(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】軸流羽根車、および換気扇
(51)【国際特許分類】
F04D 29/32 20060101AFI20240614BHJP
F04D 29/05 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
F04D29/32 C
F04D29/32 F
F04D29/05 A
(21)【出願番号】P 2020181063
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 明裕
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 弘幸
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-117505(JP,U)
【文献】特開2020-067015(JP,A)
【文献】特開2010-163870(JP,A)
【文献】特開平10-122191(JP,A)
【文献】実公昭47-001401(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/32
F04D 29/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の回転軸に固定される基部と、
前記基部に取付機構を介して着脱自在に取り付けられる羽根部と、を備え、
前記取付機構は、
前記基部に設けられる雄ねじ部と、
前記羽根部に設けられて前記雄ねじ部と着脱自在にねじ合わされる雌ねじ部と、を有し、
前記雄ねじ部および前記雌ねじ部は、前記羽根部に対して前記基部を前記電動機の回転軸の回転方向に回転させるにつれ、締め付けられる方向にねじ切られ
、
前記羽根部は、筒状であって軸方向の両端部が開口された中心枠体を有し、
前記基部には、軸方向外側に向けて突出した操作片が形成され、
前記基部は、前記羽根部の前記中心枠体を貫通して取り付けられる、軸流羽根車。
【請求項2】
電動機の回転軸に固定される基部と、
前記基部に取付機構を介して着脱自在に取り付けられる羽根部と、を備え、
前記取付機構は、
前記基部に設けられる雄ねじ部と、
前記羽根部に設けられて前記雄ねじ部と着脱自在にねじ合わされる雌ねじ部と、を有し、
前記雄ねじ部および前記雌ねじ部は、前記羽根部に対して前記基部を前記電動機の回転軸の回転方向に回転させるにつれ、締め付けられる方向にねじ切られ、
前記取付機構は、前記基部または前記羽根部のいずれか一方に設けられる凸部と、前記基部または前記羽根部のいずれか他方に設けられて前記凸部と嵌め合わさる凹部と、を備える感知部を有し、
前記感知部は、前記凸部と前記凹部とが嵌め合わさることで、前記雌ねじ部に対する前記雄ねじ部のねじ合わせが完了したことを感知する
、軸流羽根車。
【請求項3】
前記基部は円筒形をなし、かつ内周部に前記回転軸を挿入可能な軸方向に延びる穴が形成され、
前記羽根部は
、前記中心枠体の外周部に配置され、前記中心枠体の径方向外側へ放射状に突出した複数の羽
根を有し
、
前記雄ねじ部
は、前記基部の外周部に配置され、
前
記雌ねじ部
は、前記中心枠体における内周部に配置される、請求項1に記載の軸流羽根車。
【請求項4】
前記基部または前記羽根部の少なくとも一方には、前記取付機構における締め付け方向を示す表示部が設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の軸流羽根車。
【請求項5】
前記取付機構は、
前記基部に設けられるリブと、
前記羽根部に設けられる目印部と、を有し、
前記羽根部に対して前記基部を嵌め合わせた際に、前記リブと前記目印部との位置が一致することで、前記嵌め合わせが完了したことを示す、請求項1から
4のいずれか一項に記載の軸流羽根車。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の軸流羽根車を備える換気扇。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、軸流羽根車、および換気扇に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の送風ファンは、電動機の回転軸に回り止め金具を介して取付けられ、電動機の回転軸に嵌め込まれるボス部と、このボス部の外周部に設けられ、回り止め金具に掛かり合って送風ファンの回り止めをなす掛合部と、この掛合部の外周部に設けられて複数のファンブレードを支持するファン支え部と、を備えている。
【0003】
電動機の回転軸の先端部には、ねじ部が設けられている。また、電動機の回転軸の電動機ケース近傍には、位置決め用リングが設けられている。回転軸のねじ部に、インサート成形されたねじ用ボスを有する押え摘み蓋を締め付けることで、従来の送風ファンおよび回り止め金具は、位置決め用リングと押え摘み蓋との間に挟み込まれて電動機の回転軸に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、回転軸にねじ部を設けたり、回転軸に溝を設けたりする等の羽根車を取り付けるための加工を行う事前の一工程が必要であり、構造によっては困難な場合がある。例えば、予めねじ部を設けた回転軸を電動機に組み込む際に、ねじ部が電動機の軸受を傷付ける可能性がある。このような場合には、回転軸にねじ部を設けることが難しい。
【0006】
一方、ねじ部のない回転軸に、羽根車を固定する場合もある。このような場合には、回転軸を挿入可能な孔と、孔に沿って延びる切欠きと、を有するボス部を羽根車のハブに設け、このボス部の外周にリングを嵌め込み、ボス部を締め付けて孔に挿入された回転軸を固定する固定構造を採用できる。しかしながら、このような固定構造は、羽根車の着脱を許容することが難しい。
【0007】
そこで、本発明は、電動機の回転軸にねじ部を設けたり、回転軸に溝を設けたりする等の羽根車を取り付けるための加工を必要とすることなく、電動機の回転軸から容易に着脱可能な軸流羽根車、および換気扇を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る軸流羽根車は、電動機の回転軸に固定される基部と、前記基部に取付機構を介して着脱自在に取り付けられる羽根部と、を備え、前記取付機構は、前記基部に設けられる雄ねじ部と、前記羽根部に設けられて前記雄ねじ部と着脱自在にねじ合わされる雌ねじ部と、を有し、前記雄ねじ部および前記雌ねじ部は、前記羽根部に対して前記基部を前記電動機の回転軸の回転方向に回転させるにつれ、締め付けられる方向にねじ切られ、前記羽根部は、筒状であって軸方向の両端部が開口された中心枠体を有し、前記基部には、軸方向外側に向けて突出した操作片が形成され、前記基部は、前記羽根部の前記中心枠体を貫通して取り付けられている。
また、本発明の実施形態に係る軸流羽根車は、電動機の回転軸に固定される基部と、前記基部に取付機構を介して着脱自在に取り付けられる羽根部と、を備え、前記取付機構は、前記基部に設けられる雄ねじ部と、前記羽根部に設けられて前記雄ねじ部と着脱自在にねじ合わされる雌ねじ部と、を有し、前記雄ねじ部および前記雌ねじ部は、前記羽根部に対して前記基部を前記電動機の回転軸の回転方向に回転させるにつれ、締め付けられる方向にねじ切られ、前記取付機構は、前記基部または前記羽根部のいずれか一方に設けられる凸部と、前記基部または前記羽根部のいずれか他方に設けられて前記凸部と嵌め合わさる凹部と、を備える感知部を有し、前記感知部は、前記凸部と前記凹部とが嵌め合わさることで、前記雌ねじ部に対する前記雄ねじ部のねじ合わせが完了したことを感知する。
【0009】
また、本発明の実施形態に係る換気扇は、前記軸流羽根車を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る換気扇の分解斜視図。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る軸流羽根車の分解斜視図。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る軸流羽根車の分解斜視図。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る軸流羽根車の側面図。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る軸流羽根車の断面図。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る軸流羽根車の正面図。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る軸流羽根車における説明図。
【
図8】本発明の第1実施形態の変形例に係る軸流羽根車の断面図。
【
図9】本発明の第1実施形態の変形例に係る軸流羽根車の断面図。
【
図10】本発明の第1実施形態の変形例に係る軸流羽根車における基部の斜視図。
【
図11】本発明の第1実施形態の変形例に係る軸流羽根車の正面図。
【
図12】本発明の第1実施形態の変形例に係る軸流羽根車における基部の斜視図。
【
図13】本発明の第1実施形態の変形例に係る軸流羽根車における羽根部の背面図。
【
図14】本発明の第1実施形態の変形例に係る軸流羽根車の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る軸流羽根車、および換気扇の実施形態について
図1から
図14を参照して説明する。なお、複数の図面中、同一または相当する構成には同一の符号を付している。
【0012】
[第1実施形態]
本発明に係る軸流羽根車、および換気扇の第1実施形態について、
図1から
図7を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態に係る換気扇の分解斜視図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る換気扇100は、本体枠101と、本体枠101に装着される化粧パネル103と、本体枠101に支持される電動機105と、電動機105の回転軸Sに取り付けられる軸流ファン1と、を備えている。
【0015】
軸流ファン1は、軸流羽根車2(軸流インペラー、Axial flow impeller)と、軸流羽根車2を回転駆動させる電動機105と、を備えている。電動機105は、軸流羽根車2へ回転駆動力を伝達する回転軸Sを備えている。回転軸Sは、軸流羽根車2の回転中心である。回転軸Sは、出力軸とも呼ばれる。
【0016】
軸流羽根車2は、電動機105の回転軸Sに固定される基部11と、基部11に後述する取付機構17(ここでは不図示)を介して着脱自在に取り付けられる羽根部15と、を備えている。軸流羽根車2は、固定具としての固定環3を介して電動機105の回転軸Sに固定されている。
【0017】
図2は、本発明の第1実施形態に係る軸流羽根車の分解斜視図である。
【0018】
図3は、本発明の第1実施形態に係る軸流羽根車の分解斜視図である。
【0019】
図4は、本発明の第1実施形態に係る軸流羽根車の側面図である。
【0020】
図5は、
図4のX-X線における、本発明の第1実施形態に係る軸流羽根車の断面図である。
【0021】
図2から
図5に示すように、本実施形態に係る軸流ファン1は、いわゆるプロペラファンである。軸流ファン1は、実線矢印で示す回転方向Rへ回転して実線矢印で示す流れ方向F1へ流体、もっぱら空気を流動させる。なお、軸流ファン1を回転方向Rとは反対の逆転方向Qへ回転させると、流体は流れ方向F1の反対方向へ流動する。軸流ファン1は、換気扇に適用されて、室内の空気を室外へ排気する用途、または室外の空気を室内へ送り込む用途に用いられる。
【0022】
軸流羽根車2は、いわゆるプロペラファンの羽根車(Impeller)である。軸流羽根車2は、単にプロペラとも呼ばれる。軸流羽根車2は、電動機105の回転軸Sに固定される基部11と、筒状の中心枠体12と、中心枠体12の外周部に配置され、中心枠体12の径方向外側へ放射状に突出する複数の羽根13とを有する羽根部15と、を備えている。羽根部15は、基部11に取付機構17を介して着脱自在に取り付けられる。
【0023】
取付機構17は、基部11に設けられる雄ねじ部18と、羽根部15に設けられて雄ねじ部18と着脱自在にねじ合わされる雌ねじ部19と、を備えている。取付機構17は、基部11の外周部と、羽根部15の中心枠体12における内周部とに配置される。基部11、羽根部15、および取付機構17は、例えば樹脂の成形品である。なお、ここでは、基部11側に雄ねじ部18、羽根部15側に雌ねじ部19が設けられる場合について説明する。
【0024】
雄ねじ部18および雌ねじ部19は、羽根部15に対して基部11を電動機105の回転軸Sの回転方向(すなわち、軸流ファン1の回転方向R)に回動させるにつれ、締め付けられる方向にねじ切られている。
【0025】
基部11は、羽根部15を回転軸Sに取り付けつつ支えている。基部11は、回転軸Sに接着されていても良いし、回転軸Sと基部11との間に生じる摩擦力で容易には抜け出ないように強固に固定されていても良い。基部11は、例えば回転軸Sを締まり嵌めで嵌め込む孔を備えていても良い。
【0026】
本実施形態に係る基部11は円筒形をなし、かつ内周部に設けられ回転軸Sに固定されるボス部21と、外周部に設けられ雄ねじ部18から連続して軸方向の底部11aまで延在するスリーブ部22と、スリーブ部22の底部11a側端部から軸流羽根車2の径方向外側へ広がるフランジ部23と、を備えている。ボス部21は、回転軸Sを挿入可能な穴24を有している。すなわち、基部11は円筒形をなし、かつ内周部に回転軸Sを挿入可能な軸方向に延びる穴24が形成され、電動機105側の開口した底部11aから内周部の穴24に挿入される電動機105の回転軸Sに固定される。基部11の羽根部15側に位置する(つまり、底部11aに対向した)頭部11bには、軸方向外側に向けて突出した操作片11cが形成されている。操作片11cは、平型でも良いし、十字型でも良い。操作片11cは、基部11、羽根部15、および取付機構17と同様、例えば樹脂の成形品である。
【0027】
基部11は、ボス部21の外周に嵌め込まれ、ボス部21を締め付ける固定環3によって、穴24に挿入された回転軸Sに固定されている。換言すると、軸流羽根車2は、ボス部21の外周に嵌め込まれ、ボス部21を締め付けて縮径させる固定環3によって、回転軸Sに固定されている。つまり、固定環3の内径寸法は、ボス部21の外径寸法よりも小さい。
【0028】
固定環3は、例えば金属製であって、樹脂製のボス部21に比べて極めて薄い肉厚を有している。固定環3は、ボス部21の外周に嵌め込まれて、ボス部21を縮径させる。そうすると、ボス部21の内周面、つまり穴24の一部が穴24に挿入された回転軸Sに強く押さえ付けられる。両者の間に作用する摩擦力は、軸流羽根車2全体を回転軸Sに強固に固定して軸流羽根車2と回転軸Sとを回転一体化する。例えば、回転する軸流羽根車2は、その回転中心線方向へ推進力を生じるが、ボス部21と回転軸Sとの間に生じる摩擦力は、軸流羽根車2が回転軸Sの軸方向へ移動してしまうことを妨げるのに十分な力を発生させている。
【0029】
なお、ボス部21に不図示のキーを一体に形成し、固定環3にキーを配置する不図示の切欠きを設けるようにしても良い。つまり、固定環3を切欠きで分断される断面C形状に形成することで、ボス部21を容易に挿入できる一方で、所要の力でボス部21を縮径させて基部11と回転軸Sとを強固に固定することが可能となる。また、固定環3は、軸流ファン1の回転によってボス部21から抜け出ることもない。
【0030】
羽根部15の中心枠体12は、軸方向の両端部が開口されている。基部11は、中心枠体12の電動機105側に位置する底部12a側から中心枠体12の内周部に挿入される。中心枠体12における内周部の底部12aに対向した頭部12b側には雌ねじ部19が形成されている。雌ねじ部19は、基部11の雄ねじ部18にねじ合わされる。そして、羽根部15に対して基部11を電動機105の回転軸Sの回転方向である軸流ファン1の回転方向Rに回転させることで、雌ねじ部19と雄ねじ部18とがねじ合わされる。雌ねじ部19と雄ねじ部18とがねじ合わされると、基部11が、羽根部15の中心枠体12を貫通して羽根部15に取り付けられる。なお、基部11または羽根部15の少なくとも一方には、取付機構17における取付方向を示す一方向矢印マークが表示された表示部17aが設けられている。本実施形態では、表示部17aが基部11の頭部11bにおける操作片11c近傍に配置されている。
【0031】
図6は、本発明の第1実施形態に係る軸流羽根車の正面図である。
【0032】
図6に示すように、本実施形態に係る軸流羽根車2では、羽根部15に対して基部11が完全に取り付けられていない、換言すれば、完全に組み付けられていない場合であっても、電動機105を通電させることで、羽根部15と基部11とを完全に組み付けることができる。すなわち、羽根部15に対して基部11が完全に組み付けられていない状態において、電動機105の回転軸Sを回転させると、羽根部15は慣性力によって静止状態を維持しようとする。これに対し、基部11は電動機105の回転軸Sの回転に伴って回転軸Sの回転方向である、軸流ファン1の回転方向Rに回転する。これにより、羽根部15の雌ねじ部19に対して基部11の雄ねじ部18が締め付け方向に回転してねじ合わされ、羽根部15と基部11とが完全に組み付けられる。
【0033】
図7は、本発明の第1実施形態に係る軸流羽根車における説明図である。
【0034】
また、
図6および
図7に示すように、本実施形態に係る軸流羽根車2では、羽根部15に対して基部11が完全に組み付けられていない状態において、電動機105側から羽根部15に向かって実線矢印で示す流れ方向F2に空気が流れる、すなわち、電動機105の通電により、軸流羽根車2が回転したときの送風方向F1とは反対方向F2に外風が流れ込むことでも、羽根部15と基部11とを完全に組み付けることができる。
【0035】
換言すると、羽根部15に対して基部11が完全に組み付けられていない状態において、電動機105側から羽根部15に向かって流れ方向F2に外風が流れ込むと、基部11は回転することなく、羽根部15のみが電動機105の回転軸Sの回転方向である、軸流ファン1の回転方向Rとは反対の逆転方向Qに回転する。これにより、基部11の雄ねじ部18に対して羽根部15の雌ねじ部19が締め付け方向に回転してねじ合わされ、羽根部15と基部11とが完全に組み付けられる。
【0036】
このように構成される換気扇100では、電動機105が通電されることにより、回転軸Sが回転する。回転軸Sの回転力は、回転軸Sに固定された軸流羽根車2の基部11へ伝達される。基部11に伝達された回転力は、基部11に組み付けられた羽根部15へと伝達され、軸流羽根車2が回転方向Rに回転する。
【0037】
図8は、
図4のX-X線における、本発明の第1実施形態の変形例に係る軸流羽根車の断面図である。
【0038】
図9は、
図4のY-Y線における、本発明の第1実施形態の変形例に係る軸流羽根車の断面図である。
【0039】
図10は、本発明の第1実施形態の変形例に係る軸流羽根車における基部の斜視図である。
【0040】
本実施形態の変形例に係る軸流羽根車2は、基部11Aと、羽根部15の中心枠体12Aとの形状が異なる点を除き、前述した実施形態1に係る軸流羽根車2とほぼ同様に構成されている。
【0041】
具体的には、
図8から
図10に示すように、基部11Aは、開口を有する底部11Aaと、軸方向外側へと突出した操作片11Acを有する頭部Abと、を備えている。基部11Aは、外周部における頭部11Ab側に雄ねじ部18が設けられている。基部11Aは、外周部における雄ねじ部18から底部11Aaに向けて軸方向に延在し、内周部に電動機105の回転軸Sが挿入される穴24Aが形成されている。つまり、基部11Aは、全体としてボス部21Aとして機能する。基部11Aの外周部において、頭部11Abと底部11Aaとの間における雄ねじ部18寄りの位置には、外周部から径方向外側に突出したフランジ部25が、外周部の全周に亘って形成されている。すなわち、基部11Aは、フランジ部25を境に、底部11Aa側の外側ボス部21Aaと、頭部11Ab側の内側ボス部21Abとに分かれている。そして、底部11Aa側の外側ボス部21Aaは、スリーブ部として機能し、電動機105の回転軸Sに挿し通された固定環3が装着されることで、穴24Aに挿入された電動機105の回転軸Sに固定可能となっている。
【0042】
また、本実施形態の変形例に係る羽根部15の中心枠体12Aは、頭部12Ab側の内周部にボス部12Acが形成されており、当該ボス部12Acの内周に雌ねじ部19が形成されている。中心枠体12Aの頭部12Abは、ボス部12Acと連通して開口されており、外周縁部から開口部分にかけて平面部12Adが設けられている。
【0043】
ところで、本実施形態の変形例に係る軸流羽根車2の取付機構17は、感知部30を備えている。感知部30は、基部11Aまたは羽根部15における中心枠体12Aのいずれか一方に設けられる凸部31と、基部11または羽根部15のいずれか他方に設けられて凸部31と嵌め合わさる凹部32と、を備えている。なお、ここでは、基部11Aのフランジ部25に軸方向に貫通したU字形状の貫通孔25aが形成されており、ダボとして機能する凸部31がフランジ部25の貫通孔25aに配置されている場合について説明する。また、凹部32は、中心枠体12Aのボス部12Acにおける底部12Aa側端部に配置されている場合について説明する。感知部30は、羽根部15に対して基部11Aが回転方向Rに回転させて雌ねじ部19と雄ねじ部18とがねじ合わされ、基部11A側の凸部31と、中心枠体12A側の凹部32とが嵌め合わさることで、雌ねじ部19に対する雄ねじ部18のねじ合わせが完了したことを感知する。
【0044】
図11は、本発明の第1実施形態の変形例に係る軸流羽根車の正面図である。
【0045】
図12は、本発明の第1実施形態の変形例に係る軸流羽根車における基部の斜視図である。
【0046】
図13は、本発明の第1実施形態の変形例に係る軸流羽根車における羽根部の背面図である。
【0047】
図14は、本発明の第1実施形態の変形例に係る軸流羽根車の断面図である。
【0048】
前述した本発明の第1実施形態の軸流羽根車2では、基部11の頭部11bに取付機構17における取付方向を示す表示部17aが設けられる場合について述べたが、
図11に示すように、中心枠体12Aの頭部12Abにおける平面部12Adに表示部17aが設けられていても良い。
図11に示す表示部17aには、「しめる」方向と「ゆるむ」方向とを一緒に示す両方向矢印マークが表示されている。
【0049】
また、取付機構17は、基部11Bに設けられるリブ35と、羽根部15に設けられる目印部36と、を有するようにしても良い。
図12に示すように、リブ35は、基部11Bにおける操作片11Bcの基端部に設けられる。目印部36は、
図11に示すように、中心枠体12Aの中心枠体12Aの頭部12Abにおける平面部12Adに、表示部17aと共に設けられる。そして、取付機構17は、羽根部15に対して基部11Bを嵌め合わせた際に、リブ35と目印部36との位置が一致することで、嵌め合わせが完了したことを示す。
【0050】
なお、
図12に示すように、取付機構17の感知部30は、基部11Bのフランジ部25に切欠き37を形成して凹部32Aとして機能させるようにしても良い。この場合、例えば
図13および
図14に示すように、羽根部15の中心枠体12Bに感知部30の凸部31Aが設けられる。具体的に、中心枠体12Bは、内周部のボス部12Acの外周から中心枠体12Bの内周面12Aeに亘って複数の補強部14が設けられている。このとき、複数の補強部14は、複数のうちの一つの補強部14aが、雌ねじ部19に対する雄ねじ部18のねじ合わせが完了する位置となるように配置される。そして、当該補強部14aは、底部12Aa側端部が、軸方向外側に向かって突出して形成され、凸部31Aとして機能する。このように、補強部14aは他の補強部14とは異なった形状で形成される。
【0051】
以上のような構成を有する軸流ファン1は、次のように組み立てられる。
【0052】
先ず、基部11が羽根部15の中心枠体12内に挿入される。このとき、基部11と一体の操作片11cは、中心枠体12の頭部12b側に配置されて中心枠体12の外側に露出する。そして、羽根部15に対して操作片11cを介して基部11を表示部17aに示す方向に回転させることで、雌ねじ部19と雄ねじ部18とが締め付け方向にねじ合わされ、羽根部15と基部11とが組み付けられる。そうすると、羽根部15は基部11と一体化され、軸流羽根車2の組み立てが完了する。このとき、基部11Aに凸部31を設け、中心枠体12Aに凹部32を設けておくことで、これら凸部31と凹部32とが嵌め合わさることで、雌ねじ部19に対する雄ねじ部18のねじ合わせが完了したことを感知することができる。また、基部11Bに凹部32Aを設け、中心枠体12Bに凸部31Aを設けておくことで、これら凸部31Aと凹部32Aとが嵌め合わさることで、雌ねじ部19に対する雄ねじ部18のねじ合わせが完了したことを感知することができる。さらに、
中心枠体12Aの平面部12Adに目印部36を設け、リブ35と目印部36との位置が一致することで、嵌め合わせが完了したことを示すようにしても良い。
【0053】
次いで、固定環3が電動機105の回転軸Sに挿し通され、電動機105の回転軸Sが軸流羽根車2における基部11の穴24に差し込まれる。次いで、固定環3が基部11のボス部21に装着される。そうすると、軸流羽根車2が電動機105の回転軸Sに固定され、軸流ファン1の組み立てが完了する。
【0054】
なお、軸流羽根車2の組み立てを完了する前に、基部11を固定環3によって電動機105の回転軸Sに固定し、その後、回転軸Sに固定された基部11に羽根部15を組み付けて軸流羽根車2および軸流ファン1の組み立てを完了するようにしても良い。
【0055】
また、軸流ファン1は、次のように分解される。
【0056】
先ず、固定環3を基部11のボス部21から取り外す。次いで、電動機105の回転軸Sから軸流羽根車2における基部11を引き抜き、電動機105の回転軸Sから固定環3を抜き取る。そうすると、電動機105の回転軸Sから軸流羽根車2が分離され、軸流ファン1から軸流羽根車2が取り外され、軸流ファン1の分解が完了する。
【0057】
次いで、軸流羽根車2の羽根部15に対して基部11を、操作片11cを介して表示部17aに示す方向とは反対の逆転方向Qに回転させることで、雌ねじ部19と雄ねじ部18とが締め付け方向とは反対の緩み方向に緩められ、羽根部15と基部11との組み付けが解消される。そうすると、羽根部15の中心枠体12内から基部11が取り出され、軸流羽根車2の分解が完了する。
【0058】
なお、軸流ファン1の分解を完了する前に、前述のように基部11から羽根部15を取り外して軸流羽根車2を分解した後、電動機105の回転軸Sから基部11を取り外して軸流ファン1の分解を完了するようにしても良い。とりわけ、軸流ファン1を分解することなく、単に基部11から羽根部15を取り外す軸流羽根車2の分解については、このような手順で作業した方が容易に分解できる。
【0059】
また、羽根部15を基部11に再装着する手順は、前述した装着手順と同じであり、重複するため、ここでは再装着の手順の説明を省略する。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る軸流羽根車2は、電動機105の回転軸Sに固定される基部11と、基部11に取付機構17を介して着脱自在に取り付けられる羽根部15と、を備えている。取付機構17は、基部11に設けられる雄ねじ部18と、羽根部15に設けられて雄ねじ部18と着脱自在にねじ合わされる雌ねじ部19と、を有する。雄ねじ部18および雌ねじ部19は、羽根部15に対して基部11を電動機105の回転軸Sの回転方向に回動させるにつれ、締め付けられる方向にねじ切られている。そのため、羽根部15に対して基部11を回転方向Rに回転させるといった単純な作業により、基部11と羽根部15とを、取付機構17を介して容易に着脱できる。また、軸流羽根車2は、電動機105の回転軸Sにねじ部を設けることなく、基部11のボス部21の穴24に回転軸Sを差し込み、固定環3によって固定するといった単純な固定方法で、基部11を回転軸Sに固定できる。したがって、羽根部15を基部11および電動機105の回転軸Sへ容易に着脱できる。
【0061】
しかも、本実施形態に係る軸流羽根車2では、羽根部15に対して基部11が完全に取り付けられていない、換言すれば、完全に組み付けられていない場合であっても、電動機105を通電させることで、羽根部15は慣性力によって静止状態を維持しようとし、基部11は電動機105の回転軸Sの回転に伴って回転方向Rに回転する。これにより、羽根部15の雌ねじ部19に対して基部11の雄ねじ部18が締め付け方向に回転してねじ合わされ、羽根部15と基部11とを完全に組み付けることができる。つまり、羽根部15と基部11とが緩むことなく強固に組み付けられる。
【0062】
また、本実施形態に係る軸流羽根車2では、羽根部15に対して基部11が完全に組み付けられていない状態において、電動機105側から羽根部15に向かう流れ方向F2に外風が流れ込むことで、基部11は回転することなく、羽根部15のみが回転方向Rとは反対の逆転方向Qに回転する。これにより、基部11の雄ねじ部18に対して羽根部15の雌ねじ部19が締め付け方向に回転してねじ合わされ、羽根部15と基部11とを完全に組み付けることができる。つまり、羽根部15と基部11とが緩むことなく強固に組み付けられる。
【0063】
また、基部11は円筒形をなし、かつ内周部に回転軸Sを挿入可能な軸方向に延びる穴24が形成され、開口した底部11aから内周部に形成されたボス部21の穴24に挿入される電動機105の回転軸Sに固定される。そのため、軸流羽根車2は、電動機105の回転軸Sにねじ部を設けるなどの加工を施す手間を省き、基部11を回転軸Sに容易に固定できる。
【0064】
そして、取付機構17は、基部11の外周部と、羽根部15の中心枠体12における内周部とに配置される。すなわち、雄ねじ部18と雌ねじ部19とが、基部11の外周部と、羽根部15の中心枠体12における内周部とに配置される。そのため、羽根部15に対して基部11を回転方向Rに回転させることで、羽根部15と基部11とを、容易に着脱できる。
【0065】
さらに、羽根部15の中心枠体12は、軸方向の両端部が開口され、基部11の頭部11bには、軸方向外側に向けて突出した操作片11cが形成されており、基部11は、羽根部15の中心枠体12を貫通して取り付けられるので、羽根部15と基部11との組み付け作業において、中心枠体12から露出する操作片11cを用いて送風性能を損なうことなく基部11を容易に回転させることができ、組付作業効率を向上できる。
【0066】
加えて、基部11または羽根部15の少なくとも一方には、取付機構17における取付方向を示す表示部17aが設けられているので、羽根部15と基部11との組付作業において羽根部15に対する基部11の回転方向が明確となり、組付作業の効率化を図ることができる。
【0067】
また、取付機構17は、雌ねじ部19に対する雄ねじ部18のねじ合わせが完了したことを感知する感知部30を備えている。感知部30は、基部11Aまたは羽根部15のいずれか一方に設けられる凸部31、31Aと、基部11Aまたは羽根部15のいずれか他方に設けられて凸部31、31Aと嵌め合わさる凹部32、32Aと、を備えている。そのため、感知部30は、凸部31、31Aと凹部32、32Aとが嵌め合わさることで、雌ねじ部19に対する雄ねじ部18のねじ合わせが完了したことを簡単に感知できる。
【0068】
加えて、取付機構17は、基部11Bに設けられるリブ35と、羽根部15に設けられる目印部36と、を有し、羽根部15に対して基部11Bを嵌め合わせた際に、リブ35と目印部36との位置が一致することで、嵌め合わせが完了したことを示すようにしても良い。この場合、嵌め合わせが完了する位置が可視化され、組付性を向上できる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1…軸流ファン、2…軸流羽根車、3…固定環、11、11A、11B…基部、11a、11Aa…基部の底部、11b、11Ab…基部の頭部、11c、11Ac、11Bc…操作片、12、12A、12B…中心枠体、12a、12Aa、12Ba…中心枠体の底部、12b、12Ab…中心枠体の頭部、12Ac…中心枠体のボス部、12Ad…平面部、12Ae…中心枠体の内周面、13…羽根、14、14a…補強部、15…羽根部、17…取付機構、18…雄ねじ部、19…雌ねじ部、21、21A…ボス部、21Aa…外側ボス部、21Ab…内側ボス部、22…スリーブ部、23、25…フランジ部、24、24A…穴、30…感知部、31、31A…凸部、32、32A…凹部、35…リブ、36…目印部、37…切欠き。