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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】生分解性ラミネート紙及び包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20240614BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20240614BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240614BHJP
   B65D 65/46 20060101ALI20240614BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/10
B32B27/30 102
B65D65/46
B65D65/40 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020062754
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160155
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】望月 敦史
(72)【発明者】
【氏名】林 慎
(72)【発明者】
【氏名】福田 周平
【審査官】橋本 憲一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-069766(JP,A)
【文献】特開2019-181943(JP,A)
【文献】特開2008-221811(JP,A)
【文献】特開2011-184599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
C09J 1/00-5/10
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、紙基材の片面又は両面に積層された生分解性樹脂層とからなり、
前記生分解性樹脂層は、生分解性ヒートシール層と、生分解性接着層と、生分解性酸素バリア層とを有し、かつ前記生分解性酸素バリア層の両面に前記生分解性接着層を介して前記生分解性ヒートシール層が積層されており、
前記生分解性ヒートシール層は、ポリ乳酸と脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂とが、質量比で80/20~10/90の割合で含有してなり、
前記生分解性酸素バリア層は、厚みが5μm以上であり、ブテンジオールビニルアルコール共重合体を含むことを特徴とする生分解性ラミネート紙。
【請求項2】
紙基材と、紙基材の片面又は両面に積層された生分解性樹脂層とからなり、
前記生分解性樹脂層は、生分解性ヒートシール層と、生分解性接着層と、生分解性酸素バリア層とを有し、かつ前記生分解性酸素バリア層の両面に前記生分解性接着層を介して前記生分解性ヒートシール層が積層されており、
前記生分解性ヒートシール層は、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステル系樹脂とが、質量比で50/50~10/90の割合で含有してなり、
前記生分解性酸素バリア層は、厚みが5μm以上であり、ブテンジオールビニルアルコール共重合体を含むことを特徴とする生分解性ラミネート紙。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載の生分解性ラミネート紙を用いてなることを特徴とする包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙と生分解性樹脂層とを積層してなる生分解性ラミネート紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックごみによる海洋汚染などの問題に注目が集まっている。プラスチック材料の多くは高機能と長期安定性を目的に開発されたため、自然環境下では容易に分解されず、プラスチック材料の廃棄物の増大が大きな社会問題となっており、環境配慮型の商品開発が加速している。プラスチック廃棄問題の対策として、例えば、環境負荷の少ない材料に替えることでプラスチック材料の使用量を減らしプラスチック廃棄量を軽減する「脱プラ」の取り組みが行われている。環境負荷の少ない材料とは、紙などの天然素材を加工した材料、廃棄後にプラスチック材料自体が加水分解と微生物によって二酸化炭素と水といった無害な成分に分解される生分解性樹脂、石油を用いない生物由来のバイオマスプラスチックなどが知られている。その中でも、原材料が再生でき廃棄後に分解可能な点から紙製品が注目されている。
【0003】
紙製品の中で食品をはじめとした様々な製品を包装する容器などの包装材において、防湿性、耐油性、ヒートシール性(熱接着性ともいう)等といった用途に応じた性能を付与する狙いから、熱可塑性樹脂と紙とを貼り合せたラミネート紙が用いられている。このラミネート紙に使用される熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂等が知られている。包装材にはヒートシール性を必要とする用途が多く、例えば、特許文献1には、表面層としてヒートシール性を有する熱可塑性樹脂を用いた包装用の積層体が開示されている。
【0004】
一方で、熱可塑性樹脂として生分解性樹脂を使用したラミネート紙が知られている。生分解性樹脂としては、例えば、ポリ乳酸(PLA)を中心に、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール等の合成化合物、キトサン、セルロース、澱粉、酢酸セルロース、澱粉などの天然物を変性したもの、バクテリアやカビ、藻類などの微生物が代謝の過程で体内に蓄積したポリエステルを利用したもの等が知られている。
しかしながら、ポリ乳酸等の生分解性樹脂を包装材に用いた場合、ヒートシール性を有するが、ポリエチレン等のポリオレフィン系やポリエステル系に比べ酸素の透過を抑制する性能、すなわち酸素バリア性が低く、酸素の存在下で劣化する製品への包装材には適さず、使用用途が制限されるものであった。そこで、生分解性でありながら、酸素バリア性とヒートシール性とを兼ね備えた包装材が求められていた。
【0005】
酸素バリア性を付与したラミネート紙としては、例えば、特許文献2には、紙コア層上にポリビニルアルコールと微小な層状珪酸塩からなる酸素バリア層と熱可塑性樹脂層とを積層させた食品用積層包装材が提案されている。
【0006】
特許文献2に開示された食品用積層包装材は、酸素バリア層を備えており、生分解性と酸素バリア性に優れた包装材である。しかしながら、酸素バリア層にはポリビニルアルコールを用いているが、ケン化度が高く溶融成形できないため紙コア層上に直接酸素バリア層を形成しており、そこへ熱可塑性樹脂を溶融押出して熱可塑性樹脂層と酸素バリア層とを接着剤を介さず貼り合わせている。熱可塑性樹脂がポリ乳酸の場合、ポリビニルアルコールとの密着性が悪いため使用時に熱可塑性樹脂層と酸素バリア層とが剥離してしまうなど包装材としては十分な特性が得られない。また、酸素バリア層を形成するポリビニルアルコールは比較的硬い樹脂であり、当該硬い酸素バリア層と紙とが接するようにラミネートされることも相まって、その硬さの影響から包装材への加工時や使用時の折り曲げ操作を行った際に酸素バリア層に亀裂が生じ、酸素バリア性が低下する虞があった。
【0007】
これまで、包装材への加工時や使用時の折り曲げ操作における酸素バリア性の低下を抑えることの検討がなされておらず、生分解性でありながら、酸素バリア性とヒートシール性とを兼ね備え、包装材に適したラミネート紙とするにはまだ改良の余地があった。
【0008】
さらに、包装材としては、樹脂層が向かい合わせになるように2枚重ねて、上から指で押さえ水平方向において左右に動かした際に容易に動く、いわゆる表面のすべり性が必要である。そして、生分解性樹脂の種類によっては表面のすべり性に劣るものがあり、例えば、袋状に成形した際、袋の口がブロッキングを起こし開きにくくなり、包装材として用いることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平11-198289号公報
【文献】特開2008-105709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、紙基材と生分解性樹脂層とを有する生分解性の積層体であって、酸素バリア性とヒートシール性とを兼ね備え、包装材への加工時や使用時の折り曲げ操作による酸素バリア性の低下が抑えられ、加えて、表面のすべり性をも有する包装材に適した生分解性ラミネート紙及び包装材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その手段としては、
紙基材と、紙基材の片面又は両面に積層された生分解性樹脂層とからなるラミネート紙であり、
前記生分解性樹脂層は、生分解性ヒートシール層と、生分解性接着層と、生分解性酸素バリア層とを有し、かつ前記生分解性酸素バリア層の両面に前記生分解性接着層を介して前記生分解性ヒートシール層が積層されており、
前記生分解性ヒートシール層は、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステル系樹脂及び/又は脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂とを含み、
前記生分解性酸素バリア層は、ブテンジオールビニルアルコール共重合体を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の生分解性ヒートシール層は、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステル系樹脂とが、質量比で50/50~10/90の割合で含有してなることが好ましい。
【0013】
本発明の生分解性ヒートシール層は、ポリ乳酸と脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂とが、質量比で80/20~10/90の割合で含有してなることが好ましい。
【0014】
本発明の生分解性ラミネート紙は、包装材として用いることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、紙基材と生分解性樹脂層とを有する生分解性の積層体であって、酸素バリア性とヒートシール性とを兼ね備え、包装材への加工時や使用時の折り曲げ操作による酸素バリア性の低下が抑えられ、加えて、表面のすべり性をも有する包装材に適した生分解性ラミネート紙が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施態様を説明する図である。
図2】本発明の他の実施態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を用いて本発明の実施態様を説明する。なお、本発明は図面に示されるものだけに限定されない。
【0018】
図1に示すように、本発明は、紙基材2と、紙基材2の片面又は両面に積層された生分解性樹脂層3とからなる生分解性ラミネート紙1である。
【0019】
まず、本発明の生分解性樹脂層3について説明する。
本発明の生分解性樹脂層3は、生分解性ヒートシール層3aと、生分解性接着層3bと、生分解性酸素バリア層3cとを有し、これらすべての樹脂層が生分解性である。
生分解性樹脂層3の全体厚みは、用途によって適宜設定されればよい。例えば、包装材として用いる場合は、50μm以下が好ましく、特に30μm以下がより好ましい。また、厚みが薄すぎると強度や剛性などが低下してしまうことや製膜が困難となることから、15μm以上は必要である。
【0020】
本発明の生分解性ヒートシール層3a(単にヒートシール層という場合もある)は、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステル系樹脂及び/又は脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂を含む。
【0021】
ポリ乳酸(PLA)としては、乳酸構造単位を主成分とし、L-乳酸、D-乳酸、またはその環状2量体であるL-ラクタイド、D-ラクタイド、DL-ラクタイドを原料とする重合体が使用できる。これら乳酸類の単独重合体であることが好ましいが、乳酸類以外の共重合成分を含有するものであってもよい。かかる共重合成分としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオールなどを挙げることができる。なお、ここでいう主成分とは、乳酸構造単位が90モル%以上を含む場合とする。
また、通常、ポリ乳酸中にはL体とD体とが共存しているが、その含有比率を調整したポリ乳酸が市販されている。本発明では、ポリ乳酸100質量%に対して、D体の含有量が1質量%以上のものを使用することが好ましい。D体の含有量が多いほどポリ乳酸の融点は低くなるため、後述する通り本発明の生分解性樹脂層3を溶融押出しによって紙基材2上に形成して紙基材2と生分解性樹脂層3とを貼り合わせる際に、紙基材2とポリ乳酸を含むヒートシール層3aとの層間の密着性に優れるものとなる。また、包装材として使用する際に、ヒートシール温度を低く設定できるのでヒートシールが容易となる。
【0022】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂としては、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの重合縮合物を主成分とするものが使用できる。
脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などを挙げることができ、通常、炭素数が4~12のものが用いられ、特に炭素数が4~8であるものが生分解性の点で好ましく用いられる。これらは、単独で用いることもできるが、所望の特性を得るために複数のものを組み合わせて用いることも可能である。
また、脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、1,8-オクチレングリコール、ナノメチレングリコール、デカメチレングリコールなどを挙げることができ、通常、炭素数が2~10ものが用いられ、特に2~6であるものが生分解性の点で好ましく用いられる。脂肪族ジオールの場合も、脂肪族ジカルボン酸と同様、これら例示のものなどを単独で用いても、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
また、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとともに乳酸などの他の構成単位を共重合したものも使用できる。なお、ここでいう主成分とは、脂肪族ポリエステル構造単位が90モル%以上を含む場合とする。
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂としては、紙との密着性に優れるという点でポリブチレンサクシネート(PBS)を用いることが好ましい。
【0023】
本発明の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂としては、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの重合縮合物を主成分とするものが使用できる。
脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールは前述した脂肪族ポリエステル系樹脂で挙げたものが用いられる。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等などが用いられる。
なお、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂としては、芳香族ジカルボン酸単位の含有量は、脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位の全量100モル%に対し、10モル%以上80モル%以下であることが好ましい。
また、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジオールとともに乳酸などの他の構成単位を共重合したものも使用できる。なお、ここでいう主成分とは、脂肪族芳香族ポリエステル構造単位が90モル%以上を含む場合とする。
本発明の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂としては、柔軟性とヒートシール性に優れるという点でポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を用いることが好ましい。
【0024】
本発明では、脂肪族ポリエステル系樹脂と脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂とを併用してもよい。
【0025】
本発明の生分解性ヒートシール層3aは、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステル系樹脂を含む。
ポリ乳酸を含有せず脂肪族ポリエステル系樹脂単体の場合、ヒートシール温度を高くしないと後述する本発明のヒートシール性が得られ難い。
そこで、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステル系樹脂とは、質量比で50/50~10/90の割合で含有してなることが好ましい。
また、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステル系樹脂とが質量比で100/0~60/40の割合で含有していると、樹脂が硬いため、包装材への加工時や使用時の折り曲げ操作により生分解性酸素バリア層3cに亀裂が入り、酸素バリア性が低下してしまう虞がある。
【0026】
本発明の生分解性ヒートシール層3aは、ポリ乳酸と脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂を含む。
ポリ乳酸を含有せず脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂単体の場合、表面のすべり性に劣る。
本発明において、表面のすべり性とは、得られたラミネート紙1を生分解性樹脂層3が向かい合わせになるように2枚重ねて、上から指で押さえ水平方向において左右に動かした際に容易に動くかどうかで評価される。容易に動かない、すなわち、表面のすべり性に劣ると、袋状に成形した際、袋の口がブロッキングを起こし開きにくくなり、いわゆる口開き性が得られず、包装材として用いることが難しい。そのため、本発明の生分解性ラミネート紙を包装材として用いるためには、表面のすべり性を有することが必要である。
そこで、ポリ乳酸と脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂とが、質量比で80/20~10/90の割合で含有してなることが好ましい。
また、ポリ乳酸と脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂とが質量比で100/0~90/10の割合で含有していると、樹脂が硬いため、包装材への加工時や使用時の折り曲げ操作により生分解性酸素バリア層3cに亀裂が入り、酸素バリア性が低下してしまう虞がある。
【0027】
本発明の生分解性ヒートシール層3aには、無機フィラーを添加してもよい。無機フィラーを添加することで、水蒸気バリア性や生分解性などを向上させることができる。
無機フィラーとしては、無水シリカ、雲母、タルク、マイカ、クレイ、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、チタン酸カリウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、カオリン、カオリナイト、ガラス、石灰石、カーボン、ワラステナイト、焼成パーライト、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム等の珪酸塩、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸第二鉄、酸化亜鉛、酸化鉄、リン酸アルミニウム、硫酸バリウム等の塩類等が挙げられ、好ましくはタルク、マイカ、或いはクレイ、炭酸カルシウム、ゼオライトである。また、無機フィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
無機フィラーの形状としては、繊維状、粉粒状、板状、針状のものが挙げられ、中でも板状フィラーが好ましい。板状フィラーとしては、タルク、カオリン、マイカ、クレイ、セリサイト、ガラスフレーク、合成ハイドロタルサイト、各種金属箔、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、板状酸化鉄、板状炭酸カルシウム、板状水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0029】
本発明の生分解性ヒートシール層3aへの無機フィラーの含有量は特に限定されないが、紙基材2と生分解性ヒートシール層3aとの層間密着性及びヒートシール性を損ねない程度とする。生分解性ヒートシール層3aに含まれる無機フィラーの含有量は、15質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0030】
本発明の生分解性ヒートシール層3aには、ヒートシール性及び紙基材2との密着性を阻害しない限り、その他の添加剤を含有してもよい。
例えば、相溶化剤、帯電防止剤、結晶核剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、充填剤などが挙げられる。
【0031】
本発明の生分解性接着層3bは、本発明の生分解性ヒートシール層3aと後述する生分解性バリア層3cとを接着させるための層であり、変性ポリエステル系樹脂を含む。
変性ポリエステル系樹脂とは、上述した脂肪族ポリエステル系樹脂、又は脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂を構成する脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールと、ヒドロキシカルボン酸とから選ばれる少なくともひとつの構造単位を含む重合縮合体であるポリエステル系樹脂を、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその無水物によりグラフト変性して得られるもので、生分解性を有する。
なお、生分解性接着層3bに含まれる変性ポリエステル系樹脂の含有量は50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。
【0032】
ここで、ヒドロキシカルボン酸としては、ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、グリコール酸、2-ヒドロキシ-n-酪酸、2-ヒドロキシカプロン酸、6-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸等、又はこれらの低級アルキルエステル若しくは分子内エステル等の誘導体が挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、乳酸又はグリコール酸或いはその誘導体である。これらヒドロキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
【0033】
本発明において、α、β-不飽和カルボン酸またはその無水物としては、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸などのα、β-不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラス酸、テトラヒドロフタル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のα,β-や不飽和ジカルボン酸などが挙げられ、好ましくはα、β-不飽和ジカルボン酸が用いられる。
なお、これらのα、β-不飽和カルボン酸化合物は、1種を単独で用いる場合に限らず、2種以上を併用してもよい。
【0034】
その中でも、変性ポリエステル系樹脂としては、生分解性が高く、接着層として使用する場合の加工成形性や密着性の観点から、脂肪族ポリエステル系樹脂及び/又は脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂のみを変性したもの(変性脂肪族ポリエステル系樹脂または変性脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂という)から構成されることが好ましい。
さらに、変性ポリエステル系樹脂が、変性脂肪族ポリエステル系樹脂及び変性脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂の両方を含む場合に、後述する溶融押出しによって本発明の生分解性樹脂層3を形成しやすくより好ましい。
この場合、変性脂肪族ポリエステル系樹脂と変性脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂の存在割合は、変性脂肪族ポリエステル系樹脂と変性脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂の合計100質量%中に変性脂肪族ポリエステル系樹脂を15~50質量%、変性脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂を50~85質量%含むことが、生分解性と加工性の観点から好ましい。
【0035】
なお、本発明の生分解性接着層3bには、接着性を損なわない範囲で変性ポリエステル系樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。例えば、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、セルロースエステル、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)などの脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)などの脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂などが挙げられる。
【0036】
本発明の生分解性接着層3bの厚みは、目的とする密着性を得るためには3μm以上が好ましい。
なお、本発明の目的とする密着性とは、生分解性ヒートシール層3aと生分解性接着層3bとの層間において、引張試験機(オリエンテック社製、商品名「テンシロンRTA-1T」)を用いて、引張速度300mm/分で180度剥離の条件下で測定した接着強度が5N/15mm以上である。
【0037】
本発明の生分解性酸素バリア層3cは、酸素の透過を抑制するための層で、ブテンジオールビニルアルコール共重合体(BVOH)を含む。
このBVOHは、後述する溶融押出しによって本発明の生分解性樹脂層3を形成することができる。
【0038】
本発明のブテンジオールビニルアルコール共重合体(BVOH)は、ビニルエステル系単量体を共重合して得られるポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られる、ビニルアルコール構造単位を主体とするポリビニルアルコール(PVA)系樹脂に、後反応によって官能基が導入された変性PVA系樹脂であり、側鎖に1,2-ジオール構造を有する。
かかる変性PVA系樹脂中の後反応によって導入された官能基の含有量は、通常、1~20モル%であり、特に2~10モル%の範囲が好ましく用いられる。
BVOHとしては、例えば市販されている三菱ケミカル社製の商品名「G-Polymer BVE8049P」などが使用できる。
【0039】
ここで、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂は、一般的にケン化度が低すぎると、酸素バリア性が低下する傾向にある。一方で、包装材にはケン化度が高いもの、具体的にはJIS K6726に準拠して測定された値で80~100モル%のものが用いられている。このようなPVA系樹脂には延伸性がなく、包装材への加工時や使用時の折り曲げ操作を行った際に酸素バリア層に亀裂が生じやすくなる。加えて、PVA系樹脂はケン化度が高いと溶融成形ができないことから、コーティング等によって基材に直接形成されるものであり、溶融押出しによって積層体とする生分解性バリア層3cに用いることは困難である。
また、ビニルアルコール構造単位を有するものとしてよく知られている、ビニルアルコール構造単位とエチレン構造単位との共重合体であるエチレン―ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、酸素バリア性を有するが生分解性が無く、本発明の生分解性バリア層3cには使用できない。
【0040】
生分解性酸素バリア層3cに含まれるBVOHの含有量は70質量%以上であり、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。かかる含有量が少なすぎると、酸素の透過を抑制する性能、すなわち酸素バリア性が不充分となる傾向がある。
【0041】
生分解性酸素バリア層3cには、バリア性を損なわない範囲でBVOH以外の樹脂を含有してもよい。例えば、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、セルロースエステル、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)などの脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)などの脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂などが挙げられる。
【0042】
本発明の生分解性酸素バリア層3cの厚みは、5μm以上が好ましい。5μm以上あれば、酸素バリア性に優れる。
ここで、酸素バリア性の指標として酸素透過度が用いられる。酸素透過度は、JIS K7126に準拠し、23度×50%RHの条件下で、酸素透過率測定装置(MOCON社製、商品名「OX-TRAN2/22L」)を用いて測定される値である。本発明では生分解性樹脂層3としての酸素透過度が5cc/m・day・atm以下を酸素バリア性に優れるものとし、より好ましくは、1cc/m・day・atm以下である。
【0043】
本発明の生分解性樹脂層3は、生分解性酸素バリア層3cの両面に生分解性接着層3bを介して生分解性ヒートシール層3aが積層されている。つまり、生分解性ヒートシール層3a/生分解性接着層3b/生分解性酸素バリア層3c/生分解性接着層3b/生分解性ヒートシール層3aの順で積層されたものである。
このように、生分解性酸素バリア層3cが生分解性接着層3b及び生分解性ヒートシール層3aで挟まれた状態で存在しているため、包装材への加工時や使用時の折り曲げ操作により生分解性酸素バリア層3cに亀裂が発生することを抑えることができ、長期に渡って酸素バリア性を維持することができる。
また、本発明の生分解性ラミネート紙1を紙基材2側が外表面となるよう袋状として使用した場合に、当該紙基材2側で水などが触れてしまっても、紙基材2から生分解性酸素バリア層3cまでの間に生分解性ヒートシール層3aと生分解性接着層3bがあるために、紙基材2側から袋内部への水などの染みこみを防ぐことができ耐水性にも優れる。
【0044】
本発明の生分解性樹脂層3において、各層の厚み及び層比についても用途によって適宜設定すればよいが、目的の酸素バリア性と層間密着性を得るためにはバリア層5μm以上、接着層3μm以上が望ましい。
【0045】
次いで、本発明の紙基材2について説明する。
本発明の紙基材2としては、通常使用されているものであれば特に限定されないが、例えば、クラフト紙、上質紙、色上質紙、フォーム用紙、純白ロール紙、板紙、ダンボール、等を用いることができる。またアート紙、コート紙等の塗工紙やその他特殊紙に関しても使用可能であるが、合成高分子を主な素材とする合成紙等を使用すると、本発明の目的である積層体全体が生分解性を有することを阻害することとなるので選定が必要となる。
紙基紙2の厚みとしては特に制限するものではなく、使用用途に合わせて適宜設定すればよい。
【0046】
図1では、紙基材2の片面に生分解性樹脂層3を積層した例を示したが、図2に示すように、両面に生分解性樹脂層3を積層してもよいし、片面に本発明の生分解性樹脂層3、他面に異なる生分解性樹脂層を積層したものでもよい。
異なる生分解性樹脂層としては、生分解性を有するものであればよく、例えば上述したポリ乳酸、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂を1種又は2種以上含む樹脂層を用いることができ、一層でもよく複数積層してもよい。
【0047】
本発明の生分解性ラミネート紙1の製造方法について説明する。
一般的に紙基材と樹脂との貼り合わせに用いられる方法であればよい。例えば、予め生分解性樹脂層3を溶融押出しで3種5層の積層体を形成し、その後紙基材2と貼り合わせる方法がある。その際、生分解性樹脂層3が完全に硬化せず溶融状態のときに紙基材2と貼り合わせても良く、生分解性樹脂層3が完全に固化後に熱ロールに挟んで圧着することもできる。
【0048】
本発明の生分解性ラミネート紙1は、紙基材2と生分解性樹脂層3とを有する生分解性の積層体であって、酸素バリア性とヒートシール性とを兼ね備え、包装材への加工時や使用時の折り曲げ操作による酸素バリア性の低下が抑えられ、加えて、表面のすべり性をも有する、包装材に適した生分解性ラミネート紙であり、生分解性ヒートシール層3aと生分解性接着層3bとの層間及び紙基材2と生分解性樹脂層3との層間の密着性に優れるものが好ましい。
【0049】
生分解性ヒートシール層3aと生分解性接着層3bとの層間密着性は、接着強度によって評価される。接着強度は、本発明の3種5層の生分解性樹脂層3からなる試験片(幅15mm)を使用し、引張試験機(オリエンテック社製、商品名「テンシロンRTA-1T」)を用いて測定され、生分解性ヒートシール層3aとそれ以外の4層(3b/3c/3b/3a)とをそれぞれクリップで掴み、引張速度300mm/分、180度で剥離したときの強さである。本発明では、接着強度が5N/15mm以上のものを密着性に優れるものとする。
【0050】
また、紙基材2と生分解性樹脂層3との層間密着性については、本発明の生分解性ラミネート紙1からなる試験片(幅15mm)を使用し、張試験機(オリエンテック社製、商品名「テンシロンRTA-1T」)を用いて、紙基材2と生分解性樹脂層3とをそれぞれクリップで掴み、引張速度100mm/分、180度で剥離したときの状態によって評価される。本発明では、紙基材2が全面的に生分解性樹脂層3へ転写した状態のものを密着性に優れるものとする。
【0051】
酸素バリア性については、上述した通り、酸素透過度で評価される。酸素透過度は、JIS K7126に準拠し、23度×50%RHの条件下で、酸素透過率測定装置(MOCON社製、商品名「OX-TRAN2/22L」)を用いて測定できる。本発明では生分解性樹脂層3としての酸素透過度が5cc/m・day・atm以下のとき酸素バリア性を有するものとし、1cc/m・day・atm以下のときは優れるものである。
【0052】
また、包装材への加工時や使用時の折り曲げ操作による酸素バリア性については、試験片を直角四つ折りにした後の酸素透過率を上述と同様にして評価すればよい。
【0053】
本発明のヒートシール性については、ヒートシール後の接着強度によって評価される。具体的には、10cm幅に切り出した本発明の生分解性ラミネート紙1を2枚準備し、生分解性樹脂層3が向かい合わせになるように重ねてヒートシールテスター(テスター産業社製、商品名「TP-701-B」)にセットし、一定温度、圧力0.1MPa、加熱時間3秒の条件下で熱接着加工(ヒートシール)する。ヒートシール後、生分解性ラミネート紙同士の層間における接着強度をJISZ0238に準拠して測定する。このとき、幅15mmの試験片を使用し、引張試験機(オリエンテック社製、商品名「テンシロンRTA-1T」)を用いて、生分解性ラミネート紙1それぞれをクリップで掴み、引張速度300mm/分、180度で剥離したときの強さ(極大点荷重)を測定する。本発明では、接着強度が6N/15mm以上のときヒートシール性を有するものとし、15N/15mm以上のときは優れるものである。
本発明では、ヒートシール温度が90℃以下と低温でも接着強度6N/15mm以上が得られるものをヒートシール性に優れるものとする。
【0054】
本発明の生分解性ラミネート紙は、様々な用途に用いることができ、中でも包装材に好適である。その理由として、ヒートシール性や酸素バリア性を兼ね備えたものであり、包装材への加工時や使用時の折り曲げ操作による酸素バリア性の低下が抑えられ、加えて、表面のすべり性をも有することが挙げられる。そのため、折り曲げ加工が必要なスタンディングパウチへの利用も可能となる。
【0055】
本発明の生分解性ラミネート紙1は、生分解性の素材で構成されているため、廃棄後は加水分解と微生物によって二酸化炭素と水といった無害な成分に分解される。廃棄処理として、例えばコンポストや埋め立てが可能である。
【実施例
【0056】
〔実施例1~3、5~7、参考例4,8
表1に示すように、220℃設定のTダイ押出機を用いてヒートシール層/接着層/バリア層/接着層/ヒートシール層の3種5層を構成する厚さ50μmの樹脂積層体を溶融押出しによって形成した。次いで、得られた樹脂積層体が溶融状態のうちに坪量50g/m2の紙基材と貼り合わせ20℃の金属ロールとゴムロール間で圧着させることで、ラミネート紙を得た。このとき、ヒートシール層は厚さ19μm、接着層は厚さ3μm、バリア層は厚さ6μmであった。
なお、表中の層構造に示す数値は、質量部を示す。
【0057】
参考例9〕
バリア層の厚さを3μm、ヒートシール層を20.5μmとしたこと以外は実施例1~3、5~7、参考例4,8と同様にしてラミネート紙を得た。
【0058】
〔実施例10〕
紙基材の両面に、同じ層構造の樹脂積層体を貼り合わせたこと以外は、実施例1~3、5~7、参考例4,8と同様にしてラミネート紙を得た。
【0059】
〔比較例1~5〕
表2に示すように、220℃設定のTダイ押出機を用いてヒートシール層/接着層/バリア層/接着層/ヒートシール層の3種5層を構成する厚さ50μm樹脂積層体を溶融押出しによって形成した。次いで、得られた樹脂積層体が溶融状態のうちに紙基材と貼り合わせ20℃の金属ロールとゴムロール間で圧着させることで、ラミネート紙を得た。このとき、ヒートシール層は厚さ19μm、接着層は厚さ3μm、バリア層は厚さ6μmであった。
なお、比較例4だけは、接着層、バリア層を含まず厚さ50μmのヒートシール層のみを紙基材と貼り合わせたものとした。
【0060】
〔比較例6〕
表2に示すように、220℃設定のTダイ押出機を用いてヒートシール層/接着層/バリア層の3種3層を構成する樹脂積層体を溶融押出しによって形成した。次いで、得られた樹脂積層体が溶融状態のうちにバリア層と紙基材とが接するようにして紙基材と貼り合わせ20℃の金属ロールとゴムロール間で圧着させることで、ラミネート紙を得た。このとき、ヒートシール層は厚さ19μm、接着層は厚さ3μm、バリア層は厚さ6μmであった。
【0061】
以下、使用した材料を示す。
〔ヒートシール層〕
ポリ乳酸A:
浙江海正生物材料社製、商品名「REVODE190」、D体0.5質量%
ポリ乳酸B:
浙江海正生物材料社製、商品名「REVODE110」、D体2.5質量%
PBS(ポリブチレンサクシネート):
三菱ケミカル社製、商品名「BiOPBSFZ91PB」
PBAT(ポリブチレンアジペートテレフタレート):
BASFジャパン社製、商品名「Ecoflex C1200」
〔接着層〕
変性ポリエステル系樹脂A:
アジピン酸/1,4-ブタンジオール縮重合物(BASF社製「Ecoflex C1200」)100質量部、無水マレイン酸0.1部、ラジカル開始剤として2, 5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルオキシ)ヘキサン(日本油脂社製「パーヘ キサ25B」)0.01質量部をドライブレンドした後、これを二軸押出機にて下記 条件で溶融混練し、ストランド状に押出し、水冷後、ペレタイザーでカットし、円柱 形ペレット形状の極性基を有するポリエステル系樹脂
変性ポリエステル系樹脂B:
三井化学社製、商品名「アドマーSF600」
〔酸素バリア層〕
BVOH(ブテンジオールビニルアルコール共重合体):
三菱ケミカル社製、商品名「G-Polymer BVE8049P」
EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体):
クラレ社製、商品名「エバールF101B」
〔紙基材〕
クラフト紙:坪量50g/m
【0062】
得られた樹脂積層体又はラミネート紙について、以下に示す通り、層間密着性、紙基材との密着性、ヒートシール性、酸素透過度、表面のすべり性及び生分解性の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
なお、比較例4は、接着層及びバリア層を有さず、折り曲げ前の酸素透過率が×評価であったため、層間密着性及び折り曲げ後の酸素透過率の評価は行っていない。また、比較例6は、紙と樹脂積層体との接着性が得られなかったため、ヒートシール性、酸素透過率、表面のすべり性及び生分解性の評価を行うことができず、測定不能とした。
【0063】
〔層間密着性〕
得られた樹脂積層体から15mm幅の短冊状の試験片を切り出し、ヒートシール層とそれ以外の4層(接着層/バリア層/接着層/ヒートシール層)との層間密着性評価した。測定には、引張試験機(オリエンテック社製、商品名「テンシロンRTA-1T」)を使用し、ヒートシール層とそれ以外の4層(接着層/バリア層/接着層/ヒートシール層)とをそれぞれクリップで掴み、引張速度300mm/分、180度で剥離したときの強さを測定し、以下の基準で評価した。また、比較例6は、ヒートシール層とそれ以外の2層(接着層/バリア層)との層間密着性を評価した。

○ 5N/15mm以上
× 5N/15mm未満
【0064】
〔紙との密着性〕
得られたラミネート紙から15mm幅の短冊状の試験片を切り出し、張試験機(オリエンテック社製、商品名「テンシロンRTA-1T」))を用いて、紙基材と樹脂積層体とをそれぞれクリップで掴み、引張速度100mm/分、180度で剥離したときの状態を以下の基準で評価した。

○ 紙基材が全面的に樹脂積層体へ転写
× 樹脂積層体への紙基材の転写なし
【0065】
〔ヒートシール性〕
得られたラミネート紙から幅10cmの試験片を2枚切り出し、樹脂積層体が向かい合わせになるように重ねてヒートシールテスター(テスター産業社製、商品名「TP-701-B」)にセットし、80℃~120℃の範囲で一定温度、圧力0.1MPa、加熱時間3秒の条件下で熱接着加工(ヒートシール)した。ヒートシール後、ラミネート紙同士の層間における接着強度をJISZ0238に準拠して測定した。このとき、幅15mmの試験片を使用し、引張試験機(オリエンテック社製、商品名「テンシロンRTA-1T」))を用いて、ラミネート紙それぞれをクリップで掴み、引張速度300mm/分、180度で剥離したときの強さ(極大点荷重)を測定し、以下の基準で評価した。表1及び2には、接着強度6N/15mm、15N/15mmが得られた各ヒートシール温度を示す。

○ 接着強度6N/15mm以上が得られる加工温度が90℃以下
△ 接着強度6N/15mm以上が得られる加工温度が90℃超過100℃以下
× 接着強度6N/15mm以上が得られる加工温度が100℃超過
【0066】
〔酸素透過率〕
得られた樹脂積層体から幅10.8cm、長さ10.8cmの試験片を切り出し、JIS K7126に準拠し、23度×50%RHの条件下で、酸素透過率測定装置(MOCON社製、商品名「OX-TRAN2/22L」)を用いて酸素透過度を測定し、以下の基準で評価した。このとき、試験片を直角四つ折りにした前後の酸素透過率をそれぞれ測定した。

○ 1cc/m・day・atm以下
△ 1cc/m・day・atm超過、5cc/m2・day・atm以下
× 5cc/m・day・atm超過
【0067】
〔表面のすべり性〕
得られたラミネート紙を樹脂積層体が向かい合わせになるように2枚重ねて、上から指で押さえ水平方向において左右に動かした際の状態を以下の基準で評価した。

○ 容易に動く
× 2枚が同時に動いてしまう
【0068】
〔生分解性〕
得られた樹脂積層体を粉砕した試験材料30gと植種源のコンポストとを容器内で混合したものと、対照材料のセルロースとコンポストとを容器内で混合したものとを、温度58±2℃、湿度50%に保たれた状態で45日間静置し、その後の生分解度をJISK6953-1に準拠して求め、以下の基準で評価した。

○ 生分解度70%以上
× 生分解度70%未満
【0069】

【0070】
【表2】
【0071】
表1に示すように、実施例1~3、5~7では、酸素バリア性とヒートシール性とを兼ね備え、さらに、折り曲げ後でも酸素バリア性を維持でき、表面のすべり性をも有するラミネート紙が得られた。
【0072】
一方、表2に示すように、比較例1は、生分解性樹脂層としてポリ乳酸単独、比較例2は脂肪族ポリエステル単独で用いものであり、折り曲げ後の酸素バリア性やヒートシール性に劣るものであった。
比較例3は、生分解性樹脂層として脂肪族芳香族ポリエステルを単独で用いたものであるが、表面のすべり性が悪く、包装材としては適さないものであった。
生分解性樹脂層として接着層およびバリア層を有さない比較例4では、ヒートシール性を有するものの、酸素バリア性に劣るものであった。
比較例5は、バリア層としてEVOHを用いたものであるが、生分解性が得られなかった。
比較例6は、バリア層と紙基材とを直接貼り合せたものであり、バリア層と紙基材との接着性が得られず、包装材として適さないものであった。
【0073】
このように、本発明は、紙基材と生分解性樹脂層とを有する生分解性の積層体であって、各層間の密着性に優れるとともに、酸素バリア性とヒートシール性とを兼ね備え、さらに、包装材への加工時や使用時の折り曲げ操作による酸素バリア性の低下が抑えられた、包装材に適した生分解性ラミネート紙が得られる。
【符号の説明】
【0074】
1 生分解性ラミネート紙
2 紙基材
3 生分解性樹脂層
3a 生分解性ヒートシール層
3b 生分解性接着層
3c 生分解性酸素バリア層
図1
図2