(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】受電装置、受電装置の制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/60 20160101AFI20240614BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20240614BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240614BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/80
H02J50/10
(21)【出願番号】P 2020049939
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】七野 隆広
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-165761(JP,A)
【文献】特開2017-070074(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0036555(US,A1)
【文献】特表2016-502385(JP,A)
【文献】特表2012-504931(JP,A)
【文献】米国特許第11086042(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2011/0270561(US,A1)
【文献】特開2019-193533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/60
H02J 50/80
H02J 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置の送電電力と受電装置の受電電力との差に基づいて
異物を検出する検出機能を有する送電装置から無線で受電した電力に基づく第1電圧値を測定する第1測定手段と、
前記送電装置に対して前記送電電力の調整を要求する要求手段と、
前記要求手段による要求の後に前記送電装置から受電した電力に基づく第2電圧値を測定する第2測定手段と、
前記要求
が前記送電電力の減少の要求であり、
且つ、前記第2電圧値
が前記第1電圧値よりも減少していない場合に、前記検出機能に関連するキャリブレーション処理を実行するように前記送電装置に通知する通知手段と、
を
有することを特徴とする受電装置。
【請求項2】
送電装置の送電電力と受電装置の受電電力との差に基づいて異物を検出する検出機能を有する送電装置から無線で受電した電力に基づく第1電圧値を測定する第1測定手段と、
前記送電装置に対して前記送電電力の調整を要求する要求手段と、
前記要求手段による要求の後に前記送電装置から受電した電力に基づく第2電圧値を測定する第2測定手段と、
前記
要求が前記送電電力の増加
の要求であり、且つ、前記第2電圧値が前記第1電圧値よりも増加していない場合に、前記
検出機能に関連するキャリブレーション処理
を実行するように前記送電装置に通知する通知手段と、
を有することを特徴とす
る受電装置。
【請求項3】
送電装置の送電電力と受電装置の受電電力との差に基づいて異物を検出する検出機能を有する送電装置から無線で受電した電力に基づく第1電圧値を測定する第1測定手段と、
前記送電装置に対して前記送電電力の調整を要求する要求手段と、
前記要求手段による要求の後に前記送電装置から受電した電力に基づく第2電圧値を測定する第2測定手段と、
前記
要求が前記送電電力の維持
の要求であり、且つ、前記第2電圧値が前記第1電圧値よりも増加又は減少している場合に、前記
検出機能に関連するキャリブレーション処理
を実行するように前記送電装置に通知する通知手段と、
を有することを特徴とす
る受電装置。
【請求項4】
前記第2測定手段は、前記送電装置が送電電力を調整してから前記要求手段が次に前記送電電力の調整を要求するまでの電圧値が安定している期間に前記第2電圧値を測定することを特徴とする請求項1乃至
3の何れか1項に記載の受電装置。
【請求項5】
前記通知手段は、前記受電装置が前記送電装置から無線で受電した電力を負荷へ供給している間に、前記キャリブレーション処理を実行するように前記送電装置に通知することを特徴とする請求項1乃至
4の何れか1項に記載の受電装置。
【請求項6】
前記負荷はバッテリを含むことを特徴とする請求項
5に記載の受電装置。
【請求項7】
前記通知手段は、送電停止から一定時間経過後にWPC規格に規定されているDigital Pingの送電を再開することを前記送電装置に通知することにより、前記キャリブレーション処理を実行するように前記送電装置に通知することを特徴とする請求項1乃至
6の何れか1項に記載の受電装置。
【請求項8】
前記通知手段は、送電を停止し
、前記キャリブレーション処理を実行するように前記送電装置に通知することを特徴とする請求項1乃至
7の何れか1項に記載の受電装置。
【請求項9】
前記第1測定手段は、前記送電装置が送電電力を調整してから前記要求手段が前記送電電力の調整を要求するまでの電圧値が安定している期間に前記第1電圧値を測定することを特徴とする請求項1乃至
8の何れか1項に記載の受電装置。
【請求項10】
送電装置の送電電力と受電装置の受電電力との差に基づいて
異物を検出する検出機能を有する送電装置から無線で受電した電力に基づく第1電圧値を測定する第1測定工程と、
前記送電装置に対して前記送電電力の調整を要求する要求工程と、
前記要求工程による要求の後に前記送電装置から受電した電力に基づく第2電圧値を測定する第2測定工程と、
前記要求
が前記送電電力の減少の要求であり、
且つ、前記第2電圧値
が前記第1電圧値よりも減少していない場合に、前記検出機能に関連するキャリブレーション処理を実行するように前記送電装置に通知する通知工程と、
を有することを特徴とする受電装置の制御方法。
【請求項11】
送電装置の送電電力と受電装置の受電電力との差に基づいて異物を検出する検出機能を有する送電装置から無線で受電した電力に基づく第1電圧値を測定する第1測定工程と、
前記送電装置に対して前記送電電力の調整を要求する要求工程と、
前記要求工程による要求の後に前記送電装置から受電した電力に基づく第2電圧値を測定する第2測定工程と、
前記要求が前記送電電力の増加の要求であり、且つ、前記第2電圧値が前記第1電圧値よりも増加していない場合に、前記検出機能に関連するキャリブレーション処理を実行するように前記送電装置に通知する通知工程と、
を有することを特徴とする受電装置の制御方法。
【請求項12】
送電装置の送電電力と受電装置の受電電力との差に基づいて異物を検出する検出機能を有する送電装置から無線で受電した電力に基づく第1電圧値を測定する第1測定工程と、
前記送電装置に対して前記送電電力の調整を要求する要求工程と、
前記要求工程による要求の後に前記送電装置から受電した電力に基づく第2電圧値を測定する第2測定工程と、
前記要求が前記送電電力の維持の要求であり、且つ、前記第2電圧値が前記第1電圧値よりも増加又は減少している場合に、前記検出機能に関連するキャリブレーション処理を実行するように前記送電装置に通知する通知工程と、
を有することを特徴とする受電装置の制御方法。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1乃至
9の何れか1項に記載の受電装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電装置、受電装置の制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線電力伝送システムの技術開発が広く行われている。特許文献1では、無線充電規格の標準化団体Wireless Power Consortium(WPC)が策定する規格(WPC規格)に準拠した送電装置および受電装置が開示されている。特許文献1は、送電装置における異物検出方法として、送電電力と受電電力の差分(パワーロス)が閾値を超えた場合に異物が存在すると判定することを開示している。異物とは、受電装置とは異なる物体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パワーロスに基づく異物検出方法において、送電電力と受電電力との関係性を示すデータを予め作成する必要がある。しかし、送電装置が送電電力と受電電力との関係性を示すデータを作成する段階で送電装置と受電装置の周辺に異物が存在する状態で、そのデータが生成された場合は、そのデータを用いて異物検出を行っても、精度よく異物を検出することができないという課題がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、無線電力伝送において受電装置とは異なる物体の検出を精度よく実行するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明の一態様による受電装置は、
送電装置の送電電力と受電装置の受電電力との差に基づいて異物を検出する検出機能を有する送電装置から無線で受電した電力に基づく第1電圧値を測定する第1測定手段と、
前記送電装置に対して前記送電電力の調整を要求する要求手段と、
前記要求手段による要求の後に前記送電装置から受電した電力に基づく第2電圧値を測定する第2測定手段と、
前記要求が前記送電電力の減少の要求であり、且つ、前記第2電圧値が前記第1電圧値よりも減少していない場合に、前記検出機能に関連するキャリブレーション処理を実行するように前記送電装置に通知する通知手段と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無線電力伝送において受電装置とは異なる物体の検出を精度よく実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る無線電力伝送システムの構成図。
【
図3】一実施形態に係る送電装置および受電装置のシーケンス図。
【
図4】一実施形態に係る受電装置の判定部が実行する処理の手順を示すフローチャート。
【
図5】一実施形態に係る受電装置の判定部の判定に関する概念図。
【
図6】一実施形態に係る受電装置の判定部の動作に関するタイミングチャート。
【
図7】一実施形態に係るパワーロスに基づく異物検出処理に関するグラフを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<送電電力と受電電力の差分(パワーロス)に基づく異物検出方法>
まず、
図7(a)を用いてWPC規格で策定されているパワーロスに基づく異物検出方法について説明する。
図7(a)の横軸は送電装置の送電電力、縦軸は受電装置の受電電力である。
【0011】
送電装置は、受電装置が受電した電力を負荷(充電回路やバッテリなど)に供給しない時の受電電力値Pr1(Light Loadという)を受電装置から受信する。そして、送電装置はその時の送電電力値Pt1を記憶する(点700)。続いて、送電装置は、受電装置が受電した電力を負荷に供給した時の受電電力値Pr2(Connected Loadという)の値を受電装置から受信する。そして、送電装置はその時の送電電力値Pt2を記憶する(点701)。
【0012】
そして、送電装置は点700と点701とを直線補間して直線702を作成する。直線702は送電装置と受電装置の周辺に異物が存在しない状態における送電電力と受電電力との関係を示している。送電装置は、送電電力値と直線702とから異物がない状態における受電電力値を予想することができる。例えば、送電電力値がPt3の場合は、送電電力値がPt3を示す直線702上の点703から、受電電力値はPr3であると予想することができる。
【0013】
ここで、送電装置が受電装置から受電電力値Pr3'という値を受信したとする。送電装置は異物が存在しない状態における受電電力値Pr3から実際に受電装置から受電した受電電力値Pr3'を引いた値Pr3-Pr3'(=Ploss)を算出する。そして、異物で消費されたであろう電力Plossが予め決められた閾値を超え場合に、異物が存在すると判定する。以上がパワーロスに基づく異物検出の説明である。
【0014】
<無線電力伝送システムの構成>
次に、
図1は、本実施形態に係る無線電力伝送システムの構成図である。本システムは、一例において、受電装置(RX)102と送電装置(TX)100とを含んで構成される。受電装置102は、送電装置100から受電して内蔵バッテリに充電を行う電子機器である。送電装置100は、自身に載置された受電装置102に対して無線で送電する電子機器である。101は、送電装置100の送電コイル101である。送電装置100は送電コイル101を介して受電装置102へ無線で電力を送電する。
【0015】
また、103は導電性の異物である。送電コイル101から送電される無線電力が影響を及ぼす範囲(operating volume)、すなわち送電範囲に異物が存在している。また、黒矢印は受電装置102が送電装置100上を移動することを示しており、移動の前後で送電コイル101と受電装置102の受電コイル(
図1においては不図示)との位置関係が変化している。
【0016】
<受電装置の構成>
図2は、本実施形態に係る受電装置102の構成例を示す図である。受電装置102はWPC規格に準拠しているとする。受電装置102は、制御部201、整流部203、通信部204、受電コイル205、バッテリ207、メモリ208、充電部209、及び電圧制御部211を備えている。また、制御部201は判定部202を備えている。
【0017】
制御部201は、受電装置102全体を制御する。制御部201の一例はCPU(Central Processing Unit)である。制御部201は、整流部203が電圧制御部211に出力する直流電圧Vrect(受電した電力に基づく受電電圧値)を測定する機能(矢印206)を持つ。また、制御部201は、電圧制御部211の出力電圧及び出力電流を観測することで、負荷(充電部209およびバッテリ207)の消費電力を測定する機能(矢印210)を持つ。
【0018】
判定部202は、異物が存在するか、もしくは受電装置102が送電装置100上を移動したかどうかを判定する機能を持つ。判定部202の詳細は後述する。整流部203は、受電コイル205を介して受電した送電コイル101からの交流電圧および交流電流を、制御部201および電圧制御部211、充電部209などが動作する直流電圧および直流電流に変換する。本実施形態に係る整流部203は、充電部209がバッテリ207を充電するための電力を供給するものとする。
【0019】
通信部204は、送電装置100の通信部(不図示)との間で、WPC規格に基づいた無線充電の制御通信を行う。この制御通信は、受電コイル205で受電した電磁波を負荷変調することで行う。受電コイル205は、送電コイル101から交流電圧および交流電流を受電する。
【0020】
メモリ208は、判定部202が判定を行う際の判定条件を記憶する。また、メモリ208は、制御部201が本実施形態に係る受電装置102を動作させるためのプログラムを記憶する。充電部209はバッテリ207を充電する。電圧制御部211は、整流部203が整流した直流電圧で動作し、充電部209に対して予め定められた定電圧を供給する。
【0021】
なお、受電装置102は他の装置(カメラ、スマートフォン、タブレットPC、ラップトップ、自動車、ロボット、医療機器、プリンタ)に内蔵される構成であってもよい。また、
図2では制御部201、整流部203、通信部204、電圧制御部211、メモリ208は別体として記載しているが、これらの内の任意の複数は、同一チップ内に実装されてもよい。
【0022】
また、送電装置100および受電装置102が準拠する無線電力伝送方式は、WPC規格で規定された方式に限られず、他の電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界共鳴方式、マイクロ波方式、レーザ等を利用した方式であってもよい。また、本実施形態では、無線電力伝送が無線充電に用いられるものとするが、無線充電以外の用途で無線電力伝送が行われてもよい。また、整流部203乃至電圧制御部211が出力する電力をバッテリに蓄電することなく、図示しない回路を直接駆動する方式であってもよい。
【0023】
<送電装置および受電装置のシーケンス>
続いて、
図3(a)乃至
図3(c)を参照しながら、本実施形態に係る送電装置および受電装置のシーケンスについて説明する。
図3(a)は、WPC規格に規定されている送電装置100(図中TX)および受電装置102(図中RX)の動作を示す。
【0024】
送電装置100が起動すると、送電装置100は送電コイル101を介してAnalog Pingを間欠的に送電する(F300)。Analog Pingとは、送電コイル101の近傍に存在する物体を検出するための微小な電力の信号である。受電装置102がAnalog Pingを受電しているとき、送電装置100はSelectionフェーズという状態にある。
【0025】
送電装置100は、Analog Pingを送電した時の送電コイル101の電圧値または電流値または共振周波数の変動を検出し、変動がある閾値を超える場合に送電コイル101の周辺に物体が存在すると判定し、Qi値測定を実施する(F321)。
【0026】
Qi値測定とは、送電コイル101のQi(チー)値を測定することを示す。測定したQi値は、後述するQi値に基づく異物検出で使用する。Qi値測定を行った後、送電装置100はPingフェーズに遷移する。
【0027】
Pingフェーズでは、送電装置100はAnalog Pingより出力が大きいDigital Pingを送電する(F301)。Digital Pingの出力の大きさは、少なくとも送電コイル101の近傍に存在する受電装置102の制御部201が起動するのに十分な電力である。
【0028】
受電装置102の制御部201は、受電コイル205を介して受電した電力により起動すると、受電電圧の大きさを示すSignal Strengthを送電装置100へ通知する(F302)。それに伴い、受電装置102は、Identification & Configurationフェーズ(以下、I&Cフェーズという)へ遷移する。送電装置100は、受電装置102からSignal Strengthを受信すると、I&Cフェーズに遷移する。
【0029】
続いて受電装置102は、自身の製造者を示す製造者コードやデバイス識別情報を含むID Packet(F303)および自身が準拠している規格バージョン等を含むConfiguration Packet(F304)を送電装置100へ送信する。
【0030】
送電装置100は、Configuration Packetを受信し、かつ受電装置200が対応する規格バージョンが所定のバージョン以上(例えばv1.2.2以上のバージョン)であれば、Configuration Packetに含まれる情報を許諾したことを示すACKを受電装置102へ送信し(F305)、Negotiationフェーズに遷移する。同様に、受電装置102は、ACKを受信するとNegotiationフェーズに遷移する。
【0031】
Negotiationフェーズでは、送電装置100と受電装置200とは、受電装置200が必ず受電できる電力の大きさを示すGuaranteed Power(以下、GPという)を決定するための交渉を行う。具体的には、受電装置102がGPとして要求する値を、Specific Request(以下SRQ)パケットの内、GPを要求するためのパケットであるSRQ(GP)パケットに格納して、送電装置100へ送信する(F306)。
【0032】
そして、送電装置100は、当該要求を許諾もしくは拒否する。ここでは送電装置100は要求を許諾するACKパケットを受電装置102へ送信する(F307)。
【0033】
GPが決定すると、受電装置102はQi(チー)値に基づく異物検出機能に関連する情報を送電装置100へ送信する。具体的には、受電装置102がWPC規格で定められた送電装置100上に載置された場合の当該送電装置100の送電コイル101のQi値をQ_reportとして、FOD(Foreign Object Detection)Status Packet(以下FODという)に格納して送電装置100へ送信する(F308)。
【0034】
送電装置100は、FODパケットを受信すると、F321で測定したQi値とQ_reportとに基づいて送電電力が影響する範囲に異物が存在するかどうかを判定する。ここでは、送電装置100は異物が存在しないと判定したことを示すACKを受電装置102に送信したとする(F309)。
【0035】
ACKを受信すると、受電装置102はSRQの内、Negotiationフェーズを終了することを示すEnd Negotiationパケット(SRQ(EN))を送電装置100へ送信する(F310)。
【0036】
送電装置100はSRQ(EN)に対してACKを送信し(F311)、Negotiationフェーズを終了する。
【0037】
続いて、送電装置100および受電装置102は、パワーロスに基づく異物検出機能に関連するCalibration(キャリブレーション)の処理を実行する。Calibration処理では
図7(a)を参照して説明した直線702を作成する。以下、具体的な手順について説明する。
【0038】
受電装置102は、電圧制御部211の出力を負荷(充電部209とバッテリ207など)に供給しない状態であるmode1における受電電力をReceived Power Packet(mode1)(以下、RPP(1))として、送電装置100へ送信する(F312)。この時の受電電力値をPr1とする。
【0039】
送電装置100は、RPP(1)を受信したときの送電装置100内部の送電電力を測定する。この時の送電電力値をPt1とする。送電装置100は、受電装置102へACKを送信した後(F313)、送電装置100内部の記憶部(不図示)に送電電力値がPt1であり、受電電力値がPr1である点700(
図7参照)を記憶する。
【0040】
ACKを受信すると(F313)、受電装置102は、電圧制御部211の出力を負荷(充電部209とバッテリ207など)に供給する。ここで、受電装置102は負荷に電力を供給するために送電装置100へ送電電力の調整(この例では増加)を要求するControl Error Packet(CEパケット)を送信する(F314)。なお、本実施形態では、Control Error Packet(CEP)が送電電力の増加を示す場合はCE(+)、送電電力の維持を示す場合はCE(0)、送電電力の低下を示す場合はCE(-)と表現する。この表記に従い、ここでは受電装置102は、負荷へ電力を供給するため、CE(+)を送電装置100へ送信する。送電装置100は、受電装置102から受信したCE(+)に基づいて送電電力を増加させるように設定値を変更する(F315)。
【0041】
そして、受電装置102は、電圧制御部211の出力を負荷(充電部209とバッテリ207など)に供給した状態であり、かつCalibration処理中であることを示すmode2における受電電力値を、Received Power Packet(mode2)(以下、RPP(2))として、送電装置100へ送信する(F316)。この時の受電電力値をPr2とする。
【0042】
送電装置100は、RPP(2)を受信したときの送電装置100内部の送電電力値を測定する。この時の送電電力値をPt2とする。送電装置100は受電装置102へACKを送信した後(F317)、送電装置100内部の記憶部(不図示)に送電電力値がPt2であり、受電電力値がPr2である点701(
図7参照)を記憶する。そして、送電装置100は、点700と点701とを結ぶ線を算出し、線702をパワーロスに基づく異物検出における異物の有無の判定の判定基準とする。
【0043】
受電装置102は、RPP(2)に対するACKを送電装置100から受信すると、Calibration処理を終了する。そして、負荷の消費電力の変動に応じて送電電力の調整を要求するパケットであるCEパケットを定期的に送信する(F318)。Calibration処理が終了しても、受電装置102は定期的にRPPを送電装置100へ送信するが、この時は電圧制御部211の出力を負荷(充電部209とバッテリ207など)に供給した状態であり、かつCalibration処理中でないことを示すmode0における受電電力を示すRPP(0)を送電装置100へ送信する(F319)。
【0044】
送電装置100は、RPP(0)を受信するとACKを受電装置102に送信する(F320)。また、送電装置100は、RPP(0)で受信した受電電力値と線702とを用いて、
図7(a)を参照してすでに説明した方法でパワーロスに基づく異物検出を行う。
【0045】
バッテリ207への充電が終了すると、受電装置102は、送電装置100に対して送電停止を要求するEnd Power Transfer パケット(以下EPT)を送信し(F322)、一連の処理を終了する。
【0046】
ここで、
図7(b)を用いて、Calibration処理中に、送電電力が影響を及ぼす範囲に異物が存在した場合の課題について説明する。例えば、送電装置100がRPP(1)を受信して点700を記憶してから、RPP(2)を受信するまでの間に、送電電力が影響を及ぼす範囲に異物103が載置されたとする。すると、受電装置102の受電電力値がPr2であることを示すRPP(2)を送電装置100が受信したときの送電電力値は、
図7(b)に示すように、異物がない時の送電電力を示すPt2より大きいPt2'となる。ここで、Pt2'とPt2の差分が異物で消費される電力と考えてよい。
【0047】
続いて、送電装置100は、送電電力値がPt2'で受電電力値がPr2である点704と点700とを結ぶ線705を算出し、算出した線705をパワーロスに基づく異物検出における異物の有無の判定のための判定基準とする。
【0048】
異物がない状態で作成した線702に対して、異物がある状態で作成した線705はずれている。そのため、送電装置100は、送電電力値がPt3の場合に、送電電力値がPt3を示す直線705上の点706から、受電電力値はPr4(Pr3とは異なる)として算出し、この受電電力値を異物がない状態の受電電力値と予想してしまう。
【0049】
このように、直線702を作成する段階で送電装置100と受電装置102の周辺に異物が存在する場合は、同じ送電電力値Pt3の時にPr3-Pr4という差分が発生するため、送電装置100が正しく異物検出できなくなってしまうことがある。その結果、送電装置100が、送電電力が影響を及ぼす範囲に異物が載置されていないにも関わらず異物が載置されていると判定する、いわゆる誤検出を行い、その結果送電を停止し、ユーザの使用感が低下することがある。また、送電装置100が、送電電力が影響を及ぼす範囲に異物が載置されているにもかかわらず異物を検出できず、異物が発熱することも起こりうる。
【0050】
同様のことは、送電電力が影響を及ぼす範囲に載置されている受電装置102が送電装置100の送電コイル101上を移動し、送電コイル101と受電コイル205との位置関係が変化した場合にも起こりうる。
【0051】
送電装置100がRPP(1)を受信して点700を記憶してからRPP(2)を受信するまでの間に受電装置102が移動し、送電コイル101と受電コイル205との位置関係が変化したとする。ここでは、位置関係の変化の結果、送電コイル101と受電コイル205との結合係数が小さくなったとする。結合係数が小さくなる方向に変化すると、結合係数の変化の前後で送電電力が変化していなければ、受電装置102の受電電力は小さくなる。これは、受電装置102が同じ受電電力を受電する場合、結合係数が小さくなるとその分だけ送電電力は大きくなければならないことを意味する(つまり、電力伝送効率が低下する)。また逆に、受電装置102が同じ受電電力を受電する場合、結合係数が大きくなるとその分送電電力は小さくて済むことを意味する。
【0052】
結合係数が小さくなる場合、受電装置102の受電電力値がPr2であることを示すRPP(2)を受信したときの送電電力値は、
図7(b)に示すように、受電装置102が移動しない(送電コイル101と受電コイル205の位置関係が変化しない)時の送電電力値を示すPt2より大きいPt2'となる。ここで、Pt2'とPt2との差分の電力は、効率が低下したために受電コイル205に伝送されず、図示しない空間に放射されると考えてよい。
【0053】
送電電力値がPt2'で受電電力値がPr2である点704と点700とを結ぶ線705を算出し、パワーロスに基づく異物検出における異物の有無の判定のための判定基準とするため、すでに説明したように、送電装置100が正しく異物検出することが難しい。その結果、送電装置100が、送電電力が影響を及ぼす範囲に異物が載置されていないにも関わらず異物が載置されていると判定する、いわゆる誤検出を行って送電を停止し、ユーザの使用感が低下する。また、送電装置100が、送電電力が影響を及ぼす範囲に異物が載置されているにもかかわらず異物を検出できず、異物が発熱することも起こりうる。
【0054】
これらの問題を解決するために、本実施形態に係る受電装置102がCalibration処理中に判定部202が行う処理を
図4に示し、その処理シーケンスを
図3(b)に示す。
【0055】
まず、受電装置102の判定部202は、Calibration処理中にCEパケットを送信する(S400、F314)。受電装置102がCEパケットを送信した後に、送電電力が影響する範囲に異物が置かれたとする(F323)
判定部202は、CEパケットを送信するたびに、送電電力が影響を及ぼす範囲に異物が存在することが原因で再Calibration処理の必要かあるか否かを判定する(S401)。本処理の詳細は
図5を参照しながら後述する。そして、再Calibration処理が必要と判定した場合は(F324、S402でYES)、送電装置101に対して一旦送電を停止し、一定時間経過後にDigital Pingの送電を再開することを要求するEPT(再開(Restart))パケットを送電装置100へ送信する(F325、S403)。これにより再キャリブレーション処理を要求することができる。一方、再Calibration処理が必要ないと判定した場合は(S402でNo)、S400の処理に戻ることになる。以上で判定部202の処理が終了する。
【0056】
そして、送電装置100は、EPT(再開)を受信すると、送電を中断する(F326)。そして、Digital Pingを送電する前に、再びQi値測定を実施する(F327)。そして、再度Digital Pingを送電し、以降、送電装置100と受電装置102はF301からF321で説明したシーケンスに従って動作することになる(F328)。
【0057】
しかし、今回は異物が存在するので、受電装置102が送信するFODパケット(F308)に対して、送電装置100は異物があることを示す(少なくとも、異物がないと言えないことを示す)ためにNAKで応答する。
【0058】
NAKで応答した場合は、図示しないが、送電装置100および受電装置102のUI(ユーザインタフェース)で、異物があることを意味する表示及び/又は音声によるユーザへの通知を行う。そして、ユーザが異物を取り除いた状態になると、受電装置102はすでに説明したF301からF321の処理に基づいて充電を行うことができる。
【0059】
このように、受電装置102は、送電装置100が正しく異物検出できない状態であることを判定した場合に、再度Calibration処理を行うことで、送電装置100が正しく異物検出できる状態で負荷へ電力を供給することができる。
【0060】
なお、
図3(b)ではF323でCalibration処理中に送電電力が影響を及ぼす範囲に異物が載置された場合について説明したが、これはF323でCalibration処理中に受電装置102が移動した場合についても同様である。つまり、送電コイル101と受電コイル205との位置関係が変化し、その結果送電コイル101と受電コイル205との結合係数が変化した場合についても同様である。
【0061】
また、
図3(b)では、Calibration処理中に、送電装置100が正しく異物検出できない状態であることを受電装置102が判定した。しかし、これはCalibration処理が終了し、受電装置102が負荷へ電力を供給している状態(F319-F322)であっても同様の処理を行うことができる。以下、
図3(c)を用いてこの点について説明する。
【0062】
図3(c)において、受電装置102は、
図3(a)と同様の処理(F300-F321)に基づいて負荷へ電力を供給する(F329)。そして、受電装置102が送電装置100上を移動し(F330)、送電コイル101と受電コイル205との結合係数が変化する。すると、受電装置102は、再度Calibration処理の必要があると判定する(F324)。そして受電装置102はEPT(再開(Restart))パケットを送電装置100へ送信する(F325)。
【0063】
送電装置100は、EPT(再開)を受信すると(F325)、送電を中断する(F326)。そして、Digital Pingを送電する前に、再びQi値測定を実施する(F327)。そして、再度Digital Pingを送電する。以降、送電装置100と受電装置102はF301からF322で説明したシーケンスに従って動作する(F328)。
【0064】
このように、受電装置102が負荷へ電力を供給している状態(F319-F322)であっても、受電装置102は、送電装置100が正しく異物検出できない状態であることを判定できる。そして、再度Calibration処理を行うことで、送電装置100が正しく異物検出できる状態で負荷へ電力を供給することができる。
【0065】
<異物および受電装置102の移動による直流電圧Vrectの変化>
次に、送電電力が影響を及ぼす範囲に異物が載置された場合、および、送電電力が影響を及ぼす範囲の受電装置102が移動した場合における、直流電圧Vrectの変化を説明する。
【0066】
送電電が影響を及ぼす範囲に異物が載置されると、送電電力は受電装置102および異物で消費される。なお、当然ながら、異物が載置される前は、送電電力は受電装置102のみで消費される。送電電力は増減しないため、異物が載置された時に直流電圧Vrectが低下する。
【0067】
送電電力が影響を及ぼす範囲に載置されている受電装置102が移動した場合、送電コイル101と受電コイル205との結合係数の増減によって直流電圧Vrectの変化は異なってくる。受電装置102が、結合係数が大きくなる方向へ移動した場合は、送電電力が送電コイル101から受電コイル205へより伝わるようになるため、移動の前後で送電電力が一定であれば直流電圧Vrectは増加する。一方で、受電装置102が、結合係数が小さくなる方向へ移動した場合は、送電電力が送電コイル101から受電コイル205へより伝わりにくくなるため、移動の前後で送電電力が一定であれば直流電圧Vrectは減少する。
【0068】
<CEパケットと直流電圧Vrect変化の関係>
続いて、
図6を参照して、CEパケットと整流部203が電圧制御部211に出力する直流電圧Vrectとの関係について説明する。
図6において、横軸は時間、縦軸は直流電圧Vrectを示す。受電装置102はCEパケット600を送電装置100に対して時間t0からt1、t4からt5、t8からt9の時間で定期的に送信する。送電装置100はCEパケットを受信してから時間602が経過した後、時間603(t2からt3、t6からt7)でCEパケットに基づく送電電力の調整を行う。送電装置100はCEパケットを受信した直後の時間602(t1からt2、t5からt6)の間および送電電力を調整した直後の時間604(t3からt4、t7からt8)の間は送電電力の調整は行わない。つまり、時間602および時間604の間は、受電装置102の負荷の消費電力が一定であれば、直流電圧Vrectは変動せず、安定している。
【0069】
続いて、CEパケットと想定される直流電圧Vrectの変化について説明する。時間t0からt1で受電装置102が送信し、送電装置100が受信するCEパケットが送電電力を維持することを要求するパケットであるCE(0)である場合、時間t2からt3の間で送電装置100は送電電力の調整は行わない。よってt2からt3において直流電圧Vrectは変化しない。
【0070】
時間t4からt5で受電装置102が送信し、送電装置100が受信するCEパケットが送電電力を増加することを要求するパケットであるCE(+)である場合、時間t6からt7の間で送電装置100は送電電力を増加させる。その結果t6からt7において直流電圧Vrectは増加する。
【0071】
また、図示はしないが、CEパケットが送電電力を減少させることを要求するCE(-)である場合、送電装置100は送電電力を減少させる。その結果時間603において直流電圧Vrectは減少する。
【0072】
送電装置100が送電電力を調整してから次に送電電力の調整を要求するまでの電圧値が安定している期間に、直流電圧Vrectを測定するとよい。
【0073】
<判定部202の動作>
以上を踏まえ、
図5を参照しながら、判定部202が行う再Calibration処理が必要かどうかの判定処理(S401)の詳細について説明する。
【0074】
509が示すCEはCEパケットで要求される送電電力の調整に関する項目である。CEが「-」であれば送電電力の減少を、「0」であれば送電電力の維持を、「+」であれば送電電力の減少を受電装置102が要求していることを示す。510が示すΔVrectの項目は、CEパケットの直前および直後の直流電圧Vrectの差分である。具体的には、
図6に示した時間t4からt5のCEに関して直前のt3からt4の間で受電装置102が測定したVrectに対する、直後のt7からt8のVrectの差分である。ΔVrectが「+」であればCEの直前のVrectに対して、直後のVrectが増加していることを示す。ΔVrectが「0」であれば、CEの直前のVrectに対して、直後のVrectが増減していないことを示す。ΔVrectが「-」であればCEの直前のVrectに対して、直後のVrectが減少していることを示す。
【0075】
また、511が示す再Calibrationの項目は、CE509およびΔVrect510に基づいて判定部202が行う判定内容である。再Calibration処理が「必要」であれば、判定部202は再Calibration処理が必要であると判定し、「不要」であれば不要と判定する。
【0076】
例えば、ケース500によれば、受電装置102は送電装置100へ送電電力の低減を要求している(CEは「-」)。その結果、ΔVrectは減少している(Vrectが「-」)。これは想定されている動作であるため、判定部202は再Calibration処理が「不要」と判定する。
【0077】
ケース501によれば、受電装置102は送電装置100へ送電電力の低減を要求している(CEは「-」)。その結果、ΔVrectは変化していない(ΔVrectが「0」)。これは以下の場合に起こりうる。
【0078】
・CEパケットの結果を受けて送電装置100が送電電力を低減させた(ΔVrectは「-」になると予想される)。
【0079】
・さらに、受電装置102が結合係数が大きくなる方向へ移動した。(ΔVrectは「+」になると予想される)。
【0080】
すでに説明したように、これは受電装置102が移動し送電コイル101と受電コイル205との位置関係が変化した(結合係数が変化した)状態であるため、送電装置100が正しく異物検出できない。よって判定部202は再Calibration処理が「必要」と判定する。
【0081】
ケース502によれば、受電装置102は送電装置100へ送電電力の低減を要求している(CEは「-」)。その結果、ΔVrectが増加している(ΔVrectが「+」)。これは以下の場合に起こりうる。
【0082】
・CEパケットの結果を受けて送電装置100が送電電力を低減させた(ΔVrectは「-」になると予想される)。
【0083】
・さらに、受電装置102が結合係数が大きくなる方向へ移動した。(ΔVrectは「+」になると予想される)。
【0084】
これはケース501と同じであるため、判定部202は再Calibration処理が「必要」と判定する。
【0085】
ケース503によれば、受電装置102は送電装置100へ送電電力の維持を要求している(CEは「0」)。その結果、ΔVrectが減少している(ΔVrectが「-」)。これは以下の場合に起こりうる。
【0086】
・CEパケットの結果を受けて送電装置100は送電電力を増減させない(ΔVrectは「0」になると予想される)。
【0087】
・さらに、受電装置102が結合係数が小さくなる方向へ移動した。(ΔVrectは「-」になると予想される)。
【0088】
これは受電装置102が移動し送電コイル101と受電コイル205との位置関係が変化した(結合係数が変化した)状態であるため、判定部202は再Calibration処理が「必要」と判定する。
【0089】
さらに、ケース503は送電電力に影響を及ぼす範囲に異物が載置された場合にも起こりうる。なぜなら、すでに説明したように、異物が載置された場合もΔVrectが「-」になると予想されるからである。
【0090】
ケース504によれば、受電装置102は送電装置100へ送電電力の維持を要求している(CEは「0」)。その結果、ΔVrectは変化していない(ΔVrectが「0」)。これは以下の場合に起こりうる。
【0091】
・CEパケットの結果を受けて送電装置100は送電電力を増減させない(ΔVrectは「0」になると予想される)。
【0092】
・さらに、異物の載置および受電装置102の移動がない(ΔVrectは「0」になると予想される)。
【0093】
この場合、判定部202は再Calibration処理が「不要」と判定する。
【0094】
ケース505によれば、受電装置102は送電装置100へ送電電力の維持を要求している(CEは「0」)。その結果、ΔVrectが増加している(ΔVrectが「+」)。これは以下の場合に起こりうる。
【0095】
・CEパケットの結果を受けて送電装置100は送電電力を増減させない(ΔVrectは「0」になると予想される)。
【0096】
・さらに、受電装置102が結合係数が大きくなる方向へ移動した。(ΔVrectは「+」になると予想される)。
【0097】
これは、受電装置102が移動し送電コイル101と受電コイル205の位置関係が変化した(結合係数が変化した)状態であるため、判定部202は再Calibration処理が「必要」と判定する。
【0098】
ケース506によれば、受電装置102は送電装置100へ送電電力の増加を要求している(CEは「+」)。その結果、ΔVrectが減少している(ΔVrectが「-」)。これは以下の場合に起こりうる。
【0099】
・CEパケットの結果を受けて送電装置100は送電電力を増加させる(ΔVrectは「+」になると予想される)。
【0100】
・さらに、受電装置102が結合係数が小さくなる方向へ移動した。(ΔVrectは「-」になると予想される)。
【0101】
これは、受電装置102が移動し送電コイル101と受電コイル205の位置関係が変化した(結合係数が変化した)状態であるため、判定部202は再Calibration処理が「必要」と判定する。
【0102】
さらに、ケース506は送電電力が影響を及ぼす範囲に異物が載置された場合にも起こりうる。なぜなら、すでに説明したように、異物が載置された場合もΔVrectは「-」になると予想されるからである。
【0103】
ケース507によれば、受電装置102は送電装置100へ送電電力の増加を要求している(CEは「+」)。その結果、ΔVrectが減少している(ΔVrectが「-」)。これは以下の場合に起こりうる。
【0104】
・CEパケットの結果を受けて送電装置100は送電電力を増加させる(ΔVrectは「+」になると予想される)。
【0105】
・さらに、受電装置102が結合係数が小さくなる方向へ移動した。(ΔVrectは「-」になると予想される)。
【0106】
これは、受電装置102が移動し送電コイル101と受電コイル205との位置関係が変化した(結合係数が変化した)状態であるため、判定部202は再Calibration処理が「必要」と判定する。
【0107】
ケース508によれば、受電装置102は送電装置100へ送電電力の増加を要求している(CEは「+」)。その結果、ΔVrectが減少している(ΔVrectが「-」)。これは以下の場合に起こりうる。
【0108】
・CEパケットの結果を受けて送電装置100は送電電力を増加させる(ΔVrectは「+」になると予想される)。
【0109】
・さらに、異物の載置および受電装置102の移動がない(ΔVrectは「0」になると予想される)。
【0110】
この場合、判定部202は再Calibration処理が「不要」と判定する。
【0111】
以上説明したように、受電装置102はCEパケットで要求する送電電力の調整に関する情報と、CEパケットの送信の前後のVrectの測定値とに基づいて再Calibration処理が必要かどうかを判定することができる。その結果、
図4のフロー及び
図3のシーケンスに基づいて再Calibration処理を行い、送電装置100を正しく異物検出ができる状態とすることができる。
【0112】
さらに、送電装置100が、送電電力が影響を及ぼす範囲に異物が載置されていないにも関わらず異物が載置されていると判定すること、いわゆる誤検出を行ってしまい送電を停止してしまうことを低減することができる。従って、ユーザの使用感を損なわず、快適な使用を実現することができる。また、送電装置100が、送電電力が影響を及ぼす範囲に異物が載置されているにもかかわらず異物を検出できず、異物が発熱するという事態を防止することができる。
【0113】
なお、
図5において、CE509は「+」「0」「-」であるとして説明したが、「0」に関してはある程度の幅を持たせてもよい。つまり「+ xより大」「+x から-x」「-xより小」であっても同様の効果が得られる。ここでxは任意の値でよい。
【0114】
同様にΔVrect510は「+」「0」「-」であるとして説明したが、「0」に関してはある程度の幅を持たせてもよい。つまり「+yより大」「+y から-y」「-yより小」であっても同様の効果が得られる。ここでyは任意の値でよい。すなわち、電圧値の差が所定範囲内である場合、電圧値の増減がないと判定してもよい。
【0115】
また、
図3のフローチャート、及び
図4のシーケンスで示される処理の少なくとも一部がハードウェアにより実現されてもよい。ハードウェアにより実現する場合、例えば、所定のコンパイラを用いることで、各ステップを実現するためのプログラムからFPGA上に自動的に専用回路を生成すればよい。FPGAとは、Field Programmable Gate Arrayの略である。また、FPGAと同様にしてGate Array回路を形成し、ハードウェアとして実現するようにしてもよい。
【0116】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0117】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。
【符号の説明】
【0118】
102:受電装置、201:制御部、202:判定部、203:整流部、204:通信部、205:受電コイル、207:バッテリ、208:メモリ、209:充電部、211:電圧制御部