IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱農機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-コンバイン 図1
  • 特許-コンバイン 図2
  • 特許-コンバイン 図3
  • 特許-コンバイン 図4
  • 特許-コンバイン 図5
  • 特許-コンバイン 図6
  • 特許-コンバイン 図7
  • 特許-コンバイン 図8
  • 特許-コンバイン 図9
  • 特許-コンバイン 図10
  • 特許-コンバイン 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/127 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
A01D41/127 130
A01D41/127
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020140082
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035621
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 敦
(72)【発明者】
【氏名】石橋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】森広 忠光
(72)【発明者】
【氏名】穂積 由理加
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06155103(US,A)
【文献】特開2004-208551(JP,A)
【文献】特開2017-140002(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0258684(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0004815(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/127
A01F 12/46-12/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に沿って延設された扱室と、該扱室内に回転自在に支持された扱胴と、前記扱室の下方に配置される揺動選別体と、を有し、刈り取った穀稈を脱穀する脱穀装置と、
穀粒を貯留するグレンタンクと、
前記脱穀装置で脱穀された穀粒を前記グレンタンクに搬送する揚送装置と
前記グレンタンクの外側に配置され、前記揚送装置によって搬送された穀粒の一部を取り込んで一時的に貯留する測定貯留部と、
前記測定貯留部に貯留された穀粒の品質を計測する穀粒計測装置と、
前記揺動選別体で選別しきれなかった二番物を該揺動選別体へ還元する還元経路と、を備え
前記揚送装置は、前記脱穀装置で脱穀された穀粒を上方に搬送する搬送部と、前記搬送部を収容するケース本体と、前記ケース本体の上端部と前記グレンタンクとを接続し、前記ケース本体の上端部及び前記グレンタンクに連通する連接部と、を有し、
前記搬送部によって前記ケース本体の上端部に搬送され、前記グレンタンクへ向かって搬送される穀粒の一部は、前記連接部に設けられた供給口を介して、前記測定貯留部に供給され、
前記測定貯留部において前記穀粒計測装置によって品質が計測された穀粒並びに前記穀粒計測装置によって品質が計測されなかった穀粒は共に、前記還元経路を経由して、前記揺動選別体上に排出される、
ことを特徴とするコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀稈の刈取・脱穀を行い、脱穀した穀粒を貯留するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、圃場の作物を刈取ながら脱穀し、グレンタンクに穀粒を貯留するコンバインが知られている。グレンタンクに貯留された穀粒は、排出オーガから機外に排出され、品質を確認する検査を経て市場に出荷される。この検査では、穀粒のヒビ・割れ、異物の混入等が検出され、収穫物の品質が査定される。
【0003】
従来、グレンタンク内に供給された穀粒の一部を一時的に貯留する一時貯留部を設け、この一次貯留部に貯留された穀粒を品質計測センサで測定したりカメラで撮像したりすることにより、収穫後の検査を行わずとも、グレンタンク内の穀粒の状態や異物の混入を確認可能なコンバインが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
このコンバインは、グレンタンク内の天板近傍に揚穀筒から排出された穀粒の一部を一時的に貯留する一時貯留部を設け、位置センサによって一時貯留部に穀粒が貯留されたことが検出されると、品質計測センサとカメラを作動させて穀粒の性状計測及び撮像を行う。そして、品質計測センサから得られた分析結果データ及びカメラで撮像した画像を解析することにより、穀粒の水分やタンパク量等を計測したり、青葉や雑草等の異物の量や損傷籾の量等を把握したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-10075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、サンプリング用の穀粒を貯留する一時貯留部がグレンタンク内に設けられているため、グレンタンク内に貯留された穀粒の堆積高さが位置センサや品質計測センサまで達してしまうと、品質計測センサによる穀粒の計測が困難になるという課題があった。また、品質計測センサによる計測が終了した穀粒は、穀粒ロスすることなくグレンタンクに戻されることが望まれる。
【0007】
そこで、本発明は、グレンタンク内の貯留量に関わらず穀粒の品質を計測することができるようにすると共に、穀粒ロスの発生を防止し、もって上述した課題を解決したコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前後方向に沿って延設された扱室(22)と、該扱室(22)内に回転自在に支持された扱胴(23)と、前記扱室(22)の下方に配置される揺動選別体(27)と、を有し、刈り取った穀稈を脱穀する脱穀装置(6)と、
穀粒を貯留するグレンタンク(11)と、
前記脱穀装置(6)で脱穀された穀粒を前記グレンタンク(11)に搬送する揚送装置(36)と
前記グレンタンク(11)の外側に配置され、前記揚送装置(36)によって搬送された穀粒の一部を取り込んで一時的に貯留する測定貯留部(53)と、
前記測定貯留部(53)に貯留された穀粒の品質を計測する穀粒計測装置(54,55)と、
前記揺動選別体(27)で選別しきれなかった二番物を該揺動選別体(27)へ還元する還元経路(48)と、を備え
前記揚送装置(36)は、前記脱穀装置(6)で脱穀された穀粒を上方に搬送する搬送部(39)と、前記搬送部(39)を収容するケース本体(38a)と、前記ケース本体(38a)の上端部と前記グレンタンク(11)とを接続し、前記ケース本体(38a)の上端部及び前記グレンタンク(11)に連通する連接部(38b)と、を有し、
前記搬送部(39)によって前記ケース本体(38a)の上端部に搬送され、前記グレンタンク(11)へ向かって搬送される穀粒の一部は、前記連接部(38b)に設けられた供給口(53a)を介して、前記測定貯留部(53)に供給され、
前記測定貯留部(53)において前記穀粒計測装置(54,55)によって品質が計測された穀粒並びに前記穀粒計測装置(54,55)によって品質が計測されなかった穀粒は共に、前記還元経路(48)を経由して、前記揺動選別体(27)上に排出される。
【0011】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によると、揚送装置によって搬送された穀粒の一部をグレンタンクの外側に配置した測定貯留部に一時的に貯留し、その穀粒を穀粒計測装置で計測するようにしたので、グレンタンク内の貯留量に関わらず穀粒の品質を計測することができ、しかも、計測後に測定貯留部から排出される穀粒を還元経路を経由して揺動選別体に戻すようにしたので、計測後の穀粒が機外に排出されてしまう穀粒ロスの発生を防止することができる。
【0014】
また、測定貯留部から排出された穀粒を揺動選別体上に排出する際に、揺動選別体で選別しきれなかった二番物を揺動選別体へ還元する還元経路を利用するようにしたので、構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態に係るコンバインを示す左側面図。
図2】コンバインを示す平面図。
図3】脱穀装置を示す左側面図。
図4】脱穀装置及び揚送装置を示す平面図。
図5】揚送装置及び計測ユニットを示す部分断面図。
図6】計測ユニット及び脱穀装置を示す背面図。
図7】計測ユニットを示す正面図。
図8】計測ユニットの取付構造を示す斜視図。
図9】計測ユニットの取付構造を別方向から示す斜視図。
図10】コンバインの制御ブロック図。
図11】計測ユニットの制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に沿って、本実施の形態について説明する。コンバインの一種である汎用型コンバイン1は、図1及び図2に示すように、左右一対のクローラ走行装置2により支持され、不図示のエンジンを搭載した走行機体3を有しており、該走行機体3の前方には、穀稈を刈取って脱穀装置6に受け渡す刈取部5が昇降自在かつ左右方向に開閉自在に設けられている。上記走行機体3の一側方には、上記刈取部5で刈取・搬送された穀稈を脱穀処理及び選別処理する脱穀装置6が設けられており、他側方には、作業者が搭乗して運転操作を行う運転操作部7が設けられている。
【0017】
上記運転操作部7は、図2に示すように、該運転操作部7の中央に設けられた運転席8の左側方に、中立位置から前方又は後方に操作することにより、前進又は後進車速を無段階に調節可能な走行主変速レバー9と、低速の作業レンジと高速の走行レンジとに切替操作し得る副変速レバー10と、等を有している。
【0018】
上記運転操作部7の後方には、上記脱穀装置6で脱穀・選別された穀粒を貯蔵するグレンタンク11が配置されており、該グレンタンク11の後方には、該グレンタンク11内に貯蔵された穀粒を機外に排出する昇降及び回動自在の排出オーガ12が設けられている。上記脱穀装置6で脱穀が終わった排藁は、該脱穀装置6の後部に設けられた排藁処理部13で切断された後、走行機体3後方の刈取跡地に拡散排出される。
【0019】
上記刈取部5は、圃場の穀稈を分草するデバイダ14を前方に有しており、該デバイダ14の上方には、複数のタインが取り付けられた掻込みリール15が設けられている。掻込みリール15の後方には、不図示の刈刃によって刈り取られた穀稈を左方に搬送するプラットホームオーガ16が進行方向と直交する横向きの状態で配設されており、プラットホームオーガ16の後方には搬送フィーダ17が設けられている。搬送フィーダ17は、プラットホームオーガ16によって搬送された穀稈を脱穀装置6まで後方搬送するフィードチェン4を有しており、フィードチェン4によって終端部まで搬送された穀稈は脱穀装置6に投入される。
【0020】
上記脱穀装置6は、図3に示すように、穀稈を脱穀する脱穀部20と、脱穀部20の真下に配置される選別部21と、脱穀部20及び選別部21の後方に配置される排藁処理部13と、を有しており、搬送フィーダ17から搬送されてきた穀稈は、脱穀部20に進入して脱穀される。該脱穀部20で脱穀された穀粒及び脱穀の際に発生する切れ藁等の夾雑物からなる処理物は、脱穀部20から上記選別部21に漏下し、該選別部21において揺動選別及び風選別されて、穀粒のみがグレンタンク11に貯留される。上記脱穀部20にて脱穀された後の排藁は、排藁処理部13へ搬送されて、該排藁処理部13で切断又は結束処理される。
【0021】
より詳しく説明すると、上記脱穀部20は、搬送フィーダ17から搬送されてきた穀稈が投入される扱室22と、扱室22の内部に配置されると共に、扱室22に回転自在に支持されて、前後方向に延びる円筒形状の扱胴23と、を有している。扱胴23の外周面には、前後方向に延びるラセン形状の扱歯24が形成され、扱胴23の前端部には、搬送フィーダ17から搬送されてきた穀稈を扱室22の奥に掻き込むためにラセン形状のラセン羽根25が形成されている。扱胴23の下方には、扱胴23下部の外周面に沿って、正面視において円弧形状に形成された受網26が取り外し可能に配置される。扱胴23が回転することによって、扱歯24が穀稈から穀粒を扱ぎ落として脱穀する。脱穀された穀粒及び藁屑は混在した状態で受網26によって篩にかけられ、荒く選別される。
【0022】
上記選別部21は、受網26の下方に配設された揺動選別体27と、該揺動選別体27の前部下方側から後部上方側に向かって選別風を送風する唐箕ファン28及び送風ファン29と、を有している。上記揺動選別体27は、上下二段構造となっており、上段のフィードパン30及びチャフシーブ31と、下段のグレンシーブ32及びストローラック33と、からなり、これらが連続して設けられて、前後に揺動されることで処理物が篩選別される。上記フィードパン30は、波板状の移送板であって、受網26から漏下する処理物を受け止めて後方移送する。後方移送されたこれら処理物を揺動選別体27で篩選別すると共に、上記唐箕ファン28及び送風ファン29によって起風された選別風によって風選別する。
【0023】
上記チャフシーブ31は、フィードパン30の後方に配置され、前後方向に所定間隔を存して開閉可能に並設されている複数のフィンによって構成されており、揺動しながら扱室22からの処理物を複数のフィン間から漏下選別する。上記グレンシーブ32は、チャフシーブ31の下方に配置された所定の目合の金網部材からなり、揺動しながらチャフシーブ31から漏下した処理物のうち脱穀された穀粒を1番物として1番ラセン34に落下する。ストローラック33は、グレンシーブ32の後方に配置され、グレンシーブ32から漏下しなかった処理物の一部を2番物として2番ラセン35に漏下する。
【0024】
フィードパン30の後端に達した処理物は、選別風によって風選別されると共に、チャフシーブ31、グレンシーブ32及びストローラック33により漏下選別される。なお、チャフシーブ31で落下規制された処理物は、選別風により移送されてチャフシーブ31の後端に達した後、ストローラック33に落下する。また、ストローラック33で落下規制された長藁等の処理物は、選別風によって揺動選別体27の終端まで移送され、藁屑として排藁処理部13から機外に排出される。
【0025】
上記1番ラセン34に落下した1番物である穀粒は、1番搬送装置36によりグレンタンク11に向けて搬送される。1番搬送装置36は、1番搬送装置36の下端である始端部36aに配置されている谷形状の溝である1番回収口37と、1番回収口37の底に配置されて左右方向に延びる1番ラセン34と、1番ラセン34の右端から脱穀装置6とグレンタンク11との間を上方に延びる1番搬送コンベアケース38と、を有している。揺動選別体27から漏下した穀粒は、1番回収口37に落ちて回収され、回転する1番ラセン34によって右方向に搬送される。また、1番搬送装置36は、1番搬送コンベアケース38に収納されると共に1番ラセン34により搬送された穀粒を上方に搬送する1番搬送コンベア39を有している。1番ラセン34によって搬送された穀粒は、1番搬送コンベア39によって1番搬送装置36の始端部36aから終端部36bまで上方へ搬送される。1番搬送装置36の上部には、右方に延びるラセン形状の搬送ラセン40が配置されている。1番搬送装置36の終端部36bに搬送された穀粒は、回転する搬送ラセン40によって搬送され、右方のグレンタンク11に貯留される。
【0026】
揺動選別体27によって漏下して選別された処理物のうち、まだ脱穀が不十分である処理物は、2番揚送装置41により扱室22に還元される。2番揚送装置41は、2番揚送装置41の下端である始端部41aに配置されている谷形状の溝である2番回収口42と、2番回収口42の底に配置されて左右方向に延びる2番ラセン35と、2番ラセン35の右端から脱穀装置6とグレンタンク11との間を上方に延びる2番還元コンベアケース43と、を有している。揺動選別体27から1番回収口37に漏下しなかった処理物の一部は、2番回収口42に落ちて回収され、回転する2番ラセン35によって右方向に搬送される。
【0027】
また、2番揚送装置41は、2番ラセン35により搬送された処理物を上方に搬送する2番還元コンベア44と、2番揚送装置41の上端である終端部41bに配置されている従動スプロケット45と、を有している。2番還元コンベア44は、2番ラセン35の右端と従動スプロケット45とに亘って巻き掛けられると共に、2番ラセン35によって駆動される無端状のローラチェンである2番還元チェン46と、2番還元チェン46に支持されて処理物を搬送する搬送体47と、を有している。搬送体47は、2番還元チェン46の外側に所定の間隔で複数配置されている板状の部材であり、2番還元チェン46の駆動に伴い2番還元コンベアケース43内を循環する。2番ラセン35によって搬送された処理物は、2番還元コンベア44によって2番揚送装置41の始端部41aから上端である終端部41bまで上方へ搬送され、前後方向に延びる還元経路48を経由して再び扱室22に投入される。また、揺動選別体27から1番回収口37及び2番回収口42のいずれにも漏下しなかった処理物は、藁屑として排藁処理部13に搬送される。
【0028】
次に、図4及び図5を参照して、上記1番搬送装置36の詳細について説明する。図5に示すように、1番搬送装置36の上端である終端部36bには、始端部36aに配置されている1番ラセン34(図3参照)の回転軸と略平行な回転軸を中心として回転自在に軸支されている従動スプロケット49が設けられている。上記1番搬送コンベア39は、無端状のローラチェンである1番還元チェン50と、1番還元チェン50に支持されて、環状の1番還元チェン50の外側で穀粒を搬送する複数のバケット51と、を有している。1番還元チェン50には、所定の間隔で複数のバケット51が配置されている。
【0029】
1番還元チェン50は、1番ラセン34と従動スプロケット49とに亘って巻き掛けられると共に、1番ラセン34の駆動力によって駆動される。バケット51は、1番還元チェン50の外側に所定の間隔で複数配置されている容器状の部材であり、1番還元チェン50の駆動に伴い1番搬送コンベアケース38内を循環する。1番ラセン34が図5における矢印A方向に回転してバケット51が1番搬送コンベアケース38内を循環することにより、1番搬送装置36の始端部36aから終端部36bに亘って、バケット51により搬送方向としての上方へ穀粒が搬送される搬送路Tが形成されている。
【0030】
1番搬送コンベアケース38は、1番搬送コンベア39の前後左右を覆う断面矩形状に形成されたケース本体38aと、ケース本体38aの上端部から前方に突出するように形成された連接部38bと、ケース本体38aの下部に形成された開口部38cを塞ぐメンテナンスカバー38dと、を有している。図4に示すように、1番搬送コンベアケース38は、脱穀装置6とグレンタンク11との間に存する空間としての閉鎖空間Sを利用して配置されており、その後方に2番揚送装置41の2番還元コンベアケース43が配置されている。また、連接部38bの大部分は脱穀装置6の天面6aから上方に突出した位置に配置されている(図3参照)。
【0031】
上記メンテナンスカバー38dは、複数のボルト39eを用いてケース本体38aに着脱可能に取り付けられており、作業者が、バケット51から落下してケース本体38aの内部に堆積した穀粒を除去する際や、1番搬送コンベアケース38の内部の状況を確認する際等に、作業者によって取り外されて開口部38cを開放する。
【0032】
1番搬送コンベアケース38の連接部38bに上記搬送ラセン40が配置され、その前方に計測ユニット52が配置されている。搬送ラセン40は右方に延びるスクリューコンベアによって構成されており、1番搬送装置36の終端部36bに搬送された穀粒は、搬送ラセン40によって搬送されて右方のグレンタンク11に貯留される。また、1番搬送装置36の終端部36bに搬送された穀粒のうち、一部が搬送ラセン40を超えて計測ユニット52に取り込まれる。なお、1番搬送装置36は、本実施の形態において、脱穀装置6で脱穀された穀粒をグレンタンク11搬送する揚送装置を構成している。
【0033】
図6及び図7に示すように、上記計測ユニット52は、1番搬送装置36により搬送された穀粒の一部を取り込んで一時的に貯留する測定貯留部53と、測定貯留部53を挟んで互いに左右に対向する位置に配置され、測定貯留部53を挟んで互いに左右に対向する位置に配置され、測定貯留部53内に取り入れられた穀粒の品質を測定する水分センサ54及びカメラ55と、を有している。測定貯留部53には、穀粒が供給される供給口53aと、供給口53aから供給された穀粒が脱穀装置6内に排出される排出口53bと、が形成されており、これら供給口53aと排出口53bとの間には、シャッタ56が回動軸56aを中心に回動可能に支持されている。シャッタ56は、排出口53bを開放する開位置と、排出口53bを遮蔽する閉位置と、にシャッタ開閉モータ107(図10参照)によって移動可能である。
【0034】
水分センサ54は、外装を形成するケーシング54aと、ケーシング54aの一側面から測定貯留部53内に突出する一対のスクリュー54b(一方のみ図示)と、を有しており、これらスクリュー54bは測定貯留部53の鉛直方向における上流側に配置されている。水分センサ54は、回転するスクリュー54bにより一粒ずつ穀粒を取り込んで水分を測定する単粒粉砕型の品質測定センサである。カメラ55は、測定貯留部53の鉛直方向における下流側に配置されており、水分センサ54のスクリュー54bに乗っからずに零れ落ちた穀粒又はシャッタ56上に載置された穀粒を撮像し、撮像した画像から得られる分析結果データから、大まかな穀粒の食味等を測定する撮像手段である。なお、これら水分センサ54及びカメラ55は、本実施の形態において、測定貯留部53に貯留された穀粒の品質を計測する穀粒計測装置を構成している。
【0035】
図6に示すように、測定貯留部53の排出口53bと脱穀装置6との間に回収経路53cが形成されており、排出口53bから排出された穀粒は回収経路53cを経由して脱穀装置6側に戻される。その際、水分センサ54で測定された後の粉砕穀粒も測定貯留部53内の正常穀粒に合流させて排出口53bから排出されるが、粉砕穀粒(潰れた穀粒、割れた穀粒、粉砕されて粉になった穀粒など)は正常穀粒よりも軽いので、上記揺動選別体27上で篩選別や風選別されて機外へ排出される。
【0036】
ここで、上述した脱穀装置6側とは、脱穀装置6(脱穀部20と選別部21)、1番搬送装置36、2番揚送装置41を指しており、測定貯留部53に貯留されたサンプリング後の穀粒を脱穀装置6側の処理物が流れる経路中のどこかに還元して回収することを意図している。本実施形態では、図6に示すように、排出口53bから排出された穀粒を脱穀装置6の脱穀部20内に戻すように構成されているため、サンプリング後の穀粒を機外に排出して穀粒ロスが発生することを防止できる。それ以外にも、揺動選別体27で選別しきれなかった二番物を揺動選別体27に還元する還元経路48を利用し、還元経路48に排出口53bから排出された穀粒を戻すように構成してもよい。この場合、回収経路53cは、還元経路48を含み、測定貯留部53から排出された穀粒を脱穀装置6側に戻す回収経路53cの構成を簡素化することができる。なお、粉砕穀粒は、水分センサ54から直接、汎用型コンバイン1の外方に放出されてもよい。
【0037】
図8及び図9に示すように、上記計測ユニット52は、ブラケットを介して1番搬送装置36の1番搬送コンベアケース38とオーガ受け57によって支持されており、脱穀装置6の側方に設けられたオーガ受け57を利用して取付強度が高められている。オーガ受け57は、ベース部材58に立設されて上方に延びる支柱57aと、支柱57aの上端に形成されたV字状の受部57bと、を有しており、該受部57bにより上記排出オーガ12が機体内方の収納位置に保持可能となっている。
【0038】
また、計測ユニット52が有する水分センサ54のケーシング54a上面に、脱穀装置6で脱穀される作物を設定する設定切替操作具59が設けられている(図9参照)。ここで、脱穀装置6とグレンタンク11は走行機体3の左右方向に並設されており、脱穀装置6の天面6aは、グレンタンク11の天面11aよりも低い位置にある(図6参照)。また、1番搬送装置36は、脱穀装置6の天面6aよりも高い位置まで延設されている。そして、上記計測ユニット52の水分センサ54及びカメラ55は、機体の幅方向に視て、脱穀装置6の天面6aよりも上方に露出するように、1番搬送装置36の連接部38bに取り付けられている。言い換えれば、水分センサ54及びカメラ55は、グレンタンク11の外側で、かつ1番搬送装置36の上端部近傍に配設されている。なお、1番搬送装置36の上端部近傍とは、例えば、1番搬送装置36の鉛直方向における中央よりも上方であればよい。また、水分センサ54及びカメラ55は、鉛直方向において脱穀装置6の天面6aにオーバーラップする位置であると好適である。また、計測ユニット52が取り付けられる連接部38bは、グレンタンク11の前端部に近い位置に配置されている。すなわち、設定切替操作具59は、運転操作部7から作業者が操作可能な位置に配置されている。なお、設定切替操作具59は、運転操作部7に作業者が搭乗した状態であれば、運転席に着座した作業者から手の届く位置でも運転席に着座していない作業者から手の届く位置にあってもよい。したがって、グレンタンク11の前方に設置された運転操作部7に作業者が搭乗している場合、運転操作部7から作業者が手を伸ばして設定切替操作具59を容易に操作することができる。
【0039】
図10は、本実施の形態における制御ブロック図を示しており、汎用型コンバイン1は、マイクロコンピュータ等からなる制御装置100を備えており、該制御装置100はデータ記憶部100a及び通信部100bを有している。制御装置100の入力側には、走行検出手段101、刈取・脱穀駆動手段102、穀稈検出手段103、シャッタ位置検出手段104、サンプリング穀粒量検出手段105、水分センサ54、カメラ55、機体位置検出手段106等が接続されている。また、制御装置100の出力側には、シャッタ開閉モータ107、外部サーバー108、液晶モニタ109等が接続されている。
【0040】
走行検出手段101は車速センサ又は主変速レバーポテンショ等からなり、刈取・脱穀駆動手段102はパワークラッチスイッチ又はクラッチ入切検出センサ等からなり、穀稈検出手段103は搬送穀稈を検出する穀稈センサからなり、制御装置100は、これら走行検出手段101、刈取・脱穀駆動手段102及び穀稈検出手段103の検出結果に基づいて収穫作業中であるか否かを判断する。
【0041】
シャッタ位置検出手段104はシャッタ56の開閉動作を検出するスイッチ又はポテンショ等からなり、制御装置100は、収穫作業中であると判断した場合には、シャッタ位置検出手段104がシャッタ56の閉じ状態を検出するまでシャッタ開閉モータ107を駆動し、シャッタ56を閉じのタイミングに合わせて水分センサ54による穀粒の計測を開始する。
【0042】
サンプリング穀粒量検出手段105は測定貯留部53内に貯留される穀粒量を検出するスイッチ又はポテンショ等からなり、サンプリング穀粒量検出手段105によりシャッタ56を閉じてから測定貯留部53内に貯留される穀粒(サンプリング穀粒)量が所定量に到達したことが検出されると、制御装置100は、撮像手段であるカメラ55によってサンプリング穀粒の画像を撮影する。
【0043】
制御装置100は通信部100bを介して外部サーバー108に接続されており、制御装置100と外部サーバー108は相互に通信可能に構成されている。制御装置100は、カメラ55によって撮像された画像から生成される穀粒品質情報と、水分センサ54の測定結果から生成される穀粒水分量(平均値)情報と、GNSS等からなる機体位置検出手段106から得られる機体位置情報とを関連付けてデータ記憶部100aに記憶し、これら情報を上記運転操作部7に配置された液晶モニタ109に表示する。
【0044】
次に、図11に示すフローチャートを参照して、計測ユニット52の制御について説明する。図11示すように、計測ユニット52の制御が開始されると、まず制御装置100は、走行検出手段101、刈取・脱穀駆動手段102及び穀稈検出手段103の検出結果に基づいて、汎用型コンバイン1が刈取(収穫)作業中であるか否を判定する(ステップS1)。
【0045】
刈取作業中であると判定された場合(ステップS2:YES)、制御装置100は、シャッタ位置検出手段104の検出結果に基づいて、測定貯留部53のシャッタ56が閉位置に位置するか否を判別する(ステップS2)。シャッタ56が閉位置に位置していない場合(ステップS2:NO)、制御装置100は、シャッタ56が閉位置に位置するようにシャッタ開閉モータ107を駆動させ(ステップS3)、シャッタ56が閉じ状態となったタイミングに合わせて水分センサ54で穀粒の計測を開始した後(ステップS4)、ステップS5に進む。
【0046】
ステップS2においてシャッタ56が閉位置に位置している場合(ステップS2:YES)、制御装置100は、サンプリング穀粒量検出手段105の検出結果に基づいて、シャッタ56を閉じてから測定貯留部53内に貯留されたサンプリング穀粒量が所定量以上となっているか否かを判定し(ステップS5)、サンプリング穀粒量が所定量に達していない場合(ステップS5:NO)は、制御を終了する。
【0047】
測定貯留部53内のサンプリング穀粒量が所定量以上となっている場合(ステップS5:YES)、制御装置100は、カメラ55を作動させて穀粒の撮像を行う(ステップS6)。カメラ55による穀粒の撮像は、1回でも、複数回にわたって行われてもよく、複数回の撮像によって得られたデータの平均をとってもよい。
【0048】
カメラ55による穀粒の撮像動作(ステップS6)が終了すると、制御装置100は、水分センサ54の測定結果から穀粒水分量を算出した後(ステップS7)、カメラ55によって撮像された画像から生成される穀粒品質情報と、水分センサ54の測定結果から生成される穀粒水分量(平均値)情報とを関連付けてデータ記憶部100aに記憶する(ステップS8)。
【0049】
制御装置100は、これら関連付けた情報を通信部100bにより外部サーバー108に送信し(ステップS9)、その情報を運転操作部7に配置された液晶モニタ109に表示した後、シャッタ56が開位置に位置するようにシャッタ開閉モータ107を駆動させ(ステップS10)、制御を終了する。ステップS10においてシャッタ56が開放されると、測定貯留部53内に貯留されていたサンプリング後の穀粒は、排出口53bから回収経路53cを経由して脱穀装置6側に戻される。
【0050】
また、ステップS1において刈取作業中でないと判定された場合(ステップS1:NO)、制御装置100は、測定貯留部53のシャッタ56が開位置に位置するか否かを判別する(ステップS11)。シャッタ56が開位置に位置していない場合(ステップS11:NO)、制御装置100は、シャッタ56が開位置に位置するようにシャッタ開閉モータ107を駆動させた後(ステップS12)、ステップS13に進む。
【0051】
シャッタ56が開位置に位置している場合(ステップS11:YES)、制御装置100は、水分センサ54による穀粒の測定を中止し、制御を終了する(ステップS13)。
【0052】
なお、以上の制御は、汎用型コンバイン1の脱穀クラッチがONとなっている間、繰り返される。すなわち、刈取作業中は、測定貯留部53への穀粒の貯留、穀粒の水分計測及び撮像、脱穀装置6側への穀粒の排出が繰り返される。
【0053】
本実施の形態は、以上のような構成からなり、1番搬送装置36によって搬送された穀粒の一部をグレンタンク11の外側に配置した測定貯留部53に一時的に貯留し、その穀粒を穀粒計測装置(水分センサ54及びカメラ55)で計測するようにしたので、グレンタンク11内の貯留量に関わらず穀粒の品質を計測することができ、しかも、計測後に測定貯留部53から排出される穀粒を回収経路53cを経由して脱穀装置6側に戻すようにしたので、計測後の穀粒が機外に排出されてしまう穀粒ロスの発生を防止することができる。
【0054】
そして、計測ユニット52の測定貯留部53に取り入れた穀粒の水分率を水分センサ54で計測し、その分析結果データから穀粒の水分を計測することができる。また、カメラ55が撮像した画像から得られる画像データ分析結果データから、色、大きさ及び形状などに基づいて、大まかな穀粒の食味や、排藁や雑草等の夾雑物の量を認識することができる。なお、本実施の形態では、計測ユニット52に組み込まれる穀粒計測装置として、単粒粉砕型の水分センサ54及びカメラ55を用いているが、これらに限定されず、静電容量分光方式の水分センサや近赤外線分光方式の食味センサ等を用いてもよい。
【0055】
また、本実施の形態では、測定貯留部53から排出された穀粒を脱穀装置6の揺動選別体27上に排出するようにしたので、穀粒計測装置として単粒粉砕型の水分センサ54を用いることにより、測定貯留部53から排出される穀粒に粉砕穀粒と正常穀粒が混在する場合であっても、粉砕穀粒は正常穀粒よりも軽いので、揺動選別体27上で正常穀粒を選別して回収することができる。
【0056】
また、本実施の形態において、脱穀装置6側とは、脱穀装置6(脱穀部20と選別部21)、1番搬送装置36、2番揚送装置41を指しており、測定貯留部53に貯留されたサンプリング後の穀粒を脱穀装置6側の処理物が流れる経路中のどこかに還元して回収することを意図している。特に、揺動選別体27で選別しきれなかった二番物を揺動選別体27に還元する還元経路48を利用し、還元経路48に排出口53bから排出された穀粒を戻すように構成した場合、測定貯留部53から排出された穀粒を脱穀装置6側に戻す回収経路の構成を簡素化することができる。
【0057】
なお、本実施の形態は、汎用型のコンバインについて説明したが、自脱型のコンバインに本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 汎用型コンバイン(コンバイン)
6 脱穀装置
11 グレンタンク
20 脱穀部
21 選別部
22 扱室
23 扱胴
27 揺動選別体
36 1番搬送装置(揚送装置)
48 還元経路
52 計測ユニット
53 測定貯留部
53c 回収経路
54 水分センサ(穀粒計測装置)
55 カメラ(穀粒計測装置)
56 シャッタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11