特許 7503940 折板屋根板の継手構造

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-06-13

(45)【発行日】2024-06-21

(54)【発明の名称】折板屋根板の継手構造

(51)【国際特許分類】

   E04D 3/362 20060101AFI20240614BHJP

【ＦＩ】

E04D3/362 C

【請求項の数】 5

(21)【出願番号】P 2020111327

(22)【出願日】2020-06-29

(65)【公開番号】P2022010645

(43)【公開日】2022-01-17

【審査請求日】2023-05-12

(73)【特許権者】

【識別番号】000175973

【氏名又は名称】三晃金属工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100080090

【弁理士】

【氏名又は名称】岩堀 邦男

(72)【発明者】

【氏名】大西 正晃

(72)【発明者】

【氏名】北村 雄

(72)【発明者】

【氏名】大野 文義

【審査官】油原 博

(56)【参考文献】

【文献】特開平０２－２０９５４５（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開平０７－３３１８１３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開平０２－２０９５５１（ＪＰ，Ａ）

【文献】米国特許第０４９３６０７１（ＵＳ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｅ０４Ｄ ３／００－３／４０

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

底面部の幅方向両側に傾斜状の側面部が形成され、両該側面部の上端より外方に頂面部がそれぞれ形成され、一方の前記頂面部の外端より下馳部が形成され、他方の前記頂面部の外端より上馳部が形成された折板屋根板における水上側と水下側における継手構造であって、水下側に位置する前記折板屋根板の長手方向水上側には下方に膨出し且つ長手方向に拡張する帯状浅凹部が設けられ、
該帯状浅凹部には、前記底面部よりも低位置となる段差底面部と、前記側面部よりも低位置となる段差側面部とを有し、且つ前記帯状浅凹部の長手方向水下端部で且つ長手方向に直交する幅方向に沿って前記底面部と前記側面部から下方に向かい且つ外方に拡がるように第１段部が形成され、該第１段部の下端から平坦状となる段差凹面が形成され、該段差凹面の水上側端から上方に向かう第２段部が形成され、
前記帯状浅凹部の水上側端には前記底面部及び両前記側面部と平行となる屋根板支持面部が形成されると共に前記下馳部は上方部分が切除された切除部が設けられた下接続領域部を有し、水上側に位置する前記折板屋根板は、長手方向水下側で且つ前記底面部と両前記側面部の端部には下方に傾斜する折曲片が形成された上接続領域部を有し、水下側に位置する前記折板屋根板の前記下接続領域部と、水上側に位置する前記折板屋根板の前記上接続領域部が重合され、前記帯状浅凹部の水下側端の前記第１段部と、前記折曲片との間に隙間が設けられ、
前記下接続領域部と前記上接続領域部との間に、２個の帯状シール材が長手方向に直交する幅方向に沿って配置されてなることを特徴とする折板屋根板の継手構造。

【請求項2】

請求項１に記載の折板屋根板の継手構造において、前記屋根板支持面部は、前記底面部と前記側面部と同一面であることを特徴とする折板屋根板の継手構造。

【請求項3】

請求項１に記載の折板屋根板の継手構造において、前記屋根板支持面部は、前記底面部と前記側面部よりも低い面であることを特徴とする折板屋根板の継手構造。

【請求項4】

請求項１，２又は３の何れか１項に記載の折板屋根板の継手構造において、前記下接続領域部における前記第１段部と前記第２段部は両前記頂面部に形成され両前記頂面部の端部には下方に傾斜する折曲片が形成されてなることを特徴とする折板屋根板の継手構造。

【請求項5】

請求項１，２，３又は４の何れか１項に記載の折板屋根板の継手構造において、水下側及び水上側の前記折板屋根板の何れにもその長手方向一方に前記下接続領域部が設けられると共に他方に前記上接続領域部が設けられてなることを特徴とする折板屋根板の継手構造。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、馳締タイプの折板屋根において、雨水の浸入に対する防水性を極めて優れたものにでき且つ簡単に施工できる折板屋根板の継手構造に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、金属製の馳締タイプの折板屋根板から構成される折板屋根（壁も含む）が多く施工されている。このような折板屋根を構成する折板屋根板は、一般に谷状部の幅方向両
側に傾斜状の立上り部が形成され、幅方向一方側に下馳部を、他方側に上馳部がそれぞれ形成されたものである。そして、その折板屋根板を複数並設し、隣接する折板屋根板同士の下馳部と上馳部とを吊子を介して重合しつつ馳締し、吊子は受金具に装着されて、金属製の折板屋根が施工される。

【0003】

このような馳締タイプの折板屋根は、大型の建築物の屋根として採用されることが多い。したがって、使用される折板屋根板も長尺物としたものが多く使用される。しかし、折板屋根板を長尺とするにも限度があり、限度を超えるような建築物の場合には、折板屋根板同士を長手方向に一列となるように連結する必要が出てくる。

【0004】

しかも、近年、このような折板屋根板は、工場で予め製造され、工場にて製造された折板屋根板を現場に搬送して、工事を行うことが多くなっている。したがって、工場から現場に搬送できる折板屋根板の長さは約２０メートル程度が限度であり、通常では、１０数メートルとしたものが多い。このような場合、折板屋根板同士を長手方向に接続することとなり、そこで継手部を構成することが必要となる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【文献】特開２０１３－２１３３９５号公報

【発明の開示】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

このように、馳締タイプの折板屋根では、大型或いは中型の建築物に限らず、折板屋根板同士を繋いで屋根を施工することが頻繁に起こり得るものである。このような、折板屋根板の長手方向における継手構造に関して、多くのものが開発されている。そして、特に重要なことは、防水性であり、次いで施工性である。さらに、外観上から継手部はあまり目立たないことが望まれる。

【0007】

特許文献１は、多くの継手構造の一例として揚げたものである。この特許文献１によって、防水性の目的は達成されている。しかし、通常の折板屋根板に対して、特許文献１では、複雑な加工がなされ、また、施工も面倒になる等の問題点も少なからず残している。本発明の目的は、防水性を極めて優れたものにでき且つ簡単に施工でき、さらに目立ちにくい折板屋根板の継手構造を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0008】

そこで、発明者は上記課題を解決すべく、鋭意，研究を重ねた結果、請求項１の発明を、底面部の幅方向両側に傾斜状の側面部が形成され、両該側面部の上端より外方に頂面部がそれぞれ形成され、一方の前記頂面部の外端より下馳部が形成され、他方の前記頂面部の外端より上馳部が形成された折板屋根板における水上側と水下側における継手構造であって、水下側に位置する前記折板屋根板の長手方向水上側には下方に膨出し且つ長手方向に拡張する帯状浅凹部が設けられ、該帯状浅凹部には、前記底面部よりも低位置となる段差底面部と、前記側面部よりも低位置となる段差側面部とを有し、且つ前記帯状浅凹部の長手方向水下端部で且つ長手方向に直交する幅方向に沿って前記底面部と前記側面部から下方に向かい且つ外方に拡がるように第１段部が形成され、該第１段部の下端から平坦状となる段差凹面が形成され、該段差凹面の水上側端から上方に向かう第２段部が形成され、前記帯状浅凹部の水上側端には前記底面部及び両前記側面部と平行となる屋根板支持面部が形成されると共に前記下馳部は上方部分が切除された切除部が設けられた下接続領域部を有し、水上側に位置する前記折板屋根板は、長手方向水下側で且つ前記底面部と両前記側面部の端部には下方に傾斜する折曲片が形成された上接続領域部を有し、水下側に位置する前記折板屋根板の前記下接続領域部と、水上側に位置する前記折板屋根板の前記上接続領域部が重合され、前記帯状浅凹部の水下側端の前記第１段部と、前記折曲片との間に隙間が設けられ、前記下接続領域部と前記上接続領域部との間に、２個の帯状シール材が長手方向に直交する幅方向に沿って配置されてなる折板屋根板の継手構造としたことにより、上記課題を解決した。

【0009】

請求項２の発明を、請求項１に記載の折板屋根板の継手構造において、前記屋根板支持面部は、前記底面部と前記側面部と同一面である折板屋根板の継手構造としたことにより、上記課題を解決した。請求項３の発明を、請求項１に記載の折板屋根板の継手構造において、前記屋根板支持面部は、前記底面部と前記側面部よりも低い面である折板屋根板の継手構造としたことにより、上記課題を解決した。

【0010】

請求項４の発明を、請求項１，２又は３の何れか１項に記載の折板屋根板の継手構造において、前記下接続領域部における前記第１段部と前記第２段部は両前記頂面部に形成され両前記頂面部の端部には下方に傾斜する折曲片が形成されてなる折板屋根板の継手構造としたことにより、上記課題を解決した。

【0011】

請求項５の発明を、請求項１，２，３又は４の何れか１項に記載の折板屋根板の継手構造において、水下側及び水上側の前記折板屋根板の何れにもその長手方向一方に前記下接続領域部が設けられると共に他方に前記上接続領域部が設けられてなることを特徴とする折板屋根板の継手構造としたことにより、上記課題を解決した。

【発明の効果】

【0014】

請求項１の発明では、折板屋根板における水上側と水下側における継手構造において、極めて簡単な構造でありながら、継手部からの雨水の浸入に対して優れた防止性能を有するものである。その詳細は、まず、水下側に位置する折板屋根板においては、下接続領域部が設けられ、該下接続領域部には下方にくぼむ断面扁平凹形状の帯状浅凹部が設けられている。

【0015】

また、帯状浅凹部の水上側端には、前記底面部及び両前記側面部と平行となる屋根板支持面部が形成されている。そして、水上側に位置する前記折板屋根板の上接続領域部には、長手方向水下側で且つ底面部と両側面部の端部には下方に傾斜する折曲片が形成された上接続領域部を有している。

【0016】

このような構成によって、水上側と水下側とで隣接する折板屋根板同士の継手部では、下接続領域部の帯状浅凹部と、上接続領域部との間に空隙部が構成される。そして、継手箇所から浸入した雨水は、空隙部によって毛管現象が生じることが無く、雨水の浸入を空隙部内で遮断することができる。

【0017】

また、空隙部内にしみ込んだ雨水は、前記帯状浅凹部の水下側端と、水上側に位置する折板屋根板の折曲片との間に隙間が設けられており、外部から雨水が空隙部内に浸入し難い構成である。そして、たとえ僅かながらも空隙部内に流入して、溜まった雨水は、前
記隙間から漸次、外部に排出され、空隙部内に雨水が一定以上溜まることを防止し、これによって屋内への雨水の浸入の防止性能を高めることができる。

【0018】

さらに、請求項１の発明では、段差凹面に対応する領域の下馳部の上方部分は切除された切除部が形成されており、水上側に位置する折板屋根板と、水下側に位置する折板屋根板とが重合するときに、特に下馳部同士が重合する部分では、水下側に位置する折板屋根板の下馳部の上方部分が切除された切除部となっているので、水下側と水下側とで重合状態にある下馳部同士の干渉を最小限に抑え、下馳部同士の接合を極めて良好な状態にすることができる。このように、近年、特に頻繁に生じる大型の台風と、これに伴なう集中豪雨に対しても、十分に耐え得る水上側と水下側に位置する折板屋根板の継手部を構成することができる。

【0019】

さらに、請求項１の発明では、前記帯状浅凹部には、前記底面部よりも低位置となる段差底面部と、前記側面部よりも低位置となる段差側面部とを有したものであり、帯状浅凹部によって構成される空隙部の力学的強度を向上させることができる。さらに、請求項１の発明では、水下側に位置する折板屋根板は下接続領域部における帯状浅凹部は、長手方向水下端部で且つ長手方向に直交する幅方向に沿って第１段部が形成され、前記下接続領域部の長手方向水上側で且つ長手方向に直交する幅方向に沿って第２段部が形成された構成によって帯状浅凹部は、長手方向に沿う断面形状が略扁平逆門(アーチ)形状、或いは略皿形状となり、該帯状浅凹部によって構成される空隙部に浸入した雨水を暫時外部に排出し易い構造にできる。

【0020】

さらに、また請求項１の発明では、下接続領域部と上接続領域部との間に、帯状シール材が長手方向に直交する幅方向に沿って配置された構成により、帯状シール材は、下接続領域部と上接続領域部の双方に略密着状態となり、雨水の浸入をより一層、遮断することができる。請求項２の発明では、屋根板支持面部は、底面部と側面部と同一面としたことにより、水上側に位置する折板屋根板の上接続領域部は、水下側に位置する折板屋根板の底面部よりも僅かに高い状態となり、水上側から水下側に流れる雨水が継手箇所から空隙部内に浸入し難い構造にできる。

【0021】

請求項３の発明では、屋根板支持面部は、底面部と側面部よりも低い面である構成としたことにより、水上側に位置する折板屋根板の底面部と、これに隣接する水上側に位置する折板屋根板の底面部とを略同一面にすることができ、継手箇所において段差が目立ち難い構成とし、整然とした外観にできる。請求項４の発明では、第１段部及び第２段部がは前記頂面部に形成される構成により、水上側と水下側で隣接する折板屋根板同士の接続が行い易くできる。

【0022】

請求項５の発明では、水下側及び水上側の前記折板屋根板の何れにもその長手方向一方に下接続領域部が設けられると共に他方に上接続領域部が設けられたことにより、水上側から水下側折に向かって多数の板屋根板を直列状態で接続して多数の継手部を有する折板屋根の施工することにおいて、極めて好適となる。

【0023】

なお、水下側に位置する折板屋根板は下接続領域部における前記帯状浅凹部には、折板屋根板の長手方向に直交する幅方向に沿って膨出条が形成されれば帯状浅凹部によって構成される空隙部に雨水が浸入しようとするときには、膨出条がこの雨水の堰としての役目をなし、空隙部内の雨水が長手方向奥側である水上側奥側に浸入することを防止できる。

【0024】

また、膨出条によれば、帯状浅凹部による空隙部内に帯状シール材を設けようとする場合には、帯状浅凹部内の予め決められた位置に設置することが好まれるが、その設置する位置を作業員が全て均一となるように設置するには、いちいち物差し(定規)等にて位置を測り、帯状シール材を設置しなければならないものであるが、折板屋根板を製造するときに、予め決められた位置に膨出条を形成するようにしておくことで、帯状シール材の装着位置を統一にすることができる。

【0025】

また、前記膨出条は、前記段差底面部，両前記段差側面部にそれぞれ別々に独立して形成される構成とされれば、折板屋根板の帯状浅凹部内に膨出条をプレス成形するときに、段差底面部及び段差側面部に形成される膨出条同士が相互に干渉することがない。従って、成形のときに、膨出条同士が相互に干渉しあうことにより生じる応力にて生じるき裂(クラック)を本発明にて防止できる。また、膨出条は、長手方向に直交する断面が半円形状に形成されることにより、膨出条は、金属材にストレスを最小限に抑えつつ、極めてプレス加工し易いものにできる。

【図面の簡単な説明】

【0026】

【図1】（Ａ）は本発明の第１実施形態における一部省略した平面略示図、（Ｂ）は第１実施形態の縦断側面略示図である。

【図2】（Ａ）は本発明の第１実施形態における継手部箇所において水下側に位置する折板屋根板と水上側に位置する折板屋根板を接続しようとする斜視図、（Ｂ）は水下側に位置する折板屋根板と水上側に位置する折板屋根板を接続しようとする縦断側面図である。

【図3】（Ａ）は本発明の第１実施形態における継手部箇所において水下側に位置する折板屋根板と水上側に位置する折板屋根板を接続した状態の斜視図、（Ｂ）は継手部箇所において水下側に位置する折板屋根板と水上側に位置する折板屋根板を接続した状態の平面斜視図、（Ｃ）は(Ｂ)のＸ1－Ｘ1矢視図、（Ｄ）は多数の折板屋根板を水上側から水下側に直列状に接続した状態の略示図である。

【図4】（Ａ）は本発明の第１実施形態における継手部箇所において水下側に位置する折板屋根板の要部斜視図、（Ｂ）は継手部箇所において水下側に位置する折板屋根板の要部の平面斜視図、（Ｃ）は（Ｂ）のＸ2－Ｘ2矢視断面図である。

【図5】（Ａ）は図４（Ｂ）のＹ1－Ｙ1矢視端面図、（Ｂ）は図４（Ｂ）のＹ2－Ｙ2矢視端面拡大図、（Ｃ）は図４（Ｂ）のＹ3－Ｙ3矢視端面拡大図、（Ｄ）は継手部箇所で水下側に位置する折板屋根板における下馳部の切除部に水上側に位置する折板屋根板の下馳部が重合した状態の縦断正面図、（Ｅ）は、幅方向に隣接する折板屋根板同士を下馳部と上馳部とを馳締して接合した状態の要部縦断正面図、（Ｆ）は図４（Ｂ）のＹ4－Ｙ4矢視断面図である。

【図6】（Ａ）は図３（Ｂ）のＸ4－Ｘ4矢視断面図、（Ｂ）は（Ａ）の（α）部拡大図、（Ｃ）は（Ｂ）の（β）部拡大図である。

【図7】（Ａ）は継手部箇所において水上側に位置する折板屋根板の一部省略した斜視図、（Ｂ）は継手部箇所において水上側に位置する折板屋根板の水下側付近の平面斜視図、（Ｃ）は上接続領域部と第１実施形態における下接続領域部とを備えた折板屋根板の斜視図である。

【図8】（Ａ）は本発明の第２実施形態における継手部箇所において水下側に位置する折板屋根板の一部省略した要部斜視図、（Ｂ）は継手部箇所において水下側に位置する折板屋根板の一部省略した部平面斜視図、（Ｃ）は（Ｂ）のＸ3－Ｘ3矢視断面図である。

【図9】（Ａ）は本発明の第２実施形態における継手部箇所において水下側に位置する折板屋根板と水上側に位置する折板屋根板を接続した状態の斜視図、（Ｂ）は継手部箇所において水下側に位置する折板屋根板と水上側に位置する折板屋根板を接続した状態の平面斜視図、（Ｃ）は(Ｂ)のＸ5－Ｘ5矢視図、（Ｄ）は多数の折板屋根板を水上側から水下側に直列状に接続した状態の略示図である。

【発明を実施するための形態】

【0027】

以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明は、金属製の折板屋根において、勾配を有するものとし、その水上側からその水下側に向かって、複数の折板屋根板を長手方向に直列状態に接続するときの継手部の構造(継手構造)に関するものである。本発明における継手構造を構成する主要なる構成部材は、水上側と水下側に亘って隣接する水下側に位置する折板屋根板Ａ1と、水上側に位置する折板屋根板Ａ2とを備えたものである。さらに必要に応じて、帯状シール材３とを備えることもある（図１乃至図３参照）。

【0028】

そして、水下側の折板屋根板Ａ1及び水上側に位置する折板屋根板Ａ2における長手方向とは、折板屋根を構成した場合に水上側から水下側に向かって配置したときの延在する方向であり、幅方向とは長手方向に対して水平状に直交する方向のことである。水下側に位置する折板屋根板Ａ1及び水上側に位置する折板屋根板Ａ2における長手方向及び幅方向については、主要な図に記載されている。

【0029】

水下側に位置する折板屋根板Ａ1と、水上側に位置する折板屋根板Ａ2とは、共に金属材からなる馳締タイプの折板屋根板である。さらに、施工において構造材７１，受具７２及び吊子７３等も本発明を構成する部材として加わる（図１参照）。水下側に位置する折板屋根板Ａ1と、水上側に位置する折板屋根板Ａ2とは、水下側と水上側との傾斜方向に沿って隣接し、接続されて折板屋根を構成するものである。

【0030】

水下側となる折板屋根板Ａ1と、水上側となる折板屋根板Ａ2とは、互いに相対的な位置関係である。つまり、水上側から水下側に向かって隣接する折板屋根板同士において、任意の折板屋根板に対して隣接する相手の折板屋根板が水上側に位置するものであれば、任意の折板屋根板は水下側となる折板屋根板Ａ1となる。また、任意の折板屋根板に対して隣接する相手の折板屋根板が水下側に位置するものであれば、任意の折板屋根板は水上側となる折板屋根板Ａ2となる。

【0031】

したがって、図３（Ｄ）に示すように、水上側から水下側に向かって、３個以上の折板屋根板が直列状に接続され、複数の継手部が設けられる場合では、水上側と水下側の両端に位置する折板屋根板を除いて、その中間に位置する折板屋根板は、水下側に位置する折板屋根板Ａ1と、水上側に位置する折板屋根板Ａ2の両方の要件を具備した折板屋根板となる。そして、水上側から水下側に向かって多数の折板屋根板が直列状に接続される場合では、使用される折板屋根板のほとんどが水下側に位置する折板屋根板Ａ1と、水上側に位置する折板屋根板Ａ2の両方の要件を備えた折板屋根板となるものである。

【0032】

そこで、本発明の説明においては、理解され易いように、隣接する折板屋根板において、水下側に位置する折板屋根板を水下側に位置する折板屋根板Ａ1とし、水上側に位置する折板屋根板を水上側に位置する折板屋根板Ａ2とする。但し、任意の折板屋根板がそれよりも水上側に隣接する他の折板屋根板との継手構造を構成するのか、或いは水下側の他の折板屋根板との継手構造を構成するのかによって、任意の折板屋根板は水下側に位置する折板屋根板Ａ1となるか、或いは水上側に位置する折板屋根板Ａ2の何れかになるものである。以下、水下側となる折板屋根板Ａ1は、単に水下側に位置する折板屋根板Ａ1と言い、水上側となる折板屋根板Ａ2は、単に水上側に位置する折板屋根板Ａ2という。

【0033】

本発明は、２つの実施形態が存在する。まず、第１実施形態を図１乃至図７に基づいて説明する。水下側に位置する折板屋根板Ａ1には、その長手方向の水上側端部に、下接続領域部Ｊ1を有している。また、水上側に位置する折板屋根板Ａ2には、その長手方向の水下側端部に上接続領域部Ｊ2を有している。下接続領域部Ｊ1と上接続領域部Ｊ2とは、水下側に位置する折板屋根板Ａ1と水上側に位置する折板屋根板Ａ2との継手部を構成する接合箇所において、互いに重合し、継手部を構成する領域のことである〔図１（Ｂ），図２，図３等参照〕。

【0034】

そして、折板屋根を構成する水上側端部の折板屋根板と、水下側端部の折板屋根板を除いて、本発明に使用されるほとんどの折板屋根板においては、実質的に、水下側に位置する折板屋根板Ａ1及び水上側に位置する折板屋根板Ａ2の何れにも下接続領域部Ｊ1と上接続領域部Ｊ2とを備えている。つまり、水下側に位置する折板屋根板Ａ1の水下側端部付近には上接続領域部Ｊ2が備わり、水上側端部付近には下接続領域部Ｊ1が備わっている〔図７（Ｃ）参照〕。

【0035】

これによって、水上側から水下側に向かって直列状に接続される多数の折板屋根板において、中間に位置する多数の折板屋根板は、下接続領域部Ｊ1と上接続領域部Ｊ2とを有することにより、水上側から水下側に向かって隣接する折板屋根板同士の接続を効率的に行うことができるものである。水下側に位置する折板屋根板Ａ1と、水上側に位置する折板屋根板Ａ2において、前記下接続領域部Ｊ1及び上接続領域部Ｊ2を除く他の部分は、通常の馳締折板屋根板と同等であるため、各部位の符号は共通とする。

【0036】

まず、水下側に位置する折板屋根板Ａ1は、図４，図５等に示すように、底面部１１の幅方向両側に傾斜状の側面部１２，１２が形成され、両該傾斜状の側面部１２，１２の上端より外方に頂面部１３，１３がそれぞれ形成され、一方の前記頂面部１３の外端より下馳部１４が形成され、他方の前記頂面部１３の外端より上馳部１５が形成されている。

【0037】

そして、水上側に位置する折板屋根板Ａ2は、底面部１１の幅方向両側に傾斜状の側面部１２，１２が形成されている。水下側に位置する折板屋根板Ａ1及び水上側に位置する折板屋根板Ａ2は、それぞれの底面部１１と傾斜状の両側面部１２，１２によって、有底Ｖ字状を形成している〔図５（Ａ）参照〕。傾斜状の両側面部１２，１２の上端より外方に頂面部１３，１３がそれぞれ形成され、一方の前記頂面部１３の外端より下馳部１４が形成され、他方の前記頂面部１３の外端より上馳部１５が形成されている。

【0038】

さらに、水下側に位置する折板屋根板Ａ1と水上側に位置する折板屋根板Ａ2のそれぞれの下馳部１４は、一方の頂面部１３から垂直状又は略垂直状に立ち上がる馳首部１４ｂが形成され、該馳首部１４ｂの上端より下馳締部１４ａが形成される〔図５（Ａ），（Ｃ）参照〕。同様に上馳部１５は、他方の頂面部１３から垂直状又は略垂直状に立ち上がる馳首部１５ａが形成され、該馳首部１５ｂの上端より上馳締部１５ａが形成されている〔図５（Ａ）参照〕。

【0039】

そして、幅方向に隣接する水下側に位置する折板屋根板Ａ1，Ａ1同士の接続では、下馳部１４の下馳締部１４ａ上に、幅方向に隣接する別の水下側に位置する折板屋根板Ａ1の上馳部１５の上馳締部１５ａが重合するように馳締されて水下側に位置する折板屋根板Ａ1同士が幅方向に接続される〔図５（Ｅ）参照〕。同様に、幅方向に隣接する水上側に位置する折板屋根板Ａ2同士の下馳部１４の下馳締部１４ａ上に、別の水上側に位置する折板屋根板Ａ2の上馳部１５の上馳締部１５ａが重合するように馳締されて水下側に位置する折板屋根板Ａ1同士が幅方向に接続される。

【0040】

水下側に位置する折板屋根板Ａ1における下接続領域部Ｊ1には、帯状浅凹部２が形成される〔図１，図２，図３（Ａ），（Ｂ）参照〕。該帯状浅凹部２は、段差凹面２A，第１段部２４及び第２段部２５を備えたものである。帯状浅凹部２は、折板屋根板Ａ1がロール成型機等にて形成された後、プレス成型機にて成形される部位である。前記帯状浅凹部２は、折板屋根板Ａ1の底面部１１，両側面部１２，１２に亘り、これらに対応するように折板屋根板Ａ1の水上側端部箇所の一定の領域に設けられる。

【0041】

帯状浅凹部２は、折板屋根板Ａ1の長手方向水上側において、下方に膨出し且つ長手方向に拡張して形成された帯状の浅い溝状の凹部である〔図４，図５（Ｆ）参照〕。さらに具体的には該帯状浅凹部２は、折板屋根板Ａ1の水上側において幅方向に沿って形成されたものであり、換言すれば、折板屋根板Ａ1の長手方向に対して直角状（つまり、幅方向）に横切るようにして形成される〔図４，図５（Ｆ）参照〕。帯状浅凹部２は、底面部１１，両側面部１２，１２よりも上下(高さ)方向において一段低くなる部位である。折板屋根板Ａ1の長手方向に沿う断面形状が略扁平逆台形状、或いは扁平逆門形状，皿形状等に形成されている〔図２(Ｂ)，図４（Ｃ）等参照〕。

【0042】

まず、帯状浅凹部２の構成は、第１段部２４，第２段部２５，段差凹面２A及び屋根板支持面部２Bを有する。そして、帯状浅凹部２の水下側端に第１段部２４が設けられ、帯状浅凹部２の水上側の端部寄りの位置に第２段部２５が設けられている。そして、第１段部２４と第２段部２５との間に段差床面２Aが位置し、第２段部２５から水上側に屋根板支持面部２Bが位置している（図２，図４参照）。さらに具体的には、折板屋根板Ａ1の水上側端部箇所で且つ、底面部１１と両側面部１２，１２に亘って、これらに連続するように第１段部２４が形成されている。

【0043】

該第１段部２４は、長手方向水上側で且つ長手方向に直交する方向に沿って形成されている（図２，図４等参照）。水下側に位置する折板屋根板Ａ1において、第１段部２４を境として、水上側の領域が下接続領域部Ｊ1となる（図２，図４参照）。第１段部２４は、帯状浅凹部２がプレス加工で形成される過程で同時に形成される。第１段部２４は、底面部１１，両側面部１２，１２の水上側の端部から下方に向かって傾斜状の段差面として形成されている。帯状浅凹部２は、下接続領域部Ｊ1内に収まる構成であり、換言するならば、帯状浅凹部２は、そのまま下接続領域部Ｊ1と同一領域である。

【0044】

次に、帯状浅凹部２における段差凹面２Aは、段差底面２１と段差側面部２２を有しており、必要に応じて両段差頂面部２３，２３を有することもある（図４参照）。段差底面２１及び両段差頂面部２３，２３は、第１段部２４を境として、通常の領域における底面部１１及び両頂面部１３，１３よりも一段低い位置になるように構成されている。また、両段差側面部２２，２２は、第１段部２４を介して通常の両側面部１２，１２の幅方向両側よりも一段外方に拡がるように形成されている〔図４，図５（Ａ），（Ｆ）参照〕。

【0045】

第１段部２４による底面部１１と段差底面２１の段差寸法は、水下側に位置する折板屋根板Ａ1の金属材の厚さ(板厚)と同等或いはそれ以上であり、好ましくは金属材の板厚の約２倍程度の段差寸法とすることが好ましい。さらに、段差凹面２Aの水上側端から第２段部２５が形成されている。該第２段部２５は、第１段部２４と同様に、折板屋根板Ａ1の長手方向に直交する方向に沿って形成されている〔図２，図４等参照〕。

【0046】

第２段部２５は、段差凹面２Ａの水上側端から上方に向かって傾斜状に形成された段部である。そして、第２段部２５の上端より、水上側に向かって屋根板支持面部２Bが形成されている（図２，図４，図６等参照）。該屋根板支持面部２Bも底部支持面２１ａ，側部支持面２２ａ及び頂部支持面２３ａを有する。

【0047】

屋根板支持面部２Bは、水下側に位置する折板屋根板Ａ１の下接続領域部Ｊ1と、水上側に位置する折板屋根板Ａ2の上接続領域部Ｊ2とを重合して継手部を構成したときに、水上側に位置する折板屋根板Ａ2の底面部１１，両側面部１２，１２及び両頂面部１３，１３を下方から支持する役目をなすものである〔図６(Ａ)，（Ｂ）参照〕。屋根板支持面部２Bの底部支持面２１ａ，側部支持面２２ａ及び頂部支持面２３ａは、前記底面部１１，両側面部１２，１２及び両頂面部１３，１３と同一面(略同一面も含む)となる。或いは、底部支持面２１ａ，側部支持面２２ａ及び頂部支持面２３ａは、前記底面部１１，両側面部１２，１２及び両頂面部１３，１３よりも低い面となる実施形態も存在する。

【0048】

特に、この実施形態では底部支持面２１ａ，側部支持面２２ａ及び頂部支持面２３ａは、前記底面部１１，両側面部１２，１２及び両頂面部１３，１３よりも、板厚１枚分(略板厚１枚分も含む)だけ低く形成されると、水下側に位置する折板屋根板Ａ1の下接続領域部Ｊ1と、水上側にする折板屋根板Ａ2の上接続領域部Ｊ2とを重合したときに、折板屋根板Ａ1と折板屋根板Ａ2の底面部１１，両側面部１２，１２及び両頂面部１３，１３は同一面(略同一面)となる。

【0049】

前記帯状浅凹部２には、折板屋根板Ａ1の長手方向に直交する幅方向に沿って膨出条２６が形成されている〔図１，図２，図３(Ａ)乃至（Ｃ），図４，図５（Ｆ）等参照〕。該膨出条２６は、帯状浅凹部２の段差底面部２１，両段差側面部２２，２２にそれぞれ別々に独立して形成されている。また、膨出条２６は、両段差頂面部２３，２３にも形成されることがある。そして、段差底面部２１に形成された膨出条２６を底面膨出条部２６ａと称し、段差側面部２２に形成された膨出条２６を側面膨出条部２６ｂと称し、段差頂面部２３に形成された膨出条２６を頂面膨出条部２６ｃと称する〔図４，図５(Ｆ)参照〕。

【0050】

底面膨出条部２６ａ，側面膨出条部２６ｂ及び頂面膨出条部２６ｃは、前述したように、それぞれが相互に連続しておらず、段差底面部２１，段差側面部２２及び段差頂面部２３において、独立した膨出条２６として複数個が形成されたものである。そして、底面膨出条部２６ａ，側面膨出条部２６ｂ及び頂面膨出条部２６ｃは、それぞれ直線状に形成され、且つ折板屋根板Ａ1の長手方向において同一位置に一列状(略一列状も含む)をなして配列されている〔図４(Ａ)，（Ｂ）参照〕。

【0051】

底面膨出条部２６ａ，側面膨出条部２６ｂ及び頂面膨出条部２６ｃは、折板屋根板Ａ1の長手方向に直交する断面が半円状，扁平な半楕円形状に形成され、或いは長方形，正方形等の断面方形状に形成されたり、また或いは、断面台形状，三角形状等に形成されている。膨出条２６は、底面膨出条部２６ａ，側面膨出条部２６ｂ及び頂面膨出条部２６ｃとして、段差底面部２１，段差側面部２２，及び段差頂面部２３にそれぞれ別々に形成される構成としたことにより、各膨出条同士が干渉することがない。そのため、膨出条２６同士が干渉することによって生じるき裂(クラック)も生じないものにできる。

【0052】

また、膨出条２６は、前述したように、帯状浅凹部２の段差底面部２１，段差側面部２２及び段差頂面部２３にそれぞれ別々に形成されているものとしたが、段差底面部２１，段差側面部２２及び段差頂面部２３に亘って、連続して形成されることもある。この場合、連続する膨出条２６をプレス成形等にて形成するときには、き裂(クラック)が生じないように形成されなくてはならない。

【0053】

また、膨出条２６(底面膨出条部２６ａ，側面膨出条部２６ｂ及び頂面膨出条部２６ｃ)の高さは、第１段部２４の高さと同等又は略同等としたり、第１段部２４よりも低く設定されている。つまり、水下側に位置する折板屋根板Ａ1の下接続領域部Ｊ1と、水上側に位置する折板屋根板Ａ2の上接続領域部Ｊ2とが重合されるときに、膨出条２６の頂部と水上側に位置する折板屋根板Ａ2の上接続領域部Ｊ2とが相互に干渉しないように構成される（図６参照）。

【0054】

帯状浅凹部２に形成される膨出条２６における底面膨出条部２６ａ，側面膨出条部２６ｂ，２６ｂ及び頂面膨出条部２６ｃ，２６ｃは、水下側に位置する折板屋根板Ａ1の下接続領域部Ｊ1と、水上側に位置する折板屋根板Ａ2の上接続領域部Ｊ2とが重合されて、帯状浅凹部２によって構成される空隙部Ｓに雨水が浸入しようとするときに、膨出条２６がこの雨水の堰としての役目をなし、空隙部Ｓ内の雨水が長手方向奥側である水上側奥側に浸入することを防止できる。

【0055】

帯状浅凹部２に形成される膨出条２６（底面膨出条部２６ａ，側面膨出条部２６ｂ及び頂面膨出条部２６ｃ）は、帯状浅凹部２の長手方向における水下側寄りの位置に形成されることが好ましい。但し、膨出条２６の帯状浅凹部２内への形成位置は、任意に設定されるものであり、帯状浅凹部２の長手方向の水上側寄りの位置に形成されても構わない。

【0056】

また、帯状浅凹部２による空隙部Ｓ内に帯状シール材３を設置しようとする場合において、帯状浅凹部２内の予め決められた位置に正確に設置することが好まれる。その帯状シール材３を設置する位置が均一となるように設置されるには、作業員が、物差し(定規)等にていちいち、指定された位置を測り、帯状シール材３を設置しなければならないものである。

【0057】

そこで、折板屋根板Ａ1を製造するときに、帯状浅凹部２内の帯状シール材３設置位置が予め決められているときには、その位置に膨出条２６を形成するようにしておくことで、該膨出条２６を帯状シール材３の位置決めの目安（目印）とすることにより、作業員の位置出し作業を削減することができ、帯状シール材３を所定の決められた位置に簡単に装着でき、全ての折板屋根板Ａ1，Ａ1，…における帯状シール材３装着位置を統一にすることができる。

【0058】

また、膨出条２６は、折板屋根板Ａ1の長手方向に直交する断面が半円形状に形成されることにより、膨出条２６は、折板屋根板Ａ1を金属板材から成形するときに、金属板材に過剰なストレスを与えることなく、最小限に抑えつつ、極めてプレス加工し易いものにできる(図６参照)。

【0059】

帯状浅凹部２内において膨出条２６を、帯状シール材３の設置位置の位置決め部としての役目をなす場合には、膨出条２６を境としてその直近の水下側又は水上側に帯状シール材３が設置される（図６参照）。また、膨出条２６を境として、該膨出条２６の水下側と水上側の両方に帯状シール材３がそれぞれ設置されることもある（図６参照）。

【0060】

膨出条２６を境として水下側と水上側に帯状シール材３をそれぞれ設置することにより、より一層強固な防水性を実現できる。さらに、膨出条２６を境として水下側と水上側の両方に帯状シール材３を設置し、両帯状シール材３，３間にゼリー状のコーキング剤，シール剤を充填することもある。これによって、さらに強固な防水性を得ることができる。

【0061】

次に、水下側に位置する折板屋根板Ａ1の下接続領域部Ｊ1と、水上側に位置する折板屋根板Ａ2の上接続領域部Ｊ2とを重合したときに、下接続領域部Ｊ1の帯状浅凹部２は、水下側に開口を有する上下方向に閉鎖された空隙部Ｓを構成する。該空隙部Ｓの水下側は、折板屋根板Ａ2の折曲片１６によって、一部に開口を残して閉鎖状となる。この開口を隙間ｋと称する。該隙間ｋは、帯状浅凹部２によって形成される空隙室Ｓに雨水を受け入れる開口となる。前記第１段部２４の折曲角度θについては、通常では、底面部１１に対して、折曲角度θが約１３５度(略１３５度も含む)程度である〔図６(Ｃ)参照〕。

【0062】

また、第１段部２４の折曲角度θを緩傾斜とすることもある。具体的には、第１段部２４の底面部１１に対する折曲角度θが１３５度を超えない直角である。さらに、前記第１段部２４の折曲角度θを急傾斜とすることもある。具体的には、第１段部２４の底面部１１に対する折曲角度θが１３５度を超えて略直角に近い角度である。

【0063】

そして、水上側に位置する折板屋根板Ａ2の上接続領域部Ｊ2とが重合することにより形成される空隙部Ｓ内に、降雨時に浸み込み、溜まろうとする雨水を、帯状浅凹部２の第１段部２４側の開口から外部に排出させる。この第１段部２４の底面部１１に対する折曲角度θを種々に設定することで、前記隙間ｋの大きさを任意に設定することができる。

【0064】

そして、下接続領域部Ｊ1における帯状浅凹部２の段差底面部２１，両段差側面部２２，２２及び両段差頂面部２３，２３には、帯状シール材３が水下側に位置する折板屋根板Ａ1の長手方向に対して直交又は略直交状態で配置される。そして、水下側に位置する折板屋根板Ａ1と水上側に位置する折板屋根板Ａ2とを長手方向に一列状に接続して継手部を構成するときに、下接続領域部Ｊ1における段差底面部２１及び段差側面部２２と、上接続領域部Ｊ2の底面部１１と、帯状シール材３又は帯状水膨張材４とによって、略閉鎖状の空間が構成される。

【0065】

この空間を空隙部Ｓと称する。なお、空隙部Ｓには、帯状シール材３と共に帯状水膨張材４が備えられることもある〔図８，図９（Ａ），（Ｂ）参照〕。帯状シール材３は、略平帯テープ状としたものであり、帯状浅凹部２の長手方向中間箇所における段差底面部２１，両段差側面部２２，２２及び両段差頂面部２３，２３に亘って貼着される。

【0066】

前記帯状水膨張材４は、帯状シール材３と略同様に、略平帯テープ状としたものであり、帯状シール材３に隣接且つ近接する状態で、段差底面部２１，両段差側面部２２，２２及び両段差頂面部２３，２３に亘って貼着される。帯状シール材３及び帯状水膨張材４は、裏面に粘着性のある貼着面を有しており、下接続領域部Ｊ1における段差底面部２１，両段差側面部２２，２２及び両段差頂面部２３，２３に容易に貼着できる。

【0067】

或いは、帯状シール材３及び帯状水膨張材４は、それぞれに貼着面を持たないものとし、接着剤を利用して貼着するタイプのものであってもよい。帯状水膨張材４は、水分を吸収し、膨張することができる材質からなり、具体的には、吸水性且つ膨張性を有する不織布等が使用される。帯状シール材３及び帯状水膨張材４は、前述したように、水下側に位置する折板屋根板Ａ1の下接続領域部Ｊ1に設けられ、該下接続領域部Ｊ1上に水上側に位置する折板屋根板Ａ2の上接続領域部Ｊ2が重合される。

【0068】

帯状水膨張材４は、水分を吸収し、膨張することにより、前記空隙部Ｓにおける段差底面部２１，段差側面部２２及び底面部１１に対して、より一層強固に密着することになり、密封性能を高め、雨水或いは水分のさらなる浸入を防止できる。これら帯状シール材３と帯状水膨張材４を併用することで、極めて強固な防水性を確保できる。下接続領域部Ｊ1において、帯状水膨張材４が設けられる場合では、帯状シール材３は、帯状水膨張材４よりも水上側に位置することが好適である(図８，図９参照)。また、これに限定されず、帯状水膨張材４が、帯状シール材３よりも水上側に位置させてもよい。

【0069】

また、水下側に位置する折板屋根板Ａ1と水上側に位置する折板屋根板Ａ2と継手部において、帯状シール材３のみが使用され、帯状水膨張材４は使用されないこともある。さらに、帯状水膨張材４のみが使用され、帯状シール材３は使用されないこともある。帯状シール材３又は帯状水膨張材４の何れか一方のみが使用される場合において何れかを選択するについては、その建築物及びその周辺環境等の条件によって任意に決定されるものである。

【0070】

本発明の第１実施形態では、図１，図７に示すように、水上側に位置する折板屋根板Ａ2は、その上接続領域部Ｊ2において、長手方向水下側で且つ底面部１１，両側面部１２，１２及両頂面部１３，１３には、折曲片１６，１６，…が形成される。そして、水下側に位置する折板屋根板Ａ1の前記第１段部２４に、水上側に位置する折板屋根板Ａ2の水下側が載置されると共に、それぞれの折曲片１６がそれぞれの第１段部２４箇所に配置される。折曲片１６は、底面部１１に対しては、下方に向かって傾斜状に折曲された端縁部分であり、側面部１２に対しては幅方向の外方側に向かって拡がるように傾斜状に折曲された端縁部分であり、頂面部１３に対しては下方に向かって傾斜状に折曲される端縁部分である。

【0071】

そして、折曲片１６は、水上側に位置する折板屋根板Ａ2の長手方向に沿う方向の長さは約５mm乃至約１０mm程度であり、好適には約７．５mm程度である。また、折曲片１６の底面部１１，側面部１２及び頂面部１３に対する傾斜角度は、底面部１１，側面部１２及び頂面部１３の表面(上面側)側の長手方向延長線に対して約５度乃至約１３５度程度の傾斜角度であり、好ましくは約２５度程度及びこの付近である。また、折曲片１６の長手方向寸法及び傾斜角度の数値は、施工現場の状況に応じて適宜、任意に設定されても構わない。

【0072】

具体的には、水上側に位置する折板屋根板Ａ2におけるそれぞれの折曲片１６，１６，…の先端が、水下側に位置する折板屋根板Ａ1の帯状浅凹部２の第１段部２４と段差側面部２２及び第１段部２４と段差頂面部２３とのそれぞれの隅角箇所に食い込むように構成される。これによって、水下側に位置する折板屋根板Ａ1の下接続領域部Ｊ1と、水上側に位置する折板屋根板Ａ2の上接続領域部Ｊ2とによる継手箇所で水下側に位置する折板屋根板Ａ1の段差底面部２１と、水上側に位置する折板屋根板Ａ2の底面部１１との間に前記空隙部Ｓが形成されることとなる（図３，図７参照）。

【0073】

該空隙部Ｓは、雨水が継手部から浸入した場合に、雨水が下接続領域部Ｊ1の帯状浅凹部２内、特に、段差底面部２１上に溜まったとしても、上方に位置する上接続領域部Ｊ2の底面部１１には触れることなく、毛管現象が生じ難い構造となる。これによって、継手部から浸入した雨水が空隙部Ｓ内で遮断状態となり、室内に浸入したり、或いは漏れ出ることを防止する。また、前記帯状シール材３或いは帯状水膨張材４も併用することで、さらなる雨水の浸入を強固に防止できる。

【0074】

図１及び図９（Ｄ）において、符号７１は、梁，母屋等の構造材であり、符号７２は受具であり、符号７３は馳締用吊子であり、符号７３ａは吊子舌片である。構造材７１及び受具７２は、水下側に位置する折板屋根板Ａ1と、水上側に位置する折板屋根板Ａ2の継手部箇所以外の箇所に位置する場合〔図１（Ｂ）の実線部分参照〕と、継手部箇所に位置する場合〔図１（Ｂ）の想像線部分参照〕とがあり、状況に応じて適宜設定されるものである。図５（Ｅ）は、水下側折板屋根板Ａ1又は水上側折板屋根板Ａ2の幅方向における下馳部１４と上馳部１５とを、受具７２上に取り付けられた吊子７３の吊子舌片７３ａと共に馳締固定された状態を示すものである。

【0075】

次に、本発明における第２実施形態では、水下側に位置する折板屋根板Ａ1の下接続領域部Ｊ1における帯状浅凹部２に、膨出条２６が設けられないものである（図８，図９参照）。この実施形態では、下接続領域部Ｊ1における帯状浅凹部２の構成を極めて簡単にできる。

【符号の説明】

【0076】

Ａ1…折板屋根板、Ａ2…折板屋根板Ａ2、１１…底面部、１２…側面部、
１３…頂面部、１４…下馳部、１４ｃ…切除部、１５…上馳部、１６…折曲片、
２…帯状浅凹部、２A…段差凹面、２１…段差底面部、２２…段差側面部、
２３…段差頂面部、２４…第１段部、２５…第２段部、２６…膨出条、
２６ａ…底面膨出条部、２６ｂ…側面膨出条部、２６ｃ…頂面膨出条部、
２B…屋根板支持面部、３…帯状シール材、Ｊ1…下接続領域部、
Ｊ2…上接続領域部、Ｓ…空隙部、Ｋ…隙間。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】