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特許7503997接着構造物の製造方法、およびローラ部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】接着構造物の製造方法、およびローラ部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20240614BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20240614BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240614BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20240614BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J5/06
B32B7/12
B32B7/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020176090
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067399
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 俊成
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-275409(JP,A)
【文献】特開2000-107471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
B32B 1/00 - 43/00
C08G 18/00 - 18/87
C08G 71/00 - 71/04
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1被着物と第2被着物とが接着された接着構造物の製造方法であって、
湿気硬化型ホットメルトウレタンを含む接着剤を加熱溶融して前記第1被着物に塗布し、
塗布された前記接着剤を湿気硬化させ、
湿気硬化された前記接着剤を加熱溶融して、加熱溶融された前記接着剤に前記第2被着物を接着し、
前記接着剤は、脂環式ポリカーボネートポリオールを原料に含む接着構造物の製造方法。
【請求項2】
第1被着物と第2被着物とが接着された接着構造物の製造方法であって、
前記第1被着物の接着面が平滑であり、
前記第1被着物が前記第2被着物よりも硬質な材料で構成されており、
湿気硬化型ホットメルトウレタンを含む接着剤を加熱溶融して前記第1被着物に塗布し、
塗布された前記接着剤を湿気硬化させ、
湿気硬化された前記接着剤を加熱溶融して、加熱溶融された前記接着剤に前記第2被着物を接着する接着構造物の製造方法。
【請求項3】
第1被着物と第2被着物とが接着された接着構造物の製造方法であって、
前記第1被着物の材質が、金属、陶器、天然ゴム、合成ゴム、及びメラミンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
湿気硬化型ホットメルトウレタンを含む接着剤を加熱溶融して前記第1被着物に塗布し、
塗布された前記接着剤を湿気硬化させ、
湿気硬化された前記接着剤を加熱溶融して、加熱溶融された前記接着剤に前記第2被着物を接着する接着構造物の製造方法。
【請求項4】
第1被着物と第2被着物とが接着された棒状の接着構造物の製造方法であって、
湿気硬化型ホットメルトウレタンを含む接着剤を加熱溶融して前記第1被着物に塗布し、
塗布された前記接着剤を湿気硬化させ、
湿気硬化された前記接着剤を加熱溶融して、加熱溶融された前記接着剤に前記第2被着物を接着する棒状の接着構造物の製造方法。
【請求項5】
第1被着物と第2被着物とが接着されたローラ部材の製造方法であって、
湿気硬化型ホットメルトウレタンを含む接着剤を加熱溶融して前記第1被着物に塗布し、
塗布された前記接着剤を湿気硬化させ、
湿気硬化された前記接着剤を加熱溶融して、加熱溶融された前記接着剤に前記第2被着物を接着するローラ部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接着構造物の製造方法、および接着構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、2つの被着物(第1被着物、第2被着物)をホットメルト接着剤によって接着する接着構造物が知られている。例えば、第1被着物として、接着面が平滑で、第2被着物よりも硬質な材料(金属、樹脂、プラスチック、陶器、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン、メラミンなど)で構成されるものが挙げられる。第2被着物として、接着面に凹凸がある材料(天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン、メラミンの発泡体、紙類、不織布、天然皮革、合成皮革など)で構成されるものが挙げられる。接着剤として、湿気硬化型ホットメルトウレタンを含むものが挙げられる(特許文献1,2参照)。
【0003】
接着構造物の接着手順として、以下に示すものが挙げられる。まず、ホットメルトアプリケータ(ITWダイナテック株式会社製バッグメルターPUR-20)に湿気硬化型ホットメルト接着剤を投入して、加熱・溶融する。第1被着物に接着剤を塗布し、固化する前に第2被着物を接着剤に当接する。次に、自然冷却して、接着剤を固化させる。そして、常温(23℃)で一日放置し、湿気硬化を完了させる。これにより、接着構造物が完成する。
【0004】
接着構造物の使用例として、第1被着物と第2被着物とを接着させた状態で、第2被着物を用いて清掃を行う清掃部材が挙げられる。第1被着物および第2被着物は、板状または棒状である。汚れの蓄積や破壊具合に応じて第2被着物を取り外し、再度第2被着物を取り付ける。
【0005】
接着構造物において、第1被着物から第2被着物を、せん断方向や剥離方向などへ物理的に引き剥がすことが考えられる。しかし、例えば図11に示すように、第2被着物2が破壊して、第1被着物1の表面に接着層3と破壊した第2被着物2の一部が残ることがある。このような引き剥がしは、第2被着物の骨格や繊維の強度が、第1被着物や接着層よりも脆い構成で起こり易い。
【0006】
例えば、接着剤として一般的な非反応型のEVAホットメルト接着剤を用いる場合、接着剤を再加熱することで接着剤が溶融するため、両被着物を剥がすことができる。しかし、加熱するための装置が必要になる。両被着物の表面に接着剤が残るため、加熱した状態で接着剤を拭き取る必要がある。また、一般的なアクリル系両面テープを接着媒体として用いる場合、一方の被着物に粘着物が残り易くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭49-98445号公報
【文献】特開昭50-122534号公報
【文献】特開2002-327163号公報
【文献】特開2003-286465号公報
【文献】特開2017-186527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3には、接着構造物の接着部分にハロゲン系有機溶剤を接触させる構成が開示されている。このような構成により、接着部分の接着力を低下させた後、接着部分から接着構造物を剥離することができる。しかし、有機溶剤が環境に影響を及ぼす懸念があることや、取り扱いが難しいという問題がある。
【0009】
特許文献4には、ウレタン接着剤に対して、離型剤および発泡剤を配合してなる接着剤組成物が開示されている。このような接着剤を用いる場合、接着剤にレーザ光などのエネルギー照射を行うことによって、両被着物を容易に剥離することができる。しかし、エネルギー照射装置は、人体への影響などを考慮して閉鎖的な装置とする必要があり、このような装置を常に準備することは難しい。
【0010】
特許文献5には、SEEPSブロックコポリマーを主成分とするホットメルト樹脂を接着剤に用いる構成が開示されている。しかし、被着体が鉄のような平滑な表面を有する場合、輸送時などにおける衝撃で被着体と接着剤との界面で剥離が生じ、接着状態を維持できないおそれがある。
【0011】
以上のように、現状の技術では、2つの被着物が接着剤を介して接着された接着構造物において、簡易な手法で一方の被着物のみを剥離させることが難しい。そこで、このような接着構造体において、被着物と接着層との界面に沿って剥離を生じさせる技術が求められている。
【0012】
本開示は、上述した課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、第1被着物と接着層の界面に沿って、第1被着物から接着層および第2被着物を剥がすことができる接着構造物の製造方法、および接着構造物を提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
〔1〕第1被着物と第2被着物とが接着された接着構造物の製造方法であって、
湿気硬化型ホットメルトウレタンを含む接着剤を加熱溶融して前記第1被着物に塗布し、
塗布された前記接着剤を湿気硬化させ、
湿気硬化された前記接着剤を加熱溶融して、加熱溶融された前記接着剤に前記第2被着物を接着する接着構造物の製造方法。
〔2〕第1被着物と第2被着物とが接着された接着構造物であって、
湿気硬化型ホットメルトウレタンを含む接着剤を加熱溶融して前記第1被着物に塗布し、
塗布された前記接着剤を湿気硬化させ、
湿気硬化された前記接着剤を加熱溶融して、加熱溶融された前記接着剤に前記第2被着物を接着して製造された接着構造物。
〔3〕第1被着物と第2被着物とが接着された接着構造物であって、
前記第1被着物と前記第2被着物とは、湿気硬化型ホットメルトウレタンを含む接着剤で接着されており、
前記第1被着物と前記第2被着物とを互いにスライドさせることで、前記第1被着物と前記接着剤で構成された接着層との界面で分離可能な接着構造物。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、第1被着物と接着層の界面に沿って、第1被着物から接着層および第2被着物を剥がすことができる接着構造物の製造方法、および接着構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の接着構造物の斜視図である。
図2】本開示の接着構造物の製造方法において、第1被着物を用意する図である。
図3】第1被着物に対してスペーサを配置する図である。
図4】第1被着物上に接着剤を塗布する図である。
図5】スクレーバーで接着剤をこそぎ取る図である。
図6】接着剤の厚みが均一にされた状態を示す図である。
図7】第1被着物からスペーサを取り外した図である。
図8】接着剤上に第2被着物を配置した図である。
図9】指で第2被着物をせん断方向に押す図である。
図10】第1被着物から接着層および第2被着物が剥がされた図である。
図11】従来の接着構造物において、両被着物を引き剥がした状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0017】
1.接着構造物
接着構造物10は、図1に示すように、第1被着物11と第2被着物12とが接着された構造物である。接着構造物10は、第1被着物11と、第2被着物12と、接着層13と、を備えている。第1被着物11と第2被着物12とは、接着層13で接着されている。
【0018】
第1被着物11は、例えば矩形板状である。第1被着物11における接着層13との接着面は、平滑である。第1被着物11は、後述する第2被着物12よりも硬質な材料で構成されている。第1被着物11の材質として、例えば、金属、樹脂、プラスチック、陶器、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン、メラミンなどが挙げられる。
【0019】
第2被着物12は、例えば矩形板状である。第2被着物12における接着層13との接着面には、凹凸が設けられている。第2被着物12の材質として、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン、メラミンの発泡体、紙類、不織布、天然皮革、合成皮革などが挙げられる。
【0020】
接着層13は、接着剤14を湿気硬化させて形成される。接着剤14は、湿気硬化型ホットメルトウレタンを含む。湿気硬化型ホットメルトウレタンの具体的な組成は、後で詳述する。接着剤14は、湿気硬化後においても加熱によって溶融し得る。
【0021】
接着剤14は、加熱溶融され、第1被着物11に塗布される。第1被着物11に塗布された接着剤14は、湿気硬化される。湿気硬化した接着剤14は、再度加熱溶融され、第2被着物12を接着する。このようにして、接着構造物10が製造される。
【0022】
第1被着物11に塗布される接着剤14を始めから湿気硬化させておくことが考えられるが、微弱ながらも湿気硬化しているため、粘度が高くなる。そのため、一般的な接着剤アプリケーターで、湿気硬化した接着剤を吐出することが難しくなる。このように湿気硬化した接着剤は、粘度測定が不可能である。一方で、湿気硬化後に加熱した接着剤14は、ゲルに近く、粘度測定領域より高粘度な状態である。
【0023】
接着構造物10は、第1被着物11と第2被着物12とを互いにスライドさせることで、第1被着物11と接着層13との界面で分離可能である。接着構造物10は、図9に示すように、せん断方向(スライド方向)に力を加えたときのみ、第1被着物11と接着層13の界面で剥離する。すなわち、第1被着物11と接着層13の界面に沿って、第1被着物11から接着層13および第2被着物12を剥がすことができる。第2被着物12を破壊させることなく、第1被着物11から接着層13および第2被着物12を剥がすことができる。湿気硬化することで粘度が増した接着剤が第2被着物内に入り込み難くなるため、第1被着物から第2被着物を剥がそうとした際に、第2被着物が破壊され難くなると考えられる。
【0024】
接着構造物10は、専用の装置などを用いることなく、素手で第1被着物11から接着層13および第2被着物12を剥がすことができる。使用する接着剤14は、1種類のみであり、プライマー処理なども不要となる。
【0025】
2.湿気硬化型ホットメルトウレタンの組成
湿気硬化型ホットメルトウレタンの組成物は、ポリオール成分(A)と、ポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有するホットメルト接着剤組成物である。なお、該反応の際には、通常、ポリイソシアネート成分(B)を化学量論的に過剰量となるように反応させる。また、発明の効果を阻害しない範囲内で、その他の成分を更に含んでいてもよい。以下、ウレタンプレポリマー、その他の成分、及び、各成分量について説明する。第1被着物11と接着層13の界面に沿って第1被着物11から接着層13および第2被着物12を剥がす構成とするために、ウレタンプレポリマーの組成を以下のようにすることが好ましい。
【0026】
<<ウレタンプレポリマー>>
ウレタンプレポリマーは、ポリオール成分(A)と、ポリイソシアネート成分(B)と、を反応させて得られる。
【0027】
<ポリオール成分(A)>
ポリオール成分は、脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)と、結晶性ポリエステルポリオール(a-2)と、ポリエーテルポリオール(a-3)と、を含有し、低分子量ジオール(a-4)を更に含有することが好ましい。以下、これらの各成分について説明する。
【0028】
(a-1:脂環式ポリカーボネートポリオール)
本開示の脂環式ポリカーボネートポリオールは、炭酸エステル結合が主鎖にあり、かつ分子中に2以上の水酸基を持つ線状高分子であり、しかも炭素数6以上の脂環構造を分子中に有するポリカーボネートポリオールである。なお、本開示の脂環式ポリカーボネートポリオールは、常温固体であることが好ましい。なお、脂環構造としては、炭素数が6以上であれば特に限定されず、例えば6~10のもの等が挙げられるが、炭素数6のものが広く用いられ好ましい。脂環構造は環式の脂肪族炭化水素であり、シクロアルカン、シクロアルケン、シクロアルキン等があるが、中でも二重結合、三重結合を含まないシクロアルカンが好ましい。
【0029】
このような脂環式ポリカーボネートポリオールとしては、炭素数6以上の脂環構造を分子中に有する限り特に限定されず、例えば、特許5303846号等に記載されたものを使用可能である。
【0030】
より具体的には、例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、1,6-シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ[5,2,1,02,6]デカン-ジメタノール、ビシクロ[4,3,0]-ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ[5,3,1,1]ドデカンジオール、ビシクロ[4,3,0]ノナンジメタノール、トリシクロ[ 5,3,1,1]ドデカン-ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ[5,3,1,1]ドデカノール、スピロ[3,4]オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1’-ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、水素添加ビスフェノ- ルA 、1,3-アダマンタンジオール等の脂環式ポリオールと、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、エチレンカーボネート等に代表される環式カーボネート、またはホスゲン等との反応生成物等が挙げられる。
【0031】
脂環式ポリカーボネートポリオールは、数平均分子量が500~3,000であることが好ましい。脂環式ポリカーボネートポリオールの数平均分子量が500以上である場合、本接着剤硬化後の機械強度が向上し、3,000以下である場合、本接着剤の硬化後の最終接着強さを維持することができる。脂環式ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、800以上であることがより好ましく、2,000以下であることがより好ましい。なお、本開示において、数平均分子量は、ASTM標準試験D5296に準じて、PEG標準品を用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって求める。
【0032】
本開示の湿気硬化型ホットメルトウレタンの組成物が、このような脂環式ポリカーボネートポリオールを後述する量含有することで、接着剤組成物の凝集が高まり、冷却・固化時の体積収縮を防ぐことができる。
【0033】
(a-2:結晶性ポリエステルポリオール)
結晶性ポリエステルポリオールとしては、通常、融点が60℃~80℃であるポリエステルポリオールを用いることができる。前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-2)は、優れた接着性(初期接着強度及び最終接着強度)が得られる点で必須の成分であり、例えば、水酸基を2個以上有する化合物と多塩基酸との反応物を用いることができる。なお、本開示において、「結晶性」とは、JISK7121-1987に準拠したDSC(示差走査熱量計)測定において、結晶化熱あるいは融解熱のピークを確認できるものを示し、「非晶性」とは、前記ピークを確認できないものを示す。
【0034】
具体的な結晶性ポリエステルポリオールとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸、1,6-へキサンジオールとセバシン酸、1,4-ブタンジオールと1,12-ドデカンジカルボン酸、1,6-ヘキサンジオールと1,12-ドデカンジカルボン酸、1,10-ノナンジオールとコハク酸、1,10-ノナンジオールとアジピン酸、1,8-オクタンジオールとアジピン酸、をそれぞれ反応させて得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。中でも、下記式(1)で示すポリエステルポリオール(式中、nは、3~40の整数)であり、RとRはそれぞれ独立して、Cの数が偶数の直鎖アルキレン基であり、且つRとRのCの数の合計が12以上のポリエステルポリオールであることが好ましい。

【0035】
結晶性ポリエステルポリオールは、数平均分子量が2,000~10,000であることが好ましい。
【0036】
(a-3:ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルを開環、それぞれを付加重合させて得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及び、これらのコポリエーテル等が挙げられる。また、グリセリンやトリメチロールエタン等の多価アルコールを用い、上記の環状エーテルを重合させて得ることもできる。中でも、ポリオテトラメチレンエーテルグリコールであることが好ましい。
【0037】
ポリエーテルポリオールは、数平均分子量が1,000~3,000であることが好ましい。ポリエーテルポリオールを湿気硬化型ホットメルトウレタンの組成物に添加することで、分子的に一定量のソフトセグメントが形成され、反応硬化後の接着剤の耐加水分解性、湿熱老化性、耐候性に優れるようになる。
【0038】
(a-4:低分子量ジオール)
低分子量ジオールとしては、特に限定されないが、例えば、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、アダマンタンジ-メタノール、アダマンタンジ-エタノール、シクロペンタンジメタノール、シクロペンタンジエタノール等が挙げられる。
【0039】
低分子量ジオールは、数平均分子量が、500以下であることが好ましい。
【0040】
なお、ポリオール成分(A)としては、発明の効果を阻害しない範囲内で、その他のポリオール(例えば、アクリルポリオール等)を含んでいてもよい。
【0041】
<<ポリイソシアネート(B)>>
ポリイソシアネート(B)としては、通常のウレタンプレポリマーの製造に際して使用されるポリイソシアネートであれば何ら限定されないが、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、水素添加MDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素添加XDI、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,8-ジイソシアナトメチルオクタン、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、及びこれらの変性体、誘導体等が挙げられる。
【0042】
<<その他の成分>>
本開示の接着剤14の組成物は、発明の目的を損なわない範囲で、上述した各成分以外に各種の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、充填剤、可塑剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、抗菌剤、光安定剤、安定剤、分散剤、溶剤等が挙げられる。
【0043】
ここで、ポリウレタンプレポリマーのNCO基含有率は、特に限定されないが、好ましくは0 .5~10%であり、より好ましくは、0.7~2.5%であり、さらに好ましくは、0.8~2.0%であり、特に好ましくは1.0~1.8%である。0.5%以上の場合、耐熱性が向上する。10%以下の場合、加熱溶融時の熱安定性が良くなる。なお、このようなNCO基含有率は、JISK1603‐1に従って測定されたものである。
【0044】
<<各成分量>>
ポリオール成分(A)全体に対する、脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)の含有率が、5~50重量%であることが好ましく、5~45重量%であることがより好ましく、10~40重量%であることが更に好ましい。
【0045】
ポリオール成分(A)全体に対する、結晶性ポリエステルポリオール(a-2)の含有率が、20~60重量%であることが好ましく、30~50重量%であることがより好ましい。
【0046】
ポリオール成分(A)全体に対する、ポリエーテルポリオール(a-3)の含有率が、20~60重量%であることが好ましく、25~45重量%であることがより好ましい。
【0047】
ポリオール成分(A)全体に対する、低分子量ジオール(a-4)の含有率が、1~10重量%であることが好ましく、2~8重量%であることがより好ましい。
【0048】
ここで、本開示の湿気硬化型ホットメルトウレタンの組成物は、プレポリマー中、脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)における脂環構造の含有率が、1重量%を超え10重量%未満の範囲内であり、好ましくは、3~9重量%の範囲内である。
【0049】
なお、本形態に係る湿気硬化型ホットメルトウレタンの組成物中における上記その他の成分の含有率は特に限定されないが、例えば、湿気硬化型ホットメルトウレタンの組成物全体に対して、10重量%以下等とすればよい。
【0050】
3.接着構造物の適用例
接着構造物10は、例えば、清掃部材として用いられる。第1被着物11と第2被着物12とが接着層13で接着された状態で、第2被着物12を使って清掃を行う。第2被着物12における汚れの蓄積や破損状態に応じて、第2被着物12を第1被着物11から取り外す。再度、取り外した第2被着物12とは異なる第2被着物12を、接着剤14を用いて第1被着物11に接着する。
【0051】
接着構造物10は、例えば、転写ローラや供給ローラなどのローラ部材にも適用される。第1被着物11は、金属製のシャフトとして構成される。第2被着物12は、第1被着物11の外周を覆うポリウレタン製の発泡体として構成される。なお、第1被着物11および第2被着物12の形状は、例示したものに限定されない。
【0052】
4.接着構造物の製造方法
接着構造物10は、塗布工程と、湿気硬化工程と、接着工程と、を備えている。まず、図2に示すように、第1被着物11を用意する。第1被着物11は、例えば矩形板状である。次に、図3に示すように、第1被着物11の上面における長手方向の中心部分(接着領域21)を囲むように複数のスペーサ22,23(図3では一対のスペーサ22と一対のスペーサ23)を配置する。スペーサ22の厚みは、第1被着物11の厚み、スペーサ23の厚みよりも大きい。スペーサ22は、第1被着物11の厚みと、スペーサ23の厚みとを合わせた厚みになっている。一対のスペーサ22は、第1被着物11を短手方向から挟んだ位置に配置される。一対のスペーサ23は、それぞれ第1被着物11の上面における長手方向の両端に配置される。
【0053】
次に、接着剤14をメルター(塗布機、図示略)に投入し、加熱溶融する。図4に示すように、接着領域21上に、加熱溶融された接着剤14を塗布する(塗布工程)。接着剤14は、接着領域21からはみ出て、接着領域21を囲むスペーサ22,23の一部にも塗布される。次に、図5に示すように、スクレーバー24を用いて、接着領域21からはみ出た接着剤14を除去する。これにより、図6に示すように、接着剤14の厚みが均一になる。接着剤14の厚みが均一になることで、後述する湿気硬化が均一に行われ易くなる。
【0054】
次に、接着剤14を冷却し、湿気硬化させる(湿気硬化工程)。続いて、図7に示すように、スペーサ22,23を取り外す。湿気硬化された接着剤14の上面に、第2被着物12を配置する(図8参照)。次に、接着剤14を加熱溶融して、接着剤14に第2被着物12を接着する(接着工程)。続いて、接着剤14を冷却して固化させる。これにより、図8に示すように、第1被着物11と第2被着物12とが接着層13で接着された接着構造物10が製造される。
【0055】
5.接着構造物の剥離方法
図9に示すように、固定した第1被着物11に対して、指で第2被着物12をせん断方向に押す。せん断方向は、第1被着物11の板面に平行な方向であって、第1被着物11と第2被着物12とを互いにスライドさせる方向である。例えば、指で第2被着物12の側面を押す。図10に示すように、第1被着物11と接着層13との界面で剥離が生じ、第2被着物12と接着層13とが一体のままで第1被着物11から離れる。第1被着物11の上面に、第2被着物12および接着層13が残存しない。
【0056】
第1被着物11と接着層13との界面で剥離が生じる理由として、第2被着物12を接着する前に、接着剤14を湿気硬化させたことが考えられる。接着剤14に含まれるポリウレタンプレポリマーのNCO基含有率が比較的小さく、湿気硬化が十分に行われなかったと考えられる。
【0057】
第2被着物12で破壊が生じなかった理由として、第2被着物12を接着する前に、接着剤14を湿気硬化させたことが考えられる。湿気硬化により接着剤14が増粘することで、接着剤14の第2被着物12への浸み込み量が減少することが考えられる。これにより、第2被着物12内で接着剤14が固化し難くなり、固化した接着剤14によって第2被着物12の破壊が抑制されることが考えられる。
【実施例
【0058】
以下、実施例により本開示を更に具体的に説明する。
なお、実験例1~3は、本発明の実施例に該当し、実験例4,5は、比較例に該当する。実験例の詳細の内容は、後述する表1に示されている。
【0059】
(1)実験例1~3
(1-1)第1被着物
実験例1,2では、第1被着物にステンレス鋼(SUS303、50mm×150mm×2mm)を用いた。実験例3では、第1被着物にポリエチレン樹脂を用いた。
【0060】
(1-2)第2被着物
実験例1,3では、第2被着物にウレタンフォーム(イノアックコーポレーション製、ウレタンフォームEMM、密度52kg/m、50mm×50mm×3.5mm)を用いた。実験例2では、第2被着物にメラミンフォーム(イノアックコーポレーション製、メラミンフォームW、密度9kg/m、50mm×50mm×3.5mm)を用いた。
【0061】
(1-3)接着剤
実験例1~3では、接着剤に湿気硬化型ホットメルトウレタンを含む構成(イノアックコーポレーション製、湿気硬化型ウレタンホットメルト)を用いた。湿気硬化後に再溶融可能な接着剤を用いた。接着剤の原料を以下に示す。
【0062】
<<原料>>
<ポリオール成分(A)>
(a-1:脂環式ポリカーボネートポリオール)
・エターナコールUC-100:宇部興産株式会社製:1,4-シクロヘキサンジメタノールベースのポリカーボネートジオール(数平均分子量約1,000、脂環構造含有率49.5重量%)
・エターナコールUM90(3/1):宇部興産株式会社製:1,4-シクロヘキサンジメタノール/1,6-ヘキサンジオール=3/1(モル比)共重合ポリカーボネートジオール(数平均分子量:約1,000、脂環構造含有率34.8重量%)
(a-2:結晶性ポリエステルポリオール)
・HS2H500S(豊国製油製、分子量5,000)
(a-3:ポリエーテルポリオール)
・ポリテトラメチレンエーテルグリコール(品名:PTMG2000、数平均分子量2,000)(三菱ケミカル社製)
(a-4:低分子量ジオール)
・ブチルエチルプロパンジオール(BEPG)
<ポリイソシアネート(B)>
・MDI(モノメリック・メチレンジフェニルジイソシアネート)
<脂肪族ポリカーボネートジオール>
・ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ株式会社製 デュラノールT6002、数平均分子量2,000)
【0063】
(1-4)接着構造体の作製
実験例1~3では、接着構造体の作製を以下の手順で行った。まず、第1被着物を用意する。第1被着物は、例えば矩形板状である。次に、第1被着物の上面における長手方向の中心部分(接着領域)を囲むように複数のスペーサを配置する(図3参照)。一対のスペーサは、第1被着物を短手方向から挟んだ位置に配置される。一対のスペーサは、それぞれ第1被着物の上面における長手方向の両端に配置される。第1被着物を短手方向から挟むスペーサの短手方向の幅は、例えば50mmである。第1被着物を短手方向から挟むスペーサの厚みは、例えば2.4mmである。第1被着物状に配置されるスペーサの厚みは、例えば0.4mmである。
【0064】
次に、接着剤をホットメルトアプリケータ(ITWダイナテック株式会社製バッグメルターPUR-20)に投入し、120℃で加熱溶融する。接着領域上に、加熱溶融された接着剤を塗布する(塗布工程、図4参照)。接着剤は、接着領域からはみ出て、接着領域を囲むスペーサの一部にも塗布される。次に、スクレーバーを用いて、接着領域からはみ出た接着剤をこそぎ取る(図5参照)。これにより、接着剤の厚みが均一になる。接着剤は、第1被着物の上面に50mm×50mm×0.4mmのサイズで塗布される。
【0065】
次に、接着剤を冷却し、湿気硬化させる(湿気硬化工程)。例えば、室温23℃、相対湿度55%の環境室において、3日間放置して、冷却する。続いて、スペーサを取り外す。湿気硬化された接着剤の上面に、第2被着物を配置する(図8参照)。続いて、接着剤を加熱溶融して、接着剤に第2被着物を接着する(接着工程)。接着剤は、120℃の恒温槽(楠本化成製恒温槽 ETAC HIFLEX FX414C)を用いて加熱する。接着剤の粘度は、120℃で60,000mPa・sである。粘度の測定は、測定装置(Anton Paar社製 モジュラーコンパクトレオメータMCR302)を用いた。続いて、接着剤を23℃まで自然冷却して、固化させる。これにより、第1被着物と第2被着物とが接着層で接着された接着構造物が製造される。
【0066】
(2)実験例4
(2-1)第1被着物
実験例4では、第1被着物にステンレス鋼(SUS303、50mm×150mm×2mm)を用いた。
【0067】
(2-2)第2被着物
実験例4では、第2被着物にウレタンフォーム(イノアックコーポレーション製、ウレタンフォームEMM、密度52kg/m、50mm×50mm×3.5mm)を用いた。
【0068】
(2-3)接着剤
実験例4では、接着剤にオレフィン系ホットメルト(中川商会製、NSH-784)を用いた。この接着剤は、非湿気硬化型である。
【0069】
(2-4)接着構造体の作製
実験例4では、接着構造体の作製を以下の手順で行った。まず、実験例1~3と同様に、第1被着物に対して複数のスペーサを配置する(図3参照)。続いて、接着剤をホットメルトアプリケータ(ノードソン製 AB10TTメルター)に投入し、150℃で加熱溶融する。接着領域上に、加熱溶融された接着剤を塗布する(塗布工程、図4参照)。実験例1~3と同様に、スクレーバーを用いて、接着領域からはみ出た接着剤をこそぎ取る(図5参照)。これにより、接着剤は、第1被着物11の上面に50mm×50mm×0.4mmのサイズで塗布される。
【0070】
次に、接着剤を23℃まで自然冷却して、固化させる。続いて、スペーサを取り外す。固化された接着剤の上面に、第2被着物を配置する。続いて、接着剤を加熱溶融して、接着剤に第2被着物を接着する(接着工程)。接着剤は、150℃の恒温槽(楠本化成製恒温槽 ETAC HIFLEX FX414C)を用いて加熱する。続いて、接着剤を23℃まで自然冷却して、固化させる。これにより、第1被着物と第2被着物とが接着層で接着された接着構造物が製造される。
【0071】
(3)実験例5
(3-1)第1被着物
実験例5では、第1被着物にステンレス鋼(SUS303、50mm×150mm×2mm)を用いた。
【0072】
(3-2)第2被着物
実験例5では、第2被着物にウレタンフォーム(イノアックコーポレーション製、ウレタンフォームEMM、密度52kg/m、50mm×50mm×3.5mm)を用いた。
【0073】
(3-3)接着剤
実験例5では、接着剤に湿気硬化型ホットメルトウレタンを含む構成(イノアックコーポレーション製、湿気硬化型ウレタンホットメルト)を用いた。湿気硬化後に再溶融可能な湿気硬化型ホットメルトウレタンを用いた。接着剤の原料は、実験例1と同じである。
【0074】
(3-4)接着構造体の作製
実験例5では、接着構造体の作製を以下の手順で行った。まず、実験例1~3と同様に、第1被着物に対して複数のスペーサを配置する(図3参照)。続いて、接着剤をホットメルトアプリケータ(ITWダイナテック株式会社製バッグメルターPUR-20)に投入し、120℃で加熱溶融する。接着領域上に、加熱溶融された接着剤を塗布する(塗布工程、図4参照)。実験例1~3と同様に、スクレーバーを用いて、接着領域からはみ出た接着剤をこそぎ取る(図5参照)。これにより、接着剤は、第1被着物の上面に50mm×50mm×0.4mmのサイズで塗布される。
【0075】
次に、接着剤を23℃まで自然冷却して、固化させる。続いて、スペーサを取り外す。固化された接着剤の上面に、第2被着物を配置する(図8参照)。続いて、接着剤を加熱溶融して、接着剤に第2被着物を接着する(接着工程)。接着剤は、120℃の恒温槽(楠本化成製恒温槽 ETAC HIFLEX FX414C)を用いて加熱する。接着剤の粘度は、120℃で60,000mPa・sである。粘度の測定は、測定装置(Anton Paar社製 モジュラーコンパクトレオメータMCR302)を用いた。続いて、接着剤を冷却し、湿気硬化させる。例えば、室温23℃、相対湿度55%の環境室において、3日間放置して、冷却する。これにより、第1被着物と第2被着物とが接着層で接着された接着構造物が製造される。
【0076】
(4)評価試験
(4-1)試験方法
固定した第1被着物に対して、指で第2被着物をせん断方向に押す(図9参照)。せん断方向は、第1被着物の板面に平行な方向であって、第1被着物と第2被着物とを互いにスライドさせる方向である。例えば、指で第2被着物の側面を押す。第2被着物の破壊状態を確認した。すなわち、第2被着物が破壊して、第1被着物の表面に接着剤と、破壊した第2被着物の一部が残ったか否か確認した。
【0077】
(4-2)評価結果
評価結果を表1に併記する。
剥離状態の判定基準:
「A」:第1被着物と接着剤との界面で剥離が生じ、第1被着物の表面に接着剤および第2被着物が残存しない
「B」:第2被着物が破壊し、第1被着物の表面に接着剤および破壊した第2被着物の破片が残存する
「C」:第2被着物と接着剤の界面で剥離が生じ、第1被着物の表面に接着剤が残存する
【0078】
実験例1~3は、いずれも剥離状態の評価が「A」であった。実験例1~3は、接着剤を湿気硬化させた後に第2被着物を接着させているため、第1被着物と接着剤との界面で剥離が生じた。また、実験例1~3は、接着剤を湿気硬化させた後に第2被着物を接着させているため、第2被着物12で破壊が生じていない。したがって、実験例1~3は、第1被着物と第2被着物とを互いにスライドさせることで、第1被着物と接着層との界面で分離可能である。
【0079】
実験例4は、剥離状態の評価が「B」であった。実験例4は、非湿気硬化型の接着剤を用いて、第1被着物に塗布した接着剤を固化させた後に、加熱溶融させて第2被着物を接着させている。そのため、第2被着物が破壊し、第1被着物の表面に接着剤および破壊した第2被着物の破片が残存した。
【0080】
実験例5は、剥離状態の評価が「C」であった。実験例5は、湿気硬化型の接着剤を用いたが、第1被着物に塗布した接着剤を湿気硬化させることなく固化させた。その後、加熱溶融させた接着剤に第2被着物を配置し、湿気硬化させている。そのため、第2被着物と接着剤の界面で剥離が生じ、第1被着物の表面に接着剤が残存した。
【0081】
【表1】
【0082】
(5)実施例の効果
実施例1~3では、第1被着物と接着層の界面に沿って、第1被着物から接着層および第2被着物を剥がすことができる接着構造物を製造できた。
【0083】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0084】
10…接着構造物
11…第1被着物
12…第2被着物
13…接着層
14…接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11