(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】すべり出し窓用ステー
(51)【国際特許分類】
E05D 15/44 20060101AFI20240614BHJP
E05F 11/16 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
E05D15/44
E05F11/16
(21)【出願番号】P 2020119815
(22)【出願日】2020-07-13
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000131511
【氏名又は名称】株式会社シブタニ
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】村田 泰久
(72)【発明者】
【氏名】小澤 正芳
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-177303(JP,A)
【文献】特開昭52-068745(JP,A)
【文献】特開2015-190310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/44
E05F 11/16
E05D 15/28-15/30
E05D 15/40
E05C 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓サッシの枠に取り付けられる枠プレート(1)と、障子の框に取り付けられる障子プレート(2)と、前記枠プレート(1)の長さ方向に沿って摺動するキャリッジ(5)と、前記キャリッジ(5)に前記障子プレート(2)を回動自在に連結するアーム(3)とを備え、前記枠プレート(1)に対して前記障子プレート(2)が開閉する連鎖機構が構成されたすべり出し窓用ステーにおいて、
前記枠プレート(1)には、前記枠プレート(1)の厚さ方向に先端部が弾力的に揺動するストッパー(6)が設けられ、前記キャリッジ(5)には、前記枠プレート(1)の長さ方向に相対移動可能に嵌合保持されたツマミ(7)が設けられ、
前記キャリッジ(5)に対し前記ツマミ(7)が初期位置にあって、前記ストッパー(6)の先端部が前記枠プレート(1)に設けられた穴部(1b)から突出している状態では、前記ストッパー(6)の先端部に前記キャリッジ(5)が係止されることにより、前記キャリッジ(5)の前記枠プレート(1)に対する前記ストッパー(6)の先端部を越えた摺動が規制されて、通常開口モードとなっており、
前記キャリッジ(5)に対する前記ツマミ(7)の所定方向への相対移動に伴い、前記ストッパー(6)が前記ツマミ(7)に押され、前記ストッパー(6)の先端部が前記枠プレート(1)の穴部(1b)に沈み込むと、前記ストッパー(6)の先端部による前記キャリッジ(5)の係止が解除され、前記キャリッジ(5)の前記枠プレート(1)に対する前記ストッパー(6)の先端部を越えた摺動が許容されて、拡大開口モードとな
り、
前記ツマミ(7)が前記ストッパー(6)の先端部を前記枠プレート(1)の穴部(1b)に沈み込ませる際、先端部が弾力的に揺動した前記ストッパー(6)から受ける反力は前記キャリッジ(5)によって支承され、
前記ストッパー(6)の先端部による前記キャリッジ(5)の係止が解除された後に、前記ストッパー(6)の先端部が前記枠プレート(1)の穴部(1b)に沈み込んだ状態のまま、前記ツマミ(7)が前記キャリッジ(5)に対して前記所定方向へさらに相対移動することが可能であることを特徴とするすべり出し窓用ステー。
【請求項2】
前記アーム(3)には、前記キャリッジ(5)との連結部(11)から前記障子プレート(2)との連結部(12)とは反対側へ延びるテール部(3a)が設けられ、
前記障子プレート(2)が所定の開度以下の状態では、前記アーム(3)のテール部(3a)が、前記キャリッジ(5)に対する前記ツマミ(7)の前記所定方向への相対移動を阻止することを特徴とする
請求項1に記載のすべり出し窓用ステー。
【請求項3】
前記枠プレート(1)には、障子が最大開度まで開いた状態における前記キャリッジ(5)の位置に対応して保持リブ(9a)が設けられ、
前記保持リブ(9a)が前記ツマミ(7)の裏側に当接することにより、障子が開いた状態から閉まる方向への前記キャリッジ(5)の摺動を抑制し、これに加えて、又はこれに代わって、障子を閉める際に、前記キャリッジ(5)に対して前記ツマミ(7)を初期位置へ相対移動させることを特徴とする
請求項1又は2に記載のすべり出し窓用ステー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、障子の屋外面を室内側から清掃できる拡大開口モードを備えたすべり出し窓用ステーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されたすべり出し窓用ステーは、窓サッシの枠に取り付けられる枠プレートに摺動するキャリッジが設けられ、このキャリッジには短い揺動リンクであるアームが、枠プレートには長い揺動リンクであるアームがそれぞれ回動自在に連結され、これらのアームには障子プレートが回動自在に連結されて、これらの要素が連鎖した機構を構成するものとされている。
【0003】
キャリッジには、障子プレートの開度を規制・解除するためのツマミを備えたストッパーが設けられている。このストッパーによりキャリッジの摺動が規制され、枠プレートに対して障子プレートが小さな開度を限度として開く通常開口モードと、枠プレートに対して障子プレートが最大角度まで開く拡大開口モードとを切り替えることができる。
【0004】
上記のようなステーを横すべり出し窓に適用する際には、対称形状の左勝手のものと右勝手のものとを使用し、それぞれの枠プレートの長さ方向を上下に向けて、枠プレートを窓サッシの両側の縦枠に取り付け、障子プレートを障子の両側の縦框に取り付ける。
【0005】
そして、拡大開口モードにして障子を開くと、障子は窓サッシの上枠から離れるように大きく開くので、その間隙部を介して腕を突き出すことにより、障子の屋外面に付着した汚れを室内側から拭き取ることができる。
【0006】
また、特許文献2に示されたすべり出し窓用ステーも、特許文献1に記載のステーと同様に、キャリッジを枠プレートに対して移動させるとともに、枠プレートに対して障子プレートが小さな開度を限度として開く通常開口モードと、大きな開度まで開く拡大開口モードとを切り替える機構を有している。
【0007】
このステーでは、枠プレートに位置及び向きが異なる複数のガイド部が設けられ、これに摺接するように、キャリッジに連結された短いアームに当接ガイドが設けられている。また、枠プレートの略全長にわたって、キャリッジを包み込むようにガイド板部やガイドレール部が形成されている。
【0008】
これにより、障子を開閉する際に、障子の開度が小さい場合では、キャリッジの位置に応じて短いアームの傾斜姿勢を変化させている。また、障子の開度が大きくなった領域では、キャリッジの摺動中における短いアームの姿勢を一定に維持し、かつ、枠プレートからのキャリッジの逸脱を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2015-190310号公報
【文献】特開2014-080733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のようなすべり出し窓用ステーでは、キャリッジが枠プレートの穴部に対して垂直に進退するストッパーやばねを備えていることから、特にキャリッジ側の部品点数が多い複雑な構造となり、厚く大型になるため、窓サッシの見付け幅を大きくとらざるを得ず、窓の意匠や開口面積の観点から不利になるという問題がある。
【0011】
また、拡大開口モードにして障子の屋外面を清掃する際、及び清掃が終了して通常開口モードに戻す際の両方において、左右のキャリッジのツマミを操作する必要があり、特に幅寸法が大きな横すべり出し窓に用いた場合には、両腕を左右に伸ばしても、同時に左右のステーのツマミを操作することができない。そのため、清掃者は一方のステーのツマミを操作した後、他方のステーのツマミを操作可能な位置まで移動する必要があり、作業効率が著しく悪いという問題がある。
【0012】
このような不都合を解消するため、一方のステー(例えば向かって左側)には、キャリッジを係止するストッパーを有するものを使用し、他方のステー(例えば向かって右側)には、そのようなストッパーのないものを使用することが考えられるが、この場合、ストッパーがないステーにおいては、障子を開く際、障子の自重によって短いアームの回動よりも先にキャリッジが下がり始めてしまい、障子の戸尻側である上部が窓サッシの縦枠に干渉する恐れがある。
【0013】
その対策として、特許文献2のようなすべり出し窓用ステーを使用すると、障子の両側のステーのうち、一方のステーにストッパーを設けなくても、キャリッジの位置に応じてガイド部の誘導により短いアームの回動角が変化するので、障子の上部が窓サッシの縦枠に干渉してしまう恐れはない。
【0014】
ところが、このようなステーは、枠プレートに複数の切り起こしを必要とするほか、短いアームに当接ガイドのような部品を備える必要があり、部品点数が多い複雑な構造となる。また、枠プレートの形状も、キャリッジを包み込むように構成されているため、ステー全体が幅広で分厚く大型になり、窓サッシの見付け幅等を大きくとらざるを得ず、窓の意匠や開口面積の観点から不利になるという問題がある。また、枠プレートが複雑な形状をしているために、その周辺に埃がたまりやすく、かつ掃除もしにくいために、見栄えも悪くなりやすい。
【0015】
そこで、この発明は、通常開口モードから拡大開口モードへの切替操作を簡単に行うことができ、また、障子を開ける際、障子の戸尻側と窓サッシの干渉が防止され、かつ、薄くコンパクトに構成されたすべり出し窓用ステーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記のような課題を解決するため、この発明は、窓サッシの枠に取り付けられる枠プレートと、障子の框に取り付けられる障子プレートと、前記枠プレートの長さ方向に沿って摺動するキャリッジと、前記キャリッジに前記障子プレートを回動自在に連結するアームとを備え、前記枠プレートに対して前記障子プレートが開閉する連鎖機構が構成されたすべり出し窓用ステーにおいて、
前記枠プレートには、前記枠プレートの厚さ方向に先端部が弾力的に揺動するストッパーが設けられ、前記キャリッジには、前記枠プレートの長さ方向に相対移動可能に嵌合保持されたツマミが設けられ、
前記キャリッジに対し前記ツマミが初期位置にあって、前記ストッパーの先端部が前記枠プレートに設けられた穴部から突出している状態では、前記ストッパーの先端部に前記キャリッジが係止されることにより、前記キャリッジの前記枠プレートに対する前記ストッパーの先端部を越えた摺動が規制されて、通常開口モードとなっており、
前記キャリッジに対する前記ツマミの所定方向への相対移動に伴い、前記ストッパーが前記ツマミに押され、前記ストッパーの先端部が前記枠プレートの穴部に沈み込むと、前記ストッパーの先端部による前記キャリッジの係止が解除され、前記キャリッジの前記枠プレートに対する前記ストッパーの先端部を越えた摺動が許容されて、拡大開口モードとなるものとしたのである。
【0017】
また、前記ツマミが前記ストッパーの先端部を前記枠プレートの穴部に沈み込ませる際、先端部が弾力的に揺動した前記ストッパーから受ける反力は前記キャリッジによって支承され、
前記ストッパーの先端部による前記キャリッジの係止が解除された後に、前記ストッパーの先端部が前記枠プレートの穴部に沈み込んだ状態のまま、前記ツマミが前記キャリッジに対して前記所定方向へさらに相対移動することが可能であるものとしたのである。
【0018】
さらに、前記アームには、前記キャリッジとの連結部から前記障子プレートとの連結部とは反対側へ延びるテール部が設けられ、
前記障子プレートが所定の開度以下の状態では、前記アームのテール部が、前記キャリッジに対する前記ツマミの前記所定方向への相対移動を阻止するものとしたのである。
【0019】
また、前記枠プレートには、障子が最大開度まで開いた状態における前記キャリッジの位置に対応して保持リブが設けられ、
前記保持リブが前記ツマミの裏側に当接することにより、障子が開いた状態から閉まる方向への前記キャリッジの摺動を抑制し、これに加えて、又はこれに代わって、障子を閉める際に、前記キャリッジに対して前記ツマミを初期位置へ相対移動させるものとしたのである。
【0020】
また、障子と窓サッシの干渉を防止するため、上記ストッパーの有無に係わらず、窓サッシの枠に取り付けられる枠プレートと、障子の框に取り付けられる障子プレートと、前記枠プレートの長さ方向に沿って摺動するキャリッジと、前記キャリッジに前記障子プレートを回動自在に連結するアームとを備え、前記枠プレートに対して前記障子プレートが開閉する連鎖機構が構成されたすべり出し窓用ステーにおいて、
前記キャリッジは、前記枠プレートの長さ方向の縁部を抱き込む形状とされ、
前記枠プレートには、障子を閉じた状態における前記アームに近接し、かつ、前記キャリッジから前記枠プレートの長さ方向に離れた位置に、略弧状の支持ガイド溝又は係合凸部のいずれか一方が設けられ、前記アームには、前記支持ガイド溝又は係合凸部のいずれか他方が設けられ、
障子を閉じた状態から開く際に、前記係合凸部が前記支持ガイド溝に係合して、支持されつつ案内され、その係合が解除されるまでの間、前記キャリッジの前記枠プレートに対する摺動が規制されるものとしたのである。
【発明の効果】
【0021】
この発明に係るすべり出し窓用ステーでは、キャリッジに対してツマミを一方向へ動かすことにより、枠プレートに設けられたストッパーの先端部を弾力的に揺動させて、通常開口モードと拡大開口モードとを切り替えるので、キャリッジの内部に多数の部品から構成された切替機構を設ける必要がなく、構造を簡素化してキャリッジを薄くコンパクトにすることができる。
【0022】
したがって、窓の意匠をスマートなものとし、開口面積を大きく確保することができ、建築物における用途の多様化を図ることができる。
【0023】
また、すべり出し窓の障子の両側のいずれか一方側にのみキャリッジを枠プレートに係止するストッパーを備えたステーを使用し、他方側にこのようなストッパーがないステーを使用する場合でも、少なくとも障子の他方側に使用するステーを、枠プレート側とアーム側のいずれか一方に設けた支持ガイド溝に、他方に設けた係合凸部が係合するものとすれば、アームの回動よりも先にキャリッジが動いてしまうことがなく、障子が窓サッシに干渉する現象が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明の実施形態に係るすべり出し窓用ステー(左勝手)の施工状態での動作概要を示す正面図
【
図2】同上のステーの通常開口モードで障子プレートが開いた状態を示す斜視図
【
図3】同上の(3A)キャリッジ単体を示す斜視図、(3B)ツマミ単体を示す背面側からの斜視図
【
図4】同上のストッパー単体を示す(4A)斜視図、(4B)正面図、(4C)正面図におけるB-B断面図、(4D)正面図におけるA-A断面図
【
図5】同上の枠プレート、ストッパー、キャリッジ及びツマミの関係を示す斜視図
【
図6】同上のステーの通常開口モードで障子が開いている状態を(6A)ストッパー部分が幅方向中央からずれた断面、(6B)幅方向中央の断面でそれぞれ示す概略図
【
図7】同上の拡大開口モードへの切替操作を示すキャリッジ部分の正面図
【
図8】同上のツマミを上方へ動かした状態を(8A)ストッパー部分が幅方向中央からずれた断面、(8B)幅方向中央の断面でそれぞれ示す概略図
【
図9】同上のキャリッジを枠プレートに対して下降させストッパーにツマミとキャリッジが被さった状態を(9A)ストッパー部分が幅方向中央からずれた断面、(9B)幅方向中央の断面でそれぞれ示す概略図
【
図10】同上のキャリッジを枠プレートに対してさらに下降させストッパーにキャリッジが被さった状態を(10A)ストッパー部分が幅方向中央からずれた断面、(10B)幅方向中央の断面でそれぞれ示す概略図
【
図11】同上の(11A)障子が閉じた状態を示す正面図、(11B)障子が開く初期状態を示す正面図
【
図12】同上の拡大開口モードにおける最大開度でツマミが保持リブに当接した状態を示す(12A)キャリッジ周辺の正面図、(12B)部分縦断側面図
【
図13】この発明の実施形態に係るすべり出し窓用ステー(右勝手)の全体構成を通常範囲の開口状態で示す斜視図
【
図14】同上の枠プレートに対するアームの(14A)閉じた状態、(14B)開く過程の初期状態、(14C)開く過程の中間状態をそれぞれ示す部分正面図
【
図15】同上の枠プレートに対する(15A)キャリッジとショートアームの連結部詳細断面図、(15B)補強板の斜視図
【
図16】この発明の実施形態におけるストッパーの他例の(16A)キャリッジ係止解除前、(16B)ツマミによるキャリッジ係止解除直後、(16C)キャリッジの移動開始直後、(16D)キャリッジの被さり状態をそれぞれ示す部分断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照し、この発明に係るすべり出し窓用ステーの好ましい実施形態について説明する。この発明に係るステーを横すべり出し窓に適用する場合、窓サッシの左の縦枠に左勝手用のものを取り付け、右の縦枠に右勝手用ステーを取り付ける。まず、左勝手用のすべり出し窓用ステーを
図1乃至
図12に基づいて説明する。
【0026】
このすべり出し窓用ステーは、
図1及び
図2に示すように、窓サッシ30の縦枠31に長さ方向を上下に向けて取り付けられる枠プレート1と、障子40の縦框41に取り付けられる障子プレート2と、短い揺動リンクであるアーム3と、長い揺動リンクであるアーム4とが連鎖し、枠プレート1に対して障子プレート2が所定の動作で開閉するように構成されている。そして、枠プレート1には、その長さ方向に沿って上下方向に摺動するキャリッジ5が設けられている。
【0027】
キャリッジ5は、枠プレート1の長さ方向の両縁部を抱き込むように構成されている。また、枠プレート1は、キャリッジ5が摺動する範囲において、長さ方向の両縁部が平板状に形成されている。
【0028】
アーム3は、キャリッジ5及び障子プレート2の上部にそれぞれ連結部11,12を介して回動自在に連結され、アーム4は、枠プレート1及び障子プレート2の下部にそれぞれ連結部13,14を介して回動自在に連結されている。
【0029】
枠プレート1には、窓サッシ30の縦枠31への固定用として、複数個の取付穴1aが長さ方向に間隔をあけて形成されている。また、障子プレート2には、障子40の縦框41への固定用として、複数個の取付穴2aが長さ方向に間隔をあけて形成されている。
【0030】
枠プレート1の上部には、通常開口モードで枠プレート1に対するキャリッジ5の移動を制限するため、弾性を有するプラスチック製のストッパー6が設けられている。また、キャリッジ5には、枠プレート1とキャリッジ5とが係合した状態と係合しない状態とを切り替えるツマミ7が設けられている。
【0031】
通常開口モードでは、キャリッジ5が枠プレート1の上端側に位置してストッパー6が作用し、枠プレート1に対して障子プレート2が閉じた状態から小開口位置(開度α1:約20°~40°程度)まで開くようになっている。
【0032】
この状態から、ツマミ7をキャリッジ5に対して上方へ動かすと、枠プレート1に対するキャリッジ5の移動制限が解除され、キャリッジ5を枠プレート1の下端側へ移動させることにより、枠プレート1に対して障子プレート2が大開口位置(開度α2:約65°~90°程度)まで開く拡大開口モードとすることができる。
【0033】
また、
図2に示すように、枠プレート1には、その上端部を構成するガイド部材8が設けられている。ガイド部材8には、障子が閉じた状態におけるアーム3に近接し、かつ、キャリッジ5から枠プレート1の長さ方向に離れた位置に、略弧状の支持ガイド溝10aが形成されている。支持ガイド溝10aは、アーム3の迫出側である開放端寄りの幅が広くなっている。さらに、ガイド部材8には、支持ガイド溝10aに連続してキャリッジ5の方向へ延びる案内壁10bが設けられている。
【0034】
また、アーム3には、キャリッジ5との連結部11から障子プレート2との連結部12とは反対側へ延びるテール部3aが設けられ、障子プレート2との連結部12寄りに、支持ガイド溝10aに係合可能な係合凸部10cがバーリングや、ピンカシメ等の手段により形成されている。
【0035】
また、枠プレート1の下端寄り部分の表面には、僅かに突出した上下に延びる短い2本の保持リブ9aと、その下方に位置してキャリッジ5の下限位置を規定するストッパー突起9bとが形成されている。
【0036】
キャリッジ5は、
図3(3A)に示すように、背面の両側部に抱込溝5aを有し、抱込溝5aが枠プレート1の長さ方向の両側縁部を摺動自在に抱き込んでいる。また、表面の両側部に一対のガイド側壁5bを備え、このガイド側壁5bがツマミ7を上下方向に移動するように案内する。
【0037】
枠プレート1、障子プレート2、アーム3,4は金属製であり、これらの連結部12,13,14においては、樹脂製ワッシャなどを介して揺動自在となるように、金属製リベット等を用いてカシメなどで固定されている。
【0038】
ここで、アーム3とキャリッジ5とを連結する連結部11では、
図15(15A)に示すように、樹脂製のキャリッジ5を補強する目的も兼ねて、金属製のリベット50と金属製の補強板52によりアーム3とキャリッジ5とが挟み込まれ、リベット50のカシメ部50aが補強板52のカシメ受部52bにカシメにより固定されている。
【0039】
なお、金属部品同士であるアーム3とリベット50との間には、樹脂製のワッシャ51が挟み込まれ、これにより、キャリッジ5とアーム3との間に所定の摩擦トルクが生じ、ステーの開閉速度が緩速化されている。また、他の連結部12,13,14においても、同様の構成により摩擦トルクを発生させ、ステーの開閉速度の緩速化を図っている。
【0040】
補強板52は、
図15(15B)に示すように、補強部52aと2カ所の拘束部52cとを有している。拘束部52cは、枠プレート1における窓サッシの縦枠に面する側に配置されて、枠プレート1の長さ方向の両側縁部を抱き込むように構成されている。このような構成により、キャリッジ5が補強されるだけでなく、火災時にキャリッジ5が溶融しても、補強板52の拘束部52cによって、障子の落下などを防止することができる。
【0041】
そして、
図3(3A)に示すように、キャリッジ5の連結部11の下方には、ツマミ7が上下方向に移動可能に嵌まり込む嵌合穴5cが開口し、嵌合穴5cの上縁には、中央部に下方への凸出縁5c
1が、それに隣接する両側部に上方へ切れ込む凹入縁5c
2がそれぞれ形成され、嵌合穴5cの側縁に臨む部分には、背面側に段差溝5dが形成されている。
【0042】
また、
図4(4A)~(4D)に示すように、ストッパー6は、平板状の固定部6aから上方に可撓部6bが延びる形状をなしている。可撓部6bは、幅方向の中央部がリブ状の峰盛部6b
11とされ、その両側に固定部6aから上方へ切欠ガイド面6b
21,傾斜押込面6b
22及び押込頂部6b
23が順次形成されたものとなっている。押込頂部6b
23は、傾斜押込面6b
22の最頂部であり、円弧形状、又は平面状をなしている。ここで、傾斜押込面6b
22と押込頂部6b
23とを併せて、押込面6sと呼ぶ。峰盛部6b
11の先端面は、係止当接面6b
12とされている。
【0043】
図5に示すように、ストッパー6の可撓部6bの長さ方向は、枠プレート1の長さ方向に向けられ、ストッパー6の一端側の固定部6aは、枠プレート1の裏面に固定されている。そして、他端側の可撓部6bに撓みのない状態において、峰盛部6b
11は、枠プレート1に形成された穴部1bを介して先端側が迫り出し、係止当接面6b
12は、枠プレート1の表面に対して垂直な面をなしている。
【0044】
通常開口モードにおいては、係止当接面6b12がキャリッジ5の凸出縁5c1に当接することで、キャリッジ5が所定位置よりも下降しないように係止される。また、切欠ガイド面6b21は、枠プレート1の表面と同一面或いは枠プレート1の表面よりわずかに没入した面をなし、傾斜押込面6b22は、切欠ガイド面6b21から峰盛部6b11の先端側方へ向けて穴部1bから斜めに突出している。
【0045】
一方、ツマミ7は、キャリッジ5の嵌合穴5cに嵌まり込んだ状態で、ストッパー6の傾斜押込面6b
22に向き合う摺押稜部7a及び摺押平坦部7bを有している。ここで、
図3(3B)に示すように、摺押稜部7aと摺押平坦部7bを併せて、摺押面7sと呼ぶ。ツマミ7の摺押稜部7aは、傾斜押込面6b
22を押圧してストッパー6を撓ませるために円弧形状、又はC面取り形状等になっている。
【0046】
そして、摺押稜部7a及び摺押平坦部7bは、ツマミの背面側への突出部から、両側方へ張り出したガイド片7dにわたって形成されている。両側の摺押面7sの間の部分は、ストッパー6の峰盛部6b11の幅よりも少し広い幅で窪んでいる。また、ツマミ7の摺押稜部7aに連続して、キャリッジ5の凹入縁5c2に当接する押進部7cが形成されている。
【0047】
ガイド片7dは、キャリッジ5の段差溝5dにおいて、横すべり出し窓の施工状態で上下方向に移動可能に嵌合し、ツマミ7のガイド片7dが枠プレート1の穴部1bの両側縁に臨む部分とキャリッジ5の段差溝5dの間に挟まれている。
【0048】
次に、上記すべり出し窓用ステーの動作を説明する。ここで参照する図面のうち、
図6(6A)、
図8(8A)、
図9(9A)、
図10(10A)は、
図4(4B)のB-B切断線(幅方向中央からずれた位置)に沿ってストッパー6周辺を切断し、他の部分を幅方向中央位置で切断した断面図であり、
図6(6B)、
図8(8B)、
図9(9B)、
図10(10B)は、図示範囲の全体にわたり同A-A切断線(幅方向中央位置)に沿って切断した断面図である。
【0049】
このステーにおいて、通常開口モードで障子を閉じた状態から開き始めると、枠プレート1に対してキャリッジ5が少し下がるが、
図6(6A)に示すように、ツマミ7が嵌合穴5cの下端に位置して、摺押稜部7a、摺押平坦部7bがストッパー6の切欠ガイド面6b
21を押し込むことはなく、可撓部6bが撓まないので、
図6(6B)に示すように、可撓部6bの先端の係止当接面6b
12がキャリッジ5の嵌合穴5cの凸出縁5c
1に係合し、枠プレート1に対するキャリッジ5の下方への移動が制限される。
【0050】
この状態から、
図7に示すように、指等によりツマミ7をキャリッジ5に対して所定方向(上方)へ動かすと、
図8(8A)に示すように、ツマミ7の摺押面7s(摺押稜部7a、摺押平坦部7b)がストッパー6の切欠ガイド面6b
21及び押込面6s(傾斜押込面6b
22、押込頂部6b
23)に順次摺接し、摺押平坦部7bが押込頂部6b
23を押圧して、ストッパー6の可撓部6bを撓ませ、枠プレート1の穴部1bに沈み込ませる。これにより、
図8(8B)に示すように、ストッパー6によるキャリッジ5の係止が解除される。
【0051】
このとき、
図8(8A)に示すように、ツマミ7は、ストッパー6の先端部が穴部1bに沈み込んだ状態のまま、キャリッジ5に対して所定方向(上方)へさらに相対移動することが可能である。そして、ツマミ7の押進部7cは、嵌合穴5cの凹入縁5c
2に当接するまで、上昇させることができる。
【0052】
ツマミ7の押進部7cが嵌合穴5cの凹入縁5c
2に当接した時点では、
図8(8B)に示すように、キャリッジ5は、ストッパー6の峰盛部6b
11に被さっていないが、ストッパー6の可撓部6bが枠プレート1の穴部1bに沈み込み、ストッパー6とキャリッジ5との係合が外れ、拡大開口モードとなる。
【0053】
ここで、ストッパー6が撓むことで発生する反力は、ツマミ7の摺押平坦部7bにかかり、この力は、さらにツマミ7のガイド片7dを介して、キャリッジ5の段差溝5dの溝底に押し付けられて支承される。ツマミ7がストッパー6を押し込んでいる状態では、キャリッジ5とツマミ7との間で摩擦力が発生するので、ツマミ7から指を離しても、ツマミ7は自重などで落下することはなく、ツマミ7がキャリッジ5に対して下がらないように一定の位置に保持される。
【0054】
その後、キャリッジ5を枠プレート1に対して下降させると、
図9(9A)に示すように、ツマミ7は押進部7cがキャリッジ5の凹入縁5c
2に当接した状態を保って下方に移動するが、押込頂部6b
23は摺押平坦部7bによって押圧されているため、ストッパー6の可撓部6bが枠プレート1の穴部1bに沈み込んだ状態が維持されている。
【0055】
このとき、
図9(9B)に示すように、キャリッジ5が可撓部6bの峰盛部6b
11に被さり、可撓部6bの復元が阻止されていることから、キャリッジ5は、ストッパー6の可撓部6bの先端に引っ掛かることなく、枠プレート1に対して下方へ移動する。この時点では、ストッパー6の撓みによって発生する反力がツマミ7の摺押平坦部7bに作用しているので、ツマミ7とキャリッジ5との間に摩擦力が発生し、ツマミ7はキャリッジ5と共に下方へ移動する。
【0056】
さらに、
図10(10A)、(10B)に示すように、キャリッジ5を枠プレート1に対して下降させると、ツマミ7によるストッパー6の押圧は解除されるが、既にキャリッジ5が可撓部6bの峰盛部6b
11に被さっているため、キャリッジ5の背面側の摺動面5fによって峰盛部6b
11が押圧され、ストッパー6の可撓部6bが枠プレート1の穴部1bに沈み込んだ状態が維持される。
【0057】
その結果、キャリッジ5は、ストッパー6の可撓部6bの先端に引っ掛かることなく、枠プレート1に対して下方へ移動可能となる。この時点では、ストッパー6の撓みによって発生する反力はツマミ7に作用せず、キャリッジ5にのみ作用し、ツマミ7に対する摩擦力が生じないので、ツマミ7はキャリッジ5に対して拘束されることなく、自重によって下方へ移動可能となる。
【0058】
これにより、
図1に示すように、障子40は窓サッシ30の上枠32から離れて、最大開度α
2まで大きく開くので、その隙間を介して腕を突き出すことにより、障子40の屋外面に付着した汚れを室内側から拭き取ることができる。
【0059】
上記のようなすべり出し窓用ステーでは、キャリッジ5に対してツマミ7を上方へ動かすことにより、枠プレート1に設けられたストッパー6の先端部を弾力的に揺動させて、通常開口モードと拡大開口モードとを切り替えるので、キャリッジ5の内部に多数の部品から構成された切替機構を設ける必要がなく、構造を簡素化してキャリッジ5を薄くコンパクトにすることができる。
【0060】
したがって、窓の意匠をスマートなものとし、開口面積を大きく確保することができ、建築物における用途の多様化を図ることができる。
【0061】
ところで、上記すべり出し窓用ステーでは、
図11(11A)に示すように、枠プレート1に対して障子プレート2を閉じているとき、アーム3のテール部3aがツマミ7の上昇を阻止している。
【0062】
そして、
図11(11B)に示すように、障子を開く際、枠プレート1に対して障子プレート2が小さな開度β
1である間は、ツマミ7の上昇が阻止された状態が維持される。
【0063】
その後、
図1に示すように、障子をさらに開いて、障子プレート2が通常開口モードの最大の開度α
1又はその付近の所定の開角に達すると、テール部3aの揺動に伴い、ようやくツマミ7の上方が開放される。これにより、
図7に示すように、ツマミ7の移動操作が可能になり、キャリッジ5のストッパー6による係止が解除されて、拡大開口モードに移行できるようになる。その結果、障子プレート2を、
図1に示すように、拡大開口モードの最大の開度α
2まで開けることができる。
【0064】
したがって、障子の開角が小さい範囲で窓を開閉し、全開操作が不必要な状況下では、通常開口モードから拡大開口モードへの切り替えが阻止され、不意に障子が大きく開いてしまう事態が防止される。
【0065】
また、通常開口モードにおける最大開度α1まで障子プレート2を開いた状態では、アーム3の当接部3bがキャリッジ5のアーム規制面5gに当接することにより、キャリッジ5とアーム3は一定の角度で保持される。
【0066】
一方、拡大開口モードで開いた障子を閉める際には、上記動作とは反対に、アーム3のテール部3aがツマミ7を押し、ツマミ7がキャリッジ5に対して下方へ動き、ツマミ7によるストッパー6の可撓部6bの押し込みが解除されるので、キャリッジ5にストッパー6が係合し、枠プレート1に対してキャリッジ5の移動が制限された状態で、枠プレート1に対して障子プレート2を完全に閉じることができる。
【0067】
このように、障子を閉めるだけで、ツマミ7はストッパー6を押圧しない位置(初期位置)に戻り、通常開口モードへ自動的に復帰するので、拡大開口モードから通常開口モードに切り替え操作を行う必要はない。また、障子が開いた状態において、悪戯でツマミ7を上方の戸尻枠側に移動させておいても、障子が閉じる途中で、強制的にツマミ7は下方の戸先枠側に移動して通常開口モードに復帰するので、障子を閉鎖した後に再度開けたとき、不意に障子が大きく開いてしまう事態が防止される。
【0068】
なお、
図11(11A)の状態では、図示しない障子によって、ツマミ7などのステーの主要部分がほぼ覆われた状態となっており、ツマミ7の周辺に外部から手を入れて操作することはできないため、障子を閉鎖している状態において、ツマミ7に何らかの悪戯を仕掛ける行為も防止できる。
【0069】
また、
図12(12A)、(12B)に示すように、キャリッジ5を枠プレート1の下端寄りまで下降させて、拡大開口モードで障子を最大開度まで開くと、枠プレート1の保持リブ9aが、キャリッジ5の摺動面5fに摩擦力をもって当接するとともに、キャリッジ5の嵌合穴5cを介してツマミ7の裏側に摩擦力をもって当接する。
【0070】
したがって、キャリッジ5が障子を最大開度まで開いた状態の位置に保持され、障子が全開状態から突然閉まらないようにブレーキとして働く。その結果、障子の屋外面を室内側から腕を突き出して清掃している際に、窓が強風に煽られたりして突然閉まり、腕を挟まれる事故を防止できる。
【0071】
そして、拡大開口モードで障子を最大開度まで開くと、ツマミ7は保持リブ9aから受ける摩擦力により、嵌合穴5cの内部において、上端縁に突き当たる位置まで移動した状態で保持される。
【0072】
一方、最大開度まで開いた障子を閉める際には、上方へ移動するキャリッジ5に対して保持リブ9aに引っ掛かったツマミ7の追随が遅れ、キャリッジ5に対してツマミ7が下方へ動き、ツマミ7の位置がストッパー6を押圧しない位置(初期位置)となり、窓が閉じられると、ストッパー6によりキャリッジ5が係止されて、通常開口モードに復帰するので、前述のアーム3のテール部3aの作用と相俟って、障子を清掃後に開けたとき、不意に障子が大きく開いてしまう事態が確実に防止され、優れた安全性が確保される。
【0073】
次に、上記左勝手のステーと対をなしてすべり出し窓に適用される右勝手のステーを
図13及び
図14に基づいて説明する。
【0074】
このステーは、
図13に示すように、上記左勝手のステーと異なり、枠プレート1にキャリッジ5を係止するためのストッパー6がなく、キャリッジ5はストッパー6を押し込むツマミ7を備えていない。
【0075】
しかしながら、上記左勝手のステーと同様、枠プレート1には、その上端部を構成するガイド部材8が設けられている。ガイド部材8には、障子が閉じた状態におけるアーム3に近接し、かつ、キャリッジ5から枠プレート1の長さ方向に離れた位置に、略弧状の支持ガイド溝10aが形成されている。支持ガイド溝10aは、アーム3の迫出側である開放端寄りの幅が広くなっている。さらに、ガイド部材8には、支持ガイド溝10aに連続してキャリッジ5の方向へ延びる案内壁10bが設けられている。
【0076】
また、アーム3には、障子プレート2との連結部12寄りに、支持ガイド溝10aに係合可能な係合凸部10cがバーリングや、ピンカシメ等の手段により形成されている。
【0077】
上記のような右勝手のステーをすべり出し窓に適用すると、
図14(14A)に示すように、障子40を閉じた状態から開く際、
図14(14B)に示すように、係合凸部10cが支持ガイド溝10aに係合して、支持されつつ案内され、
図14(14C)に示すように、係合凸部10cと支持ガイド溝10aの係合が解除されるまでの間、キャリッジ5の枠プレート1に対する下降が規制される。
【0078】
このため、前述の左勝手のステーのように、枠プレート1とキャリッジ5の相対移動を制限するストッパー6がなくても、アーム3の回動よりも先にキャリッジ5が下がってしまうことがなく、障子40の上框42が窓サッシ30の干渉ラインCLを越えて縦枠31の上部に干渉する現象が回避される。
【0079】
また、この右勝手のステーでは、キャリッジ5の表面側に、アーム3のテール部3aを支持しつつ案内するガイド段差5eが形成されているので、障子40を閉じた状態から開く際、上述の支持ガイド溝10aによる係合凸部10cの案内と相俟って、アーム3のがたつきが抑制され、アーム3がスムーズに回動する。そして、係合凸部10cは、支持ガイド溝10aを離脱した後、案内壁10bに案内され、アーム3は安定して揺動する。
【0080】
このような右勝手のステーを、上記左勝手のステーのようにストッパー6を有するステーと組み合わせて使用すると、通常開口モードから拡大開口モードに切り替えて障子を開ける際、一方(左勝手)のステーのツマミ7のみを操作すればよいので、窓の横幅が両腕を横に伸ばした長さより広い場合でも、障子を容易に大きく開けることができ、清掃作業の効率を大幅に改善することが可能になる。
【0081】
また、このステーでは、キャリッジ5の位置に応じてアーム3の姿勢を規制するための要素として、キャリッジ5と枠プレート1の厚さ方向に重畳した部分を設ける必要がないため、スリムでコンパクトにすることが可能になる。
【0082】
なお、上記実施形態では、支持ガイド溝10a及び案内壁10bを枠プレート1側のガイド部材8に設け、係合凸部10cをアーム3に設けたが、アーム3側に支持ガイド溝10a及び案内壁10bを設け、ガイド部材8に係合凸部10cを設けてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、左勝手のステーがストッパー6を有するものとし、右勝手のステーがストッパー6のないものとしたが、これとは逆に、右勝手のステーがストッパー6を有するものとし、左勝手のステーがストッパー6のないものとしてもよい。
【0084】
また、上記実施形態においては、ストッパー6として、それ自体が弾性を有し、一端側が枠プレート1に片持ち固定されたものを例示したが、他の実施形態として、例えば、
図16に示すように、ストッパー6は、回動中心軸6yにより軸支され、図示しないトーションばねによって先端部が弾力的に揺動するように付勢されたものとしてもよい。
図16に示すストッパー6では、上記実施形態のものに対して、揺動における基部と先端部の位置関係が逆転している。
【0085】
図16に示すストッパー6は、上記実施形態のストッパー6と基本的な作用はほぼ同様である。ここで、その作用について説明すると、
図16(16A)に示す状態では、ストッパー6の先端寄りの係止当接面6b
12がキャリッジ5の凸出縁5c
1に突合し、キャリッジ5がストッパー6によって係止されている。このとき、ストッパー6の先端の回動規制部6xは、付勢力により枠プレート1の背面の切欠部に押し付けられ、ストッパー6の姿勢が維持されている。
【0086】
次に、
図16(16B)に示すように、ツマミ7をキャリッジ5に対して動かし、ツマミ7の摺押面7s(摺押稜部7a,摺押平坦部7b)をストッパー6の押込面6s(傾斜押込面6b
22,押込頂部6b
23)に順次摺接させると、摺押平坦部7bが押込頂部6b
23を押圧してストッパー6を回動させ、ストッパー6の先端部が枠プレート1の穴部1bに沈み込んで、ストッパー6によるキャリッジ5の係止が解除される。
【0087】
その後、
図16(16C)に示すように、キャリッジ5を凸出縁5c
1及び凹入縁5c
2がストッパー6の押込頂部6b
23に接近する方向へ枠プレート1に沿って移動させると、キャリッジ5の凸出縁5c
1と凹入縁5c
2の段差の存在により、ストッパー6の先端部が枠プレート1の穴部1bに沈み込んだ状態が維持されつつ、キャリッジ5がストッパー6の押込頂部6b
23に被さる。
【0088】
さらに、
図16(16D)に示すように、キャリッジ5を枠プレート1に対して移動させると、ツマミ7によるストッパー6の押圧はされなくなるが、既にキャリッジ5がストッパー6の先端部に被さり、ストッパー6の先端部が枠プレート1の穴部1bに沈み込んだ状態が維持されているため、キャリッジ5をストッパー6に阻害されることなく枠プレート1に対して移動させて、拡大開口モードに移行することができる。
【0089】
なお、上記実施形態では本発明を横すべり出し窓に適用した例を開示したが、この発明はこれに限定されず、例えば、縦すべり出し窓にも適用可能である。この場合、窓サッシの上下の横枠にそれぞれステーを取り付け、各ステーの枠プレート1は、長さ方向を窓の幅方向である左右方向に向けて固定する。そして、キャリッジ5は、枠プレート1に沿って、左右方向へ移動するものとなる。
【符号の説明】
【0090】
1 枠プレート
1a 取付穴
1b 穴部
2 障子プレート
2a 取付穴
3 アーム
3a テール部
3b 当接部
4 アーム
5 キャリッジ
5a 抱込溝
5b ガイド側壁
5c 嵌合穴
5c1 凸出縁
5c2 凹入縁
5d 段差溝
5e ガイド段差
5f 摺動面
5g アーム規制面
6 ストッパー
6a 固定部
6b 可撓部
6b11 峰盛部
6b12 係止当接面
6b21 切欠ガイド面
6b22 傾斜押込面
6b23 押込頂部
6s 押込面
6x 回動規制部
6y 回動中心軸
7 ツマミ
7a 摺押稜部
7b 摺押平坦部
7c 押進部
7d ガイド片
7s 摺押面
8 ガイド部材
9a 保持リブ
9b ストッパー突起
10a 支持ガイド溝
10b 案内壁
10c 係合凸部
11,12,13,14 連結部
30 窓サッシ
31 縦枠
32 上枠
40 障子
41 縦框
42 上框
50 リベット
50a カシメ部
51 ワッシャ
52 補強板
52a 補強部
52b カシメ受部
52c 拘束部