
、…、S
n-1
、S
n
、T
1
、T
2
、…、T
n-1
、及びT
n
はヒドリド基であり、
Xはヒドリド基であり、
Yは、置換若しくは非置換のアルキルアシル、置換若しくは非置換のアリールアシル、又は置換若しくは非置換のアルキルオキシカルボニル基を表し、
Zは置換又は非置換のアミノ基を表し、
B
1
、B
2
、…、B
n-1
、及びB
n
は、独立して、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、及び非天然核酸塩基から選択され、
B
1
、B
2
、…、B
n-1
、及びB
n
の少なくとも5つは、独立して、式II、式III、又は式IVによって表される非天然核酸塩基から選択され、
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
及びR
6
はヒドリド基であり、
L
1
は、-(CH
2
)
2
-O-(CH
2
)
2
-、-CH
2
-O-(CH
2
)
2
-、-CH
2
-O-(CH
2
)
3
-、-CH
2
-O-(CH
2
)
4
-、又は-CH
2
-O-(CH
2
)
5
-を表し、右端は、塩基性アミノ基に直接結合しており、及び
L
2
及びL
3
は、独立して、-(CH
2
)
2
-、-(CH
2
)
3
-、-(CH
2
)
4
-、-(CH
2
)
5
-、-(CH
2
)
6
-、-(CH
2
)
7
-、-(CH
2
)
8
-、-(CH
2
)
2
-O-(CH
2
)
2
-、-(CH
2
)
3
-O-(CH
2
)
2
-、及び-(CH
2
)
2
-O-(CH
2
)
3
-から選択され、右端は、塩基性アミノ基に直接結合している、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的な塩。
(実施形態8)
以下:
(N → C) Fethoc-A(6)TT-TG(6)T-TA(6)C-CC(1O2)T-GG(6)G-A(6)-NH
2
;
(N → C) Fethoc-A(6)TC-TG(6)T-TA(6)C-CC(1O2)T-GG(6)G-A(6)-NH
2
;
(N → C) Piv-A(6)TT-TG(6)T-TA(6)C-CC(1O2)T-GG(6)G-A(6)-NH
2
;
(N → C) Fethoc-A(6)TT-TG(6)T-TA(2O2)C-CC(1O2)T-GG(5)G-A(5)-NH
2
;
(N → C) Fmoc-Lys-A(6)TT-TG(6)T-TA(6)C-CC(1O2)T-GG(6)G-A(6)-NH
2
;
(N → C) Fethoc-TG(5)T-TA(6)C-C(1O2)CT-GG(5)G-A(5)-NH
2
;
(N → C) Fethoc-TG(5)T-TA(6)C-C(1O2)CT-GG(5)T-A(5)-NH
2
;
(N → C) Fethoc-TG(5)T-TA(6)C-C(1O3)CT-GG(5)G-A(5)-NH
2
;
(N → C) Fethoc-Lys-Leu-TG(5)T-TA(5)C-CC(1O2)T-GG(5)G-A(2O2)T-Lys-NH
2
;
(N → C) H-TG(5)T-TA(5)C-CC(1O2)T-GG(3)G-A(5)T-NH
2
;
(N → C) ベンゾイル-TG(5)T-TA(6)C-C(1O3)CT-GG(5)G-A(5)-Val-Lys-NH
2
;
(N → C) ベンゾイル-TG(5)T-TA(5)C-CC(1O3)T-GG(5)G-A(5)T-NH
2
;
(N → C) n-ヘキサノイル-TG(5)T-TA(8)C-CC(1O2)T-GG(5)G-A(5)T-NH
2
;
(N → C) n-プロピル-TG(5)T-TA(6)C-C(1O3)CT-GG(5)G-A(5)-NH
2
;
(N → C) Ac-TG(5)T-TA(6)C-C(1O3)CT-GG(5)G-A(5)-NH
2
;
(N → C) [N-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-TG(5)T-TA(4)C-CC(1O2)T-GG(5)G-A(5)T-NH
2
;
(N → C) n-プロピル-TG(2O2)T-TA(5)C-CC(2O2)T-GG(5)G-A(5)T-NH
2
;
(N → C) FAM-HEX-HEX-TG(2O2)T-TA(5)C-CC(2O2)T-GG(5)G-A(5)T-NH
2
;
(N → C) n-プロピル-TG(2O2)T-TA(5)C-CC(2O2)T-GG(5)G-A(5)T-Arg-NH
2
;
(N → C) n-ベンゾイル-Gly-TG(2O2)T-TA(5)C-CC(2O2)T-GG(5)G-A(5)T-NH
2
;
(N → C) N-Me-N-フェニル-TG(5)T-TA(5)C-CC(1O5)T-GG(5)G-A(5)T-NH
2
;
(N → C) p-トルエンスルホニル-TG(2O3)T-TA(5)C-CC(1O2)T-GG(5)G-A(5)T-Lys-NH
2
;
(N → C) Fethoc-TG(5)T-TA(6)C-C(1O2)CT-GG(5)G-A(6)T-NH
2
;
(N → C) ベンゼンスルホニル-TG(5)T-TA(2O3)C-CC(1O5)T-GG(5)G-A(6)T-NH
2
;
(N → C) フェニル-TG(5)T-TA(6)C-C(1O2)CT-GG(5)G-A(6)T-NH
2
;
(N → C) Fethoc-TG(5)G-TA(5)C-C(1O2)CT-TG(5)G-A(5)T-NH
2
;
(N → C) Fethoc-TG(5)T-AA(5)C-CC(1O2)T-GG(5)T-A(5)T-NH
2
;
(N → C) Fethoc-TG(6)T-TA(3)C-CC(1O5)T-GG(6)G-A(3)T-NH
2
;
(N → C) Fethoc-G(5)TT-A(5)CC(1O2)-CTG-G(5)GA(5)-TC(1O2)-NH
2
;
(N → C) ベンジル-G(5)TT-A(5)CC(1O2)-CTG-G(5)GA(5)-TC(1O2)-NH
2
;
(N → C) Fethoc-GTT-A(3)CC(1O5)-CTG(6)-GGA(3)-TC(1O5)-NH
2
;
(N → C) Fethoc-TA(5)C-C(1O2)CT(1O5)-GG(5)G-A(5)TC-C(1O2)A-NH
2
;
(N → C) Fmoc-Leu-TA(4)C-C(1O3)CT-GG(5)G-A(4)TC-C(1O3)A-NH
2
;
(N → C) Fethoc-C(1O2)AT-TTG(6)-TTA(5)-CCC(1O2)-TG(6)-NH
2
;
(N → C) Fethoc-CA(6)T-TTG(5)-TTA(5)-CCC(1O2)-TG(5)-NH
2
;
(N → C) Fethoc-A(6)TT-TG(5)T-TA(5)C-C(1O2)CT-G(5)-NH
2
;
(N → C) Fethoc-CA(6)T-CA(6)T-TTG(5)-TTA(5)-CCC(1O2)-TG(5)-NH
2
;
(N → C) Fethoc-A(5)TT-TG(5)T-TA(5)C-CC(1O2)T-GG(5)G-A(5)-NH
2
;
(N → C) Fethoc-A(6)TT-TG(5)T-TA(6)C-C(1O2)CT-GG(5)G-A(5)-NH
2
;及び,
(N → C) Fethoc-A(6)TT-TG(5)T-TA(6)C-C(1O2)CT-G(5)G-NH
2
:
に提供されるペプチド核酸誘導体の群から選択される、実施形態1に記載のペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩であって、
A、G、T、及びCは、それぞれ、アデニン、グアニン、チミン、及びシトシンの天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり、
C(pOq)、A(p)、A(pOq)、G(p)、及びG(pOq)は、それぞれ、式VI、式VII、式VIII、式IX、及び式X
【化10】
によって表される非天然核酸塩基を有するPNAモノマーであり、
p及びqは、整数であり、及び
N末端置換基及びC末端置換基の略語は、以下の通り具体的に定義され:「Fmoc-」は、「[(9-フルオレニル)メチルオキシ]カルボニル-」基の略語であり、「Fethoc-」は、「[2-(9-フルオレニル)エチル-1-オキシ]カルボニル」基の略語であり、「Ac-」は、「アセチル-」基の略語であり、「ベンゾイル-」は、「ベンゼンカルボニル-」基の略語であり、「Piv-」は、「ピバリル-」基の略語であり、「n-プロピル-」は、「1-(n-プロピル)-」基の略語であり、「H-」は、「ヒドリド-」基の略語であり、「p-トルエンスルホニル」は、「(4-メチルベンゼン)-1-スルホニル-」基の略語であり、「-Lys-」は、アミノ酸残基「リジン」の略語であり、「-Val-」は、アミノ酸残基「バリン」の略語であり、「-Leu-」は、アミノ酸残基「ロイシン」の略語であり、「-Arg-」は、アミノ酸残基「アルギニン」の略語であり、「-Gly-」は、アミノ酸残基「グリシン」の略語であり、「[N-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-」は、「[N-1-(2-フェニルエチル)アミノ]カルボニル-」基の略語であり、「ベンジル-」は、「1-(フェニル)メチル-」基の略語であり、「フェニル-」は、「フェニル-」基の略語であり、「Me-」は、「メチル-」基の略語であり、「-HEX-」は、「6-アミノ-1-ヘキサノイル-」基の略語であり、「FAM-」は、「5又は6-フルオレセイン-カルボニル-(異性体混合物)」基の略語であり、及び「-NH
2
」は、非置換の「-アミノ」基の略語である、
ペプチド核酸誘導体、又はその薬学的に許容可能な塩。
(実施形態9)
実施形態1に記載のペプチド核酸誘導体の、ヒト対象への投与によって、ヒトSNAP25遺伝子の発現を伴う疾患又は症状を治療する方法。
(実施形態10)
実施形態1に記載のペプチド核酸誘導体の、ヒト対象への局所投与によって、ヒトSNAP25遺伝子の発現を伴う疾患又は症状を治療する方法。
【配列表】