(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 18/02 20060101AFI20240614BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
B25J18/02
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2020122986
(22)【出願日】2020-07-17
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】栗林 保
(72)【発明者】
【氏名】風間 俊道
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-289673(JP,A)
【文献】特表2011-520633(JP,A)
【文献】特開平11-077566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 18/02
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物が搭載される
複数のハンドと、
複数の前記ハンドを水平方向に直線的に移動させるためのリニア駆動機構と、前記ハンドの傾きを補正するための傾き補正機構とを備え、
前記リニア駆動機構は、前記傾き補正機構に搭載され、
前記傾き補正機構は、上下方向に対して傾いた所定の第1方向を回動の軸方向として前記ハンドを回動させる第1傾き補正機構と、上下方向に対して傾くとともに第1方向に対して傾いた第2方向を回動の軸方向として前記ハンドを回動させる第2傾き補正機構とを備える
とともに、前記リニア駆動機構を傾けることで複数の前記ハンドの傾きを補正することを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記第1傾き補正機構は、前記ハンドと一緒に第1方向を回動の軸方向として前記第2傾き補正機構を回動させることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
第1方向は、上下方向に直交する方向であり、
第2方向は、第1方向に直交する方向であることを特徴とする請求項2記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記第1傾き補正機構と前記第2傾き補正機構とが
上下方向において略同じ位置に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の産業用ロボット。
【請求項5】
前記搬送対象物の受渡しを行う受渡し位置に前記ハンドを移動させる移動機構と、前記産業用ロボットを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記傾き補正機構による補正動作が行われても、前記受渡し位置に配置された前記ハンドに搭載される前記搬送対象物の中心の上下方向および水平方向の位置が一定となるように、前記移動機構を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の搬送対象物を搬送する産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、露光装置で使用されるマスク等の薄板状の搬送対象物を搬送する産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の産業用ロボットは、搬送対象物が搭載されるハンドと、ハンドの基端側を支持するリニア駆動部と、リニア駆動部を支持する本体部と、本体部を水平方向に移動可能に支持するベース部材とを備えている。リニア駆動部は、ハンドを直線的に移動させる。
【0003】
また、特許文献1に記載の産業用ロボットは、搬送対象物が搭載されたときのハンドおよびリニア駆動部の撓みに起因する搬送対象物の傾きを補正するための傾き補正機構を備えている。傾き補正機構は、リニア駆動部と本体部との連結部分に形成される支点部を回動中心にして、本体部に対してハンドおよびリニア駆動部を回動させる。また、傾き補正機構は、リニア駆動部によって移動するハンドの移動方向に直交するとともに上下方向(鉛直方向)に直交する方向を回動の軸方向として、本体部に対してハンドおよびリニア駆動部を回動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の産業用ロボットが搬送対象物を搬送して所定の受渡し部に引き渡すときや、受渡し部に配置された搬送対象物を産業用ロボットが受け取るときの搬送対象物の損傷を防止するために、搬送対象物の受渡しをするときに搬送対象物に加わる衝撃は可能な限り小さい方が好ましい。搬送対象物の受渡し時の衝撃を抑制するためには、搬送対象物が搭載される受渡し部の搭載面と、搬送対象物が搭載されるハンドの搭載面とが可能な限り平行に近くなっていることが好ましい。一方で、受渡し部のばらつきや産業用ロボットの姿勢等の影響で、受渡し部の搭載面に対してハンドの搭載面が大きく傾く場合が生じうる。
【0006】
特許文献1に記載の産業用ロボットでは、傾き補正機構によって、上下方向に直交する所定の一方向を回動の軸方向としてハンドの傾きを補正することでハンドの搭載面の傾きを補正することが可能であるが、このような補正を行っても、受渡し部の搭載面とハンドの搭載面とが平行に近づくように受渡し部の搭載面に対するハンドの搭載面の傾きを補正できない場合が生じうる。すなわち、特許文献1に記載の産業用ロボットの場合、受渡し部の搭載面とハンドの搭載面とを平行に近づけることが困難になって、搬送対象物の受渡し時の衝撃を抑制できない場合が生じうる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、搬送対象物の受渡し時の衝撃を抑制することが可能な産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットは、搬送対象物が搭載される複数のハンドと、複数のハンドを水平方向に直線的に移動させるためのリニア駆動機構と、ハンドの傾きを補正するための傾き補正機構とを備え、リニア駆動機構は、傾き補正機構に搭載され、傾き補正機構は、上下方向に対して傾いた所定の第1方向を回動の軸方向としてハンドを回動させる第1傾き補正機構と、上下方向に対して傾くとともに第1方向に対して傾いた第2方向を回動の軸方向としてハンドを回動させる第2傾き補正機構とを備えるとともに、リニア駆動機構を傾けることで複数のハンドの傾きを補正することを特徴とする。
【0009】
本発明の産業用ロボットでは、ハンドの傾きを補正するための傾き補正機構は、上下方向に対して傾いた所定の第1方向を回動の軸方向としてハンドを回動させる第1傾き補正機構と、上下方向に対して傾くとともに第1方向に対して傾いた第2方向を回動の軸方向としてハンドを回動させる第2傾き補正機構とを備えている。そのため、本発明では、第1傾き補正機構と第2傾き補正機構とを用いて、搬送対象物の受渡しが行われる受渡し部における搬送対象物の搭載面と、ハンドの、搬送対象物の搭載面とが平行に近づくように、受渡し部の搭載面に対するハンドの搭載面の傾きを補正することが可能になる。したがって、本発明では、受渡し部と産業用ロボットとの間で受渡しが行われる搬送対象物の、受渡し時の衝撃を抑制することが可能になる。
【0010】
本発明において、たとえば、第1傾き補正機構は、ハンドと一緒に第1方向を回動の軸方向として第2傾き補正機構を回動させる。また、本発明において、たとえば、第1方向は、上下方向に直交する方向であり、第2方向は、第1方向に直交する方向である。
【0011】
本発明において、第1傾き補正機構と第2傾き補正機構とが上下方向において略同じ位置に配置されていることが好ましい。このように構成すると、傾き補正機構を上下方向で小型化することが可能になる。すなわち、傾き補正機構を薄型化することが可能になる。
【0012】
本発明において、産業用ロボットは、搬送対象物の受渡しを行う受渡し位置にハンドを移動させる移動機構と、産業用ロボットを制御する制御部とを備え、制御部は、傾き補正機構による補正動作が行われても、受渡し位置に配置されたハンドに搭載される搬送対象物の中心の上下方向および水平方向の位置が一定となるように、移動機構を制御することが好ましい。このように構成すると、傾き補正機構による補正動作が行われても、受渡し部に対してハンドをより適切な位置に移動させることが可能になる。したがって、搬送対象物の受渡し時に傾き補正機構による補正動作が行われても、ハンドに搭載される搬送対象物と受渡し部の干渉、および、受渡し部に配置される搬送対象物とハンドとの干渉を防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の産業用ロボットでは、搬送対象物の受渡し時の衝撃を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットの斜視図である。
【
図2】
図1に示す搭載機構、リニア駆動機構および傾き補正機構等の斜視図である。
【
図3】
図2に示す搭載機構、リニア駆動機構および傾き補正機構等を異なる方向から示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す産業用ロボットの構成を説明するためのブロック図である。
【
図5】
図2に示す傾き補正機構の構成を説明するための平面図である。
【
図6】
図5のE-E方向から傾き補正機構の構成を説明するための側面図である。
【
図7】
図5のF-F方向から第1傾き補正機構の構成を説明するための正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
(産業用ロボットの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1の斜視図である。
図2は、
図1に示す搭載機構3、リニア駆動機構5~7および傾き補正機構8等の斜視図である。
図3は、
図2に示す搭載機構3、リニア駆動機構5~7および傾き補正機構8等を異なる方向から示す斜視図である。
図4は、
図1に示す産業用ロボット1の構成を説明するためのブロック図である。
【0017】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、搬送対象物である半導体ウエハ2(以下、「ウエハ2」とする。)を搬送するためのロボットである。ウエハ2は、薄い円板状に形成されている。ロボット1は、たとえば、複数のウエハ2が所定のピッチで積層されて収容されるカセット(図示省略)から複数のウエハ2を同時に搬出して、半導体製造システム(図示省略)を構成する所定の処理装置の中へカセットから搬出した複数のウエハ2を搬入する。また、ロボット1は、複数のウエハ2が所定のピッチで積層されて収容される処置装置から複数のウエハ2を同時に搬出して、搬出した複数のウエハ2をカセットの中へ搬入する。
【0018】
ロボット1は、複数のウエハ2が搭載される搭載機構3と、1枚のウエハ2が搭載されるハンド4と、搭載機構3を水平方向に直線的に移動させるためのリニア駆動機構5と、ハンド4を水平方向に直線的に移動させるためのリニア駆動機構6と、リニア駆動機構5、6を水平方向に直線的に移動させるためのリニア駆動機構7と、搭載機構3およびハンド4の傾きを補正するための傾き補正機構8と、傾き補正機構8を保持する本体部9と、本体部9を水平方向に移動可能に支持するベース部材10とを備えている。また、ロボット1は、ロボット1を制御する制御部11を備えている。
【0019】
搭載機構3は、ウエハ2が搭載される複数のハンド14を備えている。本形態の搭載機構3は、11個のハンド14を備えている。1個のハンド14には、1枚のウエハ2が搭載される。ハンド14の上面は、ウエハ2が搭載される搭載面となっている。具体的には、ハンド14は、ウエハ2が搭載される4個のパッドをハンド14の上面側に備えており、ウエハ2の下面が接触する4個のパッドの上面によってウエハ2の搭載面が構成されている。ウエハ2は、4個のパッドによって位置決めされた状態でハンド14の搭載面に搭載される。なお、搭載機構3が備えるハンド14の数は、10個以下であっても良いし、12個以上であっても良い。
【0020】
11個のハンド14は、上下方向において所定のピッチで重なっている。11個のハンド14は、同じ方向を向いている。ハンド4は、ハンド14とほぼ同形状に形成されている。ハンド14と同様に、ハンド4の上面も、ウエハ2が搭載される搭載面となっている。ハンド4は、11個のハンド14よりも上側に配置されている。ハンド4は、ハンド14と同じ方向を向いている。ウエハ2は、4個のパッドによって位置決めされた状態でハンド4の搭載面に搭載される。
【0021】
リニア駆動機構5は、搭載機構3を直線的に往復移動させる。すなわち、リニア駆動機構5は、11個のハンド14を直線的に往復移動させる。リニア駆動機構5は、ハンド14よりも下側に配置されている。リニア駆動機構5は、駆動源として、モータ18を備えている。モータ18は、制御部11に電気的に接続されている。また、リニア駆動機構5は、たとえば、ボールネジ(図示省略)を備えている。ボールネジは、モータ18に連結されるネジ軸と、ネジ軸に係合するナットとを備えている。ネジ軸は、リニア駆動機構5のフレームに回転可能に取り付けられている。ナットは、搭載機構3に固定される移動部材に固定されている。また、リニア駆動機構5は、たとえば、移動部材と一緒に搭載機構3を案内するガイド機構を備えている。
【0022】
リニア駆動機構6は、リニア駆動機構5によって移動するハンド14の往復移動方向と同方向へハンド4を直線的に往復移動させる。リニア駆動機構6は、ハンド14よりも下側に配置されている。リニア駆動機構6は、リニア駆動機構5と同様に、駆動源として、モータ19を備えている。モータ19は、制御部11に電気的に接続されている。また、リニア駆動機構6は、ボールネジ(図示省略)を備えている。ボールネジは、モータ19に連結されるネジ軸と、ネジ軸に係合するナットとを備えている。ネジ軸は、リニア駆動機構6のフレームに回転可能に取り付けられている。ナットは、ハンド4に固定される移動部材に固定されている。また、リニア駆動機構6は、たとえば、移動部材と一緒にハンド4を案内するガイド機構を備えている。
【0023】
リニア駆動機構7は、リニア駆動機構5、6によって移動するハンド4、14の往復移動方向と同方向へリニア駆動機構5、6を直線的に往復移動させる。すなわち、リニア駆動機構7は、リニア駆動機構5、6によって移動するハンド4、14の往復移動方向と同方向へ、ハンド14をリニア駆動機構5と一緒にさらに往復移動させるとともに、ハンド4をリニア駆動機構6と一緒にさらに往復移動させる。リニア駆動機構7は、リニア駆動機構5、6の下側に配置されている。リニア駆動機構7は、駆動源として、2個のモータ20、21を備えている。モータ20、21は、制御部11に電気的に接続されている。
【0024】
また、リニア駆動機構7は、たとえば、2本のボールネジ(図示省略)を備えている。2本のうちの一方のボールネジは、モータに20に連結されるネジ軸と、ネジ軸に係合するナットとを備えている。ネジ軸は、リニア駆動機構7のフレームに回転可能に取り付けられている。ナットは、リニア駆動機構5のフレームが固定される移動部材に固定されている。また、2本のうちの他方のボールネジは、モータ21に連結されるネジ軸と、ネジ軸に係合するナットとを備えている。ネジ軸は、リニア駆動機構7のフレームに回転可能に取り付けられている。ナットは、リニア駆動機構6のフレームが固定される移動部材に固定されている。また、リニア駆動機構7は、たとえば、2個の移動部材を案内するガイド機構を備えている。
【0025】
なお、本形態では、2個のモータ18、20を用いてハンド14を往復移動させているが、1個のモータを用いてハンド14を往復移動させても良い。同様に、本形態では、2個のモータ19、21を用いてハンド4を往復移動させているが、1個のモータを用いてハンド4を往復移動させても良い。また、本形態では、リニア駆動機構5を往復移動させるためのモータ20と、リニア駆動機構6を往復移動させるためのモータ21とが個別に設けられているが、共通のモータを用いて、リニア駆動機構5、6を往復移動させても良い。また、リニア駆動機構5~7は、ボールネジに代えて、ベルトおよびプーリ等を備えていても良い。
【0026】
傾き補正機構8は、リニア駆動機構7の下側に配置されている。リニア駆動機構7は、傾き補正機構8に搭載されている。傾き補正機構8は、リニア駆動機構7を傾けることで、ウエハ2が搭載されるハンド4、14の傾きを補正する。傾き補正機構8の具体的な構成については後述する。
【0027】
本体部9は、傾き補正機構8を昇降可能に保持する柱状フレーム31を備えている。柱状フレーム31は、上下方向に細長い柱状に形成されている。また、本体部9は、本体部9の下端部を構成するとともにベース部材10に対して水平移動可能な基台32と、柱状フレーム31の下端が固定されるとともに基台32に対して回動可能な回動ベース33とを備えている。
【0028】
ロボット1は、柱状フレーム31に対して傾き補正機構8を昇降させる昇降機構35と、上下方向を回動の軸方向として基台32に対して回動ベース33を回動させる回動機構36と、ベース部材10に対して基台32を水平移動させる水平移動機構37とを備えている。昇降機構35は、駆動源として、モータ38を備えている。回動機構36は、駆動源として、モータ39を備え、水平移動機構37は、駆動源として、モータ40を備えている。モータ38~40は、制御部11に電気的に接続されている。
【0029】
本形態では、リニア駆動機構5~7と昇降機構35と回動機構36と水平移動機構37とによって、ウエハ2の受渡しを行う受渡し位置(具体的には、カセットにおいてウエハ2の受渡しを行う受渡し位置、および、処理装置においてウエハ2の受渡しを行う受渡し位置)にハンド4、14を移動させる移動機構41が構成されている。
【0030】
(傾き補正機構の構成)
図5は、
図2に示す傾き補正機構8の構成を説明するための平面図である。
図6は、
図5のE-E方向から傾き補正機構8の構成を説明するための側面図である。
図7は、
図5のF-F方向から第1傾き補正機構45の構成を説明するための正面図である。
【0031】
傾き補正機構8は、上下方向に対して傾いた所定の第1方向を回動の軸方向として、リニア駆動機構7等と一緒にハンド4、14を回動させる第1傾き補正機構45と、上下方向に対して傾くとともに第1方向に対して傾いた第2方向を回動の軸方向として、リニア駆動機構7等と一緒にハンド4、14を回動させる第2傾き補正機構46とを備えている。本形態では、第1傾き補正機構45は、ハンド4、14と一緒に第1方向を回動の軸方向として第2傾き補正機構46を回動させる。
【0032】
本形態の第1方向は、上下方向に直交する方向である。第1方向は、ハンド4、14の往復移動方向と略一致している。第2方向は、第1方向に直交する方向である。本形態では、第2傾き補正機構46による補正動作が行われていないとき、第1方向は、ハンド4、14の往復移動方向と一致している。以下の説明では、第1方向(
図5等のX方向)を「前後方向」とし、上下方向と前後方向とに直交する
図5等のY方向を「左右方向」とする。また、以下では、説明の便宜上、前後方向の一方側である
図5等のX1方向側を「前」側とし、その反対側である
図5等のX2方向側を「後ろ」側とする。本形態では、前側は、ハンド4、14の先端側であり、後ろ側は、ハンド4、14の基端側である。
【0033】
第1傾き補正機構45は、第1傾き補正機構45と第2傾き補正機構46との連結部に形成される支点部48を回動中心にして第2傾き補正機構46と一緒にハンド4、14を回動させる。第1傾き補正機構45は、駆動源としてのモータ49と、プーリおよびベルト等を介してモータ49に連結される減速機50と、モータ49および減速機50が取り付けられるベース部材51と、減速機50の出力軸に取り付けられる偏心軸(クランク軸)52と、偏心軸52に下端部が回動可能に連結されるリンク部材53と、リンク部材53の上端部が回動可能に連結される2個の固定部材54とを備えている。なお、
図2、
図3では、第1傾き補正機構45は、カバー部材に覆われている。
【0034】
第2傾き補正機構46は、第2傾き補正機構46とリニア駆動機構7との連結部に形成される支点部58を回動中心にしてハンド4、14を回動させる。第2傾き補正機構46は、駆動源としてのモータ59と、プーリおよびベルト等を介してモータ59に連結される減速機60と、モータ59および減速機60が取り付けられるベース部材61と、減速機60の出力軸に取り付けられる偏心軸(クランク軸)62と、偏心軸62に下端部が回動可能に連結されるリンク部材63と、リンク部材63の上端部が回動可能に連結される2個の固定部材64とを備えている。なお、
図2、
図3では、第2傾き補正機構46は、カバー部材に覆われている。
【0035】
ベース部材51は、たとえば、平板状に形成されており、ベース部材51の厚さ方向と上下方向とが一致するように配置されている。ベース部材51は、モータ49および減速機50が固定される長方形状の固定部51aと、固定部51aから後ろ側に向かって突出する長方形状の2個の突出部51bとから構成されている。突出部51bは、固定部51aの左右方向の両端部の後端に繋がっている。突出部51bは、柱状フレーム31に昇降可能に保持される保持部材66に固定されている。具体的には、右側に配置される突出部51bの右端面が保持部材66の左端面に固定され、左側に配置される突出部51bの左端面が保持部材66の右端面に固定されている。2個の保持部材66は、左右方向においてベース部材51の外側に配置されている。
【0036】
ベース部材61は、たとえば、ベース部材61の前側部分を構成する平板状かつ長方形状のベース前端部61aと、ベース部材61の後ろ側部分を構成する平板状かつ長方形状のベース後端部61bと、前後方向においてベース前端部61aとベース後端部61bとの間に配置される平板状かつ長方形状のベース中間部61cとを備えている。ベース前端部61a、ベース後端部61bおよびベース中間部61cは、その厚さ方向と上下方向とが略一致するように配置されている。ベース部材61の左右方向の幅は、一定になっている。
【0037】
ベース前端部61aとベース後端部61bは、同じ高さで配置されている。ベース中間部61cは、ベース前端部61aおよびベース後端部61bよりも上側に配置されている。また、ベース中間部61cは、リニア駆動機構7のフレームの底面よりも下側に配置されている。ベース前端部61aの後端とベース中間部61cの前端とは、長方形の平板状に形成される接続部を介して繋がっている。ベース後端部61bの前端とベース中間部61cの後端とは、長方形の平板状に形成される接続部を介して繋がっている。2個の接続部は、接続部の厚さ方向と前後方向とが一致するように配置されている。
【0038】
ベース前端部61aおよびベース後端部61bは、ベース部材51の固定部51aと略同じ高さで配置されている。固定部51aは、前後方向においてベース前端部61aとベース後端部61bとの間に配置されている。ベース後端部61bは、左右方向において2個の突出部51bの間に配置されている。ベース中間部61cは、固定部51aの上側に配置されている。
【0039】
支点部48は、ベース中間部61cの下面に固定される2個の軸支持部材67と、軸支持部材67に支持される支点軸68と、固定部51aの上面に固定される支点ブロック69とから構成されている。支点軸68は、支点軸68の軸方向と前後方向とが一致するように配置されている。2個の軸支持部材67は、前後方向に間隔をあけた状態で配置されており、支点軸68の両端部を支持している。
【0040】
支点ブロック69は、固定部51aの上面の左右方向の中心位置に固定されている。支点ブロック69は、前後方向において2個の軸支持部材67の間に配置されている。支点ブロック69には、支点軸68が挿通される貫通穴が形成されており、支点軸68は、支点ブロック69に対して回動可能になっている。
【0041】
本形態では、ハンド4、14の上面に形成されるウエハ2の搭載面が上下方向に直交している場合(すなわち、水平方向に対して傾いていない場合)、設計上、ハンド4に搭載されるウエハ2の中心とハンド14に搭載されるウエハ2の中心とが前後左右方向において同じ位置に配置されている。また、ハンド4、14の上面に形成されるウエハ2の搭載面が上下方向に直交している場合、設計上、ハンド4、14に搭載されるウエハ2の中心と支点軸68の軸心とが左右方向において同じ位置に配置されている。
【0042】
モータ49および減速機50は、固定部51aの上面に固定されている。モータ49と減速機50とは、左右方向において間隔をあけた状態で配置されている。左右方向におけるモータ49と減速機50との間には、支点部48が配置されている。本形態では、支点軸68の軸心と、モータ49の出力軸の軸心と、減速機50の入力軸の軸心と、減速機50の出力軸の軸心とが同じ高さで配置されている。
【0043】
偏心軸52は、偏心軸52の軸方向と前後方向とが一致するように配置されている。偏心軸52の前端部は、減速機50の出力軸に連結されており、偏心軸52は、減速機50から後ろ側に向かって突出している。偏心軸52の後端部は、固定部51aの上面に固定される軸受70に回動可能に支持されている。前後方向における偏心軸52の中間部分は、偏心軸52の回動中心から所定距離だけずれた位置を軸心とする円柱状の偏心部52a(
図7参照)となっている。偏心部52aは、リンク部材53の下端部に形成される貫通穴に挿通されている。リンク部材53は、偏心部52aに対して回動可能となっている。
【0044】
2個の固定部材54は、ベース中間部61cの下面に固定されている。2個の固定部材54は、前後方向において間隔をあけた状態で配置されている。前後方向における2個の固定部材54の間には、リンク部材53の上端部が配置されている。2個の固定部材54は、支持軸71(
図7参照)の両端部を支持している。支持軸71は、支持軸71の軸方向と前後方向とが一致するように配置されている。また、支持軸71は、偏心軸52よりも上側に配置されている。リンク部材53の上端部には、支持軸71が挿通される貫通穴が形成されている。リンク部材53は、支持軸71に対して回動可能となっている。
【0045】
支点部58は、リニア駆動機構7のフレームの底面に固定される2個の軸支持部材72と、軸支持部材72に支持される支点軸73と、ベース前端部61aの上面に固定される支点ブロック74とから構成されている。支点軸73は、支点軸73の軸方向と左右方向とが一致するように配置されている。2個の軸支持部材72は、左右方向に間隔をあけた状態で配置されており、支点軸73の両端部を支持している。
【0046】
支点ブロック74は、左右方向において2個の軸支持部材72の間に配置されている。支点ブロック74には、支点軸73が挿通される貫通穴が形成されており、支点軸73は、支点ブロック74に対して回動可能になっている。モータ59および減速機60は、ベース後端部61bの上面に固定されている。本形態では、支点軸73の軸心と、モータ59の出力軸の軸心と、減速機60の入力軸の軸心と、減速機60の出力軸の軸心とが同じ高さで配置されている。
【0047】
また、本形態では、モータ49の出力軸の軸心と、減速機50の入力軸の軸心と、減速機50の出力軸の軸心と、モータ59の出力軸の軸心と、減速機60の入力軸の軸心と、減速機60の出力軸の軸心とが同じ高さで配置されている。すなわち、第1傾き補正機構45と第2傾き補正機構46とが略同じ高さで配置されている。
【0048】
偏心軸62は、偏心軸62の軸方向と左右方向とが一致するように配置されている。偏心軸62の一端部は、減速機60の出力軸に連結されている。偏心軸62の他端部は、ベース後端部61bの上面に固定される軸受75に回動可能に支持されている。左右方向における偏心軸62の中間部分は、偏心軸62の回動中心から所定距離だけずれた位置を軸心とする円柱状の偏心部62a(
図6参照)となっている。偏心部62aは、リンク部材63の下端部に形成される貫通穴に挿通されている。リンク部材63は、偏心部62aに対して回動可能となっている。
【0049】
2個の固定部材64は、リニア駆動機構7のフレームの底面に固定されている。2個の固定部材64は、ベース中間部61cよりも後ろ側に配置されている。2個の固定部材64は、左右方向において間隔をあけた状態で配置されている。左右方向における2個の固定部材54の間には、リンク部材63の上端部が配置されている。2個の固定部材64は、支持軸76(
図6参照)の両端部を支持している。支持軸76は、支持軸76の軸方向と左右方向とが一致するように配置されている。また、支持軸76は、偏心軸62よりも上側に配置されている。リンク部材63の上端部には、支持軸76が挿通される貫通穴が形成されている。リンク部材63は、支持軸76に対して回動可能となっている。
【0050】
第1傾き補正機構45では、モータ49が回転すると、偏心軸52が回動してリンク部材53が上下動する。リンク部材53が上下動すると、支点軸68を回動中心にしてベース部材61が回動する。すなわち、リンク部材53が上下動すると、支点軸68を回動中心にして第2傾き補正機構46が回動して、リニア駆動機構7等と一緒にハンド4、14が回動する。なお、支点軸68を回動中心とするベース部材61の回動角度(すなわち、支点軸68を回動中心とするハンド4、14の回動角度)は、たとえば、±1°である。
【0051】
また、第2傾き補正機構46では、モータ59が回転すると、偏心軸62が回動してリンク部材63が上下動する。リンク部材63が上下動すると、支点軸73を回動中心にしてリニア駆動機構7のフレームが回動する。すなわち、リンク部材63が上下動すると、支点軸73を回動中心にしてリニア駆動機構7が回動して、リニア駆動機構7等と一緒にハンド4、14が回動する。なお、支点軸73を回動中心とするリニア駆動機構7のフレームの回動角度(すなわち、支点軸73を回動中心とするハンド4、14の回動角度)は、たとえば、±1°である。
【0052】
(産業用ロボットの制御方法)
ロボット1では、ウエハ2の受渡しが行われるカセットにおけるウエハ2の搭載面および処理装置におけるウエハ2の搭載面と、ハンド4、14の上面に形成されるウエハ2の搭載面とができるだけ平行に近づくように、制御部11は、ウエハ2の受渡し時に、傾き補正機構8を制御して(具体的には、モータ49、59を制御して)、ハンド4、14の傾きを補正する。傾き補正機構8によるハンド4、14の傾きの補正量は、ウエハ2の受渡し動作をロボット1に教示する際に算出されて制御部11に記憶される。
【0053】
また、傾き補正機構8によるハンド4、14の傾きの補正量は、たとえば、ウエハ2が搭載されているハンド4のみがカセット内や処理装置内の所定の受渡し位置に移動したとき、ウエハ2が搭載されていないハンド4のみがカセット内や処理装置内の受渡し位置に移動したとき、ウエハ2が搭載されている搭載機構3のみがカセット内や処理装置内の受渡し位置に移動したとき、ウエハ2が搭載されていない搭載機構3のみがカセット内や処理装置内の受渡し位置に移動したとき、ウエハ2が搭載されている搭載機構3およびハンド4がカセット内や処理装置内の受渡し位置に移動しているとき、および、ウエハ2が搭載されていない搭載機構3およびハンド4がカセットや処理装置の受渡し位置に移動しているときのそれぞれにおいて算出されて制御部11に記憶される。
【0054】
ここで、ウエハ2の受渡し時に、傾き補正機構8によるハンド4、14の補正が行われると、ハンド4、14に搭載されるウエハ2の中心が上下方向および水平方向(前後左右方向)の少なくともいずれか1つの方向においてずれるおそれがある。そこで、本形態では、傾き補正機構8による補正動作が行われても、カセット内や処理装置内の受渡し位置に配置されたハンド4、14に搭載されるウエハ2の中心の上下方向および水平方向の位置が一定となるように(ウエハ2の中心が上下方向および水平方向においてずれないように)、制御部11は、移動機構41を制御して、ハンド4、14の位置を補正する。具体的には、制御部11は、モータ18~21、38~40の少なくともいずれか1つを制御して、ハンド4、14の位置を補正する。
【0055】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ハンド4、14の傾きを補正する傾き補正機構8は、上下方向に直交する第1方向(前後方向)を回動の軸方向としてハンド4、14を回動させる第1傾き補正機構45と、上下方向に対して傾くとともに第1方向に対して傾いた第2方向を回動の軸方向としてハンド4、14を回動させる第2傾き補正機構46とを備えている。
【0056】
そのため、本形態では、第1傾き補正機構45と第2傾き補正機構46とを用いて、ウエハ2の受渡しが行われるカセットにおけるウエハ2の搭載面や処理装置におけるウエハ2の搭載面と、ハンド4、14の上面に形成されるウエハ2の搭載面とが平行に近づくように、カセットや処理装置のウエハ2の搭載面に対するハンド4、14の搭載面の傾きを補正することが可能になる。したがって、本形態では、カセットおよび処理装置とロボット1との間で受渡しが行われるウエハ2の、受渡し時の衝撃を抑制することが可能になる。
【0057】
本形態では、傾き補正機構8による補正動作が行われても、カセット内や処理装置内の受渡し位置に配置されたハンド4、14に搭載されるウエハ2の中心の上下方向および水平方向の位置が一定となるように、制御部11は、移動機構41を制御して、ハンド4、14の位置を補正している。そのため、本形態では、傾き補正機構8による補正動作が行われても、カセットや処理装置に対してハンド4、14をより適切な位置に移動させることが可能になる。したがって、本形態では、ウエハ2の受渡し時に傾き補正機構8による補正動作が行われても、ハンド4、14に搭載されるウエハ2とカセットおよび処理装置との干渉、および、カセットや処理装置に配置されるウエハ2とハンド4、14との干渉を防止することが可能になる。
【0058】
本形態では、第1傾き補正機構45と第2傾き補正機構46とが略同じ高さで配置されている。そのため、本形態では、傾き補正機構8を薄型化することが可能になる。
【0059】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0060】
上述した形態において、第1傾き補正機構45と第2傾き補正機構46とが上下方向においてずれた位置に配置されていても良い。この場合には、たとえば、第1傾き補正機構45の上側に第2傾き補正機構46が配置されている。また、上述した形態において、第2方向は、第1方向と直交していなくても良い。また、上述した形態において、第1方向は、ハンド4、14の往復移動方向に直交する左右方向(Y方向)であっても良い。
【0061】
上述した形態において、ロボット1は、搭載機構3に代えて、ハンド4と同様に構成される1個のハンドを備えていても良い。また、上述した形態において、ロボット1は、搭載機構3またはハンド4を備えていなくても良い。ロボット1が搭載機構3を備えてない場合には、リニア駆動機構5等が不要になる。また、ロボット1がハンド4を備えてない場合には、リニア駆動機構6等が不要になる。
【0062】
上述した形態において、ロボット1は、水平多関節型のロボットであっても良い。この場合には、ロボット1は、搭載機構3が先端部に回動可能に連結される多関節アームと、ハンド4が先端部に回動可能に連結される多関節アームとを備えており、2本の多関節アームの基端部が傾き補正機構8に回動可能に連結されている。また、上述した形態において、ロボット1は、ウエハ2以外の搬送対象物を搬送しても良い。たとえば、ロボット1は、上述の特許文献1に記載された長方形状のマスクを搬送しても良いし、液晶ディスプレイ装置用のガラス基板を搬送しても良い。
【符号の説明】
【0063】
1 ロボット(産業用ロボット)
2 ウエハ(半導体ウエハ、搬送対象物)
4、14 ハンド
8 傾き補正機構
11 制御部
41 移動機構
45 第1傾き補正機構
46 第2傾き補正機構
X 第1方向