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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】核医学診断装置および医用情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
G01T1/161 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020174116
(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公開番号】P2022065495
(43)【公開日】2022-04-27
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 明義
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-076584(JP,A)
【文献】特開2012-013665(JP,A)
【文献】特開2010-190669(JP,A)
【文献】国際公開第2009/101759(WO,A1)
【文献】特表2020-519863(JP,A)
【文献】特開2012-108105(JP,A)
【文献】特開2018-185303(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0092052(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0145194(US,A1)
【文献】特表2021-535378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161- 1/166
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイナミック核医学収集データを収集するデータ収集部と、
あらかじめ正しくカーブフィッティングできた正解データとしてのタイムアクティビティデータである基準タイムアクティビティデータと、当該基準タイムアクティビティデータに関する半値幅と、当該基準タイムアクティビティデータが取得されたフレームタイムと、を記憶する記憶部と、
前記ダイナミック核医学収集データにもとづいて処理対象のタイムアクティビティデータに関する半値幅を求め、
前記処理対象のタイムアクティビティデータに関する半値幅と、前記基準タイムアクティビティデータに関する半値幅と、前記基準タイムアクティビティデータが取得されたフレームタイムと、を用いて、フレームタイムと半値幅との積がフレームタイムによらず一定であるとして前記処理対象のタイムアクティビティデータに対応するフレームタイムを算出し、
算出された前記フレームタイムにもとづいて、前記処理対象のタイムアクティビティデータに対してフィッティング処理を行う、
処理回路と、
を備えた核医学診断装置。
【請求項2】
前記処理回路は、
前記処理対象のタイムアクティビティデータに対応する核医学収集データに対して所定のフレームタイムを設定して、前記処理対象のタイムアクティビティデータの生成に用いられる複数のダイナミック収集データを生成するとともに、前記処理対象のタイムアクティビティデータに対応する前記核医学収集データに対して前記算出された前記フレームタイムを設定して、複数のダイナミック収集データを再生成し、
前記算出された前記フレームタイムで生成した前記複数のダイナミック収集データにもとづいて再生成されたタイムアクティビティデータに対してフィッティング処理を行う、
請求項1記載の核医学診断装置。
【請求項3】
前記核医学収集データは、リストモードデータ、または、収集フレームタイムが前記所定のフレームタイムよりも小さいフレームモードデータである、
請求項2記載の核医学診断装置。
【請求項4】
前記記憶部は、
前記基準タイムアクティビティデータと、当該基準タイムアクティビティデータに関する半値幅と、当該基準タイムアクティビティデータが取得されたフレームタイムと、の組を複数記憶し、
前記処理回路は、
前記複数の組のうち、前記基準タイムアクティビティデータに対応する前記核医学収集データの収集条件が前記処理対象のタイムアクティビティデータに対応する前記核医学収集データの収集条件と所定の項目において同一の組を前記記憶部から読み出して前記フレームタイムの算出に用いる、
請求項2または3に記載の核医学診断装置。
【請求項5】
前記処理回路は、
複数時相にわたって取得された前記核医学収集データを取得し、
前記所定のフレームタイムを設定して生成された前記複数のダイナミック収集データに対してノイズ低減処理を実行し、
前記ノイズ低減処理が実行された前記複数のダイナミック収集データに対して、閾値処理を行うことで所定の閾値以上になるフレームを同定し、
前記同定されたフレームにもとづいた時刻を所定のデータ処理の開始点として決定する、
請求項2ないし4のいずれか1項に記載の核医学診断装置。
【請求項6】
前記処理回路は、
前記同定されたフレームよりも前の時刻を前記所定のデータ処理の開始点として決定する、
請求項5記載の核医学診断装置。
【請求項7】
前記所定のデータ処理は、
前記核医学収集データを前記決定された開始点にもとづいて再編集する処理であり、
前記処理対象のタイムアクティビティデータは、
前記再編集された前記核医学収集データにもとづいて生成されたものである、
請求項5または6に記載の核医学診断装置。
【請求項8】
ガンマ線の検出位置情報、強度情報、ガンマ線検出器と被検体との相対位置を示す情報、およびガンマ線の検出時刻がガンマ線の入射イベントごとにリスト化されたリストモードデータを収集するデータ収集部と、
前記リストモードデータに対して所定のフレームタイムを設定することで、複数のダイナミック収集データを生成して前記所定のフレームタイムのフレームモードデータを生成し、
前記複数のダイナミック収集データに対してノイズ低減処理を実行し、
前記ノイズ低減処理が実行された前記複数のダイナミック収集データに対して、閾値処理を行うことで所定の閾値以上になるフレームを同定し、
前記同定されたフレームにもとづいた時刻を所定のデータ処理の開始点として決定する、
処理回路と、
を備えた核医学診断装置。
【請求項9】
前記処理回路は、
前記同定されたフレームよりも前の時刻を前記所定のデータ処理の開始点として決定する、
請求項8記載の核医学診断装置。
【請求項10】
前記所定のデータ処理は、
前記リストモードデータを前記決定された開始点にもとづいて再編集する処理である、
請求項8または9に記載の核医学診断装置。
【請求項11】
前記データ収集部は、
前記リストモードデータにかえて、収集フレームタイムが前記所定のフレームタイムよりも小さいフレームモードデータを収集する、
請求項8ないし10のいずれか1項に記載の核医学診断装置。
【請求項12】
あらかじめ正しくカーブフィッティングできた正解データとしてのタイムアクティビティデータである基準タイムアクティビティデータと、当該基準タイムアクティビティデータに関する半値幅と、当該基準タイムアクティビティデータが取得されたフレームタイムと、を記憶する記憶部と、
処理対象のタイムアクティビティデータと当該処理対象のタイムアクティビティデータに関する半値幅とを取得し、
前記処理対象のタイムアクティビティデータに関する半値幅と、前記基準タイムアクティビティデータに関する半値幅と、前記基準タイムアクティビティデータが取得されたフレームタイムと、を用いて、フレームタイムと半値幅との積がフレームタイムによらず一定であるとして前記処理対象のタイムアクティビティデータに対応するフレームタイムを算出し、
算出された前記フレームタイムにもとづいて、前記処理対象のタイムアクティビティデータに対してフィッティング処理を行う、
処理回路と、
を備えた医用情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書および図面に開示の実施形態は、核医学診断装置および医用情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の核医学画像診断では、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置やPET(Positron Emission Tomography)装置などの核医学診断装置によって取得された時間的に連続した複数の核医学画像にもとづいて、被検体内に投与された放射性医薬品の時間的な動きを解析する動態解析が利用されることがある。動態解析では、リストモードやフレームモードで収集されたダイナミック核医学収集データにもとづいて画素値の時間放射能曲線(Time Activity Curve、以下TACという)を生成し、TACを解析して様々な情報を得ることができる。
【0003】
しかし、動態解析の精度は、被検体に放射性医薬品が投与されるタイミングや、放射性医薬品の投与速度によって影響を受ける場合がある。たとえば、データ収集の開始時刻から放射性医薬品の投与開始時刻までの時間が長い場合、最初の部分を省いたり、必要な検査の途中で収集が終了してしまったなど動態解析の精度が低下することがある。また、放射性医薬品を投与する速度が異なると、ROI設定を行い、TACを作成した時、TACの形状に影響してTACの解析精度が落ち、その結果、核医学動態検査に悪影響が出ることがある。ところが、被検体に放射性医薬品が投与されるタイミングや放射性医薬品の投与速度などの投与条件は、検査技師の技能や癖に応じてばらつきが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-290996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書および図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、検査技師ごとにばらつきがある放射性医薬品のタイミングや注入速度などの投与条件が動態解析に与える影響を低減することである。ただし、本明細書および図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用情報処理装置は、データ収集部と、記憶部と、処理回路とを備える。データ収集部は、ダイナミック核医学収集データを収集する。記憶部は、収集したダイナミック核医学収集データを保存するとともに、基準タイムアクティビティデータと、当該基準タイムアクティビティデータに関する半値幅と、当該基準タイムアクティビティデータが取得されたフレームタイムなどの条件や処理パラメータを記憶する。処理回路は、ダイナミック核医学収集データにもとづいてROI設定を行い、TACを作成する。処理対象のタイムアクティビティデータに関する半値幅を求める。また、処理回路は、処理対象のタイムアクティビティデータに関する半値幅と、基準タイムアクティビティデータに関する半値幅と、基準タイムアクティビティデータが取得されたフレームタイムと、にもとづいて処理対象のタイムアクティビティデータに対応するフレームタイムを算出する。また、処理回路は、算出されたフレームタイムにもとづいて、処理対象のタイムアクティビティデータに対してフィッティング処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る核医学診断装置の一構成例を示すブロック図。
図2】(a)は放射性医薬品の投与速度が適切な場合におけるTACとそのフィッティングカーブの関係の一例を示す説明図、(b)は投与速度が早すぎる場合におけるTACとそのフィッティングカーブの関係の一例を示す説明図、(c)は投与速度が遅すぎる場合におけるTACとそのフィッティングカーブの関係の一例を示す説明図。
図3】第1実施形態に係る処理回路のプロセッサによる実現機能例を示す概略的なブロック図。
図4】第1実施形態に係る処理回路のプロセッサにより、フィッティングに好適なフレームタイムでTACを生成することにより、放射性医薬品の投与速度が動態解析に与える影響を低減する際の手順の一例を示すフローチャート。
図5】(a)は仮のTACの一例を示す説明図、(b)は(a)の範囲Aを拡大して処理対象データ(target)のFWHM(tar)を説明するための図、(c)は基準データ(standard)のFWHM(std)を説明するための図。
図6】TACの形状から簡単にFWHMが算出できない場合、ユーザの入力にもとづいてFWHMを求める方法の一例を示す説明図。
図7】第2実施形態に係る処理回路のプロセッサによる実現機能例を示す概略的なブロック図。
図8】第2実施形態に係る処理回路のプロセッサにより、的確に求めた投与タイミングを補正して核医学収集データを編集することによって、放射性医薬品の投与タイミングが動態解析に与える影響を低減する際の手順の一例を示すフローチャート。
図9】第3実施形態に係る処理回路のプロセッサによる実現機能例を示す概略的なブロック図。
図10】第4実施形態に係る処理回路を備えた医用情報処理装置の一構成例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、核医学診断装置および医用情報処理装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
図1は、一実施形態に係る核医学診断装置80の一構成例を示すブロック図である。核医学診断装置80は、ガンマ線検出器を有し複数時相にわたって被検体の核医学収集データを収集するデータ収集装置81と、処理回路15を備えたコンソール82とを備える。核医学診断装置80としては、SPECT装置やPET装置などを用いることができる。コンソール82は、入力インターフェース11、ディスプレイ12、記憶回路13、ネットワーク接続回路14、および処理回路15を有する。データ収集装置81は、データ収集部の一例である。
【0010】
入力インターフェース11は、たとえばトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、テンキーなどの一般的な入力装置により構成され、ユーザの操作に対応した操作入力信号を処理回路15に出力する。ディスプレイ12は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成される。
【0011】
記憶回路13は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、処理回路15が利用するプログラムやその他のデータを記憶する。なお、記憶回路13の記録媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は、ネットワーク100を介した通信によりダウンロードされてもよいし、光ディスクなどの可搬型記憶媒体を介して記憶回路13に与えられてもよい。
【0012】
記憶回路13は、データ収集装置81が収集したダイナミック核医学収集データを記憶する。また、記憶回路13は、基準タイムアクティビティデータと、当該基準タイムアクティビティデータに関する半値幅と、当該基準タイムアクティビティデータが取得されたフレームタイムなどの条件や収集パラメータを記憶する。基準タイムアクティビティデータについては図5を用いて後述する。
【0013】
タイムアクティビティデータは、核医学画像上で設定された測定したい臓器や部位を囲む関心領域(ROI)のカウントの時間変化を示すデータである。当該核医学画像は、リストモードやフレームモードで収集されたダイナミック核医学収集データにもとづいて生成される。本実施形態では、タイムアクティビティデータとしてTAC(時間放射能曲線)を用いる場合の例を説明する。
【0014】
また、記憶回路13は、ネットワーク100を介して取得した被検体の核医学画像に関するデータを記憶してもよい。
【0015】
ネットワーク接続回路14は、ネットワーク100の形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワーク接続回路14は、この各種プロトコルに従ってネットワーク100を介して他の電気機器と接続する。ネットワーク100は、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、病院基幹LAN(Local Area Network)などの無線/有線LANやインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワークなどを含む。
【0016】
核医学診断装置80は、画像サーバ102とネットワーク100を介して互いにデータ送受信可能に接続される。
【0017】
処理回路15は、核医学診断装置80を統括制御する機能を実現する。また、処理回路15は、記憶回路13に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、検査技師ごとにばらつく放射性医薬品の投与条件が動態解析に与える影響を低減するための処理を実行するプロセッサである。処理回路15の構成および動作の詳細については図3-10を用いて後述する。
【0018】
ここで、検査技師ごとにばらつきがある放射性医薬品のタイミングや注入速度などの投与条件が核医学動態検査法の検査精度に与える影響について説明する。
【0019】
上述の通り、動態解析では、リストモードやフレームモードで収集されたダイナミック核医学収集データにもとづいてTACを生成し、TACを解析して様々な情報を得ることができる。一般に、動態解析は、種々の核医学動態検査法に用いられる。核医学動態検査法には、放射性医薬品を投与してから心臓、肺野、頭部などに放射性医薬品が取り込まれる状態や代謝する状態を検査する方法が含まれる。
【0020】
たとえば、核医学動態検査法のうち、頭部検査のIBUR法(Improved Bain Uptake Ratio method)やSIMS法(Simple none-invasive Microsphere quantification method)による非採血検査法は、被検体に放射性医薬品を投与し、心臓領域で関心領域(ROI)を設定し、TACを作成する。そして、作成したTACにもとづいて心臓に取り込まれた放射性医薬品の量を推定し、この推定量を入力関数として、心筋、肺、脳組織に取り込まれていく度合を検査する。
【0021】
このため、非採血検査法において、TACの解析精度は非常に重要である。TACの解析の精度は、被検体に放射性医薬品が投与されるタイミングや放射性医薬品の投与速度などの投与条件によって影響を受ける。しかし、放射性医薬品の投与条件は、検査技師のスキルや癖に応じてばらついてしまう。一方で、動態解析の精度が悪いからといって検査をやり直すことは、被検体に放射性医薬品を再び投与しなければならず、被検体の無駄な被ばくや検査費用の増加の観点から推奨されない。
【0022】
実施形態に係る核医学診断装置の処理回路は、検査技師ごとにばらつく放射性医薬品の投与条件が動態解析に与える影響を低減するものである。
【0023】
以下、第1実施形態に係る処理回路は、放射性医薬品の投与速度が動態解析に与える影響を低減するものである。また、第2実施形態に係る処理回路は、放射性医薬品の投与タイミングが動態解析に与える影響を低減するものである。
【0024】
(第1実施形態)
まず、図2図6を参照して核医学診断装置80の処理回路15の第1実施形態について説明する。
【0025】
図2(a)は、放射性医薬品の投与速度が適切な場合におけるTAC21とそのフィッティングカーブ22の関係の一例を示す説明図である。また、図2(b)は投与速度が早すぎる場合、(c)は投与速度が遅すぎる場合における、TAC21とそのフィッティングカーブ22の関係の一例を示す説明図である。なお、図2には、投与された放射性医薬品が心血管を通過するときのTAC21と、TAC21をガンマフィッティングしたフィッティングカーブ22を示した。
【0026】
フィッティングカーブ22の面積は、非採血検査法の重要な測定パラメータの1つである。このため、フィッティング精度は、非採血検査法の検査精度に影響する。
【0027】
図2(a)に示すように、検査技師が適切な速度で放射性医薬品を投与した場合は、TAC21のフィッティング精度が高く、したがってTACの解析精度も高い。一方、放射性医薬品の投与速度が早すぎる場合(図2(b)参照)や、遅すぎる場合(図2(c)参照)は、TAC21とフィッティングカーブ22の乖離が大きくなり、フィッティング精度が悪くなる。たとえば、放射性医薬品の投与速度が遅すぎる場合、放射性医薬品がゆっくりと流れてしまうために、ピーク付近のグラフがきれいな曲線とはならず、ピーク形状がノイズを多く含んだような形状となってしまう。このため、カーブフィッティングの精度は悪くなってしまい、核医学動態検査法の検査精度が低下する。
【0028】
この要因は、放射性医薬品の投与速度に応じて、フィッティングに適したTAC21の形状を与えるフレームタイムが異なるためである。図2(a)―(c)に示したTAC21は、放射性医薬品の投与速度によらず全て同じフレームタイムで生成されたものである。ユーザの技能などの個人差によって生じる投与条件の違いよりカーブフィッティングの結果に差が出ていることが分かる。
【0029】
そこで、第1実施形態に係る処理回路15は、フィッティングに好適なフレームタイムでTACを生成することで放射性医薬品の投与速度が動態解析に与える影響を低減する事ができる。
【0030】
続いて、第1実施形態に係る処理回路15のプロセッサによる実現の構成および動作について説明する。
【0031】
図3は、第1実施形態に係る処理回路15のプロセッサによる実現機能例を示す概略的なブロック図である。第1実施形態に係る処理回路15のプロセッサは、図3に示すように、核医学収集データ取得機能31、ダイナミック収集データ生成機能32、関心領域設定機能33、TAC生成機能34、フィッティング処理機能35、半値幅算出機能36、およびフレームタイム算出機能37を実現する。これらの各機能はそれぞれプログラムの形態で記憶回路13に記憶されている。なお、処理回路15の機能31-37の一部は、ネットワーク100を介して医用情報処理装置10にデータ送受信可能に接続された外部のプロセッサにより実現されてもよい。
【0032】
図4は、第1実施形態に係る処理回路15のプロセッサにより、フィッティングに好適なフレームタイムでTACを生成することにより、放射性医薬品の投与速度が動態解析に与える影響を低減する際の手順の一例を示すフローチャートである。図4において、Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0033】
核医学収集データ取得機能31は、データ収集装置81で複数時相にわたって取得された被検体のダイナミック核医学収集データを取得する(ステップS1)。
【0034】
核医学収集データは、たとえばリストモードで収集されたリストモードデータである。
【0035】
リストモードでは、データ収集装置81のガンマ線検出器で検出されたガンマ線の検出位置情報、強度情報、ガンマ線検出器と被検体との相対位置を示す情報(ガンマ線検出器の位置や角度など)、およびガンマ線の検出時刻がガンマ線の入射イベントごとに収集される。
【0036】
ダイナミック収集データ生成機能32は、リストモードデータに対して所定のフレームタイム(仮のフレームタイム)を設定し、リストモードデータから仮のフレームタイムでフレームモードの複数のダイナミック収集データを生成してフレームモードデータを作成する(再フォーマット)(ステップS2)。仮のフレームタイムとしては、たとえばリストモードデータの収集条件に応じてあらかじめ設定された値が用いられる。
【0037】
なお、核医学収集データ取得機能31が取得する核医学収集データは、フレームモード収集を行い、仮のフレームタイム(たとえば2分収集でフレームタイム1秒、120フレーム)よりも小さいフレームタイムで多くのフレーム数を収集した(たとえば2分収集でフレームタイム0.05秒、2400フレーム)のフレームモードで収集されたフレームモードデータであってもよい。フレームモードでは、ガンマ線検出器で検出されたガンマ線の信号情報が、設定されたフレームタイムごとに直接画像に加算される。
【0038】
この場合、ダイナミック収集データ生成機能32は、ステップS2において、仮のフレームタイムよりも小さいフレームタイムのフレームモードで収集されたフレームモードデータから、必要に応じて画像の切り出し機能や画像の加算マージ機能を用いることにより、短い時間で収集したフレームモードデータを一定枚数ずつ加算することで、上述のリストモードデータの場合と同様に仮のフレームタイムのフレームモードの複数のダイナミック収集データ(以下、仮のダイナミック収集データという)を生成することができる。
【0039】
関心領域設定機能33は、ダイナミック収集データにもとづいて関心領域を設定する(ステップS3)。たとえば、心臓領域のTACを生成する場合は、関心領域設定機能33は、ダイナミック収集データから心臓領域が明確なフレームの加算画像を作成し、加算画像上に関心領域を設定する。
【0040】
TAC生成機能34は、ダイナミック収集データから関心領域内のTACを生成する。たとえば、TAC生成機能34は、仮のダイナミック収集データにもとづいて仮のTACを生成する(ステップS4)。仮のTAC21は、処理対象のタイムアクティビティデータの一例である。TAC生成機能34は、ダイナミック収集データを用いて関心領域内でTACを生成する。
【0041】
なお、関心領域の設定やTACの生成は、自動で行われてもよいし、ユーザによる入力インターフェース11を介した手動操作にもとづいて行われてもよい。
【0042】
フィッティング処理機能35は、仮のTAC21に対してフィッティング処理を行い、フィッティングカーブ22を生成する(ステップS5)。フィッティング処理では、ガンマフィッティングなど、TAC21に応じたフィッティングを行う。
【0043】
なお、フィッティング処理機能35は、TAC21を平滑化したスムージングカーブ23を生成し、このスムージングカーブ23に対してフィッティング処理を行ってもよい。フィッティング処理の対象をオリジナルのTAC21とするかスムージングカーブ23とするかは、ユーザにより選択可能としてもよい。
【0044】
ユーザは、仮のTAC21とフィッティングカーブ22とを比較し、正しくフィッティングできているか否かを判断する(ステップS6)。正しくフィッティングできている場合(ステップS6のYES)、仮のタイムフレームを採用して一連の処理は終了となる。
【0045】
一方、正しくフィッティングで来ていない場合(ステップS6のNO)は、半値幅算出機能36は、処理対象のタイムアクティビティデータと当該処理対象のタイムアクティビティデータに関する半値幅とを取得する。具体的には、半値幅算出機能36は、仮のTAC21と、仮のTAC21の半値幅とを取得する(ステップS7)。なお、以下の説明において、半値幅として適宜FWHM(半値全幅)を用いる。
【0046】
半値幅算出機能36は、仮のTAC21を解析することによりFWHMを求める。FWHMは、たとえば仮のTAC21のピークカーブの最大値を与える点(Max点)にもとづいて求めることができる。
【0047】
フレームタイム算出機能37は、ステップS8において、処理対象のタイムアクティビティデータ(処理対象データ(target))に関する半値幅と、基準タイムアクティビティデータ(基準データ(standard))に関する半値幅と、基準データ(standard)が取得されたフレームタイム(std)と、にもとづいて、処理対象データ(target)に対応するフレームタイム(tar)を算出する。
【0048】
図5(a)は、仮のTAC21の一例を示す説明図である。また、図5(b)は、図5(a)の範囲Aを拡大して処理対象データ(target)のFWHM(tar)を説明するための図であり、(c)は基準データ(standard)のFWHM(std)を説明するための図である。なお、図5(b)には、仮のTAC21のスムージングカーブ23のFWHM(tar)を用いる場合の例を示した。同様に、図5(c)には、基準TAC21sの基準スムージングカーブ23sのFWHM(std)を用いる場合の例を示した。
【0049】
基準データ(standard)は、あらかじめ正しくカーブフィッティングできた正解データのフレームタイム平均を使用する。また、FWHM(std)は、これらの正解データそれぞれのFWHMの平均を使用する。
【0050】
処理対象データ(target)と基準データ(standard)とは、収集条件(収集部位、収集方法(収集時間、収集拡大率など)、放射性医薬品、コリメータの種類、被検体の体格など)、検査技師名などが、たとえば所定の項目において同一のものや、所定の項目数以上同一のものを用いるとよい。このため、記憶回路13は、収集条件が互いに異なる基準データ(standard)とFWHM(std)とフレームタイム(std)の組をあらかじめ複数記憶して使い分ける様にしておくとよい。
【0051】
図5(b)、図5(c)の横軸の単位はフレーム数である。図5(b)、図5(c)において、FWHMの単位はフレーム数である。フレームタイムの単位は時間である。フレームタイムとFWHMとの積は、フレームタイムを変化させても一定となると考えられる。そこで、フレームタイム算出機能37は、ステップS8において、まず、記憶回路13に記憶された基準データ(standard)と、基準データのFWHM(std)と、基準データ(standard)が取得されたフレームタイム(std)と、を読み出す。
【0052】
そして、フレームタイム算出機能37は、次の式(1)を用いて、仮のTAC21または仮のスムージングカーブ23のFWHM(tar)と、基準TAC21sまたは基準スムージングカーブ23sのFWHM(std)と、基準TAC21sまたは基準スムージングカーブ23sが取得されたフレームタイム(std)と、にもとづいて、仮のTAC21に対応するフレームタイム(tar)を算出する。
【数1】
【0053】
なお、仮のTAC21のFWHM(tar)が用いられる場合は基準TAC21s(std)のFWHM(std)を用い、仮のスムージングカーブ23のFWHM(tar)が用いられる場合は基準スムージングカーブ23sのFWHM(std)を用いるとよい。
【0054】
また、FWHMは、ユーザの入力にもとづいて求められてもよい。図6は、TACの形状から簡単にFWHMが算出できない場合において、ユーザの手動操作にもとづいてFWHMを求める方法の一例を示す説明図である。たとえば、仮のTAC21のピークを含んだ山のデータ変動が大きい場合は、ユーザによるピークカーブの近似図形を作成し、その入力にもとづいてFWHMを求めてもよい。この場合、ユーザは、Max点41の両端に補助カーソル42を設定する。このとき、仮のTAC21のピークカーブは、補助カーソル42の下端とMax点41とを結んだ三角形で近似される。この場合、半値幅算出機能36は、この三角形にもとづいてFWHMを求める(図6参照)。なお、TACからFWHMをユーザの入力にもとづいて求める方法はこの方法に限られず、従来から知られている各種の近似方法を用いることができる。
【0055】
図4に戻って、ステップS9において、ダイナミック収集データ生成機能32は、処理対象のタイムアクティビティデータに対応する核医学収集データに対して算出されたフレームタイムを設定して、複数のダイナミック収集データを再生成する。たとえば、ダイナミック収集データ生成機能32は、仮のTAC21に対応する核医学収集データに対してフレームタイム算出機能37が算出したフレームタイム(tar)を設定して、核医学収集データからフレームタイム(tar)の複数のダイナミック収集データを再生成する。
【0056】
フィッティング処理機能35は、フレームタイム算出機能37が算出したフレームタイム(tar)にもとづいて、処理対象のタイムアクティビティデータに対してフィッティング処理を行う(ステップS10)。具体的には、TAC生成機能34は、フレームタイム算出機能37が算出したフレームタイム(tar)の複数の再生成ダイナミック収集データにもとづいて、タイムアクティビティデータを再生成する。フレームタイム算出機能37は、再生成タイムアクティビティデータに対してフィッティング処理を行う。フィッティング処理の結果生成されるフィッティングカーブは、正しくフィッティングできているものとなる。また、動態解析処理は、複数の再生成ダイナミック収集データや再生成タイムアクティビティデータにもとづいて行われる。
【0057】
以上の手順により、フィッティングに好適なフレームタイムでダイナミック収集データを作成し、ダイナミック収集データにもとづいてROIを設定して、TACを生成することができ、放射性医薬品の投与速度が動態解析に与える影響を低減することができる。
【0058】
第1実施形態に係る処理回路15を備えた核医学診断装置80は、あらかじめ正しくカーブフィッティングできた基準データ(standard)にもとづいて、目的とする動態解析法に適したフレームタイムを求めることができる。また、核医学診断装置80は、この好適なフレームタイムで核医学収集データから複数のダイナミック収集データを再生成することができる。
【0059】
このため、この再生成ダイナミック収集データから生成されたTACは、正しくフィッティングすることができる。したがって、検査技師ごとにばらつきがある放射性医薬品の投与速度が動態解析に与える影響を低減することができる。また、検査技師による注入速度が同じであっても、被検体ごとに放射性医薬品の血中移動速度にはばらつきがある。第1実施形態に係る核医学診断装置80によれば、この被検体の個人差によるばらつきが動態解析に与える影響を低減することができる。
【0060】
また、第1実施形態に係る処理(図4参照)は、検査技師による操作が少ないため、IBUR法やSIMS法などの自動処理による非採血検査法の処理精度を向上させることに有効である。また、第1実施形態に係る処理は、動態解析の前処理として行われるものであるとともに(図4のS1―S9参照)、動態解析の種類によらずに用いることができる。このため、第1実施形態に係る処理は、多種多様な動態解析法の前処理として適用可能である。
【0061】
(第2の実施形態)
続いて、第2実施形態に係る処理回路15Aのプロセッサによる実現の構成および動作について説明する。
【0062】
図7は、第2実施形態に係る処理回路15Aのプロセッサによる実現機能例を示す概略的なブロック図である。第2実施形態に係る処理回路15Aのプロセッサは、図7に示すように、核医学収集データ取得機能31、ダイナミック収集データ生成機能32、ノイズ低減処理機能51、同定機能52、および開始点決定機能53を実現する。これらの各機能はそれぞれプログラムの形態で記憶回路13に記憶されている。なお、処理回路15Aの機能31-32、51-53の一部は、ネットワーク100を介して核医学診断装置80にデータ送受信可能に接続された外部のプロセッサにより実現されてもよい。
【0063】
図8は、第2実施形態に係る処理回路15Aのプロセッサにより、的確に求めた投与タイミングを補正して核医学収集データを編集することによって、放射性医薬品の投与タイミングが動態解析に与える影響を低減する際の手順の一例を示すフローチャートである。図8において、Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。図4と同等のステップには同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0064】
ステップS2でダイナミック収集データ生成機能32がリストモードデータから仮のフレームタイムで複数のダイナミック収集データを生成すると、ノイズ低減処理機能51は、複数のダイナミック収集データに対してノイズ低減処理を実行する(ステップS11)。ノイズ低減処理は、たとえばダイナミック収集データにもとづくダイナミック画像に対して行われる。画像に対するノイズ低減処理としては従来各種のものが知られており、ノイズ低減処理機能51はこれらのうち任意のものを使用することが可能である。
【0065】
たとえば、ノイズ低減処理機能51はまず、収集開始フレームから時系列的に連続する複数のダイナミック画像のそれぞれを2値化する。次に、ノイズ低減処理機能51は、2値化画像に対して収縮処理(erosion)してから膨張処理(dilation)する処理(オープニング(opening))によって、画像の小さな連結部分を除去する。そして、ノイズ低減処理機能51は、このノイズ除去後の画像をマスク画像として元の2値化画像に掛け合わせることで、ノイズが低減された2値化画像を生成する。
【0066】
同定機能52は、ノイズ低減処理が実行された複数のダイナミック収集データに対して、閾値処理を行うことで所定の閾値以上になるフレームを同定する。具体的には、同定機能52は、マスク画像を掛け合わされてノイズを除去された2値化画像に対して、収集開始フレーム側で、最初に、2値化画像中の信号ありの画素数が予め設定した閾値以上となるフレームを同定する(ステップS12)。閾値の値は、撮影部位と放射性医薬品の各種に応じて設定されるとよい。
【0067】
そして、開始点決定機能53は、同定機能52に同定されたフレームにもとづいた時刻を所定のデータ処理の開始点として決定して、一連の処理は終了となる(ステップS13)。具体的には、開始点決定機能53は、同定機能52に同定されたフレームよりも所定フレーム数だけ前の時刻を、所定のデータ処理の開始点として決定する。
【0068】
ここで、核医学収集データがリストモードデータの場合、フレームモードデータで決定した、開始点決定機能53に決定された開始点にもとづいてリストモードデータを再編集する処理である。また、核医学収集データが仮のフレームタイムよりも小さい収集フレームタイムのフレームモードで収集されたフレームモードデータの場合、所定のデータ処理は、決定された開始点よりも前のフレームモードデータを削除することで再編集する処理であってもよい。
【0069】
また、閾値画像からさかのぼってRIの開始点を求めるフレーム数のオフセット値は、経験値などによってあらかじめ定められるとよい。たとえば、1秒収集でかつ右静脈に放射性医薬品を投与する場合には、放射性医薬品を投与してから薬剤が画像上で視認可能となるまでに5、6フレーム要することが経験上わかっている場合は、フレーム数のオフセット値は5フレームあるいは6フレームとするとよい。なお、フレーム数のオフセット値は、収集条件によって変化する。このため、フレーム数のオフセット値の設定値は、放射性医薬品が画像上で視認可能となってから投与時間を推定する値として、ユーザによって手動変更可能としてもよい。フレーム数のオフセット値は大まかに開始位置を揃えるためのものなので厳密な精度は必要ない。
【0070】
以上の手順により、放射性医薬品の投与タイミングを的確に自動的に同定し、同定した投与タイミングにもとづいて核医学収集データを編集することで、放射性医薬品の投与タイミングが動態解析に与える影響を低減することができる。
【0071】
第2実施形態に係る処理回路15Aを備えた核医学診断装置80は、放射性医薬品の投与タイミングを的確に自動的に同定することができる。また、同定した投与タイミングにもとづいて、核医学収集データを編集することができる。このため、検査技師ごとにばらつきがある放射性医薬品の投与タイミングが動態解析に与える影響を低減することができる。したがって、第2実施形態に係る核医学診断装置80によれば、たとえデータ収集開始から放射性医薬品の投与開始まで長時間が経過してしまった場合であっても、的確に同定した投与開始時刻にもとづいて核医学収集データを再編集することができるため、当該長時間経過が動態解析に与える悪影響を防ぐことができる。
【0072】
また、第2実施形態に係る処理(図7参照)は、第1実施形態に係る処理と同様、検査技師による操作が少ないため、IBUR法やSIMS法などの自動処理による非採血検査法の処理精度を向上させることに有効であるが、手動による処理を行った場合でも有効である。また、第1実施形態に係る処理と同様に、第2実施形態に係る処理は、動態解析の前処理として行われるものであるとともに動態解析の種類によらずに用いることができる。このため、第2実施形態に係る処理もまた、多種多様な動態解析法の前処理として適用可能である。
【0073】
(第3の実施形態)
図9は、第3実施形態に係る処理回路15Bのプロセッサによる実現機能例を示す概略的なブロック図である。
【0074】
第3実施形態に係る処理回路15Bのプロセッサは、図9に示すように、第1実施形態に係る処理回路15のプロセッサの実現機能(図3参照)と第2実施形態に係る処理回路15Aのプロセッサの実現機能(図7参照)の両者を実現するものである。このため、第3実施形態に係る処理回路15Bを備えた核医学診断装置80は、第1実施形態および第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0075】
また、第3実施形態に係る処理回路15Bが図4に示す処理を実行する場合、ステップS1において核医学収集データ取得機能31が取得する核医学収集データは、図7に示す処理の結果、同定された投与タイミングにもとづいて編集されたものであってもよい。この場合、ダイナミック収集データ生成機能32が用いる処理対象のタイムアクティビティデータは、再編集された核医学収集データにもとづいて生成されたものとなる。したがって、図4に示す処理によれば、検査技師ごとにばらつきがある放射性医薬品の投与タイミングが動態解析に与える影響を低減することができるとともに、検査技師ごとにばらつきがある放射性医薬品の投与速度が動態解析に与える影響を低減することができる。
【0076】
(第4の実施形態)
図10は、第4実施形態に係る処理回路15Cを備えた医用情報処理装置10の一構成例を示す説明図である。
【0077】
医用情報処理装置10は、第4実施形態に係る処理回路15Cを備える。
【0078】
この第4実施形態に示す医用情報処理装置10は、核医学診断装置101および画像サーバ102とネットワーク100を介して互いにデータ送受信可能に接続され、核医学収集データ取得機能31が、核医学診断装置101で複数時相にわたって取得された被検体の核医学収集データを、核医学診断装置101から直接、あるいは画像サーバ102を介して取得する点で第1、第2、第3実施形態に示す医用情報処理装置10と異なり、他の構成および作用については実質的に異ならないため、同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0079】
第4実施形態に係る医用情報処理装置10の処理回路15Cは、第1実施形態の処理回路15、第2実施形態の処理回路15A、第3実施形態の処理回路15Bのいずれをも適用可能である。第4実施形態に係る医用情報処理装置10によっても、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態と同様の効果を奏する。
【0080】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、検査技師ごとにばらつきがある放射性医薬品のタイミングや注入速度などの投与条件が動態解析に与える影響を低減することができる。
【0081】
なお、上記実施形態において、「プロセッサ」という文言は、たとえば、専用または汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、または、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサがたとえばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。また、プロセッサがたとえばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存するかわりに、当該プログラムに相当する機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行するハードウェア処理により各種機能を実現する。あるいはまた、プロセッサは、ソフトウェア処理とハードウェア処理とを組み合わせて各種機能を実現することもできる。
【0082】
また、上記実施形態では処理回路の単一のプロセッサが各機能を実現する場合の例について示したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶回路は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶回路が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0083】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0084】
10 医用情報処理装置
21 TAC
22 フィッティングカーブ
23 スムージングカーブ
23s 基準スムージングカーブ
31 核医学収集データ取得機能
32 ダイナミック収集データ生成機能
33 関心領域設定機能
34 TAC生成機能
35 フィッティング処理機能
36 半値幅算出機能
37 フレームタイム算出機能
42 補助カーソル
51 ノイズ低減処理機能
52 同定機能
53 開始点決定機能
80 核医学診断装置
82 データ収集装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10