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特許7503904モジュール化された超音波対応人工頭蓋プロテーゼ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】モジュール化された超音波対応人工頭蓋プロテーゼ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/28 20060101AFI20240614BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20240614BHJP
   A61B 5/03 20060101ALI20240614BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20240614BHJP
   A61B 8/08 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
A61F2/28
A61B5/01 250
A61B5/03
A61B5/055 390
A61B8/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019538101
(86)(22)【出願日】2017-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 US2017053847
(87)【国際公開番号】W WO2018064239
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2019-06-07
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】62/400,607
(32)【優先日】2016-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519399523
【氏名又は名称】グリアヴュー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】サンパス プラカシュ
(72)【発明者】
【氏名】ディメコ フランチェスコ
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】栗山 卓也
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0038100(US,A1)
【文献】実開昭64-6914(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F2/28
A61B8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭蓋プロテーゼであって、
前記患者の脳に移植される外側ケーシングと、前記外側ケーシング内の空間で回転可能であるとともに、1つ以上の診断機器または頭蓋内送達システムを係合するための手段を有する外側モジュレーションリングと、を有する外側本体と、
前記外側本体によって少なくとも部分的に囲まれ、前記外側モジュレーションリングに留められる超音波対応内部ディスクと、
前記外側モジュレーションリングに形成された穴を通して前記1つ以上の診断機器または頭蓋内送達システムを係合するための前記手段と、
を備え
前記プロテーゼは、生体適合性および殺菌可能であり、
前記超音波対応内部ディスクは、前記プロテーゼが移植される患者に対する前記1つ以上の診断機器または頭蓋内送達システムの使用を可能にし、同時に前記1つ以上の診断機器または頭蓋内送達システムが前記外側本体に係合され、
前記外側モジュレーションリングは、脳を観察するために使用される超音波対応内部ディスクとともに、前記外側ケーシングに対して回転可能であり、これにより、前記1つ以上の診断機器または頭蓋内送達システムを前記超音波対応内部ディスク上で動かすことができる、頭蓋プロテーゼ。
【請求項2】
前記頭蓋プロテーゼは、患者の既存の骨片に取り付けられるかもしくは組み込まれるか、または前記骨片に完全に置き換わる、請求項1に記載の頭蓋プロテーゼ。
【請求項3】
前記頭蓋プロテーゼは、固締手段を用いて前記プロテーゼを患者の頭蓋骨に留めるために使用される穴をさらに含む、請求項2に記載の頭蓋プロテーゼ。
【請求項4】
前記外側本体は、前記プロテーゼが患者に移植された後に診断機器および頭蓋内送達システムからなる群より選択される1つ以上のモジュレータ構成要素を係合するための1つ以上の手段をさらに含み、前記係合されたモジュレータ構成要素は正常に機能する、請求項1に記載の頭蓋プロテーゼ。
【請求項5】
患者の医療専門家は、超音波診断機器を前記患者に対して使用するために前記プロテーゼの前記ディスクを同時に使用しながら前記1つ以上のモジュレータ構成要素を使用することができる、請求項4に記載の頭蓋プロテーゼ。
【請求項6】
前記モジュレータ構成要素を係合するための前記手段は、前記モジュレータ構成要素を保持するための手段をさらに含む、請求項4に記載の頭蓋プロテーゼ。
【請求項7】
前記1つ以上のモジュレータ構成要素は、頭蓋内圧モニタ、マイクロセンサICPトランスデューサ、脳室ドレナージモニタ、温度プローブ、頭蓋内血流モニタおよび他の実質プローブモニタからなる群より選択される監視デバイスを含む診断デバイスであり、
前記プロテーゼは、経頭蓋ドプラシステム、高密度焦点式超音波デバイス、または、マルチポートカテーテル、脈管アクセスポートシステムおよびOmmayaリザーバからなる群より選択される頭蓋内送達アクセスデバイス、または、血液脳関門の破壊、血栓の液化または高密度焦点式超音波に使用される治療用超音波アプリケーションとともに使用することができ、
前記プロテーゼが移植される患者に対する核磁気共鳴画像診断デバイスの使用を可能にする、請求項5に記載の頭蓋プロテーゼ。
【請求項8】
前記プロテーゼは、頭蓋内圧、脳組織酸素分圧、硬膜下圧、実質圧、脳室内圧、実質内圧、脳の温度、脳の血流、組織灌流、脳室液圧を監視することができる、または、細胞学的および化学的分析のための脳組織サンプルの回収を可能にし、脳室液を排出し、および化学療法剤または放射性同位体を注射し、または細胞療法に係合するように設計される、請求項7に記載の頭蓋プロテーゼ。
【請求項9】
前記固締手段は、縫合糸、ブレース、スクリュ、プレート、骨アンカー、縫合材およびワイヤからなる群より選択される、請求項3に記載の頭蓋プロテーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全体として参照により本明細書に組み込まれる2016年9月27日に出願された米国特許仮出願第62/400,607号の優先権を主張する、2017年9月27日に出願された国際出願第PCT/US2017/053847号の35 U.S.C. 371の継続である。
【0002】
本発明は、頭蓋天蓋部内への「窓」として使用される、モジュラー性能を有する超音波対応頭蓋プロテーゼに関する。
【背景技術】
【0003】
頭蓋欠損を修復するための外科的試みは一般的に生じる。例えば、ヒトの脳に対する様々な種類の外科手技には、頭蓋骨の一部の除去が必要である。これらには、単なる例として、頭蓋骨の損傷部分を再建するために必要な手術だけでなく、脳腫瘍を除去する手術、脳腫脹を軽減する手術、脳動脈瘤を修復する手術、血腫を摘出する手術、外傷に伴う榴散弾の破片および弾丸を除去する手術、膿瘍および他の頭蓋内感染を排出する手術、脳の先天性欠損を処理する手術が含まれる。手術中画像化方法、すなわち診断情報を提供する画像を得るための技術の使用は、脳神経外科手技の実施において現在重要な役割を果たしており、これにより手技を最適に計画することが可能になり、問題の脳の領域の解剖学的および機能的定義ができる。さらに、画像化方法は、手技中の脳神経外科医の位置合わせを助けうる。例えば、超音波プローブを脳表面上に直接置くことによる脳神経外科手術における超音波の手術中の使用は、脳の解剖学的構造の優れた定義を可能にし、正常な脳を病理学的病変から区別するのを助けうる。
【0004】
脳の画像化の使用は、脳の解剖学的構造および潜在的に周術期の治療の有効性を評価するために手術直後の段階において継続する。これらの治療には、コルチコステロイド、マンニトール、抗生物質、抗凝固薬、放射線または化学療法が含まれうる。しかし、そのような療法は顕著な副作用を有することがあり、実時間で現在の画像化技術(例えばコンピュータ断層撮影または磁気共鳴画像化)を用いてそれらの効力を判断することは困難であることが多い。さらに、一部の患者はある手技および/または補助療法に適時に応答しないため、そのような症例を継続的に監視および特定し、異なる治療を施す必要性を余儀なくされる。これらの患者の早期特定により、これらの患者の治療を改善することに加えて、大きな経済的節約および潜在的に優れた患者の転帰がもたらされると考えられる。
【0005】
超音波は一般的な放射線診断の分野において広く使用されるツールであるが、脳の診断では非常に数少ないエリアに限定される。実際に、手術後(フォローアップ)の期間においては、頭蓋冠の非常に高エコー源性の性質によって、目および側頭の音響窓を例外として、超音波が頭蓋腔内に浸透するのが妨げられる。脳神経外科手技の後に除去された骨片の再配置または置き換えは実際に超音波浸透に対する障壁となり、超音波を用いた患者のフォローアップ画像化をすることができない。
【0006】
従来技術の解決法によるプロテーゼを使用して開頭術の部位が再建される場合も同じことが起こる。例えば、特許文献1(University of South Florida)は、高密度ポリエチレン中のポリオレフィンのような展性の生体適合性材料の中に入れられた平面状シートまたは湾曲シートの形態で提供される外科用グレードの金属を含む複合構造体を使用する頭蓋顔面欠損の再建のためのインプラントを開示する。特許文献2(Prada)は、骨片の置き換えを必要とする超音波対応人工頭蓋弁蓋を開示する。
【0007】
利用可能な場合もあるものの、頭蓋冠/頭蓋骨および/またはプロテーゼを通過するために使用される超音波方法は、なお脳実質および脳室を含む頭蓋内内容物の正確かつ明確な評価ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2006/224242号
【文献】国際公開第2015/032858号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、実時間で頭蓋内内容物の完全な手術後画像化を行うことを可能にするために、脳の診断における超音波の効果的な使用を可能にし、特許請求されたデバイスを、他の診断、送達および/または治療デバイスを導入しうるプラットフォームとしてさらに使用することである。加えて、本デバイスは、頭蓋内の病状の進行を監視できるだけでなく、必要に応じて治療を投与および送達するためにデバイスを利用することができるモジュレーションを有する。最後に、本デバイスは、血液脳関門の破壊、血栓の液化、および脳病変のための高密度焦点式超音波治療を含む治療用超音波使用を促進すると考えられる。
【0010】
本発明によれば、このような目的は、骨窓に置き換わるかまたは開頭術もしくは骨切除開頭術を含む脳神経外科手技の間に頭蓋から除去された骨片に組み込まれる頭蓋プロテーゼによって達成され、前記頭蓋プロテーゼは、剛性、生体適合性、殺菌可能ならびに超音波および核磁気共鳴対応の材料で作製され、さらにモジュラーキャパシティのために使用される様々な診断ツール、送達媒体および機器を前記頭蓋プロテーゼ内に収容することができることを特徴とする。
【0011】
本発明の外側リムは、前記デバイスのモジュラー構成要素を収納し、所与のモジュレーションが外科医によって所望される最適なポジションにあることができるように回転するキャパシティを有する。
【0012】
本発明の特徴は、添付の図面に非限定的な例として示される本発明の実施形態の以下の詳細な説明によって明らかになるであろう。
【0013】
本開示は、以下の図を参照してよりよく理解されうる。一致する参照番号は図の全体を通して対応する部分を示し、図は必ずしも縮尺通りには描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】後で患者に再び取り付けられる除去された骨片への特許請求されたプロテーゼデバイスの組み込みを示す図である。
図1B】頭蓋内片の特許請求されたプロテーゼデバイスとの置き換えを示す図である。
図1C】頭蓋固締のための3つの内側アクセスポートと3対のボアとを有する実施形態を示す本プロテーゼの部分側面図である。
図1D】内側超音波対応ディスクと外側モジュレーションリングとの配置を示すプロテーゼの上からの図である。点線1Eは、図1Eに描かれた断面図においてプロテーゼデバイスのどの部分が描かれているかを示す。
図1E】内側放射線透過性ディスクと外側モジュレーションリングとの間の相互作用を示すプロテーゼの断面図である。
図2A】第2実施形態の固定された頭蓋プロテーゼのダイヤグラムであり、内側放射線透過性ディスクがプレス嵌めによりモジュレーションリング内に留められる。点線2Bは、図2Bに描かれた断面図においてプロテーゼデバイスのどの部分が描かれているかを示す。
図2B】固定された頭蓋プロテーゼの断面側面図であり、内側放射線透過性ディスクがプレス嵌めにより外側モジュレーションリングに留められる。プレス嵌め放射線透過性ディスクが内側皮質骨の覆いより下に押し下げられて硬膜を圧迫するのを防ぐために、外側リングからわずかな内側突出リッジがあり、その中にプレス嵌め放射線透過性ディスクが留められる。
図2C】頭蓋プロテーゼの底から見た分解図であり、内側超音波対応ディスクの外側縁部に形成された溝と、前述の溝にプレス嵌めされたときに内側放射線透過性ディスクを外側モジュレーションディスクに留める内部円形フランジを有する外側モジュレーションリングとを示す。
図3】特許請求された頭蓋プロテーゼの分解図であり、外側モジュレーションリングへのプレス嵌めによる設置の前の内側超音波対応ディスクを描く。
図4A】回転頭蓋プロテーゼの完全にモジュール化された実施形態の上面図である。
図4B図4Aの側面図であり、ICPモニタ、専用送達媒体および頭蓋アクセスデバイスがすべて外側モジュレーションリングに組み込まれている回転式頭蓋プロテーゼの実施形態を示す。
図4C図4Bの一部の側面断面図であり、内部に設置されたICPモニタを備えた回転式頭蓋プロテーゼを示し、頭蓋アクセスデバイスのカテーテルが患者の脳に挿入されている。この図の点線円に含まれる断面が、図4Dの断面図である。
図4D図4Cの断面図の拡大図であり、頭蓋アクセスデバイスのカテーテルが外側モジュレーションリングのアクセスポートによって維持される手段を示す。
図5A】ICPモニタ、強化送達媒体および頭蓋アクセスデバイスがすべて外側モジュレーションリングに組み込まれた後の回転式頭蓋プロテーゼの図である。プロテーゼの回転性能、および様々なモジュール化されたデバイスを患者からデバイスを除去せずに移転させるその能力を示す。
図5B】ICPモニタ、強化送達媒体および頭蓋アクセスデバイスがすべて外側モジュレーションリングに組み込まれた後の回転式頭蓋プロテーゼの図である。プロテーゼの回転性能、および様々なモジュール化されたデバイスを患者からデバイスを除去せずに移転させるその能力を示す。
図5C】ICPモニタ、強化送達媒体および頭蓋アクセスデバイスがすべて外側モジュレーションリングに組み込まれた後の回転式頭蓋プロテーゼの図である。プロテーゼの回転性能、および様々なモジュール化されたデバイスを患者からデバイスを除去せずに移転させるその能力を示す。
図5D】ICPモニタ、強化送達媒体および頭蓋アクセスデバイスがすべて外側モジュレーションリングに組み込まれた後の回転式頭蓋プロテーゼの側面図である。
図6A】上側リングと下側リングとを含むモジュレーションリングを有する第4実施形態(内側放射線透過性ディスク)のリング構造の分解図である。
図6B】釘および頭の構成部を有する上側リングの側面図である。
図6C】走行軌道を備えた下側リングの側面図である。
図6D】下側リング(または上側リング)の走行軌道と相互作用する上側リング(または下側リング)の釘および頭の構成部の断面図である。
図6E】患者の頭蓋に留められた後の頭蓋内プロテーゼの上面図である。この図では、チタンプレートが下側リングの下部リングを患者の頭蓋に留める。
【発明を実施するための形態】
【0015】
当然のことながら、固締穴、アクセスポートおよびモジュール化されたデバイスは縮尺通りには描かれておらず、それぞれの様々なサイズが特許請求された頭蓋プロテーゼの範囲に包含される。また、当然のことながら、図4A図4Dおよび図5A図5Dに描かれたモジュール化されたデバイスは単に例示の目的で提供されるにすぎず、本頭蓋プロテーゼはこれらのデバイスの使用のみに限定するものではない。モジュール化されたデバイスは、前述の図に描かれるよりもさらに患者の脳の中に挿入されうる。加えて、モジュール化されたデバイスは、前述の図に描かれるように頭蓋内天蓋部のどこでも挿入されうる。
【0016】
本発明による頭蓋プロテーゼの図1C図1Eは、外側剛性リング4によって囲まれた内側超音波対応ディスク7を含む。外側剛性リング4は、治療外科医が超音波技術を使用して内側ディスク7から脳を画像化する間に脳の様々な状態を監視するための様々な診断ツール10~12およびデバイスを受け入れる、すなわち「モジュール化する」ように構成される。第2実施形態の図2A図2Cおよび図3では、内側ディスク7は、外側リング4の内周の円形フランジ4Aを受け入れるための円周溝7Aを備えて形成される。さらに別の実施形態の図4A図4Dおよび図5A図5Dでは、本デバイスは、外側リング4の回転を可能にする外側ケーシング8をさらに含む。外側リング4の回転は、超音波対応内側ディスク7を通した超音波画像化を用いて補助された、前記リング4にみられるアクセスポート6の、治療が必要な所望の部位への配置または(再手技の場合の)再配置を可能にする。さらに別の実施形態の図6A図6Eでは、外側モジュレーションリング4は、2つのリング4Aおよび4Bを含み、上部リング4Aは、その底側に形成された釘および頭の構成部13Aを有し、下側リング4Bは、その上側に対向する走行軌道構成部13Bを有し、前記釘および頭の構成部13Aが前記走行軌道構成部13Bを係合すると(図6D)、上部リング4Aが下部リング4Bによってデバイスに回転可能に留められる。
【0017】
頭蓋プロテーゼは、患者1の脳3またはその周囲部に手技を行うために、頭蓋内腔にアクセスするための開頭術を行うために除去された骨片に代用するため(図1B)または骨片に組み込まれるため(図1A)に使用されることとなる剛性材料で作製される。人工頭蓋プロテーゼが不活性であり、患者1に有害な影響がないためには、生体適合性であり、施用前に殺菌も可能な材料で作製されることが必要である。
【0018】
頭蓋プロテーゼは、開頭術の後に既存の骨片に組み込まれてもよいし、または骨片の代わりに組み込まれてもよい。プロテーゼは、縫合糸、ブレース、スクリュ、プレート9、骨アンカー、縫合材、ワイヤ、またはプロテーゼを患者に留めることができる米国食品医薬品局(FDA:U.S.Food and Drug Administration)が承認したその他のハードウェアによってプロテーゼを周囲の頭蓋骨2に留めるために適合された穴5を有しうる。好ましい実施形態では、2組のスクリュ穴を有するブレース9は、使用者が標準のチタンミニプレートを用いてデバイスを患者の残りの頭蓋に留めることを可能にする。
【0019】
特許請求された頭蓋プロテーゼは、除去された骨頭蓋弁蓋に代用することまたは骨片に組み込まれることが意図されたものであり、超音波技術を実時間画像化によりベッドサイドで利用できるように、超音波対応の材料、すなわち超音波の通過に対して抵抗を与えない材料で作製される。さらに、頭蓋プロテーゼは、MRI画像化を可能にするためにNMR(核磁気共鳴:nuclear magnetic resonance)対応でもある。
【0020】
本出願の頭蓋プロテーゼは、いくつかのサイズ、すなわち小型、中型および大型に予め製作されてもよいし、または付加製造プロセス(「3D印刷」)を用いてカスタムメイドされてもよいし、モールディング、真空成形、型押、機械加工もしくは熱成形プロセス、または既知のもしくはまだ発見されていない任意の他の製造プロセスを用いて構築されてもよい。本出願の頭蓋プロテーゼの超音波内側ディスクは、短時間モールディングが可能であり、その後硬化するプラスチック樹脂状材料、例えばCranioplastic(登録商標)(L.D.Caulk Co.、ドイツ、ミルフォード)またはアルギン酸塩(COE Laboratories,Inc.、イリノイ州シカゴ)と調節可能なモールドとを用いてその場で作製されてもよい。どのような材料が使用されるにしてもFDA(または世界中のFDAと同等の類似の規制機関)に準拠し、前述のように生体適合性であり、プロテーゼを損傷せずに殺菌できることが重要である。
【0021】
本発明の第1実施形態の図1C図1Eでは、頭蓋プロテーゼは、超音波診断機器の使用を可能にしうる単一の材料片から一体的に形成された平面状本体または湾曲本体を有する内側放射線透過性ディスク7を含む。放射線透過性セクション7は、アーチファクトの生成および/または視覚的障害を引き起こすことを防ぐように構築されなければならない。放射線透過性セクションを囲むのは、1つ以上の診断機器または送達媒体10~12、すなわち「モジュール」を患者の脳内に導入することができる複数のアクセスポート6を有する外側モジュレーションリング4である。前記診断機器10~12は、前記モジュールが頭蓋プロテーゼと係合される間に動作可能であるように、永久的にまたは必要に応じて頭蓋プロテーゼの前記外側モジュレーションリング4内に一体化されうる。本デバイスは、モジュール化された診断機器が機能している間に患者の脳の超音波画像化を可能にするように設計される。外側モジュレーションリングを構築するために使用される好ましい材料は、シリコーン、ポリオキシメチレン(POM:polyoxymethylene)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)、ポリエチレン、または生体適合性のFDAが承認した金属、例えばステンレス鋼、特にチタンである。
【0022】
本発明の第2実施形態の図2A図2Cおよび図3では、内側超音波対応ディスク7の側部に円周溝7Aまたは陥凹部が形成される。外側モジュレーションリング4は内側円周フランジ4Aを備えて形成され、前記内側ディスクがプレス嵌めによって外側モジュレーションリングに留められる(図3)。特に、内側円周フランジ4Aは、内側超音波対応ディスク7の円周溝7Aを係合する。本実施形態では、施術者は、アクセスポート6が所望のポジションになるように回転によって外側リング4を配置することができる。施術者は、固締手段(図示せず)を使用して外側リング4を患者1の頭蓋2に留め、その後、内側超音波対応内側ディスク7を外側リング4に留めうる。
【0023】
特許請求された本発明の第3実施形態の図4A図4Dおよび図5A図5Dでは、内側超音波対応ディスク7は、外側モジュレーションリング4に永久的に留められる。外側モジュレーションリング4は内側超音波対応ディスク7とともに、外側モジュレーションリング4/内側ディスク7を受ける内側空間を有する外側ケーシング8内に嵌合する。外側ケーシング8は、デバイスを患者1の残りの頭蓋2に留めるための手段9を含む。患者1の脳3の上に移植されると、外側ケーシング8がモジュレーションリング4/内側ディスク7を患者1に留める。外側モジュレーションリング7は、外側ケーシング8の空間内で自由に回転することができ、施術者が超音波画像化によって補助されながら所望の位置の上にアクセスポート(図示せず)を配置する能力を提供する。外側ケーシング8は、縫合糸、ブレース、スクリュ、プレート9、骨アンカー、縫合材、ワイヤ、またはFDAが承認したその他のハードウェアを使用してデバイスを患者1の頭蓋2に留める手段9を有する。設置後、外科医は、デバイスの除去を必要とせずに患者の脳の様々なエリアに対して監視および/または治療薬を投与するために、モジュラーリング4を回転させるために固締デバイス9を緩めることができる。これは頭蓋内の病状による再手術の場合に特に重要であると考えられる。図5A図5Dは、頭蓋アクセスデバイス10、ICPモニタ11、および対流強化送達媒体12を用いてモジュール化された(本バージョンの)完全にモジュール化されたプロテーゼを描く。
【0024】
第4実施形態の図6A図6では、特許請求された頭蓋プロテーゼは、上述のように超音波診断機器および頭蓋内送達システムの使用を可能にすることができる単一の材料片から一体的に形成された略平面状本体または湾曲本体を有する内側放射線透過性ディスク7を含む。内側ディスク7を囲むのは、上側リング4Aと下側リング4Bとを含む外側リング構造体4である。下側リング4Bに、円形走行軌道13Bが形成される。上側リング4Aは、下側リング4Bの走行軌道13B内に嵌合する釘および頭13Aの構成部を備えて形成される。釘および頭の構成部13Aは、下側リング4Bの走行軌道13B内に留められると、前記走行軌道13Bに沿って摺動し、上側リング4Aが施術者によって回転されたときに上側リング4Aを固定ポジションに維持する。使用時に上側リング4Aの配置を維持する下側リング4Bは、リングアセンブリ4を患者1の頭蓋2に留めるための手段を有する。当然のことながら、上側リング4Aが走行軌道13Bを備えて形成され、下側リング4Bが釘および頭の構成部13Aを備えて形成されてもよい。内側ディスク7は下側リング4Bに付けられるのが好ましく、上側リング4Aが使用時にそれを中心に回転する。内側ディスク7は、その縁部7Aに形成された溝、またはFDAが承認した材料から作製された円周無摩擦リボン(図示せず)など、上側リング4Aを支障なく回転させる手段を含みうる。走行軌道13Bまたは釘および頭13Aの構成部を囲む下側リング4Bの部分は平坦であるのに対し、上側リング4Aは上向きのアーチを有しうるのが好ましい。上側リング4Aは、施術者がアクセスポート6の所望の位置を決定した後に上側リング4Aを適所に保持するためのロック手段(図示せず)を含みうる。所望の診断デバイス11および/または頭蓋内送達媒体12および/または頭蓋内アクセス手段10を挿入するために脳3への完全なアクセスを提供するために、上側リング4Aにみられるアクセスポート6が下側リング4Bによってブロックされないように、下側リング4Bは上側リング4Aの幅より狭い幅を有しなければならない。
【0025】
外側モジュレーションリング4は、シリコーン、ポリオキシメチレン(POM:polyoxymethylene)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)、ポリエチレンなどのFDAが承認した材料、または、チタン、チタン合金、またはコバルトクロムなどのFDAが承認した生体適合性の金属を含む。好ましい実施形態では、外側モジュレーションリング4はチタンから作製される。チタンは、その表面上にバイオフィルムの形成を許さなくて、主に免疫応答誘導の原因とならないという点で、歴史的に生体適合性であると考えられている(Lemonsら、(1976年),J Biomed Mater Res、10(4):549‐53)。第3実施形態の図5A図5Dでは、外側ケーシング8もチタンから作製される。
【0026】
頭蓋プロテーゼの内側ディスク7は、微小気泡が抽出された、すなわち気孔率が低いかまたはゼロの超音波画像化とともに使用されることができるFDAに準拠した材料から製造されうる。特に、内側ディスク7は、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル、ポリメチルペンテン(TPX:polymethylpentene)、ポリメチルメタクリレート(PMMA:polymethyl methacrylate)など、人体への移植のためにFDAが承認した生物学的適合性ポリマー材料、有機織物と同様のその低インピーダンスのために多種多様な医療用途に使用される材料、またはこれらの任意の組み合わせを含みうる。加えて、内側ディスクは超音波対応セラミックを含みうる。
【0027】
外科手術中の頭蓋プロテーゼの実施および応用は、以下のように行われる。
【0028】
頭蓋内手技の過程では、手技を行うために頭蓋内腔へのアクセスを得るために開頭術または骨切除開頭術が行われる。骨片のサイズおよび位置は、患者の病状に基づいて外科医によって判断される。
【0029】
ある場合には、神経ナビゲーションを用いて開頭術の外科的計画が行われうる。このような計画に基づいて、開頭術の領域および形状が決定され、所望の頭蓋プロテーゼが選択される。
【0030】
外科医はプロテーゼのサイズを判断するためにテンプレートを使用すると考えられる。外科医は、小型、中型または大型の直径サイズ、例えば直径3~4cm、直径5~6cmまたは直径7~cmであり、好ましくは厚さが5~14mmの間である、予め製作されたプロテーゼを選択しうる。この予め製作されたプロテーゼは、除去後の骨片の代わりに使用されるかまたは骨片に組み込まれることができる。あるいは、プロテーゼはカスタムメイドであってもよい。この状況では、手術前画像が、天然骨の「ミラーリング」によって3D CADパッケージに転送される。このようにして、3Dモデルが作成され、それに基づいて頭蓋プロテーゼが生産される。
【0031】
カスタマイズされた頭蓋プロテーゼの場合には、デバイスは、3Dモデルに基づいてポリエチレンまたは他の材料で作製された超音波対応内側コアと、外側チタンリムとで作製され、これが殺菌される。
【0032】
手技の完了後に、適切なサイズの本頭蓋プロテーゼが配置され、縫合糸、ブレース、スクリュ、プレート、骨アンカー、縫合材、ワイヤまたは患者の頭蓋骨の骨内に通過できるFDAが承認したその他のハードウェアを使用することによって固定される。プロテーゼは、外科医の選好および患者の病状に応じて、骨片の代わりに置かれるかまたはより大きな骨片の中に組み込まれることができる。
【0033】
超音波技術は本頭蓋プロテーゼを通過することができるため、手術後に頭蓋内内容物を視覚化することが可能になる。
【0034】
手術を受けた患者の骨頭蓋プロテーゼに代わる超音波対応頭蓋プロテーゼの作製により、担当医療施術者が頻繁なMRIまたはCTスキャンを必要とせずにベッドサイドで頭蓋内腔の超音波検査を行うことが直接可能になる。さらに、本デバイスのモジュール性により、頭蓋内疾患プロセスの進行を監視するとともに局所領域的療法を脳または脳室内に直接施し、それによって血液脳関門を迂回することができる。本デバイスは、血液脳関門の破壊、血栓の液化、高密度焦点式超音波(HIFU:high intensity focused ultrasound)または他のここに予期されない用途のためのアダプタを用いた治療用超音波の使用も促進する。
【0035】
特に、本発明による頭蓋プロテーゼの使用は、最近導入されたコントラスト増強超音波(CEUS:Contrast Enhanced UltraSound)法と組み合わされた超音波技術の使用を可能にし、これによりタンパク質層またはポリマーの層に封入された空気または不活性ガスの微小気泡からなる超音波コントラスト手段を用いて頭蓋内病変を識別することが可能になる。微小気泡は通常、赤血球の直径と同様の平均直径を有し、毛細血管中および肺を通して運ばれうる。微小気泡は、ガス/血液界面によって生成される十分な音響インピーダンスのために本来的に強い超音波信号を生成し、この信号は、微小気泡自体が超音波に衝突されてそれらの直径の関数として特定の周波数で反響して超音波信号を反射するだけでなく生成するため、さらにブーストされる。このような方法論は、技術的および構造的に単純であり、脳の特徴をより効果的に評価し、正常な脳を病理学的状態と区別することを可能にする。
【0036】
本出願のデバイスは、いくつかの病気または状態を監視するために有用である。本デバイスは、悪性神経膠腫または転移性脳腫瘍などの脳腫瘍の実時間の画像化を可能にするであろう。現在、脳腫瘍は、患者の脳の「スナップショット」を撮影する磁気共鳴画像化(MRI:magnetic resonance imaging)、X線コンピュータ断層撮影(X線CT)、またはコンピュータ体軸断層撮影スキャン(CTスキャン)によって視覚化される。脳の実時間の観察は手術中にのみ可能である。本デバイスは、本デバイスの超音波画像化性能を用いて脳腫瘍治療術を監視するために、手術室外の患者のベッドサイドで回復中の脳を視覚化することができる。脳腫瘍に加えて、特許請求されたデバイスは、実質内、硬膜下、脳室内、または硬膜外血腫を含むがこれらに限定されない外傷性傷害のすべての態様を監視することができる。動脈瘤後クモ膜下出血とその結果生じる血管攣縮は、特許請求されたデバイスの超音波性能と組み合わせて経頭蓋ドプラシステム(TCD)(Rimed USA,Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク)を使用したときにより正確に監視されうる。診断ツールのこの組み合わせは、脳血管攣縮の患者の命を救う実時間の監視を提供する。本発明は、ベッドサイドで先天性または後天性水頭症を画像化および監視するためにも使用されることができ、特に、脳室外ドレナージを伴う心的外傷後脳損傷、脳室腹腔シャントの留置後、および動脈瘤性クモ膜下出血後を含むがこれらに限定されないいくつかの状況において治療医が脳脊髄液転換(CSF転換)を評価する能力を可能にする。機能的脳神経外科手術後の頭蓋内内容物、定位生検、放射線手術後状態、血管奇形、先天異常および他の類似の病状の実時間の手術後評価も行われうる。
【0037】
特許請求された頭蓋プロテーゼの進歩性は、超音波機器を用いて患者の脳を同時に監視する能力をなお維持しながら、いくつかの治療および診断機器、すなわち「モジュール」を組み込み係合する能力である。特に、既存の頭蓋内監視デバイス、または本プロテーゼとともに使用するために特に開発された頭蓋内監視デバイスが使用されうる。
【0038】
外傷性脳損傷(TBI:traumatic brain injury)、頭蓋内腫瘤状病変、脳脊髄液(CSF:cerebrospinal fluid)循環障害、およびよりびまん性の頭蓋内病理過程の結果として、頭蓋内圧亢進(ICP:intracranial pressure)が生じうる(Dunn LT、(2002年)、J Neurol Neurosurg Psychiatr、73(Suppl I):i23‐i27)。臨床的に重要な場合に実質、脳室またはクモ膜下腔内の頭蓋内圧を直接測定する頭蓋内圧(ICP)モニタが、特許請求された頭蓋内プロテーゼ内にモジュール化されうる。特許請求された頭蓋プロテーゼは、カプセル化クモ膜下ボルト(リッチモンドボルトまたはスクリュとも呼称される)、すなわち頭蓋骨に穿孔された穴を通して挿入される、頭蓋内圧を監視するために使用される中空スクリュを含みうる。これは脳および脊髄を保護する膜(硬膜)を通して置かれ、硬膜下腔の内側から記録することができる。あるいは、特許請求されたデバイスは、単一のチャネルを通して頭蓋内圧および脳組織酸素分圧(pbtO2:brain tissue oxygen partial pressure)を監視するIntegra(登録商標)Camino(登録商標)頭蓋内圧監視キット(Integra LifeSceinces Corp.、ニュージャージー州プレインズボロ)に対応するように作製される。このキットはカテーテルの管腔に収まり、カテーテルがさらに頭蓋プロテーゼの予め形成された口の1つに挿入されるかまたは製造時にプロテーゼに埋め込まれる。本出願の頭蓋プロテーゼは、マイクロセンサICP(DePuy Synthes Co.、マサチューセッツ州レイナム)を係合するように製造されてもよい。例えば、Codman Microsensor ICP(登録商標)トランスデューサは、小型の100cmの可撓性ナイロンチューブの先端のチタンケース内に搭載されたミニチュア圧力歪ゲージからなり、可撓性により破損または監視障害を伴わずにナイロンカテーテルのロープロファイルのトンネリングおよびキンキングが可能になる。Codman(登録商標)Microsensor(登録商標)トランスデューサは、硬膜下、実質または脳室内のソースで直接頭蓋内圧を監視し、情報を静圧カラムまたは光ファイバを通してではなく電子的に中継する。本出願の頭蓋プロテーゼは、ナイロンチューブを係合し、監視されるべき脳のエリアに直接送達するための手段を含むように製作されうる。本頭蓋プロテーゼは、Spielbergによる3PN(登録商標)(Spielberg GmbH&Co.Kg、ドイツ、ハンブルク)などの実質プローブを含むように設計されてもよい。Probe 3PN(登録商標)は、穿頭穴を通して実質内に置かれたときに実質内圧力を測定する。Probe 3PN(登録商標)は、伝統的に縫合フラップにより患者の皮膚に付けられるが、トロカールも含むことができるため、穿頭穴から押し出すことができる。Probe 3PN(登録商標)は、製造時に特許請求された頭蓋プロテーゼに既に取り付けられてもよいし、またはプロテーゼがProbe 3PN(登録商標)を係合することができる予め存在するボアを備えて処方されてもよい。いずれの実施形態においても、移植後に、特許請求された発明と同時にProbe 3PN(登録商標)を使用する性能を有することにより、Probe 3PN(登録商標)などの実質プローブを設置するために患者に対して後で手術を行う必要性が低減される。
【0039】
上述のICPモニタのいずれかが脳内の望ましくない頭蓋内圧を検出した場合には、脳室EVDカテーテルも外側モジュレーションリングにみられるあいているアクセスポートのうちの1つに挿入されうる。外部脳室ドレナージカテーテルは、頭蓋内圧を軽減するために患者の脳室から脳脊髄液を排出するための経路として働く。EVDカテーテルは外部ドレナージおよび監視システムに接続される。EVDカテーテルは、放射線不透過性(バリウム含浸)シリコーンチュービング、半透明シリコーンチュービング、または半透明シリコーンチュービングとバリウムストリップとの組み合わせで製作されうる。特に、脳の脳室からの脳脊髄液(CSF)の外部アクセスおよびドレナージを可能にするVentriClear(商標)II外部脳室ドレナージ(EVD:External Ventricular Drainage)カテーテルセット(Medtronic、ミネソタ州ミネアポリス)が、本実施形態のために好ましいデバイスである。本発明の固有の特徴は、脳室EVDカテーテルが利用される間の脳内におけるICPモニタの保持を可能にする。超音波対応内側ディスクは、施術者がICPモニタを用いて頭蓋内圧を監視する能力と組み合わせて、脳脊髄液のドレナージ中に脳を画像化する能力をさらに提供する。
【0040】
本出願の頭蓋プロテーゼは、温度プローブを用いてモジュール化されてもよい。ヒトの脳の恒温性は、神経代謝熱産生、脳血流および入って来る動脈血の温度の間の相互作用を伴う。療養中の脳の温度の変動は、炎症および感染に応答した視床下部の「セットポイント」の調節された再調整によるものであるか、または視床下部および/またはその経路への損傷の結果として起こりうる。温度上昇の機序、発熱対神経性高熱症(調節された温度上昇対調節されない温度上昇)の診断を臨床的に行うことは困難である。原因が何であれ、脳温または体温の1~2℃の上昇は、特にそれが傷害の後早期に生じたときには、有害であると広く考えられている(Childs C、(2008年)、Br J Neurosurg、22(4):486‐96)。頭蓋プロテーゼは、それ自体として温度プローブを含むように製作されうる。例示のみを目的として、Integra(登録商標)Licox(登録商標)Single Lumen Bolt Brain Tissue Oxygen and Temperature Bolt Kit(登録商標)(Integra LifeSceinces Corp.、ニュージャージー州プレインズボロ)が特許請求されたプロテーゼに組み込まれうる。Integra Licox Brain Oxygen Monitoring System(登録商標)は、頭蓋内酸素および温度を測定し、これらのパラメータの傾向の補助的モニタとして意図され、センサ配置に局所的な脳組織の灌流状態を示す。このシステムは、監視されるべき脳の部分にプローブを導入するために頭蓋のボアを利用する。本発明は、Licox(登録商標)Kitを受け入れることができるボアを備えて予め製作されることができ、または製造時にキットがプロテーゼ内に製作されることができる。いずれの実施形態においても、プロテーゼを患者に移植する時点で温度プローブを導入できることにより、前述のように、その後の侵襲的手技の必要性がなくなり、したがって患者の脳に対する付随的感染または意図しない物理的損傷などのリスクが最小限になる。
【0041】
特許請求された頭蓋プロテーゼを用いてモジュール化されうる別のデバイスは、頭蓋内血流モニタである。脳への血流の欠如は脳虚血をもたらし、それがさらに脳代謝の変化、代謝率の低下、およびエネルギー危機の創成につながり(Vespa Pら、(2005年)、J Cerebral Blood Flow Metab、25(6):263‐74)、脳損傷をもたらす。頭蓋プロテーゼは、例えば、熱拡散(TD:thermal diffusion)技術を用いて実時間でml/100g-minの絶対生理学的単位で組織灌流を連続的に定量化するQFlow 500(商標)灌流プローブ(Hemedex,Inc.、マサチューセッツ州ケンブリッジ)を含みうる。神経学的応用例において、このプローブは脳血流(CBF:cerebral blood flow)の絶対レベルの計算を可能にする。このプローブは、標的組織に挿入され、そこで灌流を測定する、10日間その場に留まることがFDAに許可された、可撓性の放射線不透過性カテーテルである。特許請求された頭蓋プロテーゼは、潅流プローブのカテーテルを係合できるボアを備えて予め製作されてもよく、または製造時にカテーテルがプロテーゼに埋め込まれてもよい。プロテーゼにモジュール化されると、プローブは導管コードに接続し、導管コードがさらにモニタに接続する。脳プロテーゼにモジュール化されうる別の考えられる頭蓋内血流モニタは、センサを用いて血流の相対的変化を測定し、組織内の領域的微小循環血流を監視するc-FLOW(商標)モニタ(Ornim,Inc.、マサチューセッツ州フォックスボロ)である。組織灌流の変化を示唆する血流の実時間の変化を反映する情報が、ベッドサイドモニタのスクリーン上に数値および図表で表示される。特許請求された頭蓋プロテーゼは、デバイスに埋め込まれたc-FLOW(商標)センサを備えて製作されてもよい。
【0042】
新規な頭蓋プロテーゼは、頭蓋アクセスポートに脳へのアクセスを提供するリザーバデバイスを含みうる。Integra(登録商標)リザーバは閉鎖型脳室アクセスシステムとして設計され、CSFの回収ならびに放射性同位体および化学療法剤の送達を促進する。Integra(登録商標)CSFリザーバは、皮下穿刺を介して側脳室へのアクセスを提供する。Integra(登録商標)CSFリザーバは、細胞学的および化学的研究のため、脳室液圧を監視するため、および脳室ドレナージを容易にするためにCSFサンプルを得る上で有用である。このリザーバは、化学療法剤および/または放射性同位体の注射のために側脳室および嚢胞性腫瘍への容易なアクセスを提供する。コンバーチブルIntegra CSFリザーバが水頭症患者において利用されうる。いくつかのモデルが提供されており、多様な治療プロトコルに適応する柔軟性を提供する。特許請求されたプロテーゼは、カテーテルを受け入れて患者の脳に導くことができるボアまたは埋め込まれたチューブを備えて予め製作されてもよい。Integra(登録商標)リザーバは、標準、側部入口、コンバーチブル(穿頭穴およびフラットボトムの両方)およびミニ、ならびに様々なサイズを含め、様々な構成で利用可能である。
【0043】
特許請求された頭蓋プロテーゼは、Cleveland Multiport Catheter(商標)(Infuseon Therapeutics、オハイオ州コロンバス)にも対応する。Cleveland Multiport Catheter(商標)は、神経膠腫腫瘍および腫瘍が浸潤した脳組織により多量の薬物分布を伴って治療薬を脳組織内に直接投与するために対流強化薬物送達を用いる。治療薬の直接脳内への実質内対流強化送達(CED:convection-enhanced delivery)は、血液脳関門を迂回して有意な濃度の薬物が患者に投与されうる媒体として長年支持されている。治療薬のより長期の反復間欠投与が有益であろういくつかの適応症がある(パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、多形性膠芽腫(GBM:Glioblastoma Multiforme)およびびまん性内在性橋神経膠腫(DIPG:Diffuse intrinsic Pontine Glioma)などの脳腫瘍など)。
【0044】
頭蓋プロテーゼは、同様の強化送達媒体、特に内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,764,124号(Tallaridaら)および米国特許第9,480,831号(Tallaridaら)に記載されるような逆皮下針アクセスポート(Versago Vascular Access,Inc.、マサチューセッツ州ウェストブリッジウォーター)を備えてもよい。Versago Vascular Access(商標)ポートシステムは、典型的なポート隔膜を、移植されたポート本体から外部的にトリガされる除去可能な拡張針先端がついた大きなボアの導管に置き換える。針はデバイスの上に横たわる頭皮を中から外に貫通し、その後臨床医が薬物、細胞療法、ナノスフェアまたは他の療法を頭蓋腔内に直接送達しうる。Versagoデバイスを使用して流体抽出も達成されうる。このデバイスは本プロテーゼに完全に組み込まれうる。終了すると、臨床医は針先端を交換し、針をそのハウジング内に押し戻し、針は再び展開されるまでそこにとどまる。
【0045】
内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,385,582号(Ommaya)および米国特許第5,222,982号(Ommaya)に記載されるようなOmmayaリザーバ(Medtronic、ミネソタ州ミネアポリス)も、本頭蓋プロテーゼにモジュール化されうる。Ommayaリザーバは脳からの流体の導入または抽出を可能にする。Ommayaリザーバは、小型のプラスチックのドーム状容器からなり、小型のチューブまたはカテーテルがドームから外に延びる。頭蓋プロテーゼに組み込まれる際には、ドームリザーバがプロテーゼの上に配置され、カテーテルがアクセスポートのうちの1つの中へ、そして患者の脳の脳室の中へと導かれる。Ommayaリザーバは、設置されると、脳脊髄液(CSF)を抽出するため、または例えば腫瘍の部位に化学療法を直接導入するため、あるいは髄腔内化学療法のために脳室内に導入するために使用されうる。CSFをサンプリングするためまたは脳の様々なエリアに薬物を注射するためにリザーバおよびそれに関連するカテーテルを最適に配置するために、外側モジュレーションリングが回転されうる。特許請求されたプロテーゼの超音波画像化性能により、治療外科医は、リザーバが適切に置かれたか否かおよび/または治療が有効であるか否かを判断するために患者の多数のコンピュータ体軸断層撮影スキャン(CT)または磁気共鳴画像化(MRI)を撮影する必要性を回避して、治療のための脳の領域をより良く位置特定することができる。
【0046】
特許請求された頭蓋プロテーゼにモジュール化されることができる別の考えられるポートデバイスは、特にヒトの癌治療において静脈内薬物療法に使用される、内部リザーバを有する改造型皮下静脈アクセスポートにしっかりと取り付けられるねじ付き2重針システムを教示する米国特許第5,637,088号(Wennerら)に記載される。中空の外側針が、除去可能な雄ねじ付き中実内側突端と対をなし、患者の組織を通して、ポートの保護用自己密封シリコン隔膜を通して挿入され、その後中実内側針が除去される一方で、外側針が適所に残される。中空内側針が、ポートの流体リザーバのベースの雌ねじ付きポートレセプタクルと噛み合うのに十分な深さまで外側針を通してねじ込まれ、設置のために回転される。任意の追加のねじ切り加工によって、外側針を2つの内側針に留めることが可能になりうる。切断システムが、流路の意図的でない引っ張りによる移動を防ぐ。本システムはこのように、静脈アクセスポートからの針の移動、その結果生じる漏れ、およびそれによって引き起こされる問題に対する追加の保護を提供する。このデバイスは、本プロテーゼに組み込まれるかまたはアダプタを使用して置かれうる。
【0047】
本プロテーゼに組み込まれうるさらに別の応用例は、高密度焦点式超音波および磁気画像化デバイスである。そのようなデバイスの例は、MRgFUS技術(Insightec Ltd.、イリノイ州ティラトカルメル)である。超音波は、ヒトに聞こえるものよりも高い周波数の音波である。診断医療画像化に使用される周波数は、一般的に1~18MHzの範囲内である。超音波は治療用に使用されうる。高密度焦点式超音波(HIFU:High intensity focused ultrasound)エネルギーは、標的組織を切除するために焦点で最高85℃の熱を生成する。治療用超音波に使用される周波数は220~680MHzの範囲内である。磁気共鳴画像化(MRI)は、身体の画像を形成するために磁場および電波を使用する医療画像化技術である。この技術は、電離放射線への曝露を伴わない医療診断、病期分類、フォローアップのために病院で広く使用されている。MRIの利点は、スキャンされた臓器の温度測定(検温)も提供できることである。MRgFUSは、MRIの画像および温度の誘導下で標的組織を切除するために焦点式超音波を使用する。これにより医師は、周囲の組織にほとんどまたは全く害を及ぼさずに、最小限の副作用で、安全かつ効果的な非侵襲的治療を行うことができる。MRgFUSは焦点に電子的に調節する多素子フェーズドアレイトランスデューサを使用する。治療医が治療領域を定義し、それに応じてシステムが治療計画を作成する。治療の間には、最大1000の線数の超音波が焦点に放射される。超音波線はエネルギーを熱に変換しながら標的組織を切除する。MRIによって誘導されて、治療組織の明瞭な視野が取得される。さらに、組織への累積熱効果を判断するために熱データが分析される。必要に応じて、安全かつ効果的な応答を確保するためにパラメータが調節される。本プロテーゼの移植によって超音波線の数が大幅に低減されると考えられる。さらに、HIFUを使用して損傷されるエリアが同時に監視および画像化されうるため、標的計画、超音波ビームの精度、およびHIFUの安全性が大幅に低減される。これは、より良好な患者の転帰につながり、費用および治療時間を劇的に減少させると考えられる。
【0048】
特許請求されたデバイスは、慢性または亜急性の硬膜下血腫および水腫を除去するために使用されうるSEPS(商標)硬膜下排出ポートシステム(Medtronic、ミネソタ州ミネアポリス)にも対応する。SEPSデバイスによってゆっくりと排出される際の硬膜下血腫も、監視および画像化されうる。
【0049】
本明細書で使用されるところの「および/または」という用語は、一方もしくは他方または両方を有する可能性として定義される。例えば、「Aおよび/またはB」は、AのみもしくはBのみ、またはAおよびBの組み合わせを有するシナリオを提供する。請求項がAおよび/またはBおよび/またはCとなっている場合、この構成物はAのみ、Bのみ、Cのみ、Cを除くAおよびB、Aを除くBおよびC、Bを除くAおよびC、またはA、BおよびCの3つのすべてを構成要素として含みうる。
【0050】
このように考えられる本発明は、多数の修正および変形が可能であり、それらはすべて添付の特許請求の範囲内である。さらに、すべての詳細は他の技術的に等価な要素によって置き換えられうる。
【0051】
実際には、採用される材料は、それらが特定の用途ならびに考えられる寸法および形状に適合するという条件で、要件および最新技術にしたがって任意のものとすることができる。
【0052】
任意の請求項に記載される技術的特徴の後に参照符号が付されている場合には、そのような参照符号は、請求項の分かり易さを高める目的のためだけに挿入されたものであり、したがってそのような参照符号は、そのような参照符号によって例として識別される各要素の解釈に対していかなる限定的な影響も有しない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D