(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】通信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 5/79 20240101AFI20240614BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20240614BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240614BHJP
【FI】
H04B5/79
H01F38/14
H02J50/10
(21)【出願番号】P 2020092543
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 直人
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-170936(JP,A)
【文献】特開2018-056215(JP,A)
【文献】特開昭62-216536(JP,A)
【文献】特開2019-193505(JP,A)
【文献】特開2019-140466(JP,A)
【文献】特開2019-176692(JP,A)
【文献】特開2019-004531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/79
H04B 5/48
H02J 50/10
H01F 38/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線で送電するための送電コイルが実装された第1の基板と、前記第1の基板の内径の内側に位置する第1の円筒構造とを含んだ第1の部品と、
前記送電コイルから送電された電力を受電する受電コイルが実装された第2の基板と、前記第2の基板の内径の内側に位置し、前記第1の円筒構造と外径の大きさが異なる第2の円筒構造とを含んだ第2の部品と、
を有し、
前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造のうちの外径が小さい第1の構造が、前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造のうちの外径が大きい第2の構造に挿入されることによって、前記第2の部品が前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造の円周方向に回転可能に構成され、
前記第1の構造の外周面に前記第1の部品と前記第2の部品との間の無線通信のための
電極を有する第1の通信用部品が形成されると共に、前記第2の構造の内周面に前記第1の通信用部品との間で無線通信を実行する
電極を有する第2の通信用部品が形成され、かつ、前記第1の通信用部品と前記第2の通信用部品とが、対向すると共に接触しないように配置され
、前記第2の構造の外周面にグランドが配置される、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記第1の基板の中心軸上に前記第1の円筒構造が位置し、前記第2の基板の中心軸上に前記第2の円筒構造が位置する、ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第1の基板の中心軸と前記第1の円筒構造の中心軸が同一であり、前記第2の基板の中心軸と前記第2の円筒構造の中心軸が同一である、ことを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第1の通信用部品と前記第2の通信用部品は、通信カプラであることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信カプラは伝送線路であることを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信カプラは、電磁界通信によりデータを送受信することを特徴とする請求項4又は5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記第1の部品および前記第2の部品は、それぞれ、前記通信装置の外部から入力されたパラレル信号をシリアル信号に変換して送信する送信手段と、前記送信手段によって送信された前記シリアル信号を受信して前記パラレル信号を復元する受信手段とを有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記送信手段は、前記パラレル信号を2値のシリアル信号に変換し、前記受信手段は、当該送信手段によって送信された前記2値のシリアル信号を受信して前記パラレル信号を復元することを特徴とする請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記2値のシリアル信号は差動信号の形式で前記第1の通信用部品と前記第2の通信用部品との間で送受信されることを特徴とする請求項8に記載の通信装置。
【請求項10】
前記第1の通信用部品と前記第2の通信用部品は、それぞれ2つの前記電極を有する、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項11】
前記第1の通信用部品と前記第2の通信用部品は、フレキシブル基板によって形成されることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項12】
前記第1の部品および前記第2の部品は、前記送電コイルと前記受電コイルを用いて電磁誘導方式または磁界共鳴方式によって無線電力伝送を行うように構成されることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項13】
前記通信装置はロボットの回転動作を行う関節に含まれることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項14】
前記通信装置は監視カメラの回転部に含まれることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業用のアームロボットや、監視カメラ等の需要が拡大している。これらの装置では、動作や設置の柔軟性を向上させることや、処理性能の向上のために、回転機構を構成する部品間で無線による電力の供給や通信が行われうる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の回転機構を有する装置は、必ずしも使い勝手がよくないという課題があった。このため、本発明は、構成部品間で無線による通信を行う回転機構を有する装置の利便性を向上させる構成技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による通信装置は、無線で送電するための送電コイルが実装された第1の基板と、前記第1の基板の内径の内側に位置する第1の円筒構造とを含んだ第1の部品と、前記送電コイルから送電された電力を受電する受電コイルが実装された第2の基板と、前記第2の基板の内径の内側に位置し、前記第1の円筒構造と外径の大きさが異なる第2の円筒構造とを含んだ第2の部品と、を有し、前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造のうちの外径が小さい第1の構造が、前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造のうちの外径が大きい第2の構造に挿入されることによって、前記第2の部品が前記第1の円筒構造および前記第2の円筒構造の円周方向に回転可能に構成され、前記第1の構造の外周面に前記第1の部品と前記第2の部品との間の無線通信のための電極を有する第1の通信用部品が形成されると共に、前記第2の構造の内周面に前記第1の通信用部品との間で無線通信を実行する電極を有する第2の通信用部品が形成され、かつ、前記第1の通信用部品と前記第2の通信用部品とが、対向すると共に接触しないように配置され、前記第2の構造の外周面にグランドが配置される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、構成部品間で無線による通信を行う回転機構を有する装置の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】無限回転ユニットの構成例を示すブロック図である。
【
図5】無限回転ユニットの円筒状通信カプラ部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る、アームロボット100の構成例を示す。本実施形態に係るアームロボット100は、複数の関節を含んだ機構111~114とハンド104とを含む。ハンド104にはカメラ103が装着されており、ハンド104とカメラ103とからなるユニットが、回転部102およびハンド固定部101を介して機構114に接続される。機構111~114は、各機構の内部のモータによって所定方向に関節を曲げることによって、ハンド104の位置を制御する。また、回転部102は、ハンド固定部101の内部のモータによって回転し、ハンド104が物品を把持する方向などを制御する。なお、回転部102の回転速度制御、トルク制御は、例えば、ハンド固定部101と回転部102との間に設けられた減速機によって制御される。ここで、アームロボットを用いる環境では、多くの場合、作業時間(タクトタイム)の短縮が要求されるため、アームロボットの先端のハンド部を回転限界なしに回転させて、部品や商品のピックアップを行わせることが想定される。このため、本実施形態では、回転部102は、無限に回転可能に構成される。
【0010】
なお、カメラ103へのパンチルトなどの制御信号や、カメラ103によって撮像されて得られた画像データは、例えば、アームロボット100の外部の不図示のカメラ制御装置との間で送受信される。また、ハンド104の開閉、左右の回転方向、回転速度は、例えば、アームロボット100の外部の不図示の中央制御装置から指示される。なお、アームロボット100のカメラ103やハンド104の動作電源は、例えばアームロボット100の外部の不図示の電源装置から供給される。このように、アームロボット100では、カメラ103やハンド104へ電力を供給すると共に、これらの装置との通信が可能となるように構成される。このとき、カメラ103やハンド104への電源供給やこれらの装置との通信が、回転部102が回転する状態においても実行可能であることが要求される。
【0011】
本実施形態では、回転部102が回転中においても、ハンド104とカメラ103への駆動電力の供給、カメラ103が撮影した撮像データの出力、ハンド104の制御信号の入力などの、電力や信号の送受信を可能とする構造について説明する。なお、アームロボット100の各部位において、今後、小型化、通信の高速化、複数の通信路を有することが要求されうる。また、ハンド104の中心部はモータ、減速機、ハンド部を把持する回転機構部品などを配置するため、大きな空間を必要とすることが想定されうる。また、アームロボット100を制御する際にアームロボット100とその外部との間の通信では主として1000Base-TなどのLAN規格に準拠したパルス振幅変調信号が送受信されることが想定される。これに対して、一定かつ低遅延でこのような信号が伝送されることが要求される。これに対して、本実施形態に係る回転機構は、以下で説明する構成を有することにより、これらの要求を満たす。
【0012】
(無限回転ユニットの構成)
ハンド固定部101と回転部102との間には、回転部102を無限に回転させることを可能にする無限回転ユニット301(
図3参照)が設けられる。なお、無限回転ユニット301は、ハンド固定部101と回転部102との間以外にも、ロボットの回転動作を行う関節に適用可能である。無限回転ユニット301は、回転部102に装着されたハンド104およびカメラ103への駆動電力の供給と、ハンド104を制御する制御信号の送信やカメラ103が撮像した画像データの受信等の通信とを、回転部102が回転中においても可能とする。なお、このような回転部102の回転中の電力伝送及び通信を可能とするために、無線電力伝送による駆動電力の送受電と、電磁界通信による情報の送受信が行われる。なお、無線電力伝送の方式は電磁誘導方式や磁界共鳴方式などが使用されうるが、これらに限られず、非接触で電力を送受電可能な任意の方式が使用されうる。電磁界通信とは、送信アンテナと受信アンテナとの間の電磁界結合を利用して無線で行われる通信である。本実施形態における電磁界結合には、電界結合と磁界結合の両方が含まれる。すなわち、送信アンテナと受信アンテナとの間における無線通信は電界結合によって行われてもよいし、磁界結合によって行われてもよいし、電界結合と磁界結合の両方によって行われてもよい。
【0013】
((無限回転ユニットの電気的構成))
図2に、無限回転ユニット301を備えた通信システムの電気的構成の例を示す。
【0014】
図2の例では、ハンド固定部101から回転部102に電力を無線で伝送する無線電力伝送のために、ハンド固定部101は送電回路部261を有し、回転部102は受電回路部271を有する。送電回路部261では、アームロボット100の外部から供給される電源線が電源入力コネクタ206に接続される。そして、スイッチング回路203が、電源入力コネクタ206において入力されたDC電力(DC電流、DC電圧)を、発振器205から出力された周波数に基づいてAC電力(AC電流、AC電圧)に変換する。なお、スイッチング回路203はAC電力(AC電流、AC電圧)を、無線電力伝送に適した周波数のAC電力(AC電流、AC電圧)に変換してもよい。変換されたAC電力(AC電流、AC電圧)は、送電コイル201に出力され、電磁界を発生させる。これにより、送電回路部261の外部に電力が送出される。回転部102では、送電コイル201から発生した電磁界によって受電コイル202においてAC電力(AC電流、AC電圧)が発生し、そのAC電力(AC電流、AC電圧)は、受電回路部271に入力される。受電回路部271では、入力されたAC電力(AC電流、AC電圧)は、整流回路207においてDC電力(DC電流、DC電圧)に変換され、定電圧回路208によって出力電力が一定となるように調整されて、回転部102の各機能部209に供給される。
【0015】
また、
図2の例では、ハンド固定部101と回転部102との間での、制御信号やデータ信号の送受信のために、ハンド固定部101は通信回路部281を有し、回転部102は通信回路部291を有する。なお、通信規格が1000Base-Tである場合について説明するが、通信規格はこれに限られず、他の通信規格が用いられてもよい。また、ここでは特にカメラ103によって撮像された画像データの送受信のための構成について説明するが、ハンド104の制御のための制御信号の送受信が並行して行われてもよい。また、ハンド104の制御のための制御通信用の回路が別途用意されてもよい。例えば、ハンド104の制御のための制御通信のために、ハンド固定部101と回転部102は、EtherCAT(100Base-T)規格に従って動作する通信回路を有してもよい。なお、EtherCATの場合も、1000Base-Tの場合と同様の構成を用いることができるため、ここでの説明については省略する。
【0016】
ハンド固定部101において、アームロボット100の外部のカメラ制御装置(不図示)と接続される1000Base-Tのケーブルが、RJ45コネクタ229に接続される。この1000Base-Tのケーブルを介して、カメラ103を制御するための信号(例えば、カメラ103に対するパンチルト、ズームなどの制御データ)が入力される。入力された信号は、トランス228を経由して、1000Base-TのPHYチップ227でシリアル化され、送信回路226を介して通信カプラ223により回転部102の通信カプラ224に送信される。なお、PHYは、物理層のことを示す。回転部102では、通信カプラ224を介して受信回路231において信号が受信される。その受信された信号は、1000Base-TのPHYチップ232においてデシリアル化され、トランス233、RJ45コネクタ234を介してカメラ103へと出力される。このようにして、カメラ103は、RJ45コネクタ234を介して制御データを受信することができる。なお、通信カプラは、電磁界結合による無線通信を行うための通信アンテナの一例であり、無線通信を実行可能とする他の通信用部品によって置き換えられてもよい。
【0017】
一方で、カメラ103は、RJ45コネクタ234を介して、撮像により得られた撮像データを回転部102の通信回路部291に入力する。この撮像データは、上述のルートとは逆のルートで、すなわち、RJ45コネクタ234、トランス233、PHYチップ232の順で通信回路部291の内部を伝搬する。そして、撮像データは、PHYチップ232から送信回路230を介して通信カプラ222によって、ハンド固定部101の通信カプラ221に送信される。ハンド固定部101では、通信カプラ221を介して受信回路225において信号が受信される。その受信された信号は、PHYチップ227、トランス228、RJ45コネクタ229を介して、例えばカメラ制御装置に出力される。このようにして、カメラ制御装置は、カメラ103によって撮像された画像に関する撮像データを受信することができる。
【0018】
なお、ハンド固定部101の送信回路226および受信回路225と、回転部102の送信回路230および受信回路231は、差動信号によってデータを送受信する。このため、通信カプラ221~通信カプラ224は、それぞれ、差動信号の+(プラス)信号及び-(マイナス)信号を伝送するための2つの電極によって構成される。なお、通信カプラ221と通信カプラ222の間、通信カプラ223と通信カプラ224の間の通信は電磁界通信により行われるが、カプラの形状は、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路などの伝送線路によって形成される。
【0019】
((無限回転ユニットの機械的構成))
図3(A)及び
図3(B)に、無限回転ユニット301の結合時の外観構成例を示す。
図3(A)は斜視図であり、
図3(B)は側面図である。部品302は、ハンド固定部101側の基板であり、送電回路部261および通信回路部281が部品302に実装される。部品305は、回転部102側の基板であり、受電回路部271および通信回路部291が部品305に実装される。部品303には、ハンド固定部101側の送電コイル201が実装され、部品304には、回転部102側の受電コイル202が実装される。これにより、送電コイル201から受電コイル202に電力が無線で伝送される。なお、部品303と部品304との間は、数ミリメートルのギャップが形成される。無限回転ユニット301の中心部は、円筒状の穴が開いているように構成される。
【0020】
この穴には、アームロボット100の場合、減速機、モータの軸、回転部を把持する機構部品などが配置される。なお、監視カメラ(固定設置されたカメラ)にこの無限回転ユニット301が適用される場合は、この穴に、モータの軸、回転部を把持する機構部品などが配置される。このように、中心部に空洞を設けることにより、様々な機能に関する部品を配置することなどを可能とし、様々な用途でこの無限回転ユニット301を利用することが可能となる。
【0021】
図4に、無限回転ユニット301の分離時の外観構成例を示す。
図4(A)は斜視図であり、
図4(B)は側面図である。無限回転ユニット301は、ハンド固定部101に取り付けられる部品401と、回転部102に取り付けられる部品402とによって構成され、部品401と部品402との間において、無線電力伝送と無線通信とが行われる。本実施形態では、中心部の空間部分の周囲に円筒状に形成された物体に伝送線路の通信カプラが配置(貼付)され、この構成により、ハンド104の制御信号、カメラ103への制御信号、撮像した画像データの通信が行われる。
【0022】
無限回転ユニット301では、相対する部品302および部品305が形成される面に対して垂直方向に延伸する円筒形状の構造(ハンド固定部101側の円筒構造306および回転部102側の円筒構造307)が配置される。なお、円筒構造306は、部品302に接続される(場合によっては一体構造を有する)が、部品303には、部品302を介さずには接触しない構造を有してもよい。また、円筒構造307は、部品305に接続される(場合によっては一体構造を有する)が、部品304には、部品305を介さずには接触しない構造を有する。部品401と部品402とを組み合わせる際に、円筒構造307が円筒構造306の内側に挿入されるように構成されるからである。
【0023】
円筒構造306および円筒構造307は、直円柱構造から、その直円柱構造の底面の円より半径がわずかに短い同心円の底面を有する直円柱状の部分を切り取った管形状を有する。そして、円筒構造307が円筒構造306の内側に挿入される入れ子構造を構成し、部品402が円周方向に回転可能に構成される。なお、これらの関係は逆であってもよく、円筒構造306が円筒構造307の内側に挿入される入れ子構造を構成してもよい。なお、入れ子の内側に配置される円筒構造においては、中心が円柱形状に切り取られる必要はなく、例えば角柱形状など、任意の形状で切り取られれば足りる。ただし、この空間は、各種部品の実装に利用可能な程度に、無限回転ユニット301の大きさに対して十分な大きさで確保される。なお、円筒形状の中心に開いた空間は、部品302~部品305を貫通するように形成される。すなわち、部品302~部品305は、中心が円状に切り取られた円板形状を有する。なお、無限回転を可能とするために、円筒構造306および円筒構造307はスムーズに回転可能な形状を有するべきであるが、部品302~部品305は、円板形状である必要はない。すなわち、部品302~部品305は、少なくとも円筒構造306および円筒構造307の中心に開いている空間が貫通するように切り取られるが、様々な形状を有しうる。
【0024】
各通信カプラの基板は、通信カプラ221および通信カプラ223が円筒構造306に貼り付けられ、通信カプラ222および通信カプラ224が円筒構造307に貼り付けられるように、例えば柔軟に湾曲可能なフレキシブル基板などによって形成される。ただし、これは一例に過ぎず、他の基板によって通信カプラが実装されてもよい。本実施形態では、ハンド固定部101側の円筒構造306の直径と回転部102側の円筒構造307の直径とが異なるように設定し、2つの円筒構造を入れ子構造とすると共に非接触化し、通信カプラ間で無線通信を行うようにする。
【0025】
通信カプラ221および通信カプラ223は、ハンド固定部101側の通信カプラであり、無限回転ユニット301の固定側の部品401の円筒構造306の内側に配置される。一方、通信カプラ222および通信カプラ224は、回転側の部品402の円筒構造307の外側に配置される。なお、
図4では、通信カプラの形状を、伝送線路形状により示している。なお、円筒構造306(外径の大きい方の円筒構造)の、通信カプラが配置されている面の反対側の面には、グランドパターンが配置されてもよい。これにより、無線電力伝送の高調波ノイズの通信カプラへの影響を軽減することができる。なお、円筒構造307(外径の小さい方の円筒構造)の、通信カプラが配置されている面の反対側の面にもグランドパターンが配置されてもよい。これによれば、円筒中心の空間部分に電子回路が配置された場合に、その電子回路の動作と通信カプラによる通信とが干渉することを防ぐことができる。
【0026】
ハンド固定部101側の円筒構造306の外径をr1とし、回転部102側の円筒構造307の外径をr2とすると、
図4では、r1>r2となっている。しかしながら、これは一例に過ぎず、この関係とは逆の関係(すなわちr1<r2)であってもよい。この場合、円筒構造306の外側の面に通信カプラ221および通信カプラ223が形成され、円筒構造307の内側の面に通信カプラ222および通信カプラ224が形成される。なお、円筒構造306の外径サイズと円筒構造307のサイズは、円筒構造307が円筒構造306の内側に挿入された場合に、これらの円筒構造間に間隙が生じるように選択される。このとき、通信カプラ221と通信カプラ222とが(例えば対向しながらも)接触しないように構成される。同様に、通信カプラ223と通信カプラ224とが接触しないように構成される。そして、これらの通信カプラは、相互に非接触で(無線で)通信を行うように構成される。このため、円筒構造306の内径が、少なくとも円筒構造307の外径より大きくなるように設計される。
【0027】
なお、本実施形態では、カメラ103の制御データや撮像データの送受信のための通信カプラの配置について説明した。ここで、ハンド104の制御信号を、上述の通信カプラ221~通信カプラ224を用いて送受信する場合には、上述の構造をそのまま流用することができる。一方、ハンド104の制御信号を別の通信系統を用いて送受信する場合、その通信のための通信カプラが、円筒構造306および円筒構造307にそれぞれ追加されてもよい。この場合、追加の通信カプラが、通信カプラ221および通信カプラ222の上、通信カプラ223および通信カプラ224の下、又は、通信カプラ221および通信カプラ222と通信カプラ223および通信カプラ224との間に配置されうる。
【0028】
図5は、円筒構造306と円筒構造307とが結合され、通信カプラ221と通信カプラ222が通信し、通信カプラ223と通信カプラ224が通信する際の状態を示している。
図5(A)は無限回転ユニット301の断面図であり、
図5(B)は、
図5(A)において破線で囲まれた領域の拡大図である。なお、
図5(A)は、無限回転ユニット301を、円筒構造306および円筒構造307の円筒軸を通る面で切断した場合の例を示しており、
図5(B)は、円筒構造306および円筒構造307の節断面のうち、左側の構成の拡大図である。なお、本実施形態では、各通信カプラは差動信号を伝送するため、それぞれ2本の伝送線路パターンにより構成される。
図5(B)は、通信カプラ221と通信カプラ222との間、および、通信カプラ223と通信カプラ224との間に、数ミリメートル等の所定距離の間隙が設けられている状態を示している。通信カプラ221と通信カプラ222との間、および、通信カプラ223と通信カプラ224との間では、無線通信が行われる。
【0029】
無線電力伝送は、無線電力伝送コイル201を含んだ部品303から、無線電力伝送コイル202を含んだ部品304へ、無線で電力が伝送される。
【0030】
上述のように、無限回転ユニット301のハンド固定部101側の部品401と回転部102側の部品402では、無線電力伝送用のコイル間と無線通信用の通信カプラ間に、所定長(例えば、数ミリメートル)の間隙が設けられる。ここで、部品303と部品304との間の距離と各通信カプラ間の距離は、回転部102が回転しても変化しない。このため、回転部102が回転しても、無線電力伝送及び無線通信が途切れないようにすることができる。そして、部品401と部品402との間はケーブルなどで接続されていないため、無線電力伝送及び無線通信が行われている間に、回転部102を無限に回転させ続けることができる。さらに、円筒構造306および円筒構造307の中心部が大きく開いているため、減速機、モータ、把持機構部品などをその中心部の空間に配置することができる。このため、装置の設計自由度を向上させることができる。
【0031】
(SerDes部の説明)
図2に示す、ハンド固定部101における通信回路部281のPHYチップ227と、回転部102における通信回路部291のPHYチップ232は、1000Base-Tのフロントエンドの信号を、無線化可能な2値の信号に変換する。1000Base-Tのフロントエンド信号(ハンド固定部101および回転部102のRJ45コネクタより外側の通信路の伝送信号)は、パルス振幅変調(PAM5)が使用され、かつエコーキャンセラが使用されて、双方向同時通信が行われる。1000Base-Tの通信規格に準拠した通信を無線化する際には、多くの場合、Wi-Fi(登録商標)等にプロトコルを変換して通信が行われる。しかしながら、Wi-Fi(登録商標)は遅延量が大きく、かつ一定遅延で通信することができない。このため、ループバック制御を行うアームロボット100の制御などには、一般的には適しない。
【0032】
本実施形態では、1000Base-Tの通信規格を透過的に電磁界通信で無線化することにより、低遅延かつ一定遅延で通信を行うことを可能とする。ここで、通信カプラ221~通信カプラ224は、「0」と「1」の2値の信号を伝送する。このため、パルス振幅変調が採用されており、双方向通信を行う1000Base-Tのフロントエンド信号(通信路の伝送信号)は、2値の信号に変換される。通常、1000Base-T対応のPHYチップは、MAC(媒体アクセス制御)と接続して、アクセスポイントなどを構成する。これに対して、本実施形態では、1000Base-T対応のPHYチップの、通常はMACとの接続に使用される2値のインターフェース(SGMII)出力を通信カプラに接続して、無線化を行う。
【0033】
ハンド固定部101側は、4本のPAM5信号(パラレル信号)の1000Base-Tのフロントエンド信号(通信路の伝送信号)を、2値のシリアル信号(SGMII)に変換する。なお、SGMIIは、serial gigabit media-independent interfaceの頭字語である。本実施形態における通信カプラは差動信号で通信するため、SGMII信号が差動信号に変換される。PHYチップからの出力が差動信号の場合、そのまま通信カプラに接続されてもよい。回転部102側は、ハンド固定部101の通信カプラ223から送信されたシリアル信号を通信カプラ224で受信し、PHYチップ232のSGMII端子に入力する。PHYチップ232は、入力された2値のシリアル信号を4本のPAM5信号の1000Base-Tのフロントエンド信号(通信路の伝送信号)にデシリアライズして出力する。このようにシリアライザ、デシリアライザを用いることにより、4本のPAM5信号の1000Base-Tのフロントエンド信号を、一定かつ低遅延で透過的に無線信号として送受信することが可能となる。なお、1000Base-X対応のPHYチップを使用してメディア変換することもできる。
【0034】
図6は、通信回路部281および通信回路部291の一部の構成例を示す。アームロボット100の外部から、1000Base-Tの通信規格の通信線がRJ45コネクタ229およびトランス228を介して1000Base-TのPHYチップ227に接続される。この通信線で伝送される信号は、パルス振幅変調された信号である。PHYチップ227は、外部からの受信信号を復調して、この信号をSGMII規格に準拠するプラスとマイナスの2値の差動信号に変換(シリアライズ)して出力する。この2値の信号は、通信カプラ221および通信カプラ222を介して、通信回路部291のPHYチップ232に入力される。PHYチップ232は、PHYチップ227とは逆の処理(デシリアライズ)を実行する。すなわち、PHYチップ232は、SGMII信号をPAM5信号に復調し、RJ45コネクタ229およびトランス228を介して入力された信号を復元する。なお、通信回路部291のRJ45コネクタ234およびトランス233を介して入力された信号が通信回路部281へ送信される場合は、PHYチップ232が信号をシリアライズして2値の差動信号を通信カプラ222へ出力する。そして、通信回路部281のPHYチップ227は、通信カプラ221を介して受信した信号を、パルス振幅変調された信号の形式にデシリアライズして、RJ45コネクタ234およびトランス233を介して入力された信号を再生する。これにより、1000Base-Tのフロントエンド信号を、一定遅延かつ低遅延で透過的に無線信号として送受信することが可能となる。
【0035】
なお、本実施形態では、アームロボットの例について説明したが、様々な分野の製品に対して、上述の構造を適用可能である。例えば、監視カメラなどの回転動作機構を有する機器へ、以下で説明する構造を適用することが想定されうる。監視カメラの用途では、撮影を高い柔軟性で実行するために、カメラ部が回転限界なしに回転して、画像をキャプチャし、インフラネットワークに接続されているサーバに送信することが要求されうる。また、センサの高機能化が進み、撮像画像の高画質化が進んでおり、さらに、筐体の小型化も要求される。これらの要求を満たすために、本実施形態に係る回転機構(無限回転ユニット)を用いて、カメラ部に供給する電力、通信線を無線化し、かつ、コンパクトに実現することができる。
【0036】
以上のように、本実施形態に係る無限回転ユニット301は、中心部に大きな空間を有すると共に相互に外径が異なる2つの円筒構造を入れ子構造とし、内側の円筒構造の外周面と外側の円筒構造の内周面に通信カプラを配置する。なお、このときに、外側の円筒構造に配置される通信カプラと内側の円筒構造に配置される通信カプラとが、対向すると共に所定距離の間隙が設けられるように配置される。これにより、中心部に大きな空間を有しながら、高速な通信を可能な、無限回転機構を形成することができる。また、1000Base-TなどLAN規格の信号を、PHYチップによりシリアライズして無線化し、再びPHYチップでデシリアライズする構成により、入力された信号を透過的に無線信号として伝送することができるようになる。
【0037】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0038】
301:無限回転ユニット、221~224:通信カプラ