(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】建設作業管理システムおよび自動巡回移動体
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20240614BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
G06Q50/08
G01C21/26 A
(21)【出願番号】P 2020059791
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】久保田 善経
(72)【発明者】
【氏名】篠田 二郎
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-027817(JP,A)
【文献】特開2019-008431(JP,A)
【文献】特開2020-038631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G05D 1/00- 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動巡回移動体を用いて建設現場における作業進捗を管理する建設作業管理システムであって、
前記自動巡回移動体は、
前記建設現場の作業進捗状態を示す作業進捗データを取得する進捗データ取得部と、
前回の巡回時に取得した前記作業進捗データである地図データと、前記建設現場内の巡回経路を示す経路データとを取得する巡回データ取得部と、
前記作業進捗データ、前記地図データおよび前記経路データに基づいて、前記自動巡回移動体を移動させる移動制御部と、
今回の巡回時に取得した作業進捗データを用いて、前記建設現場の最新の状態を前記地図データに反映させ、前記地図データを更新する地図データ更新部と、
前記地図データの更新があった場合、
更新された前記地図データを用いて、前記今回の巡回時に前記作業進捗データの取得が可能だった領域をより短時間で巡回できる経路を算出し、前記
経路データを更新する経路データ更新部と、
を備えることを特徴とする建設作業管理システム。
【請求項2】
前記地図データ更新部は、
前記前回の巡回時に取得した作業進捗データと
前記今回の巡回時に取得した作業進捗データとの差分がある箇所について、前記今回の巡回時に取得した作業進捗データを前記地図データとする、
ことを特徴とする請求項1記載の建設作業管理システム。
【請求項3】
前記進捗データ取得部は、前記建設現場の3次元点群データを取得するレーザスキャナにより前記作業進捗データを取得する、
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の建設作業管理システム。
【請求項4】
建設現場における作業進捗を管理する建設作業管理システムで用いる自動巡回移動体であって、
前記建設現場の作業進捗状態を示す作業進捗データを取得する進捗データ取得部と、
前回の巡回時に取得した前記作業進捗データである地図データと、前記建設現場内の巡回経路を示す経路データとを取得する巡回データ取得部と、
前記作業進捗データ、前記地図データおよび前記経路データに基づいて、前記自動巡回移動体を移動させる移動制御部と、
今回の巡回時に取得した作業進捗データを用いて、前記建設現場の最新の状態を前記地図データに反映させ、前記地図データを更新する地図データ更新部と、
前記地図データの更新があった場合、
更新された前記地図データを用いて、前記今回の巡回時に前記作業進捗データの取得が可能だった領域をより短時間で巡回できる経路を算出し、前記
経路データを更新する経路データ更新部と、
を備えることを特徴とする自動巡回移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場における作業進捗を管理する建設作業管理システムおよび自動巡回移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地図データやGPS等を用いて自律的に移動可能な自動巡回移動体を用いて、建設現場における作業状態の監視を行う技術が開発されている。
例えば下記特許文献1は、移動体を用いて構造物の状態を点検する際の作業効率を向上させることを目的としており、構造物点検システムは、回転翼機を用いて構造物の状態を点検する。回転翼機は、構造物の状態を検出する検出部と、移動用動力を発生する駆動部と、駆動部を駆動するエネルギーを蓄積するエネルギー蓄積部と、エネルギー蓄積部のエネルギー蓄積率を監視する制御部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動巡回移動体を用いた作業監視を行う場合、効率的な移動を行うためにも監視領域(建設現場内)に予め巡回経路を設定することが多い。一方で、建設現場では日々様々な作業が行われており、巡回経路の変更の必要が頻繁に生じる。このような巡回経路の変更を毎回建設現場の作業者等が行うのは、作業者等の負担が大きくなり、建設現場の作業効率が低下するという課題がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、自動巡回移動体を用いて建設現場における作業状態の監視を行う際の作業効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明にかかる建設作業管理システムは、自動巡回移動体を用いて建設現場における作業進捗を管理する建設作業管理システムであって、前記自動巡回移動体は、前記建設現場の作業進捗状態を示す作業進捗データを取得する進捗データ取得部と、前記建設現場の地図データと、前記建設現場内の巡回経路を示す経路データとを取得する巡回データ取得部と、前記作業進捗データ、前記地図データおよび前記経路データに基づいて、前記自動巡回移動体を移動させる移動制御部と、前記進捗データ取得部により取得された前記作業進捗データに基づいて、前記地図データを更新する地図データ更新部と、前記地図データの更新があった場合、前記巡回経路データを更新する経路データ更新部と、を備えることを特徴とする。
また、本発明にかかる自動巡回移動体は、建設現場における作業進捗を管理する建設作業管理システムで用いる自動巡回移動体であって、前記建設現場の作業進捗状態を示す作業進捗データを取得する進捗データ取得部と、前記建設現場の地図データと、前記建設現場内の巡回経路を示す経路データとを取得する巡回データ取得部と、前記作業進捗データ、前記地図データおよび前記経路データに基づいて、前記自動巡回移動体を移動させる移動制御部と、前記進捗データ取得部により取得された前記作業進捗データに基づいて、前記地図データを更新する地図データ更新部と、前記地図データの更新があった場合、前記巡回経路データを更新する経路データ更新部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、自動巡回移動体を用いて建設現場における作業状態の監視を行う際の作業効率を向上させることにある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態にかかる建設作業管理システムの概要構成を示す図である。
【
図2】建設作業管理システムの機能的構成を示すブロック図である。
【
図3】自動巡回移動体による自動巡回時の処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】自動巡回移動体による自動巡回を模式的に示す図である。
【
図5】自動巡回移動体による自動巡回を模式的に示す図である。
【
図6】自動巡回移動体による自動巡回を模式的に示す図である。
【
図7】自動巡回移動体による自動巡回を模式的に示す図である。
【
図8】自動巡回移動体による自動巡回を模式的に示す図である。
【
図9】自動巡回移動体による自動巡回を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる建設作業管理システムおよび自動巡回移動体の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0009】
図1は、実施の形態にかかる建設作業管理システムの概要構成を示す図である。
建設作業管理システム10は、建設現場における作業進捗を管理する。建設現場とは、ビルやマンション、倉庫などの建築建設現場であってもよいし、ダムや橋、トンネルなどの土木建設現場であってもよい。
建設作業管理システム10は、作業進捗管理装置として機能するコンピュータ12および自動巡回移動体14(14A,14B)を備える。
【0010】
コンピュータ12は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、他の装置との通信を行う通信部、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを備えている。
【0011】
コンピュータ12は、例えば建設現場の管理棟など建設現場の近傍に設置されてもよいし、建設工事を請け負う事業者の事業所やクラウド事業者が運営するデータセンターなど建設現場から離れた場所に設置されてもよい。
図1では、コンピュータ12をデスクトップ型パソコンとして図示しているが、ノートパソコンやタブレット端末等であってもよい。
【0012】
コンピュータ12は、例えば自動巡回移動体14によって取得した作業進捗データに基づいて建設現場における作業進捗を推定する。
本実施の形態では、作業進捗データが3次元点群データであるため、コンピュータ12は、例えば前回巡回時に取得された3次元点群データと今回巡回時に取得された3次元点群データとの差分に基づいて、前回から今回までの作業進捗箇所を抽出する。この作業進捗箇所を、コンピュータ12のディスプレイ12A上に表示して、作業管理者や作業者が建設現場における作業進捗を確認することが可能である。
【0013】
また、コンピュータ12は、例えば建設現場における建設対象物の3次元設計データであるBIM(Building Information Modeling)モデルを用いて、3次元点群データとBIMモデルとを比較することにより、実際の建設物と設計データとの違いを抽出したり、建設作業が予定通りに進捗しているかを確認するようにしてもよい。
【0014】
自動巡回移動体14(14A,14B)は、レーザスキャナ18を搭載し、建設現場を自動巡回する。自動巡回移動体14は、例えば建設現場内を巡回する巡回経路が設定されており、後述する地図データを確認しながら、所定のスキャン地点においてレーザスキャナ18で周囲をスキャンし、建設現場内の3次元点群データを取得する。
自動巡回移動体14は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、他の装置との通信を行う通信部等を備えている。
【0015】
図1では、自動巡回移動体14の一例としてドローン14Aと台車ロボット14Bとを図示しているが、自律的に移動できる機器であれば従来公知の様々な機器を自動巡回移動体14として利用することができる。例えば高所作業の頻度が高い建設現場(または建設現場のうち高所作業を実施する箇所)ではドローン14Aを用い、その他の現場では台車ロボット14Bを用いる、など使い分けをしてもよい。
【0016】
レーザスキャナ18(3次元レーザースキャナ)は、計測対象物にレーザを放射状に照射し、レーザの反射時間から求められる計測対象までの距離と照射角度に基づいて計測対象物の表面形状の3次元座標を取得する。レーザスキャナ18の性能にもよるが、毎秒数万点程度の速度で非接触により計測し、高密度で面的な点群データを得ることができる。
また、レーザスキャナ18に内蔵されたカメラによって計測箇所で画像を撮影し、画像の色やレーザの反射強度(計測対象の材質や色によって変化するレーザの反射具合)に応じて点群データを着色することもできる。
また、1か所からでは計測ができない計測対象の裏側や広範囲なエリアでも、複数のスキャンデータ間でターゲットを共通点にして合成したり、座標付けをすることができる。
【0017】
図2は、建設作業管理システムの機能的構成を示すブロック図であり、特に自動巡回移動体14の機能的構成について示している。
自動巡回移動体14は、上記CPUが上記制御プログラムを実行することにより、進捗データ取得部140、巡回データ取得部142、移動制御部144、地図データ更新部146、経路データ更新部148として機能する。
また、コンピュータ12の記憶領域(ストレージ)であるEEPROMには、作業進捗データ120および巡回データ122が記憶されている。なお、これらのデータの記憶場所はコンピュータ12内に限らず、コンピュータ12がアクセス可能な外部ストレージ等であってもよい。
【0018】
進捗データ取得部140は、建設現場の作業進捗状態を示す作業進捗データを取得する。
本実施の形態では、作業進捗データは3次元点群データであり、進捗データ取得部140は、レーザスキャナ18により作業進捗データを取得する。
なお、作業進捗データとして、例えば建設現場の画像データを取得するようにしてもよい。この場合、自動巡回移動体14にカメラ(例えば全方位カメラ)を搭載し、自動巡回移動体14が移動しながら建設現場内の画像を撮影する。
【0019】
巡回データ取得部142は、建設現場の地図データと、建設現場内の巡回経路を示す経路データとを取得する。本実施の形態では、地図データと経路データとを合わせて巡回データという。
地図データは、建設現場の3次元形状を示す。本実施の形態では、前回の巡回時にレーザスキャナ18で取得した3次元点群データを地図データとして用いる。
経路データは、例えば地図データ上に定義されており、また、後述するように、経路データには、巡回経路上の経由地点(ウェイポイント)が設定されている。経由地点は、例えば巡回経路上の所定距離毎に設定されていてもよいし、経路上で方向転換をする点としてもよい。
【0020】
巡回データ取得部142は、例えば今回の巡回開始前にコンピュータ12に記憶された巡回データ122を読み出す。この時、巡回エリア内の全ての巡回データを読み出してもよいし、一部の巡回データ(直近の巡回エリアを含んだ巡回データ)のみを読み出し、巡回中に適宜コンピュータ12に接続し、必要な巡回データを順次読み出すようにしてもよい。
【0021】
移動制御部144は、作業進捗データ、地図データおよび経路データに基づいて、自動巡回移動体14を移動させる。
上述のように、本実施の形態では、地図データは前回の巡回時にレーザスキャナ18で取得した3次元点群データである。移動制御部144は、今回の巡回中に取得した作業進捗データを地図データと照合し、自動巡回移動体14の現在位置を推定する。そして、地図データ上に定義された経路データに沿うように自動巡回移動体14の移動方向を制御する。
なお、3次元点群データと共に、建設現場内に設置されたビーコンやGPSなどを用いて、より高精度に自動巡回移動体14の位置を検出するようにしてもよい。
【0022】
地図データ更新部146は、進捗データ取得部140により取得された作業進捗データに基づいて、地図データを更新する。
地図データ更新部146は、例えば前回の巡回時に取得した作業進捗データと今回の巡回時に取得した作業進捗データとの差分がある箇所について、今回の巡回時に取得した作業進捗データを地図データとする。すなわち、前回巡回時の3次元点群データ(現在の地図データ)と今回巡回時の3次元点群データとの差分がある箇所は、前回巡回時以降の作業によって、建設現場の状態が変化した箇所である。地図データ更新部146は、今回巡回時の3次元点群データを用いて、建設現場の最新の状態を地図データに反映させる。
【0023】
より詳細には、地図データ更新部146は、建設現場上の同一領域に対応する3次元点群データ同士を比較して、一定距離(閾値)以内に対応する相手の点がいるか否かを判断し、対応する点がない場合に差分のあると判断する。この差分が、前回巡回時以降に行われた作業により変化した箇所、すなわち作業進捗箇所に対応する。
なお、差分が生じる箇所としては、例えば新しい部材が追加された箇所(例えばフロア内に内壁が追加された場合など)の他、例えば部材が撤去された箇所(例えば作業用足場を利用した作業が完了し、足場が撤去された場合など)や部材が変更された箇所などが挙げられる。
【0024】
経路データ更新部148は、地図データの更新があった場合、巡回経路データを更新する。経路データ更新部は、例えば今回の巡回時に作業進捗データの取得が可能だった領域を最短時間で移動可能な経路を更新後の巡回経路とする。すなわち、建設現場の状況が変化した結果、今まで通過していた箇所を通過できない場合や、より短時間に建設現場内を巡回可能な経路を利用できるようになった可能性がある。経路データ更新部148は、地図データの更新に合わせて、現時点での最適な経路を算出する。
なお、地図データの更新があった場合でも、例えば高所の形状のみが変化した場合などは、経路の変更がない場合も考えられる。
【0025】
図3は、自動巡回移動体による自動巡回時の処理手順を示すフローチャートである。
なお、本フローチャートの前提として、以下の条件が成立しているものとする。
1)前回の巡回により更新済みの巡回データを取得可能である。
自動巡回の初回は、手動で巡回データを用意する必要がある。
2)巡回データは、建設現場の監視対象エリアを網羅している。
安全上、未知のエリアを許可なく巡回させることはない。
3)自動巡回移動体14は、地図データまたは3次元点群データに基づいて、進行方向に自装置が通過できる空間(幅)があるか否かを判別可能である。
4)今回巡回時における建設現場の状況と、前回巡回時における建設現場の状況は、一定程度の共通部分がある。
前回巡回時から建設現場の状況が極端に異なる場合は有効に動作しない可能性がある。
5)自動巡回移動体14の電力は、巡回終了まで確保されている。
6)下記の各ステップの処理は負荷が大きいと考えられるので、途中処理が間に合わない場合には、自動巡回移動体14をその場で停止させ、処理が終了するまで待機する。
【0026】
まず、自動巡回移動体14の巡回データ取得部142は、コンピュータ12から巡回データ(地図データ+経路データ)を取得する(ステップS300)。上述のように、監視対象エリア内の全ての巡回データを読み出してもよいし、一部の巡回データ(直近の巡回領域を含んだ巡回データ)のみを読み出し、巡回中に適宜コンピュータ12に接続し、必要な巡回データを順次読み出すようにしてもよい。
【0027】
自動巡回移動体14は、最初の目標地点を、巡回経路上に設定された最初の経由地点に設定する(ステップS302)。そして、自動巡回移動体14は、レーザスキャナ18により建設現場内の3次元点群データを取得しながら、監視対象エリアを自動巡回する(ステップS304)。すなわち、進捗データ取得部140が建設現場の作業進捗データ(3次元点群データ)を取得するとともに、移動制御部144が3次元点群データと地図データとを照合し、現在位置を把握しながら経路データに沿って自動巡回移動体14を移動させる。
なお、進捗データ取得部140で取得した3次元点群データは、随時コンピュータ12に送信してもよいし、巡回が終了してからまとめてコンピュータ12に送信してもよい。
【0028】
また、地図データ更新部146は、進捗データ取得部140が取得した3次元点群データと地図データとを比較して、地図データ上の各点が計測(3次元点群データを取得)できているかを判断する。そして、監視対象エリアを、計測済みエリアと、未計測エリアと、計測不可エリアとに分類する(ステップS306)。
計測済みエリアとは、障害物などに阻害されずに計測を行うことができたエリアである。未計測エリアとは、監視対象エリア内でまだ計測ができていない(自動巡回移動体14が到達していない)エリアである。また、計測不可エリアとは、前回巡回時には計測できていたが今回巡回時には例えば障害物等の影響により計測できないエリアである。
【0029】
また、地図データ更新部146は、以下のような地点を「新規経由地点候補」として記録する(ステップS308)。
新規経由地点候補A:部屋への入口(計測済みエリアと未計測エリアとの境界、かつ自動巡回移動体14が通過可能な箇所)
新規経由地点候補B:未開拓エリアの入口(レーザスキャナ18のレーザが届かない未計測エリアとの境界。まだ奥に進める可能性がある。なお、自動巡回移動体14が移動することにより、現在の新規経由地点候補Bより先のエリアまで計測できるようになった場合には、新規経由地点候補Bを奥方向(現在の未計測エリアとの境界)に再設定する)
【0030】
移動制御部144は、巡回経路上の経由地点に到達できたか否かを判断し(ステップS310)、経由地点に到達できた場合には(ステップS310:Yes)、当該経由地点を通過済み経由地点としてマークする(ステップS312)。監視対象エリア内に未通過の経由地点が残っている場合は(ステップS314:Yes)、次の経由地点を目標地点に設定し(ステップS316)、ステップS304に戻り以降の処理を繰り返す。
【0031】
一方、ステップS310で経由地点に到達できない場合(ステップS310:No)、移動制御部144は、計測済みエリア内にある最寄りの経由地点(新規経由地点候補を含む)に目標地点を設定し(ステップS318)、ステップS304に戻り以降の処理を繰り返す。すなわち、計測済みエリア内(安全に到達できる範囲)にある経由地点にひとまず移動して、計測済みエリアを広げていく。
【0032】
また、ステップS314で未通過の経由地点が残っていない場合は(ステップS314:No)、全ての経由地点について、「通過済み」または「到達不可(計測不可エリア内)であることを確認済み」のいずれかの状態となっている。すなわち、計測を行える箇所は全て巡回したということになる。
【0033】
巡回が終了すると、移動制御部144は、自動巡回移動体14を巡回開始地点に移動させ(ステップS320)、地図データ更新部146は、今回巡回時に得られた3次元点群データを用いて地図データを更新する。また、経路データ更新部148は、更新された地図データを用いて、現時点における計測済みエリア(未計測エリアを除く領域)をより短時間で巡回できる経路を算出し、経路データを更新し(ステップS322)、本フローチャートの処理を終了する。
【0034】
図4は、自動巡回移動体による自動巡回を模式的に示す図である。
図4では、自動巡回移動体14が床面を移動する台車ロボット14Bであるものとする。
図4(A)は、前回巡回時の監視対象エリアNを示す。監視対象エリアN内には、計測を阻害する部材がほとんどない。巡回経路は、巡回開始地点Sから経由地点P1~P10を順次経由し、巡回終了地点Gに至る経路となっている。自動巡回移動体14が巡回終了地点Gに到達した後は、巡回開始地点Sへと戻る。
【0035】
図4(B)は、今回巡回時の監視対象エリアNを示す。監視対象エリアN内には、経由地点P1,P2,P5を含む領域を囲う壁Wおよび出入口Dが設置され、部屋Rが形成されている。また、経由地点P10付近に建設資材Mが置かれ、床面を走行できなくなっている。
このような場合の自動巡回移動体14の巡回方法について、
図5~
図9を参照して説明する。
【0036】
図5~
図9において、監視対象エリアN内のグレー部分は未計測エリア、白部分は計測済みエリアを示す。
また、黒丸は未通過の経由地点(前回から設定されている巡回経路上の経由地点または今回の巡回で設定される新規経由地点候補)、網掛けの丸は通過済み経由地点を示す。
また、自動巡回移動体14の移動経路を示す矢印のうち、点線矢印は当該図における移動経路、実線矢印(または実線)は既に通過した経路を示すものとする。
【0037】
まず
図5(A)に示すように、自動巡回移動体14は、前回と同様の巡回経路に従って移動しようとして、巡回開始地点Sから経由地点P1へ向かおうとする(
図3のS302,S304に対応。以下、ステップ数のみ記載する)。しかし、壁Wにぶつかって止まってしまう。一方で、巡回開始地点Sから壁Wへの移動中のスキャンにより出入口Dを見つけ、出入口Dを新規経由地点候補P’1(上記新規経由地点候補A、部屋への入口)として記録する(S308)。
【0038】
また、図の上側の領域(巡回終了地点Gや建設資材Mが置かれている側)への移動が可能そう(まだ奥に行けそう)なので、当該方向に新規経由地点候補P’3,P’4,P’5(新規経由地点候補B、未開拓エリアの入口)として記録する(S308)。
現在の状態は経由地点まで到達できていない状態なので(S310:No)、自動巡回移動体14は、次の目標地点を計測済みエリア内の最寄りの経由地点(新規経由地点候補を含む)に設定する(S318)。
図5(A)の例では、最寄りの経由地点は新規経由地点候補P’1なので次の目的地をP’1に設定し、P’1まで移動する。
【0039】
図5(B)に示すように、自動巡回移動体14が新規経由地点候補P’1に向かう間のスキャンにより、先に設定した新規経由地点候補P’3,P’4,P’5が計測済みエリアに入る(S302,S304,S306)。一方で、図の上側の領域への更なる移動が可能そうなので、新規経由地点候補P’3,P’4,P’5の位置を更に図の上側(自動巡回移動体14から見て奥側)に再設定する(S308)。
自動巡回移動体14が新規経由地点候補P’1まで到達すると(S310:Yes)、P’1を通過済み経由地点としてマークし(S312)、次の目標地点として最寄りの経由地点を設定する(S316)。P’1からは経由地点P2とP3が略等距離であるが、ここでは経由地点P2に向かうものとする。
【0040】
図5(C)に示すように、自動巡回移動体14は、スキャンを行いながら経由地点P2へ向かう(S304,S306)。
図5(C)では、新規経由地点候補は発見できない(ステップS308)。
自動巡回移動体14が経由地点P2に到達すると(S310:Yes)、移動制御部144は、経由地点P2を通過済み経由地点としてマークし(S312)、次の目標地点を選定する。既存の巡回経路上では(移動方向は逆ではあるが)、経由地点P2は経由地点P1との経路がつながっているので、次の目標地点は経由地点P1とする(S316)。
【0041】
図5(D)に示すように、自動巡回移動体14は、スキャンを行いながら経由地点P1へ向かう(S304,S306)。
図5(D)では、新規経由地点候補は発見できない(ステップS308)。
自動巡回移動体14が経由地点P1に到達すると(S310:Yes)、移動制御部144は、経由地点P1を通過済み経由地点としてマークし(S312)、次の目標地点を選定する。既存の巡回経路上では(移動方向は逆ではあるが)、経由地点P1は巡回開始地点Sとつながっているが、巡回開始地点Sは巡回開始時に通過済みである。このため、計測済みエリア中の最寄りの未通過経由地点であるP5を目標地点とする(S316)。この時の移動経路として、まずP5に一番近い通過済み経由地点であるP2に向かう。
【0042】
図6(E)に示すように、自動巡回移動体14は、スキャンを行いながら経由地点P2へ向かう(S304,S306)。
図6(E)では、新規経由地点候補は発見できない(S308)。
自動巡回移動体14が経由地点P2に到達すると、更に経由地点P5に向かって移動する。
【0043】
図6(F)に示すように、自動巡回移動体14は、スキャンを行いながら経由地点P5へ向かう(S304,S306)。
図6(F)では、新規経由地点候補は発見できない(ステップS308)。
自動巡回移動体14が経由地点P5に到達すると(S310:Yes)、移動制御部144は、経由地点P5を通過済み経由地点としてマークし(S312)、次の目標地点を選定する。既存の巡回経路上で経由地点P5に接続するのは経由地点P4と経由地点P6である。経由地点P4は移動方向は逆ではあるが未通過かつ計測済みエリア内にあり、経由地点P6は計測済みエリア内にないので、経由地点P4を目標地点とする(S316)。
【0044】
図6(G)に示すように、自動巡回移動体14は、スキャンを行いながら経由地点P4へ向かう(S304,S306)。しかし、壁Wにぶつかって止まってしまい、経由地点P4に到達することができない(S310:No)。このため、移動制御部144は、次の目標地点として、計測済みエリアの中で最寄りの未通過経由地点であるP3を選択する(ステップS318)。この時の移動経路として、これまでの進行経路を逆方向に進み、経由地点P3に一番近い通過済み経由地点であるP’1へ移動した上で経由地点P3に移動する。
【0045】
図6(H)に示すように、自動巡回移動体14は、スキャンを行いながら経由地点P’1へ向かう(S304,S306)。
図6(H)では、新規経由地点候補は発見できない(ステップS308)。
自動巡回移動体14が経由地点P1に到達すると、更に経由地点P3に向かって移動する。
【0046】
図7(I)に示すように、自動巡回移動体14は、スキャンを行いながら経由地点P3へ向かう(S304,S306)。この時、先に設定した新規経由地点候補P’3,P’4が計測済みエリアに入るため削除する(S308)。
自動巡回移動体14が経由地点P3に到達すると(S310:Yes)、移動制御部144は、経由地点P3を通過済み経由地点としてマークし(S312)、次の目標地点を選定する。既存の巡回経路上で経由地点P3に接続するのは経由地点P4なので、経由地点P4を目標地点とする(S316)。
【0047】
図7(J)に示すように、自動巡回移動体14は、スキャンを行いながら経由地点P4へ向かう(S304,S306)。この時のスキャンにより、図の上側の領域への更なる移動が可能と判断し、新規経由地点候補P’6,P’7を設定する(S308)。
自動巡回移動体14が経由地点P4まで到達すると(S310:Yes)、移動制御部144は、経由地点P4を通過済み経由地点としてマークし(S312)、次の目標地点を設定する。既存の巡回経路における次の経由地点であるP5は既に通過済みなので、最寄りの未通過経由地点であるP7を目標地点として設定する(S316)。
【0048】
図7(K)に示すように、自動巡回移動体14が経由地点P7に向かう間のスキャンにより、先に設定した新規経由地点候補P’5,P’6,P’7が計測済みエリアに入る(S302,S304,S306)。一方で、図の上側の領域への更なる移動が可能そうなので、新規経由地点候補P’5,P’6,P’7の位置を更に図の上側(自動巡回移動体14から見て奥側)に再設定する(S308)。
自動巡回移動体14が経由地点P7まで到達すると(S310:Yes)、P7を通過済み経由地点としてマークし(S312)、次の目標地点として既存の巡回経路通りに経由地点P8を設定する(S316)。
【0049】
図7(L)に示すように、自動巡回移動体14が経由地点P8に向かう間のスキャンにより、先に設定した新規経由地点候補P’6,P’7が計測済みエリアに入る(S302,S304,S306)。一方で、図の左側の領域への更なる移動が可能そうなので、新規経由地点候補P’6,P’7の位置を図の左側に再設定する(S308)。
自動巡回移動体14が経由地点P8まで到達すると(S310:Yes)、移動制御部144は、P8を通過済み経由地点としてマークし(S312)、次の目標地点を設定する。既存の巡回経路に沿うと次の経由地点はP9であるが、経由地点P9は未計測エリア内にあるので、計測済みエリア内にある最寄りの未通過経由地点である巡回終了地点Gを目標地点に設定する(S316)。
【0050】
図8(M)に示すように、自動巡回移動体14が巡回終了地点Gに向かう間のスキャンにより、先に設定した新規経由地点候補P’5,P’6,P’7が計測済みエリアに入る(S302,S304,S306)。新規経由地点候補P’5,P’6については、図の左側の領域への更なる移動が可能そうなので、その位置を図の左側に再設定する(S308)。一方、新規経由地点候補P’7の近傍には、建設資材M(障害物)があり、これより奥には到達できなそうなので、このエリアは計測不可エリア(網掛け領域)として設定し(ステップ306)、新規経由地点候補P’7は消去する。
自動巡回移動体14が巡回終了地点Gまで到達すると(S310:Yes)、移動制御部144は、Gを通過済み経由地点としてマークし(S312)、次の目標地点を設定する。既存の巡回経路において巡回終了地点Gに接続する経由地点はP10であるが、経由地点P10は計測不可エリア内にあるので、計測済みエリア内にある最寄りの未通過経由地点であるP’6を目標地点に設定する(S316)。
【0051】
図8(N)に示すように、自動巡回移動体14が未通過経由地点P’6に向かう間のスキャンにより、先に設定した新規経由地点候補P’5が計測済みエリアに入る(S302,S304,S306)。一方で、図の左側の領域への更なる移動が可能そうなので、図の左側の領域に新規経由地点候補P’7,P’8,P’9を設定する(S308)。
自動巡回移動体14が未通過経由地点P’6に到達すると(S310:Yes)、移動制御部144は、P’6を通過済み経由地点としてマークし(S312)、次の目標地点を設定として計測済みエリア内にある最寄りの未通過経由地点であるP9を目標地点に設定する(S316)。
【0052】
図8(O)に示すように、自動巡回移動体14が未通過経由地点P9に向かう間のスキャンにより、先に設定した新規経由地点候補P’7,P’8,P’9が計測済みエリアに入ったため削除する(S302,S304,S306)。そして、その先は壁であり更なる移動は不可能そうなので、新規経由地点候補は設定しない(S308)。
自動巡回移動体14が経由地点P9に到達すると(S310:Yes)、移動制御部144は、P9を通過済み経由地点としてマークし(S312)、次の目標地点を設定として計測済みエリア内にある最寄りの未通過経由地点であるP6を目標地点に設定する(S316)。
【0053】
図8(P)に示すように、自動巡回移動体14は、スキャンを行いながら経由地点P6へ向かう(S304,S306)。
図8(P)では、新規経由地点候補は発見できない(ステップS308)。
自動巡回移動体14が経由地点6に到達すると(S310:Yes)、移動制御部144は、経由地点P6を通過済み経由地点としてマークする(S312)。
これにより、計測不可エリア以外の未通過経由地点がなくなるため(ステップS314:No)、移動制御部144は、巡回開始地点Sに自動巡回移動体14を戻す。
すなわち、
図8(Q)に示すように、部屋R内以外の経由地点を行きと反対方向に進むことにより、自動巡回移動体14が巡回開始地点Sに戻るようにする。
【0054】
その後、地図データ更新部146は、今回取得した3次元点群データに基づいて地図データを更新する。また、経路データ更新部148は、更新された地図データに基づいて巡回経路を更新する。例えば
図8(Q)の点線で囲った部分は冗長部分として削除して、これ以外の経路を次回からの巡回経路として保存する。
【0055】
以上説明したように、実施の形態にかかる建設作業管理システム10は、自動巡回移動体14が巡回時に取得した作業進捗データに基づいて建設現場内の地図データを更新し、これに基づいて適宜経路を変更するので、建設現場の最新の状態を巡回経路に反映させることができる。
また、建設現場の作業者が巡回経路の変更を行うのと比較して、作業者の負担を軽減し、建設現場の作業効率を向上させる上で有利となる。
また、自動巡回移動体14は、作業進捗データとして取得する3次元点群データを用いて自装置の現在位置を把握することができるので、例えば建設現場内にビーコンを設置する必要がなく、建設工事にかかるコストを低減することができる。また、GPSと異なり、例えば厚い壁に囲まれた構造物や地下構造物などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 建設作業管理システム
12 コンピュータ
120 作業進捗データ
122 巡回データ
14 自動巡回移動体
140 進捗データ取得部
142 巡回データ取得部
144 移動制御部
146 地図データ更新部
148 経路データ更新部
18 レーザスキャナ