(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】排水部材
(51)【国際特許分類】
E06B 7/14 20060101AFI20240614BHJP
E06B 1/62 20060101ALI20240614BHJP
E06B 3/988 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
E06B7/14
E06B1/62 Z
E06B3/988 Z
(21)【出願番号】P 2020134352
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】305003542
【氏名又は名称】旭トステム外装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】中村 大
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-074487(JP,U)
【文献】特開2012-241312(JP,A)
【文献】特開2020-012313(JP,A)
【文献】特開2009-256977(JP,A)
【文献】実開昭60-161282(JP,U)
【文献】特開2001-288965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00-7/36
E06B 1/62
E06B 3/96
E04B 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁と窓の枠体とを接続する取合部において、前記枠体を囲むように配設される取付具の左右の前記取付具の下端部と、下部の前記取付具の側端部とを接続する排水部材であって、
左右の前記取付具に形成される排水流路と連通する第1流路を有する縦部と、
前記第1流路と連通し先端に横長形状の排水口が形成される第2流路を有する横部と、を有する、排水部材。
【請求項2】
前記第2流路の方向は、前記外壁の厚さ方向外側に向けて下方に傾斜する方向である、請求項1に記載の排水部材。
【請求項3】
前記縦部は、前記枠体と前記外壁が固定される下地材との間に配置され
左右の前記取付具と接続される当接部を起点として前記外壁の厚さ方向内側に向けて延出する貯水部を有する、請求項1又は2に記載の排水部材。
【請求項4】
前記横部と、前記枠体との間に配置される止水部材を有する、請求項1から3のいずれかに記載の排水部材。
【請求項5】
前記排水口は、前記外壁の表面よりも外側に突出して配置される、請求項1から4のいずれかに記載の排水部材。
【請求項6】
左右の前記取付具と当接する当接部を有する、請求項1から5のいずれかに記載の排水部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排水部材に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁面を形成する金属系、窯業系等の各種外壁パネル(サイディング)の端部と、外壁面の開口部に固定して設置される正面視方形状のサッシ窓の枠体とを接続する取合部は、防水性、気密性を確保することが重要である。上記取合部の防水性を高める防水構造が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の防水構造は、開口部の側端部と外壁パネルとの間に形成された隙間にL字状の目板材を設け、上記目板材をV字状に屈曲させて外部と連通する排水路を形成している。しかし、上述の防水構造は、排水路から流出した水は皿板水切り部に到達し単にその表面上を伝って外部へ排出される。このため、例えば風雨が強まる等の状況下において十分な排水性を有しているとは言えない。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、外壁と窓の枠体との間の取合部構造の好ましい排水性が得られる排水部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、外壁と窓の枠体とを接続する取合部において、前記枠体を囲むように配設される取付具の左右の前記取付具の下端部と、下部の前記取付具の側端部とを接続する排水部材であって、左右の前記取付具に形成される排水流路と連通する第1流路を有する縦部と、前記第1流路と連通し先端に横長形状の排水口が形成される第2流路を有する横部と、を有する、排水部材に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る外壁構造を示す正面図である。
【
図2】一実施形態に係る外壁パネルとサッシ窓の取合部構造を示す正面図である。
【
図4】一実施形態に係る取合部構造の取付具を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る取付具の上端部を示す図である。
【
図6】一実施形態に係る取付具を接続する状態を示す図である。
【
図7】一実施形態に係る取付具を接続する状態を示す斜視図である。
【
図8】一実施形態に係る取付具を接続する状態を示す正面図である。
【
図9】一実施形態に係る取付具を排水部材と接続する状態を示す図である。
【
図10】一実施形態に係る取付具が排水部材と接続された状態の斜視図である。
【
図11】一実施形態に係る取合部構造の排水部材を示す側面図である。
【
図12】一実施形態に係る取合部構造の排水部材を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態に係る排水部材17は、
図1に示す外壁構造1の取合部に用いられる。外壁構造1は、下地材2と、下地材2に支持されて外壁面を形成する複数の外壁としての外壁パネル3と、外壁面の所定位置に形成された開口部に設置される窓としてのサッシ窓4と、を備える。
【0009】
下地材2は、横方向に所定の間隔をあけて並設されると共に、上下方向に立設される複数の柱材、及び柱材に固定した胴縁等である。
【0010】
外壁としての外壁パネル3は、例えば、金属系、窯業系等のサイディングである。本開示の建物の外壁構造1では、正面視矩形状に形成された外壁パネル3を複数の柱材等の下地材2に支持させつつ上下方向に積層して並設し、建物の外壁面を形成するように設けられる。
【0011】
窓としてのサッシ窓4は、例えば、固定窓、片開き窓、両開き窓、引違い窓等の建具である。サッシ窓4は、例えば、アルミニウム製や樹脂製等の左右の縦枠5aと上枠5bと下枠5cからなる枠体5と、枠体5の内側に取り付けられて開口部を閉鎖あるいは開閉するガラス6と、を備えて正面視略方形状に形成される。サッシ窓4は、枠体5を備えていればよく、構成は上記に限定されない。
【0012】
本実施形態に係る外壁パネルとサッシ窓の取合部構造Aは、外壁パネル3の端部3aと、サッシ窓4の枠体5とを防水性、気密性を確保しつつ接続するための構造である。取合部構造Aは、
図1、
図2、
図3に示すように、取付具7と、シーリング材10と、を備える。
【0013】
取付具7は、例えば、金属製の押出成形品である。取付具7は、
図3、
図4に示すように、枠体5の左右、上部及び下部に配設され、枠体5を囲むように配設される。左右の取付具7のそれぞれの下端部と、下部の取付具7の両端部とは、接続部16において、それぞれ後述する排水部材17によって接続される。取付具7は、柱材、胴縁等の下地材2に固定して配設される固定部7aと、固定部7aと奥行方向に所定の間隔をあけて略平行に配設されるバックアップ部7bと、固定部7a及びバックアップ部7bの端部同士を連結する連結部7cと、を備える。取付具7は、断面視した場合において略J字状に形成されている。
【0014】
取付具7は、
図2、
図3に示すように、固定部7aを柱材、胴縁等の下地材2にビス止め等によって固定された状態では、連結部7cが枠体5の外周面に当接するように配設される。枠体5の左右の縦枠5aと上枠5bと下枠5cのそれぞれの外周面に連結部7cを当接させて、取付具7が配設される。左右一対の取付具7と上部の取付具7と下部の取付具7の4つの取付具7が枠体5を囲むように配設される。
【0015】
取付具7は、それぞれ下地材2に固定された状態では、バックアップ部7bが、枠体5の外周面に直交し、枠体5の外周面に対して所定の突出量を有して突設される。バックアップ部7bは、枠体5及び外壁パネル3の厚さ範囲よりも下地材側に配設される。これによって、
図3に示すように、外壁パネル3の端部3aとバックアップ部7bと枠体5の外周面によって囲まれて凹状のシーリングスポットHが形成される。シーリングスポットHにシーリング材10を充填することによって、外壁パネル3とサッシ窓4の取合部の防水性、気密性が確保される。
【0016】
接続部15は、
図2に示すように、左右の取付具7のそれぞれの上端部と、上部の取付具7の両側端部のそれぞれとの接続部である。接続部15において、左右の取付具7は、
図5の破線部分によって示す一部が切り欠かれている。詳しくは、左右の取付具7のバックアップ部7bと連結部7cの上端部は、上部の取付具7のバックアップ部7bと連結部7cの高さ位置に合うように、一部が切り欠かれている。
【0017】
接続部15において、
図6に示すように、左右の取付具7の上端部側の切り欠き部分に上部の取付具7の側端部を係合させる。
図7、
図8に示すように、左右の取付具7のそれぞれの上端部と、上部の取付具7の両側端部のそれぞれとが接続される。これによって、上部の取付具7の固定部7aの下端部側とバックアップ部7bと連結部7cによって囲まれて形成された溝状の内部に雨水等の水が浸入した場合に、浸入した水は溝状の内部の排水流路11に沿って横方向に流れる。次に、上記横方向に流れた水は、左右の取付具7の固定部7aの一側端部とバックアップ部7bと連結部7cによって囲まれて形成された上下方向に延びる溝状の内部である排水流路11に流入する。排水流路11に流入した水は、下方に導水される。
【0018】
接続部16は、
図2に示すように、左右の取付具7のそれぞれの下端部と、下部の取付具7の両側端部との接続部である。接続部16において、
図9に示すように、排水部材17を用いて左右の取付具7のそれぞれの下端部と、下部の取付具7の両側端部とが接続される。以下の説明では、
図10に示すように、排水部材17は正面視左側に配置される取付具7と、下部の取付具7とを接続するものとして説明する。
【0019】
排水部材17は、
図12に示すように、枠体5の角部の形状に合わせて正面視略L字状に形成される。排水部材17は、左右の取付具7と接続される縦部17aと、止水部材Pと、下部の取付具7と接続される横部17bと、を有する。排水部材17は、
図9に示すように、内部に排水流路11と連通する第1流路11a、及び第1流路と連通する第2流路11bを有する。排水流路11に流入した雨水等の水は、第1流路11aを介し第2流路11bに流入する。第2流路11bに流入した雨水等の水は、第2流路11bの先端に形成される横長形状の排水口18を通じて外部に排出される。縦部17a及び横部17bは、例えば樹脂製の部材であり、一体に成形されていてもよい。これによって、排水部材17のコストを抑えることができる。縦部17a及び横部17bの材質は、上記に特に制限されない。
【0020】
縦部17aは、
図9に示すように、内部に排水流路11と連通する第1流路11aを有する。縦部17aは、略方形筒状の形状を有する。第1流路11aの流路の方向は、排水部材17が設置された状態では、排水流路11の流路の方向と同じ方向である。縦部17aは、上記以外に固定部171と、貯水部174と、当接部175と、を有する。
【0021】
固定部171は、下地材2と当接して固定される板状部材である。固定部171は、
図9に示すように、略方形筒状の縦部17aの一面から垂直に延出する。固定部171には、ビス等の固定具を挿通可能な孔h1が形成される。孔h1は縦長の形状を有する。孔h1に挿通される固定具の位置を調整することによって、排水部材17を下地材2に固定する位置を調整可能である。
【0022】
貯水部174は、第1流路11aと連続する。貯水部174は、第1流路11aに流入した雨水等の水を一時的に貯水する箇所である。これによって、貯水部174に貯水された水の重力によって、第1流路11aから第2流路11bに対して排水される水の水圧を高めることができる。これによって、例えば風雨が強まり通常は排水性が悪化する状況下においても、好ましい排水部材17の排水性を維持できる。
【0023】
貯水部174は、
図11に示すように、枠体5の厚さ方向内側に延出されて形成される。貯水部174は、
図12に示すように、下地材2と縦枠5aとの間に配置される。これによって、縦枠5aの高さ方向に延出されて貯水部174が形成される場合と比較して、排水部材17をコンパクトに構成できる。これによって、排水部材17のコストを抑えることができる。上記に加えて、下地材2と縦枠5aとの間に形成される空間を利用することによって、排水部材17の設置スペースを削減できる。
【0024】
当接部175は、左右の取付具7と接続される箇所である。当接部175は、
図9及び
図10に示すように、略方形筒状に形成される縦部17aの一部を切り欠くことによって形成される。上記当接部175の切り欠かれた端部と、左右の取付具7の下端部とは当接して配置される。上記に加えて、連結部7cと縦部17aの内面とが当接して配置される。これによって、左右の取付具7と排水部材17とを、排水流路11と第1流路11aとが一部重複して連通するように設置できる。左右の取付具7と、排水部材17とはそれぞれ下地材2に固定される。従って、上記構成によって、左右の取付具7に特に加工を施すことなく左右の取付具7と排水部材17とを接続できる。
【0025】
止水部材Pは、
図10に示すように、横部17bと下枠5cとの間に配置され止水を確保する部材である。止水部材Pは略直方体形状を有する公知のパッキン部材である。止水部材Pは、
図10に示すように横部17bの上部に載置される。その後、
図11、
図12に示すように、枠体5を上方から止水部材Pを押し潰すように設置することによって止水部材Pと下枠5cとが密着し、止水が確保される。これによって、横部17bと下枠5cとの間に形成される狭い空隙にシーリングを充填する必要がなくなり、施工性を向上できる。
【0026】
横部17bは、内部に第1流路11aと連通する第2流路11bを有する。横部17bは、略方形筒状の形状を有する。第2流路11bの先端には、横長形状の排水口18が形成される。横部17bは、下部の取付具7と接続される。横部17bと下部の取付具7との接続状態は特に制限されない。例えば、下部の取付具7に形成される排水流路と、第2流路11bとが連通するように、横部17bと下部の取付具7とを接続できる。横部17bは、上記以外に固定部172と、突部173と、を有する。
【0027】
第2流路11bの方向は、
図11に示すように、第1流路11aの流路の方向と交差する方向である。第2流路11bの方向は、排水部材17が設置された状態では、外壁パネル3の厚さ方向外側に向かう方向である。第2流路11bの方向は、
図11に示すように、外壁パネル3の厚さ方向外側に向けて下方に角度Rで傾斜する方向である。角度Rは、5°~10°の範囲内であることが好ましい。これによって、第2流路11bに流入し、排水口18から外部に排水される雨水等の水の排水性を向上できる。上記以外に、第2流路11b内に水が滞留して凍結し、排水部材17が破損することを防止できる。
【0028】
第2流路11bの傾斜する方向である、角度Rは、例えば以下のようにして決定される。
図11において、高さhは、排水口18の下端と、枠体5との間の距離を示す。高さhは、枠体5の下方に充填されるシーリング材10の幅に応じて決定される。高さhは、シーリング幅が広くなりすぎない程度に調整される。高さhが決定された後、角度Rが決定される。角度Rを大きくするほど、排水口18の高さが低くなる。排水口18の高さを確保し、かつ、シーリング幅を適度に小さくすることができるよう、高さhと、角度Rとが決定される。
【0029】
排水口18は、
図9、
図10に示すように、第2流路11bの先端に形成され、横長形状を有する。排水口18は、略角筒形状を有する横部17bの開口である。排水口18が、横長形状を有する広い開口であることによって、例えば風雨が強まった場合に、排水口18に水膜が形成され排水性が悪化することを抑制できる。このため、排水部材17の排水性を好ましく維持できる。
【0030】
排水口18は、
図11に示すように、外壁パネル3の表面よりも外側に突出して配置される。これによって、シーリングスポットHにシーリング材10を充填する際に、誤って排水口18をシーリング材10によって塞いでしまうことを防止できる。
【0031】
固定部172は、固定部171と同様、下地材2と当接して固定される板状部材である。固定部172は、略方形筒状を有する横部17bの一面から垂直に延出する。固定部172には、ビス等の固定具を挿通可能な孔h2が形成される。孔h2は横長の形状を有する。孔h2に挿通される固定具の位置を調整することによって、排水部材17を下地材2に固定する位置を調整可能である。
【0032】
突部173は、略方形筒状を有する横部17bの一面から突出して形成される板状部材である。突部173は、横部17bの上部に載置される止水部材Pを下枠5cと密着させる際の、止水確保の目安として用いられる。即ち、止水部材Pは、
図10において横部17bの上方かつ突部173の内側に載置される。止水部材Pは、枠体5が設置される際に上方から圧し潰されて突部173と同じ高さに変形する。これによって、枠体5と横部17bとを密着させて止水を確保できる。止水部材Pの高さと突部173の高さを調整することによって、突部173の高さを上記止水確保の目安として用いることができる。突部173の形状は上記に特に制限されない。
【0033】
本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、変形、改良等は本開示に含まれる。上記実施形態では、排水部材17を、正面視左側に配置される取付具7と、下部の取付具7とを接続するものとして説明した。上記に限定されない。本実施形態の構成と左右対称の構成を有する排水部材17を用いることによって、正面視右側に配置される取付具7と、下部の取付具7とを接続できる。上記構成を有する排水部材17は、上記実施形態に係る排水部材17と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0034】
2 下地材、3 外壁パネル(外壁)、4 サッシ窓(窓)、5 枠体、7 取付具、11 排水流路、11a 第1流路、11b 第2流路、17 排水部材、17a 縦部、17b 横部、174 貯水部、175 当接部、18 排水口