(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】表示パネル、その製造方法、及び表示装置
(51)【国際特許分類】
H05B 33/04 20060101AFI20240614BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240614BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240614BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20240614BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20240614BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240614BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20240614BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240614BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
H05B33/04
B41J2/01 109
G09F9/30 349Z
G09F9/30 365
H05B33/10
H05B33/12 B
H05B33/14 A
H05B33/22 Z
H05K1/02 A
H05K1/03 610G
(21)【出願番号】P 2019558539
(86)(22)【出願日】2018-11-01
(86)【国際出願番号】 CN2018113452
(87)【国際公開番号】W WO2020087449
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-10-25
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】カイ・スイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンユアン・スン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイジエ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ジンシャン・シュエ
(72)【発明者】
【氏名】シアン・ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ウェンチ・リュウ
(72)【発明者】
【氏名】ジンカイ・ニ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ・ドン
(72)【発明者】
【氏名】シャオフェン・ワン
【合議体】
【審判長】神谷 健一
【審判官】井口 猶二
【審判官】西岡 貴央
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0125817(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第105552246(CN,A)
【文献】特開2011-136560(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0256202(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0046221(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0334959(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0156578(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50-51/56
H05B 33/00-33/28
H01L 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルであって、
表示基板と、
前記表示基板上に位置する複数の発光ユニットと、
前記複数の発光ユニットを覆う第1の有機層とを備え、
前記第1の有機層の前記発光ユニットの反対側に位置する表面は、複数の凸部と複数の凹部とを含み、
前記第1の有機層は、前記複数の発光ユニットと直接接しており、
前記表示パネルは、第1の無機層と、第2の有機層と、第2の無機層と、第3の有機層とをさらに備え、
前記第1の有機層と、前記第1の無機層と、前記第2の有機層と、前記第2の無機層と、前記第3の有機層とは、前記表示基板から離れる方向に順に配置されており、
前記第1の有機層のヤング率は前記第2の有機層のヤング率よりも小さ
く、
前記第1の有機層は、ポリジメチルシロキサン、ポリイミド、シリコーン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ゴム及びそれらの誘導体、並びにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含み、
前記表示パネルは、前記複数の発光ユニットを定義し、前記第1の有機層と直接接する画素定義層をさらに備える、表示パネル。
【請求項2】
前記複数の凸部及び前記複数の凹部は、第2の方向に対して垂直である第1の方向及び第2の方向に交互に配置される、請求項
1に記載の表示パネル。
【請求項3】
前記複数の凸部及び前記複数の凹部は、実質的に同一幅を有する、請求項1
または2に記載の表示パネル。
【請求項4】
前記複数の凸部はそれぞれ、前記複数の凹部に連続的に遷移する、請求項1に記載の表示パネル。
【請求項5】
前記第1の有機層の前記表示基板と垂直な平面における断面の、前記表示基板の反対側に位置する一方の側は、正弦波状を有する、請求項1から
4のいずれか1項に記載の表示パネル。
【請求項6】
前記複数の凸部のうちの1つの山頂部から前記画素定義層の上面までの第1の距離は3μmから11μmの範囲にあり、前記複数の凹部のうちの1つの谷底部から前記画素定義層の前記上面までの第2の距離は1μmから8μmの範囲にあり、前記第1の距離は前記第2の距離より大きい、請求項
1に記載の表示パネル。
【請求項7】
2つの隣接する凸部の山頂部同士の距離は、2つの隣接する凹部の谷底部同士の距離と実質的に同一である、請求項
6に記載の表示パネル。
【請求項8】
前記表示基板における前記第1の有機層の正射影は、前記表示基板における前記複数の発光ユニットの正射影を覆い、前記表示基板における前記第1の無機層の正射影は、前記表示基板における前記第1の有機層の正射影を覆う、請求項
5から
7のいずれか1項に記載の表示パネル。
【請求項9】
前記複数の発光ユニットを囲むダム構造をさらに備える、請求項
5から
8のいずれか1項に記載の表示パネル。
【請求項10】
前記第1の無機層及び/又は前記第2の無機層は前記ダム構造まで伸びて前記ダム構造の上面を直接覆う、請求項
9に記載の表示パネル。
【請求項11】
前記表示基板は、ポリイミド及びその誘導体、ゴム、シリコーン、ポリウレタン、並びにアクリル樹脂からなる群から選択される材料を含む、請求項
5から
10のいずれか1項に記載の表示パネル。
【請求項12】
請求項1から
11のいずれか1項に記載の表示パネルを備える、表示装置。
【請求項13】
表示パネルの製造方法であって、
複数の発光ユニットが配置された表示基板を提供することと、
前記複数の発光ユニットを覆う第1の有機層を形成することとを含み、
前記第1の有機層の前記発光ユニットの反対側に位置する表面は、複数の凸部と複数の凹部とを含み、
前記第1の有機層は、前記複数の発光ユニットと直接接しており、
前記表示パネルは、第1の無機層と、第2の有機層と、第2の無機層と、第3の有機層とをさらに備え、
前記第1の有機層と、前記第1の無機層と、前記第2の有機層と、前記第2の無機層と、前記第3の有機層とは、前記表示基板から離れる方向に順に配置されており、
前記第1の有機層のヤング率は前記第2の有機層のヤング率よりも小さ
く、
前記第1の有機層は、ポリジメチルシロキサン、ポリイミド、シリコーン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ゴム及びそれらの誘導体、並びにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含み、
前記表示パネルは、前記複数の発光ユニットを定義し、前記第1の有機層と直接接する画素定義層をさらに備える、表示パネルの製造方法。
【請求項14】
前記複数の発光ユニットを覆う前記第1の有機層を形成することは、
有機材料のフィルムを形成することと、
前記有機材料のフィルムに前記複数の凹部を形成することと、
前記複数の凹部の間に前記複数の凸部を形成することとを含む、請求項
13に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項15】
前記有機材料のフィルムを形成することは、
インクジェット印刷技術によりオリゴマーのフィルムを形成することと、
紫外線で前記オリゴマーのフィルムを硬化して前記有機材料のフィルムを形成することとを含む、請求項
14に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項16】
前記有機材料のフィルムを形成することは、
インクジェット印刷技術によりポリマー溶液のフィルムを形成することと、
前記ポリマー溶液のフィルムを凝固して前記有機材料のフィルムを形成することとを含む、請求項
14に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項17】
インクジェット印刷技術により、前記有機材料のフィルム上に、前記複数の凹部の間に位置する前記複数の凸部を形成する、請求項
14に記載の表示パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示技術に関し、特に、表示パネル、その製造方法、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
OLED(有機発光ダイオード)ディスプレイや量子ドット発光ディスプレイ等のフレキシブルディスプレイとストレッチャブルディスプレイでは、フルスクリーンを実現するためにベゼルの最小化を図る傾向が見られる。フルスクリーンを実現するにあたり、フレキシブルディスプレイは最適なディスプレイであると考えられている。このため、表示パネルメーカーの多くは、リジッドディスプレイではなく、フレキシブルディスプレイの量産ラインに莫大な投資を行っている。
【発明の概要】
【0003】
そこで、本開示の一例は表示パネルである。前記表示パネルは、表示基板と、前記表示基板上に位置する複数の発光ユニットと、前記複数の発光ユニットを覆う第1の有機層とを備えてもよい。前記第1の有機層の前記発光ユニットの反対側に位置する表面は、複数の凸部と複数の凹部とを含んでもよい。前記第1の有機層は、前記複数の発光ユニットと直接接してもよい。
【0004】
本開示のもう1つの例は表示装置である。前記表示装置は、本開示の一実施形態における表示パネルを備えてもよい。
【0005】
本開示のもう1つの例は表示パネルの製造方法である。当該方法は、複数の発光ユニットが配置された表示基板を提供することと、前記複数の発光ユニットを覆う第1の有機層を形成することとを含んでもよい。前記第1の有機層の前記発光ユニットの反対側に位置する表面は、複数の凸部と複数の凹部とを含んでもよい。前記第1の有機層は、前記複数の発光ユニットと直接接してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本明細書に付した特許請求の範囲において、本発明の主題を具体的に示し明確に請求した。本発明の上述した内容及びその他の目的、特徴並びに利点は、添付の図面とあわせ、以下の詳しい説明から明らかである。
【0007】
【
図1】
図1は、関連技術における表示パネルの概略構成図である。
【
図2】
図2は、本開示のいくつかの実施形態における表示パネルの概略構成図である。
【
図3a】
図3aは、本開示のいくつかの実施形態における第1の有機層の三次元構成図である。
【
図3b】
図3bは、本開示のいくつかの実施形態における表示パネルの概略構成図である。
【
図4a】
図4aは、本開示のいくつかの実施形態における表示パネルの断面構成図である。
【
図4b】
図4bは、本開示のいくつかの実施形態における第1の無機層の力解析図である。
【
図4c】
図4cは、本開示のいくつかの実施形態における、第1の無機層をy軸方向へ伸長させた前後を示した模式図である。
【
図5a】
図5a~5gは、本開示が想定するいくつかの実施形態における表示パネルを製造する作製工程を図示したものである。
【
図5b】
図5a~5gは、本開示が想定するいくつかの実施形態における表示パネルを製造する作製工程を図示したものである。
【
図5c】
図5a~5gは、本開示が想定するいくつかの実施形態における表示パネルを製造する作製工程を図示したものである。
【
図5d】
図5a~5gは、本開示が想定するいくつかの実施形態における表示パネルを製造する作製工程を図示したものである。
【
図5e】
図5a~5gは、本開示が想定するいくつかの実施形態における表示パネルを製造する作製工程を図示したものである。
【
図5f】
図5a~5gは、本開示が想定するいくつかの実施形態における表示パネルを製造する作製工程を図示したものである。
【
図5g】
図5a~5gは、本開示が想定するいくつかの実施形態における表示パネルを製造する作製工程を図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
当業者が理解しやすいように、添付の図面および実施形態を参照しつつ、本開示についてさらに詳細に説明する。本開示の説明全体を通じて
図1~5gを参照する。図面を参照する際、同様の構造および要素は、全体を通じて同様の参照番号で示す。
【0009】
本明細書では、「第1の」、「第2の」等の用語を接頭辞として付す場合がある。しかし、これらの接頭辞は用語を区別するために追加するものにすぎず、順序や重要度といった具体的な意味を持たない。本開示の説明において、特に限定しない限り、「複数」とは2つ以上を意味する。
【0010】
本明細書の説明において、「いくつかの実施形態」、「一実施形態」、「例示的実施例」、「例示」、「具体的な例示」、「いくつかの例示」等の用語を参照する場合、実施形態又は実施例に関連づけて記載された具体的な特徴、構造、材料又は特性が、本開示の少なくともいくつかの実施形態又は実施例に含まれていることを示すことを意図する。用語の例示的な表現は、必ずしも同一の実施形態又は実施例を指すとは限らない。さらに、記載された具体的な特徴、構造、材料又は特性は、1つ以上の実施形態又は実施例に適切な方法により含まれる場合がある。「約」という用語により修飾される数は、かかる数がその10%変化する可能性があることを意味する。
【0011】
本明細書の説明において「発光ユニット」という用語は、有機発光ユニット、無機発光ユニット又は量子ドット発光ユニットを意味する場合がある。
【0012】
本明細書の説明において「距離」という用語は、2つの表面又は1つの点から1つの表面までの距離等、2つの対象の間の最短距離を意味する場合がある。
【0013】
図1は、関連技術における表示パネルの概略構成図である。
図1に示すように、表示パネルは、表示基板100と、表示基板100に配置された複数の表示ユニット101と、表示ユニット101を覆う第1の無機層102と、第1の無機層102を覆う有機層103と、有機層103を覆う第2の無機層104とを備える。これらの無機層及び有機層は、表示基板100を水及び酸素の浸透から保護するのに用いられる。しかし、無機層102及び104は非常に薄くしばしば大きな応力を受けるため、これらの無機層は表示パネルを方向106に伸長する横方向の応力下で破損しやすい。その結果、表示パネル外の酸素及び水が破損ラインに沿って複数の表示ユニット101のいくつかに浸透して、表示パネルの寿命を大幅に縮めてしまう。
【0014】
これに対し、
図2は、本開示のいくつかの実施形態における表示パネルの概略構成図である。
図2に示すように、表示パネルは、表示基板200と、複数の発光ユニット207を定義する画素定義層206と、複数の発光ユニット207を覆う第1の有機層201とを備える。表示基板200は、駆動回路、信号線及び電気素子等を備える。第1の有機層201の発光ユニット207の反対側に位置する表面は、複数の凸部Mと、複数の凹部Lとを含む。第1の有機層201は、複数の発光ユニット207と、画素定義層206とに直接接する。
【0015】
本開示の実施形態において、表示パネルが横方向に伸長すると、第1の有機層の表面における複数の凸部と複数の凹部とにより、第1の有機層は横方向の応力の一部を効果的に緩和できる。
【0016】
いくつかの実施形態において、第1の有機層201は、ポリジメチルシロキサン、ポリイミド、シリコーン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ゴム及びそれらの誘導体、並びにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0017】
図3aは、本開示のいくつかの実施形態における第1の有機層201の三次元構成図である。
図3aに示すように、複数の凸部M及び複数の凹部Lは、第2の方向に対して実質的に垂直である第1の方向及び第2の方向に交互に配置される。いくつかの実施形態において、
図3aに示すように、複数の凸部Mはそれぞれ、複数の凹部Lに連続的に遷移する。つまり、第1の有機層の表面では、曲率が凸部から凹部へ実質的に連続的かつ緩やかに遷移し、凸部と凹部の間に平坦面がない。
【0018】
いくつかの実施形態において、
図3aに示すように、複数の凸部M及び複数の凹部Lは、平面Pに対して約1μmから約5μmの範囲にある実質的に同一幅を有する。平面Pは第1の有機層の平坦面である。凸部の幅は、凸部の山頂部から平面Pまでの垂直距離であると定義される。凹部の幅は、凹部の谷底部から平面Pまでの垂直距離であると定義される。
【0019】
図3bは、本開示のいくつかの実施形態における表示パネルの概略構成図である。複数の凸部のうちの1つの山頂部から画素定義層206の上面までの第1の距離h1は約3μmから約11μmの範囲にあり、約5μmから約9μmの範囲にあることが好ましく、約6μmから約8μmの範囲にあることがさらに好ましい。複数の凹部のうちの1つの谷底部から画素定義層206の上面までの第2の距離h2は約1μmから約8μmの範囲にあり、約2μmから約6μmの範囲にあることが好ましい。さらに、第1の距離h1は第2の距離h2より大きい。いくつかの実施形態において、2つの隣接する凸部Mの山頂部同士の距離は、2つの隣接する凹部Lの谷底部同士の距離と実質的に同一であり、3個の隣接する発光ユニットから80個の隣接する発光ユニットの長さの間にある。例えば、この範囲は約2μmから約1000μmであり、約80μmから約120μmの範囲にあることが好ましい。
【0020】
いくつかの実施形態において、第1の距離h1は約6μmである。
【0021】
いくつかの実施形態において、第2の距離h2は約2μmである。
【0022】
いくつかの実施形態において、ダム構造Nの上面から画素定義層206の上面までの距離h5は約1.2μmから約2.8μmの範囲にあり、例えば、約2.0μmである。
【0023】
いくつかの実施形態において、
図2に示すように、表示パネルは、第1の無機層202と、第2の有機層203と、第2の無機層204と、第3の有機層205とをさらに備える。第1の有機層201と、第1の無機層202と、第2の有機層203と、第2の無機層204と、第3の有機層205とは、表示基板200から離れる方向に順に配置される。表示基板200における第1の有機層201の正射影は、表示基板200における複数の発光ユニット207の正射影を覆う。表示基板200における第1の無機層202の正射影は、表示基板200における第1の有機層201の正射影を覆う。
【0024】
いくつかの実施形態において、第1の無機層202及び第2の無機層204はいずれもSiNx、SiO2、SiC、Al2O3、ZnS、ZnO及びZSMゼオライトからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。ZSMゼオライトは、ZnO/Al2O3/MgOの構造を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、第1の有機層201のヤング率は第2の有機層203のヤング率を上回らない。
【0026】
いくつかの実施形態において、第1の有機層の発光ユニットの反対側に位置する表面が複数の凸部及び複数の凹部を含むため、第1の無機層と、第2の有機層と、第2の無機層とが第1の有機層上に順に配置されて、第1の有機層の発光ユニットの反対側に位置する表面に一致する。つまり、第1の無機層と、第2の有機層と、第2の無機層とが、第1の有機層の表面上の複数の凸部及び複数の凹部の形状と一致する。
【0027】
第1の無機層を例にとれば、表示パネルが横方向に伸長すると、第1の有機層は第1の無機層の応力の一部を効果的に緩和して、第1の無機層の水/酸素を遮断する能力を維持することができる。その結果、表示基板の寿命が延長される。
【0028】
いくつかの実施形態において、第1の無機層の材料にはSiNx又はSiONが含まれ、第1の無機層の厚みは約700nmから約1400nmの範囲にあり、例えば、約800nmである。
【0029】
いくつかの実施形態において、第1の無機層の材料にはSiO2が含まれ、第1の無機層の厚みは約50nmから約400nmの範囲にあり、例えば、約200nmである。
【0030】
いくつかの実施形態において、第1の無機層の材料にはAl2O3が含まれ、第1の無機層の厚みは約50nmから約300nmの範囲にあり、例えば、約120nmである。
【0031】
いくつかの実施形態において、第2の有機層の厚みは約2μmから約4μmの範囲にあり、例えば、約2μmである。
【0032】
いくつかの実施形態において、第2の無機層の厚みは約0.05μmから約3μmの範囲にある。
【0033】
いくつかの実施形態において、第2の無機層の材料にはSiNx又はSiONが含まれ、第2の無機層の厚みは約700nmから約1400nmの範囲にあり、例えば、約800nmである。
【0034】
いくつかの実施形態において、第2の無機層の材料にはSiO2が含まれ、第2の無機層の厚みは約50nmから約400nmの範囲にあり、例えば、約200nmである。
【0035】
いくつかの実施形態において、第2の無機層の材料にはAl2O3が含まれ、第2の無機層の厚みは約50nmから約300nmの範囲にあり、例えば、約120nmである。
【0036】
いくつかの実施形態において、
図3bに示すように、第3の有機層は、表示基板と反対側に実質的に平坦な上面を有する。第2の無機層も複数の凸部と複数の凹部とを含む。第3の有機層の表示基板と反対側に位置する上面から第2の無機層の複数の凹部のうちの1つの谷底部までの距離h3は、約3μmから約11μmの範囲にあり、約4μmから9μmの範囲、例えば、約6μmであることが好ましい。第3の有機層の表示基板と反対側に位置する上面から第2の無機層の複数の凸部のうちの1つの山頂部までの距離h4は、約1μmから約8μmの範囲にあり、約2μmから約6μmの範囲、例えば、約2μmであることが好ましい。
【0037】
図4aは、本開示のいくつかの実施形態における表示パネルの、表示基板に垂直な平面の断面構成図であり、404は表示パネルを伸長する横方向の応力の方向を表し、400は表示パネルの長さを表し、401は表示パネルの幅を表し、402は表示パネルの厚みを表す。
図4a~4cに示すように、第1の有機層201の表示基板200と垂直な平面における断面の、表示基板の反対側に位置する一方の側は、正弦波状を有し、これは、第1の有機層201上に配置された第1の無機層202が表示パネルの長さ方向400及び幅方向401の両方において正弦波状を有することを意味する。
【0038】
図4aに示すように、x軸と平行である方向404に横方向に表示パネルを伸長すると、表示パネルがx軸方向に伸長し、y軸及びz軸の両方向における長さが収縮する。
【0039】
図4bは、特定の理論に拘束されない、本開示のいくつかの実施形態における第1の無機層の力解析図である。
図4bに示すように、表示パネルを方向404に横方向に伸長すると、第1の無機層202は、x軸方向において、波形405から波形406へ遷移する。
図4a及び4bに示すように、表示パネルは、両端における力F及び力F’により、方向404に横方向に伸長される。波形405における点A及びBは説明の便宜上設けたものである。点A及びBは、凹部の谷底部に対して対称である。
【0040】
点Aにおける力Fは、波形405の接線方向及び法線方向の力f1及びf2にそれぞれ分解できる。点Bにおける力F’は、波形405の接線方向及び法線方向の力f3及びf4にそれぞれ分解できる。
図4bに示すように、力Fの大きさは力F’の大きさと実質的に等しい。力f1の大きさは力f3のそれと実質的に等しい。力f2の大きさは力f4のそれと実質的に等しい。力f1は第1の無機層を平坦化する力であり、力f2はアークを上方に移動させない力である。伸長している間、力Fと力f1の間の角度は小さくなるが、力Fと力f2の間の角度は大きくなる。曲率が大きいほど第1の無機層の伸長力は大きく、波形の曲率を適切に選択することで第1の無機層は適切な伸長力を持ち得る。
【0041】
一方、y軸方向においては、
図4cに示すように、表示パネルが方向404に横方向に伸長すると、第1の無機層202の波形は、波形405’から波形406’に遷移する。
図4cに示すように、波形406’の2つの隣接する山頂部又は谷底部同士の距離はそれぞれ、波形405’の2つの隣接する山頂部又は谷底部同士の距離より小さい。つまり、第1の無機層はy軸方向に収縮する。
【0042】
いくつかの実施形態において、
図2に示すように、表示パネルはダム構造Nをさらに備える。ダム構造Nは複数の発光ユニット207を囲む円形構造であってもよい。ダム構造は、第1の有機層と、第2の有機層と、第3の有機層とがはみ出るのを回避するように構成されてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、
図2に示すように、第1の無機層202及び/又は第2の無機層204はダム構造Nまで伸びてダム構造Nの上面を直接覆う。
【0044】
図2に示すように、第1の有機層の縁部から表示基板の縁部までの最短距離208は、約500μmから約2000μmの範囲にある。第1の有機層の縁部からダム構造の第1の有機層に面する前縁部までの最短距離210は約500μmを上回らない。表示エリア外における、画素定義層206の上面に対する第1の無機層202のバンク角bは、0から90度の範囲にある。表示エリア外における、画素定義層206の上面と平行な平面に対する第2の無機層204のバンク角aは、0から90度の範囲にある。
【0045】
いくつかの実施形態において、表示基板200は、ポリイミド及びその誘導体、ゴム、シリコーン、ポリウレタン、並びにアクリル樹脂からなる群から選択される材料を含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、表示パネルの横方向における最大伸長率は約4%から約8%の範囲にあり、約5%から約7%の範囲、例えば、約5%であることが好ましい。
【0047】
本開示のもう1つの例は表示装置である。表示装置は、本開示の任意の実施形態における表示パネルを備える。
【0048】
いくつかの実施形態において、当該表示装置は円偏光子をさらに備える。当該円偏光子は、少なくとも表示パネルの屋外表示品質を改善するように構成されてもよい。
【0049】
本開示のもう1つの例は表示パネルの製造方法である。当該方法は、複数の発光ユニットが配置された表示基板を提供することと、複数の発光ユニットを覆う第1の有機層を形成することとを含んでもよい。第1の有機層の発光ユニットの反対側に位置する表面は、複数の凸部と複数の凹部とを含み、第1の有機層は複数の発光ユニットと直接接する。
【0050】
いくつかの実施形態において、複数の発光ユニットを覆う第1の有機層を形成することは、第1の有機材料のフィルムを形成するステップと、第1の有機材料のフィルム上に複数の凹部を形成するステップと、第1の有機材料のフィルム上に、複数の凹部の間に位置する複数の凸部を形成するステップとを含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、当該方法は、複数の発光ユニットを形成するステップの前に、画素定義層を形成するステップをさらに含む。画素定義層は、複数の発光ユニットを定義する。
【0052】
いくつかの実施形態において、表示パネルを製造する方法は、ダム構造を形成するステップをさらに含む。ダム構造は、複数の発光ユニットを囲む。ダム構造を形成するステップは、第1の有機層を形成する前であってもよい。
【0053】
以下では、
図5aから5gを参照しつつ、本開示のいくつかの実施形態における表示パネルの製造方法について説明する。
【0054】
いくつかの実施形態において、
図5aに示すように、複数の発光ユニット207が配置された表示基板200を提供する。複数の発光ユニット207は、画素定義層206により定義される。表示基板200上にパターニング処理を施してダム構造Nを形成する。ダム構造Nは、複数の発光ユニット207を囲む。
【0055】
いくつかの実施形態において、
図5bに示すように、複数の発光ユニット207を覆う第1の有機材料のフィルム209を形成する。
【0056】
いくつかの実施形態において、第1の有機材料のフィルムを形成するステップは、インクジェット印刷技術によりオリゴマーのフィルムを形成した後、紫外線でオリゴマーのフィルムを硬化することを含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、第1の有機材料のフィルムを形成するステップは、インクジェット印刷技術によりポリマー溶液のフィルムを形成した後、溶媒を蒸発させてポリマー溶液のフィルムを凝固することを含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、第1の有機材料のフィルムの厚みは、約4μmから約12μmの範囲にあり、例えば、約7μmである。
【0059】
いくつかの実施形態において、
図5cに示すように、ナノインプリント技術、反応性イオンエッチング技術、誘導結合プラズマ技術、ステンシル印刷技術、グラビア技術、またはフレキソ印刷技術により、第1の有機材料のフィルム209に複数の凹部が形成されている。複数の凹部のうちの1つの谷底部から画素定義層の上面までの第2の距離は約1μmから約8μmの範囲にあり、例えば、約2μmである。
【0060】
いくつかの実施形態において、
図5cに示すように、インクジェット印刷技術により、複数の凹部の間の空間において、第1の有機材料のフィルム上に複数の凸部を形成する。複数の凸部のうちの1つの山頂部から画素定義層の上面までの第1の距離は約3μmから約11μmの範囲にあり、例えば、約6μmである。
【0061】
いくつかの実施形態において、レーザ直接描画技術により、複数の凸部及び複数の凹部を第1の有機材料のフィルムに形成する。特定のパルスを印加することによりレーザのエネルギーを制御して、複数の凸部及び複数の凹部の三次元形状を形成することができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、
図5cに示すように、第1の有機層201が形成され、第1の有機層201の発光ユニット207と反対側の表面は、複数の凸部Mと複数の凹部Lとを含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、表示パネルの製造方法は、化学気相成長技術、マグネトロンスパッタリング技術又は原子層堆積技術により第1の無機層を形成するステップをさらに含む。
【0064】
一実施形態において、
図5dに示すように、第1の無機層202を形成する。第1の無機層202は、下方にある第1の有機層の表面と形状が一致する。その結果、第1の無機層202も複数の凸部と複数の凹部を含む。さらに、第1の無機層202はダム構造Nまで伸びてダム構造Nの上面を直接覆う。一実施形態において、第1の無機層202は厚みが実質的に均一である。
【0065】
いくつかの実施形態において、第1の無機層の材料にはSiNx又はSiONが含まれ、第1の無機層は化学気相成長技術により形成される。第1の無機層の厚みは、約700nmから約1400nmの範囲にあり、例えば、約800nmである。
【0066】
いくつかの実施形態において、第1の無機層の材料にはSiO2が含まれ、第1の無機層は原子層堆積技術により形成される。第1の無機層の厚みは、約50nmから約400nmの範囲にあり、例えば、約200nmである。
【0067】
いくつかの実施形態において、第1の無機層の材料にはAl2O3が含まれ、第1の無機層は原子層堆積技術により形成される。第1の無機層の厚みは、約50nmから約300nmの範囲にあり、例えば、約120nmである。
【0068】
いくつかの実施形態において、表示パネルを製造する方法は、第2の有機層を形成するステップをさらに含む。第2の有機層は、第1の有機層の形成にかかる上記実施形態と同じ方法により形成してもよい。第2の有機材料のフィルムの厚みは、約2μmから約4μmの範囲にあり、例えば、約2μmである。
【0069】
一実施形態において、
図5eに示すように、第2の有機層203を形成する。第2の有機層203は、下方にある第1の無機層202と形状が一致する。その結果、第2の有機層も複数の凸部と複数の凹部とを含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、表示パネルの製造方法は、化学気相成長技術、マグネトロンスパッタリング技術又は原子層堆積技術により第2の無機層を形成するステップをさらに含む。第2の無機層の厚みは、約0.05μmから約3μmの範囲にあり、約0.5μmから約2μmの範囲にあることが好ましい。
【0071】
いくつかの実施形態において、第2の無機層の材料にはSiNx又はSiONが含まれ、第2の無機層は化学気相成長技術により形成される。第2の無機層の厚みは、約700nmから約1400nmの範囲にあり、例えば、約800nmである。
【0072】
いくつかの実施形態において、第2の無機層の材料にはSiO2が含まれ、第2の無機層は原子層堆積技術により形成される。第2の無機層の厚みは、約50nmから約400nmの範囲にあり、例えば、約200nmである。
【0073】
いくつかの実施形態において、第2の無機層の材料にはAl2O3が含まれ、第2の無機層は原子層堆積技術により形成される。第2の無機層の厚みは、約50nmから約300nmの範囲にあり、例えば、約120nmである。
【0074】
一実施形態において、
図5fに示すように、第2の無機層204を形成する。第2の無機層204は、下方にある第2の有機層203と形状が一致する。その結果、第2の無機層204も複数の凸部と複数の凹部とを含む。さらに、第2の無機層204はダム構造Nまで伸びてダム構造Nの上面を直接覆う。
【0075】
いくつかの実施形態において、表示パネルの製造方法は、インクジェット印刷技術を用いた後、凝固工程又は硬化工程を経て、第3の有機層を形成するステップをさらに含む。第3の有機層は、表示基板と反対側に実質的に平坦な上面を有する。
【0076】
一実施形態において、
図5gに示すように、第3の有機層205を形成する。
【0077】
本開示のいくつかの実施形態における表示パネルの製造方法は、現在の製造工程に適合するものである。したがって、既存の製造ラインを変更する必要がなく、製造コストを低減できる。
【0078】
本明細書では本開示の原理及び実施形態について述べた。本開示の実施形態に関する説明は、本開示の方法及びその主な構想に対する理解を助けるためのものにすぎない。また、当業者にとって、本開示は本開示の範囲に関連し、技術実施形態は技術特徴の特定の組み合わせに限定されず、本発明構想から逸脱しない限り、技術特徴又は技術特徴と均等な特徴を組み合わせて構成されるその他の技術実施形態も網羅する。例えば、本開示で上述した特徴(しかし、これらに限らない)を同様の特徴と置き換えて技術実施形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0079】
100 表示基板
101 表示ユニット
102 第1の無機層
103 有機層
104 第2の無機層
200 表示基板
201 第1の有機層
202 第1の無機層
203 第2の有機層
204 第2の無機層
205 第3の有機層
206 画素定義層
207 発光ユニット
209 第1の有機材料のフィルム
405 波形
405’ 波形
406 波形
406’ 波形