IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジャパンエンジンコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許-舶用内燃機関 図1
  • 特許-舶用内燃機関 図2
  • 特許-舶用内燃機関 図3
  • 特許-舶用内燃機関 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】舶用内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02D 23/00 20060101AFI20240614BHJP
   F02M 26/06 20160101ALI20240614BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20240614BHJP
   F02B 37/18 20060101ALI20240614BHJP
   F02B 37/24 20060101ALI20240614BHJP
   F02D 21/08 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
F02D23/00 J
F02M26/06
F02D43/00 301N
F02D43/00 301R
F02B37/18 A
F02B37/24
F02D21/08 311B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020151349
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2022045648
(43)【公開日】2022-03-22
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳 潤
(72)【発明者】
【氏名】三柳 晃洋
(72)【発明者】
【氏名】上田 哲司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和久
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-193851(JP,A)
【文献】国際公開第2012/147246(WO,A1)
【文献】特開2018-204455(JP,A)
【文献】特開2019-214962(JP,A)
【文献】特開2012-163009(JP,A)
【文献】特開2014-190339(JP,A)
【文献】特開2009-299537(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0360179(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 23/00
F02M 26/06
F02D 43/00
F02B 37/18
F02B 37/24
F02D 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2ストローク式の主機関と、
前記主機関に接続される吸気通路及び排気通路と、
前記吸気通路に配置されるコンプレッサ及び前記排気通路に配置されるタービンを有し、前記タービンに供給される排気によって前記コンプレッサを駆動する排気タービン式過給機と、
前記排気通路における前記タービン下流側の部位と、前記吸気通路における前記コンプレッサ上流側の部位と、を接続するEGR通路と、
前記EGR通路を開閉するEGR弁と、
前記タービンに供給される排気の流量または流速を調整する排気調整システムと、
前記EGR弁の開度に基づいて前記排気調整システムを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記EGR弁が閉弁状態にある場合には、該EGR弁が開弁状態にある場合と比較して前記タービンに供給される排気の流量または流速を減少させることによって、前記EGR弁が開弁状態にある場合と該EGR弁が閉弁状態にある場合との間で、前記コンプレッサから吐出される空気の圧力を維持し、
前記排気調整システムは、
前記排気通路における前記タービン上流側の部位と、該タービン下流側の部位と、を接続するバイパス通路と、
前記バイパス通路を開閉することで、前記タービンに供給される排気の流量を調整するバイパス弁と、を有し、
前記コントローラは、前記EGR弁が開弁状態から閉弁状態に変更されたとき、前記バイパス弁を少なくとも一時的に全開状態にする
ことを特徴とする舶用内燃機関。
【請求項2】
請求項に記載された舶用内燃機関において、
前記排気タービン式過給機は、前記EGR弁及び前記バイパス弁のいずれか一方を開弁状態としたときに、該排気タービン式過給機の吐出圧が所定の適正範囲に収まるように構成される
ことを特徴とする舶用内燃機関。
【請求項3】
2ストローク式の主機関と、
前記主機関に接続される吸気通路及び排気通路と、
前記吸気通路に配置されるコンプレッサ及び前記排気通路に配置されるタービンを有し、前記タービンに供給される排気によって前記コンプレッサを駆動する排気タービン式過給機と、
前記排気通路における前記タービン下流側の部位と、前記吸気通路における前記コンプレッサ上流側の部位と、を接続するEGR通路と、
前記EGR通路を開閉するEGR弁と、
前記タービンに供給される排気の流量または流速を調整する排気調整システムと、
前記EGR弁の開度に基づいて前記排気調整システムを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記EGR弁が閉弁状態にある場合には、該EGR弁が開弁状態にある場合と比較して、前記タービンに供給される排気の流量または流速を減少させ、
前記排気調整システムは、
前記排気通路における前記タービン上流側の部位と、該タービン下流側の部位と、を接続するバイパス通路と、
前記バイパス通路を開閉することで、前記タービンに供給される排気の流量を調整するバイパス弁と、を有し、
前記排気タービン式過給機は、前記EGR弁及び前記バイパス弁のいずれか一方を開弁状態としたときに、該排気タービン式過給機の吐出圧が所定の適正範囲に収まるように構成され、
前記コントローラは、前記EGR弁が開弁状態から閉弁状態に変更されたとき、前記バイパス弁を少なくとも一時的に全開状態にする
ことを特徴とする舶用内燃機関。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された舶用内燃機関において、
前記タービンを通過する排気の流量と、前記バイパス通路を介して前記タービンを迂回する排気の流量と、の比率を調整する排気絞り手段を備え、
前記排気絞り手段は、前記バイパス弁が開弁状態にあるか否かに拘わらず、前記タービンを迂回する排気の流量を、該タービンを通過する排気の流量よりも少なくするように構成される
ことを特徴とする舶用内燃機関。
【請求項5】
請求項に記載された舶用内燃機関において、
前記バイパス通路には、該バイパス通路の通路断面積を狭めるオリフィスが設けられ、
前記排気絞り手段は、前記オリフィスによって構成される
ことを特徴とする舶用内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、舶用内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、舶用に限定されない内燃機関の一例として、EGR装置を備えた過給機付きエンジンが開示されている。具体的に、この特許文献1には、過給機の吸入空気温度に基づいて、過給機が破損する破損温度に対応する破損過給圧を求め、その破損過給圧よりも低く設定された最大過給圧を上限とするように、過給機の過給圧を制限することが開示されている。
【0003】
前記特許文献1によると、EGR装置を備えるエンジンの場合、EGRクーラの性能次第では、吸気通路に還流されるEGRガスが高温になる可能性がある。そのため、過給機がEGRガスを吸入する場合、その過給機に吸入される空気の温度(吸入空気温度)が過度に高くなり、それに起因して過給機が破損するおそれがある。
【0004】
こうした問題に対し、前記特許文献1に開示されているエンジンは、前記吸入空気温度に基づいて過給機の過給圧を制限することで、過給機の破損を予防することができるようになっている。ここで、同文献に係るエンジンは、過給機の過給圧を制限するための手段として、過給機を迂回するように空気を流通させるバイパスバルブを備えた構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-299537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した問題に対応するための具体的な方策としては、例えば、EGRガスを還流させる際にバイパスバルブの開弁等を行うことで、過給機を構成するロータ、タービン等に流入する排気の流量または流速を減少させ、過給圧が過度に高くならないようにすることが考えられる。
【0007】
また、バイパスバルブに限らずとも、いわゆる可変ノズルターボを用いることで、EGRガスを還流させるか否かに応じて、過給機に流入する排気の流速を適宜調整することも考えられる。
【0008】
もっとも、前述した問題は、EGRクーラの性能に起因するものである。そのため、例えば舶用内燃機関のように、大型で高性能な冷却装置を使用できる場合には、前述の如き制御は通常不要となる。
【0009】
ところで、船舶を対象に実施されているNOx規制のうち、特に3次規制(Tier3)をクリアするための手段として、前記特許文献1に開示されているようなEGR装置を具備した舶用内燃機関が検討されている。
【0010】
そうした舶用内燃機関において、さらに排気タービン式過給機を備えた構成とした場合、コンプレッサで圧縮される空気の比熱比は、その空気に含まれるEGRガスに起因して低下することになる。比熱比の低下は、掃気圧(過給圧)の低下を招く。掃気圧の低下は、燃費性能の悪化、排気中のスモークの発生等を招くため望ましくない。
【0011】
そこで、EGRガスを還流させることを見越して、燃料の噴射圧力を予め高く設定したり、比熱比の低下に伴う掃気圧の低下を補うようにタービン上流のノズル面積(以下、これを「タービンノズル面積」という)を予め絞っておいたりすることが考えられる。
【0012】
ところが、船舶が運航対象とする海域は、前述の3次規制が敷かれた海域(以下、「Tier3海域」という)には限定されない。この3次規制よりもNOxの排出制限が緩い2次規制(Tier2)が敷かれた海域(以下、「Tier2海域」という)を運航したり、Tier3海域と、Tier2海域2と、を行き来するように運航したりすることも考えられる。
【0013】
これに対応するためには、Tier3海域ではEGR弁を開弁してEGRガスを還流させる一方、Tier2海域ではEGR弁を閉弁してEGRガスを還流させないように内燃機関を制御することが考えられる。
【0014】
ところが、EGRガスを還流させるEGR運転時(Tier3海域に適した運転時)に比熱比に係る問題が生じないように、前述のように燃料の噴射圧力を予め高く設定してしまうと、EGRガスを還流させない通常運転時(Tier2海域に適した運転時)に、NOxの排出量が増加してしまうという問題に直面することになる。
【0015】
そこで、燃料の噴射圧力を高める代わりに、前述のようにタービンノズル面積を予め絞ることが考えられるが、この場合、通常運転時に掃気圧が過度に上昇してしまい、筒内圧が設計上の許容範囲を超えてしまうおそれがある。
【0016】
このように、本願発明者らは、前記特許文献1とは異なる観点から検討を進めた結果、舶用内燃機関に特有の課題を新たに発見した。本願発明者らは、さらに鋭意検討を重ねた末に、同文献に係る構成とは異質な制御を創作するに至った。
【0017】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、排気タービン式過給機を備える舶用内燃機関において、EGR運転と通常運転とを両立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本開示の第1の態様は、舶用内燃機関に関する。この舶用内燃機関は、2ストローク式の主機関と、前記主機関に接続される吸気通路及び排気通路と、前記吸気通路に配置されるコンプレッサ及び前記排気通路に配置されるタービンを有し、前記タービンに供給される排気によって前記コンプレッサを駆動する排気タービン式過給機と、前記排気通路における前記タービン下流側の部位と、前記吸気通路における前記コンプレッサ上流側の部位と、を接続するEGR通路と、前記EGR通路を開閉するEGR弁と、前記タービンに供給される排気の流量または流速を調整する排気調整システムと、前記EGR弁の開度に基づいて前記排気調整システムを制御するコントローラと、を備える。
【0019】
そして、本開示の第1の態様によれば、前記コントローラは、前記EGR弁が閉弁状態にある場合には、該EGR弁が開弁状態にある場合と比較して、前記タービンに供給される排気の流量または流速を減少させる。
【0020】
ここで、「排気調整システム」には、排気にタービンを迂回させることによって排気の流量を調整するバイパスライン、タービン上流のノズル面積を可変とすることで排気の流速を調整する可変ノズル等が含まれる。
【0021】
前記第1の態様によると、前記コントローラは、Tier2海域での運航等、EGRガスを還流させない通常運転を実行する場合(EGR弁が閉弁状態にある場合)には、Tier3海域での運航等、EGRガスを還流させるEGR運転を実行する場合(EGR弁が開弁状態にある場合)と比較して、タービンに供給される排気の流量または流速を減少させる。
【0022】
これにより、EGR運転に適した掃気圧が実現されるようにタービンノズル面積を予め絞っておいたとしても、通常運転ではタービンに供給される排気の流量または流速を減少させることで、通常運転における掃気圧の過度の上昇を抑制し、筒内圧を許容範囲に収めることができるようになる。
【0023】
換言すれば、前記コントローラは、EGR運転を実行する場合には、通常運転を実行する場合と比較して、タービンに供給される排気の流量または流速を増加させることになる。
【0024】
これにより、通常運転に適した掃気圧が実現されるように、バイパスライン等を用いて排気の流量等を低めに設定しておいたとしても、EGR運転時にはそのバイパスライン等を閉止することで、EGR運転においても適切な掃気圧を維持することができるようになる。
【0025】
また、本開示の第2の態様によれば、前記排気調整システムは、前記排気通路における前記タービン上流側の部位と、該タービン下流側の部位と、を接続するバイパス通路と、前記バイパス通路を開閉することで、前記タービンに供給される排気の流量を調整するバイパス弁と、を有する、としてもよい。
【0026】
前記第2の態様によると、バイパス弁を開弁状態にしたときには、タービンに供給される排気の流量を相対的に減少させることができる一方、バイパス弁を閉弁状態にしたときには、タービンに供給される排気の流量を相対的に増加させることができるようになる。バイパス弁を適宜開閉することで、EGR運転から通常運転への移行時(あるいは、その逆の移行時)に、掃気圧を適切な値に維持することができるようになる。
【0027】
また、本開示の第3の態様によれば、前記排気タービン式過給機は、前記EGR弁及び前記バイパス弁のいずれか一方を開弁状態としたときに、該排気タービン式過給機の吐出圧が所定の適正範囲に収まるように構成される、としてもよい。
【0028】
ここでいう「吐出圧」とは、排気タービン式過給機のコンプレッサから吐出される空気の圧力(過給圧)を指す。吐出圧の大きさは、前述の掃気圧と実質的に等しい。さらに、ここでいう「適正範囲」とは、主機関の筒内圧が許容範囲を超えないように設定された圧力範囲を指す。
【0029】
前記第3の態様によると、例えばタービンノズル面積を設計段階で絞っておくことで、排気タービン式過給機の吐出圧を予め高めに設定する。こうすることで、EGR弁を開弁状態としたとき(または、バイパス弁を開弁状態としたとき)に生じる吐出圧の低下を見越した構成とすることができ、吐出圧を適正範囲に収めることが可能になる。
【0030】
また、本開示の第4の態様によれば、前記コントローラは、前記EGR弁が開弁状態から閉弁状態に変更されたとき、前記バイパス弁を少なくとも一時的に全開状態にする、としてもよい。
【0031】
前記第4の態様によると、EGR運転から通常運転への移行直後または移行過渡時にバイパス弁を全開状態にすることで、主機関内に残存したEGRガスの排出を促進し、これを早期に排出することができるようになる。これにより、EGR運転から通常運転への移行をスムースに行うことができるようになる。
【0032】
また、本開示の第5の態様によれば、前記舶用内燃機関は、前記タービンを通過する排気の流量と、前記バイパス通路を介して前記タービンを迂回する排気の流量と、の比率を調整する排気絞り手段を備え、前記排気絞り手段は、前記バイパス弁が開弁状態にあるか否かに拘わらず、前記タービンを迂回する排気の流量を、該タービンを通過する排気の流量よりも少なくするように構成される、としてもよい。
【0033】
バイパス弁が開弁状態にあるときには、バイパス通路を介して排気がタービンを迂回することになる。しかしながら、必要以上の排気を迂回させてしてしまっては、掃気圧の低下を招き、これを維持する上で不都合となる。
【0034】
前記第5の態様によると、前記排気絞り手段は、バイパス弁が開弁状態にあってもなお、タービンを迂回する排気の流量を、該タービンを通過する排気の流量よりも少なくする。こうすることで、タービンの駆動に要する流量を確保することができ、ひいては、掃気圧を維持する上で有利になる。
【0035】
また、本開示の第6の態様によれば、前記バイパス通路には、該バイパス通路の通路断面積を狭めるオリフィスが設けられ、前記排気絞り手段は、前記オリフィスによって構成される、としてもよい。
【0036】
前記第6の態様は、掃気圧を維持する上で有効である。
【0037】
また、本開示の第7の態様によれば、前記舶用内燃機関は、前記排気タービン式過給機は、前記タービン周囲の通路面積を変化させることで、前記タービンに供給される排気の流速を調整する可変ノズルを備え、前記排気調整システムは、前記可変ノズルによって構成される、としてもよい。
【0038】
前記第7の態様によると、可変ノズルを絞ったときには、タービンに供給される排気の流速を相対的に増加させることができる一方、可変ノズルを開いたときには、タービンに供給される排気の流速を相対的に減少させることができるようになる。このように構成することで、EGR運転から通常運転への移行時(あるいは、その逆の移行時)に、掃気圧を適切な値に維持することができるようになる。
【0039】
また、本開示の第8の態様によれば、前記排気タービン式過給機は、前記EGR弁を開弁状態としかつ前記可変ノズルによって前記通路面積を縮小したとき、または、前記EGR弁を閉弁状態としかつ前記可変ノズルによって前記通路面積を拡大したときに、該排気タービン式過給機の吐出圧が所定範囲に収まるように構成される、としてもよい。
【0040】
前記第8の態様によると、例えばタービンノズル面積を設計段階で絞っておくことで、排気タービン式過給機の吐出圧を予め高めに設定する。こうすることで、EGR弁を開弁状態としたとき、または、可変ノズルによって通路面積を拡大したときに生じる掃気圧の低下を見越した構成とすることができ、掃気圧を適正範囲に収めることが可能になる。
【発明の効果】
【0041】
以上説明したように、本開示によれば、排気タービン式過給機を備える舶用内燃機関において、EGR運転と通常運転とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、舶用内燃機関の概略構成を例示するシステム図である。
図2図2は、EGR運転から通常運転への切替手順を例示するフローチャートである。
図3図3は、通常運転からEGR運転への切替手順を例示するフローチャートである。
図4図4は、舶用内燃機関の変形例を示す図1対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
図1は、舶用内燃機関(以下、単に「エンジン1」ともいう)の概略構成を例示するシステム図である。
【0044】
エンジン1は、複数のシリンダ11を備えた直列多気筒式のディーゼルエンジンである。このエンジン1は、ユニフロー掃気方式の2ストローク1サイクル機関として構成されており、タンカー、コンテナ船、自動車運搬船等、大型の船舶に搭載される。
【0045】
船舶に搭載されたエンジン1は、その船舶を推進させるための主機関10を備える。そのため、主機関10の出力軸は、プロペラ軸(不図示)を介して船舶のプロペラ(不図示)に連結されている。エンジン1が運転することで、その出力がプロペラに伝達されて船舶が推進するようになっている。
【0046】
エンジン1はまた、ターボ過給機付エンジンとして構成されている。すなわち、本実施形態に係るエンジン1は、図1に示されるように、排気タービン式過給機4を備えた構成とされている。
【0047】
(1)主要構成
以下、エンジン1の要部について説明する。
【0048】
図1に示されるように、エンジン1は、前述の主機関10と、この主機関10に接続される吸気系2及び排気系3と、排気系3を流れる排気によって作動する排気タービン式過給機4と、排気を還流させるEGR(Exhaust Gas Recirculation)システム8と、排気の流量または流速を調整する排気調整システム9と、エンジン1の各部を制御するコントローラ100と、を備える。
【0049】
このうち、主機関10は、複数のシリンダ11(図1においては、4つのシリンダ11のみを例示)を有する。主機関10は、2ストローク式の機関である。各シリンダ11内には、ピストン(不図示)が往復動可能にそれぞれ挿入される。各シリンダ11の内壁、シリンダヘッド(不図示)の天井面、及び、ピストンの頂面によって、シリンダ11毎に燃焼室が区画される。
【0050】
主機関10はまた、掃気トランク18と、排気マニホールド19と、を有する。掃気トランク18は、主機関10の燃焼室に連通しており、この燃焼室12に掃気を供給するように構成される。排気マニホールド19は、主機関10の燃焼室に連通しており、この燃焼室から既燃ガス(排気)を排出することができる。主機関10は、掃気トランク18を介して吸気系2(具体的には、後述の吸気通路21)に接続される一方、排気マニホールド19を介して排気系3(具体的には、後述の排気通路31)に接続されるようになっている。
【0051】
吸気系2は、主機関10に接続される吸気通路21を有する。吸気系2は、この吸気通路21を介して主機関10に空気を送り込むように構成される。具体的に、本実施形態に係る吸気通路21には、上流側から順に、大気から取り込んだ空気(新気)を後述のEGRガスとともに圧縮するコンプレッサ41と、コンプレッサ41により圧縮された空気を冷却するエアクーラ22と、が設けられる。エアクーラ22によって冷却された空気は、前述の掃気トランク18を介して燃焼室に至る。
【0052】
排気系3は、主機関10に接続される排気通路31を有する。排気系3は、この排気通路31を介して主機関10から排気を排出するように構成される。具体的に、本実施形態に係る排気通路31には、上流側から順に、後述のバイパス通路91へと分岐する第1分岐部(バイパス通路91の上流端部と排気通路31との接続部)31aと、コンプレッサ41に対して駆動連結されたタービン42と、バイパス通路91と合流する合流部(バイパス通路91の下流端部と排気通路31との接続部)31bと、後述のEGR通路81へと分岐する第2分岐部(EGR通路81の上流端部と排気通路31との接続部)31cと、が設けられる。燃焼室から排出された排気は、前述の排気マニホールド19を介して排気通路31に流入し、タービン42を通過して大気に開放される。
【0053】
排気タービン式過給機4は、吸気通路21に配置されるコンプレッサ41と、排気通路31に配置されるタービン42と、を有し、タービン42に供給される排気によってコンプレッサ41を駆動するように構成される。ここで、コンプレッサ41とタービン42とは連結されており、互いに同期して回転する。そのため、タービン42を通過する排気によってコンプレッサ41が回転駆動されると、このコンプレッサ41を通過する空気を圧縮することができる。
【0054】
EGRシステム8は、排気通路31におけるタービン42下流側の部位(第2分岐部31c)と、吸気通路21におけるコンプレッサ41上流側の部位と、を接続するEGR通路81を有する。EGRシステム8は、いわゆる低圧EGRシステムとして構成されており、EGR通路81を介して排気を循環させるように構成される。具体的に、本実施形態に係るEGR通路81には、循環される排気(以下、「EGRガス」ともいう)の流れ方向の上流側から順に、EGR弁82と、EGRユニット83と、が設けられる。
【0055】
このうち、EGR弁82は、EGR通路81を開閉する。このEGR弁82は、コントローラ100から入力される制御信号にしたがって作動する。
【0056】
EGRユニット83は、EGRガスからスート、SOx等を除去するスクラバと、EGRガスを冷却するEGRクーラと、EGRガスを昇圧するブロワと、を組み合わせてなる。なお、スクラバやEGRクーラでの圧損が少なく、EGR弁82の開度調整だけで必要なEGRガス量を循環可能な場合には、ブロアは必須ではない。
【0057】
排気調整システム9は、タービン42に供給される排気の流量または流速を調整することで、排気タービン式過給機4の過給圧(具体的には、コンプレッサ41から吐出される空気の圧力)を制御する。具体的に、本実施形態に係る排気調整システム9は、タービン42に供給される排気の流量を調整するように構成されており、バイパス通路91と、バイパス弁93と、排気絞り手段92と、を有する。なお、後述のように、排気調整システム9において、排気絞り手段92は必須ではない。
【0058】
このうち、バイパス通路91は、排気通路31におけるタービン42上流側の部位(第1分岐部31a)と、該タービン42下流側の部位(合流部31b)と、を接続する。このバイパス通路91には、上流側から順に、排気絞り手段92と、バイパス弁93とが配置される。
【0059】
バイパス弁93は、バイパス通路91を開閉する。このバイパス弁93は、コントローラ100から入力される制御信号にしたがって作動する。
【0060】
排気絞り手段92は、タービン42を通過する排気の流量(第1流量)と、バイパス通路91を介してタービン42を迂回する排気の流量(第2流量)と、の比率を調整する。具体的に、排気絞り手段92は、バイパス弁93が開弁状態にあるか否かに拘わらず、第2流量を第1流量よりも少なくするように構成される。このように構成することで、排気タービン式過給機4の駆動に要する最低限の流量(第1流量)を確保しつつ、過給圧を抑制するための流量(第2流量)分だけタービン42を迂回させることができるようになる。
【0061】
また、本実施形態に係る排気絞り手段92は、バイパス通路91の通路断面積を狭めるオリフィスによって構成される。排気絞り手段92は、前述のように、バイパス通路91におけるバイパス弁93の上流側に配置される。
【0062】
なお、排気絞り手段92は、バイパス弁93の下流かつ合流部31の上流に配置してもよい。またそもそも、排気絞り手段92は必須ではない。排気絞り手段92を配置する代わりに、その機能をバイパス弁93に兼用させることもできる。その場合、バイパス弁93の開度を制御することで、タービン42に供給される排気の流量(具体的には、第1流量と第2流量との比率)を調整することになる。
【0063】
なお、EGRガスを循環させるときには、EGR通路81を介して排気が流通する分だけ、排気タービン式過給機4の負荷が低減し、掃気圧が低下することになる。掃気圧の低下は、シリンダ11に導入される空気量の低下を招き、燃費性能の悪化、スモークの発生等を招くため望ましくない。同様の問題は、排気の一部にタービン42を迂回させるとき(バイパス弁93を開いたとき)にも生じ得る。
【0064】
そこで、本実施形態では、前述したような掃気圧の低下を見越して、排気タービン式過給機4のタービンノズル面積を絞るように設計段階でチューニングが施されている。そして、本実施形態に係る排気タービン式過給機4は、EGR弁82及びバイパス弁93のいずれか一方を開弁状態としたとき(換言すれば、EGR弁82及びバイパス弁93のうちの一方を開弁状態とし、他方を閉弁状態としたとき)に、該排気タービン式過給機4の吐出圧が所定の適正範囲に収まるように構成される。こうすることで、EGR弁82を開弁状態としたとき(または、バイパス弁93を開弁状態としたとき)に生じる掃気圧の低下を見越した構成とすることができ、掃気圧を適正範囲に収めることが可能になる。
【0065】
コントローラ100は、少なくとも、EGR弁82及びバイパス弁93と電気的に接続されている。コントローラ100は、EGR弁82の開度に基づいて排気調整システム9を制御する。
【0066】
具体的に、コントローラ100は、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、入出力バス等からなり、EGR弁82の開度を示す信号を受けて制御信号を生成し、それをバイパス弁93に入力することで排気調整システム9を制御する。
【0067】
以下、コントローラ100が行う制御のうち、エンジン1の運転モードに関連した処理について説明する。
【0068】
(2)エンジンの運転モード
コントローラ100は、エンジン1の各種運転パラメータを制御することで、エンジン1の運転モードとして、3次規制(Tier3)に適合したEGR運転と、2次規制(Tier2)に適合した通常運転と、を使い分けることができる。EGR運転は、通常運転に比してNOx排出量の削減に適した運転モードである。通常運転は、EGR運転に比して空気の比熱比が高い運転モードである。
【0069】
EGR運転において、コントローラ100は、EGR弁82を開弁状態とする。これにより、エンジン1内をEGRガスが循環するようになる。また、EGR運転において、コントローラ100は、排気調整システム9を制御することで、タービン42に供給される排気の流量または流速を通常運転に比して相対的に増加させる。具体的に、コントローラ100は、バイパス弁93を閉弁状態にする。これにより、バイパス通路91を介した排気の迂回が抑止される。
【0070】
通常運転において、コントローラ100は、EGR弁82を閉弁状態とする。これにより、EGRガスの循環が停止される。また、通常運転において、コントローラ100は、排気調整システム9を制御することで、タービン42に供給される排気の流量または流速をEGR運転に比して相対的に減少させる。具体的に、コントローラ100は、バイパス弁93を開弁状態にする。これにより、バイパス通路91を介して排気の一部がタービン42を迂回するようになる。
【0071】
また、EGR運転から通常運転への移行時(または移行過度時)には、EGR弁82が開弁状態から閉弁状態に変更されることになる。このとき、コントローラ100は、通常運転への移行完了直後、または、その移行過度時にかけて、バイパス弁93を少なくとも一時的に全開状態にする。
【0072】
同様に、通常運転からEGR運転への移行時(または移行過度時)には、EGR弁82が閉弁状態から開弁状態に変更されることになる。このとき、コントローラ100は、EGR運転への移行完了直後、または、その移行過度時にかけて、バイパス弁93を閉弁状態にする。
【0073】
(3)運転モードの切替の具体例
図2は、EGR運転から通常運転への切替手順を例示するフローチャートである。
【0074】
まず、図2のステップS11に例示されるように、エンジン1の運転モードをEGR運転とした状態(特に、EGR運転の定常状態)で船舶が運航しているものとする。
【0075】
続くステップS12で、EGR運転から通常運転へ移行するか否かが判定される。この判定がYESのときはステップS13へ進む一方、NOのときはコントローラ100が制御プロセスを終了する。
【0076】
ステップS13では、EGR弁82が閉弁状態にされる。これにより、EGRガスの循環が停止される。それに続くステップS14では、コントローラ100がバイパス弁93に制御信号を出力することで、そのバイパス弁93を少なくとも一時的に全開状態にする。これにより、タービン42に供給される排気の流量が減少する。EGR弁82を閉じたことで掃気圧が過大となることが懸念されるところ、バイパス弁93を開いたことで、そうした懸念が解消される。
【0077】
EGR弁82を閉じたことでエンジン1内のEGRガスが排出されると、ステップS14からステップS15に進む。このステップS15では、各種運転パラメータ(エンジン1の各種アクチュエータを制御するためのパラメータ)が、EGR運転に適したパラメータから通常運転に適したパラメータに変更される。
【0078】
最終的に、ステップS15から続くステップS16において、通常運転(特に、通常運転の定常状態)での運航が開始され、コントローラ100は制御プロセスを終了することになる。
【0079】
なお、ステップS13、ステップS14およびステップS15は、同時並行で実施することもできる。
【0080】
図3は、通常運転からEGR運転への切替手順を例示するフローチャートである。
【0081】
まず、図3のステップS21に例示されるように、エンジン1の運転モードを通常運転とした状態(特に、通常運転の定常状態)で船舶が運航しているものとする。
【0082】
続くステップS22で、通常運転からEGR運転へ移行するか否かが判定される。この判定がYESのときはステップS23へ進む一方、NOのときはコントローラ100が制御プロセスを終了する。
【0083】
ステップS23では、コントローラ100がバイパス弁93に制御信号を出力することで、そのバイパス弁93を少なくとも一時的に全閉状態にする。それに続くステップ24では、EGR弁82が開弁状態にされる。
【0084】
ステップS23では、コントローラ100がバイパス弁93に制御信号を出力することで、そのバイパス弁93を少なくとも一時的に全閉状態にする。これにより、タービン42に供給される排気の流量が増加する。それに続くステップS24では、EGR弁82が開弁状態にされる。これにより、EGRガスの循環が開始される。EGR弁82を開いたことで掃気圧の低下が懸念されるところ、バイパス弁93を閉じたことで、そうした懸念が解消される。
【0085】
EGR弁82を開いたことによってEGRガスの循環が開始されると、ステップS24からステップS25に進む。このステップS25では、各種運転パラメータが、通常運転に適したパラメータからEGR運転に適したパラメータに変更される。
【0086】
最終的に、ステップS25から続くステップS26において、EGR運転(特に、EGR運転の定常状態)での運航が開始され、コントローラ100は制御プロセスを終了することになる。
【0087】
なお、ステップS23、ステップS24およびステップS25は、同時並行で実施することもできる。
【0088】
(4)掃気圧の維持について
以上説明したように、本実施形態に係るコントローラ100は、図2のステップS13~S14に示されるように、通常運転を実行する場合(EGR弁82が閉弁状態にある場合)には、EGR運転を実行する場合(EGR弁82が開弁状態にある場合)と比較して、タービン42に供給される排気の流量を減少させる。
【0089】
これにより、EGR運転に適した掃気圧が実現されるようにタービンノズル面積を予め絞っておいたとしても、通常運転ではタービン42に供給される排気の流量を減少させることで、その通常運転における掃気圧の過度の上昇を抑制し、筒内圧を許容範囲に収めることができるようになる。
【0090】
換言すれば、コントローラ100は、図3のステップS23~S24に示されるように、EGR運転を実行する場合には、通常運転を実行する場合と比較して、タービン42に供給される排気の流量を増加させることになる。
【0091】
これにより、通常運転に適した掃気圧が実現されるように、バイパス通路91を用いて排気の流量を低めに設定しておいたとしても、EGR運転時にはそのバイパス通路91を閉止することで、EGR運転においても適切な掃気圧を維持することができるようになる。
【0092】
また、図1に示されるように、バイパス弁93を用いて排気調整システム9を構成したことで、バイパス弁93を開弁状態にしたときには、タービン42に供給される排気の流量を相対的に減少させることができる一方、バイパス弁93を閉弁状態にしたときには、タービン42に供給される排気の流量を相対的に増加させることができるようになる。バイパス弁93を適宜開閉することで、EGR運転から通常運転への移行時(あるいは、その逆の移行時)に、掃気圧を適切な値に維持することができるようになる。
【0093】
また、前述のように、タービンノズル面積を設計段階で絞っておくことで、排気タービン式過給機4の吐出圧は、事前に高めに設定される。このように設定することで、前述のように、EGR弁82を開弁状態としたとき、または、バイパス弁93を開弁状態としたときに生じる吐出圧の低下を見越した構成とすることができ、吐出圧を適正範囲に収めることが可能になる。
【0094】
また、図2のステップS14に示されるように、EGR運転から通常運転への移行直後または移行過渡時にバイパス弁93を全開状態にすることで、主機関10内に残存したEGRガスの排出を促進し、これを早期に排出することができるようになる。これにより、EGR運転から通常運転への移行をスムースに行うことができるようになる。
【0095】
また、バイパス弁93が開弁状態にあるときには、バイパス通路91を介して排気がタービン42を迂回することになる。しかしながら、必要以上の排気を迂回させてしてしまっては、掃気圧の低下を招き、これを維持する上で不都合となる。
【0096】
そこで、バイパス通路91上にオリフィス92を設けることで、バイパス弁93が開弁状態にあってもなお、タービン42を迂回する排気の流量を、該タービン42を通過する排気の流量よりも少なくする。こうすることで、タービン42の駆動に要する流量を確保することができ、ひいては、掃気圧を維持する上で有利になる。
【0097】
《他の実施形態》
図4は、舶用内燃機関の変形例(以下、これを「エンジン1’」ともいう)を示す図1対応図である。前記実施形態に係る排気調整システム9は、バイパス通路91およびこれを開閉するバイパス弁93等によって構成されていたが、本開示は、そうした構成には限定されない。
【0098】
例えば、排気タービン式過給機4をいわゆる可変ノズルターボ(Variable Nozzle Turbo:VNT)として構成した場合において、その可変ノズル43によって排気調整システム9’を構成してもよい。
【0099】
具体的に、変形例に係る排気タービン式過給機4’は、可変ノズル43を備える。この可変ノズル43は、いわゆる可変ノズルリングによって構成される。可変ノズルリングは、タービン42の入口周辺にてリング状に配置された複数のノズル翼からなる。各ノズル翼には、各ノズル翼の回転軸として機能するシャフトが設けられている。このシャフトにはレバーが取り付けられていて、該レバーを動作させることでノズル翼の回転角が変化する。各ノズル翼の回転角が変化することで、可変ノズル43のスロート面積が増減する。これにより、タービン42の入口周辺の通路面積が増減する。タービン42周囲の通路面積を変化させることで、このタービン42に供給される排気の流速を調整することができる。変形例に係る排気調整システム9’は、この可変ノズル43によって構成される。
【0100】
そして、変形例に係る排気タービン式過給機4’は、EGR弁82を開弁状態としかつ可変ノズル43によってタービン42周囲の通路面積を縮小したとき、または、EGR弁82を閉弁状態としかつ可変ノズル43によってタービン42周囲の通路面積を拡大したときに、排気タービン式過給機4’の掃気圧が所定範囲に収まるように構成される。こうすることで、前記実施形態と同様に、EGR弁82を開弁状態としたとき、または、可変ノズル43によって通路面積を拡大したときに生じる掃気圧の低下を見越した構成とすることができ、掃気圧を適正範囲に収めることが可能になる。
【0101】
前記実施形態と同様に、EGR運転において、コントローラ100は、EGR弁82を開弁状態にするとともに、排気調整システム9’を制御することで、タービン42に供給される排気の流速を通常運転に比して相対的に増加させる。具体的に、コントローラ100は、排気調整システム9’としての可変ノズル43を作動させ、前記通路面積を縮小させる。
【0102】
一方、通常運転において、コントローラ100は、EGR弁82を閉弁状態にするとともに、排気調整システム9’を制御することで、タービン42に供給される排気の流速をEGR運転に比して相対的に減少させる。具体的に、コントローラ100は、排気調整システム9’としての可変ノズル43を作動させ、前記通路面積を拡大させる。
【0103】
これにより、EGR運転に適した掃気圧が実現されるようにタービンノズル面積を予め絞っておいたとしても、通常運転ではタービン42に供給される排気の流速を減少させることで、その通常運転における掃気圧の過度の上昇を抑制し、筒内圧を許容範囲に収めることができるようになる。
【0104】
同様に、通常運転に適した掃気圧が実現されるように、可変ノズル43を用いて排気の流速を低めに設定しておいたとしても、EGR運転時にはその可変ノズル43を作動させて流速を高めることで、EGR運転においても適切な掃気圧を維持することができるようになる。
【符号の説明】
【0105】
1 エンジン(舶用内燃機関)
1’ エンジン(舶用内燃機関の変形例)
10 主機関
21 吸気通路
31 排気通路
4 排気タービン式過給機
41 コンプレッサ
42 タービン
43 可変ノズル(排気調整システムの変形例)
81 EGR通路
82 EGR弁
9 排気調整システム
91 バイパス通路
92 オリフィス(排気絞り手段)
93 バイパス弁
100 コントローラ
図1
図2
図3
図4