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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】錠装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 71/00 20060101AFI20240614BHJP
   B62H 5/16 20060101ALN20240614BHJP
【FI】
E05B71/00 G
B62H5/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020137519
(22)【出願日】2020-08-17
(65)【公開番号】P2022033553
(43)【公開日】2022-03-02
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】吉原 顕人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雄介
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-83761(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0009255(KR,A)
【文献】特開2017-214740(JP,A)
【文献】特開2019-206864(JP,A)
【文献】特開2017-61789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
B62H 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被ロック部材が挿入される挿入部を備え、鍵が挿通される鍵挿通孔が形成されたハウジングと、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記鍵挿通孔に挿通された前記鍵により施錠位置と解錠位置との間で回転操作されるプラグと、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記プラグが前記施錠位置に回転操作された施錠状態で前記被ロック部材に対して係合する係合位置へ移動可能になり、前記プラグが前記解錠位置に回転操作された解錠状態で前記被ロック部材との係合を解除する係合解除位置へ移動するロック部材と、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記ロック部材を前記係合位置に付勢する付勢部材と、
前記ハウジングの内部に前記ロック部材と共に前記付勢部材を挟むように設けられ、前記付勢部材の付勢力を受ける付勢力受け部材と
を備え、
前記付勢力受け部材は、第1の位置から前記ロック部材に対して接近する第2の位置への移動を前記施錠状態において許容されており、
前記付勢力受け部材の前記第2の位置から前記第1の位置への移動を規制する規制部を備える錠装置。
【請求項2】
前記規制部は、前記第2の位置で前記ロック部材の前記係合位置から前記係合解除位置への移動を阻止する請求項1に記載の錠装置。
【請求項3】
被ロック部材が挿入される挿入部を備え、鍵が挿通される鍵挿通孔が形成されたハウジングと、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記鍵挿通孔に挿通された前記鍵により施錠位置と解錠位置との間で回転操作されるプラグと、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記プラグが前記施錠位置に回転操作された施錠状態で前記被ロック部材に対して係合する係合位置へ移動可能になり、前記プラグが前記解錠位置に回転操作された解錠状態で前記被ロック部材との係合を解除する係合解除位置へ移動するロック部材と、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記ロック部材を前記係合位置に付勢する付勢部材と、
前記ハウジングの内部に前記ロック部材と共に前記付勢部材を挟むように設けられ、前記付勢部材の付勢力を受ける付勢力受け部材と
を備え、
前記付勢力受け部材は、第1の位置から前記ロック部材に対して接近する第2の位置への移動を許容されており、
前記付勢力受け部材の前記第2の位置から前記第1の位置への移動を規制する規制部を備え、
前記規制部は、前記付勢力受け部材を前記ハウジングに対して圧入させて前記付勢力受け部材の前記第2の位置から前記第1の位置への移動を規制する圧入固定部を備える錠装置。
【請求項4】
被ロック部材が挿入される挿入部を備え、鍵が挿通される鍵挿通孔が形成されたハウジングと、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記鍵挿通孔に挿通された前記鍵により施錠位置と解錠位置との間で回転操作されるプラグと、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記プラグが前記施錠位置に回転操作された施錠状態で前記被ロック部材に対して係合する係合位置へ移動可能になり、前記プラグが前記解錠位置に回転操作された解錠状態で前記被ロック部材との係合を解除する係合解除位置へ移動するロック部材と、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記ロック部材を前記係合位置に付勢する付勢部材と、
前記ハウジングの内部に前記ロック部材と共に前記付勢部材を挟むように設けられ、前記付勢部材の付勢力を受ける付勢力受け部材と
を備え、
前記付勢力受け部材は、第1の位置から前記ロック部材に対して接近する第2の位置への移動を許容されており、
前記付勢力受け部材の前記第2の位置から前記第1の位置への移動を規制する規制部を備え、さらに、
前記プラグ又は前記ハウジングに支持される第1の部分と、前記第1の部分から前記付勢力受け部の側へ延びる第2の部分とを備える板状のプロテクタを備え、
前記第2の部分は、外力によって前記ハウジングの内方に向けて変位して前記付勢力受け部材を前記第2の位置に移動させる錠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車や自動二輪車用のワイヤロープとして、ワイヤロープの一端に設けられた錠杆と、シリンダ錠が内蔵された錠装置本体とが連結されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のワイヤロープでは、錠装置本体の内部に、錠杆を係止する係止筒と、この係止筒を付勢するバネとが設けられており、このバネの付勢力により錠杆と係止筒との係止状態、即ち施錠状態が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭60-11975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のワイヤロープでは、マイナスドライバ等を用いた錠装置本体の外部からの打撃力により錠装置本体のハウジングに穴が空けられた場合、この穴を通してマイナスドライバ等によりバネや係止筒が扱われることにより、錠杆と係止筒との係止状態が解除され、施錠状態が解除される可能性がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、防盗性能を向上できる錠装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る錠装置は、被ロック部材が挿入される挿入部を備え、鍵が挿通される鍵挿通孔が形成されたハウジングと、前記ハウジングの内部に設けられ、前記鍵挿通孔に挿通された前記鍵により施錠位置と解錠位置との間で回転操作されるプラグと、前記ハウジングの内部に設けられ、前記プラグが前記施錠位置に回転操作された施錠状態で前記被ロック部材に対して係合する係合位置へ移動可能になり、前記プラグが前記解錠位置に回転操作された解錠状態で前記被ロック部材との係合を解除する係合解除位置へ移動するロック部材と、前記ハウジングの内部に設けられ、前記ロック部材を前記係合位置に付勢する付勢部材と、前記ハウジングの内部に前記ロック部材と共に前記付勢部材を挟むように設けられ、前記付勢部材の付勢力を受ける付勢力受け部材とを備え、前記付勢力受け部材は、第1の位置から前記ロック部材に対して接近する第2の位置への移動を前記施錠状態において許容されており、前記付勢力受け部材の前記第2の位置から前記第1の位置への移動を規制する規制部を備える。
【0007】
前記錠装置において、前記規制部は、前記第2の位置で前記ロック部材の前記係合位置から前記係合解除位置への移動を阻止してもよい。
【0008】
また、本発明に係る錠装置は、被ロック部材が挿入される挿入部を備え、鍵が挿通される鍵挿通孔が形成されたハウジングと、前記ハウジングの内部に設けられ、前記鍵挿通孔に挿通された前記鍵により施錠位置と解錠位置との間で回転操作されるプラグと、前記ハウジングの内部に設けられ、前記プラグが前記施錠位置に回転操作された施錠状態で前記被ロック部材に対して係合する係合位置へ移動可能になり、前記プラグが前記解錠位置に回転操作された解錠状態で前記被ロック部材との係合を解除する係合解除位置へ移動するロック部材と、前記ハウジングの内部に設けられ、前記ロック部材を前記係合位置に付勢する付勢部材と、前記ハウジングの内部に前記ロック部材と共に前記付勢部材を挟むように設けられ、前記付勢部材の付勢力を受ける付勢力受け部材とを備え、前記付勢力受け部材は、第1の位置から前記ロック部材に対して接近する第2の位置への移動を許容されており、前記付勢力受け部材の前記第2の位置から前記第1の位置への移動を規制する規制部を備え、前記規制部は、前記付勢力受け部材を前記ハウジングに対して圧入させて前記付勢力受け部材の前記第2の位置から前記第1の位置への移動を規制する圧入固定部を備え
【0009】
さらに、本発明に係る錠装置は、被ロック部材が挿入される挿入部を備え、鍵が挿通される鍵挿通孔が形成されたハウジングと、前記ハウジングの内部に設けられ、前記鍵挿通孔に挿通された前記鍵により施錠位置と解錠位置との間で回転操作されるプラグと、前記ハウジングの内部に設けられ、前記プラグが前記施錠位置に回転操作された施錠状態で前記被ロック部材に対して係合する係合位置へ移動可能になり、前記プラグが前記解錠位置に回転操作された解錠状態で前記被ロック部材との係合を解除する係合解除位置へ移動するロック部材と、前記ハウジングの内部に設けられ、前記ロック部材を前記係合位置に付勢する付勢部材と、前記ハウジングの内部に前記ロック部材と共に前記付勢部材を挟むように設けられ、前記付勢部材の付勢力を受ける付勢力受け部材とを備え、前記付勢力受け部材は、第1の位置から前記ロック部材に対して接近する第2の位置への移動を許容されており、前記付勢力受け部材の前記第2の位置から前記第1の位置への移動を規制する規制部を備え、さらに、前記プラグ又は前記ハウジングに支持される第1の部分と、前記第1の部分から前記付勢力受け部の側へ延びる第2の部分とを備える板状のプロテクタを備え、前記第2の部分は、外力によって前記ハウジングの内方に向けて変位して前記付勢力受け部材を前記第2の位置に移動させ
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マイナスドライバ等を用いたハウジングの外部からの打撃力によりハウジングに穴が空けられた場合、その打撃力により付勢力受け部材が第1の位置からロック部材に対して接近する第2の位置に移動し、この第2の位置から第1の位置への移動を規制されることから、付勢部材がハウジングの板部に空けられた穴を通して扱われることが阻止される。従って、マイナスドライバ等を用いたハウジングの外部からの打撃力によりハウジングに穴が空けられた場合でも、被ロック部材とロック部材との係合状態が解除されて施錠状態が解除されることを阻止できるので、防盗性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るバーロック装置を示す正面図である。
図2図2は、図1に示す錠装置本体を示す正面断面図である。
図3図3は、図1に示す錠装置本体を示す平面部分断面図である。
図4図4は、図1に示す錠装置本体を示す正面部分断面図である。
図5図5は、解錠状態の錠装置本体を示す正面断面図である。
図6図6は、マイナスドライバによる打撃力を受けた状態の比較例に係る錠装置本体を示す正面断面図である。
図7図7は、マイナスドライバによる打撃力を受けた状態の一実施形態に係る錠装置本体を示す正面断面図である。
図8図8は、本発明の他の実施形態に係る錠装置本体を示す正面断面図である。
図9図9は、マイナスドライバによる打撃力を受けた状態の他の実施形態に係る錠装置本体を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るバーロック装置1を示す正面図である。この図に示すように、本実施形態に係るバーロック装置1は、チェーン状拘束体2と、錠装置本体10とを備えている。チェーン状拘束体2の一端部は、錠装置本体10に固定されている。チェーン状拘束体2の他端部は、錠装置本体10に着脱される。チェーン状拘束体2の他端部が錠装置本体10に装着された状態で、チェーン状拘束体2が閉ループを構成し、自動二輪車や自転車等の拘束対象Aを拘束する。
【0014】
チェーン状拘束体2は、複数のロッド21と、複数のヒンジ22と、固定部材23と、被ロック部材24と、ヒンジ25,26とを備える。複数のロッド21は、複数のヒンジ22を介して連結されている。各ロッド21は、金属製の棒材が樹脂製の被覆材により被覆された構成である。ヒンジ22は、一対のロッド21の端部同士を相対的に回動可能に連結する。複数のヒンジ22は、平行に配されている。
【0015】
固定部材23は、チェーン状拘束体2の一端のロッド21Aの先端側にヒンジ25を介して連結されている。ヒンジ25は、ロッド21Aの先端側と固定部材23の基端側とを相対的に回動可能に連結する。他方で、被ロック部材24は、チェーン状拘束体2の他端のロッド21Bの先端側にヒンジ26を介して連結されている。ヒンジ26は、ロッド21Bの先端側と被ロック部材24の基端側とを相対的に回動可能に連結する。ヒンジ25,26と複数のヒンジ22とは、平行に配されている。
【0016】
固定部材23の先端側は、錠装置本体10の図中左側の側面の開口から錠装置本体10の内部に挿入されて錠装置本体10に対して固定されている。これにより、錠装置本体10とロッド21Aとは、ヒンジ25及び固定部材23を介して相対的に回動可能に連結されている。
【0017】
被ロック部材24の先端側は、錠装置本体10の図中右側の側面の開口から錠装置本体10の内部に挿入されて錠装置本体10に対して着脱可能に装着される。被ロック部材24が錠装置本体10に装着されることにより、錠装置本体10とロッド21Bとが、ヒンジ26及び被ロック部材24を介して相対的に回動可能に連結される。
【0018】
図2は、図1に示す錠装置本体10を示す正面断面図である。この図に示すように、錠装置本体10は、ハウジング11と、プラグ12と、ロック部材13と、バネ14と、キャップ15と、カム16と、ケース17とを備える。ケース17は、ハウジング11を覆う直方体形状の樹脂製の箱体である。ケース17の図中上側の面には鍵をプラグ12に挿入するための開口17Aが形成され、ケース17の図中右側の面には被ロック部材24をハウジング11内に挿入するための開口17Bが形成され、ケース17の図中左側の面には固定部材23をハウジング11内に挿入するための開口17Cが形成されている。
【0019】
ハウジング11は、アウターハウジング111と、アッパーハウジング112と、ロワーハウジング113とを備える。アウターハウジング111は、図中上側が開口した直方体形状の金属製の箱体である。このアウターハウジング111は、アッパーハウジング112とロワーハウジング113とを収容している。アッパーハウジング112とロワーハウジング113とは図中上下に組み合わされている。アッパーハウジング112により、アウターハウジング111の図中上側の開口が閉塞されている。
【0020】
アウターハウジング111の図中右側の側面には矩形状の第1の挿入孔111Aが形成され、アウターハウジング111の図中左側の側面には矩形状の第2の挿入孔111Bが形成されている。第1の挿入孔111Aは、アウターハウジング111の図中右側の側面の底側に配されており、この第1の挿入孔111Aを通して、被ロック部材24がハウジング11の内部に挿入される。他方で、第2の挿入孔111Bは、アウターハウジング111の図中左側の側面の底側に配されており、この第2の挿入孔111Bを通して、固定部材23がハウジング11の内部に挿入されている。
【0021】
アッパーハウジング112は、図中下側が開口した直方体形状の箱体である。このアッパーハウジング112の図中上側の板部(以下、上板という)112Bには、鍵をプラグ12に挿入するための開口112Aが形成されている。アッパーハウジング112とロワーハウジング113とは、インナーハウジングを構成しており、プラグ12、ロック部材13、バネ14、キャップ15、及びカム16を収容している。
【0022】
ロワーハウジング113は、第1の挿入部113Aと、第2の挿入部113Bと、プラグ支持部113Cと、ガイド部113Dとを備える。第1の挿入部113Aと第2の挿入部113Bとは、ロワーハウジング113の図中下側に形成され、プラグ支持部113Cとガイド部113Dとは、ロワーハウジング113の図中上側に形成されている。ロワーハウジング113の図中上側は開口している。
【0023】
第1の挿入部113Aは、アウターハウジング111の第1の挿入孔111Aに面して形成された直方体形状の凹部である。この第1の挿入部113Aには、被ロック部材24が挿入される。他方で、第2の挿入部113Bは、アウターハウジング111の第2の挿入孔111Bに面して形成された直方体形状の凹部である。この第2の挿入部113Bには、固定部材23が挿入されている。ここで、ピン19が、ロワーハウジング113と固定部材23とを貫通しロワーハウジング113に固定されていることにより、固定部材23がロワーハウジング113に固定されている。
【0024】
プラグ支持部113Cは、ロワーハウジング113の図中左側寄りに設けられ、ガイド部113Dは、ロワーハウジング113の図中右側寄りに設けられている。プラグ支持部113Cは、第2の挿入部113Bの図中上側に設けられている。ガイド部113Dは、第1の挿入部113Aの図中上側に設けられている。
【0025】
プラグ支持部113Cは、円筒状に形成されており、円柱状のプラグ12を回転可能に支持している。プラグ12の回転軸は、図中上下方向に対して平行である。プラグ12を回転操作するための鍵は、プラグ12の回転軸に沿ってプラグ12に抜き挿しされる。
【0026】
プラグ支持部113Cの底部には、カム16が設けられている。このカム16は、プラグ12の下端と係合しており、プラグ12と一体で回転する。
【0027】
ガイド部113Dは、角筒形状に形成されており、角柱形状のロック部材13を図中上下方向に移動可能に収容している。ここで、ガイド部113Dの底部には、開口113Eが形成されており、ロック部材13の下部は、開口113Eを通して、第1の挿入部113A内に突出している。また、角柱形状のキャップ15が、ロック部材13の図中上側に設けられており、このキャップ15の下部が、ガイド部113Dに図中上下方向に移動可能に嵌め込まれている。
【0028】
図3は、図1に示す錠装置本体10を示す平面部分断面図である。この図では、ケース17、アウターハウジング111及びアッパーハウジング112の平面断面を示し、アッパーハウジング112の内側の平面を示している。この図に示すように、プラグ支持部113Cの内部空間とガイド部113Dの内部空間との間には、スリット113Fが形成されており、プラグ支持部113Cの内部空間とガイド部113Dの内部空間とは、スリット113Fにより連通されている。
【0029】
図4は、図1に示す錠装置本体10を示す正面部分断面図である。この図では、ケース17、アウターハウジング111及びアッパーハウジング112の正面断面を示し、アウターハウジング111及びアッパーハウジング112の内側の正面を示している。これらの図に示すように、プラグ12の上部とキャップ15の上部とは、ロワーハウジング113の上端から上板112B側に突出し、アッパーハウジング112に収容されている。
【0030】
図2に示すように、プラグ12は、プラグ支持部113Cに回転可能に支持された円筒体である。アッパーハウジング112の開口112Aは、プラグ12の図中上側の面に対向するように形成されており、プラグ12の図中上側の面には、鍵挿込口12Aが形成されている。プラグ12の図中下側の面には、凸部12Bが形成されている。それに対して、円環状のカム16には、凸部12Bと嵌合する凹部16Aが形成されている。真正の鍵が開口112Aを通して鍵挿込口12Aに挿入されることで、プラグ12とカム16とが、一体で施錠位置と解錠位置との間で回転操作可能になる。
【0031】
ロック部材13は、本体部13Aと、ロック部13Bと、カム部13Cとを備える。本体部13Aは、角柱体であり、ガイド部113Dに図中上下方向に移動可能に収容されている。本体部13Aの図中上側の面には、バネ14の下端が嵌め込まれる円形状の凹部13Dが形成されている。
【0032】
ロック部13Bは、本体部13Aの図中下側に形成された正面視で台形状の部位であり、開口113Eから第1の挿入部113Aに突出している。このロック部13Bは、ロック部13Bの先端から図中右上に傾斜した傾斜面13Eを備える。それに対して、被ロック部材24には、嵌合凹部24Aが形成されている。この嵌合凹部24Aは、底部から図中右上に傾斜した傾斜面24Bを備える。この傾斜面24Bとロック部13Bの傾斜面13Eとが相互に当接した状態で、ロック部13Bと嵌合凹部24Aとが相互に嵌合する。また、被ロック部材24が第1の挿入部113Aに挿入された際、被ロック部材24の先端(図中左側端部)とロック部13Bの傾斜面13Eとが相互に当接した状態で、ロック部材13が上昇する。
【0033】
カム部13Cは、本体部13Aの図中左側の側面からスリット113F内に突出している。それに対して、円環状のカム16の外周面には、カム部16Bが形成されており、カム部13Cとカム部16Bとが相互に当接する。プラグ12とカム16とが施錠位置に回転操作されると、カム部13Cとカム部16Bとの当接点の高さが最下位となり、ロック部材13のロック部13Bと被ロック部材24の嵌合凹部24Aとが嵌合する。それに対して、プラグ12とカム16とが解錠位置に回転操作されると、カム部13Cとカム部16Bとの当接点の高さが最上位となり、ロック部材13のロック部13Bと被ロック部材24の嵌合凹部24Aとの嵌合が解除される。
【0034】
バネ14は、圧縮コイルバネである。バネ14の下端は、ロック部材13の凹部13Dに嵌め込まれている。バネ14は、図中上下方向に弾性的に伸縮可能である。
【0035】
キャップ15は、角筒体である。キャップ15の図中下側部分(以下、下部という)15Bが、ガイド部113Dに図中上下方向に摺動可能に収容されている。キャップ15の下部15Bの下面には、バネ14の上端が嵌め込まれる円形状の凹部15Aが形成されている。キャップ15の下部15Bは、ガイド部113Dの内部に挿入可能であるのに対して、キャップ15の図中上側部分(以下、上部という)15Cは、ガイド部113Dの内部に挿入できないように構成されている。
【0036】
ここで、図3及び図4に示すように、キャップ15の上部15Cには一対の干渉部15Dが形成されている。一方の干渉部15Dは、キャップ15の上部15Cの図中手前側の面(以下、前面という)に形成され、他方の干渉部15Dは、キャップ15の上部15Cの図中奥側の面(以下、後面という)に形成されている。一対の干渉部15Dは、キャップ15の上部15Cの前面又は後面から突出するリブである。一対の干渉部15Dは、キャップ15の軸心に対して対称に配されている。これらの一対の干渉部15Dとガイド部113Dの上端とが相互に当接することにより、キャップ15の上部15Cがガイド部113Dの内部に入り込まない。
【0037】
干渉部15Dは、キャップ15の上部15Cの前面又は後面の下端から上端まで鉛直に延びている。詳細は後述するが、キャップ15に対してマイナスドライバ等を用いた打撃力が図中上側から作用した場合、干渉部15Dがガイド部113Dの内部に圧入されることにより、キャップ15の上部15Cがロワーハウジング113のガイド部113Dに対して固定される。
【0038】
図2に示すように、バネ14は、ロック部材13とキャップ15とに挟み込まれ、弾性的に収縮している。ロック部材13は、バネ14により図中下側へ付勢され、キャップ15は、バネ14により図中上側へ付勢されている。ここで、プラグ12が施錠位置に位置する状態では、キャップ15は、アッパーハウジング112の上板112Bの下面に圧接され、他方で、ロック部材13のカム部13Cは、カム16のカム部16Bに圧接され、ロック部材13のロック部13Bは、被ロック部材24の嵌合凹部24Aに圧接される。この状態では、被ロック部材24を第1の挿入部113Aから引き抜くことができない。
【0039】
図5は、解錠状態の錠装置本体10を示す正面断面図である。この図に示すように、プラグ12が解錠位置に位置する状態では、キャップ15は、アッパーハウジング112の上板112Bの下面に圧接され、他方で、ロック部材13のカム部13Cは、カム16のカム部16Bに圧接され、ロック部材13のロック部13Bは、被ロック部材24の嵌合凹部24Aに嵌合しない。この状態では、被ロック部材24を第1の挿入部113Aから引き抜くことができる。
【0040】
図6は、マイナスドライバMDによる打撃力を受けた状態の比較例に係る錠装置本体10Cを示す正面断面図である。この図に示すように、比較例に係る錠装置本体10Cでは、キャップ15が、ロワーハウジング113のガイド部113Dの上端に固定されている。このキャップ15は、アッパーハウジング112の上板112Bの下面に近接又は当接した第1の位置に位置する。このため、マイナスドライバMDがアッパーハウジング112の上板112Bを貫通した場合、上板112Bに空けられた穴とキャップ15とが近接し、マイナスドライバMDによるキャップ15の打撃が容易になる。マイナスドライバMDの打撃力によりキャップ15に穴が空けられた場合には、バネ14へのアクセスが可能になり、バネ14を排除することによりロック部材13と被ロック部材24との嵌合が解除される可能性が生じる。
【0041】
図7は、マイナスドライバMDによる打撃力を受けた状態の錠装置本体10を示す正面断面図である。図2及び図7に示すように、本実施形態に係る錠装置本体10では、キャップ15が、ロワーハウジング113に図中上下方向に移動可能に支持されている。このキャップ15は、通常時、アッパーハウジング112の上板112Bの下面に当接した第1の位置に位置する。
【0042】
図7に示すように、マイナスドライバMDがアッパーハウジング112の上板112Bを貫通してキャップ15に到達した場合、キャップ15は、上記の第1の位置から図中下側へ押し下げられる。ここで、通常時には、一対の干渉部15Dの下端とロワーハウジング113の上端とが当接しているが(図4参照)、干渉部15D及びキャップ15の上部15Cは、マイナスドライバMDによる打撃力によりガイド部113Dの内部に圧入される。これにより、キャップ15は、アッパーハウジング112の上板112Bから離間しロック部材13に接近した第2の位置においてロワーハウジング113のガイド部113Dに固定される。このため、マイナスドライバMDがアッパーハウジング112の上板112Bを貫通した場合、上板112Bに空けられた穴からキャップ15までの距離が比較例に比して遠くなり、マイナスドライバMDによるキャップ15の打撃が難しくなる。従って、マイナスドライバMDの打撃力によりキャップ15に穴を空けることが難しくなり、バネ14にアクセスすることが難しくなり、ロック部材13と被ロック部材24との嵌合を解除することが難しくなる。以上により、防盗性能を向上できる。
【0043】
ここで、キャップ15が上記の第2の位置においてロワーハウジング113のガイド部113Dに固定された状態では、ロック部材13の上端とキャップ15の下端とが当接するか、又は僅かな隙間を介して対向する。この状態では、ロック部材13の上昇がキャップ15により制限されることにより、ロック部材13と被ロック部材24との嵌合状態が維持される。従って、マイナスドライバMDによりキャップ15に穴が空けられてバネ14が扱われたとしても、ロック部材13と被ロック部材24との嵌合を解除することができない。
【0044】
図8は、本発明の他の実施形態に係る錠装置本体100を示す正面断面図である。なお、上述の実施形態に係る錠装置本体10と同様の構成については同一の符号を付し、上述の実施形態についての説明を援用する。
【0045】
この図に示すように、本実施形態に係る錠装置本体100は、プロテクタ18を備える。このプロテクタ18は、矩形状の金属製の板材であり、アッパーハウジング112の上板112Bとプラグ12の上面及びキャップ15の上面との間に設けられている。プロテクタ18には、アッパーハウジング112の開口112Aと形状及び寸法が同一の開口18Aが形成されている。この開口18Aと開口112Aとは同心上に配されている。
【0046】
ここで、プロテクタ18は、アッパーハウジング112に対して固定されていない。プロテクタ18の開口18Aの周縁部(以下、支持部という)18Bは、アッパーハウジング112の上板112Bとプラグ12の上面とに挟まれている。プラグ12は、図中上下方向に変位不能にプラグ支持部113Cに支持されている。即ち、プロテクタ18の支持部18Bは、相互に相対変位不能であるアッパーハウジング112の上板112Bとプラグ12とに挟持された状態である。
【0047】
それに対して、プロテクタ18の図中右側の部分(以下、非支持部という)18Cは、アッパーハウジング112の上板112Bとキャップ15の上面とに挟まれている。キャップ15は、バネ14の付勢力により図中上下方向に変位可能に支持されている。即ち、プロテクタ18の非支持部18Cは、相互に相対変位可能であるアッパーハウジング112の上板112Bとキャップ15とに挟持された状態である。従って、プロテクタ18は、図中上側からの打撃力に対して、支持部18Bが固定支持状態、非支持部18Cが自由な状態の片持ち状態となる。
【0048】
図9は、マイナスドライバMDによる打撃力を受けた状態の本実施形態に係る錠装置本体100を示す正面断面図である。この図に示すように、マイナスドライバMDがアッパーハウジング112の上板112Bを貫通した場合、マイナスドライバMDによる打撃力がプロテクタ18の非支持部18Cに対して作用する。プロテクタ18は片持ち状態である。そのプロテクタ18の支持部18Bは、マイナスドライバMDによる打撃力に対して固定支持状態となり、非支持部18Cは、マイナスドライバMDによる打撃力に対して自由な状態になる。このため、プロテクタ18は、マイナスドライバMDによる打撃力を受けて屈曲する。支持部18Bの状態は不変であるのに対して、非支持部18Cは、支持部18Bとの境界から図中右下に傾斜した状態になる。これにより、マイナスドライバMDがアッパーハウジング112の上板112Bを貫通した場合、上板112Bに空けられた穴からキャップ15までの距離が比較例に比して遠くなるのに加えて、プロテクタ18の非支持部18CがマイナスドライバMDのキャップ15へのアクセスを阻止するので、マイナスドライバMDによるキャップ15の打撃が難しくなる。従って、マイナスドライバMDの打撃力によりキャップ15に穴を空けることが難しくなり、マイナスドライバMD等によりバネ14を扱うことが難しくなり、バネ14の付勢力によるロック部材13と被ロック部材24との嵌合を解除することが難しくなる。
【0049】
以上、本発明に係る錠装置を実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、他の技術を組み合わせてもよい。
【0050】
例えば、上述の実施形態では、圧入固定部として、キャップ15の上部15C及びリブ形状の干渉部15Dを設けたが、これに限らず、キャップ15が打撃力により第2の位置においてロワーハウジング113に固定される構成であればよい。例えば、リブ形状の干渉部15Dをキャップ15の上部15Cに設けたが、これに限らず、干渉部15Dをガイド部113Dの内壁に設けてもよい。また、上部15Cを楔形に形成し、上部15C自体が打撃力によりロワーハウジング113に固定されるようにしてもよい。
【0051】
また、上述の実施形態では、錠装置本体10,100に対して固定部材23を固定し、被ロック部材24を着脱可能としたが、錠装置本体10,100に対して一対の被ロック部材24を着脱可能としてもよい。この場合、ロック部材13、バネ14、キャップ15、カム16のカム部16B、及びロワーハウジング113のガイド部113Dを左右対称に設ければよい。
【0052】
また、上述の実施形態では、キャップ15が第2の位置において干渉部15Dによりロワーハウジング113に固定される構成としたが、キャップ15が第2の位置において干渉部15Dにおいてロワーハウジング113に完全に固定されることは必須ではない。例えば、第2の位置においてロワーハウジング113に圧入状態のキャップ15は、さらに外力を受けてロック部材13側に圧入されてもよい。即ち、キャップ13の第2の位置から第1の位置への移動が規制されていればよい。
【0053】
さらに、上述の実施形態では、鍵挿通孔である開口112Aが設けられたハウジング11の上板112Bに穴が空けられた場合を例に挙げて説明したが、これは必須ではない。例えば、鍵挿通孔が形成されていないハウジングの側面等に対してキャップ15がバネ14により付勢されている場合には、当該側面に穴が空けられた場合に、上述の防盗性能が発揮される。
【符号の説明】
【0054】
10 :錠装置本体(錠装置)
11 :ハウジング
112A:開口(鍵挿通孔)
113A:第1の挿入部(挿入部)
12 :プラグ
13 :ロック部材
14 :バネ(付勢部材)
15 :キャップ(付勢力受け部材)
15C :上部(規制部、圧入固定部)
15D :干渉部(規制部、圧入固定部)
18 :プロテクタ
18B :支持部(第1の部分)
18C :非支持部(第2の部分)
24 :被ロック部材
100 :錠装置本体(錠装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9